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民間企業社宅を公営住宅として有効活用する 官民連携事業調査 調査報告書 平成 27年 3 月 長洲町

民間企業社宅を公営住宅として有効活用する 官民連 …70HZ 74 S 75HZ 79 S 80HZ 84 S 85HZ 89 S 90 S è V 6× j# ë!Ã %4 2( qH H22 \ Ã1* 高齢化の推移 5歳階級別人口比率

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民間企業社宅を公営住宅として有効活用する

官民連携事業調査

調査報告書

平成 27年 3月

長 洲 町

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目 次

1.長洲町の現況の整理 ············································ 1

1-1 長洲町の現況 ·················································· 1

1-2 宮野地区の特徴 ················································ 20

2.調査事業概要 ···················································· 23

2-1 業務の目的・背景 ·············································· 23

2-2 業務対象地の概要 ·············································· 23

3.事業計画 ························································· 31

3-1 本事業の必要性と解決すべき課題について ························ 31

3-2 検討する事業内容の範囲について ································ 34

3-3 事業推進プロセスにおける公民連携手法の検討 ···················· 38

4.事業手法別の比較検討評価 ····································· 39

4-1 比較検討する手法の全体像 ······································ 39

4-2 定量的評価の前提条件と影響度調査の変動因子の設定 ·············· 43

4-3 定性的評価 ···················································· 62

4-4 運営スキームの検討 ············································ 64

4-5 結論 ·························································· 65

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1.長洲町の現況の整理

1-1 長洲町の現況

(1)位置と地勢

長洲町は、熊本県の北西部に位置しており、北は荒

尾市、東は玉名市と接している面積 19.44k㎡の町です。

西から南にかけては、有明海を臨み、その対岸には

島原半島が位置しています。また、東部は県立公園小

岱山を擁した小高い丘陵地が連なり、南東部を流れる

行末川が町の境界となっています。

産業面では、造船業、サッシ業をはじめとした多く

の企業を有する工業の町であるとともに、ミニトマト

やの海苔の養殖を中心とした農業や漁業のほか、全国

有数の金魚の生産を誇る農水産業も豊かな町でもあり

ます。

(2)交通

◆ 鉄道

鉄道は、中央部を横断してJR鹿児島本線が走り、町の西側にはJR長洲駅が立地

しています。

◆ 路線バス

路線バスは、産交バス㈱が運行しており、長洲港・JR長洲駅を経由する長洲玉名

線(荒尾産交~バスセンター~南荒尾駅~長洲港~玉名合同庁舎~新玉名駅)と、長

洲港を発着とする長洲港線(バスセンター~南荒尾駅前~長洲港)の 2 系統がありま

す。

◆ 予約型乗合タクシー

本町の新公共交通システムとして、産交バス㈱が運行していた 2 系統(健康福祉セ

ンター環状線、長洲・荒尾環状線)に代わる予約型乗合タクシー(きんぎょタクシー)

を平成 23 年 10 月から導入しています。利用可能範囲は、長洲町内及び長洲町内-荒

尾市特定施設間となっています。

◆ 海路

海路は、有明海沿岸の西側の長洲港フェリーターミナルと、有明海を挟んで長崎県

雲仙市の多比良港が、有明フェリーによって結ばれています。

◆ 道路

道路は、長洲港付近を境に、北へは荒尾市・福岡県大牟田市へ至る国道 389 号が走

■長洲町の位置

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2

り、東へは玉名市・熊本市へ至る国道 501 号が走っています。また、町内の主な幹線

道路として都市計画道路長洲駅・海岸線や長洲・岱明線の一部区間などの道路網が整

備されています。

<交通概要図>

(3)沿革

長洲町は、古くは有明海に突き出した細

長い洲で、漁業者の目標地あるいは前進基

地として栄えてきました。慶長 12年、肥後

藩主・加藤清正公、寛文 4 年、肥後藩主・

細川綱利公による干拓事業によって、現在

の広大な水田地帯が形成されました。

現在の長洲町となったのは、昭和 30年旧長洲町と清里村の一部が合併、翌昭和 31

年六栄村と腹赤村が合併、長洲町と称し現在に至っています。

昭和 39年には、新産業都市の指定を受けました。有明海の埋立地に造船や大型機

械工場、アルミサッシ製造業の企業が進出し、現在では約 40 社で約 4600 人の従業

員が働いています。

■長洲町の沿革

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(4)人口動向と住宅ストックの状況

1)人口動向

①人口および高齢化の推移

長洲町の人口は減尐傾向を示しています。平成 26 年は 16,552 人となっており、平

成 20年と比較して、約 5%減尐しています。また、高齢化率が年々増加し、平成 26年

では 29.2%となっています。高齢化が進行している要因として、若い世代が生活に便

利な荒尾市や玉名市などに移り住んでいることが一つの要因であると考えられます。

②人口構成

人口ピラミッドの構成は、男女ともに

55~59 歳が最も多く、次いで 60~64 歳

となっています。65歳以上の老年人口を

除くと、男は 15~19 歳、女は 0~4 歳が

最も尐なくなっています。

国勢調査によると 14 歳以下の年尐人

口比率は昭和 55 年の 22.7%から平成 22

年は 13.1%へと 9.6ポイント減尐し、65

歳以上の老年人口比率は 11.8%から

26.2%へと 14.4 ポイント増加していま

す。老年人口比率は県平均(20.8%)を

上回っています。

0.0% 2.0% 4.0% 6.0% 8.0% 10.0%

0~4歳

5~9歳

10~14歳

15~19歳

20~24歳

25~29歳

30~34歳

35~39歳

40~44歳

45~49歳

50~54歳

55~59歳

60~64歳

65~69歳

70~74歳

75~79歳

80~84歳

85~89歳

90歳以上 長洲町

熊本県

資料:H22国勢調査

■人口・高齢化の推移

■5歳階級別人口比率

※資料:住民基本台帳

(平成 26 年4月現在)

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4

③高齢者世帯の状況

長洲町の高齢者を含む世帯数は

2,529 世帯であり、全世帯の

47.2%を占めています。

高齢者を含む世帯数の割合は、

玉名郡内の市町と比較すると、最

も低い割合を示しているが、県全

体よりは上回っています。

④校区別人口・世帯数の推移

町内の小学校区別人口の推移をみると、六栄校区、腹赤校区、清里校区において人

口の減尐傾向が続いています。長洲校区においては、平成 12 年から平成 23 年までは

減尐傾向ですが、平成 25年度は増加に転じています。

町内の小学校区別世帯数の推移を見ると、全校区とも増加傾向が続いており、特に

六栄校区、腹赤校区においては、平成 12年以降、急増しています。

S55~H22国勢調査 13.1%

13.2%

14.6%

17.6%

21.1%

23.1%

60.7%

62.9%

64.1%

64.1%

63.2%

63.8%

26.2%

23.9%

21.1%

18.0%

15.7%

13.1%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

H22

H17

H12

H7

H2

S60

14歳以下 15~64歳 65歳以上

資料:国勢調査

単位:人

総数 14歳以下 15~64歳 65歳以上S55 16,715 3,788 10,958 1,969S60 18,126 4,191 11,568 2,367H2 17,605 3,709 11,128 2,764H7 17,833 3,132 11,439 3,210H12 17,956 2,629 11,508 3,784H17 17,381 2,295 10,940 4,146H22 16,594 2,167 10,077 4,345

6,2345,918

5,579 5,529

5,656 5,601 5,5795,320

4,6474,401

4,181 4,140

1,846 1,792 1,714 1,667

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

H12 H18 H23 H25

長洲

六栄

腹赤

清里

資料:住民基本台帳

2,233 2,289 2,319 2,330

1,780

1,937

2,103 2,064

1,463 1,4941,627 1,665

633 656 665 661

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

H12 H18 H23 H25

長洲

六栄

腹赤

清里

資料:住民基本台帳

一般世帯の 67.8%

一般世帯の 47.2%

一般世帯の 62.4%

一般世帯の 61.3%

一般世帯の 50.3%

一般世帯の 43.1%

■年齢3区分別人口構成一覧

■高齢者を含む世帯の世帯人員の割合

■年齢3区分別人口構成

■校区別人口の推移 ■校区別世帯数の推移

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⑤転入・転出の状況

転入状況については、平成 24年に大幅な増

加が見られますが、経年的には 500~600人程

度で推移しています。

一方、転出状況においては、平成 13年、平

成 17年に大幅な増加が見られましたが、全体

的には減尐傾向にあります。平成 24年は、大

幅な減尐がみられます。

⑥出生・死亡の状況

出生数は 130 人程度、死亡数は 180人程度

での推移となっている。一貫して、死亡数が

出生数を上回っており、自然減の状態が続い

ています。

144139

142 141144

126

143 143

128

135130

122127

149147

183

170

158

180 178

159

179 179176

185 186

100

120

140

160

180

200

H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24

出生

死亡

資料:町住民環境課

623 623

663

585

537551

514

574

523513

579

471

556

618

774

702 695

629

767

731

647

708

631 639624

537

400

450

500

550

600

650

700

750

800

H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24

(人)

転入

転出

資料:町住民環境課

■校区別人口の推移

■校区別世帯数の推移

■転入・転出の状況

■出生・死亡の状況

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⑦通勤通学流動にみる他市町村とのつながり

通勤・通学による人口流動の推移は、平成 12 年から平成 17 年にかけて流入・流

出ともに減尐傾向にあります。流出入先市町の順位について経年変化はみられず、

流出は荒尾市、旧玉名市、大牟田市、旧熊本市、旧岱明町の順となっています。流

入は荒尾市、旧岱明町、旧玉名市、大牟田市、旧熊本市の順となっており、流出・

流入ともに荒尾市との結びつきが強い傾向がみられます。

町内人数 9,370 4,827 1,263 959 842 480 340割合 100.0% 51.5% 13.5% 10.2% 9.0% 5.1% 3.6%人数 8,902 4,470 1,274 928 794 429 251割合 100.0% 50.2% 14.3% 10.4% 8.9% 4.8% 2.8%

全 体上位5市町

荒尾市 旧玉名市 大牟田市 旧熊本市 旧岱明町

H12年

H17年

荒尾市

従 業 ・ 通 学 先

旧玉名市 大牟田市 旧熊本市 旧岱明町

町内人数 9,257 4,827 1,743 808 775 549 84割合 100.0% 52.1% 18.8% 8.7% 8.4% 5.9% 0.9%人数 9,147 4,470 1,801 801 778 710 82割合 100.0% 48.9% 19.7% 8.8% 8.5% 7.8% 0.9%

大牟田市 旧熊本市

大牟田市 旧熊本市

全 体常  住  地

上位5市町

H12年 荒尾市 旧岱明町 旧玉名市

H17年 荒尾市 旧岱明町 旧玉名市

■流出人口の推移

■流入人口の推移

出典:国勢調査

出典:国勢調査

■人口流動図(H12 年) ■人口流動図(H17 年)

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1)住宅ストックの状況

①長洲町における住宅の種類別世帯数の推移

長洲町では、持ち家が約 8割を占めています。公営借家については、平成 12年以

降は大きく減尐しています。一方で、民営借家および給与住宅が増加傾向にありま

す。

普通世帯数 持ち家 公営借家 民営借家 給与住宅 間借り その他

昭和 45 年 3,383 2,960 55 274 70 22 2

55 年 4,441 3,448 214 359 383 30 7

60 年 4,929 3,918 203 439 347 22 -

平成 2 年 5,051 4,148 202 484 202 15 -

7 年 5,329 4,411 204 513 183 18 -

12 年 5,637 4,571 209 544 271 42 -

17 年 5,770 4,627 177 676 250 40 -

22 年 6,043 4,627 146 701 345 87 -

②住宅建設の動向

長洲町の住宅着工戸数は平成

8 年度をピークに減尐傾向にあ

り、近年は 50戸前後となってい

ます。平成 20年度は貸家住宅が

比較的多く着工しています。

着工住宅の平均面積の推移を

みると、貸家の平均面積は 50㎡

程度となっています。

0% 20% 40% 60% 80% 100%

昭和45年

昭和55年

昭和60年

平成 2年

平成7年

平成12年

平成17年

平成22年

持ち家

公営借家

民営借家

給与住宅

間借り

その他

82

11492 87

131 126

92

130

87 7864 72

59 5745 46 53 49 46 42 34

49

219

37

35

3224

1120 45 40

425

12 1259

15

14

7

36

5

25

6

25

3

4

5

116

124

6

34

1

1 1

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

H1

H2

H3

H4

H5

H6

H7

H8

H9

H10

H11

H12

H13

H14

H15

H16

H17

H18

H19

H20

H21

H22

(戸) 持 家 貸 家 給与住宅 分譲住宅

資料:建築統計年報

■住宅の種類別世帯数の推移

■所有関係別住宅着工戸数の推移

出典:長洲町 HP

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③住宅地の地価

熊本県における県平均の住宅地の地価は 3.0~3.5%程度で下落し続けており、特

に市部より郡部において下落幅が大きい状況です。平成 23年度における住宅地の地

価の平均変動率は、県平均で 3.0%、市部で 2.8%、郡部で 3.3%の下落となってい

ます。

また、市町村別にみると、平成 23年度における住宅地の地価の平均変動率は、熊

本市で 1.7%、荒尾市で 3.9%、玉名市で 3.6%の下落となっており、いずれも平成

22 年度から平成 23 年度で回復傾向がみられます。一方、長洲町では平均変動率が

3.8%の下落が継続している状況です。

平均価格平均

変動率平均価格

平均変動率

平均価格平均

変動率平均価格

平均変動率

(円) (%) (円) (%) (円) (%) (円) (%)

