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151220 - 1 - 道路橋床版防⽔システムガイドライン(2016 年版) 平成27年12⽉版

道路橋床版防⽔システムガイドライン(2016年版)committees.jsce.or.jp/steel16/system/files/床版防水システムガイドライン... · 151220 - 7 - 1.2 用語の定義

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道路橋床版防⽔システムガイドライン(2016 年版)

平成27年12⽉版

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目 次

まえがき

第1章 総則

1.1 適用の範囲

1.2 用語の定義

第2章 床版防水システムの役割

2.1 床版防水システムの目的

2.2 床版防水システムの役割

2.3 床版防水システムの構成

2.4 床版防水層の種類

第3章 床版防水システムの計画・設計

3.1 床版防水システムの計画・設計一般

3.2 床版防水システムの計画

3.3 コンクリート床版面・排水設備の設計

3.4 床版防水層の設計

3.5 床版防水層上の舗装の設計

第4章 床版防水システムの施工・施工管理・検査

4.1 床版防水システムの施工一般

4.2 床版・排水設備の施工・施工管理・検査

4.3 床版防水層の施工・施工管理・検査

4.3.1 事前調査

4.3.2 下地処理

4.3.3 床版防水層の施工・施工管理・検査

4.4 床版防水層上の舗装の施工・施工管理・検査

4.5 施工記録

第5章 既設床版の床版防水システム

5.1 既設床版の防水システムの計画・設計・施工一般

5.2 既設床版の防水システムの施工・施工管理・検査

5.2.1 既設床版の防水システムの事前調査

5.2.2 既設床版の防水システムの下地処理

5.2.3 既設床版の防水システムの施工・施工管理・検査

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第6章 床版防水システムの維持管理

6.1 床版防水システムの点検

6.2 床版防水システムの補修

付録

[付録1] 床版防水システムの計画例

[付録2] 床版防水システムの施工例

[付録3] 床版防水システムの標準図

[付録4] 床版防水層の要求性能(案)

[付録5] 床版防水システムの施工管理・検査の事例

[付録6] 床版防水システムに関する新たな知見

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まえがき

道路橋床版は,舗装を介して自動車の輪荷重を直接受ける部材であり,雨水や凍結防止剤等の劣化因子

の影響も受けやすく,橋梁の中で も過酷な環境に置かれている部材である.床版の損傷・劣化は,交通

荷重の繰り返しにより生じる疲労損傷と,舗装の損傷を伴う床版上面の損傷,および鉄筋腐食などによる

床版下面の劣化がある.雨水が床版内部に浸入した場合には,ひび割れへの水の浸入によって上側コンク

リートの砂利化が起きるため,交通荷重による疲労損傷は著しく促進されることが分かっている.これが

疲労に伴う床版上面損傷であり,局所的に発生する.さらに,床版上面においては,建設時のコンクリー

トの収縮ひび割れ等から雨水が床版の上側鉄筋に到達し,発錆によりかぶりコンクリートを剥離させ,舗

装のポットホールの原因になっている.積雪寒冷地では,雨水が床版内部に浸入した場合には,凍結融解

作用による床版の劣化を招くとともに,凍結防止剤の影響による塩害で鉄筋の腐食が促進されている.こ

のように,雨水や塩化物イオン等が床版の耐久性に大きな影響を与えることが明らかとなってきた.

道路橋床版の耐久性向上のためには,床版内部への雨水等の浸透を防ぐための床版防水が重要であると

の認識が広がり,平成 14 年に道路橋に関する技術基準である「道路橋示方書」において,「アスファルト

舗装とする場合は,橋面より浸入した雨水等が床版内部に浸透しないように防水層等を設けるものとする」

と明記された.この道路橋示方書の規定を補完するための手引き書としては,「道路橋鉄筋コンクリート床

版防水層設計・施工資料(日本道路協会,昭和 62 年 1 月発行)があるが,平成 19 年に「道路橋床版防水

便覧」として見直され,技術資料として活用されている.

その後,新設橋については,従来よりも耐久性の高い床版防水層が求められており,東・中・西日本高

速道路各社の平成 22 年 7 月における「設計要領」では,耐久性の高い防水層を採用することを盛り込ん

でいる.一般道においても,構造物の維持管理上の要求から,耐久性を求めた床版防水層の選択方法や,

補修の場合のさまざまな制約条件に対応できる防水層の選択方法がクローズアップされてきている.また,

既設橋においても,床版補修箇所の再劣化などから,補修における床版防水層の設計や,部分補修の方法

などが議論になっている.

このような要望に応えるべく, 新の床版防水に関する技術を整理し,我が国より床版防水の歴史が長

い欧州の技術情報を盛り込んで,日本の気象や使用条件に応じた,一般道・高速道双方に用いる床版防水

のあるべき姿をできるだけわかりやすい形で示し,設計・施工に生かすことが,本ガイドラインの目的で

ある.

日本や欧州の経験は,床版防水は防水層のみによって成し遂げることはできず,床版,防水層,舗装,

さらには排水設備を適切に組み合わせた床版防水システムによって始めて達成できること,設計だけでな

く施工が非常に重要であることを教えてくれている.したがって,本ガイドラインでは,防水層だけでな

く,床版の仕上がり状況,防水層に関係する舗装の性状や排水設備についても要求性能を示している.ま

た,要求性能の照査方法,要求性能を満たすための標準的な施工方法,施工後の検査方法も示している.

本ガイドラインには,床版・防水層・舗装・排水設備からなる 新の床版防水システムに関する情報が

集約されており,道路橋の設計・施工・維持管理に携わるすべての技術者の貴重な技術資料となれば幸い

である.本ガイドラインの趣旨が正しく理解されて,耐久性を有する床版防水システムが普及することを

期待している.

本ガイドラインでは,現在の 新の知見を元に記述してきたが,現在も各方面で研究開発が熱心に進め

紫桃さま(再考)

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られている.将来,実験や知見等の積み重ねにより,さらに改訂が重ねられ,床版の耐久性を向上させる

ための大きな礎となることを期待している.

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第1章 総則

1.1 適用の範囲

本ガイドラインは,橋面にアスファルト舗装が施されている道路橋の新設及び既設のコンクリート

床版に設置される床版防水システムの設計・施工・維持管理に適用する.

(解説)

道路橋の床版には,鉄筋コンクリート床版,プレストレストコンクリート床版,鋼コンクリート合成

床版のコンクリート系床版と鋼床版がある.本ガイドラインの適用範囲は,アスファルト舗装が施され

たコンクリート系床版を対象としている.

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1.2 用語の定義

本ガイドラインでは,次のように用語を定義する.

アスファルト舗装 車両が快適に走行できるように床版上面に設置した加熱アスファルト混合物

の層であり,基層(レベリング層)と表層により構成される

下地処理 コンクリート床版上面を防水層の接着に適すように,不陸調整,異物除去,

レイタンス除去を行う行為

床版防水 床版コンクリート内に水が入らないようにする行為の総称

床版防水システム コンクリート床版,床版防水層,舗装及び排水設備が一体となり,水や凍結

防止剤などの劣化因子から床版を保護するシステム

床版防水層 床版の防水を目的として床版と舗装の間に設ける層で,一般的にはプライマ

ー層,床版と防水材との接着層,防水材,防水材と舗装との接着層から構成

される

床版防水工 床版防水層及び排水設備を施す工事

施工計画書 それぞれの箇所の施工条件において,施工者が 適な施工方法や施工管理方

法などを記載したもの

施工要領書 防水層の製造業者が,防水層の施工法や施工条件を示したもので,通常,そ

の品質はその条件下で保証されている

端部防水 地覆・高欄部や伸縮装置部,排水桝部のように,一般部に比べ複雑な処理が

必要な防水

端部防水層 端部防水を行う防水層

排水設備 路面,舗装内及び防水層上に到達した雨水などを滞水させることなく,速や

かに排水するための設備

防水材 床版防水層を構成する主要材料

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第2章 床版防水システムの役割

2.1 床版防水システムの目的

(1)床版防水システムは,床版の長寿命化を図ることを目的とする.

(2)道路橋の床版は,交通荷重による疲労,雨水・凍結防止剤などの劣化要因により耐久性が低下する

ため,床版防水システムを構築する.

(3)道路橋には,床版の耐久性低下が橋梁全体の安全性低下に繋がる構造系(PC部材)も存在すること

から,このような構造系を呈する道路橋床版については床版防水システムの構築が不可欠である.

(解説)

(1)道路橋床版の耐久性は,水や塩化物イオンが浸透することにより著しく低下することから,床版防

水システムを構築することにより,水等と床版が直接接触することを防ぎ,速やかに排水するための

排水設備を設置し,床版の長寿命化を図ることを目的とする.

(2)コンクリート床版の主な変状要因は,コンクリート床版の使用材料に起因する劣化要因と道路の使

用されている環境に起因する劣化要因とに大別される.特に下記に示す主な劣化要因については,水

等の影響によって発生・促進することから床版防水システムにより予防することが床版の延命化に繋

がる.

1)コンクリート床版の使用材料に起因する主な劣化要因

①塩害(内在塩分)

昭和61年(1986)の生コンクリート中の塩分総量規制(RC部材,ポステン部材は0.6㎏/㎥以下,

プレテン部材は0.3㎏/㎥以下)がなされる以前に建設されたコンクリート構造物は,十分に除塩され

ていない海砂などが使用されている場合もある.このように建設段階よりコンクリート内部の塩化物

イオン濃度が高い床版の鉄筋は常に腐食しやすい環境にあることから,床版上面等からの漏水により

鉄筋腐食が促進される可能性が高い.このことから,路面の水を床版上面へ浸透させないことが重要

である.

②アルカリシリカ反応

反応性の骨材を使用しているコンクリート床版では,コンクリート中の水酸化アルカリと反応性骨

材の反応によりアルカリシリカゲルが形成され,これが吸水膨張することによりひび割れが生じ,コ

ンクリートの弾性係数が低下するなど,コンクリート材料として劣化することがある.さらに,ナト

リウムイオンは,アルカリシリカ反応を促進させる場合があるので,凍結防止剤を散布する寒冷地や

飛来塩分が危惧される海岸周辺では特に注意が必要である(図-解2.1.1参照).

図-解2.1.1 床版コンクリートのアルカリシリカ反応

⽥中さま(第⼀分科会との整合)

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図-解 2.1.2 輪荷重走行試験による

RC床版のS-N線図の例 1)

2)道路の使用されている環境に起因する主な劣化要因

①疲労

道路橋の床版は,走行車両による輪荷重や,凍結防止剤など,道路の使用環境の影響を受け

やすい部位である.昭和40年代前半までのRC床版は,床版厚が比較的薄く,配力鉄筋量も少

なく設計されており,交通環境によっては早期にひび割れ

などの変状が発生するものがあり,場合によっては床版コ

ンクリートの抜け落ちによる路面陥没まで至る事例もあ

った.このことから,道路橋示方書では疲労耐久性の向上

を目的に, 小床版厚の規定や配力鉄筋量などの見直しが

行われている.

過去においてはRC床版の疲労損傷過程について研究

がなされ,RC床版のひび割れ部分に水が浸入すると,コ

ンクリートの劣化が著しく進展し,乾燥状態に比べて早期

に終局まで至るなど,床版の寿命が大幅に減じられること

が明らかにされている1).図-解2.1.2に水張り状態と乾燥

状態との輪荷重走行試験結果の比較例を示す.この結果では湿潤状態では乾燥状態に比べて100

~300倍もの速さで床版の破壊に至ったことが報告されている.これらの変状メカニズム(図-

解2.1.3)を踏まえ,RC床版の疲労損傷を抑制するためには,床版増厚工法などにより耐力を

向上させることや,床版防水により水を流入させないことが重要となる.

図-解2.1.3 疲労による変状メカニズム

【一方向ひび割れ】 【二方向ひび割れ】 【ひび割れの網細化と角落ち】 【床版の陥没】

水の浸入 促進

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②塩害(外来塩)

冬季に散布する凍結防止剤が床版上面に浸透し,上側鉄筋の腐食,コンクリートの剥離,舗装路面

でのポットホール発生などの変状に至るケースが代表的である.これらの変状を抑制するためには,

防水性,遮塩性を有する床版防水層を設置することが重要である(図-解2.1.4参照).

図-解2.1.4 床版上面の塩害

また,床版端部(地覆・高欄部,伸縮装置端部など)では,水や凍結防止剤の影響により塩害を要

因としたコンクリートの剥落などの変状が発生している.これは,床版端部を流れる水や凍結防止剤

が地覆下面などの調整モルタル部分や打継ぎ目などから床版内に浸入して塩害が発生するもので,床

版下面の鉄筋が腐食・膨張し,コンクリート片が剥離するといった劣化メカニズムによるものと推察

される.このことから,地覆下面などへの漏水を防止することを目的に,床版端部においても床版防

水層を適切に設置する必要がある(図-解 2.1.5参照).

従来型壁高欄 縁石下面からの漏水 張出し床版下面の剥落

図-解2.1.5 張出し床版下面の塩害

コンクリート床版は,鉄筋コンクリート床版(以下「RC床版」という),プレストレストコンク

リート床版(以下「PC床版」という),鋼コンクリート合成床版などに大別される.

PC床版は,一般にRC床版よりも優れた疲労耐久性を有している.しかしながら,PC構造にお

いては,凍結防止剤が床版上面や床版端部より,打継ぎ目やグラウトホース周辺などを伝って雨水と

共に浸入し,様々な部位での塩害が発生している.具体的には,箱桁の張出し床版下面やウェブ面で

の遊離石灰および漏水,水しみの発生,連続合成桁の2次床版部分での水しみの発生,排水管や伸縮

装置(止水構造)の破損に伴う変状などが顕在化している.PC構造はRC構造と異なり,塩害によ

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りPC鋼材の腐食・破断が懸念され,変状の程度によっては橋梁全体の耐久性を大きく低下させてし

まうことに注意が必要である(図-解2.1.6参照).

図-解2.1.6 PC橋の塩害(漏水と錆汁)

③凍害

寒冷地においては,凍結融解作用を繰り返し受けることによって,コンクリート床版の上面にスケ

ーリングが確認されている.積雪寒冷地域では,春先に大量の雪解け水が舗装の下に流入し,舗装の

ポットホールの発生を助長している現象も見受けられる.このような意味でも床版上面の凍害を抑え

る防水層および排水設備が果たす役割は重要である(図-解2.1.7参照).

図-解2.1.7 床版上面の凍害

④複合劣化,施工不良

コンクリート床版においては,疲労,塩害,凍害,アルカリシリカ反応および中性化などが複合的

に作用して劣化する場合がある.複合劣化においては,水が存在する場合に劣化が促進されることが

明らかになっている.このため,床版防水システムの構築は,劣化の進行速度を低減する上で極めて

有効である.

また,コンクリート床版の施工不良に起因する上側鉄筋のかぶり不足や床版下面に見られる豆板な

どは,疲労,塩害,凍害,アルカリシリカ反応および中性化などと同時に発生した場合,その劣化は

深刻なものになりやすい.これも広義の複合劣化と判断され,適切な対策をとる必要がある.通常こ

のような場合には,増厚や断面修復等により施工不良箇所を早期に補修した上で,床版防水システム

を構築する必要がある.

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(3)PC構造物は,PC鋼材の緊張によるプレストレスの導入とコンクリートの圧縮強度に依存しているこ

とから,PC鋼材が破断した場合コンクリートに導入されていたプレストレスが喪失し,著しく耐荷性能

が低下する.万が一変状した場合においては,プレストレスが導入されていることから,断面を除去・

修復することで内部応力分布に影響を与えるため容易ではない.また,PC構造は大規模な構造物に適用

させることも多く,撤去・交換などの措置が容易に行えない.

したがって,PC橋は PC部材を変状させることのないよう適切な床版防水システムの構築が重要となる.

過去に建設された PC 橋には,床版部分に PC 上縁定着部を有する形式もあり,このような上縁定着部

を有する形式は,床版面からの漏水により,PC鋼材の変状が危惧されるため,特に床版防水システムの

構築が必要となる(図-解 2.1.8).

図-解 2.1.8 上縁定着部

PC橋の床版端部は,床版面と地覆・壁高欄との施工継ぎ目より漏水することがあり,床版横締め部や横

桁横締め部等の変状が危惧されるため,床版端部の床版防水層の立上げ処理が重要となる(図-解 2.1.10).

図-解 2.1.9 横締めへの影響

近年,少数 I 桁橋などの新形式橋梁の採用が広がっている.このような形式は,PC 床版を用いて床版

支持間隔を大きくすることにより,主桁本数を少なくし,横桁・横構などを単純化または省略して合理化

を図った構造であり,床版部分を PC 構造とすることで構造系が成り立っていることから,床版面からの

漏水による床版部分の変状は,橋梁全体系に影響を及ぼす可能性もあることから,特に床版防水システム

の構築が必要となる(図-解 2.1.10).

図-解 2.1.10鋼橋 PC床版

11,400

10,500450 450

2,0

00

1,9501,950 3@2,700=8,100

アスファルト舗装 80

鉄筋コンクリート床版 240

1,1400

1,0500450 450

アスファルト舗装 80

PC床版

2,7

00

2,7002,700 6,400

松井(解説追記)

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2.2 床版防水システムの役割

(1)床版防水システムは,床版,床版防水層,舗装,排水設備が一体となって機能し,水等の劣化因子

を床版コンクリート面に到達させないこと,および舗装上面および床版防水層上面に滞水しないよう速や

かに排水するために設置する.

(2)通行車両の影響などにより,舗装,床版防水層に剥がれ・ずれ等の不具合の発生により道路機能を

阻害してはならない.

(解説)

(1)床版防水システムを構築することにより,雨水や凍結防止剤(以下「水等」という.)の浸入を舗装,

床版防水層によって防ぎ,水等と床版が直接接触することを防ぎコンクリート床版の劣化を抑制する.さ

らに,遮断した水等が舗装,床版防水層の内部に滞水しないよう排水設備によって速やかに排水させるこ

とで,床版防水層からの浸透および舗装の早期劣化を抑制する.

路面の水等は,舗装の本体,舗装の継ぎ目,舗装と地覆等との端部などより浸入し,床版面に到達,舗

装の裏面の空隙を伝って全面的に広がるため,床版防水層は,床版全面および地覆側面の立ち上げ部まで

設置する必要がある.また,床版防水層の上面に水等が滞水することで,舗装の劣化が促進されることか

ら,滞水しやすい端部や床版凹部などには排水設備を設置する必要がある(図-解 2.2.1,図-解 2.2.2).

図-解 2.2.1 路面排水の浸入経路(イメージ)

図-解 2.1.2 床版防水システムの標準断面構成例

舗装の端部 舗装本体

舗装施工継ぎ目

舗装裏面

端部防水層

止水処理

表層

基層(レベリング層)

排水設備 (床版水抜き孔) 床版防水層

縁石の裏面

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(2)床版防水システムは供用環境下において様々な負荷を受ける.これらの負荷によって設計耐用期間

中において機能が損なわれてはならない.そのためには,適切な設計計画,施工が重要である.

図-解 2.1.3 床版防水システムに生じる不具合例(供用後)

(床版と床版防水層との接着不良)

夏期では床板からの水蒸気により舗装(床版防水層)が

持ち上げられ,床版と舗装(床版防水層)がはく離し,

交通荷重によりひび割れ等が生じ,浸水によって舗装が

砂利化しポットホールとなる.

(床版防水層と舗装の接着不良,舗装の裏面間隙)

床版防水層とアスファルト舗装の接着不十分な場合,

防水層とアスファルト舗装に隙間が生じ,この隙間に

アスファルト舗装の施工継ぎ目等から浸入した水が溜

まり,交通荷重によりアスファルト舗装が砂利化し,

ポットホールや局部的なわだち掘れにつながる.

床版上の剥離

床版防水上の剥離

要見直し

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2.3 床版防水システムの構成

床版防水システムは,コンクリート床版,床版防水層,舗装および排水設備から構成される.

(解説)

床版防水システムとは,①コンクリート床版,②床版防水層(端部防水層を含む),③舗装,④排水設

備など,床版を水などから保護するすべての防水機構の総称をいう.排水設備とは,舗装内に滞留する雨

水などを速やかに排水するために設置される排水桝,導水帯,床版水抜き孔などの排水装置の総称をいう

(図-解 2.3.1参照).

図-解 2.3.1 床版防水システムの構成例

① コンクリート床版は,床版防水層の施工基面となる.

② 床版防水層

一般に,下記 a)~d)で構成されるが,材料の種類によっては,a)と b)が同一となるケースや,d)

のないケースも存在する.

a)プライマー層

床版コンクリートの表面をコーティングし,床版防水層との接着効果を高めることや,床版内部

からの水蒸気などの発生を抑制することを目的に設置される.

b)床版と防水材との接着層

床版と防水材との層間に設けられる接着層である.

c)防水材

舗装等より浸入してきた水を床版面まで浸透させないよう止水するために設ける床版防水層の主

要材料である.

d)防水材と舗装との接着層

防水材と舗装との層間に設けられる.

