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1 鉱物資源マテリアルフロー 2016 5.白金族 (PGM) 1 需給動向 1-1.世界の需給動向 白金族金属としては、プラチナ、パラジウム、ロジウムの他に、イリジウム、ルテニウム及びオスミウムの 6 元素がある。 白金族の中でプラチナは宝飾用や医療用としての用途の他に、自動車用排ガス触媒として必要不可欠な材 料として需要が伸びている。その他に石油精製用触媒や、電気・電子デバイス用として酸素センサーやプラグ、 熱電対の電極として使用されている。また、スパッタリングターゲット材や単結晶用坩堝としての需要もある。 プラチナは耐熱強度も強く、ガラスに対する化学反応性が低いことから、ガラス瓶以外の製造プロセス中で坩 堝や耐食部材として使用されている。 パラジウムも自動車用排ガス触媒として重要な材料であり、その他に化学触媒、歯科用材料、電子回路用 配線パターン、宝飾用など幅広く使用されている。ロジウムに関しては自動車用排ガス触媒の他に、石油精製 触媒、熱電対電極などに使用されている。 2013 年 Johnson Matthey と Amplats の関係が見直されたため、Johnson Matthey の調査報告書『PLATINUM』 は、『PLATINUM 2013』を最後に非公開となった。2014 年 5 月、Johnson Matthey は PGM の需給を取りまとめ た「PGM Market Report May 2014」を公表、以後、毎年 11 月と 5 月に同 Report が公表されるようになった。(以 下、PGM の世界需給統計は Johnson Matthey の「PGM Market Report May 2016 (“JM 統計”)」による。) プラチナの世界需給動向を表 1-1、図 1-1 に示す。2015 年の世界のプラチナ供給量は前年比 108%の 242t (生産量は前年比 119%の 188t、回収量は前年比 83%の 54t)であった。また、需要量は前年比 104%の 263t であった。 プラチナの主要供給国は、南ア、ロシアである。全体の供給量の 75%を占める南アは、2014 年の長期スト ライキによる打撃から生産が 2013 年以前の水準に回復、生産者による在庫放出もあり、2015 年の供給は前 年比 129%の 142tと 2011 年以来の高水準となった。 需要に関して地域別で見てみると、中国、欧州、日本、北米の順となっている。2015 年は欧州、日本は前年 比増、北米は前年並みであった。中国のみ前年比 95%であるが世界全体に占める構成比は 28%で最大であ る。 JM 統計の記載によれば、2015 年の世界の小型ディーゼル(Light Duty Diesel: LDD)車生産台数は 1,630 万 台と 2011 年を 50 万台以上上回る新記録を達成した。欧州は世界最大の LDD 車市場であり、2015 年のLDD 生産台数は 940 万台と、この 4 年間での最高を記録、欧州のプラチナ需要増に繋がった。更に、新規制 Euro6 が 2014 年 1 月に大型車、同年 9 月に乗用車、2015 年 9 月からは全ての新車販売に対して適応され、2015 年 のプラチナ需要が増加した。自動車排ガス規制が Euro5、Euro6 と厳しくなり、その対応として 2013 年~2015 年で、欧州のディーゼル車排ガス触媒システムに含まれるプラチナの量は平均 13%増加している。ただし、 中期的にはエンジンシステム改善が計られ、触媒向け需要は減少する可能性もある。 プラチナ需要で最も多い需要先は自動車用排ガス触媒であり、全体需要量の 41%を占める。2015 年の自 動車触媒のプラチナ需要量は前年比 106%の 107t であった。自動車用排ガス触媒に次いで需要量が多い宝 飾用は、全体需要量の 33%を占める。2015 年の宝飾用需要量は前年比 98%の 88t であった。高い伸びを示 してきた投資需要は 2014 年大きく減少したが、2015 年は前年比 163%の 14tに増加した。 パラジウムは表 1-2、図 1-2 に示す通り、2015 年の供給量は前年比ほぼ同等の 276t(生産量は前年比 106%の 200t、回収量は前年比 89%の 76t)、需要量は前年比 87%の 290t であった。これは宝飾・投資需要 が前年比-136%と大きく減少したことによる。 パラジウムの供給国は南アとロシアの 2 か国で全供給量の 80%を占めている。2015 年、南アの生産は前 年のストライキの影響から立ち直り、在庫放出もあって前年比 126%の 83tと 5 年前の水準までもどり、ロシア は前年比 94%の 76t と減少傾向が続いている。 パラジウムの世界需要を地域別に見てみると、北米、中国、欧州、日本の順になる。2015 年はこの 4 か国 のうち日本のみ前年比 97%と需要が減少している。

