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電⼦情報通信学会 光エレクトロニクス研究会 4 ⽉研究会 ーポスターコンペティションー 講演予稿集 ⽇時:20164⽉ 21⽇(⽊)13:00〜17:35 会場:リゾーピア熱海 マーメイド

講演予稿集 - IEICE The Institute of Electronics ...ope/ope/content/programs/AprilSymposium/2… · Natsuki Iijima. Masato Seido . asayuki Takeda M Katsumi Nakatsuhara Satoru

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電⼦情報通信学会 光エレクトロニクス研究会

4 ⽉研究会

ーポスターコンペティションー

講演予稿集

⽇時:2016年 4⽉ 21⽇(⽊)13:00〜17:35

会場:リゾーピア熱海 マーメイド

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OPE 4⽉研究会 ポスター発表会プログラム⽇時︓2016年4⽉21⽇(⽊)13:05〜17:35   会場︓リゾーピア熱海 マーメイド

セッション 発表番号 タイトル 代表著者⽒名 所属 ページP1-1 ソフトリソグラフィ法による低損失GI型ポリマー光導波路回路の

作製 阿部 光平 慶應義塾⼤学 1P1-2 コンタクトエピタキシャル法を⽤いたCe:YIG膜形成のためのSi導

波路製作プロセスの検討 飯島 夏来 神奈川⼯科⼤学 2P1-3 DBR構造を⽤いたFLC装荷Si3N4導波路型共振器の基礎検

討 稲森 翔 神奈川⼯科⼤学 3P1-4 DFB LDにおける⾼速波⻑切替技術の検討 上野 雄鋭 三菱電機 4P1-5 2次元FDTD法を⽤いた利得媒質中における電磁波の伝搬解

析 上村 凌平 ⽇本⼤学 5P1-6 電界制御型分岐⽐可変多モード⼲渉カプラを⽤いたマッハ・ツェ

ンダ変調器の⾼消光⽐化の検討 植⼭ 翔太 横浜国⽴⼤学 6P1-7 位相変調⽤半導体光増幅器 榎 健太郎 三菱電機 7P1-8 異なる強磁性共鳴周波数を有する粒⼦状媒体による記録⾼密

度化の検討 種⽥ 亮太 ⽇本⼤学 8P1-9 量⼦ドッ トゲインチップとアレイ導波路回折格⼦を⽤いた外部共

振器型レーザの構成 奥野 雄⼤ 慶應義塾⼤学 9P1-10 FDFD法を⽤いた⾦属円柱における電磁波散乱解析 呉 迪 ⽇本⼤学 10P2-1 電気光学ポリマーを⽤いた垂直⼊射型光変調器の提案と設計 ⼩杉 優地 東京⼤学 11P2-2 三⾓形孔配列を設けた1/4波⻑⾦属板 栄⼭ ⻯清 法政⼤学 12P2-3 フォトミキサアレイによるコヒーレントテラヘルツ波合成 坂野 豪紀 九州⼤学 13P2-4 無反射コーティングにも三⾓形孔配列を設けた1/2波⻑板 島村 ⼤輝 法政⼤学 14P2-5 バタフライ型パッケージを⽤いた1.3um帯EML/PDの53.2

Gb/s NRZ伝送特性評価 ⽩尾 瑞基 三菱電機 15P2-6 マイクロリング共振器型⼩型TE/TM偏波スイッチの提案 鈴⽊ 啓⼤ 横浜国⽴⼤学 16P2-7 KTN平⾯光偏向器による700kHz光偏向動作実証 ⾠⼰ 詔⼦ NTT 17P2-8 Mosquito法によるポリマー光導波路作製⼯程でのコア配列精

度検討 伊達 玖実 慶應義塾⼤学 18P2-9 静磁表⾯波の振幅および位相解析 -モデル形状の変化に対す

る特性- ⽥中 和幸 ⽇本⼤学 19P3-1 偏光サニャック⼲渉計とダブプリズムを⽤いた光渦モード分離 中嶋 慶 ⾼知⼯科⼤学 20P3-2 1.26 μmから1.70 μm帯で動作する導波路型偏波分割器の

設計 ⽇野 浩詳 法政⼤学 21P3-3 複数ビームを⽤いた波⻑モニタの⾼安定化検討 望⽉ 敬太 三菱電機 22P3-4 光通信⽤DFBレーザの注⼊電流制御による波⻑切替⾼速化 ⼭⼝ 健太 九州⼤学 23P3-5 半導体集積型光-THz信号直接変換素⼦ ⼭﨑 理司 東京⼯業⼤学 24P3-6 無反射構造を付加したテラヘルツ帯InSbパッチフィルタの3次元

解析 ⼭﨑 天弥 法政⼤学 25P3-7 マッハ・ツェンダ⼲渉計を⽤いた光デバイスの相対波⻑分散測定 ⼭中 友輔 九州⼤学 26P3-8 1.3 μm 帯 npn-AlGaInAs/InP トラン ジスタレーザにおける

発振波⻑のコレクタ-ベース電圧依存性 ⼭中 健太郎  東京⼯業⼤学 27P3-9 Siフォトニック結晶導波路型光遅延線の設計 吉野 陽紀 ⼭梨⼤学 28

1

2

3

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Fig.1 Relationship between insertion loss and exposure time

Fig. 2 Insertion loss before and after solder-reflow process

*1慶應義塾大学大学院 理工学研究科 *2慶應義塾大学 理工学部 物理情報工学科Graduate School of Science and Technology, Keio University Faculty of Science and Technology, Keio University

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

6.0 6.5 7.0 7.5 8.0 8.5 9.0Exposure time of clad monomer (s)

Inse

rtio

n l

oss

(d

B)

Cross section

50 mm

0

0.5

1

1.5

Inse

rtio

n l

oss

(d

B)

加熱後増大した挿入損失

加熱前挿入損失

有機無機ハイブリッド樹脂 アクリル系樹脂

ソフトリソグラフィ法による

低損失 GI型ポリマー光導波路回路の作製 Fabrication for Low Loss Graded-Index Polymer

Optical Waveguide Circuit Using the Soft-lithography Method

阿部光平*1 石榑崇明*2

Kohei Abe Takaaki Ishigure

1. 緒論 High-Performance Computer(HPC)の低消費電力化,高速化

へ向けて光インターコネクト技術の導入が検討されており,

ポリマー並列光導波路を伝送媒体としたオンボード光配線

が注目されている.特に同一平面内交差構造を有する光導

波路は,チップ間光回路の単層化や自由な配線設計を実現

する技術として期待される[1].

当研究室では光線追跡法による理論計算により,交差光

導波路のコア部に屈折率分布(GI)を形成することで交差部

での光の漏洩を低減できることを示してきた.また,簡易

な作製手法であるソフトリソグラフィ法に着目し,アクリ

ル系樹脂を用いてGI型ポリマー光導波路作製を試みてきた

[2].しかし,従来材料は,コア部に低分子化合物を添加す

ることで屈折率分布を形成する必要があったため,室温下

であっても経年劣化が見られ,光配線板に求められる半田

リフロー耐性を持たせることは不可能であった.

そこで本検討では耐熱性に優れる有機-無機ハイブリッ

ド樹脂をソフトリソグラフィ法に適用する.コア用モノマ

ーは,クラッド部へ拡散した後,クラッドモノマーと共重

合することで屈折率分布が形成されるため,経年劣化のな

い耐熱性に優れた低損失 GI型光導波路が期待される.

2. 実験方法および結果と考察 2.1 露光条件の検討

クラッド材料・コア材料には日産化学工業(株)製樹脂

SUNCONNECTシリーズ(NP-208とNP-001)を使用した.ソ

フトリソグラフィ法では,下部クラッドの転化率を低く抑

え,高屈折率のコア用モノマーを,半硬化状態のクラッド

部に拡散させることでGI型コアを得る.本検討では初めに

直線状光導波路を作製し,理想的な屈折率分布を形成する

露光条件を検討した.下部クラッドの露光時間と挿入損失

の関係および挿入損失最小値が得られた露光時間7.5 秒の

光導波路断面図をFig. 1に示す.Figure 1より,下部クラッ

ドの露光時間を短くすることで,損失値が低減しているこ

とが分かる.これはクラッドの転化率が低く抑えられ,コ

ア用モノマーの拡散性が高まるため,GI型コアが形成され

やすくなった結果,コア-クラッド界面で生じる散乱損失

が低減されたからと言える.しかしながら,露光時間7.5秒

よりも短い場合には,過剰な拡散によりコア-クラッド間

の屈折率差が減少,開口数が低下し,強い光の閉じ込め効

果が十分に発揮されなかったため,挿入損失が増大したと

考えられる.

2.2 耐熱性の検討

作製したGI型光導波路に対し,半田リフロー工程を想定

し,250 ℃で 1 分間加熱した後の挿入損失値を測定した.

加熱前の挿入損失との比較結果を Fig. 2 に示す.併せて,

従来の,アクリル系樹脂-ドーパントの組み合わせで作製

した光導波路の結果を比較し示す.Figure 2 に示す通り,

有機-無機ハイブリッド樹脂による光導波路では加熱後に

挿入損失値の増大は見られなかった.有機-無機ハイブリ

ッド樹脂は分子骨格に Si-O結合を導入した構造とすること

で,耐熱性を高めており,得られた光導波路が半田リフロ

ー耐性を有する可能性が示された.また,アクリル樹脂-

ドーパント系導波路と異なり,GI 型導波路形成後のドーパ

ントの拡散による屈折率分布形状劣化が生じないため,加

熱前後の挿入損失値に差が見られなかったと考察される.

3. 結論耐熱性に優れる有機-無機ハイブリッド樹脂をソフトリ

ソグラフィ法に適用することで,共重合によりGI型コアを

形成することに初めて成功した.更に得られた光導波路が

半田リフロー耐性を有しうることを示した.今後は有機-

無機ハイブリッド樹脂を用いて,モスキート法では作製が

困難とされる交差光導波路をはじめ,様々な配線パターン

を有する平面光導波路回路の実現を目指す.

参考文献 [1] N. Bamjedakis et al., Proc. of CLEO, pp. 1-2, (2007).

[2] T. Ishigure and Y. Nitta, Opt. Express 18, 14191-14201

(2010).

平成28年度 OPE4月研究会

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コンタクトエピタキシャル法を用いたCe:YIG膜形成のための

Si導波路製作プロセスの検討

A study of fabrication process of Si waveguides for Ce:YIG films using contact epitaxial techniques

飯島 夏来† 清藤 将人† 武田 正行† 中津原 克己† 野毛 悟‡ 水本 哲弥*

Natsuki Iijima Masato Seido Masayuki Takeda Katsumi Nakatsuhara Satoru Noge Tetsuya Mizumoto

†神奈川工科大学 工学部 電気電子情報工学科 ‡沼津工業高等専門学校 電気電子工学科 *東京工業大学 大学院理工研究科 †Kanagawa Institute of Technology, ‡Numadu College, *Tokyo Institute of Technology

1. はじめに

光アイソレータは半導体レーザの高コヒーレント動作や

波長変換器などの光能動素子の安定な動作に不可欠である。

今後の伝送ビットレートの増加や波長多重伝送の発展にお

いて必要となる光集積回路の実現には導波路型光アイソレ

ータがキーデバイスである[1,2]。

本研究では、導波路型光アイソレータに必要な単結晶ま

たは高い配光性のCexY3-xFe5O12(Ce:YIG)膜をSi導波路上へ

直接形成するため、コンタクトエピタキシャル法[3]を用い

たプロセスの検討を行っている。基礎的研究として、

Ce:YIG装荷非対称Mach-Zehnder interferometer(MZI)-Si導波

路を用いた伝搬損失評価を行っている[4]。今回、コンタク

トエピタキシャル法に用いる熱処理プロセスによるSi導波

路への影響低減のために製作プロセスの検討をしたので報

告する。

2. 非対称MZIを用いたCe:YIGの評価

本研究では種結晶としてSGGGをコンタクトさせた

Ce:YIG薄膜の熱処理を行い、光アイソレータに適用可能な

高い配光性を有する結晶膜を得ることを目的とし、図1に

示すような非対称MZI型導波路を用いてCe:YIG装荷Si導波

路の特性評価を検討している。

図1 Ce:YIG装荷非対称MZI型導波路

これまでにCe:YIG膜装荷Si導波路の伝搬損失評価を行い、

400℃, 60minの熱処理条件で、Ce:YIG装荷Si導波路の伝搬

損失の低減の効果を示す結果が得られた[4]。しかし、上部

クラッドとしてSiO2を装荷したSi導波路部分で損失の増大

を示す結果となった。この要因を探るため、上部クラッド

をAirとしたSiリブ型直線導波路を用いて熱処理プロセスを

行ったところ、最高到達温度を500℃以上にした際に損失

の増大が見られ、さらに導波路幅が狭いほど、損失が大き

いという結果になった。

3. 製作プロセスの検討項目

前述の通り、Si導波路のみでも500℃程度の熱処理によ

り伝搬損失の増大が見られるため、次の項目について製作

条件の検討を開始した。

(1) RIE加工時のマスク材料

図2(a)のように従来の導波路加工プロセスでは、CrをRIE

時のマスクとしている。このCrをウェットプロセスで除去

させた後に熱処理プロセスが行われるが、ウェットプロセ

スで溶けたCrの影響が懸念される。今回、図2(b)のように

レジストをRIE時のマスクとして使用したプロセスを検討

し、熱処理前後で比較を行った。

(a)Crマスク (b)レジストマスク

図2 RIEによる導波路加工

(2) 熱処理プロセス

熱処理プロセスに用いた赤外線ランプアニール炉の温度

制御においてオーバーシュートが起きていたため、制御方

法の改善を図った。その結果、最高到達温度が500℃を超

える650℃, 60minという熱処理後でも、導波光を確認でき、

伝搬損失の増大が低減された。

(3) 導波路構造

これまではリブ型導波路構造を用いて評価していたが、

細線型導波路を用いて熱処理プロセスを行い、比較するこ

とにより導波路構造の違いによる影響の有無を検証してい

る。

現在、上記3項目についての検討結果を解析し、コンタ

クトエピタキシャル法での熱処理プロセスにおいて損失増

大の生じないSi導波路製作プロセスの条件の確立を行って

いる。今後確立した条件を用いて、Ce:YIG装荷非対称MZI

型導波路の特性を評価していく。

謝辞 本研究では、一部JSPS科研費挑戦的萌芽研究(26630166)

の助成を受けていることを記し、謝意を示す。

参考文献 [1] L.Bi, et al. , Nature photon. , vol.5, pp.758-762, (2011).

[2] Y.Shoji, et al. , Appl. Phys. Lett., 92, 071117, (2008).

[3] 野毛 悟, 信学会 技報, CPM2011-71, pp.73-78, (2011).

[4] 清藤 将人, 他, IPDA2016-3, pp.47-48, (2016).

SiO2

Si sub .

Si

Al2O3Input

Output 1 (Bar port)

SiO2

Output 2

(Cross port)

Ce:YIG

Si

SiO2

Si sub.

Cr Cr

Plasma

Si

SiO2

Si sub.

