52
令和 2 年度版 中小企業経営者 のための 事業承継対策

中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

令和 2年度版

中小企業経営者のための

事業承継対策

Page 2: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

目次第1章: 中小企業を取り巻く事業承継の現状と     計画的な事業承継の取り組みの必要性     1 事業承継の現状は?     2 事業承継は早めの取り組みが重要     3 計画的に事業承継に取り組まないと…      【コラム】後継者不在で廃業?

第 2章: 事業承継の取り組み     1 事業承継とは?     2 事業承継と「会社の魅力」の磨き上げ      【コラム】老舗の強み、生き残りのポイント      【コラム】現経営者と後継者の事業についての対話     3 事業承継の進め方     4 各承継方法のメリット・デメリット       親族内承継        親族外承継(従業員等)        親族外承継(第三者)      5 事業承継計画の策定      ❶事業承継計画の策定にあたって      ❷事業承継計画の策定(T社の事例)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P 2・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P 4・・・・・・・・・・・・・・・・・P 6

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P 8

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P 10・・・・・・・・・・・・・・・・P 11・・・・・・・・・・・・・・・・P 12

・・・・・・・・・・・・P 13・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P 14

・・・・・・・・・・・・・・・・・・P 15・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P 16

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P 20・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P 22

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P 24・・・・・・・・・・・・・・・・・P 26・・・・・・・・・・・・・・・・・P 31

・・・・・・・・・P 32・・・・・・・・・・・・・P 33

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P 34

・・・・・・・・・・・・・P 35・・・・・・・・・・・・・P 36・・・・・・・・・・・・・P 37・・・・・・・・・・・・・P 38

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P 41・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P 42・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P 43

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P 44・・・・・・・・・・・・・・・・P 46

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P 47・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P 48

     【コラム】事業承継時の課題と支援施策

第 3章: 事業承継に関する支援施策の紹介     1 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律      ❶ 経営承継円滑化法の対象となる事業者は?      ❷ 事業承継税制      【コラム】経営承継円滑化法の活用が、計画的な           事業承継に係る取組みに繋がった事例      ❸ 相続税の納税猶予・免除制度(一般措置)      ❹ 贈与税の納税猶予・免除制度(一般措置)      ❺ 法人版事業承継税制(特例措置)の概要      ❻ 個人版事業承継税制の概要     2 民法の特例     3 金融支援     4 事業承継に関する制度融資     5 経営者保証についての新しい支援制度     6 事業承継に係るその他の施策     7 事業承継支援に関する相談先

Page 3: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved

中小企業を取り巻く事業承継の現状と計画的な事業承継の取り組みの必要性

第1章

Page 4: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved2

引用(図表1、2):中小企業庁「中小企業白書(2020年版)」

図表1:休廃業・解散件数の推移

図表2:休廃業・解散企業の代表者年齢の構成比

事業承継の現状は?

 中小企業白書(2020年版)によれば、中小企業の休廃業・解散件数は、近年約4万社を超える数で推移しています(図表1)。また、休廃業・解散企業の代表者の年齢は60歳以上が増加傾向にあります(図表2)。これらのことから日本経済を支える中小企業・小規模事業者の雇用や技術の喪失といった観点も含め、事業承継の問題がクローズアップされています。

1

Page 5: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved 3

 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。

 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつては、親族内承継が全体の9割以上を占めていましたが、近年では親族外承継も3割を超え、事業承継の有力な選択肢となってきています。

引用:株式会社帝国データバンク「全国社長年齢分析(2020年)」

図表3:社長の平均年齢

図表4:事業承継した経営者と後継者の関係

参考:みずほ情報総研株式会社「中小企業・小規模事業者の次世代への承継及び経営者の引退に関する調査(2018年 12月)」(注)引退後の事業継続について「事業の全部が継続している」、「事業の一部が継続している」と回答した者について集計している。出典:中小企業庁「中小企業白書(2019年版)」

配偶者

子供(男性)

子供(女性)

子供の配偶者子供の配偶者

兄弟姉妹兄弟姉妹

その他親族

親族以外の役員・従業員

社外の第三者

その他

社外への承継 16.5%

親族内承継 55.4%

役員・従業員承継 19.1%

2.6

(n=2,565)

(%)

1.5

3.5

19.1

16.5

9.1

42.8

2.6 2.3

59.9

0

53.0

54.0

55.0

56.0

57.0

58.0

59.0

60.0

199091 92 93 94 95 96 97 98 99

200001 02 03 04 05 06 07 08 09

201011 12 13 14 15 16 17 18 19

(歳)

(年)

社長の平均年齢

54.0

Page 6: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved4

 経営者が60 代の企業のうち、約半数の企業が後継者不在となっています(図表5)。また、2割強の企業が事業承継については考えていないという状況です(図表6)。多くの企業において事業承継の準備が進んでいないのが現状です。

事業承継は早めの取り組みが重要2

図表5:社長年齢別に見た、後継者決定状況

図表6:事業承継の意向別の割合

参考(図表5、6):中小企業庁「中小企業白書(2020年版)」

Page 7: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved 5

 さらに、後継者を決定し、事業を引き継ぐ上で苦労した点として、親族内承継では、「取引先との関係維持」や「補佐する人材の確保」が多く(図表7)、承継前に後継者に引き継ぐための取組や教育が必要な事項が比較的高い割合になっています。また、親族内承継の場合、後継者を決定した後、実際に引き継ぐまで長い期間をかける傾向にあることが分かっています(図表8)。したがって、後継者が承継後、十分に「経営力」を発揮できるよう、できる限り早い段階から計画的に事業承継に取り組み、現経営者がバックアップできる体制を整えることが重要です。

図表8:事業形態別、後継者決定後、実際に引き継ぐまでの期間

図表7:後継者への事業引継ぎで苦労した点

引用:中小企業庁「中小企業白書(2019年版)」

参考:みずほ情報総研株式会社 「平成30年度中小企業・小規模事業者の次世代への承継及び経営者の引退に関する調査に係る委託事業」(2019年3月22日)

55.1

48.2

52.9

69.5

27.9

28.2

34.4

25.5

8.5

10.9

7.8

3.3

8.5

12.8

4.9

1.7

0 100(%)

全体(n=2,543)

親族内承継(n=1,408)

役員・従業員承継(n=486)

社外への承継(n=420)

1年未満 1年以上3年未満 3年以上5年未満 5年以上

資料:みずほ情報総研(株)「中小企業・小規模事業者の次世代への承継及び経営者の引退に関する調査」(2018年12月)(注)1.引退後の事業継続について「事業の全部が継続している」、「事業の一部が継続している」と回答した者について集計している。

。るれま含も者たし答回と」他のそ「ていつに係関のと者継後、はに」体全「.2

Page 8: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved6

【ケース1】高齢の会長が実権を握り、社長への経営委譲が進まないケース

【ケース2】事業承継の準備をしないまま経営者の判断能力が低下したケース

ポイント

ポイント ・創業者が、事業承継に関して何の取り組みも行わなかったため、事業の継続すら危ぶまれる事態に陥った事例。

・親族内に後継者候補がいない場合、早めに親族外承継を検討する必要がある。

A:会社の創業者で、現在は会長職。85歳。過半数の株式を有し、会長となった今でも経営の最終決定を行っている。

C:食品製造・販売業の創業者。数年前から健康を害し、Dに代表権を委ねた。株式の80%以上及び多くの不動産を保有。

D:Cの弟で、現在は代表取締役。15年程前に立ち上げた健康食品部門を、会社の中心事業に成長させた功労者。銀行から多額の融資を受けて設備投資を行い、業績を拡大。

B:Aの長男で、現在は社長職。60歳。社長就任後10年程度経過したが、株式保有比率は10%程度。経営権を委譲して欲しいと常々思っているが、なかなか言い出せずにいる。

● 数年前からCは判断能力が低下。Dも体調を崩し事業の一線から退きたいと考えているが、親族内に適当な後継者候補はいない。

● 近年では会社の業績は悪化。一方、Dが融資を受ける際に連帯保証人となっていたCは、連帯保証債務が個人資産を上回る状態となっており、相続が発生すればCの相続人に多額の債務が残る恐れがある。事業承継どころか、事業の継続すら危ぶまれる状況に陥った。

● ある日、B は意を決してメインバンクを訪れ、A が保有する株式の計画的移転を促すための説明を依頼。ところが、逆に A は、B との経営方針対立等を理由に、会社売却の意向を示すという事態に陥ってしまった。

・中小企業経営者が、長男を社長にしたにも関わらず、なかなか経営権を委譲しなかった事例。

・経営権の委譲は現経営者が行うべき。後継者から経営権の委譲について言い出すのは困難であり、言い出すことで、逆にトラブルが大きくなる場合もある。

 計画的に事業承継に取り組まないと、様々な理由で経営が不安定になり、事業の継続に支障が出る場合があります。代表的なケースを紹介します。

計画的に事業承継に取り組まないと…3

Page 9: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved 7

【ケース3】後継者に事業用資産の集中が出来なかったケース

【ケース4】自社の魅力(製品に対する思い等)を後継者に承継できず、      取引先との友好な関係を築けていないケース

ポイント

ポイント・自社の魅力を後継者に伝えることができていないため、取引先と友好な関係を築 けていない事例。・現経営者から後継者に対して積極的に事業についての対話を行うようにし、自社 の強みについて一緒に考える機会を増やす必要がある。

H:機械製造業のオーナー。創業時からの顧客や新規の顧客から自社の技術に高い評価を得ており、H自身も製品にこだわりがある。

E:小売業、製造業等数社のオーナー。資産総額は十数億円(内訳は、現金の他、自社株式、事業用不動産、会社への貸付金等)。

F:Eの長男。現在は代表取締役社長。

G:Eの次男。以前、グループ会社の経営に従事していたが、バブル期に本業以外で多大な損失を発生させたために追放されている。

I:Hの長男。後継者として取締役に就任して久しい。

・相続予定者の中に意思の疎通が図れない人物が存在していたにもかかわらず、十分な生前贈与や遺言の作成がなされなかったため、後継者に事業用資産の集中が出来なかった事例。

(例えば、遺言書を作成することで、次男Gの権利を法定相続分の半分の遺留分

(19ページ参照)まで下げることも可能)

● Hは、長男 I を取締役に就任させることにより、仕事を通じて、Hが創業以来こだわり続けた製品の魅力を理解してもらえると思っていた。

● しかし、 I の仕事ぶりを見ていると、 I には自社製品の魅力が伝わっていないようにHは感じている。また、取引先とのコミュニケーションもあまり積極的には行っていない。Hも高齢となり、長年自社と取引してもらっている顧客のために、今後も自社の製品を製造し続けていけるか、毎日焦りと不安の日々を送っている。

●Eが死亡して相続が発生。遺言書が作成されていなかったため遺産分割協議開始。

●Fは、Eの配偶者とともに事業用資産の全てを相続する案を作成して提示したが、Gはこれを拒否し、法定割合での相続を主張。結局、法定割合に基づき、事業用不動産の一部や会社への貸付金等をGに相続させざるを得なかった。

●小売会社はGへ債務を返済したため資金繰りが逼迫。また、Gは事業用不動産を第三者へ売却する可能性を示しつつ、比較的高額での買取り要求等を行ったため、最近では他の事業にも悪影響が大きくなっている。

Page 10: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved8

参考:後継者難倒産(2019年9月時点)

※ 2013 年 1月以降を対象に集計※ 「後継者難倒産」とは、後継者不在のため事業継続の見込みが立たなくなったことなどを要因とした倒産

参考:株式会社帝国データバンク『「後継者難倒産」の動向調査(2019 年 1 ~ 9 月累計)』

参考:2011年の主な後継者不在による倒産企業

企業名 所在地 業種 倒産要因 態様 負債額(億円)

佐藤タオル(株) 愛知県 タオル卸 代表が高齢で後継者が見つからないこともあり、先行きの見通し立たず 事業停止(11月) 8.0

日産(株) 大阪府 船舶用資材卸 運営や得意先との繋がりを代表に依存する体制であったが逝去。後継者も不在で事業継続が困難となる 破産(10月) 6.0

(株)福山ミシン針製作所 広島県 ミシン針製造卸 創業社長が逝去、後継者難などもあって事業を停止 破産(8月) 5.0

(株)共和建鉄 群馬県 鉄骨工事 4期連続の赤字決算を余儀なくされ、業績低迷に歯止めがかからず、後継者もいなかった 特別清算(10月) 3.5

三和マシン(株) 大阪府 紙工機械販売 設備投資抑制や同業他社との競合激化から、収益面も低調に推移。創業者である前代表が逝去し、後継者難から事業継続を断念 破産(2月) 3.0

(有)藤屋旅館 長野県 温泉旅館経営 個人消費の低迷に加え、若年層を中心としたスキー人口の減少が続き、施設の老朽化や後継者難も重なり事業の継続を断念 破産(7月) 1.9

(株)伊藤電設工業 山形県 建築工事 資金繰りが悪化していたなか前社長が逝去、後継者が定まらず事業を存続させるだけの売り上げを確保できなかった 事業停止(11月) 1.4

(株)ティ・アイ・エス 大分県 土木工事 公共工事が縮小するなか、採算も妙味の薄い業績を余儀なくされ、後継者不在のなか、業績回復のメド立たず 破産(10月) 1.3

出典:株式会社帝国データバンク 「後継者不在企業の実態調査」

0

100

200

300

400

50

150

250

350

450(件)

(%)

2013 14 15 16 17 (年)18 19(1~9月)

後継者難倒産件数

▲10.0▲3.7▲5.6

前年比(2019年は前年同期比)

▲19.2

10.0

▲20.0401

325341354375332

411

0.0

20.0

17.6 12.8

13.010~12月期1~9月期

 下記の表は、2011年に公表された 「後継者不在による倒産企業」 の一覧です。 倒産の一因はいずれも「後継者の不在」ですが、正確には 「事業承継の準備不足」 が原因と言えるでしょう。 事業承継の準備不足以前に、ライフサイクルの成熟期を過ぎてしまった企業については、ビジネスモデルを再構築できなかったというのが一番正しいかもしれませんが、早めに事業承継の準備をしておけば事業継続できた企業もあったかもしれません。 「早めの準備」 に勝る取り組みはありませんので、事業承継についてお悩みの経営者の方は、お近くの相談窓口にご相談下さい。

コラム 後継者不在で廃業?

Page 11: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved

事 業 承 継 の 取 り 組 み

第2章

Page 12: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved10

1 事業承継とは?

