15
野兎病 検査マニュアル 改訂版案v2.2 (平成23年9月)

野兎病 検査マニュアル 改訂版案v2.2...(1) 野兎病の概説 野兎病は野兎病菌 Francisella tularensis 感染による急性熱性疾患で、感染した野生ウサギや

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 野兎病 検査マニュアル 改訂版案v2.2...(1) 野兎病の概説 野兎病は野兎病菌 Francisella tularensis 感染による急性熱性疾患で、感染した野生ウサギや

野兎病

検査マニュアル

改訂版案v2.2

(平成23年9月)

Page 2: 野兎病 検査マニュアル 改訂版案v2.2...(1) 野兎病の概説 野兎病は野兎病菌 Francisella tularensis 感染による急性熱性疾患で、感染した野生ウサギや

目次

(1) 野兎病の概説

(2)検査に関する一般的注意

1.検査材料の採取

2.検査材料の輸送

3.検査の進め方

4.検査の判定

(3)検査方法

1.病原体の分離

2.抗体の検出

3.遺伝子の検出

(4)参考文献

(5)連絡先

(6)執筆者一覧

(7)参考図表

図1.野兎病の分布

表1.野兎病菌の性状

表2.野兎病の臨床病型

図2.野兎病菌の培地上のコロニーとグラム染色像

図3.微量凝集反応像

図4.PCRによる野兎病菌ゲノムDNAの検出

(8)追加参考情報

1)A型菌とB型菌のPCRによる鑑別

2)B型菌の由来を推定するPCR

3)日本分離菌株のMLVA解析

Page 3: 野兎病 検査マニュアル 改訂版案v2.2...(1) 野兎病の概説 野兎病は野兎病菌 Francisella tularensis 感染による急性熱性疾患で、感染した野生ウサギや

(1) 野兎病の概説

野兎病は野兎病菌 Francisella tularensis 感染による急性熱性疾患で、感染した野生ウサギや

げっ歯類などとの接触や、ダニ・アブなどの吸血性節足動物による刺咬により感染する動物由来

感染症である。本菌の感染は極めて少ない菌数(10-50個)でも成立するとされている。近年、国

内では稀となった疾患であるが米国、欧州では毎年報告があり、時に多数の患者を認めることが

ある(図1)。感染症法の四類感染症で全数届け出対象である。また、F. tularensisは特定病原体

(二種)に指定されている。 【病原体】グラム陰性の短桿菌(0.2 x 0.3~0.7μm)で多形性を示し、好気的に増殖する。非運動

性で芽胞は無い。マクロファージ内で増殖する細胞内寄生菌である。血清型は1種で、菌株の生化

学的性状、病原性、分布などの情報から3亜種に分類されているがヒトへの感染は主にsubsp. tularensis(A型)、subsp. holarctica(B型)の2亜種による。近年、ゲノム解析の進展により北

米に分布する強毒性とされていたA型菌については、さらにA1a, A1b, A2a, A2b などと区別され

病原性や米国内の分布が異なることが明らかになってきた。また、B型菌はエリスロマシン感受性

から生物型 biovarⅠ, Ⅱに分類され、日本分離株の中には弱いながらグリセロール分解能がある

ことからさらにjaponicaに分類されている(表1)。ゲノム解析でも多くの日本分離株は他の地域

のB型菌と区別される。他のFrancisella属菌のF. novicida やF. philomiragia は非常にまれにヒ

トに感染することがある。 【感染要因】日本では93%が野兎との接触であり、剥皮や調理に起因する。稀にネコ、クマ、リ

スとの接触、ダニ咬傷などからの感染例もある。海外では汚染された飲料水、河川での水系感染

や汚染された塵芥での呼吸器感染も発生している。 【臨床症状】潜伏期間は3日を中心に7日以内が主で、稀に2週間から1ヶ月に及ぶこともある。イ

ンフルエンザ様の全身症状ではじまり、発熱、頭痛、悪寒戦慄、筋肉痛、関節痛が認められる。

その後、弛緩熱として長期化し、所属リンパ節の腫脹、潰瘍または腫瘍化する。臨床的病型は表2の様に分類されている。日本では90%以上がリンパ節腫脹を伴う例であり、そのうち60%がリン

