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新規親水性ポリエステルの開発 プロジェクト評価事後報告書 (案) 平成21年3月 産業構造審議会産業技術分科会 第3回繊維分野におけるエネルギー使用合 理化技術開発補助金プロジェクト 事後評価検討会 資料9

新規親水性 ポリエステルの 開発 プロジェクト 評価 事後 報告書 …€¦ · 繊維分野 におけるエネルギー 使用合理化技術開発補助金 プロジェクト

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新規親水性ポリエステルの開発

プロジェクト評価事後報告書

(案)

平成21年3月

産業構造審議会産業技術分科会

評 価 小 委 員 会

第3回繊維分野におけるエネルギー使用合

理化技術開発補助金プロジェクト

事後評価検討会

資料9

Page 2: 新規親水性 ポリエステルの 開発 プロジェクト 評価 事後 報告書 …€¦ · 繊維分野 におけるエネルギー 使用合理化技術開発補助金 プロジェクト

はじめに

研究開発の評価は、研究開発活動の効率化・活性化、優れた成果の獲得や社会・経済への還元

等を図るとともに、国民に対して説明責任を果たすために、極めて重要な活動であり、このため、

経済産業省では、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」(平成17年3月29日、内閣総理

大臣決定)等に沿った適切な評価を実施すべく「経済産業省技術評価指針」(平成17年4月1

日改定)を定め、これに基づいて研究開発の評価を実施している。

経済産業省において実施している「新規親水性ポリエステルの開発」は、清涼感向上、静電気

防止、ムレ感抑制、防汚性等の快適性と、ポリエステル原料リサイクルの推進、空調使用削減、

繊維製品取扱いの省工程化等、環境負荷低減を兼ね備えた機能素材・繊維製品の創製を可能とす

る、吸湿性、膨潤可逆寸法変化性、防汚性等を発現する機能性ポリエステルポリマー、ポリエス

テル繊維、ポリエステル構造体を開発するため、平成18年度から平成19年度まで実施したも

のである。

今回の評価は、この「新規親水性ポリエステルの開発」プロジェクトの事後評価であり、実際

の評価に際しては、省外の有識者からなる繊維分野におけるエネルギー使用合理化技術開発補助

金プロジェクト事後評価検討会(座長:梶原 莞爾 信州大学客員教授、京都工芸繊維大学特任

教授)を開催した。

今般、当該検討会における検討結果が評価報告書の原案として産業構造審議会産業技術分科会

評価小委員会(小委員長:平澤 泠 東京大学名誉教授)に付議され、内容を審議し、了承され

た。

本書は、これらの評価結果を取りまとめたものである。

平成20年3月

産業構造審議会産業技術分科会評価小委員会

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産業構造審議会産業技術分科会評価小委員会

委 員 名 簿

小委員長 平澤 泠 東京大学名誉教授

池村 淑道 長浜バイオ大学バイオサイエンス学部教授

伊澤 達夫 東京工業大学理事・副学長

菊池 純一 青山学院大学法学部・大学院法学研究科ビジネス法務専攻

教授

鈴木 潤 政策研究大学院大学教授

辻 智子 株式会社ファンケル取締役執行役員

医薬事業開発室長

冨田 房男 放送大学北海道学習センター所長

畑村 洋太郎 工学院大学国際基礎工学科教授

山地 憲治 東京大学大学院工学系研究科教授

吉本 陽子 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

経済・社会政策部主任研究員

(委員敬称略、五十音順)

事務局:経済産業省産業技術環境局技術評価室

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繊維分野におけるエネルギー使用合理化技術開発補助金プロジェクト事後評価検討会

委員名簿

座 長 梶原 莞爾 信州大学客員教授、京都工芸繊維大学特任教授

相羽 誠一 産業技術総合研究所 生物機能工学研究部門

環境保全型物質開発・評価研究グループ長

大松沢 明宏 日本化学繊維協会 技術グループ 主任部員

上甲 恭平 京都女子学園京都女子大学家政学部 教授

町田 雅之 産業技術総合研究所 イノベーション推進室

総括企画主幹(ライフサイエンス担当)

丸山 正明 日経BP社 産学連携事務局 プロデューサー

(敬称略、五十音順)

事務局:経済産業省製造産業局繊維課

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繊維分野におけるエネルギー使用合理化技術開発補助金プロジェクトの

評価に係る省内関係者

【事後評価時】

製造産業局 繊維課長 間宮 淑夫(事業担当課長)

産業技術環境局 技術評価室長 長濱 裕二

【事前評価時】(事業初年度予算要求時)

製造産業局 繊維課長 宗像 直子(事業担当課長)

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繊維分野におけるエネルギー使用合理化技術開発補助金プロジェクト事後評価

審 議 経 過

○第1回事後評価検討会(平成20年11月10日)

・評価の方法等について

・プロジェクトの概要について

・評価の進め方について

○第2回事後評価検討会(平成20年12月19日)

・評価の方法等について

・プロジェクトの概要について

・評価の進め方について

○第3回事後評価検討会(平成21年2月25日)

・評価報告書(案)について

○産業構造審議会産業技術分科会評価小委員会(平成21年3月24日)

・評価報告書(案)について

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目 次

はじめに

産業構造審議会産業技術分科会評価小委員会 委員名簿

繊維分野におけるエネルギー使用合理化技術開発補助金プロジェクト事後評価検討会 委員名

簿

繊維分野におけるエネルギー使用合理化技術開発補助金プロジェクトの評価に係る省内関係者

繊維分野におけるエネルギー使用合理化技術開発補助金プロジェクト事後評価 審議経過

ページ

事後評価報告書概要 ………………………………………………………………… ⅰ

第1章 評価の実施方法

1.評価目的 …………………………………………………………………… 1

2.評価者 ……………………………………………………………………… 1

3.評価対象 …………………………………………………………………… 2

4.評価方法 …………………………………………………………………… 2

5.プロジェクト評価における標準的な評価項目・評価基準 …………… 2

第2章 プロジェクトの概要

1.事業の目的・政策的位置付け …………………………………………… 5

2.研究開発等の目標 ………………………………………………………… 7

3.成果、目標の達成度 ……………………………………………………… 10

4.事業化、波及効果について ……………………………………………… 24

5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等 ………………… 27

第3章 評価

1.事業の目的・政策的位置付けの妥当性 ………………………………… 32

2.研究開発等の目標の妥当性 ……………………………………………… 34

3.成果、目標の達成度の妥当性 …………………………………………… 36

4.事業化、波及効果についての妥当性 …………………………………… 38

5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等の妥当性 ……… 40

6.総合評価 …………………………………………………………………… 42

7.今後の研究開発の方向等に関する提言 ………………………………… 44

第4章 評点法による評点結果 …………………………………………………… 46

参考資料

研究開発実施者提供資料

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i

事後評価報告書概要

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ii

事後評価報告書概要

プロジェクト名 新規親水性ポリエステルの開発

上位施策名 エネルギー使用合理化繊維関連次世代技術開発

事業担当課 製造産業局繊維課

プロジェクトの目的・概要

本研究開発においては、新規機能として、吸湿性、膨潤可逆寸法変化性、防汚性等を発現する機

能性ポリエステルポリマー、ポリエステル繊維、ポリエステル構造体を開発することを目的とした。本

研究開発により、清涼感向上、静電気防止、ムレ感抑制、防汚性等の快適性と、ポリエステル原料リ

サイクルの推進、空調使用削減、繊維製品取扱いの省工程化等、環境負荷低減を兼ね備えた機能

素材・繊維製品を創製することが可能となる。

親水性機能を有する合成繊維はナイロン・アクリル系が一般的であるが、新規ポリエステルポリマ

ーによる機能新素材は、ポリエステル本来の優れた性能と親水性を両立している。さらに、複合紡糸

技術・ブレンド技術等、ポリマー機能を最大限に引き出す技術により素材展開を拡げられ、リサイク

ルシステムへの適用も可能であり、省エネルギー効果を発現する。

予算額等 (単位:千円)

開始年度 終了年度 事後評価時期 事業実施主体

平成18年度 平成19年度 平成20年度 民間企業等

H17FY 予算額 H18FY 予算額 H19FY 予算額 総予算額 総執行額

― 39,488 38,475 77,963 77,543

目標・指標及び成果・達成度

(1) 全体目標に対する成果・達成度

要素技術 目標・指標 成果 達成度

1.親水性ポリエ

ステル

吸湿後水分率≦15%

放湿後水分率≦10%

親水性エラストマーの基礎評価に

てコットン以上の吸放湿性を得るこ

とが出来た。

(吸湿後水分率31%、放湿後水分

率9%)

C-PEG共重合ポリエステルの基

礎評価において、当初予想してい

なかった、「清涼衣服」として期待

出来る特性を得た。

達成

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iii

2.新規制電性ポ

リエステル

摩擦帯電圧≦2,000V(洗濯 20

回後)

10%以上のアルカリ減量を施

しても性能、布帛品位低下が

無いこと。

単糸繊度 1dtex 以下の極細製

糸が可能。

仮撚糸が可能。

単糸繊度1以下の芯/鞘型コンジュゲー

ト極細製糸が可能となり、

仮撚加工を施しても制電性能低下が無い

極細仮撚糸を開発した。

なお、婦人衣料等、アルカリ減量を施す

用途への展開については目標を達成でき

なかった。

一部達成

3.洗濯再汚染防

止ポリエステル

初期段階で後加工による防汚

製品と同性能であること。

性能に洗濯耐久性があるこ

と。

ユニフォーム規格織物を作って洗濯再汚

染性評価を進めたところ、家庭洗濯によ

る汚れ除去性は極めて高い効果を示し

た。なお、工業洗濯条件での再汚染性の

評価では、洗濯 100 回以降色相変化が大

きくなり、従来のポリエステルよりは優れ

るものの、ポリエステル65%/綿35%製

品と同等レベルであり、工業洗濯対応商

品としての性能は今一歩であった。

一部達成

4.新規スマート

テキスタイル

通気性変化率100%以上(洗

濯50回後)