③ 舗装は,一般に基層(レベリング層)および表層の2層から構成され,舗装の全体厚さは60~8

北川さま(図の修正)

端部目地材

①コンクリート床版

③舗装基層

表層

排水桝(下桝)

導水パイプ

床版水抜き孔

排水桝(上桝)

④排水設備

②床版防水層

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0㎜程度が標準である.

舗装は,交通荷重を分散し床版へ伝えると共に,雨水を浸透させず,床版防水層と十分に接着させ

ることが重要である.

④ 排水設備

上記①~④の構造で床版内への水の浸入を防止するが,雨水が舗装の内部に長く滞溜することを

避けることが肝要であり,舗装表面水はもちろん,舗装中に溜まった水を抜くための設備を適切に

配置することを同時に考える必要がある.

a)導水帯

橋面舗装路肩側端部に縦断方向に設けられる溝で,表層を切欠きオープン溝とし通水面が基層上

面の場合と,表層がポーラスアスファルト混合物などの場合は基層を切欠き表層材で充填し通水面

が防水層上面となるクローズ溝がある.

b)排水桝

輪荷重等に対し十分な耐荷力を有し,主に路面排水を基本とするが,側面に排水孔を設ける等に

より床版上や床版防水層上の滞水も処理する排水設備.上桝・下桝の分離構造の場合下桝により舗

装内浸入水を適切に処理することが可能となる.

c)排水桝(上桝)

上桝は,輪荷重等に対し十分な耐荷力を有し,舗装表面水を適切に排水する開口面積を有する橋

面排水装置である.

d)排水桝(下桝)

下桝は,上桝を支持する十分な耐荷力を有し,集水された舗装表面水を床版下面へと集導水し,

下面排水管により流末処理する桝であるとともに,床版上や防水層上面に滞水する雨水等を集導水

する桝でもある.

e)導水パイプ

導水パイプは,舗装端部やひび割れなどの開口部などから浸入した雨水等を,床版上や床版防水

層上への滞水を防ぎ,床版上面で水平方向に集水し排水桝や床版水抜き孔に導水する排水経路であ

り,形状は有孔管・スパイラル管・メッシュ管などで内径は 15 ㎜程度のものが多い,材質は鋼製

や樹脂製の集水導水パイプである.

f)床版水抜き孔

床版水抜き孔は,床版上や床版防水層上の滞水,導水パイプや導水帯によって集水された雨水等

を床版下面に速やかに排水するための,床版を貫通する鉛直方向の排水設備であり,直径が 30~60

㎜程度の鋼製または樹脂製のパイプである.

床版下面での流末処理は,導水管による雨水排水管への接続や専用の排水管を用いて適切に排水

計画として行う必要がある.

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2.4 床版防水層の種類

床版防水層は,形状からシート系,塗膜系,その他に分類される.それぞれの防水層の形状において

も,材料や施工法も多種・多様なものが存在している.使用に際してはその特性を勘案して選択する必

要がある.

(解説)

床版防水層は,シート系,塗膜系,その他の防水層に大別され,保有する性能も材料も異なる.

床版防水層は,シート系床版防水層(流し貼り型,加熱溶着型,常温粘着型),塗膜系床版防水層(ア

スファルト加熱型,ゴム溶剤型,反応樹脂型等)等,様々な種類の防水材が存在しており,一般に下記の

ように分類される(図-解2.4.1参照).

各々の防水層に応じて構成や特性も異なるため,あらかじめ施工方法,施工手順,施工条件などを勘案

したうえで材料の選定を行う必要がある.

図-解 2.4.1 防水材の分類

(1) シート系床版防水層

(2) 塗膜系床版防水層

(3) その他の床版防水層

(4) 防水性能を有する舗装

1) 流し貼り型

2) 加熱溶着型

3) 常温粘着型

1) アスファルト加熱型

2) ゴム溶剤型

3) 反応樹脂型 A ウレタン樹脂系

B エポキシ樹脂系

C アクリル樹脂系

1) 複合防水工法など

1) グースアスファルト舗装など(主に鋼床版)

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第3章 床版防水システムの計画・設計

3.1 床版防水システムの計画・設計一般

床版防水システムは,あらかじめ全体計画を立案したうえで,各工種の設計を実施する.

(解説)

床版防水システムは,床版や排水設備と床版防水層,舗装が一体となって機能することから,各工

種の設計に先立ち,床版防水システム全体の計画を立案する必要がある.

床版防水システムの設計は,床版防水システムの全体計画に沿って床版,排水設備,床版防水層,

床版防水層上の舗装に区分し設計する.床版防水システムの計画・設計フローを下記に示す(図-解

3.1.1).

図-解 3.1.1 床版防水システムの計画・設計フロー

3.2 床版防水システムの計画

3.3 コンクリート床版面の設計

3.4 排水設備の設計

3.5 床版防水層の設計

3.6 床版防水層上の舗装の設計

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3.2 床版防水システムの計画

(1) 床版防水システムの計画は,床版防水システムの必要性(要求性能)を整理したうえで,床版・

排水設備,床版防水層,床版防水上の舗装の各工種の組み合せを設定する.

(2) 床版防水システムは,構成する床版・床版防水層・舗装・排水設備の各工種が組み合わさって機

能を発揮するため,各工種の役割を理解したうえで,床版防水システムの全体構成を計画する.

(3) 床版防水層および舗装は,施工環境によって品質低下が生じる可能性があるので,工事計画に際

しては,施工要領書等に示された施工環境を満足するよう工程計画する必要がある.

(解説)

(1)床版防水システムの計画に際しては,対象橋梁の道路機能としての役割・重要性,使用される環境

条件,橋梁の構造特性等による維持管理上のリスクの大きさなどを整理したうえで,床版防水システ

ムの必要性を整理する.床版防水システムの構成については,下記に示す「道路の役割」や「維持管

理上のリスク」などを参考に管理者にて整理する.

例えば,道路の役割りが重要,且つ維持管理上のリスクの高い橋梁などでは,床版防水システムの

必要性が高い橋梁であることから,防水性能の高い床版防水層と防水性能の高い舗装との組み合わせ

による床版防水システムを構築するよう計画すると良い(図-解 3.2.1参照).

図-解 3.2.1 床版防水システムの設計方針(例)

床版防水システム

の必要性

床版防水システムの組み合わせ

床版・排水設備 床版防水層 床版防水層上の舗装

高 排水勾配・排水設備

の設置

高機能な床版防水層※1 高耐久・水密性の高い

舗装※3

中 排水勾配・排水設備

の設置

必要 低限の性能を有す

る床版防水層※2

高耐久・水密性の高い

舗装

低 排水勾配・排水設備

の設置

必要 低限の性能を有す

る床版防水層

必要 低限の性能を

有する舗装※4

※1高機能な床版防水層とは,材料性能,初期性能に加え,耐久性能を有する材料を示す.

※2必要 低限の性能を有する床版防水層とは,材料性能および初期性能を有する材料を示す.

※3高耐久な舗装とは,剥離抵抗性に優れた舗装混合物,裏面間隙が生じにくい舗装混合物を示し,水

密性の高い舗装とは,透水係数の低い舗装混合物を示す.

※4必要 低限の性能を有する舗装とは,高耐久性・水密性に対して特段の配慮をしていない舗装を示

す.

1)道路の役割

道路の種類には,道路法上の道路として高速自動車国道,一般国道,都道府県道,市町村道が存在

し,道路法以外の道路として,農業用道路・林道・私道などが存在する(図-解 3.2.2参照).

道路の機能として,主要幹線道路,幹線道路,補助幹線道,その他の道路に区分されるとともに,

国・都道府県等において災害時等における緊急輸送道路として指定されている路線や防災上重要な道

路も存在する.このような幹線道路や緊急輸送道路,防災上重要な道路などについては,道路橋の長

寿命化が求められ,計画的な維持管理の実施によって有事においても安全に通行可能でなければなら

ない.また,交通量の多い道路など利用状況によっても道路の重要性は異なる.

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よって,道路管理者は,道路に求められる役割を理解したうえで床版防水システムを計画する必要

がある.

図-解 3.2.2 床版防水システムの重要性(道路の役割)

2)維持管理上のリスク

道路橋の床版は,車両通行に伴う疲労や冬季の凍結防止剤の散布,寒冷地における凍害など様々な

使用環境によって耐久性が低下し,ポットホールや路面陥没など車両走行に支障をきたす変状が発生

する(図-解 3.2.3参照).

また,プレストレストコンクリート構造など床版の変状(PC鋼材の変状)が橋梁全体の安全性に影

響を及ぼす構造形式も存在する.このように,床版は道路橋にとって非常に重要な部材の一つである

ことから,橋梁の使用環境や構造特性を整理し,維持管理上のリスクを明確にした上で床版防水シス

テムを計画する必要がある.

図-解 3.2.3 床版防水システムの重要性(維持管理上のリスク)

≪維持管理上のリスク≫(項目例)

≪劣化のリスク≫

(内的要因)

・内在塩による塩害 ・アルカリシリカ反応 (外的要因)

・大型車交通量による床版疲労 ・凍結防止剤散布による塩害 ・飛沫塩による塩害 ・寒冷地における凍害

≪構造特性のリスク≫

(PC構造等)

・鋼橋合成鈑桁 ・鋼橋 PC床版少数主桁 ・PC 構造(上縁定着など) ・PC 床版 (コンクリート片剥落等)

・交差道路の有無など

≪道路の重要性≫(項目例)

(道路の種類)

・高速自動車国道 ・一般国道

・都道府県道 ・市町村道など

(道路の機能)

・緊急輸送道路

・主要幹線道路 など

(利用状況)

・重交通路線

・突発規制が困難など

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(2)床版防水システムは各工種が組み合わさって機能を発揮するため,各工種の役割を理解する必要が

ある.

1)床版に浸透する水の経路

雨水等は,基本的に舗装路面上を伝って排水桝に流下するが,舗装本体,舗装端部や継ぎ目などの

隙間を経路として床版面に到達する.また,舗装裏面に生じた間隙に滞水することで,舗装の早期劣

化も危惧される(図-解 3.2.4).

②端部や施工継ぎ目からの透水経路

図-解 3.2.4 床版に浸透する水の経路

2)床版防水システムを構成する床版防水層上の舗装が有する防水機能

アスファルト舗装は,施工環境,アスファルトの種類,骨材,配合,舗設作業等によって透水係数

にバラツキが生じるとともに,舗装の裏面の空隙の発生頻度も異なることから,アスファルト舗装単

体では十分な防水機能を発揮することはできない.

アスファルト舗装の種類には防水性・止水性を期待したアスファルト混合物が存在しており,材料

設計時にアスファルト混合物本体の透水係数を下げることや,裏面に空隙が生じにくい粒度で配合設

計を実施するなどの対応によって,防水機能を向上させることは可能である.

また,橋梁上の舗装には,橋面舗装用として開発された付着性改善型のポリマー改質アスファルト

Ⅲ型-WFなどを用いることで舗装の耐水性を向上させることが可能である(図-解 3.2.4参照).

舗装裏面

の間隙

水密性に配慮し

ていない舗装

①防水性に配慮しないアスファルト舗装

コンクリート床版 透過した水等がコンクリー

ト床版へ浸透する

舗装裏面の空隙が生じ間隙

部分が滞水

透水係数の高い舗装は舗装

を透過する水も多い

舗装と地覆・壁高欄との境界

部は隙間が生じ透水する

舗装の施工継ぎ目部分は隙

間が生じ易く透水する

コンクリート床版

地覆・壁高欄

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図‐解3.2.4 アスファルト舗装による防水機能の向上

3)床版防水システムを構成する床版防水層が有する防水機能

アスファルト舗装と床版防水層の組み合わせで十分な防水性を確保することが重要となる.例えば,

アスファルト塗膜系の床版防水層の場合,舗装の裏面に発生した間隙を充填する効果があり,防水性

(止水性)を向上させることが可能である.しかしながら,アスファルト混合物の舗装骨材の食い込

みにより防水層に穴が開いてしまい十分な防水性が発揮されない場合もある(図-解 3.2.5).

図-解 3.2.5 アスファルト塗膜防水層の防水機能

床版防水層は施工時や供用時の負荷により,防水機能等の性能が低下する場合があるため,様々な

負荷に対して抵抗性を有する床版防水層を採用することにより,床版への漏水の発生確率を大幅に低

下させることが可能である.また,床版防水層と舗装との接着層にアスファルト系接着層を設けるこ

とで舗装の間隙を充填する効果が期待される(図-解 3.2.6).

図-解 3.2.6 床版防水層が有する防水機能

アスファルト塗膜防水の効果(間隙充填)

コンクリート床版

① 高性能な床版防水層の例

コンクリート床版

舗装接着層により舗装裏面の空

隙を充填(止水効果)

高性能な床版防水層により骨材

の押込みなどによっても破損し

ない

AS 系防水層により舗装裏面の空

隙を充填(止水効果)

骨材の押込みなどによって防水

層が破損(防水性能の低下)

アスファルト塗膜系

防水層

高性能な

床版防水層

②防水性に配慮したアスファルト舗装

コンクリート床版

透水係数を下げることで舗

装の透過する水を低減可能

舗装裏面の空隙が生じ空隙

部分が滞水

コンクリート床版への漏水

する確率は高い

舗装裏面

の空隙

水密性の高い

舗装

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前述2)に示すように,アスファルト舗装の種類や配合を選択することで,床版防水層上の舗装の

防水機能,耐久性を向上させることが可能である.但し,舗装のみでは十分な防水機能を発揮するこ

とはできないため,床版防水層が必須となる.

また,前述3)4)に示すように,床版防水層の中には,舗装骨材の押し込み作用により孔が開い

てしまうことや,床版ひび割れの開閉作用によって破断してしまうなど,施工時,供用時等に受ける

様々な負荷によって損傷してしまうものもある.このため,十分な防水機能を期待する場合には,こ

れらの防水性能等を低下させる負荷に対して損傷させないなどの対策(性能)が必要である.

床版防水層の材料は,想定される負荷に対して様々な保有性能を有しているため,管理者は,あら

かじめ床版防水層に期待する要求性能を明確にし,要求性能に応じた材料を選択するとよい.

(3)床版防水システムの施工のうち,床版防水層および床版防水層上の舗装の施工は施工時の環境によ

る影響を大きく受けるため,施工要領書にしたがって適切に施工する必要がある.ただし,工事実施

期間が冬季や猛暑となるような場合には,施工要領書に記載された施工環境を確保することが不可能

な場合もあるため,工事実施時期を計画する場合には,冬季や猛暑を避け,適切な施工環境が確保で

きる時期に工事計画することも重要である.

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3.3 コンクリート床版面・排水設備の設計

(1)コンクリート床版面・排水設備の設計は,床版面に滞水が生じないようコンクリート床版面の排

水勾配と排水設備との組合せにより,路面および床版防水層上に滞水する水を速やかに排水できる

ように設計する.

(2)コンクリート床版面は,排水勾配を確保したうえで,床版鉄筋かぶり厚さ,壁高欄・地覆の必要

高さ,舗装厚が確保されるよう設計する.

(3)排水設備の設計では,排水設備の種類,配置計画,流末処理について設計する.

(4)排水設備の流末処理は,雨水排水管に接続するなど適切に計画・設計しなければならない.

(解説)

(1)コンクリート床版の設計では,コンクリート床版面上,床版防水層の直上,路面が滞水しないよう,

コンクリート床版面には十分な排水勾配を設け,排水桝または床版水抜き孔へ導水するよう設計する.

コンクリート床版面上の滞水は,床版防水層の施工時の品質低下に繋がり,プライマーの接着不良

やピンホールの発生要因となる.

床版防水層の直上の滞水は,舗設時の品質低下に繋がり,舗装と床版防水層との接着不良や,舗装

合材温度の急激な低下による空隙の発生・付着不良などの発生要因となる.

図-解 3.3.1 床版防水層上の滞水状況

また,供用後に床版防水層の直上が滞水してしまうと,舗装が水浸された状態となり,輪荷重の繰

返し作用によりアスファルトと骨材との剥離を促進させ,床版防水上の舗装の早期劣化の発生要因と

なる.

したがって,舗装の早期劣化の抑制や耐久性を向上させるためには,床版防水層上を滞水させない

こと,速やかに排出させることが重要となる(図-解 3.3.2).

排水設備は,舗装の劣化を抑制することのみならず,万一,防水層が防水性能を保持できなくなっ

た場合においても,雨水などを速やかに排水することにより,コンクリート床版の延命化に寄与する.

図-解 3.3.2 床版防水層と床版排水の設計(概念図)

床版排水の設計

端部からの浸水

舗装路面からの浸水

床版防水層の設計

床版防水層面での滞水

舗装継ぎ目からの浸水

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(2)コンクリート床版面の仕上がりは,床版上面を滞水させないよう排水勾配を確保するとともに,コ

ンクリート床版の鋼材の設計かぶり,防護柵の必要高さ,設計舗装厚さを確保するよう設計する.

特に伸縮装置などの端部については,床版の仕上がり高さの管理が困難であることから,必要に応

じて縦断修正などを検討するとよい(図-解 3.3.2).

図-解 3.3.3 コンクリート床版面の仕上り管理の留意点

(3)排水設備は一般的に,排水桝,床版水抜き孔,導水帯,導水パイプ,端部止水処理にて構成される.

各排水設備の機能を理解したうえで適切に設計する.

1) 排水桝

排水桝は,舗装面の雨水等および床版防水層上の滞溜水を排水するための排水設備である.排水桝は,上

面を舗装路面高さに合わせて設置し,床版高さよりも位置に呑み口を設置する.また,排水桝と床版との

境界部から漏水することが懸念されるため境界部は床版防水層を被せて防水する(図-解3.3.4).図-解

3.3.4(a)は下桝と上桝に区分された2層構造の桝であり,上桝の高さを舗装路面に合わせて調整できるほ

か,下桝の呑み口で床版上面の集水をするものである.図-解3.3.4(b)は積雪寒冷地で採用されている排水

桝であり,断面の大きな排水孔と目詰まりを抑制するための排水溝の設置による排水能力の強化,および,

鉄筋取付け用リブの設置による定着用鉄筋を介した排水桝と床版の一体性の向上が図られている.

図-解 3.3.4(a) 排水桝部の処理(2層構造の桝の例)

防護柵の必要高さ

設計舗装厚

設計かぶり

コンクリート床版上面の排水勾配

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(ⅰ) 事例 1

(ⅱ) 事例 2

図-解 3.3.4(b) 積雪寒冷地用排水桝とその特徴

2)床版水抜き孔

床版水抜き孔は,床版防水層の直上の滞水を排水するために設置する.従って,床版水抜き孔の

呑み口は周辺の床版高さよりも低くなるよう設置する.また,床版水抜き孔の呑み口は舗装等によ

り詰まらないように目詰まり防止処置を講じるとよい(図-解 3.3.5参照).

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図-解 3.3.5 床版水抜き孔の処理(例)

床版の施工後に床版の凹凸などが生じた場合には,滞水しないよう排水設計の修正を行い,必要に

応じて床版水抜き孔を追加設置するなどの措置を講じる必要がある.

床版水抜き孔の追加設置する場合には,既設コンクリートの削孔作業によって既設のPC鋼材や鉄

筋を切断しないよう,電磁波レーダ法などの非破壊試験方法により十分に調査し,位置確認後,削孔

作業を行う必要がある.特に桁端部など,伸縮装置などの補強鉄筋が錯綜している箇所や,PCケー

ブルなどを有する床版の削孔に際しては留意する必要がある.

3) 導水帯,導水パイプ

導水帯は,舗装路面の排水を促すことを目的に設置する.舗装の表層端部に溝を設けた構造が一般

的であるが,ポーラスアスファルト舗装により溝部分を充填した構造もある(図-解 3.3.6参照).な

お,歩道部や路肩部などでは,歩行者や軽車両の走行の妨げになる恐れがあるため注意が必要である.

導水パイプは,基層体に埋没されることから,清掃などの維持管理が困難である.

図-解 3.3.6 導水帯,導水パイプの処理(例)

横断勾配

表層

レベリング層

導水帯70㎜程度

基層

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4)端部止水処理

舗装と地覆,壁高欄などとの境界部は,十分な止水性を確保することが困難であり,漏水により床版

および舗装の劣化を促進することとなる.

端部止水処理は,境界部の止水性向上を目的に構造物と舗装との境界部に注入目地などによる止水処

理を施すものである(図-解 3.3.7参照).

①表層部分での止水処理の例 ②基層部分での止水処理の例

図-解 3.3.7 端部止水処理(例)

5)排水桝と床版水抜き孔の設置間隔の例

排水桝の設置間隔は,路面の集水面積による排水計算によって設計することが一般的ではあるが,排

水勾配が緩やかな場合などでは,設置間隔を密に設計する場合もある.

図-解 3.3.8 排水設備の設置例

表-解 3.3.1 床版水抜き孔の設置間隔の例

縦断勾配 設置間隔(m)

1%以下 5

1%を超える場合 10

6)サグ区間の排水設備の設置の目安

特に,サグ部やクレスト部分などでは合成勾配が緩く,現場施工時に適切な排水勾配が確保されな

い場合があることから,排水桝や床版水抜き孔の間隔を密にするなど設計段階より配慮する.