県 平 均 29,500 ▲ 3.2 28,700 ▲ 3.5 28,000 ▲ 3.4 27,400 ▲ 3.0

 市 部 38,000 ▲ 3.2 36,500 ▲ 3.4 35,300 ▲ 3.4 34,500 ▲ 2.8

 郡 部 15,500 ▲ 3.3 15,200 ▲ 3.5 14,000 ▲ 3.4 13,600 ▲ 3.3

熊 本 市 71,300 ▲ 2.5 67,200 ▲ 2.9 62,300 ▲ 2.7 61,500 ▲ 1.7

荒 尾 市 26,200 ▲ 2.9 25,200 ▲ 3.7 23,900 ▲ 4.4 22,900 ▲ 3.9

玉 名 市 20,300 ▲ 2.6 19,400 ▲ 3.8 18,500 ▲ 4.3 17,800 ▲ 3.6

長 洲 町 18,000 ▲ 3.8 17,400 ▲ 3.4 16,700 ▲ 3.8 16,000 ▲ 3.8

H20年度 H21年度 H22年度 H23年度

出典:くまもとの地価

■住宅地の地価の状況

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④町営住宅

本町の町営住宅は、3団地 124戸のストックを有しており、うち 2団地は長洲校区

に整備されています。3団地に比べて、腹赤校区の平原団地は周辺施設があまり整備

されていません。集会所・児童遊園・駐車場は全団地に整備されていません。

間取りは、2Kまたは 3DKとなっており、家賃は平原団地の 3,100~11,400 円が

最も安く、井樋内団地の 11,100~39,500円が最も高くなっています。ほぼすべての

団地において、築 40年以上経過しており老朽化が懸念されています。

団地名 校区 構造 階

管理戸数 建設 年度

敷地 面積 (㎡)

床面積

(㎡/

戸)

間取り

家賃 (円)

EVの有無 棟

戸数

平 原 腹赤 CB

造 1 7 20 S41~43 2,508 31.5 2K

3,100

11,400

×

新 山 長洲

CB

造 2 4 22 S47~48

5,853

42.70

46.24

3DK

8,900

38,500

×

RC

造 4 2 48 S47~49

52.68

57.14

3DK

9,700

36,200

×

井樋内 長洲 CB

造 2 6 34 S51~54 5,458

53.28

64.64

3DK

11,100

39,500

×

■町営住宅ストックの状況

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10

日立造船(株)社宅

「宮野住宅」

■町営住宅の位置図

■新山団地

■井樋内団地

■平原団地

※前浜団地は平成 26 年に廃止

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2)都市施設

①公園・広場の状況

本町の公園・広場の整備状況を以下に示します。ほぼ町内全域に公園・広場等が

配置されています。

資料:町建設課

名   称 所在区 面積(㎡) 名   称 所在区 面積(㎡) 名   称 所在区 面積(㎡)

1 六 栄 緑 地 広 場 向 野 2,493 9 腹 赤 児 童 公 園 腹 赤 3,062 17 金魚と鯉の郷公園 大明神 80,569

2 上沖洲児童公園 上沖洲 2,809 10 古 城 東 公 園 古 城 3,257 18 新 塘 公 園 平 原 460

3 清 里 児 童 公 園 建 浜 2,500 11 古 城 西 公 園 古 城 1,469 19 宮ノ町チビッ子広場 宮ノ町 777

4 清源寺児童公園 清源寺 2,030 12 笹 ヶ 浦 公 園 立 野 3,508 20 折地チ ビッ子広場 折 地 2,682

5 中 道 児 童 公 園 東荒神 3,310 13 中 央 公 園 上 町 1,945 21 みなとチビッ子広場 西荒神 1,137

6 宮 崎 児 童 公 園 宮 崎 2,253 14 一 先 宮 公 園 永方・赤田・葛輪 7,895 22 総合スポーツセンター 平 原 57,059

7 向 野 児 童 公 園 向 野 2,492 15 古 城 公 園 赤 崎 16,213 23 名石浜緑地公園 清源寺・上沖洲 47,920

8 梅 田 児 童 公 園 梅 田 2,379 16 建 浜 農 村 公 園 建 浜 10,080 258,299合      計

日立造船(株)社宅

「宮野住宅」

■公園・広場の整備状況

長洲町役場

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12

②公共・公益施設の状況

本町の公共・公益施設の状況を以下に示します。

③医療・福祉施設の状況

本町の医療・福祉施設の状況を以下に示します。

日立造船(株)社宅

「宮野住宅」

日立造船(株)社宅

「宮野住宅」

■公共・公益施設の位置図

長洲町役場

資料:町勢要覧

■医療・福祉施設の位置図 資料:町福祉保健介護課

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13

(5)長洲町の特徴

1)上位・関連計画の整理

①第 5次長洲町総合振興計画(平成 23年 3月)

平成 23年 3月に策定された「第 5次長洲町総合振興計画」において、住まいづく

りに係る事項は次のとおりです。

1.まちづくりの

主な課題

①子育て環境と教育の向上

②まち全体での高齢社会への対応

③地場産業の活性化による活気あるまちづくり

④快適で安全な暮らしのための生活基盤の整備

⑤住民との信頼関係のあるまちづくり

⑥財政の健全化と行政サービスの向上

2.まちの将来像 みんなの力で、夢・希望・活力・安全・安心のあるまち

3.まちづくりの

基本目標

住宅・生活基盤に関連した基本目標と目指すべきまちの姿

基本目標 5 快適な暮らしができる安心のあるまち

目指すべきまちの姿 計画的な土地利用が行われているまち

目指すべきまちの姿 計画的に整備された道路のあるまち

目指すべきまちの姿 公共交通を利用して気軽に移動できるまち

目指すべきまちの姿 安心して快適に利用できる公園や住宅のある

まち

目指すべきまちの姿 良質で安定した水道水を供給するまち

目指すべきまちの姿 豊かな自然環境を守る下水道のあるまち

基本目標 4 安心して生活できる安全のあるまち

目指すべきまちの姿 みんなでつくる交通事故のないまち

目指すべきまちの姿 日常生活における犯罪のない安心なまち

目指すべきまちの姿 予測できない災害への備えが確保されている

まち

4.まちづくりの

基本指標 ●平成 32年(2020年)における将来目標人口 16,000人

5.まちづくりの

基本的な

進め方

①人づくり、人を大切にするこころの育成

②協働によるまちづくりの推進

③健全な自治体経営の推進

6.計画推進の

ために

①ハード重視からソフト重視の施策の展開

②各種施策の連携と総合的な施策の展開

③計画推進体制の整備

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14

②長洲町住宅マスタープラン(平成 16年 1月)

平成 16年 1月に策定された「長洲町住宅マスタープラン」において、住まいづく

りに係る事項は次のとおりです。

1.本町の住ま

いの課題

①新たな居住人口の増加が必要

②住宅密集、空家・空地等に対する施策が必要

③高齢者・障害者等の居住環境整備が必要

④子育て世代に対する施策が必要

⑤老朽化した町営住宅に対する施策が必要

⑥自然環境に配慮した住宅施策が必要

⑦住宅リフォームを推進させる施策が必要

⑧町民等が住まい・まちづくり等の計画等に参加できる体制整備が必要

2.住宅政策の

目標

【基本目標】「憩い、潤い、やすらぎのある住まいの郷 ながす」

県内でも有数の工業都市として発展してきた本町は、豊かな自然環

境と人々が共生し、高齢者や障害者など誰でも「憩いと潤い、やすら

ぎを享受し、安心・安全・快適に暮らせる住まいや環境の創造を目指

し、町民との協働によるまちづくり・住まいづくりを推進する。

●憩い…子どもから高齢者までの誰もが、長洲町で集い暮らせる住まいの

環境の創出を目指す。

●潤い…有明海と河川などの水辺環境を活かし、落ち着いた住まいの環境

の創出を目指す。

●やすらぎ…緑あふれる自然環境の中で、安心・安全な住まい環境の創出

を目指す。

3.基本方針

基本方針 1:新たな居住人口を増やす住宅・住環境整備

基本方針 2:旧市街地の活性化のための住宅・住環境整備

基本方針 3:すべての人にやさしい住宅・住環境整備

基本方針 4:子育て世代に配慮した住宅・住環境整備

基本方針 5:多様な世帯の暮らしを支える良質な公共住宅の整備

基本方針 6:環境と共生していく住宅・住環境整備

基本方針 7:多様なライフステージに対応した住宅・住環境整備

基本方針 8:住まい手・作り手・行政のパートナーシップによる住宅・住

環境整備

4.重点プロジ

ェクト

重点プロジェクト①良質な住宅地形成のためのルールづくり

重点プロジェクト②空家・空地の再生事業

重点プロジェクト③町営住宅ストックの改善

重点プロジェクト④住情報の受・発信事業

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15

③長洲町住まいづくり基本計画(平成 24年 3月)

平成 24年 3月に策定された「長洲町住まいづくり基本計画」において、住まいづ

くりに係る事項は次のとおりです。

1.本町の定住化

に向けた課題

①子育て世代が安価で住める住宅の供給

②便利な子育て施設や教育環境の充実

③町内就業者の需要に応じた住宅の供給

④交通利便性向上による交流人口増

⑤駅周辺等の利便性を活用した住宅の供給

⑥新しい町営住宅の供給

⑦高度情報化社会に対応した情報環境の整備

⑧長洲町で生活するための暮らしの情報発信の充実

2.住まいづくり

の目標

【基本目標】「“住みたい”“住み続けたい”暮らしができるまち」

定住促進において大前提となる長洲町の人口定着に向けて、町外か

らの“移住”を促しながら、人口流出を抑制する“定住”を図り、第

5次長洲町総合振興計画に掲げる将来目標人口 16,000 人の達成を

目標に据えます。そのために、町外居住者から「長洲町に住んでみた

い」と望まれるような、また、町内居住者が「長洲町で暮らし続けた

い、次代にも引き継ぎたい」と誇りをもって住み続けられるような、

魅力ある豊かな暮らしを創出し、『“住みたい”“住み続けたい”暮ら

しができるまち』を目指します。

3.基本方針

①住宅の供給、②住宅・住宅地の供給、③住宅環境の整備、④子育て環境

の整備、⑤教育環境の整備、⑥交通利便性の向上、⑦高齢者にやさしい環

境の整備、⑧みんなで暮らしやすい環境の整備、⑨情報環境の整備、⑩暮

らしの情報発信の充実

4.重点プロジェ

クト

● 出町地区整備構想

~歴史と文化の薫るまちの再生プロジェクト~

● 一ノ割地区整備構想

~進行市街地の適正な誘導を図るまちづくり~

● 溿の上地区整備構想

~駅前地区のニュータウン形成による未来のまちづくり~

5.民間事業者と

連携した住宅

供給

住宅セーフティネット機能の向上を目的として、民間事業者等が建設する

一定の基準(公営住宅等整備基準及び(仮称)長洲町借上型町営住宅整備

基準等)を満たす共同住宅を長洲町が借り上げて、町営住宅として活用す

る借上型町営住宅制度の構築が考えられます。

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16

④長洲都市計画区域マスタープラン(平成 24年 3月)