繊維段階での通気性コントロ

ール指標の確立

吸湿ポリマーとして、C-PEG共重合親

水エラストマーを用いることで、湿度変化

に応答して、捲縮形態を変化させるオー

ルポリエステルサイドバイサイド型複合繊

維ができた。ただし、繊維断面積変化によ

る自己調節機能布帛吸湿ポリマーの吸湿

による体積変化が、長さ方向ではなく断

面方向に大きく働くため、通気性変化率

に対しては目標を達成できなかった。

一部達成

5.特殊評価技術 新規特性による消費科学的機

能評価技術を開発する。

着用を想定した布帛快適性評価を

スキンモデル、被服快適性を国際

的にも通用する発汗歩行マネキン

にて評価可能にした。

最終製品の快適性能の安定化を実現し

た。

達成

(2) 目標及び計画の変更の有無

無し

<共通指標>

特許等数:8件

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iv

評価概要

1.事業の目的・政策的位置付けの妥当性

本研究開発は、清涼感、防汚性等の新規機能を有し、リサイクル可能な新規ポリエステル繊維の開発を行うもの

であり、国民・社会のニーズに合致し、事業の目的は非常に重要で、政策的位置付けは極めて明確である。原料リ

サイクルが可能なポリエステル繊維に親水化改質を加えて吸湿性などの快適性を付加する技術の開発は、先進性

があり、省エネルギーや省資源に寄与した繊維製品の供給が可能となり社会的意義がある。また、研究開発リスク

が大きく民間のみでは問題解決が図られず、国の事業として実施する緊要性が極めて高い。

2.研究開発等の目標の妥当性

明確な目標及び目標水準が設定されており、指標設定も適切である。特に、側鎖型変性PEG共重合ポリエステ

ル繊維は世界に類を見ず、これを利用した新規高耐久制電素材の開発や、新規スマートテキスタイルの開発は、極

めて挑戦的な目標であり評価できる。

なお、全体目標のうちオールポリエステルによる新規構造体開発については、具体性に欠ける。また、リサイクル

や快適性評価についても目標を定める必要があったと思われる。

3.成果、目標の達成度の妥当性

評価の条件によって目標性能に達せず一部未達成となった要素技術目標が残るものの、全体目標として掲げた

性能を満たす4つの機能をもつ素材が開発されており、概ね妥当な成果が得られたと評価できる。

具体的には、綿以上の吸放出性を備えた新規親水性ポリエステルが開発され、さらにそれを利用した新規制電

性素材、洗濯再汚染防止素材等の開発でも概ね目標を達成したことは評価できる。

なお、今回得られた研究開発成果を基に研究開発を継続し、今後の製品化が望まれる。

4.事業化、波及効果についての妥当性

本研究開発については、期間内に一部の個別要素目標が達成できなかったが、事業終了後も実施者において継

続的研究が行われ、2~3年で目標レベルが達成可能なレベルにあると見込まれることから、事業化に向けた見通

しは概ね立っていると評価される。

事業化に向けては、製品の快適性の向上、コスト削減等が必要であるが、開発したリサイクル可能な親水性素材

は、衣料品のみならず医療分野や産業資材分野等での応用展開が可能であり、波及効果が期待される。

なお、今後は、清涼ポリエステル、新規スマートテキスタイルの研究開発成果の迅速な標準化が望まれる。

5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等の妥当性

本研究開発の研究開発計画、実施体制・資金配分は適切であったと考えられる。2年間の事業計画に基づきプロ

ジェクトリーダーの指揮の下、適切かつ効果的な研究開発が実施され、ソフト、ハード、実証試験などの組み合わせ

によりバランスのとれた研究開発がなされたと言える。

また、本素材は、衣料用、産業・生活資材用として広く展開が可能と見込まれ、波及効果は大きく、費用対効果は

妥当と考えられる。

なお、2年の開発期間に対して、テーマを多く設定し過ぎているのではないかとの意見もあった。

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v

6.総合評価

快適性と環境負荷低減を兼ね備えた新規機能性ポリエステルの技術開発を目指した本研究開発は、国が関与す

る事業として政策的位置付けも明確であり、社会的意義も大きく、妥当であった。研究開発のマネジメントも適切に

行われたと評価できる。

側鎖型変性PEG共重合ポリエステル繊維は世界に類を見ず、極めて挑戦的な目標であり、これに取り組んだこと

は高く評価できる。本研究開発は、設定された目標に対して、オールポリエステルのスマートテキスタイル技術開発

については目標に達しなかったが、その他の個別要素技術親水性ポリエステル、新規制電性ポリエステル、洗濯再

汚染防止ポリエステルについては、概ね目標を達成し、原料リサイクルへの適用も可能であることも確認されてお

り、事業化に向けた取り組み・見通しも明確に示されているなど、適切であったと評価される。

7.今後の研究開発の方向等に関する提言

今後の課題として残された、新規制電性素材のアルカリ減量加工対応性、洗濯再汚染防止素材の工業洗濯対応

性、新規スマートテキスタイルの通気性変化率についてブレークスルーし、商品化されることを期待する。特に、僅

かな発汗で応答する自己調節機能布帛が開発できれば、スポーツ用に止まらず一般衣料品でもスマートテキスタイ

ルの展開の可能性が高まると言える。

また、スキンモデル、サーマルマネキン等で見出すことができた新規機能をうまく活用し、標準化を含めて消費者

へのアピール方法の検討を継続することが望まれる。

なお、本研究開発で開発された機能性繊維を使用した差別化商品が市場を獲得するためには、まだ一部しか達成

されていない目標を達成すると同時に、後加工条件を十分検討する必要がある。

評点結果

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第1章 評価の実施方法

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- 1 -

第1章 評価の実施方法

本プロジェクト評価は、「経済産業省技術評価指針」(平成 17 年 4 月 1 日改定、

以下「評価指針」という。)に基づき、以下のとおり行われた。

1.評価目的

評価指針においては、評価の基本的考え方として、評価実施する目的として

(1)研究開発に対する経済的・社会的ニーズの反映

(2)より効率的・効果的な研究開発の実施

(3)国民への施策・事業等の開示

(4)資源の重点的・効率的配分への反映

(5)研究開発機関の自己改革の促進等

を定めるとともに、評価の実施にあたっては、

(1)透明性の確保

(2)中立性の確保

(3)継続性の確保

(4)実効性の確保

を基本理念としている。

プロジェクト評価とは、評価指針における評価類型の一つとして位置付け

られ、プロジェクトそのものについて、同評価指針に基づき、事業の目的・

政策的位置付けの妥当性、研究開発等の目標の妥当性、成果、目標の達成度

の妥当性、事業化、波及効果についての妥当性、研究開発マネジメント・体

制・資金・費用対効果等の妥当性の評価項目について、評価を実施するもの

である。

その評価結果は、本プロジェクトの実施、運営等の改善や技術開発の効果、

効率性の改善、更には予算等の資源配分に反映させることになるものである。

2.評価者

評価を実施するにあたり、評価指針に定められた「評価を行う場合には、

被評価者に直接利害を有しない中立的な者である外部評価者の導入等によ

り、中立性の確保に努めること」との規定に基づき、外部の有識者・専門家

で構成する検討会を設置し、評価を行うこととした。

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- 2 -

これに基づき、評価検討会を設置し、プロジェクトの目的や研究内容に即

した専門家や経済・社会ニーズについて指摘できる有識者等から評価検討会

委員名簿にある6名が選任された。

なお、本評価検討会の事務局については、指針に基づき経済産業省製造産

業局繊維課が担当した。

3.評価対象

「新規親水性ポリエステルの開発」プロジェクト(実施期間:平成18年度

から平成19年度)を評価対象として、研究開発実施者(帝人ファイバー株式

会社)から提出されたプロジェクトの内容・成果等に関する資料及び説明に基

づき評価した。

4.評価方法

第2回評価検討会においては、研究開発実施者からの資料提供、説明及び質

疑応答、並びに委員による意見交換が行われた。

第3回評価検討会においては、それらを踏まえて「プロジェクト評価におけ

る標準的評価項目・評価基準」、今後の研究開発の方向等に関する提言等及び要

素技術について評価を実施し、併せて4段階評点法による評価を行い、評価報

告書(案)を審議、確定した。なお、第1回評価検討会では別のプロジェクトの

評価を行った。

また、委員各位や事業者による率直かつ自由な意見交換を確保するためにも、

検討会については非公開とし、配付資料・議事要旨等は公開出来ない部分は非

公開としつつも、原則公開とすることとした。

5.プロジェクト評価における標準的な評価項目・評価基準

評価検討会においては、経済産業省産業技術環境局技術評価調査課において

平成19年6月1日に策定した「経済産業省技術評価指針に基づく標準的評価

項目・評価基準について」のプロジェクト評価(中間・事後評価)に沿った評

価項目・評価基準とした。

1.事業の目的・政策的位置付けの妥当性

(1)国の事業として妥当であるか、国の関与が必要とされる事業か。

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- 3 -

・国民や社会のニーズに合っているか。

・官民の役割分担は適切か。

(2)事業目的は妥当で、政策的位置付けは明確か。

・事業の政策的意義(上位の施策との関連付け等)

・事業の科学的・技術的意義(新規性・先進性・独創性・革新性・先導性

等)

・社会的・経済的意義(実用性等)

2.研究開発等の目標の妥当性

(1)研究開発等の目標は適切かつ妥当か。

・目的達成のために具体的かつ明確な研究開発等の目標及び目標水準を設

定しているか。特に、中間評価の場合、中間評価時点で、達成すべき水

準(基準値)が設定されているか。

・目標達成度を測定・判断するための適切な指標が設定されているか。

3.成果、目標の達成度の妥当性

(1)成果は妥当か。

・得られた成果は何か。

・設定された目標以外に得られた成果はあるか。

・共通指標である、論文の発表、特許の出願、国際標準の形成、プロトタ

イプの作製等があったか。

(2)目標の達成度は妥当か。

・設定された目標の達成度(指標により測定し、中間及び事後評価時点の

達成すべき水準(基準値)との比較)はどうか。

4.事業化、波及効果についての妥当性

(1)事業化については妥当か。

・事業化の見通し(事業化に向けてのシナリオ、事業化に関する問題点及

び解決方策の明確化等)は立っているか。

(2)波及効果は妥当か。

・成果に基づいた波及効果を生じたか、期待できるか。

・当初想定していなかった波及効果を生じたか、期待できるか。

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- 4 -

5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等の妥当性

(1)研究開発計画は適切かつ妥当か。

・事業の目標を達成するために本計画は適切であったか(想定された課題

への対応の妥当性)。

・採択スケジュール等は妥当であったか。

・選別過程は適切であったか。

・採択された実施者は妥当であったか。

(2)研究開発実施者の実施体制・運営は適切かつ妥当か。

・適切な研究開発チーム構成での実施体制になっているか、いたか。

・全体を統括するプロジェクトリーダー等が選任され、十分に活躍できる

環境が整備されているか、いたか。

・目標達成及び効率的実施のために必要な、実施者間の連携/競争が十分

に行われる体制となっているか、いたか。

・成果の利用主体に対して、成果を普及し関与を求める取組を積極的に実

施しているか、いたか。

(3)資金配分は妥当か。

・資金の過不足はなかったか。

・資金の内部配分は妥当か。

(4)費用対効果等は妥当か。

・投入された資源量に見合った効果が生じたか、期待できるか。

・必要な効果がより少ない資源量で得られるものが他にないか。

(5)変化への対応は妥当か。

・社会経済情勢等周辺の状況変化に柔軟に対応しているか(新たな課題へ

の対応の妥当性)。

・代替手段との比較を適切に行ったか。

6.総合評価

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第2章 プロジェクトの概要

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- 5 -

1.事業の目的・政策的位置付け

1-1 事業目的

我が国は、1970年代以来、官民をあげて省エネルギーに取り組み、産業構造の転換や

新たな製造技術の導入、民生機器の効率改善等によって世界最高水準の省エネルギーを

達成してきた。

しかしながら、現在、2005年に発効した京都議定書では、日本は二酸化炭素等の温室効

果ガスの排出量を2008年から2012年までの期間中に1990年比で6%削減する義務を

負っており、また、原油価格高騰をはじめ昨今の厳しいエネルギー情勢を踏まえ経済産業

省において2006年5月に取りまとめた「新・国家エネルギー戦略」には、2030年までに

GDP あたりのエネルギー利用効率を約30%以上向上するとの更なる省エネルギー目標を

掲げているところである。これら目標を実現していくためには、官民一体となり、省エネルギ

ー技術の開発等を強力に推進していくことが必要不可欠となっている。

本研究開発においては、新規機能として、吸湿性、膨潤可逆寸法変化性、防汚性等を発現

する機能性ポリエステルポリマー、ポリエステル繊維、ポリエステル構造体を開発することを

目的とした。本研究開発により、清涼感向上、静電気防止、ムレ感抑制、防汚性等の快適性

と、ポリエステル原料リサイクルの推進、空調使用削減、繊維製品取扱いの省工程化等、

環境負荷低減を兼ね備えた機能素材・繊維製品を創製することが可能となる。

【事業の科学的・技術的意義】

親水性機能を有する合成繊維はナイロン・アクリル系が一般的であるが、本提案の繊維

は研究開発実施者独自の技術により開発された、新規ポリエステルポリマーによる機能新

素材であり、ポリエステル本来の優れた性能と親水性を両立している。さらに、複合紡糸技

術・ブレンド技術等、ポリマー機能を最大限に引き出す技術により素材展開を拡げられる。

加えて、ポリエステル新原料リサイクルシステムへの適用も可能であるため、高付加価値素

材として大きな競争力を有する。

【事業の社会的・経済的意義】

本研究で開発する新規親水性ポリエステルが有している清涼感向上、静電気抑制、ムレ

感抑制、防汚性等の機能により、空調使用削減、繊維製品取扱いの省工程化等、環境負

荷低減が可能になる。また、綿・シルクなどの天然繊維やナイロン・アクリル系合成繊維は

素材リサイクルが困難であるが、本研究開発によるポリエステル100%の高機能性繊維製

品は、ポリエステルの易ハンドリング性が付与されるだけでなく、新原料リサイクルシステム

への適用が可能となり、省エネルギー効果を発現する。

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- 6 -

1-2 国の関与の必要性

エネルギー効率の一層の向上には、技術革新とその成果の普及を促していく必要があり、

官民一体となり中長期的に取り組むことが不可欠となっている。

日本国内の繊維製品市場は輸入品の影響もあり過剰供給が続き、国内供給は数%まで

落ち込んでいる。また、原油をはじめ、原燃材料価格は先行きが不透明であり、日本の繊

維産業を取り巻く内外環境は益々厳しいものになっている。

このような環境下においても、国内における技術・技能の伝承を確保し、長期的に日本の

繊維産業の国際競争力を維持する為には、次々に新たな製品や製法を開発することが可

能な、高付加価値繊維製品の生産・技術基盤が国内に残り続けることが重要である。日本

の合成繊維は衣料用・非衣料用ともに、高品質・高機能・高質感を求められる分野において

技術の高さが今尚高く評価されており、特に最近、世界的に重要性が指摘されている省エ

ネや環境保全の分野では、多くの需要が期待されている。

本研究開発は、ポリエステルの機能を向上させることにより省エネルギーや環境負荷低

減に貢献するものであり、国民や社会のニーズに合致するものであるが、喫緊の国際競争

力確保に必要な研究、将来の国際競争力強化に不可欠な基礎・基盤的な研究における優

先課題に対し、重点的に取り組み、短期間にブレークスルーする為には、一研究機関或い

は一企業で取り組むのは難しいため、国の支援が必要不可欠である。

1-3 政策的位置付け

「エネルギー基本計画」(2007 年 3 月閣議決定)、「新・国家エネルギー戦略」(2006 年 5

月)、「第3期科学技術基本計画」(2006 年 3 月閣議決定)、「経済成長戦略大綱」(2006 年 7

月財政・経済一体改革会議)、「京都議定書目標達成計画」(2005 年 4 月閣議決定)におい

て、推進すべき技術開発としてエネルギーに係る分野が示されている。

本研究開発は、これらに基づき、エネルギーの安定供給の確保、二酸化炭素の排出削

減を図ることによる地球温暖化の抑制に貢献することを目的として、経済産業省において取

りまとめた「省エネルギー研究開発プログラム」に位置付けられる「エネルギー使用合理化

繊維関連次世代技術開発」のテーマの1つとして実施されたものである(※ 平成 20 年4月

に経済産業省の研究開発プログラムが再編され、現在「エネルギーイノベーションプログラ

ム」の「1-Ⅰ.総合エネルギー効率の向上/超燃焼システム技術」に位置付けられてい

る)。

また、「技術戦略ロードマップ2008」の「ファイバー分野」の中のロードマップに、

-これまで石油から製造してきた科学繊維についてバイオマス等の新たな原料から繊維

を製造する技術開発、

-新市場の創出につながる新たな複合材料を製造する技術開発、

-生体を模倣しつつ生体を超える機能や構造を有する画期的な新繊維の技術開発等を

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- 7 -

推進していくことが必要であると示されている。

本研究で開発する新規親水性ポリエステル繊維は ポリエステルが本来有する基本物性

と共に、従来にない機能性を持つ新しい素材であり、非常に高い潜在的商品ポテンシャル

がある。またポリマー自体の親水化改質であり基本的に成形法によらず機能を発揮する為、

要求品質とスペックさえ満足すれば如何なる形での応用も可能であり、新規な高付加価値

素材として大きな競争力を有する。

さらに、本研究で開発するものは、実質的にポリエステルポリマーであり、リサイクル性を

も兼ね備えた省エネ・省資源型素材であり、高機能な繊維を世界に先駆けて提案し、日本

の技術優位性を確保できる可能性を大いに秘めている。

2.研究開発目標

2-1 研究開発目標

2-1-1 全体の目標設定

目標・指標 設定理由・根拠等

△MR:6.0 以上

吸水膨潤率:20%以上

吸湿繊維の代表である綿(△MR:5%)以上の吸

放湿特性をポリエステル長繊維で達成する。

繊維強度 2.5g/de 以上 様々なテキスタイルに応用可能な必要強度

複合繊維・ブレンド技術を利用したオールポ

リエステルによる新規構造体開発

本開発の機能性ポリエステルを用いて、コンジ

ュゲート紡糸・ブレンド紡糸技術により複合繊

維を創出し、複合機能化及び環境による形態

変化等の機能を更に引き出す構造体を具現化

する。

本研究開発では、ポリエステルの新規機能として、吸湿性、膨潤可逆寸法変化性、防汚

性等を発現する機能性ポリエステルポリマー、ポリエステル繊維、ポリエステル構造体を開

発することである。本研究開発により、静電気防止、ムレ感抑制、防汚性等の快適性と、ポ

リエステル原料リサイクルの推進、空調使用削減、繊維製品取扱いの省工程化等、環境負

荷低減を兼ね備えた機能素材・繊維製品を創製する。

親水性機能を有する合成繊維はナイロン・アクリル系が一般的であるが、本研究開発では、

研究開発実施者独自の技術により、新規親水性ポリエステルポリマーを開発する。さらに、

複合紡糸技術・ブレンド技術などによって、ポリマーの機能を最大限に引き出し、ポリエステ

ル本来の優れた性能と親水性を両立し、多くの商品開発が可能な機能性を有する新規親

水性ポリエステル素材群の創製を目標とした。加えて、ポリエステル新原料リサイクルシス

テムへの適用が可能な素材とし、環境負荷を低減する。具体的には上記目標達成の為、以

下の5項目についての研究開発を推進する。それぞれの具体的な研究開発目標について

は、「2-1-2 個別要素技術の目標設定」に記載した。

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図1 実用化開発の概念図

新規親水性ポリエステル

(C-PEG - PET)<リサイクル性>

吸湿性

光感応性

防汚性

吸水可逆膨潤性

吸湿性ポリエステル繊維(綿代替)想定市場:

紳士・婦人・ユニフォーム・スポーツetc.省エネ効果:

新原料リサイクル開発課題:

吸湿性の最適化構造体開発

光感応繊維(汚れ分解)想定市場:

紳士・婦人・ユニフォーム・インテリアetc.省エネ効果:

洗濯回数削減開発課題:

光感応機能性コントロール構造体開発布帛加工の最適化

防汚繊維(再汚染防止)想定市場:

リネン衣料/ユニフォームetc.省エネ効果:

洗濯・乾燥の省工程化(リネン業者)速乾性による乾燥時間↓防汚性による洗濯回数↓

新原料リサイクル開発課題:

繊維防汚機能の最適化布帛加工の最適化

スマートテキスタイル想定市場:

紳士・婦人・ユニフォームetc.省エネ効果:

空調使用量削減開発課題:

繊維膨潤率の最適化構造体の最適化

①親水性ポリエステル

吸湿性を有する共重合ポリマーとして、側鎖型変性ポリエチレングリコール(CPEG)共重合

ポリマーを開発し、ポリエチレングリコール(PEG)と比較し、この新規な親水性ポリエステル

共重合体の持つ機能性を評価する。

②新規制電性ポリエステル

C-PEGの親水性を利用し、高い制電性能と耐久制電性を有し、染色工程、及びアルカリ

減量工程で布帛物性の低下の無い汎用性の高い制電性ポリエステルを開発する。

③洗濯再汚染防止ポリエステル

親水性を有する変性PEG成分を利用し、かつこの効果を高めるためにさらに共重合によ

って結晶性を制御した新規なポリエステルによって、洗濯時の洗濯液からの汚れ再汚染抑

制を目的とした洗濯再汚染防止ポリエステルを開発する。

④新規スマートテキスタイル

湿度変化に応じて可逆的に繊維形態・捲縮率が変化し、衣服内の温湿度変化をコントロ

ールするスマートテキスタイル用繊維の更なる性能向上(感湿形態変化率・変化速度等)を

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図る、また、環境負荷低減を目的として、親水性ポリエステル(親水性エラストマー)と変性

ポリエステルのサイドバイサイド型複合繊維により、従来の自己調節布帛では達成できてい

ない、わずかな発汗でも応答し、快適性を確保することが可能な、一般衣料を含め、幅広く

展開できる、オールポリエステルのスマートテキスタイルを開発する。

⑤特殊評価技術

上記①~④の検討の成果物(繊維構造体)が有する新規特性の消費科学的機能評価技

術を開発する。人体同様の熱(体温)・水(汗)特性を同時評価できる新規評価技術・設備を導

入し、最終製品の定常環境下での人体への快適性技術を開発する。

2-1-2 個別要素技術の目標設定

表1.個別要素技術の目標

目標・指標 妥当性・設定理由・根拠等

1.親水性ポリエステル 吸湿後水分率≧15%

放湿後水分率≦10%

コットンと同等以上の吸放

湿性を目標とした。

2.新規制電性ポリエステ

摩擦帯電圧≦2,000V(洗

濯 20 回後)

アルカリ減量による性能、

布帛物性の低下が無いこ

と。

単糸繊度 1dtex 以下の極

細製糸が可能。

仮撚糸の生産が可能。

汎用的で生産量も多い極細

仮撚加工糸で制電性がある

ことを目標にした。

3.洗濯再汚染防止ポリ

エステル

初期段階で後加工による

防汚製品と同性能である

こと。(色相変化 E*≦2)

性能に洗濯耐久性がある

こと。

(L100,L200 で、ΔE*≦10)

ポリエステル長繊維として

は世界初であり、紳士・婦

人衣料、ユニフォーム、スポ

ーツウェア、インナーウェア

など様々なテキスタイルに

応用可能であると同時に、

ポリエステル新原料リサイ

クル適用が可能である。

4.新規スマートテキスタ

イル

通気性変化率100%以上

(洗濯50回後)

繊維断面積変化による自己

調節機能布帛。従来の多量

発汗により機能が変化する

自己調節布帛はスポーツ時

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など用途が限定されるが、

わずかな発汗でも応答する

ことで快適性を確保でき、一

般衣料を含め、適応範囲を

大きく広げることを目標とし

た。

5.特殊評価技術 新規特性による消費科学

的機能評価技術を開発す

る。

人体同様の熱(体温)・水(汗)

特性を同時評価できる新規

評価技術。

最終製品の定常環境下で

の機能特性評価技術。

※要素技術共通の目標として原料リサイクルが可能であること。

3.成果、目標の達成度

3-1 成果

3-1-1 全体成果

本研究開発の結果、清涼感向上、静電気防止、ムレ感抑制、防汚性等の快適性と、ポリ

エステル原料リサイクルの推進、空調使用削減、繊維製品取扱いの省工程化等、環境負荷

低減を兼ね備えた新規機能素材に関し、以下の成果を得た。

①親水性ポリエステル

親水性ポリエステルにより、発汗時の熱流失が大きく涼しい衣服ができた。この衣服の

展開により、消費電力量の上がる夏場に、空調使用削減(冷房温度を 1℃下げた場合:原

油換算で約 660,000 キロリットル/年)等の省エネ効果が期待できる。

②新規制電性ポリエステル

制電性能と耐久制電性を有し、染色工程での布帛品位低下も無い、汎用性の高い制電

性ポリエステル繊維を開発し、新原料リサイクルシステムへの適用が可能な見通しも得る

ことができた。今後、汎用化に必要な課題を改善し、製品化を目指す。

③新規スマートテキスタイル

親水性ポリエステルエラストマーとポリエステルのサイドバイサイド型複合ポリエステル繊

維により、湿度変化に応答して捲縮形態を変化させるオールポリエステルのスマートテキス

タイル用繊維を開発した。今後、衣服状態で機能が発現できるように改良の必要があるが、

完成すれば省エネルギー(夏場の空調使用削減)とリサイクル(新原料リサイクルシステム

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への適用)の両面で環境負荷低減効果が期待できる。

④洗濯再汚染防止ポリエステル

洗濯回数の多い学童用シャツ・ジャージ・ワイシャツ・ブラウス等に展開が期待できる、洗

濯再汚染防止ポリエステル繊維を開発した。これによる洗濯・乾燥の省工程化(防汚性によ

る洗濯回数削減、ポリエステル繊維本来の速乾性による乾燥時間削減)による省エネ効果

が期待できる。

⑤特殊評価技術

吸湿性、膨潤可逆寸法変化性、感湿形態可逆性等を適切に評価する環境をつくり、人体

への快適性を評価する設備により、上記①~④の検討の成果物(繊維構造体)を評価した

結果、清涼性の向上等、新規な機能性を見出すことができた。

3-1-2 個別要素技術成果

①親水性ポリエステル

<開発目標>

吸湿繊維の代表である綿(△MR:5%)以上の吸放湿特性をポリエステル長繊維で達成す

ることを目標に、吸湿性を有する共重合ポリマーとして、側鎖型変性ポリエチレングリコール

(CPEG)共重合ポリマーを開発し、ポリエチレングリコール(PEG)と比較し、この新規な親

水性ポリエステル共重合体の持つ機能性を評価する。

<開発内容>

1)ポリマー・製糸基礎技術開発(C-PEG共重合ポリエステル)

まず、C-PEGを共重合したポリエチレンテレフタレートの重合を実施した。

得られたポリマーのNMR分析結果、添加したC-PEGの90%以上が共重合されており、

目的とした櫛形ポリマーが得られたことを確認した。またC-PEG共重合量の増加とともに

表面親水性が向上し、吸湿性・親水耐久性を兼ね備えた親水性ポリマーを開発することが

できた。

表2.C-PEG共重合ポリマーの特性

次に上記のC-PEG共重合親水性ポリマーを単独紡糸し、繊維サンプルを採取した。C

-PEG共重合量up により、上記ポリマー特性を反映した、独特の触感(“ぬめり”感)が発現

ポリマー種類 PEG種類 吸湿性・親水性 親水耐久性

PEGグラフト共重合 C-PEG 良好 高い

PEGブロック共重合 低分子量PEG 低い 高い

PEGブレンド 高分子量PEG 非常に良好 低い

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した。その一方で、糸強度低下、糸切れ、巻き締まり(解舒不良)等、製糸面での課題も明

らかになり、更に検討が必要であったが、本サンプルを用いて、得られた繊維の機能性評

価を進めた。

表3.製糸性評価

親水成分 共重合量 糸物性 製糸性 巻取り性 触感(ヌメリ感)

水準1 C-PEG3000 15wt% 強度低下 ○~△ ×(少量のみ) あり

水準2 C-PEG2000 20wt% 強度低下 △~× ×(少量のみ) あり

比較 無し 無し St - - 無し

*共重合量 15%、20%とも捲き取り面で課題あり(巻き締まりによる解舒性低下)

2)繊維構造体開発・性能評価(C-PEG共重合ポリエステル)

ウィッキング(吸水速度)、バイレック(吸上げ高さ)、自然抱水性等の水に対する従来評価法

では大きな特徴は見出せなかったが、着用時の繊維構造体の吸放湿、膨潤可逆寸法変化、

感温形態変化を簡易的に測定できる設備として導入したスキンモデルによる評価の結果、

C-PEG共重合親水性ポリエステルを用いて作った布帛は、布帛を通じて外部に逃げる熱

量が、発汗時に増大することがわかった。また、同様の効果が発汗サーマルマネキンを用

いた評価でも確認できた。これは、「涼しいとき(汗をかいていないとき)には熱を逃がさずに

暖かく、暑いとき(汗をかいたとき)には外部に熱を積極的に逃がすことで涼しい」ということ

を示唆しており、清涼衣服としての展開が期待できる特徴を有していることがわかった。

グラフ1.スキンモデルによるC-PEG共重合ポリエステルの機能性評価

3)繊維構造体開発・性能評価(新規親水性エラストマー検討)

さらに、衣料用途のみで無く、メディカル用途等、幅広く展開できる素材として、高吸水性

を有する新規親水性ポリエーテルエステルエラストマー(以下PZと称す)の検討に着手した。

開発当初、熱水へ成分が多く溶出する問題があったが(下表水準③)、ポリマー組成を最適

化することによって、改良PZポリマーの融点は従来PZ対比20℃高くなり、耐熱性は大幅

0

100

200

300

400

500

600

700

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60時間[分]

親水性PET

汎用PET

放熱量「W/㎡」 発汗 ※ 擬似皮膚表面温度; 33℃

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に向上し、また熱水溶出性も、当初の50%にまで抑制できた(表4水準①)。

表4.新規親水性エラストマーの特性

水準PZ組成

ハードセグメント / ソフトセグメント

融点

熱水溶出量

(mg/g-糸)

① K2 10%共重合PBT(改良) PEG4000 189 15

② K2 10%共重合 PBT(改良) C-PEG3000 190 20

③ K2 10%共重合 PBT(従来) PEG4000 169 28

K2; 芳香族スルホン酸化合物 PBT;ポリブチレンテレフタレート

上記ポリマーを紡糸し、得られたエラストマー繊維にて布帛サンプル(丸編み)を作成し、

吸・放湿性能を確認した結果、期待通り、吸湿性はコットンよりも良好であり、かつ放湿性も

非常に良好であることがわかった。また、製糸性についても問題無く、安定して巻取りが可

能であることを確認した。

表5.新規親水性エラストマーの特性

水準PZ組成

ハードセグメント /ソフトセグメント

吸湿後水分率

35℃・95%RH

6H 吸湿後

放湿後水分率

25℃・60%RH

1.5H後

① K2 10%共重合PBT(改良) PEG4000 29% 12%

② K2 10%共重合 PBT(改良) C-PEG3000 31% 12%

③ K2 10%共重合 PBT(従来) PEG4000 31% 9%

比較 コットン布 13% 8%

K2; 芳香族スルホン酸化合物 PBT;ポリブチレンテレフタレート

<今後の予定>

今回得られた2タイプのポリマーについて、今後も上記製糸課題の改善と、清涼衣服を狙

った商品開発を進める。

・C-PEG共重合親水性ポリエステル

製糸性改善を検討するとともに、特にニーズが高い、スポーツシャツ・作業着・学生服・春

夏用紳士・婦人衣料といった清涼性衣服、水に濡れると“ぬめる”性質を利用した雨に濡れ

たときの転倒防止用床材料等の商品開発を進めていく。

・高吸水性ポリエーテルエステルエラストマー

高い吸放湿・吸放水特性を利用し、汗をかいても蒸れない衣服・乾燥から肌を守る衣服・

電子製品を結露から守る産業用詰め綿などの商品開発を進めていく。

②新規制電性ポリエステル

<開発目標>

ポリエステル繊維布帛に制電性を付与する方法は、ポリエステルポリマーの改質(親水

性物質添加)と、布帛への制電剤塗布の、大別して2種類の手法がある。ポリマーを改質し

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た方が制電性能の耐久性の点で有利だが、制電性能を満足させる為に制電剤含有量を増

加させると、糸の成型時及び布帛の染仕上げ時に数々の問題が発生してしまう。今回は、

C-PEG及びPEGの親水性を利用し、高い制電性能と耐久制電性を有し、染色工程、アル

カリ減量工程での布帛物性の低下も無い、汎用性の高い制電性ポリエステル繊維を開発

する。これにより制電剤塗布工程が省略でき、省エネルギー化も達成できる。

- 制電性を有するポリエステル仮撚加工糸の開発

- 制電性能:摩擦帯電圧≦2000V(染色後布帛、洗濯 20 回後)

- 制電剤塗布工程の省略化;水使用量削減、乾燥工程の省略

- 原料リサイクル推進

<開発内容>

1) ポリマー・製糸基礎技術開発

ア) 制電性成分として、表6に示す手法でC-PEGをブレンドした2水準の制電性ポリマー

を紡糸して、得られた繊維製品の制電性能を確認した結果、2水準とも、制電性能の初

期値については概ね良好な結果であったが、染色後に制電性能が低下し、目標レベル

(*)に到達できなかった。

* 摩擦帯電圧≦2,000V(染色後布帛、洗濯 20 回後)