事業承継とは、“現経営者から後継者へ事業のバトンタッチ”を行うことですが、企業がこれまで培ってきたさまざまな財産(人・物・金・知的資産)を上手に引き継ぎ、承継後の経営を安定させるために重要です。

事業承継=相続税対策と見られがちですが、相続税対策は事業承継の取り組みの一部に過ぎません。

ヒトの承継◆後継者の選定、育成◆従業員

人 物

知的資産

個人の財産

◆熟練工の持つ匠の技◆得意先担当者の人脈◆顧客情報◆許可・認可・認証

◆経営理念◆経営者の持つ信用◆営業秘密◆特許・ノウハウ

◆自社株式◆事業用資産 (設備・不動産等)◆資金(運転資金等)◆経営者保証

目に見えにくい経営資源(強み)の承継

資産の承継

相続税対策は一部

企業における競争力の源泉である、人材、技術、技能、知的財産(特許・ブランド等)、組織力、経営理念、顧客とのネットワーク等、貸借対照表には表れてこない目に見えにくい経営資源の総称。知的資産を把握し、伝えることで、融資を引き出したり、市場にアピールすることができる。

知的資産:

Page 13: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved 11

1 事業承継とは?

事業承継とは、“現経営者から後継者へ事業のバトンタッチ”を行うことですが、企業がこれまで培ってきたさまざまな財産(人・物・金・知的資産)を上手に引き継ぎ、承継後の経営を安定させるために重要です。

事業承継=相続税対策と見られがちですが、相続税対策は事業承継の取り組みの一部に過ぎません。

ヒトの承継◆後継者の選定、育成◆従業員

人 物

知的資産

個人の財産

◆熟練工の持つ匠の技◆得意先担当者の人脈◆顧客情報◆許可・認可・認証

◆経営理念◆経営者の持つ信用◆営業秘密◆特許・ノウハウ

◆自社株式◆事業用資産 (設備・不動産等)◆資金(運転資金等)◆経営者保証

目に見えにくい経営資源(強み)の承継

資産の承継

相続税対策は一部

企業における競争力の源泉である、人材、技術、技能、知的財産(特許・ブランド等)、組織力、経営理念、顧客とのネットワーク等、貸借対照表には表れてこない目に見えにくい経営資源の総称。知的資産を把握し、伝えることで、融資を引き出したり、市場にアピールすることができる。

知的資産:

知的資産の棚卸し ⇒ 自社の強み、弱みを知る

事業承継と「会社の魅力」の磨き上げ

アンケートでは、経営者が事業を引き継ぐ際に「取引先との関係の維持」「補佐する人材の育成」等、目に見えにくい経営資源の承継に苦労されています(5ページ図表7)。

会社の強みは目に見えにくいことが多く、後継者が「経営」を承継するには、会社の強みの源泉となる知的資産(経営理念、人材、技術、ブランド、ノウハウ、顧客とのネットワーク等)を十分に把握する必要があります。

後継者は、把握した知的資産の状況に基づき、強みを活かし弱みを補うための取り組み(新たな知的資産の創造・獲得)を行い、業績の向上に結びつけることができます(知的資産経営)。

現経営者と後継者がお互いの理解を深めるためには知的資産の「見える化」が重要であり、「事業価値を高める経営レポート(※)」の枠組みに沿って一緒に考え、自社の沿革や知的資産、将来に向けた事業のあり方をまとめる取り組みが効果的です。

 現経営者と後継者が対話による「知的資産の棚卸し」に共同で取り組む過程において、「経営の承継」がなされます。

⇒「会社の魅力」の磨き上げにも直結します。

中小機構 事業価値を高める経営レポート 検 索QRコード

2

※「事業価値を高める経営レポート」(中小機構)をご参照下さい。

Page 14: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved12

事業承継を経験してきた老舗企業に実施したアンケートからも、信用や信頼、伝統といった「目に見えにくい経営資源」が重視されていることがわかります。

老舗の強み、生き残りのポイント

老舗企業の強みは何だとお考えですか?

老舗の強み

今後生き残っていく為には何が必要だとお考えですか?(複数回答可)

生き残りのポイント

1位 信用  (73.8%)2位 伝統  (52.8%)3位 知名度 (50.4%)4位 地域密着(43.1%)5位 厚い信頼(37.5%)6位 顧客の継承(33.2%)7位 技術の継承(29.5%)

貸借対照表上に計上される資産は…

13位 物的資産(11.5%)

1位 信頼の維持(65.8%)2位 進取の気性(45.5%)3位 品質の向上(43.0%)4位 地域密着 (38.6%)5位 伝統の継承(34.6%)6位 技術の継承(34.5%)7位 顧客の継承(27.9%)

12位 物的資産(8.0%)

貸借対照表上に計上される資産は…

コラム

出典 : 株式会社帝国データバンク「百年続く企業の条件(2009.9朝日新聞出版)」

出典 : 長寿企業4000社アンケート実施日:08/3/24~08/4/10回答数:814社(回答率20.4%)実施機関:帝国データバンク史料館

出典 : 株式会社帝国データバンク「百年続く企業の条件(2009.9朝日新聞出版)」

出典 : 長寿企業4000社アンケート実施日:08/3/24~08/4/10回答数:814社(回答率20.4%)実施機関:帝国データバンク史料館

Page 15: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved 13

中小機構 事業承継対策 検 索

※「事業承継計画書(骨子)」の様式は、下記よりダウンロード可能です。 (記入例とは若干デザインが異なります) 右のQRコードを読み取っていただき、「事業承継計画書(骨子)記入様式」のPDFをダウンロードして お使いください。

知的資産の「見える化」は、自社の現状の再確認や、将来の見通しを整理する上で有効です。会社の強みや弱み、外部環境について現経営者と後継者で共に考える過程

を通じて、経営理念や仕事への“こだわり”を承継することにつながります。中小機構ではツールの一つとして下記の様式をホームページで公開していま

す(※)。知的資産の「見える化」には現経営者と後継者の対話が重要です。何から話し始めればいいのか分からないといった場合はこのツールを使い、対話をしながら空欄を埋めてみることから始めるのもいいかもしれません。また、様々な支援機関で事業承継計画策定のサポートを行っています。お近

くの支援機関(48ページ参照)にご相談されてはいかがでしょうか。

現経営者と後継者の事業についての対話コラム

QRコード

(記入例)

事業承継を経験してきた老舗企業に実施したアンケートからも、信用や信頼、伝統といった「目に見えにくい経営資源」が重視されていることがわかります。

老舗の強み、生き残りのポイント

老舗企業の強みは何だとお考えですか?

老舗の強み

今後生き残っていく為には何が必要だとお考えですか?(複数回答可)

生き残りのポイント

1位 信用  (73.8%)2位 伝統  (52.8%)3位 知名度 (50.4%)4位 地域密着(43.1%)5位 厚い信頼(37.5%)6位 顧客の継承(33.2%)7位 技術の継承(29.5%)

貸借対照表上に計上される資産は…

13位 物的資産(11.5%)

1位 信頼の維持(65.8%)2位 進取の気性(45.5%)3位 品質の向上(43.0%)4位 地域密着 (38.6%)5位 伝統の継承(34.6%)6位 技術の継承(34.5%)7位 顧客の継承(27.9%)

12位 物的資産(8.0%)

貸借対照表上に計上される資産は…

コラム

出典 : 株式会社帝国データバンク「百年続く企業の条件(2009.9朝日新聞出版)」

出典 : 長寿企業4000社アンケート実施日:08/3/24~08/4/10回答数:814社(回答率20.4%)実施機関:帝国データバンク史料館

出典 : 株式会社帝国データバンク「百年続く企業の条件(2009.9朝日新聞出版)」

出典 : 長寿企業4000社アンケート実施日:08/3/24~08/4/10回答数:814社(回答率20.4%)実施機関:帝国データバンク史料館

Page 16: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved14

事業承継の進め方

【現状の把握】

①会社概要の把握現状と将来の見込みキャッシュフロー知的資産 等

②株主、親族関係の把握③個人財産の概要把握

保有自社株式個人名義の土地、建物個人の負債、個人保証 等

【後継者・承継方法の確定】

・親族内に後継者候補がいるか?・社内に後継者候補がいるか?・後継者候補の能力・適性は?・後継者候補への意思確認は?

【事業承継計画の策定】

中長期の経営計画に、事業承継の時期、具体的な対策を盛り込んだ「事業承継計画表」の作成

・法定相続人及び相互の人間関係、株式保有状況の確認

・相続財産の特定・相続税額の試算・納税方法の検討 等

親族内承継

(従業員等)

親族外承継

(第三者)

親族外承継

→P.16へ

→P.20へ

→P.22へ

1.関係者の理解

2.後継者教育

3.「会社の魅力」の磨き上げ

4.株式・財産の分配

5.後継者への生前贈与

6.会社法の活用

7.遺言の活用

8.経営承継円滑化法の活用

9.個人保証・担保の処理

1.関係者の理解・後継者教育

2.「会社の魅力」の磨き上げ

3.株式・財産の分配

4.個人保証・担保の処理

1.M&Aの検討

2.「会社の魅力」の磨き上げ

3.各種支援策の活用

円滑な事業承継へ

STEP1

STEP2

STEP3

3

中小企業庁 事業引継ぎハンドブック 検 索

親族外承継(第三者)には、会社への引継ぎ(M&A)と個人への引継ぎがあります。詳細な説明は、「事業引継ぎハンドブック」(中小企業庁)をご参照下さい。

各承継方法のメリット・デメリット

「誰に会社(経営)を承継させるか(後継者の確定)」によって、様々なメリット・デメリットがあります。後継者選びにあたっては、関係者と意思疎通を図ることや、各承継方法のメリット・デメリットを把握することが重要です。

〈メリット〉 〈デメリット〉 〈留意点〉Ⅰ

親族内承継

(従業員等)

親族外承継

(第三者)

親族外承継

・一般的に社内外の関係者から心

情的に受け入れられやすい。

・一般的に後継者を早期に決定し、

長期の準備期間を確保できる。

・他の方法と比べて、所有と経営の

分離を回避できる可能性が高い。

・親族内に、経営能力と意欲がある

者がいるとは限らない。

・相続人が複数いる場合、後継者の

決定・経営権の集中が困難。

・後継者が学校卒業後に他社に就

職し、一定のポジションに就いて

いる等の場合を含め、家業であっ

ても、早めにアナウンスをして本

人の了解を明示的にとりつける

取り組みが必要です。

4

〈メリット〉 〈デメリット〉 〈留意点〉・親族内に後継者として適任者がい

ない場合でも、候補者を確保し

やすい。

・業務に精通しているため、他の従

業員などの理解を得やすい。

・親族内承継と比べて、関係者から

心情的に受け入れられにくい場

合がある。

・後継者候補に株式取得等の資金

力がない場合が多い。

・個人債務保証の引き継ぎが難し

い。

・従業員は経営リスクをとる覚悟で

入社、就業してきておらず、白羽

の矢を立てた幹部等従業員が、

経営者となる覚悟を得るために

は、早めのアナウンスと本人の了

解を明示的にとりつける取り組

みが必要です。

〈メリット〉 〈デメリット〉 〈留意点〉・身近に後継者として適任者がいな

い場合でも、広く候補者を外部に

求めることができる。

・現オーナー経営者が会社売却の

利益を獲得できる。

・希望の条件(従業員の雇用、売却

価格等)を満たす買い手を見つ

けるのが困難。

・会社内に後継者がいない場合、検

討することを先延ばしにしてし

まいがちですが、早めに近くの事

業引継ぎ支援センター等の支援

機関に相談しましょう。

QRコード

Page 17: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved 15

事業承継の進め方

【現状の把握】

①会社概要の把握現状と将来の見込みキャッシュフロー知的資産 等

②株主、親族関係の把握③個人財産の概要把握

保有自社株式個人名義の土地、建物個人の負債、個人保証 等

【後継者・承継方法の確定】

・親族内に後継者候補がいるか?・社内に後継者候補がいるか?・後継者候補の能力・適性は?・後継者候補への意思確認は?

【事業承継計画の策定】

中長期の経営計画に、事業承継の時期、具体的な対策を盛り込んだ「事業承継計画表」の作成

・法定相続人及び相互の人間関係、株式保有状況の確認

・相続財産の特定・相続税額の試算・納税方法の検討 等

親族内承継

(従業員等)

親族外承継

(第三者)

親族外承継

→P.16へ

→P.20へ

→P.22へ

1.関係者の理解

2.後継者教育

3.「会社の魅力」の磨き上げ

4.株式・財産の分配

5.後継者への生前贈与

6.会社法の活用

7.遺言の活用

8.経営承継円滑化法の活用

9.個人保証・担保の処理

1.関係者の理解・後継者教育

2.「会社の魅力」の磨き上げ

3.株式・財産の分配

4.個人保証・担保の処理

1.M&Aの検討

2.「会社の魅力」の磨き上げ

3.各種支援策の活用

円滑な事業承継へ

STEP1

STEP2

STEP3

3

中小企業庁 事業引継ぎハンドブック 検 索

親族外承継(第三者)には、会社への引継ぎ(M&A)と個人への引継ぎがあります。詳細な説明は、「事業引継ぎハンドブック」(中小企業庁)をご参照下さい。

各承継方法のメリット・デメリット

「誰に会社(経営)を承継させるか(後継者の確定)」によって、様々なメリット・デメリットがあります。後継者選びにあたっては、関係者と意思疎通を図ることや、各承継方法のメリット・デメリットを把握することが重要です。

〈メリット〉 〈デメリット〉 〈留意点〉Ⅰ

親族内承継

(従業員等)

親族外承継

(第三者)