Resist

Plasma

SiO2

平成28年度 OPE4月研究会

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DBR構造を用いたFLC装荷Si3N4導波路型共振器の基礎検討 A fundamental study of Si3N4 waveguide cavities featuring

ferro-electric liquid crystal with distributed Bragg reflector structures

*1 神奈川工科大学 工学部 電気電子情報工学科 *2 国立研究開発法人 産業技術総合研究所*1 Kanagawa Institute of Technology, Department of Electrical and Electronic Engineering

*2 The National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)

1. はじめに 本研究室では強誘電性液晶 (FLC:ferro-electric liquid

crystal)と Si フォトニクスを組み合わせた研究をしてきた[1,2]。FLC 材料は比較的大きな屈折率差を持ち、比較的高速

な応答速度、自己保持特性などの特徴を持つ[3]。これまで

に FLC 装荷 Si 導波路に深堀ミラー溝を形成した複合

Fabry-Perot共振器を製作し、可変波長特性を実現している[2]。

Si 導波路より FLC との屈折率差の小さい Si3N4導波路を用

いることで、FLC による屈折率変化の効果の増大が期待さ

れる。

今回、FLC装荷 Si3N4導波路と分布ブラッグ反射器

(DBR:distributed Bragg reflector)構造を用いた新たな波長可

変フィルタを提案し、初期的検討として理論解析を行った

ので報告する。

2. 素子構造 今回提案する素子は、図 1に示すように FLC装荷導波路

を DBR構造で挟む導波路型共振器とした構成であり、集積

化に適した波長可変フィルタを実現できる。また、FLC 装

荷 Si3N4 導波路を用いることで短い長さで位相変化が得ら

れるため、共振波長間隔(FSR:free spectrum range)を決める共

振器長を可変位相シフタ長と独立して設計可能である。

Si sub.SiO2

FLC

ITO+- -

Si3N4

8mol%Ta2O58mol%Ta2O5

LcLc+ Lc-Lc-

κ,Lg κ,Lg

Grating領域 Grating領域

図 1. 提案素子構造

3. 理論解析 今回の解析には、本研究室が所有する FLC の一つである

FELIX-016/100のパラメータを用いた。マイナス電圧印加時

の FELIX-016/100 の屈折率を 1.53、プラス電圧印加時の屈

折率を 1.64、Siの屈折率を 3.48、Si3N4の屈折率を 1.93、SiO2

の屈折率を 1.44、92mol%SiO2-8mol%Ta2O5の屈折率を 1.56、

Siの伝搬損失を 0.83dB/mm、Si3N4の伝搬損失を 0.77dB/mm

として計算した。図 2 は Si 型 DBR と Si3N4型 DBR の波長

特性である。なお、共振器長は最大位相変化量として

3π/2[rad]が得られるように設定し、Siを用いた場合、358μm、

Si3N4を用いた場合、31.5μm とした。Grating 深さは結合係

数が 412cm-1となるよう Si を 16nm、Si3N4を 54nm とし、

Grating領域長は共に40μmとした。Si型DBRのFSRは1.1nm、

Si3N4型 DBR の FSR は 13.3nm となり、FSR の拡大が図れ

た。

図 2. Si型、Si3N4型 DBRの波長特性

次に、Si3N4型 DBRにおいて FLC 装荷領域長への印加電

圧の極性変化に対する波長特性の変化を解析した。計算に

は FLC 装荷領域内のプラス電圧印加部の長さをそれぞれ

5.5μm、10.5μm、15.5μm とし、それ以外は図 2 と同条件と

した。図 3 に計算結果を示す。波長特性はそれぞれ 3.4nm、

6.7nm、9.9nmシフトしている。

図 3. プラス電圧印加部の長さに対する波長特性

4. まとめ DBR構造を用いた FLC装荷 Si3N4導波路型共振器を提案

し、可変位相シフタ長により波長特性のシフト量を理論解

析により示した。今後、Grating深さや領域長の違う共振器

を理論解析し、波長特性の改善を図る。また、Grating 形成

及び導波路形成などの製作プロセスの確立を行い、DBR構

造を用いた Si3N4導波路型共振器の動作実証を目指す。

謝辞 本研究の一部、JSPS科研費基盤(B)(15H04018)助成を受けて

いることを記して謝意を示す。

参考文献 [1]K.Nakatsuhara, et al., ISPEC2013, D-2, pp.28, Nov., 2013.

[2]A.Kato, et al, IEEE Photon. Technol. Lett., Vol.24, pp.282-284,

2012.

[3]N.A.Clarl, et al., Appl. Phys. Lett, vol.36, pp.899-901, 1980.

1530 1540 1550 1560 1570

-20

-10

0

Wavelength [nm]

Tra

nsm

itta

nce

[dB

]

Si Si3N4

1540 1550 1560

-10

0

10

Wavelength [nm]

Tra

nsm

itta

nce

[d

B] Lc+: 0[um]

Lc+: 5.5[um] Lc+:10.5[um] Lc+:15.5[um]

武田 正行*1 Masayuki Takeda

加藤 亜希文*2 Akifumi Kato

中津原 克己*1 Katsumi Nakatsuhara

山本 宗継*2 Noritsugu Yamamoto

榊原 健太郎*1 Kentaro Sakakibara

稲森 翔*1 Sho Inamori

1530 1540 1550 1560 1570

-20

-10

0

平成28年度 OPE4月研究会

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DFB LD における高速波長切替技術の検討 The Study on Fast Wavelength Switching of DFB LD

上野雄鋭 望月敬太 長谷川清智 野上正道 有賀博 Yuto Ueno Keita Mochizuki Kiyotomo Hasegawa Masamichi Nogami Hiroshi Aruga

三菱電機株式会社 情報技術総合研究所 Information Technology R&D Center,Mitsubishi Electric Corp.

1. はじめに

長距離向けの WDM 通信においては、ネットワーク上のある伝送路で障害が発生した際に、光源の波長を切り替えることで経路切替を行う波長リストレーションの実現が望まれている。光源に対する波長切替時間の要求値は一般的に 100ms 程度と言われており、高速な波長切替が可能な光源が求められている。我々は、安定性や信頼性に優れるDFB LD に適用可能な方式として、LD の注入電流量操作と熱補償制御を組み合わせた高速波長切替技術を提案した[1]。波長リストレーションにおいては、障害発生時のネットワーク状況に応じて新しい波長が割り当てられるため、どの波長の組み合わせにおいても高速に切替可能であることが求められる。本技術では、切替前後の波長によって、電流操作量及び熱補償量の条件が異なるため、切替時間に差が出る可能性がある。今回我々は、異なる条件においても目標値を満足することを確かめるために、ランダムな波長の組み合わせにおける切替動作の検証を行った。 2. 高速波長切替動作の検証 図 1 に我々が提案する高速波長切替技術の概念図を示す。

(a)は光源部の構成であり、サーミスタまでの熱抵抗が互い

に等しくなるように、LD と熱補償素子を配置する。波長

は、LD の電流変化に伴うジュール熱変化を利用した温調

により制御しており、LD 自身がヒータとして機能するた

め、従来のペルチェによる温調方式と比較して、加熱領域

が非常に小さく、格段に速い制御が可能である。また、本

技術では、LD の発熱量変化によってサーミスタ温度が変

動し、温度一定制御を行うペルチェが応答して波長が熱ド

リフトすることを防ぐために、(b)のタイミングチャートに

示すように、熱補償素子の電流によって LD 電流変化の熱

的影響を補償する制御を取り入れている。サーミスタまで

の熱抵抗が互いに等しければサーミスタにおいて熱の影響

がキャンセルされるため、温度が一定に保たれ、熱ドリフ

トのない高速な波長切替が可能となる。 図 2 は、我々が使用している検証用モジュールにおける、

LD 電流値と出射周波数の関係性を示すグラフであり、LD電流及び周波数を基準値からの相対値で表している。

図 3 は、波長をランダムかつ連続的に切り替えた際の過

渡応答であり、図 2 に示した結果を基に LD 電流の切替条

件を決定している。12.5GHz 間隔の 4 波長を使用しており、

200ms 間隔で LD 電流を切り替えた。補償電流は、LD の発

熱量変化を補償する切替条件としており、前回同様、LD電流よりも 50ms 早く切り替えた。これは、我々のモジュ

ールにおける、LD-サーミスタ間、熱補償素子-サーミスタ

間の熱抵抗の不一致の影響を取り除くための条件である[1]。許容周波数誤差を±0.1GHz としたときの収束時間は、全

切替において 100ms 以内であり、一般的な要求を満足でき

た。各切替の数十 ms 程度前から始まる周波数ドリフトは、

事前に行っている熱補償制御による LD の温度変化が原因

と考えられる。上述の熱抵抗の関係が最適化されれば、事

前制御は不要となるため、切替前のドリフトはなくなる。

3. まとめ DFB LD における高速波長切替技術について検討を行った。ランダムかつ連続的な切替動作において、波長の組み合わせによらず、100ms 以内の波長切替を達成した。 謝辞 本研究の一部は国立研究開発法人 情報通信研究機構の委託研究

「光周波数・位相制御光中継伝送技術の研究開発」のもとで実施

した。 参考文献 [1] 上野他,信総大, C-4-20, 2015.

図 1 高速波長切替技術の概念図 (a) 光源部 (b) タイミングチャート

図 2 出射波長の LD電流依存性

図 3 連続波長切替時の応答.()内の数値は収束時間

ペルチェ

サブマウントDFB LD素子

サーミスタ発熱源

熱補償素子

時間 (a.u.)

サーミスタ温度

補償電流

スイッチング

LD電流

LD温度 (波長)

(a) (b)

-25

5

0

10

-80 -60 -40 -20 0 20 40 60相対LD電流 (mA)

相対

周波数

(GH

z)

15

-5

-10

-20

-30

-15

80 100 120

-37.5

-25

-12.5

12.5

0

25

0 200 400 600 800 1000 1200 1400時間 (ms)

相対

周波数

(GH

z)

(90ms)

(76ms)

(92ms)

(60ms)

(90ms) (78ms)

平成28年度 OPE4月研究会

4

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2 次元 FDTD法を用いた利得媒質中における

電磁波の伝搬解析

2D-FDTD Simulation of Wave Propagation in Gain Media

上村 凌平 大貫 進一郎

Ryohei Uemura Shinichiro Ohnuki

日本大学 理工学部

College of Science and Technology, Nihon University

1. はじめに

近年,光学デバイスの小型化に向け,ナノメートルサイズの光

能動素子の研究が注目されている.本報告では,利得媒質を用

いたナノ光能動素子の構造設計にあたり,その基礎検討として 2

次元円柱を想定した 4 準位系の利得媒質における電磁波の伝

搬解析を行う.

2. 解析手法

分散性媒質中の電磁波は,媒質中の分極を考慮した

Maxwell 方程式により表すことができる.

, (1)

分極 P は次式に示す Lorentzモデルを想定した電子の運動方

程式により計算する.

(2)

ここで,ωaは媒質の共鳴角周波数,Δωaは遷移の半値全幅,

γceoは固有振動の緩和レート,γrは放射遷移レート,eは電荷

素量,mは電子の質量である.

4準位系のエネルギー構造においてレーザ遷移は準位 1, 2

間で起こり,その準位間における電子数の差 N1-N2 を ΔNと

すると,各エネルギー準位の電子数は次式に示す 4準位系の

レート方程式により求められる.

(3)

ここで,ℏはディラック定数,τijは準位 i, j 間の緩和時間,

τiは準位 i から全ての下準位への緩和時間,Wpはポンピング

レートである.

3. 解析結果

本報告では,図 1に示す真空中に置かれた z軸に一様な半

径 a = 1.5 μmの円柱状利得媒質を仮定する.-x軸方向から媒

質の共鳴周波数 fa = 1×1014Hzを持つ電界強度E0 = 100 V/mの

ガウシアンビームを入射した.4準位系のエネルギー構造に

おいてポンピングレート Wp = 1×1029 m-3一定とし,反転分布

を形成している状態から解析を行う.また,解析領域周辺は

16層の PML吸収境界とする.

図 2に時刻 t = 160 fs における電界の空間分布を示す. こ

の時刻は入射パルスが円柱から十分遠方にあるため,利得媒

質から誘導放出が行われていることを確認できる.

4. まとめ

本報告では,2次元円柱を想定した 4準位系の利得媒質にお

ける電磁波の伝搬解析を行った.また,2次元円柱からの誘導放

出を確認した.

参考文献

[1] Amit S. Nagra and Robert A. York, IEEE Transaction on

Antennas and Propagation, Vol. 46, No.3, MARCH 1998.

[2] A. E. Siegman and M. Valley, “Lasers”, Univ. Sci. Books,

1986.

[3] 宇野亨, “FDTD 法による電磁界およびアンテナ解析”,

コロナ社, 1998.

図 1.円柱状利得媒質の解析モデル

0 100 200 300 400

50

100

150

200

250

300

350

400 0

0.05

0.1

0.15

0.2

0.25

0.3

0 100 200 300 400

50

100

150

200

250

300

350

400 0

0.05

0.1

0.15

0.2

0.25

0.3

y

z x

y

zx

source position

Ey

Hz

a

図 2.時刻 t = 160 fs における電界の空間分布

平成28年度 OPE4月研究会

5

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電界制御型分岐比可変多モード干渉カプラを用いた マッハ・ツェンダ変調器の高消光比化の検討

Electro-optic Tunable Multi-Mode Interference Coupler for High Extinction Ratio Mach-Zehnder Modulator 植山 翔太*1,川崎 直道*1,盧 柱亨*2,荒川 太郎*2

Shota Ueyama, Naomichi Kawasaki, Joo-Hyong Noh and Taro Arakawa *1横浜国立大学大学院工学府・工学研究院 *2関東学院大学材料・表面工学研究所

*1Graduate School of Engineering, Yokohama National Univ. *2Materials and Surface Engineering Research Institute, Kanto Gakuin Univ.

1. はじめに

マッハ・ツェンダ(MZ)型光変調器の両アームのバラン

ス調整のための様々なデバイスが提案されてきたが[1,2],消費電力,デバイスサイズ,動作波長帯域に課題があった.

これらの問題を解決すべく我々は多重量子井戸を用いた

電界制御型分岐比可変多モード干渉(MMI)カプラを提案

してきた[3.4].本デバイスは MMI 素子の特定の領域に電

界を印加し,量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)を利用

してその屈折率を変化させることで,その分岐比を動的に

調整するものである.本デバイスを用いた MZ 型光変調器

の高消光比化の検討を行ったので報告する.

2. 基本動作原理とシミュレーション結果

Fig.1にビーム伝搬法(BPM)により最適化した分岐比可変

カプラ[3]の構造を示す.位相変調部(L1,L2,R1,R2)の周囲に

1.0µm の電界分離溝を設けてあり,電界が所望位置にのみ

印加され制御性を高めている.またコア層には五層非対称

結合量子井戸(FACQW)[5]を用いており,低電圧で大きな屈

折率変化が得られる構造となっている.L1&R2(R1&L2)に屈折率変化 0.003 加えると分岐を 50:50 から 69: 31(31: 69)まで変化させることが可能である.

Fig.2 に R1&L2 (L1&R2),Fig.3 に L1&L2 (R1&R2)に屈折

率変化を与えたときの上側のポートの位相と出力光強度

の関係を示す.これより対角線上に屈折率変化を与えたと

き,位相が変化せず出力光強度のみ変化させることができ,

片側のみに屈折率変化を加えた時、出力光強度が変化せず

2 つの出力ポートの位相に差ができていることがわかる.

これより出力光強度と位相をそれぞれ制御することがで

きるといえる. 本デバイスを MZ 型光変調器の合波部に用いたときの高

消光比化の検討を行った.はじめに MZ の 2 つのアームに

おいて位相は等しく上下の出力ポートのパワーが 55:45 と

なっている状態で解析を行った.その結果をFig.4に示す.

分岐比可変カプラの R1&L2 (L1&R2)に屈折率変化を与え

ることで消光比 28dB から約 50dB まで改善した.次に MZのアームでパワーが等分岐で位相が下側のアーム部で位

相が 0.2rad 遅れている状態で解析を行った.その結果を

Fig4 に示す.分岐比可変カプラの L1&L2 (R1&R2)に屈折率

変化を与えることで消光比が 20dB から約 50dB まで改善

した.

これより MZ 型光変調の入出力部に本カプラを用いるこ

とで,位相と出力光強度の両方を制御することができ MZ型光変調器のさらなる高消光比化が実現できるといえる.

