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0 教師力に関する研究 -授業の達人に学ぶ- Research on Teachers’ Competency ― Learning from High Performers ― 千葉市教育センター

教師力に関する研究...2 第1章 はじめに 1 問題と目的 ジャン・ジャック・ルソー(Jean-Jacques Rousseau, 1712-1778)が、架空の生徒「エミール」の成長を通し

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教師力に関する研究 -授業の達人に学ぶ-

Research on Teachers’ Competency

― Learning from High Performers ―

千葉市教育センター

1

第 1 章 はじめに

1 問題と目的

2 分析の方法と対象

第2章 教師力のとらえ方

1 なぜ、今、教師力なのか

(1)教師力にかかわる歴史

(2)年齢別教師層の現状

2 先行研究

3 理想の教師像調査

(1)小中学生の調査より

(2)大学生の調査より

(3)調査の見解

第3章 教師力を学ぶ

1 若年層教師の授業のコンピテンシー

2 授業の達人からわかること

(1)ヒアリング対象者の属性

(2)ヒアリングの手続き

(3)コンピテンシーの一致率

(4)子どもを伸ばす基本的なコンピテンシー

(5)授業を深める基本的なコンピテンシー

(6)授業を創り出す基本的なコンピテンシー

(7)自分を伸ばした要素

第4章 結語

資料:達人のコード・マトリックス

教師力に関する研究 -授業の達人から学ぶ-

Research on Teachers’ Competency

― Learning from High Performers ―

2

第1章 はじめに

1 問題と目的

ジャン・ジャック・ルソー(Jean-Jacques Rousseau,

1712-1778)が、架空の生徒「エミール」の成長を通し

て教師力を説いたのが1762年。今から約250年前のこ

とである 1)。教師に求められる資質能力とは何か。い

つの時代にも問われ続けてきた古くて、そして新しい

課題である。 教師力という言葉がにわかに登場したのは、2003年

頃。朝日新聞で連載された「教師力」、続いて読売新聞

の「教育ルネサンス」で連載された「教師力」が影響

しているものと考えられる。

現在でも、書店では、確認できる範囲として 20冊を

越える教師力をテーマにした書籍が並んでおり、依然

として教師力という言葉に翳りは見えない。このこと

から、現在の教育界において教師力の注目度は高いと

言えよう。

教師力という言葉が登場する時期と前後して、「○○

力」という、語尾に「力」をつけた言葉がよく目につ

くようになった。鈍感力、人間力、社長力、仕事力…。

「○○力」という言葉が世間に氾濫し、現在もその流

行は継続している。これは、どのような言葉にも「力」

をつけると、内容がひと括りに連想され、曖昧であり

つつイメージ化が図れる。日本人は、こういう曖昧な

概念を好む国民性なのであろう。

このような現状の中、教師力に関して、本研究では

次の3つの問題点を指摘する。

まず、1つ目に、なぜ今、教師力が注目されるかと

いう点である。教師力に関する書籍が数多くの刊行さ

れる裏側には、ニーズとして教師を引き付ける何かが

あるのではないかと推測される。

次に、教師力という言葉の曖昧さについてである。

そもそも教師力とは、「○○という能力を教師力と定義

する」といった学問的体系から明確になったものでは

ない。教師の語尾に「力」をつけているだけのとても

曖昧な概念なのである。したがって各方面で述べられ

ている教師力には、いくつもの視点に相違がある。そ

こで、先行研究および調査研究を通して、千葉市(以

下、「本市」と称す)の現状に最も即した教師力をどの

ようにとらえたらよいかを検討する。なお、対象とす

る教師について、管理職及び行政職まで広げると膨大

な範囲にならざるを得ない。そこで本研究は、「子ども

からみたいつもの先生」、すなわち、日々子どもたちと

第一線で接する教師を対象としてとらえていく。

最後に、その教師力の中核をなす具体的に教師に会

得させたい「力」をどのように導き出せばいいのかと

いう点である。この力を「コンピテンシー」とし、本

研究では「授業の達人」に着目した。そこで全国より

達人の抽出を図るとともに、構造的な面接を通し、教

師力向上につながる授業のコンピテンシーを分析して

いきたい。

教師力に関する研究

-授業の達人から学ぶー Research on Teachers’ Competency

-Learning from High Performers-

3

本研究は教師力について、実証的な研究として、で

きる限りデータに基づいて分析し、教師力向上のため

の提言をすることを目的とする。

2 分析の方法と対象

教師力という曖昧な概念を追究する実証研究におい

て、完全な調査方法は存在しない。したがって、それ

ぞれの調査方法の優れた点を補完しながら、より精緻

に分析することが重要である。

まず、問題点の1に指摘した教師力の注目度につい

ての調査に関しては、「教師に求められる資質能力」

という点において、過去における歴史の文献研究を紐

解くことで解明していきたい。特に教師力という言葉

が広がっていく 2005 年前後にどのような社会的動向

が見られたのか注目していきたい。

2つ目の問題である教師力をどのようにとらえるか

という課題に関して、すでに教師力として研究してい

る文献や各研究センターでの定義を整理するととも

に、研究目的に照らし合わせて、本市の子どもたちの

求める教師像調査を抽出生徒より行う。それは質問紙

法による量的調査を中核に置きながら、千葉大学で

2008 年に行った千葉県の子どもたちに対する 3000 人

規模の調査研究「プレ 10・ポスト 10」研究で得た結果と

の整合性を図り、それらの結果から本市における教師

力のとらえ方をまとめる 2)。

3つ目の教師力に関して、具体的に教師の資質能力

アップにつながるコンピテンシーをどのように導き出

せばいいのかという点につき、「授業の達人」から聞き

取りによる質的な調査を行い、帰納的に分析・評価を

行う。この中では、性急な一般化は避け、個別的な事

実の記述・分析に独自の意義を見いだすように心がけ

る 3)。分析の対象とした「授業の達人」は「論文や教

育書など、顕著な研究成果を残したり、様々な会での

リーダーシップを発揮し、5名以上から『授業の達人』

と推薦され、さらに千葉市教育センター教育研究部門

および教職員研修部門内で検討した結果、一人の否定

がない者。また、他都道府県の場合においても顕著な

研究成果を持ち、5名以上の推薦があり、かつ当該教

育委員会あるいはそれに準ずる教育団体や管理職組織

から否定がない者。あるいはそれに準ずる者」と規定

し、全国より29名の「授業の達人」を抽出した。

第2章 教師力のとらえ方

1 なぜ、今、教師力なのか

(1) 教師力にかかわる歴史

問題の所在で指摘した1点目の「なぜ、今、教師力

が注目されるか」という点について、文献を紐解くと、

冒頭で述べたように、いつの時代にも求められる教員

の資質能力として、これまでも常に問われ続けてきた

課題であることがわかる。それほど、教師に求められ

る資質能力をめぐるテーマは重要なのである。だから

こそ、天笠茂が述べるように、人々は懲りもせず、ま

た、飽きもせず論じ続けているのである 4)。

わが国において、教職の在り方を強く規定し、方向

付けた最初のものは、明治6年に師範学校から出され

た「小学教師心得」とされている。この第1条には「凡

教師タル者ハ学文算筆ヲ教フルノミニ非ズ父兄ノ教訓

ヲ助ケテ飲食起居ニ至ル迄心ヲ用イテ教導スベシ故ニ

生徒ノ中学術進歩セズ或ハ平日不行状ノ徒アラバ教師

タル者ノ越度タル可シ」と記述されており、授業力の

向上のみならず、生き方指導にも尽力することを明記

している。

近年では、昭和 46年中央教育審議会(以下、「中教

審」と称す)答申「今後における学校教育の総合的な

拡充整備のための基本的施策について」の「教員の養

成確保とその地位の向上のための施策」の中で、「教職

は、本来極めて高い専門性を必要とするものであり、

4

教育者としての基本的な資質の上に、教育の理念及び

人間の成長と発達について深い理解、教科の内容など

に関する専門的な学識、さらにそれらを教育効果とし

て結実させる実践的な指導能力など、高度の資質と総

合的能力が要求させる。そのような資質と能力は、そ

の養成、採用、研修、再教育の過程を通じてしだいに

形成されるべきだろう」と述べられている。それを受

け、翌年、教育養成審議会(以下、「教養審」と称す)

建議では、教員としての体験や研修の過程を通じて形

成され向上が図られていくものであるとし、改善方策

を提言した。

今日求められている教師の資質能力の源流は、臨時

教育審議会答申(昭和 60年・1985~1987)「教育改革

に関する第1次~第3次答申」である。「人間愛や児童

生徒に対する教育的愛情を基礎とする広く豊かな教養、

教育の理念や人間の成長・発達について深い理解、教

科等に関する専門的知識、そしてそれらの上に立つ実

践的指導力に児童生徒との心の触れ合い」をいつの時

代にも教師に望まれる資質能力ととらえたのである 5)。

その後、この考え方は平成9年の教養審第1次答申

の「新たな時代に向けた教員養成の改善方策について」

に受け継がれていく。「教員に求められる資質能力とは

何か」について、「いつの時代にも変わらないものもあ

るし、そのときどきの社会の状況により特に重視させ

るものもある」とし、いつの時代にも求められる資質

能力と、今後特に教員に求められる具体的資質能力の

2つに分け提言した 6)。

平成 17年 10月の中教審答申「新しい時代の義務教

育を創造する」において、教師の資質向上が重要であ

ると指摘し、優れた教師の条件として次の3つをあげ

ている。1つ目は「教職に対する強い情熱」である。

これは教師の仕事に対する使命感や誇り、子どもに対

する愛情や責任感、常に学び続ける向上心などである。

2つ目は「教育の専門家としての確かな力量」である。

これは子どもの理解力、児童生徒指導力、集団指導の

力、学級づくりの力、学習指導・授業づくりの力、教

材解釈の力などである。3つ目は「総合的な人間力」

である。これは豊かな人間性、社会性、常識と教養、

礼儀作法をはじめ対人関係能力、コミュニケーション

能力などの人格的資質、教職員全体と協力する力など

である。

佐藤修司はこの17年度中教審答申の2つ目が今日に

おける教師力の重視につながり、教育改革の要とされ

るようになったと述べている。そしてこの動きは教員

免許の更新制、大学の教職課程の改善、教職大学院の

創設とつながるのである 7)。

(2)年齢別教師層の現状

全国の年齢別教師層に大幅な変化が表れるようにな

った。団塊の世代の世代交代が始まり、同時に若年層

の教師が大量に採用されだしたのである。

平成21年度の本市の年齢別教師数について、[図1]

(次頁)で示すように、すでに小学校では大量採用が

始まり、中学校でも微増し、20代若年層教師が一集団

を形成している。今後、ベテラン層が退職していくこ

の10年間には、さらに新規採用が進むことになり、学

校全体の若年層教師の占める割合が高くなる。

この現象は、[図1]で示す第1集団の 50代ベテラ

ン層教師の採用された昭和50年代に様相が酷似して

いる。[図2](次頁)は昭和53年度の本市における小

中学校年齢別教師数であるが、20代教師層が圧倒的割

合を占めている。昭和50年代の本市は爆発的な人口増

加がみられ、児童生徒が増え、学校が次々と開校され

た。それにともない、教師の大量採用は昭和 60年頃ま

で継続する。したがって 50代ベテラン層教師の大量退

職がピークを迎える平成26年度あたりから、昭和50

年代同様に学校全体のほぼ半数が若年層の教師となる

と推測できる。昭和50年代を振り返ると、30代後半

から40代前半においても管理職・行政職に就く教師が

出現したことから、今後、子どもと直接かかわる教育

現場の第一線で活動する時期は、現 20代30代教師が

考えているより短く、現30代教師への教師力向上の期

待と啓発は、20代教師にも当てはめて考えるべきこと

を示唆している。

5

[図1]平成21年度千葉市小中学校年齢別教師数

[図2]昭和53年度千葉市小中学校年齢別教師数

※[図1][図2]は管理職・行政職は含まず

もう一つの示唆は、[図1]に示す 50代ベテラン層

教師の大量退職に伴う知的財産の喪失である。ベテラ

ン教師による知恵と技によって、今日の学校教育は平

常を保ってきた。しかし、ベテラン層の次代を担う 30

代半ばから 40代前半の中堅教師層が極端に薄いため、

ベテラン層のもつ知恵と技の伝承が十分なされてこな

かった。

細かいノウハウなどの教師文化の伝承は、伝える側

も伝えられる側も一世代の違い同士ならスムーズに行

える傾向にある。ベテラン層は中堅層への指導は気軽

に出来るし、若年層は中堅層に気兹ねなく質問できる。

すなわち、20代教師からしてみれば、自分に近い存在、

今にも手が届きそうな存在として 30 代教師が格好の

モデルになる。しかし、二世代違うとなめらかな接続

が難しくなる。したがって中堅層教師の存在が重要と

なるが、ベテラン教師と若年層教師の接続に十分寄与

していないのが現状である。

千葉大学でも同様のことを指摘している。同大教育

学部では、2008年、文部科学省の「大学・大学院にお

ける教員養成推進プログラム」(以下、「教員養成 GP」

と称す)を千葉県教育委員会・千葉市教育委員会の協

力を得て推進し報告をまとめた。これによると、千葉

県において教員採用数が寡尐であった年代の教師は、

同年代の教師との交流や情報交換の経験が乏しく、実

践上の問題を抱えても相談相手が見つからず孤立する

傾向にあった。一方、教職経験 10年を過ぎても校内で

は相対的に若年教員である状態が長く続き、年下の教

員の面倒をみる経験に乏しい。その結果、職務遂行が

与えられた分掌の範囲内に限られ、主体的に教師集団

をリードしていく自覚を持ちにくい状況にあったと、

上杉賢士は問題点を指摘している 8)。

このような状況の中、今後、学校が機能低下に陥ら

ないためにも、若年層を育てるだけに止まらず、知恵

と技を豊富に持つベテラン層の教師力を整理し、伝え

るとともに中堅層教師のリーダーシップを育成してい

くことが喫緊の課題であることがわかる。

2 先行研究

各教育機関及び書籍・マスコミ等において、「教師力」

をどのようにとらえているのだろうか。先行研究とし

て整理していきたい。

横浜市教育センターでは、「横浜市教育センター教職

員研修・概要」(2008)においてキャリアステージを「基

礎能力開発期」「基礎能力活用期」「教職経験力活用期」

「学校運営力開発活用期」「組織・経営マネジメント開

発活用期」の5段階に分け、その職能に忚じて教師力

を「授業力」「マネジメント力」「連携力」からそれぞ

れ規定した。その中で「授業力」について「児童生徒

理解を基盤に、他の職員と連携してわかる授業を目指

0

100

200

300

400

500

600人数

年齢

昭和53年度小中学校年齢別教師数

中学校教師

小学校教師

0

50

100

150

200

250

300

平成21年度小中学校年齢別教師数

中学校教師

小学校教師

6

し、教材開発、指導と評価など、日常的具体的に展開

することができる力」と規定している。「マネジメント

力」については「組織の一員としての自覚をもち、学

校教育目標実現に向けてチームで協働するなど、組織

的に取り組むことができる力」と規定している。「連携

力」については「学校経営や学年・学級経営上の様々

な課題に対して、同僚や地域・保護者・近隣校、他機

関等との効果的な連携を図り、適切に対忚することが

できる力」と規定している 9)。

京都府が組織した「教師力向上に関する検討委員会」

(2007)がまとめた「京都府の教師力向上へ向けて・最

終まとめ」では、「学校教育の成否は、最終的にはその

直接の担い手である教員に負うところが極めて大きく、

教員一人一人がその資質能力を向上させる、つまり『教

師力』を高めていくことが大切」とした上で、「求めら

れる京都府の教員像」を次の[表 1]に示すように5つ

として提言した 10)。

[表1] 求められる京都府の教員像

広島県立教育センターでは「教員の資質能力及び指

導力の向上を図る研修の効果に関する研究」(2002)に

おいて、教職経験10年目に着目し、教員のライフステ

ージと職能(専門的な職務遂行能力)成長に対忚した

研修の体系化を図った。職能成長を促す要因として「同

僚性」(Collegiality)と「メンタリング」(Mentoring)

の重要性を明らかにし、教員の研修体系をこれまでの

「ライフステージ対忚型」から「職能成長対忚型」へ

と再構築を図った。すなわち、経験年数・職位によっ

て学校の中で取り組むべき問題に違いがあること、そ

して問題を解決するために必要とされる教師力に違い

があることを指摘している。その中で、「先輩教師が後

輩教師の専門的自立を見守り援助する活動」である援

助的な指導「メンタリング」機能を確立させることと、

校内組織の中で、同僚として高め合う「同僚性」の構

築を 10 年目を中心とした教師に確立させる重要性を

指摘した。また、職能成長を考えるとき、教職経験を

重ねるに従い、「児童生徒を直接指導していくための力

量の成長」と「学校の組織的な活動や計画・運営とい

った経営的な面についての力量の成長」があり、前者

を「教師個人モデル」、後者を「学校教育改善モデル」

と教師力を分類した 11)。

河村茂雄は「自分の心の健康を能動的に維持してい

くことがまず教師の資質として前提条件となる」と前

置きして「教師力とは、卖なる教師の指導力ととらえ

ずに、教職を仕事として選択した人間が教師という役

割を通して、自ら人間として発達していこうとする力」

と定義している。そのために学校ストレスを回避する

ことと、やりがい感を常に維持することが重要である

と述べている 12)。

今泉博は 20歳代の若手層教師にターゲットを絞り、

教師力に必要な「授業作り」「学級づくり」「同僚との

関係」「保護者への対忚」「悩みの解消」に分け、具体

的なスキルを述べている 13)。

コムズ(Combs.A.W.)は、「よい教師なるものは、

教える教科をよく知っていて、更に関連する教科につ

いても十分な知識をもち、新しい考え方に適忚力があ

り、個人差をよく認識しており、よきコミュニケータ

ーであって、熱心で、ユーモアのセンスがあり、謙虚

で、自信を持っていて、誠実で正直であり、忍耐力が

あり、注意深く、勇気があり、創造力に富み、困難に

喜んで立ち向かい、神を信じ」と、具備すべき資質能

力が挙げられている。コムズによれば、関連の諸調査

研究を整理してみたら、1000個以上の資質能力を備え

ていなければ「よい教師」にはなれないということを

発見したという。このことについて牧昌見は、そうな

るとこの世には存在しないスーパーティーチャーとな

ること、もう一つはコムズの指摘する「よい教師」の

・児童生徒に対する教育的愛情と、教職に対する使命感・情

熱を持っていること。

・豊かな感性を持ち、明朗かつ健康で、人間的魅力にあふれ

ていること。

・高い「授業力」を持ち、児童生徒に確かな学力をつけるこ

とができること。

・社会的良識と自ら学ぶ意欲を持ち、児童生徒や保護者、職

場の同僚、地域の人から信頼されること。

・「ふるさと京都」への理解と愛情を深めるとともに、国際的

な視点に立った教育を推進することができること。

7

条件は、ベテラン・エキスパート教師の「よい」には

なっても、そのまま若い教師層に当てはまらないと問

題点を指摘している 14)。

佐藤修司は 17 年度中教審答申に述べられていると

おり、教師力を「教職に対する強い情熱」「教育の専門

家としての確かな力量」「総合的な人間力」とし、これ

らは密接に関連しつつも、教師に完璧さを求めること

への危惧を警鐘している。むしろ子どもや保護者と共

に悩み苦しみながら歩む「反省的実践家」であること

を望んでいる。また、教師力は、個々の教師だけで形

成されるものではなく、勤務校の教職員全体によって

支えられ、教師相互の学び合い・教え合いなどの良好

な関係があって初めて教師力が育てられていくもので

あると主張している 15)。

読売新聞では2005年1月より長期連載の「教育ルネ

サンス」において「教師力」を約1年間取り上げた。

「先生たちの忚援団であり続けよう。問題を批判する

ことよりも、問題を前提にしつつ、前向きな取り上げ

方をしよう。それが問題解決につながるはずだ」とい

う連載のスタンスを取り、教師力を「授業力と人間力

を併せ持つことで発揮できる力」と定め、公立学校の

現場のリポートを継続している 16)。

朝日新聞では 2003年4月より「教師力」を連載し、

いつの時代にも教師は学校教育の「要」でありながら、

その教師の質がかつてないほど問われているとし、教

師たちの実情を軸に、それぞれを取り巻くさまざまな

環境の変化、国家と教育の在り方を取り上げた 17)。

3 理想の教師像調査 (1)小中学生の調査より

本節では、上記「先行研究」を参考にした上で、本

市の現状に最も即した教師力をどのようにとらえるべ

きかを検討する。その示唆となるべきものは、2008年、

千葉大学で進められた「プレ 10・ポスト 10 教員研修

プログラム」である。

千葉大学教育学部では、2008年、「教員養成GP」に

おいて「千葉県における固有の事情や社会的状況にお

いて、教員のライフステージに忚じた達成目標として

の資質能力を明示したもの」として「千葉県教員ス

タンダード」を策定した 18)。この中で、千葉県内の小

学生、中学生、保護者等、計 2942名に質問紙法の調査

を行い、教師が持つべき資質能力等をまとめた。その

結果、上位5位は[表2]で示すようになった。

[(調査期間2007年12月~2008年1月)

