25
2005年度 上智大学経済学部経営学科 網倉ゼミナール卒業論文 『音楽イベントの発展要因』 ~消費者心理とコンテンツマーケティング~ A0242136 清野 晶子 提出日:2006 1 15 1

上智大学経済学部経営学科 網倉ゼミナール卒業論文 『音楽イベ …pweb.sophia.ac.jp/amikura/thesis/2005/seino2005.pdf · プによる参加でアウトドアを楽しめる。

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

2005年度

上智大学経済学部経営学科 網倉ゼミナール卒業論文

『音楽イベントの発展要因』 ~消費者心理とコンテンツマーケティング~

A0242136 清野 晶子 提出日:2006 年 1 月 15 日

1

目次 1、 はじめに ★研究目的と作業仮説

① 本論で扱う「音楽イベント」とは ② 音楽イベントの発祥

③ 日本での音楽イベント発展状況

2、コンテンツ業界の状況とコンテンツ財の消費について ① コンテンツ産業について ② コンテンツ消費とコンテンツのマーケティング

3、消費者調査と分析

① 消費者に対するアンケート

② アンケート結果のまとめと仮説検証 4、主催者調査と分析

消費者に支持されるイベントとは?~㈱ロッキンオン社を例に~ 5、まとめ 6、参考文献、参考 URL

2

1、はじめに

2005 年夏、日本では大規模な音楽イベントのチケットが軒並みソールドアウトした。今

や「フェスティバル→フェス」という呼ばれ方が浸透している音楽イベントは、この数年開催

数を増やし、それに伴い観客を増やし続けている。一言に音楽イベントと言ってもジャンルは

幅広く、ロック、レゲエ、ジャズ、ヒップホップ、テクノ等様々である。代表的な音楽イベン

トの中には、夏に野外または半屋外で2日~3日に跨って行なわれるものや、オールナイト型

で行なわれるものもある。それ故、音楽イベントでの体力消費(野外で丸一日×○日ライブを

観続ける)・金銭消費(チケット・飲食代・交通費等)は少なくない。それにも関わらず、こ

こ数年音楽イベントの発展は顕著なのである。

2000 年初めて野外ロックイベントに行って以来「音楽イベントファン」になった者として、

音楽イベントの発展にはどのような要因が隠れているのか気になり始めた。ここから本研究が

始まった。

★作業仮説

音楽イベントが発展してきた背景として、私が考えた仮説は以下の2点である。

1、消費に伴うリスクと口コミがイベントのリピーター率に繋がる

2、消費者の『感動』がイベントの発展に寄与する

★論文の流れ

・導入・・音楽イベントのルーツと日本での音楽イベントの誕生、代表的なイベントの概要及

び発展状況を表す。

・コンテンツ業界とコンテンツ消費について・・音楽イベントが属している産業について業界

の市場規模や消費行動にどのような特徴があ

るのかを知り、イベントの成功要因を探る手

立てとする。

・消費者研究・・本論で定義している「音楽イベント」への参加経験を有する消費者(34 名)

に対して実施したアンケート調査結果の検証をし、イベントに参加した経験

のある消費者の行動心理を読み解く。同時にアンケート結果から「支持され

るイベント主催者」及び「消費者誘致要因」を探る。

・ケーススタディ・・支持されるイベントの主催者1社(ロッキンオン社)の成功を例にとり

同社の成功要因を考える。

・まとめ・・研究の感想と考察を行なう。

3

① 本論で扱う「音楽イベント」とは?

本論で扱う「音楽イベント」を以下の通り定義しておく。

1、音楽パフォーマンスを主体としている。

2、日本国内で開催されている(されていた)。

3、複数アーティストの出演がある。

*尚、本論では主に「音楽イベント」の中でも代表的なジャンルであり自己の経験も反映させ

られるという理由で、音楽イベントの中でも「ロックイベント」を中心に研究を進めていく。

②音楽イベントの発祥

*原点はウッドストックとグラストンベリー

ウッドストック・・・現在、世界はもちろん日本でも数多くの音楽イベントが開催されてい

るが、その原点は 1969 年 8 月 15 日から 17 日、ニューヨーク州ウッドストック郊外のヤスガ

ー農場で行なわれた「ウッドストック・ミュージック&アートフェア」であると言われている。

当時泥沼化していたベトナム戦争と、台頭するカウンターカルチャーという時代性を背景に、

「ラブ&ピース」をコンセプトにしたこのイベントに集まった若者は 40 万人にのぼった。ジ

ミ・ヘンドリクス、ジャニス・ジョップリン、グレイトフルデッド、ジョーン・バエズ、サン

タナ等、今も世界中で愛されるそうそうたるアーティストのパフォーマンスに観衆は酔いしれ

た。主催者側が当初予想した観客数(10 万人)を遙かに上回る観衆(40 万人)に、食料、ト

イレ、駐車場は不足した。更に 2 度の嵐で会場内は泥沼と化した。そんな状況の中だからこそ

生まれたオーディエンスの一体感、ピースな空気感は今も音楽イベントの原点として語り継が

れている。(Colemanホームページ内:野外フェスティバルの基礎知識より引用)