参考文献

[1] D.A.Mayarrioja et al., Proc.of SPIE, 6243, 62430H (2006). [2] T. Kawanishi, IEICE Electronics Express, Vol.8, No.20,

1678 (2011). [3] S. Kashima et al., Jpn. J. Appl. Phys., 52, 04CG02 (2013). [4] 川崎他, 第 74 回応用物理学会秋季学術講演会, 19p-A8-21

(2013). [5] T. Arakawa et al., Jpn. J. Appl. Phys. 50, 032204 (2011).

Fig.1. Schematics of top view of the proposed

1×2 MMI power splitter.

1.86

192

: Isolation trench Width (1.0μm)L=56 48199

R1 R2

L1 L2

W=2.5

(μm)

Fig.2. Power adjustment rate and phase

difference between lights outputted from Output ports when refractive index of

regions of L1 & R2 (R1 & L2).

0

0.1

0.2

0.3

0

10

20

0 0.001 0.002 0.003

Phas

e D

iffer

ence

(rad

)

Pow

er A

djus

tmen

t Rat

e (%

)

Refractive Index Change ∆n

R1 R2L1 L2

Fig.3. Power adjustment rate and phase

difference between lights outputted from Output ports when refractive index of

regions of L1 & L2 (R1 & R2).

0

0.1

0.2

0.3

0

10

20

0 0.001 0.002 0.003Ph

ase

Diff

eren

ce (r

ad)

Pow

er A

djus

tmen

t Rat

e (%

)

Refractive Index Change ∆n

R1 R2L1 L2

Fig.4. Calculated extinction ratio as a

function of the refractive index of regions of L1 & R2 (R1 & L2).

0

10

20

30

40

50

60

-0.003 -0.002 -0.001 0 0.001 0.002 0.003

Extin

ctio

n R

atio

(dB

)

Refractive Index Change Δn

R1 R2L1 L2

R1 R2L1 L2

Fig.5 Calculated extinction ratio as a

function of the refractive index of regions of L1 & L2 (R1 & R2).

0

10

20

30

40

50

60

-0.003 -0.002 -0.001 0 0.001 0.002 0.003

Extin

ctio

n R

atio

(dB

)

Refractive Index Change Δn

R1 R2L1 L2

R1 R2L1 L2

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位相変調用半導体光増幅器 Semiconductor optical amplifier for phase modulation format

榎 健太郎 林 周作 西川 智志 秋山 浩一

Kentaro Enoki Shusaku Hayashi Nishikawa Satoshi Koichi Akiyama

三菱電機株式会社

Mitsubishi Electric Corporation

1.まえがき

近年の通信トラフィックの急激な増加に伴い、通信ネ

ットワークにおける大容量化が求められている。現在、

陸上幹線系の通信ネットワークには位相変調である

DP-QPSK(Dual Polarization Quadrature Phase Shift

Keying)が利用されているが、変調器における大きな光

損失が問題であった。今後、従来の LN 変調器に代り、

小型化が可能な InPあるいは Si半導体変調器[1,2]を用

いる場合は、光損失はより大きくなることが懸念される。

変調器における光損失の補償には、小型で低消費電力

な 半 導 体 光 増 幅 器 (SOA:Semiconductor Optical

Amplifier)が有効である。これにより高光出力が必要な

長距離伝送や多値位相変調である DP-16QAM(Quadrature

Amplitude Modulation)変調方式の実現が可能になる。

これまでの SOA の研究は強度変調光に対するものが

大半であることから、本研究では位相変調用 SOAの実現

可能性について検討を行った。

2.SOA利得飽和特性

SOAは非線形効果を伴う位相雑音により、伝送性能の

劣化を引き起こすため、線形応答領域で使用する必要が

ある(図 1)。そこで、線形応答領域で所望の利得を得

るためには、SOAの最適化が必要となる。

図 2 に導波路長を変えた SOA の利得飽和特性を示す。

750umの SOAは、500umの SOAに対して利得は大きいが、

光入力が-15dBm 以下で位相雑音の大きな利得飽和領域

になった。一方、500umの SOAは、光入力が-5dBm まで

利得が 12dB 一定の線形応答領域にあることが分かった。

3.DP-QPSK変調のコンステレーション

上記 2種類の SOAを用いて、100Gbpsの DP-QPSK変調

信号を増幅し、コンステレーションの評価を行った。

図 3に片偏波のコンステレーションを示す。線形応答

領域で増幅した 500umの SOAは、位相雑音のない綺麗な

コンステレーションが得られ、伝送性能の指標である Q

値は、増幅しない場合の 15.9dBに対して 15.8dBと同等

であった。一方、利得飽和領域で増幅した 750umの SOA

は、同心円状に広がる位相歪みが観測され、Q 値は

12.8dBと大きく劣化した。

4.むすび

位相変調器の光損失を補償するため、長さの異なる 2

種類の SOAに対して、利得飽和特性と DP-QPSK変調信号

に対するコンステレーションの評価を行った。

長さ調整した線形応答領域の広い SOA を用いること

で、信号性能を低下させることなく約 12dB の利得が得

られることを確認した。

[文献] [1] K.Prosyk, A.Ait-Ouali, J.Chen, M.Hamacher, D.Hoffmann,

R.Kaiser, R.Millett, A.Pirastu, M.Totolo, K.Velthaus, and

I. Woods, "Travelling Wave Mach-Zehnder Modulators", IPRM2013, MoD3-1.

[2]K.Goi, H.Kusaka, A.Oka, Y.Terada, K.Ogawa, T.Liow, X.Tu, G.Lo, and D.Kwong, "DQPSK/QPSK modulation at 40-60

Gb/s using low-loss nested silicon Mach-Zehnder

modulator", OFC/NFOEC Technical Digest, OW4J.4, 2013.

図 1 SOAによる位相変調器の光損失の補償

図 2 SOAの利得飽和特性

図 3 SOA増幅後のコンステレーション

(左:SOA長 500um 右: SOA長 750um)

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異なる強磁性共鳴周波数を有する 粒子状媒体による記録高密度化の検討

Numerical Verification of High Density Recording by Bit-patterned with Different Resonance Frequencies

種田 亮太 大貫 進一郎 Ryota Oida Shinichiro Ohnuki

日本大学 理工学部 College of Science and Technology, Nihon University

1. はじめに 近年磁気記録の分野において記録の高密度化へ向けた

研究が盛んに行われている.現在注目されているひとつ

にマイクロ波アシスト磁気記録[1]とビットパターンドメデ

ィア[2]の併用がある.本方式では記録媒体を複数層にする

ことで超高密度化が可能となる[3].本報告では粒子状記録

媒体が 2層のモデルに対してマイクロマグネティクスシミ

ュレーションによる解析を行い,印加するマイクロ波の

周波数による磁化反転の制御について検討する.

2. 解析手法 磁性体内の磁化の運動は次式の Landau-Lifshitz-Gilbert

方程式により記述できる.

∂�

∂t= −γ� × � +

α

M�

�×∂�

∂t

ここで M は磁化ベクトル,γは磁気回転比,�は有効磁

界,αは減衰定数,M�は飽和磁化を表す.有効磁界は次式

のように構成される.

� = ��� + ��� + �� +�� +��

但し,���は直流磁界,���は交流磁界,��は異方性磁

界,��は反磁界,��は交換相互作用磁界を表す.

3. 解析結果 2 層の粒子状記録媒体の解析モデルを図 1に示す. 媒体

1 をコバルト(Co),媒体 2 をコバルトクロム白金(CoCrPt)に設定し,媒体間を 2 nm 空けることにより非磁性層を仮

定する.外部磁界は直流磁界���を解析開始時から 1nsec後に照射されるステップ状のパルス,交流磁界���を解析

開始時から正弦波状に変化するマイクロ波とする.図 2に,マイクロ波の周波数を 9GHz にしたときの各媒体の中

心における磁化の時間応答を示す.図 2(a)の Co では 1.5 nsec 付近で磁化の値が+1.5 から-1.5 に変化しており,反

転が確認できる.一方図 2(b)の CoCrPt では,0.3 付近で磁

化の値に大きな変化はなく反転が起きない.次にマイクロ

波の周波数を 18GHzに変えた場合の結果を図 3に示す.Coでは磁化反転していないのに対し,CoCrPt では 1.5 nsec 付

近で反転していることを確認できる.

4. まとめ 2 層構造の粒子状記録媒体を用いたマイクロ波アシスト

磁気記録の検証を行った.マイクロマグネティクスシミュ

レーションよりマイクロ波の周波数が 9GHzのとき Coのみ

が 18GHz のときに CoCrPt のみが磁化反転し,磁化反転の

制御ができることを確認した.

参考文献 [1] J. Zhu, X. Zhu, and Y. Tang , IEEE Trans. Magn, Vol.44,pp125-131, 2008 [2] K. Nakagawa, Y. Ashizawa, S.Ohnuki, A.Itoh and A.Tsukamoto , J. Appl. Phys., Vol.109, No7, 07B735, 2011. [3] H. Suto, T. Nagasawa, K. Kudo, T. Kanao, K. Mizushima, and R. Sato , Physical Review Applied 5,014003 , 2016 [4] 種田亮太,大貫進一郎,“マイクロ波アシスト磁気記録

方式における超高密度化への基礎検討”,電子情報通信学

会総合大会,C-15,2016.

図 1 解析モデル

0 1 2 3 4

-1

0

1

��� A

m⁄

� Time�nsec� Time�nsec�

��� A

m⁄

0 1 2 3 4

-2

0

20.2

-0.2

(a) Co (b) CoCrPt

図 2 磁化の時間応答(# = 9�GHz�)

媒体 1

媒体 2

( )

*

0 1 2 3 4

-2

0

2

]

0 1 2 3 4

-1

0

1

]

0.2

��� A

m⁄

-0.2

Time�nsec� Time�nsec�

��� A

m⁄

(a) Co (b) CoCrPt

図 3 磁化の時間応答(# = 18�GHz�)

10nm

10nm

(1)

(2)

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量子ドッ トゲインチップとアレイ導波路回折格子を用いた

外部共振器型レーザの構成

External cavity laser using a quantum dot gain chip and an arrayed-waveguide grating

奥野 雄大、 澁谷 英希、 津田 裕之

Yudai OKUNO, Hideki SHIBUTANI, Hiroyuki TSUDA

慶應義塾大学

Keio University

1. はじめに

近年、インターネットの普及に伴い、クラウドサービス

や動画閲覧サイトなどの大容量コンテンツが拡充されたこ

とにより、ネットワークのトラフィックが急速に増加し、

通信容量の不足が懸念されている。これまで、光通信には、

ITU-T の定める C バンド(1530-1565 nm)および L バンド

(1565-1625 nm)の波長帯域が用いられてきたが、これらの

帯域だけでは、さらなるトラフィックの増加には、対応し

きれない。

今回、私たちは、新たな波長帯域として T バンド(1000-

1260 nm)[1]に注目し、この帯域で波長分割多重通信を行う

ための、アレイ導波路回折格子(AWG: Arrayed-Waveguide

Grating)を用いた外部共振器レーザ[2]を構成した。

2. 外部共振器レーザの構成

今回作製した外部共振器レーザを図 1 に示す。レーザは、

InAs 量子ドットゲインチップ、レンズ、AWG、方向性結

合器から構成される。また AWG は、チャンネル間隔 200

GHz、チャンネル数 40 ch、FSR40 nmで設計した。

まず、ゲインチップから出射された光は、レンズで集光

され、AWG に入射する。そして、石英基板を移動して、

入射導波路を選択することで、発振波長を選択できる。ゲ

インチップの片側端面と AWG の出力導波路側には、高反

射コーティングが施されていて、この間で共振器構造が実

現されている。また、AWG の出力導波路には、方向性結

合器が取り付けられており、光の一部を外部に取り出せる。

図 1 外部共振器レーザの構成

3. 外部共振器レーザの特性

外部共振器レーザの可変波長特性を測定したところ、

1041.0-1082.8 nm の間で発振を確認した。一部の波長域で

は、AWG の回折次数が異なる2波長で発振している。単

一波長で発振した波長範囲は 1045.5-1078.3 nm であった。

波長と光出力の関係を図 2に示す。

また、図 3 に外部共振器レーザの I-L 特性の一例を示す。

このとき、波長 1047.7 nm において、レーザのしきい値電

流は約 110 mA、最大出力は 0.74 mW であった。他の波長

についても、ほぼ同じ I-L特性が得られた。

図 2 外部共振器レーザの発振特性

図 3 外部共振器レーザの I-L特性 (波長 1047.7 nm)

4. まとめ

量子ドットゲインチップと AWG を用いた外部共振器レ

ーザを構成し、波長 1041.0-1082.8 nm の間でレーザ発振を

確認した。

謝辞)本研究は、NICT委託研究(Tバンド、Oバンドによ

る大波長空間利用技術の開発)により得られたものである。

量子ドット利得チップを提供頂いたパイオニア・マイク

ロ・テクノロジー(株)の吉沢勝美氏、AR コーティング

にご協力頂いた光伸光学工業(株)の友松泰則氏に感謝し

ます。

引用文献)

[1] N. Yamamoto, et al., Opt. Express, 16(24), 19836-

19843(2008).

[2] H. Shibutani, et al., Photonics West 2015, OPTO, 9365-54,

Feb. 7-12, San Francisco, U. S. A., (2015).

平成28年度 OPE4月研究会

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FDFD法を用いた金属円柱による電磁波散乱解析 Analysis of Electromagnetic Scattering by Metal Cylinders Using the FDFD Method

呉 迪*1 渡部 慎太郎*1 山口隆志*2 大貫 進一郎*1

Di Wu Shintaro Watanabe Takashi Yamaguchi Shinichiro Ohnuki

*1 日本大学理工学部 *2 東京都立産業技術センター

Collage of Science and Technology Nihon University Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute

1. まえがき

近年,微小金属を用いた光デバイスが様々な分野で注目

され,多数の電磁界解析手法が提案されている。本報告で

は電磁界シミュレーション手法の一つである FDFD (Finite -

Difference Frequency - Domain) 法[1]を用いて,金属円柱によ

る電磁波の散乱及び金円柱列における電磁波の伝搬を解析

する.

2. 解析手法 FDFD法とは次式に示す Maxwell方程式を空間について

差分化する周波数領域の解法である.

ΗE j (1)

JEH jω (2)

ここで,電磁界の時間因子は ejωt を仮定した.本研究にお

いて金属の周波数分散性を考慮する必要があるため,式(3)

で示す Drudeモデル[2]より金属の複素誘電率を計算した.

i

p

r

2

1 (3)

3. 解析結果

図 1 の金属円柱は z 方向に一様な半径 30 nmの完全導体

とする.円柱は解析領域中央に配置し,TE 波を入射する.

波源は振幅 1 A/m,波長 200 nmの電流源を仮定した.また,

吸収境界は PML[3]を用いた.

図 2の x - y平面における散乱磁界 Hzの強度分布は, (a)

が FDFD の解析結果,(b)が厳密解を示す.図上で両者は良

く一致していることが確認できる.また,図 2 (c)はそれら

の絶対誤差を示す.本手法の解析結果と厳密解は 10-2 オー

ダで一致している.

図 3 に金属円柱列の解析モデルを示す.z 方向に一様な

半径 10 nmの金円柱を x方向に間隔 10 nmで配置する.金

円柱 C1から –x 方向に 5 nm離れた位置に波長 540 nmのダ

イポール波源を設置する.

図 4 に金円柱列における電界分布を示す.表面プラズモ

ンが励起されることにより金円柱付近に強い電界が存在し,

エネルギーが C15まで伝搬されることを確認した.

4. まとめ

FDFD 法を用いて,金属円柱に対する電磁界解析を行っ

た.本手法による完全導体柱の解析結果は厳密解と一致し

た.また,金円柱列による光エネルギーの伝搬を確認し,

光デバイス設計への実用性を検討した.