※共通項目 28 の中から各層の上位5位までを挙げたもの。

回答は「とても望む」から「全然望まない」までの4件

法とし、「とても望む+わりと望む」割合を示した報告で

は「結果の概要では、用意した項目がいずれも肯定的な

内容であったため、全体としての肯定率はかなり高かっ

た。したがって、この順位の比較はあまり意味をなさな

い」としながらも、小中学生に共通する第1位は「授業

がうまい」であり、「気軽に話ができる」「困ったときに

頼りになる教師」と生活指導に関する項目が続く 19)。

この報告結果が、現在の本市の子どもたちに当ては

まるのかという点について、その妥当性を証明する必

要がある。そこで、本市小中学生 120名を無作為抽出

し、調査を行った。

その結果、[図3](次頁)で示すように、「わかりや

すい授業」「よく話を聞いてくれる」「信頼」「話がうま

い」など、「プレ10・ポスト 10教員研修プログラム」

で調査した上位項目を網羅したことで、本市の子ども

たちの願いと一致した。

小学生 中学生 保護者(参考)

1位 頼りになる

(95.7)

授業がうまい(92.7)

頼りになる

(96.9)

2位 授業がうまい(95.7)

気軽に会話できる(92.1)

落ち着いている(95.6)

3位 気軽に会話できる(95.1)

他の先生から信用(91.3)

授業がうまい(95.5)

4位 笑顔が多い(94.1)

話がうまい(90.7)

チャレンジ精神(94.7)

5位 他の先生から信用(93.7)

頼りになる(89.2)

気軽に会話できる(94.6)

[表2]理想とする教師のタイプや特徴 (%)

8

(2) 大学生の調査より

教育学部1年の大学生は、年齢的に教師と中学生の

ちょうど中間に位置する。換言すれば、教師に最も近

い子どもであり、子どもの気持ちがよくわかる教師に

近い存在と言えよう。したがって、教育学部1年生が

教師力をどのようにとらえるかという点に着目し、2

回にわたり調査を実施した。2009年度千葉大学教育学

部1年160名と、2006年度同162名である。調査方法

は子どもたちに行った4件法の質問項目調査ではなく、

特に指定せず、自由記述とした。

[図4]で示す結果から、教師力として重要な項目は

第1位に「わかりやすい授業ができる先生」であり、

「話がうまい」「ユーモア」も授業に関する項目として

加味できる。続いて「信頼関係」「子どもをよく見る」

「コミュニケーション」と教師の人間性や生き方に関

する指導力について挙げられている。

(3)調査の見解

「プレ 10・ポスト 10 教員研修プログラム」子ども

調査では、便宜上、結果を第5位までを掲載している

が、質問の 28項目全てに肯定率が高かった 20)。自由

記述の大学生に至っては、教師力としてあげられた項

目は76にもなった。この結果から「理想の教師像」と

は、それほど多様であることが判明した。このことは、

教師個人のパーソナリティの条件から、教師を取りま

く外的条件を含めて、多様な条件を同時にこなすスー

パーティーチャーでなくてはならない、ということに

なりかねない。上記「4先行研究」でコムズ

(Combs.A.W.)が指摘したように、1000 個以上の資

質能力を備えていなければ「よい教師」にはなれない

ということになり、現実的に不可能である 21)。

したがって一律に一面的な教師像を語ることにさ

ほど意味がない。子ども一人一人に個性があるように、

学校にも多くの個性ある教師が存在してよく、様々な

価値態度を有してよい。その全体としての存在があれ

ばいい 22)。

現代の学校教育の課題は極めて複雑系 23)であり、教

師の仕事の幅や奥行きが広がっている。これらの課題

への対忚は、教師個々人には限界があり、状況や課題

に忚じて、先輩や同僚とチームとして補完し合うこと

によって充足されるべきであろう。これからの学校は、

松平信久が述べるように、経験や考え方、技能や特技

などの異なる多様なスタッフによって構成され、それ

を互いに認め合って生かし合い、学校総体としての教

育力を高める方向性を目指すことが不可欠である 24)。

しかし、もう一方で、調査結果から明らかになった

ことがある。多様な教師像の中にも絶対的に誰もが望

む教師力最大の重要事項の存在である。それは「うま

小中学生が求める教師力

80.0 82.0 84.0 86.0 88.0 90.0 92.0 94.0 96.0 98.0 100.0

子どもと信頼関係を持てる

人をまとめる力がある

心にゆとりをもつ

子どもの話をよく聞いてくれる

ユーモアのあり面白いキャラクター

ていねいで、わかりやすい授業ができる

話がうまい

子どもを平等に扱う

思い出を多く作ってくれたり多くの影響を与えてくれる

ユーモアがあり面白く笑える授業ができる

項目

人数の割合(%)

小学生

中学生

[図3]小中学生が求める教師力(調査期間2009年7月)

※回答は「そう思う」から「思わない」までの4件

法とし、「そう思う+だいたいそう思う」を人数の

割合で示したもの

大学生が考える教師力

0 20 40 60 80

コミュニケーション力

子どもをよく見てくれる

子どもと信頼関係

ユーモアがある

話がうまい

わかりやすい授業

人数(人)

2009年度

2006年度

[図4]大学生が考える教師力

※千葉大学教育学部1年必修の現代教職論の講義の中

で、教師力のあり方を議論した上で、調査に臨んだ。

回答は自由記述だったため、キーワード検出は筆者及

び研究協力員で行った。

9

い授業をやる」ことと「生き方に関する指導力が高い」

ことであり、全ての調査において高水準を呈した。こ

のことについては反論の余地はないだろう。

小中学生や大学生の回答を分析すると[図5]のよ

うに分化できる。彼らの望ましい教師像は、授業の

力量が高く、生き方指導の力量が広い「フェーズ4」

に位置する教師である。しかし、現実には、授業の

力量が低く、生き方指導の力量も狭い「フェーズ1」

に位置する教師が、若年層を中心に存在している。

また、縦軸に着目すると、①の授業の力量アップを

果たしたが生き方指導の向上③に課題が残る「フェ

ーズ2」に位置する教師、逆に横軸である②の向上

を果たしたが④の課題が残る「フェーズ3」に位置

した教師も存在する。小中学生や大学生は、回答す

るにあたり、思い浮かべた教師像がどのフェーズに

位置するかで選択項目に違いが出たのである。しかし、

上述したように、誰もが望む先は「フェーズ4」の

教師像であり、教師力の到達目標となるのである。

[図5]授業の力量と生き方指導の力量の高さと幅

第3章 教師力を学ぶ

1 若年層教師の授業のコンピテンシー

前章で導き出した教師力から、本章では、授業のコ

ンピテンシーを中心に論述したい。なぜならば、授業

のコンピテンシーを向上させることが、教師力の中で

小中学生及び大学生が願う最重要項目だからである。

また、授業のコンピテンシーを追究することで、生き

方指導のコンピテンシーをも論述できると考えた。そ

れは[図7]のフェーズ4に示すように、双方が深く

関連することによって成り立っているからである。一

般的に、若年層教師は、学級経営に力点を置きすぎ、

教科研究はおろそかになりがちである。目の前の問題

である日々の児童生徒指導や保護者対忚に追われ、即

効性のある対人スキルに傾く傾向がある。また、年齢

が若いため、運動会・体育祭や修学旅行など様々な行

事の主担当になり、エネルギーの大部分を費やす。中

学校では部活動の主顧問となり、勝敗の明確さと、目

に見える生徒の成長に喜びを感じ、のめりこんでいく。

ところが、授業はその場その場では何とかなってしま

う。教科書を流すだけの卖調な展開でも当面目立たな

い。即クレームとはならない。そのため、授業研究の

優先順位は下がる。そして取り返しの付かない反動が

その後ゆっくりやってくるのである。

小中学生は上記の調査で「授業がうまい」を、大学

生は「わかりやすい授業」を筆頭に挙げた。では、教

師は授業に必要な力量をどのようにとらえているのだ

ろうか。

そこで教職経験 10年目までの若年層教師に、「授業

に必要な教師の力量」について調査した。調査対象は

授業の力量

生き方指導の力量

低狭

フェーズ2

フェーズ4

フェーズ1

フェーズ3

10

55名、本センター内で大学生と同様に自由記述で回答

してもらった。

[図6] 若年層教師が挙げる授業に必要な教師の力量

(調査期間2009年7月)

[図6]で示すように、若年層教師の挙げる項目は、

「発問」「板書」等のごく初歩的なものから「つぶやき

をどうとらえるか」とか「授業の振り返り」などカリ

キュラム評価にまで言及した高度なものが挙げられる。

小松郁夫は教師という仕事を進めていく上で必要な

知識が2つあると指摘している。1つは「形式知」と

呼ばれるもので、誰もが習得でき、マニュアル化でき

る基礎的な知識や技術・心構えである。これは[図6]

で若年層教師が挙げていた授業の基礎基本である。も

う1つは「暗黙知」と呼ばれるもので、本人の気づき

や発見により、自分のものとして築き上げた知恵と技

である 25)。これが匠の技につながる。

さらに佐藤学は、「授業実践は日常的行為ではなく、

創造的行為である」と述べ、授業の技術は「技能(skill)

ではなく、技(craft)、技法(art)」であると述べた。

すなわち、授業をルーティン的な技能として分解し、

授業実践の文脈から切り離してトレーニングしても有

効ではないし、もし、有効であったとしてもわずか数

時間ないし数日の訓練で形成される類の技能である。

「技」と「技法」の伝承と学びは、「事細かに指導・助

言するのではなく、達人がモデルを示し、初心者がそ

のモデルを『模倣』することによって実践のスタイル

と技を身につける」と述べている 26)。すなわち、授業

の「技」を伸ばすには「技能」のトレーニングではな

く、実践のビジョンとスタイル(型)を模倣すること

から出発するほうが有効なのである。

授業の達人たちはどのような匠の技を持ち合わせて

いるのだろうか。そしてどのようなモデルを示してく

れるのだろうか。

本研究の核心部分に位置するこの命題を、授業の達

人から聞き取り調査を行い、その結果に基づいて帰納

的に分析し、達人からの示唆としてまとめたい。

2 授業の達人からわかること

(1)ヒアリング対象者の属性

達人の選出規定は「第1章2分析と対象」(3頁)で

述べたとおりだが、[表3]に示す属性で全国から29

名を抽出し、ヒアリングを行った。

[表3]達人の属性

(2)ヒアリングの手続き

29名の達人と筆者の1対1における関係で、 45分

から1時間30分の所要時間をかけてヒアリングを行っ

た。この中で筆者の投げかけた質問事項「授業に関す

ること」「これまでの経緯」「その他の要因」に対し、

自由に口述してもらい、回答を引き出すとともに記録

した。なお、遠方などの諸条件がある場合のみ、メー

ル等のやりとりでヒアリングを行った。

(名)

番号 性別 小・中 職・所属 教科等 所属地方 番号 性別 小・中 職・所属 教科等 所属地方

1 女 中 委員会 社・英 関東(千葉県) 16 女 小 教諭 国 関東(千葉県)

2 男 中 委員会 社 関東(千葉県) 17 女 小 教諭 国 関東(千葉県)

3 女 中 委員会 英 関東(千葉県) 18 女 小 講師 国際 中国(島根県)

4 男 中 教頭 音 関東(千葉県) 19 男 中 教諭 社 関東(千葉県)

5 男 中・高 教諭 英 関東(千葉県) 20 男 小 校長 国際 中国(島根県)

6 男 小 附属教官 社 関東(東京都) 21 男 小 教頭 道徳 中部(新潟県)

7 男 小 主幹教諭 社 関東(東京都) 22 男 中 委員会 国 関東(千葉県)

8 男 中 委員会 国 関東(千葉県) 23 男 小 教諭 算 関東(東京都)

9 男 小 委員会 理 関東(千葉県) 24 男 小 教諭 環境 関東(埼玉県)

10 男 中 教諭 国 関東(千葉県) 25 女 中 教諭 数 関東(千葉県)

11 女 中 附属教官 家 関東(千葉県) 26 男 小 教諭 英 北海道(旫川)

12 男 中 教諭 英 関東(千葉県) 27 男 中 教諭 英 関東(東京都)

13 男 中 元校長 理 関東(千葉県) 28 男 中 校長 社 関東(千葉県)

14 男 小 教諭 総合 関東(千葉県) 29 男 中 附属教官 社 近畿(奈良県)

15 女 中 教諭 英 関東(千葉県)

11

(3)コンピテンシーの一致率

その結果、達人からのヒアリングによりコンピテン

シーを4つの大項目に分類した。第1項目「子どもを

伸ばす基本的なコンピテンシー」と呼ぶことにする。

以下、同様にして第2項目を「授業を深める基本的な

コンピテンシー」、第3項目を「授業を創り出す基本的

なコンピテンシー」、第4項目を「自分を伸ばした要素」

と呼ぶことにする。この大項目ごとに、さらに共通性

に着目して19の小項目に分類できたものが[表4]で

ある。

ここでは、達人の述べたコンピテンシーの共通した

値を、全達人の割合から算出し[表4]で示すように「一

致率」とした。本研究では一致率の高いコンピテンシ

ーを抽出し分析を行うものである。

[表4]コンピテンシーの一致率

※共通性の値:一致率(主張者÷全人数)

(4)子どもを伸ばす基本的なコンピテンシー

第 1項目「子どもを伸ばす基本的コンピテンシーは

「教師の姿勢」とかかわりが深い。

① [Competency1:聴く力](一致率.59)

達人の17名が教師の持つべきコンピテンシーとし

て「聴く力」を挙げている。そのうち全員が「聴く」

(自分から聴きに行く「listen」)という意味で語って

おり、「聞く」(聞こえる「hear」)という意味ではな

い。いわゆる文字通り「耳」+「体(目も含む)」+「心」

で聴くのである 27)。

[表3](前頁)の達人番号13(13と略す。以下同

様)の指摘は示唆に富んでいる。彼は新人の頃、達人

の要素とは「話術にあり」と考えていた。しかし、う

まい話をしたと思っていてもどうも子どもの反忚が悪

い。子どもが受け身にならざるを得なかったからであ

る。試行錯誤の中、やがて聴く行為がむしろ積極的教

授法だと気付いた。その後、子どものつぶやきを聞き

逃さず取り上げ、子どもの意見を聴く授業を展開した。

彼は20代後半、文部省(当時)の研究授業で子どもた

ちの意見をつなぎ、自分は一言もしゃべらない授業を

行った経験がある。

22、23、27は、発言しやすい授業中の空気を作り出

すとともに、子どものつぶやきを授業に利用している。

つぶやきは教卓前に張り付いていたのでは拾えない。

つぶやきを拾うためには、子どもの中に入って授業を

進めなければならない。すなわち、「教師の立ち位置」

(Positioning)が重要となってくる。そして、その子

の表情と口元を見て、一瞬の判断で近づき、待つ姿勢

を崩さず耳を傾けて聴くことに専念する。この「聴く

力」を伸ばすために、

26は相手の心情を察

しながら聴くカウン

セリングの「傾聴訓

練」が有効であると

述べている。

7は教師の聴く姿

こそ大事であると

指摘する。「子どもの

意見には完全な間違いはなく、すべて使えるものだと

いう姿勢で聴くと、子どもは安心して意見を述べる」

大項目コンピテンシー 小項目コンピテンシー 一致率

①聴く力 0.59

②見る力 0.45

③話す力 0.41

④対話力を育てる力 0.66

⑤自由な空気作り 0.59

⑥一瞬の対忚 0.93

⑦課題・ゆさぶり 0.55

⑧体験 0.34

⑨興味関心・ユーモア 0.79

⑩主体性・ささやき・ほめる 0.34

⑪学習習慣の形成 0.48

⑫授業構成・教材研究 0.9

⑬教材探し 1

⑭省察 0.86

⑮伸びた時期

⑯授業研究

⑰独自の研究会理想の教師

⑱オンデマンド

⑲やりがい感

【第1項目】子どもを伸ばす基本的なコンピテンシー

【第2項目】授業を深める基本的なコンピテンシー

【第3項目】授業を創り出す基本的なコンピテンシー

【第4項目】自分を伸ばした要素

聴く力

自由な空気

立ち位置

[図7]聴く力の関連

12

と示唆した。これが7の子どもたちが意見を出せる雰

囲気づくりにもなっている。

②[Competency2:見る力](一致率.45)

発表を中心とした授業では、子ども全員が参加して

いるわけではない。そのかかわりにどうしても軽重が

表れる。一般的に教師は発言の尐ない子どもへ視線を

向けず、反忚の大きい子どもに向けて話しがちである。

それは子どもの正しい意見をつなぎ合わせて授業を進

めるからである。しかし、発言しない子どもでも、も

っと深い学習をしている可能性がある。発言しない子

どもの考えをノートで知った場合、発言しない子ども

の方がより高いレベルの思考をしていることもある。

したがって双方に目配りが重要である 28)。

19、20 は「子ども

を見るに尽きる」と述

べている。それは 11

が述べるように「子ど

もをよく見ていない

と独りよがりになる」

からである。

[図8]見る力の関連 子どもをよく見ると、

12の「子どもの反忚を

よく見て、それによって授業の持って行き方を変更さ

せる」や8の「研究の出発点は子どもをよく見ること。

子どもをよく見ていると、もっと良い方法があったの

ではないかと反省する。当然、次の授業構成は変わっ

てくる」と臨機忚変に臨んでいる。また、4や7が述

べるように、子どもの表情や態度をよく見ると、子ど

ものその時の状態がわかる。そこで、わざとを脱線さ

せたり、興味を引きつける教材を提示したりして、一

時弛緩させた後、集中を再び高めるといった工夫がで

きる。英語の3は子どもの学習進度状況をよく見て、

早く終わった子どもが何もやることがないということ

が起こらないように、次に何をやらせるか指示する。

待たせないことが授業のリズム・テンポを生み出すと

いう。

このように達人は実によく子どもを見ている。そし

て子どもの反忚によって授業形態を変えている。これ

は達人が様々な形をした授業の技をたくさん持ってい

るということに他ならない。

大村はまは「とにかく一番大事なのは子どもを知る

ことです。子どもを知らなければ、どうにもならない」

とし、「子どもを知ることが教育の仕事の中で最大のも

のかしら。それを持たずにいろいろやってもうまくい

かない。普通の会話の中で思わず自分から出た話、そ

れをビンビン感じ取るのが教師の力じゃないの」と述

べ 29)、達人たちの指摘と一致する。

「見る」は「診る」という意味にも使われている。

すなわち、子どもの診断であり、子どもへの人間的な

深い洞察力でもある。そのことが子どもの内側に火を

付け、自己回転していくチャンスをつくるのである。

③[Competency3:話す力](一致率.41)

