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老いを楽しむ を応援する情報紙 特定非営利活動法人 「老いの工学研究所」 541-0044 大阪市中央区伏見町4-2-14 TEL 06-6223-0001 巻頭 インタビュー Interview 2014年 夏号 すべての人が「老い」を受け入れ、楽しみ、憧れるような社会の実現を目指して… view 76 76 75 80 76 2■デザイン/ 株式会社PDD ■記事・広告のお問い合せ/ ㈱毎日新聞大阪センター 毎日新聞大阪センター ■編集・企画/ 530-0001 大阪市北区梅田3-4-5 TEL 06-6346-8734 YUICHIRO MIURA 80 81 70 75 350ょ! <1> 2014年(平成26年)夏号 冒険家 プロスキーヤー 三浦雄一郎 さん Vol.3 70 75 80 65 老いの工学研究所は、当研究所の趣旨に賛同いただいた方々のご支援によって運営しております。 また発足より2年が経過し、メディアを含めて様々な注目・期待を実感しております。 今後は、多くの企業・団体様と協力・連携しながら、豊かな高齢社会の実現に貢献したいと考えております。 当研究所の趣旨に賛同いただける企業・団体様に賛助会員として、ご支援をお願いいたします。 ご支援いただいた企業・団体様には、本紙を50部進呈しております。 「当研究所の活動を、ご支援いただける企業・団体様を募集しています」 〒541-0044 大阪市中央区伏見町四丁目 2 番 14 号 ☎06-6223-0001 「老いの工学研究所」 特定非営利活動法人 ●お問い合わせはこちらまでお願いいたします。 TEL. 06-6223-0001/ URL. http://oikohken.or.jp/contact/

超高齢社会における問題はなにかoikohken.or.jp/letter/vol3.pdf · あ0㍍にたどり着く、若い朝出発して夕方360たとえば、3000㍍をけるつもりで登ろうと。と。心臓のリハビリも続ことを山でやってみよう言葉を思い出し、同じ寄り半日仕事」という

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Page 1: 超高齢社会における問題はなにかoikohken.or.jp/letter/vol3.pdf · あ0㍍にたどり着く、若い朝出発して夕方360たとえば、3000㍍をけるつもりで登ろうと。と。心臓のリハビリも続ことを山でやってみよう言葉を思い出し、同じ寄り半日仕事」という

“老いを楽しむ”を応援する情報紙

特定非営利活動法人「老いの工学研究所」 〒541-0044 大阪市中央区伏見町4-2-14 TEL 06-6223-0001

巻頭インタビュー

Interview

2014年 夏号

すべての人が「老い」を受け入れ、楽しみ、憧れるような社会の実現を目指して…

view

――昨年の快挙はけが

(骨折)も病気(心臓)も克服

してでした。

76歳の時、スキーのジャンプ

で失敗して骨盤と大腿骨の

付け根を折って……76歳で

こんなけがをしたら寝たき

りになってもおかしくない。

75歳で2度目のエベレスト

登頂をした後で、「次は80歳

で」と言っていたころですか

ら、家族はこのけがが大変だ

と思う一方で、「これであき

らめるだろう」と少し安ど

する思いもあったようです。

でも僕は「何としても」と

思っていましたから入院中に

考えました。病院の食事は

まずくはないのですが、これ

では骨はできないな、と思い

毎日シャケの頭を食べよう

と――熊みたいなことを

(笑)――考えたんです。懇

意な魚屋さんから取り寄せ

て毎日、毎日。韓国料理のサ

ムゲタンのように具と一緒に

煮て骨から目玉から余すと

ころなく食べて、サプリメン

トも飲んで……1カ月

ちょっと経つと先生が「不思

議だ」と。ズレていた骨が正

常な位置でくっつき始めて

る、と。くっつき具合も中学

高校生並みの早さで、とて

も76歳の回復ではないと。

負荷をかけた運動のおか

げで骨密度が高かった、同じ

骨折でも折れ方がましだっ

たのです。

――今回の登頂では、ど

のような工夫をされたので

しょう?昔

、言われていた「年

寄り半日仕事」という

言葉を思い出し、同じ

ことを山でやってみよう

と。心臓のリハビリも続

けるつもりで登ろうと。

たとえば、3000㍍を

朝出発して夕方360

0㍍にたどり着く、若い

人でもフラフラです。あ

くる朝出発して……を

繰り返していては死ん

でしまう。朝出発して

昼に(目的地に)着いて

あとはゆっくりと夜を

迎えます、疲れていない

のでよく眠れます。

(2面に続く)

あくる日も朝出発して昼

に着いて夜までゆっくりする

のです。ほかのチームより10

日遅れのペースです。

これでエベレストの頂上に

着いた時はうっとりしてしま

いました……普通、頂上に

は20分いたらいけないと言

われています。

エベレストの8848㍍と

いうのは、まるで神様が「人

間が生身で登れるのはここ

までだ」と決めたような高

さなのです。これ以上の高

さになると血液にあぶくが

生じてしまう。50度で水が

ふっとうする、という世界で

すから。9000㍍以上だ

と宇宙服を着ない限り人

間は生きていけない……そ

ういう限界がエベレストなの

です。

それは知っていながら酸素

マスクを外す、ゴーグルを外

す、写真を撮る、衛星携帯

電話で話す、気がついたら1

時間くらい経っていました、

この間に体温がどんどん失

われていったんじゃないかと。

下りは体重の3〜5倍の力

が足にかかるといいますが、

足に力がまったく入らない、

ロープにしがみつくようにし

て降りました。それでも死

んだ方がまし、と思うくらい

苦しくて、「(ロープから)手

を離しさえすれば楽にな

る」。死神の声が聞こえるよ

うでした。

みんなが助けてくれて30

時間かけて8848㍍から

6400㍍まで氷の壁を降

りました。6400㍍が「も

う大丈夫」という地点なの

です。

――70歳で1回目のエベ

レストに挑むまでには、

ちょっとした〝前史〞があった

そうですね?

