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DOP-PCRプライマーを用いた同時多数配列増幅法開発のための予備的検討
誌名誌名酪農学園大学紀要. 自然科学編 = Journal of the College of Dairying.Natural science
ISSNISSN 0388001X
著者著者伊東, 志野遠藤, 大二五十嵐, かほり
巻/号巻/号 33巻1号
掲載ページ掲載ページ p. 117-128
発行年月発行年月 2008年10月
農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat
J. Rakuno Gakuen Univ., 33 (1) : 117-128 (2008)
DOP-PCRプライマーを用いた
同時多数配列増幅法開発のための予備的検討
伊東志野川遠藤大二円五十嵐かはり l),鴻巣尚子円伊藤知子lh
池田晴喜円 AbouElmagd M.M.l),平賀武夫1), 寺 岡 宏 樹1)
Preliminary study for the development of multiple-targeted PCR method using
DOP-PCR primer
Shino ITOH, Daiji ENDOH, Kaori IGARASHl, Naoko KOUNOSU, Tomoko ITO, Haruki IKEDA, Abou ELMAGD M.M., Takeo HIRAGA and Hiroki TERAOKA
(Accepted 23 July 2008)
緒 論
遺伝子発現量の変化が疾病のマーカーや原因にな
るということについては,現在ではほぽ常識になっ
たといえる。 1980年代以降は,がん遺伝子の発現量
とがん化が関係したことから,病態と関係して発現
量が変化する遺伝子の検出が盛んにおこなわれるよ
うになった。この遺伝子の探索は,当初,病態の鍵
となる単一の遺伝子の存在を前提として行われた。
その後,遺伝子発現量の分析が進んだ結果,多くの
病態には多数の遺伝子が関与することが認知された
が,依然として,疾病の診断基準および発症機序の
研究のために,病態で変化する遺伝子の同定は現在
でも盛んに行われている。
近年のゲノム解析の進展はめざましく, ミドリフ
グを端緒としてヒトやマウスからゼブラフィッシュ
などの魚類にいたるまで充実したデータベースが公
表された。さらに,これらに続いて多くの動物種の
ゲノム計画も進行し続けている。この莫大な遺伝子
情報をもとに医学や生物学実験において主要な動物
種については業者によるマイクロアレイ ・システム
が供給されており,いまやマイクロアレイ法は一般
的な実験法のーっとなった。 しかし残念ながら商業
的にマイクロアレイシステムが提供されている動物
種は限られている。一方,環境中に生息する多様な
動物種についても多くの研究グループが全く独自
に,あるいは業者受託によるマイクロアレイ・シス
テムを構築する試みも行われてきたが,多くは対象
1) 酪農学園大学獣医学部獣医学科毒性学教室
遺伝子数が数百から一千程度と少なししかもそれ
ぞれの動物種ごとに多額の開発費を必要とする
(N akayama et al., 2006; Moens et al., 2007)。また
マイクロアレイ法自体が例数を考慮した十分な実験
を実施するためには安価とはいえない。さらに致命
的な問題は,開発したマイクロアレイ・システムを
量産して多くの研究者に提供することが事実上不可
能な点である。
マイクロアレイ法が一般的となるずっと以前よ
り,遺伝子の発現量をランダムに比較する解析法と
してディフアレンシャノレ・テ9イスプレイ (differen.
tial display: DD)法が採用されてきた(Lianget al.,
1992: 1993)。これは, 10塩基程度のランダムプライ
マーを用いた半定量 RT.PCR法の一種であり,設備
として通常のサーマルサイクラーだけを必要とす
る。 DD法は蛋白質をコードしない non.coding
RNA(ncRNA)を含めた未知遺伝子配列も検出可能
である。また病理組織切片など cDNA収量が乏しい
試料にも適用できる。これらの利点からむしろマイ
クロアレイ法を凌駕するほど多くの研究が公表され
てきたが,ラ ンダム性が高すぎるため偽陽性が多い
など成績が安定しないことが最大の問題点となって
いる。
一方,Degenerate Oligonucleotide.Primed PCR
法 (DOP.PCR法)は,ゲノム上の新規配列を検出す
る方法として開発された。これは,ゲノム全体にわ
たってきまざまな部位に結合する,短い特異配列領
域(プライム領域)と部分的に縮重配列を有するプ
Department of Toxicology, School of Veterinary Medicine, Rakuno Gakuen University, Ebetsu, Hokkaido, 069-8501, Japan 2) 酪農学園大学獣医学部獣医学科獣医放射線学教室
Department of Veterinary Radiology, School of Veterinary Medicine, Rakuno Gakuen University, Ebetsu, Hokkaido, 069-8501, Japan 日本獣医学会 (Journal of Veterinary Medical Sciences)
118 伊東 志 野・他
ライマーを用い,低温条件下での一連のアニーリン
グサイクルの後,温度を上昇させることにより,特
異配列領域と引き続〈縮重部分に連結きれたリン
カー領域ごと増幅されるという方法である
(Telenius et al., 1992) 0 DOP-PCR法は種内の系統
や家族関係などの遺伝的多型解析などに用いられる
(Karamysheva et al., 2002)。一種類のプライマー
で多数の配列を検出することができる他,未知配列
も検出可能なため,新たな DNAチップの設計など
にも応用されている (Tsubosaet al., 2005)。
ヒトの遺伝子データベース解析をはじめとして,
mRNA上には多くの反復倒置配列(インパース リ
ピート)が存在することが明かにされている
(Watanabe et al., 2004)。このうちの一部は進化の
歴史におけるレトロウイルス感染の痕跡であるとい
われている。いずれにしてもこれらの反復倒置配列
が適当長であるなどの基本的性質も備えていれば,
単一プライマーとして非特異反応を抑えた理想的な
PCRを行うことが可能となる。本研究では,同時に
多数の遺伝子を増幅させる技術の開発をめざして,
モデノレ動物として注目されるゼプラフィッシュで公
開されている mRNAの塩基配列に基づき,反復倒
置配列の分布について検討した (Teraoka et al.,
2003; Hill et al., 2005)。きらに実際に DOPプライ