表6.C-PEG共重合ポリエステルの制電性能評価

準内容

PEG 構造 摩擦帯電圧(V) 布帛品位

(アルカリ減量後)組成 (wt%) アルカリ減量前 アルカリ減量/染色後

① C-PEG 2wt%共重合ポリマー C-PEG3000 2 2,290 2,800 △~×

②①の十倍濃度のマスターバッチをレ

ギュラーポリエステルにブレンドC-PEG3000 2 1,650 2,010 △~×

③ 従来 制電糸 PEG20000 2 1,820 2,840 △~×

④ 比較 汎用ポリエステル - - >3,500 >3,500 ○

イ) この原因は繊維表面のPEG成分が染色工程で脱落する為であると推定し、改善策とし

て、繊維表面へのPEG成分露出を抑制すべく、芯/鞘型コンジュゲート紡糸技術によ

り、芯に高濃度のPEG及びアルキルベンゼンスルホン酸塩をブレンドした制電性ポリエ

ステルポリマーを、鞘に汎用ポリエステルポリマーを配した、芯/鞘型コンジュゲート繊

維を開発した。その結果、染色後の制電性能、耐久性とも目標に到達できる見通しを得

た。従来から、コンジュゲート極細製糸は難しいとされてきたが、口金技術開発の結果、

汎用性の高い、制電性ポリエステル繊維の製糸が可能になり、アルカリ減量しても繊維

表面に凹凸が発現せず、耐フィブリル性が期待できる芯/鞘コンジュゲート型制電性ポ

リエステル繊維を開発することができた。

2) 繊維構造体開発・性能評価

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ア) 上記のような親水性ポリエステルを紡糸する場合、ポリマー熱安定性等の問題により、

細繊度銘柄の安定紡糸が困難である等、銘柄汎用性に制約があったが、新規開発した

2成分ポリマー紡糸試験設備(18年度補助事業)を活用し、ポリマー温度・粘度等を精密

制御することによって、従来技術では安定に紡糸することができなかった、細繊度銘柄

(特に単糸繊度1以下)の安定紡糸が、期待通り可能になった。

イ) さらに、衣料、資材等、幅広く用途展開できる、単糸繊度1以下の芯/鞘型制電性極細

ポリエステル繊維の開発を目的に、芯ポリマーにブレンドするPEGについての検討を進

めた。通常のPEGを用いた場合には制電性能は比較的良好であったが、仮撚加工糸に

10%以上のアルカリ減量を施すと、芯部が抜け落ちる(中空状になる)問題が発生した。

一方、C-PEGを用いた場合には、この現象は起こらないが、期待した制電性能を得る

ことができなかった。

表7.芯/鞘型コンジュゲート繊維による制電性評価

芯/鞘型コンジュゲート繊維の構成 摩擦帯電圧(V) 芯部抜け落ち(減量後)

芯 鞘 アルカリ減量無し アルカリ減量(15%)後 仮撚加工糸 フラットヤーン

⑤C-PEG 3000

共重合ポリエステル汎用ポリエステル 2,810 3,250

無し 無し

⑥C-PEG 4000

共重合ポリエステル同上 2,950 3,170

無し 無し

⑦PEG20000 4%

ブレンドポリエステル同上 970 1,150

あり

(3~4/72 本)

無し

ウ) 以上の通り、本年度は、芯/鞘型極細制電繊維の安定紡糸技術確立により、スポー

ツ衣料等、アルカリ減量を施さない衣料用途への展開が可能になったが、婦人衣料等、ア

ルカリ減量を施す用途への展開や、更なる極細制電糸の開発にはまだ課題があり、引き続

き、C-PEG等、親水性成分の種類、繊維中での濃度、分散状態等の諸条件を最適化し、

10%以上のアルカリ減量を施しても布帛品位低下が無い、汎用性の高い新規制電性ポリ

エステル繊維の開発を目指す。

3) 原料リサイクル推進

さらに、芯/鞘型コンジュゲート制電繊維のリサイクル技術に取り組んだ。リサイクル

工程では、繊維やポリマーから原料のDMTおよびエチレングリコールまでリサイクルされ

る。制電性ポリマーに使用されているPEG成分(C-PEG、PEG)およびアルキルベンゼ

ンスルホン酸塩を、リサイクル工程の蒸留精製段階で分離除去することによって、リサイ

クル処理が可能となることを確認した。

すなわち、制電繊維をリサイクルして得られた原料から再度 制電繊維を製造することが

可能となった。

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実際に、リサイクル工程で得られた原料(DMT)を使用して制電性ポリマーの重合を試み

たところ、反応性、品質面ともに従来品と同等のポリマーであり、得られた芯/鞘型コン

ジュゲート制電繊維も、糸物性、制電性能ともに、バージン原料を使用したポリマーと同

等で、新原料リサイクルシステムへの適用が可能な見通しを得ることができた。

<今後の予定>

上記の芯/鞘型コンジュゲート制電繊維に関し、C-PEG等、親水性成分の種類、繊維中

での濃度、分散状態等の諸条件を最適化し、10%以上のアルカリ減量を施しても布帛品位

低下が無い、新規制電繊維の開発を目指す。一方、平成20年度は開発できなかったブレ

ンドタイプの制電繊維は、芯/鞘型コンジュゲート制電繊維以上に、汎用性があり、合理化で

きる可能性を有しており、引き続き、開発に取り組む。

表8.新規制電性ポリエステル;今後の検討

繊維形態 制電ポリマー 開発状況

芯/鞘コンジュゲート型 PEG・イオン性物質ブレンドポリマー 高アルカリ減量対応用に改良継続

ブレンド型(単独紡糸)PEG 系ポリエステルエラストマー 繊維技術開発中

C-PEG 系ポリエステルエラストマー ポリマー技術検討中

③新規スマートテキスタイル

<開発目標>

湿度変化に応じて、可逆的に繊維形態・捲縮率が変化し、衣服内の温湿度変化をコントロールする、スマ

ートテキスタイル用繊維の更なる性能向上(感湿形態変化率・変化速度等)、および、環境負荷低減を目

的に、親水性ポリエステル(親水性エラストマー)と変性ポリエステルのサイドバイサイド型複合繊維によ

る、新原料リサイクルシステムへの適用が可能なスマートテキスタイルを開発する。

1)布帛の通気性変化率: 100%以上(洗濯50回後)

2)繊維段階での通気性コントロール指標の確立

<開発内容>

1) ポリマー・製糸基礎技術開発

ア) 吸湿ポリマーとして、吸湿性に優れる、C-PEG共重合親水ポリエステル(*2)および、

C-PEG共重合親水エラストマー(*3)を用いた。

*2; C-PEG2000 20%共重合ポリエステル(3ページ目 水準2に同じ)

*3; ソフトセグメントに C-PEG3000を使用した親水性エラストマー(3ページ目 水準4に同

じ)

イ) 上記の親水性ポリエステルとポリエチレンテレフタレートを用い、オールポリエステルサ

イドバイサイド型複合繊維を開発した。吸湿ポリマーとして、C-PEG共重合親水エラ

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ストマーを用いることで、湿度変化に応答して、捲縮形態を変化させるオールポリエス

テルサイドバイサイド型複合繊維ができた。

2) 繊維構造体開発・性能評価

オールポリエステルサイドバイサイド型複合繊維を用いて、従来のスマートテキスタイル(ポ

リアミドとポリエステルのサイドバイサイド複合繊維使用)と同じ規格で編地を作り、湿度

を変化させて編地構造の変化を調べたが、編地状態での形態変化はほとんど見られな

かった。この理由は、繊維に拘束力が加わる編地状態では、吸湿ポリマーの吸湿による

体積変化が、長さ方向ではなく断面方向に大きく働くためである。この後、長さ方向への

変化を大きくすることと、繊維の拘束力を抑える編地構造の開発により、実用化を目指し

ていく。

④洗濯再汚染防止ポリエステル

<開発目標>

親水性PEG共重合ポリエステルポリマーを用いて、洗濯時の洗濯液からの汚れ再汚

染抑制を目的とした、洗濯再汚染防止ポリエステルを開発する。

表9.洗濯再汚染防止ポリエステルの開発目標

項目 目標 課題

洗濯再汚染防止

性能

1.初期段階で後加工による防汚製品と

同性能

2.洗濯200回後も機能低下が無い。

左記機能を有し、安定製

糸が可能であること。

<開発内容>

1) ポリマー・製糸基礎技術開発

ア) ポリマー基本骨格の検討

側鎖共重合型となるC-PEGを共重合した親水 PET を用いた織物の洗濯再汚染防止性

を評価したところ、レギュラーPET 対比で効果が認められるものの効果は小さかった。そこ

で、C-PEGの末端構造を右図に記すように変えて末端封鎖型にしたポリエチレングリコー

ル(M-PEG)を用いたところ、良好な性能を発現することが確認された。しかしながら、洗

濯100回を過ぎると機能低下が顕著となり、目標性能に到達することができなかった。

イ) 繊維結晶構造制御による機能強化

上記の検討結果を受け、更なる機能向上の検討を実施したところ、イソフタル酸などの第

三成分を共重合させることにより繊維の結晶化を抑制し、目標の機能(洗濯200回後も機

能低下が無い)を達成することができた。これは第三成分を共重合することによって繊維中

の非晶部分が拡大し、その非晶部分にPEGを局在化することができたことが最大の要因で

あると考えられる。

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- 18 -

ウ) 重合条件最適化

前述のポリマー骨格(M-PEG+イソフタル酸共重合ポリエステル)での機能発現は確認

できたが、M-PEGは重合反応の末端封鎖となり、さらにイソフタル酸は重合反応を阻害す

る特性を有している為、得られるポリマーの重合度が上がらないという問題があった。そこ

で、重合触媒量や反応温度等、製造条件の最適化を検討した結果、目的の重合度を有す

るポリマーを得ることが出来た。また基礎紡糸評価の結果、原糸強度で目標の3cN/dtex

を達成することができた。

エ) 色相改善

本研究開発のポリエステル繊維製品はユニフォーム・リネン衣料市場への展開を想定し

ており、色相、特に白度は重要な要素である。現時点ではPEGの熱による着色等の影響で、

一般衣料用ポリエステル繊維と比較して黄味が強い傾向にある。平成19年度は、ポリマー

色相の改善、繊維サンプルの作成、及び機能性確認に注力した。繊維用ポリエステルの重

合触媒として一般的にはアンチモン系触媒が使用されているが、環境負荷低減のため、環

境負荷の小さいチタン系触媒での技術開発を進めている。チタン系触媒の特徴は、反応性

は良好であるがポリマーの色相が若干黄色味を帯びる傾向にある。そこで、チタン系触媒

の活性を抑制する特殊なリン化合物の添加条件、重合反応温度条件などを最適化し、色相

の良好な共重合ポリマーを得ることができた。

オ) ポリマー生産技術

ポリマー連続生産テストにより、工程・品質とも安定していることを確認した。

カ) 洗濯再汚染防止ポリエステル繊維の開発

上記のポリマーを使用し、ユニフォーム用ウーリー糸(167dtex48 フィラメント)を試作した。工

程に関しては、開発当初 ウーリー加工工程での断糸・加工張力変動が多く見られた為、製

糸条件の検討を行い、問題無く連続生産ができる製糸条件を確立した。得られたウーリー

糸の物性は、強度 3.1cN/dtex と基礎検討時の目標を達成できた。

2) 繊維構造体開発・性能評価

ア) 家庭洗濯による再汚染性評価

ユニフォーム規格織物を作って洗濯再汚染性評価を進めたところ、家庭洗濯による汚れ

除去性は極めて高い効果を示した。

イ) 工業洗濯による再汚染性評価

工業洗濯条件での再汚染性の評価では、洗濯 100 回程度までは非常に色相変化が小さ

く、再汚染防止性に優れることを示したが、100 回以降色相変化が大きくなり、従来のポリエ

ステルよりは優れるものの、ポリエステル65%/綿35%製品と同等レベルであり、工業洗

濯対応商品としての性能は今一歩であった。

表10.洗濯実施後の布帛の色相変化

色相変化(ΔE) 洗濯 5

10 回 30 回 50 回 100 回 150 回 200 回

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- 19 -

開発品 2 3 4 4 5 17 17

Reg.PET+SR 加工 2 5 6 8 10 24 26

T65/C35 10 11 10 8 6 15 15

綿 100% 2 1 1 1 2 2 4

色相変化△E;数字が大きいほど洗濯再汚染防止性能が低い。

<今後の予定>

優れた性能を示した家庭洗濯用再汚染防止素材として、洗濯回数の多い学童用シャツ・

ジャージ・ワイシャツ・ブラウス等の商品開発を進めるとともに、皮脂分解性等、他の新しい

機能の探索、検証と用途開発を進める。

⑤特殊評価技術

<開発目標>

本検討における新規機能性テキスタイルの価値を実証するには、快適機能を実証する

新規な評価設備の導入や、従来に無い高い精度で湿度がコントロールされた条件での

物性測定が必要となった。そこで、以下の設備を導入し、上記①~④の検討の成果物

(繊維構造体)の機能性評価を進めた。

<開発内容>

1)構造体を着用したときの暑さ・蒸れ感をモデル的に定量評価できる評価設備(スキンモデ

ル)

衣服用テキスタイルの清涼性を小さな布でモデル的に定量評価できる設備として、繊維

構造体に人体と同様な発熱・発汗状態を与え、そのときの布を通じての熱移動や、布内部

の湿度変化を測定できる設備(インタークロス社製スキンモデル)を導入。今回開発の親水

性ポリエステル繊維の評価に使い、親水性ポリエステルが発汗時に大きな清涼性を示すこ

とを実証した。

グラフ1.スキンモデルによるC-PEG共重合ポリエステルの機能性評価

0

100

200

300

400

500

600

700

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60時間[分]

親水性PET

汎用PET

放熱量「W/㎡」 発汗 ※ 擬似皮膚表面温度; 33℃

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- 20 --7

-6

-5

-4

-3

-2

-1

0

0 5 10時間[分]

温度

変化

(℃

親水性PET

従来品

2)繊維構造体着用時の快適性環境調整設備(恒温恒湿室)

親水性ポリエステルや、水分に反応して動くスマートテキスタイルの評価には、一定条件

の温湿度環境下での測定が重要である。また、これらの製品は染色加工条件で大きく性能

が変わることがわかっているため、平成19年度、代表的な染色加工工場である(株)エイゼ

ットへ恒温恒湿室を設置し、染色加工後の最終製品(布帛)の機能性を評価した。調湿した

環境下で測定することで、親水性ポリエステルの高い親水性が確認できた。また、この環境

下で親水性ポリエステルを用いたサイドバイサイド複合型繊維の吸湿変化を調べたところ、

残念ながら、既存のポリアミド・ポリエステルサイドバイサイド型複合繊維ほどの効果は出な

いことがわかった。

3)歩行型発汗サーマルマネキンを用いた評価状況

ア) 背景

より実着用に近い状態で衣服の清涼性を評価するため、歩行型発汗サーマルマネキンを

導入した。この設備は、実着用での、被験者による違いや体温のサーカディアンリズム(日

内変動)、また性周期等を排除でき、清涼感を定量的に評価する方法である。

イ) 歩行型発汗サーマルマネキン選定

近年、欧米では人体着用による誤差をなくし、一定条件の下ガーメントの快適性を評価す

べく、歩行型発汗サーマルマネキンがASTM-F2370が国際規格(ISO)化される流れに

ある。一方、上記マネキンは各研究機関がオリジナルで製作したものが多数で、これを製造

販売している企業は、米国メジャーメントテクノロジー社と京都電子工業社に絞られる。今回、

両社製品を比較検討した結果、両者ともにASTM規格および歩行型サーマルマネキンによ

るガーメント評価規格(ISO15831)に合致しており、遜色ないが価格面、メンテナンス面、

ソフト操作性から京都電子工業社を選定し、これを導入した。

ウ) 歩行型発汗サーマルマネキンによる機能評価

上記発汗サーマルマネキンに親水性ポリエステル織物から作った衣服を着せて、快適性

評価を行った。保温性が要求される乾燥時には、通常のポリエステル織物と同様な保温性

を示すが、発汗時には、熱放出が大きく、親水性ポリエステルが、保温性と清涼性を同時に

満足する優れた性能を示すことを確認した。

グラフ2.発汗サーマルマネキンによる機能評価

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- 21 -

3-1-3 特許出願状況等

表9.特許・論文等件数

要素技術 論文数 論 文 の 被

引用度数

特許等件数

(出願を含む)