60歳で「もうこんな危ない

稼業から足を洗ってのんび

り余生を楽しもう」という

気になったんです。飲み過

ぎ、食べ過ぎ、運動不足でメ

タボになりました。身長16

4㌢なのに体重88㌔、体脂

肪率40を超えるありさまで

……さすがにこれではいけ

ない、目標を持たねばと。

ちょうどそのころ父の敬

三(スキーヤーで2006年

に101歳で死去)が99歳で

モンブランをスキーで滑った

のです。「おやじがモンブラン

なら自分はエベレストだ。5

年かけてやろう」と心に期し

たのが65歳でした。

ところが――僕はずっと

札幌に住んでいまして――

(札幌市中央部にある)藻

岩(もいわ)山(531㍍)に

ゆっくり登っただけで心臓は

バクバク、脂汗は出る。知って

る人に見られないよう野球

帽を目深にかぶったくらいで

した。

「こんなことでとてもエベレ

ストなんて……」と思う一方

で、「でもこれでできたら面

白い」という思いもありまし

た。一方

で、仕事で全国を飛び

回らなければいけません。

考えたのは日常生活でト

レーニングする方法もあるの

では、ということ。足首に1

㌔の重り、背中には10㌔の

荷物を背負い、仕事に散歩

に出かけることでした。重さ

はだんだん増やしました。

先ほど、「負荷をかける」

といったのはこういうことで

す。―

―さらに次の目標を掲

げておられるとか?

はい。できれば85歳でチョ・

オユー(8201㍍)に登り

たいと。

(注=チョ・オユーはネパー

ルと中国チベット自治区にま

たがるヒマラヤ山脈の山。高

さは世界第6位)

山頂からスキーで滑れる

唯一の8000㍍級の山なも

のですから。

――同年代の方々への

メッセージを。

僕はエベレストという目標

を持ったおかげで「攻めの健

康法」を持て、骨を丈夫に

でき筋肉もつけられました。

食べ物にも気をつけること

で元気が出ました。「できる

ことを一歩ずつでもいいから

やってみよう」がエベレストに

つながったのだと思います。

みなさんも少しでも「い

い」と思ったことは継続して

ください。夢・目標も、みん

ながエベレストでなくていい、

温泉に行くでもいい、行動

すること自体が大きな目標

につながるでしょう。

■デザイン/ 株式会社PDD■記事・広告のお問い合せ/ ㈱毎日新聞大阪センター毎日新聞大阪センター

■編集・企画/

〒530-0001 大阪市北区梅田3-4-5 TEL 06-6346-8734

YUICHIRO MIURA

昨年、史上最高齢の80歳で世界最高峰エベレスト(標高8

848㍍)への登頂を成し遂げた三浦雄一郎さん(81)。スキー

場での事故で骨盤と大腿骨の付け根を骨折しながらリハビ

リで克服。一方で二度の心臓手術も経たうえでの快挙でした。

しかもエベレスト登頂は70歳と75歳の時に続いての3度目で

した。常人の遠く及ばない超人とも思える三浦さんですが、

「夢を持って」「皆さんにもできますとも」が口ぐせ。歳とと

もに〝慎重〞になりがちな私たちを激励します。

350円一部

よ っ こ ら し ょ !<1> 2014年(平成26年)夏号

冒険家 プロスキーヤー

三浦雄一郎さん

Vol.3

70・75・80歳 エベレスト3度登頂

始まりは「65歳のメタボ」から

老いの工学研究所は、当研究所の趣旨に賛同いただいた方々のご支援によって運営しております。また発足より2年が経過し、メディアを含めて様々な注目・期待を実感しております。

今後は、多くの企業・団体様と協力・連携しながら、豊かな高齢社会の実現に貢献したいと考えております。当研究所の趣旨に賛同いただける企業・団体様に賛助会員として、ご支援をお願いいたします。