マーを試作し,ゼブラフィ ッシュ由来の cDNAを用
いて DOP-PCRを行うことにより, DD法への応用
を視野に入れた同時複数領域増幅法のための基礎情
報を得た。
材料および方法
1. プライマーの設計
予備実験において,塩基配列の異なる motifから
作成きれた二種の DOP-PCRプライマーを混合し
た場合,両側が同ーの motifで増幅されたフラグメ
ン トのみが増幅きれた。二種のプライマーのうち
Tm値が低い方が優先する事例は, 短いプライマー
を用いる場合に報告されている (Rychlik,1993)。
従って,本実験では単一プライマーが選択された。
多種の mRNAを同時に増幅するプライマーを設計
するため,コンビュータ上でmRNAに存在する反
復倒置配列を探索した。遺伝子データとしては, Ze-
brafishの unigeneデータセ ットの うち,ユニーク
な塩基配列が格納された data.uniqデータセ ットを
選択し,計算を実施するための OSとしては, Linux
を,ローカルデータベースとしては, MySQLをそれ
ぞれ用いた。cDNAに関する予備実験で,単一のプ
ライマーによって増幅されるような配列のみが増幅
きれたため, DOP-PCRプライマー用のmotif配列
は, unigene配列内での 5から 20塩基の反復倒置配
列を探索した結果として得られた。このため, -1:1.,
可能な 6塩基 motifをすべて想定した上, GenBank
でゼブラフィ ッシュの mRNA配列として公表され
ている対象 unigeneの 57,454個全例について
(2008年 4月2日公表分),当該 motifの反復倒置配
列が存在するかを検索し,記録した。ここで 6塩
基 motifのレパート リー数は 4,096種であり, プラ
イマーを予測するための計算の実行可能性が十分に
高いことから, motifセットを予測する基本長を 6
塩基とした。この予測の際,相互に相補的な motif
は探索対象から除外した。 6塩基の予測終了後,
motifを伸長した。プログラム上での motifの選択
は,対象塩基配列上のいずれかの場所で相補的な位
置に存在する motifの一方を候補から削除する こ
とにより実施した。この motifの選択方法は, 3'端
が相補的な degenerateプライマーが相互の二重鎖
形成により PCR効率を著しく下げるために有効で‘
ある。unigeneの各レコードの塩基配列について,反
復倒置配列が存在しないかを,候補に挙げられた
motifについて確認した。以上の処理結果色ローカ
ルデータベース上に記録した。
開発した反復倒置配列探索プログラムを Mono
Search RGU ver.1 mRNAと名イ寸けた。これを用い
て, mRNA中に繰返し存在する配列のうち, PCR反
応に適した 100から 1,000bp程度の産物を検出可
能なオリゴマー (6-10塩基)を特異配列領域と し,
その 5'側に 3から 6塩基の縮重配列(9塩 基
NNN, 8塩基 NNNN,7塩基 NNNNN,6塩 基
NNNNNN)と増幅リンカー (CCGAGTGGAG)と
を連結したオリゴヌクレオチドを DOPプライマー
として以下の反応に用いた(図1)。
Degenerate pa同
5'-Cωmω市川ωGA-3'
に一一一y一一一ノ L一一-y一一-.JLinker part for ampflication Specificpa同
図 1 DOP-PCRプライマーの構造
ゼブラフィ ッシュの mRNAデータベース (Unigene)中に繰返し存在する配列のうち 1回の PCR反応で 10程度の産物を検出可能な 6から9塩基を特異配列領域
(Specific part)として算出した。その5'側に 3塩基の縮
重配列 (Degenerate part: NNN) と増幅リ ンカー
(Linker part for ampflication : CCGAGTGGAG)を力日
えた DOPプライマーを作成した。
Basic properties of DOP-PCR 119
2. cDNAの調製
ゼブラフィッシュ Waniorerio) (ロングフィン)
は札幌市内の熱帯魚専門庖(アクアフレンド北水)
より入手した。Westerfieldの方法 (1993)に従い,
明期 14時間,暗期 10時間,水温を 28.5'Cとして雌
雄別に飼育した。
魚類用麻酔剤 (MS222,Sigma)で麻酔後,放血
により安楽死させた雄成魚の腸管と肝勝臓を摘出
し, TRIzol Reagent (Invitrogen)に浸漬後,粉砕
機 (TissueLyser,Qiagen)を用いて完全に ホモジナ
イズした。その後,メーカーの使用説明書に従い,
total RNAを抽出し, GenElute mRN A Miniprep
Kit (Sigma)を用いて mRNAへ精製した。得られ
たmRNAは Oligo(dt) (Sigma)をプライマーとし,
Superscript III RT (Invitrogen)を用いて cDNAを
調製した。予備的な実験においてこのようにして調
製した cDNAを用い,ゲノムだけを標的とするプラ
イマーを作成して PCRを行ったが,増幅産物が認
められないことを確認している。
3. DOP-PCR反応
前項で調製した cDNAの 10倍希釈液 1μLに,
50μMDOPプライマー溶液 2μLとGoTaqGreen
Master Mix (Promega) を用いて 25μLの反応液
を作成した。プライマーには縮重配列が含まれるた
め,一般的な PCRで用いられる 5倍濃度のプライ
マーを用いた。DOPプライマーは特異配列の 6から
10塩基の鎖長ごとにそれぞれ 3から 4種を用いた。
設計した特異配列領域において, GとCを4'c, A
とTを2'cとしてその合計に 5'c加えた温度を初期
アニーリング温度として 8サイクル増幅を行った
( 9塩基 35'C, 8塩基・31'c, 7塩 基 27'C, 6塩基
25'C)。その後アニーリング温度を 60'Cに上げ,リン
カ一部分を含めた 28サイクルの増幅反応を行った
(図 2)0PCR産物は Synergel (バイオクラフ ト)
を添加した 0.5XTBEアガロースゲルを用いて電
気泳動した。それぞれの場合においてアニーリ ング
温度を多少変化させても,電気泳動で確認できる反
応産物に顕著な影響はみられなかった。
4. 塩基配列の決定
使用したプライマーから分子量の異なるそれぞれ
3つのバンドを抽出し, クローニング後,境基配列
を決定した。ゲル抽出産物の精製には QIAquick
Gel Extraction Kit (Qiagen) を, クローニングに
は pGEM-TEasy Vectorsystem (Promega) を用
いた。またトランスフォーメーションでは,コンピ
Specific part for initial PCR 陪action
c:置2・E-ーーー-cコ曹~
函露軍
G
.ij.
