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Copyright © 2010 JETRO. All rights reserved. 平成22年度 海外輸入制度調査 子供向け製品の輸入規制 (米 国) 2010 12 ジェトロ・ニューヨーク・センター

子供向け製品の輸入規制 (米 国)...(4)玩具の安全基準(ASTM F963)義務付け対象 ..... 7 (5)特定フタル酸エステル類含有量規制対象となる玩具と育児製品

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平成22年度 海外輸入制度調査

子供向け製品の輸入規制

(米 国)

2010年 12月

ジェトロ・ニューヨーク・センター

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目 次

Ⅰ.子供向け製品の輸入規制関連法規 .............................................................. 1

1.消費者製品安全改善法(CPSIA)における子供向け製品の安全性に関する条項 ............. 1

(1)子供向け製品の定義 .................................................................................................. 2

(2)鉛含有塗料規制・鉛含有量規制 ................................................................................ 2

(3)第三者検査機関による子供向け製品検査の義務付け ............................................... 4

(4)玩具の安全基準(ASTM F963)義務付け対象 ............................................................ 7

(5)特定フタル酸エステル類含有量規制対象となる玩具と育児製品 ............................. 7

(6)子供向け製品の表示規定、輸入製品トレーサビリティー ...................................... 10

2.法規制違反品の判断 ........................................................................................................ 12

(1)輸入業者とメーカーの報告義務 .............................................................................. 12

(2)リコールのプロセス ................................................................................................ 12

(3)罰則事例 ................................................................................................................... 13

3.法規以外の自主的安全基準およびガイドライン ............................................................ 13

4.通関時差し止め/関税 .................................................................................................... 15

Ⅱ.子供向け製品に適用される規制および留意点(商品別) ............................ 17

1.玩 具 .............................................................................................................................. 17

2.子供服 .............................................................................................................................. 19

3.乳児の運動具(Baby walkers, bouncer, jumper) ....................................................... 19

4.乳幼児向け商品 ............................................................................................................... 20

Ⅲ.子供向け製品のリコール事例 ................................................................... 21

1.商品が法規や連邦規則に違反しているため自主的リコールされた事例 ....................... 21

2.商品に危険性があるため自主的リコールされた事例 ..................................................... 25

3.カドミウム含有規制違反のため自主的リコールされた事例 .......................................... 28

4.民事訴訟で和解した事例 ................................................................................................ 28

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Ⅰ.子供向け製品の輸入規制関連法規1

生産国がどこであるかにかかわらず、子供向け製品を米国で販売するためは、製品・同構成

部品・含有物質について、安全面から順守しなくてはならない法規や行政命令(連邦規則)、

自主的安全基準がある。特に 2008 年 8 月 14 日に成立した消費者製品安全改善法(Consumer

Product Safety Improvement Act of 2008、以下 CPSIA)は子供向け製品の安全性向上を重点

的に強化したものである。同法は米国で販売される消費者製品に関する規制を定めた 1972 年

消費者製品安全法(Consumer Product Safety Act、以下 CPSA)の修正法である。2

本レポートでは CPSIA によって強化された子供向け製品の安全性に関する規制を中心に子供

向け製品を米国で販売する際の留意点、消費者製品安全委員会(Consumer Product Safety

Commission)や関連法規などを説明する。

また、ケーススタディーにおいて代表的な子供向け製品を具体的に取り上げ、適用される規

制関連情報を挙げ、最近のリコール例と規制違反に対する同委員会の罰則例を取り上げる。

1.消費者製品安全改善法(CPSIA)における子供向け製品の安全性に関する条項3

2008 年 8 月 14 日に施行された CPSIA では、子供向け製品の安全性強化に焦点が置かれている。

以下、同法第 1章における子供向け製品に関連した条項を示す。

第 101条: 鉛含有規制

(Sec. 101. Children’s products containing lead; lead paint rule.)

第 102条: 第三者機関による検査、認定

(Sec. 102. Mandatory third party testing for certain children’s products.)

第 103条: 表示規定とトレーサビリティー

(Sec. 103. Tracking labels for children’s products.)

第 104条: 乳幼児向け製品の安全基準と消費者登録

(Sec. 104. Standards and consumer registration of durable nursery products.)

第 105条: 玩具とゲームの広告表示必要条件

(Sec. 105. Labeling requirement for advertising toys and games.)

第 106条: 玩具の安全基準義務

(Sec. 106. Mandatory toy safety standards.)

第 107条: マイノリティーの子供の死傷予防に関する研究

(Sec. 107. Study of preventable injuries and deaths in minority children related

to consumer products.)

1 法規や連邦規則には、修正や変更の動きが頻繁にある。本調査報告は、2010年 11月 12日時点で公式発表のあった情報を基

に作成した。「現時点で」または「現在」という場合、「2010年 11月 12日時点」であることを示す。 2 CPSIAには、「CPSAのXX条項に加筆して○○のように修正」「CPSAにXXという条項を挿入する」などの修正が明記された。 3 http://www.cpsc.gov/cpsia.pdf

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第 108条: 特定フタル酸規制

( Sec. 108. Prohibition on sale of certain products containing specified

phthalates.)

以下、CPSIA における子供向け製品の定義および輸入品に関係の深い条項である 101 条、102

条、103条、106条、108条を中心に概要を説明する。

(1)子供向け製品の定義

12 歳以下を子供と定義し、子供向け製品とは主に 12 歳以下の子供向けに企画された消費財の

ことをいう。12歳以下の子供向け製品と判断されるための主な基準は次の 4点である。

(a)メーカーによる製品使用説明(ラベル表示含む)に 12 歳以下の子供向けと表示されて

いる

(b)12歳以下の子供向けの使用に適切なパッケージ、表示、販促、広告がなされている

(c)一般的消費者に 12歳以下の子供向けと認識されている

(d)2002年 9月発行の年齢基準書とその修正版に順守するとみなされる

子供向け製品の定義に含まれるものは、一般的な玩具や縫いぐるみ、子供用アクセサリー、

乳児用品、運動具、ゲーム、幼児教材、子供用ベッドなど非常に幅広い。消費者製品安全委

員会は、同法の対象となる製品の定義に関する質問やコメントを受けた製品について、その

解釈の最終方針を 2010 年 10 月に発表した4。それによると、例えば人気キャラクターの形を

した照明器具、子供向け DVD・CD、子供向け装飾の施されたプレイヤーなども対象製品となる。

ケースバイケースで判断される場合もある。

子供向け製品のパッケージについては、製品を取り出した後に捨てる箱や袋などは原則的に

同法の対象ではないが、箱や袋を製品と共に使用する製品(例:積み木収納箱など)につい

ては製品の一部とみなされ、同法の条項によっては規制対象となる。

また、同法の条項(鉛含有、第三者検査機関による子供向け製品検査の義務付けなど)ごと

に、規制対象製品の範囲と定義が細かく示されている。詳細は官報で公布される連邦規則

(Code of Federal Regulations:CFR)にて同委員会の行政命令を常に確認する必要がある。

(2)鉛含有塗料規制・鉛含有量規制5

CPSIA 第 101 条では、子供向け製品の鉛含有量規制を 3 段階で適用することを定めている。各

段階における対象製品や除外製品の詳細・解釈等については、消費者製品安全委員会が随時

発表する方針や見解書、官報に公布される連邦規則を確認する必要がある。

以下の表は、これまでに発表された最終規定をまとめたものである。

鉛成分含有

規制

塗料及び表面コーティング 塗料及び表面コーティング以外

(基板部分など)

第 1段階 2008 年 12 月 21 日以降に製造され

た製品は、鉛含有量が 600ppm を超

えないことを示す第三者検査機関

による認定が必要。

2009 年 2 月 10 日から鉛含有量

600ppm以上の製品の販売を禁止。

4 消費者製品安全委員会 http://www.cpsc.gov/about/cpsia/childproducts.html

官報 16 CFR Part 1200 http://www.cpsc.gov/businfo/frnotices/fr11/childprod.pdf 5 消費者製品安全委員会 http://www.cpsc.gov/about/cpsia/sect101.html#stays

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第 2段階 2009 年 8 月 14 日以降に製造され

た製品は、鉛含有量が 90ppm を超

えないことを示す第三者検査機関

による認定が必要。

2009 年 8 月 14 日から鉛含有量

300ppm 以上の製品の販売を禁止。

第三者機関による検査・認定の施行

は 2011年 2月 10日まで延期。

第 3段階 同上 鉛含有量 100ppm 以上の製品の販売

を禁止。技術的に可能であれば、

2011年 8月 14日から適用。

【塗料および表面コーティング/それ以外の定義】

*塗料と表面コーティング(Paint and similar surface-coating materials)の「塗料」は、

一般市販される塗料すべてを対象とし、さらに子供向け製品すべてと、一部の家具(ベッド、

椅子、テーブルなど)の表面に使われる塗料とコーティング素材が含まれる。一般塗料、一

部の子供向け製品や家具への塗料の鉛含有規制値は、すでに 1978 年には 600ppm 以下と連邦

規則6で決まっていたにもかかわらず、2000 年代半ばに多くの玩具や子供用品から規制値を

超える鉛が検出されて大規模なリコールがあったことを受け、CPSIA 第 101 条は子供向け製

品には第三者機関による検査と認定を義務化した。一方、プラスチック素材の表面着色加工

やメッキ加工など、基板の一部と認められる表面素材は同規制対象外となり、基板としての

規制値が適用される。

*「塗料と表面コーティング以外」とは、対象製品のあらゆる部分に含有される鉛を対象と

する。例えば、本体基板内に規制値以上の鉛が含有されていれば、表面塗料やコーティング

が規制値以下であっても、規制違反と判断される。

【第1段階】

*塗料と表面コーティングについては、この段階から 2008 年 12 月 21 日以降に製造された商

品を対象に第三者機関による検査と認定(鉛含有量 600ppm以下)が必要となった。

*塗料とコーティング以外の製品本体部分については、第三者機関による検査と認定は必要な

いが、2008 年 11 月 12 日以降に製造された商品についてはメーカー(輸入品の場合は輸入

業者)による安全確認書(GCC: General Certificate of Conformity)7が必要である。

*子供向けの金属性アクセサリーは、2009 年 3 月 23 日以降に製造された製品を対象に第三者

機関による検査と認定(鉛含有量 600ppm以下)が必要となった。

【第2段階】

*塗料と表面コーティングについては、2009 年 8 月 14 日以降に製造された製品を対象に第三

者機関による検査と認定(鉛含有量 90ppm以下)が必要となった。

*塗料と表面コーティング以外(基板部分など)の製品についても、第三者機関による検査と

認定を必要とするという提案を消費者製品安全委員会が行ったが、最終決定は 2011 年 2 月

10 日まで延期。但し、2009 年 8 月 14 日から鉛含有量を 300ppm 以下とする法規を順守する

必要があり、それ以上の商品は違法となる。

*子供向けの金属性アクセサリーについては、2009 年 8 月 14 日以降に製造された製品を対象

に第三者機関による検査と認定(鉛含有量 300ppm以下)が必要となった。

6 連邦規則 16 C.F.R. 1303: http://www.cpsc.gov/BUSINFO/regsumleadpaint.pdf 7 GCC とは、メーカーや販売業者が自主的に検査を行い、該当する法律を順守していることを示す自己申請書のこと。CPSIA 施