目地材

表層(ポーラス混合物)

基層(レベリング層)目地材

表層(密粒度混合物)

基層(レベリング層)

導水パイプ

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図-解 3.3.9 サグ部での配置例

7)分岐部付近での排水設備の設置例

分岐部などの横断勾配が反転する箇所では滞水が想定されることから,排水設備を密に配置する.分

岐部は線形条件を十分考慮し設置箇所を検討する.

図-解 3.3.10 分岐部付近の配置例

8)幅員変化部の設置例

非常駐車帯の拡幅部や交差点と隣接する橋梁上の歩道隅切り部等は,合成勾配により滞水箇所が生じ

るおそれがあることから路面の高低差に十分留意して排水設備の設置を検討する.

図-解 3.3.11 拡幅部の配置例 図-解 3.3.12 歩道隅切り部の配置例

9)伸縮装置上流部に設置する床版水抜き孔

縦断勾配の も低い伸縮装置の手前付近や,線形の凹部などの滞水しやすい部分は,適宜,排水桝や

床版水抜き孔を設け,防水層の上面に滞水させないように計画する.床版水抜き孔の設置間隔などは,

縦断・横断勾配など排水勾配の形状などに応じて計画する.

取付側交差道路の横断勾配

歩道勾配

車道勾配

橋梁区間

合成勾配

歩道隅切り(切下げ)

縦断勾配

横断勾配 合成勾配

拡幅部

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①床版水抜き孔(平面図)

②床版水抜き孔(側面図) ③床版水抜き孔(配置図)

図-解 3.3.13 床版水抜き孔設置(例)

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(4)排水設備により集水した水は,床版下面などから垂れ流しすると,下床版や桁部材などに飛散し,

予期せぬ変状へ発展することが危惧されることから,既設の床版下面等に設置される雨水排水管など

に接続するなどし,適切に流末処理する必要がある.

なお,垂れ流し水が桁や下部構造などの部材に飛散する可能性がない場合や,民家等への飛散など

の第三者への影響などが考えられない場合などに限って垂れ流し構造も可能である.

①導水管により流末へ流水 ②導水管により排水管へ接続

図-解 3.3.14 導水管による流末処理(例)

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≪参考≫ 床版防水システムの先進地域である欧州では,細部にまでこだわった排水計画がなされている.欧州に

おける排水計画の事例を紹介する.

コンクリート表面の平坦性は, 保護層によって調整する.調整する高さが保護層 1 層の限界厚さを超え

ている場合は, 保護層の上にレベル調整層を設ける(図-解 3.3.15 参照)このような調整により保護層+

表層の全厚が限界厚さを超える場合には, コンクリート表面の高さ調整をコンクリート補修材料で行うか,

もしくはコンクリート表面を削ることで調整される場合もある.

図-解3.3.15 ドイツにおける床版不陸に対する措置事例5)

舗装の転圧が困難な端部についてはグースアスファルトで設計されており,地覆との境界部分には注入

目地を設ける仕様となっている.また,地覆前面に水が集中しないように床版の横断勾配を逆勾配として

いる.(図-解 3.3.16参照)

図-解3.3.16 ドイツにおける端部構造,排水枡周辺構造の事例5)

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- 33 -

スイスでは,床版の出来形に応じて床版水抜き孔を設置しており,床版のいたる所に排水管との接続パイプが

確認される.

また,水抜き孔と床版との境界部は防水層によってシームレスに施工されている.

図-解3.3.17 スイスにおける床版水抜き孔の設置事例

【第 4 章 参考文献】

1)(社)日本道路協会:道路構造令の解説と運用,2004.2

2)(社)日本道路協会:道路橋示方書・同解説,2002.3

3)(社)日本道路協会:道路橋床版防水便覧,2007.3

4) 東・中・西日本高速道路㈱;設計要領第二集(橋梁建設編,橋梁保全編)2011.7

5) 高速道路総合技術研究所:欧州床版防水システム調査報告書,2009.5

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- 34 -

3.4 床版防水層の設計

(1)床版防水層の設計では,床版防水層の設置範囲,床版防水層の材料選定,コンクリート床版面の

下地処理の設計を行う.

(2)床版防水システムは,車道・歩道を含む床版全面を対象に設計する.

(3)コンクリート床版面には,床版防水層の接着性能を発揮させるための下地処理を実施する.

(4)床版防水層は,床版防水システムの計画時に設定した組合せに適合する材料を選定する.

(解説)

(1)床版防水層の設計では,計画段階において設定した床版防水システムの組み合わせに見合った床版

防水層の材料を選定するとともに,選定した床版防水層とコンクリート床版が適切に接着するための

コンクリート床版面の下地処理について設計することとした.床版防水層には様々な材質・製品が存

在し,コンクリートとの接着機構も異なることから,選定した床版防水層に見合ったコンクリート床

版面を構築することが重要となる.

(2)床版防水システムの施工範囲については,直接的に車両走行の影響を受ける車道部全面を対象とす

るほか,歩道部や地覆・壁高欄部分においても水の浸入対策を怠った場合,車道部や床版下面へ流れ

出し塩害等の変状を引き起こすことから,歩道部,地覆・壁高欄部も対象として計画する(図-解 3.4.1,

3.4.2).

図-解 3.4.1 車道部の床版防水層の施工範囲例

図-解 3.4.2 車道部・歩道部の床版防水層の施工範囲例

表層(密粒度混合物)

基層(レベリング) 目地材

床版防水層 排水設備

表層(密粒度混合物)

基層(レベリング)

目地材

床版防水層 排水設備

目地材 目地材 歩道部

表層(密粒度混合物)

基層(レベリング)

目地材

床版防水層 排水設備

目地材 目地材 歩道部

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- 35 -

フロリダ壁高欄に発生する収縮ひび割れや,支点上に生じる負曲げひび割れを通じて張出床版下面に漏

水し,床版下面で塩害によるはく落などを引き起こすこともあるため床版端部の立上げ部にも防水処理を

施すとよい.

図-解 3.4.3 フロリダ型壁高欄の端部防水の例

図-解 3.4.4 端部ルーフィングによる端部防水の例

図-解 3.4.5 縁石全面を防水処理した例

表層(密粒度混合物)

基層(レベリング層)

端部ルーフィング処理

端部防水のフーフィング詳細図

表層(密粒度混合物)

基層(レベリング層)

端部ルーフィング処理

表層(密粒度混合物)

基層(レベリング層)

止水処理

保護塗装等

導水帯

保護塗装等

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- 36 -

(3)下地処理では,床版面のレイタンスの除去,付着物等の除去,軽微な段差等の除去を実施する.

床版面の下地処理に用いる研掃機械は,ダイヤモンド小型研掃機,もしくはスチールショットブラ

ストを用いるとよい.機種の選定に際しては,対象施工面積や研掃対象物の状況などより選定すると

よい.表-解 3.4.1に各種研掃機械の施工能力の目安を示す.

表-解 3.4.1 コンクリート床版面の研掃機械の施工能力

研掃機械 施工規模 床版 作業能力

(m2/時間・台)一般部 狭隘部

小型電動工具(人力作業) 特小規模 × ○ ○

ダイヤモンド小型研掃装置 小・中規模 ◎ × 30~40

スチールショットブラスト 大規模 ◎ × 100

※スチールショットブラストの投射密度は50kg/㎡の施工能力を示す.

コンクリート床版面に生じたレイタンスは耐久性を有していないことから,初期の接着強度が確保

されたとしても,レイタンス層の経年劣化により接着阻害が生じるものと考えられることから,下地

処理によってレイタンスを適切に除去するよう設計する.レイタンス層が厚く,ダイヤモンド研掃装

置での除去が困難な場合は,スチールショットブラストやウォータージェットにより除去するとよい.

また,コンクリート床版面には,被膜養生剤,不陸調整材(樹脂モルタルなど),タイヤ痕,土砂・

粉じん,仮舗装除去後のアスファルト油分などが付着している場合ある.これらの付着物等は,床版

防水層のプライマーの浸透を阻害することや,樹脂材料の相性によりプライマーの硬化不良が生じる

などの不具合が発生する可能性があるため,床版防水層の施工に先立ち,下地処理によって適切に除

去するよう設計する.

なお,浸透系コンクリート養生剤や表面含浸材などの浸透系塗布剤が塗布されている場合において

は,コンクリート内部まで浸透している場合があるため,プライマーに悪影響を及ぼさない範囲まで

研掃する必要がある.この場合は,ダイヤモンド研掃装置によって除去することが困難な場合が多い

ことからスチールショットブラストにより除去するとよい.なお、膜養生材の除去はスチールショッ

トブラストの場合には,投射密度150kg/m2程度で研掃する必要がある.

床版防水層の施工に先立ち,床版面にひび割れやジャンカ,段差等の変状がある場合には,適切に

補修を実施する.また,床版工事において補修がなされている場合においては,補修記録を確認し,

補修材料とプライマーとの接着性を確認する必要がある.

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(4)床版防水層の材料は,様々な種類が存在し,製品によって保有する性能も異なることから,設計条

件などを勘案し,床版防水層に求める要求性能を設定したうえで, 適な床版防水層を選定するとよ

い.なお,要求性能の設定方法および性能照査方法等については,「付録 4」,および「道路橋床版防

水便覧(道路協会)」を参考にするとよい.

表-解 3.4.2 床版防水層のカテゴリー(参考)

区分 内 容

カテゴリー1 材料性能,初期性能および一般的な耐久性能に加え,重交通路線,寒冷地域にお

ける耐久性能を求めた床版防水層

カテゴリー2 材料性能,初期性能および一般的な耐久性能に加え,重交通路線における耐久性

能を求めた床版防水層

カテゴリー3 材料性能,初期性能および一般的な耐久性能に加え,寒冷地域における耐久性能

を求めた床版防水層

カテゴリー4 材料性能,初期性能および一般的な耐久性能を求めた床版防水層

カテゴリー5 材料性能,初期性能を求めた床版防水層

表-解 3.4.3 床版防水層の要求性能(参考)

性能種別 要求性能 カテゴリー

1 2 3 4 5

必要 低限の

性能を有する

床版防水層

材料性能 ① 防水材料の品質安定性 ○ ○ ○ ○ ○

② 防水材料の環境安全性 ○ ○ ○ ○ ○

初期性能

③ 下地と防水層の接着性 ○ ○ ○ ○ ○

④ 施工性 ○ ○ ○ ○ ○

⑤ 膨れ抵抗性 ○ ○ ○ ○ -

⑥ はがれ抵抗性 ○ ○ ○ ○ -

⑦ 局部変形性 ○ ○ ○ ○ -

⑧ 舗装後の防水性 ○ ○ ○ ○ ○

⑨ 舗装後の接着性・せん断抵抗性 ○ ○ ○ ○ ○

⑩ 水浸後の接着性 ○ ○ ○ ○ ○

高機能な床版防水層 耐久性能

⑪ 温度変化および薬品負荷抵抗性

(耐塩水性、耐アルカリ性を含む) ○ ○ ○ ○ -

⑫ 輪荷重繰返し負荷抵抗性 ○ ○ ○ ○ -

⑬ ひび割れ開閉負荷抵抗性 ○ ○ - - -

⑭ 凍結融解負荷抵抗性 ○ - ○ - -

⑮ 繰返しせん断負荷抵抗性 ○ ○ - - -

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3.5 床版防水層上の舗装の設計

(1) 床版防水層上の舗装は,既定の舗装厚を確保する.

(2) 床版防水層上の舗装の基層部分のアスファルト混合物は,はく離抵抗性の高い材料を用いると

共に基層裏面に間隙群が生じにくい配合で設計するとよい.

(解説)

(1)床版防水層上の舗装の厚さは,舗装と防水層との界面に生じるせん断応力に大きく寄与することか

ら,舗装厚が著しく薄くなることのないよう留意する必要がある.舗装厚は,どのような交通条件に

おいても6~8cmを標準としている(舗装設計便覧:日本道路協会).また,コンクリート床版の水蒸

気の影響により発生するブリスタリングは一般的に 50 ㎜程度の舗装が敷設されることで膨れを抑え

ることが可能といわれており,舗装厚の管理は重要である.(参考文献)舗装技術の質疑応答,第 7

巻,1997.

また,コンクリート床版面の仕上り高さから基層(レベリング層)の 低厚さ(アスファルト混合

物の 大粒径の2.5倍以上)を確保できない場合は,縦断線形を変更し舗装厚を確保する必要がある.

(2)床版防水層上の舗装は,床版防水層で遮断された水により水浸し,輪荷重の影響ではく離・脆弱化,

床版防水層とのはく離が生じることから,床版防水層上のアスファルト混合物は,はく離抵抗性,水

密性に優れ,且つ舗設後の舗装裏面に間隙が生じにくい配合で設計することで耐水性が向上する.

(水密性の向上)

水密性に優れた混合物を使用することで,舗装体に水が入らないようにすることは,舗装の耐久性

向上に寄与する.

アスファルト混合物では,水密性の評価に加圧透水試験による透水係数を用い,1.0×10-7cm/s 以

下を不透水としている.なお,首都高速(舗装設計施工要領)では,基層に使用する密粒度アスファ

ルト混合物(13)の透水係数の品質規格として,締固め度 96%以下で作製された供試体で 1×10-5cm/s

以下としている.NEXCO では,橋梁レべリング層用混合物の透水係数を 1.0×10-7cm/s 以下を基準値

としている.

また,アスファルト混合物の空隙率と透水係数には,高い相関があるので,空隙率を低めに設定す

るなどの検討をすると良い.

(はく離抵抗性の向上)

舗装体,舗装裏面に水が浸透した場合,輪荷重の影響等によりアスファルトと骨材がはく離・分離

してしまい,舗装体の早期劣化に繋がる.このことから,床版防水層上の舗装混合物については,は

舗装裏面

の間隙

図-解 3.5.1 アスファルト舗装の耐水性向上

コンクリート床版

・密実な混合物により舗装体

に水を入れない

・水が入ってもアスファルト

と骨材をはく離し難い材料

を選定する

舗装裏面の間隙が生じにく

い配合を選定する

◎⼩関さま(再考)

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く離抵抗性を高めることが耐久性向上に大きく寄与する.

特に,防水性能の高い床版防水層上の舗装などにおいては,橋面舗装用として開発された接着性改

善型の改質アスファルト(ポリマー改質アスファルトⅢ型-W)などを採用すると良い.

また,はく離抵抗性の低い骨材を採用する舗装などでは,はく離防止材を添加するなどの対応も有

効である.(参考文献)アスファルト混合物のはく離,アスファルト,No.169,1991.

通常,はく離抵抗性の評価には,粗骨材の静的はく離試験や締固め度100%で作製された供試体によ

る水浸ホイールトラッキング試験などが行われるが,首都高速(舗装設計施工要領)では,締固め度

96%以下で作製された供試体で冠水式ホイールトラッキング試験が行われる.表層にポーラス舗装を

用いる場合,基層混合物のはく離抵抗性は,非常に重要である.

(舗装裏面間隙の低減)

基層の敷均し時には,施工時の外気温や床版温度の低下などに起因し,締固め不十分となり易く,

舗装の裏面に間隙が生じることがある.この間隙群は水の滞留空間となり,輪荷重の影響を受け基層

混合物の土砂化を助長するため,基層の配合設計時には裏面に間隙群が生じにくい粒度分布で配合設

計すると良い.(参考文献)土木学会論文集 E1(舗装工学),Vol.69,No.3(舗装工学論文集 第 18

巻),I_87-I_94,2013.

例えば,下図はアスファルト混合物の裏面の写真とそれをスタンプしたものを示している.スタン

プの状況を見るとSMAの裏面は点で接しているのに対して,密粒度混合物は面で接しており,間隙が

少ないことがわかる.

図-解 3.5.2 アスファルト混合物の裏面の例(上:SMA,下:密粒度)

(その他)

中温化合材を基層に用いる場合には,床版防水層との接着不良が生じる可能性があることから,あ

らかじめ床版防水層との接着確認試験等を実施し,不具合等の生じないことを確認する必要がある.

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第4章 床版防水システムの施工・施工管理・検査

4.1 床版防水システムの施工一般

(1)床版防水システムは、床版・排水設備、床版防水層および床版防水層上の舗装が一体となっては

じめて防水機能を発揮するので、各工種の施工に際しては、それぞれの設計事項を充分に理解する

とともに,他の工種の設計事項も理解し,防水性能の低下を招かないよう入念に施工する。

(2)床版防水システムの施工に際しては,各工種の材料・施工方法・施工管理方法等が記載された施

工計画書を作成するとともに,床版防水システムの材料・施工等に関する十分な知識を有する技術

者を配置する.

(3)床版防水システムは,橋梁上部工,防水工および舗装工に施工が分業されて行われるため,各工

種間のコミュニケーションを十分に取り,成果物の品質向上に努める.

(4)床版防水システムの工事終了後は, 施工が適切に実施されたことや維持管理のために必要な事項

を工事記録として記録する.

(解説)

(1)床版防水システムは、床版や排水設備と床版防水層、舗装が一体となって機能することから、各工

種の施工に際して作業員は自分が実施する施工だけではなく,他の工種の設計・施工条件も理解したう

えで、設計にしたがい入念に施工する必要がある。特に構造物の管理者は各工種の施工結果が供用後の

耐久性に大きな影響を及ぼすことを認識し,監督する必要がある.

床版防水システムの施工フローを図-解 4.1.1に示す.

図-解 4.1.1 床版防水システムの施工フロー

4.2 床版・排水設備の施工

4.3 床版防水層の施工

4.4 床版防水層上の舗装の施工

4.3.1 事前調査

4.3.2 下地処理(研掃)

4.3.3 床版防水層の施工

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(2)床版防水システムの施工計画書の作成に際しては,それぞれの施工条件を勘案するとともに,床

版防水システムの設計事項を反映させる必要がある.

施工計画書は,施工業者が工事ごとに作成するもので,従事する工種ごとにコンクリート床版工,

床版防水層工,床版防水層上の舗装工に区分し作成する.なお,床版防水層の施工計画書の作成にあ

たっては,床版防水層の製造業者が作成した施工要領書に記載された施工条件等を十分に理解したう

えで作成する.

また,床版防水層および床版防水層上の舗装の施工については,天気の急変や施工機械の故障など

当日の現場条件の変化によって品質が大きく低下することもあるため,あらかじめ施工中に想定され

る事象に対する対応策を検討し,施工計画に記述することが重要である.

施工計画書は,それぞれの現場における施工条件を考慮して作成されたものであるので,事前に施

工関係者に周知するとともに,いつでも見ることができるように常に現場に配置する.

床版防水システムの施工に際しては,現場の天候や施工条件の急な変更などにも適切に対応できる

よう十分な知識と経験を有している技術者を現場に配置する.

(3)床版防水システムは,橋梁上部工,防水工および舗装工に施工が分業されて行われ,請負業者も

変わる.したがって各工種間での申し送り(情報共有)が十分にできない可能性がある.したがって

(4)で記載する各工種での施工記録を正確に残すころが重要である.また構造物の管理者は各工種

の施工状況等の重要,特記事項があれば,後の工程へ確実に点達する必要がある.

(4)防水層,舗装は湿度や気温などの気象条件によって施工時の品質が大きく変化する.舗装や防水層

も瑕疵の対象であるので,施工が適切に行われたことを工事記録によって示す必要がある.また,使

用材料の種類や施工継目の位置などは補修の場合に重要な情報であるので,記録し残しておく.さら

に,維持管理段階において発生する種々の事象の原因を解明するためにも施工時の記録は非常に重要

である.

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4.2 床版・排水設備の施工・施工管理・検査

(1)床版面の仕上がり高さは,設計舗装厚が確保できる高さで仕上げるとともに,設計どおりの排水

勾配が確保されるよう入念に仕上げる.

(2)床版,地覆・壁高欄などにジャンカ,ひび割れ等の初期欠陥が生じないよう施工する.

(3)床版の施工に先立ち,排水計画を十分に把握したうえで排水設備を設置する.

(4)コンクリート床版面は,床版防水層と接着する下地面であることから,接着阻害を生じさせない

ようコンクリート床版面を計画・設計する.なお,浸透系のコンクリート養生剤,表面含浸材は床

版防水層の接着性能を低下させることから使用してはならない.

(5)施工管理・検査については,施工計画書,施工要領書および発注図書等に基づいて実施する.

(解説)

(1)コンクリート床版の仕上り高さは舗装厚に大きく影響することから,設計舗装厚が確保できるよう

配慮する.また,伸縮装置付近は高さ調整が困難となり,適切な高さ確保がなされない場合が多いこと

から特に入念に監理する必要がある.

コンクリート床版面の大きな凹凸などは滞水の原因となることから,排水勾配を確保し適切に排水で

きるよう入念に仕上げる必要がある.また,排水計画時に床版水抜き孔などを設置する箇所については

床版面の仕上げ時には水勾配に注意し入念に仕上げる.

(2)床版や地覆・壁高欄部に生じたひび割れやジャンカ等の初期欠陥は,床版の耐久性を低下させると

ともに,床版防水層へも悪影響を与えることから,初期欠陥が生じないよう入念に施工する必要がある.