図 1. 金属円柱の解析モデル

(a) FDFD (b) 厳密解 (c) 絶対誤差

図 2. 完全導体柱による散乱磁界

図 3. 金円柱列の解析モデル

図 4. 金円柱列における電界分布

5. 参考文献

[1] V. Demir. Progress in Electromagnetics Research M, Vol. 23,

29-51(2012).

[2] Ain Gul Hanif, Takuji Arima and Toru Uno. IEICE

Electronics Express,Vol.9, No.11, 951-957(2012).

[3] Jean-Pierre Berenger. JOURNAL OF COMPUTATIONAL

PHYSICS 114, 185-200 (1994).

平成28年度 OPE4月研究会

10

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電気光学ポリマーを用いた垂直入射型光変調器の提案と設計

Proposal and Design of Normal-Incident Optical Modulator using Electro-Optic Polymer

小杉 優地 種村 拓夫

Yuji Kosugi Takuo Tanemura

東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻

Department of Electrical Engineering and Information Systems, School of Engineering, The University of Tokyo

1. 背景 垂直入射型の空間光変調器は,導波路型光変調器に比べ

て 2 次元アレイ化が容易という利点があり,光センシング

や大規模光スイッチに応用されている。しかし,現在広く

普及している液晶やMEMSを用いた空間光変調器は,動作

周波数が kHz 程度に留まっていることが課題である[1,2]。

そこで我々は,GHz 以上の高速動作を目指し,Si サブ波長

回折格子に電気光学(EO: electro-optic)ポリマーを埋め込

んだ共振器型空間光変調器を新たに提案したので報告する。

2. 提案するデバイスの構造と原理 提案するデバイス構造を図 1 に示す。Silicon-on-insulator

(SOI)もしくは Silicon-on-Glass(SOG)基板上の Si 層に

サブ波長回折格子を形成し,その隙間に EO ポリマーを埋

め込んだ構造を持つ。回折格子の周期を波長以下にするこ

とで,回折光が生じない high-contrast grating (HCG)として

働き,高 Q 値の光共振器や反射鏡として振る舞う[3,4]。Si

層は,P 型もしくは N 型にドープし,櫛歯電極として兼用

することで,EO ポリマーのポーリングと変調を行う。ポ

ーリング時には,x方向に隣接する隙間内の EOポリマーに

逆向きの電界がかけられることになり(図 1),電気光学

係数が交互に正負の符号を持つ。変調時には,同じ電極を

用いて電界を与えることにより,全ての溝において同一符

号で屈折率が変調される。その結果,x 方向に電界成分を

持つ垂直入射光の透過/反射特性を変調することができる。

さらに,下面に金属反射ミラーを付けることで,全反射型

位相変調器として使用することもできる。EO ポリマーの

屈折率変化は電子分極に起因するため,100 GHz 以上の高

速動作が可能である[5]。

3. 計算結果 電磁界モード解析により反射光強度を計算した[4,6]。Si

と SiO2の屈折率をそれぞれ nSi = 3.48, nSiO2 = 1.44,非変調時

の EOポリマーの屈折率を nEO = 1.60とした[5]。

s = a =/2の場合について,規格化した波長 λ/と Si膜厚

tg/に対する反射率特性を図 2 に示す。サブ波長領域(λ/

> nSiO2, nEO)では回折光が発生せず,高 Q 値共振器として

働くことが分かる[4]。一例として,Λ = 588 nm, s = a = 294

nm, tg=856 nmの場合について,変調電界印加時の反射率ス

ペクトルの変化を図 3(a)に示す。EO ポリマーの屈折率を

1.59から 1.61まで変調すると,共振波長が 1549.2 nm から

1550.9 nm まで変化するため,共振波長付近において大き

な強度変調を得ることが可能である。同様に,下面に金属

反射ミラーを付けたときの反射光の位相変化を図 3(b)に示

す。共振波長において位相が 2 変化する全反射型位相変

調器が実現できることが分かる。

引用文献 [1] A.P. Mosk, et al., Nature Photon., 6, 283 (2012). [2] http://www.calient.net/

[3] Y Kanamori, et al., IEEE Photon. Technol. Lett., 18, 2126 (2006).

[4] C.J. Chang-Hasnain and W. Yang, Adv. Opt. Photon., 4, 379 (2012).

[5] 大友 明ほか, 情報通信研究機構研究報告, 59(1), 3 (2013).

[6] https://light.eecs.berkeley.edu/cch/hcgsolver.html

図 1. 提案するデバイス構造

図 2. 非変調時の反射率特性 (s = a =/2).λ/ = nSiO2を境に特性が大

きく変化し、λ/ > nSiO2 (サブ波長領域) では共振特性を示す.

(a) (b)

図 3. EOポリマーの屈折率を 1.59から 1.61まで変調したときの

反射特性 変化(Λ = 588 nm, s = a = 294 nm, tg=856 nm).(a)ミラー無

しの場合の反射率変化.(b)ミラー有りの場合の反射光位相変化.

平成28年度 OPE4月研究会

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三角形孔配列を設けた1/4波長金属板A Quarter-wave Plate Using an Array of Triangular Holes in a Metallic Plate

栄山 竜清Ryusei SAKAEYAMA

山内 潤治Junji YAMAUCHI

中野 久松Hisamatsu NAKANO

法政大学理工学部Faculty of Science and Engineering, Hosei University 

1 まえがき我々は, 三角形孔配列を設けた 1/4波長金属板を提案し,

その特性を明示してきた [1]-[3]. 従来の検討では, 理想的な三角形孔を取り扱ってきた.本稿では, 製作時における角の削り残りを考慮するため

に, 三角形孔の角を埋めた 1/4波長金属板の特性を明らかにする [4]. さらに, 構造をマイクロ波帯で動作するように再設計し, 検証実験を行う.

2 シミュレーション解析する構造全体とユニットセルを図 1(a), (b) にそれ

ぞれ示す. 金属には Ag [5] を使用し, Drude 分散性媒質として扱う. 構造の上部, 下部, 及び三角形孔内部の媒質は空気とする. 構造の周期長 Λ = 1.0 µm, 三角形孔一辺の長さを w1, 角を埋める部分の一辺の長さを w2 とし, それぞれ0.82, 0.11 µm とする. 金属の厚さを t = 0.36 µm に設定する.本稿では, 透過波の波長特性を透過率, 楕円率の観点から

評価する. 構造下部の空気層より一様な振幅を持つ直線偏波 (Ex 偏波) を入射し, 構造上部の空気層で透過波を観測する. 解析には周期境界条件を適用した FDTD法を用いる.図 2に, 透過率と楕円率の波長特性示す. 比較として, 角

を埋めていない場合の結果を黒の実線で併記する. ここで,楕円率が 0.7以上, 又は-0.7以下のとき, 透過波は 3 dB 以下の円偏波とみなせる. 図より, 角を埋めると特性が短波長側にシフトすることがわかる. これは, 三角形孔が等価的に小さくなったためと解せる. 図 2(b)より, λ = 1.34 ~ 1.39µmの帯域において円偏波とみなせ, 角を埋めていない場合(λ = 1.46 ~ 1.51 µm)と比べ, 同等の帯域幅を得ることがわかる. さらに, この帯域での透過率も同程度である.

3 実験検討計算によると, 金属を完全導体とみなしても類似の特性

を呈する. そこで,マイクロ波帯で動作するように再設計し,検証実験を行う. 素材には Alを使用し, 28個 × 28個の三角形孔配列を設ける. 各構造値を Λ = 14.0 mm, w1 =11.48mm, w2 = 1.5 mm, t = 3.0 mm とする. 図 3に, 実験値の周波数特性を示す. 解析結果を黒の実線で併記する. 図 3より, Ex偏波の透過率, 楕円率ともに,実験値と計算値の傾向が一致していることがわかる.

4 まとめ三角形孔の角を埋めた 1/4波長板を解析した. 角を埋め

ても, 埋めていない場合と同等の透過率, 動作帯域が得られることを明示した. さらに, マイクロ波帯での検証実験で,Ex 偏波の透過率, 楕円率ともにシミュレーションの結果と傾向が一致することを明らかにした.

参考文献[1] 山内, 高木, 谷口, 中野,“金属膜に周期的に非対称開口を配置した位相差板,”特願 2014-174956, 2014.8.29.

[2] J. Yamauchi et al., Optical Wave and WaveguideTheory and Numerical Modelling, p. 86, London,2015.

[3] 山内, 本田, 中野, 信学ソ大, C-3-8, 2015.

[4] 山内, 栄山, 高木, 中野, 信学総大, C-3-41, 2016.

[5] P. B. Johnson and R. W. Christy, Phys.Rev.B, vol. 6,no. 12, pp. 4370-4379, 1972.

(a) 構造全体, (b) ユニットセル図 1 構造

1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8-1.0-0.50.00.51.00.00.20.40.60.81.0Ellipticity Wavelength (µm)

(b) Partially filled Ideal triangle

Transmittance (a)

(a) 透過率, (b) 楕円率図 2 波長特性

15.0 15.5 16.0 16.5 17.0 17.5 18.003691215-15-12-9-6-30

Ellipticity (dB)

Frequency (GHz)(b)

Measured SimulatedTransmittance (dB) (a)

(a) Ex 偏波の透過率, (b) 楕円率図 3 周波数特性

平成28年度 OPE4月研究会

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フォトミキサアレイによるコヒーレントテラヘルツ波合成 Coherent-THz Wave Combiner Consisting of Photomixer Array

坂野豪紀 佐熊一輝 春木 隼 加藤和利

Goki Sakano Kazuki Sakuma Jun Haruki Kazutoshi Kato

九州大学 大学院システム情報科学研究院

Graduate School of Information Science and Electrical Engineering, Kyushu University

1. まえがき

無線通信のさらなる大容量化の手段として、テラヘルツ

波技術、特に位相変調が可能となるコヒーレントテラヘル

ツ波技術が注目されている。コヒーレントテラヘルツ波生

成技術として、我々は異なる 2 つの光周波数をもつ光をフ

ォトミキサに入力してこれらの差周波ビート信号を得る、

フォトミキシング技術に着目している[1]。フォトミキサと

して用いる単一走行キャリアフォトダイオード(UTC-PD)

は一般的な pin-PDに比べ高出力であるものの、出力上限値

は 300 GHzにおいて約 100 μWにとどまる[2]。そこで以前

我々は、より高いテラヘルツ波強度を得るためにフォトミ

キサをアレイ化し、それぞれのアンテナから放射されるテ

ラヘルツ波を空間で合波した結果、約 2 dBの指向性利得が

得られたことを報告した[3]。本稿ではアレイ数をさらに増

やし、空間で合波したテラヘルツ波強度を測定したので報

告する。

2. 実験系の構成

図 1に実験系の構成を示す。まず波長 1.55μm帯のレーザ

光を位相変調して 25GHz間隔で光周波数コムを生成し、ア

レイ導波路回折格子(AWG)で周波数差 300 GHzの 2つの波

長を選択する。EDFA で増幅したこれら 2 光波を、平面光

波回路に入力し、2 光波をそれぞれ複数の光路に分岐させ

る。位相調整器で片方の光波のみを位相調整したのちに、

2 光波を合波し、マイクロレンズアレイ(MLA)を介して

UTC-PD アレイに入射し、テラヘルツ波を発生させている。

UTC-PD アレイは 6 個の UTC-PD とボウタイアンテナが集

積された 6 チャンネル構成になっており、今回の実験では

この内 3 つのチャンネルを使用し、各アンテナから放射さ

れるテラヘルツ波を空間で合波している。合波後のテラヘ

ルツ波はホーンアンテナで受信した後、強度をショットキ

ーバリアダイオード(SBD)で電圧値に変換し、ロックイン

アンプ(LIA)で検出している。

3. 実験結果

図 2 は、3 チャンネルの個別出力の単純和、および各チ

ャンネルの位相を揃えて合波したテラヘルツ波強度の測定

値(=ロックインアンプの出力電圧)である。ここで横軸は

アンテナからテラヘルツ波が放射される正面方向を 0°と

してフォトミキサアレイに沿った方向の角度であり、各測

定値は正面方向での単純和の値で規格化している。

3 つのチャンネルから放射されるテラヘルツ波を合波す

ることで、約 5.2 dB の指向性利得が得られた。さらに、4

つのチャンネルから出射されるテラヘルツ波の合波では、

約 5.9 dBの指向性利得が得られ、空間で合波したテラヘル

ツ波強度はおおよそアレイ数の 2 乗に比例して上昇してい

ることも分かった。

4. まとめ

フォトミキサアレイの各チャンネルから放射されるテラ

ヘルツ波の位相を調整し、空間で合波したテラヘルツ波強

度の角度特性を測定した。測定結果から、3 チャンネルか

らのテラヘルツ波の合波では約 5.2 dB、4 チャンネルから

のテラヘルツ波を合波では約 5.9 dBの指向性利得が得られ

ることがわかり、合波されたテラヘルツ波強度はアレイ数

の 2乗に比例して上昇していることが分かった。

謝辞 本研究の一部は 2015 年度総務省戦略的情報通信研

究開発事業 (SCOPE)、 JST 産学共創基礎基盤研究及び

CREST/JST によるものである。実験にあたり NTT 研究所

から多大な支援をいただいた。

参考文献

[1] T. Nagatsuma et al., Optics Express, Vol. 21, Issue 20,

pp.23736-23747, 2013

[2] 永妻忠夫, 電子情報通信学会技術研究報告,vol. 110, no.

342, pp. 13–18, Dec. 2010.

[3] 春木ほか,2015年度電子通信情報学会ソサイエティ大会,

C-14-3

図 1 テラヘルツ波合波実験系

図 2 テラヘルツ波強度角度特性

平成28年度 OPE4月研究会

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無反射コーティングにも三角形孔配列を設けた1/2波長板Half-wave plate consisting of a dielectric with anti-reflection coatings using a triangular-hole array

島村 大輝Daiki SHIMAMURA

山内 潤治Junji YAMAUCHI

中野 久松Hisamatsu NAKANO

法政大学理工学部Faculty of Science and Engineering, Hosei University

1 まえがき構造の非対称性によって生じる直交固有モードを利用し, 誘

電体に三角形孔の周期配列を設けた偏波変換器の特性を明らかにしてきた [1]. 文献 [2]では, 入出力端に SiO2 からなる平面の無反射コーティング (ARC)を付加することで, 透過率が改善されることを報告した. 本稿では, 製作を容易にするためARCにも三角形孔を設けた構造を検討する. 透過波の波長特性を評価することで, 文献 [2]と遜色ない透過率が維持されることを明示する [3]. さらに構造を再設計することで, 楕円率が改善されることを示す.

2 本論図 1に, 解析する構造を示す. 基本的な構造値は文献 [2] と

同一である. 設計中心波長 λc = 1.55 µm , 構造の厚さ h =

2.3 µm, ARCの屈折率を平面の ARCと同じ実効屈折率になるよう, nAR = 1.891(Y2O3[4]) に選び, ARC の膜厚を hAR

= 0.25 µm とする. 本稿では透過波の波長特性を, 透過率, 楕円率の観点から評価する. 構造下部の空気層より一様な振幅をもつ直線偏波 (Ex 偏波) を垂直に入射し, 構造上部の空気層で透過波を観測する. 解析には, 周期境界条件を適用した FDTD

法を用いる.

図 2に, ARCにも三角形孔を設けた構造の透過率, 楕円率の波長特性を示す. 比較として, ARCを付加しない場合と平面の ARCを付加した場合の結果を併記する. 図 2(a) より, 透過率は平面のARCを付加した場合とほぼ一致する. すなわち,

三角形孔を設けても ARCとして動作することがわかる. 計算によると, 平面の ARCを付加した場合と同様に, 偏波の軸が90度回転している. つまり入射された Ex 偏波が Ey 偏波に変換されている.