親族外承継

・一般的に社内外の関係者から心

情的に受け入れられやすい。

・一般的に後継者を早期に決定し、

長期の準備期間を確保できる。

・他の方法と比べて、所有と経営の

分離を回避できる可能性が高い。

・親族内に、経営能力と意欲がある

者がいるとは限らない。

・相続人が複数いる場合、後継者の

決定・経営権の集中が困難。

・後継者が学校卒業後に他社に就

職し、一定のポジションに就いて

いる等の場合を含め、家業であっ

ても、早めにアナウンスをして本

人の了解を明示的にとりつける

取り組みが必要です。

4

〈メリット〉 〈デメリット〉 〈留意点〉・親族内に後継者として適任者がい

ない場合でも、候補者を確保し

やすい。

・業務に精通しているため、他の従

業員などの理解を得やすい。

・親族内承継と比べて、関係者から

心情的に受け入れられにくい場

合がある。

・後継者候補に株式取得等の資金

力がない場合が多い。

・個人債務保証の引き継ぎが難し

い。

・従業員は経営リスクをとる覚悟で

入社、就業してきておらず、白羽

の矢を立てた幹部等従業員が、

経営者となる覚悟を得るために

は、早めのアナウンスと本人の了

解を明示的にとりつける取り組

みが必要です。

〈メリット〉 〈デメリット〉 〈留意点〉・身近に後継者として適任者がいな

い場合でも、広く候補者を外部に

求めることができる。

・現オーナー経営者が会社売却の

利益を獲得できる。

・希望の条件(従業員の雇用、売却

価格等)を満たす買い手を見つ

けるのが困難。

・会社内に後継者がいない場合、検

討することを先延ばしにしてし

まいがちですが、早めに近くの事

業引継ぎ支援センター等の支援

機関に相談しましょう。

QRコード

Page 18: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved16

親族内承継は現経営者の子息・子女が後継者となるケースの他、甥や娘婿、配偶者が後継者となるケースなどもあります。

◆後継者候補が複数いる場合は、意思疎通を図り、なるべく早期に後継者を決定しましょう。後継者候補へのアナウンスと本人の明示的な了解を確認することが大切です。◆社内や取引先・金融機関に対して、事業承継計画を公表するなどの事前

説明を行っておくことが重要です。◆後継者の会社経営を支える将来の役員や幹部の構成を視野に入れて、役

員・従業員の世代交代を準備します。

関係者の理解1

後継者教育2経営に必要な能力・知識を習得するために、社内・社外での教育を実施します。例えば、以下のようなものです。

①社内での教育◆現経営者と後継者との事業についての対話(17ページ3参照)

◆自社の各部門のローテーション◆責任ある地位に就けて権限を委譲②社外での教育◆他社勤務や子会社経営を通じて、幅広い人脈の形成や経営手法を習得◆中小企業大学校で実施している経営後継者研修や中小企業支援団体が実

施するセミナーへの参加

金融機関取引先企業従業員役員親族

関係者の理解

  親族内承継Ⅰ

Page 19: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved 17

親族内承継は現経営者の子息・子女が後継者となるケースの他、甥や娘婿、配偶者が後継者となるケースなどもあります。

◆後継者候補が複数いる場合は、意思疎通を図り、なるべく早期に後継者を決定しましょう。後継者候補へのアナウンスと本人の明示的な了解を確認することが大切です。◆社内や取引先・金融機関に対して、事業承継計画を公表するなどの事前

説明を行っておくことが重要です。◆後継者の会社経営を支える将来の役員や幹部の構成を視野に入れて、役

員・従業員の世代交代を準備します。

関係者の理解1

後継者教育2経営に必要な能力・知識を習得するために、社内・社外での教育を実施します。例えば、以下のようなものです。

①社内での教育◆現経営者と後継者との事業についての対話(17ページ3参照)

◆自社の各部門のローテーション◆責任ある地位に就けて権限を委譲②社外での教育◆他社勤務や子会社経営を通じて、幅広い人脈の形成や経営手法を習得◆中小企業大学校で実施している経営後継者研修や中小企業支援団体が実

施するセミナーへの参加

金融機関取引先企業従業員役員親族

関係者の理解

  親族内承継Ⅰ

◆現経営者は、自社株式・事業用資産といった目に見える資産だけでなく、経営理念、ノウハウ、顧客とのネットワークといった目に見えにくい経営資源(知的資産)を後継者に伝えることが重要です。◆会社の実態を把握するために、現経営者と後継者が一緒に「事業価値を高める経営レポート」(11ページ下段参照)の枠組みに沿って考え、自社の沿革や知的資産、将来に向けた事業のあり方をまとめる取り組みが会社の磨き上げにつながります。

「会社の魅力」の磨き上げ(11ページ参照)3

株式・財産の分配4株式・財産の分配においては、①後継者への自社株式、事業用資産の集中、②後継者以外の相続人への配慮、という2つの観点からの検討が必要です。

会社の強み・弱みを現経営者と後継者が一緒に考えることが大切です。

①後継者への自社株式、事業用資産の集中◆後継者が安定的に経営をしていくためには、後継者に自社株式や事業用資産を集中的に承継させることが必要です(株主総会で重要事項を決議するために必要な2/3以上の議決権の確保が目安)。◆自社株式や事業用資産は経営者の相続財産に占める割合が高く、後継者に集中的に承継させると、後継者や会社は、自社株式や事業用資産の買い取りや相続税の納付のため、多額の資金が必要になるケースがあります。専門家と相談して対策を検討しましょう。②後継者以外の相続人への配慮◆生前贈与や遺言を用いる場合でも、後継者以外の相続人の遺留分による制限があります。

兄弟姉妹以外の相続人に対して最低限度の資産承継の権利を保障するための制度。例として相続人が妻及び子供二人の場合、妻が1/4、子供がそれぞれ1/8の割合に相当する額の遺留分を有し、その額を侵害するような贈与や遺贈を受けたときは、遺留分侵害額に相当する金銭を請求される場合がある。

遺留分:

Page 20: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved18

①遺留分等民法上の問題◆生前贈与で分け与えた財産については、相続発生の際、後継者以外の相続人の遺留分による制約を受けるため、財産分配方針を決定した上で計画的に行うことが必要です。◆令和元年7月1日より、遺留分を侵害された者は、遺贈や贈与を受けた者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の請求ができるようになります。また、請求を受けた者が金銭を直ちに準備することができない場合、裁判所に支払期限の猶予を求めることができます。※自社株式等の生前贈与をするときは、経営承継円滑化法「民法の特例」の活用も検討しましょう。②贈与税の課税制度の検討◆贈与税には以下の課税制度がありますが、どの制度を採用するにせよ、現経営者の生前に計画的に事業承継に取り組むことが、円滑な事業承継のために重要です。

暦年毎にその年中に贈与された価額の合計に対して贈与税を課税。110万円の基礎控除があるが、税率は10%~55%の累進税率。

暦 年 課 税 制 度:

60歳以上の親(又は祖父母)から20歳(令和4年4月1日以降の贈与は18歳)以上の子(又は孫)への贈与について、選択制により、贈与時に軽減された贈与税を納付し、相続時に相続税で精算する制度。2,500万円の特別控除があり、それを超えた額については一律20%の税率を適用。

相続時精算課税制度:

株式の譲渡について、会社の承認を必要とする規定。譲渡制限規定:

◆自社株式の集中や分散防止対策として、議決権制限株式、拒否権付種類株式(黄金株)、相続人に対する売渡請求等の活用も有効です。

※上記の他、経営承継円滑化法の「非上場株式に係る贈与税の納税猶予制度」の活用を検討することも有益です。

自社株式等の生前贈与は、権利の移転が現経営者の生前に実現するので、後継者の地位が安定する点で有効ですが、以下の点で注意が必要です。

後継者への生前贈与5

◆現時点で既に自社株式が分散している場合には、可能な限り買取り等を実施して、後継者に自社株式を集約します。株式を分散させないためには、定款に譲渡制限規定を設けることが有効です。

会社法の活用6

Page 21: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved 19

①遺留分等民法上の問題◆生前贈与で分け与えた財産については、相続発生の際、後継者以外の相続人の遺留分による制約を受けるため、財産分配方針を決定した上で計画的に行うことが必要です。◆令和元年7月1日より、遺留分を侵害された者は、遺贈や贈与を受けた者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の請求ができるようになります。また、請求を受けた者が金銭を直ちに準備することができない場合、裁判所に支払期限の猶予を求めることができます。※自社株式等の生前贈与をするときは、経営承継円滑化法「民法の特例」の活用も検討しましょう。②贈与税の課税制度の検討◆贈与税には以下の課税制度がありますが、どの制度を採用するにせよ、現経営者の生前に計画的に事業承継に取り組むことが、円滑な事業承継のために重要です。

暦年毎にその年中に贈与された価額の合計に対して贈与税を課税。110万円の基礎控除があるが、税率は10%~55%の累進税率。

暦 年 課 税 制 度:

60歳以上の親(又は祖父母)から20歳(令和4年4月1日以降の贈与は18歳)以上の子(又は孫)への贈与について、選択制により、贈与時に軽減された贈与税を納付し、相続時に相続税で精算する制度。2,500万円の特別控除があり、それを超えた額については一律20%の税率を適用。

相続時精算課税制度:

株式の譲渡について、会社の承認を必要とする規定。譲渡制限規定:

◆自社株式の集中や分散防止対策として、議決権制限株式、拒否権付種類株式(黄金株)、相続人に対する売渡請求等の活用も有効です。

※上記の他、経営承継円滑化法の「非上場株式に係る贈与税の納税猶予制度」の活用を検討することも有益です。

自社株式等の生前贈与は、権利の移転が現経営者の生前に実現するので、後継者の地位が安定する点で有効ですが、以下の点で注意が必要です。

後継者への生前贈与5

◆現時点で既に自社株式が分散している場合には、可能な限り買取り等を実施して、後継者に自社株式を集約します。株式を分散させないためには、定款に譲渡制限規定を設けることが有効です。

会社法の活用6

※ご相談は各都道府県の事業承継ネットワーク事務局へ

遺言の活用7

株主総会での議決権が制限されている株式。後継者には議決権のある株式を、後継者以外の相続人には議決権制限株式を与えることで、後継者に経営権を集中することが可能となる。特定の決議事項について拒否権を有する株式。先代経営者が黄金株を保持することで、後継者が独断専行経営を行うといった事態を防ぐことが可能となる。相続によって株式を取得した者に対して、会社が株式の売渡請求を行い、強制的に買い取ることができる制度。

軽易な方式の遺言であり、自書能力さえ備わっていれば他人の力を借りることなく、いつでも自らの意思に従って作成することができ、手軽かつ自由度の高い制度。平成31年1月13日より、財産目録については自書しなくてもよくなり、また、令和2年7月10日より法務局における保管制度も創設され、自筆証書遺言が更に利用しやすくなる。法律専門家である公証人の関与の下で、2人以上の証人が立会うなど厳格な方式に従って作成され、公証人がその原本を厳重に保管するという信頼性の高い制度。また、遺言者は、遺言の内容について公証人の助言を受けながら最善の遺言を作成することができ、遺言能力の確認なども行われる。

自筆証書遺言 :

公正証書遺言 :

◆遺言書を作成することで、後継者に自社株式、事業用資産を集中することが可能です。ただし、遺言はいつでも撤回できるため、生前贈与と比べて後継者の地位が不安定となり、遺留分の問題や遺言書の有効性をめぐるトラブルが起こることもあります。また、遺言書は相続発生後に開示されるため、当事者の思惑と異なり相続後の事業運営に支障をきたすこともあることから、計画的承継手法の推進を図ること等の取り組みが大切です。◆各種遺言の中で、公正証書遺言が自筆証書遺言に比べて有効です。

経営承継円滑化法等の活用(32~47ページ参照)8◆現経営者の生前に計画的に事業承継に取り組むにあたって、非上場株式に係る相続税・贈与税の納税猶予・免除制度、遺留分に関する民法特例、金融支援といった中小企業経営承継円滑化法の活用を検討することも有益です。

個人保証・担保の処理9◆現経営者の個人保証について、後継者も連帯保証人に加わることを求められる場合があります。◆現経営者は、事業承継に向けて債務の圧縮に努めるとともに、「経営者保証に関するガイドライン」にもとづいた金融機関との交渉や、後継者の負担に見合った報酬の設定等の配慮が必要です。◆事業承継時の経営者保証解除に向けた新しい支援体制が令和2年4月より実施されています。(46ページ参照)

議 決 権 制 限 株 式:

拒 否 権 付 種 類 株 式( 黄 金 株 ):

相 続 人 に 対 す る 売 渡 請 求:

Page 22: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved20

親族外承継(共同創業者、番頭格の役員、工場長等の従業員、優秀な若手従業員等)では、一般的に後継者の株式買取資金や、個人保証の引き継ぎ等が承継の障害となります。

将来の経営者の子息等への中継ぎとして、一時的に親族外承継が行われることもあります。

◆基本的には親族内承継の場合と同様ですが、関係者の理解を得るまでにより多くの時間がかかることもあるため注意が必要です。◆親族内承継以上に、従業員は経営者となることを意識して入社・就業し

ていないことから、早めにアナウンスを行い、本人の明示的な了解を確認することが大切です。◆現経営者の親族の意向や後継者候補の経営方針は、十分に確認しておく

ことが重要です。

関係者の理解・後継者教育1

「会社の魅力」の磨き上げ(11ページ参照)2基本的には親族内承継と同様です。ただし、親族外に承継する際には、後継者

の不安を和らげるため、会社の実態をより丁寧に伝える努力が必要です。

  親族外承継(従業員等)Ⅱ

【関係者の理解を深めるためのポイント】・事業の継続性を保つため、事前に経営理念や経営計画を明確にし、社内に  公表します。・後継者候補が事前に一定期間役員等として勤務します(内部昇格)。・事業承継後も、現経営者が一定期間後継者をサポートすることが有効な場 合もあります。

Page 23: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved 21

親族外承継(共同創業者、番頭格の役員、工場長等の従業員、優秀な若手従業員等)では、一般的に後継者の株式買取資金や、個人保証の引き継ぎ等が承継の障害となります。

将来の経営者の子息等への中継ぎとして、一時的に親族外承継が行われることもあります。

◆基本的には親族内承継の場合と同様ですが、関係者の理解を得るまでにより多くの時間がかかることもあるため注意が必要です。◆親族内承継以上に、従業員は経営者となることを意識して入社・就業し

ていないことから、早めにアナウンスを行い、本人の明示的な了解を確認することが大切です。◆現経営者の親族の意向や後継者候補の経営方針は、十分に確認しておく

ことが重要です。

関係者の理解・後継者教育1

「会社の魅力」の磨き上げ(11ページ参照)2基本的には親族内承継と同様です。ただし、親族外に承継する際には、後継者

の不安を和らげるため、会社の実態をより丁寧に伝える努力が必要です。

  親族外承継(従業員等)Ⅱ

【関係者の理解を深めるためのポイント】・事業の継続性を保つため、事前に経営理念や経営計画を明確にし、社内に  公表します。・後継者候補が事前に一定期間役員等として勤務します(内部昇格)。・事業承継後も、現経営者が一定期間後継者をサポートすることが有効な場 合もあります。