グラストンベリー・・1970 年には、昨年 34 回目の開催を迎え、規模・評判・出演者のライ

ンナップなど全ての面で「世界最高の音楽フェス」と今尚称されるイギリスのグラストンベリ

ー・フェスティバルが始まる。もともとアーサー王伝説が色濃く残る地域であり、スピリチュ

アルな空間としても知られるグラストンベリー。普段は農園及び牧草地として使われている約

900 エーカーもの土地は、この巨大フェスの主催者であるマイケル・イーヴィス氏の私有地で

ある。ここが、毎年6月最後の週末には約 20 万人もの人が集まる巨大な共有空間へと変貌す

る。人々はテント生活でアウトドア体験をし、会場内には自然食やエスニック・フードからア

ルコールなどの食料品、マッサージなどのサービスや自然素材の商品などが並ぶショップまで、

様々な露店が軒を連ねる。ステージも、いわゆる“音楽(ロック)”だけを楽しむ大小のステー

ジだけではない。サーカスからキャバレー、演劇場や映画上映、ジャズやダンス、アコーステ

ィックからキッズ・コーナーに至るまで、様々なタイプがある。そういったスペースでは多彩

4

(BARKS ホームページ内:Glastonbury Festival より引用)

③日本での音楽イベント発展状況と代表的イベントの特徴

*先駆者はフジロック

こうした音楽イベントのルーツを受けて日本では 1997 年、国内音楽フェスの先駆者「フジロ

ックフェスティバル」が始まった。昨年で9回目を迎えた同イベントは、上記で紹介したイギリ

スのグラストンベリー・フェスティバルをモデルにしている。毎年、新潟の山間の地で3日間行

なわれ、今や「日本ロックフェス」の父との呼び声が高い。自然の中で自由に音楽を楽しむ観客

参加型の野外フェスとして今日の野外フェスの雛形となり、日本の野外フェスの歴史をつくって

きたと言える。参加者は日本全国から(中には海外から)新潟・苗場の広大な自然に集い、テン

ト泊、民宿、野宿をしながら、音楽と自然を満喫する。「森口(2005)」

その後、1999 年には北海道で開催されるオールナイト型イベント「RISINGSUN ROCK

FESTIVAL」、2000 年には東京・大阪という都市型イベント「SUMMER SONIC」と邦楽ア

ーティストを中心に据えたイベント「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」が相次いで開催をス

タートさせている。それぞれに個性的なイベント構成となっており、客層も幅広い。以上4つの

イベントは『4大夏フェス』として、2000 年以降 Web ページや雑誌、レコードショップ等で取

り上げられている。上記で紹介してきた『4大夏フェス』の総動員数推移(2000~2003 年)を

示しておく。(図―1参照)

(図-1)4大夏フェスの動員数(2000~2003)

61000

7900090000

100000

1300024000

6900065000

75000

100000

136000 137000

60490

87035

114316116798

0

20000

40000

60000

80000

100000

120000

140000

フジロック ライジングサン サマーソニック ロックインジャパン

2000

2001

2002

2003

注)各イベントは2日間ないしは3日間で開催しているので、グラフ中の数値は総動員数である。尚、サマーソニック

は大阪・東京の2箇所×2日間の総動員数である。

5

このような大型音楽イベントを中心に夏(7~9月)をピークとして1年中、全国各所で音楽

イベントが開催されるようになった。代表的な大規模な音楽イベントの概要を表でまとめたので

参照して頂きたい。(図―2)

(図―2)日本国内の代表的な音楽イベント一覧

イベント名 開催時期 開催場所・チケット料金(1日当り)

「WIRE」 7 月中旬 横浜アリーナ・\10500(オールナイト)

石野卓球が主催するテクノイベント。2夜連続のオールナイト型。

「ロックオデッセイ」 7 月下旬 横浜/大阪ドーム・\14000

UDO 主催の洋・邦ロックイベント。2004 年に開催され、出演アーティストの豪華さが話題にな

った。しかし 2005 年は開催していない。

「FUJI ROCK FESTIVAL」 7 月下旬 新潟県苗場スキー場・\16000

SMASH 主催。日本の音楽イベントの元祖であり、最も規模が大きいと思われる。自然の中で行

うアウトドアなスタイルであり、出演は洋・邦アーティスト混合のオールジャンルイベント。

「SUMMER SONIC」 8 月上旬 幕張/大阪・\13000

クリエイティブマン主催で 2000 年から開催。洋・邦アーティスト混合で、大物アーティストの

出演が特徴的である。東京・大阪同時開催の都市型イベント。

「Rock in Japan festival」 8 月上旬 茨城県ひたちなか市国営ひたち海浜公園・\10000

ロッキンオン社主催で 2000 年から開催。邦楽アーティストメインのラインナップで構成されて

おり、都心からもアクセスしやすい。チケットの瞬時売切れが続いている。

「RISINGSUN Rock Festival」 8 月中旬 北海道石狩湾新港・\9000

Wess 主催で 1999 年から開催。邦楽アーティストがメインで、オールナイトの日もある。キャ

ンプ参加ありという点からアウトドアなイベントでもある。

「朝霧JAM」 9 月下旬 静岡県富士宮市朝霧アリーナ・\9980

SMASH 主催で 2003 年から開催。季節柄、のんびり楽しめるという評判が高いイベント。キャン

プによる参加でアウトドアを楽しめる。

「Electraglide」 11 月下旬 幕張/大阪ホール・\9000

BEATINK 及び SMASH 企画・ラジオ主催で 2000 年から開催。冬を代表するオールナイトイベント

で、クラブ系ミュージックをメインにしている。毎年、海外の大物アーティストが参加。

「COUNTDOWN JAPAN」 12 月下旬 幕張メッセ・\8000

ロッキンオン社主催で 2003 年から開催。ROCK IN JAPAN FESTIVAL の年末バージョンといった

感じで、年末から年を越えて3日間行なわれる。日本のアーティストがメインのラインナップ。

「SONIC MANIA」 2 月上旬 東京/大阪・\10000

クリエイティブマン主催で 2004 年から開催。SUMMER SONIC の冬バージョンといった感じで、

東京・大阪同時開催という点も同じである。

「MAGIC ROCK OUT」 3 月中旬 東京/大阪・\10000

SMASH 主催で 2003 年から開催の屋内型。冬の「ロック」イベントでオールナイト開催される。

(各イベントホームページより引用)