ARCにも三角形孔を設けた場合では, 従来と比べ設計中心波長にて楕円率が増加してしまう. これは, ARCでも偏波変換が行なわれるためである. この楕円率の悪化を改善するため, 構造を再設計する. 入出力端の ARCにおける偏波変換を考慮し, 構造の厚さを薄く (h = 2.2 µm) する. 図 3に, hを変化させた場合の波長特性を示す. 図 3(b) より, 設計中心波長付近で楕円率が減少しており, 改善されていることがわかる.

3 まとめ無反射コーティングにも三角形孔配列を設けた 1/2波長板

の解析を行った. ARCにも三角形孔を設けた場合において, 平面のARCを付加した場合と遜色ない透過率が得られることを明示した. 加えて構造の再設計を行うことで, 楕円率が改善される様子を明らかにした.

参考文献[1] 山内他, 信学ソ大, C-3-59, 2013.[2] 山内他, 信学技報, OPE2014-160, pp. 47-52, 2014.[3] 山内他, 信学総大, C-3-40, 2016.[4] E. D. Palik, Handbook of Optical Constants of Solids,

Academic Press, NewYork, 1998.

図 1 構造

1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.00.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

(a)

(b)

Tra

nsm

ittan

ce

Wavelength (µm)

with triangular hole ARC (nAR

=1.891 : Y2O

3)

with planar ARC (nAR

=1.50 : SiO2)

without ARC

tan

χ

(a) 透過率 (b) 楕円率図 2 波長特性 (h = 2.3 µm)

1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.00.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

(a)

(b)

Tra

nsm

ittan

ce

Wavelength (µm)

h = 2.2 µm h = 2.3 µm

tan

χ

(a) 透過率 (b) 楕円率図 3 hの変化に対する透過波の波長特性

平成28年度 OPE4月研究会

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バタフライ型パッケージを用いた 1.3um帯 EML/PDの 53.2 Gb/s NRZ

伝送特性評価 Transmission Performance of 53.2 Gb/s NRZ Using 1.3-µm EML/PD Butterfly Module

白尾 瑞基† 板本 裕光†† 大畠 伸夫†† 野上 正道†

Mizuki SHIRAO†, Hiromitsu ITAMOTO††, Nobuo OHATA††, Masamichi NOGAMI†

† Information Technology R&D Center, Mitsubishi Electric Corporation, Kamakura 247-8501, Japan †† High Frequency & Optical Device Works, Mitsubishi Electric Corporation, 4-1 Mizuhara, Itami, Hyogo 664-8641, Japan

1. はじめに

動画配信サービス,クラウドサービスの普及を背景に,

通信容量の増大は直近の課題となっている.現在,多値化

による帯域拡大が検討されているが[1, 2],ノイズ耐性に劣

り、エラー訂正(FEC)の適用が必須である。一方、NRZ

方式はノイズ耐性に優れるため,FEC 無しでの伝送が可能

と考えられ,特に低遅延の要求が強い金融・巨大データセ

ンタといった用途に有望である.本報告では,バタフライ

パッケージに実装した 1.3um 帯高速 EML/PD を用いた

53.2Gb/s NRZの伝送評価を実施,実現性の検討を行った.

2. 評価内容

送信器はバタフライ型 EML モジュール,受信側には

pin-PD モジュールを用いた.送受信器の形状は何れも

XLMD-MSA準拠で,3dB帯域はそれぞれ 36GHzと 30GHz,

動作波長は 1,310nmである.伝送試験に用いたファイバは,

IEEE 400GbEで用いられる 8波 LAN-WDMグリッド[3] を

想定し,ファイバは負分散を 2種類(-80ps/nm,-47ps/nm),

正分散を 1種類(+15ps/nm)の合計 3種類を用意した.

3. 特性評価

図 1に 53.2Gb/s NRZにおける B-to-Bの BER特性を示す.

多値変調方式で報告されているエラーフロアは観測されず

[4]、エラーフリー動作(BER<10-12)が得られた.図 2には伝

送前後の光波形を示す.伝送前で消光比 7.9dB,ジッタの

少ない良好な波形が得られた.(d)-80ps/nmでは大きな負分

散により波形歪みが生じているが,伝送特性に悪影響を及

ぼす領域ではない.図 3 に分散ペナルティの分散値依存性

を示す.400GbE を想定した波長グリッドにおいて実験的

に 15km 伝送(分散ペナルティ<1.0dB)が可能な事を示した.

また,実線で示す理論検討とのよい一致を確認した.

4. まとめ

53.2Gb/s NRZ 変調の実現性検証を報告した.BER 評価

によりエラーフリー動作が可能なことを示すとともに,

400GbEで用いられる 8波 LAN-WDMグリッドを想定した

場合,分散の影響は 15.0km 伝送時でも 1.0dB 以下と低く,

長距離伝送が可能である事を確認した.

参考文献 [1] S. Kanazawa, et al. OFC, W4J.1, 2016

[2] Y. Kai, et al., OFC, Th4A.1, 2015

[3] http://www.ieee802.org/3/bs/

[4] http://www.ieee802.org/3/bs/public/15_05/stassar_3bs_01_0515.pdf

図 1 BER評価結果

図 2 伝送前後の 53.2Gb/s NRZ光波形

図 3 400GbE波長グリッドにおける伝送距離-分散ペナルティ特性のシミュレーション結果及び実験結果

平成28年度 OPE4月研究会

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Fig. 3. Spectra of the transmitted light from Input from Drop Ports when TE

mode light is incident on Input Port in case of (a) refractive index of core

layer of microring resonator is changed by 0.07nmax, where nmax =0.0031,

(b) refractive index of core layer of microring resonator is changed by

0.98nmax.

TM mode TE mode

Operation

wavelength

30dBTM modeTE mode

Operation

wavelength

(a) (b)

マイクロリング共振器型小型 TE/TM偏波スイッチの提案 Proposal of Compact TE/TM Polarization Switch Based on Microring Resonator

鈴木 啓大*1,平山 智輝*1,荒川 太郎*2

Keita Suzuki, Tomoki Hirayama, and Taro Arakawa

横浜国立大学 大学院 *1工学府 *2工学研究院 *1,2Graduate School of Engineering, Yokohama National University

【はじめに】 近年注目されている通信方式である偏波多重通信の実現にはモ

ードコンバーターの存在が必要不可欠である.まず材料としてシリコ

ンを用いたものは,小型化が可能であり安価で大量生産可能である

というメリットを持ち,モードスプリッターとモードコンバーターを複合し

たもの [1]や,階段状の断面構造を用いたもの[2]などが提案されて

いる.一方,化合物半導体を用いたモードコンバーターは,レーザー

などの化合物系を用いたデバイスとモノリシック集積が可能というメリ

ットがあり,導波路断面を非対称にするために溝を有する構造[3]や,

ハーフリッジ構造と呼ばれる導波路片側のみをコア層の中間までけ

ずるような断面構造を用いたもの[4]が提案されている.近年アクティ

ブな偏波制御素子も提案され始めているが,それらにはサイズと消

費電力の面で課題がある[5].本研究ではマイクロリング共振器型

TE/TM 偏波スイッチの設計を,伝搬行列法を用いて行った.その際

に,モードの制御に必要な電圧,ならびに変換後の変換効率につい

て述べる

【動作原理・解析結果】

マイクロリング共振器型 TE/TM 偏波スイッチの設計を行うにあたっ

て,計算方法の確立をまず初めに行った.偏波状態が変化する光学

素子の計算に有効なジョーンズ法[6]と,マイクロリング波長選択スイ

ッチの設計などの際に用いる伝搬行列[7]を組み合わせることで偏波

状態の変化を含む伝達関数を導出した.Fig.1 にデバイスの模式図

を示す.

本研究における設計デバイスでは方向性結合部での偏波無依存

化を図った.そのために採用したのが方向性結合部の一部にテー

パー構造を取り入れる方法である.このような形状の方向性結合部を

用いることで,設計デバイスにおいては結合効率 0.2 において偏波

無依存化されていると想定して特性計算を行った.

今回用いた導波路構造とその構造におけるある領域での屈折率

変化特性の理論計算値を Fig.2(b)に示す.なおこの導波路構造はコ

ア層に FACQW を利用したものであり[8],Fig.2(a)で示したのはモー

ドコンバーター部の断面である.Fig.2(b)からある一部の領域におい

て,TE モードの屈折率のみが大きく変化し,TM モードの屈折率は

ほぼ変化しない領域があることがわかる.この領域の屈折率変化を

利用することで伝搬に伴う2つのモード間の位相差は増加し,結果と

して変換部長が変化するので出力されるモードを制御できる.

Fig.2(b)の領域において,動作電圧-1.0V で屈折率変化n =

0.00311であった. リング半径127 m,結合効率0.2のリング共振器

のリング部にモードコンバーターを配置した際の出力特性を Fig.3(a)

に示す.TMモードの出力がメインであり,TE/TM比は約 35 dBであ

った.なお各種損失は 0,また方向性結合部長さは 0 として計算した.

ここから導波路への電圧印加による電界誘起屈折率変化を用いて,

出力されるモードの制御を検討した. Fig.3(b)は屈折率変化後の出

力のスペクトルを示したものである.屈折率変化後は最大変化量の

0.98 倍変化を与えることで,TE モードがメインとなり,TE/TM 比は約

32 dBであった.

参考文献 [1] J. Wang et al., Opt. Express, 22, 13565 (2014).

[2] A. Xie et al., Opt. Express, 23, 3960 (2015).

[3] S. H. Kim et al., Opt. Express, 17, 11267 (2009).

[4] M. Zaitsu et al., Opt. Express, 21, 6910 (2013).

[5] Y. Kawabata et al., European Conf. Opt. Com (ECOC) 2014, Tu.4.4.4,

(2014).

[6] J. E. Heebner et al., Opt. Lett., 24, 847 (1999).

[7] H. Kaneshige et al., Opt. Express, 21, 16888 (2013). [8] T. Arakawa et al., Jpn. J. Appl. Phys., 51, 042203 (2012).

Fig.1. Schematic top view of proposed TE/TM polarization switch.

Fig. 2. (a) Schematic cross section of half-ridge waveguide in microring resonator.

(b) Calculated change in refractive index in five-layer asymmetric coupled

quantum well (FACQW) for TE and TM modes.

(b)(a)

平成28年度 OPE4月研究会

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KTN 平面光偏向器による 700kHz 光偏向動作実証 Demonstration of 700-kHz beam scanning of electro-optic KTN planar optical deflector 辰己詔子 佐々木雄三 豊田誠治 今井欽之 小林潤也 阪本匡

Shoko Tatsumi Yuzo Sasaki Seiji Toyoda Tadayuki Imai Junya Kobayashi Tadashi Sakamoto

日本電信電話株式会社 NTTデバイスイノベーションセンタ NTT Device Innovation Center, NTT Corporation

1. まえがき 光偏向器はディスプレイや医療機器など様々な装置に

用いられている。医療現場で画像診断に用いられている

OCT(Optical Coherence Tomography : 光干渉断層計)にお

いて、光偏向器の偏向速度は画像取得時間に関わる重要

な性能であり、光偏向器の更なる高速化が求められてい

る。KTN(KTa1-xNbxO3)結晶を用いた電気光学(EO)光

偏向器は他の機械的な光偏向器に比べ高速動作が可能で

あり、近年 KTN 結晶内への電子注入及びそれに伴う屈折

率分布を利用した光偏向器により誘電率調整を行うこと

で 350kHz の高速動作が実現されている[1]。しかし更なる

高速動作時には、消費電力増大に伴う発熱により KTN の

温度が上昇し、比誘電率が低下し偏向角が減少してしま

うという問題を抱えていた[2]。本稿では、従来のバルク

型と比較し発熱量の削減を可能とする新構造 KTN 平面光

偏向器において、発熱量の削減及び 700kHz での光偏向動

作を実証したのでその内容について報告する。

2 .KTN 平面光偏向器による高速化 KTN 高速動作時の温度上昇抑制のためには KTN の発

熱量削減が重要な要素となる。偏向角を確保したまま発

熱量を削減するため我々はキャパシタンスの削減に着目

した。 KTN のキャパシタンスは以下の式で表される。

(1)

は KTN の誘電率、 は結晶長、 は結晶厚、 は電極間距

離である。このうち結晶厚 は偏向角とトレードオフの関

係にないため、我々は従来構造から結晶厚を削減した平

面光偏向器を考案した(Fig. 1.(a))。本構造では電極を

同一面に配し、光は従来構造(Fig. 1.(b))と異なり電極

面と平行に偏向する。本構造を用いることにより、光偏

向器の基本特性を損なわずに KTN 光偏向器高速化を実現

しうる発熱量削減が可能となる。

3. 平面光偏向器の設計及び光偏向動作評価 本構造におけるキャパシタンス削減確認のため電界シ

ミュレーションにより電極間距離 1 mm、結晶長 4 mm、

誘電率 17,500 の平面光偏向器のキャパシタンスを算出し

た。この結果、結晶厚削減に伴いキャパシタンスが減少

し、結晶厚 100µm において 700kHz 以上の応答が期待で

きる 59.3pF となることが確認できた。また、電極間にお

ける電界強度分布を計算したところ電極面から裏面にか

けて電界強度がほぼ等しく、均一な光偏向が可能である

ことがわかった。本結果をもとに本構造の有効性確認の

ため 100µm 結晶厚の平面光偏向器を作製した。キャパシ

タンスはシミュレーションとほぼ一致し、59.6pF であっ

た。200kHz、AC 電圧 600Vpp を印加した際の電流と電

圧の波形から算出した消費電力は 35.2mW であり、キャ

パシタンスに対応した消費電力を確認し、700kHz 以上の

応答が期待できることが分かった。本偏向器により 100-700kHz において AC 電圧 700Vpp、DC 電圧 200V を印加

し偏向角測定を行った。Fig. 2.に結果を示す。破線はキャ

パシタンスから予測される偏向角であり、一部不連続な

偏向角減少がみられるものの概ね予測される値に沿った

偏向角を得ることができ、700kHz での光偏向動作を実現

することができた。

4.まとめ KTN 平面光偏向器により 200kHz において 35.2mW ま

で発熱量を削減し 700kHz まで光偏向動作を実証すること

ができた。今後周波数特性の詳細及びより高周波領域で

の特性解明を行い、更なる高速化に向けた検討を行う。

5.参考文献 [1] T. Sakamoto et al, Electron. Lett, 50, 1965 (2014) [2] S. Toyoda et al, Appl. Phys. Express 6, 122601 (2013)

Fig. 1. Structure of (a) planar optical deflector and (b) bulk type deflector. Fig. 2. Measured full scanning angle of planar optical deflector.

100 200 300 400 500 600 7000

5

10

15

20

25

30

Full

scan

ning

angl

e [m

rad]

Frequency [kHz]

平成28年度 OPE4月研究会

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Mosquito法によるポリマー光導波路作製工程でのコア配列精度検討 Accurate Core Alignment Technique for Fabricating Polymer Optical Waveguides

伊達 玖実*1 石榑 崇明*2

Kumi Date Takaaki Ishigure

*1 慶應義塾大学大学院 理工学研究科 *2 慶應義塾大学 理工学部 物理情報工学科

Graduate School of Science and Technology, Keio University #1 Faculty of Science and Technology, Keio University #2

1. 緒論

HPC(High-Performance Computer)の性能向上に伴い,光イ

ンターコネクト技術が注目され,今後は短距離配線領域で

の光配線化が見込まれている.特にオンボード光伝送路と

してポリマー光導波路の使用が期待される.