パ節型、20%が潰瘍リンパ節型である。他の型は稀である。不顕性感染は約2.5%に認められてい

る。 【治療・予防】治療にはゲンタマイシンやストレプトマイシン、テトラサイクリン、クロラムフ

ェニコール、およびキノロン系が有効で、ペニシリンやセファロスポリン系抗生物質は無効であ

る。旧ソ連の一部や米国で実験室感染予防のために弱毒生ワクチンが限定的に使用される以外一

般に使用されるワクチンはない。

Page 4: 野兎病 検査マニュアル 改訂版案v2.2...(1) 野兎病の概説 野兎病は野兎病菌 Francisella tularensis 感染による急性熱性疾患で、感染した野生ウサギや

(2) 検査に関する一般的注意

検査は、病原体の分離・同定、特異抗原や遺伝子の検出、特異抗体の検出によって行われる。

現在、野兎病検査のための市販の検査キットや試薬等は国内には無い。また、本邦では稀な感染

症であることから検査法や試薬などは普及しておらず、今後、検査法および試薬、精度管理など

を整備していく必要がある。検査に必要な試薬等については下記連絡先に問合せされたい。本マ

ニュアルでは病原体の分離・同定法、微量凝集反応法よる特異抗体の検出およびPCR法による野

兎病菌特異的遺伝子の検出法について記述する。 本菌は国立感染症研究所においてはレベル3病原体に分類されており、生菌の取り扱いは、

BSL3施設で実施することになっている。野兎病が疑われる臨床検体の取り扱いはBSL2内安全キ

ャビネット内で取り扱う。本菌が確認もしくは非常に強く疑われる場合はBSL3実験室で作業を実

施する。

1.検査材料の採取

病原体の検出、分離のための材料は、摘出リンパ節、リンパ節穿刺液、原発病巣部ぬぐい液な

どを対象にする。抗生物質投与前の採材が望ましい。抗体検査のためには、症状の急性期と回復

期のペア血清が望ましく、少なくとも1週以上の間隔で採血された血清がよい。 感染源として疑われる動物について材料が得られる場合は、血液、肝臓、脾臓など、また付着

したダニなどが病原体検出に用いられる。

2.検査材料の輸送

検査材料は凍結を避けてできるだけ速やかに冷蔵で搬送する。輸送にあったては「感染性物質

の輸送規則に関するガイダンス(WHO 和訳) 」http://www.nih.go.jp/niid/docs/guidance

_transport.pdfに準じて適切に実施する。

3.検査の進め方

患者の臨床症状や国内外の野兎病発生地での活動状況、動物や動物死骸との接触歴などから野兎

病が疑われることを十分に考慮して、野兎病の検査を実施する。

4.検査の判定

1)確定診断は病原体の分離・同定であるが、本菌は通常検査室で用いられる細菌用培地では

増殖せず、適当な培地を用いても数日を要するため分離が困難な場合が多い。 2)PCR法による検体からの野兎病菌遺伝子の検出は迅速な診断に有効である。また、分離菌

の同定にも有効である。 3)血清学的診断は、凝集反応により野兎病菌特異抗体の検出で行われるが急性期から回復期

において4倍以上の抗体価の上昇を陽性とする。単一血清では十分高い抗体価(40から160倍以上)の場合に陽性を疑う。ブルセラ属菌の一部との交差反応があることが知られてい

る。 *鑑別診断を要する疾患としてツツガムシ病、日本紅斑熱、ネコ引っ掻き病、ブルセラ症、

結核、ペストなどがある

Page 5: 野兎病 検査マニュアル 改訂版案v2.2...(1) 野兎病の概説 野兎病は野兎病菌 Francisella tularensis 感染による急性熱性疾患で、感染した野生ウサギや

