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第二回 9章 脂質と生体膜 ・脂質の分類 ・脂質二分子膜 ・膜タンパク質 ・膜タンパク質、分泌タンパク質の合成と膜輸送 1

脂質と生体膜 - 九州大学(KYUSHU UNIVERSITY)katayama/dl/seitaibunshi_02.pdf脂質 脂質の役割 1.二分子膜(生体膜)を形成 2.エネルギーの貯蔵体

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  • 第二回

    9章 脂質と生体膜

    ・脂質の分類

    ・脂質二分子膜

    ・膜タンパク質

    ・膜タンパク質、分泌タンパク質の合成と膜輸送

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  • 脂質

    脂質の役割

    1.二分子膜(生体膜)を形成

    2.エネルギーの貯蔵体

    ⇒ アセチルCoAの生合成の原料

    3.シグナル伝達に関与

    ⇒ 生体膜には流動性が必要

    脂質の分類

    ・脂肪酸

    ・トリアシルグリセロール

    ・グリセロリン脂質

    ・スフィンゴ脂質

    ・ステロイド

    ・その他

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    定義:長鎖脂肪酸あるいは炭化水素鎖を持つ生物由来の分子

    脂肪酸

    トリアシルグリセロール

    グリセロリン脂質

    ステロイド

    スフィンゴ脂質

  • 脂肪酸

    ・C14~20個程度

    ・炭素数は偶数(C2単位で生合成されるから)

    ・不飽和結合はほとんどシス体。充填性が悪く、低融点。

    ・多不飽和のときは、二重結合がC3ごと(共役しない)。

    ・脂肪酸の代謝により、ATPが作られる。

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  • トリアシルグリセロール

    ・油脂(油は室温で液体、脂は固体)と呼ぶ

    ・グリセロールと脂肪酸から生合成

    ・エネルギー貯蔵物質

    ・糖やタンパク質より酸化密度が低いため、完全酸化するとき、大きなエ

    ネルギーを生じる

    ・水を含まず、高密度で蓄積可能

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  • グリセロリン脂質

    ・両親媒性

    ・細胞膜の主成分

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    1-ステアロイル-

    2-オレオイル-

    3-フォスファチジルコリン

  • ホスホリパーゼ

    ・グリセロリン脂質の加水分解酵素

    ・加水分解する位置により、4種に分類される(A1, A2, C, D) ・A2:リゾリン脂質を生じる。ハチ毒に含まれ、リゾリン脂質により細胞膜を破壊。

    ・C:1,2-ジアシルグリセロールを生じる。これはプロテインキナーゼを活性化(後述)。

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    ホスホリパーゼA2

  • スフィンゴ脂質

    ・セラミドにヘッドグループがついたもの。

    ・スフィンゴシンは、パルミトイルCoAとセリンから生

    合成される。

    ・代表的なスフィンゴ脂質として、

    スフィンゴミエリン:神経細胞の軸索を取り囲んで

    絶縁する(ミエリン鞘)

    ガングリオシド:頭にシアル酸を含むオリゴ糖が

    ついたもの。脳に多い。

    7 スフィンゴミエリン ガングリオシド

  • ステロイド

    ・4つの環からなる。

    ・コレステロール:細胞膜脂質の30~40%を占める。ステロイドホルモンの原料。

    ・ステロイドホルモン

    グルココルチコイド類:糖、タンパク質、脂質の代謝の調節。炎症反応、ストレスへの抵抗

    ミネラルコルチコイド類:腎臓からの塩と水の排泄を調節

    性ホルモン:アンドロゲン(男性ホルモン)、エストロゲン(女性ホルモン)。

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  • 脂質二分子膜

    ・脂肪酸(円錐形)はミセルを作り、リン脂質(円筒形)は二分子膜を作る。

    ・フリップフロップは遅い(何日もかかる)。ラテラル拡散は速い(流動性がある)。

    ・ゲル-液晶転移温度(10~40℃)を持つ。転移温度以上の液晶状態のとき、

    流動性がある(生体温度では液晶状態)。

    ・コレステロールは固い構造のため、二分子膜に加えると、膜の流動性を下げる。

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  • 膜タンパク質 ・膜内タンパク質(膜貫通型、膜アンカー型)と膜面タンパク質に分類される。

    ・膜面タンパク質:静電相互作用や水素結合で膜に弱く結合(例:シトクロムc)

