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151220 - 1 - 道路橋床版防⽔システムガイドライン(2016 年版) 平成27年12⽉版

道路橋床版防⽔システムガイドライン(2016年版)ºŠ版...151220 - 4 - まえがき 道路橋床版は,舗装を介して自動車の輪荷重を直接受ける部材であり,雨水や凍結防止剤等の劣化因子

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    道路橋床版防⽔システムガイドライン(2016 年版)

    平成27年12⽉版

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    目 次

    まえがき

    第1章 総則

    1.1 適用の範囲

    1.2 用語の定義

    第2章 床版防水システムの役割

    2.1 床版防水システムの目的

    2.2 床版防水システムの役割

    2.3 床版防水システムの構成

    2.4 床版防水層の種類

    第3章 床版防水システムの計画・設計

    3.1 床版防水システムの計画・設計一般

    3.2 床版防水システムの計画

    3.3 コンクリート床版面・排水設備の設計

    3.4 床版防水層の設計

    3.5 床版防水層上の舗装の設計

    第4章 床版防水システムの施工・施工管理・検査

    4.1 床版防水システムの施工一般

    4.2 床版・排水設備の施工・施工管理・検査

    4.3 床版防水層の施工・施工管理・検査

    4.3.1 事前調査

    4.3.2 下地処理

    4.3.3 床版防水層の施工・施工管理・検査

    4.4 床版防水層上の舗装の施工・施工管理・検査

    4.5 施工記録

    第5章 既設床版の床版防水システム

    5.1 既設床版の防水システムの計画・設計・施工一般

    5.2 既設床版の防水システムの施工・施工管理・検査

    5.2.1 既設床版の防水システムの事前調査

    5.2.2 既設床版の防水システムの下地処理

    5.2.3 既設床版の防水システムの施工・施工管理・検査

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    第6章 床版防水システムの維持管理

    6.1 床版防水システムの点検

    6.2 床版防水システムの補修

    付録

    [付録1] 床版防水システムの計画例

    [付録2] 床版防水システムの施工例

    [付録3] 床版防水システムの標準図

    [付録4] 床版防水層の要求性能(案)

    [付録5] 床版防水システムの施工管理・検査の事例

    [付録6] 床版防水システムに関する新たな知見

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    まえがき

    道路橋床版は,舗装を介して自動車の輪荷重を直接受ける部材であり,雨水や凍結防止剤等の劣化因子

    の影響も受けやすく,橋梁の中で最も過酷な環境に置かれている部材である.床版の損傷・劣化は,交通

    荷重の繰り返しにより生じる疲労損傷と,舗装の損傷を伴う床版上面の損傷,および鉄筋腐食などによる

    床版下面の劣化がある.雨水が床版内部に浸入した場合には,ひび割れへの水の浸入によって上側コンク

    リートの砂利化が起きるため,交通荷重による疲労損傷は著しく促進されることが分かっている.これが

    疲労に伴う床版上面損傷であり,局所的に発生する.さらに,床版上面においては,建設時のコンクリー

    トの収縮ひび割れ等から雨水が床版の上側鉄筋に到達し,発錆によりかぶりコンクリートを剥離させ,舗

    装のポットホールの原因になっている.積雪寒冷地では,雨水が床版内部に浸入した場合には,凍結融解

    作用による床版の劣化を招くとともに,凍結防止剤の影響による塩害で鉄筋の腐食が促進されている.こ

    のように,雨水や塩化物イオン等が床版の耐久性に大きな影響を与えることが明らかとなってきた. 道路橋床版の耐久性向上のためには,床版内部への雨水等の浸透を防ぐための床版防水が重要であると

    の認識が広がり,平成 14 年に道路橋に関する技術基準である「道路橋示方書」において,「アスファルト舗装とする場合は,橋面より浸入した雨水等が床版内部に浸透しないように防水層等を設けるものとする」

    と明記された.この道路橋示方書の規定を補完するための手引き書としては,「道路橋鉄筋コンクリート床

    版防水層設計・施工資料(日本道路協会,昭和 62 年 1 月発行)があるが,平成 19 年に「道路橋床版防水便覧」として見直され,技術資料として活用されている. その後,新設橋については,従来よりも耐久性の高い床版防水層が求められており,東・中・西日本高

    速道路各社の平成 22 年 7 月における「設計要領」では,耐久性の高い防水層を採用することを盛り込んでいる.一般道においても,構造物の維持管理上の要求から,耐久性を求めた床版防水層の選択方法や,

    補修の場合のさまざまな制約条件に対応できる防水層の選択方法がクローズアップされてきている.また,

    既設橋においても,床版補修箇所の再劣化などから,補修における床版防水層の設計や,部分補修の方法

    などが議論になっている. このような要望に応えるべく,最新の床版防水に関する技術を整理し,我が国より床版防水の歴史が長

    い欧州の技術情報を盛り込んで,日本の気象や使用条件に応じた,一般道・高速道双方に用いる床版防水

    のあるべき姿をできるだけわかりやすい形で示し,設計・施工に生かすことが,本ガイドラインの目的で

    ある. 日本や欧州の経験は,床版防水は防水層のみによって成し遂げることはできず,床版,防水層,舗装,

    さらには排水設備を適切に組み合わせた床版防水システムによって始めて達成できること,設計だけでな

    く施工が非常に重要であることを教えてくれている.したがって,本ガイドラインでは,防水層だけでな

    く,床版の仕上がり状況,防水層に関係する舗装の性状や排水設備についても要求性能を示している.ま

    た,要求性能の照査方法,要求性能を満たすための標準的な施工方法,施工後の検査方法も示している. 本ガイドラインには,床版・防水層・舗装・排水設備からなる最新の床版防水システムに関する情報が

    集約されており,道路橋の設計・施工・維持管理に携わるすべての技術者の貴重な技術資料となれば幸い

    である.本ガイドラインの趣旨が正しく理解されて,耐久性を有する床版防水システムが普及することを

    期待している. 本ガイドラインでは,現在の最新の知見を元に記述してきたが,現在も各方面で研究開発が熱心に進め

    紫桃さま(再考)

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    られている.将来,実験や知見等の積み重ねにより,さらに改訂が重ねられ,床版の耐久性を向上させる

    ための大きな礎となることを期待している.

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    第1章 総則

    1.1 適用の範囲

    本ガイドラインは,橋面にアスファルト舗装が施されている道路橋の新設及び既設のコンクリート

    床版に設置される床版防水システムの設計・施工・維持管理に適用する. (解説) 道路橋の床版には,鉄筋コンクリート床版,プレストレストコンクリート床版,鋼コンクリート合成

    床版のコンクリート系床版と鋼床版がある.本ガイドラインの適用範囲は,アスファルト舗装が施され

    たコンクリート系床版を対象としている.

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    1.2 用語の定義

    本ガイドラインでは,次のように用語を定義する. アスファルト舗装 車両が快適に走行できるように床版上面に設置した加熱アスファルト混合物

    の層であり,基層(レベリング層)と表層により構成される 下地処理 コンクリート床版上面を防水層の接着に適すように,不陸調整,異物除去,

    レイタンス除去を行う行為 床版防水 床版コンクリート内に水が入らないようにする行為の総称 床版防水システム コンクリート床版,床版防水層,舗装及び排水設備が一体となり,水や凍結

    防止剤などの劣化因子から床版を保護するシステム 床版防水層 床版の防水を目的として床版と舗装の間に設ける層で,一般的にはプライマ

    ー層,床版と防水材との接着層,防水材,防水材と舗装との接着層から構成

    される 床版防水工 床版防水層及び排水設備を施す工事 施工計画書 それぞれの箇所の施工条件において,施工者が最適な施工方法や施工管理方

    法などを記載したもの 施工要領書 防水層の製造業者が,防水層の施工法や施工条件を示したもので,通常,そ

    の品質はその条件下で保証されている 端部防水 地覆・高欄部や伸縮装置部,排水桝部のように,一般部に比べ複雑な処理が

    必要な防水 端部防水層 端部防水を行う防水層 排水設備 路面,舗装内及び防水層上に到達した雨水などを滞水させることなく,速や

    かに排水するための設備 防水材 床版防水層を構成する主要材料

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    第2章 床版防水システムの役割

    2.1 床版防水システムの目的

    (1)床版防水システムは,床版の長寿命化を図ることを目的とする.

    (2)道路橋の床版は,交通荷重による疲労,雨水・凍結防止剤などの劣化要因により耐久性が低下する

    ため,床版防水システムを構築する.

    (3)道路橋には,床版の耐久性低下が橋梁全体の安全性低下に繋がる構造系(PC部材)も存在すること

    から,このような構造系を呈する道路橋床版については床版防水システムの構築が不可欠である.

    (解説)

    (1)道路橋床版の耐久性は,水や塩化物イオンが浸透することにより著しく低下することから,床版防

    水システムを構築することにより,水等と床版が直接接触することを防ぎ,速やかに排水するための

    排水設備を設置し,床版の長寿命化を図ることを目的とする.