行によって、同法および関連法規の規制対象製品や、安全基準のある製品すべてに必要とされる。消費者製品安全委員会:

http://www.cpsc.gov/about/cpsia/conformity.pdf

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*一部の製品については、規制対象外とすることを認めた。例えば、子供向けエレクトロニク

ス製品(アルミや銅合金の部品、蛍光管や CRT ブラウン管などを含む商品)8の一部につい

ては、300ppm 以下という鉛含有規制の対象外としている。また、子供向け自転車と関連商

品については、2011年 7月 1 日まで規制適用の延期を認めた。

【第3段階】

*CPSIA 第 101 条は「塗料及び表面コーティング以外(基板部分など)」に該当する子供向け

製品を対象に技術的に可能であれば鉛含有量を 100ppm 以下とする規制を 2011 年 8 月 14 日

から適用することを定めた。これを受けて消費者製品安全委員会は 2010 年 7 月 21 日付で同

規制に関しパブリックコメントと情報を募集する告知(NOTICE)9を行い、同委員会は全て

のコメントと情報を検討後、2011年 8月 14日までに最終規則を発表する予定である。

(3)第三者検査機関による子供向け製品検査の義務付け

CPSIA 第 102 条には、禁止物質や規制対象となる子供向け製品全てに、第三者検査機関による

検査と認定を義務付けることを明記した。この条項を受けて、消費者製品安全委員会は対象

製品の安全基準や検査手順の検討や第三者機関の認定作業を進め、具体的な行政規定を随時

告知することになった。

CPSIA 第 102 条では、第三者機関による検査と認定が優先的に求められる製品分野を設け、認

定基準を策定・発行することを同委員会に求めた。同条項によって優先的に指定された規定

発行時期と、同委員会から発表された検査義務付の最終規定内容は以下のとおり。

8 連邦規則 16 C.F.R Sec. 1500.88 一部エレクトロニクス製品の鉛含有規制からの除外要項(Exemptions from lead limits

under section 101 of the Consumer Product Safety Improvement Act for certain electronic devices.):

http://edocket.access.gpo.gov/cfr_2010/janqtr/16cfr1500.88.htm 9 官報における「コメントと情報受け付け開始」の告知(Notice:Children's Products Containing Lead; Technological

Feasibility of 100ppm for Lead Content; Request for Comments and Information ) :

http://www.cpsc.gov/businfo/frnotices/fr10/leadTech.html

所管官庁は、法律の施行に基づき行政規定の詳細内容を決定して発表する。一般からのコメントと情報募集の告知は、そのための

手順のひとつである。

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対象製品 対象製品の第三者検査・認定に関する最終規定内容

CPSIAによる規定発行期限

鉛含有塗料、表面コーティング

(Lead paint)

2008 年 12 月 21 日以降に製造された製品は、鉛含有量

600ppm 以下であることを示す第三者機関による検査と認

定が必要。2009 年 8 月 14 日以降に製造された製品は、

鉛含有量 90ppm以下であることを示す認定が必要。 2008年 8月 14日から 30日以内

ベビーベット( Full-size 、 Non

full-size Cribs)、おしゃぶり

(Pacifiers)

2009 年 1 月 20 日以降に製造されたベビーベット(Full-

size 、 Non full-size Cribs ) と お し ゃ ぶ り

(Pacifiers)は、連邦規則10の製品ごとの安全基準と検

査手順に従って、第三者機関による検査・認定が必要。 2008年 8月 14日から 60日以内

3 歳以下の幼児用製品の小さいパー

ツ(Small parts)

2009 年 2 月 15 日以降に製造された対象製品に使われた

小型パーツは、連邦規則11の安全基準と検査手順に従っ

て、第三者機関による検査・認定が必要。 2008年 8月 14日から 90日以内

子供 向け 金属 性アクセサ リー

(Children’s metal jewelry)

2009 年 3 月 23 日以降に製造された製品は、鉛含有量

600ppm 以下であることを示す第三者機関による検査・認

定が必要。2009 年 8 月 14 日からは、同日以降に製造さ

れた製品を対象に同 300ppm 以下とする第三者機関による

検査・認定が必要。

2008年 8月 14日から 120 日以内

乳児用運動具 (Baby bouncers 、

Walkers 、 Jumpers, and similar

products)

消費者製品安全委員会は、第三者機関を検査・認定機関

として認定するための条件を規定として発行することが

求められているが、まだその最終化に至っていない。

2009 年 2 月と 12 月に最終規定公布の無期限延期発表が

あり、対象製品の安全基準の見直しと第三者機関の認定

条件の検討が続けられている。但し、乳児用ウォーカー

(Infant Walker)については 2010 年 6 月 21 日に連邦規

則が発表され12、2010 年 12 月 21 日以降に製造された製

品については安全基準を強化し、それに基づく第三者機

関の検査と認定が必要となった。バウンサー、ジャンパ

ー、類似商品については、規定発表延期が続いている。

2008年 8月 14日から 210 日以内

上記の優先対象以外の子供向け製品については、2008 年 8 月 14 日から 10 ヶ月以内に第三者

機関の認定必要条件の最終規定が告知されることになった。消費者製品安全委員会では、第

三者機関の検査と認定の義務化適用時期が決まった製品や規制対象物質について、随時発表

を行っている。しかし、安全基準や検査手順の検討や見直し、第三者機関を検査・認定機関

として認定する作業などが 10 ヶ月以内に終わらず、多くの子供向け製品で第三者機関による

検査と認定の義務化が延期されている。

10 連邦規則 16 CFR 1508(Full-size cribs)、1509(Non full-size cribs)、1511(Pacifiers) 11 連邦規則 16 CFR 1501 12 連邦規則 16 CFR 1216、1500: http://www.cpsc.gov/businfo/frnotices/fr10/walkers.pdf

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以下、主な子供向け製品や規制物質ごとの第三者機関による検査・認定義務化の状況である。

子供向け製品規制対象品・物質 第三者機関による検査・認定の義務化時期

自転車用ヘルメット( Bicycle

helmets)

2010 年 2 月 10 日以降に製造された製品から義務化(子

供用以外の製品は GCCのみ)

2段ベッド(Bunk beds) 2010年 2月 10日以降に製造された製品から義務化

がらがら(Rattles) 2010年 2月 10日以降に製造された製品から義務化

自転車 (Bicycles) 2010 年 8 月 15 日以降に製造された製品から義務化(子

供用以外の製品も対象)

幼児向け入浴用シート(Infant

Bath Seats)

2010年 12月 7日以降に製造された製品から義務化

子供用衣類用繊維(Children’s

Textile)[可燃性基準]

2010年 11月 17日以降に製造された製品から義務化

電 動 式 玩 具 そ の 他

( Electronically Operated Toys

and articles)

2010年 7月 29日以降に製造された製品から義務化

子 供 向 け 全 地 形 対 応 車 ( All

Terrain Vehicles)

2010年 11月 27日以降に製造された製品から義務化

マットレス (Mattresses)

[可燃性基準]

2010 年 11 月 17 日以降の製造品から義務化(子供用以

外の製品は GCC)

衣類用ビニールプラスチック素材

(Vinyl plastic film)

[可燃性基準]

2010年 10月 19日以降に製造された製品から義務化

絨毯(Carpets and rugs)

[可燃性基準]

2010年 10月 19日以降に製造された製品から義務化

特定フタル酸(Phthalates) 第三者機関を検査・認定機関として認定するための最

終規則延期:将来、官報告知日から 90日後に義務化

ASTM F963 玩具安全基準の順守対

象製品

第三者機関を検査・認定機関として認定するための最終

規定延期:将来、官報告知日から 90日後に義務化

子供用寝巻き(sleepwear)

[可燃性基準]

