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伊豆東岸定置網におけるさば類の漁獲動向 誌名 誌名 黒潮の資源海洋研究 = Fisheries biology and oceanography in the Kuroshio ISSN ISSN 13455389 巻/号 巻/号 18 掲載ページ 掲載ページ p. 71-76 発行年月 発行年月 2017年3月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

伊豆東岸定置網におけるさば類の漁獲動向2015年)の平均漁獲量と変動係数を算出した。また,伊東魚市場(静岡県伊東市)に水揚げされたマサパお

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伊豆東岸定置網におけるさば類の漁獲動向

誌名誌名黒潮の資源海洋研究 = Fisheries biology and oceanography in theKuroshio

ISSNISSN 13455389

巻/号巻/号 18

掲載ページ掲載ページ p. 71-76

発行年月発行年月 2017年3月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

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黒潮の資源海洋研究第 18号, 71-76 (2017)

伊豆東岸定置網におけるさば類の漁獲動向*l

鈴木勇己* 2

Fishing trend of mackerels on Set Net fishery in the East Coast of Izu Peninsula* 1

Yuki SUZUKI* 2

現在,伊豆半島東海岸(以下,伊豆東岸)では熱海

市から河津町にかけて 9ヶ統の大型定置網が稼動して

おり ,地域産業を支える重要な基幹漁業のーっとなっ

ている。伊豆東岸定置網において,さば類(マサパ

Scomber J,ゆonicus,ゴマサパScomberaustralasicus)

は漁獲量の上位を占める重要な漁獲対象種であるた

め,漁獲量や漁獲サイズ,マサパとゴマサパの漁獲比

率の変化は,定置漁業経営に大きく影響を及ぼす。平

成28年度資源評価では,マサパの資源量が増加傾向

にあり, 一方で、コゃマサパの資源量は減少傾向にあると

していることから,今後,さば類の漁獲動向が大きく

変化する可能性は高いといえる。

相模湾において,定置網により漁獲されるさば類の

漁獲量や種組成の変動,漁獲サイズ等については,過

去に曾・平野(1978)や長谷川(2001)が報告してい

る。ここでは,伊豆東岸大型定置網におけるさば類の

近年の漁獲動向を明らかにすると共に,過去に報告さ

れた結果との相違点について検討を行った。

資料および方法

伊豆東岸で稼動する大型定置網7ヶ統(伊豆山,古

網, 川奈,富戸,赤沢,北川, 谷津)(図 1)のさば

類の年別漁獲量と,マサパおよびゴマサパの月別漁獲

量を,静岡県定置漁業協会が作成した水揚日報から

集計した。年別漁獲量については,曾 ・平野の調査

期間(1970~ 1977年)のうち 1974~ 1977年(1970

~1973年のデータが入手不可のため),長谷川の調査

期間(1982~2000年),本研究の調査期間(2001~

川奈

一戸富

沢赤

M高

ォ見津谷

図1 伊豆半島東岸における大型定置網の位置.

2015年)の平均漁獲量と変動係数を算出した。また,

伊東魚市場(静岡県伊東市)に水揚げされたマサパお

よびゴマサパの尾叉長を測定し,体長組成を求めた。

以上のデータから, 1974年~ 2016年 11月における

さば類の年別漁獲量の推移,近年(2001~2015)の

マサパとゴマサパの漁獲比率,近年および2016年の

マサパおよびゴマサパの漁獲盛期,漁獲サイズ,体長

モードの推移について検討した。また,これらの検討

項目について,曾・平野(1978)および長谷川(2001)

の報告結果との比較を行った。

牢 1 平成 28年度中央ブロック資源海洋調査研究会(平成 28年 10月:高知市)にて口頭発表した。

本 2 静岡県水産技術研究所伊豆分場 〒 4150012静岡県下田市白浜251-1 e-mail: yuki2_suzuki@pref油 1zuoka.lg.jp

Shizuoka Prefectural research institute of fishery Izu Branch, 251-1 Shirahama, Shimoda-shi, Shizuoka 415-0012, Japan