ご支援いただいた企業・団体様には、本紙を50部進呈しております。

「当研究所の活動を、ご支援いただける企業・団体様を募集しています」

〒541-0044 大阪市中央区伏見町四丁目 2番 14 号 ☎06-6223-0001「老いの工学研究所」特定非営利活動法人

●お問い合わせはこちらまでお願いいたします。TEL. 06-6223-0001/ URL. http://oikohken.or.jp/contact/

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2

――昨年の快挙はけが

(骨折)も病気(心臓)も克服

してでした。

76歳の時、スキーのジャンプ

で失敗して骨盤と大腿骨の

付け根を折って……76歳で

こんなけがをしたら寝たき

りになってもおかしくない。

75歳で2度目のエベレスト

登頂をした後で、「次は80歳

で」と言っていたころですか

ら、家族はこのけがが大変だ

と思う一方で、「これであき

らめるだろう」と少し安ど

する思いもあったようです。

でも僕は「何としても」と

思っていましたから入院中に

考えました。病院の食事は

まずくはないのですが、これ

では骨はできないな、と思い

毎日シャケの頭を食べよう

と――熊みたいなことを

(笑)――考えたんです。懇

意な魚屋さんから取り寄せ

て毎日、毎日。韓国料理のサ

ムゲタンのように具と一緒に

煮て骨から目玉から余すと

ころなく食べて、サプリメン

トも飲んで……1カ月

ちょっと経つと先生が「不思

議だ」と。ズレていた骨が正

常な位置でくっつき始めて

る、と。くっつき具合も中学

高校生並みの早さで、とて

も76歳の回復ではないと。

負荷をかけた運動のおか

げで骨密度が高かった、同じ

骨折でも折れ方がましだっ

たのです。

――今回の登頂では、ど

のような工夫をされたので

しょう?昔

、言われていた「年

寄り半日仕事」という

言葉を思い出し、同じ

ことを山でやってみよう

と。心臓のリハビリも続

けるつもりで登ろうと。

たとえば、3000㍍を

朝出発して夕方360

0㍍にたどり着く、若い

人でもフラフラです。あ

くる朝出発して……を

繰り返していては死ん

でしまう。朝出発して

昼に(目的地に)着いて

あとはゆっくりと夜を

迎えます、疲れていない

のでよく眠れます。

(2面に続く)

あくる日も朝出発して昼

に着いて夜までゆっくりする

のです。ほかのチームより10

日遅れのペースです。

これでエベレストの頂上に

着いた時はうっとりしてしま

いました……普通、頂上に

は20分いたらいけないと言

われています。

エベレストの8848㍍と

いうのは、まるで神様が「人

間が生身で登れるのはここ

までだ」と決めたような高

さなのです。これ以上の高

さになると血液にあぶくが

生じてしまう。50度で水が

ふっとうする、という世界で

すから。9000㍍以上だ

と宇宙服を着ない限り人

間は生きていけない……そ

ういう限界がエベレストなの

です。

それは知っていながら酸素

マスクを外す、ゴーグルを外

す、写真を撮る、衛星携帯

電話で話す、気がついたら1

時間くらい経っていました、

この間に体温がどんどん失

われていったんじゃないかと。

下りは体重の3〜5倍の力

が足にかかるといいますが、

足に力がまったく入らない、

ロープにしがみつくようにし

て降りました。それでも死

んだ方がまし、と思うくらい

苦しくて、「(ロープから)手

を離しさえすれば楽にな

る」。死神の声が聞こえるよ

うでした。

みんなが助けてくれて30

時間かけて8848㍍から

6400㍍まで氷の壁を降

りました。6400㍍が「も

う大丈夫」という地点なの

です。

――70歳で1回目のエベ

レストに挑むまでには、

ちょっとした〝前史〞があった

そうですね?

60歳で「もうこんな危ない

稼業から足を洗ってのんび

り余生を楽しもう」という

気になったんです。飲み過

ぎ、食べ過ぎ、運動不足でメ

タボになりました。身長16

4㌢なのに体重88㌔、体脂

肪率40を超えるありさまで

……さすがにこれではいけ

ない、目標を持たねばと。

ちょうどそのころ父の敬

三(スキーヤーで2006年

に101歳で死去)が99歳で

モンブランをスキーで滑った

のです。「おやじがモンブラン

なら自分はエベレストだ。5

年かけてやろう」と心に期し

たのが65歳でした。

ところが――僕はずっと

札幌に住んでいまして――

(札幌市中央部にある)藻

岩(もいわ)山(531㍍)に

ゆっくり登っただけで心臓は

バクバク、脂汗は出る。知って

る人に見られないよう野球

帽を目深にかぶったくらいで

した。

「こんなことでとてもエベレ

ストなんて……」と思う一方

で、「でもこれでできたら面

白い」という思いもありまし

た。一方

で、仕事で全国を飛び

回らなければいけません。

考えたのは日常生活でト

レーニングする方法もあるの

では、ということ。足首に1

㌔の重り、背中には10㌔の

荷物を背負い、仕事に散歩

に出かけることでした。重さ

はだんだん増やしました。

先ほど、「負荷をかける」

といったのはこういうことで

す。―

―さらに次の目標を掲

げておられるとか?