第三者機関を検査・認定機関として認定するための最終

規定延期(=義務化延期):2010 年 10 月 28 日に認定

条件案が委員に提出され、11 月 3 日に義務化に関する

会議が委員会で開催されたが、現時点で委員投票につ

いての発表はない。

【第三者機関リスト】

消費者製品安全委員会は、規制対象物質と製品について検査する第三者機関の認定条件を告

知しており、条件を満たした機関を認定機関として随時発表している。実際の機関認定作業

は、同委員会の指定する認定団体が同委員会に代わって行う。但し、メーカーが経営または

関与する第三者検査機関等については、条件を満たせば第三者機関として認定するが、同委

員会の認定作業を直接受ける必要がある。

CPSA の条項 14(a)(3)(E)に基づき、消費者製品安全委員会は検査・認証発行機関の一覧をホ

ームページ上で常にアップデートし、公表しなくてはならない。対象物質と製品、第三者機

関のリストは以下のサイトでみることができる。

ホームページ: http://www.cpsc.gov/cgi-bin/labsearch

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(4)玩具の安全基準(ASTM F963)義務付け対象

CPSIA 第 106 条 で は 、 自 主 的 安 全 基 準 ( ASTM F963: Standard Consumer Safety

Specification for Toy Safety)を 2009 年 2 月 14 日までに消費者製品安全委員会の安全基

準として準拠を義務づけることを明記した。同委員会による基準採択後も F963 の著作権は

ASTM(American Society for Testing and Materials )13に帰属し、同基準14は ASTM から販

売される。さらに CPSIA 第 106 条は、同安全基準の見直しについても 2009 年 8 月までに行う

ことを同委員会に要請した。同安全基準の対象は玩具全てではなく、自転車をはじめ、3 輪車、

凧、子供の遊び目的ではない趣味工芸品、プラモデルなどは対象外とされている。

これを受けて消費者製品安全委員会は ASTM F963-08 最終版を発表し、2009 年 2 月 10 日以降

ASTM F963 を連邦規則として順守すること並びに同安全基準が適用される対象製品について第

三者機関による検査・認定を求めることを提案したが、2009 年 12 月 28 日付で同委員会は第

三者機関による検査・認定案については、制定を無期限延期することを発表。

但し、前述の通り 2009 年 2 月 10 日以降は ASTM F963 の順守が義務付けられているため、順

守してない商品は違法となる。

ASMT F963 では、同委員会所管の規制とは異なる安全基準が設けられているため、玩具の種類

によっては注意が必要である。例えば ASMT では「14 歳未満の子供に強力な磁石を販売しては

いけない」とあり、対象年齢が 12 歳以下ではなく、14 歳未満となっている。このため 13 歳

以上向け商品と表示された磁石パズルが自主的リコールを余儀なくされた例もある。

(5)特定フタル酸エステル類含有量規制対象となる玩具と育児製品

CPSIA 第 108 条は、2009 年 2 月からフタル酸エステル類のうちフタル酸ジ 2-エチルヘキシル

(DEHP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)の 3 種類の含有量が

0.1%を超える玩具および育児製品の販売を恒久的に禁止することを明記した。さらに 2009

年 2 月から「子供が口に含む可能性がある玩具」と育児製品の販売についてもフタル酸ジイ

ソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジオクチル(DnOP)の含有量

が 0.1%を超えるものを禁止とした。

また同条項では、子供用玩具と育児用品に含まれるあらゆるフタル酸エステル類とその代替

物質の子供の健康への影響を研究・検証するため、独立諮問パネル(慢性有害物質諮問パネル、

CHAP:Chronic Hazard Advisory Panel)を設置することを明記した。DINP、DIDP、DnOP の

禁止措置は同諮問パネルによる調査結果が報告されるまでの期間の暫定措置と位置付けられ

ている。

消費者製品安全委員会は、2009 年 2 月 10日から上記 3 種類(DEHP、DBP、BBP)の特定フタル

酸含有量が 0.1%を超える玩具と育児製品の販売を恒久的に禁止し、同時に DINP、DIDP と

DnOP 含有量が 0.1%を超える「子供が口に含む可能性がある玩具」と育児製品の販売を当面

禁止とした。

一方、第三者機関による特定フタル酸含有量の検査と認定の義務化については詳細が決まっ

ておらず、同委員会は義務化に関する最終規定を無期限延期することを 2009 年 12 月 28 日に

発表している。従って現在のところ、フタル酸エステル類の含有量検査と認定やメーカーと

販売業者による安全確認書(GCC)を提出の必要もないが、2009 年 2 月 10 日以降は前述の特

13 ASMT(American Society for Testing and Materials)は、様々な産業や環境分野の素材、製品、システム、サービスに関す

る自主的基準を開発、発行する会員制団体である。

ASMT F963: http://www.astm.org/Standards/F963.htm 14 基準と検査手順をまとめたマニュアルのようなもの。

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定フタル酸含有量規制に準拠しなければならないため、同委員会が推奨する規制含有量検査

法などを用いて自主的に規制値をクリアしていない商品は違法と判断される可能性がある。

【規制対象製品の定義】

*DEHP、DBP、BBP の 3 種類の含有規制については、子供用玩具と育児製品(children’s toy

or child care article)を対象とする。それぞれの定義は以下の通りである。定義の解釈

については、ガイダンス案とコメント依頼書15が 2009 年 2 月に発行された。これに続く修正

版や最終版は発表されていない。

「子供用玩具」:

12歳以下の子供が遊ぶ際に使用するよう設計され、販売を意図された消費者製品

「育児製品」:3 歳以下の幼児の眠りや食事を助ける、またはおしゃぶりや歯がため

(sucking or teething)に役に立つよう設計され、販売を意図された消費者製品

*DINP、DIDP と DnOP 含有量規制の対象は子供が口に含む可能性がある玩具(Toy that can

be placed in a child’s mouth)と育児製品である。育児製品の定義は上記と同じである。

「子供が口に含む可能性がある玩具」:

子供(12 歳以下)が口に入れることができる玩具や、噛んだり、しゃぶったりと口に含む

部分がある玩具。なめるだけの製品については口に入れるとはみなされない。玩具、または

その一部の寸法が 5センチ以下と小さいものは、口に入れることができるとみなされる。

【慢性有害物質諮問パネル】(CHAP:Chronic Hazard Advisory Panel)

CHAP メンバーは米国科学アカデミー(National Academy of Sciences)によって推薦された

7 名の科学者から構成される。消費者製品メーカーやディストリビューター、販売業者に経済

的な利権関係がなく、米国政府官僚や職員(一部政府機関を除く)ではないという条件の下、

次の 7 名が推薦され、2009 年 12 月に消費者製品安全委員会で承認された。パネルメンバーは

2009年 12月 23日に同委員会によって正式に発表された。

Philip Mirkes, Ph.D. University of Washington, Seattle

Bernard Schwetz, D.V.M., Ph.D. (元 Department of Health and Human Services)

Russell Hauser, M.D., Sc.D., M.P.H. Harvard School of Public Health, Boston

Paul J. Lioy, Ph.D. University of Medicine and Dentistry of New Jersey

Holger Koch, Ph.D. Ruhu University of Bochum Bochum, Germany

Chris Gennings, Ph.D. Virginia Commonwealth University

Andreas Kortenkamp, Ph.D. University of London London, England

同パネルは第 1 回目会合を 2010 年 4 月 14~15 日、第 2 回目会合を 2010 年 7 月 26 日~28 日

に開催した。第 3 回会合は 2010 年 12 月に予定されている。パネルは設置後 18 ヵ月以内にフ

タル酸エステル類とその代替物質に関する調査研究を終了し、その後 6 ヵ月以内に結果を同

委員会に提出することを定めている。調査研究の終了は 2011年夏以降になる見通しである。

その他 参考情報

*前述の通り、消費者製品安全委員会はフタル酸エステル類含有について、第三者機関によ

る検査と認証の最終規則を延期したが、2009 年 2 月 10 日以降から特にフタル酸エステル類

含有で危険性の高い子供向け製品をターゲットとして規制を強化している16。同委員会が規

制対象として注力する製品としては、入浴用玩具、幼児が口にいれることができる小さいプ

ラスチック製(特にポリ塩化ビニル)の玩具が挙げられた。さらに、歯がため、ガラガラ、

おしゃぶり(teethers, rattles and pacifiers)については、同委員会が抜取り検査を実

施し、規制値が順守されていることを確認していく意向が示された。

15 http://www.cpsc.gov/about/cpsia/draftphthalatesguidance.pdf 16 http://www.cpsc.gov/cpscpub/prerel/prhtml09/09130.html

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*検査の詳細はまだ最終規定として発表されていないが、同委員会はフタル酸含有量を検査

する場合に用いる検査方法「フタル酸含有確認のための検査要領」(Test Method: CPSC-

CH-C1001-09.3 Standard Operating Procedure for Determination of Phthalates) 17を

2010年 4月 1日に発表した。

*特定フタル酸エステル類規制に関する法規とこれまでの規定には、2009 年 2 月 10 日以前に

製造された商品の在庫品店頭販売を禁止する条項がない。そのため NPO が消費者製品安全委

員会を相手取り、禁止を求める裁判を起した。2009 年 2 月 5 日の判決では、2 月 10 日以前

に製造された製品も規制対象に含まれることが同委員会に言い渡され、NPO が勝訴した。同

委員会では上訴しない方針を表明している。これにより事実上、2009 年 2 月 10 日以前に製

造された製品の在庫品も規制の対象となった。

17 http://www.cpsc.gov/ABOUT/Cpsia/CPSC-CH-C1001-09.3.pdf

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(6)子供向け製品の表示規定、輸入製品トレーサビリティー

CPSIA 第 103 条は、12 歳以下の子供向け消費者製品には追跡ラベル(tracking label)、ま

たは明確にそれと識別できる恒久的マーク(distinguishing permanent mark)をつけなけれ

ばならないと規定した。ラベルやマークには、①メーカーまたはプライベート・ブランドの

名称、②生産地、③製造日、④製造プロセス管理情報(ロット、バッチ製造番号など)とい

った基本情報を盛り込む必要がある。但し、子供向け消費者製品には玩具のみならず、衣類

や靴も含まれ、小さい商品や同部分品などはラベル・マークの印刷に無理があることから、

「実際的な範囲“to the extent practicable”でラベルやマークを入れる」ものとする、柔

軟な対応を認める修正を加えた。また同条項では 2008 年 10 月 13 日以降、安全基準を法的に

満たしていない製品のパッケージや広告・ラベルには安全基準について言及することを禁止

している。

これを受けて消費者製品安全委員会は、2009 年 8 月 14 日以降に製造された 12 歳以下の子供

向け消費者製品には追跡ラベル(恒久的マーク)を義務化した。これにより、輸入品の製造

日や製造プロセス管理情報がはっきり分かるシステムとなった18。米国では一部の子供用品や

玩具の主流が中国製であるため、このシステムによって規制強化が図られ、リコールの際の

混乱を避けることに役立てられている。

同法適用に先立ち、同委員会は、ラベルやマークの表示内容、位置や方法などについて委員

会としての解釈をまとめた方針書を発表19。製造者にとって留意すべき主なポイントは以下の

とおりであるが、製品の大きさや形、素材によってケースバイケースで解釈されることもあ

るため、慎重に個別対応することが必要である。

*ラベルは誰がつけるのか:

基本的には生産プロセス情報を持つ製造業者がラベルをつけることになる。輸入業者と

プライベート・ブランド発注会社は製造業者と連携をとり、法規で定める情報を規定に

沿って盛り込むことが必要である。

*ラベルの表示内容:

対象製品のパッケージと製品そのものの両方に、法規で定める前掲 4 項目を必ず入れる

こと。いくつかの部品で構成される場合は、最終組立て生産日と生産地情報を表示する。

生産地は国名だけではなく、その生産工場がわかるようにすること。メーカー内で利用

する生産地コードを使用してもよい。製造プロセス情報もメーカーで使用する品目番号

やロット番号などでよい。但し、当該情報によって必ず生産工場までトラッキングでき

ることが条件である。また、メーカーかプライベート・ブランド名が入っていれば、そ

の他の必要項目は簡略コード化し、ホームページアドレスと共にラベルに記載し、詳細

情報はホームページにアクセスすれば入手可能としてもよい。インターネット接続がで

きない消費者のためにメーカー名かプライベート・ブランド名は必ず入れること。

(参考例)

メーカー名: A-Toys

表示必要事項:中国製、2009年 5月 20日製造、ロット番号**、上海工場(コード**)

18 衣類などについては、ラベルに生産国を記載することがすでに別の法律(Textile, Wool and Fur Acts)で決まっている。 19 同委員会のホームページ: http://www.cpsc.gov/about/cpsia/sect103.html

同委員会による方針書: http://www.cpsc.gov/about/cpsia/sect103policy.pdf

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出典:NSF International 社20

*ラベルをつけねばならない場所や位置:

対象製品のパッケージと製品そのものの両方に恒久的ラベルをつけることと規定される。

決まった場所や位置の指定はない。「恒久的」とは、消費者による製品の使用期間中を

通して耐え得ること、と消費者製品安全委員会では解釈している。再利用をせず、すぐ

に捨てるパッケージにはシールのラベル付着で十分である。また、すぐに捨てるパッケ

ージの上から製品本体の商品ラベルがはっきり見える場合には、パッケージ自体に同じ

ラベルをつける必要はない。

*物理的に製品へのラベル表示が困難な場合、また、例外措置について

製品が小さ過ぎる場合には、パッケージへの表示のみでよい。

ペアやセットとして使用する商品の場合、一方だけ又は商品の主要機能を担うものな

どにラベルをつければよい(例:子供靴、サンダルなど)。箱や収納パッケージに入

れて保存する玩具やゲームなどの場合、箱やパッケージのみにラベルを表示し、玩具

ひとつひとつには必要ない。双六のような箱に入ったボードゲームでは、箱とボード

にラベル表示をするが、サイコロや駒には表示は必要ない。

恒久的なマークをいれることが困難な商品表面素材として、伸縮性のある素材(ゴム

など)、ビーズ、小さい布切れ(アクセサリーやヘアバンドなど)、天然石など。

ラベルによって製品がダメージを受ける、または利便性に問題が生じる場合や、見栄

えを損なうケースなども例外措置が考慮される。

20 NSF International社は、第三者認定検査機関。http://www.nsf.org/

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2.法規制違反品の判断

(1)輸入業者とメーカーの報告義務

消費者製品安全委員会は、米国で販売される製品が法規制を順守しているか、事故や怪我の

リスクとなる問題がないかを監視・調査して、違反商品や安全性に問題のある商品を米国市場

から速やかに排除するための法的権限を持つ。米国内販売責任企業(輸入業者または米国メ

ーカー)は、商品に危険性がある場合や商品が安全性基準を満たしていないことを知った場

合に、同委員会に速やかに報告する法的義務21がある。「速やかに」とは知ったときから 24

時間以内を基準とする。

通常、海外メーカーは米国輸入業者や販売会社に向けて商品を卸すため、米国内販売責任を

有する輸入業者やプライベート・ブランド販売会社に報告義務がある。かかる販売責任企業は、

商品に法規制違反があった場合や危険性がある場合、自主的リコールを行う。例えば、日本

企業の米国法人が中国製の子供向け製品を輸入・販売するといったケースでは、当該米国法人

が安全基準の法規に順守した製品を市場に提供しなければならない。当該中国製品が安全基

準を満たしてないと判明すれば、米国法人が消費者製品安全委員会に速やかに報告し、安全

対策と市場に流通された製品を自主的にリコールするかどうかの話し合いを同委員会と行う

ことが必要である。

(2)リコールのプロセス

消費者製品安全委員会によれば、2009 年には 465 件(うち玩具や子供向け製品 157 件)のリ

コールがあり、全てが米国販売責任企業による自主的リコールであった。同委員会は製品別、

生産国別、会社別、安全性問題別に 1973 年以降のリコール案件を検索できるデータベースを

公開している。22

自主的リコールにいたるプロセスは、基本的に同委員会と米国販売責任企業の間の交渉で決

まる。自主的リコールに至る主なプロセスを 2例紹介する。

ⅰ)商品を買った消費者が重傷を負ったり死亡した場合、企業は消費者製品安全委員会に事

故内容や問題点などを報告する義務がある。同委員会が調査のうえ、企業と対策を協議

して自主的リコールが行われる。または消費者や消費者保護団体23などから直接同委員会

へ情報が寄せられ、同委員会が安全性の調査を実施し、米国販売責任企業にその対策と

自主的リコールを交渉、協議のうえで自主的リコールとなる。

同委員会では、安全に問題のある商品の速やかなリコールに企業が応じた場合は、時間の

かかる危険性分析テストなどの手続きを省いた迅速プログラム(Fast Track Program)を

適用している。これを使うと、企業がリコール情報を報告してから 20 日程度でリコール

が開始される。465 件(2009 年)の自主的リコールのうち 275 件が同プログラムによって

リコールされた。

ⅱ)輸入品で安全基準を満たしていない製品は、米国関税国境保護局(U.S. Customs and

Border Protection、以下、CBP という)との連携によって入港時に留め置かれることも

21 消費者製品安全法(Consumer Product Safety Act 15(b)) [15 USC § 2064(b)]

連邦規則 16 CFR Part 1115、1116、1117 22 http://www.cpsc.gov/cpscpub/prerel/api.html 23 NPOとしては、Consumers Union、Consumer Federation of America、 Kids in Danger、Public Citizenなどが子供用品

の安全性についてしばしば提言している。

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ある。2010 年 4 月に締結された CBP と消費者製品安全委員会の覚書24により、到着前の

貨物データに同委員会がアクセスできるようになり、貨物データを確認のうえで検査が

必要な貨物を特定できるようになった。同委員会によって安全基準法規に準拠してない

製品と判断されると、CBP によって正式に製品が留め置きとなる。CBP からの留め置き通

知とともに、同委員会は輸入業者に対し、該当法規の違反内容を記載した留め置き通知

(Notice of Detention)を発行する。

通知を受けた輸入業者は 5 日以内に回答し、30 日以内に措置を講じる必要があり、対策

等については、販売中止、安全基準を満たすような製品への変更、製品が米国内で既に流

通・保管されている場合は自主的リコールなど企業と同委員会間で具体的に協議される。

(3)罰則事例

消費者製品安全委員会の権限は CPSIA によって強化され、危険性のある製品から消費者を守

るため、同委員会には強制的リコールを命令する法的権限25が与えられたが、2009 年~2010

年 10月末迄に強制リコール事案はない。

危険性のある商品情報の報告を怠り、違反行為に対して対策を怠る企業を相手取り、同委員

会は民事裁判によって課徴金を請求することできる。CPSIA によって和解金最高限度額が大幅

に引き上げられ、2010 年 3 月の最終規定26にて違反 1 件につき最高 10 万ドル、複数件の違反

については最高 1500 万ドルと、それぞれ従来の 8000 ドルと 180 万ドルから大幅に引き上げ

られた。

企業は通常、民事裁判を避けるため、同委員会と法廷外で和解し、支払金額を交渉すること

になる。2009年は 38社が和解し、支払い金額は過去最大の 980万ドルにのぼった。

2010年以降は最高限度額引き上げに伴い和解金総額が増える見通しである。

3.法規以外の自主的安全基準およびガイドライン

(1)自主的安全基準

子供向け製品の場合、ASTM International と ANSI による主に2団体の自主的安全基準と試験

方法、仕様ガイドラインが適用されている。消費者製品安全委員会は自主的安全基準の向上

を目的に各団体と協力関係にある。

ⅰ)ASTM International(http://www.astm.org/)

乳児から子供向け製品には、玩具から育児用、家庭用品まで ASTM International の基準27

が使用される。子供向け製品関連の安全基準としては以下のような例がある。

F404 (子供用ハイチェア:Consumer Safety Specification for High Chairs)

F406 (ベビーベッド、サークルベッド:Consumer Safety Specification for Non-Full-

Size Baby Cribs/Play Yards)

F834 (玩具収納箱:Consumer Safety Specification for Toy Chests)

F1148 (遊び場関連商品:Consumer Safety Performance Specification for Home

Playground Equipment)

F1313 (おしゃぶりゴム乳頭部の揮発性ニトロソアミン含有レベル:Specification for

Volatile N-Nitrosamine Levels in Rubber Nipples on Pacifiers)

24 2010年 4月に CBPとの協定覚書を交わした。

http://www.cbp.gov/xp/cgov/newsroom/news_releases/national/04262010_2.xml 25 同委員会リリース http://www.cpsc.gov/cpscpub/prerel/prhtml10/10106.html 26 同委員会リリース http://www.cpsc.gov/cpscpub/prerel/prhtml10/10168.html 27 ASTM基準は全て有料。オンラインでも購入できる。

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F833 (乳母車:Consumer Safety Performance Specification for Carriages and

Strollers)

F2167 (乳児用バウンサーシート:Standard Consumer Safety Specification for

Infant Bouncer Seats)