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鈴木

果 た。

マサパ・ゴマサパ漁獲比率

2001~ 2015年に伊豆東岸大型定置網で漁獲された

さば類に占めるゴマサパの比率(図 3)は平均 94%と

高く ,ゴマサパ主体の漁獲で推移していた。 また, 月

別の漁獲比率(図 4)は,マサパは3~ 6月に 10~

20%を占めたが,それ以外は数%と低かった。 一方,

ゴマサパは,マサパの比率が高かった 3~6月を除い

て90%以上と高い比率を占めていた。

マサパの漁獲動向

まで,

72

近年(2001~ 2015年)のマサパの月別漁獲量の平

均(図 5)から,漁獲盛期は 4~ 6月であった。一方,

2016年(図6)の漁獲盛期は,近年よりも 2ヶ月早

く,2~4月であった。

2500

自1500

犠媛 1000

0 "'~、α3σ) Q._C、4σ3 電’F LO <O I""、 αコ σ> O 干・官、Jσ3 司'"'"'~、 α) 0>0 苧・ z、d"'司’FLOCO I"、。00>0宇-~、aσ宮司’F LOCO

『、∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞回申田町田町田由白血ggggggggggc;c;c;c;c;c;c;2ヨ三 e、」e、H、H、ac、H、•o、a e、ac、de、ac、•<、H、•o、a c、•<、4 ひ4

1974~ 2016年における大型定置網7ヶ統のさば類の年別漁獲量の推移(2016年は11月までの漁獲量)

2000

500

図2

30

25

さば、類漁獲量の推移

伊豆東岸大型定置網7ケ統におけるさば類の漁獲

量(図 2)は, 1974年から 2002年まで増減を繰り返

していたが, 2003年以降,増加傾向で推移しており,

2012年には2,000トンを上回った。2013年に 900ト

ンに急減したが,その後 2016年(11月時点)

1,000トン以上の漁獲量を維持している。

また,曾 ・平野(1978),長谷川 (2001),本研究

の各調査期間における平均漁獲量を比較すると,曾 -

平野の調査期聞が604トン(変動係数27%),長谷川

の調査期間が660トン(変動係数 82%)であったの

に対 し, 本研究の調査期間は 1,206トン(変動係数

45%)と,過去の調査期間の約 2倍の漁獲量であっ

・ゴマサパ聞マサパ100覧

80也

60覧~ 20

= 15 穂 10

40也

20肯

FON

FDN

FDN

NFDN

FFDN

DF口何

回DDN

∞8何年

九円。ON

由。凸何

回GDN

寸DDN

DDN

NOON

FGDN

°" 。月

2001~ 2015年における大型定置網7ヶ統のマサ

パ月別漁獲量の推移.

12 11 10

図52001~ 2015年における大型定置網7ヶ統のマサ

パ ・ゴマサパ年別漁獲比率.

図3

25

20

.::: 15 剛

警10

・マサパ・ゴマサパ100也

80首

60也

。月

2016年における大型定置網7ヶ統のマサパ月別漁

獲量の推移.

12 10 11 5 4

図6

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

月2001~ 2015年における大型定置網7ヶ統のマサ

パ・ゴマサパ月別漁獲比率.

40官

20覧

0也

図4

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伊豆東岸定置網におけるさば類の漁獲動向 73

近年の月別体長組成(図 7)におけるモードは, 1

~ 7月は概ね尾叉長 30cm以上に認められた。また,

8月に 20cmおよび26cmに認められたモードが, 12

月には前者は 2lcm,後者は 30cmに推移していた。

2016年(図 8)におけるモードは, 2~ 6月に尾叉長

30cm以上, 8~ 12月に 18~ 22cmおよび27~ 30cm

に認められ,近年とほぼ同様の体長組成であった。

ゴマサパの漁獲動向

近年(2001~ 2015年)のゴマサパの月別漁獲量の

平均(図 9)から,漁獲盛期は 5~ 8月および 11~

翌 1月であった。一方, 2016年(図 10)は, 4月と 9

month

L

q

d

a斗

rDPD守

InonuuAU41

1

1

12 10 20 30 40

尾叉長(cm)

図7 2001~ 2015年における大型定置網 7ヶ統のマサ

パの月別尾叉長組成(折れ線は月別組成率(0~

1)を示す).