(3) 検査方法

1.病原体の分離

グルコースおよびシステインを含む血液またはチョコレート寒天培地が用いられる。ユーゴン

(Eugon)チョコレート寒天培地は容易に調製でき、本菌の培養に使用できる。他にはFrancis培地、

McCoy & Chapin培地、セアーマーティン改変培地などが用いられている。雑菌の混入がある場

合に、ペニシリン、ポリミキシンB、シクロヘキシミドなどを添加する。人工培地で分離できない

場合でも、マウス接種法により分離できる事もある(実施可能な施設等がある場合は参考文献8、10に従って行うが、実験室感染が無いように十分な注意が必要となる)。

1)材料の採取および培養までの保存

検体は無菌的に採取後、直ちに培地に塗抹し培養する事が望ましい。それが困難な場合は材料

を4℃に保存し、なるべく速やかに培養の準備をする。 2)ユーゴン(血液またはチョコレート)寒天培地の調製

①試薬および器具 DifcoTM Eugon agar(BD #258910 、ヒツジ脱繊血(日本バイオテストなど) 、蒸留水 オートクレーブ 、恒温槽 、三角フラスコ(500 ml)、 メスシリンダー 、計量天秤 、ピペット、 シャーレ 等

②培地の調製手順(シャーレ10枚分) ・ 三角フラスコ内にて200 mlの蒸留水にEugon agar 9.08 gを加温溶解させ、オートクレ

ーブにて121℃、15分間滅菌する。 ・ 50℃程度まで冷却後、保温しておいた脱繊血16 mlを無菌的に混合し、緩やかに攪拌す

る。チョコレート寒天作製の場合、培地をチョコレート様の色を呈すまで80℃程度に保

温する。 ・ シャーレに20 mlずつ分注し、固まるまで放置する。 ・ 使用まで4℃に保存する。 *抗生物質添加培地作製の場合、培地の温度が冷め、シャーレに分注する直前にペニシ

リンを 500 U/ml に添加する。

3)検体の培地への接種および培養 ① 摘出リンパ節の場合は割面を直接培地に塗布する。また、生理食塩水にて10%乳剤として、

静置後の上清を培地に塗布する。穿刺液やぬぐい液の場合は直接塗布する。 ② 33~37℃の好気的条件下で培養する。

*通常、コロニーは約2~4日の培養で観察されるが14日目まで観察する事が望ましい。 抗生物質を使用した場合、増殖が遅延する傾向がある。 CO2濃度は本菌の増殖に関与しな

いとされている。

4)同定 ① コロニーの性状

ユーゴンチョコレート寒天培地上では白色から灰白色を呈し、露滴状、湿潤、光沢あり粘

稠性が高い。大きさは直径1~4 mmである。(図2A)(使用培地により異なることがある)

疑わしいコロニーについて同定を行う。

Page 6: 野兎病 検査マニュアル 改訂版案v2.2...(1) 野兎病の概説 野兎病は野兎病菌 Francisella tularensis 感染による急性熱性疾患で、感染した野生ウサギや

② グラム染色鏡検 グラム陰性菌であり、赤色に染まる(図2B)。小桿菌であるが、長時間の培養にて球菌状、長

桿菌状などを示す多形性である。蒸留水に懸濁すると球形に変化する。芽胞は形成せず、

鞭毛は保有しない。 ③ 凝集反応による同定

抗血清を用いた菌体凝集反応が有用である。スライドグラス上にて分離菌懸濁液および抗

血清をそれぞれ50 μl ずつ混合し、その凝集像から判定する。3分以内に菌懸濁液の粒子が

凝集した場合に野兎病菌を疑う。 *菌懸濁液の濃度が薄い場合は凝集像が見にくい。またユーゴン寒天培地で培養した菌は

自家凝集しやすいため、試験に供する前に生理食塩水で3回程洗浄する。 ③ PCR法による同定

後述するPCR法で特異遺伝子の検出により行う。 ④ 生化学的性状

カタラーゼ弱陽性、オキシダーゼ陰性。その他、biovar によって異なる性状を示すが、そ

の検査は煩雑で時間を要する 2.抗体の検出

野兎病菌に対する血中抗体価は発症後 1~2 週後から上昇し、その後、長期間維持される。 特異抗体の検出は、主に凝集反応(試験管法またはマイクロプレート法)が行われるが、他に