※ご相談は各都道府県の事業承継ネットワーク事務局へ

個人保証・担保の処理4

①会社法の活用◆議決権のある普通株式を後継者に取得させて経営権を集中しつつ、配当

を優先させた議決権制限株式を後継者以外の親族に相続させてバランスをとることも考えられます。

②事業承継のための資金調達◆株式買取資金については、経営陣の能力や事業の将来性を担保として、

金融機関の融資や投資会社の出資等を受けられる場合もあります。◆MBO(Management Buy-Out:マネジメント・バイ・アウト)は、会社の経営陣(マネジメント)が株式を取得して経営権を取得する手法です。株式は、経営陣が個人として取得する方法があるほか、株式を取得するための受け皿会社(SPC:特別目的会社)を設立し、受け皿会社が取得する方法もあります。

③経営承継円滑化法等の活用(32~47ページ参照)◆親族以外の後継者でも「非上場株式に係る相続税・贈与税の納税猶予

制度」が適用できます(平成27年1月1日以後の贈与又は遺贈に適用)。◆また、対象が親族内承継に限定されていた民法特例制度も、親族外承継の際に適用できるようになりました(平成28年4月1日以後の贈与に適用)。◆都道府県知事の認定を前提に、株式会社日本政策金融公庫による後継

者個人への融資が活用できる場合もあります。

◆現経営者の個人保証について、後継者も連帯保証人に加わることを求められる場合があります。◆現経営者は、事業承継に向けて債務の圧縮に努めるとともに、「経営者

保証に関するガイドライン」にもとづいた金融機関との交渉や、後継者の負担に見合った報酬の設定等の配慮が必要です。◆事業承継時の経営者保証解除に向けた新しい支援体制が令和2年4月より

実施されています。(46ページ参照)

株式・財産の分配3一般的には、経営者の親族でない経営陣や従業員には株式を買い取るほどの

資金がないケースが多いですが、以下のような手法がありますので専門家と相談しながら検討しましょう。

Page 24: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved22

親族や従業員など、身近なところに後継者候補がいない場合などに検討されるもので、マッチングにより外部人材や事業譲渡先企業を選定(M&A)するものです。

◆M&Aを進めるにあたっては、社内・社外に対する秘密保持が最重要です。一方、買い手企業に対しては、自社に都合の悪いことでも、「隠し事をしない」ことが大切です。◆M&Aは、交渉次第で譲渡価格が大きく異なります。事業引継ぎ支援センターや専門の仲介業者に相談してみることも有効です。

M&Aの検討1

  親族外承継(第三者)Ⅲ

仲介者・アドバイザーの選定

契約締結

事業評価

 渉

譲渡先企業の選定

基本合意書の締結

デューデリジェンス

最終契約締結

クロージング

合併(Merger)と買収(Acquisition)を意味する言葉で、会社全部を譲渡する場合や一部を譲渡する場合など、さまざまな形態がある。近年、中小企業におけるM&Aの件数が増加している。

M&A:

※1 デューデリジェンス : 企業価値を精査すること。※2 クロージング : 売買取引が完了すること。

※1※2

Page 25: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved 23

親族や従業員など、身近なところに後継者候補がいない場合などに検討されるもので、マッチングにより外部人材や事業譲渡先企業を選定(M&A)するものです。

◆M&Aを進めるにあたっては、社内・社外に対する秘密保持が最重要です。一方、買い手企業に対しては、自社に都合の悪いことでも、「隠し事をしない」ことが大切です。◆M&Aは、交渉次第で譲渡価格が大きく異なります。事業引継ぎ支援センターや専門の仲介業者に相談してみることも有効です。

M&Aの検討1

  親族外承継(第三者)Ⅲ

仲介者・アドバイザーの選定

契約締結

事業評価

 渉

譲渡先企業の選定

基本合意書の締結

デューデリジェンス

最終契約締結

クロージング

合併(Merger)と買収(Acquisition)を意味する言葉で、会社全部を譲渡する場合や一部を譲渡する場合など、さまざまな形態がある。近年、中小企業におけるM&Aの件数が増加している。

M&A:

※1 デューデリジェンス : 企業価値を精査すること。※2 クロージング : 売買取引が完了すること。

※1※2

【「会社の魅力」の磨き上げのポイント】•会社の「知的資産」(強み)の認識、見える化とその活用•業績の改善、無駄な経費支出の削減•貸借対照表のスリム化、オーナーと企業との線引きの明確化

◆全国47都道府県に設置されている事業引継ぎ支援センターでは、事業の引継ぎ先企業との引き合わせ(マッチング)、契約締結に向けた支援を行っています。◆株式会社日本政策金融公庫では、後継者不在等の企業をM&A等により取得するための資金について融資を行う制度があります(43~45ページ参照)。

◆「売れる」会社になるためには、「会社の魅力」の磨き上げが重要です。◆現時点で会社を売却した場合の価格の目安を試算し、企業価値を向上するための指標とすることが有効となります。

「会社の魅力」の磨き上げ2

各種支援策の活用(43~45、47ページ参照)3

中小企業庁 事業引継ぎハンドブック 検 索

親族外承継(第三者)には、会社への引継ぎ(M&A)と個人への引継ぎがあります。詳細な説明は、「事業引継ぎハンドブック」(中小企業庁)をご参照下さい。

QRコード

Page 26: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved24

現状の把握や将来の見通しを明確にすることは、円滑な事業承継において有効です。

❶会社の経営資源の状況はどうなっていますか?  従業員数、年齢層、資産、負債、キャッシュフローの現状や今後の見 込みなど。❷会社の経営リスクの状況はどうなっていますか?  事業の外部環境や、会社の競争力の現状や将来性など。❸経営者自身の事業用資産等はどのような状況ですか?  自社株式の保有状況、個人名義の土地・建物、負債、個人保証の状況 など。❹後継者候補はいますか?  後継者候補は、親族内ですか?それとも従業員や外部からの招聘です か?現時点で未定の場合、後継者についてどう考えていますか?  後継者候補の能力や適性、年齢や経歴、事業への興味、会社経営に対 する意欲はどうですか?  経営に対する価値観や信条等を明確にするため、後継者候補に経営者 の経営理念や経営方針を伝えていますか?❺相続が発生する際に予想される問題点はありますか?  法定相続人及び相互の人間関係・株式保有状況等の確認は行っていま すか?  相続財産の特定や、相続税額の試算、納税方法(相続税・贈与税の納 税猶予制度)の検討などは行っていますか?

【現状の把握】

事業承継計画の策定5

  事業承継計画の策定にあたって1

❻中長期的な経営計画を作成しましょう。  会社の現状を詳細に分析した上で、中長期的な方向性(経営ビジョン)の 決定、売上高、利益等の数値目標を設定し、これらの達成に向けた具体的 な行動予定や作業項目を明らかにすることが重要です。❼事業承継の具体的な時期を検討しましょう。  事業承継対策には、一定の期間が必要です。具体的な取り組み時期を検 討して、早めに取りかかりましょう。❽さまざまな支援策があります。会社の課題に応じて活用を検討しましょう。  経営承継円滑化法による相続税や贈与税の納税猶予制度、民法特例や金 融支援策の活用。  事業用財産の後継者への集中を図るため、遺言の活用を検討。  株式を分散させないために、定款に「譲渡制限」ならびに「相続人に対す る売渡請求」規定を設けることなど。  経営者保証を不要とする新たな信用保証制度の活用

※支援策を検討するにあたっては、地域の支援機関に相談することをおすすめします。

【将来の見通し】

Page 27: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved 25

現状の把握や将来の見通しを明確にすることは、円滑な事業承継において有効です。

❶会社の経営資源の状況はどうなっていますか?  従業員数、年齢層、資産、負債、キャッシュフローの現状や今後の見 込みなど。❷会社の経営リスクの状況はどうなっていますか?  事業の外部環境や、会社の競争力の現状や将来性など。❸経営者自身の事業用資産等はどのような状況ですか?  自社株式の保有状況、個人名義の土地・建物、負債、個人保証の状況 など。❹後継者候補はいますか?  後継者候補は、親族内ですか?それとも従業員や外部からの招聘です か?現時点で未定の場合、後継者についてどう考えていますか?  後継者候補の能力や適性、年齢や経歴、事業への興味、会社経営に対 する意欲はどうですか?  経営に対する価値観や信条等を明確にするため、後継者候補に経営者 の経営理念や経営方針を伝えていますか?❺相続が発生する際に予想される問題点はありますか?  法定相続人及び相互の人間関係・株式保有状況等の確認は行っていま すか?  相続財産の特定や、相続税額の試算、納税方法(相続税・贈与税の納 税猶予制度)の検討などは行っていますか?

【現状の把握】

事業承継計画の策定5

  事業承継計画の策定にあたって1

❻中長期的な経営計画を作成しましょう。  会社の現状を詳細に分析した上で、中長期的な方向性(経営ビジョン)の 決定、売上高、利益等の数値目標を設定し、これらの達成に向けた具体的 な行動予定や作業項目を明らかにすることが重要です。❼事業承継の具体的な時期を検討しましょう。  事業承継対策には、一定の期間が必要です。具体的な取り組み時期を検 討して、早めに取りかかりましょう。❽さまざまな支援策があります。会社の課題に応じて活用を検討しましょう。  経営承継円滑化法による相続税や贈与税の納税猶予制度、民法特例や金 融支援策の活用。  事業用財産の後継者への集中を図るため、遺言の活用を検討。  株式を分散させないために、定款に「譲渡制限」ならびに「相続人に対す る売渡請求」規定を設けることなど。  経営者保証を不要とする新たな信用保証制度の活用

※支援策を検討するにあたっては、地域の支援機関に相談することをおすすめします。

【将来の見通し】

Page 28: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved26

次のT社の事例(親族内承継)を通じて事業承継計画表作成の流れを見ていきましょう。

長男学

・T社株式 175百万円

(70%保有・35,000株@5,000円)

・不動産(自宅) 75百万円

(相続税評価額)

・預貯金 50百万円

合 計 300百万円

(後継者・T社勤務) (公務員)

業種 製造業 薬品・健康食品

資本金

売上高

経常利益

25百万円

1,000百万円

50百万円

500円/株

×50,000株

従業員数

役員

40人

4人

太郎、学のほか太郎の弟とD氏

・太郎の祖父の代に創業し、現在創業80

年。

・長男学は大手製薬会社勤務後3年前に当

社に就職。

・本社工場と東京営業所あり。

・学のアイデアによる健康食品の新商品を

開発中で、ヒットすれば会社の業績は飛躍

的に伸びる可能性あり。

・太郎    70%・太郎の伯母A氏 5% ・太郎の叔父B氏 5%・元役員C氏  5%

祖父の代の相続で太郎の伯母、叔父に分散しており、元役員C氏も含め高齢である。

(結婚後も 他社で勤務)

・太郎の弟  10%

・役員D氏  5%

中小太郎の家族関係 会社の経営資源

財産の状況(太郎名義) 株主の状況

二男 長女

妻(59才)

中小太郎(60才)

(33才)(31才) (29才)

(経営者・T社3代目社長) (専業主婦)

  事業承継計画の策定(T社の事例)2

Page 29: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved 27

次のT社の事例(親族内承継)を通じて事業承継計画表作成の流れを見ていきましょう。

長男学

・T社株式 175百万円

(70%保有・35,000株@5,000円)

・不動産(自宅) 75百万円

(相続税評価額)

・預貯金 50百万円

合 計 300百万円

(後継者・T社勤務) (公務員)

業種 製造業 薬品・健康食品

資本金

売上高

経常利益

25百万円

1,000百万円

50百万円

500円/株

×50,000株

従業員数

役員

40人

4人

太郎、学のほか太郎の弟とD氏

・太郎の祖父の代に創業し、現在創業80

年。

・長男学は大手製薬会社勤務後3年前に当

社に就職。

・本社工場と東京営業所あり。

・学のアイデアによる健康食品の新商品を

開発中で、ヒットすれば会社の業績は飛躍

的に伸びる可能性あり。

・太郎    70%・太郎の伯母A氏 5% ・太郎の叔父B氏 5%・元役員C氏  5%

祖父の代の相続で太郎の伯母、叔父に分散しており、元役員C氏も含め高齢である。

(結婚後も 他社で勤務)

・太郎の弟  10%

・役員D氏  5%

中小太郎の家族関係 会社の経営資源

財産の状況(太郎名義) 株主の状況

二男 長女

妻(59才)

中小太郎(60才)

(33才)(31才) (29才)

(経営者・T社3代目社長) (専業主婦)

  事業承継計画の策定(T社の事例)2

・家族会議で学を後継者とすることを決定

・1年目に社内の役員、従業員に事業承継計画を公表

・5年目に学を後継者とすることを金融機関・取引先企業に公表

・学を取締役(1年目)、専務(3年目)、社長(5年目)とし、段階的に権限

を委譲

ヒトの承継

◆中小太郎から、長男学への親族内承継。◆5年目に社長交代予定。代表権を学に譲り、太郎は会長へ就任。 太郎に退職金を支給。太郎は10年目に引退。

❶ 関係者の理解

・既に分散している株式を会社が買い取る(金庫株)

・相続が発生した時に備えて、相続人に対する売渡請求制度を導入する

・毎年暦年課税制度による贈与で太郎から学へ株式を贈与し、5年目に

 相続時精算課税制度による贈与で相当数の株式を贈与する

・遺留分対策として、「経営承継円滑化法」の民法特例の活用を検討

・遺留分に配慮した遺言書の作成

(妻へは自宅不動産と現預金、学へは自社株式、二男・長女へは現預金

 を遺留分に配慮し配分)

資産の承継

❸ 株式・財産の分配

・社内では工場→営業部門→本社管理部門と各部門をローテーション

・外部の後継者研修も受講

・太郎は学とコミュニケーションをとる中で、経営理念、ノウハウ、ネット

ワーク等の自社の強みを一緒に考え伝えていく

❷ 後継者教育

【事業承継の基本方針】

Page 30: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved28

項目 現在 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 8年目 9年目 10年目

事業計画

円億51円億31円億01高上売

円万千9円万千7円万千5益利常経

会社

定款・

株式・

その他

「相続人に対する売渡請求制度」の導入

太郎の弟から自社株式取得(金庫株)

元役員C氏から自社株式取得(金庫株)