はい。できれば85歳でチョ・

オユー(8201㍍)に登り

たいと。

(注=チョ・オユーはネパー

ルと中国チベット自治区にま

たがるヒマラヤ山脈の山。高

さは世界第6位)

山頂からスキーで滑れる

唯一の8000㍍級の山なも

のですから。

――同年代の方々への

メッセージを。

僕はエベレストという目標

を持ったおかげで「攻めの健

康法」を持て、骨を丈夫に

でき筋肉もつけられました。

食べ物にも気をつけること

で元気が出ました。「できる

ことを一歩ずつでもいいから

やってみよう」がエベレストに

つながったのだと思います。

みなさんも少しでも「い

い」と思ったことは継続して

ください。夢・目標も、みん

ながエベレストでなくていい、

温泉に行くでもいい、行動

すること自体が大きな目標

につながるでしょう。

プロフィール 三浦雄一郎(みうら・ゆういちろう)プロスキーヤー。冒険家。クラーク記念国際高等学校校長。青森市出身。1960年代前半からプロスキーの世界で活躍。66年富士山直滑降。85年世界七大陸最高峰のスキー滑降を完全達成。03年、70歳でエベレストに世界最高齢で登頂。08年75歳でエベレストに再登頂。昨年5月23日、80歳での3度目の登頂を成功させ大きなニュースになった。

PROFILE

よ っ こ ら し ょ ! 2014年(平成26年)夏号 <2>

「できることを一歩ずつ」が夢につながる

次は85歳でチョ・オユー(8201㍍)を史上最高齢の80歳でエベレスト山頂

に立った三浦さん=2013年5月23日(ミウラ・ドルフィンズ提供)

知人・友人をご紹介ください

ぜひ、モニター会員としてご協力ください。ご入会は下記いずれかの方法で承ります。(登録は無料です)。 ①メール(info@oikohken.or.jp)の件名に「モニター会員希望」と書いてご送信ください。 ②ホームページから。http://oikohken.or.jp/contact/  ③電話(06-6223-0001)で「モニター会員希望」とお伝えください。

私ども老いの工学研究所では、さらに調査・研究活動を強化すべく、引き続きモニター会員になっていただける方を募集しています。お知り合いやご友人の方にご紹介いただき、是非ご入会をお勧めください。ご入会いただきますと、この「よっこらしょ」を、毎回郵送させていただきます。老いの工学研究所の活動では、右のような活動をしています。

現在、モニター会員となっている高齢者の皆様の数は、約1万1千人。モニター会員の方には、アンケート調査にご協力いただきます。(郵送またはメールで、アンケートへの回答をお願いします。)《モニター会員特典》●当研究所を応援いただいている企業から の情報提供(商品やサービスのご紹介など)●様々な講演会やセミナーなどのご案内

充実した老いに関する調査・提言に、ご協力いただける方(モニター会員)を募集しています。(モニター会員への登録・入会金・会費等は一切無料です)

提言活動

老いの工学研究所の活動

調査活動 研究活動

活き活きとした長寿社会の創出に向けて

メッセージする

理想的な老後のあり方を究明する

高齢者を知る

・定点調査の実施 ・高齢者インタビュー・モニター会員の協力によるアンケート調査

・大学などとの連携・独自研究

・調査結果の提供・講演会の実施・HPでの交流

会員モニター 大学(院)・携提研究機関

会員・企業・一般社会

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3

~座ってできる有酸素運動で、メタボ予防!~

メタボ予防には、意識的に身体を活発に動かすことがポイントです。身体を活発に動かすとは『3メッツ(通常歩行)』以上の運動強度を言います。“18~64歳の方は1日60分”、“65歳以上の方は1日40分”を目安に元気に身体を動かしましょう。今よりプラス10分だけでも増やすことで、健康寿命をのばせます。また『4メッツ(早歩き)』程度の運動習慣をもつようにすると、なお効果的です。チェアエクササイズは2~4メッツの強度で科学的根拠のある運動です。まずは座りながら1日10分間から始めてみましょう!

座りながらメタボ予防

よ っ こ ら し ょ !<3> 2014年(平成26年)夏号

老いの工学研究所は、「誰

もが老いを恐れず、むしろ

憧れるような社会を創造

する」という目的を掲げて

活動しています。私たちは、

豊かで活性化した超高齢社

会を実現するには何が必要

か、様々な議論を行っていま

すが、現在のところ、政治・

社会がこれに向かい合う姿

勢は、適当ではないと考えて

います。理由をいくつか挙げ

てみましょう。

高齢者は非生産的で

弱い人なのか?

まず、一般的な認識が、高

齢者を非生産的で弱い人だ

と位置づけ、どのように支

え、守ってあげるかという視

点に偏っていることです。例

えば、新聞紙上では、若年

人口が減少していく中で、社

会保障の財源をどうするか

といった議論ばかりが目につ

きますが、高齢者を支える

ためのお金の捻出や配分だ

けで問題が解決するとは思

えません。

老いを嫌がり、恐れ、逃

げているだけでいいの

か?次に

、「老い」を「衰え」と

同義とし、高齢者のほとん

どが要介護状態や認知症

になってしまうというような

不安をあおる風潮があるこ

と。結果として高齢者自身

が漠然とした不安を抱き、

次世代も親の介護などや

自分の衰えを心配するよう

になっています。このまま、皆

が年老いることを嫌がり、

恐れ、老いから逃げているよ

うでは、超高齢社会が暗い

雰囲気になってしまうに違い

ありません。

いつ引退・隠居モデルが

転換されるのか?

第三に、高齢期の生き方

に関する議論がいっこうに

深まらないこと。平均寿命

がこれから90歳に近づこう

かという時代であるのに、高

齢期のライフスタイルに関す

る意識は、何十年も前の引

退・隠居モデルのまま変わっ

ていません。最期まで社会に

関わり、地域や次世代に貢

献しつづける生涯現役モデ

ルへの転換がなければ、多く

の高齢者が長い高齢期を活

き活きと暮らしている、活性

化した超高齢社会を築く

ことは難しいでしょう。

高齢者の実像は理解

されているのか?