    ・膜貫通型:膜貫通領域は疎水的(α-へリックスや、β-バレル構造をとる)。

    細胞内・細胞外ドメインは親水的。

    グライコフォリンA 膜貫通領域はα-へリックス。

    赤血球に存在。高度に糖修飾されており、赤血球の表面へ

    の物質吸着を抑制。

    バクテリオ

    ロドプシン

    (7つのα-へリック

    ス。光感受する。内

    部にロドプシン。)

    大腸菌OmpF

    ポリン

    (16本のβ-ストラ

    ンドからなるβ-バレ

    ル。アルカリ金属イオ

    ンを透過する。)

  • ・膜アンカー型:疎水基で細胞膜にアンカー。

    膜タンパク質

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    グリコシルフォスファチジルイノシトール

    (GPI)結合タンパク質

    タンパク質名 結合部 存在位置 配列

    ミリストイル化 N末端Glyのαアミノ基 細胞内 MGXXS/T-

    S-パルミトイル化 N末端もしくはC末端のCys 細胞内

    N-パルミトイル化 N末端Cysのαアミノ基 細胞内 CGPGR

    ファルネシル化 C末端のCys 細胞内 -CXXA-

    ゲラニルゲラニル化 C末端のCys 細胞内

    GPI結合 C末端 細胞外

    プレニル化

  • 流動モザイクモデル

    ・膜貫通型タンパク質は、細胞膜に浮かんでおり、

    ラテラル拡散できる。

    ・証明法:細胞融合、FRAP

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    FRAP:蛍光褪色回復法 (ラテラル拡散により、褪色部位の蛍光が回復)

    細胞融合 (マウスとヒト細胞の膜たんぱく

    質を異なる蛍光分子で染色した後、

    融合させる)

  • 膜骨格

    ・細胞膜の裏側にある、タンパク質からなる網の目構造。赤血球ではスペクトリン

    からなり、その他の真核細胞ではアクチンからなる。

    ・赤血球がへこんだり、毛細血管を通過する際の圧力に耐えられる原因 (スペクトリン異常のヒトは、赤血球は球形で壊れやすく、貧血になる)

    ・膜貫通タンパク質は、骨格で囲まれた区画の外に出にくい。 ⇒ シグナル伝達の高効率化(後述)

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    http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/34/Cytoskeleton_(Elliptocytosis).png

  • 脂質の分布の非対称性

    ・フリッパーゼにより、両面のリン脂質の分布をある一定値に保つ。フリップフロッ

    プを10万倍加速。 ・内面のフォスファチジルセリンは、たとえば、細胞内の膜たんぱく質(酵素)のコファクターになる。

    ・フォスファチジルセリンが外に出ることは、死細胞としての目印になり、貪食細胞が除去する。

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    フォスファ チジルセリン

    フリッパーゼ

    活性化

  • ラフト

    脂質ラフト(筏)

    15 2000 Science 1721

    楠見先生動画

    ・流動性の低いドメイン(~10 nmくらい)

    ・コレステロール、スフィンゴ糖脂質、スフィンゴ

    脂質、GPI型タンパク質、アシル化タンパク質など

    が集まる

    ・シグナル伝達の場になっている(後述) 細胞外

    細胞内

  • 分泌タンパク質と膜タンパク質の合成1

    ・分泌タンパク質(細胞外へ分泌される)、膜タンパク質、リソソームタンパク質

    ⇒ 小胞体結合型リボソーム(粗面小胞)で合成。糖鎖の付加。

    ・可溶性タンパク質、ミトコンドリアタンパク質

    ⇒ 遊離型リボソームで合成。

    ・シグナルペプチド:分泌タンパク質と膜たんぱく質のN末端にあり

    (10-30残基)、小胞体へナビゲート

    Ribosome Liposome

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  • 分泌タンパク質と膜タンパク質の合成2

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    分泌タンパク質の場合 膜タンパク質の場合

    シグナル認識粒子(SRP) リボソームの小胞体への結合メカニズム

  • 分泌タンパク質と膜タンパク質の小胞輸送

    ・小胞体からゴルジ体に輸送されて、翻訳後修飾(糖鎖付加)された後、

    適所(細胞膜、リソソーム)に輸送される。

    ・60~150 nmのコート小胞(クラスリン、 COPI、COPII)により輸送。

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  • 小胞と膜の融合 ・小胞上のSNAREが、膜上のSNAREを認識し、融合させる

    (通常、膜は融合できない)。

    ・HIVの感染は類似のメカニズムで起こる。