間接赤血球凝集反応、ラテックス凝集反応、ELISA、ウェスタンブロット法などで行われる。

ここでは凝集反応のうち感度が良く、使用血清および抗原が少量で済む利点があるマイクロプ

レート法(微量凝集反応法)について記載する。 1) 検体 患者の急性期(発症直後)および回復期(発症2週目以降)のペア血清を同時に測定する事が望ま

しい。また、少なくとも1週間以上の間隔で採血されたものがよい。 2) 微量凝集反応法による抗体検出

①試薬、機材 ・ ホルマリン不活化菌液(②参照) ・ 生理食塩水 ・ 0.5%ホルマリン加生理食塩水 ・ 0.25%サフラニン溶液(日水製薬株式会社「フェイバーG」) ・ U底96穴マイクロプレート ・ インキュベーター ・ プレート振盪機 ・ 陽性および陰性対照血清 ・ マイクロチューブ、ピペット類

②抗原液の調製 ・ 新鮮培養菌体を0.5%ホルマリン加生理食塩水に懸濁し、37°C一晩保温し不活化する。 ・ 一部を培地に接種して菌の不活化を確認する。 ・ 0.5%ホルマリン加生理食塩水にて2回以上洗浄する。

Page 7: 野兎病 検査マニュアル 改訂版案v2.2...(1) 野兎病の概説 野兎病は野兎病菌 Francisella tularensis 感染による急性熱性疾患で、感染した野生ウサギや

・さらに生理食塩水で O.D.550値1.0に調整する。 ・ 0.25%サフラニン溶液を50分の1量添加する(最終濃度0.005%)。 *菌株の指定はないが、国立感染症研究所では日本国内分離のYama株を用いている。 *自家凝集しない事をアクリフラビン反応によって確認しておく。 (0.1%アクリフラビン水溶液と菌液を1滴ずつ混和し、1~2分後に凝集像を観察する)

③ 反応手順 ・ 被験血清ならびに陽性および陰性対照血清を 56℃、30 分間処理する。 ・ 生理食塩水にて5から640倍まで2倍段階で希釈する。 ・ U底96穴プレートでウェルあたり25 μlの希釈血清を加える。 ・ 抗原液を25 μlずつ滴下する。 ・ プレートを 20 秒程緩やかに振盪混和する。 ・ 乾燥しないように(湿潤箱に入れて)37℃にて 16 時間以上感作させる ④判定 ・ 菌体が、ボタン状に沈殿したものを陰性像、ウェルの壁面に分散したものを陽性像とする。

白色ライトボックス上で観察すると判定しやすい。(図3) ・ 凝集力価は、陽性凝集像を示す血清の最高希釈倍数で表す。(血清と抗原液を等量混合し

ているので10倍からとなる) ・ 回復期血清の凝集価が急性期血清の凝集価より4倍以上上昇した場合を陽性とする。 *単血清では十分高い抗体価(40から160倍以上)の場合に陽性を疑い、再度採血した血清

について再測定する。 * ブルセラ属菌との交差反応する事が知られており、必要に応じてブルセラ属菌に対する抗

体測定を行うか、ブルセラ属菌で吸収した血清について抗体測定を行う(検査マニュアル

「ブルセラ症」参照)

3.遺伝子の検出 野兎病菌の培養による検出法は日数を必要とし困難な場合が多いため、迅速な病原体検出法と

して、野兎病菌特異的遺伝子断片をPCR法にて増幅検出する方法が有用である。また、分離菌

の同定にも有効である。ここでは野兎病菌の16S リボソームRNA遺伝子(16S rRNA)、2種の

外膜蛋白質遺伝子 [Outer Membrane Protein (fopA)およびMajor Membrane Protein (tul4)]を標的としたPCR法について記載する。

1)必要な試薬・器具・機材 ・ DNA抽出キット;SepaGene (#SG0025; 三光純薬)など ・ DEPC-H2O ・ TE buffer (pH 8.0) (10 mM Tris (pH 8.0), 1 mM EDTA) ・ 増幅用プライマーセット

Page 8: 野兎病 検査マニュアル 改訂版案v2.2...(1) 野兎病の概説 野兎病は野兎病菌 Francisella tularensis 感染による急性熱性疾患で、感染した野生ウサギや

・ PCRキット (TaKaRa Ex Taq #PR001Bなど)