第四の問題は、高齢者の

実像が広く理解されていな

いこと。裕福なのかそうでな

いのか、どれくらいの割合で

心身の健康を損なうのか、

高齢になると能力はどのよ

うに変化するのか、認識の

仕方や思考の特徴は、といっ

た高齢者の実像が正確に周

知されておらず、結果とし

て「何となく不安」という漠

然とした恐れが広がってし

まっています。高齢になるリ

スクばかりを喧伝すること

によって、モノを売ろうとす

る企業姿勢も大いに疑問と

言わざるを得ません。

高齢者の面倒を見る

側の支援やケアが軽視

されていいのか?

第五には、高齢者自身で

なく、実際に親の面倒を見

なくてはならなくなった次

世代の大変さや、それに対

する支援・ケアが軽視され

がちであることです。親の介

護などによって、次世代が疲

弊してしまったり、仕事や生

活に支障をきたしたりする

事態は避けなければなりま

せん。

最後に、高齢者の社会貢

献意識や規範意識が高いと

は言えないことも、問題とし

て挙げられます。せっかくの

能力や見識を持て余してい

る人がいます。また、若者か

らだらしない言動やマナーの

悪さを指摘されているよう

な人も少なくありません。

人生経験やその年齢に相応

しい言動を、次世代に見せ

ることは高齢者の重要な役

割と言えるでしょう。

このような状況を見ると

き、本当の問題は、「体制面・

金銭面・技術的側面から、

高齢者をどのように支える

か」ということではなく、「老

いの捉え方、どう老いていく

べきかという視点が定まら

ないこと」ではないか。また、

それによって「老いをいたず

らに恐れ、老いから逃げ、老

いに抗っている人が多

いこと」ではないかと

考えられます。

そもそも、老いや死

は、必ず誰にでも訪れ

ます。従って、逃げたり

抗ったりすることに大

した意味はありませ

ん。むしろ、老いから目を背

ければ背けるほど、その先

送りされた問題は大きく

なってしまうでしょう。私た

ちは、老いに向き合う以外

に正しい態度を持たないの

です。

超高齢社会を明るく豊か

なものにするためには、老い

を受け入れ、齢に向き合う

高齢者の存在が貴重になっ

てきます。その人達によっ

て、老いに向き合う正しい態

度が広まり、その齢に相応

しい人々が増え、現在の様々

な問題の解決が図られてい

くでしょう。誰もが老いを恐

れず、むしろ憧れるような

社会を創造するという当研

究所の目的は、そんな高齢

者を増やし続けることに

よって達成されると考えま

す。

正しいイス座位姿勢の確認・イスの前半分に座り、坐骨を突き刺すように。・脚は腰幅、膝の角度は約90度にし、足裏全体を床につける。・頭は肩の上におきます。

チェアエクササイズは、イス1つあればできる科学的根拠の裏付けのある運動です。規則的に実施すれば、立ち座りや起き上がる、横たわるなどの日常生活動作がスムーズになると言われています。いつまでも自分らしくイキイキとした毎日を過ごすために、今日から早速始めてみましょう!

チェアエクササイズ R vol.3○

PROFILE竹尾 吉枝

NPO法人1億人元気運動協会会長。教育学修士(神戸大学)。健康運動指導士、介護予防主任運動指導員。92年にチェアエクササイズを発表し、科学的根拠の裏付けのもと、普及活動を開始。1億人元気運動協会では、定期的に講習会を開催しています。ホームページhttp://www.genki-kyokai.com

♪①左手を上に突き出す。かけ声は「ヤー」。

♪②③④胸の前で手拍子を3回。反対も同様に行う。

●ヤー&手拍子

●お尻歩き  ♪⑤⑥⑦⑧座面の

後ろまで移動したら、今度は元の位置に向かって4歩移動する。

Point坐骨を交互に座面に打ち付け、骨盤を振り子のように動かす。反対側の坐骨が持ち上がり、テンポよく移動できる。

♪①②③④座面の前半分から腕を交互に振りながら、坐骨で歩くように座面の後に4歩移動する。

♪②出した手足を元に戻す。反対も同様に行い2回繰り返す。

♪①左足を前に出し、踵を床につける。足と同じ側の手を肩の高さで前に押し出す。指先は上へ向け、手首は曲げる。ドアを押すようなイメージで、肘をしっかりと伸ばす。かけ声は「オス」。

♪①②股関節から上体を前傾する。腕で半円を描くように、体側のやや後ろから前へ向かって大きく伸ばす。

♪③④背筋を使って上体を元の位置まで戻す。肘を背中より後へ引く。2回行う。

NG股関節からでなく腰から曲げている。体幹部が安定していない。

●オス

●よいしょ2. オス(8拍)+よいしょ(8拍)

1. ヤー&手拍子(8拍)+お尻歩き(8拍)