太郎に退職金支給

年齢 60歳 61歳 62歳 63歳 64歳 65歳 66歳 67歳 68歳 69歳 70歳

役職

関係者の理解

後継者教育

株式・財産の分配

持株(%)※

年齢 33歳 34歳 35歳 36歳 37歳 38歳 39歳 40歳 41歳 42歳 43歳

役職

後継者教育

社外

持株(%)※

補足

・分散している株式を会社が買い取り、金庫株として保有します。

・株式取得に必要な資金を調達します。

・良好な関係先から順次実行します。

まず、会社の中長期の事業計画を作成します。

社長交代の時に太郎に退職金を支給します。この財源の準備が必要です。保険の活用も有効です。

【基本方針】・中小太郎から、長男学への承継。・5 年目に社長交代予定。太郎は代表権を学に譲り会長へ就任。10 年目に引退。

※ 現経営者および後継者の持株割合は、議決権割合ではなく、発行済株式総数に対する保有株式数の割合を示しています。

事業承継計画表(親族内承継)STEP1 会社の事業計画と定款・株式などの整備

太郎や学以外の株主に相続が発生した時に備えて、株式を会社が売渡請求をできるように定款に定めます。

Page 31: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved 29

項目 現在 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 8年目 9年目 10年目

事業計画

円億51円億31円億01高上売

円万千9円万千7円万千5益利常経

会社

定款・

株式・

その他

「相続人に対する売渡請求制度」の導入

太郎の弟から自社株式取得(金庫株)

元役員C氏から自社株式取得(金庫株)

太郎に退職金支給

年齢 60歳 61歳 62歳 63歳 64歳 65歳 66歳 67歳 68歳 69歳 70歳

役職

関係者の理解

後継者教育

株式・財産の分配

持株(%)※

年齢 33歳 34歳 35歳 36歳 37歳 38歳 39歳 40歳 41歳 42歳 43歳

役職

後継者教育

社外

持株(%)※

補足

・分散している株式を会社が買い取り、金庫株として保有します。

・株式取得に必要な資金を調達します。

・良好な関係先から順次実行します。

まず、会社の中長期の事業計画を作成します。

社長交代の時に太郎に退職金を支給します。この財源の準備が必要です。保険の活用も有効です。

【基本方針】・中小太郎から、長男学への承継。・5 年目に社長交代予定。太郎は代表権を学に譲り会長へ就任。10 年目に引退。

※ 現経営者および後継者の持株割合は、議決権割合ではなく、発行済株式総数に対する保有株式数の割合を示しています。

事業承継計画表(親族内承継)STEP1 会社の事業計画と定款・株式などの整備

太郎や学以外の株主に相続が発生した時に備えて、株式を会社が売渡請求をできるように定款に定めます。

項目 現在 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 8年目 9年目 10年目

事業計画

売上高

経常利益

会社

定款・

株式・

その他

年齢 60歳 61歳 62歳 63歳 64歳 65歳 66歳 67歳 68歳 69歳 70歳

長会長社職役相談役

引退

関係者の理解

家族会議社内へ計画発表

取引先・金融機関に公表

後継者教育

株式・財産の分配

公正証書遺言の作成

持株(%)※2

70% 67% 64% 61% 58% 10% 10% 10% 10% 10% 10%

相続時精算課税制度

年齢 33歳 34歳 35歳 36歳 37歳 38歳 39歳 40歳 41歳 42歳 43歳

役職 取締役 専務 社長

後継者教育

社外

継続的に対外研修受講

経営革新塾

持株(%)※2

0% 3% 6% 9% 12% 60% 60% 60% 60% 60% 60%

相続時精算課税制度

補足

●5年目の相続時精算課税制度による贈与時に 「経営承継円滑化法」の活用を検討●遺留分に配慮した遺言書の作成(妻へは自宅不動産と現預金、学へは自社株式、二男・長女

へは現預金をそれぞれ配分)注意:計画の実行に当たっては専門家と十分協議した上で行ってください。

※1 詳しくは、11ページをご参照ください。※2 現経営者および後継者の持株割合は、議決権割合ではなく、発行済株式総数に対する保有株式数の割合を示しています。

工 場 営業部門

後継者が決まり、基本方針が決まれば、まず社内に公表します。

【基本方針】・中小太郎から、長男学への承継。・5年目に社長交代予定。太郎は代表権を学に譲り会長へ就任。10年目に引退。・学には、社内で工場→営業部門→本社管理部門と各部門をローテーション。外部の後継者研修も受講。・太郎の財産内容がほぼ固まったところで公正証書遺言を作成する(5年目)。

後継者とコミュニケーションをとり、経営理念、ノウハウ、ネットワーク等の自社の強みを承継する※1

暦年贈与で毎年株式を後継者に少しずつ贈与し、退職金の支給で株価が下がった時に、精算課税制度によりまとめて贈与します。この時、経営承継円滑化法の民法特例の活用も検討します。

二男、長女の遺留分に配慮した公正証書遺言を作成します。

毎年贈与(暦年課税制度)

毎年贈与(暦年課税制度)

経営者とコミュニケーションをとり、知的資産(=経営理念、ノウハウ等の自社の強み)を承継する※1

本社管理部門

事業承継税制(特例措置)を

活用する場合には、令和 5 年

3 月 31 日までに「特例承継

計画」を都道府県に提出する

ことを検討しましょう(38、

39 ページ参照)。

事業承継計画表(親族内承継)STEP2 現経営者と後継者の計画

Page 32: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved30

項目 現在 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 8年目 9年目 10年目

事業計画

円億51円億31円億01高上売

円万千9円万千7円万千5益利常経

会社

定款・

株式・

その他

「相続人に対する売渡請求制度」の導入

太郎の弟から自社株式取得(金庫株)

元役員C氏から自社株式取得(金庫株)

太郎に退職金支給

年齢 60歳 61歳 62歳 63歳 64歳 65歳 66歳 67歳 68歳 69歳 70歳

役職 長会長社相談役

引退

関係者の理解

家族会議社内へ計画発

取引先・金融機関に公表

後継者教育

株式・財産の分配

公正証書遺言の作成

持株

70% 67% 64% 61% 58% 10% 10% 10% 10% 10% 10%

相続時精算課税制度

年齢 33歳 34歳 35歳 36歳 37歳 38歳 39歳 40歳 41歳 42歳 43歳

役職 取締役 専務 社長

後継者教育

社外

継続的に対外研修受講

経営革新塾

持株

0% 3% 6% 9% 12% 60% 60% 60% 60% 60% 60%

相続時精算課税制度

補足

●5年目の相続時精算課税制度による贈与時に 「経営承継円滑化法」の活用を検討●遺留分に配慮した遺言書の作成(妻へは自宅不動産と現預金、学へは自社株式、二男・長女

へは現預金をそれぞれ配分)注意:計画の実行に当たっては専門家と十分協議した上で行ってください。

工 場 営業部門 本社管理部門

【基本方針】・中小太郎から、長男学への承継。・5年目に社長交代予定。太郎は代表権を学に譲り会長へ就任。10年目に引退。・学には、社内で工場→営業部門→本社管理部門と各部門をローテーション。外部の後継者研修も受講。・太郎の財産内容がほぼ固まったところで公正証書遺言を作成する(5年目)。

後継者とコミュニケーションをとり、経営理念、ノウハウ、ネットワーク等の自社の強みを承継する※1

毎年贈与(暦年課税制度)

毎年贈与(暦年課税制度)

経営者とコミュニケーションをとり、経営理念、ノウハウ、ネットワーク等の自社の強みを承継する※1

※1 詳しくは、11ページをご参照ください。※2 現経営者および後継者の持株割合は、議決権割合ではなく、発行済株式総数に対する保有株式数の割合を示しています。

(%)※2

(%)※2

事業承継計画表(親族内承継)総 合

完 成

Page 33: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

事業承継に関する支援施策の紹介

第3章

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved

項目 現在 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 8年目 9年目 10年目

事業計画

円億51円億31円億01高上売

円万千9円万千7円万千5益利常経

会社

定款・

株式・

その他

「相続人に対する売渡請求制度」の導入

太郎の弟から自社株式取得(金庫株)

元役員C氏から自社株式取得(金庫株)

太郎に退職金支給

年齢 60歳 61歳 62歳 63歳 64歳 65歳 66歳 67歳 68歳 69歳 70歳

役職 長会長社相談役

引退

関係者の理解

家族会議社内へ計画発

取引先・金融機関に公表

後継者教育

株式・財産の分配

公正証書遺言の作成

持株

70% 67% 64% 61% 58% 10% 10% 10% 10% 10% 10%

相続時精算課税制度

年齢 33歳 34歳 35歳 36歳 37歳 38歳 39歳 40歳 41歳 42歳 43歳

役職 取締役 専務 社長

後継者教育

社外

継続的に対外研修受講

経営革新塾

持株

0% 3% 6% 9% 12% 60% 60% 60% 60% 60% 60%

相続時精算課税制度

補足

●5年目の相続時精算課税制度による贈与時に 「経営承継円滑化法」の活用を検討●遺留分に配慮した遺言書の作成(妻へは自宅不動産と現預金、学へは自社株式、二男・長女

へは現預金をそれぞれ配分)注意:計画の実行に当たっては専門家と十分協議した上で行ってください。

工 場 営業部門 本社管理部門

【基本方針】・中小太郎から、長男学への承継。・5年目に社長交代予定。太郎は代表権を学に譲り会長へ就任。10年目に引退。・学には、社内で工場→営業部門→本社管理部門と各部門をローテーション。外部の後継者研修も受講。・太郎の財産内容がほぼ固まったところで公正証書遺言を作成する(5年目)。

後継者とコミュニケーションをとり、経営理念、ノウハウ、ネットワーク等の自社の強みを承継する※1

毎年贈与(暦年課税制度)

毎年贈与(暦年課税制度)

経営者とコミュニケーションをとり、経営理念、ノウハウ、ネットワーク等の自社の強みを承継する※1

※1 詳しくは、11ページをご参照ください。※2 現経営者および後継者の持株割合は、議決権割合ではなく、発行済株式総数に対する保有株式数の割合を示しています。

(%)※2

(%)※2

事業承継計画表(親族内承継)総 合

完 成

Page 34: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved32

事業承継税制の抜本拡充や、民法上の遺留分制度による制約への対応を始めとする事業承継円滑化のための総合的支援策の基礎となる「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が平成20年5月に成立しました。

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律1

①非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度 ※都道府県知事の認定を受けた非上場中小企業の株式等に係る相続税・贈与税を納税猶予(雇用確保を  始めとする5年間の事業継続が要件)。

②個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度

1.事業承継税制

◇一定の要件を満たす後継者が、遺留分権利者全員との合意及び所要の手続(経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可)を経ることを前提に、以下の民法の特例の適用を受けることができる。

①生前贈与株式等を遺留分の対象から除外 贈与株式が遺留分算定の基礎財産から除外されるため、相続に伴う遺留分侵害額請求を未然に防止。

②生前贈与株式の評価額を予め固定 後継者の貢献による株式価値上昇分が遺留分算定の基礎財産から除外されるため、経営意欲が阻害されない。

◇手続については、後継者が単独で申立てができることがポイント。 (従来の遺留分放棄は当事者全員が個別に申立てを行う必要があった)

※民法(相続法)改正により、遺留分を侵害された者は、侵害者に対し、侵害額に相当する金銭の請求のみが可能と なりました(令和元年7月1日施行)。※個人版事業承継税制の創設に加え、民法の特例(除外合意)の対象が個人事業主の事業承継の際にも適用でき るよう拡充されました(令和元年7月16日施行)。

地域経済と雇用を支える中小企業の事業活動の継続

2.民法の特例◇経営者の死亡等に伴い必要となる資金の調達を支援するため、都道府県知事の認定を受けた中小企業者及びその代表者または、承継予定者個人に対して、以下の特例を設ける。

①中小企業信用保険法の特例 (対象:中小企業者、その代表者、承継予定者個人)

②株式会社日本政策金融公庫法及び沖縄振興開発金融公庫法の特例 (対象:中小企業の代表者、その承継予定者個人) 親族外承継や個人事業主の事業承継を含め、以下のような幅広い資金ニーズに対応

3.金融支援

事業承継の円滑化

・株式、事業用資産の取得資金・信用力の低下時の運転資金・相続税負担

中小企業基本法上の中小企業の定義 政令により範囲を拡大した業種(黄色部分を拡大)

製造業その他

3億円以下 300人以下

卸売業 1億円以下 100人以下

小売業5千万円以下

50人以下

サービス業 100人以下

ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)

3億円以下 900人以下

ソフトウェア・情報処理サービス業

3億円以下 300人以下

旅館業 5千万円以下 200人以下

※上記特例により対象となる「ゴム製品製造業」としては、ゴムホース、ゴム手袋やゴム草履業等がある。

○既存の中小企業支援法と同様、労働集約性や資本効率等を踏まえ、一部の業種につき、政令により中小企業の範囲を中小企業基本法上の中小企業より拡大。

○民法特例を利用できる中小企業の要件として、除外合意等の時点で3年以上継続して事業を行っていることを規定。

○金融支援に係る知事認定の要件として、事業承継後に売上高が減少したことや相続税負担が発生していること等を規定。【法第12条】○日本政策金融公庫等が中小企業者の代表者やその予定者に貸し付けることが出来る資金として、株式や事業用資産の買取資金、相続税納税資金、遺留分減殺請求への対応資金等を規定。

事業者の規模

適用要件

【民法特例】(42ページ参照)

【金融支援】(43ページ参照)

❶ 経営承継円滑化法の対象となる事業者は?