cDNA from target mRNA
① Primer binding (Tm + 5'C)
,.......,.ー--"'--② Ampflication01 initial 5 二二., PCR product ~
==---E盤③μA州r町mp州刷n叩耐、市w帆p凶凶f刊附1
PCR pr'ωu附d
匡彊冨翠 W納川erpa同
図 2 DOP-PCR反応の概要
mRNAデータベース (Unigene)を用いて探索した結
果,セ・プラフィ ッシュの mRNA配列上には逆向きの繰
り返し配列が多数存在する。従って,これらの mRNA由
来の cDNAはDOP-PCRプライマーの標的となる 9塩
基の結合部位 (Specificpart for initial PCR reaction : 特異配列)が存在するので, Tm値より 5'c高い温度
(25-35'C)に保持することにより,プライマーの特異配
列領域とハイプリダイズさせた(①)。これを利用して,
熱変性 (94'C) 1 min,アニーリ ング (25-35'C) 1 min,
伸長 (72'C) 3minのPCR反応を 8回繰り返す(②)。
②で増幅した鋳型に対して,さらにリンカー領域も含め
たDOP-PCRプライマー全長に対してハイプリダイズ
する適温Tm値を 60'Cとし,熱変性 (94'C) 1 min,ア
ニーリング (60'C) 1 min,伸長 (72'C) 3 minのPCR
反応を 28回繰り返した(③)。
テントセル(DH5α:フロンティアサイエンス)を使
用した。生育したコロニーを 100ng/mlアンピシリ
ンを含む LB培地で一晩培養し, QIAprep Spin
Miniprep Kit (Qiagen)を用いてプラスミドを抽出
した。精製したプラスミ ドを鋳型とし, pUC/M13
(Forward, Reverse)をプライマーと して蛍光ダイ
ターミネーター ・シークエンシング反応を11"い
(DYNamic ET Terminator, GE Healthcare),反
応産物をキャピラリー型 シーク エ ンサー (ABI310,
Applied Biosystems)を用いて解析した。塩基配列
を決定した PCR産物は, GenBankで BLAST検索
を行い,対応する mRNAの配列名やプライマーの
特異領域の配列について解析した。
成 績
1. ゼブラフィッシュmRNAにおける反復倒置配
列の介布
各 unigeneの塩基配列がランダムであった場合
に,平均鎖長 1.322塩基上に特定の 6塩基の反復倒
置配列が存在する可能性は,特定の 2種の 6塩基の
配列が 1,322塩基中にそれぞれ一回以上存在する可
120 伊東志野・他
能性と等しくなると予想される。特定の 6塩基は,
4,096回に一回の割合で出現するため,塩基配列上
の特定の位置で特定の 6塩基が出現する確率は, 1/
4,096=0.000244となる。この確率は十分に小さい
ため, λ=塩基配列長×出現確率とした場合のポア
ソン分布で一定の塩基配列上での特定の 6塩基配列
の出現回数と確率を算出することができる。
unigeneの平均塩基長が 1,322として, λ=l,322X
0.000244=0.322であり,出現回数がO回の場合は,
e一λ=0.724,出現回数が 1回の場合は, (e一λ×
λ)=0.233となる。したがって, 1,322塩基の
unigene中に二回以上特定の塩基配列が出現する確
率は, (1一(0.724+0.233))=0.0422となる。これら
のうち,半数について motifの方向の組み合わせが
PCRの起きない向きになることが予想されるので,
特定の反復倒置配列についての単ーの unigene上
での出現確率は, 0.0422/2=0.021と算出される。
motifはが=4,096通り存在するため,上記と同様,
ポアソン分布を用いて,全ての motifについて 1個
以上の増幅可能な反復倒置配列が出現する可能性
は, 1.000となる。同様に, 5-20塩基の motifにつ
いて出現確率を算出したところ表 1のような結果と
なった。
今回開発した反復倒置配列探索プログラム
(Mono Search RGU ver.1 mRNA)を用いて計算
した,ゼブラフィ ッシュで公表されている全
unigeneに相当する 57,454件について反復倒置配
列の検出数と motifの塩基数の関係を表 2に示す。
motifが 5および6塩基では,反復倒置配列がほぼ
すべてといえる 97%以上の遺伝子に存在すること
が示唆された。さらに反復倒置配列で増幅が期待さ
れる mRNAの割合は 7から 10塩基まで塩基数が
増加するに従って減少するが,その後はほぽ横ばい
となった。一方,motifをプライマーとした時に増幅
される遺伝子の平均数は 5塩基から 9塩基まで急激
に減少し 6塩基の時には 3,000を超えていたのに
対して, 7塩基では 369.5,9塩基にいたっては 8.1
となった。 しかし,標的塩基配列がランダムとして
計算した場合(表1)に比べて,塩基数の増加に伴
う標的数の期待値の低下は明らかに鈍かった。
2. DOP-PCRによる反応産物の解析
6-9塩基の特異配列領域を持つ DOPプライマー
を数種類試作し,雄ゼブラフィッシュ成魚の内臓か
ら調製した cDNAを用いて DOP-PCRを千子った。
前述のように, DOPプライマーをペアで PCRを
行った場合でも,産物は片方のプライマー由来であ
る例が多数認められた。そこで,以下の実験ではモ
ノプライマーとして DOPプライマーを用いた。初
期のアニーリング温度は,特異配列領域の塩基配列
から計算した Tm値よりも 5'cほど高い, 25'C (6
塩基)から 35'C(9塩基)でほぼ全例で 1つのプラ
イマーにつき 100-1,000bp程度の明瞭なノ〈ンドが
5-19本得られた (図 3)。別々に DOP-PCR反応を
実施した場合でも,同じプライマーを用いてはぽ完
全に同ーの電気泳動ノマターンを確認できた(図 3)。
低分子のものから高分子のものまで幅広く解析す
るため, 一つのプライマーにつき 100,300, 1,000 bp
程度の 3バンドずつを抽出し,クローニングが成功
した PCR産物について塩基配列を決定した(表 3
表 1 ランダムな塩基配列上に反復倒置配列が存在する可能性
特定の motif 特定の motif 特定の motif 増幅可能な特定 増幅可能な反復motifの溢
パターン数一特塩定基のあたりtのif が1322塩基上 が1322塩基上 が1322溢基上 の反復倒置配列 倒置配列が 予想される増幅
基配列長 の出現率mo に一度も存在し に一度存在する に2度以上存在 が1322塩基上 mRNA上に存 mRNA数ない確率 確率 する確率 に存在する確率在する確率
1024 9.766E-04 0.275 0.355 0.370 0.185 l.000 57454
4096 2.441E-04 0.724 0.234 0.042 0.021 l.000 57454
16384 6.l04E-05 0.922 0.074 3.085E-03 l.543E-03 l.000 57454
65536 l.526E-05 0.980 0.020 2.007E-04 l.004E-04 0.999 57374.122