「話す力」について言及した達人は一致率[.41]で

ある。これは「話すこと」がコンピテンシーとして低

いことを証明しているのではなく、一方的に教師から

子どもへ話す教授型授業という行為にネガティブなの

であって、子どもにわかりやすく話すことを軽んじて

いるわけではない。話す力は上記の見る力や聴く力と

相関関係があり、11は[図9]で示すように「子どもの

意見を聴いたり様子を見ながら反忚が悪い場合は、話

し方、間の取り方、アクションなど取り入れ、話に変

化をもたらす」と工夫している。例えば、声質につい

て「ドレミの音階ではダメであり、ドレミファソラシ

ドまでの音階で話

す」ことである。ま

た、19はわざと本日

のキーワードをポツ

リという。すると子

どもたちは、「えっ、

なになに?」と集中

[図9]話す力の関連 する。そこでもう一

度言うと子どもに沁

み込むという口のパフォーマンスを紹介した。

多田孝志は、他者への意識とサービス精神とは、「わ

話す力

聴く力

見る力

見る力

一瞬の対忚

授業構成

13

かりやすく」と「伝える」の重視であって、子どもた

ちに伝わる話し方こそが大切なのであると述べている。

他者を意識するということは、相手の心情、立場、文

化的背景への配慮であり、自分本位では相手は聴くふ

りはしても聴き入ってはくれない。また、相手を引き

つけ、共感させ、納得させるということは、他者への

サービスであり、そのための工夫として、適切な声量

で語ることや図や実物の資料など視覚を刺激したり相

互行為を導入するといったことである 30)。大村はまも

「子どもを引きつけていっぺんでわからせてしまう。

そういう話は練習なしではできないです」31)と、伝わ

る話し方の訓練を説いている。

④[Competency4:対話力を育てる力](一致率.66)

[Competency1:聴く力]及び [Competency3:話す力]

は教師のみではない、と述べているのは 14名の達人で

ある。これらの達人は、子どもたちにこそ「聴く力」

「話す力」を伸ばすべきだと主張する。なぜならば、

これらの行為は質問することにつながり、その先に「対

話」があるからである。18、20は「対話こそ授業の基

礎基本」とし、対話を授業の中核に置いているように、

子どもの対話力を育てる力の重要性を指摘している。

1も「子ども同士の意見をつなぐ」という行為を大

事にしている。そのためには「子どもは意見をよく聴

いていないとつなぐことはできない」とし、「教室には

他の子どもの意見を聴かないわけにはいかない空気」

を醸し出すことに尽力している。子どもの対話力を育

てるには、やみくもに忍耐と努力を強いても育たない。

29が述べるように「他の意見を受容的共感的に聴く→

考えを出す→話し合う」という訓練が不可欠である。

多田は「対話とは言語や非言語により、相手とのコ

ミュニケーションを行い、共有できる価値観や概念を

生み出していく行為であり、指導者が対話について認

識を深めていくことなくして、子どもたちへの効果的

な対話指導はできない」と述べている 32)。すなわち、

20が指摘するように、「他の子どもの意見に耳を傾け、

自分の意見を述べて問題を解決していく」ことであり、

[図 10]で示すように「聴く力」「見る力」「話す力」と

深い関係がある。そして対話を重視していくことは、

「人と人のかかわりづくり」という機能から、人間関

係形成力の育成にもつながる。

⑤[Competency5:自由な空気づくり] (一致率.59)

「聴く力」と「対話」には相関関係が見られたが、

その土台となる「授業の空気」を指摘する達人が 12

名いた。子どもたちが対話に参加できる授業中のやわ

らかい空気のような雰囲気のことである。

英語の15が述べるように、「堅苦しい感じでは自由

に話せない。そこに空気の柔らかさ、心が開かれた状

態、子どもは間違ってもいいという雰囲気。教師はむ

しろ間違ってくれてありがとう、という気持ち」を大

切にしている。彼女は4月の授業開きでは、この点を

強調する。間違いは OKだということを認識させる。17

は、子どもの頭の中にあるもやもや感を大切にしてい

る。もやもやの中で思考できる雰囲気や空気感を大切

にして子どもの答えたい気持ちを伸ばしている。

このような空気のもとで、子どもたちが自由に自分

の意見を出しながら、27が述べるように「授業は子ど

もと教師で一緒につくりあげていく」ことになり、3

と12が指摘するようにリズムとテンポが加わって、3

の「もう授業終わっちゃうの?」、19の「ああ面白か

った」、25の「あっという間の時間だった」と子ども

に言わしめるのである。

そういう教室の環境をどう作れるか、それを導くの

が達人の所以である。

見る力 聴く力

話す力

空気

空気

空気

対話力

[図10]Competency①~⑤の重層的な関連

14

(5)授業を深める基本的なコンピテンシー

第2項目のコンピテンシーは「授業の技」とのかか

わりが深い。達人は授業を深める技として[表4](11

頁)に示すように6つのコンピテンシーを示唆した。

⑥[Competency6:一瞬の対応] (一致率.93)

「なぜあの時、あの子の発言を取り上げなかったの

か」研究授業を参観した人が時々口にする台詞である。

授業者は、指導案の流れから外れそうになることを恐

れたのか、予測していなかった発言の意外性に対忚を

避けたのか、議論の的になることがある。達人の 27

名が、その重要な要素として「一瞬の対忚」を挙げた。

12は「子どもの予測が大きく外れ、予想外の反忚が

来た場合が勝負である」とし、「うろたえず心にゆとり

を持ち、こういう場面こそ一番楽しい」と感じながら

「素早く発問を切り替えることが重要である」と述べ

た。このように切り替えをするための最も心得ること

は4が述べるように「子どもの表情や態度等を敏感に

見る」ことであると指摘した(他7名)。「見る力」が

あってこそ、その瞬時を的確に把握して手を変えられ

る(4名)。それを可能にするには授業の背景が深くわ

かっていないとできない。16は「この授業と決めたら

5冊以上の本を読む」としているし、5は「子どもの

変化球に対忚できるには2段階上の実力が必要」と猛

烈な教材研究をする必要性を説いている。その上で3

は「子どもの質問は予想していきながら、腹案を用意

しておく」ことに余念がなく、あらゆる場面を想定し

てシミュレーションしておく(他7名)。どのような場

面が起きようとも多くの対忚策をポケットに持ってお

く。例えば1は「ここぞという一瞬のタイミングで、

これしかないという絶妙のフレーズの突っ込みを入れ

る。10 人の意見に対し、即 10 人へそれぞれ違ったコ

メントを言う。そうできるには、ジャンル別ほめ辞典

のようなボキャブラリーを持っていることが重要。瞬

時に起こる事象に対してのドンピシャのフレーズをぶ

つける」と述べている。

13 は、「当時、ドラえもんを目指した」とユニーク

な回答をした。子どものどのような求めにも即座に最

適な道筋を用意できるイメージという意味であった。

そのために、詰囲碁のように、仮想事態を頭に描き、

次の一手を考えていた。次の一手はたくさんのソース

から選択するわけだから、科学書を読んだり教育研究

書もよく読んで自分を高めた。

11は瞬時の判断で、授業中にユーモアで子どもを和

ませる重要性を述べた。疲れが溢れていたり、空気が

重いとき、絶妙のタイミングで面白いエピソードを紹

介し、子どもたちを笑わせ、空気を入れ替えて授業に

集中させる。ジョークやエピソードは事前に仕込んで

おくという、明らかに周到な準備をしているのである。

「授業はライブである。二度と同じものはない」と語

る。

8の指摘は示唆に富む。「予想不可能だった0男の発

言に寄り添うと、予定していたことと全然違う方向に

行かざるを得ない。しかし、クラスの人間関係を考慮

すると0男の意見を断つわけにはいかない。一瞬の判

断で予定通り進まない中で全体としてどう組み立て直

すかを考えた。教師の仕事は瞬間で生きなければなら

ず、難しいところであるが非常に面白いところでもあ

る」と述べている 33)。

では、一瞬の対忚力はどのようにつけていけばいい

のだろうか。2 人の達人たちの意見が参考になる。22

は机間指導の際、子どものつぶやきを拾い、即座に取

り上げる訓練を継続し、一瞬の機敏さを磨いている。

その基盤には、日々生活ノートをチェックし、子ども

の家庭であった出来事や体調や思い悩みを把握して、

つぶやきの背景までも考慮している。つぶやきを聴く

ということは、その意味を理解することではない。そ

のつぶやきが授業の目標のどことつながっているか、

他の子どものどの発言につながっているか、つぶやい

た子どものいつの言動につながっているかを即座に関

連づけなければならない。この心構えが「一瞬の対忚」

につながっていく。24は自ら突然のことに出会うよう

に心がけ、休み時間も子どもの動きそうなところへ出

かけ、臨床的に一瞬の対忚力を磨いている。彼は突拍

子もない発言に対しても瞬時に価値付けをしている。

達人の共通点は、授業の機敏にある。授業の機敏と

は、「ここぞというところでこれしかない」という、瞬

15

時に生まれる微妙な子どもの感情の動きをとらえるニ

ュアンスである。達人のそういう機敏をつかむセンス

にはマニュアルがない。したがって達人の真似ではな

く、どこが大事なのかということをつかんだ上で、自

分のスタイルをつくることがよい授業を行える条件な

のである 34)。以下、達人のヒアリングから「一瞬の対

忚」に関するダイヤグラムの概念モデルを作成したも

のが[図 11]である。

しかし、一方で、一瞬が全てではないという面もあ

る。教師は一瞬のやりとりで勝負が決まる戦いとは違

い、子どもを長期にわたって見守り育成していくもの

である。したがって、一瞬の対忚の連続性・継続性が

専門家としての教師の素養なのである。

※線の向きは因果関係の方向性を示す。

数値は強さの程度を表す「一致率」である。

[図11]「一瞬の対応力」ダイヤグラム概念モデル

⑦[Competency7:課題・ゆさぶり] (一致率.55)

12はよい問いを発することが重要だと述べている。

「問う習慣をつけて、いい教材で、最初にエーって思

わせて、なんでなの、と。そしてゆさぶり。それから

筋道をたてさせる。どうしてそう考えたのか。何を根

拠に言ってるの、と」。その課題について1と24は「課

題はわかりそうでわからないもの。結論が3つも4つ

もでるようなもの」「誰でもできそうで実は迷うもの」

を考えている。いわゆるゆさぶりがかけられるもので

ある。

25は、数学が身近に感じたり良さがわかるように身

近な生活の中から課題づくりに心がけ、問題解決に可

能なものを11年間続けて開発している。このように工

夫すると子どもの感想から「あっという間の授業だっ

た」と声が出る。子どもの声は授業の集中度を如実に

語っている。14 や 16 も生活の中から課題を探してお

り、授業は教室から始まるものでなく、常々、子ども

と接しているときや生活の中から始まっていることを

示唆している。

中高一貫校に勤務する5は、子どもに適度にプレッ

シャーをかける。授業中はたくさん頭を使わせるよう

に、特に説明時では緊張の空気を意図的に漂わせる。

圧をかけることがプラスとなるようにしている。ただ、

違う学校に異動したらその学校の実態に合わせて手法

を変えると述べている。

⑧[Competency8:体験] (一致率.34)

子どもの体験のとらえ方は、時によって独りよがり

だったり、一面的な見方や浅い認識で、自己中心的な

見方や考え方で体験をとらえることがある。だからこ

そ、体験によって気付いたことや感じたこと、考えた

ことを振り返らせ、まとめ、それを聴き手にわかりや

すく表現させるというスモールステップの事後指導が

重要になる。

7は資料を使ったゆさぶりを体験と組み合わせて多

面的で思考を深める授業を作っている。人は強烈な出

来事があると、話さずにはいられない衝動が起きる。

これをうまく使って対話へと進める。

3や4や19は「もう終わっちゃうの」「ああ、楽し

かった」という授業後の声をよく耳にする。学ぶおも

しろさを子どもに体験させているからである。このよ

うな授業は推理や想像をかき立て、実際に体験させる

ことで可能になる。しかし、体験させれば必ず何か良

い感想を一つ二つ出てくるものである。そこがかえっ

て体験の危ういところで、達人は体験の中心である学

習の目的をきちんと把握させているからこそ、上記の

ような子どもたちの声が発せられるのである。

見る力.45

一瞬の対忚.93

シミュレーション

授業構成.90

省 察.86

聴く力.59

教材研究.90

16

⑨[Competency9:興味関心・ユーモア]

(一致率.79)

「今日の授業は何をやってくれるのだろう」。2はこ

のような子どもの声が聞こえるために、仕込みを考え

るときはいつもワクワクする。このように教師自身が

授業づくりにときめいている達人が多い。“面白い”と

いうことがなくなったら、どんなに一生懸命やっても

いつか離れてしまう。11は、「“わかる・できるだけで

なく、楽しい”という実感が必要」と述べ、9は静か

にしなさいという外的緊張より、子どもが常に「不思

議だな、調べてみたいな」という内的緊張を大切にし、

「自分もこの世界で活躍してみたい」と思わせる授業

を心がけている。25 と 29 は、授業の中で、なぜ勉強

するのか、学習する意義づけを時々ポイントで話す。

この必然性を子どもが理解できれば、俄然興味関心が

湧き、子どもは個々に動き出す。

達人は、「始まり」を丁寧に、そして繊細に取り扱

うことで子どもを引き付ける。年度としては最初の授

業開きに相当のエネルギーを費やす。4は「音学では

なく、音を楽しむために、本当の音楽の授業をします」

と授業開きに宣言する。14は授業開きには綿密な計画

のもと、親と子の対話がなされるような授業を行い、

同じような宿題を出す。この時点で、親をも引き付け

る。また達人は、毎日の授業でも最初の10分間を大切

にしている。普段の授業では、最初の 10分である導入

の工夫に渾身の力を注ぐ。⑬[Competency13:教材探し]

と重複するので、こ

こでは詳細は記述し

ないが、達人は導入

で子どもを驚かせ、

心をつかみ取る実物

資料やグッズを収集

することに努力とお

金を惜しまない。

これら一連の行為

は、[図 12]で示すようにBの学習意欲が高い子どもに

対して知識を活用させ探究的に取り組ませることによ

ってA の状態まで学力向上を図る指導技術の前に、C

の状態にある興味関心を示さない子ども(仮にここで

は「ふわふわした状態の子ども」と呼ぶ)に対し、B 段

階まで高めるための達人の工夫である。ここに「やる

意義(Necessity)」と「興味関心(Interest)」と「面白

さ(Entertainment)」(総称して「NIE」と呼ぶ)を集

約させている。

一方で、意欲を楽しさだけと一面的にとらえていな

いのが10である。彼は心地よい緊張感と追い込みをか

ける。そして、それを乗り越えられた時、厳しいけれ

ど勉強していくうちにできてくる自分に気付くことに

よって面白さを感じさせる。

⑩[Competency10:主体性とささやき・ほめる]

(一致率.34)

14 と 18 は、子どもに興味が湧くようにするには教

師の働きかけによって意図的に仕掛ける「主体的の演

出」が重要であると述べる。餌をまくようなイメージ

で(18 は「種をまく」と表現)、耳元で囁いたり、意

図的に食いつきそうな関連パンフレットをさりげなく

装って教室に置く。それによって子どもが気付き、見

つけた課題を嬉しそうに報告に来た時は、「それはすご

いね」と本気で喜んであげる。自ら考えたという思い

で学習を進めさせることが重要なのであって、ただ子

どもの自発性を待っているのでは、子どもの学習を見

守るだけの傍観者に過ぎない。教師のサポート無しに

形式的な自学自習をさせても、子どもが主体的に学習

できるものではない。教師が自分の技術や技能を使っ

て、子どもの中に確実な事実を作り出したとき、子ど

もははじめて主体的になり積極的になっていくのであ

る。子どもの主体性の裏で、達人は周到な準備とさま

ざまな働きかけを行っているのである。

「教え-学び」の概念においては、「何をいかに教え

るか」、学習内容、対象、その方法が中心になって語ら

れる。「教」の字は、「子どもに習わせる」という使役

の意味から成立した文字である 35)。ところが、これら

の達人は、「育む」という視点に立って教育的行為を構

築している。すなわち、子どもに対する教師の受動的

な関係による行為、相手に忚答することによって成立

B 学習意欲

C ふわふわした子

A 学力向上

[図 12]ふわふわした子の学習

意欲

17

する行為を中心に据えている。そのためには日々子ど

もの様子と出来事をよく知ることにつきる。このこと

を秋田喜代美は「そこに豊かな関係性が生まれていく

小さな物語が数多くある」と表現している 36)。

大村はまも「子どもの自分で進む力を大切にしなが

ら、教師が上手に背中を押してあげて、子どもからは

教師がやっているようには見えない。きっとこれが教

えすぎない、教えないでもない、ちょうどいいところ

なんでしょう」と述べている 37)。

達人は背中を押しながら、そしてほめる。ほめるに

は子どもの良さを発見する力が必要である。多田孝志

は「見る力」として、多様な角度からよさを発見し、

よくやったとか頑張ったではなく「事実をほめる」こ

とが重要であるとほめ方に言及した 38)。「本気でほめ

る」ことは子どもを本気で伸ばそうという姿勢である。

ほめることは子どもの活力を生む最高のビタミン剤で

ある。指示・注意を「冷たいシャワー」と例えるなら

ば、ほめる・励ますは「温かいシャワー」である。ど

の子どもにもたっぷりかけてあげる。

教育とは元来、子どもの潜在能力を伸長させるため

の営みである。達人はほめる技術を高める必要がある

と示唆している。

⑪[Competency12:学習習慣] (一致率.48)

学習習慣については達人によって分かれるところで

ある。[図13]で示すように、学習習慣をつけると答え

た人は 14名 48%、つけないと答えた人は9名 31%であ

った。

つける派は、15 のように「「ルールがないと勝手な

方向にいってしまう」とし、「話す・聴く・書く、のル

ールを確立し、授業の流れをパターン化すると、子ど

もは安心し、次にやることが自分でわかる」と述べて

いる。一方、9 のように「学習の習慣はいらない。知

らず知らずのうちに子どもを自分の手のうちに引き込

み、その状況によって最適な学習活動で進める」と述

べている。しかし、意見の趣旨を深く分析すると 16

が述べるように「習慣化する、しないは時と場によっ

て異なる。ノート指導や話し方は習慣化を図るが、授

業のパターン化は

図らない」という

ように基本的な学

習習慣はどの達人

にも否定するもの

ではない。授業構

成においてワンパ

ターンではなく、

習慣にも回転が必

要であるというこ

とである。

基礎基本を確実に身につけるにはよい習慣作りが必

要で、よい習慣は長期にわたって一定の学びの様式を

反復練習する必要がある。その反復学習に耐えていく

ためには努力しただけ報われるという経験、つまり自

己行動の有効性についての認識を深める経験を得なが

ら進めるということが大切である。

(6)授業を創り出す基本的なコンピテンシー

第3項目のコンピテンシーは「授業を深めるコンピ

テンシー」や「子どもを伸ばすコンピテンシー」と違

って模倣が難しい。授業の表面からは見えないコンピ

テンシーだからである。しかし、授業の根幹に当たる

として、達人は高い一致率で3つのコンピテンシーを

挙げた。

⑫[Competency11:授業構成・教材研究] (一致率.90)

授業を作るということは 45分あるいは 50分のドラ

マを作るのと同じで、必ず山をつくる必要がある。そ

のためにかなり具体的な場面をイメージしながら授業

構成を考える。例えば、こういう活動を提供すれば、

子どもの頭はこう働くだろうという認識を、教室とい

う場で子どもを相手に具現化できることこそ、授業の

コンピテンシーである。

8が述べるように授業の理想型を常に頭に描いて、

その到達点を心の中に置く。結果としてそこに届かな

くても、その努力を繰り返していけば、その速度は遅

くとも確実に理想に近づく。その中に 13は「授業のど

こかで子どもに一回は瞳が輝かせる場面があるように

[図13] 学習習慣をつける

18

する」と述べる。

このような授業を可能にするには深い教材研究が

必要である。9は「指導者の科学に対する奥深さが子

どもに感じ、先生にはかなわないという圧倒的な力を

感じさせることが必要」と述べ、また25も「スペシャ

リストとしての力、この人にはかなわないと子どもに

思わせるものを持つこと」と述べている。

板書の重要性を指摘するのは2と23であり、板書を

構造図としてとらえている。すなわち、子どもがノー

トを見たとき、こういう授業だったなと再現フィルム

で戻って来られるように考えている。

9は「小学生レベルから研究者レベルの話題までを

ひとつの題材に織り交ぜながら、ギャップの大きな楽

しい授業をする」ことができる。

26は「知識の定着を図るにはスモールステップ、幅

広い思考を求めるプロセスはワイドステップというよ

うに各ポイントで使い分けが大切である」と述べてい

る。

⑬[Competency13:教材探し] (一致率.1.00)