平成 24年 3月に策定された「長洲都市計画区域マスタープラン」において、住ま

いづくりに係る事項は次のとおりです。

都市計画の目標

都市づくり

の基本理念

【将来像】

みんなの力で、夢・希望・活力・安全・安心のあるまち

【都市づくりの基本目標】

○未来を拓く人づくりを目指す夢のあるまち

○人と人とが支え合う希望のあるまち

○地域の資源を活かす活力のあるまち

○安心して生活できる安全のあるまち

○快適な暮らしができる安心のあるまち

○みんなとともに未来へつなぐ協働のあるまち

地域毎の

市街地像

【将来都市像】

市街地は、長洲町役場周辺に広がる既成の市街地を位置づけ、集

約型都市構造を形成していく。また、田園居住エリアとして、農業

ゾーン内に形成されている住宅地や農業集落を位置づける。

【地域(ゾーン)ごとの将来像】

<中心拠点>

長洲町役場を中心とした地域を中心拠点として位置づけ、商

業・業務、教育・文化、情報発信等の都市機能の集積を図り、利

便性の高い機能的な中心ゾーンの形成を図る。

<交流拠点>

長崎~熊本~大分を結ぶ観光ルートの中継点にある長洲港周

辺を交流拠点として位置づけ、周辺道路網の充実を図り、効率的

で機能的な交通結節点の形成を促進する。

<市街地ゾーン>

中心拠点に近接して形成される店舗、住宅を主とした都市的土

地利用がされている地域を本区域の市街地ゾーンとして位置づ

け、生活利便性の高い住宅市街地として、良好な住環境の維持、

増進を図る。

<田園居住エリア>

用途地域外の区域における主要な集落を田園居住エリアとし

て位置づけ、歴史や文化、現在の集落形態等の地域特性に配慮し

た生活環境の整備を図る。

各種の社会

課題への対

①尐子・高齢化への対応

②地球温暖化をはじめとする環境問題への対応

③都市における自然環境保全への対応

④社会的な交流・連携への対応

⑤都市防災への対応

⑥安全・安心に暮らせる地域づくりへの対応

都市計画区

域の広域的

位置づけ

本区域における都市計画のあり方としては、定住ゾーンとして

荒尾市、玉名市、大牟田市との連携を図っていくものとする。ま

た、九州自動車道や九州新幹線、鹿児島本線といった九州の縦軸

と、長崎方面への横軸の結節点として、長洲港を中心とした海の

玄関口としての機能の向上と道路網の整備を推進する。

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17

都市計画の目標

【市街地像図】

主要な都市計画の決定の方針

土地利用

に関する

主要な都

市計画の

決定の方

【主要用途の配置の方針】

<商業・業務地>

沿道型商業サービスや行政機能の集積する役場周辺の既成市街地に、本区域

の商業・業務地を配置する。

本区域の消費活動は、荒尾市、大牟田市、福岡市等へ流出している傾向にあ

るが、日常生活を支援する商業・業務地としての利便性を高めるために、歩行

者空間を整備する。

<住宅地>

商業・業務地の周辺に位置する既成市街地に中密度住宅地を配置する。中密

度住宅地では、比較的密度の高い市街地形態を維持しつつ、良好な居住環境の

維持・誘導を図るため、中層共同住宅への建替えを促進するなど、位置的な利

便性を活かし、安全で機能的な市街地への更新に努める。

農業ゾーンに接する市街地内の外縁部に低密度住宅地を配置し、良質な戸建

て住宅地の形成を図る。

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18

2)長洲町の特徴

【工業のまち】

長洲町は、造船業、サッシ業など製

造業において企業を誘致し、日立造船

(株)やジャパンマリンユナイテッド

(株)をはじめとする様々な企業が進

出している工業の町です。

長洲町の従業構造をみると、第 2 次産業の割合が、全国平均、熊本県平均を大き

く上回っており、他市町村よりも製造業に従業する人が多いことがわかります。

長洲町の製造品出荷額は、県内 5位の約 2010億円(平成 22年度)です。また、1

人当たりの市町村民所得は、2907千円であり、県内 2位の高い水準を有しています。

①昼夜間人口

誘致企業で働く従業員数約 4600 人のうち、町内に住んでいる従業員数は約 1300

人で約 3 割となっています。また、若い世代の住民は暮らしやすさを考えて商業施

設や病院等が立地し生活に便利な近隣の荒尾市、玉名市、大牟田市等に移り住んで

いるのが現状です。

このような背景から、長洲町の昼夜間人口比率は 1.032 で、荒尾市の 0.882 に比

較して大きくなっています。そのため、町外からの居住者を誘導し、定住促進を図

っていく必要があります。

②住宅種別の比較

長洲町は、隣接する市町村と比べ、

持ち家率は高いものの、公営住宅や

民営の借家の設置率が低くなって

おり、大きな差が生じています。町

内の定住および移住が難しい状況

にあるといえます。

■長洲町および近隣市町村の住宅種別割合

第1次産業 第2次産業 第3次産業

長洲町 5.5% 38.9% 55.6%

全国 1.1% 22.8% 76.1%

熊本県 2.7% 19.2% 78.1%

■従業構造の割合

71.4%

72.8%

83.1%

8.5%

9.8%

3.8%

18.3%

14.6%

9.7%

2.2%

2.9%

3.4%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

玉名市

荒尾市

長洲町

持ち家 公営・公団等 民営の借家 給与住宅

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19

③定住化に向けた取り組み

定住促進は、町全体の施策の充実と魅力あるまちづくりを目標として、様々な分

野から住まいづくりを捉え、町の施策として取り組むことが必要となります。「長洲

町住まいづくり基本計画」では、住まいづくりの基本方針をもとに、複数にわたる

施策分野の連携を図りながら、本町の定住促進に必要な9つの定住化施策のテーマ

を柱として定住促進に取り組にでいます。

住まいづくりの

基本方針 定住化施策のテーマ

①住宅の供給

②住宅・住宅地の供給

③住宅環境の整備

④子育て環境の整備

⑤教育環境の整備

⑥交通利便性の向上

⑦高齢者にやさしい環境の整備

⑧みんなで暮らしやすい環境の整備

⑨情報環境の整備

⑩暮らしの情報発信の充実

3.住宅取得層のニーズに沿った魅力ある新たな住宅地の形成

1.良質で安全な町営住宅の提供

6.身近で便利な生活関連施設の充実

5.町の顔としての交通拠点の形成

4.安心して子どもを育む子育て・教育環境の充実

2.快適な住まいの確保をサポートする制度・支援の充実

7.誰もが安心して便利に生活できるサービス・環境の充実

8.地域の活力・交流を引き出す場所・機会の充実

9.長洲で暮らす魅力のPRの充実とイメージアップ

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20

1-2 宮野地区の特徴

(1)宮野地区の概況

日立造船(株)社宅「宮野住宅」の敷地の周辺には、様々な施設が隣接しています。

敷地西側に町立六栄小学校、北東側に町立六栄保育所が隣接しており、さらに町立六

栄保育所の東側に六栄緑地広場が存在しています。また、敷地中央部には町立地域福

祉センターが隣接しています。商業施設では、南側に飲食店やスーパーマーケット、

コインランドリーなどがあり、その他向野公民館、向野郵便局、病院などが立地して

います。

半径約 400m以内に生活に必要な教育施設、福祉施設、商業施設など様々な施設が集

積しており、生活しやすい環境が整っていると言えます。

100m

200m

300m

400m

⑥ ⑧

■周辺概況

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21

①町立六栄小学校 ②町立六栄保育所

③六栄緑地広場 ④町立地域福祉センター

⑤飲食店

⑧家電販売店 ⑦スーパーマーケット

⑥飲食店

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22

(2)宮野地区のまちづくりの基本方針

宮野地区周辺は、(1)で述べたように、周辺に保育所や学校や福祉施設、公園な

ど生活するうえで必要となる施設が隣接し住みよい環境が整っています。

そのため、本地区を居住誘導地域として住環境整備を図っていきます。それによ

り、子育て世代の人口増加や定住化促進などの効果が期待されます。

⑨コインランドリー

⑪向野公民館

⑩向野郵便局

⑬病院(内科、小児科)

⑫向野児童公園

⑭病院(歯科)

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23

2.調査事業概要

2-1 業務の目的・背景

長洲町は、公営住宅や民営の借家の設置率が低いことや若い世代が暮らしやすさを

考え生活に便利な近隣市町村に移り住むこと等から、定住人口が年々減尐しています。

このような状況を解決するため、平成 24年には「住まいづくり基本計画」、平成 26年

には「住宅マスタープラン」を策定しました。様々な定住化施策等を実施し、定住化

促進に取り組んでいます。

本調査・検討業務は、近い将来閉鎖が予定されている日立造船(株)の社宅を地域

優良賃貸住宅として建て替えまたはリニューアルし、町内の居住環境を整備、日立造

船及び関連企業社員の町内居住の促進と新たな町外からの居住者を誘導し、定住促進

を目指す事業において、町の行政負荷を職員業務面、財政面の両面から軽減できる官

民連携のスキームを調査検討するものです。

2-2 業務対象地の概要

(1)概況

業務の対象地である日立造船(株)社宅「宮野住宅」の概況以下に示します。

名称 日立造船(株)社宅「宮野住宅」

立地 熊本県玉名郡長洲町大字宮野 1001番地 内

建設年 1973年(昭和 48年)

入居状況 184世帯(戸)、477人(平成 26年 3月 31日現在)

敷地面積 34,751.37㎡

建築面積 17,183.80㎡

居室専有戸数 12棟、264戸

戸数の内訳 4戸棟(5号棟、7号棟、9号棟、10号棟)

6戸棟(1号棟、2号棟、3号棟、4号棟、6号棟、8号棟、11号棟)

8戸棟(12号棟)

一戸当たりの

床面積

60.55㎡

家賃負担 2.5万円

土地の評価額 1.75億円

建物の評価額 4.82億円(12棟)

■日立造船(株)社宅「宮野住宅」の概況

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24

日立造船(株)社宅は、日立造船及び関係会社の社宅および海外研修生住宅として

活用されており、全 12棟(264戸)で 184世帯(477人)が入居しています。(平成 26

年 3月 31日現在)1973年(昭和 48年)に旧耐震基準で建築され、築 40年以上経過し

ています。一部老朽化が見られ、今後何らかの対策を講じることが必要となると考え

られます。

各社宅には、それぞれ駐車場(10~30台程度)、駐輪場(1カ所)、倉庫(プレハブ 4

カ所)、ごみ置き場(1 カ所)などが設置されています。また、貯水タンクや防火水槽

も設置されています。

社宅以外にも敷地内には、集会所、遊具が配置された広場やフェンスで囲まれた広

場が配置されています。

日立造船(株)社宅 日立造船(株)社宅

4号棟南側の広場

1号棟南側の集会所

駐車場 倉庫 貯水タンク

1号棟南側の空き地

日立造船(株)社宅

Page 27: 民間企業社宅を公営住宅として有効活用する 官民連 …70HZ 74 S 75HZ 79 S 80HZ 84 S 85HZ 89 S 90 S è V 6× j# ë!Ã %4 2( qH H22 \ Ã1* 高齢化の推移 5歳階級別人口比率

25

■宮野団地の敷地全体の配置図

Page 28: 民間企業社宅を公営住宅として有効活用する 官民連 …70HZ 74 S 75HZ 79 S 80HZ 84 S 85HZ 89 S 90 S è V 6× j# ë!Ã %4 2( qH H22 \ Ã1* 高齢化の推移 5歳階級別人口比率

26

(2)宮野住宅における人口動向

日立造船(株)社宅「宮野住宅」に居

住者数は合計 477人(外国人も含む)で

184世帯です。男女の内訳は、男性が 276

人、女性が 201人です。

年代別にみると、25~29 歳が 114 人

(24%)と最も多く、次いで 0~4 歳が

94人(20%)、30~34歳が 85人(18%)

となっています。これより、5歳未満の

小さい子供をもつ、25~34 歳程度の親

の世帯が多いことがわかります。

また、子供に注目すると、小学生は

22 人、中学生は 9 人、高校生は 8 人と

なっており、子供が成長するにつれて、

社宅を出ている傾向にあると考えられ

ます。

今後、日立造船(株)社宅「宮野住宅」

を町営住宅(地域優良賃貸住宅整備)と

して有効活用する検討を行うにあたり、

子育て支援の観点から子育て世代の居

住を促進することにより、定住化を図る

ことができると考えられます。

53

199 7

16

6456

198 3

11 7 4

41

17

5 4

14

50

29

12

135 4 6 1

0

20

40

60

80

100

120

94

36

1411

30

114

85

31

21 8 15 13 5

(人)

(歳)

0~4歳; 20%

5~9歳; 8%

10~14

歳; 3%

15~19

歳; 2%

20~24歳; 6%

25~29歳; 24%

30~34歳; 18%

35~39歳; 6%

40~44歳; 4%

45~49歳; 2%50~54

歳; 3%

55~59歳;

3%

60~64歳; 1%

0~4歳

5~9歳

10~14歳

15~19歳

20~24歳

25~29歳

30~34歳

35~39歳

40~44歳

45~49歳

50~54歳

55~59歳

60~64歳

■入居者の割合

■入居者数

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27

【参考-1】 PFI事業による地域優良賃貸住宅整備状況

平成 11 年の「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」

(PFI法)施行以来、現在では 400 件を超える公共事業がPFI手法により実施

されています。PFI法施行以降の公的賃貸住宅PFI件数は 52件で、そのうち地

域優良賃貸住宅件数は 8 件実施されています。地域優良賃貸住宅件数で実施された

事業は、以下の通りです。各事業の概要は、次項に整理します。

本事業は、民間の日立造船(株)の社宅を地域優良賃貸住宅としてリニューアル

するため、前例のない先導的な事業です。そのため、実現に向けて、日立造船(株)

との調整を図りながらも、町の行政負荷を職員業務面、財政面の両面から軽減でき

る斬新な官民連携のスキームを調査検討する必要があります。

■PFI事業による地域優良賃貸住宅整備事例

No 自治体名 事業名

1 神奈川県山北町 山北駅北側定住促進住宅整備事業

2 佐賀県みやき町① ショッピングセンターマイン用地における定住促

進住宅整備事業

3 佐賀県みやき町② 三根庁舎南東用地における定住促進住宅整備事業

4 大分県豊後高田市 豊後高田市子育て支援住宅等整備及び子育て団地

形成準備業務PFI事業

5 島根県つわの町 つわの暮らし推進住宅整備事業

6 佐賀県みやき町③ 三根庁舎西南用地定住促進住宅整備事業

7 福岡県大刀洗町 大刀洗町定住促進住宅整備事業(仮称)

(引用:全国地域PFI協会ホームページ)

山北駅北側定住促進住宅整備事業 ショッピングセンターマイン用地にお

ける定住促進住宅整備事業

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■地域優良賃貸住宅整備事例の概要

(引用:全国地域PFI協会ホームページ)

事業名 自治体 事業方式 事業選定方式 事業形態 事業年数 VFM率 補助金・交付金等の活用 事業の特徴

神奈川県山北町 BTO公募型プロポーザル方式

サービス購入型 事業契約締結後25年 約4.3%①地域優良賃貸住宅制度②家賃低廉化補助金

・実質財政負担ゼロ事業スキーム・日本初のPFIによる地域優良賃貸住宅整備事業

棟数/階数 構造 間取り 住居戸数 住居面積 認定家賃

1棟/6階建 RC構造 2LDK/3LDK/3LDK 12戸/18戸/12戸 65.27㎡/72.23㎡/80.27㎡

6.5万~6.8万/7.0万~7.3万/7.5万~7.8万

事業名 自治体 事業方式 事業選定方式 事業形態 事業年数 VFM率 補助金・交付金等の活用 事業の特徴

佐賀県みやき町 BTO公募型プロポーザル方式

サービス購入型 事業契約締結後30年 約0.3%①地域優良賃貸住宅制度②家賃低廉化補助金

実質財政負担ゼロ事業スキーム

棟数/階数 構造 間取り 住居戸数 住居面積 認定家賃

1棟/5階建 RC構造 2LDK/3LDK 15戸/9戸 65.33㎡/72.33㎡ 6.6万/7.26万

事業名 自治体 事業方式 事業選定方式 事業形態 事業年数 VFM率 補助金・交付金等の活用 事業の特徴

佐賀県みやき町 BTO公募型プロポーザル方式

サービス購入型 事業契約締結後30年 約0.3%①地域優良賃貸住宅制度②家賃低廉化補助金

実質財政負担ゼロ事業スキーム

棟数/階数 構造 間取り 住居戸数 住居面積 認定家賃

1棟/5階建 RC構造 2LDK/3LDK 9戸/15戸 64㎡/73㎡ 6.6万/7.26万

事業名 自治体 事業方式 事業選定方式 事業形態 事業年数 VFM率 補助金・交付金等の活用 事業の特徴

大分県豊後高田市 BTO公募型プロポーザル方式

サービス購入型 事業契約締結後22年 -①地域優良賃貸住宅制度②家賃低廉化補助金

・実質財政負担ゼロ事業スキーム

棟数/階数 構造 間取り 住居戸数 住居面積 認定家賃

1棟 RC構造 メゾネットタイプ 18戸程度 65㎡以上 -

事業名 自治体 事業方式 事業選定方式 事業形態 事業年数 VFM率 補助金・交付金等の活用 事業の特徴

島根県つわの町 BTO公募型プロポーザル方式

サービス購入型 25年 -①地域優良賃貸住宅制度②家賃低廉化補助金

・実質財政負担ゼロ事業スキーム

棟数/階数 構造 間取り 住居戸数 住居面積 認定家賃

5棟/1階 木造戸建 - 5戸95㎡程度(約敷地400㎡)