262144 3.815E-06 0.995 5.018E-03 l. 267E-05 6.337E-06 0.810 46542.132
10 1048576 9.537E-07 0.999 l. 259E-03 7.94IE-07 3.970E-07 0.341 19565.249
11 4194304 2.384E-07 l.000 3.151E-04 4.966E-08 2.483E-08 0.099 5682.675
12 16777216 5. 960E-08 l.000 7.879E-05 3.104E-09 l.552E-09 0.026 1476.855
13 67108864 l.490E-08 l.000 l. 970E-05 l.940E-I0 9.701E-1l 6.489E-03 372.842
14 268435456 3.725E-09 l.000 4.925E-06 l.213E-1l 6.063E-12 l.626E-03 93.439
15 1073741824 9.313E-I0 l.000 l. 231E-06 7.579E-13 3.790E-13 4.069E-04 23.378
16 4294967296 2.328E-I0 l.000 3.078E-07 4.730E-14 2.365E-14 l.016E-04 5.835
17 17179869184 5.82IE-1l l.000 7. 695E-08 2.887E-15 l. 443E-15 2.480E-05 l.425
18 68719476736 l.455E-1l l.000 l. 924E-08 0.000 0.000 0.000 0.000
19 2. 74878E + 11 3.638E-12 l.000 4.809E-09 0.900 0.000 0.000 0.000
2 l. 09951 E + 12 9. 095E-13 l. 000 l. 202E-09 0.000 0.000 0.000 0.000
GenBank (2008/4/2公表)によるゼブラフィ ッシュ(D即日O 開 rio)全ユニーク Unigene数 57,454を対象として算出した。mRNAの平均鎖長は1,322であった。
Basic properties of DOP-PCR 121
表 2 ゼブラフ ィッシュmRNAにおける反復倒置配列の検出数と motifの塩基数の関係
motifの配列をもっ反全遺伝子中の反復倒置
motifをプライマーと 反復倒置配列の存在が
motifの長さ 復倒置配列が存在した した時に増幅される遺 mRNAに予測された
遺伝子数配列で増幅される確率
伝子の平均数 motifの数
5 57,367 0.998 15.545.8 559
6 55,735 0.970 2,975.4 1,813
7 52,902 0.921 369.5 8,079
8 45,722 0.796 38.5 28.744
9 34,478 0.600 8.1 38,338
10 2l. 412 0.373 5.0 8,888
11 7,816 0.136 5.8 1,639
12 2,186 3.805E-02 6.2 713
13 1,149 2.000E-02 6.0 451
14 725 1.262E-02 5.9 294
15 486 8.459E-03 5.5 207
16 332 5.779E-03 5.4 140
17 249 4.334E-03 5.1 102
18 171 2.976E-03 4.7 74
19 131 2.280E-03 4.6 53
20 98 1.706E-03 4.7 32
GenBank (2008/4/2公表)によ るゼブラフィッシュ (Daniorerio)全ユニークUnigene数 57,454を対象として算出した。
一旦壬1 M m6ょ2 M m6.3
図 3 DOP-PCR反応産物の電気泳動の例
特異配列を 6塩基とする DOPプライマー (Zebra_
dop_m6_1, 6_2, 6_3: m6.l, m6.2, m6.3)を用いてゼブラ
フィッシュ肝勝臓由来の cDNAを鋳型に DOP-PCR反
応を行った。それぞれのプライマーにつき,同じ cDNA
を別々のチューブで反応させた。Mは100bpラダーの分
子量マーカ一。
-6)。多くの例で,単一のバンドから複数の増幅産
物が認められた。得られた PCR産物の塩基配列を
GenBanl王の BLAST検索で解析したところ,ゲノ
ムからの予想配列も含めて多く がゼブラフィ ッシュ
で既に報告されている mRNAと一致した。決定配
列とデータベースの対応配列とを比較したところ,
9塩基では完全な 9塩基配列が前後プライマーとも
確認できたのは 21例中 1例だけであったが,さらに
短い motifでは一致している配列の割合が増加し,
7および6塩基では 35%前後にまで到達した。きら
にプライマーを片側ずつでカウントした場合,完全
に一致している割合もやはり motifが短いほど高
<. 6および 7塩基では約 60%であった。配列が一
部異なっていた場合でも,ほぼすべての例で特異配
列が確認でき,欠失しているのは比較的 5'側の配列
に偏っていた。ごく希に余計な塩基が挿入している
例もみられた。motifはほとんどがコード領域に含
まれていた。一方, GenBankや Ensemblなどのデー
タベースに収載された遺伝子配列と高い相向性を示
すが,全長が全く異なる配列がいくつか観察された。
アライメント解析に より,プライマーの存在する両
端はほぼ完全に一致していたが,中央部分が欠失あ
るいは挿入されていた。
考 察
今回,我々が独自に開発したコンビューター・プ
ログラムを用いて,ゼブラフィ ッシュの mRNA
データベースを解析したところ,タンパク質をコー
ドする mRNA(狭義の遺伝子)中には互いに逆向き
の繰り返し配列が多数存在することが明らかとなっ
た。Motifをプライマーとして使用した際の増幅遺
伝子数の平均値を各 motifについて合わせて算出
したところ, 6-9塩基でほとんどすべての遺伝子
で反復倒置配列が存在する。一方, motifをプライ
マーとしたときの予想される増幅 mRNA数は 5
塩基から 9塩基まで塩基配列の伸長とともに急速に
減少し 9塩基では 1個以下となった。 9塩基以下
表3
特異
配列
部位
が9塩
基の
プライ
マー
を用
いたDOP-PCR産
物H
Ph4:3
》
プラ
イマ
ー/配列
バン
ド増幅産物
Forw
ardprimer
Reverse primer
Genbank上
でホ
モロ
ジー
を示
す配列
名備考
(bp)
(bp)
部
位部
位
Zebra_doPJ
Tl 9_5_7
250
190 (546) T
CAGAGACC
GCAGAGACC
PREDICTED: Danio rerio hypothetical protein LOC100001727 (L 配
100001727),mRNA
ノぐリアン
トの
可能性
CCAGAGACC
410
382
GCAAAGACC
CTGGTGACC
Danio rerio serine hydroxymethyltransferase 1
(soluble), mRNA
384
ACAGAGACC
CCAGGGACC
PREDICTED: Danio
re巾similarto Protein tyrosine phosphatase,
rl悶ptortype, B ι民
569646),mRNA
600