6

他にも、中小規模のイベントを含めるとあらゆるジャンルの音楽イベントが1年中行なわれ

ている。1997 年にフジロックフェスティバルが産声を上げてから 10 年たった現在、日本は全

国的に音楽イベントラッシュの状況にある。以下(図―3)は夏に行なわれるイベントを日本

地図でまとめたものである。これでもまだほんの一部なのである。

(図-3)全国における夏開催の音楽イベント

(「goo 音楽:夏フェス全国マップ」2005 より引用)

7

2、コンテンツ業界の状況とコンテンツ財の消費について 本論で扱う音楽イベントとは、どんな業界に分類されるのだろうか。そこで、まずは各機関

でのエンタテイメントビジネスの分類を示し、本論で扱う音楽イベントが含まれる部分を太線で

示しておく。

*経済産業省による「コンテンツ産業」

①放送 ②新聞 ③出版 ④音楽 ⑤映画 ⑥ゲーム

*日経産業新聞による「エンタテインメント・ビジネス」

①映画 ②アニメ ③映像ソフト ④NHK と民法テレビ ⑤ゲーム ⑥アーケードゲーム

⑦音楽ソフト ⑧カラオケ ⑨ キャラクター商品 ⑩遊園地・レジャーランド

⑪チケット販売 ⑫出版

*『デジタルコンテンツ白書』(デジタルコンテンツ協会)による「コンテンツ」

①出来事(ニュース・ジャーナリズム)

②イベント・興行・パフォーマンス(スポーツ・音楽・演劇)

③創作(小説・音楽・映画・ゲーム)

④企業向けのビジネス情報

⑤その他(ハウツー・学術情報)

以上のように「コンテンツ(エンタテイメントビジネス)」と言っても、立場や視点によっ

て対象範囲は微妙に異なってくるが、音楽やそれに伴う収益(音楽イベントもここに含まれる)

はコンテンツ業界に分類して差し支えないだろう。

①コンテンツ産業について

コンテンツ産業の市場規模は11兆円に達している。20兆円を超える外食産業や自動車産

業には及ばないものの、百貨店業界(8.1兆円)やコンビニ業界(7.1兆円)、広告業界

(5.7兆円)を上回る市場規模がある。「山川(2004)」

またコンテンツ産業には、金額には収まりきらない経済効果が期待できる。アニメキャラク

ターグッズの販売や、シネコン(シネマコンプレックス)で映画を観たついでにショッピング

をするといった二次市場・三次市場の可能性があるのだ。音楽イベントで言えばオフィシャル

グッズの販売や、飲食ブースでの売り上げ、イベントに参加する為の宿泊等がこの例として挙

げられる。また経済的な意味での二次的増殖だけでなく、コンテンツは様々な形の文化的増殖

8

をもたらすという特徴がある。例えば、テレビドラマから流行語が生まれたり映画や小説の主

人公の行き方を真似る人々が出てきたり、コンテンツ作品のファンが集まったサイトの作成等

がこれに当たる。音楽イベントにおいても、このような効果が生まれている。今回、消費者調

査を実施した際に体感できたことなのだが、検索エンジンや SNS 内で調べてみると実に多くの

「イベントファンコミュニティ」があった。主催者主導のものもあれば、SNS 内のようにあく

まで個人同士が繋がって形成しているものまで形態は様々であったが、確かに音楽イベントが

文化的増殖を生み出していると私は考える。

ではコンテンツとは実際どのようなモノを言い、どのように消費され、どんなマーケティン

グが適しているのだろうか?