    (2)コンクリート床版の主な変状要因は,コンクリート床版の使用材料に起因する劣化要因と道路の使

    用されている環境に起因する劣化要因とに大別される.特に下記に示す主な劣化要因については,水

    等の影響によって発生・促進することから床版防水システムにより予防することが床版の延命化に繋

    がる.

    1)コンクリート床版の使用材料に起因する主な劣化要因

    ①塩害(内在塩分)

    昭和61年(1986)の生コンクリート中の塩分総量規制(RC部材,ポステン部材は0.6㎏/㎥以下,プレテン部材は0.3㎏/㎥以下)がなされる以前に建設されたコンクリート構造物は,十分に除塩されていない海砂などが使用されている場合もある.このように建設段階よりコンクリート内部の塩化物

    イオン濃度が高い床版の鉄筋は常に腐食しやすい環境にあることから,床版上面等からの漏水により

    鉄筋腐食が促進される可能性が高い.このことから,路面の水を床版上面へ浸透させないことが重要

    である. ②アルカリシリカ反応

    反応性の骨材を使用しているコンクリート床版では,コンクリート中の水酸化アルカリと反応性骨

    材の反応によりアルカリシリカゲルが形成され,これが吸水膨張することによりひび割れが生じ,コ

    ンクリートの弾性係数が低下するなど,コンクリート材料として劣化することがある.さらに,ナト

    リウムイオンは,アルカリシリカ反応を促進させる場合があるので,凍結防止剤を散布する寒冷地や

    飛来塩分が危惧される海岸周辺では特に注意が必要である(図-解2.1.1参照).

    図-解2.1.1 床版コンクリートのアルカリシリカ反応

    ⽥中さま(第⼀分科会との整合)

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    図-解 2.1.2 輪荷重走行試験による

    RC床版のS-N線図の例 1)

    2)道路の使用されている環境に起因する主な劣化要因

    ①疲労

    道路橋の床版は,走行車両による輪荷重や,凍結防止剤など,道路の使用環境の影響を受け

    やすい部位である.昭和40年代前半までのRC床版は,床版厚が比較的薄く,配力鉄筋量も少なく設計されており,交通環境によっては早期にひび割れ

    などの変状が発生するものがあり,場合によっては床版コ

    ンクリートの抜け落ちによる路面陥没まで至る事例もあ

    った.このことから,道路橋示方書では疲労耐久性の向上

    を目的に,最小床版厚の規定や配力鉄筋量などの見直しが

    行われている. 過去においてはRC床版の疲労損傷過程について研究

    がなされ,RC床版のひび割れ部分に水が浸入すると,コ

    ンクリートの劣化が著しく進展し,乾燥状態に比べて早期

    に終局まで至るなど,床版の寿命が大幅に減じられること

    が明らかにされている1).図-解2.1.2に水張り状態と乾燥

    状態との輪荷重走行試験結果の比較例を示す.この結果では湿潤状態では乾燥状態に比べて100~300倍もの速さで床版の破壊に至ったことが報告されている.これらの変状メカニズム(図-解2.1.3)を踏まえ,RC床版の疲労損傷を抑制するためには,床版増厚工法などにより耐力を

    向上させることや,床版防水により水を流入させないことが重要となる.

    図-解2.1.3 疲労による変状メカニズム

    【一方向ひび割れ】 【二方向ひび割れ】 【ひび割れの網細化と角落ち】 【床版の陥没】

    水の浸入 促進

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    ②塩害(外来塩)

    冬季に散布する凍結防止剤が床版上面に浸透し,上側鉄筋の腐食,コンクリートの剥離,舗装路面

    でのポットホール発生などの変状に至るケースが代表的である.これらの変状を抑制するためには,

    防水性,遮塩性を有する床版防水層を設置することが重要である(図-解2.1.4参照).

    図-解2.1.4 床版上面の塩害

    また,床版端部(地覆・高欄部,伸縮装置端部など)では,水や凍結防止剤の影響により塩害を要

    因としたコンクリートの剥落などの変状が発生している.これは,床版端部を流れる水や凍結防止剤

    が地覆下面などの調整モルタル部分や打継ぎ目などから床版内に浸入して塩害が発生するもので,床

    版下面の鉄筋が腐食・膨張し,コンクリート片が剥離するといった劣化メカニズムによるものと推察

    される.このことから,地覆下面などへの漏水を防止することを目的に,床版端部においても床版防

    水層を適切に設置する必要がある(図-解 2.1.5参照).

    従来型壁高欄 縁石下面からの漏水 張出し床版下面の剥落

    図-解2.1.5 張出し床版下面の塩害

    コンクリート床版は,鉄筋コンクリート床版(以下「RC床版」という),プレストレストコンク

    リート床版(以下「PC床版」という),鋼コンクリート合成床版などに大別される. PC床版は,一般にRC床版よりも優れた疲労耐久性を有している.しかしながら,PC構造にお

    いては,凍結防止剤が床版上面や床版端部より,打継ぎ目やグラウトホース周辺などを伝って雨水と

    共に浸入し,様々な部位での塩害が発生している.具体的には,箱桁の張出し床版下面やウェブ面で

    の遊離石灰および漏水,水しみの発生,連続合成桁の2次床版部分での水しみの発生,排水管や伸縮

    装置(止水構造)の破損に伴う変状などが顕在化している.PC構造はRC構造と異なり,塩害によ

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    りPC鋼材の腐食・破断が懸念され,変状の程度によっては橋梁全体の耐久性を大きく低下させてし

    まうことに注意が必要である(図-解2.1.6参照).

    図-解2.1.6 PC橋の塩害(漏水と錆汁)

    ③凍害

    寒冷地においては,凍結融解作用を繰り返し受けることによって,コンクリート床版の上面にスケ

    ーリングが確認されている.積雪寒冷地域では,春先に大量の雪解け水が舗装の下に流入し,舗装の

    ポットホールの発生を助長している現象も見受けられる.このような意味でも床版上面の凍害を抑え

    る防水層および排水設備が果たす役割は重要である(図-解2.1.7参照).

    図-解2.1.7 床版上面の凍害

    ④複合劣化,施工不良

    コンクリート床版においては,疲労,塩害,凍害,アルカリシリカ反応および中性化などが複合的

    に作用して劣化する場合がある.複合劣化においては,水が存在する場合に劣化が促進されることが

    明らかになっている.このため,床版防水システムの構築は,劣化の進行速度を低減する上で極めて

    有効である. また,コンクリート床版の施工不良に起因する上側鉄筋のかぶり不足や床版下面に見られる豆板な

    どは,疲労,塩害,凍害,アルカリシリカ反応および中性化などと同時に発生した場合,その劣化は

    深刻なものになりやすい.これも広義の複合劣化と判断され,適切な対策をとる必要がある.通常こ

    のような場合には,増厚や断面修復等により施工不良箇所を早期に補修した上で,床版防水システム

    を構築する必要がある.

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    (3)PC構造物は,PC鋼材の緊張によるプレストレスの導入とコンクリートの圧縮強度に依存しているこ

    とから,PC鋼材が破断した場合コンクリートに導入されていたプレストレスが喪失し,著しく耐荷性能

    が低下する.万が一変状した場合においては,プレストレスが導入されていることから,断面を除去・

    修復することで内部応力分布に影響を与えるため容易ではない.また,PC構造は大規模な構造物に適用

    させることも多く,撤去・交換などの措置が容易に行えない.

    したがって,PC橋は PC部材を変状させることのないよう適切な床版防水システムの構築が重要となる.

    過去に建設された PC 橋には,床版部分に PC 上縁定着部を有する形式もあり,このような上縁定着部

    を有する形式は,床版面からの漏水により,PC鋼材の変状が危惧されるため,特に床版防水システムの

    構築が必要となる(図-解 2.1.8).

    図-解 2.1.8 上縁定着部

    PC橋の床版端部は,床版面と地覆・壁高欄との施工継ぎ目より漏水することがあり,床版横締め部や横

    桁横締め部等の変状が危惧されるため,床版端部の床版防水層の立上げ処理が重要となる(図-解 2.1.10).

    図-解 2.1.9 横締めへの影響

    近年,少数 I 桁橋などの新形式橋梁の採用が広がっている.このような形式は,PC 床版を用いて床版支持間隔を大きくすることにより,主桁本数を少なくし,横桁・横構などを単純化または省略して合理化

    を図った構造であり,床版部分を PC 構造とすることで構造系が成り立っていることから,床版面からの漏水による床版部分の変状は,橋梁全体系に影響を及ぼす可能性もあることから,特に床版防水システム

    の構築が必要となる(図-解 2.1.10).