資本金 従業員数又は資本金 従業員数又は

中小企業庁 中小企業経営承継円滑化法 検 索QRコード

詳細な説明は「中小企業経営承継円滑化法申請マニュアル」(中小企業庁)をご参照下さい。

Page 35: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved 33

事業承継税制の抜本拡充や、民法上の遺留分制度による制約への対応を始めとする事業承継円滑化のための総合的支援策の基礎となる「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が平成20年5月に成立しました。

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律1

①非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度 ※都道府県知事の認定を受けた非上場中小企業の株式等に係る相続税・贈与税を納税猶予(雇用確保を  始めとする5年間の事業継続が要件)。

②個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度

1.事業承継税制

◇一定の要件を満たす後継者が、遺留分権利者全員との合意及び所要の手続(経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可)を経ることを前提に、以下の民法の特例の適用を受けることができる。

①生前贈与株式等を遺留分の対象から除外 贈与株式が遺留分算定の基礎財産から除外されるため、相続に伴う遺留分侵害額請求を未然に防止。

②生前贈与株式の評価額を予め固定 後継者の貢献による株式価値上昇分が遺留分算定の基礎財産から除外されるため、経営意欲が阻害されない。

◇手続については、後継者が単独で申立てができることがポイント。 (従来の遺留分放棄は当事者全員が個別に申立てを行う必要があった)

※民法(相続法)改正により、遺留分を侵害された者は、侵害者に対し、侵害額に相当する金銭の請求のみが可能と なりました(令和元年7月1日施行)。※個人版事業承継税制の創設に加え、民法の特例(除外合意)の対象が個人事業主の事業承継の際にも適用でき るよう拡充されました(令和元年7月16日施行)。

地域経済と雇用を支える中小企業の事業活動の継続

2.民法の特例◇経営者の死亡等に伴い必要となる資金の調達を支援するため、都道府県知事の認定を受けた中小企業者及びその代表者または、承継予定者個人に対して、以下の特例を設ける。

①中小企業信用保険法の特例 (対象:中小企業者、その代表者、承継予定者個人)

②株式会社日本政策金融公庫法及び沖縄振興開発金融公庫法の特例 (対象:中小企業の代表者、その承継予定者個人) 親族外承継や個人事業主の事業承継を含め、以下のような幅広い資金ニーズに対応

3.金融支援

事業承継の円滑化

・株式、事業用資産の取得資金・信用力の低下時の運転資金・相続税負担

中小企業基本法上の中小企業の定義 政令により範囲を拡大した業種(黄色部分を拡大)

製造業その他

3億円以下 300人以下

卸売業 1億円以下 100人以下

小売業5千万円以下

50人以下

サービス業 100人以下

ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)

3億円以下 900人以下

ソフトウェア・情報処理サービス業

3億円以下 300人以下

旅館業 5千万円以下 200人以下

※上記特例により対象となる「ゴム製品製造業」としては、ゴムホース、ゴム手袋やゴム草履業等がある。

○既存の中小企業支援法と同様、労働集約性や資本効率等を踏まえ、一部の業種につき、政令により中小企業の範囲を中小企業基本法上の中小企業より拡大。

○民法特例を利用できる中小企業の要件として、除外合意等の時点で3年以上継続して事業を行っていることを規定。

○金融支援に係る知事認定の要件として、事業承継後に売上高が減少したことや相続税負担が発生していること等を規定。【法第12条】○日本政策金融公庫等が中小企業者の代表者やその予定者に貸し付けることが出来る資金として、株式や事業用資産の買取資金、相続税納税資金、遺留分減殺請求への対応資金等を規定。

事業者の規模

適用要件

【民法特例】(42ページ参照)

【金融支援】(43ページ参照)

❶ 経営承継円滑化法の対象となる事業者は?

資本金 従業員数又は資本金 従業員数又は

中小企業庁 中小企業経営承継円滑化法 検 索QRコード

詳細な説明は「中小企業経営承継円滑化法申請マニュアル」(中小企業庁)をご参照下さい。

Page 36: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved34

事業承継税制では、相続税及び贈与税の納税猶予制度を組み合わせて活用することで、相続のみならず生前贈与による株式の承継に伴う税負担を軽減することができ、将来にわたって、円滑な事業承継が可能となります。また、平成27年度税制改正により、平成27年4月1日以後、初代経営者が存命中に2代目経営者が3代目経営者に対して再贈与を行う場合も、贈与税の納税義務が生じないように、税制が拡充されました。

❷ 事業承継税制

※事業承継税制の対象となる株式の上限は、発行済議決権株式総数の/(後継者が相続、贈与前から既に 保有していた株式を含む)ですが、平成30年度税制改正により上限が撤廃されます(38ページ参照)。

相続税の納税猶予制度と同様、雇用確保を含む5年間の事業継続を行い、その後も株式を継続

平成27年度税制改正により拡充

保有

※※

※ ※

都道府県知事認定 都道府県知事確認

都道府県知事認定

1代目

経営者

2代目

経営者

3代目

経営者

事業承継税制の全体像のイメージ《生前贈与により株式の承継を行っていくケース》

1代目の経営者の死亡

◎後継者が「贈与税の 納税猶予の適用」を 受けること等

23

一定の贈与

一定の贈与

一定の贈与

都道府県知事認定

経営承継円滑化法の活用が、計画的な事業承継に係る取組みに繋がった事例コラム

現状

経営承継円滑化法の検討

某地方製造業X社 ●会長:創業者のAさん●社長:長男のBさん

 長男Bさんが後継者候補であった頃から、X社の株式はBさん以外の兄弟等にも分

散していました。

 長男Bさんが社長となった後も会長Aさんが引き続き数十%を保有していることか

ら、会長Aさんが保有する株式の動向が経営権に影響を与えかねないことを経営幹

部も心配していました。

 会長Aさんは90歳代と高齢ですが健康であり、当該株式の取り扱いについて会長

Aさんに進言する機会もなく、関係者は不安を抱えつつ見守っていました。

「経営承継円滑化法を検討してみたらどうだろうか?」 X社は業歴も長く、健全経営を続けてきたことから、自社株式評価も高く、将来の

相続発生時の納税負担についても心配な状況にありました。

 中小企業経営承継円滑化法の施行に伴い、顧問税理士・公認会計士は、この法律の

活用が良いのではと考え、社長Bさんならびに経営幹部と相談して、この法律の「相続

税の納税猶予制度」について会長Aさんに説明し、活用を検討することを勧めました。

「まさしく当社のような会社を対象とした法律じゃないか。早速検討してみよう」 「相続税の納税猶予制度」についての概要説明資料を会長Aさんにお見せし、制度

の内容について説明を行ったところ、「この法律はまさしく当社のような会社を対象と

しているので、積極的に行動を起こしたい」と好反応。早速、社長Bさんほか経営幹部

は、顧問税理士・公認会計士の指導・協力を得て「事業承継計画」を作成、計画作成過

程で示された会長Aさんの意向(社長である長男Bさんに会長Aさん保有の自社株

式を全て相続で承継する旨の計画)を明記し、これを都道府県に申請し、受理されま

した(「事前確認制度」は、平成25年4月1日以降、任意制度になりました)。

(顧問税理士・公認会計士からのアドバイス)

明確になった方向性

 経営承継円滑化法の活用検討は、効果として、「事業承継計画作成」に結びつき、そ

の作成過程の中で社長BさんがX社の後継者であることが名実ともに明確となりまし

た。社長Bさんならびに経営幹部も安心し、また社内外にもアナウンス効果が図られ

ました。

Page 37: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved 35

事業承継税制では、相続税及び贈与税の納税猶予制度を組み合わせて活用することで、相続のみならず生前贈与による株式の承継に伴う税負担を軽減することができ、将来にわたって、円滑な事業承継が可能となります。また、平成27年度税制改正により、平成27年4月1日以後、初代経営者が存命中に2代目経営者が3代目経営者に対して再贈与を行う場合も、贈与税の納税義務が生じないように、税制が拡充されました。

❷ 事業承継税制

※事業承継税制の対象となる株式の上限は、発行済議決権株式総数の/(後継者が相続、贈与前から既に 保有していた株式を含む)ですが、平成30年度税制改正により上限が撤廃されます(38ページ参照)。

相続税の納税猶予制度と同様、雇用確保を含む5年間の事業継続を行い、その後も株式を継続

平成27年度税制改正により拡充

保有

※※

※ ※

都道府県知事認定 都道府県知事確認

都道府県知事認定

1代目

経営者

2代目

経営者

3代目

経営者

事業承継税制の全体像のイメージ《生前贈与により株式の承継を行っていくケース》

1代目の経営者の死亡

◎後継者が「贈与税の 納税猶予の適用」を 受けること等

23

一定の贈与

一定の贈与

一定の贈与

都道府県知事認定

経営承継円滑化法の活用が、計画的な事業承継に係る取組みに繋がった事例コラム

現状

経営承継円滑化法の検討

某地方製造業X社 ●会長:創業者のAさん●社長:長男のBさん

 長男Bさんが後継者候補であった頃から、X社の株式はBさん以外の兄弟等にも分

散していました。

 長男Bさんが社長となった後も会長Aさんが引き続き数十%を保有していることか

ら、会長Aさんが保有する株式の動向が経営権に影響を与えかねないことを経営幹

部も心配していました。

 会長Aさんは90歳代と高齢ですが健康であり、当該株式の取り扱いについて会長

Aさんに進言する機会もなく、関係者は不安を抱えつつ見守っていました。

「経営承継円滑化法を検討してみたらどうだろうか?」 X社は業歴も長く、健全経営を続けてきたことから、自社株式評価も高く、将来の

相続発生時の納税負担についても心配な状況にありました。

 中小企業経営承継円滑化法の施行に伴い、顧問税理士・公認会計士は、この法律の

活用が良いのではと考え、社長Bさんならびに経営幹部と相談して、この法律の「相続

税の納税猶予制度」について会長Aさんに説明し、活用を検討することを勧めました。

「まさしく当社のような会社を対象とした法律じゃないか。早速検討してみよう」 「相続税の納税猶予制度」についての概要説明資料を会長Aさんにお見せし、制度

の内容について説明を行ったところ、「この法律はまさしく当社のような会社を対象と

しているので、積極的に行動を起こしたい」と好反応。早速、社長Bさんほか経営幹部

は、顧問税理士・公認会計士の指導・協力を得て「事業承継計画」を作成、計画作成過

程で示された会長Aさんの意向(社長である長男Bさんに会長Aさん保有の自社株

式を全て相続で承継する旨の計画)を明記し、これを都道府県に申請し、受理されま

した(「事前確認制度」は、平成25年4月1日以降、任意制度になりました)。

(顧問税理士・公認会計士からのアドバイス)

明確になった方向性

 経営承継円滑化法の活用検討は、効果として、「事業承継計画作成」に結びつき、そ

の作成過程の中で社長BさんがX社の後継者であることが名実ともに明確となりまし

た。社長Bさんならびに経営幹部も安心し、また社内外にもアナウンス効果が図られ

ました。

Page 38: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved36

❸ 相続税の納税猶予・免除制度(一般措置)

○会社の代表者であったこと

○先代経営者と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有かつ同族内で筆頭株主であった場合

○5年間の事業継続。具体的には、

・代表者であること

・雇用の8割以上を維持

[認定基準]先代経営者、後継者及び会社に係る要件等に該当しているか否か

[後継者の要件][計画的な承継に係る取組み]

○中小企業基本法の中小企業であること(特例有限会社、持分会社も対象)

○非上場会社であること○資産管理会社に該当しないこと 等

厚生年金保険及び健康保険加入者をベース

組織再編を行った場合であっても、実質

的な事業継続が行われているときには認

定を継続

・相続した対象株式の継続保有

その後は、対象株式を継続保有していれば、猶予が継続され、次の場合に相続税の猶予税額を免除する。○経営者が死亡した場合○会社が破産又は特別清算した

場合○対象株式の時価が猶予税額を

下回る中、当該株式の譲渡を行った場合(ただし、時価を超える猶予税額のみ免除)

○次の後継者に対象株式を一括贈与した場合

※事業継続期間は毎年1回、その後は3年毎に税務署長への届出も必要

※平成27年1月1日以後、「5年間の平均で 8割以上」に変更

相続税の納税猶予・免除制度の概要

先代経営者 後継者[事業継続要件][先代経営者の要件]

[認定対象会社の要件]

認定

事業継続の

チェック

会 社

事業継続期間(5年間)

都道府県知事

株式の相続

平成30年度税制改正により、令和5年3月31日までに特例承継計画を提出し、令和9年12月31日までに実際に承継        を行う者を対象として、事業承継税制(相続税・贈与税)の要件が緩和されます(38~40ページをご参照下さい)。

○会社の代表者であること○先代経営者の親族 であること○後継者と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超 の株式を保有かつ同族内で筆頭株主となる場合(1つの 会社で適用される者は1人)

※1 ※2

※1 「親族」とは、①6親等の血族(甥、姪等)、②配偶者、   ③3親等以内の姻族(娘婿等)※2 平成27年1月1日以後の相続・遺贈より親族に限らず適   用可能

※平成25年4月1日以後、「確認」を受けることは認定

要件から外れましたが、計画的な承継に係る取組みは

重要です。なお、事前確認を受けても、特例措置の認

定を受ける場合には、特例承継計画を提出しておく必

要があります。

○計画的な承継に係る取組み(後継者の確定、株式の計画的承継等)に関する都道府県知事の「確認」

「有価証券、不動産、現預金等の合計額 が総資産額の70%を占める会社」及び「これらの運用収入の合計額が総収入金額の75%以上を占める会社」(事業実態のある会社は除く)等

※その後の資産管理会社の判定においては、この「合計額」に、過去5年間に、後継者と同族関係者に支払われた配当等を加える

Page 39: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved 37

❹ 贈与税の納税猶予・免除制度(一般措置)

○5年間の事業継続。具体的には、

・代表者であること

・雇用の8割以上を維持○会社の代表者であったこと○役員を退任すること

○先代経営者と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有かつ同族内で筆頭株主であった場合

[認定基準]先代経営者、後継者及び会社に係る要件等に該当しているか否か

・贈与した対象株式の継続保有

※事業継続期間は毎年1回、その後は3年毎に税務署長への届出も必要

この場合には、① 先代経営者から後継者に相続があったものとみなして相続税を課税② ①で課税された相続税の納税猶予の適用が可能

先代経営者の死亡 [確認基準]

相続税の納税猶予の適用要件のうち一定のものを満たすか否か

[事業継続要件]

[先代経営者の要件]

認定

事業継続の

チェック

[計画的な承継に係る取組み]

確認

その後は、対象株式を継続保有していれば、猶予は継続。なお、贈与税の猶予税額の免除要件は、相続税の猶予税額の免除要件に加えて、「先代経営者の死亡」が含まれている。

贈与税の納税猶予・免除制度の概要

平成30年度税制改正により、令和5年3月31日までに特例承継計画を提出し、令和9年12月31日までに実際に承継        を行う者を対象として、事業承継税制(相続税・贈与税)の要件が緩和されます(38~40ページをご参照下さい)。

※※

保有株式の一定の贈与

厚生年金保険及び健康保険加入者をベース

組織再編を行った場合であっても、実質

的な事業継続が行われているときには認

定を継続

※平成27年1月1日以後、「5年間の平均で 8割以上」に変更

※平成27年1月1日以後の贈与より、代表者退任要

(有給役員として残留可)

※平成25年4月1日以後、「確認」を受けることは認定

要件から外れましたが、計画的な承継に係る取組みは

重要です。任意に確認を受けることは可能です。

 なお、事前確認を受けても、特例措置の認定を受ける

場合には、特例承継計画を提出しておく必要がありま

す。

○計画的な承継に係る取組み(後継者の確定、株式の計画的承継等)に関する都道府県知事の「確認」

[後継者の要件]

※図中の下線部分は、相続税の納税猶予制度 との相違部分

※3

○会社の代表者であること

○先代経営者の親族  であること

○20歳以上であり 、かつ、役員就任から3年以上経過

 していること

○後継者と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超

 の株式を保有かつ同族内で筆頭株主となる場合(1つの

 会社で適用される者は1名)

※1 ※2

※1 「親族」とは、①6親等の血族(甥、姪等)、②配偶者、③3親等以内の姻族(娘婿等)

※2 平成27年1月1日以後の贈与より親族に限らず適用可能※3 令和4年4月1日以後の贈与より「18歳以上」

先代経営者 後継者

会 社

事業継続期間(5年間)

都道府県知事

都道府県知事

[認定対象会社の要件]

「有価証券、不動産、現預金等の合計額※が総資産額の70%を占める会社」及び「これらの運用収入の合計額が総収入金額の75%以上を占める会社」(事業実態のある会社は除く)等

※その後の資産管理会社の判定においては、この「合計額」に、過去5年間に、後継者と同族関係者に支払われた配当等を加える。なお、一定のやむを得ない事情により一時的に資産管理会社に該当してしまった場合は、要件が緩和される

○中小企業基本法の中小企業であること (特例有限会社、持分会社も対象)○非上場会社であること○資産管理会社に該当しないこと 等

Page 40: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved38

❺ 法人版事業承継税制(特例措置)の概要

!ここが変わる

!