② コンテンツ消費とコンテンツのマーケティング

コンテンツ財は基本的に無形財である。そして、コンテンツとは「感動」や「安定」といっ

た心理的なベネフィットを目的に消費される「新井(2004)」。音楽イベント・コンサートを聴

いて高揚する、感動する映画を観て泣く、本を読んで没頭する、といったことである。

つまり、情動(emotion)をコントロールしたり、心になんらかの刺激を与えたりするため

の道具としてコンテンツは消費されるという事だ。こういった面で、恐らく他のどの商品分野

(例えば食事や電化製品)に比べても、消費者の関与性(こだわり)の強い商品であると言え

よう。

そして、だからこそコンテンツのマーケティングは難しいと考えられる。音楽イベントの例

で言えば、同じイベントで同じアーティストの演奏を観た人が同じように感動するとは限らな

いということである。例えば自動車にガソリンを入れれば○kmは走行できる、ジュースを飲

めば往々にして喉の渇きが潤う、というわけにはいかないのが、コンテンツの難しさなのだ。

ガソリンと走行量というような客観的な尺度を持たないコンテンツ財は主観的な尺度、すな

わち個人の嗜好や感覚によって評価は大きく変わる。コンテンツの内容だけでなく、「どこで、

どのように、誰と」コンテンツを体験したか、といった状況によっても評価は変わってくる。

後に出てくるアンケートでも、イベントそのものにプラスαとして「あの瞬間に雨が降ったハ

プニングがあって一層思い出深い空間になった」という様な感想も見受けられる。

また、コンテンツは「時間消費財」である「福田(2004)」。本論で扱う音楽イベントで言う

ならば、丸1日~3日を裂いて音楽を体感することが消費である。加えて、前述のように個人

的な尺度で評価は分かれるものであることを考えると、同じ丸1日でも人により時間の感じ方

も違うことになる。つまり心理的時間も異なることになる。例えば、音楽イベントが初めての

Aさんにとってはある1日のイベントは好きなアーティストが20組中10組と目白押しで、

しかも初めて体験するイベントに気分は高揚しており「あっという間に5時間が過ぎていた」

9

と感じる。しかしイベント常連のBさんはAさんと同じ1日であっても、お目当てのアーティ

ストは20組中5組で、イベントの空気にも慣れており余裕をもって行動しているので「まだ

5時間しかたってないのか。長く感じた。」と思うだろう。このように、提供するコンテンツ

は同じでも受ける消費者と状況によって心理的時間は異なるのである。

述べてきたようにコンテンツ財は「無形」であり「評価尺度は個人に依存」しており「時間

消費」を伴うものである。「無形」であるが故に、私達消費者は外側の情報からだけではコン

テンツの良し悪しを判断することができない。そこで、専門家による評価や知人の紹介、広告

当を参考にすることが多い。しかし、「評価尺度は個人に依存」しており、コンテンツ消費に

は時消消費を伴う。加えてコンテンツ消費はほとんどが前払いであり、もし一日当り¥100

00のチケット代をはたいて参加した音楽イベントが満足のいくものでなかったとしても、そ

れによる払い戻しは一切認められない。

非常に不確実性が高くリスクの高い消費なのである。山川(2004)によれば、消費者として

は「サービスを受ける前に、その便益がよく理解できない」状態で、消費行動を行なわなけれ

ばならない。これを「知覚リスクが高い」消費と言う。よって、品質の理解を助ける為のコミ

ュニケーションがコンテンツのマーケティングでは重要になってくる。例えばネーミングのイ

ンパクトや、体験機会の提供、そして便益を既に受けた人からの口コミが有効な手段になって

くると山川は述べている。

この理論が音楽イベントの発展要因にも応用できると私は考える。つまり、知覚リスクを冒

して自分が消費したコンテンツ(音楽イベント)が一回経験して満足のいくものだと「はまる」

傾向になり、人にも薦めたくなる(口コミ)事である。そして、知覚リスクの高い消費だから

こそ情報源となる「口コミ」への信頼度は高い。口コミでイベントに行った人が、また自分の

友人に口コミで薦め・・と言った好循環がイベント発展の背景にあることがマーケティング理

論から想像できる。

→仮説1、消費に伴うリスクと情報源がイベントのリピーター率に繋がる

10

3、消費者調査と分析

①消費者に対するアンケート

・調査対象:音楽イベントに1度以上行ったことのある 20~30 歳の男女

・サンプル数:34名(男性/22名、女性/12名)

・サンプルの集め方:①直接の友人(10 名)

②友人からの間接的な紹介者(14名)

③SNS(MIXI、GREE)内で各イベントコミュニティに協力要請(9 名)

④ブログにアンケートを掲載して協力を要請(1名)

・質問内容→以下に調査票を掲載(全3枚)

★卒業論文用 調査票★

以下のアンケートにご協力お願い致します。

尚、この調査は卒業論文研究の為に行なうものであり個人情報の漏洩、転用等は一切あり

ません。

注:以下のアンケートにある「音楽イベント」は「日本国内で行なわれており、複数アー

ティストの音楽パフォーマンスのあるもの」とさせて頂きます。

(設問-1) 今までに何回、日本国内音楽イベントに行ったことがありますか?

( )回

(設問-2) 行ったことのあるイベント名を年度順にお答えの上、そのイベントを知った経緯を教

えてください。友人、知人の影響で知った方はその旨ご記入下さい。

例)2000年、フジロック(雑誌「○○」で知った)

(設問-3) 今まで行かれたイベントに参加しようと思った要因をお答え下さい。

複数回、同主催者によるイベントに参加されている場合はそのイベントが好きな理由をお答え下

さい。

11

(設問-4) 今までに音楽イベントに友人を誘ったことはありますか?

はい

いいえ

(設問-5) 丸1日の音楽イベントに、幾らなら投資してもいいと思われますか?

チケット:( )円

(設問-6) イベントに行こうと決定する要因を、重要度の高いものから順に3つお答え下さい。

(設問-7)イベント出演アーティストの内、お目当てのアーティストが何割程度いたらそのイベン

トに行ってもいいと思えますか?

(設問-8)単独ライブと音楽イベントではどちらに魅力を感じますか?理由もお願いします。

単独ライブ

イベント

理由:

(設問-9) あなたが参加したことのあるイベント主催者サイドに期待すること、求める事、改善

点をご記入下さい。

(設問-10) あなたにとって、音楽イベントとはどのようなものですか?何を求めますか?ご自

由にお書き下さい。

最後に年齢、性別をお聞かせ下さい。

・年齢:( )歳 ・性別:男・女

☆ご協力有難うございました。

上智大学経済学部経営学科

網倉久永ゼミ 4年 清野 晶子

連絡先:[email protected]

12

②アンケート結果のまとめと仮説検証

(設問1~3)より

(図―4)今までに行ったイベント数

1回 3 人 7回 4 人

2回 8 人 8回 1 人

3回 3 人 9回 1 人

4回 6 人 10回 2 人

5回 2 人 11回 1 人

6回 3 人

★以上のデータから、34名の総イベント参加数=149回・34名の平均参加回数=4.38回

(図-5①)行った事のあるイベント(表)

