23
調査事業報告 「分散型エネルギー資源(DER) 活用プラットフォーム基盤技術に係る検討」 事業期間:平成29年度 平成30年11月29日 スマートコミュニティ部 成果報告会 株式会社三菱総合研究所 環境・エネルギー事業本部 主任研究員 浅岡 1/23

調査事業報告 「分散型エネルギー資源(DER調査事業報告 「分散型エネルギー資源(DER) 活用プラットフォーム基盤技術に係る検討」

  • Upload
    others

  • View
    9

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

調査事業報告

「分散型エネルギー資源(DER)

活用プラットフォーム基盤技術に係る検討」

事業期間:平成29年度

平成30年11月29日

スマートコミュニティ部

成果報告会

株式会社三菱総合研究所環境・エネルギー事業本部主任研究員 浅岡 裕

1/23

目次

2/23

1. はじめに1-1. 調査の背景1-2. 調査の目的(ねらい)1-3. 調査の実施内容

2. 調査結果の概要2-1. 国内外における DER 活用事例の収集及びその技術的

仕様・アーキテクチャ等についての整理2-2. 複数の DER を統合して運用可能とするプラット

フォームに係る技術開発・標準化方針の策定2-3. NEDO実証事業の事例分析を踏まえた、今後の活動方

針とりまとめ

3. まとめ(+調査結果を踏まえた今後の提言)

1-1.調査の背景

3/23

世界的な再生可能エネルギーの普及および低価格化により、無電化地域やディーゼル発電に依存する山間部・島しょ部のみならず、現在系統に接続し大型発電所から給電される地域においても、数年後には、再生可能エネルギーに蓄電技術・EMS技術を加えた地産地消・自家消費モデルが、系統からの電力と比較しコスト競争力をもつ可能性が出てきている。

当該地域では、電力消費の大部分を再生可能エネルギー等、分散型エネルギー資源(DER:Distributed Energy Resources)に依存し、系統からの電力を補完する取組が進展すると考えられる。

こうした取組から、PV、蓄電池、電動乗用車、電気給湯器といったDERは急速な広がりが期待され、地産地消・自家消費の促進や電力系統への価値提供の観点から、これらDERを制御できることが必要であり、今後はDERを統合制御するプラットフォームの構築が進むと考えられる。

1-2.調査の目的(ねらい)

4/23

複数のDERを束ねるプラットフォームに係る今後の技術開発・標準化の

世界的な動向について整理し、我が国における技術開発・標準化すべき

テーマの検討に資する基礎資料を提供することを目的としている。

調査研究の目的

1-3.調査の実施内容

5/23

調査研究は、以下の3つの実施内容で構成される。

1.国内外における DER 活用事例の収集及びその技術的仕様・アーキテクチャ等についての整理

(1)需要家サイドに導入された DER を活用する事例の整理(2)DER を統合制御するプラットフォームに係る今後注目すべき

技術開発・標準化動向の整理

3.NEDO 実証事業の事例分析を踏まえた、今後の活動方針

(1)マンチェスター実証事業概要の調査(2)マンチェスター実証事業のケーススタディの作成と成果の整理

2.複数の DER を統合して運用可能とするプラットフォームに係る技術開発・標準化方針の策定

(1)我が国産業の競争力強化に向けた方向性の整理(2)国内機関・企業が取るべきアクションの整理

2.調査結果の概要

6/23

調査項目 結果

国内外における DER 活用事例の収集及びその技術的仕様・アーキテクチャ等についての整理

• 需要家サイドに導入された DER を活用するDERMS(分散電源管理システム)、DRMS(デマンドレスポンス管理システム)、マイクログリッドシステムといった事例を抽出し整理した。

• DER を統合制御するプラットフォームに係る今後注目すべき技術開発・標準化動向についてアーキテクチャやビジネスモデルの観点で整理し、ソフト・ハード両面で分析した。