また,やむを得ず初期欠陥が発生した場合には,適切に補修しなければならない.また,補修計画に

際しては,床版防水層との材料の相性等を事前に確認する必要がある.

(3)雨水等の床版上面の滞水対策としては,床版水抜き孔等の排水設備を設置することにより舗装の

内部排水をはかることが も効果的であり,導水パイプは,床版水抜き孔が設置できないときなどに

適用を検討する.

1)施工前の確認

排水設備には,排水桝,導水パイプ,導水帯,床版の水抜き孔などの排水資材と,成型目地材,注

入目地材などの目地材がある.これらが適切に配置されていることを確認する.

2)施工時の留意点

① 導水帯の施工時に転圧が不十分な場合,供用後の輪荷重等によって導水帯直上の表層が沈下す

ることがあるため,施工に十分注意する必要がある.

② 床版水抜き孔は,床版上や床版防水層上に浸透した水や導水パイプや導水帯によって集水され

た水を床版下面に排水するための排水設備で床版内を貫通する鉛直方向の排水設備である.床

版下面での流末処理は,雨水配水管等に接続するなど適切に行う必要がある.

③ 勾配変更点など設計で予期できない水溜りができる箇所には,発注者と協議を行い,追加の床

版水抜き孔を設置する.設置においては,図面での確認やコンクリート床版の鉄筋探査により,

PC 鋼材や鉄筋の無いことを確認し削孔する.また,床版下面の流末処理については,雨水排

水管等に接続し,排水が下部構造物に垂れ流れないように配慮する.

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(4)コンクリート床版面と床版防水層は適切に接着することで性能が発揮されることから,接着阻害が

生じないよう設計段階から配慮する.

接着阻害が懸念される事象として下記が挙げられることからこのような事象が生じないよう設計す

る.

1) コンクリート養生剤

浸透系養生剤は,下地処理により除去することができないため,使用してはならない.

被膜系養生剤は,被膜層が床版防水層のプライマーの含浸性・接着性を低下させることから下地処

理にて適切に除去するよう計画する.

前述のように,コンクリート養生剤は床版防水層の接着性能に大きく影響を与えることから,使用

した材料の種類,製品名等については記録し,床版防水層の設計に反映させる.

2) 表面含浸材(シラン系,ケイ酸塩系)の施工による接着阻害

建設現場によっては,床版コンクリートの施工後,床版防水層を設置するまでにある程度の期間を

要する場合があり,このような場合,床版面の劣化を抑制するために表面含浸材を塗布することがあ

るが,表面含浸材の材料と床版防水層のプライマーとの相性によっては接着阻害が生じる場合がある

ことから,表面含浸材を塗布した場合には,床版防水層施工前に表面含浸材を除去する必要がある.

3) ジャンカや段差の補修

ジャンカや段差は床版防水層の均質な施工を阻害することや供用後の弱点となる可能性が大きい

ので,セメント系のモルタルや,樹脂系のモルタルなどを用いて床版面が平滑となるように仕上げ

る.補修材によっては,薄層施工や仕上がりがフェザーエッジとなった場合に所定の性能・耐久性

を発揮しない場合があるので,補修材料の選択や補修形状の検討の際には,このことに留意する必

要がある.

4) 不陸調整材による補修(床版上面の均し補修)

3)とも共通するが,不陸調整材にはセメント系のモルタルや,樹脂系のモルタルなどがあり,

れぞれ特徴がある.また床版上面で用いられるので,床版防水層との相性や供用後の走行車両に

よる耐荷重性能や疲労耐久性が求められる.したがって,補修材料の選択に当たってはこれらを十

分に考慮する必要がある. 近では床版防水層の施工に先たち実施される損傷した床版上面の補修材

料に関しての検討例(論文,研究報告書等)が増えてきているので,これらも参考とするとよい.

(5)床版・排水設備の施工管理・検査時の留意点について下記に示す.

①床版の仕上がり高さの確認

・床版全面において設計舗装厚が確保できること

・舗設後,防護柵の必要高さが確保できること

②床版上面の排水状況の確認

・排水勾配が確保されており,滞水が生じないこと

・水が溜まらない様,適切に排水設備が設置されていること

・伸縮装置近傍など,滞水し易い狭隘部に床版水抜き孔等が設置されていること

・各排水設備の呑口高さが床版面よりも低く,適切に排水できること

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- 44 -

③床版コンクリートの不具合の確認

・床版面の段差,凹凸不陸,床版部分のひび割れ等が補修されていること

・壁高欄部分のひび割れ,ジャンカ・豆板が補修されていること

・浸透系コンクリート養生剤やコンクリート含浸剤などのプライマーの接着を阻害する処理が施され

ていないこと

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4.3 床版防水層の施工

4.3.1 事前調査

(1)排水勾配や排水設備が適切に機能し,床版全面において滞水個所が無いことを確認する.

(2)床版防水層の性能に影響を及ぼす恐れのある付着物等の状況を確認する.

(3)使用する床版防水工の施工要領書に沿った施工が可能であることを確認する.

(解説)

(1)床版防水システムの性能を発揮させるためには,滞水個所があってはならないことから,床版の排

水勾配,排水設備が適切に確保・設置され,床版面全面に滞水箇所が生じていないことを確認する必

要がある.特に下記については現地において入念に確認する必要がある.

・床版端部に床版水抜き孔等が適切に設置され,滞水箇所がないこと

・排水桝の高さ管理がなされ,排水桝廻りに滞水箇所がないこと

・排水勾配の も低くなる箇所には床版水抜き孔が設けられ,滞水箇所がないこと

(2)事前調査では,床版全面において目視調査および床版施工者が記録した補修履歴等を参考にコンク

リート床版面に付着物等,床版防水層の性能を低下させる事象が無いことを確認する.性能低下が危

惧される現象が確認された場合には,下地処理等により適切に措置する必要がある.

床版防水層の性能を低下させる事象として,下記が挙げられる.

1)初期欠陥 ひび割れ,ジャンカ

事前調査により,初期欠陥 ひび割れ,ジャンカが発見された箇所は補修する必要があるため,発

生箇所,状況等の記録および写真を撮影し,補修方法を決定するとよい.

2)レイタンス

レイタンスが残存すると,プライマー含浸阻害によるプライマー付着性の低下やレイタンス層の

早期脆弱化が懸念される.そのため,事前調査では,レイタンスが適切に除去されているか,確認する

必要がある.なお,スチールショットブラストによるレイタンス除去後の床版面にエアーだまり等の

穴が残存することがある.その場合には,プライマー,樹脂モルタル,パテ等による補修を行う必要が

あるので,記録を残す必要がある.

3)タイヤ痕(油,汚れ)

床版面にタイヤ痕が残存すると,プライマーの含浸阻害によるプライマー付着性の低下が懸念さ

れる.そのため,事前調査では,タイヤ痕の残存箇所の記録をとり,下地処理で確実に除去するよう指

示することが重要である.

4)被膜養生剤

被膜養生剤があると,プライマーの含浸阻害によりプライマーの付着性が低下する場合がある.一

方,浸透型被膜養生剤のように被膜養生剤の完全な除去が困難な場合があることや被膜養生剤の種

類が多く床版防水層との相性があると考えられる.そのため,使用された被膜養生剤と床版防水層と

の相性を事前に把握することは重要となる.

5)段差凹凸

床版防水層の施工において許容される段差があり,その度合は床版防水層により異なる.また,許

容される段差は施工要領書に明記されるべき事項と考えられる.そのため,事前調査においては,施

工予定の床版防水層に対し現場での段差が許容されるかどうかを確認する必要がある.

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(3)施工要領書の確認

適切に床版防水層を施工するためには,施工要領書の整備が必須である.施工対象橋梁の施工条件,

環境条件と床版防水層の製造業者が作成する施工要領書の内容を比較検討し,実施工時の留意点を

関係者に周知する必要がある.なお,施工要領書に記載されるべき事項の例は表-解 4.3.2 に示すと

おりである.

表-解 4.3.2施工要領書に記載されるべき事項の例

(出典:NEXCO構造物施工管理要領)

項 目 記 載 内 容

1.工法概要 ・工事を完成するための一連の行為を特定することができる名称,分類

・床版防水を構成する材料の仕様,施工機械

2.施工条件 ・性能を発揮できる施工条件と禁止条件

床版面の仕上り状態,施工勾配,降雨

床版の含水率,舗設前の防水層上面の含水率

防水層施工前または施工中の外気温,床版温度

橋梁レベリング層舗設前の外気温,防水層上面の温度

橋梁レベリング層用アスファルト混合物の種類,舗設時の合材温度

防水層施工後から舗装までの存置期間と留意点

適用できない床版の被膜養生剤の種類(被膜養生剤の主成分等を明記)

適用できない床版の補修材料,あと埋め材料の種類(材料の主成分等を明記)

3.施工手順 ・性能を保証できる床版防水の施工方法(手順フロー)

・各施工過程(準備から舗設作業)における詳細な施工手順と留意事項(混合比

率,養生時間,施工継ぎ目部の重ね合わせ方など詳しく記載)

・夏期・冬季施工,急勾配時における施工方法及び留意点

・施工時の不具合に対する措置方法(具体的に記載)

・施工工程

・1,000m2当りの標準的な床版防水層の施工工程を添付

4.施工管理 ・施工管理項目,管理手法,頻度,管理基準等

5.品質管理 ・品質管理の項目,管理手法,管理頻度,管理値等

・破壊試験後の復旧方法(具体的に記載)

・防水層の各作業工程の完了確認検査方法(具体的に記載)

6.維持管理 ・供用後に発生した損傷の補修方法

ポットホール発生時の緊急,応急補修方法

舗装補修工事等による計画的な補修方法

7.性能照査 ・照査結果の一覧表(照査項目,基準値,試験値,判定)

8.その他事項 ・品質管理等の関連様式

・施工者の指定や教育の方法

・記載内容を担保する社名,組織名または機関名及び氏名など

・試験施工時の記録など

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4.3.2 下地処理

(1)コンクリート床版面の段差や,凹凸不陸,床版部分のひび割れや壁高欄部分の初期ひび割れ,壁

高欄・地覆部のジャンカなど,初期欠陥が生じた場合には適切に補修しなければならない.

(2)コンクリート床版面のレイタンスや接着を阻害する付着物等は, 床版と床版防水層との接着性に

悪影響を及ぼすため, これらの有害物を確実に除去する.

(解説)

(1)コンクリート床版面には,施工ジョイント部などでのひび割れや段差,ジャンカのような粗い面,

床版面の補修箇所など,部分的ではあるが床版防水層の接着性や耐久性に影響を及ぼすことが懸念され

る箇所が存在することがある.このような箇所を発見した際には,発注者と協議を行い適切な対策を施

すことが必要である.

1)ひび割れ箇所,段差・ジャンカのような粗い面の対策

床版面や壁高欄部分に生じたひび割れについては,床版防水層の損傷の原因になることから,ひび

割れ補修材や樹脂プライマー,樹脂モルタルなどにより充填処理する.段差,ジャンカのような粗い

面については樹脂パテや樹脂モルタルなどにより平滑に仕上げる.

なお,注入・充填材料については,床版防水層と十分に付着することを確認したうえで選定する.

図-解 4.3.1 床版のひび割れと段差 図-解 4.3.2 地覆コンクリートのジャンカ

2)床版面に残存する補修箇所の対策

床版コンクリート打設後の不良箇所を補修した材料が残存している場合,使用した補修材によって

は,床版防水層との接着を阻害することがある.このような場合は,補修材をディスクサンダ,ケレ

ン棒などで取り除く必要がある.なお,取り除いた箇所に大きな凹凸ができてしまった場合は,床版

および床版防水層と十分接着する樹脂モルタルなどで平滑にする.

図-解 4.3.3 床版コンクリートの補修跡

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(2)コンクリート床版と床版防水層が十分に接着していないと,防水層下面からのブリスタリングの発

生,防水層の破損,またそれに伴う舗装の平坦性喪失,ひび割れやポットホールの発生など,床版防水

層や舗装に大きな不具合をもたらすことになる.したがって,床版と床版防水層との接着性に悪影響を

及ぼす有害物は確実に除去することとした.主な有害物としては,次のようなものがある.

1)レイタンス

コンクリート表面のレイタンスは,脆弱なため確実に除去する.レイタンスの除去程度については,

建築学会のひっかき試験を参考に評価すると良い(付録参照).

2)膜養生剤

床版コンクリート施工時に,乾燥による表面ひび割れを防ぐために膜養生剤が使用される場合があ

る.膜養生剤と床版防水用のプライマーとの組み合わせによっては,接着不良を起こすことがあるの

で,床版防水工に先立ち接着強度を確認し,影響が懸念される場合には確実に除去する.

なお,プレキャスト板のようにすでに膜養生が塗布されて場合や,膜養生剤を塗布せざるを得ない場

合も想定される.このような場合には,前出4.2.1節事前調査で記したように使用する防水層との相性を

考慮して床版防水層を選定するとよい.

3)その他,接着を阻害する物質

長期にわたり放置されたコンクリート床版面には,カビやコケなどの異物が発生していることがあ

る.これらのようにコンクリート床版と防水層との接着に悪影響を及ぼす可能性のある異物は,確実

に除去する.

下地処理の処理方法については,小型電動工具,ダイヤモンド研掃装置,スチールショットブラスト

などの研掃工法がある.なお,工法選定に際しては,表-解 3.4.1を参考に選定すると良い.

表-解 4.3.1 コンクリート床版面の研掃工法(参考)

施工規模 レイタンス 付着物等 浸透系

少 多 少 多 塗布剤

小型電動工具(人力作業) 特小規模 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎

ダイヤモンド小型研掃装置 中・大規模 ◎ △ ◎ △ △

スチールショットブラスト 中・大規模 ◎ ◎ ◎ ○ ◎

1)小型電動工具(人力作業)

小型電動工具とは,ディスクサンダなどのハンドタイプの

研掃機をいい,狭隘部の研掃に優れ,大規模な範囲の研掃作

業では能力が著しく劣る.また,厚いレイタンス層の除去も

可能である.したがって,壁高欄や伸縮装置の立上り部や,

排水桝廻りなどの狭隘部の研掃・除去に適している.

図-解 4.3.4 小型電動工具

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2)ダイヤモンド小型研掃装置

ダイヤモンド刃小型研掃装置とは,回転するブレードによって床版面を研削する研掃装置をいい,

ハンドリングが良く施工性も高いため,中小規模の研掃作業も可能である.研掃時は1パーティー2

人で行われ,研掃能力は概ね1台あたり300m2/日程度を目安にするとよい.薄いレイタンスや被膜養

生剤,軽微な汚れの除去に優れるが,凹凸箇所や厚いレイタンス層の除去作業では能力が劣る.なお,

研削作業後にコンクリートの研削粉が床版面に残る場合もあるため,研削後は清掃作業を行う必要が

ある.

図-解 4.3.5 ダイヤモンド小型研掃装置

3)スチールショットブラスト

スチールショットブラストとは,モーターの動力を使いブレードと呼ばれる羽根車を高速回転させ,

これに投射材(ショット玉)を供給し,高速回転するブレードの遠心力により投射材を投射するもの

をいい,投射箇所の不純物を除去し,良好な粗さに仕上げることが可能である.スチールショットブ

ラストによる研掃は1パーティ4~5人で実施し,施工能力は,投射密度 50kg/m2の場合 50~100m2/時間,150kg/m2 の場合 50m2/時間を目安にするとよい.この装置による研掃により,床版と防水

層との良好な接着性を得られるだけでなく,凹凸面への適用や下地処理後の異物除去の確認が可能と

なる.一方,降雨時や雨上がり後のように床版面がぬれていると研掃できない場合や立ち上げ部の研

掃には,別の機材が必要となる等の投射した鉄球を全て回収する必要がある.

さらに,こ研掃の際には,図-解 4.3.7 に示すように,床版面に適した投射密度を設定する必要が

ある点に留意する必要がある.

図-解 4.3.6 スチールショットブラスト 図-解 4.3.7 表面粗さと圧縮強度

(出典:松井ら“補修における床版防水の課題;第20回シンポジウム論文集”,プレストレストコン

クリート技術協会,2011.10)

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4.3.3 床版防水層の施工・施工管理・検査

(1)床版防水層は,様々な材料・材質によって構成されていることから,各々の役割りや材料の特性

を理解したうえで施工する必要がある.

(2)床版防水層の施工は,材料ごとに整備された施工要領書に従って施工しなければならない.

(解説)

(1)床版防水層の断面構成は一般に①プライマー層,②床版と防水材との接着層,③防水材層,④防水

材と舗装と接着層に区分される.各層の施工上の留意点を下記に示す.

図-解4.3.8 床版防水システムの一般的な断面構成例

1)施工環境の管理

床版防水システムの施工に際しては,施工要領書に示された施工環境を遵守し施工する必要がある.

例えば,施工時期、施工時間による外気温の変化によるポットタイムの変化や,霧や結露水などの水

分の影響による樹脂材料の硬化不良などが生じることがある.

図-解 4.3.9 施工時期・施工時間の違いによる霧の発生状況

2)コンクリート床版面の水分量の管理

床版コンクリート中の水分は,床版防水層のプライマーの含浸を阻害するとともに,施工中の温度

上昇により気化することによりプライマー層にピンホールを発生させる場合がある.また,供用後に

は床版防水層のブリスタリング発生の原因となることから,床版コンクリート中の水分管理は徹底し

て行う必要がある.特に壁高欄などによって日陰となる個所では水分量が低下しにくいことから,施

工時には留意が必要となる.コンクリート中の水分量が高い場合,コンクリートの細孔部分が滞水し

ており,プライマーが十分に充填されない.

床版防水層

排水設備

①プライマー層

②床版と防水材との接着層

③防水材

④防水材と舗装との接着層 舗装

コンクリート床版

間さま(各委員にて不具合メカニズム・事例を収集・整理)

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床版面が滞水している状態(細孔部分が滞水) プライマーが細孔まで充填された状態

図-解 4.3.10 コンクリート中の水分の影響(例)

プライマーの施工時において,コンクリ-ト中の水分量が高く外気温が上昇する時間帯の施工で

は,プライマーが硬化する前にコンクリート中の水分が気化することでプライマーにピンホールや

気泡が生じることがあるため,床版中のコンクリート水分が低いこと確認したうえで施工する必要

がある.(図-解 4.3.11).

図-解 4.3.11 水分量が高くプライマーにピンホールが発生

降雨などで表面が濡れている場合は,日照などにより乾燥させる必要がある.自然に乾燥させる時

間がない場合は,バーナーで炙って乾燥させる必要がある.乾燥させる必要があるかどうかの判断は,

バーナーで熱することでコンクリートの色が変化するかどうかで判断すると良い.変化する場合は,

色が変化しなくなるまで乾燥させる必要がある.

また,現場での防水層の引張接着試験では,このような空隙が存在しても基準を満たす接着強度が

得られることがあるが,そのような場合でも空隙が存在すればブリスタリングを生じることがあるた

め,注意が必要である.

2) プライマー層

プライマー層は床版コンクリートの表面をコーティングし,床版防水層との接着性を高めること

や,床版内部からの水蒸気などの発生を抑制する事を目的に設置される.よって,プライマー層の

品質不良は,ブリスタリングや気泡発生などの不具合に繋がる事から入念な塗布を行い,含浸の効

果を得ることが重要である.

床版面の仕上がりが粗面である場合は,凹凸部分にプライマーが溜まってしまい,標準使用量で

は十分な仕上がり面が構築できない場合がある.そのため,プライマーの仕上がり状態を確認し,

必要に応じて増し塗等を検討する.

3) 床版と防水材との接着層

床版と防水材との接着層は,床版と防水材との層間に設けられる接着層であり,材料の種類によ

って材料特性や接着機構が大きく異なる.この接着層は,層間の接着力を確保する必要がある.ま

た,施工中にエアを介在させてしまうとブリスタリングなどの原因となることから,接着層は空隙

が無く密実である必要があるため入念に施工する.

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4) 防水材

防水材は舗装等より侵入してきた水を床版面まで浸透させないよう止水するために設ける床版

防水層の主要材料である.防水材は,その目的より孔が開いている状態では止水性を損なうため,

施工時に損傷しないよう留意する必要がある.例えば,コンクリート床版内からの水蒸気の影響に

よるピンホールの発生や,舗設時における骨材の食い込みによる開孔,舗設時の重機による損傷な

どには,特に留意する必要がある.

5) 防水材と舗装との接着層

防水材と舗装との接着層は,防水材と舗装との層間に設けられる接着層であり,材料の種類によ

って材料特性や接着機構が大きく異なる.また,舗装を通過した水が接着層全面に滞水し,舗装の

劣化を促進させる可能性があるため,接着層は空隙がなくより密実であることが望ましい.

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(2)日本における床版防水層には,シート系床版防水層(流し貼り型,加熱溶着型,常温粘着型),塗膜

系床版防水層(アスファルト加熱型,ゴム溶剤型,反応樹脂型)等がある.これらのうち,主な床版

防水層について,材料の概要,構成,施工フロー,施工管理上の要点を紹介する.