F2050 (乳児用携帯型キャリア:Consumer Safety Performance Specification for

Hand-Held Infant Carriers)

F 977 (乳児用ウォーカー: Standard Consumer Safety Specification for Infant

Walkers)

F2613 (子供用折り畳み椅子: Standard Consumer Safety Specification for

Children's Folding Chairs)

尚、 F963(玩具の安全基準:Standard Consumer Safety Specification for Toy

Safety)は連邦安全基準として順守が義務付けられている。

ⅱ)American National Standards Institute (ANSI)(http://www.ansi.org)

ANSI は米国における 200 以上の自主的基準策定団体向けに自主的基準を米国基準として

認定することを主な目的とする(ASTM 基準も ANSI の認定を受けている)。米国における

ISO(International Organization for Standardization)の代表機関でもある。

子供向け製品関連の安全基準(ISO、その他 ANSI認定基準)としては以下の例がある。

ISO 8098:2002 (子供用自転車安全ガイドラン:Cycles - Safety requirements for

bicycles for young children)

SAE J 1038-2007 (子供用スノーモービル安全性能基準: Recommendations for

Children's Snowmobile)

ISO/IEC GUIDE 50:2002 (子供向け製品・サービスの安全性ガイドライン Safety

aspects - Guidelines for child safety)

ISO 8317 (子供向け安全パッケージ:Child-resistant packaging)

ANSI/UL 696 (電動式玩具の安全基準:Ninth Edition Standard for Safety Electric

Toys)

(2)業界団体、NPO

消費者製品メーカーや販売会社の多くは直接または業界団体等を通じて、米国における法案

成立や破棄を働きかけるロビー活動をしている。子供向け製品の安全性についても、CPSIA と

消費者製品安全委員会による関連規則の策定について、多くの企業、業界団体、NPO が提言を

行っており、特に積極的な団体に以下の団体がある。

団体名 ホームページ 自主的基準、ガイドラインへの主

な取組み Toy Industry Association

(玩具業界団体)

http://www.toyassociation.org/

http://www.toyinfo.org

ASTM F963基準作りと消費者啓蒙活動

Juvenile Products

Manufacturers

Association, Inc.

(JPMA:幼児製品製造業界

団体)

http://www.jpma.org ASTM 基準を満たす乳幼児向け商品とメー

カ ー に 対 す る JPMA 認 証 ( JPMA

Certification Seal)を発行するプログ

ラムを 1976年より続けている。

Safekids USA (NPO) http://www.safekids.org 子供用品の使用注意事項などの啓蒙活動

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4.通関時差し止め/関税

(1)子供向け製品の通関時差し止め

通常の消費者製品の輸入と同様に、子供向け製品の通関も米国関税国境保護局(CBP:U.S.

Customs and Border Protection )の手続き28に従う。安全基準を満たしていない製品は、

CBP と消費者製品安全委員会の協定によって入港時に留め置きされる。消費者製品安全委員会

は 2010 年 6 月 14 日、貨物入港事前情報を基に留め置き通知書(Notice of Detention)の発

行29を開始。従来は企業に対し違反通知書(Letter of Advice)という形で通知をしてきたが、

CBP との協定により事前情報ベースで留め置き判断を同委員会が行うことが可能になり、違法

輸入品の差し止めが速やかに行われるようになった。

通知書を受け取った輸入業者または輸入代理業者は 5 日以内に回答を提出し、30 日以内に対

策を講じる必要がある。異議を申し立てる場合、法規順守を示す検査結果を証拠として提出

し交渉することができる。同委員会はケースバイベースで回答期限を考慮する。

留め置きとなった製品は、CBP の管理下に置かれ、原則的に 30 日後までに輸入業者の対策が

決まらない場合は CBPが処分の決定をする。

(2)輸入関税

輸入品については、国際貿易委員会(USITC: U.S. International Trade Commission)が

関税率リスト(The Harmonized Tariff Schedule)の公示と貿易関連データの収集・公開を行

う。関税率は米国議会によって施行される法規に基づく。但し、当該製品分類コードと該当

する関税率についての決定権は CBPが有する。30

USITC のホームページ31に製品分類別関税率と規定が細かく掲載されている。製品分類には国

際的に使われる統計品目番号(Harmonized System Codes)に基づく分類コードが使用されて

おり、子供向け製品という区別はなく、米国独自に子供向け製品を区別する分類もない。

28 CBPホームページ http://www.cbp.gov/xp/cgov/trade/ 29 消費者製品安全委員会による留め置き通知の FAQ:

http://www.cpsc.gov/BUSINFO/detentionFAQ.pdf 30 関税についての基礎情報 http://www.usitc.gov/tata/hts/index.htm 31 ホームページ http://www.usitc.gov

関税率 http://www.usitc.gov/tata/hts/bychapter/index.htm

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品目 [統計品目番号] 関税

一般国 特別協定国[1] 国交なし[2]

三輪車やペダルつき自動車、人

形、人形用乳母車、その他の玩

具、ミニチュア家具・照明玩

具、風船、パズル、ゲームなど

[9503.00.00]

無税 無税 70%

家庭用、その他の家具一般、ベ

ッド [9401~9404]

無税 無税 家具の種類によって

20%~80%と異なる。

マットレス

[9404.21.00/9404.29]

3%(綿、発泡材、樹 脂

製) /6%(その他の素

材)

無税 40%

枕、クッション、その他の類似

品 [9404.90.10]

5.3%(綿製)/6%(その

他の素材)

無税~3%(協定国

により異なる)

40%

靴[3]

雤靴(かかと上から膝下)

[6401.92.60]

4.6%(90%が樹脂製)

/37.5%(その他の素材)

無税 25%

75%

スポーツウエア以外の靴(かか

と下)[6402.91/ 6402.99.5 ]

8%( 90%が樹脂製)

/12.5%(土台にコルク使

用)

無税~1.5% 33%

35%

サンダル[6402.99.27] 3%(ひとつの金型による

プラスチック製)

無税 35%

衣類[4]

ウール製オーバーコート(織物

以外)

男 性 用 [6201.11.00] 女 性 用

[6202.11.00]

キロ当り 41 セント+

16.3%

無税、または低税

キロ当たり 52.9 セント

+58.5%(男性用)

キロ当たり 46.3 セント

+58.5%(女性用)

綿製レインコート

男性用[6201.13.40]、女性用

[6202.12.20])

9.4%(男性用)

8.9%(女性用)

無税、または低税

90%

乳児用ドレス[6209.20.10] 11.8%(綿製) 無税~3% 90%

乳児用ブラウス・シャツ/

ズボン・ショーツ

綿製[6209.20.20・

6209.30.10]/合成繊維

[6209.20.30・6209.30.20]

14.9%(綿製)・ 22%

(合成繊維製) /

14.9 % ( 綿 製 ) ・

28.6%(合成繊維製)

無税~3% 37.5%・90%/

90%・90%

乳児用その他衣類と付属品

綿製[6209.20.50]/合成繊維製

[6209.30.30]

9.3%(綿製) /

16%(合成繊維製)

無税~3% 90%

[1] NAFTA や二国間自由貿易協定を米国と締結している国や貧困度の高い発展途上国で、品目によって関税

免除や低関税率適用の対象となるケースがある。品目によって協定の種類と関税率は様々であるため、上記

の表では詳細は省いた。

[2] 米国と国交のないキューバ、北朝鮮。

[3] [4] 素材、形、用途、値段幅によって関税率の極めて詳細な品目区分があり、ここでは参考までに数

点を例として挙げた。衣類の男性用、女性用にはそれぞれ少年用(Boys)と少女用(Girls)が含まれる品目

が多い。

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Ⅱ.子供向け製品に適用される規制および留意点(商品別)

前章では、CPSIA における子供向け製品の安全性向上のための法規制のポイントを挙げたが、

製品によって CPSIA やその他規制対象の留意点が異なる。本章では、いくつか商品別につい

て、特に日本製、アジア製(日本企業がアジア、特に中国などで OEM 生産する玩具)の対米

輸出の際の留意点を取り上げる。

1.玩 具

米国で販売される玩具は CPSIA・CPSA の順守と消費者安全委員会所管の関連法規並びに連邦

規則に留意が必要で、玩具の種類にもよるが、一般的な玩具類32の輸出を検討する際に理解し

ておくべき諸規則等は以下のとおり。

適用法令 規制の概要(関連連邦規則)

消費者製品安全

法・改善法

(CPSA・CPSIA)

玩具の安全基準 ASTM F963を順守すること。

鉛塗料、鉛含有量規制を順守すること。塗料については第三者機関の検査・認定を

受けること。(連邦規則 16 CFR Part1303)

追跡ラベル(恒久的マーク)をつけること。

フタル酸エステル類 6種の規制値を守ること。

第三者機関の検査・認定を受けること(対象リストに含まれる玩具の場合)

連邦有害物質法

(Federal

Hazardous

Substances Act)

子供向け電動製品(玩具含む)は表示ラベル、設計条件、生産品質条件、性能条件

などの規制を順守すること。第三者機関の検査・認定を受けること。(連邦規則 16

CFR Part1505)

3歳未満の幼児向けの小さい製品と独立パーツ(長さ 2.25インチ、幅 1.25インチ

以下)は、吸飲と窒息の危険性があるため禁止されている。(「小さいパーツ規

制」:連邦規則 16 CFR Part 1501、1500.50-53)

3歳以上で 6歳未満の子供が使う製品の小さいパーツには、危険性に言及したラベル

表示が必要。またボールやビー玉、風船(膨らませる前のもの)など吸飲の危険性

のある玩具やそれらを含む製品については、別途詳細なラベル表示が必要。(「小

さいパーツ規制」:連邦規則 16 CFR Part 1500.19)

8歳未満の子供が対象の玩具や製品では、ガラスやメタルなどの先端や製品の端が鋭

く尖っていることなどに起因する怪我の危険性がないような技術条件を満たさねば

ならない。(連邦規則 16 CFR Part 1500.48、49)