特 許 権 の

実施件数

ラ イ セ ン

ス供与数

取 得 ラ イ セ

ンス料

国際標準へ

の寄与

親水性ポリエステ

0 0 3 0 0 0

新規制電性ポリエ

ステル

0 0 3 0 0 0

洗濯再汚染防止ポ

リエステル

0 0 1 0 0 0

新規スマートテキ

スタイル

0 0 1 0 0 0

特殊評価技術 0 0 0 0 0 0

計 8

表10.論文、投稿、発表、特許リスト

題目・メディア等 時期

特許 特公平06-084426

「共重合ポリエステルの製造法」

平成6年

特許 特公平06-084427

「共重合ポリエステル成形物の製造法」

平成7年

特許 特開2007-70467

「共重合ポリエステルおよびそれからなる繊維」

平成19年

特許 特開2008-19537

「制電性ポリエステル仮撚加工糸及びその製造方法」

平成20年

特許 特願2006-294097

「制電性芯鞘型ポリエステル極細仮撚加工糸及びその製造方法」

平成18年

特許 特願2008-053306

「制電性を有する極細延伸糸及びその製造方法」

平成20年

特許 特開2008-163517

「共重合ポリエステル繊維及びそれを用いた繊維製品」

平成20年

特許 特願2008-083343

「共重合ポリエステルおよびポリエステル繊維」

平成20年

3-2 目標の達成度

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3-2-1 全体目標の達成度

目標・指標 成果 達成度

△MR:6.0 以上

吸水膨潤率:20%以上

基礎評価にて吸湿繊維の代表である綿(△MR:5%)以上の吸放湿性を得ることができた。

達成

繊維強度 2.5g/de 以上 今回の研究で開発した繊維について様々なテキスタイル

に応用可能とする為、目標とした 2.5g/de 以上の強度

を確保できた。

達成

複合繊維・ブレンド技術を利用し

たオールポリエステルによる新規構

造体開発

新規開発した2成分ポリマー紡糸試験設備(18年度

補助事業)を活用し、ポリマー温度・粘度等を精密制

御することによって、従来技術では安定に紡糸するこ

とができなかった、上記のような親水性ポリエステル

を使用した、細繊度複合繊維(特に単糸繊度1以下)

の安定紡糸が可能になった。

達成

3-2-2 要素技術目標の達成度

表11.目標に対する成果・達成度の一覧表

要素技術 目標・指標 成果 達成度

1.親水性ポリ

エステル

吸湿後水分率≦15%

放湿後水分率≦10%

親水性エラストマーの基礎評価に

てコットン以上の吸放湿性を得るこ

とが出来た。

(吸湿後水分率31%、放湿後水分

率9%)

C-PEG共重合ポリエステルの基

礎評価において、当初予想してい

なかった、「清涼衣服」として期待

出来る特性を得た。

達成

2 . 新 規 制 電

性 ポ リ エ ス テ

摩擦帯電圧≦2,000V(洗

濯 20 回後)

10%以上のアルカリ減

量を施しても性能、布帛

品位低下が無いこと。

単糸繊度 1dtex 以下の極

細製糸が可能。

仮撚糸が可能。

単糸繊度1以下の芯/鞘型コンジ

ュゲート極細製糸が可能となり、

仮撚加工を施しても制電性能低下

が無い極細仮撚糸を開発した。

なお、婦人衣料等、アルカリ減量を

施す用途への展開については目

標を達成できなかった。

一部達成

3 . 洗 濯 再 汚

染防止ポリエ

ステル

初期段階で後加工による

防汚製品と同性能である

こと。

ユニフォーム規格織物を作って洗

濯再汚染性評価を進めたところ、

家庭洗濯による汚れ除去性は極

一部達成

Page 37: 新規親水性 ポリエステルの 開発 プロジェクト 評価 事後 報告書 …€¦ · 繊維分野 におけるエネルギー 使用合理化技術開発補助金 プロジェクト

- 23 -

性能に洗濯耐久性があ

ること。

めて高い効果を示した。なお、工業

洗濯条件での再汚染性の評価で

は、洗濯 100 回以降色相変化が大

きくなり、従来のポリエステルより

は優れるものの、ポリエステル6

5%/綿35%製品と同等レベルで

あり、工業洗濯対応商品としての

性能は今一歩であった。

4.新規スマー

トテキスタイル

通気性変化率100%以

上(洗濯50回後)

繊維段階での通気性コン

トロール指標の確立

吸湿ポリマーとして、C-PEG共

重合親水エラストマーを用いること

で、湿度変化に応答して、捲縮形

態を変化させるオールポリエステ

ルサイドバイサイド型複合繊維が

できた。ただし、繊維断面積変化に

よる自己調節機能布帛吸湿ポリマ

ーの吸湿による体積変化が、長さ

方向ではなく断面方向に大きく働く

ため、通気性変化率に対しては目

標を達成できなかった。

一部達成

5 . 特 殊 評 価

技術

新規特性による消費科

学的機能評価技術を開

発する。

着用を想定した布帛快適性評価を

スキンモデル、被服快適性を国際

的にも通用する発汗歩行マネキン

にて評価可能にした。

最終製品の快適性能の安定化を

実現した。

達成

注)「達成度」の欄には、達成、一部達成、未達成、を選択して記述。

研究開発課題のうちオールポリエステルのスマートテキスタイル技術開発については、目

標に達しなかったが、親水性ポリエステル、新規制電性ポリエステル、洗濯再汚染防止ポリ

エステルについては、概ね目標を達成し、原料リサイクルへの適用が可能であることも確認

できた。

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4.事業化、波及効果

4-1 事業化の見通し

4-1-1 成果の利用主体

(1) 内容

本研究開発終了後も、研究開発実施者において残された課題について独自に研究開発

を継続している。本研究にて開発された新規親水性ポリエステルにより、清涼感向上、静電

気防止、ムレ感抑制、防汚性等の快適性と、ポリエステル原料リサイクルの推進、空調使用

削減、繊維製品取扱いの省工程化等、環境負荷低減を兼ね備えた機能素材・繊維製品を

提供する。

(2) 用途

衣料資材(紳士・婦人衣料、ユニフォーム、スポーツウェア、インナーウェア等)

インテリア資材(カーテン等)

産業資材

(3) 実用化の規模

初期規模は、約 1,200T/年、将来的には約 7,200T/年の繊維生産量を想定する。

4-1-2 事業化に至る期間

平成18年度から平成19年度までの本研究開発によって、C-PEG等、親水性基質の

添加により、清涼感向上、制電性、防汚性等、多様な機能を発現する新規親水性ポリエス

テルを開発することができた。引き続き、上記に述べた各課題の解決と生産技術最適化・安

定化による製造コストダウン・商品汎用性の向上を進め、平成20~21年度に実用化およ

び設備投資の見極め行う。実用化初年度として想定される平成22年度はスポーツウェア・

インナーウェア分野で商品展開し、その後生産拡大投資を行い、数千 T/年の繊維生産量

を目指す。

表12.事業化にいたる期間

項目 平成 20 年度 平成 21 年度 平成 22 年度 平成 23 年度 平成 24 年度

改良・商品開発

生産設備投資

生産・販売

収益

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4-2 波及効果

本研究で開発した新規親水性ポリエステルは、当社独自の重合技術を駆使した他社追

随を許さない新規ポリエステルポリマーであり、これに当社独自の製糸技術・織編技術を応

用することで、基本物性と共に、従来に無い機能性を持つポリエステル繊維となり、非常に

高い潜在的商品ポテンシャルがある。またポリマー自体の親水化改質であり基本的に成形

法によらず機能を発揮する為、要求品質とスペックを満足すれば如何なる形での応用も可

能である。さらに実質的にポリエステルポリマーであり、リサイクル性をも兼ね備えた省エ

ネ・省資源型素材となる。

表13.波及効果

素材内容 展開用途・分野 省エネ効果

快適テキスタイル素材 紳士・婦人・ユニフォーム等 空調使用量削減;消費電力量の上がる

夏場に、冷房温度を 1℃下げた場合:原

油換算で約 660,000 キロリットル/年の省エネ

効果が期待できる。本研究で開発された

新素材による布帛が 5%普及したと仮定し

た場合、約 33,000 キロリットル/年の省エネ

効果が期待できる。

防汚性素材

(防汚・速乾リネン)

リネン繊維製品

ユニフォーム等

洗濯・乾燥の省工程化;防汚性による洗

濯回数削減、速乾性による乾燥時間削

減により、原油換算で約 15,000 キロリットル

/年の省エネ効果が期待できる。(*1)新

原料リサイクルプロセスの利用;石油からの生

産に対し、約 22,600,000MJ/年の消費エ

ネルギー削減効果が期待できる。(*2)

(*1)

ユニフォーム業界(リネンサプライ非適用分野は除く)の繊維製品流通量(=年間繊維生産量)は

45,871T でる(2000 年)。

一方、リネンサプライ業者が使う工業用洗濯機において、被洗物 1kg 当り 0.077 リットルの原油を、

乾燥機において、被洗物 1kg 当り 0.192 リットルの原油を消費すると言われている。

リネンサプライ製品を年間洗濯回数を 120 回とすると、

洗濯に使用される原油量は 423,424 キロリットル/年、乾燥に使用される原油量は 1,058,561/

年、合計 1,481,985 キロリットル/年である。

リネンサプライ製品の 5%を本開発の新素材で代替、新素材により洗濯・乾燥それぞれ 20%の省

エネが達成されるとすると、

1,481,985 × 5% × 20% = 14,819 キロリットル/年 ≒ 15,000 キロリットル/年

の省エネルギーとなる。

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(*2)

ポリエステル原料の DMT 生産において、新原料リサイクルプロセスによる DMT 生産により、従来の

石油からの DMT 生産に対し、消費エネルギーを 60,460MJ/T(DMT)(従来対比 84%)削減とな

る。

(03 年 12 月帝人ファイバー㈱発表「LCA 調査による新原料リサイクルの環境負荷削減効果につい

て」より)

リネン製品のうち、T/C 混率が 65/35 の製品の消費量を 11,500T/年、そのうち 5%を本素

材で代替すると仮定する。DMT1トンからのポリエステル生産量を1トンとすると、

11,500(T/年) × 5% × 65/100 × 1/1 × 60,460(MJ/T)

= 22,596,925(MJ/年) ≒ 22,600,000(MJ/年)

の消費エネルギー削減効果が発現する。

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5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等

5-1 研究開発計画

本研究開発は、以下に示すように2年計画で実施した。

表14 研究開発計画

年度

開発項目

平成 18 年度 平成 19 年度 平成 20 年度

(終了後)

平成 21 年度

(終了後)

1.親水性ポリエステル

(1)重合技術開発

(2)製糸技術開発

(3)構造体開発

2.新規制電性ポリエステル

(1)重合技術開発

(2)製糸技術開発

(3)構造体開発

3.洗濯再汚染防止ポリエステル

(1)重合技術開発

(2)製糸技術開発

(3)構造体開発

4.新規スマートテキスタイル

(1)重合技術開発

(2)製糸技術開発

(3)構造体開発

5.特殊評価技術

(1)スキンモデル

(2)恒温恒湿室

(3)発汗マネキン

親水性 PET

機能最大限発揮の為の製糸技術開発

安定製糸技術の確立設備技術開発

親水性エラストマー

安定製糸技術の確立

基本特性の確認・評価 構造体・商品開発

ポリマー解良・生産技術開発

生産技術開発

基本特性の確認・評価 構造体・商品開発

基礎技術開発 ポリマー解良・生産技術開発

安定製糸技術の確立

基本特性の確認・評価 構造体・商品開発

機能最大限発揮の為の構造探索

基礎技術開発 ポリマー解良・生産技術開発

安定製糸技術の確立

基本特性の確認・評価

装置検討・測定条件検討 機能性評価

装置・測定条件確立

装置検討・導入 機能性評価

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5-2 研究開発実施者の実施体制・運営

本技術開発は、公募による選定審査手続きを経て、帝人ファイバー株式会社が経済産業

省からの補助金(補助率 2/3)を受けて実施した。

実施者:帝人ファイバー株式会社 研究開発部門

原料重合技術開発部 重合技術開発課

繊維技術開発部 長繊維技術開発課

繊維技術開発部 テキスタイル技術開発課

図2 研究開発実施者の実施体制

【研究計画および研究進捗状況の管理】

帝人ファイバー株式会社 研究開発部門 繊維技術開発部 1名

【研究実施計画の検討・管理・実験担当など】

帝人ファイバー株式会社 研究開発部門

・ポリマー開発 重合技術開発課 繊維グループリーダー 他 計 5名

・製糸技術開発 長繊維技術開発課 開発グループリーダー 他 計 3名

・構造体開発 テキスタイル技術開発課 研究員 計 2名

研究開発実施者独自の重合技術を駆使し、新規開発した親水性ポリエステルポリマーを

使用し、これに製糸技術・織編技術を応用することによって、基本物性と共に、従来にない

機能性を併せ持つ、非常に高い潜在的商品ポテンシャルを持つ新規素材を早期に開発す

べく、上記3部署協同で本研究開発に取り組んだ。

経済産業省

指導・監督 進捗報告

(共同提案者)

帝人ファイバー株式会社

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5-3 資金配分

本研究開発では、ポリマー鎖内共重合可能PEG(ポリエチレングリコール)および変性P

EG等の親水性物質を活用した新規親水性ポリエステルポリマーの開発と、本開発の新規

親水性ポリエステルが持つ特性を複合機能化するコンジュゲート紡糸技術開発、更にはこ

れらの特性を最大限に引き出す為に必要な構造体の具現化、快適性他の機能をより製品

特性として評価する消費科学的データ採取技術の開発に重点を置いた資金配分とした。

本研究開発に要した経費は、2年間総額118.7百万円(注:うち補助金総額77.5百万

円、補助率2/3)である。表に予算の支出内訳を示す。

表15 研究開発期間における資金計画

(単位:百万円)