中小企業の事業承継支援を抜本強化します事業承継税制の抜本拡充

事業承継税制が大きく変わったと耳にしました。10年以内に後継者に引き継ぐ必要があると聞きましたが、本当ですか?

利用できるのは

法人の経営者

相続税、贈与税

対象株式数の上限を撤廃(2/3→3/3)し、猶予割合を100%に拡大することで、

承継時の贈与税・相続税の現金負担をゼロにします。1

制度利用を躊躇する要因となっている雇用要件(事業承継後5年間平均で、雇用の8割を維持)を

抜本的に見直すことにより、雇用維持要件を満たせなかった場合でも納税猶予を継続可能にします。 ※経営悪化等が理由の場合、認定支援機関の指導助言が必要です。

※相続税の場合

3

親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も対象に。中小企業経営の実状に合わせた、多様な事業承継を支援します。2

売却額や廃業時の評価額を基に納税額を再計算し、事業承継時の株価を基に計算された

納税額との差額を減免することで、経営環境の変化による将来の不安を軽減します。4

4 納税額の再計算とは(イメージ)1 猶予割合の拡大とは

納税猶予額約1億円

承継前 承継時 5年目 10年目 15年目 20年目 25年目

(億円)

0

0.4

0.8

1.2

1.6

2.0

0.2

0.6

1.0

1.4

1.8

売却額に基づいた税額約0.6億円

再計算

承継時の株価総額2億円

25年後の売却価格1.2億円

猶予対象外 1/3

2/3×0.2

事業承継の際の贈与税・相続税の負担を軽減する

「事業承継税制」が、今後10年間に限って大きく拡充されます!※2018年1月1日から2027年12月31日までの間の贈与・相続について適用されます。

100% に

猶予される割合2/3×0.8

=約53%

改正前

平成30年1月1日から令和9年12月31日まで

Page 41: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved 39

利用できるのは

法人 個人事業主

補助金、共済制度

今回、抜本拡充された特例を適用するにあたっては、

今後5年以内に承継計画(仮称)を都道府県に提出し、計画的に承継を行いましょう!※承継計画の様式は、確定次第、中小企業庁のホームページ等で公開いたします。

承継計画を提出しない場合は、従来の事業承継税制の適用になります。

●概要非上場会社の株式等を先代経営者から相続又は贈与により取得した場合において経営承継円滑化法における都道府県知事認定を受けたときは、相続税・贈与税の納税が猶予及び免除される特例制度。※ 本税制の対象となる自社株式は、後継者が相続・贈与前から既に保有していた分も含めて、発行済議決権株式総数の3分の2までの部分です。

●贈与税現経営者からの贈与によって後継者が取得した自社株式に対応する贈与税の納税が猶予・免除されます。

●相続税現経営者から、相続又は遺贈によって後継者が取得した自社株式の80%部分の相続税額が猶予・免除されます。

●事業承継補助金・ 補助対象 設備投資、販路拡大、既存事業の廃業などに必要な経費・ 補助率 1/2または2/3・ 補助上限 150万~1,200万円

(類型により、補助率や補助上限が異なります。詳しくは下記中小企業庁のホームページ等をご確認ください。)

●持続化補助金・ 補助対象 商工会・商工会議所と作成した経営計画を基に取り組む販路開拓に係る経費・ 補助率 2/3・ 補助上限 50万円(賃上げや海外展開を行う場合は100万円、複数の事業者が連携した共同事業の場合は500万円が上限となります。)

補助金に関する情報は随時、中小企業庁のホームページにて掲載をしております。詳細は中小企業庁のホームページでご確認ください。

●小規模企業共済経営者の退職後に備えて、小規模企業共済の活用もご検討ください。月1,000円から掛金の設定が可能(上限70,000円)で、その全額を課税対象所得から控除できるなど税制面のメリットもあります。詳細は中小機構のホームページでご確認ください。

後継者には事業承継を機に新しいことにチャレンジしてほしい。何か使える支援策はないだろうか。

そもそも事業承継税制とは

制度の詳細

事業承継を契機に、経営革新や事業転換を行う場合、

設備投資や販路拡大に活用できる補助金があります!

http://www.chusho.meti.go.jp/中小企業庁ホームページ

http://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/index.html中小機構ホームページ

令和5年3月31日までに特例承継計画(※)を都道府県に提出し、計画的に承継を行いましょう!特例承継計画を提出しない場合は、従来の事業承継税制の適用になります。

Page 42: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved40

38~40 ページの出典:中小企業庁 「平成 30 年度税制改正パンフレット」※内容一部加工

利用できるのは

法人 個人事業主

登録免許税不動産取得税

通常税率 計画認定時の税率(事業譲渡の場合)

土地住宅 3.0% 2.5% (1/6減額相当)

住宅以外の家屋 4.0% 3.3% (1/6減額相当)

親族外への事業承継(M&A)の支援策を創設しますM&A時の減税措置の創設

事業承継税制は株式の相続・贈与にしか使えない…M&Aの際に使える税制はないですか?

経営力向上計画の認定を受けると、 M&Aの際に発生する登録免許税・不動産取得税が軽減されます!

制度の概要(2019年度末まで)

通常税率

計画認定時の税率

不動産の所有権移転の登記

合併による移転の登記 0.4% 0.2%

分割による移転の登記 2.0% 0.4%

その他の原因による移転の登記 2.0% 1.6%

登録免許税の税率

不動産取得税の税率

経営力向上計画

A社

X事業 X事業

A社の X事業をB社が引継ぐ

B社

国(事業分野別の主務大臣)

認定

後継者不在

事業譲渡吸収分割等

※特例承継計画の様式は下記よりダウンロードが可能です。

中小企業庁 特例承継計画 検 索QRコード

令和4年3月31日まで

Page 43: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved 41

❻ 個人版事業承継税制の概要

平成31年4月1日から、個人事業者が事業用資産を後継者に贈与・相続した際に課される贈与税・相続税の納税を猶予及び免除する措置が創設されました。平成30年度に拡充された法人版事業承継税制の特例措置と同様に、平成31年4月1日からの10年間限定の特例措置であり、土地、建物、機械、器具備品等の幅広い事業用資産を対象として、100%納税猶予を受けることができます。この制度の適用を受けるためには、平成31年4月1日から5年以内に都道府

県知事に対して個人事業承継計画を提出した上で、平成31年1月1日から令和10年12月31日までに事業用資産を後継者に承継する必要があります。なお、個人版事業承継税制は、事業用小規模宅地特例との選択制となって

います。

□事業承継税制の概要

※事業用小規模宅地特例との選択制

個人版事業承継税制(※)

相続税・贈与税の納税猶予制度 相続税・贈与税の納税猶予制度

100% 100%

土地、建物、機械、器具備品等 非上場株式

・承継円滑化法に基づく認定・事業継続要件      等

・承継円滑化法に基づく認定・事業継続要件      等

税制

期間

猶予割合

対象資産

要件

法人版事業承継税制

令和元(平成31)年度からの10年間(平成31年1月1日から令和10年12月31日までに行われた贈与・相続が対象)

平成30年度からの10年間(平成30年1月1日から令和9年12月31日までに行われた贈与・相続が対象)

【個人版事業承継税制の創設】

Page 44: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved42

民法の特例2

 先代経営者の生前に、経済産業大臣の確認を受けた後継者が、遺留分権利者全員との合意内容について家庭裁判所の許可を受けることで、先代経営者から後継者へ生前贈与された自社株式その他一定の財産について、遺留分算定の基礎財産から除外できる制度です。

生前贈与株式を遺留分算定の基礎財産から除外できる制度(除外合意)1

 生前贈与後に株式価値が後継者の貢献により上昇した場合でも、遺留分の算定に際しては相続開始時点の上昇後の評価で計算されてしまう。このため、経済産業大臣の確認を受けた後継者が、遺留分権利者全員との合意内容について家庭裁判所の許可を受けることで、遺留分の算定に際して、生前贈与株式の価額を当該合意時の評価額で予め固定できる制度です。

生前贈与株式の評価額を予め固定できる制度(固定合意)2

◆事業継続に不可欠な自社株式等に係る遺留分侵害額請求を未然防止

◆後継者単独で家庭裁判所に申し立てるため、現行の遺留分放棄制度と比して、非後継者の手続きは簡素化

◆後継者が株式価値上昇分を保持できる制度の創設により、経営意欲の阻害要因を排除

※民法(相続法)改正により、遺留分を侵害された者は、侵害者に対し、侵害額に相当する金銭の請求のみが可能と なりました(令和元年7月1日施行)。※個人版事業承継税制の創設に加え、民法の特例(除外合意)の対象が個人事業主の事業承継の際にも適用でき るよう拡充されました(令和元年7月16日施行)。

適用前 適用後

適用前 適用後

株式評価額

侵害額請求により非後継者へ金銭支払

株式評価額

株式評価額 株式評価額

後継者の貢献による価値変動分は遺留分算定の基礎財産から除外

合意対象自社株式等を遺留分算定の基礎財産から除外

侵害額請求により非後継者へ金銭支払

Page 45: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved 43

民法の特例2

 先代経営者の生前に、経済産業大臣の確認を受けた後継者が、遺留分権利者全員との合意内容について家庭裁判所の許可を受けることで、先代経営者から後継者へ生前贈与された自社株式その他一定の財産について、遺留分算定の基礎財産から除外できる制度です。

生前贈与株式を遺留分算定の基礎財産から除外できる制度(除外合意)1

 生前贈与後に株式価値が後継者の貢献により上昇した場合でも、遺留分の算定に際しては相続開始時点の上昇後の評価で計算されてしまう。このため、経済産業大臣の確認を受けた後継者が、遺留分権利者全員との合意内容について家庭裁判所の許可を受けることで、遺留分の算定に際して、生前贈与株式の価額を当該合意時の評価額で予め固定できる制度です。

生前贈与株式の評価額を予め固定できる制度(固定合意)2

◆事業継続に不可欠な自社株式等に係る遺留分侵害額請求を未然防止

◆後継者単独で家庭裁判所に申し立てるため、現行の遺留分放棄制度と比して、非後継者の手続きは簡素化

◆後継者が株式価値上昇分を保持できる制度の創設により、経営意欲の阻害要因を排除

※民法(相続法)改正により、遺留分を侵害された者は、侵害者に対し、侵害額に相当する金銭の請求のみが可能と なりました(令和元年7月1日施行)。※個人版事業承継税制の創設に加え、民法の特例(除外合意)の対象が個人事業主の事業承継の際にも適用でき るよう拡充されました(令和元年7月16日施行)。

適用前 適用後

適用前 適用後

株式評価額

侵害額請求により非後継者へ金銭支払

株式評価額

株式評価額 株式評価額

後継者の貢献による価値変動分は遺留分算定の基礎財産から除外

合意対象自社株式等を遺留分算定の基礎財産から除外

侵害額請求により非後継者へ金銭支払

金融支援3

都道府県知事の認定

会社の資金需要に対応(個人事業主を含む)

後継者個人の資金需要に対応

①多額の資金需要の発生

②信用状態の低下

・相続に伴い分散した株式や事業用資産の買取り等に、多額の資金が必要となる。・株式や事業用資産について、多額の相続税納税資金が必要となる。・親族外承継(MBO、EBO 等)の場合には、先代経営者からの株式等の買取りに多 額の資金が必要となる。

・経営者の交代により信用状態が悪化し、銀行の借入条件や取引先の支払条件が厳し くなる可能性がある。

事業活動の継続に支障が生じている中小企業者(非上場会社及び個人事業主)などを都道府県知事が認定

申請書提出 経営の承継に伴い事業活動の継続に支障が生じていることについて認定

  金融機関等においても独自に審査(※)このため、認定を受けたからといって必ずしも融資を受けられる訳ではない。

認定後融資の申入れ

中小企業者(法人・個人事業主)

中小企業者(法人)代表者など

都道府県の窓口

【中小企業信用保険法の特例の場合】民間金融機関+信用保証協会

【株式会社日本政策金融公庫法の場合】株式会社日本政策金融公庫

(参考)金融支援の申請方法

○信用保険を拡大(別枠化)

通常 拡大(別枠化)

○認定を受けた法人の代表者など後継者個

 人に対する融資を実施

○後継者不在等により事業継続が困難な企

 業を買収する個人に融資を実施

・株式、事業用資産等の買取り資金

・一定期間の運転資金等

普通保険(2億円)無担保保険(8,000万円)特別小口保険(1,250万円)

普通保険(2億円)無担保保険(8,000万円)特別小口保険(1,250万円)