★SMASH 主催 24 回 ★UDO 音楽事務所主催

フジロック 12 回 ロックオデッセイ 2 回

エレクトラグライド 7 回 ★GREENS 主催

マジックロックアウト 2 回 ラッシュボール 2 回

朝霧ジャム 3 回

★スペースシャワーTV 主催

★クリエイティブマン主催 24 回 SWEET LOVE SHOWER 2 回

サマーソニック 22 回

ソニックマニア 2 回 ★アーティスト主催 7 回

WIRE(石野卓球) 3 回

★ロッキンオン社主催 59 回 AIR JAM(ハイスタンダード) 2 回

ロックインジャパンフェスティバル 30 回 横浜レゲエ祭(MIGHTY CROWN) 2 回

カウントダウンジャパン 27 回

ライブジャパン 2 回 ★イベント事務局設置型

メタモルフォーゼ 3 回

★Wess 主催 5 回

ライジングサンロックフェスティバル 5 回 その他・不明 21 回

(注:「その他」に含まれるのは、1回しか回答の無かったもの及び不明のものである。)

13

(図-5②)参加イベント主催者別グラフ

主催者別(%)

16%

16%

41%

3%

1%

1%

1%

5%

2%

14%

SMASH

クリエイティブマン

ロッキンオン社

wess

UDO音楽事務所

GREENS

スペースシャワー

アーティスト

イベント事務局

不明

以上の表とグラフからは、顧客に支持されているイベント及びイベント主催者がわかる。又、ア

ンケート結果によるリピーター率の高い主催者もここに明記しておく。

1位→ロッキンオン社

2位→SMASH

3位→クリエイティブマン

4位→Wess

5位→アーティスト主催(エレクトラグライド)

(設問-3)より 上位5社の各イベントが好きな理由(多かった意見)

*ロッキンオン社

・雰囲気が良い(来ている客のマナー、主催者の呼びかけ等)

・好きなジャンルのアーティストが出演する

・設備が良い(トイレ、飲食、休憩スペースの充実)

・友人と一緒に楽しめる

・コストパフォーマンスが良い(お得感がある)

*SMASH

・野外の開放感がある

・アーティストが豪華

・雰囲気が良い(さすがの貫禄がある)

14

*クリエイティブマン

・体力的に楽(半屋内なので)

・目玉アーティストがいる

・東京から近い

*Wess

・大自然が楽しめる

・オールナイトの醍醐味がある

・野外らしくて好き

*エレクトラグライド

・他にこういうジャンルのイベントが少ない

・冬でも屋内なので思いっきり楽しめる

(設問 3~4)より

「1、消費に伴うリスクと口コミがイベントのリピーター率に繋がる」検証

(設問 3)において、最初に行ったイベントを知った経緯を「友人の紹介」として挙げている人は、

34名中18名であった。

〔考察〕約53%の人が「友人からの口コミ」でイベントに行き始めている。

そして前述の(図―4)からわかる通り、1回イベントに行った人はその後も継続してイベン

トに行っている事になる。この背景には、知覚リスクを冒してイベントに参加した消費者を満

足させている主催者の努力が勿論ある。その満足度が予想以上に消費者の反響を呼び、口コミ

でイベントが広まってきたのであろう。

尚、イベントを知った経緯でその他挙がっていたのは、イベントのホームページや雑誌(ロ

ッキンオン社)、フリーペーパー等であった。

(設問4)において、今まで友人にイベントを紹介している人は34名中29名に上った。

2章の文献調査とアンケート結果から、やはり人は自分のリスクを冒してはまったイベントに

は人を誘い口コミ効果を生み出す傾向にあることがわかる。

15

(設問5~8、10)