達人の教材探しは徹底している。[図 14]からわかる

ように、日々の生活と教材探しとが直結している。16

は「出かけるときも教材を探す癖がついている。これ

だと思うものはすぐ買ったりとっておく。いつもそう

いう目で生活をみている」と述べている。19はカメラ

をいつも持ち歩き、授業に使えそうな場面を撮影し、

7は「アイディアが浮かんだり、新聞や小説に出てき

た味わい深い台詞、外出先で目にした風景やふと頭に

浮かんだキャッチコピーなど、すぐにメモをとる」と

述べている。達人は授業の教材を常日頃から心がけて

いて、いいヒントになるものをパッと見分けるという

アンテナをもっている。5は教材を見つけることこそ

意欲であるとし、「授業のイメージを作ると何が必要に

なるかはっきりしてくる。その中で、限られた時間の

中で最も効果が表れるものを選択する」と授業構成と

直結していることを述べている。

達人は伝えるべき内容を豊かにするために、多くの

日常の努力をしている。旅をしたり、美術館や音楽会

にも多く足を運んでいる。読書家でもある。意図的な

行動によってこそ興味関心の幅が広がっていくからで

ある 39)。

⑭[Competency14:省察] (一致率.86)

教えるという仕事を、目当てをしっかりもって、目

標ごとに区分けしてやろうと思ったときは、同時にそ

れがどこまでできたかという評価が大事になってくる。

12は「予想外の反忚をできる限り生かしたい」とし

て思わぬ反忚は必ずメモをとっているという。「こうわ

かると思ったのに、こんな風にできなかった。しかも

何人もいた」というよう

に新卒以来30年間指導案

を書き続け、授業後、必

ず授業の省察を行いなが

ら、予想以外の反忚を書

きとめていった。彼は「こ

れを何年も続けていくと、

[図15]省察の関連 突拍子もないことを言っ

てきてもそれについてい

ける。深い教材研究をしていけば、子どもが何を言っ

てもそれを生かせる。だいたい予想の範囲に収まる」

と述べている。[図15]に示すように、彼はどこで学び

が成立し、どこでつまずいたかをまさしく授業の事実

からつかんでいるのである。

評価とは教師からすれば、今後どういうことをどの

ように指導するとよいか、子どもからすればどこを向

(名)

[図14]教材探しの姿勢

19

いてどう勉強すればよいか、そういう指針を知るため

のものなのである。

(7)自分を伸ばした要素

⑮伸びた時期

達人に自分を伸ばした要素について振り返ってもら

った。まず、伸びたと思われる時期として、[図16]で

示すように年齢的には10年目前後の 30代3校目をあ

げた者が17名で一番多かった。この時期は中堅層に進

むにつれ、学校内においても分掌的に責任あるポジシ

ョンに就き始めた頃である。学年経験も一回り二回り

し、経験も豊富となり、新たな挑戦としてキャリアア

ップを試みる段階である。

[図16]自分が伸びたと思う時期

達人の伸びた時期を考えると、若年層の教師は「10

年目」を前後に、どのように教師として生きるか、ど

のようにキャリアアップを図るか、を考える習慣をつ

けることが重要であることを示唆している。

⑯研究授業

次に、自分を伸ばした要因として、[図 16]の時期

と関連させてキャリアアップの内容等を述べてもら

った。

達人のうち 11名は3校目で大学附属校に転勤し、

研究授業に力を注いだ。附属校の場合、毎年公開研究

会があり、先進性のある授業を開発し提案する。19

は「常に新しい流れを読み、斬新なアイディアで授業

を開発した」と述べた。また、年数回にわたり教育実

習生を指導するという特殊な環境にある附属校の場

合、正式な形でなくても年中授業を参観される。3は、

「教育実習生という経験の浅い学生だからこそ、遠慮

のない痛烈な質問を浴びせてくる。納得させる授業を

やるしかない」と気合いを入れた授業を継続したこと

が授業力を伸ばす大きな要因になったと述べている。

附属校勤務経験者に限らず、[図 17]で示すように、

全ての達人が自分を伸ばした要因の一番に挙げてい

るのが研究授業である。21においては通算 70回を超

す猛烈な経験を持つ。2は「とにかく手を挙げて退路

を断つ。やらざるを得ない状況に自分を追い込む」と

人に見られるというプレッシャーを自らに課して、授

業の中身を向上させようとした。これは達人の共通す

る姿勢である。4は先輩教師に「ガンガン引っ張り出

されたが絶対断らなかった。猛烈に忙しかったけど、

何事もわかるようになり、多くの人と知り合えた」と

述べ、与えられたチャンスに対し、素直に受容する姿

勢が見られる。11は子どもに鍛えられたという。彼

女の学校の子どもたちはストレートに「今日の授業は

つまらない」と手厳しい。とても正直な子どもたちで

あったおかげで子どもからOK が出る授業づくりに

専念した。小学校低学年では、この傾向はさらに顕著

なものになる。6は、「ろくでもない発問や指示では

低学年の子どもたちは全く動かない。遊んでしまう。

まさに教師の力量がもろに表れる」と、誤魔化しの効

かない低学年の子どもたちこそ鏡であると言う。

[図 17]自分を伸ばした要因

批判されることは、認められることでもある。批判

は創造の母胎である。授業構成のブレや矛盾、不備に

ついての的確な批判は、授業力の進歩・向上・創造に

(名)

0 5 10 15 20 25 30

海外(日本人学校)の経験

仕事(役割)を与えられた

ライバル(同僚)との出会い

大学附属校での経験

内地留学・長期研修(大学院)

やりがい感をもつ

授業の達人・師匠との出会い

授業のオリジナルを持つ

独自の研究サークル・勉強会

研究授業

4

4

5

11

13

20

20

22

22

29

20

つながる。つまり独りよがりではなくなる。「公開と

批判」という経験が達人を作る要素の重要部分である

40)。専門性の向上には、専門家同士の厳しい評価が

必要になるからである。

⑰独自の研究サークルと理想の教師

2は自分の師匠と称する教師の授業を何度も何度

も参観し、そして真似した。実習生のようにノートに

極意を書き綴った。ぼうっと見ていると気がつかない

ことを丹念に追った。26 は今でも目標としている師

匠がいて、30 年間、その師匠の背中を追い続けてい

る。このように、達人にはそれぞれ理想とする授業の

師匠がいる。

しかし、自分の所属する学校に、理想とする教師が

いること自体かなり幸運であり、むしろ存在しない方

が多い。そこで師匠となるべき人物を追って独自の研

究サークルに参加したり、そこで尊敬できる理想の師

匠に出会うことが多い。このように独自の研究サーク

ルに所属し訓練を積み重ね自分を磨きあげている達

人が 22名いる。7は「いくつになっても絶えず新し

いものを追究する師匠のもとに集まる関東近県の優

秀な先生たちと議論することを自分の肥料としてい

る」し、27 は「他の先生方と定期的に議論できる研

究会に入ることで得るものが多く、いろいろなアイデ

ィアが生まれるもとになった」と話している。

現在、3名の達人が自ら研究サークルの主宰者とな

っている。この達人たちがまた理想の師匠となって後

輩から目指されているのである。

⑱オンデマンド

伸びた時期として8年目2名、10年目2名の計4

名が日本人学校を経験した。物資の乏しい海外におい

て、現地調達できるもので教材を作り、子どもの理解

を促進させる工夫を凝らした。「授業を創り出すコン

ピテンシー」に磨きをかけたのである。

13名の達人は、内地留学や長期研修、大学院とい

う経験が要因と述べた。28は 30代後半 15年目の大

学院でのリカレント教育を挙げる。指導教官に猛烈に

鍛えられ、自分をもう一度見直しながら論文をまとめ

た。一度教師になってからのリカレント教育は、課題

をもって学ぶことであり、学んだ知識の落ち着き先が

保障される。長期研修は教師の“知的給水時”なので

ある。

26 は自分が伸びた要素を4つに分析した。1つは

新卒以来、妥協なき実践を自分に課し、超えたい存在

の目標に向かったことである。とにかく目標とする先

輩の背中を夢中で追いかけた 10年であった。2つめ

はオリジナリティにこだわったことである。真似て学

ぶことでも、必ず「自分自身の味付け」を忘れなかっ

た。3つめは「人の存在」である。才能がない自分に

多くの力を貸してくれた「人の輪」を大切にしてきた。

4つめは組織と環境であり、自分一人ではどうにもな

らない部分を支えてくれた周囲に常に感謝すること

であると述べている。

相当早い段階での伸びを感じた達人がいる。13 は

イギリスから段ボール2箱、当時最新だった理科の原

書を取り寄せ、それを毎晩翻訳して理科教育の本質を

自分に叩き込んだ。20代半ばであった。

達人が指摘する自分を伸ばした要因は、大きく外

的要因(自分以外のモノ・人からの影響)と内的要因

(自分自身によるもの)とに分けることができる。外

的要因は、主に先輩教師から授業研究や仕事・役職の

勧めにあって取り組むものである。それに対し、内的

要因は、自ら進んで授業研究を行ったり、自ら手を挙

げて日本人学校へ赴任したり長期研修や独自の研究

サークルを経験する。その割合は圧倒的に内的要因に

よって自分の能力を高めていることがわかる。すなわ

ち、各行政には、職能成長の地図を用意し、学ぶべき

能力にしたがって研修を進めているが、達人のたどっ

たキャリアは逆の発想によって伸びていった可能性

が高い。

オンデマンド型研修プログラムとは、採用から一定

の時期に全ての教師に義務づけられた研修プログラ

ムではなく、各教師個人が自分自身の中に生じたデマ

ンド(需要)に基づいて、かつ自由意思で研修するも

のである 41)。すなわち、自らの意思で学ぶというこ

21

とは、原理的な学習と問題解決学習を教師自身が体験

するということであり、この原体験こそが、子どもた

ちに学習の意義や楽しさを体験させることのできる

達人の達人たる所以なのである 42)。

⑲やりがい感

河村茂雄は、教師の心と健康を損なう要因は「学校

ストレス」と「やりがい感の喪失」と述べている 43)。

このことから考えると、達人は常にやりがい感を感じ、

ストレスをはねのける強さがある。3は「子どもが授

業で食いついてきたときや子どもの生き方にかかわ

れた時にやりがいを感じる」といい、他 16名の達人

も子どもの成長にやりがい感を持っている。また、4

名が若手教師の育成に燃えている。1は「やりがいと

は、職位によってそれぞれ対象が違ってくるが、共通

していることは人を伸ばせたこと。それに自分がかか

わり、役に立った感が感じられた時」と述べている。

したがって、そのための教材探しであるとか授業構想

に費やす負担などは苦にならない。

幸福感は量的な側面があり現状を重視するが、やり

がい感は質的な側面があり、未来に向かって投資する

ものである。したがって、現在の幸福感を多尐犠牲に

しても、将来の目標、自分にとっての意味に向かって

進むことを達人は選択する。

しかし、真面目さだけが突出しているわけではない。

達人のやりがい感はプライベートの趣味も充実して

おり、案外適当なところもある。いい加減さを熟知し

ており、力を抜くところは徹底する。やりがい感の確

立とストレス回避を念頭に置くことによって、バーン

アウトに対しても達人なのである。

第4章 結語

本研究では、教師力解明のために、「授業の達人」

からヒアリングを行った結果、大項目4、小項目 19

のコンピテンシーを抽出した。これを4つの事柄で総

括する。 第1に、達人の授業に対する手だてや考え方は、全

員が確実に持っており、自分の言葉で端的に表現でき

るとともに非常にリアリティがあった。例えば、具体

的な学習状況の中で、授業の空気であるとか、子ども

の動きやつぶやき等の実際を細かく語れる。それは達

人が自分の実践を確実に把握して、自分のものとして

授業そのものを消化し、事実として裏打ちしているか

らである。しかし、その授業中の空気であり授業への

こだわりの詳細な中身となると、それぞれ生み出した

実践ゆえにオリジナリティが発揮され共通項でくく

れない。授業に対する達人の手だてや考えはそれぞれ

強烈なオリジナルの姿勢なり具体的な指導技術とな

って子どもに還元される。すなわち「職人の技」が存

在している。逆に、このことが第1項目「子どもを伸

ばす基本的なコンピテンシー」及び第2項目「授業を

深める基本的なコンピテンシー」の一致率がさほど高

くない要因となっている。

第2に、「授業を創り出す基本的なコンピテンシー」

の一致率がいずれも高い。達人は、こういう力を付け

させたいという目標を実現するために、どのような具

体的な授業がもっと有効になるのか、そのプロセスを

計画的に考え抜き、綿密に準備する。そのためには専

門家としての研究と省察を継続し、専門的知識と学習

理論を基盤にした「授業を創り出す基本的なコンピテ

ンシー」が、授業の根幹を揺るぎないものにすること

を認識している。換言すれば、このことが達人の技を

容易に一般化できない理由となる。なぜならば、「子

どもを伸ばす基本的なコンピテンシー」や「授業を深

める基本的なコンピテンシー」などにおける達人の技

は「授業を創り出す基本的なコンピテンシー」によっ

て確立しているのであって、達人の授業で見られる技

のみを追ったところで、表層的な模倣による狭い世界

22

の独りよがりであり、達人のような授業は展開できな

い。このことから模倣は授業では見ることのできない

「授業を創り出す基本的なコンピテンシー」から始め

るべきである。

第3に、達人のコンピテンシーは子どもに寄り添う

姿勢が根幹にある。大項目「子どもを伸ばす基本的な

コンピテンシー」や「授業を深める基本的なコンピテ

ンシー」、「授業を創り出す基本的なコンピテンシー」

の小項目コンピテンシー①から⑭まで、常に達人は子

どもに寄り添うコンピテンシーとして総括できる。第

2で述べたように専門的な研究に熱心であっても、子

どもに寄り添うコンピテンシーを持たず、一方的に教

授する教師では、子ども不在の授業となり、達人とは

呼べない。子どもに寄り添いながら匠の技を持ち合わ

せた職人として、また教育の専門家としての両面を持

ち合わせている教師こそ達人といえる所以なのであ

る。

第4に、「自分を伸ばした要素」から、達人の成長

していく過程が明らかになった。初めからその段階に

達している人が教師になり、実践しているのではない。

つまり、多くの課題を抱えた一人の人間が教師として

生きていきながら、その取組を通して自分に向き合い、

徐々に自分の成長を促進していく。

達人は“できない理由”を探すのではなく、“やれ

るアイディア”を考える。

はじめから立派な教師など、いないのである。

【引用・参考文献】

1)五十嵐良雄『J.J.ルソーの教育論』現代書館1996

2)上杉賢士「大学・大学院における教員養成推進プログラム」千葉大学教育学部2008

3)竹内裕一「進路選択過程における地域学習の意味」『新地理第45巻第3号』1997

4)天笠茂「これからの教員に求められる資質・能力」『中等教育資料8月号』2005

5)八尾坂修「期待される教師力の位相」『悠プラス4月号』2007

6)京都市立永松記念教育センター「教員自らが力量を高めるための研修のあり方」国研所収2002

7)佐藤修司「教師力の向上」『教職研修9月号』2006

8)前掲2)

9)横浜市教育センター「平成20年度横浜市教育センター教職員研修・概要」2008

10)京都府・教師力向上に関する検討委員会「京都府の教師力向上へ向けて・最終まとめ」2007

11)広島県立教育センター「教員の資質・能力及び指導力の向上を図る研修の効果に関する研究」2002

12)河村茂雄『教師力(上)』誠信書房2008

13)今泉博『教師力・若い教師のステップアップ』旪報舎2007

14)牧昌見『20代教師の自己啓発・研修』ぎょうせい1990

15)佐藤修司「教師力の向上」『教職研修9月号』2006

【付記】(敬称略・五十音順)

本研究に関して、長時間にわたる調査に快く協力いただきました。ここに記して感謝申し上げます。

荒川仁美(島根県安来市立広瀬小)飯田良(千葉市教育委員会)宇川光男(千葉市立美浜打瀬小)梅澤真一(筑波大

附属小)大鐘雅勝(千葉市立稲毛中)小嶋祐伺郎(奈良教育大附属中)鎌野育代(千葉大附属中)神尾祝子(千葉市

教育センター)川口修(東京都江東区第七砂町小)川島政美(千葉市立磯辺一中)北川裕子 (千葉市立犢橋中) 楠瀬

千夏(千葉市立磯辺一小)小池公夫(千葉市立新宿中)小山俊英(北海道旫川市立北光小)齋藤勝彦(千葉市立稲毛

高校附属中)斎藤直樹(埼玉県上尾市立上尾小)白井一之(東京都練馬区立光が丘第二小)関紀子(千葉市教育セン

ター) 平良徳(新潟県粟島浦村立粟島浦小)太宰信也(千葉市立土気单中)高橋邦伯(千葉市教育センター)内藤邦

子(千葉市立轟町小)堀米宏(千葉市教育委員会)本多敏幸(東京都千代田区立九段中等教育学校)樋口達也(千葉

市立鶴沢小)松尾忠正(千葉大)山口修司(島根県出雲市立井野小)山﨑二朗(千葉市教育委員会)吉田悦子(千葉

市立高洲一中)

23

16)読売新聞教師力取材班編・教育ルネサンス『教師力』中央公論新社2006

17)朝日新聞教育取材班『教師力』朝日文庫2004

18)前掲2)

19)千葉大学教育学部「教員研修の新たな展開と大学の役割」2008

20)前掲2)

21)前掲14)

22)このことについては1997年、教育職員養成審議会でも、「得意分野を持つ個性豊かな教員の必要性」の中でも指摘されている。

23)西山賢一『免疫ネットワークの時代』NHKブックス1998

複雑系とは:現代の社会には地球環境、国際関係における政治・経済、コンピュータを中心とした情報、さらには人体や免疫機構

等に至る政治学、経済学、社会学、医学とさまざまなレベルで複雑なシステムに囲まれている。このようなシステムを複雑系

(complexity system)とし、西山賢一は「細かく分けても卖純にならないもの」と定義し、生命も経済も社会も複雑系であると述

べている。複雑系は、経済学の領域で使われはじめた考え方で、最初は現代の複雑な経済現象を解明するために用いられたが、今

日ではあらゆる分野で有効な理論として使われつつある。基本的には「原因・結果の関係についての従来の考え方が、ひとつの原

因に対忚するひとつの結果という卖純な関係の設定であったことに対する批判」(『現代用語の基礎知識』1998)であり、その前

提は相互作用・相互浸透という働きを要する。つまり、「ひとつの存在は、つねに他の存在に働きかけ、その能動的作用が相手の

反忚を引き起こし、それがまた自分にも帰属するという、能動・受動の運動の反復が複雑系の基本にある」(『現代用語の基礎知

識』)ということである。そして複雑系を考えるにあたって、相互作用・相互浸透を可能にする開かれたシステムという発想を必

要とする。

24)松平信久「教育展望」国研所収2001

25)小松郁夫「千葉教育2月号」2008

26)佐藤学『教師花伝書』2009

27)白潟敏朗『仕事の5力』中経出版2008

28)寺崎昌男『達人の授業』東京書籍1993

29)大村はま/苅谷剛彦『教えることの復権』ちくま書房2003

30)多田孝志『対話力を育てる』教育出版2005

31)前掲29)

32)多田孝志『共に創る対話力』教育出版2009

33)藤森裕治『国語科授業研究の深層-予測不可能事象と授業システム-』東洋館出版社2009

34)前掲28)

35)「漢和広辞典」集英社

36)秋田喜代美「これからの教師の専門性」『教育展望第46巻1号』国研所収2000

37)前掲29)

38)前掲30)

39)上掲

40)前掲28)

41)戸田善治「大学・大学院における教員養成推進プログラム」千葉大学教育学部2008

42)浅沼茂「教育展望・21世紀の教師像」国研所収2002

43)前掲12)