546
TCAGAGACC
GCAGAGACC
PREDICTED: Danio rerio hypothetical protein LOC100001727
(LOC100001727), mRNA
Zebra_dop_m 9_5_14
380
348
CAGCCAAAG
CCAACAAAG
Danio rerio fibrinogen alpha chain
, mRNA
GCCCCAAAG
344
GCCCTAAAG
CCCCCAAAG
PREDICTED: Danio rerio hypothetical LOC557842
(LOC557842)
, mRNA
460
430
TCCACAAAG
CTCCCAAAG
PREDICTED: Danio rerio similar to
Ddx5
protein (LOC794482),
mRNA
770
726
GCCCACAAAG
GCCCCAAAG
Danio rerio X-box-binding protein 1A (xbp1a) mRNA
F:
一塩
基挿
入
ヨ話Zebra_dop_mono_16
460
444
CTCCTCCAG
CTCCTCCAG
PREDICTED:
Danio rerio similar to SORD protein (LOC570613), mRNA
知l
CTCCTCCAG
520
554
GTCCTCCAG
CTCCTCCAG
Danio
rerio mitωlondrial ri初
旬mal
protein 印
刷'P137),nuclear
gl間
町odingmitochondrial
protein,
rnRN A
C1十
534
CTCCCCCAG
CTCCTCCAG
Danio rerio zgc:
171680 (zgc:
171680),
mRNA
E事 E主Zebra_dρp_mono_17
210
207
GGTTTGGGA
GCGTTGGGA
Danio rerio ADP-ribosylation factor 11ike, mRNA
GGGTTGGGA
195
GTCTTGGGA
GGGCTGGGA
Danio rerio zgc:
91872 (zgc: 91872)
, mRNA
600
372
TGGATGGGA
GAGTTGGGA PREDICTED: Danio rerio similar to LOC528919 protein (LOC100005286)
, mRNA
578
GTGTTCGGA
GTGTTGGGA Dar甘orerio purinergic receptor P2X
, ligand-gated ion
channel,
4a, mRNA
585
CACTTGGGA
TGGTTGGGA Danio rerio heat shock protein 8
(hspa8),
mRNA
700
556
GGGCTGGGA
GTGTCGGGA
Danio reriρspinster homolog
1 (Drosophila), -mRN A
708
TAGTTGGGA
GTGTTGGGA
Danio rerio cth1
, mRNA
673
ATGTTGGGA GGGITTGGGA PREDICTED:
Danio rerio similar to
stabilin 1
precursor
(LOC570626)
, mRNA
R:
一塩
基挿
入
641
TGTCTGGGA
GGTTTGGGC
PREDICTED:
Danio rerio hypothetical protein LOC793869 (LOC793869)
, mRNA
Primer
部位
の塩
基配列
における下線は使用したDOPプライマーと一致しな
い箇
所を
示して
いる
。Genbank
のBlast検
索でホモ
ロジーを示した配列名におけるPREDICTED
とはゲノム配列から予想される
mRNA (cDNA)配列を表す
。備考におけるFおよびRはForward,Reverseプライマ一部位を示
す。
電気泳動上のバンドは縮重部分と
リンカ一部分の
26bp
を含んでいるが,表記の増幅産物には含めていな
い。備考におけるF,RはそれぞれForward
およびReverse
プライ
7ーを
指す。
表4
特異
配列
部位
が8塩
基の
プラ
イマ
ーを
用い
たDOP-PCR産
物
プラ
イマ
ー/配
列バ
ンド
増幅産物
Forw
ardprimer
Reverse primer
Genbank上
でホ
モロ
ジー
を示
す配
列名
備考
(bp)
(bp)
部位
部位
Zebra_dop_m 8_1
250
231
CCAACTCT
CCAATCCT
Danio rerio zgc: 73262 (zgc: 73262)
, mRN A
CCAACCCT
Zebra_dop_m 8_3
350
320
CACAACCC
CCCAACCC
PREDICTED:
Danio rerio similar to chromatin remodeling factor
CHROMl (L
配572355),mRNA
CCCAACCC
550
528
TACAACCC
CCCCACCC
Danio rerio influenza virus NS1A binding protein a
, mRNA
830
816
TACAACCC
CCCCACCC
Danio rerio influenza virus NS1A binding protein a
, mRNA
806
CCCCACCC
CCCAACCC
Danio rerio SET translocation (myeloid leukemia-associated) B
(setb)
, mRNA
Zebra_doPJII 8_4
200
153
CTGCAGGG
CTGGAGGG
Danio rerio fumarylacetoacetate hydrolase (fumarylacetoacetase), mRNA
CTGGAGGG
400
374
CTGGAGGG
CTGGAGGG
PREDICTED:
Danio rerio similar to
phospho!ipase D
(LOC 556641)
, mRNA
530
507
CTGGAGAG
ATGGAGGG
Danio rerio betaine-homocysteine methyltransferase
, mRNA
513
CTGGAGGG
ATGGAGGG
PREDICTED:
Danio rerio si:
ch211-45m15.2
(si:
ch211-45m15.2),
mRNA
Zebra_dop_m
8_7
250
218
CAGAGACC
CACAGACC
Danio rerio zgc: 100912 (zgc: 100912),
mRNA
CAGAGACC
191 (546) CAGAGACC
CAGAGACC
Danio rerio hypothetical protein LOC100001727, mRNA
バリア
ントの
可能性
白Ur回、2
227
CAGAGACC
CAGAGACA
Danio rerio MHC class II-associated invariant chain mRNA
410
383
CAAAGACC
TGGTGACC
Danio rerio serine hydroxymethyltransferase 1 (soluble)
, mRNA
356