2、「消費者の『感動』がイベントの発展に寄与する」の検証

*(設問5~8)は、消費者のイベント参加誘致要因(=『感動』?)を探る目的で作成した。

(設問-5)の結果

→34名の平均値は、丸一日の音楽イベントに投資しても良いと思える額=12897円

〔考察〕各イベントの値段を考えると、予想以上に割高な結果となった。下限は6000円、上

限は30000円であったが全体的に「納得のいくアーティスト」で「満足感」が得られるなら

お金は出そうという姿勢の参加者が多かった。

(設問-6) イベントに行こうと決定する要因を重要度別にランキングにしてみた。

つまり、重要度が高い要因として①番目にあげられているもの、②番目にあげられているもの、

③番目にあげられているもの各々の中で更にベスト3を抽出してある。

①1、出演アーティスト・・23票

2、イベントの雰囲気・・4票

3、場所・日程・・2票

②1、場所・日程・・16 票

2、アーティスト・・8票

3、イベントの雰囲気・・6票

③1、値段・・14票

2、場所・日程・・11票

3、雰囲気・・6票

〔考察〕以上の結果からは音楽イベントに「金銭的」なベネフィットよりも「心理的」なベネフ

ィットを求めている消費者の姿が浮き彫りになっている。逆に言えば、イベントの雰囲気やアー

ティストに満足し、都合が会えば値段はそこまで重要な要因ではない、ということになる。

16

(設問-7)では、大半の回答者がお目当てのアーティストが2~5割ならばイベントに行っても良

いと答えていた。質問を作成していた際には、5割以上と答える人が多いかと予想していたので

驚いた。

〔考察〕お目当てがそこまで多くなくても、一日1万円強で多数のアーティストを観られる事に

魅力を感じている消費者が多いようである。

(設問-8)単独ライブかイベントかの結果と、それぞれの理由を明記する。

単独ライブ→10票

イベント→21票

どちらとは言えない→3票

〔理由と考察〕単独ライブ派で多かった意見は、好きなアーティストの演奏はじっくり聴きたい、

イベントでは演奏時間が短い等であった。

イベント派で圧倒的に多かった意見は、新たなアーティストが発掘できる点とお得感であった。

多くの人がイベント特有のお得感、雰囲気(一体感・感動を共有できる点)に魅力を感じている

ようだ。

2章の文献調査と(設問 5~8、10)のアンケート結果からイベントの発展要因として消費者の

『感動』(心理的ベネフィット)は大きく影響していることが検証できた。では、最後に(設問-10)

の結果を参照して消費者の『感動』の中身を探ってみよう。

(設問-10)参加者にとってイベントの『感動』とは?何を求めてイベントに行くのか?

意見の多かった順に表にまとめて記述しておく。

消費者の求める『感動』

1、最高のお祭り

2、非日常、躍動感

3、新発見、音楽の幅が広がる等

4、他者との一体感、感動の共有

5、改めて音楽の魅力に気付く

6、自由

7、力をもらえる

8、アツくなれる

(設問 9)の結果については、まとめの章で今後の展望として参照したい。

17

4、主催者調査と分析 消費者に支持されるイベントとは?~株ロッキンオン社を例に~ 動員数推移や、34名へのアンケート結果からは㈱ロッキンオン社が音楽イベント主催者とし

て絶大な支持を集め、支持されている事実がわかった。同社は 2000 年に ROCK IN JAPAN

FESTIVAL を開催し始め、その後 2003 年には冬の音楽イベントとして年越しで行なわれる

COUNTDOWN JAPAN をスタートさせた。年々、動員数を増加させリピーターを惹きつけ続

けた結果、2005 年ついに夏・冬の2イベント共にチケットが瞬時にソールドアウトした。「今、

最もチケットが手に入りにくい音楽イベント」の主催者、それが㈱ロッキンオン社なのである。

*ロッキンオン社の概要と沿革(同社ホームページより)

社名 株式会社ロッキング・オン

社長 渋谷陽一

設立 1982年12月22日

資本金 3000万円

決算期 3月

事業内容 音楽、その他の文化全般にわたる批評、紹介を行う出版物の製作・販売

コンサート、講演会等の催物の興行

レコード、磁気テープ、映画、ビデオテープの企画、製作及び販売

上記に付帯する一切の業務

従業員数 52名(2005年4月現在)

所在地 〒150-8569

東京都渋谷区桜丘町20-1渋谷インフォスタワー19F

電話 03-5458-3031(代表)

沿革 1972年 8月 渋谷陽一の個人事業として洋楽ロック批評・投稿誌

「ロッキング・オン」創刊

1977年 9月 「ロッキング・オン」月刊化

1982年12月 株式会社に改組 資本金1000万円

1985年10月 邦楽ロック批評誌「ロッキング・オン・ジャパン」創刊

1989年12月 映画批評・インタビュー誌「カット」創刊

1994年 1月 “季刊渋谷陽一”として「ブリッジ」創刊

1994年 4月 サブカルチャー誌「エイチ」創刊

1996年10月 資本金3000万円に増資

1997年 2月 洋楽・邦楽ロック批評誌「バズ」創刊

1997年 5月 現住所に移転

18

1999年10月 総合誌「サイト」創刊

2000年 3月 決算期10月より3月に変更

2000年 8月 国営ひたち海浜公園にて、大型野外ロック・イベント

「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」開催。

以後、真夏の恒例イベントとして定着

2000年 9月 「コミック・エイチ」創刊でマンガ界に進出

2002年 2月 ライヴ・イベント「ジャパン・サーキット」始動

2003年12月 幕張メッセにて年末屋内ロック・イベント

「カウントダウン・ジャパン03/04」開催

2004年12月 「カウントダウン・ジャパン04/05」開催

決して大きな企業ではない。では、どうしてロッキンオン社はここまでファンを取り込んで

こられたのだろうか?私自身も、同社の雑誌を愛読し同社の主催するイベントに何度も行った一

消費者である。そこで、私が考えるロッキンオン社のイベント主催者としての成功要因をマーケ

ティング理論と照らし合わせてみようと思う。

成功要因Ⅰ、消費者を「主役」にするメッセージ

ロッキンオン社のホームページや ROCK IN JAPAN FESTIVAL、COUNTDOWN JAPAN の

ホームページを他のイベントホームページと比較してみると、メッセージのボリュームに驚かさ

れる。それは、開催の挨拶であったりチケット優先予約の知らせであったり、アーティストの発

表であったりと様々なのだが、他の主催者ならば情報発信だけに留まるスペースを、ロッキンオ

ン社は拡大して「主催者のあつい思い」をメッセージにして伝えてくる。元々、出版社であるか

らこそ出来る事なのであろう。そして、このメッセージがイベント当日の『感動』を倍増させる

働きをしていると思うのだ。例を示そう。以下は 2005 年夏のイベント後にホームページにアッ

プされた文章である。

(ROCK IN JAPAN FESTIVAL05 ホームページより引用)