齢に向き合う正しい態度を考える

picsTo

超高齢社会における問題はなにか

〜老いの工学研究所の視点〜よわい

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4

活動報告

Activity「高齢者のありよう、役割に関する調査」を実施。

世代間の大きなズレ

超高齢社会の課題が明らかに

高齢者のありようや役割について、年代による認識の差を明らかにすることを目

的にアンケートを実施しました。アンケートは、今年1月から3月にかけてインタ

ーネット・郵送で行われたもので、20〜87歳までの851人から回答を得ました。

よ っ こ ら し ょ ! 2014年(平成26年)夏号 <4>

経済面・能力面で高齢者は

「弱者でない」。高齢者の役

割は「伝承」「体現」「交

流」。

 

アンケートではまず「高齢

者は健康面で弱者か」と質

問。これに対して、20代から

80代までの各年代で肯定

(「そうだ」「ややそうだ」と

回答)した割合は80%を超

えました。一方、「経済的に弱

者か」「能力面で弱者か」と

いう質問に対しては70歳代

で半数程度、80歳代でも6

割程度にとどまりました

(図1)。60歳以上の肯定の

合計でも、健康面は83%で

したが、経済的、能力面はと

もに52%と、半数以上の高

齢者が自身は弱者でないと

考えていることが分かりま

した。

 

次に高齢者の役割につい

ての質問では「知恵や知識、

技術を伝える責任がある」

「規範やマナーの体現者であ

るべき」「日本の伝統や慣習

を伝える責任がる」「若い世

代と、積極的に交流すべき」

の4項目では世代間の違い

があまり見られませんでし

た(図2)。この結果から、世

代を問わず高齢者の役割

として期待されているのは

「伝承」「体現」「交流」の3

点だと推測できます。技術

や伝統継承については、製造

業などで課題になっていま

すが、あるべき規範やマナー

の実践、伝承の場としての

世代間交流が高齢者の重

要な役割として認識されて

いる結果となりました。ま

た、「新しい機器になじみ、

使いこなすべきだ」「アンチエ

イジングに励むべきだ」といっ

た質問に対して、20〜40代

で肯定した割合は50代以上

より低く、こうした結果か

らも若い世代が高齢者に期

待しているのは〝イマドキで

若々しい姿〞ではなくいわゆ

る〝年の功〞を発揮している

姿だと考えられます。

若いほど「高齢者を優遇し

すぎ」と考える傾向。高齢

者も3割が同意。

 

若い世代の60〜70%が高

齢者に対してもっとお金を

使ってもらいたいと思ってい

る一方、高齢者は消費・投資

に消極的であることが分か

りました(図3)。これは、若

い世代は「高齢者は経済的

に余裕がある」と見ている一

方、高齢者は「先行きの経

済的不安を感じる」「財産

を残すことを優先」「お金

の使い道があまりない」と多

様に考えるなど、認識のズレ

が表れた結果だと思われま

す。また、「公的制度で高齢

者を優遇しすぎ」「高齢者

の政治に対する発言力が大

きすぎる」とした割合が20

代〜40代では半数を超えて

いる一方、高齢者でも3割近

くが同じように回答してお

り、「次世代への配分を大き

くすべき」「次世代の意見を

取り入れるべき」と考えてい

る高齢者が少なくないこと

は注目に値します。

 

生涯現役でいるべきかど

うかという質問に関しては

「生涯現役でいるべきだ」と

考える人は40歳代で65%と

なったものの、ほかは50%台

以下となりました。半面

「悠々自適でいるべき」は各

世代で7割程度で推移して

おり、「生涯現役社会」の実

現が国の重要方針になってい

ますが、実際は昔ながらのラ

イフスタイルが根強く支持さ

れているようです。

核家族化や偏った報道に

よって高齢者の認識に誤解

が生まれる

 「高齢者は健康面で弱者

か」という質問に対する回

答と、「経済的に弱者か」

「能力面で弱者か」という関

係を見ると、健康面で弱者

だと考える人ほど、経済的

にも能力的にも弱者だとす

る傾向が顕著になりました。

一般的には、記憶力や計算力

は衰えるが、知識や経験に

基づく判断力や対応力は維

持・向上が可能であるとさ

れており、また、労働収入は

減るものの資産や年金など

で経済的余裕はあるので、

先ほどのような理解は正確

とはいえません。こうした結

果は、核家族化の進行と地

域交流の減少で、高齢者と

触れ合い理解する機会が

減ったこと、報道により要介

護状態の高齢者や認知症

患者、経済的困窮状態にあ

る人たちを目にしがちなこ

とが原因だと思われます。

こうした理解は、高齢者を

必要以上に、かつ意思に反

する形で保護したり、自身

の老いに対する恐れや不安

が増すなど、超高齢社会の

活性化に向けた足かせにな

るリスクがあります。

 「長寿はめでたいことか」

「長生きそのものに価値があ

るか」という質問に対して肯

定した人の割合は60歳を超

えると急に低下しており、自

身が高齢になる過程で長生

きを単純には評価できなく

なっているようです。また「長

寿はめでたい」に比べ「長生

きそのものに価値がある」の

割合が低く、寿命だけでな

く生活の充実度を重視して

いることが分かります。特に

20歳代を除くすべての年代

で女性のほうが低い割合と

なり、女性のほうがより生活

の充実度を重視する傾向が

あることが読み取れます。

20

40

60

80

100(%)

能力面で弱者

経済的に弱者

健康面で弱者

(各質問に「そうだ」「ややそうだ」と答えた割合)(各質問に「そうだ」「ややそうだ」と答えた割合)

80代70代60代50代40代30代20代20

40

60

80

100(%)

若い世代と積極的に交流すべき

日本の伝統や慣習を伝える責任がある

規範やマナーの体現者であるべき

知恵や知識、技術を伝える責任がある

80代70代60代50代40代30代20代

【図2】高齢者の役割について 【図1】高齢者は弱者か?