年度 平成18年度 平成19年度 合計

重合技術開発 13.9 16.0 29.9

製糸技術開発 31.4 8.2 39.6

構造体開発・機能性評価 14.8 34.4 49.2

合計 60.1 58.6 118.7

(注: うち補助金総額 77.5百万円)

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5-4 費用対効果

期待される効果

本研究で開発した新規親水性ポリエステルポリマーは、基本的に成形法によらず、機能

を発揮する為、要求品質とスペックさえ満足すれば如何なる形での応用も可能である。研究

開発実施者独自の製糸技術・織編技術を応用することで、基本物性と共に、従来にない機

能性を併せ持つポリエステル繊維の創製が可能となる。また、さらに実質的にポリエステル

ポリマーであり、リサイクル性をも兼ね備えた省エネ・省資源型素材となる。

(1) 市場規模(現状と将来の見通し)/産業創出効果

表16 展開用途と市場規模

展開用途 市場規模(T/年) シェア目標(T/年)

紳士・婦人 601,956 8,640 <1.4%>

スポーツウェア 21,381 1,069 <5.0%>

ユニフォーム 45,871 2,293 <5.0%>

インナーウェア 92,707 464 <0.5%>

インテリア資材 23,850 239 <1.0%>

合計 785,865 12,705 <1.6%>

(出所:繊維市場研究社 2000 年)

産業創出効果

ポリエステルリサイクル可能な素材群が増え、ポリエステル既存市場の新需要創出

が期待できる。また、スマートテキスタイル・産業/インテリア資材は全く未知のプロダク

トであり、繊維産業へは勿論、周辺ビジネスも含めて新産業創出の可能性を多大に秘

めている。

(2) 競合が想定される他社の開発動向とそれに対する優位性の根拠

他社親水性合成繊維はナイロン系・アクリル系であるが、本繊維はポリエステルの

基本的機械物性・ハンドリング性を保ちながら多くの新規な機能性を有し、さらにリサイ

クルも可能である。防汚性利用についても同様にポリエステルのメリットがある。快適

性・光感応性・可逆的形態変化の素材は、今後環境配慮型の施策や消費動向にタイム

リーに商品提供ができる。

(3) 価格競争力

研究開発実施者独自の技術により汎用材料を蓄積のあるポリマー技術・製糸技術・

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構造体技術により商品化するものであり、根本的・将来的に価格競争力がある。

<具体的数値>

通常ポリエステルチップ:100~150 円/kg

新規親水性ポリエステルチップ:300~400 円/kg

新規親水性ポリエステル繊維:400~500 円/kg

繊維構造体:200~400 円/m2

さらに、原料の一つである側鎖共重合型変性PEGは、粗原料が汎用薬品(エチレンオキ

サイド、グリセリン等)であり、繊維生産量増加に伴い急速に低価格化していくものと思われ

る。

(4) 売上げ見通し(単位:百万円)

実用化開発終了後、初期売上げは、

繊維量 1,200T/年、構造体量換算 12,000T/年 を想定する。

売り上げ量は構造体ベースで 1,800 百万円/年

(5) 売上げ見通し設定の考え方

大半の衣服製品にも求められる吸湿性をポリエステルで兼ね備えており、リサイクル性との

相乗効果によりシェアを拡大する可能性が十分あると判断する。また、新規な省エネ・省資

源型の衣料素材の提案であり、十分な市場優位性を期待できることからすると、前記シ

ェア目標を達成しうると推定される。

(6) 費用対効果

本研究で開発した新規親水性ポリエステルによる省エネルギー効果(原油換算量;

48,000 キロリットル/年)を金額換算すると、原油価格(23,550 円;H20 年 12 月現在)の換算から

上記節約原油換算エネルギー量は、11.3 億円/年の削減に相当し、本研究開発に要した

経費 1.18 億円(補助金総額 0.78 億円)に対する本研究開発の成果は、費用対効果の面から

も十分なものであると考えられる。

5-5 変化への対応

研究開発計画に変更が必要となる変化はなかったが、毎年、研究開発部門研究開発推

進部を中心に情報を収集し、計画に反映すべき事項がないか検討し、研究開発を推進し

た。

原油をはじめ、原燃材料価格等が先行きを見通せない中、本研究開発においては、新原

料リサイクルシステムへの適用が可能な新規親水性ポリエステル開発を推進し、リサイクル

された原料からでもバージン原料を用いた場合と同等の機能を発現する高機能素材の開

発を推進した。

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第3章 評価

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第3章 評価

1.事業の目的・政策的位置付けの妥当性

本研究開発は、清涼感、防汚性等の新規機能を有し、リサイクル可能な新規ポリエス

テル繊維の開発を行うものであり、国民・社会のニーズに合致し、事業の目的は非常に

重要で、政策的位置付けは極めて明確である。原料リサイクルが可能なポリエステル繊

維に親水化改質を加えて吸湿性などの快適性を付加する技術の開発は、先進性があり、

省エネルギーや省資源に寄与した繊維製品の供給が可能となり社会的意義がある。ま

た、研究開発リスクが大きく民間のみでは問題解決が図られず、国の事業として実施す

る緊要性が極めて高い。

【肯定的意見】

(推進課評価)

・本研究開発は、清涼感、防汚性等の新規機能を有し、リサイクルも可能な新規ポリエス

テル繊維を創製し、空調使用削減、繊維製品取り扱いの省工程化、原料リサイクルの推

進等によって、省エネルギーに貢献しようとするもので、国民や社会ニーズに合致した

テーマである。

・本研究開発は、高機能衣料や生活資材・産業用途等、繊維による複合材料技術における

我が国の有意性を保ち国際競争力を高めるためにも意義がある。

・本研究開発は、2008 年 4 月経済産業省により策定された「技術戦略ロードマップ 2008(フ

ァイバー分野)」の中で記載されているマテリアルセキュリティ分野に位置づけられて

いる(環境・リサイクル等社会ニーズに対応した繊維材料の技術開発)。

・本研究開発テーマについては、世界的にも例がなく、技術的な先進性がある。

(評価委員コメント)

・技術戦略マップ(ファイバー分野/マテリアルセキュリティ分野)に掲げられるテーマ

であり、国民や社会ニーズに合致したテーマである。

・本研究開発が目指す、新規ポリエステルポリマーによる高機能素材の開発が実現すれば、

より快適で、かつ省エネや省資源に寄与した繊維製品の供給が可能となり、開発への取

組み意義が高い。

・親水性ポリエステルの潜在市場はかなり大きいと思える。本プロジェクトではPEGグ

ラフト共重合体が最終製品候補となったが、綿との競合において差別化が図れるか。親

水性ポリエステル系弾性糸はメディカル分野等新たな応用分野を開拓できる素材であろ

う。

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・我が国の強みである機能性繊維の国際競争力を維持するためにも国の支援が必要である。

快適繊維で省エネルギーを達成させることは国民と社会のニーズに合致するものであ

る。

・これまでにない複数の異なる性質を有する新規な繊維素材の開発であり、一般衣料を含

めて広範な利用が期待できる。

・原料リサイクルが可能なポリエステル繊維に親水化改質を加えて吸湿性などの快適性を

付加したり、洗濯時の再汚染を防止したりすることを実現する研究開発は、ポリエステ

ル繊維の高機能化を進め、独創的で高付加価値な合成繊維を製品化し、我が国の繊維産

業の競争力を高める。繊維の断面積が自己調整するスマートテキスタイルを実現する基

盤技術を確立できれば、原料リサイクル可能な“賢い繊維布”の実現の道が切り開かれ

る。この点で挑戦的な研究開発であると評価できる。さらに、吸湿性を人間科学的に評

価する“サーマルマネキン”の開発は、感性科学による科学的な裏付けを見える化し、

製品開発を加速するツールとして有力な手段になる。

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2.研究開発等の目標の妥当性

【評価検討会評価(案)】

明確な目標及び目標水準が設定されており、指標設定も適切である。特に、側鎖型変

性PEG共重合ポリエステル繊維は世界に類を見ず、これを利用した新規高耐久制電素

材の開発や、新規スマートテキスタイルの開発は、極めて挑戦的な目標であり評価でき

る。 なお、全体目標のうちオールポリエステルによる新規構造体開発については、具体性

に欠ける。また、リサイクルや快適性評価についても目標を定める必要があったと思わ

れる。

【肯定的意見】

(推進課評価)

・要素技術共通の目標として原料リサイクルへの適用を掲げたことについては、極めて

挑戦的な目標設定がなされており評価できる。

(評価委員コメント)

・具体的かつ明確に目標が設定されており、目標の設定根拠等も適切である。

・側鎖型変性PEG共重合ポリエステル繊維は世界に類を見ず、これを利用した新規高耐

久制電素材(アルカリ減量可能)の開発や、新規スマートテキスタイル(僅かな発汗で

応答)の開発は、極めて挑戦的な目標と言える。

・ポリエステル系素材を用いて、新機能性を付加することにより、優れた新規素材の開発

を目指したものであり、それぞれ、他の素材で実現された性能を目標としている。

・ポリエステル繊維の原料リサイクルの可能性を明らかにすることは、環境負荷をできる

だけ小さくする試みであり、さらに我が国の石油依存性を低くする試みの一つという点

で、先験的な研究開発と言える。

【問題点・改善すべき点】

(推進課評価)

・親水性ポリエステルについては、中間段階でその達成状況をチェックするポイントを明

確にすべきであったと考えられる。また、洗濯再汚染防止ポリエステル技術開発につい

ては、目標として、コスト目標(円/m3)を定めるべきであった。

(評価委員コメント)

・目標設定において、オールポリエステルによる新規構造体開発を挙げているが、具体的

にその目標を定める必要があったように思われる。

・快適性素材としての目標値が明確でない。快適性評価の目安が必要である。芯・鞘型コ

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ンジュゲートによりアルカリ減量時のPEG脱落を防いでいるが、期待した効果は出て

いない。この場合アルカリ減量なしではPEGが通常のポリエステルで覆われているた

め制電効果は悪くなると思われる。アルカリ減量により制電効果がさらに悪化したのは

PEGの脱落であると考えられるので、アルカリ減量を少なくする(たとえば 10%以下)

ことを検討してみてはどうか。

・設定根拠は各々妥当であるが、全体の目標と個別要素技術の目標の間に直接的な関連性

を理解しにくい。リサイクルに関する目標も設定しておくべきではなかったか。

・開発された素材の中には、これまでの素材にはない複数の優れた性能を有するものがあ

る。付加価値の検討と製造コストのバランスを踏まえて、早急に進出すべき事業を検討

し、事業化に向けた研究開発の優先度の設定と集約化を進める必要があると考えられる。

・新規の制電性ポリエステル繊維の研究開発はシーズ志向の従来型の研究開発であり、ニ

ーズとのマッチングを強く意識していない点から、最近の事業戦略を重視する技術経営

(MOT)的な側面が弱いと言わざるをえない。研究開発戦略と事業戦略を同時に考える

ようにしないと、迅速な事業展開が難しくなる。

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3.成果、目標の達成度の妥当性

【評価検討会評価(案)】

評価の条件によって目標性能に達せず一部未達成となった要素技術目標が残るもの

の、全体目標として掲げた性能を満たす4つの機能をもつ素材が開発されており、概ね

妥当な成果が得られたと評価できる。

具体的には、綿以上の吸放出性を備えた新規親水性ポリエステルが開発され、さらに

それを利用した新規制電性素材、洗濯再汚染防止素材等の開発でも概ね目標を達成した

ことは評価できる。

なお、今回得られた研究開発成果を基に研究開発を継続し、今後の製品化が望まれる。

【肯定的意見】

(推進課評価)

・親水性ポリエステルについては、従来評価法では見出すことが出来なかった特長(清涼

感)を新規評価設備(スキンモデル)により発見することができ、新素材の創製の可能

性が拡がった。

・ポリエステルへの親水性付与により、異なる4つの機能を持つ素材開発が行われ、開発

された新素材は全てオールポリエステルであり、原料リサイクルが可能である。

・リサイクル可能な素材開発を進めるという点では全体目標を達成した。

(評価委員コメント)

・綿以上の吸放出性を備えた新規親水性ポリエステルが開発され、さらにそれを利用した

新規制電性素材、洗濯再汚染防止素材等の開発でも概ね目標を達成している。加えて、

特殊評価技術の開発や、原料リサイクルへの適用が確認されたことなど、目標に対して

妥当な成果が得られていると評価できる。新規制電性素材のアルカリ減量加工対応性、

洗濯再汚染防止素材の工業洗濯対応性、新規スマートテキスタイルの通気性変化率は目

標に届かなかったが、これら残された課題については、研究開発者にて継続検討され、

ブレークスルーしてほしい。

・新規制電性ポリエステル及びスマートテキスタイルについては一部目標達成がならなか

ったが、原因が解明されており、今後の方向性が見えている。

・スキンモデルによる評価法は、消費者の嗜好の多様化、及び今後の日本の製造業が目指

すべき製品の高付加価値化に合致したものであり、事業化の際のキーポイントになり得

る。

・新機能性ポリエステル素材の観点から、一部未達成の目標が残るものの概ね目標を達成

した。

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【問題点・改善すべき点】

(推進課評価)

・開発技術の一部については、出願を試みる価値のあるものも見られ、もう少し特許に配

慮しても良かったと思われる。

・研究開発の成果の発表会や論文投稿を積極的に実施するなど、成果をもう少しPRすべ

きであった。

・新規制電性ポリエステルについては アルカリ減量時の制電ポリマー抜け落ちにより、目

標が一部未達成となった。

・オールポリエステルの新規スマートテキスタイルついては、衣服状態で機能が発現出来

るように改良が必要であり、目標が一部未達成となった。

(評価委員コメント)

・親水性に関しては目標を一応達成しているが、実際の製品化においてどのような特徴が

発揮できるか、また製品化に至るプロセスにおいて親水性が保持されるかの検討につい

てはまだ十分ではない。親水性ポリエステルについては綿との差別化をどのように評価

するかは未解決のままである。

・要素技術目標は達成したものと一部達成したものとが混じるまだら模様の開発結果とな

った。研究開発開始時に挑戦的な課題設定をした結果とも言える。研究開発戦略を立て

る際に、進捗管理や目標管理などを管理するプロジェクトマネジメントの観点を重視し

なかったためと推察できる。今回得られた研究開発成果を基に、その実用化を目指し、

今後は自主プログラムによって研究開発を継続し、将来、製品化していただきたい。

・ポリエステルへの親水性付与により、異なる4つの機能を持つ素材開発が行われたが、

開発目標との関係を明示すべきではないかと思われる。

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4.事業化、波及効果についての妥当性

【評価検討会評価(案)】

本研究開発については、期間内に一部の個別要素目標が達成できなかったが、事業終

了後も実施者において継続的研究が行われ、2~3年で目標レベルが達成可能なレベル

にあると見込まれることから、事業化に向けた見通しは概ね立っていると評価される。

事業化に向けては、製品の快適性の向上、コスト削減等が必要であるが、開発したリ

サイクル可能な親水性素材は、衣料品のみならず医療分野や産業資材分野等での応用展

開が可能であり、波及効果が期待される。

なお、今後は、清涼ポリエステル、新規スマートテキスタイルの研究開発成果の迅速

な標準化が望まれる。

【肯定的意見】

(推進課評価)