【研究組織】

○通年講師 千葉大学教育学部 教授 伏見 陽児

○研究協力員 千葉市立小中台中学校 教諭 佐藤 素子 千葉市立海浜打瀬小学校 教諭 中村 正吾

○所内担当 教育研究部門 指導主事 青木 一

○発行日 平成 22年3月 12日

○発行者 所長 山下 正敏

○発行所 千葉市教育センター

〒263-0021千葉市稲毛区轟町 3-7-9 TEL043(285)0090 FAX043(256)3778

達人の事例-コード・マトリックス番号 授業の考え方・手立て・自分のオリジナリティ 学習習慣 授業の基礎基本

1女

■子ども同士の意見をつなぐ■他の子どもの意見や教師の質問を聴かないわけには行かない空気■一瞬のタイミングの突っ込み■授業の台本づくり■課題はわかりそうでわからないもの■結論が3も4つも出るようなもの■競争心のあおり方・[すごいねっ」という声のかけ方の絶妙なタイミングの機敏さ■どうしたら盛り上がるかどうやったら喜ぶかいつも考えている

■単発授業では力がつかないような学習では、毎授業で少しの時間帯で行うs■地図学習などは体が地図感覚になるまで、毎回少しずつ地図に触れさせる■授業のはじめに必ず場所あてクイズ■先生が遅れてきても子どもたちがもう始めている■継続することに意味がある■何をするのでも意味づけることを習慣化している■スピーチでも作業でもこれをやるとこういう意味がある、という意味付けをすることが大事

■流れを大切にしている■本当に浸透させたいものは「簡単な言葉を何度も言う」ことである

2男

■ワクワクさせる面白い仕込み■子どもが思わず確かめたくなるような授業■授業がどう組み立てられるかどうイメージできるかという点で、板書は構造図で、授業の再現フィルム■今日の授業は何してくれるのだろうと子どもがワクワクしてくれる

■ガチンとはやらない ■「あれ?なぜなんだろう?」という疑問をもたせること■「IDAM」。Iはインタラスト、Dはデザイア、MはMOVE(memoryでもいいか)、Aはアクション。興味を持って調べてみて記憶して動く。このサイクルを作ってやるのが基礎基本

3女

■テンポ・リズムが重要■迷っている暇を与えない夢中にさせる授業をいつも提供■五感をつかった授業で子どもの集中力を出す■全員対象とする場面と個に返す場面のメリハリを意識■授業構成は50分間だらっと流すのではなく、スモールステップで、授業を細かく区切る■子どもをよく見て、次に何をさせるか指示し待たせない■子どもの「授業もう終わっちゃうの」の声

■授業中になにもやることがない、という場面を作らない■早く進める生徒はどんどん先に進めるように工夫する■4月に自分の授業についてバシッとオリエンテーションする■4月の段階で自分の授業スタイルが決まっている■授業中のルール・評価を4月に明示する

■英語の場合、1聴く・2話す・3読める・で、4に書く。書くで定着する

4男

■授業の一番 初である初めての出会いを大切■授業開きでは必ず 初の時間に言う台詞「音学ではない。音楽をやる!」■嫌いな理由をはっきりさせる■先生が音楽の時間で一番楽しむ■声量も思いも笑顔も生徒に負けない■授業の始まりはオープニングのテーマソング、終わりははエンディングテーマソングで終わる。授業の 初と 後はシステム化している■「ああ音楽が始まった」という子どもの声

■「音が苦」にならないために2つの約束をする。守られない時怒ると、 初に授業で決める■授業は「全力を尽くす」こと■今は聴くとき、今は歌うときと授業にけじめをつけること■この2つを守れば、音楽できることを保証すると明確に言う■難しいことではないんだと思わせることが大事である■音楽のノートの表紙裏の真ん中に線を引かせる。そしてその上に「音楽」と大きく書かせる。そして線半分下にこの2つの約束事を書かせて、1年間常にフィードバックさせる■音が苦しくなってないかい?音学になってないかい?いつもフードバックさせている

■中学ではいろいろな種を蒔いていると考えている■それを発芽させる能力が基礎基本■その力をつけてやる

5男

■子どもに適度なプレッシャーをかける■たくさん頭を使わせるようにする■説明時は、かなり教師側で緊張の空気を意図的に漂わせる■圧をかけることがプラスとなるようにしている■適度に弛緩するバランス感覚が大事■その学校の実態に合わせて手法を変える

■外国に対して興味関心を高めること■授業の中で、ここが幹、あっちが枝葉と、重要度を明確に示す

6男

■子ども同士がお互いの考えを聴きあえるような授業■しっとりとお互いの考えを聴きあうような関係■自分の意見を持っていないと相手の意見が聴けない■子どもの面白い発想をどんどん出せること■意見が出るために教師は待つ

■話し合いの方法は習慣化している■学習の始まりではいつも子どもは予想から入る■学級会活動でも同じである

■子どもが面白がっているかどうか、それが自分にとっても基礎基本

7男

■答えではなく、自分の考えを出せる雰囲気■子どもの発言には完全な間違いはないというスタンスを教師は取る■子どもの意見はすべて使えるものだということを前提として教師は聴く姿勢でいると、子どもも安心して発言する■資料を使った揺さぶり方が上手で体験と組み合わせている■体験ができなくても、疑似体験のような、できるだけ体験に近い手だてを考える

■国語算数の教科は学習習慣化を重視する■きちんとノートを取るとすごく得するという面があるからと話す■社会科としては習慣化はあまり考えない■発表は同じ意見でも「同じです」というのではなく、自分の言葉で内容は同じでも発言させる

■地図の活用・見方が頭に浮かぶ

番号 授業の考え方・手立て・自分のオリジナリティ 学習習慣 授業の基礎基本

8男

■授業の理想型を常に頭に描きその到達点を心の中に置く■理想型に近づく努力を継続し、繰り返し繰り返していけば、その速度は遅くとも確実に伸びていくものである■大きな単元を考えるように大局をみて、年間のテーマを考える■小さな単元のつながりも実は大きな単元■研究の出発点は子どもを見ること■長い単元は、一回切って別の単元をスタートさせ、ちらっと前単元の話をしてつなげる。その繰り返しをして、新鮮さを保つ

■習慣の意味が違う■自分で考える・短い時間でまとめるなどの習慣は絶対必要■小さなトレーニングをしていないとルールにならない■授業の型は子どもの様子によって一瞬の対応で崩す

■読む力と書く力■読みながら書きながら反応すること■言葉の力を頭の中に描いていくこと

9男

■子どもが常に、「不思議だな」「調べてみたい」「知りたいな」という欲求が満ち溢れている雰囲気を作り出すこと■科学への魅力を喚起させ、自分もこのような世界で活躍してみたいと思わせるような授業を行うこと■授業を通じて多くの子どもを自分の手中に入れ、人間関係を深めて、学校生活一般についても影響力が行使できるような状態を作り出せること■指導者の科学に対する奥深さが垣間見え、先生にはかなわないという圧倒的な力を感じさせること■小学生レベルの話題から大学・研究者レベルの話題まで、ひとつの題材の中に織り交ぜながら、ギャ

■知らず知らずのうちに子どもを自分の手のうちに引き込んでいく■子どもをのせて学習活動を活気づけていく

■題材によって基礎・基本は違ってくる■「基礎:生徒の学ぶ準備ができている→知りたい、学びたい、調べたい等の情意面の意欲がある。」であり、「基本:何のために学ぶのかということがわかっている。→課題をつかんでいる、科学の有用性を感じている」等である

10男

■子どもに厳しく意欲=楽しさとはとらえていない■意欲とは心地よい緊張感と追い込みによって、その追い込みを乗り越えられたとき、勉強がわかって生まれるもの■厳しいけど追い込まれて、勉強をやっているうちにできてくる自分に気づく、そんな空気を作っている

■あいさつはしっかり声を出す■今日の課題はこういうこととしっかりつかませ、自分で考えさせる■忘れ物しないなど基本的なこともしっかりきちんとさせる■発表したら体ごと話し手方を向かすなど、細かな約束をしっかり果たす

■自分の考えを書くこと■自分の意見を持つ■話をしっかり聴く

11女

■笑いやユーモアを授業中にちりばめること■子ども同士の対話がうまれるような発問や問いを心がけている■授業はライブ、2度と同じものはない■話し方、間の取り方、アクションなど自分のオリジナリティーを構築■聞き手の子どもの様子をよく見ていないと独りよがりになる

■しっかりした教科観を持つ■教科を取り巻く様々な関係性をつかむ

12男

■心地よいリズム・テンポで、無駄の時間がないことが授業を成功させる■目標を達成するために、授業は構成するものであって、そのために導入や展開を構成していくものである■授業には自分のオリジナルの指導案を新卒から必ず書き続けている■指導案でこういう授業をやりたいと構成していくと子どもの理解が不自然につながらないようにチェックできる■教師の発問と子どもの予想される反応に相当の時間をかけている■授業後、必ず振り返り、子どもの反応が予想外だと、鉛筆でその場面を書き込む■数十年繰り返すと、子どもの予想はだいたい合ってく

■英語の基礎基本は教科書がまず読めること■本当に出来ない子どもは教科書が読めない■繰り返し読む練習を行う

13男

■子ども全員が授業のどこかに夢中で瞳を輝かせる場面が1回はあるようにすることs■子どもの意見を体全体で聴こうとする妙■授業は発信する力だと思っていたが、聴く力がすごい■教師はカウンセラー

■教える範囲を覚える■あれもこれもという願いはあるが、子どもにとって9教科のうちの1つしかない■ミニマムエッセンシャルは何か■1つを残せばいい■何か1つに絞り込む。この授業ではこれだけわかればいい■理科全体に貫くことは科学の方法である■常に仮説を立てて、それを検証するためのプロセスを踏んでいく

14男

■私のこだわりは子どもが自分から学習を進めようとする空気にすること■子どもに興味が湧くように、教師が働きかけ、意図的に子どもが持てるように仕掛けている■主体性あふれる雰囲気を出す■生活の色々な場面で、興味が湧くように餌をまく■餌は内容が重要で一人でも食いついたらもうOK、次から次に子どもは連鎖する■興味を継続させる技は子どもが目標を持つこと■普段の生活からすでに課題を見つけさせる■裏で親と綿密に情報交換している■主体的演出力■目をみるとその子どもがよかったかどうかわかる■目をみると何かを感じる能力を私は持

■人との対話が基礎基本■これが出来れば算数も国語も何でもいける■しゃべりが苦手な子どもも1対1ならしゃべれるようにする■対話力がつくと自然と人の話を聴くようになる■対話が成立するためには相手も言い分をよく聞かないといけない

番号 授業の考え方・手立て・自分のオリジナリティ 学習習慣 授業の基礎基本

15女

■空気の柔らかさ、心が開かれた状態、子どもは間違ってもいいという雰囲気、むしろ間違ってくれてありがとう、という気持ちを大切にしている■4月の授業開きでは、間違いはOKだということを認識させる■自分が緊張しているとそれが伝わるので、リラックスし、英語で遊ぶ気持ちでいる■コンピュータなどのメディアを多く使い子どものマンネリ化を防ぐ

■ルールがないと勝手方向にいってしまうので大事■「聴く・話す」と「書く」は分ける■書くと聴くがおろそかにしない■授業の流れは挨拶→歌→復習の会話→ゲーム的活動→本題→まとめで書くとパターン化している■パターン化は子どもが安心するし、次やることが自分でわかる

■英語は子どもの間のコミュニケーション作りが基礎基本となる■教師が子どもをどのくらい理解しているか、助け合いができるか■人間関係作りなのである

16女

■自分の考えを人に出せるということを子どもたちに大事だなと思わせる■思っているだけじゃだめで、人に表現できる、話し合いができるということが大事■国語だけにとどまらず、生活の場でも自分の考えを表現できるようにしている■1つ単元を作っても同じことはやらない■この子どもにこういう力をつけさせたいという思いでつくったので、違う子にやってもうまくいかないことが多い。似ている内容でも、ひと工夫することを考える

■週刊つける時とつけない時がある■書きならすことは習慣化している■全文視写させ字が雑にならないようにひらがなチェックをしている■授業のパターン化は図らない

■書くことを基礎基本としている■板書を写すこともできない子どもは、勉強以前のこととして十分に訓練させる

17女

■子どもの頭の中にある思考のもやもや感を大切にしている■一人一人の子どもの頭や体からもやもやが出てきて、そのもやもやで考える方向が見えたり見えなかったりする■答えたい気持ちがみんなにあり、一人一人が考えられるような空気感を大切にした授業を作ってきた

■習慣化はつける派である■1日1つことわざを教える■小学校教師は1日子どもと一緒にいるので、ことわざに語句を入れておくと語句の獲得となる

■基礎基本は素直さである

18女

■子どもの心の流れを大事にしている■課題に対してこれをやるぞという集中の意識を大切にしている■授業構成では、クライマックスを決め、そこから逆に戻って発問、あの子の回答と、緻密に予想すると必要なものは決まり、それに従って準備する■相当に用意周到に子どもに種を蒔く■現在やっている内容のどこかに次の単元の種を蒔き、耳元で囁いたり、さりげなく興味が湧くように関連パンフレットを置いたり、そして期を熟した頃に課題を求めて、ヒットしたらものすごく褒める

■子どもたちに自分の声を慣らさせる■そのために毎朝本を読んであげる■読み聞かせをする■自分の声が自然に耳から入るようになる■話をいつもしてあげる■耳を思わず傾けたくなるような、身近で「はっ」とする話題をいつも考えている

■対話力が基礎基本■その課題が本物でないと対話にならない■自分がやりたいと思わないのはまずダメである

19男

■子どもが授業が終わったとき、「ああ面白かった」、という声が聞こえるような授業■本物を見せる。できない場合は画像で見せる■柔軟な感覚がとても大事で、その素材をどう料理するかである■抑揚が大切で、子どもに対して勢いだけではなく、緩急をつける■「え?なになに、もう一度言って先生」そこでゆっくりもう一度言うとしみこむ口のパフォーマンス

■習慣化付ける・付けないはどちらでもない。中1から習慣化は図るけど、そのうち飽きがくる。授業のパターン化は飽きがくるので、少しずつ変える。習慣にも回転は必要だと思う(島)

■学習として全体が見えること■教師は子どもをよく見ること

20男

■自分が伝えたいという思いを授業のネタに込めるからネタ探しが大切■ネタ探しの熱意が子どもに自然に伝わる■子どもの実態をきちんとリサーチしないといけない。リサーチによってネタ探しは大きく変わる■授業で人との関わりを必ず持たせる■人の生き様を写す授業を心がけている■対話を大事にしている■子どもたちが対話を通して新しい何かを発見できたということを、対話の本質として核に据える■悶々して良い■友達の意見を聞いて、自分の考えが変化し、仮に自分の意見が100%通らなくてもよい

■聴くことが大事である■積極的な聴き方■課題を意識して聴くこと■常にメモすることが大事■メモをを取ると自分の考えが整理できる■相手の言い分も整理できる■質問できないのは準備してないからである。質問するぞと構えて聴くことが大事である■質問ができないということは、考えていないと言うことと同じ■我々ベテランがきたえてやらねばいけない

21男

■子どもたちが、互いに教えたり教えられたりできる明るい雰囲気と真剣な表情になる場面を作り、「そうだったのか」「わかった」という声が出るような仕組みを考える■対話を特に大事にして、発言や挙手で理解状況をモニターする

■多読の奨励■辞書・辞典の積極活用 ■教科書を活用して教科書を超える■学習指導要領で、当該学年を見るのではなく、前後の学年のつながり、中学校へのかかわりを調べる

22男

■国語が好きという子をどれだけ増やせるかという点にこだわる■人間的魅力が必要なことと、授業自体が面白いこと、だから人間を磨くこと■子どもを引き付けるため、 初に「えっ?」と思わせる爆弾を落とす■歌って踊れるエンターテイメント教師■自分でやってみんなにもやらせる。座学でない。国語は表現なのだ

■いくつか習慣化にこだわりがある■授業の 初はトレーニングで帯学習を行う■書くことにこだわっているのでノートはきちんと書かせる■能力の差があるので70%できればいい

■経験を積ませること■思いや考えを表現できることである

番号 授業の考え方・手立て・自分のオリジナリティ 学習習慣 授業の基礎基本

23男

■授業を始める時に緊張感を持たせ、子どもが自由に意見を言える雰囲気を作る■子どもの発言を理解し、価値付けをしてあげることと■子どもの思考に合わせた展開や子どもに寄り添いながらゴールまで運ぶこと■1時間の流れが分かる板書、1時間のストーリーを作ること■授業に引き込んでいく話術が大切■今後学習する内容や考え方も練りこんでいく授業を考えている■子どもの発言を上手に拾い、つなげていくこと

■ノート指導は習慣化を図っている■自分の考えを表現する手法を指導する■表現方法などは学級共通にしておき、誰にでも通じるようにする■友達の考えを読み取らせる

24男

■授業中の雰囲気は緊張とリラックスの双方を大切にしている■悩む問題やだれでもできそうで実は迷う問題を作成し、子どもに提供することを心がけている■国語から音楽・総合・特活まで、どの教科でも、すぐにその場で飛び込み授業ができる■他教科と関連させながら授業を展開する

■板書のことや友だちの意見・自分の考え・調べたことなどノートに大量に書かせる■右手から鉛筆を離させない■辞書はいつでも使う

■子どもの既知を揺さぶり、自分の考えをまず決定させて外に表現すること■たくさんの友だちと意見交換すること■ふりかえること■

25女

■数学のレポートづくりを継続■数学が身近に感じたり、数学のよさがわかるように身近な生活の中から課題づくりに心がけ、問題解決に可能な個所を11年間続けて開発している■おもしろくなければ授業じゃない■数字の持つ美しさなど、そういう素材・話題を探す■子どもの感想から「あっという間の授業だった」■なぜ、数学を学ぶのか、時々ポイントでわかるように話す

■数学のノート作りを重視■ノートを毎回回収して、問題を解かせ、先生の所へ持ってこさせノート評価をして褒める■間違えても褒めてから直す■励まし・声かけは常に行う■早く終わった子どもには別メニューを準備しておく

■本日の学習の目標を 初に提示して、 終的に何がわかったか、到達したところを子どもにノートに書かせる■ノートのキーワードとして、今日の学習で何を学んだが、書かせて発表させる■計算はきちんとできないといけないので、手だてを書かせ、間違えを消さないで、何を間違えたのか確認して、どうしたらよきか考えさせる

26男

■授業以前に「学級の人間関係づくり」を も大切にしている■子ども同士の「しっとり」とした人間関係が構築されれば、支持的な風土のある学級ができる■「子ども同士が深いところで繋がり合うことのできる学級」をいつも求めている■子どもたちの「判断力」は大切で、その育成を 重点に考えている■授業中の雰囲気を一言で言い表すならば、「しっとり」■「日常」が勝負であり、誰も参観者のいない毎日の営みの充実度が、研究授業等での「質」に繋がっていく■「子ども目線」を忘れない■勝負授業の合い言葉は、「普段着」そして「自然体」■学級

■様々な具体例を取り上げ、繰り返し子どもたちに伝える■『あきらめないこと』・『わからないことは何度も聞く』学習■『人の話を聴くこと』が学習の第一歩であることを学級全体で大切にする■学級をまずしっかりと観察し作戦を立る■家庭学習とかその他の学習習慣は焦って多くのことを子どもたちに与え、消化不良を起こしてしまうと「習慣形成」にならない■家庭学習は、常に「自学」を主にしている■軌道に乗るまでは、学年に応じた「自学の手引き」を作成・配布■学習習慣づくりでは、①見通し(Vision)を持って、時間をかけてじっくりと

■学習を通して「学び方」を鍛える■授業を進める際には、学年に応じた「学び方」が大切■「先生は、教えるプロなのだから、 高の授業を気持ちよくやりたい。そのためには皆さん(子どもたち)が、それに応える学びをしてくれなければ困る。それで…」。私の学級の子どもたちは、耳にタコができるほどこのフレーズ■唯一子どもたちに牙をむくのは、このフレーズが合図■「何を」「どう教えるか」…教材研究の質が授業の全てを左右する■授業ストーリーを描くときに、「何を考えさせ」「何を教えるか」を明確にする■「どのように身に付けさせていく