回答者の年代回答者の年代

病院で死を迎えることが一般的となった現在、大多数の人たちにとって死というものを身近に感じ、死というものを予め考える機会は、ほとんどないのではないか。逆に、テレビを点ければ、刑事ドラマやサスペンスドラマ等において、いとも簡単に人が殺され、ゲームの世界においても殺戮が繰り返される。しかし、テレビドラマやゲームの中で死を迎えた俳優やキャラクターは、次の瞬間新たな役割を得て復活する。これでは、子供たちが人は生き返るものという誤った認識を持つこともむべなるかなである。ことほど左様に、現代の人々にとって死は遠いものとなっている。代わりに、人々は老いを衰えととらえ、介護されることを恐れ、忌み嫌う。経済的な側面において、長寿は喜ばしいものではなく、リスクととらえられる。巷では、アンチエイジングと称して、老いに抗うことを称賛している。(そのように)老いに抗い、死を遠ざける生き方によって、はたして本当に充実した人生を送れるのだろうか。死は誰にも平等に訪れるが、死の迎え方は人それぞれである。また、どのように

死のうと考えたとしても、その思い通りになることは少ない。しかしながら、自分の人生の終わりを意識しながら、今ある生を精一杯前向きに生きることはできる。また、死を意識し、生に感謝することで、自ずと今の人生を充実したものにしようとする意欲がわいてくる。ラテン語には、メメント・モリ(memento mori)という言葉がある。「自分が(いつか)必ず死ぬことを忘れるな」といった意味ととらえられている。さて、死を意識するということによって何が変わるのか。死を生の終わりととらえるならば、その瞬間を後悔なく迎えたい。生を終えるそのときまで、自らの意思をもって過ごしたい。できれば、自分の生きた時間が有意義なものであったと思いたい。そうした意識をもったとき、自らの人生がより愛おしいものとなるのではないだろうか。齢(よわい)に抗って(アンチエイジング)生きたとしても死は必ずやってくるのであれば、同じ時間を、老いを受け入れ老いにしっかりと向き合って生きるという選択があってもよいのでないか。いや、老いにしっかりと向き合って充実した生を生きることこそが、この高齢化社会を生きる要諦なのではないだろうか。私たち「老いの工学研究所」では、こうした生き方をする人 を々、「高齢者」でもましてや「抗齢者」でもなく、「向齢者」と呼ぶとともに、「向齢者」として生きる方法を模索していきたい。          

理事長 西澤 一二

「向・齢者」として生きる

Page 5: 超高齢社会における問題はなにかoikohken.or.jp/letter/vol3.pdf · あ0㍍にたどり着く、若い朝出発して夕方360たとえば、3000㍍をけるつもりで登ろうと。と。心臓のリハビリも続ことを山でやってみよう言葉を思い出し、同じ寄り半日仕事」という

5

夏号

プ レ ゼ ントSPECIAL PRESENT

ご応募は、はがきに希望商品、情報紙・よっこらしょの入手先、気に入った記事や今後読んでみたい記事と、住所、氏名、年齢、電話番号を明記のうえ

〒541-0044 大阪市中央区伏見町4-2-14老いの工学研究所よっこらしょプレゼント係へ。

2014年8月31日の消印有効。当選発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。

よ っ こ ら し ょ !<5> 2014年(平成26年)夏号

経済面・能力面で高齢者は

「弱者でない」。高齢者の役

割は「伝承」「体現」「交

流」。

 

アンケートではまず「高齢

者は健康面で弱者か」と質

問。これに対して、20代から

80代までの各年代で肯定

(「そうだ」「ややそうだ」と

回答)した割合は80%を超

えました。一方、「経済的に弱

者か」「能力面で弱者か」と

いう質問に対しては70歳代

で半数程度、80歳代でも6

割程度にとどまりました

(図1)。60歳以上の肯定の

合計でも、健康面は83%で

したが、経済的、能力面はと

もに52%と、半数以上の高

齢者が自身は弱者でないと

考えていることが分かりま

した。

 

次に高齢者の役割につい

ての質問では「知恵や知識、

技術を伝える責任がある」

「規範やマナーの体現者であ

るべき」「日本の伝統や慣習

を伝える責任がる」「若い世

代と、積極的に交流すべき」

の4項目では世代間の違い

があまり見られませんでし

た(図2)。この結果から、世

代を問わず高齢者の役割

として期待されているのは

「伝承」「体現」「交流」の3

点だと推測できます。技術

や伝統継承については、製造

業などで課題になっていま

すが、あるべき規範やマナー

の実践、伝承の場としての

世代間交流が高齢者の重

要な役割として認識されて

いる結果となりました。ま

た、「新しい機器になじみ、

使いこなすべきだ」「アンチエ

イジングに励むべきだ」といっ

た質問に対して、20〜40代

で肯定した割合は50代以上

より低く、こうした結果か

らも若い世代が高齢者に期

待しているのは〝イマドキで

若々しい姿〞ではなくいわゆ

る〝年の功〞を発揮している

姿だと考えられます。

若いほど「高齢者を優遇し

すぎ」と考える傾向。高齢

者も3割が同意。

 