当研究室ではポリマー光導波路の簡便な作製法として

Mosquito 法を提案し,2 次元だけでなく 3 次元の配線パタ

ーン[1]を有する導波路作製が容易に可能であることを示し

てきた.その過程で,同一面内に形成した並列コア間距離

(ピッチ)の精度に関する検討は十分に進められてきた[2].

3 次元導波路作製のためには,水平方向ピッチの検討に加

え,鉛直方向のコア位置精度,すなわち基板面-コア間距

離(コア高さ)の配列方法の検討が必要である.本稿では,

Mosquito 法にて作製するコア高さを決定する要因を検討し,

コア高さの高精度配列を行った結果を報告する.

2. Mosquito法による導波路作製手順

Mosquito 法では,基板上に製膜した液状のクラッドモノ

マー中にニードル先端を挿入し,同じく液状のコアモノマ

ーを吐出させながらニードルを走査させることにより,導

波路パターンを形成する.コア吐出後,紫外線露光で導波

路を硬化させる.この工程でコア高さに影響を与える要因

パラメータとして「時間」,「ニードル高さ」を検討する

こととした.実験には,コア・クラッド材料に協立化学産

業(株)製のアクリル樹脂 X-CA02(粘度 650 cPs),X-CL01(粘

度 5000 cPs)をそれぞれ使用した.

3. 結果・検討

吐出後のコアを側面から動画撮影し,時間経過によるコ

アの沈み込みを検討した.始めのコアを吐出してから全コ

アを吐出するのに要する約 2 分間でのコア高さの変動を追

跡したところ,変化は確認されず,本実験の材料組み合わ

せではコア高さに経時変化が生じないことが確認された.

次に,隣接コア吐出時のニードル走査に伴うクラッドモ

ノマー流動がコア高さに与える影響を検討した. 500 m

厚のクラッド膜中に,250 m ピッチ 12 チャネルの並列コ

アを,基板面から 100, 250, 400 mの 3種類の高さで形成し

た.作製したコア高さ 250 mの導波路断面写真を Fig. 1(a)

に,計測したコア高さを Fig. 1(b) に示す.並列コア間の高

さずれは 2 m以内に収まっていることから,250 mピッ

チでの隣接コア吐出時の他コアへの流動影響は小さいと言

える.しかしながら,ニードル高さとコア高さ計測値には

ずれが生じている.これは,吐出時のコア形成位置とニー

ドル先端に生じるギャップ,及び露光による体積収縮の 2

つに高さ依存性が存在するためであると考えられる.

ニードル高さとコア形成位置の関係を検討するために,

異なるニードル高さを設定した並列コア導波路を作製した.

具体的には,500 m厚のクラッド膜内部に,ニードル高さ

を 50 mずつ増加させた並列コアを有する導波路 Aを作製

した.得られた導波路 Aの断面写真から計測したコア高さ

とニードル高さとの関係を Fig. 2(a)に示す.コア高さ-ニ

ードル高さの差はニードル高さごとに変化していることが

読み取れる.Fig. 2(a)に見られる関係を線形近似し,作製

するコア高さが 50 mずつ増加する様,ニードル走査プロ

グラムを補正し,新たに導波路を作製した(導波路 B).導

波路 A及び Bのコア高さ-ニードル高さ間の差を Fig. 2(b)

に示す.導波路 Aでのコア高さの設計値とのずれは最大 60

m 程度あったのに対し,導波路 B では 10 m まで改善さ

れた.この様に,ニードル走査プログラムの補正を行うこ

とで,コア高さの設定値とのずれの低減に成功した.同様

の検討をクラッド厚 1 mm,300 m でも行い,コア高さの

設定値とのずれの低減に成功した.

Fig. 1(a)ニードル高さ 250 mでの導波路断面写真

(b)各ニードル高さで作製した導波路の平均コア高さ

Fig. 2(a)ニードル高さとコア高さの関係

(b)コア高さの設計値との高さずれ

4. 結論

本実験に用いたアクリル材料では,重力による沈降,及

び隣接コア吐出時のクラッドモノマー流動がコア高さに与

える影響は小さいことが確認された.ニードル高さに対す

るコア高さの関係を検討することで,所望の高さにコアを

作製することが可能となった.

参考文献

[1]D. Suganuma and T. Ishigure, Proc. of SPIE9366,

2078586(2015).

[2]R. Kinoshita et al., Optics Express, 22(7), 8426,(2014).

-80

-60

-40

-20

0

20

1 2 3 4 5 6 7 8 9Dif

fere

nce

bet

wee

n n

eed

le

hei

gh

t an

d c

ore

hei

gh

t[

m]

Channel

(b)

0

100

200

300

400

500

0 100 200 300 400 500 600

Core

hei

gh

t[

m]

Needle height[m]

(a)

● Waveguide A

▲ Waveguide B

250 m

0

50

100

150

200

250

300

350

400

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

Co

re h

eigh

t[

m]

Channel

88.2±1.9 m

208.5±1.6 m

367.5±1.8 m

(b)(a)

平成28年度 OPE4月研究会

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静磁表面波の振幅および位相解析 -モデル形状の変化に対する特性-

Analysis of the Amplitude and Phase of Magnetostatic Surface Waves

- Characteristics by changing the model shape -

田中 和幸 大貫 進一郎 Kazuyuki Tanaka, Shinichiro Ohnuki

日本大学 理工学部 College of Science and Technology, Nihon University

1.はじめに

近年,スピン波を用いた,ジュール熱による散逸のない省エ

ネルギースピンデバイスが注目を集めている.本報告では,コプ

レーナ導波路を波源として,磁性膜中を伝搬するスピン波の静

磁波モード[1]の1つである静磁表面波(MSSW: Magnetostatic Surface Wave)の解析を行う.そして,磁性膜の厚さに対する振

幅および位相特性を MSSW のグリーン関数[2]を用いて検討す

る. 2.解析手法 図1に MSSW の解析モデルを示す.外部磁界 HB により+x方向に磁化したパーマロイ膜に,コプレーナ導波路を用いて

8GHz の正弦波信号を印加する.(a)および(b)はそれぞれ解析

モデルを+z から見た上面図と,+x 方向から見た側面図を示して

いる.このとき,x 軸に沿ったコプレーナ導波路を境にして,±y方向に伝搬する MSSW を y 軸方向に 1 次元解析をする.本報

告では,式(1)で計算される MSSW のスカラーポテンシャル ψを

用いて解析する.

')'()'()'()( dyyhyhiyyGy ezey (1)

但し,コプレーナ導波路がパーマロイ膜の表面につくる磁界 he

は次式により算出する.

dyyy

yy')'(

41)( e

ejh (2)

ここで,je はコプレーナ導波路を流れる電流,G は MSSWのグリーン関数,κ,χ は磁界に対する磁化の応答を決める

係数,hey,hezはそれぞれコプレーナ導波路がパーマロイ膜

の表面につくる磁界の yおよび z方向成分である. 3.解析結果 本報告では,モデル形状としてパーマロイ膜の厚さを 10 nm から 100 nm まで変化させる.例として厚さ 100 nmにおける MSSW の振幅および位相特性を図2に示す.こ

れらのグラフから,MSSW の波長および 1μm あたりの減

衰量を算出することができる.振幅および位相特性よりパ

ーマロイ膜の厚さに対する特性をまとめたグラフを図3に

示す.図3(a)および(b)より,厚さが薄いほど,MSSW の

減衰量が大きく,厚さと MSSW の波長が比例関係にある

ことが確認できる. 4.まとめ 静磁表面波のモデル形状に対する振幅および位相特性を

解析し,磁性膜の厚さを変化させることによって,特性を

制御できる可能性を示した.

参考文献 [1] R.W.Damon and J. R. Eshbach, J. Phys. Chem. Solids 19, 308 (1961) [2] S. Tamaru, J. A. Bain, M. H. Kryder, and D. S. Ricketts Phys. Rev. B 84, 064437 (2011) [3]田中和幸,大貫進一郎,“静磁表面波の磁性膜の厚さに

対する特性解析”,2016 年電子情報通信学会総合大会,C-1, 2016

HB パーマロイ膜

コプレーナ導波路

8GHz 正弦波

信号 y

z x

z

x y

(a)上面図 (b)側面図 観測位置

図1.パーマロイ膜における MSSW の解析モデル

-50 0 50 -50 0 50-3.14

0

3.14

0 100 -100 0 100 -100 y [μm] y [μm]

0

-3 -π

π

0

(a)振幅特性 (b) 位相特性

図2.パーマロイ膜の厚さ 100 nm における特性

ln(振

幅)

位相

図3.パーマロイ膜の厚さに対する特性

0 25 50 75 100 125

1μm

に対

する

減衰

波長

[μm

]

0.6

0.4

0.2

0

10

8

6

4

2 0

0 25 50 75 100 125 0 25 50 75 100 1250

2

4

6

8

10

0 25 50 75 100 125

(a) 1μm に対する減衰量 (b)波長

厚さ [nm] 厚さ [nm]

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偏光サニャック干渉計とダブプリズムを用いた光渦モード分離 Mode separation of optical vortex using polarization Sagnac interferometer with Dove prism

中嶋 慶 小林 弘和 岩下 克

Kei Nakashima Hirokazu Kobayashi Katsushi Iwashita

高知工科大学大学院 工学研究科 基盤工学専攻

Graduate School of Engineering, Kochi University of Technology

1 まえがき

光通信の大容量のための多重化の手法として、光渦と呼

ばれるらせん状の波面を持つ光波を用いて、同一波長で通

信多重化を実現する空間モード分割多重が研究されている

[1]。この光波は図 1 のように光波の伝搬方向に垂直な断

面内で位相差を持ち、強度分布がドーナツ型である。特に

位相差が 2πℓとなるとき、この光波をモードℓの光渦と呼

ぶ。光渦は通信以外にも超解像顕微鏡、微粒子の回転操

作、レーザー加工、といった応用先がある[2]。

(a) (b)

図 1 ℓ=1の光渦断面における、(a)強度分布、(b)位相分布

この空間モード多重を実現させるためには、複数のモー

ドの光渦を合波したあと、モード毎に分離させる必要があ

る。本研究では基本ガウシアンモード(ℓ=0)と光渦(ℓ=1)を合

波し、偏光サニャック干渉計(PSI)を利用して二つのモード

を分離する手法を提案する。

2 分離原理

図 2 に実験構成とダブプリズム(DP)を示す。DP は台形

のプリズムであり、同強度の水平偏光(H)と垂直偏光(V)を

45 度回転させたダブプリズムに対向するように入射する

と、透過光の位相分布は相対的に 180 度回転する。基本ガ

ウシアンモード(ℓ=0)やモードℓが偶数の光渦の場合は 180

度回転で、発生する位相差は 0 であるが、ℓが奇数の光渦の

場合は位相差πが発生する。したがって DP の透過光であ

る H と V を干渉させることにより、ℓが偶数の時は 45 度、

ℓが奇数の時は 135 度偏光が発生する。その発生した光波を

角度 22.5°の 1/2 波長板(HWP)と偏光ビームスプリッタ

(PBS)に通すことにより、45°の直線偏光(ℓ=0)は垂直偏光

となり PBSで反射し、135°の直線偏光(ℓ=1)は水平偏光と

なり PBSで透過するので分離が実現できる。

3.1 実験内容

実験構成を図 2 に示したとおり、軸対称偏光素子と呼ば

れる素子で生成したℓ=1の光渦をℓ=0 のモードと合波して

45°の直線偏光で PSI に入射した。DP の角度α=45°とし、

今回は偏光分離部での HWP の角度(0-90°)を変化させな

がら、偏光分離部の PBS2 の透過方向、反射方向の光強度

を測定して、基本ガウシアンモード(ℓ=0)と光渦のモード(ℓ

=1)間での分離度を求め、ビーム断面の様子を観測した。

3.2 実験結果

偏光分離部の HWP2 の角度と反射におけるℓ=0、ℓ=1 の

光強度のグラフを図 3 に示す。理論どおり、HWP が 22.5°

付近でℓ=0 とℓ=1 の分離度は最も高く 10.7dB となった。

図 2 ダブプリズムによるビーム断面の位相分布反転と全

体実験構成(BS:ビームスプリッタ、QWP:1/4 波長板)

図 3 偏光分離部における HWPの角度θと PBS2での反射

の光強度の分離度の関係

4 まとめ

ℓ=0 とℓ=1 の間での分離度は 10.7dB を得た。さらに分離

度を大きくするには、光渦の生成と偏光サニャック干渉計

での直線偏光の生成の精度の向上が考えられる。今後はダ

ブプリズムを回転させることによる光渦成分解析やより多

くの光渦の分離を行いたいと考えている。

参考文献

[1] 淡路祥成. "ラゲールガウスモード分割多重信号伝送

光学,vlo.42 ,616-623 (2013)

[2] 尾松孝茂. "トポロジカル光波とその広がる可能性 光

学,42, 586-596 (2013)

0

0.5

1

0 30 60 90

ℓ=1 反射

ℓ=0 反射

HWPの角度(°)

規格化光強度

22.5°

10.7dB

平成28年度 OPE4月研究会

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1.26 µmから1.70 µm帯で動作する導波路型偏波分割器の設計 Design of a waveguide-type polarization splitter operating in a wavelength range of 1.26 µm to 1.70 µm

日野 浩詳Hiroyoshi HINO

山内 潤治Junji YAMAUCHI

中野 久松Hisamatsu NAKANO

法政大学理工学部Faculty of Engineering, Hosei University

1 まえがき導波路カプラ型の偏波分割器として, 直線テーパ構造を利用

したデバイスが提案されている [1]. 筆者らは, この構造に曲線テーパを導入し, テーパ形状を最適化することによって, 偏波分割特性の改善されることを明らかにしてきた [2]. 本稿では, 導波路間隔の変化が偏波分割特性に及ぼす影響を評価する[3]. 適切な導波路間隔を選ぶことで, 従来構造より広い通信波長帯域に渡り動作することを見出す.

2 本論解析する構造を図 1 に示す. 本構造は, 傾斜導波路#H と,

テーパ部を有する導波路#Vを SiO2 基板上に積層した偏波分割器である. 文献 [2] では, 入力端における導波路間隔 si を0.25 µmに固定している. 本稿では si を可変とする. その他の構造値は文献 [2]と同一とする. 解析には, 電界と磁界に基づくフルベクトル BPM[4]を使用し, 参照屈折率 n0 を伝搬ステップごとに更新する.

はじめに, 導波路間隔 si を変化させた場合における偏波分割特性を評価する. 図 2に, 波長 1.30 µmと 1.55 µmの TM

波を入射した際の, si に対する出力端で得られる導波モードパワーとクロストークの特性を示す. 図より, 従来構造よりも高い導波モードパワーの得られる構造が存在することを見出せる. 例えば si = 0.20 µmを選ぶと, 波長 1.30 µm, 1.55 µmともに 99 %の高い導波モードパワーを得る. このとき, 両波長で-25 dB以下のクロストークを達成する.

次に波長特性をより詳細に評価する. 図 3に, si = 0.20 µm

の構造における導波路間クロストークの波長特性を示す. 比較のために, 文献 [2]の構造における結果も併記している. 図より, 再設計した構造は, 従来構造よりも広い通信波長帯域 (1.26

µm から 1.70 µm)にわたり, -20 dB以下のクロストークを維持することが見出せる. 図示しないが, TE波を入射した場合,

導波路#Vへの結合は無視できるほど小さく, 同波長帯域でクロストークは-20 dB以下を達成する.

3 まとめ曲線テーパ導波路を用いた偏波分割器を BPM により解析

し, 導波路間隔 si の再設計を行った. 導波路間隔を, si = 0.20

µmに選ぶことによって, TE, TM波ともに従来構造よりも広い通信波長帯域 (1.26 µmから 1.70 µm)にわたり, -20 dB以下の導波路間クロストークを達成できることを明らかにした.

参考文献

[1] M. R. Watts et al., Opt. Lett., 30(9), pp. 967-969, 2005.