事業名 自治体 事業方式 事業選定方式 事業形態 事業年数 VFM率 補助金・交付金等の活用 事業の特徴

佐賀県みやき町 BTO公募型プロポーザル方式

サービス購入型 事業契約締結後30年 -①地域優良賃貸住宅制度②家賃低廉化補助金

実質財政負担ゼロ事業スキーム

棟数/階数 構造 間取り 住居戸数 住居面積 認定家賃

提案 RC構造 2LDK/3LDK 24戸程度/35戸程度 55㎡/65㎡

事業名 自治体 事業方式 事業選定方式 事業形態 事業年数 VFM率 補助金・交付金等の活用 事業の特徴

福岡県大刀洗町 BTO公募型プロポーザル方式

サービス購入型 事業契約締結後30年 -①地域優良賃貸住宅制度②家賃低廉化補助金

・実質財政負担ゼロ事業スキーム

棟数/階数 構造 間取り 住居戸数 住居面積 認定家賃

提案 RC構造 2LDK/3LDK 9戸/18戸 65㎡/75㎡ -

三根庁舎西南用地定住促進住宅整備事業(仮称)

三根庁舎南東用地における定住促進住宅整備事業

その他

その他

・駐車場スペース:各戸/2台 、 駐輪場スペース:各戸/1台

ショッピングセンターマイン用地における定住促進住宅整備事業

その他

・駐車場スペース:各戸/2台 、 駐輪場スペース:各戸/1台・コミュニティースペース、ゴミ置き場、緑地、児童遊園

山北駅北側定住促進住宅整備事業 その他

・駐車場スペース:各戸/1台 、 駐輪場スペース:各戸/1台・コミュニティースペース、ゴミ置き場、緑地、児童遊園・道路拡幅に伴う歩道整備(付帯工事)

豊後高田市子育て支援住宅等整備及び子育て団地形成準備業務PF I事業

その他

・ 実質財政負担ゼロ事業スキーム・公的賃貸住宅と分譲団地の一体整備と子育て団地としてのコミュニティ形成

大刀洗町定住促進住宅整備事業(仮称)

その他

・駐車場スペース:各戸/2台 、 駐輪場スペース:各戸/2台・ごみ集積所、境界壁、生垣等の整備

津和野町つわの暮らし推進住宅整備事業

その他

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【参考-2】 地域優良賃貸住宅制度

地方公共団体による住宅供給に対する支援制度

低額所得者、高齢者、障害者、子育て世帯等の住宅の確保に特に配慮を要する者に

対する賃貸住宅の供給を推進するため、地方公共団体が負担する住宅の整備費用・家

賃低廉化費用を国が支援する制度です。

●支援スキーム

各基準は、以下の通りです。

●整備基準

戸数 ・新規建設:5戸以上 ・改良/買取/転用:1戸以上

規模 ①25㎡以上

②居間、食堂等を共同利用する場合:18㎡以上

③高齢者居住安定確保計画に別の基準を定めた場合:当該基準以上

構造 ①耐火構造の住宅②準耐火構造の住宅

③省令準耐火構造の住宅④都道府県知事が認める構造の住宅

整備 台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室を有していること

築年数 原則として竣工後 35年以内の建築物

整備地域 地域住宅計画に定める地域内であること

●管理基準

同居親族要件 なし

収入基準 収入分位 80%以下(所得が 487,000円以下)

世帯要件 ①高齢者世帯②障害者等世帯③子育て世帯

④地方公共団体が地域住宅計画に定める世帯

入居者選定方

入居者の選定方法そのほか賃貸の条件が適正に定められるもの

管理期間 10年以上

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●整備費助成

【社会資本整備総合交付金による支援】

●家賃低廉化助成

対象世帯

(属性と収入基準)

① 高齢者世帯② 障害者等世帯

③ 同居者に小学校修了前の者が

いる世帯

④ 災害被災者世帯

⑤ 不良住宅の撤去等により住宅

を失った世帯

⑥ 公営住宅の入居収入基準の見

直しに伴って

収入超過者となった世帯

所得が 21 万 4 千円を超えない

(収入分位 40%)

⑦ 低額所得者 所得が 15 万 8 千円を超えない

(収入分位 25%)

認定家賃(A) 近傍同種家賃と均衡を失しない額として、供給計画に規定している

家賃

入居者家賃(B) 地方公共団体が行う家賃低廉化事業によって引き下げられた実際の

家賃

助成 対象額 地方公共団体が行う家賃低廉化事業の額(A-B)【限度額:4万円

/月】

国の助成額 対象額の概ね 45%等

助成

期間

戸当たり 管理開始から 20年以内(上記の①・②の世帯は、40年以内)

世帯当たり 上記の③~⑥の世帯は、6年以内で地方公共団体が定める期間以内

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3.事業計画

3-1 本事業の必要性と解決すべき課題について

(1)町内進出企業の従業員の周辺自治体への流出について

右に示す通り、長洲町には、多く

の大企業が進出して、町の産業構造

は工業自治体と呼べる状況です。し

かしながら、進出企業の従業員の実

に 70%が周辺自治体に居住している

ため、周辺自治体に比して、昼間人

口が、夜間人口を大幅に上回ること

となり、企業進出が町内人口の増加

につながっていない結果となってい

ます。

こうしたこともあり、町の人口は、ここ 7年間で約 5%減尐しています。職住接近

の観点からすると、本来は町内に住んでいただける若年労働人口とその家族が、町外

に流出しているため、平成 26年の高齢化率は、平成 20年と比較して約 5ポイント高

くなっています。このため、町の将来の発展のためには、子育てをしている労働世代

にとって魅力的な町づくりが急務になっています。

本事業は特に住環境の整備を対象として、上記の目的を、可能な限り町の行政・財

政負担の小さい手法で整備する先導的な公民連携手法を検討します。

(2)長洲町内の公・民賃貸住宅整備の実状について

長洲町の住宅情勢は、近隣自治体に比べ、持ち家率は高いものの、公営住宅や民間

賃貸住宅の比率が低く、持ち家をする前の若年世帯の居住環境に弱点があることが明

らかです。特に公営住宅の比率は、周辺自治体の 1/2~1/3の状況で、公営住宅の整

備が急務であると考えられます。こうした状況の中、町内最大の進出企業である日立

造船㈱グループが、町内宮野地区に立地する同社社宅 264戸の廃止の方向を打ち出し

ました。

これが実行されると、町内公・民両面における賃貸住宅の不足もあり、同住宅に居

住中の同社グループ従業員世帯 184世帯(477人)が、町外に流出してしまうことが

懸念されます。これは、町人口の 3%にあたり、5年間の減尐に相当します。

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■長洲町および近隣市町村の住宅種類別

(3)日立造船㈱が廃止方針を出した宮野団地の現状と対応構想について

こうした事態を受け、以上に述べたい

くつかの課題を解決する方策として、長

洲町では日立造船㈱が廃止を検討してい

る対象住棟を、リニューアルもしくは解

体・新設により、町営地域優良賃貸住宅

として活用することで、不足している公

営住宅を 200 戸以上整備する公民連携の

事業を企画しました。町内進出企業の若

年労働世帯を中心とした子育て世帯をこ

の地域に誘導し、定住対策・人口増加対策に資する構想を打ち出しました。

その可能性と課題、実行への具体的な作業手順を今回の調査で明らかにします。

さらに今回の対象住宅が立地する宮野地区は、以下に示すとおり、町内の他地域よ

りも、子ども子育てに適した周辺諸施設に恵まれ、町としては、子ども子育て世帯の

居住誘導地域として最適であると考えられ、町として今後整備を想定している地域で

す。

率(%) 率(%) 率(%) 率(%)

長洲町 5,311 4,411 83.1 146 3.8 701 9.7 345 3.4

荒尾市 18,537 13,486 72.8 1,808 9.8 2,715 14.6 529 2.9

玉名市 13,794 9,844 71.4 1,177 8.5 2,523 18.3 310 2.2

持ち家 公営・公団等 民営の借家 給与住宅総世帯数

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(4)長洲町の課題と民間活用

以上の人口増加・定住対策の直

接的な課題のほか、長洲町が中長

期的に抱える課題が、右にまとめ

るものです。

第 1は、町の財政の厳しさです。

公共施設等総合管理計画や、公有

財産有効活用の観点、増大する社

会保障費等を考えると、本事業に

おいても、財政負担は、最小限に

抑えるギリギリの努力が求められます。

第 2は、大幅に削減してきた職員数(25%削減)で、初めての公民連携事業の手続

きを、労力面、能力面から、職員のみで推進していくことが困難であると予想される

ため、PFI手法や企画・基本計画の段階から民間事業者が関与するECI手法等の

検討も考えられます。さらに、町全体として、今後のインフラや公共資産の維持管理・

更新にあたり、公民連携の手法を活用して、行政・財政の負担を最小にするため、地

域全体として、こうした手法を受け入れる素地作りも欠かすことができません。

(5)今回の事業で解決を目指す課題のまとめ

以上、対象事業の推進に関連する直接、間接の課題で、今回の事業において、解決

すべき課題を再度、以下に整理します。

①今回廃止する社宅居住者の町外流出防止

②公営住宅等の賃貸住宅が不足している町特有の環境状況の解消

③子ども・子育て居住誘導地域としての宮野地区の構築に向けての第 1歩事業の開始

④定住人口増加対策としての地域優良賃貸住宅の整備

⑤公民連携手法により行財政負担の軽減の実現

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34

3-2 検討する事業内容の範囲について

(1)「土地と建物の所有」と「施設整備主体」、「資金調達」のスキームの選定

本事業においては、土地・住棟の現所有者である日立造船㈱と町、さらに公民連携

事業を想定した場合の民間事業者(SPC等)の 3者の所有形態を想定する必要があ

ります。

また、各々の所有の形態に対し、施設整備の主体をどうするか、資金調達をどの主

体が行うかによって、事業スキームが異なります。以下に「土地と建物の新たな所有

者」、「事業主体」、「日立造船(株)と新所有者の契約」、「施設整備方法」について考え

られる対象を整理します。

■土地と建物の新たな所有者

土地と建物それぞれにおいて、以下の3主体の所有が考えられます。

・日立造船(株)

・町

・SPC

■事業主体

事業主体は、以下の 3主体が考えられます。

・日立造船(株)

・町

・SPC

■日立造船(株)と新所有者の契約

土地と建物それぞれにおいて、以下の 2通りの契約が考えられます。

・日立造船(株)がそのまま所有権を維持する

・有償または無償で、町またはSPCが買い取る

■施設整備方法

・既存の社宅をリニューアルする方法

・既存の社宅を解体し、新設する方法

以上の検討の中で、日立造船㈱との事前折衝から、日立造船㈱が自ら事業者になっ

て施設整備、維持管理等を行う意思がないこと、また土地については、売却しないこ

とを想定し、定期借地とします。したがって、本調査では、次項の①~③を検討対象

とします。

事業手法は、設計施工をすべて民間で行うPFI方式、公共負担の一体施工のDB

(デザインビルド)方式、公共発注の分離発注であるが事前に民間に声を上げてもら

うECI方式の3手法が考えられます。手法の中でもPFI方式に着目し、本調査に

おける試算はPFIで行うものとします。

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35

①ベースケース:PSC

建物を町が日立造船㈱から無償もしくは有償にて買い取り、町が資金調達(起債)

し、リニューアルもしくは解体・新築して、地域優良賃貸住宅として自ら維持管理・

運営するケース

②PFIケース:BTO方式

建物を町が日立造船㈱から無償もしくは有償にて買い取り、SPCが資金調達、リ

ニューアルもしくは解体・新築して、完成後ただちにリニューアル資産の所有権を町

に移管し、以後の維持管理運営をSPCが実施するケース

③PFIケース:BOT方式

建物を民間事業者(SPC)が日立造船㈱から無償もしくは有償にて買い取り、S

PCが資金調達してリニューアルもしくは解体・新設し、完成後、SPCが所有した

まま、町が一括借り上げるケース

いずれのケースにも、リニューアルと、解体・新設のケースが存在します。リニュ

ーアルの場合は躯体を利用するため、無償もしくは有償にての買取、解体・新築の場

合、日立造船㈱が廃却した施設を町、SPCが解体することになります。

またBOO方式については、将来的にも民間資産になる対象に社会資本整備総合交

付金の適用は困難であるため、比較検討手法から外します。

(2)施設整備の方策について

日立造船(株)社宅「宮野住宅」を公営住宅として有効活用するための方法は、現

在の社宅を、耐震補強を含んだ住戸内部をリニューアルして活用する場合、現在の住

棟を解体し、新たな住棟を新築する場合、の 2ケースが上記の各ケースのすべてに考

えられます。それぞれの場合に想定される施設整備内容を以下に示します。

1)リニューアルする場合

①耐震補強工事について

現住棟は、いずれも、新耐震以前の建物であることから、新耐震基準を満たしていな

い可能性があります。したがって、本事業でリニューアルする場合には、耐震診断、耐

震設計を行い、耐震性能を改善して新耐震基準を満たすようにする必要があります。

しかしながら現状では、耐震診断が未実施であり、どの程度の耐震対策施工が必要か

正確に想定することができません。

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②子育てやバリアフリー化、ユニバーサルデザイン化等現在の生活スタイルに合わせ