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鉱物資源マテリアルフロー 2016 5.白金族 (PGM)

1需給動向

1-1.世界の需給動向

白金族金属としては、プラチナ、パラジウム、ロジウムの他に、イリジウム、ルテニウム及びオスミウムの 6

元素がある。

白金族の中でプラチナは宝飾用や医療用としての用途の他に、自動車用排ガス触媒として必要不可欠な材

料として需要が伸びている。その他に石油精製用触媒や、電気・電子デバイス用として酸素センサーやプラグ、

熱電対の電極として使用されている。また、スパッタリングターゲット材や単結晶用坩堝としての需要もある。

プラチナは耐熱強度も強く、ガラスに対する化学反応性が低いことから、ガラス瓶以外の製造プロセス中で坩

堝や耐食部材として使用されている。

パラジウムも自動車用排ガス触媒として重要な材料であり、その他に化学触媒、歯科用材料、電子回路用

配線パターン、宝飾用など幅広く使用されている。ロジウムに関しては自動車用排ガス触媒の他に、石油精製

触媒、熱電対電極などに使用されている。

2013年Johnson MattheyとAmplatsの関係が見直されたため、Johnson Mattheyの調査報告書『PLATINUM』

は、『PLATINUM 2013』を最後に非公開となった。2014 年5 月、Johnson Matthey は PGM の需給を取りまとめ

た「PGM Market Report May 2014」を公表、以後、毎年11 月と 5 月に同Report が公表されるようになった。(以

下、PGM の世界需給統計は Johnson Matthey の「PGM Market Report May 2016 (“JM 統計”)」による。)