・ サーマルサイクラー

・ エチジウムブロマイド

・ アガロース

・ TAE buffer

・ 電気泳動装置

・ UVトランスイルミネター

・ 撮影装置

・ その他ピペット、チップ、チューブ類 2)DNAの抽出

・ 血液や生検材料や、分離培養した細菌コロニーから直接市販のDNA抽出キット等を用いて

プロトコールに従い抽出精製し、DEPC-H2OあるいはTE buffer (pH 8.0)に溶解する。

・ 培養菌コロニーの場合は、マイクロチューブ(スクリューキャップ付)に入れた0.1 mlの

TE bufferに菌を浮遊させ95℃、10分間加熱後、その遠心上清を用いることも出来る。

3)PCR反応手順

① 反応溶液組成 (例)

TaKaRa Ex Taq (5 unit/μl) 0.25 μl

10x Ex Taq Buffer 5 μl

dNTP Mixture (2.5 mM each) 4 μl

Sample DNA 1 μl *

標的遺伝子 プライマー名と塩基配列 増幅バンドサ

イズ(bp) 文献

16S rRNA

F5 5’-CCTTTTTgAgTTTCgCTCC-3’ 1142 11 F115’-TACCAgTTggAAACgACTgT-3’

fopA

MS15’-CAgCTACTACACAAAgCAgTgg-3’ 708 12 MAI5’-CACCATTTACTgTATAgCACgC -3’

tul4

TUL4-435: 5’-gCTgTATCATCATTTAATAAACTgCTg-3’ 407 13 TUL4-863 5’-TTgggAAgCTTgTATCATggCACT-3’

Page 9: 野兎病 検査マニュアル 改訂版案v2.2...(1) 野兎病の概説 野兎病は野兎病菌 Francisella tularensis 感染による急性熱性疾患で、感染した野生ウサギや

Sense Primer (5 μM) 1 μl (final 0.1 μM)

Antisense Primer (5 μM) 1 μl (final 0.1 μM)

DEPC-H2O 37.75 μl *

Total volume 50 μl

*適宜加える検体DNA 量とDEPC-H

2O 量を調整し、総量を 50 μl とする。

(この半分量25μl でも可能である)

② PCR 反応条件

95℃, 5 min

95℃, 30 sec

58℃, 30 sec 30 cycles

72℃, 30 sec

72℃, 10 min

4℃に冷却

③ 手順

・ PCR用反応マイクロチューブに①の組成の反応液を加える。

・ サーマルサイクラーにセットし、②の条件で反応させる。

・ PCRサンプルの5 μlを1.3%アガロースゲル(1x TAE buffer)で電気泳動する。

・ エチジウムブロマイド染色

・ バンドをUVトランスイルミネーターにて観察する。

④ 増幅バンド像(図4参照)

・ 16S rRNA遺伝子:全てのFrancisella属菌で1142 bpが増幅される。

・ fopA遺伝子:F. tularensis, F. novicidaでは708 bpが増幅され、F. phiromiragia では増

幅されない。

・ tul4遺伝子:F. tularensis, F. novicida,では407 bpが増幅され、F. phiromiragiaでは増

幅されない。

Page 10: 野兎病 検査マニュアル 改訂版案v2.2...(1) 野兎病の概説 野兎病は野兎病菌 Francisella tularensis 感染による急性熱性疾患で、感染した野生ウサギや

(4) 参考文献

概説

1) Ellis J., Oyston P. C. F., Green, M. and Titball R. W. (2002) Tularemia. Clinical

Microbiology Reviews 15: 631-646.

2) 藤田博己 (2002) 野兎病菌.「細菌学」竹田美文、林英夫編:pp. 245-250 朝倉書店.

3) 大原義朗 (2003) 野兎病.「動物由来感染症その診断と対策」神山恒夫、山田章雄編:pp. 209

-213 真興交易.

4) Petersen J. M. and Molins C. R. (2010) Subpopulations of Francisella tularensis ssp.

tularensis and holarctica: identification and associated epidemiology. Future Microbiol. 5:

649-661.

5) Fujita O., Uda, A., Hotta A., et al. (2008) Genetic diversity of Francisella tularensis

subspecies holarctica strains isolated in Japan. Microbiol. Immunol. 52: 270-276.

6) WHO Guidelines on Tularemia (WHO 2007)

培養、抗体検査

7) Sato T., Fujita H., Ohara Y., et al. (1990) Microagglutination test for early and specific

serodiagnosis of Tularemia. J. Clin. Microbiol. 28: 2372-2374.