[2] 藤村他, 信学技報, OPE2015-92, pp. 5-10, 2015.

[3] 藤村他, 信学総大, C-15-15, 2016.

[4] Y. Nito et al., PTL, 23(7), pp. 429-431, 2011.

図 1 構造 (a) 鳥瞰図 (b) 上面図

0.10 0.15 0.20 0.25-50-40-30-20-1000.940.950.960.970.980.991.00 Crosstalk (dB

)si (µm)(b)

(a) λ = 1.30 µm λ = 1.55 µm Guided-mode

power

(a)導波モードパワー  (b)クロストーク図 2 si に対する特性 (TM波)

1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7-50-40-30-20-100 si = 0.20 µm si = 0.25 µm [2] Crosstalk (dB)

Wavelength, λ (µm)図 3 クロストークの波長特性 (TM波)

平成28年度 OPE4月研究会

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複数ビームを用いた波長モニタの高安定化検討 A Highly Stable Multi-beam Wavelength Monitor

望月敬太 野上正道 有賀博 Keita Mochizuki Masamichi Nogami Hiroshi Aruga

三菱電機株式会社 情報技術総合研究所 Information Technology R&D Center, Mitsubishi Electric Corp.

1. はじめに DWDM(Dense Wavelength Division Multiplex)システムにお

いて、周波数利用効率を高めるために波長を密に配置する検討

がなされており、光源である波長チューナブル光モジュールの波

長安定性の向上が求められている。チューナブル光モジュールは、

出射波長を安定化するための波長モニタ機能を内蔵し、通常、

TLD(Tunable Laser Diode)出射光をエタロンなどの透過率が波

長に依存する光フィルタを透過することで波長変動を検知する。 今回我々は、エタロンに入射する光線を複数化すること[1, 2]で、

波長モニタ特性のエタロン角度依存性を緩和し、長期的な経時変

動に対する安定性を高めた構造を検討したので報告する。 2. 複数光線を用いた波長モニタ特性の測定 図 1 に試作する波長モニタの構造を示す。従来構造(a)では LD出射光単体がエタロンに入射するのに対し、試作構造(b)では LD出射光は MMI を通って 2 個に分岐され、複数の光が同時に入射

する。これら 2 つの入射光の条件を最適に設定することで、入射

角度変化による透過光パワーの変動を抑えることができる。以下

ではその条件を示す。式(1)はエタロン透過光パワーである。

2,122

2

cossin141~,N N

N

kndRR

EfI

(1)

ここで EN は入射光振幅、R はエタロン表面の反射率、k は真空中

の波数、n は屈折率、d はエタロン長、 がエタロン角度、 N が光

線伝搬角度である。dI/d ~ 0 となる条件が求める最適条件であ

る。E12:E2

2=2:1、R=0.2、n~1.5、d~2 mm、2 つの入射光線のな

す角が 2 の時の計算例を図 2 に示す。エタロン角度が 0.2 ~ 0.45 、入射光周波数が 190659 GHz の条件で、エタロン透過光

パワーの変動が抑えられる。図 3 に、この条件と、比較のために

従来構造における波長モニタ特性の計算結果を示す。検討構造

を採用することで、エタロン角度による波長モニタ特性ばらつきを、

5.39 GHz から 0.01 GHz に抑えられる。計算結果を検証するため

に波長モニタを試作した。図 4 に、各波長モニタ構造における、エ

タロン角度を 0~0.18に変化させたときの波長モニタ特性を示す。

単一光線の従来構造では、最大 6.52 GHz の周波数ずれが生じ

るのに対し、複数光線を用いる試作構造では 1.34 GHz と、ずれ

量を約 1/5 に低減できた。低減効果が理論値よりも低減したのは、

測定誤差や雑音の影響により、いずれも計算値から約 1 GHz ば

らつきが増大したためである。なお、図 2 では上記以外にも dI/d ~ 0 となる条件が存在するが、こちらは透過率の傾きが大きく変動

して波長安定化制御が不安定となり、本稿の目的には適さない。 3. まとめ 波長モニタのエタロン角度トレランスを拡大するため、複数光線

を用いた波長モニタ構造を提案し、計算および試作・評価の結果、

その効果を示した。単一光線をエタロンに入射する従来構造と比

較して、エタロン角度ずれによる波長モニタ特性の変化量を約 1/5に低減できる。波長モニタ特性のエタロン角度トレランスが緩和す

るため、経年変化による特性劣化の低減が期待できる。

謝辞 本研究の一部は独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)の委託研

究「光周波数・位相制御光中継伝送技術の研究開発」のもとで実施し

た。 参考文献 [1] 望月ほか, 信学会ソサイエティ大会, C4-15, 2013. [2] K. Mochizuki, et al., OECC2015, C5-7, 2015.

PD エタロン レンズ

LD/ファイバ

PDエタロン レンズ

LD / ファイバ

MMI LD

(a) (b) 図 1 波長モニタ構造 (a) 従来, (b) 試作

エタロン角度 (度)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5-0.1-0.2-0.3-0.4-0.5-300

-200

0

200

300 入射光周波数190651 GHz190653 GHz190655 GHz190657 GHz190659 GHz190661 GHz190663 GHz190665 GHz ス

ロー

プ(d

egre

e-1) Target

25/degree

-25/degree-100

100

図 2 入射角度ずれが生じた時のエタロン透過特性(計算結果)

光周波数 (GHz) 190660

00

0.2

0.6

0.8

1.2

PD

受光

電流

(a.u

.)

エタロン角度0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14 0.16

+20-200 +20-20

0.4

1.05.39GHz 0.01GHz

図 3 エタロン角度による波長モニタ特性の変化(計算結果)

(左) 従来構造、(右) 検討構造

1885000

0.2

0.4

0.5

0.7 エタロン角度0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14 0.16 0.18 +20-200 +20-20

0.3

0.66.52GHz 1.34GHz

光周波数 (GHz)

PD

受光

電流

(a.u

.)

図 4 エタロン角度による波長モニタ特性の変化(測定結果) (左) 従来構造、(右) 試作構造

平成28年度 OPE4月研究会

22

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光通信用 DFBレーザの注入電流制御による波長切替高速化 Reduction of Wavelength Switching time of Telecom Lasers by Injection Current Control

山口健太 立本雄大 木村凌河 久保木猛 加藤和利

Kenta Yamaguchi Yudai Tatsumoto, Ryoga Kimura, Takeshi Kuboki, Kazutoshi Kato

九州大学 大学院システム情報科学研究院

Graduate School of Information Science and Electrical Engineering, Kyushu University

1. まえがき 波長多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing) 光通信

用光源として TLA (Tunable DFB Laser Array) が一般に使われるようになっている。TLA は少しずつ異なる発振波長域を持つ複数の DFB (Distributed Feedback) レーザをアレイ状に並べこれらの出力導波路を結合し SOA (Semiconductor

Optical Amplifier) で光強度を増幅して所望の波長の光を出射するものである[1]。TLA の波長調整は、どの DFB レーザを発振させるか(粗調整)とどの温度に保つか(微調整)を組み合わせて行っている。そのため波長切替時間は温度安定化に必要な秒オーダーとなっている。今回我々は、SOA が利得飽和状態で動作することを利用して出力をほぼ一定に保ちながら、DFB レーザの電流注入変化により波長切替を短時間に行うことを試みた。またその際、従来我々が高速波長可変レーザを数十ナノ秒オーダーで波長切替をするために開発した制御技術[2]を適用しその効果を調べたので報告する。

2 .制御系設計と実験結果 図 1 にフィードフォワード制御系のブロック図を示す。

まず入力電圧波形に対する DFB レーザの出力波長変化の測定値をもとに波長切替特性モデルとして関数 P(z)を得た。次に関数 P(z)をもとにフィードフォワードコントローラ関数 C(z)を設計した。最後に設計したフィードフォワードコントローラの出力 u(z)を任意波形発生器上に作成し、駆動回路(電圧電流変換回路)を通してレーザへの注入電流を増加することで、低光周波数(長波長)側へ 200 GHz 離れた波長への切替におけるフィードフォワード制御実験を行った。

図 2 に長波長側への波長切替測定結果を示す。目標の波長に対して、±1 GHz 以内に波長が収まるまでの時間を波長切替時間の目安とした。図 2(a)にフィードフォワード制御を適用しない場合の波長切替特性を示す。波長切替直後からジュール熱による温度上昇に伴い徐々に低光周波数側へ変化し、波長切替時間は約 6 ms となった。図 2(a)

のデータを基に設計したフィードフォワード制御を適用した場合の波長切替特性を図 2(b)に示す。フィードフォワード制御により図 2(a)に見られた切替直後の緩やかな温度変化を加速させた結果、波長切替時間は約 800 μs まで短縮された。また、今回測定した 10 msの範囲での波長の変動が小さいことから、この後フィードバック制御に切り替えることで長時間の波長安定化も可能である見込みを得た。

3.まとめ 高速波長可変レーザの高速波長切替で開発した制御技術を TLA に適用することにより TLA の波長切替時間が短縮されることを確認した。今後より高精度な制御を行うことで波長切替時間のさらなる短縮が見込まれる。

参考文献 [1] 石井他, NTT技術ジャーナル, 2007.11

[2]立本他, 2014 年電子情報通信学会ソサイエティ大会, C-4-22.

謝辞 本研究の一部は JSPS 科研費 26420308 の助成を受

けたものです。実験を遂行するにあたり NTT研究

所から多大な支援をいただきました。

図 1. フィードフォワード制御系のブロック図

(a)

(b)

図 2. 波長切替測定結果(長波長側切替)

(a) 制御なし (b)制御あり

平成28年度 OPE4月研究会

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半導体集積型光-THz信号直接変換素子

Semiconductor Integrated Optical-to-THz Signal Direct Conversion Device

山﨑理司 1、安井章雄 1、雨宮智宏 1, 2、古澤健太郎 3、原紳介 3、渡邊一世 3

関根徳彦 3、西山伸彦 1, 2、笠松章史 3、荒井滋久 1,2

Satoshi Yamasaki1, Akio Yasui1, Tomohiro Amemiya1, 2, Kentaro Furusawa3, Shinsuke Hara3, Issei Watanabe3, Norihiko Sekine3,

Nobuhiko Nishiyama1, 2, Akifumi Kasamatsu3, Shigehisa Arai1,2

東京工業大学 1工学院 電気電子系、 2未来産業技術研究所

情報通信研究機構 3未来 ICT研究所 1Department of Electrical and Electronic Engineering, 2 Laboratory for Future Interdisciplinary Research of Science and Technology

3Advanced ICT Research Institute, National Institute of Information and Communications Technology

1. はじめに 近年の通信トラフィックの増加に伴い、無線通信の分

野では未使用周波数帯域の利用が求められており、THz

帯を利用した無線通信システムが注目されている。この

ことから将来的に、現在有線通信において主流となって

いる光通信システムと THz 無線通信システムがシーム

レスに繋がる環境が必要になると考えられる。これまで

当研究室では、III-V 族半導体内の光励起キャリアを利用

した光-THz 信号直接変換の手法を提案してきた[1]。今

回、金属リングを利用したチップ型光-THz 信号直接変

換素子において、16.8dBの消光比が得られたのでご報告

する。

2. 結果 Fig. 1 に作製した素子の構造を示す。金、SiO2、

benzocyclobutene (BCB) から構成される THzマイクロス

トリップラインの中間に金属リングが配置された構造と

なっており、リングのギャップ部分には u-GaInAs が 200

nm 積まれたメサ構造となっている。このリングは広帯域

バンドストップフィルタとして機能し、リングの大きさを

変化させることによってその共振周波数を制御すること

ができる [2] 。今回は共振周波数が 300 GHz となるよう

に、リング長およびリング幅をそれぞれ L = 170 µm、W =

80 µmとした。そのため、300 GHz の THz波はリングの共

振によって透過しない。一方、メサ部分に通信波長帯の光

が照射されると、光子吸収によりキャリアが励起し、

GaInAs の導電率が変化するため、バンドストップ特性が弱

まり、THz波が透過するようになる。このようにして、光

信号が THz信号へと変換される。

実際に上記の素子を作製し、静特性の測定を行った。オ

ンウェーハプローブとベクトルネットワークアナライザ

を用いて Sパラメータ(220-330 GHz)の測定を行い、波長

掃引レーザと先端レンズ付ファイバを用いてメサ部分に

波長 1.52 µmの光を照射し、透過率|S21|の変化を観測した。

Fig. 2 に測定結果 (実線)、および電磁界シミュレータ HFSS

によるシミュレーション結果 (点線) を示す。赤い線が光

未照射時、黄色い線、青い線がそれぞれ入力光強度 3dBm、

15dBm の光を照射したときの|S21|となっている。287 GHz

において、光未照射時には|S21|が-27.1dB、15dBm照射時に

は-10.3dBとなり、最大 16. 8dB の消光比が得られた。

これより、光照射による THz波の強度変化を確認し、信

号変換できることを確認した。

謝辞 本研究は、JSPS 科研費(#25709026, #15H05763)の援助によ

り行われた。

参考文献 [1] M. Shirao et al., Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 48, No. 9, p. 090203,

2009.

[2] S. Ramya et al., IEEE International Conference

Communications and Signal Processing 2015, 978-1-4799-

8081-9/15.

Fig. 1. Device Structure.

Fig. 2. Measurement Results.

Extinction ratio

16.8 dB

平成28年度 OPE4月研究会

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無反射構造を付加したテラヘルツ帯 InSbパッチフィルタの 3次元解析3D analysis of InSb square patch filters with AR structures in the terahertz region

山崎 天弥Takaya Yamazaki

柴山 純Jun Shibayama

山内 潤治Junji Yamauchi

中野 久松Hisamatsu Nakano

法政大学 理工学部Faculty of Science and Engineering, Hosei University

1 まえがきTHz帯において,半導体 InSbによる局在表面プラズモン

共鳴 (LSPR)を利用した種々のデバイスが提案されている.文献 [1]では InSbの近傍に励起される LSPRを利用した InSbグレーティングフィルタが検討されている.しかし,基板のFR4を無損失として扱っており,また有限基板内で発生するファブリ・ペロー (FP)共振を考慮していなかった.他方,我々は,損失の大きい FR4 の代わりに損失の無視できる Si を基板とし,FP共振を低減させるためにモスアイ構造 [2]を付加することで透過特性を改善した [3].しかし,これまでの研究では 2次元構造のみを扱っており,3次元構造は未検討であった.本稿では,無反射 (AR)構造を付加した InSbパッチフィルタの 3次元 FDTD解析を行う.

2 本論図 1に構造を示す.xと y方向に周期境界条件を課し,無限

周期の 1周期のみ (Λ = 40 µm)をFDTD法で解析する.InSbの断面を正方形とし,一辺を w = 35 µm,厚さを ts = 5 µmとする.分散性媒質となる InSbの誘電率は Drudeモデルで表現し,Trapezoidal Recursive Convolution法 [4]で FDTD

法に組み込む.基板 (Si)の屈折率を nSi =√3.42に選び,基

板の厚さを hs = 500 µmに固定する.AR構造として,1層及び 2 層の無反射層 (ARC),またはモスアイ構造を付加する.1 層の ARC の屈性率は,理想値である nAC =

√nSi と

する.設計周波数を T = 295 K での共振周波数 1.1 THz とし,膜厚を h = λ/(4nAC) = 49.5 µm とする.2 層の ARC

の屈折率は nAC1 = n2/3Si ,nAC2 = n

1/3Si で決定できる.1層目

及び 2 層目の厚さをそれぞれ h1 = λ/(4nAC1) = 44.5 µm,h2 = λ/(4nAC2) = 64.5 µmとする.モスアイ構造は,高さがhm = 150 µmとなるように基板を加工する.入射には横方向に一様な振幅を持つ Ey 偏波のパルス波を用い,構造の上部から垂直に入射し下部で観測する.刻み幅を∆x = ∆y = ∆z =0.5 µmに設定する.図 2に AR構造付加時の透過特性を示す.比較のため,AR

構造を付加しない場合の結果も併記する.図より,AR構造を付加しない場合は全帯域にわたって FP 共振の発生することが確認できる.ARCを付加することで設計周波数付近の FP共振が抑制される.特に,2層付加した場合では,1層付加に比べ FP共振を抑制できる.しかしながら,設計周波数から離れるにつれて ARCの効果は小さくなる.他方,モスアイ構造を付加すると,2層 ARCに比べ,広帯域に渡って FP共振が大幅に低減される.広帯域に効果があるのは,特定の反射面を持たないためである.図 3にモスアイ構造の高さの変化に対する透過特性を示す.