る工事について

本事業において想定する基本水準について、以下のような設定を想定して、4章で概

略工事費用を想定します。

+現状:台所・食堂以外の部屋は、全て和室であるため、畳の張替えなどの維持管理

が必要となっている。また、トイレは和式、旧式の風呂釜やキッチンなどの

老朽化が見られる。築 40年以上経過しているため、内装は全体的に老朽化

している。

+最小限リニューアル:大きな改変を行わず、フラットフロア化、全室フローリング、

キッチンユニットの取り換え、バスユニットの取り換え、ト

イレの改善、収納の現在化など内装のリニューアルを中心と

した内容にとどめる。

+最大限リニューアル:2方向避難の安全策として、1棟 1台のエレベーターを想定

した外廊下の設置や、バルコニーの拡幅を想定する。

戸数は、必要戸数として、日立造船㈱社員の現入居者用 180 戸+定住促進住宅 36

戸の計 216戸とし、過剰となる 48戸については、解体して、駐車場・緑地面積を増

加する計画とします。

なお、間取りについてはPFI事業による地域優良賃貸住宅整備の先進事例におけ

る要求水準を考慮し、次項の間取りを検討するものとします。

整備前および整備後の概略平面図を以下に示します。

■現状の間取りの概略図

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■整備後の間取りの概略図

最小限リニューアル

最大限リニューアル

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38

2)解体・新築の場合

①整備する住戸の間取り

解体・新築の場合は、間取り等が自由になることから、単身者用~中高生の子供を

二人もつ家庭用の 3LDKまでの組み合わせとなるため、戸数は、整備する間取りタ

イプを想定して、以下のように設定します。

基本的な考え方は、現在の日立造船㈱社員入居者の家族構成を参考に、設定し、新

たな人口誘導用の地域優良賃貸住宅については、佐賀みやき町の募集状況から、75

㎡程度の 3LDKと 65㎡程度の 2LDKの 2タイプをそれぞれ 96戸、40㎡程度のL

DKを 24戸の合計 216戸を整備することとします。

計 216戸

①55㎡の 1LDK: 24戸

②65㎡の 2LDK; 96戸

③75㎡の 3LDK: 96戸

以上の整備により、現在の日立造船㈱社員とその家族、約 480人の町外流出を防止

するとともに、新たな町外からの人口を呼び込むことにより、40 家族、約 100 人の

人口増を実現することを目標とします。

3-3 事業推進プロセスにおける公民連携手法の検討

すでに述べたように、本事業は、住宅整備事業であるとともに、長洲町にとっては、

今後の町のインフラの維持管理・更新、公有資産の有効活用等を、最小の行政・財政

負担で実現するための公民連携手法の活用の第 1 歩として期待しているところであ

り、地域全体にこうした手法を採用していく意識面でのインフラの整備の進捗になっ

ています。また、職員数の削減に対応して、本事業を円滑に推進するため、プロセス

面でも手法の検討を行います。

事業者選定の手法は、プロポーザル方式や総合評価方式などを行います。その他、

次のように様々な手法があるため、更なる検討が必要です。

■事業者選定手法

事業者決定手法 内容 事例

市場対話

セミナー・フォー

ラム型

事業発案段階から、事業に対する民間事業者の参入意欲の向上な

ど対話を行い、事業スキームや応募要件・選定方法の意見収集を

行ったうえで、随意契約または公募し、事業者を選定。

・福岡市

・青森県

・神戸市

サウンディング型 公共で公募要項の骨格を公表する。その後基本的な土地・建物の

情報等を民間事業者に提示し、活用意向やアイデアのある民間事

業者と対話する。それを踏まえて公募し、事業者を選定。

・横浜市

・滋賀県

・松戸市

事業者選定

競争的対話型 公募要項などの質疑応答や意見収集を行ったうえで、総合評価落

札方式による一般競争入札を実施し、事業者を選定。 ・九州大学

段階選定型 民間からの自由な提案を採用するため、2 段階(設計業務に関す

るアイデア提案募集コンペ、事業者選定コンペ)の事業者選定コ

ンペ方式を実施し、事業者を選定。

・紫波町

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39

4.事業手法別の比較検討評価

4-1 比較検討する手法の全体像

(1)手法分類の前提条件の検討

1)日立造船㈱社宅の利用形態からの分類

先の章に記載した調査対象の現況の通り、活用しようとする社宅 12 棟は昭和 48

年に建築され、築 40年以上経過、旧耐震時代の設計であるため、新耐震基準を満た

しているかどうかは未調査の状態であり、一部には老朽化状況も見られます。

このため、本社宅をどのように有効活用可能かどうかについては、平成 27年度に

予定する耐震診断等調査が必要ですが、本調査では現状で想定される活用方法を次の

2方法に限定して、分類・検討します。

①現社宅に対し、必要な耐震補強およびバリアフリー・ユニバーサルデザイン化、現

在の生活状況にあわせた内装のリニューアルを施し、今後、適切な維持管理、2年

ごとの建築物点検、15年おきの大規模修繕を行うことで、30年間町営地域優良賃

貸住宅として活用する。

②現社宅を解体し、新たに、地域優良賃貸住宅を建設し 50年間以上、町営地域優良

賃貸住宅として活用する。

本調査の目標としては、町の財政状況、日立造船㈱の社員の家賃負担の軽減、現住

居状況等を考慮して、特にリニューアルケースでは現住居状況の若干の改善をめざし、

多額の費用を掛けてまで大幅な住居環境改善を目指すことなく、中堅所得者層、特に

現入居者である日立造船㈱グループ社員の負担感が生じない範囲でできる方策を検

討します。

例としてリニューアルケースと解体・新築ケースのメリット・デメリットの比較表

を示します。4-3に総合的な比較表を記載します。

項目 リニューアルケース 新築・解体ケース

価格面 新築・解体に比して安価 比較的費用がかさむ

工事期間 新築・解体に比して短い 階高によっては長い寿命 確定はできないが20~30年 長い(法定耐用49年)間取りの自由度 間取りの自由度は低い ニーズにあわせて自由に設定できる

用地の有効活用階高が変更できないため、利用度は高いまま将来(ここ20年程度)の増設には使えない

高層化することで、有効利用できる将来計画されている従業員増・海外研修生の受け入れ施設用地も確保できる

住居の快適性 リニューアルで改善するが、効果は限定的 快適な住居を供給できる

耐震性能新耐震基準は満足するが、新設に比して、性能は劣る可能性がある

十分に満足できる

安全性・利便性バルコニーが狭い、外廊下がない、エレベーターがないなど、新設に比して劣る

安全性、利便性に配慮した構造にすることが可能

■対比手法に対するメリット・デメリット

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2)発注形態別分類の前提条件

発注形態の観点からは、3章で示した通り、以下の 3手法を比較します。

①直轄事業として発注

従来の発注は、設計と施工を分離して発注していますが、本調査では、職員労力の

軽減、一括発注による設計・建設費の削減可能性を考慮して、設計建設一体型発注を

想定して、PSCのベースケースとする。

②公民連携手法としてPFI方式による発注

事業期間中の建物所有の形態から、BTO方式とBOT方式を想定し、

CASE-1:設計建設一体型直轄発注(DB方式)

CASE-2:PFI-BTO方式

CASE-3:PFI-BOT方式 の 3手法を検討します。

3)土地・建物の所有・貸借の関係からの分類

本事業の特殊性として、土地・建物の現所有者として、日立造船㈱グループが存

在します。

日立造船㈱グループの土地、建物に対する同社意向について、ヒアリングを行った

結果、まだ、確定ではありませんが、土地については、日立造船㈱グループが所有し

たまま定期借地、建物については、有償もしくは無償にて、町もしくはSPCに譲渡

する方向が有力となっています。

このため、今回の事業のように、企業の所有する社宅を利用した公営住宅整備で、

当然考えられる、日立造船㈱グループが自ら、リニューアルもしくは、新設した住棟

を、町が借り上げる手法については、手法の記載は行いますが、定量評価からは除外

します。

このため、この観点からの手法分類は

① 町が建物を日立造船㈱グループから購入、リニューアルもしくは解体新設して町

営地域優良賃貸住宅を整備・活用する。土地は日立造船㈱グループから定期借地

とする。

② SPCが建物を日立造船㈱グループから購入、リニューアルもしくは解体新設し

て、町が一括借り上げるか(BOT方式)、所有権を町に移して(BTO方式)、

町営地域優良賃貸住宅として活用する。土地は、町もしくはSPCが日立造船㈱

グループから定期借地する。

以上の2分類とします。

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(2)比較検討するケース立てについて

(1)の前提条件の考察から、定量・定性的両面から比較検討するケース立ては以

下の 3ケースとします。

1)PSCとしての直轄事業発注

土地は町が日立造船㈱グループから定期借地、建物は町が無償・もしくは有償で、

買い取ったうえで、リニューアルもしくは解体・新設し自ら維持管理・運営する直轄

事業発注。施設整備資金は、国からの社会資本整備総合交付金、残額の 90%を起債

調達、10%を一般財源一時支出とします。

図Ⅰ-1オーナー整備公共一括借上型スキーム図■町購入公営型地域優良賃貸住宅整備直轄型スキーム図

日立造船㈱ 長洲町

社宅購入対価支払

入居者入居者募集

家賃納入駐車場料金共益費納入

オーナーから買い上げた社宅住棟をリニューアルして

公営型地域優良賃貸住宅として活用

定常促進事業・子育て支援事業・地域活性化事業等の目的のための中堅所得者向け住居の確保

入居者募集・入居者管理は町が実施この業務を指定管理者制度で委託PPPも可

建設企業

設計企業

リニューアル

一般工事発注

土地

定期借地契約

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2)PFI事業

2)-1 BTO方式

土地は町が日立造船㈱グループから定期借地、建物は町が無償・もしくは有償で、

買い取ったうえで、リニューアル・もしくは解体・新設での施設整備、維持管理・運

営を一括して民間事業者(SPC)に発注する、PFI-BTO方式。所有権は施設

整備完了後ただちに、町に移転する。施設整備資金は、国からの社会資本整備総合交

付金、残額を民間が調達、事業期間内での割賦による町からの支払いとします。

2)-2 BOT方式

土地はSPCが日立造船㈱グループから定期借地、建物はSPCが無償・もしくは

有償で、買い取ったうえで、リニューアル・もしくは解体・新設し、SPCが施設を

所有したまま、維持管理・運営を行い、町が一括して町営地域優良賃貸住宅として借

上げ、事業期間終了後、所有権を町に移転する、PFI-BOT方式。施設整備資金

は、国からの社会資本整備総合交付金、残額を民間が調達、事業期間内で町から支払

われる一括借り上げ料の中から回収します。

図Ⅰ-1オーナー整備公共一括借上型スキーム図■町購入公営型地域優良賃貸住宅整備PFI-BTO型スキーム図

日立造船㈱ 長洲町

社宅購入対価支払

入居者家賃納入

駐車場料金共益費納入

オーナーから買い上げた社宅住棟をPFI民間事業者(SPC)がリニューアルして

完成後ただちにリニューアル資産の所有権を町に移転、公営型地域優良賃貸住宅として活用する。維持管理・運営・入居者募集・入居者管理業務も合わせてSPCが実施

定常促進事業・子育て支援事業・地域活性化事業等の目的のための中堅所得者向け住居の確保

土地

定期借地契約

SPC

一括事業契約

サービス対価支払

リニューアル実施資金調達

維持管理・運営

金融機関融資返済

図Ⅰ-1オーナー整備公共一括借上型スキーム図■町購入公営型地域優良賃貸住宅整備PFI-BOT型スキーム図

日立造船㈱

長洲町

社宅購入対価支払

入居者

家賃納入駐車場料金

共益費納入

オーナーからSPCが買い上げた社宅住棟を

リニューアルして町が一括借上げ、公営型地域優良賃貸住宅として活用する。

維持管理・運営・入居者募集・入居者管理業務も合わせてSPCが実施

定常促進事業・子育て支援事業・地域活性化事業等の目的のための中堅所得者向け住居の確保

土地

定期借地契約

SPC

一括借上契約

借上げ料の支払い

リニューアル実施資金調達

維持管理・運営

金融機関

融資返済

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以上の 3手法を定量・定性両面から比較検討します。それぞれの手法にリニューア

ルのケースと、解体・新設のケースが存在します。

4-2 定量的評価の前提条件と影響度調査の変動因子の設定

(1)土地の定期借地料

対象の土地の平成 26年度における評価額、課税標準額を考慮し、定量的評価では、

地代 0~300円/年・㎡の範囲で、影響度調査をすることとします。

(2)建物の評価額等

建物の譲渡の条件については、以下のように整理します。

リニューアルの場合、建物の躯体を利用するので有償で買い取ります。買取価格に

ついては、平成 26 年度における評価額を考慮し、4 億 8 千万円とし、主として、日

立造船㈱グループの社員が入居することの受益者負担として、1~4 億円の範囲で、

日立造船㈱グループが協力するスキームとし、定量評価では、無償~4億円の範囲で、

影響度調査をすることとします。

建替えの場合は、躯体を利用しないことから、廃棄した建物を町もしくはSPCが

無償譲渡していただき、解体費を町、もしくはSPCが負担するスキームとします。

(3)リニューアル費用の想定

対象施設が、昭和 48年に建築され、旧耐震の上、すでに 40年以上経過しているた

め、耐震補強の必要性が想定されます。リニューアル時の施設整備費の想定は、本対

象住棟の耐震診断が未実施であるため、耐震補強内容及びコストの想定がきわめて困

難です。以下の工事内容・工事費用の範囲を想定、その範囲で影響度調査を行い、次

年度に実施予定の耐震診断、耐震設計により、工事内容・コストが決定された時点で、

判断が可能な準備を行うこととします。

1)リニューアル工事の内容

以下のような工事を想定します。

a. 必要な耐震補強の実施

想定する耐震工法は以下のようなものとし、業者ヒアリングで、おおむねの施工費

用の範囲を設定して、影響度調査を行います。どの程度の工事費であれば、リニュー

アル手法が有効であるのかを検討できる準備を行います。

+スリット工法 +ブレース工法 +増壁・増柱・増桁工法

+ピタコラム工法 +PC枠工法

b. バリアフリー対策のためのエレベーターの設置

c. 現階段の撤去と新階段の新設

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d. 2方向避難等安全確保のための外廊下の新設

d. 各部屋の間取り変更と内装リニューアル

e. 水道管・排水管・電気配線等の新設

耐震診断の実施後、正確なリニューアルの内容・施工費が算定された後に、定量評

価を確定し、実施ケースを決定できるよう、以下のような金額範囲で影響度検討を行

います。

2)検討する施工費想定の範囲

想定される最小リニューアル工事と最大リニューアル工事を以下のように想定、業

者ヒアリングを、超概算で行い、定量評価で影響度調査を行います。

+ 最小限リニューアル想定:耐震補強:スリット工法のみで可能

エレベーター設置なし

外階段、ベランダ変更なし

内装変更:キッチン・バスユニット・トイレ更新

フローリングへの変更・壁紙等

配管更新:内管インサート

16戸建ての工事費ヒアリング:7500万円~1億 2000万円

約 1億円を想定:戸当たり 700万円程度を想定

+ 最大リニューアル想定:耐震補強:外枠工法などが必要

エレベーター設置

外階段・ベランダ変更(外枠工法にあわせ実施)