複数の DER を統合して運用可能とするプラットフォームに係る技術開発・標準化方針の策定

• 国内外のDERを用いた取組事例や技術開発・標準化動向の情報を踏まえ、技術開発・標準化方針の対象とするプラットフォームを絞り込んだ。

• 我が国産業のいっそうの競争力強化を推進する観点から、技術開発・標準化に向けてどのような課題があるか、その課題の解決に向けたアクションを整理した。

NEDO 実証事業の事例分析を踏まえた、今後の活動方針

• 英国・マンチェスターにおけるスマートコミュニティ実証事業を例に、事業者へのヒアリング等を通じて、その成果・価値について整理するとともに、複数のDER を統合して運用可能とするプラットフォームに対応することによる事業の成果と価値の向上について検討した。

2-1.国内外における DER 活用事例の収集及びその技術的仕様・アーキテクチャ等についての整理

7/23

需要家サイドに導入された DER を活用する事例の抽出について、近年注目されている以下の5つのキーワードに基づき調査した。

キーワード 概要 主な調査対象

DERMS

• DERの最適運用・制御を目指した分散電源管理システムのこと

• 系統運用者、アグリゲータが(比較的大型・広範囲の)DERを制御

• Spirae(USA)

• Enbala Power Networks(CAN)

アグリゲーション・VPP

• 家庭用PV+蓄電池の最適制御(需要家向け・系統向け)を行うソリューション

• Sunverge(USA・AUT)

• Solar City(USA)

DERの電力取引市場

• アグリゲーション・VPP技術により、小容量のDERをフレキシビリティとして、電力市場に取り入れる検討

• Smart Net Project(ITA・DNK・ESP)

• CAISO(USA)

マイクログリッド

• 送電ロスや送電設備費用の削減の観点から構築されたマイクログリッド

• 近年は、再エネと蓄エネ技術を用いたクリーンで安価な取り組みも見られる

• 系統(AC)型とDC型が存在。

• Buffalo Niagara Medical Campus(USA)

• ARDA power(CAN)

P2P(ブロックチェーン)

• PV、蓄電池の普及に伴う、プロシューマ間の電力直接取引事例

• Power Ledger(AUT)

2-1.国内外における DER 活用事例の収集及びその技術的仕様・アーキテクチャ等についての整理

8/23

SpiraeはDERMSソフトウェアとして「Wave」という製品を開発しており、米国を中心にこのソリューションを提供している。

ERMが各DERの時系列データを収集し、CAMが制御しやすいようアグリゲートした上でDNMがデータを受け取り、システム全体のDERの監視が行われる。

DERの監視・制御やスケジューリング・ディスパッチ等の所謂DERMS機能の他に、オフグリッドでの系統からの解列・再連系等の機能も提供可能である。

「Wave」のシステムアーキテクチャ

出所)Spirae資料よりMRI作成

2-1.国内外における DER 活用事例の収集及びその技術的仕様・アーキテクチャ等についての整理

9/23

ARDA powerはDCマイクログリッドプラットフォームを提供している。

AC負荷と接続する場合(下図右下)は、DC – ACインバータを介する必要がある。

DCを採用するメリットとして、高エネルギー効率、変換ロスの最小化、必要機器の削減(コスト・スペース削減)等があげられている。

出所)ARDA power資料よりMRI作成

DC Sources

Solar PV

DC Microgrid

Fuel Cells

DC/DC EnergyConverters

・・・

DC/DC EnergyConverters

・・・

Battery

・Flow・Lithium-ion・Lead-Acid・Others

Battery DC/DC BatteryConverters

Energy Converters

AC Sources

AC Sources・Diesel/Gas Generator・Micro Turbine・Cogen

Grid-tieInverter

UninterruptibleAC Loads

・・・

InterruptibleAC Loads

UninterruptibleAC Loads

UninterruptibleAC Loads

AC GridAC Loads

760VD

C380VD

C380VD

C

DC LoadsDC Loads24VDC/48VDC/Other

DC Loads380VDC

DC Loads380VDC

DC Loads760VDC

Inverters

GG

・・

・・・

ARDA powerの提供するDCマイクログリッドプラットフォーム

2-1.国内外における DER 活用事例の収集及びその技術的仕様・アーキテクチャ等についての整理

10/23

DER を統合制御するプラットフォームに係るアーキテクチャについて、以下の4タイプに分類し個別に整理した。

系統運用者(ISO/TSO/DSO)

DER

TSO

DSODERMS

DER DER

DSO

④独立制御型(P2P・マイクログリッド)

監視?