CAGAGACC
CAGACACC
PREDICTED: Danio rerio hypothetical LOC562329 (LOC562329), mRNA
600
546
CAGAGACC
CAGAGACC
Danio rerio hypothetical protein LOC100001727, mRNA
g, Zebra_dop_m 8_9
310
286
ACGAGGGA
AGGAGGAA
Danio rerio heat shock protein 90kDa alpha (cytoso!ic), class B member 1, mRNA
g
gGAGGGA
550
240
GGGAGGCA
TGGAGGGA
Da凶orerio zgc:
55941,
rnRNA (cDNA cIone MGC: 55941 IMAGE:
3819282)
, complete cds
Zebra_dop_m 8_10
300
286
CTCAGAGA
GCCAGAGA
Danio rerio chaperonin containing TCP1,
subunit 5 (epsilon) (cct5)
, mRNA
r'pてo可コ
CCCAGAGA
250
TCCAGAGA
CACAGAGA
Danio rerio guanine nucIeotide binding protein (G protein), beta polypeptide
2-like 1,
mRNA
282
CCCAGAGA
ACCAGAGA
Danio rerio zgc: 92744 (zgc: 92744)
, mRNA
520
455
TCCAGAGA
TCCAGAGA
Danio rerio fms-related tyrosine kinase 4
(臼t4)
,mRNA
481
ACCAGAGA
GCCAGAGA
Da凶orerio sestrin 1 (sesnl) mRNA
610
561
AACAGAGA
CCCAGAGA
PREDICTED:
Danio rerio hypothetical LOC565164 (LOC565164)
, mRNA
582
ACCAGAGA
CCCACAGA
Danio rerio EFR3 homolog A
(S.
cerevisiae) (efr3a), mRN A
628
GCCAGAGA
CACAGAGA
Danio rerio succinate-CoA ligase
, ADP-forming, beta subunit (sucla2), mRNA
Zebra_dop_m 8_14
380
343
CCCCAAAG
CCCTAAAG
PREDICTED:
Danio rerio hypothetical LOC557842 (LOC557842), mRNA
CCCCAAAG
460
430
CCACAAAG
TCCCAAAG
PREDICTED:
Danio rerio similar to
Ddx5
protein (LOC794482), mRNA
900
900
CCCCAAAG
CCCCAAAG
Danio rerio zgc:
101764
, mRNA
Zebra_doPJII 8_16
330
305
TCCTCAAG
GCCTCCAG
PREDICTED:
Danio rerio zgc:
113234 (zgc: 113234), mRNA
TCCTCCAG
Primer
部位
の塩
基配列
にお
ける下線
は使用
したDOPプライ
7ーと
一致しない
箇所
を示
している
。Genbank
のBlast検
索でホモ
ロジー
を示した配列
名に
おけ
るPREDICTED
とは
ゲノ
ム配列
から予想さ
れる
mRNA (cDNA)配列
を表
す。備
考におけるFお
よびRはForward,Reverse
プライマ一
部位
を示
す。
電気泳動上のバン
ドは縮重
部分と
リンカ一部分の28bp
を含んでいるが,
表記の
増幅
産物
には含
めてい
な
-b巳A。a
い。一
部の
増幅産
物にお
ける括弧内
の数値
は比較に使
用したGenbank
で登録
したmRNAの対応
する鎖長を示す
。
表5
特異
配列
部位
が7mer
のプ
ライ
マー
を用
いた
DOP-PCR産
物H
b4h
O
プラ
イマ
ー/
配列
バン
ド増
幅産
物Forwardprimer
Reverse primer
Genbank上
でホ
モロ
ジー
を示
す配列
名備
考(bp)
(bp)
部位
部位
ZebrLdop_m 7_3
350
317
ACAACCC
CCAACCC
PREDICTED: Danio rerio similar to chromatin remodeling factor CHROMl (L配572355),mRNA
CCAACCC
510
397
CCAATCC
CCAACCC
Danio rerio aldolase b
, fructose-bisphosphate (aldob), mRNA
Zebra_dop_m
7_4
110
75
TGGAGGG
TGGAGGG
Danio rerio profilin 2
, mRNA
TGGAGGG
400
312
TGGAGGG
TGGAGGG
Danio rerio DEAD (Asp-Glu-Ala-Asp) box polypeptide 5
, mRNA
292
TGGAGGG
TGGAGGG
PREDICTED: Danio rerio im: 7140067 (im: 7140067)
, mRNA
366
TGAAGGG
TGGAGGG
PREDICTED: Danio rerio similar to Cp protein (LOCI00008514), partial mRNA
500
477
TGGAGGG
TGGTGGG
Danio rerio zgc:55941, mRNA
Zebra_dop_m 7_7
300
270
ACAGACC
TGAGACC
Danio rerio adaptor-related protein complex 1 ,
gamma 1
subunit (aplgl), mRNA
AGAGACC
育指
246
AGAGACC
AGCGACC
Danio rerio poly A
binding protein, cytoplasmic 1
a (pabpcla), mRNA
淘l
400
373
AGAGACC
AGAGACC
PREDICTED: Danio rerio similar to Proline-rich nuclear r
悶ptorcoactivator 2
(1庇565522),mRN A
C1十 主事
600
446
AGAGACC
AGGGACC
PREDICTED: Danio rerio similar to asialoglycoprotein receptor (LOC795698), mRNA
言主
580
AGAGACC
CGAGACC
Danio rerio basic helix-loop-helix domain containing
, class 8, 2,
mRNA
540
AGAGACC
AGAGACC
Danio rerio si:
zfos-47cl2
.l (si: zfos-47cl2
.l), mRNA
472
AGAGACC
ACAGACC
PREDICTED: Danio rerio similar to Prtl homolog (LOC796380), mRNA
