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発表者の利益相反開示事項
発表者氏名 井上 彰 所属/身分 東北大学大学院医学系研究科緩和医療学分野/教授
該当なし 該当有りの場合:企業名等
企業の職員・法人の代表 □
企業等の顧問職 □
株式など □
講演料など ■ アストラゼネカ、大鵬薬品工業、日本ベーリンガーインゲルハイム、日本イーライリリー
原稿料など □
研究費(治験等) □
寄付金 ■ 塩野義製薬
専門的助言・証言 □
臨床試験実施法人の代表 □
その他(贈答品等) □
研究費の財源 □科学研究費 □受託 □寄付
□その他( )□該当なし
財源の スポンサー
がん治療と緩和ケアの「統合」は今後の基本路線
Ferrell, J Clin Oncol 2017
基本的緩和ケア(標準療法)で問題の8割は解決 ① 症状に応じて(エビデンス に基づく)治療法を選択 ② 治療の効果と安全性から 継続の是非を判断 それで難渋する場合は躊躇せず緩和ケア医に相談を!
緩和ケアとEBMは相反する概念ではありません
最善の医療
科学的根拠 Research Evidence
各種ガイドライン
(質の高い)論文
重要な学会発表
専門家の意見
医師側からエビデンスのないケモを勧めるのはやめましょう
「患者の意向」を十分に汲み取ったうえで、エビデンスに基づいて最適な治療法を実践するのが真のEBM
医療者の専門性 Clinical Experience
患者の意向 Patient Preference
EBMの3要素
ガイドラインも症状別に精力的に作成されています
これらは全て緩和医療学会
のホームページから無料でダウンロードできます!
本日は「演者の独断」で、 まだ浸透が不十分と思われる エビデンスを取り上げます
PCU入棟後、ほとんどの方に行うのが輸液の調整
推奨 がん性腹膜炎による消化管狭窄・閉塞のために経口 1-1. で水分摂取できない「予後1ヶ月」のPS0-1症例 ⇒500-1000ml/日の中カロリー輸液を推奨(1C) ⇒1000-1500ml/日の高カロリー輸液は考慮可(2C)
経口摂取出来なくても1000ml/日以上は原則不要なので わずかでも経口摂取できるなら、もっと少なくても良い
推奨 がん性腹膜炎による消化管狭窄・閉塞のために経口 1-2. で水分摂取できない「予後1-2週」のPS3-4症例 1-3. ⇒1000ml/日を超える輸液は行わないことを推奨(1C) ⇒患者の意向を確認し「行わない」ことを推奨(1C) ※消化管閉塞以外の理由で経口摂取できない場合 (悪疫質や全身衰弱など)も同様
輸液は終末期のがん患者のQOL・予後を改善しません
体液貯留で苦痛を生じていたら輸液はむしろ「天敵」
推奨 がん性腹水による苦痛を有する終末期がん患者で 2-1. 500ml/日の水分摂取ができる場合 ⇒患者の意向を確認し「行わない」ことを推奨(1B)
推奨 がん性腹水による苦痛を有する終末期がん患者で 2-2. 経口で水分摂取ができない場合 2-3. ⇒1000ml/日以下の維持輸液を推奨(1C)
推奨 がん性胸水による苦痛を有する患者も以下同文 5-1. ⇒患者の意向を確認し「行わない」ことを推奨(1B)
ご家族にも丁寧に説明すれば大抵ご理解いただけます
推奨 気道分泌による苦痛を有する予後数日の患者 6. ⇒輸液量は500ml/日以下または中止を推奨(1C)
終末期の脱水は(適切な口腔ケア(1B)がなされれば)辛くありません(「水に溺れる」ことの方がよほど辛いです)
「基本はモルヒネ」ですが、その限界も理解しましょう 呼吸困難に対するモルヒネ使用のアルゴリズム
①抗不安薬の併用(2C)(単独では「行わないことを推奨」) ②環境調整(送風、室温、など) ③呼吸リハビリテーション
効きにくい要因が明らかな場合は、他の方法も積極的に「併用」を
その後に発表された最大規模のプラセボ対照試験
Currow, JPSM 2015
主要評価項目の嘔吐回数で、対照群に勝てず
対照群(標準療法)の内訳は
①デキサメサゾン8mg/日 ②ラニチジン200mg ③10~20ml/kg/日への輸液調整
先ずはこちらを実施することが重要
神経障害性疼痛であっても基本は同じ
推奨 神経障害性疼痛に対しても、非オピオイド鎮痛薬・ 43. オピオイドによる疼痛治療を強く推奨(1B) 44. 鎮痛補助薬は弱い推奨(2B)
基本の鎮痛剤に「併せて」
適宜補助薬を試みましょう
効果判定を定期的に行い
メリハリをつけて使用
SCORADⅢ Hoskin, #LBA10004
骨転移に関しては今年のASCOで重要な報告が
脊柱管圧迫症状に対する緩和照射
の方法を比較
主要評価項目:8w
後の歩行可能率
1回照射群の非劣性(-11%まで許容)が証明された! (膀胱機能はわずかに劣るも、QOLと生存期間に差なし)
Basch, JCO 2016
主要評価項目のQOLで優るのは想定の範囲内も 介入6ヵ月後のQOL きめ細かく心配事に対応されて
いれば救急外来へ来る回数が減るのも当然の結果でしょう
PC使用歴のない患者でより有用だったとの結果は意外
極めつけは「前例」と同じく有意な延命効果!
要因その①
早めの対応で、致死的な合併症を防げた
要因その②
症状コントロールによる日常生活の維持が延命につながった
要因その③
適切な副作用管理で、強い抗がん治療を長く施行できた
単施設研究ながら大規模で多様な背景の患者を含んでおり、この結果は日常臨床に十分還元できるとの評価
ハロペリドール(±ロラゼパム) Hui, #10003
終末期せん妄の治療についても重要なエビデンスが
ハロペリドール1-8mgにも関わらず、>RASS2のせん妄が24時間以上
続いた症例が対象
主要評価項目は投与後8時間までのRASS変化
90例が無作為に割り付けられた
本試験のロラゼパムは注射だが日本ではミダゾラムで代用か