    図-解 2.1.10鋼橋 PC床版

    11,400

    10,500450 450

    2,0

    00

    1,9501,950 3@2,700=8,100

    アスファルト舗装 80

    鉄筋コンクリート床版 240

    1,1400

    1,0500450 450

    アスファルト舗装 80

    PC床版

    2,7

    00

    2,7002,700 6,400

    松井(解説追記)

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    2.2 床版防水システムの役割

    (1)床版防水システムは,床版,床版防水層,舗装,排水設備が一体となって機能し,水等の劣化因子

    を床版コンクリート面に到達させないこと,および舗装上面および床版防水層上面に滞水しないよう速や

    かに排水するために設置する. (2)通行車両の影響などにより,舗装,床版防水層に剥がれ・ずれ等の不具合の発生により道路機能を

    阻害してはならない. (解説) (1)床版防水システムを構築することにより,雨水や凍結防止剤(以下「水等」という.)の浸入を舗装,

    床版防水層によって防ぎ,水等と床版が直接接触することを防ぎコンクリート床版の劣化を抑制する.さ

    らに,遮断した水等が舗装,床版防水層の内部に滞水しないよう排水設備によって速やかに排水させるこ

    とで,床版防水層からの浸透および舗装の早期劣化を抑制する.

    路面の水等は,舗装の本体,舗装の継ぎ目,舗装と地覆等との端部などより浸入し,床版面に到達,舗

    装の裏面の空隙を伝って全面的に広がるため,床版防水層は,床版全面および地覆側面の立ち上げ部まで

    設置する必要がある.また,床版防水層の上面に水等が滞水することで,舗装の劣化が促進されることか

    ら,滞水しやすい端部や床版凹部などには排水設備を設置する必要がある(図-解 2.2.1,図-解 2.2.2).

    図-解 2.2.1 路面排水の浸入経路(イメージ)

    図-解 2.1.2 床版防水システムの標準断面構成例

    舗装の端部 舗装本体

    舗装施工継ぎ目

    舗装裏面

    端部防水層

    止水処理

    表層

    基層(レベリング層)

    排水設備 (床版水抜き孔) 床版防水層

    縁石の裏面

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    (2)床版防水システムは供用環境下において様々な負荷を受ける.これらの負荷によって設計耐用期間

    中において機能が損なわれてはならない.そのためには,適切な設計計画,施工が重要である.

    図-解 2.1.3 床版防水システムに生じる不具合例(供用後)

    (床版と床版防水層との接着不良)

    夏期では床板からの水蒸気により舗装(床版防水層)が

    持ち上げられ,床版と舗装(床版防水層)がはく離し,

    交通荷重によりひび割れ等が生じ,浸水によって舗装が

    砂利化しポットホールとなる.

    (床版防水層と舗装の接着不良,舗装の裏面間隙)

    床版防水層とアスファルト舗装の接着不十分な場合,

    防水層とアスファルト舗装に隙間が生じ,この隙間に

    アスファルト舗装の施工継ぎ目等から浸入した水が溜

    まり,交通荷重によりアスファルト舗装が砂利化し,

    ポットホールや局部的なわだち掘れにつながる.

    床版上の剥離

    床版防水上の剥離

    要見直し

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    2.3 床版防水システムの構成

    床版防水システムは,コンクリート床版,床版防水層,舗装および排水設備から構成される.

    (解説) 床版防水システムとは,①コンクリート床版,②床版防水層(端部防水層を含む),③舗装,④排水設

    備など,床版を水などから保護するすべての防水機構の総称をいう.排水設備とは,舗装内に滞留する雨

    水などを速やかに排水するために設置される排水桝,導水帯,床版水抜き孔などの排水装置の総称をいう

    (図-解 2.3.1参照).

    図-解 2.3.1 床版防水システムの構成例

    ① コンクリート床版は,床版防水層の施工基面となる. ② 床版防水層

    一般に,下記 a)~d)で構成されるが,材料の種類によっては,a)と b)が同一となるケースや,d)のないケースも存在する.

    a)プライマー層 床版コンクリートの表面をコーティングし,床版防水層との接着効果を高めることや,床版内部

    からの水蒸気などの発生を抑制することを目的に設置される. b)床版と防水材との接着層

    床版と防水材との層間に設けられる接着層である. c)防水材

    舗装等より浸入してきた水を床版面まで浸透させないよう止水するために設ける床版防水層の主

    要材料である. d)防水材と舗装との接着層

    防水材と舗装との層間に設けられる. ③ 舗装は,一般に基層(レベリング層)および表層の2層から構成され,舗装の全体厚さは60~8

    北川さま(図の修正)

    端部目地材

    ①コンクリート床版

    ③舗装基層

    表層

    排水桝(下桝)

    導水パイプ

    床版水抜き孔

    排水桝(上桝)

    ④排水設備

    ②床版防水層

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    0㎜程度が標準である. 舗装は,交通荷重を分散し床版へ伝えると共に,雨水を浸透させず,床版防水層と十分に接着させ

    ることが重要である. ④ 排水設備

    上記①~④の構造で床版内への水の浸入を防止するが,雨水が舗装の内部に長く滞溜することを

    避けることが肝要であり,舗装表面水はもちろん,舗装中に溜まった水を抜くための設備を適切に

    配置することを同時に考える必要がある. a)導水帯

    橋面舗装路肩側端部に縦断方向に設けられる溝で,表層を切欠きオープン溝とし通水面が基層上

    面の場合と,表層がポーラスアスファルト混合物などの場合は基層を切欠き表層材で充填し通水面

    が防水層上面となるクローズ溝がある. b)排水桝

    輪荷重等に対し十分な耐荷力を有し,主に路面排水を基本とするが,側面に排水孔を設ける等に

    より床版上や床版防水層上の滞水も処理する排水設備.上桝・下桝の分離構造の場合下桝により舗

    装内浸入水を適切に処理することが可能となる. c)排水桝(上桝)

    上桝は,輪荷重等に対し十分な耐荷力を有し,舗装表面水を適切に排水する開口面積を有する橋

    面排水装置である. d)排水桝(下桝)

    下桝は,上桝を支持する十分な耐荷力を有し,集水された舗装表面水を床版下面へと集導水し,

    下面排水管により流末処理する桝であるとともに,床版上や防水層上面に滞水する雨水等を集導水

    する桝でもある. e)導水パイプ

    導水パイプは,舗装端部やひび割れなどの開口部などから浸入した雨水等を,床版上や床版防水

    層上への滞水を防ぎ,床版上面で水平方向に集水し排水桝や床版水抜き孔に導水する排水経路であ

    り,形状は有孔管・スパイラル管・メッシュ管などで内径は 15 ㎜程度のものが多い,材質は鋼製や樹脂製の集水導水パイプである.

    f)床版水抜き孔 床版水抜き孔は,床版上や床版防水層上の滞水,導水パイプや導水帯によって集水された雨水等

    を床版下面に速やかに排水するための,床版を貫通する鉛直方向の排水設備であり,直径が 30~60㎜程度の鋼製または樹脂製のパイプである. 床版下面での流末処理は,導水管による雨水排水管への接続や専用の排水管を用いて適切に排水

    計画として行う必要がある.

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    2.4 床版防水層の種類

    床版防水層は,形状からシート系,塗膜系,その他に分類される.それぞれの防水層の形状において

    も,材料や施工法も多種・多様なものが存在している.使用に際してはその特性を勘案して選択する必

    要がある.

    (解説) 床版防水層は,シート系,塗膜系,その他の防水層に大別され,保有する性能も材料も異なる.

    床版防水層は,シート系床版防水層(流し貼り型,加熱溶着型,常温粘着型),塗膜系床版防水層(ア

    スファルト加熱型,ゴム溶剤型,反応樹脂型等)等,様々な種類の防水材が存在しており,一般に下記の

    ように分類される(図-解2.4.1参照). 各々の防水層に応じて構成や特性も異なるため,あらかじめ施工方法,施工手順,施工条件などを勘案

    したうえで材料の選定を行う必要がある.

    図-解 2.4.1 防水材の分類

    (1) シート系床版防水層

    (2) 塗膜系床版防水層

    (3) その他の床版防水層

    (4) 防水性能を有する舗装

    1) 流し貼り型

    2) 加熱溶着型

    3) 常温粘着型

    1) アスファルト加熱型

    2) ゴム溶剤型

    3) 反応樹脂型 A ウレタン樹脂系

    B エポキシ樹脂系

    C アクリル樹脂系

    1) 複合防水工法など

    1) グースアスファルト舗装など(主に鋼床版)

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    第3章 床版防水システムの計画・設計

    3.1 床版防水システムの計画・設計一般

    床版防水システムは,あらかじめ全体計画を立案したうえで,各工種の設計を実施する.

    (解説)

    床版防水システムは,床版や排水設備と床版防水層,舗装が一体となって機能することから,各工

    種の設計に先立ち,床版防水システム全体の計画を立案する必要がある.

    床版防水システムの設計は,床版防水システムの全体計画に沿って床版,排水設備,床版防水層,

    床版防水層上の舗装に区分し設計する.床版防水システムの計画・設計フローを下記に示す(図-解

    3.1.1).