1 日 45,300 人、×3 日で 135,900 人の参加者。GRASS・LAKE・SOUND OF FORESTで 1 日 22 組、DJ

ブースまで合わせると、全部で 97 組の出演アーティスト。初日=晴れ、2 日目=晴れ、3 日目=晴れの

ち曇り、雨は 3 日間通してなし。3 日間最高気温 32℃、最低気温 25℃――以上のようなデータを残して、

ロック・イン・ジャパン・フェスティバル 2005、全行程終了いたしました。(以下しばらく文章が続く)

例えば、モッシュ・ダイブを極力減らすのが可能であることは、昨年や冬のCOUNTDOWN JAPANで

の経験で、我々には実感できていました。ただ「ダメ」と言うだけではなく、何故ダメなのか、何のための

禁止なのか、何故我々はそういう結論に至ったのかをちゃんと説明すれば、たとえ本当はダイブしたい

人でもわかってくれる、という経験がありました。しかし、そのような過去の経験や実績がない、一体ど

うなるかフタを開けてみるまでわからないことが最も多かった年、それが今年だったのです。なのに、そ

れが嘘のようにフェスは進んでいきました。昨年よりも人が増えているのに、昨年よりも過ごしやすく、

窮屈じゃない 3 日間でした。我々がエリアを広げる等の工夫をしたせいもありますが、それ以上に、み

なさんがこの会場を上手く使ってくれたからです。過去最も数多くのすばらしいアーティストが集まり、す

ばらしいライヴ・パフォーマンスをやってくれたこと。それもとてもうれしいことでしたが、それ以上に、自

分達がフェスの主役でありフェスの成否を決めるのだということを身体でわかっている参加者が集まっ

て、フェスを成功に導いたこと。それが、今年我々主催者が最もうれしかったことでした。ありがとうござ

19

初日の午前中にクロークが完売してしまったことは、完全に予想外の事態でした。売り切れなかった昨

年よりも数を増やし、「これなら大丈夫」と予測した数を、はるかに上回る利用率だったのです。2 日目

からはさらに大幅に数を増やして対応しましたが、こうした「やってみないとわからなかった」事例が、他

にも色々あります。来年までには改善します、ではなく、4 ヵ月後に形にしたいと思います。1 年も待って

いられません。

我々のフェス運営の面でも、改善の余地があるポイントは、既にいくつも挙がっています。例えば、

・31 日、COUNTDOWN JAPAN 05/06 で、みなさんに会えるのを楽しみにしています。 次は 12 月 29・30

その時までお元気で。

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2005 事務局 兵庫慎司

このような形で、イベントの開催から閉幕に至るまで節目ごとにメッセージがアップされるの

だ。特にポイントとなるのは下線であると思う。イベントの主役は「消費者」であることをしつ

こういったメッセージの配信が、山川( )が述べている「アクティブオーディエンス」

を惹き付

ベントで言えばアーティストや主催者)が主役のように思いがちだが、今日の消費者は「共感」

こいくらいに訴え、文末は同社のイベントでの再会を匂わせる。

2005

ける戦略に有効に働いていると考えられる。コンテンツの消費と言うと送り手(音楽イ

や「自発的な参画」「自身の情報発信」を最大の贅沢と考えるようになっていると言う。そうい

った消費者は文中の「自分達がフェスの主役でありフェスの成否を決めるのだということを身体でわか

っている参加者が集まって、フェスを成功に導いたこと。それが、今年我々主催者が最もうれしかったこ

とでした。ありがとうございました。」と言う一言に『感動』し、「コアなファン」となり自分が情報

発信をする送り手となってイベントに人を誘うのである。

消費者への配慮として、イベントの掲示板運営も挙げられる。ホームページから MESSAGE

BORAD というアイコンをクリックするだけで、掲示板に飛ぶ事が出来る。ここには、イベント参

セージが分刻みで残されている。ここにも、アクティブオーディエンスの姿が見られる。このよ

成 要因Ⅱ、夏・冬連動のアピールで会場にいる客を確保

ましょう!」と掲げ夏には冬

の、冬には

加者達の要望・感想に留まらず、イベントでの会場マナー向上や環境への配慮まであらゆるメッ

うにアクティブオーディエンスを主役にし、声を反映させる場所を用意する事で、消費者の満足

度を上げているのだ。

夏の会場では「冬に会いましょう!」、冬の会場では「夏に会い

夏のチケットを先行販売しているのもロッキンオン社イベントの大きな特徴である。

写真を掲載して話を進めよう。次ページの2枚はどちらもロッキンオン社のアピールである。イ

ベントのアピールと会社のアピールをうまくミックスさせている。

20

①冬の会場であった今年夏の宣伝となるオブジェ

このように昨年末のイベント会場ではもう夏のアピールが行なわ

れる。同時に夏の先行予約も

②イベントの主催社が自分達であることと同時に刊行誌の宣伝も兼ねたポスター

以上の2枚は実際に、昨年冬のイベントで撮影してき 分なア

功要因Ⅲ、自社刊行誌との連動マーケティング

の雑誌にはイベント前になると音楽誌に限ら

始まり、ここで申し込むと特典 T シャツが付いてくると言う。

たものである。企業・イベントの十

ピールと、特典のある申し込みシステム、他イベントに比べ比較的低価格な料金設定も相まって

チケットは売れ続けている。

私も何度も利用しているが、ロッキンオン社発行

全雑誌で、イベントの宣伝ページと振込用紙が見受けられる。これを使って振り込みと申し込

みを行なえば、一般発売では瞬時になくなってしまうチケットを確実に入手することが可能であ

る。加えて、時期が早ければ割引も行なわれている。これは消費者にとっても、有難い話なのだ

がロッキンオン社にとっても戦略的に成功しているのだ。普段ロッキンオン社発刊の本を読んで

いる人は、音楽誌の読者でなくても必ずイベントの存在を知ることになるのである。しかも、同