Primer
部位
の猛基配列における下線は使
用し
たDOPプライマーと
一致しない箇所を示している。GenbankのBlast検
索でホモロジーを示した配列名
にお
ける
PREDICTED
とは
ゲノム配列から予
想される
mRNA
(cDNA)配列を
表す
。備考におけるFおよ
びRはForward,Reverseプライ
7一
部位
を示
す。
電気
泳動
上の
バン
ドは
縮重
部分
とリンカ一部分の30bp
を含んで干いるが,
表記
の増
幅産
物に
は含
めて
いな
い。
表B
特異
配列
部位
が6merの
プラ
イマ
ーを
用い
たDOP-PCR産
物
プラ
イマ
ー/配
列バ
ンド
増幅
産物
Forwardprimer
Reverse
primer
Genbank上
でホ
モロ
ジー
を示
す配
列名
備考
(bp)
(bp)
部位
部位
Zebra dop_m 6_1
200
142
AACCCT
AACCCT
Danio rerio zgc:64161 (zgc:64161),
mRNA
AACCCT
143
AACCCT
ATCCCT
Danio rerio ribosomal protein L27 (rpI27), mRNA
550
518
AACCCT
AACCCT
PREDlCTED: Danio
rerio similar to Platelet.activating
factor
acetylhydrol
統,1回forrnlb, gamma subunit,
mRNA
520
AACCCT
AACCCT
Danio rerio elongation factor 1-alpha (efla)
, mRNA
529
AACCCT
AACCCT
Danio rerio nucleoporin 50 (nup50),
mRN A
481 (637)
AACTCT
AACACT
Danio rerio transaldolase 1
(taldo1)
, mRNA
バリ
アン
トの
可能性
Zebra dop_m 6_2
300
281
ACCCTG
CCCCTG
Danio rerio zgc: 154138
, mRNA
ACCCTG
400
363
CCCCTG
CCCCTG
Da凶
orerio zgc:
55406 (zgc: 55406)
, mRNA
ur 切白、,
Zebra dop_m 6_3
350
316
CTACCC
CAACCC
Danio rerio zf
FL]13291
mRNA for FL]13291 homolog
, complete cds
CAACCC
550
504
CAACCC
CCACCC
PREDlCTED: Danio rerio
sinnilar to PERQ amino acid rich wi出
GYFdomain protein 1
, mRNA
523
CAATCC
CAATCC
Danio rerio lon
peptidase 2,
peroxisomal (lonp2), mRNA
。~
473
CAACCC
CAGCCC
Danio rerio chaperonin containing TCP1,
subunit 6A (zeta 1), mRNA
g
539
CAACCC
CAATCC
Danio rerio elongation factor 1-alpha (efla)
, mRNA
FFpU o
3
537
CCGCCC
AAACCC
Danio rerio zgc:
154138
, mRNA
546
CAACCC
CAACCC
Danio rerio influenza virus NS1A binding protein a
, mRNA
Zebra do
p_m 6_4
200+
190
GGAGGG
GCAGGG
Danio rerio eukaryotic translation elongation factor 1
alpha
1 (EEF1A1) m
RNA
GGAGGG
220
TGAGGG
GGAGGG
Danio rerio ribosomal protein S9
, mRNA
500
481
GGAGGG
GGAGGG
Danio
rerio
solute
carrier fannily 25
(凶tochondrialca而er;phosphate carrier), member 3, mRN
A
468
GGAGGG
GGAGGG
Danio rerio zgc:
92275 (zgc:
92275)
, mRNA
Zebra dopJTI 6_7
200
182
GAGACC
GGGACC
PREDlCTED: Danio rerio hypothetical LOC568972
, transcript variant 1
(LO臼
68972),mRNA
GAGACC
400
360
GAGACC
GAGACC
Danio rerio eukaryotic translation initiation factor 3
, subunit E, a (eif3ea)
, mRNA
Primer
部位の塩基配列における下線は使
用した
DOPプライ
7ーと
一致しない箇所を示している
。Genbankの
Blast検
索で
ホモ
ロジ
ーを
示し
た配
列名
にお
ける
PREDICTED
とはゲノム配列から予想される
mRNA (cDNA)配列を
表す。
備考における
FおよびRはForward,Reverseプライマ一部位を示す
。電気泳動上のバンドは縮重部分とリンカ一部分の
32bp
を含んでいるが,表記の増幅産物には含めていな
H
R巳QI司
い。
一部の増幅産物における括弧
内の数値
は比較に使
用した
Genbankで登録した
mRNAの対応する鎖長を示す。
126 伊東志野・他
の場合については mRNA上には,ランダムな配列
からの予想、よりも少ない反復倒置配列が存在し, 10
塩基以上の場合には,ランダムな配列からの予想、を
上回る数の反復倒置配列が存在することが示唆され
た。これらの確率の差は, mRNA自体が持っている
配列の偏向性に起因すると考えられる。
実際に設計した DOPプライマーを用いてゼブラ
フィッシュ肝豚臓から調製した cDNAについて
DOP-PCRを行った結果,明瞭な複数のバンドを高
い再現性で得ることができた。しかし単一のバンド
と認識されても複数の増幅産物を検出する例が多数
認められた。従って,ポリアクリルアミドゲルを用
いるなど,電気泳動法にも改善の余地が考えられた。
さらに PCR産物におけるプライマーの特異領域と
GenBankで対応すると考えられた相同配列の保存
性を指標とした場合,特異配列の鎖長が短いほど正
確性が高まる傾向が認められた。我々が開発したプ
ログラムの計算結果によれば,特異配列が9塩基で
ある場合に比べて 8塩基では標的遺伝指数の平均
が約 5倍に増加することが予想、された。 7塩基では
8塩基のさらに 10倍, 6塩基では7塩基の約 8倍増
加する。さらに 6境基ではそれぞれの DOPプライ
マー増幅標的の平均値が3,000近くになり,バンド
の重複が起きすぎると考えられた。しかし,実際に
は電気泳動で確認できるバンドの数は計算値に追従
して増加しなかった。逆に長い motifでは予想以上
に多いバンドが得られた。現状ではこの現象を説明
する十分な実験根拠を示すことはできないが,一つ