    図-解 3.1.1 床版防水システムの計画・設計フロー

    3.2 床版防水システムの計画

    3.3 コンクリート床版面の設計

    3.4 排水設備の設計

    3.5 床版防水層の設計

    3.6 床版防水層上の舗装の設計

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    3.2 床版防水システムの計画

    (1) 床版防水システムの計画は,床版防水システムの必要性(要求性能)を整理したうえで,床版・

    排水設備,床版防水層,床版防水上の舗装の各工種の組み合せを設定する.

    (2) 床版防水システムは,構成する床版・床版防水層・舗装・排水設備の各工種が組み合わさって機

    能を発揮するため,各工種の役割を理解したうえで,床版防水システムの全体構成を計画する.

    (3) 床版防水層および舗装は,施工環境によって品質低下が生じる可能性があるので,工事計画に際

    しては,施工要領書等に示された施工環境を満足するよう工程計画する必要がある.

    (解説)

    (1)床版防水システムの計画に際しては,対象橋梁の道路機能としての役割・重要性,使用される環境

    条件,橋梁の構造特性等による維持管理上のリスクの大きさなどを整理したうえで,床版防水システ

    ムの必要性を整理する.床版防水システムの構成については,下記に示す「道路の役割」や「維持管

    理上のリスク」などを参考に管理者にて整理する.

    例えば,道路の役割りが重要,且つ維持管理上のリスクの高い橋梁などでは,床版防水システムの

    必要性が高い橋梁であることから,防水性能の高い床版防水層と防水性能の高い舗装との組み合わせ

    による床版防水システムを構築するよう計画すると良い(図-解 3.2.1参照).

    図-解 3.2.1 床版防水システムの設計方針(例)

    床版防水システム

    の必要性

    床版防水システムの組み合わせ

    床版・排水設備 床版防水層 床版防水層上の舗装

    高 排水勾配・排水設備

    の設置

    高機能な床版防水層※1 高耐久・水密性の高い

    舗装※3

    中 排水勾配・排水設備

    の設置

    必要最低限の性能を有す

    る床版防水層※2

    高耐久・水密性の高い

    舗装

    低 排水勾配・排水設備

    の設置

    必要最低限の性能を有す

    る床版防水層

    必要最低限の性能を

    有する舗装※4

    ※1高機能な床版防水層とは,材料性能,初期性能に加え,耐久性能を有する材料を示す. ※2必要最低限の性能を有する床版防水層とは,材料性能および初期性能を有する材料を示す. ※3高耐久な舗装とは,剥離抵抗性に優れた舗装混合物,裏面間隙が生じにくい舗装混合物を示し,水

    密性の高い舗装とは,透水係数の低い舗装混合物を示す. ※4必要最低限の性能を有する舗装とは,高耐久性・水密性に対して特段の配慮をしていない舗装を示

    す.

    1)道路の役割

    道路の種類には,道路法上の道路として高速自動車国道,一般国道,都道府県道,市町村道が存在

    し,道路法以外の道路として,農業用道路・林道・私道などが存在する(図-解 3.2.2参照).

    道路の機能として,主要幹線道路,幹線道路,補助幹線道,その他の道路に区分されるとともに,

    国・都道府県等において災害時等における緊急輸送道路として指定されている路線や防災上重要な道

    路も存在する.このような幹線道路や緊急輸送道路,防災上重要な道路などについては,道路橋の長

    寿命化が求められ,計画的な維持管理の実施によって有事においても安全に通行可能でなければなら

    ない.また,交通量の多い道路など利用状況によっても道路の重要性は異なる.

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    よって,道路管理者は,道路に求められる役割を理解したうえで床版防水システムを計画する必要

    がある.

    図-解 3.2.2 床版防水システムの重要性(道路の役割)

    2)維持管理上のリスク

    道路橋の床版は,車両通行に伴う疲労や冬季の凍結防止剤の散布,寒冷地における凍害など様々な

    使用環境によって耐久性が低下し,ポットホールや路面陥没など車両走行に支障をきたす変状が発生

    する(図-解 3.2.3参照).

    また,プレストレストコンクリート構造など床版の変状(PC鋼材の変状)が橋梁全体の安全性に影

    響を及ぼす構造形式も存在する.このように,床版は道路橋にとって非常に重要な部材の一つである

    ことから,橋梁の使用環境や構造特性を整理し,維持管理上のリスクを明確にした上で床版防水シス

    テムを計画する必要がある.

    図-解 3.2.3 床版防水システムの重要性(維持管理上のリスク)

    ≪維持管理上のリスク≫(項目例)

    ≪劣化のリスク≫

    (内的要因)

    ・内在塩による塩害 ・アルカリシリカ反応 (外的要因)

    ・大型車交通量による床版疲労 ・凍結防止剤散布による塩害 ・飛沫塩による塩害 ・寒冷地における凍害

    ≪構造特性のリスク≫

    (PC構造等)

    ・鋼橋合成鈑桁 ・鋼橋 PC床版少数主桁 ・PC 構造(上縁定着など) ・PC 床版 (コンクリート片剥落等)

    ・交差道路の有無など

    ≪道路の重要性≫(項目例)

    (道路の種類)

    ・高速自動車国道 ・一般国道

    ・都道府県道 ・市町村道など

    (道路の機能)

    ・緊急輸送道路

    ・主要幹線道路 など

    (利用状況)

    ・重交通路線

    ・突発規制が困難など

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    (2)床版防水システムは各工種が組み合わさって機能を発揮するため,各工種の役割を理解する必要が

    ある.

    1)床版に浸透する水の経路

    雨水等は,基本的に舗装路面上を伝って排水桝に流下するが,舗装本体,舗装端部や継ぎ目などの

    隙間を経路として床版面に到達する.また,舗装裏面に生じた間隙に滞水することで,舗装の早期劣

    化も危惧される(図-解 3.2.4).

    ②端部や施工継ぎ目からの透水経路

    図-解 3.2.4 床版に浸透する水の経路

    2)床版防水システムを構成する床版防水層上の舗装が有する防水機能

    アスファルト舗装は,施工環境,アスファルトの種類,骨材,配合,舗設作業等によって透水係数

    にバラツキが生じるとともに,舗装の裏面の空隙の発生頻度も異なることから,アスファルト舗装単

    体では十分な防水機能を発揮することはできない.

    アスファルト舗装の種類には防水性・止水性を期待したアスファルト混合物が存在しており,材料

    設計時にアスファルト混合物本体の透水係数を下げることや,裏面に空隙が生じにくい粒度で配合設

    計を実施するなどの対応によって,防水機能を向上させることは可能である.

    また,橋梁上の舗装には,橋面舗装用として開発された付着性改善型のポリマー改質アスファルト

    Ⅲ型-WFなどを用いることで舗装の耐水性を向上させることが可能である(図-解 3.2.4参照).

    舗装裏面

    の間隙

    水密性に配慮し

    ていない舗装

    ①防水性に配慮しないアスファルト舗装

    コンクリート床版 透過した水等がコンクリー

    ト床版へ浸透する

    舗装裏面の空隙が生じ間隙

    部分が滞水

    透水係数の高い舗装は舗装

    を透過する水も多い

    舗装と地覆・壁高欄との境界

    部は隙間が生じ透水する

    舗装の施工継ぎ目部分は隙

    間が生じ易く透水する

    コンクリート床版

    地覆・壁高欄

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    図‐解3.2.4 アスファルト舗装による防水機能の向上

    3)床版防水システムを構成する床版防水層が有する防水機能

    アスファルト舗装と床版防水層の組み合わせで十分な防水性を確保することが重要となる.例えば,

    アスファルト塗膜系の床版防水層の場合,舗装の裏面に発生した間隙を充填する効果があり,防水性

    (止水性)を向上させることが可能である.しかしながら,アスファルト混合物の舗装骨材の食い込

    みにより防水層に穴が開いてしまい十分な防水性が発揮されない場合もある(図-解 3.2.5).

    図-解 3.2.5 アスファルト塗膜防水層の防水機能

    床版防水層は施工時や供用時の負荷により,防水機能等の性能が低下する場合があるため,様々な

    負荷に対して抵抗性を有する床版防水層を採用することにより,床版への漏水の発生確率を大幅に低

    下させることが可能である.また,床版防水層と舗装との接着層にアスファルト系接着層を設けるこ

    とで舗装の間隙を充填する効果が期待される(図-解 3.2.6).

    図-解 3.2.6 床版防水層が有する防水機能

    アスファルト塗膜防水の効果(間隙充填)

    コンクリート床版

    ① 高性能な床版防水層の例

    コンクリート床版

    舗装接着層により舗装裏面の空

    隙を充填(止水効果)

    高性能な床版防水層により骨材

    の押込みなどによっても破損し

    ない

    AS 系防水層により舗装裏面の空

    隙を充填(止水効果)

    骨材の押込みなどによって防水

    層が破損(防水性能の低下)

    アスファルト塗膜系

    防水層

    高性能な

    床版防水層

    ②防水性に配慮したアスファルト舗装

    コンクリート床版

    透水係数を下げることで舗

    装の透過する水を低減可能

    舗装裏面の空隙が生じ空隙

    部分が滞水

    コンクリート床版への漏水

    する確率は高い

    舗装裏面

    の空隙

    水密性の高い

    舗装

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    前述2)に示すように,アスファルト舗装の種類や配合を選択することで,床版防水層上の舗装の

    防水機能,耐久性を向上させることが可能である.但し,舗装のみでは十分な防水機能を発揮するこ

    とはできないため,床版防水層が必須となる.