mont

月に突出しで漁獲量が多く,近年の状況とは大きく異

なっていた。

近年のゴマサパの月別体長組成(図 11)をみる

と,いずれの月も尾叉長 30cm以上にモードが認めら

れ,特に l~ 2月および5~ 8月は 33cm以上, 3~

4月および 11~ 12月は 30~ 33cmにモードが認め

られた。また, 3月は 28cmにもモードが認められ,

9月に 30cm, 12月には 32cmにモードが推移してい

た。また, 4月は lOcmにもモードが認められ, 9月

に23cm, 10月に 26cm, 11・12月には 27cmにモー

ドが推移していた。 2016年(図 12)は, 1~ 8月に

尾叉長 30cm以上, 9~ 11月に 20~ 25cmおよび28

~ 30cmにモードが認められ,近年とほぼ同様の体長

組成であった。

考 察

マサパおよび、ゴマサパの漁獲動向について,曾・平

野(1978),長谷川(2001)および本研究を比較して

表 lに示した。

マサパの漁獲動向

漁獲盛期の 4~ 6月における体長組成は,概ね尾

叉長 30cm以上にモードがあること,マサパは尾叉

長 30cm以上で成熟し,産卵期は 2~ 6月と推定さ

180 -一一一一日160

140

? 120

蝋 100

鱒 80媛 60

40

20

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

図9 2001~ 2015年における大型定置網7ヶ統のゴマ

サパ月別漁獲量の推移.

300

250

?200

題150

媛 100

50

。10 20 30 40

尾叉長(cm) 月

図8 2016年における大型定置網7ヶ統のマサパの月別 図 10 2016年における大型定置網7ヶ統のゴマサパ月別

尾叉長組成(折れ線は月別組成率(O~ 1)を示す). 漁獲量の推移.

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図 11

month

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12 10 20 30 40

尾叉長(cm)

2001~ 2015年における大型定置網7ヶ統のゴマ

サパの月別尾叉長組成(折れ線は月別組成率(0

~ 1)を示す).

鈴木

図 12

J2I 20 10 30 40

尾叉長(cm)

2016年における大型定置網7ヶ統のゴマサパの月

別尾叉長組成(折れ線は月別組成率(0~ 1)を

示す).

表 1 伊豆東岸大型定置網における漁獲動向の各調査期間の比較.

マサバ

調査 漁獲盛期(月) 漁獲主群

期間 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 当歳魚未成魚 成魚

1970~1977 ... . 1982~2000 . . . 2001~2015 ... .

2016 ... . ゴ、マサバ

調査 漁獲盛期(月) 漁獲主群

期間 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 当歳魚未成魚 成魚

1970~1977 .. . 1982~2000 .. . . . 2001~2015 . .... .. .

2016 . . . ※1970~1977:曾・平野(1978)' 1982~2000:長谷川(2001)' 2001~2015および2016:本研究

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伊豆東岸定置網におけるさば類の漁獲動向 75

れていることから(千葉県水産総合研究センター他

2011),漁獲盛期は,産卵回遊中の成魚(2歳以上)

主体に漁獲されていると考えられた。また,漁獲盛期

以外の 1~3月および7月についても,漁獲盛期と同

様に尾叉長 30cm以上にモードがあることから,伊豆

東岸大型定置網には,産卵回遊中に相模湾に来遊した

成魚、が主として漁獲されていると考えられた。一方,

漁獲量の少ない 8月の体長組成をみると, 20cmおよ

び26cmにモードがあり,前者は当歳魚,後者は未成

魚、(1~2歳魚)と考えられた。当歳魚は 11月には

21cm,未成魚は 12月には 30cmに推移していること

から,少量ではあるが,相模湾に来遊した当歳魚およ

び未成魚は,相模湾内で摂餌回遊し,生育している可

能性が示唆された。 2016年の漁獲盛期は 2~4月と,

近年より数ヶ月早かったが,漁獲盛期の漁獲サイズ

(図 6)は近年と同様に, 30cm以上の成魚主体であっ

たことから,産卵回遊中のマサパが漁獲されたと考え

られた。

マサパの漁獲動向について,曾・平野(1978)は,

未成魚(尾叉長 30cm未満)が4~6月に越冬場であ

る伊豆諸島周辺海域から伊豆半島沿岸に沿って北上移

動し,相模湾に来遊するとしており,長谷川(2001)

は, 5~6月の漁獲盛期には小型のマサパが多く,成

魚、とみなされる大きさのマサパは 2~9月に漁獲さ

れるとしている。近年の漁獲盛期は 4~6月であり,

曾・平野(1978)および長谷川(2001)の報告とほぼ

同じであるが,漁獲サイズについては, l~7月は成

魚主体,それ以外の 8~ 12月は未成魚主体と,大き

く異なっていた。すなわち, 1970年代は北上回遊中

の未成魚が相模湾に来遊していたが, 1980年代以降,

北上回遊中の未成魚、に加え,産卵回避する成魚、も混じ

るようになり,近年では産卵回遊中の成魚主体の来遊

パターンに変化したと考えられた。

また,春漁期(2~4月)におけるマサパの漁獲

比率は,曾・平野(1978)は約 80%,長谷川(2001)