(1)小さいパーツのラベル表示33

いわゆる「小さいパーツ規制(1980 年 1 月施行)」に基づき、3 歳以上~6 歳未満の子供向け

玩具・用品、またその一部に独立した小さいパーツを含む製品(外部パーツが壊れて落ちる

場合も含む)には、注意を促すラベル表示が必要である。

(例)「警告:窒息の危険性のある小さいパーツ。3歳未満の子供は使用禁止」

32 後述する乳児の運動具など、CPSIA・CPSAで安全性強化を求められ、連邦規則による必要条件が加えられた製品を除く。 33 小さいパーツ規制: http://www.cpsc.gov/businfo/regsumsmallparts.pdf

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ボール・ビー玉・風船など、またはそれらを含む製品には適切な表示が求められる。3 歳未満

の子供向けに禁止される小さいボールには、以下の例(左)に示すような表示をつける必要

がある。小さいボールや膨らむボール状のパーツを含む製品には、以下(右)の例に示すよ

うに「3 歳未満は禁止、8 歳未満の子供には注意を促す」内容など、ラベルには製品によって

様々な表示例がある。

「警告:窒息の危険性のある小さいボ

ール。3歳未満の子供の使用は禁止」

「警告:小さなパーツのため、3 歳未満の子供の使用

は禁止。小さなボールを含む。8 歳未満の子供は、膨

らませる前、あるいは破れた風船を喉に詰まらせた

り窒素したりする危険がある。成人の監督が必要。

膨らませる前の風船は子供の手の届かないところに

保管すること」

(2)ぬいぐるみ

ぬいぐるみ(Stuffed Toys)については、上記の連邦法令ほか、米国内 3 州においては別途

規定が設けられている。米国玩具協会のサイト34に概要が公開されているが、詳細は各州担当

部署に問い合わせのこと。

ペンシルベニア州 マサチューセッツ州 オハイオ州 登録費35:初回 25ドル、毎年更新

25ドル(外国製品の場合、輸入業

者のみならずメーカーも登録が必

要)

登録費:初回 300ドル、毎年更新

300ドル(外国製品の場合、輸入

業者)

登録費: 毎年更新 50ドル。四半

期ごとに州内売上額を報告し、販

売 1個につき4セントを税金とし

て支払う(外国製品の場合、輸入

業者)

製品に含まれてはいけない素材に

ついて規定あり。使用素材、登録

番号などを含むラベルを製品に表

示する必要あり。

使用素材、登録番号などを含むラ

ベルを製品に表示する必要あり。

使用素材、登録番号などを含むラ

ベルを製品に表示する必要あり。

使用素材については、州独自の検

査があり、検査費用を輸入業者が

支払うこと。

問い合わせ先

Department of Labor &

Industry

Bedding and Upholstery

Section

Room 1619

7th and Forster Street

Harrisburg, PA 17120

Tel: (717) 787-6848, Fax:

(717) 787-6925

www.dli.state.pa.us

Department of Health and

Human Services

Food and Drug Division

Furniture & Bedding

Inspection Section

305 South Street

Jamaica Plain, MA 02130

Tel: (617) 983-6700

www.mass.gov

Department of Industrial

Compliance

Division of Bedding and

Upholstered Furniture

And Stuffed Toy

6606 Tussing Road

P.O. Box 4009

Reynoldsburg, OH 43068-2428

Tel: (614) 644-2236

www.com.state.oh.us

34 http://www.toyassociation.org/AM/Template.cfm?Section=Stuffed_Toy_Licensing 35 当該州で販売される製品は州政府に登録する必要がある。

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2.子供服

特に子供服を対象にした法的規制は存在しないが、繊維の難燃性については消費者製品安全

委員会所管の法規と規則を順守する必要がある。子供用ジャケットなどの上着に紐がついて

いる場合は紐のないデザインにするようなガイドライン36がある。また、子供用寝巻き類

(sleepwear)については別途、連邦規則の可燃性基準が設けられている。

対象品目 適用される法令、および関連規則

子供用衣類の繊維37 可燃性織物法(Flammable Fabrics Act)

*衣類繊維可燃性基準(Standard for the Flammability of Clothing Textiles, 連

邦規定 16 CFR Part 1610)

*子供用衣類に使う繊維の可燃性については、2010年 11月 17日以降に製造された製

品から第三者機関の検査・認定が義務付けられている。

ビニールプラスチッ

ク素材(Vinyl

plastic film)を使

った子供用衣類

*衣類のビニールプラスチック素材の可燃性基準 (STANDARD FOR THE FLAMMABILITY

OF VINYL PLASTIC FILM, 連邦法規 16 CFR1611)

*ビニールプラスチック素材を使った子供用衣類は、2010年 10 月 19日以降に製造

された製品から第三者機関の検査・認定が義務付けられている

子供用上着のガイド

ライン38

サイズ2Tから 12の子供用ジャケットやジャンパーなどの上着のフードやウエストに

紐がついているものは、紐が首に巻きついて窒息する危険などがあることから、紐の

ないデザインが推奨される。

子供用寝巻き類の可

燃性基準

*子供用寝巻き規定(Children’s Sleepwear Regulations, 連邦規則 16 CFR Parts

1615、1616)

*第三者機関による検査・認定について、現時点で最終規則は発表されていない。

3.乳児の運動具(Baby walkers, bouncer, jumper)

CPSIA 第 102 条では、「乳児用バウンサー、ウォーカー、ジャンパーについては、連邦規則

1500.18(a)(6) と 1500.86(a)を再検討した上で、2009 年 2 月までに第三者機関による認定取

得を義務付ける」と明記した。

1500.18(a)(6) と 1500.86(a)は「安全基準に満たない乳児用バウンサー、ウォーカー、ジャ

ンパーとその類似品の販売を禁止する」と定めている。同規則はもともと連邦有害物質法

(Federal Hazardous Substances Act)の下、1970 年に施行されたものであり、製品の詳細

な定義と安全基準の記述には今日のニーズに適切でない事項も含まれていた。

CPSIA 第 104 では、乳幼児向け商品(durable infant or toddler products)18 種類の安全

基準の強化を消費者製品安全委員会に求めたが、その中に乳児用ウォーカー(Infant

Walker)が含まれていたため、同委員会では 1500.18(a)(6) と 1500.86(a)の対象からウォー

カーを除外した。

乳児用ウォーカー(Infant Walker)についてはその後、自主的安全基準 ASTM F 977-07 に安

全基準を追加することで ASTM および業界との意見交換が行われ、2010 年 6 月 21 日の最終連

邦規則39において、乳児用ウォーカーについては新たに 16 CFR Part 1216 として内容を強化

36 2010年 5月 17日、消費者製品安全委員会は子供用上着の紐に関する新規則を提案している。ASTM F 1816–97基準を満

たしていない場合には、非常に危険で重大なリスクがあると判断されるという新規則を作り、連邦規則 16 CFR 1120.3として発行す

ることを提案したものである。連邦規則 CFR 1120として「危険性の高い有害製品リスト」に加えることも提案している。現時点ではま

だ最終規則ではない(http://www.cpsc.gov/businfo/frnotices/fr10/drawstringcomm.html)。同リストの詳細については「③米国

消費者保護法について」をご参照方。紐つきのジャケットなどは、近年、自主的リコールの対象となっている。 37 衣類には連邦取引委員会によるラベル表示義務の法規などがあり、子供服も同様に順守しなければならない。詳細については

「②米国の繊維製品の輸入規制および留意点調査」をご参照方。 38 ガイドライン http://www.cpsc.gov/cpscpub/pubs/208.pdf 39 連邦規則 16 CFR 1216、1500: http://www.cpsc.gov/businfo/frnotices/fr10/walkers.pdf

20 Copyright © 2010 JETRO. All rights reserved.

した安全基準の制定と 2010 年 12 月 21 日の施行が発表された。さらに 2010 年 12 月 21 日以

降に製造される乳児用ウォーカーに対しては、新安全基準に基づく第三者機関による検査・

認定を求めることも決定された。

バウンサー、ジャンパーおよび類似商品についても、その定義と安全基準の見直しや第三者

機関による認定条件を含む最終規則案の策定作業が消費者製品安全委員会によって進められ

ているが、現時点で決定は先送りされている。

4.乳幼児向け商品40

消費者製品安全委員会は、CPSIA 第 104 に基づき、以下に示す乳幼児向け商品(Durable

Infant or Toddler Products)の安全基準見直しと強化を随時進めるほか、メーカー(外国製

品の場合は輸入業者)に対し、消費者登録カードの添付を義務付けた。

【対象商品】

[12種]

ベビーベッド(フルサイズとノンフルサイズ)、幼児用ベッド、ハイチェア/ブースターチェ

ア、ホック留め式チェア、入浴用チェア、ベビーゲート/フェンス、プレイヤード、固定型遊

び用具付きベビーチェア、ベビーキャリアー、ベビーカー、ウォーカー、ベビースイング、

バシネット/ゆりかご(英語原文: full-size cribs and nonfull-size cribs; toddler

beds; high chairs, booster chairs, and hook-on chairs; bath seats; gates and other

enclosures for confining a child; play yards; stationary activity centers; infant

carriers; strollers; walkers; swings; bassinets and cradles)

[6種]

子供用折り畳みチェア、オムツ替えテーブル、バウンサー、乳児用浴槽、幼児用ポータブ

ル・ベッド・レール、スリング(英語原文:children’s folding chairs; changing

tables; infant bouncers; infant bathtubs; portable toddler bed rails; and infant

slings.)