系統運用者(ISO/TSO/DSO)

アグリゲータ

DER

①直接制御型(大型DER向け)

③TSO-DSO協調制御型(発送電分離向け)

監視・制御

系統・マーケット運用面の連携

②第三者を介する制御型(小型DER向け)

DERMS

制御指令 / マーケット信号

監視 / 統合制御

P2P

余剰電力等の取引

SCADA/DMS

DER DER DER

DERMS

監視 / 統合制御

DER DER

SCADA

DMS

DSO

DER

マイクログリッドコントローラ

マイクログリッド運用

DER DER

DMS

アグリゲータ

SCADA/DMS

マイクログリッド運用者

系統運用上の連携

① 直接制御型:系統運用者が直接DERを制御

② 第三者を介する制御型:系統運用者がアグリゲータ等を介してDERを制御

③ TSO-DSO協調制御型:発送電分離の環境下でTSO/DSOが連携しながらDERを制御

④ 独立制御型:マイクログリッドやP2P取引によるDER制御

2-1.国内外における DER 活用事例の収集及びその技術的仕様・アーキテクチャ等についての整理

11/23

DER を統合制御するプラットフォームに係るビジネスモデルについて、以下の2点に注目し、最新の動向を調査した。

DER制御技術の向上により、その制御対処は低圧のDERに拡大しつつある。

家庭用PV+蓄電池の統合制御が実現されている他、米国・欧州の電力市場においても低圧のDER活用をスコープに入れた、市場モデルや通信インフラ等の検討が実施されている。

低圧のDERの利用拡大

アグリゲーション技術の向上や機器の高機能化により、デマンドレスポンスによるkWh価値以外の価値提供も可能となっている。

ENBARA社のソリューションはDERアグリゲーションでpjmの周波数調整市場に参画しており、短周期調整力(ΔkW価値)の提供が可能である。

kWh以外の価値提供

2-1.国内外における DER 活用事例の収集及びその技術的仕様・アーキテクチャ等についての整理

12/23

これまでの調査結果を踏まえ、DERの活用に関わる主な技術開発・標準化動向を整理した。

「1.DERMS」、「2.アグリゲーション・VPP」、「3.DERの電力市場取引」については、既に標準化が進められており、技術の高度化が進められている状況。

一方で、「4.マイクログリッド」や「5.P2P」は、DCバスやブロックチェーン等の新しい技術を含むためまだ標準が作成されている段階であり、技術開発についても実証段階の側面が強く、今後の発展が期待される領域である。

項目 技術開発 標準化・ルール動向

1.DERMS

DERMSソフトウェアの高

度化

DERMS-他のシステム間:CIM、MultiSpeak

DERMS - DER 間: IEC 60870-5-104 、 IEC

61850、OpenADR、DNP3、IEEE 2030.5

2.アグリゲーショ

ン・VPP

アグリゲーション技術の

高度化

プロトコル:OpenADR( IEC 62746)、 IEC

61850、DNP3

3.DERの電力市場

取引

複数のアクターが取引可

能なプラットフォームの

構築

市場モデル:アンシラリー市場モデル

情報モデル:IEC 62325(CIMの電力市場取引へ

の拡張)、OpenADR

4.マイクロ

グリッド

マイクログリッドコント

ローラ

DCバス

系統(AC)型:IEEE 2030.7, 8(マイクログ

リッドコントローラ)

DC型:IEEE 2030.10(作成中)