1)シート系床版防水層

シート系床版防水層に使用する防水シートは,ポリエステル系やガラス繊維などの不織布や織布に改

質アスファルトを含浸させた工場製造品である.

1-1 アスファルトシート防水(流し貼り型)

アスファルトシート系床版防水層(流し貼り型)は,プライマーを塗布した床版面に,加熱溶融

した貼付用アスファルトを流し込みながら防水シートを貼り付けて施工される.代表的な構成を図

-解 4.3.11に示す.

プライマーには,アスファルトや合成ゴム・合成樹脂などを有機溶剤で溶解した溶剤型や,それ

らをエマルジョンにした水性型が使用される.

図-解 4.3.11 アスファルトシート系床版防水層(流し貼り型)の構成

◎伊藤さま(⼯法説明・2枚)

防水シート

貼付用アスファルト

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◆アスファルトシート系床版防水層(流し貼り型)の施工フロー

本防水層の施工フローを図-解 4.3.12に示す.

①床研削機やショットブラスト等による研掃

簡易スイーパーやコンプレッサブロアー等に

よる清掃

①プライマー塗布

②乾燥,養生

①貼付用アスファルトによる

防水シートの貼り付け

①貼付用アスファルトの塗布

②網状ルーフィングの設置

③貼付用アスファルトの塗布

図-解 4.3.12 アスファルトシート防水(流し貼り型)の施工フロー

◆アスファルトシート系床版防水層(流し貼り型)の施工管理上の要点

① 砂・ほこり・油脂等ないように床版は十分に清掃する.

② 下地が湿潤状態の場合は,ガスバーナー等で乾燥させる.

床版の含水率が高い状態で施工すると,シート敷設後や舗設時に日射や加熱アスファルト混合物の

熱によって床版から水蒸気が発生し,防水層や舗装にブリスタリングが発生する場合がある.

③ プライマー塗布時は,端部やラップ部等に塗り溜まりができることがあるので,ローラー刷毛で良

く伸ばしムラのないように塗布する.

④ プライマーが乾燥したことを確認した後に次工程に入る.

⑤ 貼り付けアスファルトの溶解は,メーカーが指定する温度範囲内で行う.

⑥ 火気や火傷には十分注意して安全管理に務める.

強風時は貼付アスファルトの飛散により火傷や汚れなどが発生することがあるため,状況により施

工を避ける.

⑦ 防水層に空気溜り(エアーポケット)が出来ないよう十分注意して施工する.

⑧ 防水シートの重ね部が1箇所に集中しないように施工する.

⑨ 縁石や高欄等を汚さないよう注意する.

清掃

②プライマーの施

③防水材の施工

④端部処理

⑤舗装の施工

①下地処理,清掃

プライマー塗布

防水シートの貼り

端部処理

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1-2 高性能アスファルトシート系床版防水層(流し貼り型)

高性能アスファルトシート系床版防水層(流し貼り型)の施工は,前述のアスファルトシート系床

版防水層(流し貼り型)と同様である.

プライマーには,エポキシ樹脂のような反応系樹脂の材料が使用される.

防水シートには,従来よりも高品質な基材と改質効果をより高めたアスファルトが使用される.

本防水層の代表的な構成を図-解 4.3.13に示す.

図-解 4.3.13 高性能アスファルトシート系床版防水層(流し貼り型)の構成

◎伊藤さま(⼯法説明・2枚)

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◆高性能アスファルトシート系床版防水層(流し貼り型)の施工フロー

本防水層の施工フローを図-解 4.3.14に示す.

高性能防水の場合,立ち上がり防水の代わりに端部防水層が施工される.

この防水層は床版防水層の施工に先立ち行われる.

①床研削機やショットブラスト等による

研掃.

簡易スイーパーやコンプレッサブロア

ー等による清掃

①1 次プライマー塗布

②けい砂の散布

③養生

①2 次プライマー散布

②養生

①貼付用アスファルトによる

防水シートの貼り付け

図-解 4.3.14 高性能アスファルトシート系床版防水層(流し貼り型)の施工フロー

◆高性能アスファルトシート系床版防水層(流し貼り型)の施工管理上の要点

① 床版防水層との接着を害するレイタンスや表面養生剤などを確実に除去する.

② プライマー工においては,施工時の床版温度,水分の有無,次工程へ移る時期の判断など材料の

特性を考慮した適切な条件で施工する.

③ アスファルトシートの施工は,一般的な流し貼り工法に準じて施工される.

下地処理

②1 次プライマーの施

④防水材の施工

⑤舗装の施工

①下地処理,清掃

1 次プライマー塗布

防水シートの貼り付け

③2 次プライマーの施

2 次プライマー散布

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1-3 アスファルトシート系床版防水層(加熱溶着型)

アスファルトシート系床版防水層(加熱溶着型)は,シート裏面を加熱することによって,プライ

マーを塗布した床版面に防水シートを溶着させて施工される.加熱溶着型には,機械に取り付けた防

水シートを電気ヒーターで加熱して接着させるタイプと,トーチバーナーで加熱して防水シートの下

層のアスファルトを溶融接着させて接着させるタイプの 2 種類がある. 代表的な構成を図-解 4.3.15

に示す.

プライマーには,アスファルトや合成ゴム・合成樹脂などを有機溶剤で溶解した溶剤型や,それら

をエマルジョンにした水性型が使用される.

図-解 4.3.15 アスファルトシート系床版防水層(加熱溶着型)の構成

◎伊藤さま(⼯法説明・2枚)

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◆アスファルトシート系床版防水層(加熱溶着型)の施工フロー

本防水層の施工フローを図-解 4.3.16に示す.

①床研削機やショットブラスト等による研掃

簡易スイーパーやコンプレッサブロアー等に

よる清掃

①プライマー塗布

②乾燥

①防水シート裏面の加熱溶融

による防水シートの貼り付け

①貼付用アスファルトの塗布

②網状ルーフィングの設置

③貼付用アスファルトの塗布

図-解 4.3.16 アスファルトシート防水(加熱溶着型)の施工フロー

◆アスファルトシート防水(加熱溶着型)の施工管理上の要点

① 砂・ほこり・油脂等ないように床版は十分に清掃する.

② 下地が湿潤状態の場合は,ガスバーナー等で乾燥させる.

床版の含水率が高い状態で施工すると,シート敷設後や舗設時に日射や加熱アスファルト混合物の

熱によって床版から水蒸気が発生し,防水層や舗装にブリスタリングが発生する場合がある.

③ プライマー塗布時は,端部やラップ部等に塗り溜まりができることがあるので,ローラー刷毛で良

く伸ばしムラのないように塗布する.

④ プライマーが乾燥したことを確認した後に次工程に入る.

⑤ 火気や火傷には十分注意して安全管理に務める.

⑥ 防水層に空気溜り(エアーポケット)が出来ないよう十分注意して施工する.

⑦ 縁石や高欄等を汚さないよう注意する.

⑧ 防水シートの重ね部が1箇所に集中しないように施工する.

⑨ 新設など床版面が比較的平滑な場合に使用する.

⑩ 舗装全層打換え時は切削後の床版の凹凸が大きいためシートの接着が難しい.

清掃

②プライマーの施

③防水材の施工

⑤舗装の施工

①下地処理,清掃

プライマー塗布

防水シートの貼り④端部処理

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1-4 アスファルトシート系床版防水層(常温粘着型)

アスファルトシート系床版防水層(常温粘着型)は,常温で接着性を有する粘着材が塗られた防

水シートの裏面の離型紙や離型フィルムを剥がして,プライマーを塗布した床版面に圧着して施工

される.

本防水層の代表的な構成を図-解 4.3.17に示す.

プライマーには,アスファルトや合成ゴム・合成樹脂などを有機溶剤で溶解した溶剤型や,それ

らをエマルジョンにした水性型が使用される.

図-解 4.3.17 アスファルトシート系床版防水層(常温粘着型)の構成

◎伊藤さま(⼯法説明・2枚)

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- 60 -

・アスファルトシート系床版防水層(常温粘着型)の施工フロー

本防水層の施工フローを図-解 4.3.18に示す.

①床研削機やショットブラスト等による研掃

簡易スイーパーやコンプレッサブロアー等に

よる清掃

①プライマー塗布

②乾燥

①防水シートの貼り付け

①貼付用アスファルトの塗布

②網状ルーフィングの設置

③貼付用アスファルトの塗布

図-解 4.3.18 アスファルトシート系床版防水層(常温粘着型)の施工フロー

・アスファルトシート系床版防水層(常温粘着型)の施工管理上の要点

① 砂・ほこり・油脂等ないように床版は十分に清掃する.

② 下地が湿潤状態の場合は,ガスバーナー等で乾燥させる.

床版の含水率が高い状態で施工すると,シート敷設後や舗設時に日射や加熱アスファルト混合物の

熱によって床版から水蒸気が発生し,防水層や舗装にブリスタリングが発生する場合がある.

③ プライマー塗布時は,端部やラップ部等に塗り溜まりができることがあるので,ローラー刷毛で良

く伸ばしムラのないように塗布する.

④ プライマーが乾燥したことを確認した後に次工程に入る.

⑤ 防水層に空気溜り(エアーポケット)が出来ないよう十分注意して施工する.

⑥ 縁石や高欄等を汚さないよう注意する.

⑦ 防水シートの重ね部が1箇所に集中しないように施工する.

清掃

②プライマーの施

③防水材の施工

⑤舗装の施工

①下地処理,清掃

プライマー塗布

防水シートの貼り付④端部処理

端部処理

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151220

- 61 -

2)塗膜系床版防水層

2-1 アスファルト加熱型塗膜系床版防水層

アスファルト加熱型塗膜防水工法は,施工現場で専用の釜等を用いて加熱溶解し,刷毛などで塗布す

る方法と工場で製造されたものを専用機械で保温しながら運搬し,散布する方法で施工される.

本防水層の代表的な構成を図-解 4.3.19に示す.

プライマーには,アスファルトや合成ゴム・合成樹脂などを有機溶剤で溶解した溶剤型や,それら

をエマルジョンにした水性型が使用される.

図-解 4.3.19 アスファルト加熱型塗膜系床版防水層の構成

アスファルト加熱型塗膜防水材

プライマー

コンクリート床版

表 層

基 層

プライマー

成型目地材

アスファルト加熱型塗膜防水材

プライマー

網状ルーフィング

アスファルト加熱型塗膜防水材

硅砂

◎伊藤さま(⼯法説明・2枚)

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151220

- 62 -

◆アスファルト加熱型塗膜系床版防水層の施工フロー

本防水層の施工フローを図-解 4.3.20に示す.

①床研削機やショットブラスト等による研掃

簡易スイーパーやコンプレッサブロアー等

による清掃

①プライマー塗布

②乾燥

①防水材の塗布

②けい砂散布

①アスファルト塗膜防水材の塗布

②網状ルーフィングの設置

③アスファルト塗膜防水材の塗布

図-解 4.3.20 アスファルト加熱型塗膜系床版防水層の施工フロー

◆アスファルト加熱型塗膜防水系床版防水層の施工管理上の要点

① 砂・ほこり・油脂等ないように床版は十分に清掃する.

② 下地が湿潤状態の場合は,ガスバーナー等で乾燥させる.

③ プライマー塗布時は,端部やラップ部等に塗り溜まりができることがあるので,ローラー刷毛で

良く伸ばしムラのないように塗布する.

④ プライマーが乾燥したことを確認した後に次工程に入る.

⑤ 防水材の溶解は,メーカーが指定する温度範囲内で行う.

⑥ 火気や火傷には十分注意して安全管理に務める.

⑦ 縁石や高欄等を汚さないよう注意する.

⑧ 溶解時には,特有の臭気が発生するので,沿道環境に配慮し,必要に応じて香料を添加する.

清掃

②プライマーの施工

⑤舗装の施工

①下地処理,清掃

プライマー塗布

けい砂散布

③防水材の施工

防水材の塗布

④端部処理

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- 63 -

2-2 ウレタン樹脂防水

ウレタン樹脂防水層は2液の混合反応によって形成される.反応速度が早いため機械により吹付け

塗布される.防水層硬化後,舗装接着材Ⅰを施工し,舗装接着材Ⅱを施工する.

本工法の代表的な構成を図-解 4.3.21に示す.

図-解 4.3.21 ウレタン樹脂防水の構成

◆ウレタン防水の施工フロー

本防水層の施工フローを図-解 4.3.22に示す.

①ダイヤモンド研掃機,ショットブラスト等による研掃及び清掃

②表面研掃,被膜養生剤除去,研掃カス・塵等の清掃

③研掃後床版接着材を塗布して引張試験を行う.

①施工環境測定

気温,湿度,露点,施工面温度,コン

クリート水分

②施工範囲養生

範囲の特定と防水材飛散による汚

れ防止養生

③プライマー塗布

④乾燥,養生

プライマー

コンクリート床版

ウレタン防水材

舗装接着材Ⅰ

保護層

基層

表層

舗装接着材Ⅱ

プライマーの施工

下地処理

◎間さま(⼯法説明・2枚)

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- 64 -

①吹付け機械準備

②防水材吹付け

③自主又は立会い検査(膜厚測定)

④養生

①吹付け機械準備

②舗装接着材1の塗布

①出来形管理試験

(ピンホール試験機による検査)

①舗装接着材 2 の塗布

①施工範囲の特定のための見切テープ等の養生

②端部保護材塗布

図-解 4.3.22 ウレタン樹脂防水の施工フロー

◆ウレタン防水工の施管理要点

① ウレタン防水工は現場反応により防水層が形成される工法であるため,熟練した防水工が施工し

なければならない.

② 下地処理においてはコンクリートのレイタンスや膜養生材の影響がないように,ポリッシャー,

スチールショットブラスト,ダイヤモンドディスクサンダー等の研掃を行い,プライマーと床版

の接着力を確保する.

③ 各工程の施工にあたっては,施工要領書に沿って外気温,湿度,露点,床版面温度,コンクリー

ト含水率等の管理を行い,各層の接着力を確保する.

④ 防水層の吹付けでは原料温度,圧力や混合比の管理を確実に行い,樹脂強度,膜厚が一定になる

ように吹付ける.

⑤ 舗装接着材は舗装熱によって溶融し,転圧によって付着するため,舗装施工時の温度管理には留

意する.

防水材の施工

舗装接着材1の施工

端部保護材の施工

出来形管理試験

舗装接着材2の施工

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- 65 -

2-3 メタクリル樹脂防水

メタクリル樹脂防水は,速硬化タイプの反応型MMA(メチルメタアクリレート)樹脂を基材とした,

塗膜系の床版防水工法である.

防水層の施工は,防水材を自在箒などで施工する方法とエアレススプレー機などで施工する方法が

ある.防水材の硬化後,接着層樹脂を塗布し,接着層硬質骨材の散布を行う.

本工法の代表的な構成を図-解 4.3.23に示す.

図-解 4.3.23 メタクリル防水の構成

メタクリル樹脂防水の施工フロー

メタクリル樹脂防水の施工フローを図‐解4.3.24に示す.

①ショットブラスト,研掃機等による床版表面の研掃及び清掃,

レイタンス,表面養生剤,突起物などを除去・清掃

②施工環境・気象条件測定

気温,湿度,施工表面温度,コンクリート水分

①施工割付・施工エリアの養生

②プライマー材(MMA樹脂),硬化剤の混合

③プライマー層の施工

④プライマー層の硬化養生・硬化確認

②プライマー層の施工

① 下 地 処 理

◎⽯崎さま(⼯法説明・2枚)

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①防水材(MMA 樹脂),硬化剤の混合

②防水層の施工

③防水層の硬化養生・硬化確認

④防水層の貫通孔・塗膜厚検測

①防水接着材(MMA樹脂),硬化剤の混合

②防水接着層の施工

・防水接着材を所定量塗布

・防水接着材塗布後,直ちに硬質骨材を樹脂塗面に散布

③施工エリアの養生材の回収

④防水接着層の硬化養生・硬化確認

①防水接着層の余剰骨材の回収

防水接着層の樹脂に締結していない遊離の余剰骨材をロード

スイーパーで回収

①端部保護層の施工をもって,防水工の完了

図-解4.3.24 メタクリル樹脂防水の施工フロー

メタクリル樹脂防水工の施工管理要点

① メタクリル樹脂防水工の樹脂材料は,施工現場の気温,下地表面温度に応じて硬化剤の添加量を調整

する必要があり,気象条件・添加量を管理する施工技術者を配置させる.

② 事前に下地(コンクリート床版)の調査を行い,変状の有無(欠損部や脆弱部等)を確認し,必要に

応じて補修を行う.

③ 下地コンクリート床版表面とプライマー層との接着を阻害する有害物(レイタンス・膜養生材・アス

ファルト等)は十分に除去,清掃しなければならない.

④ 防水接着層の施工後における余剰骨材の回収不足で,遊離した骨材が残存した場合,防水層と舗装と

の接着力が低下するため,十分な確認が必要である.

①メタクリル樹脂防水層の施工 ②接着層の施工

写真-解 4.3.25 メタクリル樹脂防水層の施工

③ 防 水 層 の 施 工

④防水接着層の施工

⑤ 余 剰 骨 材 の 回 収

⑥端部保護層の施工

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- 67 -

複合防水工法は,床版表面に浸透して防水層を形成する低粘度の浸透系材料とアスファルト加熱型塗

膜系防水材を組み合わせた防水工法で,各層が防水便覧で規定する基本性能を有するものである(図-解

4.3.26).

複合防水工法に採用している浸透系材料はコンクリート構造物のはく落防止工のプライマーの中で,

塗布含浸によりある程度のひび割れへの浸透性を有し,床版表面に防水機能を付与すると同時に床版の

クラック補修を行う工法である.

複合防水工法は実績のあるアスファルト加熱型塗膜系防水工法のプライマーを浸透系材料に置き換え

た工法であり,施工性や施工能力はアスファルト加熱塗膜型防水材とほぼ同等である.

複合防水は,既設床版への適用を前提として開発された工法で,現在までのところ,既設床版のみを

対象としているため,施工フローは既設床版を対象としたものを図-解 4.3.26に示す.

図-解 4.3.26 複合防水の構成

◆複合防水の施工フロー(既設床版対象)

①切削機による舗装の切削と清掃

舗装切削,切削カス・粉塵の清掃,床版に残った舗装残渣の

撤去.バーナーによる水濡れ部の乾燥

②路肩部,ジョイント,排水枡他の養生

③施工環境測定

気温,湿度,施工面表面温度,コンクリート水分

④施工準備

硬化促進剤配合量他による硬化時間の調整,吹き付け機準備

①準備(下地処理他)

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- 68 -

①施工管理のための区割り確認

②浸透系材料の塗布

③硅砂散布

④養生

⑤硬化確認

指触による硅砂の固着により判断

①アスファルト塗布型防水材の塗布

②端部処理の施工

図-解 4.3.27 複合防水の施工フロー

複合防水工の施工管理要点

① アスファルト加熱塗膜系防水材の施工管理項目は,従来行われている管理内容にしたがう.

② 複合防水工法の中には硬化時間調整可能なものがあり,このタイプの工法で浸透系材料の硬化時間を

一定に管理する場合には,雰囲気温度や床版表面温度により硬化促進剤の配合量を調整する.

③ 吹き付け機で浸透性材料を塗布する場合は,塗布量や塗布パターンを一定にするため材料温度や吐出

圧の管理を行うと同時に,ノズルやポンプ,ホースの日常メンテナンスに留意する.

④ 事前に吹き付け機が正常に作動している事を確認するため施工開始前にポリ袋に少量吹き付けて確

実に硬化する事を確認する.

⑤ 浸透系材料の性能を充分に発現させるため,舗装の残渣が残らないよう床版の研削と清掃は丁寧に行

う.また,水に濡れていると浸透系材料が内部に浸透しないため事前に床版が乾燥している事を確認

する.

写真-解 4.3.28 浸透型防水材吹き付け塗布状況 写真-解 4.3.29 アスファルト加熱塗布型防水材塗布状況

②浸透系材料の塗布

③アスファルト加熱塗膜系防水材の施工

④舗装の施工

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4.3.4 下地処理・床版防水層の施工管理・検査

(1)床版防水層の施工管理は, 各工法の施工要領書に基づき, かつ各現場に対応して作成された施工

管理計画書に従って行われ,仕様書や設計図書に定められた事項を満足するために, 施工の各段階

で行う.

①床版防水層の性能が確保できる床版状態の確認.

②床版防水層を適切に施工できる環境であることを確認.

③床版防水層としての均一性の確認(重ね幅,ピンホール,膜厚).

(2)検査は,床版防水層としての性能を満足するために, 以下の項目を確認する.

①床版性状の検査(凹凸, 粗さ, 段差)

②防水層としての均一性(重ね幅, ピンホール, 膜厚, 端部の状況)

③床版・床版防水層相互の一体性の検査(接着強さ,ブリスタリング)

(3)不合格の場合には,床版防水層各材料の施工要領書に記された補修方法に従って適切に処理する.