内装変更:上記と同様、ただし専有面積5㎡増加

配管更新:内管インサート

16戸建ての工事費ヒアリング:2億円~3億円

約 2億 5千万円想定:戸あたり約 1500万円想定

以上を考慮して、戸あたり 700 万円~1500 万円の範囲で、影響度調査を行いま

す。216戸をリニューアルした場合のリニューアル施工費:15~32億円程度となりま

す。

(4)解体費用の検討

RC建築物の解体について、複数の解体業者に聞き取りを行いました。

建築物本体の解体費:1万 2千円~2万 5 千円/㎡・床面積(階高・アスベスト・周

辺状況で大きく変わる)

撤去しなければならない杭も想定すると、1万 7千円~4万円/㎡・床面積程度との

ことです。

今回は、解体費を、杭込で 2万円/㎡・床面積で定量評価に使用します。

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(5)新設建築費の検討

1)新築での建設費想定

地域優良賃貸住宅の建設費については、先進事例の神奈川県山北町、佐賀県みやき

町等の先進事例、九州内でのマンション建設費、業者聞き取り等から、想定します。

まず、佐賀県みやきでの地域優良賃貸住宅PFI事業の民間事業者の提案金額は以

下のとおりです。

昨今、震災復興事業、オリンピック関連事業など、各地で大規模な建設プロジェク

トの進行による建設資材の需要の高まりや人手不足から、建築資材や労務費が高騰し

ているため、上記の実績値に補正を加え、今回の新築建設費を想定します。

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業者聞き取りでの概算見積もりは以下のとおりです

3LDK、6階建て 24戸 を前提に、概略外構、杭等も想定した標準的な戸あた

り単価をヒアリングしました。

以上より、今回比較評価に用いる建設費は、杭・外構を含め、65㎡、戸あたり 1700

万円を基準として、各部屋の建設費を以下のとおり設定して、検討します。

65 ㎡想定 標準建築費

専有床面積 65

標準床面積 85 1

仮定 RC造 6階建て

210 戸

㎡あたり単価 130 千円/㎡

建築本体整備費 2,306,850 千円

杭外構等を含んだ整備費 2,998,905 千円 30%

戸あたり単価 14,281 千円

建築資材・労務高騰補正 17,137 千円 20%

新規建設費見積もり一覧 3LDK

A社 B社 C社

新規建設費(千円/戸) 18,800 17,600 18,100

平均(千円/戸) 18,167

建設費間取り 面積(㎡) 整備戸数(戸) 建設単価(千円/戸) 建設費(千円)

LDK 40 20 11,000 220,0002LDK 65 80 17,000 1,360,0003LDK 75 80 18,000 1,440,000LDK 40 4 11,000 44,0002LDK 65 16 17,000 272,0003LDK 75 16 18,000 288,000

合計 216 3,624,000

日立造船社員

新規入居者

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(6)起債条件の設定

直近の長洲町の起債条件とします。

適用:対象資金の 90%:残り 10%は、一般財源から一時金で充当。

金利:1.2%

償還:3年据え置きの 25年元利均等償還

(7)発注初期経費

基本設計対応、予定価格算定業務等、8 人・月程度と想定。

人件費 600×8/12=400万円

PFI事業の場合:これに発注支援:600万円を加えて、約 1000万円を想定

(8)民間の縮減率

一般発注の平成 26 年度、長洲町実績:93%程度なので、縮減率を 5%~20%程度

の範囲で、影響度調査を行います。

(9)民間調達金利の設定

10年物 6か月先物LIBORの直近の金利:0.49%

神奈川県茅ヶ崎市柳島スポーツ公園PFI事業での

応募 3グループの提案銀行スプレッド:0.2%~0.3%

SPCスプレッド:0.2%~0.3%

以上及び安全サイドに勘案して、銀行融資金利:1.2%

SPCからの提案金利 1.5% とします。

(10)現在価値割り戻し率

過去 10 年間の国債金利の平均値が約 2.1%であることから、現状の金利推移を加味し

て、本調査では、2.0%を使用します。

(11)事業期間の設定

先に述べた通り、リニューアル方式における寿命を、施工から 30年程度と想定して、

収支検討期間を、最終施設整備から、30年とします。

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PFI事業期間については、15年~30年で影響度調査を行い、事業期間終了後は、町

営住宅として町が直轄で維持管理・運営をすることを想定した収支を算定、比較します。

実際には、30 年後以降、リニューアル方式では、新たな施設整備が必要になるなど、

さまざまな変動要因が発生、長期には、それぞれの手法で得失が生じます。これについて

は、定性的考察で、得失を考慮します。

(12)資金回収の核である家賃の設定

本事業は、施設整備に係る費用、および、維持管理・運営にかかる費用を、次のよ

うな原資で回収することを目標とします。

1)公営型地域優良賃貸住宅に係る国の社会資本整備総合交付金

地域優良賃貸住宅に係る社会資本整備総合交付金は、施設整備費のおおむね 45%

が想定されます。

民間の所有に係る住棟であっても、事業期間終了後に町の所有に移転される場合は、

買取と同様にみなされ、交付対象となります。

2)入居者が支払う家賃、駐車場料金、共益費

現社宅に入居されている社員の自己負担が、概ね 2万円程度であるため、リニュー

アルによる住宅レベルの向上を考慮しても、日立造船㈱社員に対する家賃設定は 3

万円程度を超えないことが、日立造船㈱との協議においても必要とされています。

しかしながら、今回想定している 65㎡程度の 2LDKの地域優良賃貸住宅家賃は、

先進事例である神奈川県山北町、佐賀県みやき町の例において、5万円程度であるこ

と、周辺の民間賃貸実態も、同規模の住居の場合、5万円超であること、を考慮する

と、4万円~5万円程度が妥当であると考えられます。

したがって、本調査・検討では、家賃設定を 3万円~6万円の間で影響度調査を行

い、町の財政負担が、許容できる範囲に収まる適切な家賃水準を定めた後、日立造船

㈱社員の家賃の減免の方策を検討します。

企業としては、社宅居住者が、社宅を出て、自己保有もしくは、第三者の賃貸など

を行う場合、住宅手当を支給しています。この金額が、日立造船㈱グループ社員の家

賃減免と考えられます。民間調査機関の調査データによると企業の住宅手当の実態は

以下のとおりです。

したがって、月 2 万円程度の

住宅手当が支給されれば、本事

業での家賃設定が5万円の時、

日立造船㈱グループ従業員の

自己負担額が 3 万円となり、許

容範囲になると考えられます。

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さらに、今回の事業スキームの場合、日立造船㈱は、

①定期借地収入が入る

②建物に課税されていた固定資産税の負担が解消する

③社宅管理に必要となっていた人員が不要となり、人件費の削減が図れる

等のメリットがあります。

金額の水準によりますが、こうしたことから、住宅手当以上の家賃減免策をとって

も、日立造船㈱の負担は増えないことになります。

(13)整備戸数の検討

現状社宅は 264 戸ですが、入居者数は 184 戸であるこ

とから、日立造船㈱社員向け住居 180 戸、これに一般入居

者向け定住促進住宅 36 戸程度を想定して、216戸の整備を

検討します。

リニューアルの場合は、間取りが自由にならないため、

すべての住居が、現状の 3Kもしくは 2LDKになりますが、総戸数としては 216戸

となるよう、住棟を選定します。

解体新設する場合は、間取りや部屋パターンも入居者の世帯状況を考慮して自由に

設定できます。

部屋の間取り計画については、右表に示す現状の日立造船㈱入居者の世帯状況を考

慮、さらに、近隣県での先行事例である、佐賀県みやき町の入居者募集状況を加味し

て、次のように設定、合計 216戸を整備します。

①日立造船㈱従業員向け: 3LDK(専有面積 75㎡程度):80戸

②日立造船㈱従業員向け: 2LDK(専有面積 65㎡程度):80戸

③日立造船㈱従業員向け: LDK(専有面積 40㎡程度):20戸

④定住・人口増対策用住戸: 3LDK(専有面積 75㎡程度):16戸

⑤定住・人口増対策用住戸: LDK(専有面積 65㎡程度):16戸

⑥定住・人口増対策用住戸: LDK(専有面積 40㎡程度): 4戸

(14)施設整備のスケジュール設定

リニュールケースと解体・新設ケースの入居者移転、整備の順番は以下のとおりと

します。

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工期設定 対象住棟 戸数 リニューアル 解体 移転・入居の説明

第1期 7号棟、10号棟 32 ○ 整備後、1号棟、2号棟の住民入居

第2期 1号棟、2号棟 48 ○ 整備後、4号棟、5号棟の住民入居

第3期 4号棟、5号棟 40 ○ 整備後、3号棟、6号棟の住民入居

第4期 3号棟、6号棟 48 ○ 整備後、9号棟、12号棟の住民入居

第5期 9号棟、12号棟 48 ○ 整備後、8号棟、11号棟の住民入居

第6期(解体のみ) 8号棟、11号棟 - ○ -

合計 216

リニューアルケースの工期設定

すべて6階建て

期間 団地 間取り 戸数 解体 新築 移転・入居状況の説明LDK 02LDK 03LDK 18LDK 02LDK 243LDK 0LDK 02LDK 03LDK 24LDK 02LDK 243LDK 0LDK 122LDK 123LDK 12LDK 122LDK 123LDK 12LDK 02LDK 123LDK 12LDK 02LDK 123LDK 18

第5期(解体のみ)

1号棟4号棟5号棟8号棟

- - ○ -

LDK 242LDK 963LDK 96合計 216

解体・新築ケース

合計

○ ○

○ ○

整備後、6号棟、9号棟の住民入居

整備後、2号棟、3号棟の住民入居

整備後、11号棟、12号棟の住民入居

整備後、1号棟、4号棟、5号棟、8号棟の住民入居

○ ○

○ ○

○ ○

○ ○

○ ○

○ ○

第3期

2号棟

3号棟

第4期

11号棟

12号棟

第1期

7号棟

10号棟

第2期

6号棟

9号棟

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なお、リニューアルケース、解体・新築ケース、ともに、第 1期の完工時期を、平

成 29年度末に設定し、スケジュールを作成します。

また、解体に 3か月、リニューアルには 6 か月、新築に、8か月、入居者移転に 1

か月かかることを想定したスケジュールとし、第 1期の完工のあとのスケジュール想

定を以下に示します。

リニューアルケース 解体・新築ケース5月 第1期解体着工8月 第1期新築着工9月 第1期着工3月 第1期完工 第1期完工4月 移転完了 移転完了5月 第2期着工 第2期解体着工8月 第2期新築着工11月 第2期完工12月 移転完了1月 第3期着工3月 第2期完工4月 移転完了5月 第3期解体着工7月 第3期完工8月 移転完了 第3期新築着工9月 第4期着工3月 第4期完工 第3期完工4月 移転完了 移転完了5月 第5期着工 第4期解体着工8月 第4期新築着工11月 第5期完工12月 第6期解体のみ2月 解体完了3月 第4期完工4月 移転完了5月 第5期解体着工8月3月 第5期解体完了

平成32年度

平成33年度

工事・完工時期想定スケジュール表年度・月

平成29年度

平成30年度

平成31年度

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(15)維持管理費想定

過去の地域優良賃貸住宅PFI事業での維持管理費の実態は以下のとおりです。

自治体案件 戸数 年間維持管理費 状況 対施設整備費

神奈川県山北町 42戸 : (実施済み)

佐賀県みやき町 24戸 : 400万円/年 (実施済み) (1.5~1.6%)

鹿児島県鹿屋市 40戸 : 400万円/年 (検討段階) (0.8%)

佐賀県みやき町 59戸 : 400万円/年 (発注中) (0.7%)

福岡県大刀洗町 24戸 : 250万円/年 (発注中) (0.8%)

今回は、新築のケースで、戸数がまとまっているため、比較的維持管理費は合理化

できる可能性があることを考慮し、施設整備費の1%を想定します。

戸あたり 168千円/年 を想定すると

新設ケース : 年額 約 3628万円/年

リニューアルケースは建物が古いこともかんがみ、新設のケースの 30%増しとし、4717万

円とします。

(16)大規模修繕費の想定

大規模修繕費の過去の提案実績は、以下のとおりです。

自治体案件 戸数 大規模修繕費 状況 対施設整備費

神奈川県山北町 42戸 : 3000万円/1回 (運営中) (4.2%)

佐賀県みやき町 24戸 : 1500万円/1回 (運営中) (6%)

鹿児島県鹿屋市 40戸 : 3000万円/1回 (検討段階) (4.4%)

佐賀県みやき町 59戸 : 4000万円/1回 (発注中) (6%)

福岡県大刀洗町 24戸 : 1500万円/1回 (発注中) (6%)