    また,前述3)4)に示すように,床版防水層の中には,舗装骨材の押し込み作用により孔が開い

    てしまうことや,床版ひび割れの開閉作用によって破断してしまうなど,施工時,供用時等に受ける

    様々な負荷によって損傷してしまうものもある.このため,十分な防水機能を期待する場合には,こ

    れらの防水性能等を低下させる負荷に対して損傷させないなどの対策(性能)が必要である.

    床版防水層の材料は,想定される負荷に対して様々な保有性能を有しているため,管理者は,あら

    かじめ床版防水層に期待する要求性能を明確にし,要求性能に応じた材料を選択するとよい.

    (3)床版防水システムの施工のうち,床版防水層および床版防水層上の舗装の施工は施工時の環境によ

    る影響を大きく受けるため,施工要領書にしたがって適切に施工する必要がある.ただし,工事実施

    期間が冬季や猛暑となるような場合には,施工要領書に記載された施工環境を確保することが不可能

    な場合もあるため,工事実施時期を計画する場合には,冬季や猛暑を避け,適切な施工環境が確保で

    きる時期に工事計画することも重要である.

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    3.3 コンクリート床版面・排水設備の設計

    (1)コンクリート床版面・排水設備の設計は,床版面に滞水が生じないようコンクリート床版面の排

    水勾配と排水設備との組合せにより,路面および床版防水層上に滞水する水を速やかに排水できる

    ように設計する.

    (2)コンクリート床版面は,排水勾配を確保したうえで,床版鉄筋かぶり厚さ,壁高欄・地覆の必要

    高さ,舗装厚が確保されるよう設計する.

    (3)排水設備の設計では,排水設備の種類,配置計画,流末処理について設計する.

    (4)排水設備の流末処理は,雨水排水管に接続するなど適切に計画・設計しなければならない.

    (解説)

    (1)コンクリート床版の設計では,コンクリート床版面上,床版防水層の直上,路面が滞水しないよう,

    コンクリート床版面には十分な排水勾配を設け,排水桝または床版水抜き孔へ導水するよう設計する.

    コンクリート床版面上の滞水は,床版防水層の施工時の品質低下に繋がり,プライマーの接着不良

    やピンホールの発生要因となる.

    床版防水層の直上の滞水は,舗設時の品質低下に繋がり,舗装と床版防水層との接着不良や,舗装

    合材温度の急激な低下による空隙の発生・付着不良などの発生要因となる.

    図-解 3.3.1 床版防水層上の滞水状況

    また,供用後に床版防水層の直上が滞水してしまうと,舗装が水浸された状態となり,輪荷重の繰

    返し作用によりアスファルトと骨材との剥離を促進させ,床版防水上の舗装の早期劣化の発生要因と

    なる.

    したがって,舗装の早期劣化の抑制や耐久性を向上させるためには,床版防水層上を滞水させない

    こと,速やかに排出させることが重要となる(図-解 3.3.2).

    排水設備は,舗装の劣化を抑制することのみならず,万一,防水層が防水性能を保持できなくなっ

    た場合においても,雨水などを速やかに排水することにより,コンクリート床版の延命化に寄与する.

    図-解 3.3.2 床版防水層と床版排水の設計(概念図)

    床版排水の設計

    端部からの浸水

    舗装路面からの浸水

    床版防水層の設計

    床版防水層面での滞水

    舗装継ぎ目からの浸水

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    (2)コンクリート床版面の仕上がりは,床版上面を滞水させないよう排水勾配を確保するとともに,コ

    ンクリート床版の鋼材の設計かぶり,防護柵の必要高さ,設計舗装厚さを確保するよう設計する.

    特に伸縮装置などの端部については,床版の仕上がり高さの管理が困難であることから,必要に応

    じて縦断修正などを検討するとよい(図-解 3.3.2).

    図-解 3.3.3 コンクリート床版面の仕上り管理の留意点

    (3)排水設備は一般的に,排水桝,床版水抜き孔,導水帯,導水パイプ,端部止水処理にて構成される.

    各排水設備の機能を理解したうえで適切に設計する.

    1) 排水桝

    排水桝は,舗装面の雨水等および床版防水層上の滞溜水を排水するための排水設備である.排水桝は,上

    面を舗装路面高さに合わせて設置し,床版高さよりも位置に呑み口を設置する.また,排水桝と床版との

    境界部から漏水することが懸念されるため境界部は床版防水層を被せて防水する(図-解3.3.4).図-解

    3.3.4(a)は下桝と上桝に区分された2層構造の桝であり,上桝の高さを舗装路面に合わせて調整できるほか,下桝の呑み口で床版上面の集水をするものである.図-解3.3.4(b)は積雪寒冷地で採用されている排水

    桝であり,断面の大きな排水孔と目詰まりを抑制するための排水溝の設置による排水能力の強化,および,

    鉄筋取付け用リブの設置による定着用鉄筋を介した排水桝と床版の一体性の向上が図られている.

    図-解 3.3.4(a) 排水桝部の処理(2層構造の桝の例)

    防護柵の必要高さ

    設計舗装厚

    設計かぶり

    コンクリート床版上面の排水勾配

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    (ⅰ) 事例 1

    (ⅱ) 事例 2

    図-解 3.3.4(b) 積雪寒冷地用排水桝とその特徴

    2)床版水抜き孔

    床版水抜き孔は,床版防水層の直上の滞水を排水するために設置する.従って,床版水抜き孔の

    呑み口は周辺の床版高さよりも低くなるよう設置する.また,床版水抜き孔の呑み口は舗装等によ

    り詰まらないように目詰まり防止処置を講じるとよい(図-解 3.3.5参照).

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    図-解 3.3.5 床版水抜き孔の処理(例)

    床版の施工後に床版の凹凸などが生じた場合には,滞水しないよう排水設計の修正を行い,必要に

    応じて床版水抜き孔を追加設置するなどの措置を講じる必要がある.

    床版水抜き孔の追加設置する場合には,既設コンクリートの削孔作業によって既設のPC鋼材や鉄

    筋を切断しないよう,電磁波レーダ法などの非破壊試験方法により十分に調査し,位置確認後,削孔

    作業を行う必要がある.特に桁端部など,伸縮装置などの補強鉄筋が錯綜している箇所や,PCケー

    ブルなどを有する床版の削孔に際しては留意する必要がある.

    3) 導水帯,導水パイプ

    導水帯は,舗装路面の排水を促すことを目的に設置する.舗装の表層端部に溝を設けた構造が一般

    的であるが,ポーラスアスファルト舗装により溝部分を充填した構造もある(図-解 3.3.6参照).な

    お,歩道部や路肩部などでは,歩行者や軽車両の走行の妨げになる恐れがあるため注意が必要である.

    導水パイプは,基層体に埋没されることから,清掃などの維持管理が困難である.

    図-解 3.3.6 導水帯,導水パイプの処理(例)

    横断勾配

    表層

    レベリング層

    導水帯70㎜程度

    基層

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    4)端部止水処理

    舗装と地覆,壁高欄などとの境界部は,十分な止水性を確保することが困難であり,漏水により床版

    および舗装の劣化を促進することとなる. 端部止水処理は,境界部の止水性向上を目的に構造物と舗装との境界部に注入目地などによる止水処

    理を施すものである(図-解 3.3.7参照).

    ①表層部分での止水処理の例 ②基層部分での止水処理の例

    図-解 3.3.7 端部止水処理(例)

    5)排水桝と床版水抜き孔の設置間隔の例

    排水桝の設置間隔は,路面の集水面積による排水計算によって設計することが一般的ではあるが,排

    水勾配が緩やかな場合などでは,設置間隔を密に設計する場合もある.

    図-解 3.3.8 排水設備の設置例

    表-解 3.3.1 床版水抜き孔の設置間隔の例

    縦断勾配 設置間隔(m) 1%以下 5

    1%を超える場合 10

    6)サグ区間の排水設備の設置の目安

    特に,サグ部やクレスト部分などでは合成勾配が緩く,現場施工時に適切な排水勾配が確保されな

    い場合があることから,排水桝や床版水抜き孔の間隔を密にするなど設計段階より配慮する.

    目地材

    表層(ポーラス混合物)

    基層(レベリング層)目地材

    表層(密粒度混合物)

    基層(レベリング層)

    導水パイプ

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    図-解 3.3.9 サグ部での配置例

    7)分岐部付近での排水設備の設置例

    分岐部などの横断勾配が反転する箇所では滞水が想定されることから,排水設備を密に配置する.分

    岐部は線形条件を十分考慮し設置箇所を検討する.