(解説)

(1)施工後において不良箇所が発見された場合,再施工は多大な労力と時間を要する.そのため,工

程ごとに十分な施工管理を行って施工することが重要である.施工者はその完成物が設計基準を満たす

ように施工管理(工程管理,出来形管理,品質管理,写真管理)を行い,記録・保管する.

現場における施工管理の主な確認項目の一例を表-解 4.3.2に示す.

表-解 4.3.2 床版防水層施工の施工管理項目の例

種別 項目 範囲・頻度 方法・管理指標

施工環境 外気温,結露 施工前 施工要領書による

コンクリー

ト床版 水分量 全面

打設後の経過日数,目視,

乾燥状態の確認

接着層

塗布量 300 ㎡を超えない範囲

で 1 日 1 回行う

納品書及び空缶

塗りむら・気泡

・キズ 全面目視

シート系

床版防水層

貼付用アスファル

ト塗布量 300 ㎡を超えない範囲

で 1 日 1 回行う

納品書及び空缶

剥がれ・シワ・気

泡・キズ 全面目視

重ね幅 測定

塗膜系

床版防水層

塗布量 各層とも 300㎡を超え

ない範囲で 1 日 1回行

納品書及び空缶

塗膜厚 膜厚計による計測

ピンホール・気泡

・キズ 全面目視

◎松井(再考)

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(2)検査項目は以下のとおりである.

①床版性状の検査(凹凸,粗さ,段差)

コンクリート床版と床版防水の付着性,耐久性等の性能を確保するため,床版防水層を施工する

前の検査について適用する.主な検査項目および確認手法は表-解 4.3.2を参考にするとよい.

②防水層としての均一性(重ね幅,ピンホール,膜厚,端部の状況)

防水層設置段階(アスファルト混合物前まで)の検査について適用する.主な検査項目および確

認手法は表-解 4.3.3を参考にするとよい.

③床版・床版防水層の一体性の検査(接着強さ,せん断強さ,ブリスタリング)

床版と防水層の一体性に関する検査について適用する.検査項目および確認手法は表-解 5.6.3を

参考にするとよい.

表-解 4.3.3 床版性状(床版防水施工前)の主な検査項目および確認手法の例

注1) この基準は,日本では規定されていないため,スイスで採用されている基準を例として示した.もし,

床版の凹凸が目視で明らかに大きいことが確認された場合には,凹部を補修したのち,凹凸を計測す

るとよい. 注2) 床版粗さの測定の選定は,施工条件等を勘案して行うとよい.頻度に関しては,1日で施工可能な面

積( 大 500m2 程度)あるいは,施工面積が小さい場合には施工対象の橋梁について3カ所とする

とよい.なお,明らかに凹凸の大きい箇所が多いと判断される場合には,発注者が検査の頻度を調整

する必要がある.

検査項目 確認手法 試験体寸

法(mm) 頻度 評価基準

床版面の凹凸 目視

定規 - 全面

施工要領書で定めた凹

凸以下であること注 1)

床版の粗さ注 2)

CTメータによるき

め深さ注 3)

サンドパッチング法

によるきめ深さ注 4)

300m2 を超えな

い範囲で 3 カ所

/日

きめ深さが1mm 以下

であること

ひび割れ 目視 - 全面

ひび割れがないこと

ひび割れがある場合に

は,適切に補修されて

いること

レイタンス 目視 - 全面 レイタンスが無いこと

ひっかき試験

段差注 5) 目視 - 全面 施工要領書に示す許容

範囲内であること

障害物 目視 - 全面 障害物がないこと

床版コンクリー

トの脆弱性注 6)

プライマー塗布後の

建研式引張試験注 7) □40×40

300m2 を超えな

い範囲で 3 カ所

/日

1.2N/mm2以上

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注3) CT メータによるきめ深さの測定は,(社)日本道路協会発行の「舗装調査・試験法便覧」1)で規定

された S022-3T(回転式きめ深さ測定装置を用いた舗装路面のきめ深さ測定方法)に準拠して実施

するとよい.なお,評価基準値は,高速道路株式会社の「構造物施工管理要領」3)で採用されたも

のを採用した.また,CTメータによる床版粗さの評価は,スイスでも採用されており,評価基準値

は 0.5~1.2mm としている. 注4) サンドパッチング法によるきめ深さの測定は,「舗装調査・試験法便覧」1)で規定された S022-1(SL

砂を用いた舗装路面のきめ深さ測定方法)に準拠して実施するとよい.評価基準値は,「構造物施工

管理要領」3)で採用されたものを一例として示した. 注5) 防水層の種類により,ある程度の段差が許容される場合があるため,防水工施工業者が作成する施工

要領書・計画書を参考にするとよい. 注6) コンクリートの脆弱性は,防水層を施工する床版面にプライマーを塗布したのち,実施するとよい.

プライマーの塗布は,施工要領書に示された方法により所定量塗布することを原則とする.なお,床

版施工面の凹凸が大きく,所定数量以上のプライマーを塗布する必要がある場合や,プライマーの床

版への含浸が良い場合には,検査監督員の承認を得られた場合のみ,プライマーを所定量以上塗布し

てもよい.また,プライマーの養生時間は,施工要領書に示された時間を基本とするとよい.なお,

評価基準値は,「構造物施工管理要領」3)で採用されているもの. 注7) 建研式引張試験は試験機を手動操作するため,試験者の違いによる誤差が生じる懸念がある.そのた

め,載荷速度を一定にするために試験機操作速度をストップウォッチ等により管理することや,より

正確に引張強度を得るため,治具が水平に設置されていることを確認する必要がある.また,引張接

着強度のバラツキや破断面が治具と接着剤となり適切に対象部位の引張接着強度が得られない場合

が考えられるため,試験数は 1 カ所あたり 5 個以上実施することが望ましい.欧州では,BS

EN1542,1999 に準拠して試験を実施し,試験体寸法φ50mm,試験体数 5( 低 3)とし,治具を

90±1°になるように設置するように規定されている.

<試験条件>

試験体寸法:□40×40mm 試験体数:5 体以上 評価基準:23℃ 0.6N/mm2

試験後の破断面の温度を測定し表-解 4.3.6の基準値と比較 実施場所:現場のみ

図-解 4.3.30 サンドパッチング 例 図-解 4.3.31 CTメータ例 図-解 4.3.33 建研式引張試験例

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表-解 4.3.4(1) 防水層設置時の主な検査項目および確認手法の例(シート系防水層に適用)

注1)必要に応じて,点検ハンマ等によるたたき点検や赤外線を利用するとよい. 注 2)検査により膨れが認められた場合には,発注者が承認した方法で補修を行ったのち,再度検査を

行う必要がある.

注 3)シート系防水材には,重ね箇所を明確にするため,シート上面にラインが引かれている場合が多

い.しかしながら,流し貼り工法により防水シートを敷設する場合には,コンパウンドがシート

の重ね部から溢れ出し,ラインを覆うことが多いため,重ね部の検査はできるだけ,施工時に行

う方がよい.施工後に検査する場合には,スケール等によりシートの重ね位置を確認するとよい.

注4)コンパウンド温度の確認は,シート敷設開始時,中間時,終了時の3回を標準とするとよい,こ

れは,施工途中でコンパウンドを追加して熔解させる必要があるため,コンパウンド温度の低下

や,熔解し続けることによるコンパンド温度が適正値以上とならないことを検査するものである.

なお,コンパウンドの適正温度は,製品により異なる場合が考えられるので,施工要領書や製品

カタログで確認しておくとよい.

注5)建研式引張試験は試験機を手動操作するため,試験者の違いによる誤差が生じる懸念がある.そ

のため,載荷速度を一定にするために試験機操作速度をストップウォッチ等により管理すること

や,より正確に引張強度を得るため,治具が水平に設置されていることを確認する必要がある.

また,引張接着強度のバラツキや破断面が治具と接着剤となり適切に対象部位の引張接着強度が

得られない場合が考えられるため,試験数は 1 箇所あたり 5 個以上実施することが望ましい.欧

州では,BS EN1542,1999 に準拠して試験を実施し,試験体寸法φ50mm,試験体数 5( 低 3)

とし,治具を 90±1°になるように設置するように規定されている. 注 6)現場で建研式引張試験を実施する場合,試験時の外温度が異なることが予想される.そのため,

検査項目 確認手法

試験体寸

(mm)

頻度 評価基準

シートの膨れ(ブリスタ

リング) 目視注 1) - 全面 異常がないこと注 2)

シートの重ね幅注 3) コンベックス等で

計測 - 全面

施工要領書に定めた必

要幅を満足すること

シート重ね部の浮き 目視 - 全面 浮きがないこと

シートの継ぎ目 目視 - 全面

異常がないこと

継ぎ目位置は設計どお

りであること

貼付けコンパウンドの

温度 温度計による確認 -

1日3回注

4)

施工要領書に定める適

正温度の範囲内である

こと

アスコン舗設時のシー

トのずれ 目視 - 全面 ずれないこと

床版と防水層の

一体化注7) 建研式引張試験注 5) □40×40

1 日 2 箇

試験体気温に換算した

引張接着強度以上注6)

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- 73 -

試験時の外気温を記録し,その温度における換算引張接着強度と比較することにより行ってよい.

なお,これは「防水便覧」の-10℃および 23℃に加えて,高速道路会社が採用している 50℃の基

準値により算出したものである.各温度における換算引張接着強度の基準値例を表-解 5.6.4に示

す.

注7)試験終了後は,施工要領書に示された方法で防水層の補修を行う.

表-解 4.3.4(2) 防水層設置時の主な検査項目および確認手法の例(塗膜系防水層に適用)

注 1)必要に応じてピンホールテスタを用いて検査するとよい.

注 2)検査により膨れが認められた場合には,発注者が承認した方法で補修を行ったのち,再度検査を行

う必要がある. 注3)塗膜系防水材の場合には,施工要領書で定められた防水材の 低膜厚を確保していることを確認す

ることが重要である.膜厚の測定は,代表的な箇所について三針式膜厚計(写真-解 4.3.34 等を用

いて実施するとよい.なお,防水層に珪砂等の骨材が含まれる場合には,三針式膜厚計により適切

に防水材の厚さを計測することが困難な場合がある.その場合には,監督員の承認を受けた三針式

膜厚計以外の方法で防水材が 低膜厚以上で施工されていることを示す必要がある. 注4)建研式引張試験は試験機を手動操作するため,試験者の違いによる誤差が生じる懸念がある.その

ため,載荷速度を一定にするために試験機操作速度をストップウォッチ等により管理することや,

より正確に引張強度を得るため,治具が水平に設置されていることを確認する必要がある.また,

引張接着強度のバラツキや破断面が治具と接着剤となり適切に対象部位の引張接着強度が得られ

ない場合が考えられるため,試験数は 1 カ所あたり 5 個以上実施することが望ましい.欧州では,

BS EN1542,1999 に準拠して試験を実施し,試験体寸法φ50mm,試験体数 5( 低 3)とし,治

具を 90±1°になるように設置するように規定されている. 注 5)現場で建研式引張試験を実施する場合,試験時の外温度が異なることが予想される.そのため,

試験時の外気温を記録し,その温度における換算引張接着強度と比較することにより行ってよい.

検査項目 確認手法

試験体寸

(mm)

頻度 評価基準

気泡(ピンホー

ル) 目視注1) - 全面 異常がないこと注 2)

塗膜計防水材の

膜厚 膜厚計による計測注 3) -

1 日 3 箇

施工要領書に定める 低膜厚

以上あること

地覆部防水層の

だれ 目視 - 全面 だれがないこと

地覆部防水層の

キズ 目視 - 全面

養生終了時に破損がないこと

塗布膜の隔離,割れがないこと

ピンホールがないこと

端部防水層の納

まり 目視 - 全面 異常がないこと

床版と防水層の

一体化注 6) 建研式引張試験注 4) □40×40

1 日 2 箇

試験体気温に換算した引張接

着強度以上注5)

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なお,これは「防水便覧」の-10℃および 23℃に加えて,高速道路会社が採用している 50℃の基準

値により算出したものである.各温度における換算引張接着強度の基準値例を表-解 4.3.6に示す.

注6)試験終了後は,施工要領書に示された方法で防水層の補修を行う.

図-解 4.3.34 三針式膜厚計

表-解 4.3.5 防水層と舗装の一体性に関する検査項目および確認手法の例

注 1)建研式引張試験は試験機を手動操作するため,試験者の違いによる誤差が生じる懸念がある.そのた

め,載荷速度を一定にするために試験機操作速度をストップウォッチ等により管理することや,より

正確に引張強度を得るため,治具が水平に設置されていることを確認する必要がある.また,引張接

着強度のバラツキや破断面が治具と接着剤となり適切に対象部位の引張接着強度が得られない場合が

考えられるため,試験数は 1カ所あたり 5個以上実施することが望ましい.欧州では,BS EN1542,1999

に準拠して試験を実施し,試験体寸法φ50mm,試験体数 5( 低 3)とし,治具を 90±1°になるよ

うに設置するように規定されている. 注 2 ) 日本における建研式引張試験ではコンクリートへの切込み深さの規定は定められていないが,欧州で

は,BS EN1542,1999 に準拠して試験を実施することとなっており,切込み深さを 15±5mm にする

ことに加えて,治具の厚さを鋼材の場合 20mm 以上,アルミニウムの場合は 30mm 以上と規定されて

いる. 注3)現場で建研式引張試験を実施する場合,基準値に対して試験温度が異なることが予想される.そのた

め,試験温度ごとに引張強度の基準値を求める必要がある.各試験温度における基準値は,防水便覧

の-10℃および 23℃に加えて,高速道路会社が採用している 50℃の基準値を用いて内挿して求める(表

検査項目 確認手法 試験体寸法

(mm) 頻度 評価基準

防水層と舗装

との一体化注7) 建研式引張試験注 1) φ100 注 2) 1 日 2 箇所

試験体気温に換算した

引張接着強度以上注3)

防水層と舗装

との一体化注 4)

引張接着試験

(コア採取可能な場合)

φ 100 ×

100 必要に応じて実施

23℃:0.6N/mm2

以上注 5)

防水層と舗装

との一体化注 4)

せん断接着試験

(コア採取可能な場合)

φ 100 ×

100 必要に応じて実施

23℃:0.15N/mm2

以上注 6)

防水システム

全体の防水性

防水性試験

(コア採取可能な場合)

φ 100 ×

100 必要に応じて実施 漏水がないこと

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-解 5.6.4).

注 4 ) 試験は室内試験で実施し,載荷速度は「防水便覧」に準拠して実施するとよい. 注 5) 評価基準は,「防水便覧」(H19.3)の引張接着試験の合否判定の目安を採用した. 注 6) 評価基準は,「防水便覧」(H19.3)のせん断試験の合否判定の目安を採用した. 注7)試験終了後は,発注者が承認した方法で,防水層・舗装の補修を行う.

図-解 4.3.35 引張接着試験例

図-解 4.3.36 コアのせん断接着試験例

<試験条件>

試験体寸法:φ 100 ×

100mm

載荷速度:毎秒 0.1N/mm2

試験体数:3体

評 価 基 準 : 23 ℃

<試験条件>

試験体寸法:φ 100 ×

100mm

載荷速度:1mm/分

試験体数:3体

評 価 基 準 : 23 ℃

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図-解 4.3.37 防水性試験例

表-解 4.3.6 各温度における換算引張接着強度

試験体温度 引張接着強度

-10℃ 1.2 N/mm2

23℃ 0.6 N/mm2

50℃ 0.07 N/mm2

(3)不合格時の処理

検査不合格時の対応については,発注者と受注者間で協議して決定することを基本とする.

ブリスタリングが生じて一体性が損なわれたと判断される場合は,防水層を撤去し再施工すること

も検討する必要がある.また,軽微な部分補修で一体性やその他要求される性能が満たされると判断

される場合は,発注者の承認を得て補修を行うものとする.

なお,補修後の性能が要求される性能を満たさない場合についてもその対応を発注者と協議して決

定することを基本とする.

0.01

0.1

1

10

-20 -10 0 10 20 30 40 50 60

試験体温度(℃)

引張

接着

強度(

N/mm

2)

<試験条件>

試験体寸法:φ100×70mm

負荷:水圧 0.5MPa で 24 時間

試験体数:3体

評価基準:漏水がないこと注)

実施場所:試験室 注)試験体を割裂しブラックラ

イトを照射して目視確認

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4.4 床版防水層上の舗装の施工・施工管理・検査

(1)床版防水上の舗装は,適切な施工計画を作成し,それに従って施工しなければならない.

(2)防水層上面は,確実に清掃し,接着を阻害するもの(汚れ,水など)は全て除去する.

(3)防水層との接着を確実するために,適切な温度で施工する.

(4)防水層を破損させないために,舗設機械等の移動や操作に十分注意する.

(5)アスファルト舗装と既設構造物との界面については,防水性を考慮した目地の設置を行う.

(6)舗装の施工管理は,原則的に舗装施工便覧(日本道路協会図書)に基づき行う.

(7)舗装の検査は,日本道路協会図書の仕様に準拠して行う.

(解説)

(1)施工計画に関する留意点

① 工事用車両が,防水層上を通行することを極力少なくするように施工工程を考え,防水層施工後は,

できるだけすみやかに,基層,表層の施工を行う.

② 隣接区間の舗設時,アスファルト混合物運搬用車両が走行すると,タイヤに付着した乳剤が施工済み

の床版防水層をはがす恐れがあるので,できる限り工事用車両が床版防水層の上を走行することがな

いような施工工程を検討する.なお,施工工程上,工事用車両の走行が頻繁にある場合は,それらに対

し耐荷性のある床版防水層の選定または適切な養生等について検討する.

③ 防水層施工後,そのままの状態で長期間放置することは,床版防水層の性能低下及びブリスタリングの

発生等が懸念されるため極力避ける必要がある.したがって,できるだけ早い時期(1週間程度以内)

にアスファルト混合物を舗設する.

④ 夏季などの高温時では床版防水層が軟らかくなるため,舗設時間の変更も検討する.

(2)舗設前には防水層の表面に滞水,付着物などが無いことを確認することとする.防水層表面の水分

や砂などの付着物は舗装との付着性低下の原因となるため,これらの付着物が確認された場合は適切

に清掃・除去する.

(3)舗設温度および締固めに関する留意事項

① 舗設時の起終点部,ジョイント部および端部などについては,アスファルト混合物の温度低下による

締固め不足が懸念されるため,特に温度管理に注意して施工を行う.

② 舗設の状況に応じて,アスファルト混合物製造時の温度を通常より高めとし,管理範囲内の上限側と

する.

③ アスファルト混合物の温度が低下しても,良好な施工性が得られる中温化技術を必要に応じて適用す

ることも検討する.なお,この場合にはアスファルト混合物温度の低減は行わない.

④ アスファルト混合物の運搬にあたっては,運搬車の荷台に帆布を2~3枚重ねて用いたり,特殊保温シ

ートを用いたり,木枠を取り付けたりするなど,運搬中の保温方法の改善を行う.

⑤ アスファルト混合物の敷きならしに関しては,連続作業を心掛け,局部加熱に注意しながらアスファ

ルトフィニッシャのスクリードを断続的に加熱する.

⑥ アスファルト混合物の締固めに際しては,次の点に留意する.

・転圧作業のできる 小範囲まで,アスファルト混合物の敷きならしが進んだら,直ちに締固め作業

を開始する.初転圧時のヘアクラックを少なくするためには,線圧の小さいローラを用いる.

・ローラへのアスファルト混合物の付着防止には,水を用いず付着防止剤などを噴霧器で薄く塗布す

⼩関さま(意⾒修正)

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る.

・コールドジョイント部は,アスファルト混合物温度が低下しやすく締固め不足になりやすいため,

直前に過加熱に注意しながらガスバーナ等を使用して,既設舗装部分を加熱しておく.

(4)舗設機械に関する留意事項

① 舗設前の防水層上にローラの散水や作業車のエアコンの水などが滞水しないように配慮する.

② 1夜間での工事のように限られた時間での舗設の場合,切削時の水が床版上に残らないようにする.

③ 舗設準備段階の重機,車両は床版防水層上から離れた場所に待機することが望ましい.

④ 舗装用機械をトレーラから降ろす時は,床版防水層が敷設されていない場所で行うことが望ましい.

⑤ 床版防水層上をダンプトラック,フィニッシャなどが走行する際は,タイヤに泥,アスファルトなど

が付着しないようにするとともに,車の急制動,急転回を行わないようにする.また,床版防水上で

の長時間停車を避ける.

⑥ 基層を舗設する場合,床版防水層に損傷を与えないよう作業を行う必要がある.とくに,フィニッシ

ャは床版防水層上を直接走行して舗設作業を行うため,現場条件に適したものを選定する.フィニッ

シャには牽引方式によりクローラ式とタイヤ式に分けられ,クローラ式の場合はゴム式クローラが望

ましい.

⑦ 基層舗設時において防水層に損傷が生じた場合(図-解 4.4.1),舗設後に不具合箇所全面を撤去し,

防水層から再施工を行う.