図より,モスアイ構造を高くするにつれ,FP共振を抑制する効果が大きくなる.特に,hm = 200 µmとした場合では,共振周波数より低周波側でも効果がある.

3 まとめ3次元構造の InSbパッチフィルタを周期境界条件を用いた

FDTD 法により解析した.FP 共振を低減させるために AR構造を付加し,透過特性を評価した.モスアイ構造を付加することで,2層 ARCに比べ,広帯域に渡って FP共振の抑制できることを明示した.さらに,モスアイ構造を高くするにつれ,低周波側の FP 共振を抑制する効果が得られることを明示した.

参考文献[1] Q. Wang et al., Superlattice Microst., vol. 75, pp. 955-

961, 2014.

[2] D. G. Stavenga et al., Royal Society, vol. 273, pp. 661-667, 2006.

[3] 柴山, 梅澤, 山内, 中野, 信学技報, EST2015, 2016.[4] J. Shibayama et al., IEEE Photon. Technol. Lett., vol.

21, no. 2, pp. 100-102, 2009.

図 1 構造

0 . 3 0 . 6 0 . 9 1 . 2 1 . 5 1 . 8 2 . 10 . 00 . 20 . 40 . 60 . 81 . 0 s i n g l e - l a y e r

d o u b l e - l a y e r m o t h - e y e w i t h o u t A R

Transm

ittance

F r e q u e n c y ( T H z )図 2 AR構造付加時の透過特性

0 . 3 0 . 6 0 . 9 1 . 2 1 . 5 1 . 8 2 . 10 . 00 . 20 . 40 . 60 . 81 . 0 h m = 1 0 0 � m

= 1 5 0 � m = 2 0 0 � � m

Transm

ittance

F r e q u e n c y ( T H z )図 3 hm を変化させた際の透過特性

平成28年度 OPE4月研究会

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マッハ・ツェンダ干渉計を用いた光デバイスの相対波長分散測定 Mach-Zehnder Interferometric Measurement of Chromatic Dispersion at Photonics Devices

山中 友輔 藤村 勇起 加藤 和利

Yusuke Yamanaka Yuki Fujimura Kazutoshi Kato

九州大学 大学院システム情報科学研究院

Graduate School of Information Science and Electrical Engineering, Kyushu University

1.まえがき

我々はフォトミキサに二つの光波を入射し、これらの差

周波としてテラヘルツ領域(0.1-10THz)の電磁波を生成する

方法に着目し、アレイ状に並べたフォトミキサからのテラ

ヘルツ波を空間で合波して大出力化する研究に取り組んで

いる[1]。空間合波のために必要なアレイの各チャンネルの

位相調整を光信号の段階で実現する方法として、光回路内

での二光波それぞれの実効光路長調整による位相差調整を

実現している[2]。さらなる位相差調整技術の発展形として

波長分散を持たせた光デバイス内で二光波の位相差調整を

同時に行うことを考えている。

今回マッハ・ツェンダ干渉計(MZI)をベースにした光デ

バイスの二光波の位相差測定法を提案するとともに、半導

体光増幅器(SOA)内の相対波長分散を測定したので報告す

る。

2.実験構成

図 1 に示すように、差周波が 1THz の二つのレーザ光

f1(波長 1.550µm)と f2(波長 1.558µm)を光合波器(OC)で合

波した後、光ファイバ増幅器(EDFA)で増幅し、二つの OC

を対向させて構成した MZI に入射する。MZI の一方の光

路では光ファイバ伸縮器(PS)を、もう一方の光路には、

SOA と可変減衰器(VOA)を挿入している。MZI を通過し

た後、ファイバ・ブラッグ・グレーディング(FBG)と光

サーキュレータを用いて二光波を分離する。光波 f2 はフォ

トダイオード(PD)により干渉光強度を測定し、この干渉光

強度が一定になるよう PS をフィードバック制御する。こ

のフィードバック制御により、光波 f2にとっての MZI の実

効光路差を一定に保持する事ができる。この保持された状

態で SOA への注入電流値を変化させ光波 f1 の干渉光強度

を測定する。注入量変化による SOA 内での光波 f2 の実効

光路長変化およびファイバの伸縮がフィードバック制御に

よりキャンセルされ、その結果 SOA内での光波 f2の光波 f1

に対する相対波長分散変化が測定できると考えた。なお

SOA への注入電流変化により波長分散だけでなく光強度も

変化するため、VOA により光強度を一定に保ちその影響

を除去している。

3.実験結果

図 2 は SOA(InGaAsP 系、長さ 900µm)の注入電流に対

する光波 f2の干渉光強度である。今回は MZI 自体の光路長

差を変更した二つの場合について測定した。青の点と赤の

点はそれぞれの測定結果である。MZI では干渉する二光波

の位相差が変化すると、干渉光強度が正弦波的に変化する

ため、今回の結果は正弦波的変化の増加部分と減少部分が

測定されたと考えられる。この結果から、SOA による二光

波の位相差の変化が確認できた。

4.まとめ

MZI をベースにし、二光波のうちの一方の光波で MZI の

安定化をはかり、もう一方の光波の干渉光強度の変化を測

定することで、光デバイス内の相対波長分散の変化で生じ

た二光波の位相差の変化を測定する方法を提案、構築した。

光デバイスとして SOA を用いて本測定法の動作を確認す

るとともに、注入電流の調整により SOA 内の相対波長分

散が調整できることを確認した。

謝辞

本研究の一部は 2015 年度総務省戦略的情報通信研究開

発事 業 (SCOPE) 、 JST 産 学共 創基礎基盤 研究及び

CREST/JST によるものである。実験にあたり NTT 研究所

から多大な支援をいただいた。

参考文献

[1]春木ほか ,2015 年度電子通信情報学会ソサイエティ大

会,C-14-3

[2]春木ほか,2016電子情報通信学会総合大会, C-14-22

図1 実験構成

図2 SOA注入電流値に対する光波 f2の干渉光強度

平成28年度 OPE4月研究会

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1.3 μm 帯 npn-AlGaInAs/InP トラン ジスタレーザにおける 発振波長のコレクタ-ベース電圧依存性 Collector-Base Voltage Dependence of Lasing Wavelength

of 1.3-μm npn-AlGaInAs/InP Transistor Laser

山中健太郎 *1、金子貴晃 *1、只野翔太郎 *1、西山伸彦 *1, 2、荒井滋久 *1, 2 K. Yamanaka*1, T. Kaneko*1, S. Tadano*1, N. Nishiyama*1, 2 , and S. Arai*1, 2

東京工業大学 *1工学院 電気電子系、*2科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 *1 Department of Electrical and Electronic Engineering, *2 Institute of Innovative Research (IIR)

1. はじめに トランジスタレーザ(TL)は、従来のレーザダイオードと

異なり 3 電気端子を有するため、端子の組み合わせにより

複数の動作方法が可能であるが[1]、未だ不明の点も多い。

我々はこれまで TL の光出力特性や電気特性についてそれ

ぞれ報告してきたが[2]、今回、発振波長のコレクタ-ベー

ス電圧(VCB)依存性を詳細に評価したのでご報告する。

2. 結果 Fig. 1 に作製した素子の構造を示す。活性層には 1.3 µm波長帯 AlGaInAs 歪補償 5 層量子井戸(QW)を用いており、

電流狭窄層として埋め込みヘテロ構造を形成している。下

からエミッタ層、ベース層、コレクタ層の順に 3 電気端子

を有する構造となっている。 Fig. 2 にベース接地におけるエミッタ電流-光出力(IE-L)特性のコレクタ-ベース電圧(VCB)依存性を示す。素子

(ストライプ幅 W = 1.2 µm、共振器長 L = 530 µm)にコレ

クタ-ベース電圧 VCBを 0~4V まで印加しており、VCBの印

加で光出力の変化が可能であることが確認される。 次に

Fig. 3 に、エミッタ電流 50mA を注入した状態で VCBを変化

させたときの発振ピーク波長を示す。TL の発振ピーク波

長は電圧印加量が増加すると、低電圧では波長変化しない

が、1V 付近から長波長シフトすることが観測された。CW駆動でも同様の現象が観測されるが、Fig.3 はパルス駆動

(パルス幅:1 µs,Duty比:0.1%)で測定を行っているので発熱に

よるものではない。これは、QW における量子閉じこめシ

ュタルク効果(QCSE)によるものと考えられる。VCBを印

加すると QW のバンドが曲がり実効的なバンドギャップが

縮小し長波長シフトする。低電圧時は、空乏層の広がりが

少なく、また活性層におけるキャリアスクリーニング効果

により、バンドギャップ変化が抑制されるので、長波長シ

フトの傾きが印加電圧により変化すると考えられる。ベー

ス層ドーピング量や膜厚の調整により QCSE による長波長

シフトを抑制することで、波長変化の無い光出力制御が期

待される。

謝辞 本研究は文 部科学省科 学研究費補 助金 (#25709026, 15H05763)の援助により行われた。

参考文献 [1] M. Shirao et al., J. Quantum Electron, vol. 47, no. 3, pp. 359-

367, Mar. 2011. [2] T. Kaneko et al., The 27th International Conference on Indium

Phosphide and Related Materials, Wed1O6.4, June 2015.

Fig. 2 IE-L characteristics under CW common-base

configuration.

0

1

2

0 10 20 30 40 50

Out

put P

ower

[mW

]

Emitter Current [mA]

Base 50 nm (Eg =1.19 eV)Common-BaseL = 530 µmW = 1.2 µmRT-CW VCB =0,1,2,3,4 V

Fig. 1. The structure of the fabricated npn-AlGaInAs/InP TL.

Fig. 3.Peak lasing wavelength as a function of collector-base voltage VCB under pulse operation.

1311.30

1311.32

1311.34

1311.36

1311.38

1311.40

1311.42

1311.44

1311.46

1311.48

1311.50

0 1 2 3 4 5

Peak

Wav

elen

gth

[nm

]

Collector-Base Voltege [V]

Base 50 nm (Eg =1.19 eV)Common-BaseL = 580 µmW = 1.2 µmRT-PulseIE = 50 mA

平成28年度 OPE4月研究会

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Siフォトニック結晶導波路型光遅延線の設計 A Design of Silicon Photonic Crystal Waveguide based Optical Delay Line

吉野 陽紀 塙 雅典

Haruki Yoshino Masanori Hanawa

山梨大学

University of Yamanashi

1. はじめに 我々は受動光ネットワーク(PON)に適用可能な多重化

方式として,光直交符号を用いて信号を多重化・多重分離

する光符号分割多重方式の検討を行い,入力信号をフーリ

エ符号化する符号器として光離散フーリエ変換器(ODFT)

の開発を行っており,昨年度に Si 細線光導波路を用いて

4ch-ODFT デバイスの設計について報告した[1].この 4ch-

ODFT では Si 細線導波路型光遅延線の導波路長が,全導波

路長と比べて長尺であり,基板上で光遅延線が占める占有

面積と伝搬損失が大きいという問題があった.そこで本稿

では,スローライトを生成する Siフォトニック結晶導波路

(PCW)[2]型光遅延線による省面積化を期待し,Si細線導

波路型光遅延線との導波路長と占有面積の比較を行った結

果を報告する.

2. 光遅延線の設計 Si細線導波路型光遅延線の模式図を図 1に示す.文献[1]

のの 4ch-ODFT に用いた2種類の光遅延線 D1,D2 で必要

な遅延時間はそれぞれ 50ps,100ps であり,これに対応す

る Si 細線光導波路長を計算するとそれぞれ 4742m,

9486m となる.これを,図 1 に示すような U 字曲げ導波

路の入れ子構造にすることで,8mm × 2mmの基板寸法内

に収めた.しかし,光遅延線の占有面積がそれぞれ70.0 ×

103μm2,245.0 × 103μm2と大きいという問題がある.

今回検討した PCW 型光遅延線の模式図を図2に示す.

PCW は Si 基板に空孔を周期的に配列したフォトニック結

晶構造において,空孔を 1 列取り除き光導波路とした構造

であり,特定波長で高い群屈折率を持つ.今回は PCW の

光遅延線としての性能を評価するために,PCW中の群屈折

率𝑛𝑔を 2次元時間領域差分(2D-FDTD)法を用いて求めた.

2D-FDTDの解析領域を図 3に示す.図 3の四角で囲った

部分を解析空間とし,𝑥軸方向は正規化波数𝑘を用いた周期

的境界条件,𝑦軸方向は対称境界条件を設定した.𝑘を固定

し,導波路部分から波長λの正弦波を 100周期伝搬させた場

合の解析空間全体のエネルギーの和を測定し,エネルギー

が最大値を取る𝜆を伝搬モードとした.

図 1:Si細線導波路型光遅延線 図 2:PCW型光遅延線

𝑘に対する伝搬モード解析の結果を図 4 に示す.𝑘の増加

に伴い伝搬モードが𝜆 = 1.57μmに収束していることが確認

できる.伝搬モードの傾きから𝑛𝑔を求めた結果を図 4 に示

す.光伝送に用いる𝜆 = 1.55μm帯域では𝑛𝑔が 27 前後の大

きな値が得られることが確認できる.Si 細線光導波路の𝑛𝑔

はおよそ 4であることが報告されており[3],PCW中の𝑛𝑔が

Si細線光導波路の𝑛𝑔の約 6.75倍であることが確認できた.

図 3:2D-FDTD解析空間 図 4:伝搬モード解析結果

3. 光遅延線の導波路長と占有面積の比較 解析結果より 4ch-ODFTの光遅延線で必要となる Si細線

光導波路と空孔が 8列の PCWの導波路長と遅延線の占有面

積を試算した結果を表 1に示す.PCWを用いることで導波

路長は11.7%,占有面積は3.7%とコンパクトな遅延線とな

ることが確認できた.

表 1:光遅延線の導波路の試算

𝟓𝟎 (𝐩𝐬) 𝟏𝟎𝟎 (𝐩𝐬)

遅延線 導波路長(μm)

占有面積(μm2)

導波路長(μm)

占有面積(μm2)

Si細線

導波路 4742.0 70.0 × 103 9486.0 245.0 × 103

PCW

(8列) 555.2 3.3 × 103 1110.3 6.7 × 103

4. おわりに 本稿では Si細線光導波路型 4ch-ODFTのための光遅延線

として PCW 型光遅延線を提案し解析した結果を報告した.

2D-FDTD法を用いて PCWの群屈折率を求めることで Si細

線導波路型光遅延線との占有面積の比較を行った結果,占

有面積は 3.7%のコンパクトな遅延線となることが確認でき

た.今後は PCWの伝搬損失や PCWと Si細線光導波路の結

合損失の伝搬解析について検討していく予定である.

参考文献

[1] 堀内他, 信学技報, 358, 15, pp.15-18, 2015年 12月.

[2] Baba et al., IEEE J. Quantum Electron, 38, 2, pp.743-752, 2002.

[3] 馬場他,信学論(C), 88, 6, pp.363-373, 2005年 6月.

平成28年度 OPE4月研究会

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