前段の商品 12 種は CPSIA で特定された商品分野に該当し、後段の 6 種は消費者登録カード添

付の詳細決定段階で追加されたものである。

安全基準強化については、これまでにベビーベット、幼児用ベッド、バシネット/ゆりかご、

ウォーカー、入浴用チェアの基準詳細が新規連邦規則として発表されている。

CPSIA ではこれら 18 種の乳幼児製品のメーカー(外国製品の場合は輸入業者)に対し、①製

品に返信郵便料支払い済みの消費者登録カードをつけること、②登録した消費者の記録を保

存すること、③製品にはメーカー(または輸入業者)の名前と連絡先情報、モデル名と番号、

製造日を記載することなどを求めた。これを受けて消費者製品安全委員会は最終規定41におい

て登録カード義務化施行日を発表。連邦規則 16 CRF Part 1130 として 12 種については 2010

年 6 月 28 日から適用、6 種は同年 12 月 29 日から適用となった。一方、登録カード回収は消

費者の個人情報を集めることでもあるため、連邦規則には情報はリコールや警告情報発信の

目的以外には使用できないことが付記された。

対象品目 施行時期

12種 2010年 6月 28日

6種 2010年 12月 29日

40 http://www.cpsc.gov/about/cpsia/sect104.html 41 官報(2009年 12月 29日) http://www.cpsc.gov/businfo/frnotices/fr10/durable.html

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Ⅲ.子供向け製品のリコール事例42

消費者製品安全委員会は、適用法規則が順守されているかどうかを抜き取り検査で調べたり、

外部からの情報を基に検査を実施したりすることもある。危険性の高い製品について情報を

得た場合は、同様に検証をした上でメーカーまたは輸入業者や販売会社と対策を協議し、自

主的リコール実施の交渉に入る。一方、メーカーまたは輸入業者や販売会社は、製品の危険

性や違法性が確認された場合、速やかに同委員会に報告しなくてはならない法的義務がある。

その場合も同委員会とメーカーまたは輸入業者や販売会社は対策と自主的リコールについて

協議する。

本章では、そうした自主的リコール案件の中から、直近 2 年でリコール数が多く目立った例

を紹介する。子供向け製品のリコール数は毎年 150~200 件程度(2010 年 1 月~11 月中旬迄

のリコール件数は玩具 31件、その他子供向け製品は 140件程度)となっている。

消費者製品安全委員会は、企業が自主的リコールを拒否または無視した製品で危険性が高い

と判断した場合、消費者向けに警告(Safety Alert)を発表し、危険製品情報を一般に広く

知らしめる権限が CPSIAによって新たに追加された。

同委員会に報告を怠った会社に対して、同委員会が民事裁判で罰則を要求し、和解した案件

数は 2009 年度(9 月末期)に 38件、2010年度(9 月末期)に 6 件が公表されている。うち、

子供向け製品の和解件数は 2009年度が 33件、2010 年度は 6件全てと非常に多い。

同委員会の年次運営報告書43によると、2007~2008 年度の全リコール数の 85%が輸入製品で、

2007年度は中国製が 82%を占めている。

1.商品が法規や連邦規則に違反しているため自主的リコールされた事例

近年、鉛塗料と鉛含有規制法規に違反した子供向け製品のリコールが増え、リコール案件の

ほとんどを占める傾向が挙げられる。リコール対象製品は、玩具や子供用アクセサリー、靴、

教育用ゲームやアート素材、スポーツ用具など様々である。

(1)アクセサリー

・ リコール発表日: 2010年 2月 2日

・ 商品名: Tiny Tink and Friends Children's Toy Jewelry Sets

・ 販売数: 約 25万 2000個

・ 輸入業者: Playmates Toys, Costa Mesa, CA

・ 危険性:宝石おもちゃセットの中のチャームアクセサリーの金属製コネクター部分に連邦

法規の鉛含有規制値以上のレベルが含まれる。

・ 事故数: 報告なし

・ リコール対象製品:アクセサリー(ブレスレットやネックレスなど)にくくり付ける付属

のチャームアクセサリーでアクセサリーセットに含まれる。リコール対象は金属製コネク

ターでプラスチック製品は対象外。

・ 販売期間と場所(価格): 2008年 11月~2009年 11月、全米小売店 (6~8ドル)

・ 生産国: 中国

42 自主的リコール案件はすべて消費者製品安全委員会のホームページで発表され、写真つきで詳細が掲載されている:

http://www.cpsc.gov/cpscpub/prerel/prerel.html。本章で使った写真の出典はすべて同委員会ホームページである。 43 米国消費者製品安全委員会、2010年 1月発行年度活動計画書

http://www.cpsc.gov/CPSCPUB/PUBS/REPORTS/2010OperatingPlan.pdf

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・ 対策: 消費者はすぐに子供からチャームとそのコードを取りあげ、廃棄すること。前掲

Playmates Toys社に連絡し、代替品受け取りを手配する。

品番号 UPC 番号 対象アクセサリー

74634 0 43377 74634 8 Tinker Bell's Lil' Tinker Bracelet

74641 0 43377 74641 6 Tinker Bell's Lil' Tinker Bracelet

74631 0 43377 74631 7 Rosetta's Rosebud Key Chain

74632 0 43377 74632 4 Silvermist's Water Lily Necklace

チャームアクセサリーの金属部分 セットの外観

(写真:消費者製品安全委員会)

(2)子供用ブーツ

・ リコール発表日: 2009年 12月 16日

・ 商品名: Timberland 6 Classic Scuffproof Boots

・ 販売数: 約 2万 1000足

・ 輸入業者:The Timberland Company, Stratham, NH

・ 危険性:ブーツ内のインソール(中敷)に押判されているロゴ部分に、連邦法規の鉛含有

規制値以上のレベルが含まれる。

・ 事故数: 報告なし

・ リコール対象製品:子供用サイズ4から7までの小麦色の皮ブーツ、Classic Scuffproof

の商品名で販売されたもの。ブーツ内側のサイズの下には、以下のモデル番号と製造者・

製造日コードが入っている。

・ 販売期間と場所(価格):2009年 6月~10月、全米の靴小売店で販売(50~70ドル)

・ 生産国: タイ

・ 対策: 対象製品を子供の手の届かないようにして、Timberland 社に連絡をしてインソ

ールの代替品を送ってもらうこと。

モデル番号 Model Numbers 製造者・製造日コード

Manufacturer/Date Codes

34772 6456

6556

6656

6756

6856

34872

34972

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Timberlandブーツの外観(写真:消費者製品安全委員会)

(3)子供用ベルト

・ リコール発表日: 2010年 6月 17日

・ 商品名: 子供用ベルト

・ 販売数: 約 10万 5150本

・ 輸入業者: Target Corp., Minneapolis, Minn.

・ 危険性: ベルトのバックル部分に、連邦法規の鉛含有規制値以上のレベルが含まれる。

・ 連事故数: 報告なし

・ リコール対象製品: Cherokee 男の子用ベルトと Circo 女の子用ベルト。Cherokee ベル

ト(サイズ M-XL)は黒と茶色がある。2 本入りパッケージで販売され、ベルトには

202/08/0018、202/08/0019 または 202/08/0020 と番号マークがある。Circo ベルト(XS-

L)のほうはピンクと白にハート型バックルがついている。2 本入りパッケージで販売さ

れ、製品表示ラベルに 202/05/0071、 202/05/0072、 202/05/0073 または 202/05/0074

という番号がはいっている。

・ 販売時期と場所(価格):2007 年 12 月~2009 年 12 月、全米のターゲット店舗とオンラ

インで販売(7~9ドル)

・ 生産国: 中国

・ 対策:直ちに使用を止め、ターゲット店舗に製品を返却し、払い戻しをうけること。

Cherokeeベルト Circo ベルト

(写真:消費者製品安全委員会)

(4)子供用スポーツ用具

・ リコール発表日: 2010年 4月1日

・ 商品名: 子供用ホッケースティック、シャフト(柄)、ブレード

・ 販売数: 米国内約 6万 7000、カナダ内約6万

・ 輸入業者: Bauer Hockey Inc., Greenland, NH

・ 危険性:スティックとシャフトおよびブレード部分の塗料と飾りに連邦法規の鉛塗料含有

規制値を超えるレベルの鉛が含まれる。

・ 事故数: 報告なし

・ リコール対象製品: 以下のホッケースティックとシャフトおよびブレード

・ 販売時期と場所(価格): 2005 年 2 月~2010 年 3 月に全米のスポーツ用品店にて販売

(スティック約 80~200ドル、ブレード約 30ドル、シャフト約 40~90ドル)

・ 生産国: 中国

・ 対策:直ちに子供の使用を止めさせ、Bauer に連絡をして商品を交換するか、払い戻しを

受けること。

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商品番号名称 品目 販売国

Nike Bauer Supreme One50 Junior Stick スティック、シャフト、取替え用ブ

レード 米国、カナダ

Nike Bauer Supreme One70 Junior Stick プレイヤー・スティック 米国、カナダ

Nike Bauer Supreme One75 Junior Stick プレイヤーおよびゴールキーパー用

スティック 米国、カナダ

Bauer Supreme One75 Junior Stick プレイヤー・スティック 米国、カナダ

Nike Bauer Supreme One90 Youth and

Junior Stick

スティック、シャフト、取替え用ブ

レード 米国、カナダ

Nike Bauer Vapor XVI Junior Stick プレイヤー・スティック 米国、カナダ

Nike Bauer Vapor XX Junior Stick プレイヤーおよびゴールキーパー用

スティック 米国、カナダ

Bauer Vapor XX Junior Stick プレイヤー・スティック 米国、カナダ

Nike Bauer Apollo Junior Stick プレイヤー・スティック 米国

Nike Bauer Supreme Force Junior Stick プレイヤー・スティック 米国

Nike Bauer Supreme Accel Junior Stick プレイヤー・スティック カナダ

Nike Bauer Supreme One40 Junior Stick プレイヤー・スティック カナダ

Nike Bauer Supreme OneLTX Junior

Stick プレイヤー・スティック カナダ

リコール対象製品の一部(写真:消費者製品安全委員会)

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2.商品に危険性があるため自主的リコールされた事例

近年のリコール傾向をみると、①小さい子供が首や体の一部を紐などで締めつけられて死傷

する恐れのある製品(洋服の一部に紐がある製品や紐状デザインの製品など)、②玩具など

の一部が取れて小さくなったものを子供が口に入れて窒息の恐れがある製品、③ベビーベッ

トや子供用ベッドなどの一部が取れるまたは壊れることにより小さい子供が挟まれたり落ち

たりして死傷する恐れのある製品などの事案が多い。

(1)体の一部を締めつけられて死傷の恐れのある製品(strangulation、entrapment)

[子供服]