プラチナの世界需給動向を表1-1、図1-1に示す。2015年の世界のプラチナ供給量は前年比108%の242t

(生産量は前年比119%の 188t、回収量は前年比83%の 54t)であった。また、需要量は前年比104%の 263t

であった。

プラチナの主要供給国は、南ア、ロシアである。全体の供給量の 75%を占める南アは、2014 年の長期スト

ライキによる打撃から生産が 2013 年以前の水準に回復、生産者による在庫放出もあり、2015 年の供給は前

年比129%の 142tと 2011 年以来の高水準となった。

需要に関して地域別で見てみると、中国、欧州、日本、北米の順となっている。2015 年は欧州、日本は前年

比増、北米は前年並みであった。中国のみ前年比95%であるが世界全体に占める構成比は28%で最大であ

る。

JM 統計の記載によれば、2015 年の世界の小型ディーゼル(Light Duty Diesel: LDD)車生産台数は 1,630 万

台と 2011 年を 50 万台以上上回る新記録を達成した。欧州は世界最大の LDD 車市場であり、2015 年のLDD

生産台数は 940 万台と、この 4 年間での最高を記録、欧州のプラチナ需要増に繋がった。更に、新規制Euro6

が 2014 年1 月に大型車、同年9 月に乗用車、2015 年9 月からは全ての新車販売に対して適応され、2015 年

のプラチナ需要が増加した。自動車排ガス規制が Euro5、Euro6 と厳しくなり、その対応として 2013 年~2015

年で、欧州のディーゼル車排ガス触媒システムに含まれるプラチナの量は平均 13%増加している。ただし、

中期的にはエンジンシステム改善が計られ、触媒向け需要は減少する可能性もある。

プラチナ需要で最も多い需要先は自動車用排ガス触媒であり、全体需要量の 41%を占める。2015 年の自

動車触媒のプラチナ需要量は前年比 106%の 107t であった。自動車用排ガス触媒に次いで需要量が多い宝

飾用は、全体需要量の 33%を占める。2015 年の宝飾用需要量は前年比 98%の 88t であった。高い伸びを示

してきた投資需要は 2014 年大きく減少したが、2015 年は前年比 163%の 14tに増加した。

パラジウムは表 1-2、図 1-2 に示す通り、2015 年の供給量は前年比ほぼ同等の 276t(生産量は前年比

106%の 200t、回収量は前年比 89%の 76t)、需要量は前年比 87%の 290t であった。これは宝飾・投資需要

が前年比-136%と大きく減少したことによる。

パラジウムの供給国は南アとロシアの 2 か国で全供給量の 80%を占めている。2015 年、南アの生産は前

年のストライキの影響から立ち直り、在庫放出もあって前年比 126%の 83tと 5 年前の水準までもどり、ロシア

は前年比94%の 76t と減少傾向が続いている。

パラジウムの世界需要を地域別に見てみると、北米、中国、欧州、日本の順になる。2015 年はこの 4 か国

のうち日本のみ前年比 97%と需要が減少している。

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鉱物資源マテリアルフロー 2016 5.白金族 (PGM)

用途別のパラジウム需要量では自動車用排ガス触媒が最も多く、2015 年は全需要の 82%、前年比 102%

の 237tを占めている。自動車用排ガス触媒の需要は2009 年以降、毎年高い伸び率で増加している。一方で、

エンジン制御が高度化され、排出ガス自体がきれいになり、触媒負荷が軽減されたことにより、パラジウムの

使用原単位も減少しており、大幅な消費増加は回避されている。

2015 年のパラジウムの宝飾・投資用需要は前年比-136%で-13tであった。JM 統計の記載によれば、これ

は、宝飾需要が前年比83%の7tに減少したことに加え、年初から9か月続けて自動車販売が減少した中国の

パラジウム需要の先行きに対する懸念を反映して、南ア、欧州、北米の投資家の売却による売り越しが-20t

(前年比-170%)と大きかったことによる。

ロジウムの世界需給動向を表1-3、図1-3 に示す。2015 年の世界のロジウム供給量は前年比111%の 32t

(生産量は前年比 123%の 23t、回収量は前年比88%の 8.4t)、需要量は前年同水準の 31t であった。

供給増加の主要因は、前年の長期ストライキの影響から南アの生産が回復したことによる。自動車用排ガ

ス触媒向け需要が全需要の 83%を占め、前年と同等の 26t が消費された。

表 1-1 世界のプラチナ需給

単位:純分t

2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 15/14比 構成比

南ア 165 158 140 144 144 151 128 131 110 142 129% 75%

ロシア 29 29 25 24 26 26 25 23 22 21 96% 11%

ジンバブエ 5 5 6 7 9 11 10 13 12 12 100% 7%

北米 11 10 10 8 6 11 10 10 11 10 94% 5%

その他 3.3 3.7 3.6 3.5 3.4 3.1 3.9 4.4 4 3 77% 2%

小計 212 205 185 187 188 202 177 181 159 188 119% 100%

触媒回収等 44 49 57 44 57 64 63 63 64 54 83% -

合計 256 255 242 231 245 265 240 244 223 242 108% -

中国 43 48 44 67 63 62 71 82 79 75 95% 28%

欧州 80 87 81 57 67 69 61 55 61 65 107% 25%

日本 43 41 54 33 36 41 35 30 28 51 184% 19%

北米 45 47 36 27 44 29 36 30 30 30 101% 11%

その他 34 34 34 28 36 51 42 72 57 42 74% 16%

合計 245 257 249 211 246 252 246 268 254 263 104% 100%

自動車用排ガス触媒 122 129 114 68 96 99 98 96 101 107 106% 41%

宝飾 68 66 64 87 75 77 87 94 90 88 98% 33%

化学 12 13 12 9 14 15 14 16 16 16 102% 6%

投資 -1 5 17 21 20 14 14 27 9 14 163% 5%

電気 11 8 7 6 7 7 5 7 7 7 102% 3%

ガラス 13 15 10 0 12 16 5 3 7 7 105% 3%

医療 8 7 8 8 7 7 7 7 7 7 100% 2%

石油 6 6 7 7 5 7 3 5 5 4 78% 2%

その他 15 8 9 6 9 10 12 13 13 13 101% 5%

合計 253 257 249 211 246 252 246 268 254 263 104% 100%

出典:Johnson Matthey

※供給の触媒回収等は2005年以降電気・宝飾品など触媒以外からの回収を含む。

供給

需要

(

地域別

)