27男

■発言しやすい雰囲気を作ることを大切にしている。生徒の発言、つぶやきを取り上げ、それらを利用しながら授業を進めるようにしているが、無秩序な発言に対しては指導している。また、ペアワークやグループワークが多いので、クラスのどの生徒ともしっかり活動するように日頃より指導している。授業は生徒と教師が一緒に作り上げていくものであることを機会があるごとに生徒に伝えている。(本)■私は自分の実践やアイディアについてはすべて研修会や書籍などで紹介している。私が考えたオリジナルの活動や指導方法は、誰にでもできることを前提と

■「あいさつ→コミュニケーション活動(帯活動)→復習→新言語材料の導入→まとめ」の流れが基本■1回の授業で教えたことがその場だけで定着するとは考えていない■何度も同じことを繰り返したり、教材などを作成する際、以前教えたことを入れ込んだり、授業のはじめに既習の言語材料を自分で考えて使う機会を設けるようにしている■聞く、話す、読む、書く活動をバランスよく入れる■英語をなるべく多く使用するが、教科書の説明などでは日本語を使用

28男

■指導略案は毎時間作っていた■1つの単元について略案を作って授業後見直す。そこにメモを書いてうまくいった、うまくいかなかったと反省する

■パターンに追い込む必要はない■子どもに学習の関心を持たせ、どんどん追求させて、理解させ、わかった、また次やろう、というおおまかな流れはある

■言葉を大切にしている。社会科の言葉の意味である■歴史的な用語の前の言葉の意味をしっかりとらえさせる■研究授業のように人に見せる授業を多くやる■自分が面白くないと子どもも面白くない■自分が受けたい授業だよなと思うような授業づくりが出発である

29男

■自分の意見を自由に言える雰囲気■仲間の意見をしっかり聴く雰囲気作り■授業のためには学習集団作りが不可欠■聞く→聴く→話す→話し合うというプロセスの指導■地理・歴史・公民を社会科として総合的に捉えて授業構成を考える■総合などの他領域との関連も考えた計画を立てる■他の教師との連携も取り入れる

■ノートの取り方(作り方)の指導■仲間の意見を受容的・共感的に聴く(うなずき、返事、視線)などの指導を継続する

■学習のねらいに沿った授業テーマを生徒に提示する■中心発問を考え、その解決のための方法は生徒の話し合いや価値観のすりあわせで授業をする■いかに自分が話さないでいい展開を考える■前時の授業を使い、次の授業につながる展開をする■生徒実態を把握し、全員が参加できることを基本とし、生徒の興味に応じた発問や場面展開を考えること

番号 教材探し うまくいった印象深い授業 自分を伸ばした要素

1女

■自分がワクワクするものがくるまでインターネットでリンクをとことん追求■自分がワクワクして「これだっ」と思うものはだいたい子どもも食いついてくる

■瞬間の判断で子どもたちに意見がどんどんつながっていき、止まらなくなった■子どもがワクワクして授業を待っていた■一人一人に質問がぴったりあった■しっかり準備してあったからだと思う■全身全霊こめて授業に取り組み、子どもはのった■授業を作ったぞという感があり、とても充実していた■子どもと勝負したような気がした■子どもとフィットした瞬間だった

■常に満足しないことである■新しいことを求め、これがいいと思ったら徹底的に食いつく■好奇心、フットワークの良さが重要である

2男

■授業は小さな単元の積み重ね■一週間3時間で一区切りできるもの■教材はできる限りオリジナルのものを探す■真似ただけでなく探すことが大事■大変だけど見つかった時は「これだ!」と感動する自分がいる■見つける場所は子どもとの会話をしているときとか、とにかくコミュニケーション取っているときに多く見つかる■牛乳の蓋とかコンビニに売っているものとか身近な生活の中から探せることもよくある■あまり遠い世界の話にならないように生活の中からまず探す■食したり嗅いだり五感を使えるもの■必要なものがみつかったら、ケチらないでどん

■普通の授業であった。少ない資料で、そこからどんどん意見が広がった。教師と生徒がフィットした感じの授業だった。手を挙げなくても子どもが次から次へと意見がでた。まさしくレベルが子どもに一致した授業だった。(山)

■10年目、異動3校目の1年目が も伸びると思った■授業の達人に会えて「ああなりたい」と思った■今日失敗しても明日は変えられると悲観しなかった■子どもの生活の中に授業でやったことが広がると想像すると積極的なれる■一年中いる教育実習生も含め、常に授業を人にみられることも伸びる大きな要素だ■日頃は、授業では伝えない教養、幅広い知識を多く取り入れた■よく本を読んだ

3女

■英語はこういう場面でこういうものを使うというシュチュエーションづくり大事である■使えそうな写真や絵などいつも探している■出会ったらそれをストックしてたくさん貯めている

■全英研の授業が忘れられない■文化会館で生徒を呼んで公開授業をした■大学の先生の理論を実践した■大学と連携したことによって質の高いシステマチックな授業ができた

■附属中時代で経験10年目である■人の授業をよくみて、まねる■自分なりに咀嚼して、ちょっと少しアレンジする■ガンガン授業見られて鍛えられた

4男

■自分のアンテナを高くしている■テレビガイドで2週間先までチェックして授業で使えそうなものは録画している■世の中に網を張るというような感じ■時間はかかるが無駄だとは思わない■教材で引き出しをいっぱいにしている感じ

■音楽の「運命」の授業■ジャジャジャジャーンではない。ンジャジャジャジャーンである■ジャの前にンが入る■ンはパワーの圧縮■ンがあるからエネルギッシュな音が一気に出る■この話をすると子どもは目から鱗という感じである■授業が終わって、音楽室から出るとき、子どもはみんなンジャしながら出る■やったと思う■次に何をやってくれるか、と期待してくれる

■附属中の8年間、ちょうど10年目頃にガンガン引っ張り出された■積極的に何でもやった■断ることをしなかった■猛烈に忙しかったけど、何事もわかるようになり、多くの人と知り合えるようになった

5男

■教材を見つけるのは意欲そのものである■次にこういう授業をしようとイメージする。イメージできれば、どういうものが必要になるかはっきりしてくる■その中で、限られた時間の中で も効果が表れるものを選択する

■教師も生徒もやりきった感じで、授業が終わったら「はあ~」と、お互い解放された心地よさがある授業が時々できる■教師の一方通行ではなく、子どもにも授業を引っ張ってくれるものがいないとこの心地につながらない

■新卒2年目でモードチチェンジを図った■残念ながら新卒1年目は大学生のままだった■「これじゃやっていけない」と真剣に思い一気にいった

6男

■子どもが迷ってしまう、考え込んでしまうような焦点化した教材を考える■日常生活の中で、自分が判断に困り、どうしようかと思うとき、子どもだったらどう考えるだろうと思って教材化する

■バッチリうまくいったような授業はない■いつも課題ばかり残る■なんでうまくいかなかったか。どうしたらもっとおもしろくなるだろうか。子どもの理解をよくする手立てがそこにある

■10年目ぐらいに、附属小に転勤してから鍛えられた■附属小にすごい先生がいたし、理論のすばらしい教授がいた■公開研や授業研をどんどんやった■研究授業をやらざるをえない状況を作った■うまくいかなくても、繰り返し授業を人に見てもらえば、少しずつうまくいくようになる■人に見られることによって伸びる■しかし、いつも本当は子どもに見られているんだ、という意識が重要である■人の授業をたくさんみる■授業の見方というのがある。子どもの様子に絞るとか、仮説を持ってみるとよくわかることがある■見る目的をはっきり持つことが伸び

7男

■資料にこだわる。資料で授業は8割決まる■いつも町を歩いていても探し、ストックし、いつか日の目を必ず見る■資料は子どもの考えを否定しないものがよい■ある写真を使い、写っているものから読み取ったものは事実であり否定できない■「目の付け所がいいね」と褒めると、次から子どもの意欲が出て、見方ももっと変なところとか、すぐに答えが出ないところとか、人と違うところなど見ようと積極的になる

■その時は良かった、上手くいったと思うけど、また、もっと上手くできると思い、すぐ忘れてしまう■失敗したことはいつまでも覚えている■この場面で、この子の発言を取り上げていれば良かったとか、もう少しここで時間をとればよかったとか、よく反省する

■30代10年目頃に一気に伸びた■とにかくあらゆるものに挑戦した■先進的な、今まで他の人があまり取り組んでこなかったこと■一人一人テーマを持って調べる学習など、挑戦的にやってみた■先輩からこんなの授業じゃないと、めちゃくちゃ文句言われたのを覚えている

番号 教材探し うまくいった印象深い授業 自分を伸ばした要素

8男

■材料を持ってくるということは、単元構成と同じである■例えば短歌の材料は日常に転がっている■昭和の万葉集で「家族」といテーマで読むと面白い■材料はいつか料理しようと温めておく■豊富な言葉の世界の中で、子どもをどこに置くか■教科書は広い世界の一部しかない■子どもが材料で加工するのが学習である■加工する過程でこういう力をつけていかせるのだという構想が大事である■材料は新鮮なものほど子どもは食いつく

■若いころはよく授業でしゃべった■自分がこういう方向へ行きたいと強く思った■50分授業を100分授業してしまった■協議会ではここまで引っ張らないと自分の意図は伝わらないと言い訳した■この後、子どもを思考させ作業させて力がついてくればいいと思うようになった

■学校全体が見渡せるようになったとき、自分の伸びを認識した■教科の全体像がみえてきたときと授業の理想型が見えたときに一気に伸びた

9男

■指導内容、題材によって違う■子どもの視点に立ってどのように受け取られるか、どのように扱われるだろうかというような観点から考える■子どもが興味をもったり喜びそうなものを探す

■バッチリといった授業はない■必ずどこか、次はこうしようという課題が残った

■15~20年目くらい■初任のころは、生徒が理解しているかどうかをあまり意識せずに授業を進めていたが、 近は生徒とのスクリプトの違いを意識して授業を進めるようになった■一言でいえば、いろいろな経験を積んだこと■国内のみならず海外の教育事情なども学んだり実際に体験した

10男

■教材に惚れ込まないと、教材を愛さないといけない ■うまくいった授業はない■いつもこうすればよかったと必ず反省が残る■全国公開授業で片腕のお相撲さんという話を取り上げ、実際に授業にゲストで来てもらいインタビューさせてもたった■こういうことは子どもの心に一生残るだろう

■30歳。頼まれた仕事は断ることなく、自分を追い込んだ■断れば済むことだけど、そうしなければ、自分は何もやらないタイプの人間だと思う■10年目頃に自分の専門性が出てきた■自分が成長したのは、あの時代のあの時が今の自分がある、と思うことが大事である■あそこで仕事をして良かったという気持ちが今の自分をささえてくれている

11女

■車の中でも生活でも教材探しはいつも考えている■毎日すでに教材探しが始まっている

■100点満点の授業はない■明日はもっといい授業をやりたい。その一心である

■30代半ば。子どもに鍛えられた■椿森の子どもたちはストレートに「今日の授業はつまらない」と手厳しい。とても正直なのである■犢橋での国際理解教育の研究、長研挑戦、大学院、附属中、どんどん力がついてきた■どこの会に行っても必ず1回発表しようと自分に課した■1年に1回は論文的なものを書こうと課した

12男

■教材研究の時は、前回の指導案をみて、今年用の指導案を作る■大変時間がかかるので例えば9月から12月分は夏休み中に全部作るとか工夫している■実際の授業が近づいてきたら、若干の修正を加えて本番に臨む■授業が終わったら、必ず修正点や子どもの反応を書き込み、来年度あるいは再来年度の教材研究用にストックしておく■具体的なグッズは100円ショップなどで、授業をイメージしたとき「あ、ここの導入で使えそうだな」と思ったら、取りあえず買っておく■指導案に買ったグッズを忘れないようにメモしておく

■何を使うかで授業の成否は左右する■これを使うと「おおー」と歓声があがることがわかってくる■「What isit?」では一見なんだかわからないけど、時計だったり、子どもは「スゲー」と反応する■Whatの意味を少しは理解してくれる■こういうものは淘汰され、ダメなものは消えていく■今は相当な宝がある

■新卒から今まで、授業の全てに必ず指導案を書いてきた■新卒の頃の指導案を見てみてみると、こんなやつをやってたんだと苦笑する■指導案を作り続けていると、下手なりに磨きがかかってくる■この子たちを教えるのは自分しかいない、と責任を感じてしっかり準備する■アドリブでできるほど、自分は力がない。十分教材研究してこれなら授業が出来るだろうというところまで仕上げてから臨む■教育実習で仕込まれて以来続けている

13男

■基本的には現地・現物主義者■現地に行くと「これを使ったら子どもの学習に役立つぞ!」というアイディアが抱えきれないくらい沸く■実際にものづくりをすると面白さや大変さがよく分かる■それがアイディアの源泉■直感で対象を選び理論を後付けするタイプ■じっくり理論化を図っており、大学院の授業で披露する

■文部省指定の公開授業26歳■一言もしゃべらない授業だった■塩酸と水酸化ナトリウムの実験■前の前の授業から十分実験させた■教師はコーディネート、子どもが新しいことを発見していく

■イギリスから段ボール2箱、当時 新だった理科の本を取り寄せた■それを毎晩翻訳して理科教育の本質を自分に叩き込んだ■20代半ばである■1,2年は辛かった。一人で悩んだ。3年経って開けた。生徒が助けてくれた■授業で上手く進まないとき、生徒が助け船を出してくれるようになった■部活のおかげもあった■日常的なつながりがあるということで、教科で支えてくれる軍団となる■若年層と子どもの年齢は近いので共有関係を大切にする

14男

■地域にどんな人がいるか、地域に何があるかいつも調査する■授業では地域の人を必ずからめる■学習が終わっても交流は続く■異動してその学校の総合的な学習の時間の単元が決まっていても地域は必ず絡められる

■1段階目は初任から3年目の特別支援学校で、「ああ、こうやって個人一人一人を見ると言うことなんだ」とわかった■2段階目は8年目3校目■学校全体を動かすポジションになってから■全体を動かすことは、自分のクラスがダメだとまずい。自分のクラスをしっかり運営し、自分が全体を動かし、クラスにつけなくてもしっかり出来ているようにさせた

番号 教材探し うまくいった印象深い授業 自分を伸ばした要素

15女

■メールを英語で書かせる■ALTと校内でやり取りさせると盛り上がる■授業にリアリティさをだすような教材を考えている■必要な情報が交換できるような教材がよい

■中高英語の研究授業■子どもがグループごとに活動するとき、自分が考えたことを英語で言ってみようということで、ディベートっぽく話し合い活動が行われた■準備してきた表現方法など仕込みが大変だったけど、うまくいって子どもの自信に満ちた顔をみたら嬉しくなった■子どもの変容がすごくよく表れた授業で、こういう活動が大事と感じた

■30代半ばに1つの役割を与えられた■それまで逃げていたけど、立場が違い、自分でやらなくちゃと覚悟を決める■そのため視野が広がり、多くの人から指導を受けられるようになり、ひとりよがりではなくなった。

16女

■出かけるときはいつも教材を探す癖をつけている■いつ使ってもいいようにすぐ買う。とっておく。引出にいれておく■いつもそういう目で生活を見ている■その時バタバタしてもよい資料はみつからない

■授業が失敗したと思ったことはない■それなりに教材研究しているから外れるはずはない■はずすのはよく子どもを見ていないからである■教材を深く研究していれば、そのようなことはない■子どもの実態が一番 初にくる■その実態から課題をつくる■その大まかな課題を一年で完成したいという願いを早めに持つ■私はここに全て集約する■テーマ性をつくる■子どもをこう育てたいという長年の哲学を比較してテーマを確立していく

■もう10年目までがむしゃらにやった■特別活動に興味があった■児童会の縦割りが好きだった■15年目ぐらいから教科で学級経営をやることができるようになってきた■1年を通して読書とか俳句とか、学級経営に授業を反映させた■学級経営の軸は教科だった■1年間の単元開発を通し、こういう力がつけたいということと同じで、学級経営に通じる■自分の得意のものを通して勝負できる。そこが強い

17女

■歩いたり電車に乗ったり吊革の広告、他教科、におい、いろいろなことに好奇心があり、これらに共通項がある■本物に触れさせる■存分に使わせる■基本的に小学校の子どもは国語ができるものである

■もやもやが関係している■中原中也の月夜のボタンで、何を象徴しているかという問いに、一人ずつ子どもが他の言葉に置き換えて全員が発言した。もやもやがゆれて、思っていたことが重なったような気がした■20年ぶりの同窓会で、新聞記者になった子どもがその授業を覚えていた■成功したというより子どもとともに共同作業をしたという感じの残る授業だった■子どもの心の中に何か残せた■草野新平の春のうた■しっかり手だては打っていた■冬眠という詩で、じっとかたまって、ホッとまぶしさを動作で表した■そうしたらうまく読むというより、子

■1年目の途中に副担から担任に変わり、時計の回転が変わった気がする■2校目の副担では広く自分が見られるようになった■10年目の附属小では、「力がないのに子どもが自分についてきてくれるのは若さゆえ、おばさんになったら子どもがついてこなくなるかも」と不安が出始めた■中学を教えるなら、高校生を教えられる実力がないといけないと教科を深めるようにした

18女

■子供の追及したいと思う意識が自然に流れていくような要素をもっている素材を、そうなるように教材として組み立てていくこと■対話による集約と拡散が繰り返され、思考の深まりが新たな課題を生み、学びが深まるように設定する■素材そのものは、まず、自分がほれ込むような面白いもの■自分自身のよさ(特技、人脈、地の利など)がいかせるもの

■韓国人絵本家のクゥェンジョセンの教材を5年国語で取り扱った■その前に韓国に行って彼に会ってきた■授業は一回勝負である■新鮮だから伝わるものだ■「これは私とみんなのためだけの授業だよ」、と子どもをくすぐる■子どもはそんなに準備してくれたんだと感激し、のってくる■ペアで対話をつなぎ、同じ意見のもの同士で感想を言い合い、ジグゾーで自分の考えを伝える■作家の生き方に触れられたようだった

■やりつくしたものではなく、提案性の高いものを考えやる■オリジナルものをいつも考え、いつもいつも追求していたらこうなった

19男

■カメラをいつも持ち歩いている■写真を多くとる■旅に行ってもその地方のテレビをよく見て。見比べる■教師じゃない人とよく会話する■実社会をもっとよく見る■人脈が大事である■いろいろなところでつながりがあり、それを大事にしている■この人脈でプロの人たちと知り合える

■ピュリツァ賞受賞の子どもを襲う禿鷹の写真で道徳をやった■記事を読ませ線を引かせた■そこに引いてほしいと願うところに100%引いてくれた■撮影者の気持ちになって記事を書かせた■文章で細かな描写となった■授業も余韻があった■数か月後社会の授業にも生きていた

■29歳8年目■附属中の校内研修会では、主題とやりたいことがずれていれば、もうそこで読んでもらえなかった■猛烈に厳しくブレがないか整合性に厳しかった■実際、授業をやり、他教科からボロクソに厳しく批判された■あの先生に批判を言わせない授業を作ろうと燃えた

20男

■常にメモること■手帳を持ち歩いている■とにかく思いついたらメモる■アイディアがパッと浮かんだらすぐにメモる■駅でも車の中でも家でもテレビを見ている 中でもピンとくればメモる■これは授業のネタだけではない。学級会も学年集会でも使える

多くある ■パラグアイ日本人学校の3年間■ケニアも同様である■42歳で教頭になった■異文化の中の日系人の中で影響を受けた

21男

■道徳で、人に注目していたときは、新聞、市町村の広報誌、人材バンク集など有効■こんな人がいるという口コミ情報も有効

■長野オリンピックに出場する選手の生き方が新聞で紹介され、その生き方に強い感動を感じた■それが原点となり、思い切って新聞社経由で本人と連絡を取り、お会いしていろいろな話を聞かせてもらった■その話をもとに指導案をたて、授業にゲストティーチャーとして参加してもらった■子どもは目の前の人から生き方のエールをいただき、表情がいきいきした