・期間内に目標を達成できなかったが、本研究開発終了後も研究開発実施者における継続

的研究が行われ、2~3年で目標レベルが達成可能と見込んでおり、事業化の見通しは

ついている。

・新規制電性ポリエステルについては、衣料繊維関係共通のニーズであり、技術完成後は、

事業化の見通しは極めて明確である。

・ポリエステル原料リサイクル技術の適用については、DMT生産に関し、従来の石油か

らの生産に対し、消費エネルギーを 60、460MJ/T(DMT)削減となる。

・今回開発する新規親水性ポリエステルについては、衣料分野のみならず、産業資材や生

活資材での応用が期待される。

(評価委員コメント)

・残された課題については研究開発が継続されており、事業化までの見通しが立っている。

・本研究で開発された新規親水性ポリエステルは、衣料品のみならず産業資材等での応用

展開が可能であり、波及効果が期待できる。

・リサイクル可能な親水性素材という観点から波及効果は大きい。事業化に当たっては綿

といかに差別化していくかが決め手となろう。親水性弾性糸は今後メディカル分野等に

展開されると思われるが、商品開発プロセスで十分制電効果が保持できるよう配慮がい

る。

・省エネ、リサイクルなどで波及効果が見られる。事業化の道も見えている。

・QOL の向上が重要な課題となっているが、清涼感、吸湿性など、健康志向に対応した商

品開発が期待される。

・リサイクルによる企業イメージの向上の観点から、天然素材などに代わる新規市場の開

拓が期待される。

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・事業化に向けての一定の研究開発成果は得られたので、今後は事業戦略と研究開発戦略

を融合し、継続して実用化を目指した研究開発を続けていく基盤技術ができたと言える。

【問題点・改善すべき点】

(推進課評価)

・今後は、清涼ポリエステル、新規スマートテキスタイルの研究開発成果の迅速な標準化

が課題である。

・事業化には、運転コスト等の検証など、更なるコストの低減が必要である。

(評価委員コメント)

・4つの開発素材すべてに事業化の見通しを明示することが望ましい。

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5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等の妥当性

【評価検討会評価(案)】

本研究開発の研究開発計画、実施体制・資金配分は適切であったと考えられる。2年

間の事業計画に基づきプロジェクトリーダーの指揮の下、適切かつ効果的な研究開発が

実施され、ソフト、ハード、実証試験などの組み合わせによりバランスのとれた研究開

発がなされたと言える。

また、本素材は、衣料用、産業・生活資材用として広く展開が可能と見込まれ、波及

効果は大きく、費用対効果は妥当と考えられる。

なお、2年の開発期間に対して、テーマを多く設定し過ぎているのではないかとの意

見もあった。

【肯定的意見】

(推進課評価)

・研究開発は、ソフト、ハード、実証試験などの組み合わせによりバランスのとれたもの

となっている。

・2年間の事業計画に基づきプロジェクトリーダーの指揮の下、適切でかつ効果的な研究

開発が実施された。

・開発に当たっては、原料から製糸・構造体開発に至るまで一貫して実施し、研究開発の

スピードアップを図った点は評価できる。

・新規親水性ポリエステルを安定に製糸する為の技術開発、及び得られた成果物の新規機

能を見出す為の評価機器について集中的に予算を配分した。

・今回得られた成果物については、衣料用、産業・生活資材用として広く展開が可能と見

込まれ、費用対効果は大きい。

・事業共通の目標として原料リサイクルへの適用を掲げ、達成しており、原燃料価格の高

騰や環境に関する意識の変化に対応している。

(評価委員コメント)

・本研究開発の研究開発計画、実施体制・マネジメントは適切であったと評価される。

・項目と時期のバランスを考慮して適切な資金配分がされている。費用対効果が十分あっ

た。

・実績のある技術を基盤として、新たにポリエチレングリコールの共重合によって、新規

な性能を有する素材を開発しようとするものである。吸湿素材の代表である綿の代替を

目指すなど、特徴的な素材開発を狙っている。

・環境問題や QOL への対応など、社会情勢の変化に対応した研究開発である。

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【問題点・改善すべき点】

(推進課評価)

・開発期間を延長することにより、さらに多くの成果が得られた可能性があった。

・開発内容が広すぎたため個々の検討が浅くなった傾向がある。

・大学等との研究機関との連携・強力関係があった方がさらに効率的に進められた可能性

がある。

(評価委員コメント)

・開発期間(2年間)に対して、テーマを多く設定し過ぎているようにも感じられた。

・親水性ポリエステル用途を想定した評価設備にかなりの予算を割いているが、清涼感評

価の方法としてはまだ十分ではない。他の感性評価(たとえば伝熱、透湿速度等)と合

わせて評価法を確立することが必要。親水性弾性糸のメディカル分野への応用を見越し

た評価がされていない。リサイクル性の評価が明確でない。

・2年間という比較的短い研究開発期間での研究開発である点を考えると、当初から研究

開発戦略と事業戦略、知的財産戦略の三位一体を図るプロジェクトマネジメントを実施

した方がよかったと推察できる。

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6.総合評価

【評価検討会評価(案)】

快適性と環境負荷低減を兼ね備えた新規機能性ポリエステルの技術開発を目指した

本研究開発は、国が関与する事業として政策的位置付けも明確であり、社会的意義も大

きく、妥当であった。研究開発のマネジメントも適切に行われたと評価できる。

側鎖型変性PEG共重合ポリエステル繊維は世界に類を見ず、極めて挑戦的な目標で

あり、これに取り組んだことは高く評価できる。本研究開発は、設定された目標に対し

て、オールポリエステルのスマートテキスタイル技術開発については目標に達しなかっ

たが、その他の個別要素技術親水性ポリエステル、新規制電性ポリエステル、洗濯再汚

染防止ポリエステルについては、概ね目標を達成し、原料リサイクルへの適用も可能で

あることも確認されており、事業化に向けた取り組み・見通しも明確に示されているな

ど、適切であったと評価される。

【肯定的意見】

(推進課評価)

・研究開発課題のうちオールポリエステルのスマートテキスタイル技術開発については、

目標に達しなかったが、その他の個別要素技術3テーマについては、概ね目標を達成し、

原料リサイクルへの適用も可能であることも確認できた。

・繊維製品取り扱いの省工程化が可能となるなどの副次的効果も見出されており評価でき

る。

・目標には未達であるが、全体として目標とした電力削減率が達成されており、研究開発

終了後も研究開発が継続され、当初目標を達成するレベルには到達している。

(評価委員コメント)

・側鎖型変性PEG共重合ポリエステル繊維は世界に類を見ず、これを利用した新規高耐

久制電素材の開発、洗濯再汚染防止素材の開発、新規スマートテキスタイルの開発は、

極めて挑戦的な目標であったと言える。2年間の研究開発の成果として、綿以上の吸放

出性を備えた新規親水性ポリエステル(側鎖型変性PEG共重合ポリエステル)が開発

され、さらにそれを利用した新規制電性素材、洗濯再汚染防止素材等の開発でも概ね目

標を達成している。加えて、特殊評価技術の開発や、原料リサイクルへの適用が確認さ

れたことなど、目標を達成するレベルには到達していると評価できる。

・ポリエステルを基本とした親水性繊維の開発は今後のリユース・リサイクル時代を視野

に入れた適切なプロジェクトであった。親水性に関しては一応初期目標を達成している

が、実際の商品化プロセスにおいて初期の親水性をどのように保持できるかが今後の課

題になろう。

・新規機能性繊維として事業化が見えてきており、社会に受け入れられやすい製品が開発

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されている

・本研究課題で開発された繊維は、清涼感向上、静電気防止、ムレ感抑制、防汚性等で優

位性を有し、天然素材でしか実現できなかった性能も獲得されている。

・リサイクル可能なポリエステル繊維の高機能化を目指す本研究開発目標は社会的な意義

は大きい、不可欠な研究開発と言える。目標設定は本質的に重要な課題を目指しており

評価できる。

【問題点・改善すべき点】

(推進課評価)

・開発した成果の標準化が今後の課題である。

(評価委員コメント)

・研究開発による省エネルギーに対する波及効果をもう少し厳密に評価すべきであるよう

に思われる。

・研究開発期間が比較的短いことを念頭に置いて、事業戦略と十分に一体化したプロジェ

クトマネジメントを実施するという点では課題を多く残したと言える。

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7.今後の研究開発の方向等に関する提言

今後の課題として残された、新規制電性素材のアルカリ減量加工対応性、洗濯再汚染

防止素材の工業洗濯対応性、新規スマートテキスタイルの通気性変化率についてブレー

クスルーし、商品化されることを期待する。特に、僅かな発汗で応答する自己調節機能

布帛が開発できれば、スポーツ用に止まらず一般衣料品でもスマートテキスタイルの展

開の可能性が高まると言える。

また、スキンモデル、サーマルマネキン等で見出すことができた新規機能をうまく活

用し、標準化を含めて消費者へのアピール方法の検討を継続することが望まれる。

なお、本研究開発で開発された機能性繊維を使用した差別化商品が市場を獲得するた

めには、まだ一部しか達成されていない目標を達成すると同時に、後加工条件を十分検

討する必要がある。

【各委員の提言】

・スキンモデルによる新規機能評価技術をこれまでの繊維製品に適用し、清涼衣服の基準

づくりを行い、新規ポリエステルを含め、より清涼感のある衣服づくりを目指してもら

いたい。

・2年間の研究開発において課題として残されたテーマ(新規制電性素材のアルカリ減量

加工対応性、洗濯再汚染防止素材の工業洗濯対応性、新規スマートテキスタイルの通気

性変化率)をブレークスルーし、商品化を目指してほしい。特に、僅かな発汗で応答す

る自己調節機能布帛が開発できれば、スポーツ用に止まらず一般衣料品でもスマートテ

キスタイルの展開の可能性が高まるので、是非とも挑戦してほしい。

・快適テキスタイル素材として商品開発計画を立てているが、商品化に至るプロセスで初

期の親水性に基づく快適性が保持できるかどうかの検証が必要であろう。これは防汚性

素材としても同じことが言える。快適性評価はまだ標準化されておらず、その点でも今

回の評価法だけで快適素材と言えるかどうか不明である。防汚性素材としてみた場合、

防汚性の耐洗濯堅牢度は十分だろうか。今回開発された機能性繊維を使った差別化商品

が市場を獲得するためには、まだ一部しか達成されていない目標を達成すると同時に、

後加工条件を十分検討する必要がある。

・親水性ポリエステルと制電性ポリエステルは需要が十分見込まれると思われ、早期の事

業化が期待される。制電性ポリエステルの構造を改良し、適用範囲の拡大が望まれる。

・高機能な商品の差別化の観点から、制度面での問題点(「薬事法」による機能表現の制

限など)の克服も重要であり、多様な価値観と付加価値を生み出す原動力と考えられる。

スキンモデル、サーマルマネキン等で見出すことができた新規機能をうまく活用し、標

準化を含めて消費者へのアピール方法の検討を継続されたい。海外市場に対するブラン

ド化も有益であり、省庁の支援を得ることも必要ではないか。

・重要な課題である環境保全と省エネルギーに貢献する素材であり、特徴を生かしやすい

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分野から順次商品化を進めることが望まれる。

・最近の急速な金融不安の下で、研究開発投資を取捨選択する時勢の中で、今回得られた

研究開発成果を活かす継続した研究開発の実施を強く望みたい。日本の繊維産業にとっ

ては重要な研究開発課題であるからである。

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第4章 評点法による評点結果

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第4章 評点法による評点結果

「新規親水性ポリエステルの開発」に係るプロジェクト評価の実施に併せて、以

下に基づき、本評価検討会委員による「評点法による評価」を実施した。その結果

は「3.評点結果」のとおりである。

1.趣 旨

評点法による評価については、産業技術審議会評価部会の下で平成 11 年度に評

価を行った研究開発事業(39 プロジェクト)について「試行」を行い、本格的導入

の是非について評価部会において検討を行ってきたところである。その結果、第 9

回評価部会(平成 12 年 5 月 12 日開催)において、評価手法としての評点法につい

て、

(1)数値での提示は評価結果の全体的傾向の把握に有効である、

(2)個々のプロジェクト毎に評価者は異なっても相対評価はある程度可能である、

との判断がなされ、これを受けて今後のプロジェクト評価において評点法による評

価を行っていくことが確認されている。

また、平成 17 年 4 月 1 日に改定された「経済産業省技術評価指針」においても、

プロジェクト評価の実施に当たって、評点法の活用による評価の定量化を行うこと

が規定されている。

これらを踏まえ、プロジェクトの中間・事後評価においては、

(1)評価結果をできる限りわかりやすく提示すること、

(2)プロジェクト間の相対評価がある程度可能となるようにすること、

を目的として、評価委員全員による評点法による評価を実施することとする。

本評点法は、各評価委員の概括的な判断に基づき点数による評価を行うもので、

評価報告書を取りまとめる際の議論の参考に供するとともに、それ自体評価報告書

を補足する資料とする。また、評点法は研究開発制度評価にも活用する。

2.評価方法

・各項目ごとに4段階(A(優)、B(良)、C(可)、D(不可)<a,b,c,dも同

様>)で評価する。

・4段階はそれぞれ、A(a)=3点、B(b)=2点、C(c)=1点、D(d)=0

点に該当する。

・評価シートの記入に際しては、評価シートの《判定基準》に示された基準を参

照し、該当と思われる段階に○を付ける。

・大項目(A,B,C,D)及び小項目(a,b,c,d)は、それぞれ別に評

点を付ける。

・総合評価は、各項目の評点とは別に、プロジェクト全体に総合点を付ける。

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- 47 -

3.評点結果

評点法による評点結果

(新規親水性ポリエステルの開発)

評 価 項 目 平 均 点 標準偏差

1.事業の目的・政策的位置付けの妥当性 2.33 0.52

2.研究開発等の目標の妥当性 2.17 0.41

3.成果、目標の達成度の妥当性 2.00 0.00

4.事業化、波及効果についての妥当性 1.83 0.41

5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果の

妥当性2.00 0.00

6.総合評価 2.00 0.00

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平成18~19年度エネルギー使用合理化技術開発費補助金(エネルギー使用合理化繊維関連次世代技術開発)