需要

(

用途別

)

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鉱物資源マテリアルフロー 2016 5.白金族 (PGM)

図 1-1 世界のプラチナ需給

表 1-2 世界のパラジウム需給

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100

150

200

250

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2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

(純分t) 供給

需要

単位:純分t

2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 15/14比 構成比

南ア 86 86 76 74 82 80 73 77 66 83 126% 42%

ロシア 122 141 114 113 116 108 90 85 81 76 94% 38%

北米 31 31 28 23 18 28 25 26 28 27 95% 13%

その他 8 9 10 11 13 13 13 14 14 14 96% 7%

小計 247 267 227 221 229 229 202 202 189 200 106% 100%

触媒回収等 38 49 50 44 58 74 72 79 86 76 89% -

合計 285 316 278 265 286 303 274 281 275 276 100% -

北米 67 71 60 52 94 48 82 70 69 73 106% 25%

中国 47 46 45 52 56 59 61 64 68 68 100% 23%

欧州 44 53 56 60 56 59 62 57 55 55 101% 19%

日本 49 49 51 39 46 41 45 40 40 39 97% 13%

その他 38 42 47 41 51 60 59 64 102 55 54% 19%

合計 245 261 258 244 303 266 308 296 334 290 87% 100%

自動車用排ガス触媒 126 141 139 126 174 191 208 219 232 237 102% 82%

電気 47 48 43 43 44 43 37 33 32 30 94% 10%

化学 14 12 11 10 12 14 16 15 15 19 124% 6%

歯科 19 20 19 20 19 17 16 14 15 15 101% 5%

宝飾・投資 37 38 44 44 53 -2 28 11 38 -13 -136% -5%

その他 3 3 2 2 3 3 3 3 3 3 101% 1%

合計 245 261 258 244 303 266 308 296 334 290 87% 100%

出典:Johnson Matthey

※供給の触媒回収等は2005年以降電気・宝飾品など触媒以外からの回収を含む。

供給

需要

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地域別

)

需要

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用途別

)

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鉱物資源マテリアルフロー 2016 5.白金族 (PGM)

図 1-2 世界のパラジウム需給

表 1-3 世界のロジウム需給

図 1-3 世界のロジウム需給

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200

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300

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2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

(純分t)供給

需要

単位:純分t

2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 15/14比 構成比

南ア 21 22 18 21 20 20 18 17 15 19 130% 81%

ロシア 3.1 2.8 2.6 2.2 2.2 2.2 2.8 2.5 2.5 2.5 100% 11%

ジンバブエ 0.4 0.4 0.4 0.5 0.6 0.9 0.9 1.1 1.1 1.1 97% 5%

北米 0.5 0.6 0.6 0.5 0.3 0.7 0.7 0.7 0.7 0.7 96% 3%

その他 0.7 0.8 0.7 0.7 0.4 0.1 0.1 0.2 0.2 0.2 100% 1%

小計 25 26 22 24 23 24 22 22 19 23 123% 100%

触媒回収 5.3 6.0 7.1 5.8 7.5 8.6 7.8 8.6 9.5 8.4 88% -

合計 30 32 29 30 30 32 30 30 29 32 111% -

自動車用排ガス触媒 27 28 24 19 23 22 24 25 26 26 100% 83%

化学 1.5 2.0 2.1 1.7 2.1 2.2 2.5 2.6 2.8 3.1 112% 10%

ガラス 2.0 1.8 1.1 0.6 2.1 2.4 1.1 1.4 1.7 1.2 74% 4%

電気 0.3 0.1 0.1 0.1 0.1 0.2 0.2 0.2 0.1 0.2 125% 1%

その他 0.7 0.7 0.7 0.7 0.7 1.2 2.0 2.4 0.9 0.6 64% 2%

合計 31 32 28 22 28 28 30 31 31 31 99% 100%

出典:Johnson Matthey

供給

需要

(

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)