図-解 4.4.1 基層施工時の防水層の損傷事例

(5)目地の設置に関する留意事項

① 一般に舗装表面は横断勾配があり,雨水は地覆・縁石の方に流れ,舗装との境界部から舗装内部

に水が流入する恐れがある.これを防ぐ目的で,地覆・縁石・排水桝などと舗装との境界部に目

地材を設置する.目地材には,注入目地材と成型目地材がある.

② 注入目地材を注入する場合は,必要に応じて隙間部にプライマーを塗布してから注入する.目地

材は加熱しすぎると劣化するので,メーカーが指定する範囲内で管理する.

③ 成型目地材については,貼付部分を良く清掃してプライマーにタックが表れたら押し付けて貼り

付ける.

④ 成型目地材は,アスファルト混合物の舗設時にその熱で溶け出して一体化する.そのため,舗設

時のアスファルト混合物の温度低下に注意する必要がある.

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⑤ 目地は舗装と構造物との接触部から雨水などの浸入を防止し,基層および床版を保護するために

設ける.

⑥ 表層と構造物との接触面には,あらかじめすき間をつくっておき,注入目地材を充填するか,成

型目地材を設置する.

⑦ 表層が密粒度アスファルト混合物の場合,目地材は表層に設ける.また,表層がポーラスアスフ

ァルト混合物の場合,基層に目地材または導水管を設ける.なお,成型目地材は低弾性タイプ,

注入目地材は寒冷地では高弾性タイプ,温暖地では低弾性タイプを選定する.寒冷地に高弾性タ

イプを用いるのは,ゴム含有量が多いため氷点下においても硬くならずに弾性の性質を保持する

ことで,目地の機能を果たすためである.

(6)舗装の施工管理は,所定の幅員および高さに仕上げるように配慮するとともに,温度管理に留意し,

所定の締固め密度が得られるように行う.また,基層施工時には防水層が傷付いていないか確認する

ことも重要である.

(7)基本的には,舗装の検査は日本道路協会図書の仕様に準拠して行うとよい.橋梁部では原則として

コアを抜かず,事前に設けた基準点等を用いて舗装厚さを算出したり,舗装厚さと面積から体積を算

出して合材使用量から舗装全体の締固め密度を算出することがある.

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第5章 既設床版の床版防水システム

5.1 既設床版の防水システムの計画・設計・施工一般

(1)既設床版を対象とした床版防水システムの計画に際しては,既設舗装・床版防水層・床版・排水

設備を対象とした事前調査を実施した上で,既設床版に必要な床版防水システムを計画・設計する

必要がある.

(2)供用中の工事では,交通規制等による制約を受ける場合が多いため,施工時期,施工可能時間な

どを事前に監督員に施工条件を確認したうえで,施工計画を立案する.

(解説)

(1)既設床版を対象とした一般的な施工フローについて図-解 5.1.1に示す.

図-解 5.1.1 既設床版防水システムの施工フロー

(2)供用中の床版を対象とした工事においては,新設床版と同様な施工制約に加え,保全特有の制約に

対して満足する必要がある.特に,交通量の多い路線においては,交通規制による渋滞発生に伴う社

会的影響(社会的損失)が危惧されるため,道路管理者と綿密な工程調整等を実施し,計画立案する

必要がある.

5.2.1 既設床版防水システムの事前調査

5.2.3 既設床版防水システムの下地処理

5.2.4 既設床版防水システムの施工・施工管理・検査

5.2 既設床版防水システムの施工・施工管理・検査

5.2.2 既設床版防水システムの計画・設計

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5.2 既設床版防水システムの施工・施工管理・検査

5.2.1 既設床版の防水システムの事前調査

(1)既設床版を対象として床版防水システムを構築する場合においては,工事実施に先立ち,あらか

じめ事前調査を実施し,既設床版防水システムの設計へ反映させる.

(解説)

(1)事前調査項目としては,既設床版の変状の有無,既設舗装厚さ,既設床版防水工の有無・種類,過

去の床版切削の有無等を的確に把握し,工事規制前に事前調査工として実施し,的確に把握する必要

がある.

1)基本調査

基本調査とは,橋種や橋長・支間長・幅員構成などの橋梁の諸元,供用年数および交通量,大型車

混入率などの供用条件,塩害や凍結融解作用の影響を受ける環境かどうか,過去にどのような補修を

繰り返してきたかを維持管理資料から机上調査をする項目である.基本調査項目を表‐解5.2.1に示

す.

表-解 5.2.1 基本調査項目

調査項目 確認事項 橋梁諸元 橋梁台帳や設計図書から,橋梁の諸元を確認する. 供用条件 供用年数や交通量,大型車混入率などの供用条件を道路管理資料から確認する.

立地条件 塩害や凍結融解作用など構造物の耐久性に影響が大きい立地条件かどうかを地理情

報から確認する. 補修履歴 舗装の補修の履歴を確認し,損傷の原因を推定し,補修設計に反映する.

2)気象条件

床版防水層は一般に,温度に敏感であるため,適用箇所の気候が温暖であるか寒冷地であるか,施

工時期が夏場か冬季であるかなどの判断が防水層を選定するうえで重要である.適切な施工を行うた

めには適用箇所の気温の日変動および季節変動,湿度の季節変動も把握しておく.防水層の気象条件

に関する一般的な留意点を参考までに表-解5.2.2に示す.

表-解 5.2.2 環境温度に対する適用性の調査

調査項目 確認事項

温暖地への適用 夏季に防水層のせん断抵抗力が低下して舗装の側方流動の原因とならないよ

うに,高温時のせん断抵抗の低下しない材料を選定する.

寒冷地への適用 冬季に防水層の伸び性能が低下して,ひび割れの開閉に追従できずにひび割れ

が発生しないように,低温時の伸び性能が低下しない材料を選定する.

夏季の施工時の適用 夏季の路面温度は直射日光により 60℃近い温度になる.材料によってはこの

ような温度に適用できないものもある.また,高温時の付着強度低下が大きな

防水層の場合には舗装施工機械により容易に傷付く場合がある.

冬季の施工時の適用 路面温度が 5℃以下の場合には,防水層が形成できないものもあるので,どう

しても施工しなければらない場合は,防水層の施工可能条件を確認する.

3)施工条件

施工時の条件としては,交通規制で確保できる施工時間,工事内容により可能な施工時間帯,規制

の形態により確保できる作業空間の大きさ,騒音・振動・異臭などの苦情の元になる人家からの距離

などの調査が必要である.施工環境条件として注意をすべき事項を表-解5.2.3に示す

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表-解 5.2.3 施工環境条件の調査項目

調査項目 内容

規制可能時間 季節変動・日変動の交通量データから,渋滞の発生しないあるいは許容

できる程度の渋滞に収まる規制方法・時間帯を求める.

騒音・振動 舗装切削など騒音・振動が発生する工事が含まれているので,この騒

音・振動を発生する工事の施工可能な時間を求める.

異臭の有無 防水層の中には異臭が強い材料がある.このような材料を使用する場合

には人家から離れている必要がある.

4)舗装の調査

舗装の設計厚さや防水層の有無は事前に確認しておかなければならない.舗装面には,舗装そのも

のに起因する変状だけでなく,防水層に起因するものや床版に起因するものが,路面のひび割れ,わ

だち掘れ,ポットホールという形で現れる.そのため,その原因を考慮して再発を防ぐ必要がある.

また,舗装の撤去方法は補修計画に大きく影響を与えるため,舗装切削機械の種類,適用範囲,施工

速度等の情報を収集しておく必要がある.特に,舗装を撤去するには舗装切削機が使用される場合が

多いが,その際に床版を切削しないような施工が求められる.床版面には建設時の凹凸があり,舗装

厚が不均一になっているため,舗装撤去工事を開始する前に舗装厚の分布を面的に把握しなければな

らない.床版面のタックコートや旧防水層の撤去方法も調査する必要がある.舗装の調査項目を表-

解5.2.4に示す.

表-解 5.2.4 舗装の調査項目

調査項目 内容

舗装の厚さ 設計舗装厚を確認するばかりでなく,実際の舗装厚の分布をコアや非破壊試

験機器等を用いて測定する.

防水層の有無 防水層の有無および種類,更には製品名を調査する.

路面の凹凸 凹凸の程度や範囲を目視や簡単な計測機器を用いて調査する.

路面のひび割れ ひび割れの長さや幅,更にはひび割れ率を目視や簡単な計測機器を用いて調

査する.

わだち掘れ わだち掘れの程度や範囲を目視や簡単な計測機器を用いて調査する.

ポットホールの有無

舗装補修跡の有無

ポットホールの発生や舗装の補修跡の存在は舗装の問題ばかりでなく,防水

層や床版に問題がある可能性が高いので,発生位置を記録し,床版下面の状

態と合わせて総合的に調査する.

5)コンクリート床版の調査

床版防水層の施工性や品質は,下地となるコンクリート床版上面の状態に大きく影響を受ける.床

版上面が劣化している場合や凹凸が大きい場合には補修が必要である.しかし,床版上面の状態は舗

装を撤去した後でなければ正確には把握できない.交通規制の時間や方法は社会の経済活動に影響を

与えるので,できるだけ事前に床版上面の状態の予測が必要である.床版上面の劣化の状態や劣化範

囲は,床版下面のひび割れや,漏水の状況,舗装の補修跡の分布などから予測することになる.施工

方法の選択に迷う場合や,施工時間の制約が厳しい場合には,部分的に舗装を撤去しコンクリート面

の状態を確かめる必要がある.コンクリート床版状態の調査項目を表-解5.2.5に示す.

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表-解 5.2.5 コンクリート床版の調査項目

調査項目 内容

床版下面のひび割れ,漏水

床版下面のひび割れは,コンクリートの乾燥収縮などの材料に起因して

起きるもの,施工継目に起きるもの,交通荷重によって起きるものがあ

り,ひび割れの形状で見分けることができる.原因に応じて床版の補修

方法は異なるので,床版の補修を含めて補修工事全体の計画行う.

床版下面の白華

床版下面にひび割れがなくても,白華が出る場合がある.この場合は,

床版の上面に劣化が生じており,水が床版の中に存在している場合が多

いので,補修の可能性も含めて検討する必要がある.

床版上面の状態

床版上面のコンクリートの状態は,舗装や防水層を撤去しなければ正確

には分からないが,舗装の劣化の激しい箇所,床版下面にひび割れ・漏

水等の変状が現れている箇所を部分的に舗装を撤去し,床版の劣化の程

度を把握する.非破壊検査で上側鉄筋の腐食している範囲を求めること

は可能であるので,これから補修範囲を予測することは可能である.

6)排水構造の確認

路面の水の処理は非常に重要である.舗装面に滞水する場合には,車輪の摩擦抵抗を低下させ事故

を引き起こす可能性がある.また,舗装内に水がある場合には,舗装自体の耐久性や防水層との接着

性能が著しく低下する.したがって,路面の水は速やかに排水する必要がある.雨天時の路面の観察

や,排水装置の機能状況を観察し,問題なく排水ができているか調査を行い,不十分な場合には,縦

横断勾配を改良することや排水装置を追加することを考慮する必要がある.特に,防水層上の舗装内

の水の処理が適切にできているか調査する必要がある.排水の調査項目を表-解5.2.6に示す.

表-解 5.2.6 排水の調査項目

調査項目 内容

降雨時の路面の状況 降雨時に路面の水はけの状態を観察する

排水枡の配置 水溜りが生じないような排水枡の配置となっているか

排水枡の構造 枯葉等の障害物が簡単に掃除できるような構造となっているか

舗装内の排水構造 防水層上の排水を行える構造になっているか

7)その他

上記以外の事象が懸念される場合には,適宜判断するとよい.

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- 84 -

5.2.2 既設床版の防水システムの計画・設計

(1)コンクリート床版面は,床版防水層の施工基面となることから,床版防水層の性能を発揮するた

め下地処理および床版補修を実施し,必要な床版基面を構築する必要がある.

(2)排水設備の設置状況や,滞水状況などを勘案し,排水設備の追加設置を検討する.

(3)床版防水材料の選定については,第3章3.5による.

(4)床版防水層や舗装などに施工継ぎ目が生じる場合は,継ぎ目部分から漏水しないよう配慮する.

(5)管理者は,床版防水システムの施工に必要な交通規制時間を確保するよう計画することが重要で

ある.

(解説)

(1)床版防水層を施工する既設床版面は,床版防水層の付着性能に耐えうる十分な強度を有しているこ

と,適切な平滑面を呈していること,付着を阻害するものがないこと,滞水する箇所がないことが重

要であることから,下地処理を実施し床版施工基面を構築する.特に,過去に床版防水が設置されて

いる床版では下地処理の作業が非常に困難となることから,事前調査結果を踏まえて下地処理方法を

計画する必要がある.

また,床版面が返上している場合は,適切に補修を実施し床版基面を構築する必要があり,補修を

怠ると早期にポットホールなどの変状が発生する.

(2)既設床版の排水設計については,既設の排水設備と滞水状況より必要に応じて追加設置する.なお,

床版排水孔を追加設置する場合には,適切に流末処理を行う必要がある.流末処理を怠ると,水等が桁

や下部工構造に飛散し,主部材の腐食等を促進してしまうことがあるので注意する必要がある.

(3)既設床版に用いる床版防水材料の選定については,基本的に新設と同様であるが,既設コンクリー

ト床版では特に内的要因や構造特性に十分配慮し選定する必要がある.例えば,古い基準で施工され

た床版では,十分な除塩がなされていない骨材を用いた内在塩の影響を受けた床版や,アルカリシリ

カ反応の影響を受けた床版などが存在するとともに,床版上面に定着体を有する PC 橋も存在する.

よって,既設床版に用いる床版防水システムの選定は,床版の劣化要因や構造特性を十分理解したう

えで床版防水システムの必要性を整理し選定することとなる.

(4)床版防水層の施工継ぎ目部は,漏水し易く,将来の弱点となり得ることから,漏水しないよう図-

解 5.3.1を参考に設計するとよい.継ぎ目が生じる場合の施工順序は,下流側より施工し上流側より

床版防水層をラップさせると良い(図-解 5.2.1).

また,舗装の継ぎ目は,基層,表層の施工継ぎ目をずらして施工すると良い(図-解 5.2.2).

図-解 5.2.1 床版防水層の施工目地部の処理例 図-解 5.2.2 舗装の施工目地部の処理例

排水勾配

ラップ長100㎜程度

ラップ長●㎜程度

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- 85 -

(5)供用中の工事施工は,交通規制を実施し作業スペースを確保することとなり,交通規制の種類は,

日々解放規制,昼夜間連続規制,通行止め規制などがあり,交通量などの路線特性等を考慮し交通規

制の種類や規制時間帯が決定される.また,交通規制時間帯については,交通規制の実施による渋滞

発生等を避けるため,重交通路線では,夜間に交通規制を行うことが多く,外気温の低下や施工騒音

などが作業工程や材料選択に影響を与える場合があり,床版防水システムの品質低下につながる場合

もある.したがって,管理者は,既設橋の舗装や防水層の施工が所要の品質で確実に完工できるよう

に必要な施工環境を整備することが重要となる.

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- 86 -

(1)1)事前調査に基づく施工計画

切削機による舗装切削除去作業

掘削機(バックホウ)による舗装除去作業

人力による舗装除去作業

(2)1)床版補修

(2)2)既存タックコートの除去

(1)2)既設舗装の除去

5.2.3 既設床版防水システムの下地処理

(1)舗装の撤去は,事前に行われた舗装厚の調査結果に基づいて行い,床版への影響を 小限に抑

えるように留意する.

(2)コンクリート床版面は,防水層に要求される接着性を満たすように適切な処理を行う. また,

供用後の耐久性確保のため,床版の不陸調整および脆弱部分は撤去し補修する.

(解説)

(1)コンクリート床版上の舗装や既存の床版防水層は,コンクリート床版面を傷つけないように撤去

することが基本である.一般的な舗装の撤去方法は図-解 5.2.3のとおりである.

図-解 5.2.3 下地処理の流れ

1)事前調査に基づく施工計画

舗装切削の計画に先立ち,事前調査結果より舗装厚さや既存防水工,床版増厚補強の有無を把握し,

施工機械等の選定・配置計画する.また,床版劣化が想定される場合には,補修用材料,施工機械等の

配置計画する.

2)既設舗装の除去

舗装の撤去については,切削機(図‐解5.2.4)や掘削機(バックホウ)(図‐解5.2.5)等を用いて

行うが,極力,既設床版面を削らないように配慮する必要がある.床版面の建設時の不陸のために切削

によってコンクリート表面をやむを得ず傷つけてしまい,床版表面に切削に伴う凹凸損傷が生じること

がある.切削機によって床版を削ることにより下記の弊害が生じる.

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- 87 -

〔掘削機(バックホウ)〕

バックホウのバケット容量は,平積0.2~1.0㎥また

はそれ以上のものがあるが,一般に,0.35~0.5㎥程

度のものを用いている.

〔切削機〕

幅員に応じて大型切削機,小型切削機などがあり,

切削能力は切削幅 0.5~2.0m,切削深さは 10~30cm

程度まで可能.舗装厚さが10cm以上など比較的厚い

場合に適用する.

・切削機で削られた床版面には切削の衝撃によってマイクロクラックが発生し接着強度が低下

・床版厚さが薄くなり床版の疲労耐久性は大きく低下

(16cm厚の床版を1cm切削した場合の疲労耐久性が,1/16に低下したという実験結果2)もある.)

・切削凹凸形状により,プライマーや塗布系防水材の材料ロスの増大

・切削凸部の床版防水層の膜厚不足

このことから,舗装切削作業時には床版を切削しないよう入念に作業を実施する必要があり,コンク

リート表面に残存するアスファルト塊は小型バックホウや人力ブレーカなどにより丁寧に除去するよう

設計する.

機械による撤去においては,既設舗装であるアスファルト混合物が点在して残る場合がある.施工計

画の立案段階で,付着したアスファルト混合物や既存の防水層を除去する方法や所要時間などを十分に

検討する必要がある.

なお,切削機と掘削機とを併用する場合,コンクリート床版を極力削らないようにするため,不陸箇

所は 10~20mm 程度を残して切削機により切削し,残った部分を掘削機により撤去する.併用する場合

の舗装撤去のイメージを図-解 5.2.6に示す.

図‐解5.2.5 掘削機による剥ぎ取り

図-解5.2.4 切削機による切削

図-解 5.2.6 切削機と掘削機併用時の舗装撤去イメージ

コンクリート床版

切削機作業後の残存アス塊は,床

版を痛めないよう掘削機もしく

は人力にて除去する.

舗装のみを切削機によって切削除去する.コンク

リート床版部は切削しないよう施工する.

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〔ファインミリング切削機〕

ファインミリングドラムを用いた切削機であり,通常の切削ドラムのビット間隔が15mmに対

し,4~6mm 間隔に配置している.狭いビット間隔により,切削時の衝撃による騒音・振動を抑

え,切削表面はきめ細かい仕上りとなる.

誤って既設床版を損傷させた場合には,床版表面にマイクロクラックが発生し,付着性能を低下さ

せる.スチールショットによる研掃によってマイクロクラックを除去することで,接着強度を向上さ

せることが可能であるが,床版厚さは減少してしまうため,疲労耐久性やかぶり厚さの減少による耐

久性低下が生じてしまうため,床版を傷めないよう慎重に舗装撤去する必要がある.

床版をなるべく傷めず,薄層に残存するアスファルト合材を確実に除去するために,ファインミリング

(図-解5.2.6)などの特殊な切削機を用いることもある.

局部的に付着したアスファルト混合物や既存の防水層が残っている箇所を撤去する場合には,簡易切

削機として床版剥離機(図‐解 5.2.8)または人力(図-解 5.2.9)により撤去を行い,出来るだけ床版

を傷めないように配慮する.人力施工においては,ブレーカや電動ピックなどにより撤去処理を行う.

図-解 5.2.6 ファインミリングによる切削 図-解 5.2.7 平滑な切削面

図-解 5.2.8 床面剥離機による薄層剥ぎ取り 図-解 5.2.9 ブレーカ(人力)による残舗装材の撤去

切削床版面の状況 断面修復を伴う橋面防水工

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伸縮装置付近の既設舗装の撤去作業は,ブレーカによるはつりになることから,既設床版に深い凹部

を作らないよう十分に注意する必要がある.

既設床版には,調整コンクリートが施工されている場合があるため,事前調査ではつり範囲を広く取

るなどして対策を検討しておく必要がある.

舗装撤去後,点検ハンマなどによる打音検査および目視などによりコンクリート床版面に浮きが無い

か,平坦性および表面の凹凸などの確認を行う.

(2)既設舗装の除去後には,床版劣化部分,既設舗装の撤去時に生じる床版の凹凸損傷,既存タックコ

ートの残存,既存防水層の残存などが想定されることから,舗装切削前に十分な事前調査を実施し,

工事計画に反映させておくことが重要である.