は約 30%としているが,近年では最大で 20%程度(4

月)であり, 1980年代以降,マサパの漁獲比率は大

きく減少した。しかし,平成 28年度資源評価では,

近年,マサパ資源は増加傾向にあり, 2017年には成

熟した 2013年級群(卓越年級群)が伊豆諸島周辺海

域へ産卵回避する可能性が高いとされている。近年の

伊豆東岸大型定置網では 4~6月に産卵回遊中のマサ

パ成魚、が漁獲されていることから, 2017年以降には,

伊豆東岸大型定置網におけるマサパの漁獲割合は,増

加に転じる可能性が示唆された。

ゴマサバの漁獲動向

漁獲盛期である 1月および5~8月の体長組成は,

尾叉長 33cm以上にモードがあるため,成魚(2歳以

上)主体の漁獲と考えられ,また, 11~ 12月は 32

~33cmにモードがあり, 1月および5~8月に比べ

やや小型であるため,未成魚(1歳魚)または小型の

成魚主体の漁獲と考えられた。一方,漁獲盛期でな

い2~4月および9~ 10月については, 2月を除き,

漁獲盛期と異なる体長組成であった。すなわち, 2月

は34cmにモードがあり, 1月と同様,成魚主体の漁

獲であったが, 3~4月は体長組成が25~30cmに

偏っており,また,ゴマサパの産卵期は 3~6月と

考えられていることから(千葉県水産総合研究セン

ター他 2011),成魚、は 3~4月には相模湾内から移出

し,残った未成魚、が漁獲の主体になったと考えられ

た。一方, 9月については, 23cmおよび30cmにモー

ドがあり,前者は当歳魚,後者は未成魚(1歳魚、)と

考えられた。当歳魚、については, 4月に lOcmにモー

ドがあることから,加入は4月以降と考えられ, 9月

に23cm, 12月に 27cmに達し,翌 3月には 28cmモー

ドの 1歳魚(未成魚)に成長したと考えられた。さら

に, l歳魚は 9月に 30cm, 12月に 32cmに達し,翌 1

月には 33cmモードの 2歳魚(成魚)に成長レ漁獲対

象になったと考えられた。但し, 5月以降に漁獲され

る成魚については,相模湾内で生育した群が産卵場に

回遊した後,再び相模湾に来遊することを裏付ける標

識放流結果等が無いため,相模湾以外で成育した群が

漁獲された可能性も高いと考えられた。

ゴマサパの漁獲動向について,曾-平野(1978)

は, 7~8月に尾叉長 20~25cm程度の当歳魚、が相模

湾に摂餌回遊し, 10月後半に湾外に移出するとして

おり,長谷川(2001)は,周年,尾叉長 20~25cm

の当歳魚主体に, 30cm前後の l歳魚以上も漁獲され,

特に 8~9月の漁獲盛期には小型魚、が漁獲されるとし

ている。このことから,当歳魚が夏~秋にかけて相模

湾に来遊し,相模湾内で摂餌回遊する点については過

去の状況と同様であると考えられたが,秋以降,湾外

に移出すること無く,相模湾内で継続して成魚、が漁獲

されるようになった点については, 1980年代以降の

特徴といえる。また,平井(1999)は,伊豆諸島海域

へ移入したゴマサパは,この海域が周年好適な水温環

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76

境であることから,東シナ海に生息するゴマサパのよ

うに大回遊は行わず,黒潮流路の変動に伴う水温変動

の中で小規模に移動していると推測している。この小

規模回遊の範囲に相模湾が入っているとすれば, 5月

以降に相模湾で漁獲される成魚は,伊豆諸島周辺海域

で成育した群である可能性も考えられるが,標識放流

や成熟度調査等により,当歳魚,未成魚、,成魚、それぞ

れの回遊パターンを確認する必要がある。

2016年 1~ 11月の月別漁獲量は,近年(2001~

2015年)において漁獲量の多い 5~ 8月に少なく,

漁獲量の少ない4月および9月に多い状況であり,ま

た, 9月については約 20cmモードの組成率が高いこ

とから, 2016年は近年に比べ小型魚(当歳魚)の割

合が高く, 1970年代に近い状況と考えられた。一方,

l~ 8月については 30cm以上の成魚主体に漁獲され

おり,近年と同じ状況であったことから, 2017年以

降も,成魚主体の漁獲が継続するのか,または 1970

年代の当歳魚主体の漁獲に変わるのか,今後の漁獲動

向を注視する必要がある。

鈴木

文献

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奈川県水産技術センター・東京都島しょ農林水産

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