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2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

(純分t) 供給

需要

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鉱物資源マテリアルフロー 2016 5.白金族 (PGM)

1-2国内の需給動向

プラチナの国内需給動向を表 1-4、図 1-4 に示す。貿易統計による 2015 年のプラチナ輸入量は、前年比

145%の 50.4t と増加した。これに国内回収分の 15.4t と国内製錬副産物としての 0.8t が加わり、合計 66.6t が

国内全体の供給量となっている。南アのプラチナ生産が回復して輸入量は、2013年の水準近くまで戻り、国内

回収分が前年比 90%に減少したものの、供給量は全体で前年比 127%と増加した。需要量は内需がほぼ前

年同様の 31.4t、輸出が前年比 74%の 20.8t であり、合計で前年比 88%の 52.2t となり、前年の供給不足が解

消した。

需要分野別では触媒(自動車用や石油精製用があるが、大半は自動車用)が前年比 86%の 13.6t、酸素セ

ンサー用を始めとする電気・電子材料用が前年比105%の7.6t、宝飾用が前年比110%の4.7t、ガラス用(ガラ

ス溶解用坩堝やライナー)が前年比 334%の 0.2t である。国内乗用車の排出ガス触媒は、長期的トレンドとし

てプラチナからパラジウムへの代替が進んでいる。

また、輸出に関してはこれまで毎年20t 前後の水準で推移し、2013 年、2014 年と 28t まで増加したが、2015

年は前年比 74%の 20.8t に減少した。これらの大半が宝飾品のスクラップによるものである。デザインが古く

なった宝飾品が海外に輸出され、海外において製錬・加工の後、再び日本に輸入されることもある。

パラジウムの国内需給動向を表 1-5、図 1-5 に示す。2015 年のパラジウム輸入量は前年比 98%の 57.2t

であった。これに国内回収分の 27.7t と国内製錬副産物としての 3.5t が加わり、合計 88.5t が国内全体の供給

量である。また、需要量は合計で前年とほぼ同じ 79.6t であった。内訳は内需が前年比 99%の 63.9t と微減、

輸出は前年比102%の 15.7t と微増であった。

国内のパラジウム需要は触媒(自動車用)の他に、歯科用材料、電気・電子材料、宝飾用などがある。構成

比が一番高い触媒は、2015 年は前年並みの 39.1t であった。この他、電気・電子材料用は前年比 90%の 4.4t

と減少している。自動車用触媒需要に関しては、国内販売自動車に占める軽自動車のシェアが 40%前後(2015

年は 37.6%)であり、1 台当たりのパラジウム使用量が少ない為に、軽自動車の生産、販売増減は必ずしもパ

ラジウム需要増減に繋がらない。

ロジウムの国内供給動向を表1-6、図1-6 に示す。ロジウムの 2015 年の輸入量は前年比104%の 4.36t と

増加した。一方、回収分は前年比 61%の 0.66t と減少傾向となっている。需要としては自動車排出ガス触媒が

ほとんどで、これにガラス関連が加わる。

表 1-4 プラチナの国内需給

単位:純分t

2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 15/14比

①国内製錬副産物 0.8 0.5 0.5 0.5 0.6 1.2 1.0 0.6 0.6 0.8 130%

②国内回収 7.2 15.0 15.6 13.0 15.6 21.4 18.1 15.3 17.1 15.4 90%

③輸入 67.0 65.1 78.1 64.5 58.5 64.2 52.1 51.4 34.7 50.4 145%