    図-解 3.3.10 分岐部付近の配置例

    8)幅員変化部の設置例

    非常駐車帯の拡幅部や交差点と隣接する橋梁上の歩道隅切り部等は,合成勾配により滞水箇所が生じ

    るおそれがあることから路面の高低差に十分留意して排水設備の設置を検討する.

    図-解 3.3.11 拡幅部の配置例 図-解 3.3.12 歩道隅切り部の配置例

    9)伸縮装置上流部に設置する床版水抜き孔 縦断勾配の最も低い伸縮装置の手前付近や,線形の凹部などの滞水しやすい部分は,適宜,排水桝や

    床版水抜き孔を設け,防水層の上面に滞水させないように計画する.床版水抜き孔の設置間隔などは,

    縦断・横断勾配など排水勾配の形状などに応じて計画する.

    取付側交差道路の横断勾配

    歩道勾配

    車道勾配

    橋梁区間

    合成勾配

    歩道隅切り(切下げ)

    縦断勾配

    横断勾配 合成勾配

    拡幅部

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    ①床版水抜き孔(平面図)

    ②床版水抜き孔(側面図) ③床版水抜き孔(配置図)

    図-解 3.3.13 床版水抜き孔設置(例)

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    (4)排水設備により集水した水は,床版下面などから垂れ流しすると,下床版や桁部材などに飛散し,

    予期せぬ変状へ発展することが危惧されることから,既設の床版下面等に設置される雨水排水管など

    に接続するなどし,適切に流末処理する必要がある. なお,垂れ流し水が桁や下部構造などの部材に飛散する可能性がない場合や,民家等への飛散など

    の第三者への影響などが考えられない場合などに限って垂れ流し構造も可能である.

    ①導水管により流末へ流水 ②導水管により排水管へ接続

    図-解 3.3.14 導水管による流末処理(例)

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    ≪参考≫ 床版防水システムの先進地域である欧州では,細部にまでこだわった排水計画がなされている.欧州に

    おける排水計画の事例を紹介する. コンクリート表面の平坦性は, 保護層によって調整する.調整する高さが保護層 1 層の限界厚さを超え

    ている場合は, 保護層の上にレベル調整層を設ける(図-解 3.3.15 参照)このような調整により保護層+表層の全厚が限界厚さを超える場合には, コンクリート表面の高さ調整をコンクリート補修材料で行うか, もしくはコンクリート表面を削ることで調整される場合もある.

    図-解3.3.15 ドイツにおける床版不陸に対する措置事例5)

    舗装の転圧が困難な端部についてはグースアスファルトで設計されており,地覆との境界部分には注入

    目地を設ける仕様となっている.また,地覆前面に水が集中しないように床版の横断勾配を逆勾配として

    いる.(図-解 3.3.16参照)

    図-解3.3.16 ドイツにおける端部構造,排水枡周辺構造の事例5)

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    スイスでは,床版の出来形に応じて床版水抜き孔を設置しており,床版のいたる所に排水管との接続パイプが

    確認される.

    また,水抜き孔と床版との境界部は防水層によってシームレスに施工されている.

    図-解3.3.17 スイスにおける床版水抜き孔の設置事例

    【第 4 章 参考文献】 1)(社)日本道路協会:道路構造令の解説と運用,2004.2 2)(社)日本道路協会:道路橋示方書・同解説,2002.3 3)(社)日本道路協会:道路橋床版防水便覧,2007.3 4) 東・中・西日本高速道路㈱;設計要領第二集(橋梁建設編,橋梁保全編)2011.7 5) 高速道路総合技術研究所:欧州床版防水システム調査報告書,2009.5

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    3.4 床版防水層の設計

    (1)床版防水層の設計では,床版防水層の設置範囲,床版防水層の材料選定,コンクリート床版面の

    下地処理の設計を行う.

    (2)床版防水システムは,車道・歩道を含む床版全面を対象に設計する.

    (3)コンクリート床版面には,床版防水層の接着性能を発揮させるための下地処理を実施する.

    (4)床版防水層は,床版防水システムの計画時に設定した組合せに適合する材料を選定する.

    (解説)

    (1)床版防水層の設計では,計画段階において設定した床版防水システムの組み合わせに見合った床版

    防水層の材料を選定するとともに,選定した床版防水層とコンクリート床版が適切に接着するための

    コンクリート床版面の下地処理について設計することとした.床版防水層には様々な材質・製品が存

    在し,コンクリートとの接着機構も異なることから,選定した床版防水層に見合ったコンクリート床

    版面を構築することが重要となる.

    (2)床版防水システムの施工範囲については,直接的に車両走行の影響を受ける車道部全面を対象とす

    るほか,歩道部や地覆・壁高欄部分においても水の浸入対策を怠った場合,車道部や床版下面へ流れ

    出し塩害等の変状を引き起こすことから,歩道部,地覆・壁高欄部も対象として計画する(図-解 3.4.1,

    3.4.2).

    図-解 3.4.1 車道部の床版防水層の施工範囲例

    図-解 3.4.2 車道部・歩道部の床版防水層の施工範囲例

    表層(密粒度混合物)

    基層(レベリング) 目地材

    床版防水層 排水設備

    表層(密粒度混合物)

    基層(レベリング)

    目地材

    床版防水層 排水設備

    目地材 目地材 歩道部

    表層(密粒度混合物)

    基層(レベリング)

    目地材

    床版防水層 排水設備

    目地材 目地材 歩道部

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    フロリダ壁高欄に発生する収縮ひび割れや,支点上に生じる負曲げひび割れを通じて張出床版下面に漏

    水し,床版下面で塩害によるはく落などを引き起こすこともあるため床版端部の立上げ部にも防水処理を

    施すとよい.

    図-解 3.4.3 フロリダ型壁高欄の端部防水の例

    図-解 3.4.4 端部ルーフィングによる端部防水の例

    図-解 3.4.5 縁石全面を防水処理した例

    表層(密粒度混合物)

    基層(レベリング層)

    端部ルーフィング処理

    端部防水のフーフィング詳細図

    表層(密粒度混合物)

    基層(レベリング層)

    端部ルーフィング処理

    表層(密粒度混合物)

    基層(レベリング層)

    止水処理

    保護塗装等

    導水帯

    保護塗装等

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    (3)下地処理では,床版面のレイタンスの除去,付着物等の除去,軽微な段差等の除去を実施する.

    床版面の下地処理に用いる研掃機械は,ダイヤモンド小型研掃機,もしくはスチールショットブラ

    ストを用いるとよい.機種の選定に際しては,対象施工面積や研掃対象物の状況などより選定すると

    よい.表-解 3.4.1に各種研掃機械の施工能力の目安を示す.

    表-解 3.4.1 コンクリート床版面の研掃機械の施工能力

    研掃機械 施工規模 床版 作業能力

    (m2/時間・台)一般部 狭隘部

    小型電動工具(人力作業) 特小規模 × ○ ○ ダイヤモンド小型研掃装置 小・中規模 ◎ × 30~40

    スチールショットブラスト 大規模 ◎ × 100 ※スチールショットブラストの投射密度は50kg/㎡の施工能力を示す.

    コンクリート床版面に生じたレイタンスは耐久性を有していないことから,初期の接着強度が確保

    されたとしても,レイタンス層の経年劣化により接着阻害が生じるものと考えられることから,下地

    処理によってレイタンスを適切に除去するよう設計する.レイタンス層が厚く,ダイヤモンド研掃装

    置での除去が困難な場合は,スチールショットブラストやウォータージェットにより除去するとよい.

    また,コンクリート床版面には,被膜養生剤,不陸調整材(樹脂モルタルなど),タイヤ痕,土砂・

    粉じん,仮舗装除去後のアスファルト油分などが付着している場合ある.これらの付着物等は,床版

    防水層のプライマーの浸透を阻害することや,樹脂材料の相性によりプライマーの硬化不良が生じる

    などの不具合が発生する可能性があるため,床版防水層の施工に先立ち,下地処理によって適切に除

    去するよう設計する.

    なお,浸透系コンクリート養生剤や表面含浸材などの浸透系塗布剤が塗布されている場合において

    は,コンクリート内部まで浸透している場合があるため,プライマーに悪影響を及ぼさない範囲まで

    研掃する必要がある.この場合は,ダイヤモンド研掃装置によって除去することが困難な場合が多い

    ことからスチールショットブラストにより除去するとよい.なお、膜養生材の除去はスチールショッ

    トブラストの場合には,投射密度150kg/m2程度で研掃する必要がある.

    床版防水層の施工に先立ち,床版面にひび割れやジャンカ,段差等の変状がある場合には,適切に

    補修を実施する.また,床版工事において補修がなされている場合においては,補修記録を確認し,

    補修材料とプライマーとの接着性を確認する必要がある.

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    (4)床版防水層の材料は,様々な種類が存在し,製品によって保有する性能も異なることから,設計条

    件などを勘案し,床版防水層に求める要求性能を設定したうえで,最適な床版防水層を選定するとよ

    い.なお,要求性能の設定方法および性能照査方法等については,「付録 4」,および「道路橋床版防

    水便覧(道路協会)」を参考にするとよい.