21

社の発刊誌はどれもいわゆる「サブカルチャーコンテンツ」を扱ったものである。普通の週刊誌

やファッション誌を購読している消費者よりも、より音楽イベントに来そうな層が同社発刊誌を

購読しているのである。

こういった自社発刊誌で、ターゲットに対するイベントの宣伝とイベント顧客の拡大、チケット

以上のように支持されている主催者を観てみると「イベントに良いアーティストを呼ぶ」とい

はやそれがイベン

消費者としてイベントを楽しんでいき

、まとめ・感想

販売の全てを行なうことが可能なのだ。出版社が主催しているからこその強みと言えよう。

う一義だけでなく、実に様々なマーケティングの可能性を発見し実践していることがわかる。

なにげなく手に取った雑誌の中、何気なく目にしたポスター、何気なくホームページ内に書か

れたメッセージ etc.・・全てがミックスして客を呼んで離さないのである。

一度「チケットがなかなか手に入らないイベント」の地位を確立したら、も

トのブランドとなって益々客を呼ぶことになるだろう。

今後もロッキンオン社の弛まぬ戦略に注目しながら、1

たい。

22

実体験と体感的なものでしかなかった音楽イベントの発展要因について調べてみて、奥深い

仮 く信憑性に欠けるかもしれないが、傾向

らも消費者調査からも、音楽イベントは益々発展していくと予想される。

-9)イベント主催者に期待すること、求めること、改善点で多かった意見

業界構造とマーケティング戦略が潜んでいる事実が見えてきた。又、自分と同じようにイベント

を楽しんできた消費者のあらゆる声を聴く事ができ参考になった。34名の消費者がイベントに

求めるものは「一義的な音楽」だけでなく、空間や雰囲気といった「多義的な感動」であること

がわかった。仮説も文献、ホームページ調査と消費者への調査で大分検証できたように思う。

1、消費に伴うリスクと口コミがイベントのリピーター率に繋がる

2、消費者の『感動』がイベントの発展に寄与する

説を完全に検証するには、些か調査サンプル数が少な

を掴めたという点で大変参考になった。アンケート協力者の中には、友人の紹介やコミュニティ

内の見ず知らずの方も多かった。調査対象が限られてしまう中で、多くの方の協力を得られて感

謝している。

動員数推移か

では、どのようなイベントが今後求められどのようなイベントが支持されるのだろうか。

(設問

1、出演アーティストの陳腐化を防ぐ

2、チケットが入手しにくい

3、入場制限の減少

4、ゴミの管理を徹底する

5、客のモラル向上

6、より皆で盛り上がれる雰囲気をつくりたい

7、音楽以外の付加価値(お笑い、DJ パフォーマンス等)

8、休憩スペースの提供

9、飲食物の値下げ

10、設備の改善(トイレ・飲食物提供・グッズ売り場の増加等)

考察〕

みると消費者が求めているのは、「現状を更に良くする事」に尽きる。イベントが盛

る。

結果を見て

り上がれば盛り上がるほど客は増え、チケット入手や会場内への入場制限、設備の不足といった

不具合が生まれているようだ。皮肉な逆説とも言えるが、主催者サイドとしては嬉しい悲鳴かも

しれない。しかし、こういった細かい事態一つ一つにきちんと対応していく姿勢を見せないとイ

ベントというコンテンツは維持できないのである。仮説を検証してきたように、イベント発展に

重要なのは消費者の『感動』と『口コミ』である。消費者一人一人の『感動』を維持させられる

主催者が、今後のイベント業界においてブランドを確立していくだろう。

今後も「音楽イベントファン」として、音楽ビジネスの発展を期待してい

23

6、参考文献、参考 URL

福田敏彦・山川悟『コンテンツ・マーケティング』同文館出版,2004

中二葉・小野彩(博報堂研究開発局)『ライブマーケティング~「見せる」広告から「まきこ

口秀志「若者の参加型イベントとして定着した夏フェス」『月刊社会民主 2005 年 9 月号』

ホームページ〕

ジ http://www.coleman.co.jp/coleman_style/musicfes/basis.html

ARKSホームページ http://www.barks.jp/feature/?id=1000008760

ロックフェスバカによるロックフェスバカのための情報&想い出紹介サイト"、『SEE YOU

ジロックフェスティバルホームページ http://www.fujirockfestival.com/05/

イジングサンロックフェスティバルホームページ http://rsr.wess.co.jp/2005/

マーソニックホームページ http://www.summersonic.com/index.html

ックインジャパンホームページ http://www.rijfes.co.jp/05/

IREホームページ http://www.wire05.com/

ックオデッセイホームページ http://eee.eplus.co.jp/ro04/top.html

霧JAMホームページ http://www.smash-jpn.com/asagiri/

レクトラグライドホームページ http://www.electraglide.info/

ウントダウンジャパンホームページ http://www.rijfes.co.jp/countdownjapan/

〔文献〕

新井範子・

む」広告へ』東洋経済新報社,2003

Colemanホームペー

B

"

NEXT YEAR』 http://olive.zero.ad.jp/~zbe47433/

W

24

25

ニックマニア http://www.sonicmania.net/index.html

oo音楽ホームページ http://music.goo.ne.jp/special/fes/index.html

ッキンオン社ホームページ http://www.rock-net.jp/company-gaiyo.html

g