5.P2P ブロックチェーン 市場モデル:需要家間電力取引モデル

ブロックチェーン技術(ISOにて作成中)

2-2.複数の DER を統合して運用可能とするプラットフォームに係る技術開発・標準化方針の策定

13/23

我が国産業の競争力強化に向けた考え方の整理に向け、PV・蓄電池・電動乗用車等、DERの活用状況や課題を整理した上で、今後、技術開発・標準化方針の対象とするプラットフォームを絞り込んだ。

今後、太陽光や蓄電池等複数のDERが導入されることを考えると、DCで各DERを束ねて1つのインバータで連系するほうが電力損失の観点で有利である。

DCマイクログリッドや需要家のDERをDCの形で接続した実証が各地で行われ検討されている一方で、DERとインバータとの間の物理的なつながりのあり方、またそれらを統合制御する際のインターオペラビリティについての規格などは現在存在していない。

今後様々なDERを統合し活用していく上でDERを統合するプラットフォームであるDCマイクログリッドのうち、特にインバータと各DERとのつながりのあり方(DCリンク)を検討することとした。DCマイクログリッドは各機器や需要家同士を直流で連系した統合的な制御を行うものであり直流での配電も含まれるが、本事業ではその中でも直流での機器同士のつながりのあり方、DCリンクについて焦点を絞ることとした。

2-2.複数の DER を統合して運用可能とするプラットフォームに係る技術開発・標準化方針の策定

14/23

DERの導入進展の影響もあり、DCリンク、DCマイクログリッドは注目が高まっており、世界各国で様々な取組がなされている。

国・地域 取組概要

米国 カリフォルニア州 Bosch 社の商用ビルのDCシステム実証

米国 コロラド州 The Alliance Sustainable ColoradoのビルのDCシステム化

米国 ミシガン州 NextEnergyによる住宅へのDC供給システム開発

米国 カリフォルニア州 Aquion Energy, Ideal Power社によるDCマイクログリッド

米国 ノースカロライナ州 Bosch社によるDCマイクログリッド

米国 ハワイ州 Hawaii Natural Energy InstituteのDC/ACマイクログリッド

米国 サウスカロライナ州 照明へのDC給電システム

カナダ オンタリオ州 ARDA PowerによるDCマイクログリッド

オランダ Philipsによる照明へのDCシステム導入

ドイツ Fraunhoferのビルマイクログリッド実証

中国 北京大学によるDCビルマイクログリッド実証

中国 廈門大学のDCマイクログリッド実証

日本 北海道 NTT-FによるDCマイクログリッド実証

日本 福岡 AC/DC住宅実証

出所)Vossos V., K Johnson, M Kloss, M Khattar, D Gerber, and R Brown, “ Review of DC Power Distribution in Buildings: A Technology and Market Assessment” を基にMRI 翻訳

2-2.複数の DER を統合して運用可能とするプラットフォームに係る技術開発・標準化方針の策定

15/23

Robert Boschはカリフォルニア州でDCマイクログリッドを実証している。

商業規模でのDCマイクログリッドを構築し、従来のACマイクログリッドと比較して優位性の検証を行っている。(2018年3月末まで)

商業ビルを380VのDCリンクを用いてPV、蓄電池やDC負荷で構成し、EMSを用いて負荷機器や蓄電池などを統合制御している。その他、バッテリーによる太陽光の出力変動の抑制、余剰電力が発生している際には系統への逆潮流を行うことや停電時にも自立運転を行うことが可能なシステムとなっている。

出所)Boschプレゼンテーション資料よりMRI作成

2-2.複数の DER を統合して運用可能とするプラットフォームに係る技術開発・標準化方針の策定

16/23

2012~2014年にはNTT-Fを代表事業者として北海道の帯広にてDCビルマイクログリッドの実証事業が行われた

380VのDCリンクに家電機器などのDC負荷やPV、蓄電池、EVを接続しており、直流EMSがインバータやDERと情報通信を行いながら、制御するシステムである。

直流EMS は前日計画・当日運用・リアルタイム制御によって管理される。前日計画では、運用前日断面において最適運転状態を負荷予測やPV発電予測を用いて計算、当日運用では、前日計画に極力従い、目標電圧を常に維持するように運用、リアルタイム制御では、当日運用どおりに動作されるために、各設備を瞬時に制御する。