    表-解 3.4.2 床版防水層のカテゴリー(参考)

    区分 内 容

    カテゴリー1 材料性能,初期性能および一般的な耐久性能に加え,重交通路線,寒冷地域にお

    ける耐久性能を求めた床版防水層

    カテゴリー2 材料性能,初期性能および一般的な耐久性能に加え,重交通路線における耐久性

    能を求めた床版防水層

    カテゴリー3 材料性能,初期性能および一般的な耐久性能に加え,寒冷地域における耐久性能

    を求めた床版防水層

    カテゴリー4 材料性能,初期性能および一般的な耐久性能を求めた床版防水層

    カテゴリー5 材料性能,初期性能を求めた床版防水層

    表-解 3.4.3 床版防水層の要求性能(参考)

    性能種別 要求性能 カテゴリー

    1 2 3 4 5

    必要最低限の

    性能を有する

    床版防水層

    材料性能 ① 防水材料の品質安定性 ○ ○ ○ ○ ○

    ② 防水材料の環境安全性 ○ ○ ○ ○ ○

    初期性能

    ③ 下地と防水層の接着性 ○ ○ ○ ○ ○

    ④ 施工性 ○ ○ ○ ○ ○

    ⑤ 膨れ抵抗性 ○ ○ ○ ○ -

    ⑥ はがれ抵抗性 ○ ○ ○ ○ -

    ⑦ 局部変形性 ○ ○ ○ ○ -

    ⑧ 舗装後の防水性 ○ ○ ○ ○ ○

    ⑨ 舗装後の接着性・せん断抵抗性 ○ ○ ○ ○ ○

    ⑩ 水浸後の接着性 ○ ○ ○ ○ ○

    高機能な床版防水層 耐久性能

    ⑪ 温度変化および薬品負荷抵抗性

    (耐塩水性、耐アルカリ性を含む) ○ ○ ○ ○ -

    ⑫ 輪荷重繰返し負荷抵抗性 ○ ○ ○ ○ -

    ⑬ ひび割れ開閉負荷抵抗性 ○ ○ - - -

    ⑭ 凍結融解負荷抵抗性 ○ - ○ - -

    ⑮ 繰返しせん断負荷抵抗性 ○ ○ - - -

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    3.5 床版防水層上の舗装の設計

    (1) 床版防水層上の舗装は,既定の舗装厚を確保する.

    (2) 床版防水層上の舗装の基層部分のアスファルト混合物は,はく離抵抗性の高い材料を用いると

    共に基層裏面に間隙群が生じにくい配合で設計するとよい.

    (解説)

    (1)床版防水層上の舗装の厚さは,舗装と防水層との界面に生じるせん断応力に大きく寄与することか

    ら,舗装厚が著しく薄くなることのないよう留意する必要がある.舗装厚は,どのような交通条件に

    おいても6~8cmを標準としている(舗装設計便覧:日本道路協会).また,コンクリート床版の水蒸

    気の影響により発生するブリスタリングは一般的に 50 ㎜程度の舗装が敷設されることで膨れを抑え

    ることが可能といわれており,舗装厚の管理は重要である.(参考文献)舗装技術の質疑応答,第 7

    巻,1997.

    また,コンクリート床版面の仕上り高さから基層(レベリング層)の最低厚さ(アスファルト混合

    物の最大粒径の2.5倍以上)を確保できない場合は,縦断線形を変更し舗装厚を確保する必要がある.

    (2)床版防水層上の舗装は,床版防水層で遮断された水により水浸し,輪荷重の影響ではく離・脆弱化,

    床版防水層とのはく離が生じることから,床版防水層上のアスファルト混合物は,はく離抵抗性,水

    密性に優れ,且つ舗設後の舗装裏面に間隙が生じにくい配合で設計することで耐水性が向上する.

    (水密性の向上)

    水密性に優れた混合物を使用することで,舗装体に水が入らないようにすることは,舗装の耐久性

    向上に寄与する.

    アスファルト混合物では,水密性の評価に加圧透水試験による透水係数を用い,1.0×10-7cm/s 以

    下を不透水としている.なお,首都高速(舗装設計施工要領)では,基層に使用する密粒度アスファ

    ルト混合物(13)の透水係数の品質規格として,締固め度 96%以下で作製された供試体で 1×10-5cm/s

    以下としている.NEXCO では,橋梁レべリング層用混合物の透水係数を 1.0×10-7cm/s 以下を基準値

    としている.

    また,アスファルト混合物の空隙率と透水係数には,高い相関があるので,空隙率を低めに設定す

    るなどの検討をすると良い.

    (はく離抵抗性の向上)

    舗装体,舗装裏面に水が浸透した場合,輪荷重の影響等によりアスファルトと骨材がはく離・分離

    してしまい,舗装体の早期劣化に繋がる.このことから,床版防水層上の舗装混合物については,は

    舗装裏面

    の間隙

    図-解 3.5.1 アスファルト舗装の耐水性向上

    コンクリート床版

    ・密実な混合物により舗装体

    に水を入れない

    ・水が入ってもアスファルト

    と骨材をはく離し難い材料

    を選定する

    舗装裏面の間隙が生じにく

    い配合を選定する

    ◎⼩関さま(再考)

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    く離抵抗性を高めることが耐久性向上に大きく寄与する.

    特に,防水性能の高い床版防水層上の舗装などにおいては,橋面舗装用として開発された接着性改

    善型の改質アスファルト(ポリマー改質アスファルトⅢ型-W)などを採用すると良い.

    また,はく離抵抗性の低い骨材を採用する舗装などでは,はく離防止材を添加するなどの対応も有

    効である.(参考文献)アスファルト混合物のはく離,アスファルト,No.169,1991.

    通常,はく離抵抗性の評価には,粗骨材の静的はく離試験や締固め度100%で作製された供試体によ

    る水浸ホイールトラッキング試験などが行われるが,首都高速(舗装設計施工要領)では,締固め度

    96%以下で作製された供試体で冠水式ホイールトラッキング試験が行われる.表層にポーラス舗装を

    用いる場合,基層混合物のはく離抵抗性は,非常に重要である.

    (舗装裏面間隙の低減)

    基層の敷均し時には,施工時の外気温や床版温度の低下などに起因し,締固め不十分となり易く,

    舗装の裏面に間隙が生じることがある.この間隙群は水の滞留空間となり,輪荷重の影響を受け基層

    混合物の土砂化を助長するため,基層の配合設計時には裏面に間隙群が生じにくい粒度分布で配合設

    計すると良い.(参考文献)土木学会論文集 E1(舗装工学),Vol.69,No.3(舗装工学論文集 第 18

    巻),I_87-I_94,2013.

    例えば,下図はアスファルト混合物の裏面の写真とそれをスタンプしたものを示している.スタン

    プの状況を見るとSMAの裏面は点で接しているのに対して,密粒度混合物は面で接しており,間隙が

    少ないことがわかる.

    図-解 3.5.2 アスファルト混合物の裏面の例(上:SMA,下:密粒度)

    (その他)

    中温化合材を基層に用いる場合には,床版防水層との接着不良が生じる可能性があることから,あ

    らかじめ床版防水層との接着確認試験等を実施し,不具合等の生じないことを確認する必要がある.

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    第4章 床版防水システムの施工・施工管理・検査

    4.1 床版防水システムの施工一般

    (1)床版防水システムは、床版・排水設備、床版防水層および床版防水層上の舗装が一体となっては

    じめて防水機能を発揮するので、各工種の施工に際しては、それぞれの設計事項を充分に理解する

    とともに,他の工種の設計事項も理解し,防水性能の低下を招かないよう入念に施工する。

    (2)床版防水システムの施工に際しては,各工種の材料・施工方法・施工管理方法等が記載された施

    工計画書を作成するとともに,床版防水システムの材料・施工等に関する十分な知識を有する技術

    者を配置する.

    (3)床版防水システムは,橋梁上部工,防水工および舗装工に施工が分業されて行われるため,各工

    種間のコミュニケーションを十分に取り,成果物の品質向上に努める.

    (4)床版防水システムの工事終了後は, 施工が適切に実施されたことや維持管理のために必要な事項

    を工事記録として記録する.

    (解説)

    (1)床版防水システムは、床版や排水設備と床版防水層、舗装が一体となって機能することから、各工

    種の施工に際して作業員は自分が実施する施工だけではなく,他の工種の設計・施工条件も理解したう

    えで、設計にしたがい入念に施工する必要がある。特に構造物の管理者は各工種の施工結果が供用後の

    耐久性に大きな影響を及ぼすことを認識し,監督する必要がある.

    床版防水システムの施工フローを図-解 4.1.1に示す.