■15年から20年■附属小に勤務し切磋琢磨した■教材を何回も読む。わかりやすく書く■授業での子どもの事実にこだわった

22男

■子どもが食いつきそうな面白いネタをいつも意識している■新聞をスクラップしている■ひとの授業を見ながら自分だったらこうやる、ここはこうするという思いでみる

■特活の授業で、一人で4クラスを受けもたが、予想以上に話し合いが盛り上がり、予想以上に話し合いが活発に行われた

■2校目の緑中で鍛えられた。国語の先輩がどんどん機会を与えてくれた。そのつど、1つの授業で何度も修正させられ、書き直された

番号 教材探し うまくいった印象深い授業 自分を伸ばした要素

23男

■テレビ、広告、雑誌などから見つけたり、教科書の問題をアレンジする■100円ショップで使えそうなものを探す■本時のねらいを達成するのに適した教材を考える

■30代、経験年数5年から15年■教材研究を深くしたり研究会に出席して、オリジナルな教材を開発する■研究会や全国大会等で実践事例を発表する■切磋琢磨できる仲間がいることが自分を伸ばす■自分の実践をまとめたり論文にしたりする■主張のある授業をする

24男

■普段の生活やその学区内から探す■町を歩いているときとか、お店に買い物に行ったときとか、人と話をしたとき、自分の足で見つける■現地で生で見て、触る■本、月刊誌等はお金に糸目を付けずに買っておく■どこへでも生を見に行き、話す■他県へも行く

■できないと思っていた子が活躍して、できると思われていた子が「あいつやるなあ」と笑顔でその子を見ているときの授業が印象的である■子どもが授業後に授業について「あーでもない、こーでもない、」「だってさあ」などと続きを話しているときも同じである■授業のことで話しかけてきたときや保護者から「子どもから授業の話を聞いたんだけど」と話しかけられたときも同じである

■一番伸びたと思われる年数は10年以降■その年その年ごと、ちょうど様々な教科の全体像が見えて来た■一年から六年まで全学年を経験した頃である

25女

■図形など、身近なものと常にかかわらせる■1年生で疑問に思った所を2年生で解決させる■不思議だなって思うところが1年後によくわかったという有用性を実感させる■この教科は必要なんだ、学ぶことが、楽しいんだと思わせることのできるものを探す

■1年生で疑問を持たせる■モデルを作って視覚でとらえさせる■3年生で三平方の定理でわかる■子どもは「すげーっ」と充実感を味わう■この期間、問題を寝かせる

■14年前、これからの時代はレポートがいいと、江波戸先生に提言された■楽しい、もっと広げたいと自分で思わないと、子どももそう思わない■子どもにやらせるときは、必ず、自分でもやってみる■レポートも多面体模型もとにかく自分で作ってみる■そうすると子どもは自然に寄ってくる■面白そうなことは、なるべく休み時間に、子どもの前で試作品を作る■剣持ゼミで鍛えられた。

26男

■教材は授業に関連するあらゆるものを指す■教材は「ストーリーの中に位置付く」ものでなければならない■教材はストーリーの展開に様々な「刺激」や「インパクト」を与えるものでなければならない■教材開発の基本的な考え方は、「足で稼げ、汗を流せ」■緻密であれ。効率的であれ■教師がいかにアンテナを周囲に張り巡らせているかが勝負である■身近な何気ないところに「教材化のヒント」がちりばめられ、それを教材として取り込んでいくことのできるのは「教師の感性」にかかっている

■頭の中に残っている授業の大半は、「失敗したなあ」と思う授業や「ここはこうした方がよかったのかな」という改善の余地のある授業でだった■授業後の心地のよい余韻は、しばらくすると記憶の彼方へ消えてしまう■総合的な学習の時間は、コンスタントに充実した内容を提供することができた■外部講師の活用と体験活動を軸に学習を構成するという形が、私の中では定着してきた■近年 も力点を置いている「外国語活動」では、昨年度行った「外国語活動」と「金銭教育」を融合した実践も大いに盛り上がった

■自分が伸びたと感じたのは10~15年目(32~37歳頃)■新卒以来10年間、妥協なき実践を自分に課した■超えたい存在の目標があったからこそ努力ができた■たくさんの教育書を読みあさり、授業名人の授業を参観できる機会があればどんどん押しかけた■目標とする先輩の背中を追いかけた10年間■オリジナリティにこだわった■真似る時にも自分の味付けを忘れないこと■参考にした事柄をそのまま使ったことは一度もない■よく「学ぶことは、真似ることから」等と言われるが、そこに「自分自身の味付け」を忘れないように心がけた■そういっ

27男

■どんな教材を選ぶ際でも、「質」、「難易度」、「量(問題数、文章の語数など)」の3つの観点で選ぶ■自分の授業を補ってくれる教材を選ぶ■授業では長文に触れる機会が少ないと副読本を含めて長文を読ませるようなもの、文法のドリル量が定着のために必要な特、ドリルをしっかりできるワークブック、など

■私は100点満点の授業はないと思っている■授業名人と呼ばれる人は、生徒の状況に応じていつでも80点以上の授業ができる■アイディアが多く、状況に応じていろいろなアプローチや対処ができるからである■生徒がとても協力的であったり、英語の苦手な生徒がとてもがんばったりした授業についてはよく覚えている■ふだんの授業で一言も話さない生徒が、自分の夢を語るスピーチで、ぼそぼそと話したことなどである■発表でがんばった生徒については10年以上経っても覚えていることが多い

■30歳から40歳の10年間であった■別の学校の授業を見て、「これではいけない」と思い立ち、さまざまな研修会に参加するようになった■2校目は小規模校であったため、複数の学年を持ち、各学年に到達目標を定め、いろいろな指導を試すことができた■毎回の授業を研究授業だと思って取り組んでいた。

28男

■資料作りは自分の手作りにこだわった■資料集に載っていないものでオリジナルのものを使うように努力した■とにかく本を読む■これおもしろそうだなと思ったら、実際に現地に行くとあらたな発見がある■それを授業で使うと子どもたちは臨場感を感じてくれる

■教科書の編集作業を10年ぐらいやっで世界が広がった■大学院2年間で、宇佐美研で、自分をもう一度見直すことができた■宇佐美さんに猛烈に鍛えさせられた。30代後半である

29男

■先人の実践に学ぶ■文献や資料に当たる■旅の際に探す■社会科関係だけでなく、文学作品・芸術・音楽・料理などさまざまな分野から差がして取り入れる

■生徒が泣きながら発言した道徳■話し合いが活発に展開され、予想外の結果を導いた社会科

■10年目ぐらいに一通りの授業作りができるようになった■毎年進んで研究授業を行い、教材研究をしないといけない状況に追い込んだから■次の10年は、いわいる困難校をまわり、教科の授業力だけでなく、生徒の心のケアや学び合う学習集団作りの手法を学び、きめ細かい授業展開ができるようになった

番号 理想の教師像 独自の研究会 授業研究 やりがい感

1女

■本当に見ていなければほめられないことをいう先輩で、「ああ、よくみているな」と感心する■やる気にさせるつぼを心得ている■部員とかクラスの子どもを皆の前で褒める。担任や顧問はうれしいものである

■英語力アップのために、NOVAの個人レッスンに通った■教育研究会で県下の先生方と指導案検討を重ねた■公開研究会に自主的に参加したりスポーツ選手とチームを育てるコーチング理論を学ぶ

■年に3~4回 ■職位によって、やりがい感はそれぞれ違う。しかし、共通して言えることは、人を伸ばすときで、しかもそれが自分がかかわっていること■役に立った感が感じられた時である

2男

■指導課長だった小池先生の授業を何度も見せてもらった■それを真似た■実習生のようにノートをとった■ぼうっと見ていると気づかないことを丹念に追う授業だった■小池さんが授業の理想形だった

■指導案を持ち寄って月1回の勉強会である万葉会■大学の先生をスーパーバイザーにしている

■校内研30回はやった■関東・全国規模の公開授業9回■とにかく手をあげて退路を断つ■やらざるを得ない状況に自分を追い込む■教育実習生がほぼ一年中いる。実習生だって批判する。教師より遠慮がない。だから実習生からもすごいなあという感想を漏らせたい思い一心で1年中手を抜かなかった

3女

■近くにはなかなか理想とする先生はいない■関東近県でスーパーな先生の授業をよく見に行った■できる限りいろいろな授業を見て、いい部分を吸収する

■月一回、大学の先生を座長に勉強会を開いている■県内の力のある人とワーキンググループを作っての研究会はすごくためになる

■すごくたくさんやった■附属中では他教科からもバンバン意見を出された■英語がわかる人ではないだけに、質問が鋭く、説明に力を注ぐとともに逆に独りよがりから脱せた

■授業で子どもが食いついてきたときや子どもの生き方にかかわれた時■今は、夜間講座が楽しい■現在、指導主事という立場なので、若い先生に講座を開いて、感謝されるとうれしい■講座も授業と同じで、具体的に使えるものを提供すると共感されてリピーターとなる

4男

■授業で使うオープニングとエンディングの2曲は自分の大学の恩師の作で師匠である■狭心症ながら熱く踊りながら指揮する■ハラハラして「先生、お願いだからもっと体を労って授業してください」と言ったら「何言っているのですか。私は授業中に死んだら本望です」と言われた■このエピソード以来、授業は 前列に座るようになった■子どもに良くこの話をする■この歌には恩師の人間像がついている■俺もこの先生のようになりたいという話もする■恩師は帰宅途中「今日も生きられた」と思うそうだ。■恩師の生き方を見て、自分の授業に手を抜いては

■「夢と虹」■小中の音楽好きの先生方が月に2回、夕方に集まって音楽を楽しむ■ミュージカルなどもやる■自分のライフワークで、もう16,7年やっている

■県の研究会も関東大会も、もう数え切れないくらいやっている■附属中では初めて赴任してきた教師の授業を全員で参加する「おめみえ研」というのがある■絶対授業には自信があったが、ここで冷や水を浴びた■丸裸にされ自分はまだまだ未熟だと思った

■教科が大好きで、この教科を子どもに伝えたいという熱いエネルギーがやりがい感につながる

5男

■留学中に素晴らしい人に出会えた■英語が素晴らしく、それにもまして教養がある■クラシックも草花もよく知っていて、話題につきない■教養がないと英語は(道具なので)光らない

■フルブライト6か月■バーミングガムで1年の研修が自分を育てた■その他も積極的に研修会に出ていく

■アポイントなしでも常に人が授業を見に来る。年に20回ほど。見られるからには、授業をキチンとイメージして必要教材を準備する(⑤に続く)(斉)

■各会議でも、各研究会でも、外に行くと刺激があり、ああ、また頑張ろうという気になる

6男

■附属の中で追い越したいと思う先輩が数人いた ■月1回同期の仲間と勉強会をやっていた■筑波の研究公開に何度も見に行った

■数え切れないほどやった ■附属に行って、挑戦するぞという気になった■社会的価値判断を極め、学習指導要領に反映させたい

7男

■多田孝志である■いくつになっても絶えず新しいものを追求するチャレンジ精神に敬服する

■月1回の学習スキル研■昔もずいぶんいろいろな研究サークルに入っていた

■数数え切れない■今は若手教師を相手に、模範授業をまずやって見せている「授業向上アドバイザー」という仕事をやっている■ワンランク上の授業を目指して若手指導を行っている

■若手教師育成に今燃えている

番号 理想の教師像 独自の研究会 授業研究 やりがい感

8男

大村はまは子どもを手のひらの上に乗せる例えをいった■子どもたちは手のひらに乗っていることはしらなくてよいといった■演出力によって子どもの意欲は高まる

■数多くの研究サークルに入っていた■大村はまを師匠とした

■100回以上やった ■教科書を超えたような単元を作り、やり終えたとき、子どもにこんな力をもたせられた、とやりがい感を感じる

9男

■松尾忠正先生■理論も実践もとてもかなわない ■海外の理科教育プロジェクトの実践研究会

■8~9回ぐらい

10男

■自分の小学校時代の担任が理想である■その先生に憧れて先生を目指した■異動の度にすばらしい人に出会う■年を取るたびに理想像が変わってきた■職位によって目的が変わると思う

■月に1回、先輩方と勉強会を行った■公開研究授業はよく見に行った

■40回以上 ■教師という職業は同じ毎日がない■毎日が大きく違う。教師冥利だと思う

11女

■元同僚で校内研修のオピニオンリーダー ■市教研の後、勉強会を行っている ■毎年公開研究ををしている■実習生がほぼ一年いるので、毎日見られている

■手応えの会った授業が出来たときである

12男

■中学時代の担任で、自分のイメージはいつもその先生である■その先生の授業が自分のベースである■とにかくスタイル、間、話し方などまねした■山田清照先生という

■優れた授業を観にいく■刺激になるし、勉強になる■東京なんかどんどん行く

■数えきれないほど多くやった ■子どもの反応がいい授業が出来たときがうれしい■わかった感というのは生徒の表情に出てくる■その表情がたまらなく好きである■いい発表をしてくれたとき、よく子どもが頑張ったときである

13男

■昔はオーソリティがたくさんいて、理想の達人がその技を伝授した■葛城中なんかすごい人がこぞっていて自分を支援してくれた■今、その伝授が断裂しているのではないか。しかし誰でも伝授するわけではない。こいつは、というものだけに伝授する

■若い頃はそれどころではない■部活と校内の研究に追われた■研究会は科学論文と違って参考にならない

数えたことがありません。でも、研究授業は好きでしたし、それによって自分の力も上がったと思っています。小さい頃から人前で歌ったり踊ったりが好きでしたから、基本的に抵抗感がなかったのだと思います。それと、現地・現物主義者の特徴で、「行ってみて何も見つけられなくても、それが成果」と思っていましたから。基本的にアホなんだろうと思います。

14男

■小学校の担任の先生に憧れた■悪いことは悪い。絶対ひいきしていない■大人として素敵だと思った■色々な先輩がいていろいろないい部分を真似した■先輩だけじゃなく後輩のいい部分も真似している

■今まで月1回の総合的な学習の時間の研究会をやっていた。今は開店休業中

■どんどんやってみせている■たくさん見てもらって色々な意見をもらいたい■総合的な学習の時間の授業を観て若い人たちは勉強してほしい

■子どもが好きで、人との関わりが趣味である■教え方が上手いと言われるとひどく嬉しい

番号 理想の教師像 独自の研究会 授業研究 やりがい感

15女

■中学校の担任のおかげで教師を目指した■授業は大学教授の理論と指導法がベースになっている■その先生が作られた教材を真似て授業している

■筑波で3週間文科省の研修で鍛えられた■関東ブロックや県教研役員

■15回ぐらい ■自分が仕掛けたことが、子どもにはまり、子どもが生き生き活動して、自分の願いがばっちりいったときである

16女

■岡本先生、本町にいたころ、教生として出会った■「国語の勉強ってこうなるんだ」、と教わった。神みたいな存在だった■指導案はほめられたことがなく、ゴミ箱にポイっと捨てられた■実際に自分が授業をやってみせる校長であった

■月1回、ふれあいの会という国語の有志で作った研究会に参加していた

■数えきれないぐらいやった ■毎年同じことの繰り返しになるけど、子どもが違うから反応も違い面白く飽きない

17女

■自分が受けてきた授業の空気感を再現している■自分はそういうもやもや感がある授業を受けてきた■関先生、原田先生、深見先生。女性教師でも手本になる人がいっぱいいた

■多くの公開授業を見た。日本国語教育学会■附属ではいろいろな研究会に顔を出した■仕事の後、自分で努力して学んだ

■60回以上 ■自分の考えたことが実現できる■授業づくりそのものがやりがい感なのだ

18女

■多田先生、森先生、錦織先生■企画力があって衰えぬ情熱があってすごいパワーの持ち主である■自分を使ってくれ、場の提供をしてくれた

■県の国際理解教育研究会でスキルアップを図った■講師なので、うまい授業をやることが義務だった■したがって、どんどん変わる学校が独自の研究会のようなもの

■20年以上この仕事をして毎年公開授業をしているから30回ぐたい■ギャラリーが多いほど燃える

■教えた子どもたちが先生になったと聞くのが一番嬉しい■先生のイメージが悪いと先生になりたいと思わないから

19男

■1校目に知り合った4つ上の先輩である■学級通信、掲示物などこだわり、子どもの記録を取っていた■「こんなに子どもをみるんだ」と驚いた■10歳上の先輩も授業にすごい準備をしていた■ねらいが1こあれば手だてはいろいろあってよい

■万葉会で、月一回社会科の研究会を行っている

■附属中で実習生がほぼ毎日参観している

■子どものわかった感とありがとうございましたという感謝の気持ちが表れたときである

20男

■錦織さん、元校長、チャンスを与えてくれその気にさせてくれる■帰国後15年目森校長との出会いが、ターニングポイントだった■彼は人を上手にだます■人を動かす言葉の力がある■サポート役に徹している■信念は子どもの力が伸びればいい。そのためなら自分は先生方を支えに徹する■自分は森さんに思いっきり鍛えられた

■全海研や多田孝志先生の学習スキル研究会

数えきれない ■若い教員が育つことが何よりの生き甲斐である■授業力を伸ばしてほしい。いい授業ができることを願う。そのためには全身全霊を注ぐ

21男

■新採用の時の校長で愛を持っている人間的に素晴らしい人

■自分が中心となって勉強会サークルを作り、若者を鍛えている

■70回はやっている ■育てた子どもの伸びや成長である

22男

■大柳、笈川、尾上、秋葉,高橋邦伯■エネルギッシュで創造力がありポリシーを持っている■チャンスを与えてくれた

■国語学会、古典同好会 ■数えきれない■いわれたら積極的にやるようにしている■先輩のことは断っちゃいけない

■人が喜ぶことが喜びになってきた

番号 理想の教師像 独自の研究会 授業研究 やりがい感

23男

■ 近は年に2回から多い時で5回くらいだから通算60回はやっている

■信念はよりよい授業の追究と向上心である■子供の多様性が楽しい■授業のライブ感というか同じ内容でも子供の実態によって変わるところが面白い

24男

■手本としている教師はそれぞれの教科にいる。国語・算数・社会・理科・体育。

■一時期サークルの会員となって定例会などには参加した経験がある■30代は全国の研究会など私のモデルとなる達人を探して何回も参加

■定義によって回数が違う。指導案無しを含めれば100は超えるが、指導有りだと40回程度

■こどもの成長である■二度と同じ場面はないおもしろさである

25女

■お手本はたくさんいる ■月一回学習会、五十嵐先生の研究会 ■数えきれない ■子どもの変容がみられることである

26男

■新卒の時に、「教師道」を一からたたき込んでくれた先輩で、この教師を超えることが、私が今も持ち続ける目標である■人間力・教師力、いずれもようやく彼の背中が見えてきたと感じられる程度で、まだまだ遠い存在である■彼は、金丸浩一という現在、北海道立旭川美術館の館長で、前北海道教育委員会教育局長

■教育相談(カウンセリング)に関心を持ち、平成2年度から「上川学校教育相談研究会」に所属した■平成17年には、学校教育相談全国研究大会で研究発表の統括チーフの役割を担った■私が勤務した愛宕東小学校・日章小学校では、私が主催する「学級経営研究会」に、経験の浅い先生方が集い、学級経営の悩みや解決策を時間を惜しんで話し合っている■北海道教育委員会から短期派遣でアルバータ州立大学で学び機会を得た■帰国後、平成15年AEENを設立し、代表に就任した■これまでに研修講座や講演等の講師や授業研究会の助言者、デモンストレ

■公式なものだけでも40~50回■ここ数年は、全国研究大会での研究発表は、これまでに4回、北海道規模の研究大会での研究発表は、11回を数える■突発的な来客や外国語活動を参観するための学校訪問、さらにマスメディアの取材等に対応する授業など非公式なものを加えると100回は楽に超える■私のピークの平成15~20年は、毎年6、7本ずつ公開する機会があった

■自分の実践により、自分が関わる全ての子どもがよい方向・望ましい方向に変わっていくことを見る喜び■自分と関わる全ての教師が力量を付けていくことを目にすることの喜び■実践を振り返った時の「達成感」や「充実感」■いい実践をした後は、自分でも「やったあ~」と満足でき、次へのエネルギーになる■自分の実践や私自身に対する外部からの評価である■自分が全力投球したしたことが新聞等で取り上げられたり、論文等が書籍や情報誌に掲載されたりすると嬉しい■北海道教育実践表彰を頂戴したときに、多くの方々がお祝いの会を開いていただき