出所)NTTファシリティーズ, 高電圧直流給電システム導入に向けた装置開発を基にMRI作成

2-2.複数の DER を統合して運用可能とするプラットフォームに係る技術開発・標準化方針の策定

17/23

文献や事例の調査から、今後DCリンクを検討していくにあたっての課題を下表の4点に整理している。

遮断に関す

る課題

DCではゼロ点がないため、電流導通時にはプラグの抜き差しなど遮断する場合には、

アークを消弧する必要性がある。

現在は ICT機器を対象として ”IEC TS 62735-1:2015”および”IEC TS 62735-2:2016”

としてプラグとソケットに関する規格が発行されている。

将来的にはDERの統合の面でも標準として利用される可能性は大いに想定される。

事故検出に

関する課題

ACと比較し地絡事故の危険が大きく、また、事故箇所の特定が難しい。

一般的には中性点を設置し、中性点に流れる電流を測定し地絡事故の除去を図っている。

現状、PVについてはインバータで地絡を検出しインバータの運転を停止することが一般的。

制御の課題

個別機器のDC/DCコンバータを用いて定電圧源・定電流源として制御を行い、潮流の制御

が行われる方式が多い。

将来的に家庭のDERをリソースとして活用する際には、どの機器を誰が制御するかといっ

た状況によって各DERの制御の仕方が異なることが想定される。そういった状況に応じた

制御方法等についてはあまり検討されていない。

制御を行う際の通信プロトコルについても統一した規格は整備されていない状況。

計量の課題

現在、非FIT認定設備からの逆潮流は出来ない状況。現在ERAB検討会において検討がなさ

れているが、将来的にどのように個別機器の計量を行い、取引に活用していくかについて

議論の余地がある。

また、各DERの個別機器の稼働状況をどうやって系統側(含アグリゲータ)から見える化

をして取引を行うのか等についても論点となりうる。

2-3. NEDO実証事業の事例分析を踏まえた、今後の活動方針とりまとめ

18/23

平成26~28年度に実施された、英国マンチェスター広域市でのスマートコミュニティ実証について、実証の成果・価値を調査し、ケーススタディを作成した。

国内からは日立製作所、ダイキン工業、みずほ銀行が参加。

実証は、1.ヒートポンプ(HP)導入実証 2.アグリゲーションシステム実証 3.ビジネスモデル構築の3テーマに基づき実施された。

HPHP

制御機能貯湯タンク

テーマ1:HP導入実証550台の設置と技術者の育成

電力計測器

通信機能

ICTプラットフォーム

運用管理機能 通信管理機能 データ処理機能 共通機能 セキュリティ機能 相互接続機能

HPアグリゲーション機能

個別需要計画機能

運転データ収集管理機能

電力アグリゲーション機能

電力収集計画

電力取引計画

電力取引

アグリゲーター

電力取引市場(将来)

モニタリング/コントロール

DR信号電力取引(システム連携)