合計 75.0 80.6 94.2 78.0 74.7 86.8 71.2 67.3 52.4 66.6 127%

触媒 27.0 27.2 32.5 15.0 16.3 15.5 14.7 15.1 15.9 13.6 86%

電気 9.6 10.4 9.3 7.1 9.3 6.7 7.2 6.8 7.2 7.6 105%

ガラス 6.7 7.3 10.4 4.6 6.0 4.6 0.3 0.1 0.1 0.2 334%

宝飾 9.7 8.4 10.0 6.0 5.3 6.7 6.1 5.3 4.3 4.7 110%

その他 7.1 5.2 5.9 5.8 6.0 6.3 6.0 5.6 4.0 5.3 131%

内需小計 60.2 58.4 68.1 38.5 42.9 39.8 34.2 33.0 31.5 31.4 100%

輸出 13.9 19.1 20.0 21.1 23.5 22.7 22.8 28.0 28.0 20.8 74%

合計 74.1 77.5 88.1 59.7 66.4 62.5 57.0 61.0 59.5 52.2 88%

供給-需要 0.9 3.1 6.2 18.4 8.3 24.4 14.2 6.4 -7.1 14.4 204%

出典:財務省 貿易統計(輸出入)、輸出入共にPt地金・粉・板とPt合金地金・粉の合計値、

貴金属流通統計(①国内新産)、触媒資源化協会(②国内回収)、

化学工業統計(触媒需要)、貴金属流通統計(電気・ガラス・宝飾・その他の2005年以降需要)

供給

需要

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鉱物資源マテリアルフロー 2016 5.白金族 (PGM)

表 1-6 ロジウムの国内供給

図 1-6 ロジウムの国内供給

2.輸出入動向

2-1.輸出入動向

白金族金属の輸出入数量を表 2-1、図 2-1、図 2-2 に示す。2015 年の白金族金属の輸入数量は前年比

116%の 129.7t、輸出量は前年比 85%の 40.7t であった。

2015年の輸入においてはプラチナ地金が南アの生産が回復したのを受けて前年比146%と大幅に増加し、

ロジウム、オスミウム・イリジウム・ルテニウムもそれぞれ前年比 104%、121%と増加した。パラジウムは前

年比 98%であった。輸出においては、プラチナ地金が前年比 63%、オスミウム・イリジウム・ルテニウムは前

年比90%と減少した一方、パラジウムは前年比 102%、ロジウムは前年比109%に増加した。

表 2-1 白金族金属の輸出入数量

単位:純分t

2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 15/14比

- - - - - - - - - - -

0.43 0.64 0.81 0.77 0.85 1.00 0.60 0.84 1.10 0.66 61%

輸入 10.54 10.21 11.12 9.93 9.47 8.76 5.61 4.98 4.20 4.36 104%

輸出 1.14 3.81 0.68 1.13 1.28 1.03 0.77 0.73 0.43 0.47 109%

9.39 6.40 10.44 8.80 8.19 7.73 4.84 4.25 3.77 3.89 103%

9.82 7.04 11.24 9.57 9.04 8.73 5.44 5.09 4.86 4.56 94%

出典:財務省貿易統計(輸出入)、触媒資源化協会(②国内回収)

合計(①+②+③)

供給

①国内新産

②国内回収

輸出入

③輸入-輸出

0

2

4

6

8

10

12

2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

(純分t)