今回は、新築のケースで、棟数が多く、まとまっていること考慮して、施設整備費

の 4%を想定します。

戸あたり 630千円 とし、総額で 1回あたり、1億 3700万円 とします。

リニューアルケースは建物が古いこともかんがみ、新設ケースの 30%増しとし、

総額、1億 7915万円とします。

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53

(17)駐車場料金、共益金、現状復旧費の想定

本地域は、公共交通が整備されておらず、町民の生活は車に頼る車社会となってい

ます。このため、多くの家庭は、2台以上の車を保有しているため、本施設でも戸あ

たり 2 台程度の駐車スペースを整備し、生活必需品でもあるため、2 台あたり 3000

円/月の駐車料料金設定とします。

共益費は、月 2000円とします。

入居者負担分を除く現状復旧費は、20万円/回を想定します。

(18)税率等

実効法人税率 40.9%

不動産取得税 不動産評価額の 70%の 4%

固定資産税 不動産評価額の 70%の 1.4%(長洲町税額)

民間事業者側の指標については、毎年のキャッシュフローが常に黒字であること、

DSCR(デッドサービスカバリングレシオ)が、1.01 以上であること、出資金に

対する利回りを最低でも 5%程度を確保することとします。

15年事業で、約 1.5倍、30年事業で約 2 倍程度が目安となります。

(19)影響度検討の変動因子のまとめ

以下に示す変動因子について、30年間の町の財政負担総額への影響と、通常年(建

設期間中と大規模修繕年を除く維持管理・運営期間の通常の年)の毎年の財政負担額

に与える影響を検討します。

なお、次項以降のシミュレーションにおける整備費は、国の補助金(社会資本整備

総合交付金による助成)である整備費の 45%分を控除した、町の負担 55%分の負担

額を前提として試算するものとします。

■検討結果の評価

Aランクスキーム:両方の負担が「0」以下になり、負担がない「0」系PPPになる

Bランクスキーム:通常年の毎年の負担が「0」以下になり、総額では、負担が生じる

Cランクスキーム:総額では「0」になり、通常年で、負担が生じる

Dランクスキーム:総額、通常年両方とも町に負担が生じる

■検討する変動因子一覧

・事業期間 15年~30年 5年毎に試算 (4水準)

・リニューアル工事費 700万円~1500万円 200万円毎に試算 (5水準)

・民間縮減率 5%~20% 5%毎に試算 (4水準)

・家賃水準 平均家賃 3万円~6 万円 1万円毎に試算 (4水準)

・定期借地料 ㎡・年あたり、0~300円 100円毎に試算 (4水準)

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リニューアルケースでは、すべて 2LDKなので、すべて同額の家賃を想定、新築

の場合は、戸あたり建設費を考慮して、2LDKの部屋の家賃に対し、3LDKの家賃

を約 1.13倍、LDK家賃を半分に設定します。

平均家賃 3万円程度のケース

平均家賃4万円程度のケース

平均家賃5万円程度のケース

平均家賃6万円程度のケース

(20)シミュレーション検討結果

1)リニューアル方式の検討

①リニューアルコストの影響

30 千円/月

33.75 千円/月

15 千円/月

設定家賃2LDK

設定家賃3LDK

設定家賃LDK

40 千円/月

45 千円/月

20 千円/月

設定家賃2LDK

設定家賃3LDK

設定家賃LDK

50 千円/月

56.25 千円/月

25 千円/月

設定家賃2LDK

設定家賃3LDK

設定家賃LDK

60 千円/月

67.5 千円/月

30 千円/月

設定家賃2LDK

設定家賃3LDK

設定家賃LDK

地代 100円/年・㎡ 事業期間 25年平均家賃 50千円/月 民間縮減率 10%

変動因子 項目直轄事業PSC

PFILCCBTO方式

PFILCCBOT方式

備考

33年間の財政負担額 -443.2 -557.5 -520.6 (単位百万円)

町の初期1時金負担額 63 0 0通常年の町の負担額 -27.7 -28.6 -28.4

VFM ― ― ―33年間の財政負担額 -221.5 -351.6 -304.8 町の初期1時金負担額 84 0 0通常年の町の負担額 -17.0 -17.7 -17.5

VFM ― ― ―33年間の財政負担額 0.2 -145.6 -89.0 町の初期1時金負担額 105 0 0通常年の町の負担額 -6.4 -6.8 -6.5

VFM ― ― ―33年間の財政負担額 221.8 60.4 126.9町の初期1時金負担額 126 0 0通常年の町の負担額 4.3 4.1 4.4

VFM ― 72.8% 42.8%33年間の財政負担額 443.5 266.4 342.7町の初期1時金負担額 148 0 0通常年の町の負担額 14.9 15.1 15.4

VFM ― 39.9% 22.7%

リニューアルコスト1100万円

リニューアルコスト1300万円

リニューアルコスト1500万円

リニューアルコスト900万円

リニューアルケース 影響度調査 リニューアルコストの影響

固定条件

リニューアルコスト700万円

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55

・BTO方式

まず、すべての資産でVFMがでており、リニューアルケースでも、解体・新築ケ

ースでも、直轄事業より、PFI事業のほうが有利であることがわかります。

民間縮減率 10%、25年の事業期間で、家賃を 5万円に設定できれば、リニューア

ルコスト 1000万円程度以下で、「0」系PPPが実現するといえる。リニューアルコ

ストがさらに下がる場合は、家賃設定を、下げることができるといえます。

900万円以下で施工が可能の場合は、初期の一時金負担 1億円程度が許容できる財

政状況であれば、直轄工事でも、「0」系PPPとなり、長期採算は取れる事業スキー

ムの可能性があるといえます。

②事業期間の影響

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

100

200

300

400

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600

33年間の財政負担額(百万円) リニューアルコスト(万円)

リニューアルコストが

33年間の収支に与える影響

-35.0

-30.0

-25.0

-20.0

-15.0

-10.0

-5.0

0.0

5.0

10.0

0 200 400 600 800 1000 1200 1400

通常年の町の負担額(百万円)

リニューアルコスト(万円)

リニューアルコストが

町の通常年財政負担に与える影響

地代 100円/年・㎡ 民間縮減率 10%

平均家賃 50千円/月リニューアルコスト

11000千円/戸

変動因子 項目直轄事業PSC

PFILCCBTO方式

PFILCCBOT方式

備考

33年間の財政負担額 0.2 -93.4 -38.3 (単位百万円)

町の初期1時金負担額 105.1 0 0通常年の町の負担額 -6.4 30.1 30.3

VFM ― ― ―33年間の財政負担額 0.2 -120.3 -64.4 町の初期1時金負担額 105.1 0 0通常年の町の負担額 -6.4 7.0 7.3

VFM ― ― ―33年間の財政負担額 0.2 -145.6 89.0町の初期1時金負担額 105.1 0 0通常年の町の負担額 -6.4 -6.8 -6.5

VFM ― ― ―33年間の財政負担額 0.2 -178.7 -121.4 町の初期1時金負担額 105.1 0 0通常年の町の負担額 -6.4 -15.9 -15.7

VFM ― ― ―

事業期間25年

事業期間30年

リニューアルケース 影響度調査 事業期間の影響

固定条件

事業期間15年

事業期間20年

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・BTO方式

事業期間が 5年長くなると、約 2000万円収支が改善し、通常年の財政負担も 2000

万円程度減尐するといえます。この前提の場合、20 年以下では、通常年に財政負担

が生じるため、25年程度以上の事業期間が適切といえます。

③民間縮減率の影響

・BTO方式

-200

-180

-160

-140

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

0 5 10 15 20 25 30 3533年間の財政負担額(百万円)

事業期間(年)

事業年数の町の33年間の財政負担に与える影響

-20

-10

0

10

20

30

40

0 5 10 15 20 25 30 35

通常年の町の負担額(百万円)

事業期間(年)

事業年数の与える町の通常年の財政負担への影響

地代 100円/年・㎡ 事業期間 25年

平均家賃 50千円/月リニューアルコスト

11000千円/戸

変動因子 項目直轄事業PSC

PFILCCBTO方式

PFILCCBOT方式

備考

33年間の財政負担額 0.2 -21.2 38.4 (単位百万円)

町の初期1時金負担額 105 0 0通常年の町の負担額 -6.4 -0.6 -0.4

VFM ― ― ―33年間の財政負担額 0.2 -145.6 -89.0 町の初期1時金負担額 105 0 0通常年の町の負担額 -6.4 -6.8 -6.5

VFM ― ― ―33年間の財政負担額 0.2 -270.0 -216.3 町の初期1時金負担額 105 0 0通常年の町の負担額 -6.4 -12.9 -12.7

VFM ― ― ―33年間の財政負担額 0.2 -394.2 -343.7 町の初期1時金負担額 105 0 0通常年の町の負担額 -6.4 -19.1 -18.8

VFM ― ― ―

民間縮減率15%

民間縮減率20%

リニューアルケース 影響度調査 民間縮減率の影響

固定条件

民間縮減率5%

民間縮減率10%

-450.0

-400.0

-350.0

-300.0

-250.0

-200.0

-150.0

-100.0

-50.0

0.0

0% 5% 10% 15% 20% 25%33年間の財政負担額(百万円)

民間縮減率(%)

民間縮減率が33年間の収支に与える影響

-25.0

-20.0

-15.0

-10.0

-5.0

0.0

0% 5% 10% 15% 20% 25%

通常年の町の負担額(百万円)

民間縮減率(%)

民間縮減率が町の通常年財政負担に与える影響

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この前提条件の場合、民間縮減率が 5%上がると、33年間の町の収支は 1億円程度

改善し、通常年の毎年の財政負担が 500万円程度改善することがわかります。BTO

方式では、民間縮減率 5%でも「0」系PPPが実現でき、BOTの場合は、10%程

度の縮減が達成できないと、「0」系にはならないことがわかり、BTO方式のほうが

優位にあります。

④家賃水準の影響

・BTO方式

この条件設定の場合、家賃設定が 4万 5千円/月以上でないと「0」系PPPが実現

しないといえます。また、家賃が 1 万円上がると、33 年間の収支は 6 億円程度改善

され、毎年の財政負担額も 2000万円程度改善されます。

直轄事業で同様の事業を行うには、6万円程度の家賃が必要となり、PFI事業で

事業期間 25年 民間縮減率 10%

地代 100円/年・㎡リニューアルコスト

11000千円/戸

変動因子 項目直轄事業PSC

PFILCCBTO方式

PFILCCBOT方式

備考

33年間の財政負担額 1042.4 896.7 953.3 (単位百万円)

町の初期1時金負担額 129.3 0 0通常年の町の負担額 40.3 39.9 40.1

VFM ― 14.0% 8.5%33年間の財政負担額 521.3 375.5 432.2町の初期1時金負担額 117.2 0 0通常年の町の負担額 16.9 16.6 16.8

VFM ― 28.0% 17.1%33年間の財政負担額 0 -145.6 -89.0 町の初期1時金負担額 105 0 0通常年の町の負担額 -6 -6.8 -6.5

VFM ― ― ―33年間の財政負担額 -521.0 -666.7 -610.1 町の初期1時金負担額 93.0 0 0通常年の町の負担額 -29.7 -30.1 -29.9

VFM ― ― ―

平均家賃50千円

平均家賃60千円

リニューアルケース 影響度調査 平均家賃の影響

固定条件

平均家賃30千円

平均家賃40千円

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

0 10 20 30 40 50 60 70

33年間の財政負担額(百万円)

平均家賃(千円)

家賃が町の33年間の財政負担に与える影響

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

50

0 10 20 30 40 50 60 70

通常年の町の負担額(百万円)

平均家賃(千円)

家賃が町の通常年の財政負担に与える影響

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行うことで、入居者の負担を、1万円以上軽減できることがわかります。

以上より、地域優良賃貸住宅の家賃設定を平均 5万円程度とし、家賃 3万円程度を

希望する日立造船㈱の社員に対しては、日立造船㈱が、定期借地料や、住宅管理コス

ト削減量、固定資産税の減尐などのメリットを勘案し、入居社員に対し、2万円程度

の住宅手当を支給することで、実現するスキームを追求します。

⑤定期借地料の影響

・BTO方式

この前提条件のもとでは、日立造船㈱が、250 円/㎡・年以上の定期借地料を要求

する場合、町に財政負担が生じるため、日立造船㈱との交渉においては、尐なくとも

200 円程度以下の定期借地料となるよう、交渉する必要があり、家賃設定を下げるた

めには、定期借地料の低減も必要であるといえます。

事業期間 25年 民間縮減率 10%

平均家賃 50千円/月リニューアルコスト

11000千円/戸

変動因子 項目直轄事業PSC

PFILCCBTO方式

PFILCCBOT方式

備考

33年間の財政負担額 -86.7 -232.4 -175.8 (単位百万円)

町の初期1時金負担額 94.7 0 0通常年の町の負担額 -9.8 -10.2 -10.0

VFM ― ― ―33年間の財政負担額 0.2 -145.6 -89.0 町の初期1時金負担額 105.1 0 0通常年の町の負担額 -6.4 -6.8 -6.5

VFM ― ― ―33年間の財政負担額 87.0 -58.7 -2.1 町の初期1時金負担額 115.5 0 0.0通常年の町の負担額 -2.9 -3.3 -3.1

VFM ― ― ―33年間の財政負担額 173.8 28.1 84.7町の初期1時金負担額 125.9 0 0通常年の町の負担額 0.6 0.2 0.4

VFM ― 83.8% 51.3%

地代200円/年・㎡

地代300円/年・㎡

リニューアルケース 影響度調査 定期借地料の影響

固定条件

地代0円/年・㎡

地代100円/年・㎡

-250

-200

-150

-100

-50

0

50

0 50 100 150 200 250 300 350

33年間の財政負担額(百万円)

地代(円/年・㎡)

定期借地料の町の33年間の財政負担に与える影響

-12

-10

-8

-6

-4

-2

0

2

0 50 100 150 200 250 300 350通常年の町の負担額(百万円)

地代(円/年・㎡)