テーマ2:アグリゲーションシステム実証システム構築、200kWのネガワット創出

テーマ3:ビジネスモデル構築経済性評価及びビジネスモデル実証

実証の実施内容

出所)マンチェスター実証ケーススタディより

2-3. NEDO実証事業の事例分析を踏まえた、今後の活動方針とりまとめ

19/23

テーマ1. HP導入実証では550戸の公営住宅へHPが導入された。

ガスボイラーが暖房機器の主流である英国では、HPやデマンドレスポンスに対する認知度が低く、実証参加者の勧誘は難航した。

HP導入技術を持った技術者の育成も本実証の成果である。ダイキンUKよりHPの施工およびコミッショニングに関するトレーニングが全9回、のべ35名に実施された、

ダイキンUKによるトレーニング、施工の様子

出所)マンチェスター実証ケーススタディより

2-3. NEDO実証事業の事例分析を踏まえた、今後の活動方針とりまとめ

20/23

テーマ2. アグリゲーションシステム実証では、550台のHPを統合制御することで、デマンドレスポンスが実施できることが確認された。

シュミレーター等を通じて、実際の英国電力市場において取引可能なレベルで、デマンドレスポンスの反応時間・持続時間等を達成できることが確認できた。

単体のHPでは間欠的にON/OFFを繰り返すが、統合制御することで安定的にまとまった容量のデマンドレスポンスを確保することができた。

出所)マンチェスター実証ケーススタディより

HPアグリゲーションの効果アグリゲーションシステムの全体像

2-3. NEDO実証事業の事例分析を踏まえた、今後の活動方針とりまとめ

21/23

テーマ3. ビジネスモデル構築では、HPやアグリゲーションビジネスの事業採算性評価が実施された。

政府の補助制度(RHI)無しには既存のガスボイラーに対しコスト優位性を示すことができないため、当面は政策的な後押しがHPの普及には必要であることがわかった。

アグリゲーションビジネスの損益分岐点は5.5~6万台のHP確保が条件であり、早期達成には、マンチェスター広域市(GM)域外への展開も必要との結果となった。

出所)マンチェスター実証ケーススタディより

アグリゲーションビジネスの収支シミュレーション

2-3. NEDO実証事業の事例分析を踏まえた、今後の活動方針とりまとめ

22/23

実証事業からの成果・教訓については、以下の3点に分類し整理している。

室温低下に応じて自動的に実証から離脱(Opt-out)するFail Safe機能を具備することで住民に負担をかけることなく、効果的なデマンドレスポンスを実施できた。

特に高齢者の習慣として、夜間に通信機器のLANケーブルが抜かれる等のトラブルが頻出した。実際にテクノロジーを住宅に導入していくには、住民の暮らしや習慣、文化等への配慮が必要であることが確認できた。

住民の暮らしとテクノロジーの融合

今回HPのみを制御対象リソースとしたが、暖房需要の少ない夏季についてデマンドレスポンスの取れ高が少なくなることが課題であった。

実際の事業化に向けては、PVや蓄電池、電動乗用車等のDERについても制御対象とすることで、収益性の改善および事業リスクの低減につながると想定される。

リソースの多様性

DERプラットフォームには、様々なDERの接続が想定されるため、各機器とプラットフォーム間の通信インターフェースについては標準化を進めることが重要である。

本実証で接続されたのはHPのみであるが、プラットフォームとしては様々なDERとの接続を想定し、OpenADR2.0bに準拠した通信フレームワークを提供している。

標準化の重要性

3.まとめ(+調査結果を踏まえた今後の提言)

23/23

本調査では、今後、技術開発・標準化方針の対象とするプラットフォームとして、DCリンクに着目し、その開発動向や課題について整理を実施した。

課題解決に向けた、今後のアクションについて、以下のように取りまとめた。

今後、FIT卒業電源を所有するような家庭の需要家に焦点があたるため、技術のみならず、DCリンクといったシステムの必要性の訴求についてマーケティングの観点も非常に重要と考えられる。

DCリンクの必要性の訴求

欧米ではDCシステムの標準化に関する様々な検討が行われており、我が国の競争力強化という観点では情報収集だけではなく必要に応じて打ち込んでいく姿勢も重要。

既に標準化が進むACシステムと比較すると、DCシステムの標準化はこれからの部分も大きく、積極的に関与していくことで、我が国のプレゼンス発揮につながる。

標準化への積極的な関わり

標準化に則った技術開発・製品開発を推し進めていくことは競争力強化につながる。

デバイスやモジュールといったハード面から、DCリンクに接続されたDERの制御システムといったソフト面まで、個別の技術開発を行うとともに実証試験を通じたシステムとしての検証も行っていく必要がある。

技術開発