1)既設床版の脆弱部

舗装が撤去された床版面には,経年劣化による脆弱部や,床版ひび割れ等の変状が生じている場合

がある.このような変状は床版防水層の性能低下に繋がるとともに,床版構造体としての耐久性の低

下に繋がるため適切に措置する必要がある.

a)断面欠損,脆弱部の補修

切削床版等は,点検ハンマなどで打音検査を実施し,脆弱箇所を把握する.脆弱箇所ははつり取り,

補修用モルタルなどで断面修復する.補修の目安として,深さ 30mm 以上の場合は, コンクリート床

版との一体化に配慮し, 収縮率が低いポリマーセメント系の材料で補修する.また,10mm 以下の薄層

で補修する場合は,車両走行による繰り返し荷重に耐えられる樹脂モルタル系の材料を使用するとよ

い.その際には,補修材料と各と各防水システムとの接着性を確認した上で使用する.

図-解 5.4.9 打音ハンマによる断面欠損部 図-解 5.4.10 舗装撤去後の脆弱部

b)ひび割れ補修

床版上面にひび割れが生じている場合は,剥離によるひび割れの場合は断面修復により補修する.

また,負曲げによる線的なひび割れについてはひび割れ注入剤による補修や必要に応じて補強等を検

討する.

図-解 5.4.11 既設床版のひび割れ部

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3)既存タックコート,アスファルト塊の残存

床版面に既存タックコートやアスファルト隗が残存していると付着強度が低下するので,ショット

ブラストなどを用いて付着を阻害するものを除去するよう設計する.過去の施工事例として,ショッ

トブラストによる除去条件は,投射密度50kg/㎡で1~2回程度,またはウォータージェットの条件と

して200MPa前後で除去可能であることからこれらを目安として計画するとよい.

図-解 5.4.14 残存するタックコートの状況 図-解 5.4.15 スチールショットによる除去作業

4)既存床版防水層の残存

旧防水層なども付着を阻害するので除去するよう設計する.なお,旧防水層の除去方法については,

防水層の種類によって除去方法も異なることから,あらかじめ机上調査や開削調査等により既存防水

層の種類を明確にしたうえで,除去方法を設計する必要がある.特に,過去の切削作業による凹部に

旧防水材料が敷設されている場合などはスチールショットブラストでは除去することができないた

め,ウォータージェットにより除去することとなる.

図-解 5.4.16 ウォータジェットによる防水層の除去作業

5)膜養生材の除去

ジェットコンクリート等の増厚コンクリートを使用する場合の膜養生剤は,床版防水層の接着性を低

下させる場合があることから,材料選定に際しては,あらかじめ床版防水層との相性を確認する.なお,

接着性を阻害する場合は,ショットブラスト・ウォータージェット・ポリッシャー等による適切に除去

する必要がある.なお,珪酸系やシラン系の撥水材及びコンクリート改質材は表面研掃で除去すること

が困難であることから使用してはならない.

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6)その他の既設床版状態

①既設排水桝の高さ確認

・既設排水設備の呑口高さより既設床版高さが高いことを確認する.既設排水設備で水が流れないよ

うであれば,既設排水設備の改造または取替え等を検討する.

②伸縮装置等との接着面の処理

・伸縮装置の端面や,排水桝のコバ部など,床版防水層と接触する金属面等は,あらかじめ床版防水

材料と接着することを確認する必要がある.

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5.5 既設床版の防水システムの施工・施工管理・検査

(1)床版防水層の施工は, 新設の場合に準じて行うが, 交通規制などの施工条件や床版面の状況な

ど新設と異なる部分がある. このような制約条件を考慮した施工計画書を参照し, 確実な施工を行う

必要がある.

(2)施工管理・検査では, 床版防水システムとして性能を満足するために, 以下のことを確認する.

1)床版性状の検査(凹凸, 粗さ, 段差, 床版接着材との接着性)

2)防水層の検査(環境測定, 水分, 指触硬化, 膜厚, ピンホール)

3)床版・防水層・舗装総合の一体性の検査(接着強さ)

(解説)

既設床版の下地の凹凸は,新設よりも大きく,サンドパッチング法なので表面粗さなど測定を行うが,

表面粗度の違いにより防水材の使用量が大きく異なる為,事前調査等行い,材料の準備を行うことが必要

である.ウレタン防水の施工例より,粗度3mmの場合,標準使用量に比べ約2倍の使用量が必要になる場

合もある.図-解 5.5.1にウレタン防水の新設床版と粗度3mmでの使用量の比較を示す.

図-解5.5.1 新設床版と補修床版(粗度3mm)の使用量比較(kg/㎡)

走行と追い越部の防水層の継ぎ目は,各施工要領書によるが通常 50mm 以上ラップ幅を取り防水層を重

ねる. 重ねる場合は, 適切な防水材の研掃と打継ぎ材等を使用することが重要である.

図-解 5.5.2ウレタン防水の場合の走行, 追い越し部の打継処理状況

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1)床版性状の検査(凹凸, 粗さ, 段差, 床版コンクリートの脆弱性)

各確認手法としては表-解 5.5.1を参考にすると良い.

表-解 5.5.1床版性状の検査項目と確認手法例

検査項目 確認手法 頻度 評価基準例

床版の凹凸 目視

定規

全面

300㎡を超えないで

範囲で3ヵ所/日

2m定規で15mm以下注1)

床版の粗さ注2)

CTメータ注3)

サンドパッチング注4)

型取りゲージ

300㎡を超えないで

範囲で3ヵ所/日

CTメータ 1mm以下

サンドパッチング 1mm以下

型取りゲージ 3mm以下であること注5)

ひび割れ 目視 全面

ひび割れがないこと

ひび割れがある場合には, ひび割れが適

切に補修されていること

床版の段差注5) 目視 全面 施工要領書に示す許容範囲内であること

床版コンクリート

の脆弱性

床版接着材塗布後の

建研式引張試験注7)

たたき点検

300㎡を超えないで

範囲で3ヵ所/日

全面

床版接着材とコンクリートとの接着強度

が1.2N/mm2以上であること注8)

浮きがないこと

注1)この評価基準は, 日本では規定されていないため, スイスで採用されている基準を一例として示し

た. 床版防水層の種類により, ある程度の段差を許容する場合があるため, 床版防水層製造業者

が作成する施工要領書を参考にしてもよい.

注2)床版の粗さ確認方法の選定は, 施工条件を勘案して行うとよい.

注3)CTメータによるきめ深さの測定は, (社)日本道路協会発行の「舗装調査・試験法便覧」で規定さ

れた S023-3T(回転式きめ深さ測定装置を用いた舗装路面のきめ深さ測定方法)に準拠して実施する

と良い.

注4)サンドパッチング法によるきめ深さ測定は, 「舗装調査・試験法便覧」で規定されたS022-1(SL 砂を

用いた舗装路面のきめ深さ測定方法)に準拠して実施するとよい. 図-解5.3.16

注5)この評価基準は, 「構造物施工管理要領」で採用された基準値を一例として示した. なお使用する

床版防水が床版の粗さを許容できる場合には, その限りではない. また, 交通規制時間の制約等

の事由により, 表面処理を十分行えず表面粗さが基準値を満たない場合は, 発注者や監督等と協

議の上, その対処方法を決定するとよい.

注7)たたき点検で床版コンクリートの脆弱性が疑われる箇所について, 必要に応じて建研式引張試験を実

施するとよい. 図-解5.3.20

注8)評価基準は, 「構造物施工管理要領」で採用されているものである.

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砂の体積:50cm3

平均直径:23cm(縦 22cm, 横 24cm)

砂の広がり面積:415cm2

粗度:50/415 ×10 =1.2mm

図-解 5.5.3サンドパッチング法によるきめ深さ測定例

①治具接着面の清掃と目荒らし

②治具接着(接着材は3時間程度で硬化する速硬化接着材)

③治具側面切込み

④接着試験(通常3個以上)

注)低温では, 具接着材の硬化が遅くなるため,3時間

以上要する.

図-解 5.5.4 下地と床版接着材 建研式引張試験状況例

(2)防水層の検査(環境測定, 水分, 指触硬化, 膜厚, ピンホール)

各確認手法としては表-解 5.5.2を参考にすると良い.

表-解 5.5.2 防水層の検査項目と確認手法例(ウレタン防水工法の施工要領書より)

検査項目 確認手法 頻度 評価基準例

環境測定注9)

温湿度計

露点計

表面温度計

各防水層施工前

各施工要領書による

温度: 0℃以上)

湿度: 85%以下

下地温度と露点差: 3℃以上高いこと

水分の測定注10) 電気抵抗式水分計

HI-100 3 点以上/500 ㎡全面

各施工要領書による

例(250 カウント以下)

指触硬化時間注11) 指による乾燥時間

の確認 各防水層前

各施工要領書による

指に各防水材が着かなくなる時間

膜厚注12) マックゲージ 1 箇所以上/200 ㎡

1 箇所以上/防水施工日毎

各施工要領書による

例(1.2mm以上)

ピンホール注13) ピンホールテスタ- 全ての車両走行輪上で幅

1m 程度 無いこと

注9) 環境測定により, 環境がでない場合は施工を中止する.

0℃以下の場合, 下地コンクリートに含まれる水分が凍っている状態であるため,後で水分が蒸発し

防水層が膨れる原因になる. 下地温度と露点の差が3℃以下になると, 下地コンクリート・各防水層

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に結露が発生する危険が有るため, 防水層の膨れや接着性の低下の原因になる.

環境測定例

気温:20.2℃

湿度:65.0% (<85%)

露点:13.4℃

床版温度:22.0℃(>0℃)

露点との差:8.6℃(>3℃)

水分:154 カウント(<250)

図-解 5.5.6 環境測定例

注10)電気抵抗式水分計(HI-100)による水分測定は従来の水分計よりも精度よく測定できるため, 下地

コンクリートや各防水層上の水分測定し, 各施工要領書の評価基準に従い次工程に移行できるか検

討を行う(図-解 5.5.5).

図-解 5.5.5電気抵抗式水分計

注11)各防水層の次工程移行時間は重要である. 防水材等は現場にて化学結合し反応(硬化)していく材

料が多く, 硬化前(溶剤が残った状態,硬化せずベタベタな状態)に次工程を施工すると接着不良

が起こり易く, 特に低温(5℃以下)になると硬化が進みにくく注意が必要である.

注12)膜厚は通常5点/1箇所測定する. 特に既設床版で凹凸が大きい場合は, 凸の部分が薄くなるため

その分使用量を多くする必要がある.

注13)ピンホールテスターによる試験範囲は全ての車両走行輪上で幅1m程度で行う.

測定はブラシ式ピンホール試験機(例:サンコー電子TO-150C)を用い,電圧は5kVとする.

測定速度は歩行速度以下とする(図-解 5.5.6).

図-解 5.5.6 既設床版でのピンホール(貫通孔)検査状況

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(3)床版・防水層・舗装総合の一体性の検査(接着強さ)

各確認手法としては表-解 5.5.3を参考にすると良い.

表-解 5.5.3 床版・防水層・舗装総合の一体性の検査項目と確認手法例

検査項目 確認手法 頻度 評価基準例

引張接着試験注14) 建研式による計測舗装上

で実施

5 体以上/橋梁(連)毎

かつ舗設日毎

0.6N/mm2以上

(23℃)

レベリング層の浮き注 14) 打音検査 1 箇所/10 ㎡以下 異常が無いこと

注14)保全の現場では, 時間制約が厳しく, 防水層施工時の性能を確認することが困難な場合がある.

その場合には, 試験施工で確認した施工方法で施工を行うことで確認する. なお, 試験施工では

実施工で適用する施工方法で施工を行い, 所定の性能を有していることを検査することを基本とす

る.

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第6章 床版防水システムの維持管理

6.1 点検・調査

(1)点検は,一般的に初期点検,日常点検,定期点検に区分される.

(2)点検・調査は,変状の要因を推定し,措置方針を立案することを目的に実施する.

(1)床版防水は,舗装と床版に挟まれた部分に位置することから,直接目視などにより点検するこ

とは不可能である.従って,床版防水の変状は一般的に舗装路面や床版下面の状態を観察するこ

とにより間接的に察知される.このことから,防水層に起因した舗装の変状や,防水層の機能喪

失に伴う床版の変状などに着目した点検・調査により措置方法を検討することが重要となる.

初期点検とは,建設後直後に実施する構造物の初期状態を把握する点検をいい,維持管理を始

めるに際しての基本となるデータを収集することを目的に実施する.初期点検では,舗設後の浮

き等の状況や床版下面での水しみや漏水の有無などの状況を点検し記録する.

日常点検とは,日常的に行われる巡回パトロール車等による車上点検をいい,路面の性状を日

常的に監査することを目的に実施する.日常点検では,車上からの目視点検で判別できる路面の

変状の位置情報や変状程度などを記録する.

定期点検とは,5年から 10 年程度に 1 回実施する詳細な点検注1)をいい,構造物全体系の診断

や中長期計画を立案するために必要な基礎データを収集することを目的に実施する.定期点検は,

近接目視を主体の点検ではあるが,場合によって打音調査なども併用される.また,目視や打音

によって変状の状態を把握することが困難な場合には非破壊調査なども実施される.定期点検で

は,変状の程度を的確に把握すると共に,今後の進行過程を予測することが求められる.変状予

測に際しては,日常点検で収集した路面の変状過程や,補修履歴などを整理すると共に,下床版

の漏水状況などを過去の点検結果と比較し評価すると良い. 注1)国土交通省では概ね 5 年/回,NEXCO では 5 年~10 年/回で実施されている.

表-解 6.1.1 点検の項目

点検の種類 点検の場所 点検の項目 点検の方法

初期点検 舗装路面 浮き・はがれ 近接目視,打音点検

床版下面 水しみ・漏水 近接・遠方目視,打音調査

日常点検 舗装路面 ポットホール等 車上による目視

定期点検 舗装路面 ポットホール等 近接・遠方目視

床版下面 水しみ・漏水 近接・遠方目視,打音調査

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(2)点検,調査は,変状の要因を特定することが重要であり,変状要因や変状の程度より措置方針

を立案することが可能となる.

路面のポットホール等は,走行性能に影響を与える変状であり,主な発生要因は舗装構造体の変

状,床版防水層の変状,床版コンクリートの変状に区分される.以下に車両の走行に支障をきた

す代表的な変状を挙げる.

a)混合物(表層)のはがれ(図-解 6.1.1参照)

アスファルト混合物のはがれが原因で発生するものをいう.

表層部分のはがれについては,速やかに表層部分の補修を行う必要がある.

図-解 6.1.1 混合物の表面はがれの一例

b)混合物(基層)の変状(図-解 6.1.2参照)

アスファルト混合物自体のはがれ等が原因で発生するものをいう.

表層部分のみの変状であれば,表層部分の補修を行うことで足りるが,レベルング層も変状している

場合については,床版防水層の変状も危惧される.基層が変状する主な要因としては,防水層面に滞水

した水の影響により基層が早期に劣化する場合や,床版コンクリートの変状に伴って基層が変状する場

合などがある.このように,基層が変状した場合については,基層のみならず防水層,コンクリート床

版部分の補修も必要となる場合が多い.

図-解 6.1.2 混合物のはがれの一例

表層部分のポットホール

コンクリート床版

基層

表層

床版防水

基層からのポットホール

コンクリート床版

基層

表層

防水層面での滞水

床版の変状

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c)補修あとのはがれ(図-解 6.1.3参照)

加熱アスファルト混合物や常温混合物などで補修した箇所に発生した穴をいう.

図-解 6.1.3 補修あとのポットホールの一例

d)亀甲状ひび割れ(図-解 6.1.4参照)

亀甲状ひび割れとは,縦方向,横方向の線状ひび割れが相互につながった状態をいう.

アスファルト混合物層の劣化・老化および舗装厚さ不足や路床・路盤の支持力の低下が原因で発生す

ることが多い.また,排水性舗装の場合,基層混合物のはく離が原因で同様なひび割れが発生すること

がある.通行車両の影響を受けて舗装路面にひび割れが発生する.長期間放置すると通行車両や雨水の

影響を受け,ポットホールの発生に至る場合もある.

図-解 6.1.4 亀甲状ひび割れの一例

亀甲状ひび割れ

コンクリート床版

基層

表層

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e)流動わだち(図-解 6.1.5参照)

流動わだちとは,交通荷重によりアスファルト混合物層が塑性変形することにより発生し,車輪走行部

は沈下し,その周辺(車線中央および路肩側)は盛り上がることをいう.

通行車両の影響を受けて舗装路面にわだち掘れが発生する.長期間放置すると通行車両や雨水の影響を

受け,ポットホールの発生に至る場合もある.

図-解 6.1.5 流動わだちの一例

f)表層からのズレ(図-解 7.1.6参照)

表層からのズレとは,車両の走行にともないアスファルト混合物の表層部が縦断方向にズレた現象をい

う.防水層と舗装又は床版との接着不良により,防水層にズレが生じて舗装路面にズレが発生する.変状

発生後は通行車両の影響を受け,早期にポットホールの発生に至る場合もある.

図-解 6.1.6 表層からズレの一例

流動わだち

コンクリート床版

基層

表層

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g)補修跡のズレ(図-解 6.1.7参照)

補修した跡およびその周辺で発生したズレをいう.

図-解 6.1.7 補修跡のズレの一例

h)ブリスタリング(図-解 6.1.8参照)

ブリスタリングとは,舗装や防水層内に閉じこめられた水分や油分が気候的な作用で気化し,その蒸気

が上層のアスファルト混合物を押し上げる現象である,鋼床版部のグースのような気密性の高い箇所に発

生しやすい.

変状発生後は通行車両の影響を受け,早期にポットホールの発生に至る場合もある.

図-解 6.1.8 ブリスタリングによる変状の一例

コンクリート床版

基層

表層

床版防水層の接着不良によるずれ

コンクリート床版

基層

表層

床版内の水分によるブリスタリング

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6.2 補修

(1)維持管理における補修は,路面の走行性能を復旧させるとともに床版防水の防水性能も復旧

させる必要があり,補修方法は,緊急補修,部分補修,大規模補修に区分される.

(2)補修時の材料については,施工環境や今後の補修計画を勘案した上で選定する必要がある.

(3)床版の補修時においては,必要に応じて排水設備を設置する必要がある.

【解説】

(1)

1)緊急補修

舗装路面の変状を日常点検等により発見した場合には,速やかに緊急補修を行う.舗装路面の変

状は,走行車両に直接影響を与える可能性があることから,緊急的に補修される.緊急補修に際し

ては,施工機械や材料手配,交通規制の実施など様々な制約が発生する場合が多く,一般的には簡

易補修材により路面の走行性能を一時的に回復させる程度の措置が施される.このことから,緊急

補修では,床版防水は復旧されない場合が多いことから,後の部分補修時に防水性を復旧する必要

がある.緊急補修部分を放置すると,補修材料が劣化し再度ポットホールが発生することや,補修

部分からの漏水により床版コンクリートが劣化し,変状範囲が拡大する恐れがあることから,緊急

補修部分は,速やかに部分補修を行う必要がある.

また,緊急補修時にはポットホールの発生要因を究明し,後の部分補修方法の検討の一助とする

と良い.

2)部分補修

部分補修は,緊急補修を実施した部分を計画的に補修することをいう.緊急補修部分は補修材料

の耐久性が低いことや,防水機能が喪失していることなどから,概ね 1 カ月程度以内に部分補修を

実施する必要がある.部分補修では,適切な施工時間が確保された状態で,加熱合材による舗装構

造体の復旧や,床版防水層の復旧などが行われる.また,下地コンクリートの状態によっては,床

版補修も実施されることもある.このように,部分補修を適切に実施することで,路面の走行性能

および防水性能が復旧されることとなる.

図-解 6.2.1ポットホールの発生 図-解6.2.2常温合材による緊急補修 図-解 6.2.3補修完了

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3)大規模補修

大規模補修とは,変状した構造物の健全性を大幅に改善することや,予防保全として耐久性を向上

することなどを目的に舗装の全層打換え,床版防水層の再設置,床版コンクリートの補修・補強など

を実施するものである.

(2)補修時の床版防水材料には,床版防水の保有する一般的な性能(防水性,付着性,耐久性など)の

他に,交通環境や緊急性に応じて,施工の容易さ(特殊機械,施工時間など)や材料の取扱い易さ(取

扱資格の有無,保管の容易さなど)なども求められる.

(3)コンクリート床版,床版防水層および舗装の補修時には,変状のメカニズムを推定し,必要に応じ

て排水設備を設置することが,補修部分の延命化に寄与する.

床版防水層が設置されている場合,床版防水層が舗装より浸入した水を止水することから,止水さ

れた水を適切に排水することが舗装や防水層の耐久性を維持するためには非常に重要である.部分的

に舗装や防水層が破損した場合には,防水層面の滞水による影響の可能性も高いことから,適切に排

水することが重要となるため適切な位置に水抜きのための排水孔を設置するとよい.

また,床版下面にはく落対策のための繊維シートや補強を目的とした下鋼板などが設置されている

ような床版については,床版内に水を溜め易い構造であることからこのような場合も水抜き孔を設置

することが重要である.

なお,水抜き排水孔の流末については,桁等に垂れ流すことなく,排水パイプなどによって既設排

水設備に接続するなど適切に処置する必要がある.

図-解 6.2.4床版コンクリートの補 図-解 6.2.5床版防水層の復旧 図-解 6.2.6舗装の復旧