定期借地料の町の通常年の財政負担に与える影響

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2)解体・新築方式の検討

①事業期間の影響

・BTO方式

リニューアルケースと同様の傾向で、直轄よりPFI方式が、BTOとBOTではBTO

が有利といえます。事業期間として 30年程度の事業期間設定が適切であるといえます。

また、リニューアルケースより、建設費が高額となるため、家賃 5万円水準では、唯一、P

FI-BTO方式の事業期間 30年以上のみが「0」系PPPを実現できるスキームとなりま

す。

ただし、解体・新築ケースでは、事業期間終了後、20 年以上、償却済みの住宅で家賃収

入があるため、家賃水準を下げても、この期間でさらに、数億円の剰余金を積み増すことが

できる可能性があり、リニューアルケースに対して大きな優位性となります。

地代 100円/年・㎡ 民間縮減率 10%平均家賃 50千円/月

変動因子 項目直轄事業PSC

PFILCCBTO方式

PFILCCBOT方式

備考

33年間の財政負担額 144.7 33.0 113.3 (単位百万円)

町の初期1時金負担額 59.9 0 0通常年の町の負担額 9.9 66.4 66.7

VFM ― 77.2% 21.8%33年間の財政負担額 144.7 2.3 83.7町の初期1時金負担額 59.9 0 0通常年の町の負担額 9.9 32.1 32.5

VFM ― 98.4% 42.2%33年間の財政負担額 144.7 -26.8 55.6町の初期1時金負担額 59.9 0 0通常年の町の負担額 9.9 11.7 12.0

VFM ― ― 61.6%33年間の財政負担額 144.7 -61.0 22.4町の初期1時金負担額 59.9 0 0通常年の町の負担額 9.9 -1.9 -1.6

VFM ― ― ―

事業期間25年

事業期間30年

解体・新築ケース 影響度調査 事業期間の影響

固定条件

事業期間15年

事業期間20年

-80

-60

-40

-20

0

20

40

0 5 10 15 20 25 30 35

33年間の財政負担額(百万円)

事業期間(年)

事業年数が町の収支に与える影響

-10

0

10

20

30

40

50

60

70

0 5 10 15 20 25 30 35

通常年の町の負担額(百万円)

事業期間(年)

事業年数が町の通常年負担に与える影響

Page 62: 民間企業社宅を公営住宅として有効活用する 官民連 …70HZ 74 S 75HZ 79 S 80HZ 84 S 85HZ 89 S 90 S è V 6× j# ë!Ã %4 2( qH H22 \ Ã1* 高齢化の推移 5歳階級別人口比率

60

②家賃の影響

・BTO方式

上記のように、解体・新築ケースでは、5万円の平均家賃水準で、33年間の財政負

担はなくなるが、通常年で、約 1000万円の財政負担が生じることがわかります。し

たがってさらに、何らかの(定期借地料の軽減等)、コスト削減が求められます。リ

ニューアル方式が 4万 5千円程度で、財政負担無し(0系PPP)が達成できること

を考えると、建設コストが高い分だけ、解体新築ケースは財政面では不利といえます。

家賃の 1万円UPが 5億円程度の収支の改善につながる大きな因子であることから、

日立造船㈱社員の家賃軽減(会社による住宅手当措置)を講ずることで、全体家賃を

上げる方策は有効であるといえます。

事業期間 25年 民間縮減率 10%地代 100円/年・㎡

変動因子 項目直轄事業PSC

PFILCCBTO方式

PFILCCBOT方式

備考

33年間の財政負担額 1236.0 1064.5 1146.8 (単位百万円)

町の初期1時金負担額 124.3 0 0通常年の町の負担額 56.5 58.3 58.7

VFM ― 13.9% 7.2%33年間の財政負担額 690.3 518.9 601.2町の初期1時金負担額 92.1 0 0通常年の町の負担額 33.2 35.0 35.3

VFM ― 24.8% 12.9%33年間の財政負担額 144.7 -26.8 55.6町の初期1時金負担額 59.8 0 0通常年の町の負担額 9.9 11.7 12.0

VFM ― ― 61.6%33年間の財政負担額 -400.9 -572.4 -490.0 町の初期1時金負担額 27.8 0 0通常年の町の負担額 -13.5 -11.7 -11.3

VFM ― ― ―

平均家賃60千円

町の財政負担が、総額でも、単年度でも「0」になる

PFIのケースで。総額ベースでは、黒字になるが、通常年は、1,000万円強の負担が生じる。

総額ベースでも、通常年も負担が生じる

解体・新築ケース 影響度調査

固定条件

平均家賃の影響

平均家賃30千円

平均家賃40千円

平均家賃50千円

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

1200

0 10 20 30 40 50 60 70

33年間の財政負担額(百万円)

平均家賃(千円)

家賃が町の33年の財政負担に与える影響

-20

-10

0

10

20

30

40

50

60

70

0 10 20 30 40 50 60 70

通常年の町の負担額(百万円)

平均家賃(千円)

家賃が通常年の町の財政負担に与える影響

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③定期借地料の影響

・BTO方式

ここに示されるように、100 円/年・㎡の軽減で、毎年の財政負担が 250 万円程度

改善できますが、効果はそれほど大きくないので、定借料をUPしても、その見返り

に、社員に対する住宅てあての増額等を図っていただくほうが、効果があるといえま

す。

ただし、定借料水準は、250円/年・㎡以下であることが必要です。

事業期間 25年 民間縮減率 10%平均家賃 50千円/月

変動因子 項目直轄事業PSC

PFILCCBTO方式

PFILCCBOT方式

備考

33年間の財政負担額 57.9 -113.6 -31.2 (単位百万円)

町の初期1時金負担額 49.5 0 0通常年の町の負担額 6.4 8.2 8.5

VFM ― ― ―33年間の財政負担額 144.7 -26.8 56町の初期1時金負担額 59.9 0 0通常年の町の負担額 9.9 11.7 12.0

VFM ― ― 61.6%33年間の財政負担額 231.6 60.1 142.5町の初期1時金負担額 70.4 0 0通常年の町の負担額 13.4 15.1 15.5

VFM ― 74.1% 38.5%33年間の財政負担額 318.4 146.9 229.3町の初期1時金負担額 80.8 0 0通常年の町の負担額 16.8 18.6 18.9

VFM ― 53.9% 28.0%

地代200円/年・㎡

地代300円/年・㎡

解体・新築ケース 影響度調査 定期借地料の影響

固定条件

地代0円/年・㎡

地代100円/年・㎡

-150

-100

-50

0

50

100

150

200

0 50 100 150 200 250 300 350

33年間の財政負担額(百万円)

地代(円/年・㎡)

定期借地料の町の収支に与える影響

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

0 50 100 150 200 250 300 350

通常年の町の負担額(百万円)

地代(円/年・㎡)

定期借地料の通常年負担に与える影響

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4-3 定性的評価

定性的な評価項目については、以下について検討します。

(1)施設整備の品質面

1)間取り設定の自由度等入居希望者のニーズの実現性

2)施設の快適性・安全性・利便性等の品質実現の可能性

3)公共資産(土地・建物)の有効利用

4)廃棄物等の発生抑制

(2)ステークホルダー個々のメリット・デメリット

1)町のメリット・デメリット

2)地域企業等民間事業者のメリット・デメリット

3)日立造船㈱のメリット・デメリット

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リニューアル 建替え リニューアル 建替え リニューアル 建替え

現在の社宅を町が買上げ、町がリニューアルする土地は町が日立造船㈱から定期借地する

現在の社宅を町が解体・建替える土地は町が日立造船㈱から定期借地する

現在の社宅をSPCが買上げ、SPCがリニューアルし、完成後、所有権を町に移転、以後の維持管理運営をSPCが行う

現在の社宅をSPCが解体・建替えし、完成後、所有権を町に移転、以後の維持管理運営をSPCが行う

現在の社宅をSPCが買上げ、リニューアルし、町が一括借り上げる以後の維持管理運営をSPCに委託する

現在の社宅をSPCが解体・建替えし、完成後、町が一括借上げ、以後の維持管理運営をSPCに委託する

2 0.2 144.7 -178.7 -61.0 -121.4 22.43 -6.4 9.9 -15.9 -1.9 -15.7 -1.6

有無

金額(百万円) 105 59.9

B D A A A B

間取りが自由にならない(2LDK限定)整備費が新設より安い

間取りが自由整備費が高額になる

間取りが自由にならない(2LDK限定)整備費が新設より安い

間取りが自由整備費が高額になる

間取りが自由にならない(2LDK限定)整備費が新設より安い

間取りが自由整備費が高額になる

寿命が短い可能性がある

比較的寿命が長く、事業終了後も町に収入、住民のサービスになる可能性が高い

残り寿命が短く、20年後とかに建替えなければならない可能性がある

比較的寿命が長く、事業終了後も町に収入、住民のサービスになる可能性が高い

残り寿命が短く、20年後とかに建替えなければならない可能性がある

比較的寿命が長く、事業終了後も町に収入、住民のサービスになる可能性が高い

メリット

デメリット

メリット

デメリット

メリット

デメリット

新しい住居である世帯の状況に合わせ、間取り選択ができる

新しい住居である世帯の状況に合わせ、間取り選択ができる

デメリットリニューアルなので、間取りの選択ができない

-リニューアルなので、間取りの選択ができない

× × ○ ◎ ▽ ▽

民間管理で、クレームにも24時間365日対応が可能

ベースケース

ベースケース

利用者

社宅の廃止方針が実現できるうえに、自社CREが有効活用でき、利益が上がる固定資産税がかからなくなる社員への住居提供が、社宅保有時と同様にでき、利益を上げながら社員への福利厚生を行える土地の定期借地料も収入として入る

長洲町

民間事業者

特にない

買上げ資金調達が必要定期借地リスクがある固定資産税が入らなくなる

特にない

所有リスクがあるチーム編成業務・提案業務等提案審査に係る業務・SPCの設立等費用負担が生じる失注リスクが生じる固定資産税・不動産取得税が発生

不動産事業として、比較的安定な物件を所有でき、ビジネスチャンスがある

不動産運営物件として、所有リスクなしでビジネスチャンスがある町の所有で、不動産取得税・固定資産税が発生しない

チーム編成業務・提案業務等提案審査に係る業務・SPCの設立等費用負担が生じる失注リスクが生じる

長期債務負担行為が必要所有者リスクがある固定資産税が入らない

長期債務負担行為が必要

すべての業務、資金調達をSPCが行うので、資金調達の必要なく、また業務も比較的楽定期借地リスクはSPCが負う

すべての業務、資金調達をSPCが行うので、資金調達の必要なく、また業務も比較的楽定期借地リスクはSPCが負う所有リスクがない固定資産税が入る

SPCが所有

日立造船

SPC

町の初期一時金負担額(起債

額)

無し有り

0

土地、建物の所有、管理が比較的複雑になる

資金調達 長洲町

定量的な町のメリットの優劣判定

定性的なメリット・デメリット

スキーム固有のメリット・デメリット

33年間の町の財政負担額(百万円)通常年の年次財政負担額(百万円)

町が所有

スキーム別検討比較表

土地の所有形態日立造船が所有、町が定期借地

PFI-BOT型

日立造船が所有、SPCが定期借地

直轄事業発注 PFI-BTO型

日立造船が所有、町が定期借地

施設整備方策実施方策

総合判定

定性的なメリ

ット・デメリ

ット

4

1

定量的なメリット・デメリット・優劣

建物の所有形態

事業手法の説明

メリット

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4-4 運営スキームの検討

(1)現状

現在、宮野住宅では社宅の居住者が、日常の維持管理(草刈りなど)の地区活動を

行っています。

今後、町営住宅として整備されると、現在社宅に住んでいない新しい住民の入居が

考えられます。そのため、現入居者と新入居者とのコミュニティをいかにして融合し

ていくかが重要となります。

(2)今後の取組方針

既存の社宅というある意味閉鎖されたコミュニティを、今後、町に溶け込んだ公営

住宅地域としていくことが望まれます。新しい住民との絆や交流を構築し、自治会設

定や自主防災組織の結成、消防団活動への参加誘導、季節の地域の行事への参加誘導

などを行っていくことが重要となります。さらに、新たなコミュニティ形成を行う地

域マネジメントマネージャーを地域のNPO法人や住民活動組織と協力して配置す

ることも考えられます。また、単に公営住宅を維持管理・運営するだけでなく、年間

を通し、地域マネジメントの諸活動をリードするSPCが設立されるようPFI発注

文書規定や事業者選定基準に反映していくことが求められます。機械を使用するよう

な維持管理はSPCが行い、日常的な維持管理は入居者が行うようなルールづくりを

行う必要があります。

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4-5 結論

■影響度調査の中で明らかにしたように、大部分の設定スキームでPFI事業は直轄

事業に比べ財政負担面から見て有利であるうえ、通常の手順のPFI、さらには、

ECI方式のどれをとっても、程度の差はあれ、職員の労力軽減が図れることなど

PFI手法にはメリットが多く、ステークホルダーとの交渉、積算作業等に民間の

活力を活用して、町の財政負担「0」いわゆる「0」系PPP事業とすることと、職

員の労力削減を実現できる可能性が高いといえます。

■リニューアルコストが解体新築よりコストが安いため、財政的にはリニューアル手

法のほうが財政面では有利といえます。

一方、リニューアル方式では、リニューアル後の寿命については、不透明なこと

も多く、いつまで使えるかの不確定要因をかかえているため、今回は想定しなかっ

た老朽化・建替えが 20年~30年程度の期間に発生する可能性があること、また間

取り等に制限が多く、自由にならないため、十分に魅力的な住宅にならない可能性

があること、などのデメリットが考えられ、PFI事業終了後のことを考えると、

解体・新築のほうに多大のメリットが考えられます。

■日立造船㈱の社員に対する住宅手当の家賃低減策を前提に、平均家賃 5万円程度の

設定で、民間縮減率 10%、事業期間 30年を想定すると、解体・新築ケースでも「0」

系PPPを実現できるため、このケースを、第 1優先スキームとします。