・ リコール発表日: 2010年 9月 16日

・ 商品名: フード付きジャケットとトレーナー

・ 販売数: 約 1万着

・ 輸入業者・販売者: Burlington Coat Factory, Burlington, NJ

・ 危険性:フードについている紐とウエスト周りの紐が、子供の体の一部に巻きついて窒息

などの恐れがある。

・ 事故数: 報告なし

・ リコール対象製品:12種類の男児・女児向け製品

・ 販売時期と場所(価格):1995 年 1 月~2009 年 9 月までに全米の Burlington Coat

Factory店舗とその他の小売店で販売(7~30ドル)

・ 生産国: 中国、カンボジア、韓国、米国

・ 対策: 直ちに紐部分を外すこと。または Burlington Coat Factory 店舗に返品して払い

戻しを受けるか、同額の商品券を受け取る。

(写真:消費者製品安全委員会)

[子供向け以外にもカーテンやブラインドの紐が子供の体の一部に巻きつく恐れのある商品]

IKEAのブランド(リコール日:2010年 6月 10日)44

(写真:消費者製品安全委員会)

44 プレスリリース: http://www.cpsc.gov/cpscpub/prerel/prhtml10/10261.html

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(2)口に入れて窒息の危険性のある製品(choking)

・ リコール発表日: 2010年 9月 30日

・ 商品名: 乳幼児用玩具 7種類

・ 販売数: 米国で約 280万個、カナダで約 12万 5000個

・ 輸入業者: Fisher-Price, East Aurora, NY

・ 危険性: 7 種類の玩具についている風船状ボールのバルブがとれて、幼児がボールを口

にいれて窒息する可能性がある。

・ 事故数: バルブがとれる事故が米国で 46 件、カナダで 8 件報告されている。うち子供

が口に入れたことが判明したのが 14 件、さらに吸飲して息苦しくなっていた事故が 3 件。

死傷の報告はなし。

・ リコール対象製品: Baby Playzone Crawl & Cruise Playground、Baby Playzone 、

Crawl & Slide Arcade、Baby Gymtastics Play、Ocean Wonders Kick & Crawl Aquarium,

1-2-3 Tetherball 、Bat & Score Goal

・ 販売時期と場所(価格): 各玩具の販売時期、場所、価格は下記のとおり。

・ 生産国: メキシコ、中国

・ 対策: 商品からボールをとること。ボールは捨てないで、Fisher-Price に連絡をして

交換品を受け取ること。

商品名(商品番号) 価格、販売時期 商品

Baby Playzone™ Crawl &

Cruise Playground™

(73408)

50ドル

2001年 7月~ 2003年 10月

販売

Baby Playzone™ (B2408) 48ドル

2003年 4月~2004年 1月

Ocean Wonders™ Kick &

Crawl™ Aquarium(H8094)

36ドル

2005年 6月~2008年 3月

Baby Gymtastics™ Play

(H5704)

68ドル

2005年 7月~2007年 1月

Crawl & Slide Arcade™

(C3068)

28ドル

2003年 10月~2005年 9月

1-2-3 Tetherball™(J0327) 20ドル

2005年 9月~2008年 3月

Bat & Score Goal™

(K0476)

20ドル

2006年 5月~2008年 7月

(写真:消費者製品安全委員会)

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(3)ベビーベットや子供用ベッド

・ リコール発表日: 2010年 6月 24日

・ 商品名: Jenny Lind Cribs

・ 販売数: 約 75万台

・ ディストリビューター: Evenflo Inc., Miamisburg, OH

・ 危険性: 開閉する側面の扉が機能しなかったり、本体から離れたりして隙間が出来て、

そこに乳幼児が挟まれて窒息状態になる危険性がある。または隙間に落ちることもある。

要因としては、組立ての方法に問題がある場合と、長期的な使用で老朽化が進み、製品が

正常に機能しなくなる場合がある。

・ 事故数: 開閉扉がうまく機能しなくなった事故が 31 件報告された。7 ヶ月の男児が本

体マットレスと枠の隙間に挟まれて、頭に軽症を負ったケースがあった。また 9 人の子供

が機能の悪くなった扉が開いた状態となってベッドから落ち、7 人が軽症を負った。さら

に、2000 年から 2004 年に製造されたベッドでは、マットレスサポートのひとつがとれて、

子供がマットレスと枠に挟まれる事故が 2件あった。

・ リコール対象製品: Jenny Lind Cribs16種

・ 販売時期と場所(価格): 2000 年 1 月~2007 年 11 月、全米の小売店で販売。(約 200

ドル)

・ 生産国: メキシコ、中国

・ 対策: 消費者はすぐに使用を止め、Evenflo 社に連絡して無料修理セットを受け取り、

扉を修理すること。2000 年から 2004 年に製造されたベッドについては、マットレスサポ

ートシステムの無料修理キットを受け取ること。

(写真:消費者製品安全委員会)

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3.カドミウム含有規制違反のため自主的リコールされた事例

消費者製品安全委員会所管法規則において、玩具の表面塗装についてはカドミウム含有規制

値が設けられているが、その他の子供用製品については規制値が設定されてない。環境庁

(EPA)所管法規にはカドミウム規制値が盛り込まれているが、これはそのまま子供製品に適

用されるものでもないため、法的な取締りが難しいことが指摘され、米国消費者団体は鉛の

代わりにカドミウム使用が増える可能性を危惧している。そうした中、消費者製品安全委員

会は子供を保護するという観点から問題製品の自主的リコールを企業側と協議した。

カドミウム含有製品のリコール案件 6 件(2010 年 1~10 月)のうち、5 件は子供用アクセサ

リー(中国製)。残り 1 件はマクドナルドがバーガーセットといっしょに配布したキャラク

ター製品(米国製)であった。

[マクドナルドの事例]

・ 商品名: シュレックのキャラクターイメージ入りガラスコップ

・ 販売数: 1200万個

・ メーカー: ARC International, Millville, NJ

・ 危険性:ガラスコップに描かれた絵の塗料にカドミウムが含有されており、長期にわた

りカドミウムに曝露することは健康に害が及ぶ危険性がある。

・ 販売時期(価格): 2010年 5月~6月(約 2ドル)

・ 生産国: 米国

・ 対策:消費者は直ちに使用を中止し、マクドナルド店舗に返却して 3 ドルの返金を受ける

こと。

(写真:消費者製品安全委員会)

4.民事訴訟で和解した事例

危険性のある製品や違法性が確認された商品の情報を消費者製品安全委員会に報告する法的

義務を怠ったメーカーまたは輸入業者や販売会社に対して、同委員会では民事裁判で罰則を

要求することがある。その多くは罰金や課徴金を支払って法廷外で和解する。近年の子供向

け製品分野の民事裁判では、鉛含有規制違反と知りながら報告を怠り販売を続けていたと判

断された企業や、紐のついた子供服で危険性の高いデザインだと知りながら、その事故と欠

陥を報告せずに販売してきた企業を相手取ったものが多く、多額の罰金を支払って和解して

いる。

(1)鉛塗料規制値違反(ケース①)

・ 企業名: Mattel社とその子会社 Fisher-Price, El Segundo, CA

・ 和解発表日: 2009 年 6月 5日

・ 和解金額: 230万ドル(輸入品としては過去最高額、同委員会史上 3番目に高額)

・ 違反内容: 2006 年 9 月から 2007 年 8 月の期間、Mattel 社は鉛塗料規制値違反の玩具や

バービー人形、セットアクセサリーなど 90 万個を輸入販売したと判断された。Fisher-

Price は、2006 年 7 月から 2007 年 8 月の間、鉛塗料規制値違反のトラックやボートのお

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もちゃなど 110 万個を輸入販売したことも訴訟対象とされた。それぞれの玩具は 2007 年

にリコールされている。和解に応じた両社だが、連邦法規を知りながら違反を犯していた

という点は否定した。

(写真:消費者製品安全委員会)

(2)鉛塗料規制値違反(ケース②)

・ 企業名: RC2 Corp., Oak Brook, IL

・ 和解発表日: 2009 年 12月 29日

・ 和解金額: 125万ドル

・ 違反内容: RC2 とその子会社 Learning Curve Brands Inc.は、塗料やその他表面コー

ティングに規制値を超える鉛が含有されていることを知りながら、様々な種類の Thomas

& Friends Wooden Railway 玩具(Thomas & Friends 商標の木製の鉄道おもちゃ)を輸入

販売し、子供を鉛中毒と健康被害リスクにさらしたとして訴えられた。RC2 は 2007 年 5

月、Thomas & Friends Wooden Railway 製品ラインのうち、20 種以上の電車玩具セット

部品に、当時の規制値を超える鉛を含有した塗料が使用されていたと報告。同年 8 月と 9

月には同製品ラインの別の 5種類が規制値を超えていたことを明らかにした。

RC2 は問題の製品を 2005 年 1 月~2007 年 6 月の間に最大 150 万ユニット輸入しており、

2007 年 6 月にリコールに踏み切った。2007 年 8~9 月に問題があるとして追加された 5 製

品については、2003 年 3 月~2007 年 4 月までの間に最大 20 万ユニットが輸入されており、

2007年 9月にリコールされた。

Thomas & Friends Wooden Railway 玩具は米国では国民的人気玩具として知られ、そのリ

コールは大きく報道された。その結果、米議会による消費者製品安全委員会の権限強化お

よび連邦法規による鉛含有規制の厳格化促進につながったと同委員会の Inez Tenenbaum

委員長は述べている。尚、RC2 は和解には同意したが、連邦法規違反を知りながら違反を

犯していたという点は否定した。

(写真:消費者製品安全委員会)

以上

本報告書の利用についての注意・免責事項

本調査報告書は、日本貿易振興機構(ジェトロ)の各海外事務所を通じ委託調査を行い、貿易投資相談センターで取りまとめをしたものですが、本書の記述、所見、結論、および提言は必ずしも日本貿易振興機構(ジェトロ)の見解を反映したものではありません。

海外の制度・規制等は日々変化するため、最新の情報を確認する必要がある場合は、必ずご自身で最新情報をご確認ください。

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