の説明として,標的となりうる mRNAの発現比率
にバリエーションがあるために,比較的大量に発現
している組合せが選択的に増幅された可能性があ
る。また逆に特異配列が長い場合,一つのプライマー
で得られた PCR産物の数は,多くの場合プログラ
ム上で予測された数よりも多かったが,これは特異
配列領域の 5'領域の数塩基が欠失したり,中抜けが
起きるためと考えられた。このような反応の原因の
ーっとして初期のアニーリ ング温度が低いことが考
えられたが,特異領域を 10塩基に延長して,初期ア
ニーリング温度を上げても,非特異反応、が減ること
はなしむしろ中抜けの出現率が顕著に増加した(伊
東,五十嵐,遠藤,寺岡:未公表データ)。非特異反
応が起こる原因は明らかではないが,特異領域の塩
基数が短い場合,初期反応におけるプライミングが
作動するには高いマッチングが必要で、あるのに対し
て,塩基数が長い場合はある程度のゆらぎを許容で
きるためと想像された。いずれにしても特異配列が
より短い 6から 7塩基程度の DOPプライマーを用
いることができれば,ハウスキーピング遺伝子をは
ずすなど対象遺伝子を選択できる可能性が広がる。
以上の PCR産物におけるプライマー配列の 5'末端
や中央部が抜ける性質を考慮し,きらに正確な計算
プログラムを開発している。
今回の限られた種類の DOPプライマーを用いて
得られた PCR産物の解析結果において, GenBank
や Ensemblなどのデータベースに収載された遺伝
子配列と高い相向性を示すが,全長が全く異なる配
列がいくつか観察された。アライメント解析により,
プライマーの存在する両端はほぼ完全に一致してい
たが,中央部分が欠失あるいは挿入されていた。遺
伝子データベースと PCR産物で鎖長が異なるのは
ゲノム配列からの予想転写産物で非常に高確率で
あったことから,実際に存在している mRNAと予
想が異なっていたと考えられる。またこれまで同定
されていないトランスクリプトソーム産物(スプラ
イスバリアント)である可能性も高い。ヒトのゲノ
ム解析およびトランスクリプトーム解析により,蛋
白をコードする遺伝子数は従来想像されていたより
も非常に少なし存在が推定される蛋白の約 1/10で
あった (Carninciet al., 2005)。従って,今回開発
された DOP-PCR法は mRNAの半網羅的解析や選
択的スプライシングによる多くのトランスクリプ
トーム解析を行う目的でも有効な方法であることが
示唆された。
以上のことから,今回の DOP-PCR法は最初のプ
ライミング反応において多少のゆらぎが起こるもの
の,その後のリンカーを含めた増幅反応により高い
再現性を持つ安定した PCRを実現したと結論でき
る。DD法におけるラ ンダムプライマーを用いた従
来の重複増幅反応は対象が全く不明なランダム性の
高い方法であるが,我々の DOP-PCR法は標的指向
性が高いといえる。また, motifが 6および7塩基で
は正確性がほぼ変わらないので,ランダム性を高め
て網羅的な解析を行う場合は 6塩基を,より標的を
絞る場合は 7塩基を選択することも可能で、ある。今
回成績には示さなかったが,ゼブラフィ ッシュの
unigeneをもとに設計した DOPプライマーを用い
て,メダカや他の多くの魚種で再現性の高い PCR
産物が得られることを確認している(五十嵐,寺岡,
遠藤)。このことは遺伝子データが得られていない動
物種においても他種の遺伝子データを用いて DOP-
PCRを実施することが可能であることを示してい
る。反復倒置配列は魚類ではむしろ少なしヒトの
方が多いと考えられている (Watanabeet al., 2004;
Kasahara et al., 2007)。今後は unigeneが公表きれ
Basic properties of DOP.PCR 127
ているほ乳類や鳥類の情報をもとに,さらに共通性
を高めたプライマーを作成し,完成度の高い遺伝子
発現解析系を確立することが期待される。
謝辞
本研究は酪農学園大学共同研究 (2006-7HT,
2007-3 DE),私立学校振興・共済事業団学術研究振
興資金(HT),学術振興会科学研究費補助金(HT),
秋山記念財団 (HT)の助成を受けた。
要約
本研究では,同時に多数の遺伝子を増幅させる技
術の開発をめざして,モデル動物として注目される
ゼブラフィ ッシュで公開されている mRNAの塩基
配列に基づき,反復倒置配列の分布について検討し
た。その結果,ほとんどの遺伝子で6塩基の反復倒
置配列が存在し 7および8塩基でも 8割以上で認
められた。この反復倒置配列を特異配列領域とし,
縮重配列とリンカー配列を結合させた DOPプライ
マーを試作し,ゼブラフィ ッシュ由来の cDNAを用
いて DOP.PCRを行って電気泳動を行った。その結
果,複数のバンドが高い再現性で得られた。公開さ
れている遺伝子情報における配列とプライマーの特
異配列部分を比較したところ, 一致率は特異配列の
塩基数の減少に伴い増加した。以上の成績は今回開
発した DOP-PCR法は遺伝子発現をある程度の標
的指向性を備えた大規模解析法として有用であるこ
とを示唆している。
Abstract
In the present study, distribution of inverse
repeat sequence in zebrafish mRN A was inves-
tigated to establish the multi-target PCR analysis
with PCR with degenerate oligonucleotid primer
(DOP-PCR) using our developed computer pro-
gram. Inverse repeat motif was recognized in
almost all mRNAs for 6mer and in 80% or more
mRNAs for 7 or 8mer. Degenerate oligonu-
cleotide primer was prepared by connecting a
several degenerate sequences and linker sequence
to 5' end of the inverse repeat motif selected.
Using these primers, almost the same gel electro-
phoresis pattern with multiple clear bands was
reproducibly obtained in agarose gel electrophor-
esis of the DOP噌PCRproducts. DOP-PCR using
shorter motif showed relatively higher mathicng
score by comparison of nucleotide sequence for
inverse repeat motif (6mer to 9mer) between our
sequencing results and GenBank data already
registered. These results suggest the possible
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