    図-解 4.1.1 床版防水システムの施工フロー

    4.2 床版・排水設備の施工

    4.3 床版防水層の施工

    4.4 床版防水層上の舗装の施工

    4.3.1 事前調査

    4.3.2 下地処理(研掃)

    4.3.3 床版防水層の施工

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    (2)床版防水システムの施工計画書の作成に際しては,それぞれの施工条件を勘案するとともに,床

    版防水システムの設計事項を反映させる必要がある. 施工計画書は,施工業者が工事ごとに作成するもので,従事する工種ごとにコンクリート床版工,

    床版防水層工,床版防水層上の舗装工に区分し作成する.なお,床版防水層の施工計画書の作成にあ

    たっては,床版防水層の製造業者が作成した施工要領書に記載された施工条件等を十分に理解したう

    えで作成する. また,床版防水層および床版防水層上の舗装の施工については,天気の急変や施工機械の故障など

    当日の現場条件の変化によって品質が大きく低下することもあるため,あらかじめ施工中に想定され

    る事象に対する対応策を検討し,施工計画に記述することが重要である. 施工計画書は,それぞれの現場における施工条件を考慮して作成されたものであるので,事前に施

    工関係者に周知するとともに,いつでも見ることができるように常に現場に配置する.

    床版防水システムの施工に際しては,現場の天候や施工条件の急な変更などにも適切に対応できる

    よう十分な知識と経験を有している技術者を現場に配置する.

    (3)床版防水システムは,橋梁上部工,防水工および舗装工に施工が分業されて行われ,請負業者も

    変わる.したがって各工種間での申し送り(情報共有)が十分にできない可能性がある.したがって

    (4)で記載する各工種での施工記録を正確に残すころが重要である.また構造物の管理者は各工種

    の施工状況等の重要,特記事項があれば,後の工程へ確実に点達する必要がある. (4)防水層,舗装は湿度や気温などの気象条件によって施工時の品質が大きく変化する.舗装や防水層

    も瑕疵の対象であるので,施工が適切に行われたことを工事記録によって示す必要がある.また,使

    用材料の種類や施工継目の位置などは補修の場合に重要な情報であるので,記録し残しておく.さら

    に,維持管理段階において発生する種々の事象の原因を解明するためにも施工時の記録は非常に重要

    である.

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    4.2 床版・排水設備の施工・施工管理・検査

    (1)床版面の仕上がり高さは,設計舗装厚が確保できる高さで仕上げるとともに,設計どおりの排水

    勾配が確保されるよう入念に仕上げる.

    (2)床版,地覆・壁高欄などにジャンカ,ひび割れ等の初期欠陥が生じないよう施工する.

    (3)床版の施工に先立ち,排水計画を十分に把握したうえで排水設備を設置する.

    (4)コンクリート床版面は,床版防水層と接着する下地面であることから,接着阻害を生じさせない

    ようコンクリート床版面を計画・設計する.なお,浸透系のコンクリート養生剤,表面含浸材は床

    版防水層の接着性能を低下させることから使用してはならない.

    (5)施工管理・検査については,施工計画書,施工要領書および発注図書等に基づいて実施する.

    (解説)

    (1)コンクリート床版の仕上り高さは舗装厚に大きく影響することから,設計舗装厚が確保できるよう

    配慮する.また,伸縮装置付近は高さ調整が困難となり,適切な高さ確保がなされない場合が多いこと

    から特に入念に監理する必要がある.

    コンクリート床版面の大きな凹凸などは滞水の原因となることから,排水勾配を確保し適切に排水で

    きるよう入念に仕上げる必要がある.また,排水計画時に床版水抜き孔などを設置する箇所については

    床版面の仕上げ時には水勾配に注意し入念に仕上げる.

    (2)床版や地覆・壁高欄部に生じたひび割れやジャンカ等の初期欠陥は,床版の耐久性を低下させると

    ともに,床版防水層へも悪影響を与えることから,初期欠陥が生じないよう入念に施工する必要がある.

    また,やむを得ず初期欠陥が発生した場合には,適切に補修しなければならない.また,補修計画に

    際しては,床版防水層との材料の相性等を事前に確認する必要がある.

    (3)雨水等の床版上面の滞水対策としては,床版水抜き孔等の排水設備を設置することにより舗装の

    内部排水をはかることが最も効果的であり,導水パイプは,床版水抜き孔が設置できないときなどに

    適用を検討する. 1)施工前の確認

    排水設備には,排水桝,導水パイプ,導水帯,床版の水抜き孔などの排水資材と,成型目地材,注

    入目地材などの目地材がある.これらが適切に配置されていることを確認する. 2)施工時の留意点

    ① 導水帯の施工時に転圧が不十分な場合,供用後の輪荷重等によって導水帯直上の表層が沈下す

    ることがあるため,施工に十分注意する必要がある. ② 床版水抜き孔は,床版上や床版防水層上に浸透した水や導水パイプや導水帯によって集水され

    た水を床版下面に排水するための排水設備で床版内を貫通する鉛直方向の排水設備である.床

    版下面での流末処理は,雨水配水管等に接続するなど適切に行う必要がある. ③ 勾配変更点など設計で予期できない水溜りができる箇所には,発注者と協議を行い,追加の床

    版水抜き孔を設置する.設置においては,図面での確認やコンクリート床版の鉄筋探査により,

    PC 鋼材や鉄筋の無いことを確認し削孔する.また,床版下面の流末処理については,雨水排水管等に接続し,排水が下部構造物に垂れ流れないように配慮する.

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    (4)コンクリート床版面と床版防水層は適切に接着することで性能が発揮されることから,接着阻害が

    生じないよう設計段階から配慮する.

    接着阻害が懸念される事象として下記が挙げられることからこのような事象が生じないよう設計す

    る.

    1) コンクリート養生剤

    浸透系養生剤は,下地処理により除去することができないため,使用してはならない.

    被膜系養生剤は,被膜層が床版防水層のプライマーの含浸性・接着性を低下させることから下地処

    理にて適切に除去するよう計画する.

    前述のように,コンクリート養生剤は床版防水層の接着性能に大きく影響を与えることから,使用

    した材料の種類,製品名等については記録し,床版防水層の設計に反映させる.

    2) 表面含浸材(シラン系,ケイ酸塩系)の施工による接着阻害

    建設現場によっては,床版コンクリートの施工後,床版防水層を設置するまでにある程度の期間を

    要する場合があり,このような場合,床版面の劣化を抑制するために表面含浸材を塗布することがあ

    るが,表面含浸材の材料と床版防水層のプライマーとの相性によっては接着阻害が生じる場合がある

    ことから,表面含浸材を塗布した場合には,床版防水層施工前に表面含浸材を除去する必要がある.

    3) ジャンカや段差の補修

    ジャンカや段差は床版防水層の均質な施工を阻害することや供用後の弱点となる可能性が大きい

    ので,セメント系のモルタルや,樹脂系のモルタルなどを用いて床版面が平滑となるように仕上げ

    る.補修材によっては,薄層施工や仕上がりがフェザーエッジとなった場合に所定の性能・耐久性

    を発揮しない場合があるので,補修材料の選択や補修形状の検討の際には,このことに留意する必

    要がある.

    4) 不陸調整材による補修(床版上面の均し補修)

    3)とも共通するが,不陸調整材にはセメント系のモルタルや,樹脂系のモルタルなどがあり,

    れぞれ特徴がある.また床版上面で用いられるので,床版防水層との相性や供用後の走行車両に

    よる耐荷重性能や疲労耐久性が求められる.したがって,補修材料の選択に当たってはこれらを十

    分に考慮する必要がある.最近では床版防水層の施工に先たち実施される損傷した床版上面の補修材

    料に関しての検討例(論文,研究報告書等)が増えてきているので,これらも参考とするとよい.

    (5)床版・排水設備の施工管理・検査時の留意点について下記に示す.

    ①床版の仕上がり高さの確認

    ・床版全面において設計舗装厚が確保できること

    ・舗設後,防護柵の必要高さが確保できること

    ②床版上面の排水状況の確認

    ・排水勾配が確保されており,滞水が生じないこと

    ・水が溜まらない様,適切に排水設備が設置されていること

    ・伸縮装置近傍など,滞水し易い狭隘部に床版水抜き孔等が設置されていること

    ・各排水設備の呑口高さが床版面よりも低く,適切に排水できること

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    ③床版コンクリートの不具合の確認

    ・床版面の段差,凹凸不陸,床版部分のひび割れ等が補修されていること

    ・壁高欄部分のひび割れ,ジャンカ・豆板が補修されていること

    ・浸透系コンクリート養生剤やコンクリート含浸剤などのプライマーの接着を阻害する処理が施され

    ていないこと

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    4.3 床版防水層の施工

    4.3.1 事前調査

    (1)排水勾配や排水設備が適切に機能し,床版全面において滞水個所が無いことを確認する.

    (2)床版防水層の性能に影響を及ぼす恐れのある付着物等の状況を確認する.

    (3)使用する床版防水工の施工要領書に沿った施工が可能であることを確認する.

    (解説)

    (1)床版防水システムの性能を発揮させるためには,滞水個所があってはならないことから,床版の排

    水勾配,排水設備が適切に確保・設置され,床版面全面に滞水箇所が生じていないことを確認する必

    要がある.特に下記については現地において入念に確認する必要があ