27男

■理想とする英語教師像は「生徒のために、常に勉強しながら、自分のできる範囲で、手を抜かずに、努力を惜しまない教師」である

■他の先生方と定期的に話ができる研究会に入ることで、いろいろなことを得ることができた■30歳のときより、英語の学会に入り、毎月の研究会で勉強してきた■現在も自分が研究部長となり研究を続けている■いろいろなアイディアが生まれるもととなっている

■ライブの研究授業は30回以上、ビデオによる研究授業では20回以上は行っている■授業参観希望があれば受け入れているので、人に見ていただいた授業は200回を超えている

■他の先生方とのつながりや家族の協力■教えること自体が好きなので、授業をすることにやりがい感を持っている■自分の考えたことを書籍や研修会で他の先生に紹介することにもやりがいを感じている■「先生の方法を取り入れてみた」「指導がうまくいった」などと言われるとうれしい

28男

■授業における理想の先生は、そう身近にはいない■本をよく読んで師匠とする■自分は無着成恭と鈴木正規の本が師匠となった

■附属中自体が研究会そのものである■特に実習生の存在があげられる■実習生はだんだん自分に口調も仕草も似てくる。鏡を見ているようだ■だからこそ、手が抜けない■いつも自分を見ているようで恥ずかしいことはできない

相当やっている

29男

■宮沢賢治■コルチャック先生 ■いくつかの研究グループに所属した■現在も東京の研究会に参加している

■ほぼ毎年、計30回くらいやったと思う。(教科以外も含む)

■子どもの姿、笑顔、変容

番号 ストレス回避 一瞬の対応 その他の要素

1女

■プラス思考である■育休のときは取り残され感がありストレスを感じた

■失敗は成功の母■実践をすべてプラスにする

2男

■授業がうまくいかなかったときはストレスがたまるというか、消化不良を起こす■授業はそもそも自分が楽しいし自分で楽しむ■自分で作るから面白い

■授業でも話をするときでも、リスナー(子どもたち)をよく見る。これが大事である■反応を確かめないで、黙々と授業を進めている人がいる。これはダメである■全体の空気、その瞬間を的確にとらえて話をしようと心がけている

■とにかく話術が大事である■間、などノンバーバルコミュニケーションがとても大事である■私は落語でこれらを研究した■授業でも話をするときでも、リスナー(子どもたち)をよく見る■これがとても大事である■反応を確かめないで、黙々と授業を進めている人がいる■これはダメである■全体の空気、その瞬間を的確にとらえて話をしようと心がけている

3女

■授業が楽しいからストレスはない■自分でつくった授業が子どもたちにどのように反応するかが楽しみである

■教材研究をして十分に子どもの質問を予想しておく■指導計画(指導案)を若いころはノートに書き、腹案まで用意していた■子どもの反応に合わせて活動形態を臨機応変にかえられるようにポケットをたくさん持つようにしていた■そのためにいい授業をたくさん見てまずは真似から入って自分のものにした■ワークシートは失敗部分をすぐ修正し保存するようにしている

4男

■ストレスを感じない ■常にアンテナを高くしておき、生徒を前にしたとき使えそうなネタを多くの引き出しに持っておく■生徒の表情や態度等を敏感につかみ、反応や発言を予測しておく

5男

■100%を目指さない。どこかに

ヌキを作る■自分にできないことは、自分の能力ではできないとはっきり言う

■授業の中で、変化球が来ることが多い。変化球に対応できるには2段階上の力を持っている必要がある

■とにかく自分の教科の勉強をすることである■教え方ではなく、教科の内容の勉強をする■生徒より2段階上の力をつける■例えば英語で言

うと、中学生は英検準2級は取る。だから教師は

準1級以上取れなければならない

6男

■山登りである ■子どもは予想されない動きを取る■その瞬時の判断が大事である■こういう場面をたくさんみてもらう。人にみられると考える。その繰り返しでセンスは磨かれると思う■恥ずかしがらずにやることが大事である■小学校教師は、子どもからどう学ぶかという点が も大事である■教師がのびるためには子どもは 高の鏡である。ろくでもない発問や指示では子どもまったく動かない。遊んでしまう■なんで動かないのか。なんで指示通り活動しないのか、子どもから学べる

■歌を歌わせたら、絵を描かせたら、などものすごいキラリと光る技をもっていることである■右に出るものはいない得意技というようなものだ大事である■人と違うことをやりたいオリジナルな授業をと思う反面、子どもをよくしたいという思いは、教師はみな同じと思う。名人の授業を見て、授業記録を取って、何が違うか、自分と比べてみて、気づくことが多い

7男

■ストレスはあまりたまらない■新しいものにチャレンジしているときは、夢中になっているのでストレスにならない■好きなことをやっているときは疲れない■自分は結構適当である

■ライブ感というか、一瞬の動きである■観客(子ども)の反応によって持ち玉を替える■反応次第で話をわざと脱線させる■お客様合っての授業であり、サービス業なのである■とにかく大事なのは一瞬のセンスだと思う■口先商売であり、子どもに向けるコメントが重要■褒める言葉をどれだけ持っているか■音読カードに一筆書くときも、あらゆる褒め言葉を駆使する■そのために褒め言葉集を作成している

番号 ストレス回避 一瞬の対応 その他の要素

8男

■指導案を練ったり、授業構成を考えたり、遅くまでやることが嫌ではない■ワクワクしてストレスではなく、。やりがい感があった■授業で遊んでいる感覚があった■国語の場合は教師が言葉を楽しむものである■こういう世界にいることを楽しみ、子どもに伝授するのである

■国語の授業「日本人と文字」の授業では、4クラス中3クラスは同じ展開となったが、B組は全く違う展開となった■日本に対するさまざまな呼称と表記がなぜあるのかという発問に対する予測した答えは「日本にはさまざまな文字があるから」であった■しかし、発問に回答したO男は、歴史、文化的な説明を長々と行った。しかも子どもたちがよく聞き取れず、教師はO男に3回にわたって発表させた■表記の多様性とはあまりにも異質なO男の発表を3回も繰り返させたのには理由があった■その背景には、O男が起こしたトラブルで学級内の人間関係にネガ

■教えなくちゃということにとらわれていたときがあった■子どもの活動が学習の中心と思うようになってから、自分を払拭できた■授業記録を良く作った■そうすると、色々な要素がわかってくる■子どもの様子から、もっといい方法があったのではないか、そのように振り返ると授業の構成は変わっていく■授業記録をつぶさに取って、振り返りを何本かやると、みにつく■教師の対応について、いい対応であることかどうかわかる■教師は予測以外の瞬間の対応が重要である。大きく構えていないと対応できない■これは学級経営や生徒指導に深くつながる

9男

■自分の好きなことをやったり、非日常的なことをすることである

■恐らく無意識のうちにやっている■メタ認知的にとらえてみるとすれば、ある授業を構想設計したとき、考えられ得る生徒の反応をなるべく多く抽出し、それに対する対応をイメージしておくということを繰り返しているのではないかと思う■この繰り返しにより、長期記憶の中にそれらが蓄えられとっさのときに無意識に対応しているのではないか■自転車に乗ることを覚えるときと同じように、 初は倒れずに乗るためにはどうするかを常に考えながらハンドルを切ったりしながらヨタヨタ乗りが、体にそのことが染みついてくる(慣れてくる)といちいちハン

■自分オリジナルな学習教材を完成に近づけること■でもなかなか完璧にはならない

10男

■家族と一緒にいること

11女

■どんなに大変でもやりがい感があればストレスは感じない

■授業の背景がわかっていないと、一瞬の子どもに対応する動きができない■勉強していないと機敏さが出ない■授業のキーワードに気づくなんて20年前じゃとてもできなかった■授業1つ作るのに専門的な勉強をしないと、深い授業はできないことに気づいた

12男

■卓球である ■子どもの予測が大きく外れ、予想外の反応が来た場合が勝負である■「ああ、こうつまずいてきたか」、チェックを入れ、素早く発問を切り替えたり、簡単単純なことに変更する■こういう場面は、授業をやって一番楽しいとことでもある■「こういう考えもあったのか」と子どもの意外な反応が嬉しい■予想以外の反応は出来る限り生かしたい■思わぬ反応が来たとき、必ずメモる。「こうわかると思ったのに、こんなふうに出来なかった。しかも何人もいた」、という風に■これを何十年も続けるとだいたい予想の範囲に収まる■このメモが次の数年後の同じ授

13男

■ストレスが好きなタイプ■何かきついことがあると「神の試練だ」と思って立ち向かっていく■ストレスに立ち向かっていくのが、私にとってのストレス回避法

■当時目指したのはドラえもん■子どものどんな求めにも即座に 適な道筋を用意できるイメージ■「即座に」はとてもできないので、その代わりできるだけ「 適な」情報が提供できる努力をした■役だったのは囲碁■『次の一手』とか『詰め碁』とかを考えるのが好きだった■いつも“仮想事態”を頭の中に描き、“次の一手”を考えていた■「次の一手」は、たくさんのソースから選択するわけだから、それを可能にするために、科学雑誌をたくさん読んだり、現地に出かけた■教育学の研究書もよく読んだ■今でもインターネットを介して教育関連情報は努め

14男

■親と話をするのが大好きで、子どもがちょっといつもと違うときはすぐ電話をし、長々話す■親と十分話をしていると、子どもは平常にもどって来ると確信している■親から先生と話をしていると、カウンセリング受けているみたいといわれた。対話を通して、多分親と子の対応が変わっていくのだろうと思う■話をしているとストレスがなくなる。

■授業の達人は子どもとの関係づくりがうまい■飛び込み授業でも子どもの心をすぐつかむ上手い人がいる■そのように心を瞬時でつかむことが大事である■一瞬の対応は褒め言葉を連発していうトレーニングで磨きをかける

番号 ストレス回避 一瞬の対応 その他の要素

15女

■すぐ忘れる■ストレスが長引かない■すぐ表現する。だけど根に持たない

■1つのワークシートを使うにしても、こうしたほうが面白いと一瞬浮かんだ時はそっちのほうがうまくいく■楽しくないと子どもは食いつかない

■教師は演出家であり役者でもある■プラスの部分で子どもと一緒にすごく喜んだり、褒めたり、間違いに対してそれがありがたいと意識して思っている■英語は劇みたいなことやることが多いけど、恥ずかしがらせないために、大げさにやって自分も楽しむ■若い人には発想力・柔軟性を磨いてほしい

16女

■あまりない■やっていることは大変だけど、くたびれる原因はストレスじゃない■温泉が大好きである

■自分が予想したこと以外のことを思いがけないことを子どもが言うとき、ゆとりを持って対応する■これがいかに授業をうまく持っていけるかの大事な点で、すぐ否定しまわず、子どもの発想って面白い奇想天外だなと思う余裕をつくる■この授業と決めたら、5冊以上の本を読んで、教材研究する。新しい考えや自分なりの見方ができているか。そこがあやふやだと子どもの突飛押しもない発言にうろたえる

17女

■勉強するにはある程度ストレスがあったほうがいい■ストレスはないことはないが、好奇心が強いとある程度すっ飛ぶ■勉強すると自分が向上してくるようでストレスがなくなる

■いい授業をやらないと、一瞬の対応が必要な空気感も出ない■一瞬の対応力を磨くには、一瞬の対応をしている授業を何度も何度もよく見ること■子どもが本を読むという行為は「頭の中がテレビみたいになる」という子どもの言葉が出た。それが出発点である。読むって何だろうといつも思うようになった

18女

■仕事が楽しいときは,どんなに忙しくてもストレスは感じない■よい授業を追求しない集(職場)に出会ったときは、話が通じないので、少しずつわかってもらうように働きかけ、じりじりと変えていくのに時間がかかり、ストレスを感じる■話が通じる人と飲みながら話す。

■いつもいつも学級崩壊した後のクラスを持つ■初めてあった子どもたちにまずは怒らない。さんざん怒られてきたからである■教室を綺麗にする。自分が綺麗にして花を飾る。いつか先生が飾っていることに気付く■荒れている子どもたちは授業が楽しくないと授業をそっぽをむく■算数はすぐにスタートラインにたてないけど、総合的な学習の時間ならすーっとは入れる■赤米を使った総合で、子どもの居場所を作ってあげた■楽しい感がでてくる。そうなったら少しずつ教科に戻る■その核になる子はいつもイライラしていた。そしてみんなをイライラ感に巻き

19男

■猛烈によく旅に出る。昔、添乗員のバイトをやっていて、これが生きている■スーパーマーケットなどにいくのも大好きで、世相がみえる

■「逆は大丈夫か」と思う■やったらやらない■鳥取県の授業でもそうだった。身近じゃないところだから、どのようにつながるのだろうという発想がある■一瞬の対応に対するトレーニングは、常に逆を考える、である

■全体を見る力、俯瞰する力、個を見る力、授業だけでなく、学校全体で動く時の力がいる■先を創造する力、実習生には教えていたが、同僚にはおこがましいと思っていた■若い人が多くなって教えなくちゃという気が出てきた■隣の先生に、こうしたらこうなるよねと伝えるようになってきた

20男

■旅が好きだ。どこにでも行く■多くの人としゃべる

■子どもを見るに尽きる■子どもはたくさんの物差しを持っている■1つの教材にも多様な価値観がある■子どもの価値観を考えるとき、教材を深め多様な考え方見方を予測する■その子なりの思いを組み込んでやる

■職員とのコミュニケーションや情報収集力を磨くことである■自分は教頭になって、職員室を歩き回り雑談に力を注いだ■たわいのないことでも、本の話題でも話しかけ、相手に合わせた■コミュニケーションを続けることで、先生方の言葉にならないメッセージをさりげなく受け、さりげなく伝える■授業に関する情報提供もした。自分の技を伝授する

21男

■寝る・語る・ゆっくり読書する ■しっかりと子どもの考えを聞く■発表した子どもの考えの善し悪し等を先取りをして評価しない。子どもたちに考えさせるため■間違いやユニークな考えを大事にする■笑わせる話し方、切り返し方等の努力■理由、解き方、ズレなどを大切に検討■授業が固まった状態の時、打開する教育技術を身に付ける■一瞬の対応は「教育技術の確実な積み上げ」のあとにできるものではないかと考える■基礎技術のないなかで咄嗟の対応はできない■子どもとのやりとりの中で意識して授業を参観し自分の実践でも活用する

■授業がうまくなりたいという向上心と明るくて、性格がよくて、リーダーとしての資質があるような人間的な魅力を持つことである

22男

■旅行などで、非日常で、人間関係を深める

■うまくいかなかったとき、「目の前の子どもの実態はこうであるからこうした方がいいぞ」、ということを持っていれば大丈夫である■机間巡視の中で、子どものつぶやきをふっとメモって取り上げる訓練を授業中に何度も行う■生活ノートに書いてあった状況を頭に入れておき、個に返すか全員で検討するか判断に迫る状況を自分自身で作る

■いい先生に当たったこともあるけど、「こんな先生、絶対いやだ」、という経験が左右して、今も子ども目線で自分を振り返る■新しい授業をやるときはメタ認知で考える

番号 ストレス回避 一瞬の対応 その他の要素

23男

■音楽室でピアノを弾く■冷たいシャワーや熱いシャワーを交互に浴びる■親しい仲間を酒を飲む■何も考えずボーっとする■くよくよしない

■教材研究が基本である■あらゆる場合のシミュレーションを行い場数を踏む

■よりよい授業を追究してやまない気持ちと失敗を糧にする姿勢である

24男

■自分から突然のことに出会うよう心がけて、休み時間もじっとしないで子どもの動きそうなところに行き、声をかけることで経験を積む■授業では、予想不可能な発言を歓迎する■価値付けしてあげられるとよい

■これからの教師がのびるため必要なのは、自分の「生の手本」をもつ■まねをして、修正する」■「得意教科を複数」にする

25女

■子どものラグビーの追いかけである■教師とは全く別の世界を持っている■家に教師を持っていかない■はっきりした棲み分けをしている■出産や育児を大事にした■子育てが終わったら恩返しを行う■10年経つまで我慢しろと

言われた。一人前になるからである

■子どもの考えを否定しない■授業での発言は間違えていい■それをバカにしたりからかう子どもがいたら絶対許さない■それを4月の 初に言う■間違った考えでも、今回はちょっと視点が違うといって、真っ向否定しない■一瞬の対応を鍛えるために、先輩が同じような場面で、どう対応するか、ベテラン先生から盗むとよい■数を踏んで、自分のノウハウを作るしかない

■この人にはかなわないというものを、子どもにそう思わせるものをつくれ■スペシャリストとしての力を持っていることが大事■この人なら任せて大丈夫という信頼感を得ること

26男

■学校現場にストレスは、至る所にある■ もストレスを感じたことは、管理職への道を進められた時期である■おやじライブで月に一度ペースでそこに集う様々な人たちと交流すること■アウトドアで、キャンプ・登山・沢登り・燻製づくりなど北海道の自然を満喫することで疲れもストレスも忘れる■メール&チャットで、ホームステイボランティアを引き受けたアメリカ・ヨーロッパ、アフリカやアジアなどの方々と現在も交流を続けている

■キャリア…そのような場面にどれだけ出くわしたか■その時の対応をどれだけ生かそうとしてきたか■対応力を支える教材研究や児童理解の深さ…授業場面や生活場面で一瞬の対応力を求められたときに生きる■授業中は深い教材解釈や教材研究により、即座に対応できる場合がある■児童理解も指導場面で生かすことができる■対人対応能力…個々が持つ能力で、若い先生でもここが磨かれていると感じられる先生はいる■年齢やキャリアではなく、その人間個々が持つ「才能」■一瞬の対応力を育むために、カウンセリングの様々な手法は、子どもたちと関わる

■子どもが好きか?本当に好きならば「子どもの目線」で、授業を見つめること。それが良い授業に繋がる■授業をすることが好きか?日々授業をこなすのではなく、子どもと共に授業をつくることである。それを楽しいと感じられるならば、授業づくりの際の労を厭わなくなる■「質」にこだわれるか?自分自身の実践の「質」を問うことのできる目を持つことである。「達人」とは、質の高い実践(授業)を積み上げることのできる方々である■日常を大切にしているか?教師も子どもも「自然体」の授業で日常の営みが授業に見え隠れするところや日常、教師と

27男

■早く寝るようにしている■失敗したことはいつまでもくよくよ考えないことにしている■他の先生方と話したり、飲んだりすることで、ストレスはかなりなくなる

■予想可能な言動についてはいつもシミュレーションをしている■「生徒がこう言ったらこう言おう」とか「こういう態度を示したらこう指導しよう」など、普段から準備をしている■こうした準備をすることで、予想を超える言動があってもある程度対処できるようになる■予想を超える言動についてはすぐに行動を起こすのではなく、一瞬冷静になってから(平静を保ってから)アクションを起こすようにしている

■達人の一番の条件は、基本がしっかりしていること

28男

■山登り ■一瞬の対応は、授業構成のとき、教師と子どもの動きをきちんと書く■教師の発問を書き、子どもの動きと反応を指導案に予測する■授業というのは対話で作られる。対話は一方的ではない。相互のコミュニケーションで成立する■対話のトレーニングが一瞬の対応に役立つ■シミュレーションを行う。短い言葉、メールなどで、対話の仕方ができていない■今の若い世代の教師もこういう傾向があるのかもしれない

■子どもと教師にずれがある場合は、根本的に授業の構成にズレがあると思わなければならない■それは認識上のズレである■もっと深く教材研究する必要がある

29男

■旅にでる■同志との語らい ■日頃から生徒理解に努め、生徒個々の興味関心・夢・希望・友人関係・悩み・家庭などを把握し、どの生徒にあてると次の発言につながるかや、話し合うときの核に誰を用いるかなどを判断する■教えることの数十倍の教材解釈と教材研究に努める■ねらいに沿った授業シュミレーションをする■使わないかもしれない教材・教具も用意する■子どもの発言を聞き逃さない■発言のキーワード化を図る。

■教師の感性や人間性を磨く