8) 佐藤 佶、藤田博己、渡辺百合子ら (1992) 大原研究所における野兎病の検査法.大原年報35:

1-10.

9) Chu, M. C. and Weyant, R. S. (2003) Francisella and Brucella. “Mannual of Clinical

Microbiology” 8th ed., P. R. Murray Ed.: pp. 789-808. ASM Press, Washington D. C.

10)大原甞一郎、桜井信夫(1987)野兎病菌.「微生物検査必携、細菌・真菌検査第3版」I各論6

人畜共通感染症:pp. I 28-I 39日本公衆衛生協会.

PCR参考

11) Forsman, M., Sandström, G. and Sjöstedt, A. (1994) Analysis of 16S ribosomal DNA

sequences of Francisella tularensis strains and utilization for determination of the

phylogeny of the genus and for identification of strains by PCR. Int. J. Syst. Bacteriol. 44:

38-46.

12) Higgins, J. A., Hubalek, Z., Halouzka, J., et al. (2000) Detection of Francisella tularensis in

infected mammals and vectors using a probe-based polymerase chain reaction. Am. J. Trop.

Page 11: 野兎病 検査マニュアル 改訂版案v2.2...(1) 野兎病の概説 野兎病は野兎病菌 Francisella tularensis 感染による急性熱性疾患で、感染した野生ウサギや

Med. Hyg. 62: 310-318. 13) Sjöstedt, A., Eriksson, U., Berglund, L. et al. (1997) Detection of Francisella tularensis in

ulcers of patients with tularemia by PCR. J. Clin. Microbiol. 35:1045-1048.

(5) 連絡先

国立感染症研究所 獣医科学部 第三室

棚林 清

電話:03-5285-1111 (内線2623)

ファックス03-5285-1179

(6) 執筆者一覧

棚林 清:国立感染症研究所 獣医科学部 第三室

畠山 薫:東京都健康安全研究センター 微生物部

堀田明豊:国立感染症研究所 獣医科学部

藤田 修:国立感染症研究所 獣医科学部

Page 12: 野兎病 検査マニュアル 改訂版案v2.2...(1) 野兎病の概説 野兎病は野兎病菌 Francisella tularensis 感染による急性熱性疾患で、感染した野生ウサギや

(7) 参考図表

Page 13: 野兎病 検査マニュアル 改訂版案v2.2...(1) 野兎病の概説 野兎病は野兎病菌 Francisella tularensis 感染による急性熱性疾患で、感染した野生ウサギや
Page 14: 野兎病 検査マニュアル 改訂版案v2.2...(1) 野兎病の概説 野兎病は野兎病菌 Francisella tularensis 感染による急性熱性疾患で、感染した野生ウサギや
Page 15: 野兎病 検査マニュアル 改訂版案v2.2...(1) 野兎病の概説 野兎病は野兎病菌 Francisella tularensis 感染による急性熱性疾患で、感染した野生ウサギや

(8) 追加参考情報

野兎病菌F. tularensisの分離またはゲノムが検出された場合は、その亜種の同定や菌の由来

地域を推定する方法として以下の方法が有用で参考にされたい。 国立感染症研究所獣医科学部ではこれらの解析が可能であり必要に応じて問い合わせされた

い。

1)F. tularensis subsp. tularensis (A型)とsubsp. holarctica (B型)のPCRによる鑑別 a) ISFtu2領域のPCR増幅断片のサイズの差

文献:Petersen et al. (2004) Emerg Infect Dis 10 : 419-425 b) PPI-helicase遺伝子領域のPCR増幅断片のサイズの差

文献:Goethert et al. (2004) J Clin Microbiol 42: 4968-4973

2)F. tularensis subsp. holarctica (B型)の海外由来か国内由来を推定するPCR

RD1領域のPCR増幅断片のサイズの差 文献:Broekhuijsen M. et al. (2003) J Clin Microbiol. 41: 2924-2931

3)日本分離菌株のMLVA解析

MLVA (Multiple-locus variable-number tandem repeat analysis)法:VNTR (variable-number of tandem repeat) 7か所の繰り返し配列数の組み合わせを比較

解析したところ国内分離株はほとんど区別される(異なるVNTRパターンを示す) 文献:Fujita O. et al. (2008) Microbiol Immunol. 52: 270-276