単位:純分t

2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 15/14比

輸入 66.3 64.6 77.8 63.8 58.1 63.6 51.7 50.9 34.3 50.0 146%

輸出 10.8 14.6 16.4 16.6 17.0 18.5 17.5 23.1 20.4 12.8 63%

輸入 0.69 0.57 0.39 0.69 0.45 0.60 0.49 0.55 0.43 0.36 83%

輸出 3.1 4.6 3.5 4.5 6.6 4.2 5.3 4.8 7.6 8.0 105%

輸入 79.7 82.1 75.4 64.7 70.2 66.5 53.8 58.6 58.4 57.2 98%

輸出 17.8 19.1 17.5 24.4 18.1 15.5 15.4 17.1 15.4 15.7 102%

輸入 10.5 10.2 11.1 9.9 9.5 8.8 5.6 5.0 4.2 4.4 104%

輸出 1.1 3.8 0.7 1.1 1.3 1.0 0.8 0.7 0.4 0.5 109%

輸入 15.9 22.4 13.7 14.8 26.1 17.6 11.6 14.5 14.6 17.7 121%

輸出 3.0 16.7 3.6 5.3 6.4 3.8 3.1 2.4 4.2 3.8 90%

輸入 173.1 179.8 178.4 153.9 164.4 157.0 123.2 129.5 111.9 129.7 116%

輸出 35.8 58.8 41.7 51.9 49.3 43.1 42.0 48.3 48.0 40.7 85%

輸入-輸出 137.4 121.0 136.7 102.0 115.0 113.9 81.2 81.3 64.0 89.0 139%

出典:財務省 貿易統計

純分換算率:Pt合金・地金・粉60%、それ以外は100%

※素材はPt地金・粉・板、Pt合金地金・粉、Pd地金・粉・板、Rh粉、Os・Ir・Ruによる。

合計

素材

Pt地金・粉・板

Pt合金地金・粉

Pd地金・粉・板

Rh粉

Os・Ir・Ru

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鉱物資源マテリアルフロー 2016 5.白金族 (PGM)

3.リサイクル

現在国内では、白金族金属は使用済み自動車排ガス触媒等から回収されてリサイクルされており、以下の

定義による白金族、プラチナ、パラジウム、ロジウムのリサイクル率を表3-1、表3-2、表3-3、表3-4 に示す。

2015 年の白金族のリサイクル率は 36%と推計される。

リサイクル率 =(使用済み製品のマテリアルリサイクル量)/(見掛消費)

見掛消費 =(国内生産)+(素材の輸入)-(素材の輸出)

※ 素材とは Pt 地金・粉・板、Pt 合金地金・粉、Pd 地金・粉・板、Rh 粉の合計値(Os・Ir・Ru は含まない)。

※ 国内生産には使用済み製品のリサイクル(マテリアルリサイクル)を含む。

表 3-1 白金族のリサイクル率

表 3-2 プラチナのリサイクル率

表 3-3 パラジウムのリサイクル率

表 3-4 ロジウムのリサイクル率

単位:特記以外純分t

区分 2011 2012 2013 2014 2015

新産 4.4 4.4 3.7 3.9 4.4触媒等から回収 53.2 49.4 43.8 45.3 43.8

素材 輸入-輸出 100.2 72.6 69.1 53.5 75.0

157.7 126.5 116.6 102.8 123.2

リサイクル量 触媒等から回収② 53.2 49.4 43.8 45.3 43.8リサイクル率 ②/① 34% 39% 38% 44% 36%

※出典:財務省貿易統計(輸出入)、貴金属流通統計(国内新産)、触媒資源化協会(国内回収)

内訳

見掛消費

国内生産

合計①

単位:特記以外純分t

区分 2011 2012 2013 2014 2015

新産 1.2 1.0 0.6 0.6 0.8触媒等から回収 21.4 18.1 15.3 17.1 15.4

素材 輸入-輸出 41.5 29.3 23.5 6.7 29.6

64.1 48.4 39.4 24.4 45.9

リサイクル量 触媒等から回収② 21.4 18.1 15.3 17.1 15.4リサイクル率 ②/① 33% 37% 39% 70% 34%

※出典:財務省貿易統計(輸出入)、貴金属流通統計(国内新産)、触媒資源化協会(国内回収)

内訳

見掛消費

国内生産

合計①

単位:特記以外純分t

区分 2011 2012 2013 2014 2015

新産 3.2 3.5 3.0 3.3 3.5触媒等から回収 30.8 30.7 27.6 27.1 27.7

素材 輸入-輸出 51.0 38.4 41.4 43.1 41.5

84.9 72.6 72.1 73.5 72.8

リサイクル量 触媒等から回収② 30.8 30.7 27.6 27.1 27.7リサイクル率 ②/① 36% 42% 38% 37% 38%

※出典:財務省貿易統計(輸出入)、貴金属流通統計(国内新産)、触媒資源化協会(国内回収)

内訳

見掛消費

国内生産

合計①

単位:特記以外純分t

区分 2011 2012 2013 2014 2015

新産 - - - - -触媒等から回収 1.0 0.6 0.8 1.1 0.7

素材 輸入-輸出 7.7 4.8 4.3 3.8 3.9

8.7 5.4 5.1 4.9 4.6

リサイクル量 触媒等から回収② 1.0 0.6 0.8 1.1 0.7リサイクル率 ②/① 11% 11% 16% 23% 15%

※出典:財務省貿易統計(輸出入)、触媒資源化協会(国内回収)

見掛消費

国内生産

合計①

内訳

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