・株式、事業用資産等の買取り資金

・相続税、遺留分減殺請求への対応資金等

・株式、事業用資産 等の買取り資金

中小企業信用保険法の特例 株式会社日本政策金融公庫法及び沖縄振興開発金融公庫法の特例

経営の承継における課題

Page 46: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved44

事業承継に関する制度融資4日本政策金融公庫では、法人・個人事業主、親族内・親族外承継を問わず、

事業承継に関する資金ニーズにお応えしております。

0120-154-505行 こ う よ! 公 庫

事業資金相談ダイヤル

事業資金に関するお問い合わせ先

日本公庫ホームページ https://www.jfc.go.jp/日本公庫 検索

【受付時間】平日 9:00~19:00(国民生活事業)      平日 9:00~17:00(中小企業事業)※電話番号のお掛け間違いにご注意ください。

<日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金>

ご利用

いただける方

1�.中期的な事業承継を計画し、現経営者が後継者(候補者を含みま

す。)と共に事業承継計画を策定している方(注)

2�.安定的な経営権の確保等により、事業の承継・集約を行う方

3�.「中小企業経営承継円滑化法」第12条第1項第1号イの規定に

基づき認定を受けた中小企業者の代表者、同法第 12 条第 1 項第

2 号の規定に基づき認定を受けた個人である中小企業者または同法

第 12 条第 1 項第 3 号の規定に基づき認定を受けた事業を営んで

いない個人の方

4�.事業承継に際して経営者個人保証の免除等を取引金融機関に申し

入れたことを契機に取引金融機関からの資金調達が困難となってい

る方であって、公庫が融資に際して経営者個人保証を免除する方

5�.事業の承継・集約を契機に、新たに第二創業(経営多角化・事業転換)

または新たな取組を図る方(第二創業後または新たな取組後、おおむ

ね 5 年以内の方を含む)

資金の

お使いみち

「ご利用いただける方」に該当する方が事業の承継・集約に必要な設

備資金および運転資金

融資限度額【中小企業事業の場合】7 億 2,000 万円

【国民生活事業の場合】7,200 万円(うち運転資金 4,800 万円)

ご返済期間

設備資金:20 年以内(うち据置期間2年以内)

運転資金: 7 年以内。ただし、既往の公庫融資の借換を含む場合、8

     年以内(うち据置期間2年以内)

※お使いみち、ご返済期間、担保の有無などによって異なる利率が適用されます。また、お使いみちには一定の要件がございます。

(注)�ご融資後おおむね 9 年以内に事業承継を実施することが見込まれる方をいいます。

Page 47: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved 45

事業承継に関する制度融資4日本政策金融公庫では、法人・個人事業主、親族内・親族外承継を問わず、

事業承継に関する資金ニーズにお応えしております。

0120-154-505行 こ う よ! 公 庫

事業資金相談ダイヤル

事業資金に関するお問い合わせ先

日本公庫ホームページ https://www.jfc.go.jp/日本公庫 検索

【受付時間】平日 9:00~19:00(国民生活事業)      平日 9:00~17:00(中小企業事業)※電話番号のお掛け間違いにご注意ください。

▼ご利用いただける方の例~親族の企業を事業承継~

株式会社A(運送業)の代表者Bは、自己都合により代表から退くこととなった。次の代表には、Bの甥で現在同業種を株式会社Dで経営しているCに決まった。Cは、自分の法人Dで、現在Bの名義となっている事業用資産を取得することとした。

▼ご利用いただける方の例~親族内後継者不在企業からの事業承継~

個人で書店を経営している経営者Aは、親族内の後継者が不在であったため、永年勤めてきた従業員Bに店舗及び在庫等を譲ることとした。公庫は、従業員Bから、事業承継に必要となる店舗等の取得資金にかかる融資相談を受けた。

▼ご利用いただける方の例~自己株式の取得~

株式会社Aの代表者がBで、株式は100%Bの父であるCが所有している。今回代表者変更はないが、Cは高齢のため、将来的な事業承継に向けてBと法人Aが50%ずつ株式を所有することに決まり、A所有分を公庫資金で調達しようと考えた。

▼ご利用いただける方の例~事業用資産の取得~

会社A(自動車整備業)の代表者Bは、高齢となったため、長男Cへ代表権を譲り、引退することとした。当該事業は、現代表者Bが個人で創業したものであり、工場は現代表者Bの名義となっている。現代表者Bには、当該事業の経営にタッチしていない長女Dがおり、相続時における事業継続のリスクを伴う状況にある。そのため、今般の代表者変更に伴い、会社Aが現代表者Bから工場を取得することとした。公庫は、会社Aから事業承継に必要となる工場取得資金にかかる融資相談を受けた。

身近な相談事例

事業の譲渡による事業資産の取得、株式の譲渡等

事業の譲渡による事業資産の取得、株式の譲渡等

(旧代)の株式や事業用資産の相続等が発生

自己株式の取得、

事業用資産の買取

対価の支払い

対価の支払い

対価の支払い

対価の支払い

株式の取得(50%)※残り50%は代表者 個人で取得

借入申込人(既存事業者)

代表者が引退する既存企業

借入申込人(新設事業者・既存事業者)

親族内後継者不在の企業

借入申込人(既存事業者の法人)

借入申込人(会社)

現在の株主

(旧代)の相続人等

(旧代)の死亡または退任等

Page 48: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved46

ご相談は各都道府県の事業承継ネットワーク事務局へ

70歳以上の中小企業経営者の約半分である127万人は後継者が未定です。

そのうちの22.7%は後継者がいるのに事業承継を拒否しているのです。

さらにその59.8%が拒否の理由としているのが事業承継時の経営者保証です。

もし、このまま廃業が急増すると、

2025年までに650万人の雇用と22兆円のGDPが失われる可能性があり、

国内経済にとっても一大事です。

2020年4月1日より、経営者保証解除に向けた、新しい支援制度がスタートしました。

事業承継に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則の適用を開始

経営者保証解除に向けた、経営者保証コーディネーターによる支援制度を開始

一定要件のもと経営者保証を不要とする新たな信用保証制度を創設

01

02

03

このような状況をふまえ

中小企業経営者のみなさん!経営者保証を理由に事業承継で困っていませんか?

全体 : 約381万人(2016年度調査)

2025年の中小企業経営者 後継者未定の理由 なぜ事業承継を拒否しているか

70歳以上約245万人

経営者保証以外の理由で承継を拒否40.2%

後継者未定70歳以上の約半分

127万人

経営者保証を理由に承継を拒否

70歳未満約136万人

後継者候補はいるが承継を拒否

22.7%

後継者候補がいない77.3%

59.8%

経営者保証についての新しい支援制度5

引用:令和元年度補正予算プッシュ型事業承継支援高度化事業全国事務局(野村証券株式会社)作成のパンフレット

プッシュ型事業承継支援高度化事業 事業承継ひろば 検 索QRコード

Page 49: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved 47

ご相談は各都道府県の事業承継ネットワーク事務局へ

70歳以上の中小企業経営者の約半分である127万人は後継者が未定です。

そのうちの22.7%は後継者がいるのに事業承継を拒否しているのです。

さらにその59.8%が拒否の理由としているのが事業承継時の経営者保証です。

もし、このまま廃業が急増すると、

2025年までに650万人の雇用と22兆円のGDPが失われる可能性があり、

国内経済にとっても一大事です。

2020年4月1日より、経営者保証解除に向けた、新しい支援制度がスタートしました。

事業承継に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則の適用を開始

経営者保証解除に向けた、経営者保証コーディネーターによる支援制度を開始

一定要件のもと経営者保証を不要とする新たな信用保証制度を創設

01

02

03

このような状況をふまえ

中小企業経営者のみなさん!経営者保証を理由に事業承継で困っていませんか?

全体 : 約381万人(2016年度調査)

2025年の中小企業経営者 後継者未定の理由 なぜ事業承継を拒否しているか

70歳以上約245万人

経営者保証以外の理由で承継を拒否40.2%

後継者未定70歳以上の約半分

127万人

経営者保証を理由に承継を拒否

70歳未満約136万人

後継者候補はいるが承継を拒否

22.7%

後継者候補がいない77.3%

59.8%

経営者保証についての新しい支援制度5

引用:令和元年度補正予算プッシュ型事業承継支援高度化事業全国事務局(野村証券株式会社)作成のパンフレット

プッシュ型事業承継支援高度化事業 事業承継ひろば 検 索QRコード

事業承継に係るその他の施策6

QRコード

QRコード

 事業再編、事業統合を含む経営者の交代を契機として経営者革新等を行う事業者に対して、その取組に要する経費の一部を補助することにより、中小企業者等の世代交代を通じた我が国経済の活性化を図ることを目的とします。

事業承継補助金

※令和元年度補正の公募は令和2年6月5日(金)に終了しました。

詳細はこちら

https://www.shokei-hojo.jp/

経営資源引継ぎ補助金は、事業再編・事業統合等に伴う中小企業者の経営資源の引継ぎに要する経費の一部を補助する事業を行うことにより、新型コロナウイルス感染症の影響が懸念される中小企業者に対して、①経営資源の引継ぎを促すための支援、②経営資源の引継ぎを実現させるための支援によって、新陳代謝を加速し、我が国経済の活性化を図ることを目的とします。

経営資源引継ぎ補助金

※令和元年度補正の公募は令和2年8月22日(土)に終了予定です。

詳細はこちら

https://k-shigen.go.jp/

QRコード

第三者への事業承継を検討する中小企業と、後継者として入社を検討する外部人材とをマッチングし、入社後の経営者教育をサポートする中小企業庁の事業です。入社した後継候補者が未来の経営者として成長できるよう、経営の専門家であるメンターが企業の人材育成をフォローします。後継者育成を通じて、現在の経営者から未来の後継者へと円滑な事業承継が進むことが本事業の目的となります。

事業承継トライアル実証事業

※(中小企業者の方向け)令和元年度補正の公募は令和2年8月31日(月)に終了予定です。 (後継を検討する方向け)令和元年度補正の公募は令和2年9月11日(金)に終了予定です。

詳細はこちら

https://js-trial .go.jp/

Page 50: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

Copyright ©2020 SMRJ All rights reserved48

事業承継支援に関する相談先7

事業承継支援に関する様々な相談先があります。専門知識が必要となることも多いため、課題に応じて専門家・支援機関を活用することを検討しましょう。

③事業引継ぎ支援センター・第三者承継(M&A)等に関する情報の提供、

 助言等

・引継ぎ先企業の紹介から成約に至るまでの

 バックアップ等

②事業承継ネットワーク事務局・事業承継診断による課題の洗い出しや、承継

 計画策定のための専門家派遣等

・経営者保証に関するガイドラインの充足状況

 の確認等

④よろず支援拠点・売上拡大、経営改善など、経営上のあらゆる

 相談への助言等

⑤弁護士・後継者に経営権を集中しつつ、他の相続人の

 遺留分にも配慮した事業承継対策

・生前贈与や遺言、任意後見制度を活用した相

 続紛争防止

・議決権制限株式や相続人に対する売渡請求

 など、会社法の各種制度の利用等

⑥税理士・現時点で相続が発生した場合の相続税額の

 試算

・納税資金を確保するための自己株式の取得

 (金庫株)

・暦年課税制度や相続時精算課税制度を利用

 した計画的な生前贈与等

⑦公認会計士・M&Aにおける財務デューデリジェンス・既存株主からの株式買取り価格の算定

⑧中小企業診断士・「会社の魅力」の磨き上げのための助言等

・後継者教育に関する助言、経営計画の策定

 支援等

①商工会議所・商工会・事業承継全般に関する助言、専門家の紹介、

 情報の提供

・経営者、後継者育成等に関するセミナーの

 実施等⑨司法書士

⑩行政書士

・役員変更、種類株式、組織再編等の会社法

に関する手続、定款・株主名簿の整備、機

関設計の提案、及びそれらに関連する会社

登記

・事業承継に伴う生前贈与、遺言、信託、相

続手続、及びそれらに関連する不動産登記

・経営者の判断能力の低下に備えた成年後見

制度の提案、戸籍等による相続人調査

・許認可の承継など、事業承継に必要な行政

手続支援等

⑪金融機関等・株式買取りや納税資金調達のための融資

・M&AやMBO、ファンドの活用、遺言信

託に関する助言等

⑫中小企業基盤整備機構・事業承継支援に取り組む支援機関の支援の

仕組み構築のアドバイス

・事業承継フォーラム開催や事例集活用等に

よる制度普及、啓発

・中小企業大学校における後継者教育等の各

種研修プログラムの実施

・中小企業成長支援ファンドを活用した事業

承継支援

Page 51: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

北海道本部

東北本部

関東本部

中部本部

北陸本部

近畿本部

中国本部

四国本部

九州本部

      沖縄事務所

連携推進課

連携支援課

連携推進課

連携推進課

連携推進課

連携推進課

連携支援課

連携支援課

連携推進課

〒060-0002 札幌市中央区北 2条西 1丁目 1-7 ORE 札幌ビル 6階電話:011-210-7473

〒980-0811 仙台市青葉区一番町 4-6-1 仙台第一生命タワービル 6階電話:022-399-9058

〒460-0003 名古屋市中区錦 2-2-13 名古屋センタービル 4階電話:052-201-3009

〒920-0031 金沢市広岡 3-1-1 金沢パークビル 10階電話:076-223-6100

〒541-0052 大阪市中央区安土町 2丁目 3-13 大阪国際ビルディング 27階電話:06-6264-8621

〒730-0013 広島市中区八丁堀 5-7 広島 KSビル 3階電話:082-502-6688

〒760-0019 高松市サンポート 2-1 高松シンボルタワータワー棟 7階電話:087-811-3321

〒812-0038 福岡市博多区祗園町 4-2 サムティ博多祇園BLDG.電話:092-260-1355

〒901-0152 那覇市字小禄 1831-1 沖縄産業支援センター 313-1電話:098-859-7566

〒105-8453 港区虎ノ門 3-5-1 虎ノ門 37森ビル電話:03-6459-0074

冊子の内容に関するお問い合わせ先(中小企業基盤整備機構)

(発行)独立行政法人 中小企業基盤整備機構事業承継・再生支援部 事業承継支援課

〒105-8453 東京都港区虎ノ門 3-5-1虎ノ門 37森ビル電話(03)5470-1576

 当冊子については、(独)中小企業基盤整備機構が著作権を所有しております。当機構からの事前の承諾なしに、目的の如何を問わず、複製、改変、配布等の一切の利用を禁止します。

令和 2年 8 月発行

Page 52: 中小企業経営者 のための 事業承継対策2020 3 経営者の高齢化がより一層進展しています(図表3)。 引退した経営者と事業を承継した後継者との関係も変化しています。かつて

「事業承継」に関するお問い合わせ先