新規親水性ポリエステルの開発-事後評価用資料-

第2回繊維分野におけるエネルギー使用合理化技術開発補助金プロジェクト

事後評価検討会資料4-3

-事後評価用資料-

帝人ファイバー(株)研究開発部門2008.12.19

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事業の目的Confidential

吸湿性、膨潤可逆寸法変化性、防汚性等を発現する

機能性ポリエステルポリマー、ポリエステル繊維、構造体の開発

- 快適性 -

清涼感向上、静電気防止、ムレ感抑制、防汚性等

- 省エネルギー・省資源 -

空調使用削減、繊維製品取り扱いの省工程化

- 易リサイクル性 -

ポリエステル原料リサイクルによる環境負荷低減

ポリエステルの親水化改質により、快適性を向上させるだけで無く

省エネルギーや環境負荷低減に貢献する。 1

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新規親水性ポリエステル

(C-PEG - PET)<リサイクル性>

吸湿性 防汚性

吸水可逆膨潤性

吸湿性ポリエステル繊維(綿代替)想定市場:

紳士・婦人・ユニフォーム・スポーツetc.省エネ効果:

新原料リサイクル開発課題:

吸湿性の最適化

防汚繊維(再汚染防止)想定市場:

リネン衣料/ユニフォームetc.省エネ効果:

洗濯・乾燥の省工程化(リネン業者)速乾性による乾燥時間↓防汚性による洗濯回数↓

スマートテキスタイル想定市場:

紳士・婦人・ユニフォームetc.省エネ効果:

空調使用量削減開発課題:

繊維膨潤率の最適化構造体の最適化

形態変化可逆性

制電快適繊維想定市場 :インナー用途開発課題 :制電性能ポリマー設計・紡糸技術

形態変化可逆性快適繊維想定市場 :スポーツ用途開発課題 :感温・吸湿形態変化

研究開発の目標Confidential

制電快適繊維

光感応性

吸湿性の最適化構造体開発

光感応繊維(汚れ分解)想定市場:

紳士・婦人・ユニフォーム・インテリアetc.省エネ効果:

洗濯回数削減開発課題:

光感応機能性コントロール構造体開発布帛加工の最適化

防汚性による洗濯回数↓新原料リサイクル

開発課題:繊維防汚機能の最適化布帛加工の最適化

ポリエステルの本来の優れた性能と親水性を両立した

高機能・省エネ・省資源型ポリエステル素材群の創製2

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研究開発の目標Confidential

目標・指標 設定理由・根拠等

△MR:6.0以上

吸水膨潤率:20%以上

吸湿繊維の代表である綿以上の

吸放湿特性をポリエステル長繊維で

達成する。

繊維強度2.5g/de以上 様々なテキスタイルに応用可能な

必要強度必要強度

複合繊維・ブレンド技術を

利用したオールポリエステ

ルによる新規構造体開発

本開発の機能性ポリエステルを用い

たコンジュゲート紡糸・ブレンド紡糸

技術により、ポリマーの機能を最大

限に引き出し、様々な複合機能を有

する構造体を具現化する。

3

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Confidential

要素技術 開発目標

1.親水性ポリエステル コットンと同等以上の吸放湿性を有すること

・△MR:6.0以上、吸水膨潤率20%以上

・吸湿後水分率≧15%,・ 放湿後水分率≦10%

2.洗濯再汚染防止

ポリエステル

初期段階で後加工による防汚製品と同性能であること。

性能に洗濯耐久性があること。

3.新規制電性 汎用的で生産量も多い極細仮撚加工糸で制電性があること

個別要素技術の目標設定

ポリエステル ・ 摩擦帯電圧≦2,000V(洗濯20回後)

・ アルカリ減量による性能、布帛物性の低下が無いこと

・ 単糸繊度1dtex以下の極細製糸が可能であること

4.新規スマート

テキスタイル

わずかな発汗でも応答する自己調節機能布帛の開発

・ 通気性変化率100%以上(洗濯50回後)

5.特殊評価技術 新規特性による消費科学的機能評価技術を開発する。

人体同様の熱(体温)・水(汗)特性を同時評価できる

新規評価技術。

最終製品の定常環境下での機能特性評価技術。 4

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Confidential

(1)親水性ポリエステル

側鎖型変性PEG(C-PEG)共重合ポリエステルのポリマー特性C-PEG

PETグラフト共重合

ポリマー種類 PEG種類 吸湿性・親水性 親水耐久性

PEGグラフト共重合 C-PEG 良好 高い

PEGブロック共重合 PEG(低Mw) 低い 高い

PEGブレンド PEG(高Mw) 非常に良好 低い

ブロック共重合

ブレンド

PEG

PEG

製糸性評価

親水成分 共重合量 糸強度(cN/dtex)

△MR 吸水

膨潤率

製糸性 巻取性 触感

(ぬめり感)

水準1C-PEG

Mw 200015wt% 2.9 6.7% 14% ○~△ × あり

水準2C-PEG

Mw 300020wt% 2.2 - - △~× × あり

比較 なし - Std.0.07%

0% ○ ○ なし

製糸性評価

△MR;(30℃、湿度90%での吸湿率)-(20℃、湿度65%での吸湿率)

製糸性の改善が必要だが、触感の異なる新規な糸が得られた。5

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Confidential

(1)親水性ポリエステル

C-PEG 15wt%共重合ポリエステルの特性評価(スキンモデルによる新規機能探索)

100

200

300

400

500

600

700放

熱量

[W/㎡

]親水性ポリエステル

レギュラーPET

発汗

従来法(吸水速度、吸上げ高さ、自然抱水性)では大きな特徴を見出せなかったが、

スキンモデルにより、吸水時放熱量がReg..PETよりも大きいことがわかった。

→ 発汗時に涼しく感じる、“清涼衣服”としての用途展開が期待出来る特徴

0

100

0 10 20 30 40 50 60時間[min]

◆スキンモデル

人体と同様な発熱・発汗状態を作り出し、布帛を通じての熱移動や透湿性能を測定し、

布帛で暑さ・蒸れ感をモデル的に定量評価する。(詳細は補足資料参照)

6

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特殊評価技術の開発 ー スキンモデル -Confidential

◆スキンモデルの特徴;

・構造体の着用を想定し、布帛での暑さ・蒸れ感をモデル的に定量評価可能。

・人体と同様な発熱・発汗状態を作り出し、布帛を通じての熱移動や透湿性能を測定可能。

・定温度/定電流制御、発汗量制御が1分毎にプログラミング可能。

◆特殊評価技術開発の狙い;

・本検討における新規機能テキスタイルの価値を評価すべく、従来にない高精度な機能性評価を検討

スキンモデル熱板部(左)と

発汗孔

ヒーター

熱流束センサー

温度センサー

模擬皮膚

断熱材

送水量

PC

電流量

風洞

皮膚温/熱流束⇒清涼感布帛

衣服内温湿度⇒蒸し暑さ

スキンモデル熱板部(左)と

発汗孔からの発汗(上)

7

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Confidential

(1)親水性ポリエステル; サーマルマネキンによる機能評価

今回開発品の特徴

・発汗時の熱放出が従来品対比大きい。

・乾燥後は従来品と同等の温度を保つ。

期待効果

今回開発した親水性ポリエステルが、

マネキン胸部の表面温度変化

7

-6

-5

-4

-3

-2

-1

0

⊿T(℃)

親水性PET

従来品

発汗歩行

送水量

PC

電力量

歩行動力

表面温度/投入電力量⇒清涼感

衣服内温湿度⇒蒸れ感

清涼性と保温性を同時に満足する優れた

「清涼衣服」としての展開が期待できる。

-7

00:00 02:00 04:00 06:00 08:00 10:00 12:00 14:00

Time(min.)

発汗歩行

◆歩行型発汗サーマルマネキン

・人が着用した際の性周期や日内変動等の要因を排除し、

被服の清涼感を定量的に評価可能。

・歩行による衣服のふいご効果(被服-人体間の

空気流出入による熱・水移動)も評価可能。

・ISO15831、ASTMF2370にも対応。

8

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ポリマー基礎技術の開発 M-PEG+イソフタル酸共重合

M-PEG+IA共重合M-PEGのみ COOHHOOC COOHHOOC

結晶化しにくくなる

Confidential

M-PEG(片末端封鎖型ポリエチレングリコール)

イソフタル酸(IA)

(2)洗濯再汚染防止ポリエステル

非晶部分にPEG成分が局在化

0

10

20

30

60 80 100 120

結晶サイズ(A)/結晶化度

人工油汚れSR性(Δ

E*) M-PEGのみ

M-PEG+IAM-PEG+アジピン酸M-PEG+QA

物性低下少なく扱い易いIAを選定

洗濯再汚染防止性能

L1 L50 L100 L200

M-PEG ○ ○ △ △

M-PEG+IA ◎ ◎ ○ ○

9

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Confidential

汚れ成分汚れ落ち(SR)性(前処理洗濯100後)

開発品 後加工 綿100%

洗濯液(家庭洗剤液×40℃)

汚れ付け 洗濯液(家庭洗剤液×40℃)

(2)洗濯再汚染防止ポリエステル

◆家庭洗濯評価

ソース ○ ○ ○

しょう油 ○ ○ ○

カレー ○ ○ ○

コーヒー ○ ○ ×

ワイン(赤) ○ ○ ×

血(魚) ○ ○ ××

粉体 土 ○ ○ △

鉄さび △ △ ×

油系

人工油汚れ ○ △ ○

廃モーターオイル △~○ × △~○

廃グリース △ × ○

家庭洗濯における

汚れ除去性

・綿対比良好、

・後加工品と同等以上

10

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Confidential

25

30

大きい

汚れ洗濯液(工業洗剤×60℃)

(2)洗濯再汚染防止ポリエステル

◆工業洗濯評価

・洗濯100回程度までは

繰返し洗濯による色相変化

0

5

10

15

20

25

0 50 100 150 200

洗濯回数(回)

小さい

←△E(色相変化)

汚染NG

色相変化が小さく、

再汚染防止性に優れる。

・100回以降色相変化が大きくなり、ポリエステル

65%/綿35%製品と同等。

↓工業洗濯対応商品として

の性能は今一歩。

レギュラーPET(後加工)

今回開発品

T65/C35

綿100%

11

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Confidential

(3)新規制電性ポリエステル

C-PEG共重合ポリマーの制電性能

内容

PEG 摩擦耐電圧(V)布帛品位

(アルカリ処理後)種類 量アルカリ

処理前

アルカリ処理/

染色後

① C-PEG 2%共重合 C-PEG 3000 2wt% 2,290 2,800 △~×

②C-PEG 20%共重合を10倍ブレンド希釈

C-PEG 2000 2wt% 1,650 2,010 △~×

③ 従来 制電糸 PEG20000 2wt% 1,820 2,840 △~×

④ 従来PET - >3,500 >3,500 ○

• 従来制電糸の欠点である耐アルカリ性の改善を期待したが、残念ながら改善は見られなかった。• 原因はPEG成分の繊維表面からの脱落と推定、芯鞘コンジュゲート繊維の開発に着手した。

12

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Confidential

項目 内容

基本

構成芯(Core):制電性ポリマー

鞘(Sheath):汎用ポリエステル

(3)新規制電性ポリエステル

開発した制電性ポリエステル繊維の基本構成

0

1000

2000

3000

L1 L20

摩擦帯電圧[V] 制電性ポリエステル 従来品

基本性能は目標達成

・摩擦帯電圧(L20)≦2,000V・単糸繊度 0.7dpfまで製糸可能

(課題)アルカリ減量時の制電ポリエステル抜け落ち

アルカリ減量無し(芯抜け無し) アルカリ減量10%(芯抜けあり)汎用化には左記の芯部抜け落ちの課題

が残っているが、C-PEG等、親水性成分に

ついて今後も検討し(種類、濃度、分散状

態)、10%以上のアルカリ減量を施しても

布帛品位低下が無い、汎用性の高い新規

制電性ポリエステル繊維の開発を目指す。

・染色堅牢度等は汎用ポリエステル並

13

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(4) 新規スマートテキスタイルの開発Confidential

新規スマートテキスタイル用繊維の狙い;

新原料リサイクルシステムへの適用が可能な、オールポリエステルのスマートテキスタイルの開発

項目 糸構成 吸湿率変化(乾燥⇔吸湿)

捲縮率変化(乾燥⇔吸湿)

通気性変化(乾燥⇔吸湿)

原料リサイクル

水準1 〈吸湿ポリマー〉親水ポリエステル* 1.5%

≒Std.<Std.(40%) ○

〈非吸湿ポリマー〉PET ~0.1%

水準2 〈吸湿ポリマー〉水準2 〈吸湿ホ リマ 〉

親水ポリエステルエラストマー**

19%

>Std.<Std.(50%) ○

〈非吸湿ポリマー〉PET ~0.1%

比較ファイバライブ

〈吸湿ポリマー〉ナイロン

1%

Std.Std.(100%)

×〈非吸湿ポリマー〉

PET ~0.1%

*親水ポリエステル;C-PEG共重合PET、 **親水ポリエステルエラストマー; C-PEG50%+ソジウムスルホイソフタル酸共重合

糸の状態での捲縮率変化は狙い通りであったが、編地状態での形態変化(通気性変化)は目標を

達成できなかった。繊維の拘束力を抑える編地構造の開発により、実用化を目指していく。14

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Confidential

要素技術 達成度

1.親水性ポリエステル 基礎評価にて綿以上の吸放湿性を得ることができた。

当初予想していなかったが、「清涼衣服」として期待できる特性

を得た。

2.洗濯再汚染防止

ポリエステル

初期段階で後加工による防汚製品と同性能であり、家庭洗濯

による汚れ除去性は高い効果を示した。一方で、工業洗濯対

応商品としての性能は今一歩であった。

成果、目標達成度

3.新規制電性

ポリエステル

本研究のポリエステルポリマーを使用し、仮撚加工を施しても

制電性能低下が無い、単糸繊度1dtex以下の極細仮撚加工糸

を得ることができた。一方で婦人衣料等、アルカリ減量を施す

用途への展開には課題が残り、目標を達成出来なかった。

4.新規スマート

テキスタイル

湿度変化に応答して、捲縮形態を変化させるオールポリエステ

ルの複合繊維ができたが、布帛状態での通気性変化率は

目標を達成できなかった。

5.特殊評価技術 スキンモデル、発汗歩行マネキンにより、従来評価ではできなかった、快適機能を評価することができた。

15

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Confidential

素材内容 展開用途 波及効果

快適テキスタイル素材

・親水性ポリエステル

・制電性ポリエステル

・スマートテキスタイル

紳士・婦人、

ユニフォーム、

スポーツ衣料 等

空調使用量削減(冷房温度+1℃);

原油換算約660,000キロリットル/年

・・本研究で開発された新素材により(5%普

及と仮定)、約33,000キロリットル/年の省エネ

効果が期待できる。

防汚性素材 ユニフォーム、 洗濯回数削減(防汚性)、乾燥時間削減

波及効果・事業化計画

(防汚・速乾リネン) リネン繊維製品

により、原油換算約15,000キロリットル/年の

省エネ効果が期待できる。

項目 平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度

改良・商品開発

生産設備投資

生産・販売

収益

事業化にいたる期間

16

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