若い世代の60〜70%が高

齢者に対してもっとお金を

使ってもらいたいと思ってい

る一方、高齢者は消費・投資

に消極的であることが分か

りました(図3)。これは、若

い世代は「高齢者は経済的

に余裕がある」と見ている一

方、高齢者は「先行きの経

済的不安を感じる」「財産

を残すことを優先」「お金

の使い道があまりない」と多

様に考えるなど、認識のズレ

が表れた結果だと思われま

す。また、「公的制度で高齢

者を優遇しすぎ」「高齢者

の政治に対する発言力が大

きすぎる」とした割合が20

代〜40代では半数を超えて

いる一方、高齢者でも3割近

くが同じように回答してお

り、「次世代への配分を大き

くすべき」「次世代の意見を

取り入れるべき」と考えてい

る高齢者が少なくないこと

は注目に値します。

 

生涯現役でいるべきかど

うかという質問に関しては

「生涯現役でいるべきだ」と

考える人は40歳代で65%と

なったものの、ほかは50%台

以下となりました。半面

「悠々自適でいるべき」は各

3名様2 資生堂TSUBAKIヘッドスパ スパークリングセラム今年2月に新発売した「TSU-

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世代で7割程度で推移して

おり、「生涯現役社会」の実

現が国の重要方針になってい

ますが、実際は昔ながらのラ

イフスタイルが根強く支持さ

れているようです。

核家族化や偏った報道に

よって高齢者の認識に誤解

が生まれる

 「高齢者は健康面で弱者

か」という質問に対する回

答と、「経済的に弱者か」

「能力面で弱者か」という関

係を見ると、健康面で弱者

だと考える人ほど、経済的

にも能力的にも弱者だとす

る傾向が顕著になりました。

一般的には、記憶力や計算力

は衰えるが、知識や経験に

基づく判断力や対応力は維

持・向上が可能であるとさ

れており、また、労働収入は

減るものの資産や年金など

で経済的余裕はあるので、

先ほどのような理解は正確

とはいえません。こうした結

果は、核家族化の進行と地

域交流の減少で、高齢者と

触れ合い理解する機会が

減ったこと、報道により要介

護状態の高齢者や認知症

患者、経済的困窮状態にあ

る人たちを目にしがちなこ

とが原因だと思われます。

こうした理解は、高齢者を

必要以上に、かつ意思に反

する形で保護したり、自身

の老いに対する恐れや不安

が増すなど、超高齢社会の

活性化に向けた足かせにな

るリスクがあります。

 「長寿はめでたいことか」

「長生きそのものに価値があ

るか」という質問に対して肯

定した人の割合は60歳を超

えると急に低下しており、自

身が高齢になる過程で長生

きを単純には評価できなく

なっているようです。また「長

寿はめでたい」に比べ「長生

きそのものに価値がある」の

割合が低く、寿命だけでな

く生活の充実度を重視して

いることが分かります。特に

20歳代を除くすべての年代

で女性のほうが低い割合と

なり、女性のほうがより生活

の充実度を重視する傾向が

あることが読み取れます。

(各質問に「そうだ」「ややそうだ」と答えた割合)

20

40

60

80

100(%)

政治に対する発言力が大きすぎる

公的制度で高齢者を優遇しすぎ

もっと消費や投資を行うべき

80代70代60代50代40代30代20代

【図3】高齢者についてどのように思っているか?

回答者の年代

超高齢社会を迎えての課題老いの工学研究所は右のアンケート結果を受けて、5つの課題を挙げました。

①高齢者・高齢化に関する正確な理解の促進 ⇒歳をとることによる心身への影響について、正しく理解

する機会が高齢者にも次世代にも必要。衰えばかりをクローズアップする報道姿勢も、影響面が大きい

 ⇒一概に弱者だと考えるのではなく、健康面、経済面、能力面を分けて評価し強みを発揮してもらえるように考える社会へ

②「生涯現役志向」へ。全世代の意識改革 超高齢社会の維持・活性化には高齢者の自立が不可欠であることを理解し、「引退・隠居」という前時代モデルを脱する

③「体現者」として。高齢者の意識改革 次世代からは、伝承や継承だけでなく、高齢者自らが規範やマナーの体現者であってほしいという期待があり、高齢者には日常的にこのような期待にこたえる意識を持ってもらう

④「生活の充実度」重視へ。高齢男性の意識改革 特に高齢男性において、人生・生活の充実度を重視する割合が低く、定年後のキャリアや人生設計について考えてもらう機会が必要

⑤高齢者と次世代との交流機会の創出 ⇒知識や技術を伝えるなど、次世代の期待にこたえ、年

の功を発揮する場の創出 ⇒世代間交流が減っている中、世代間の認識ズレを解

消する(相互理解を促進する)ためにも交流機会が必要 

5名様甲子園歴史館入場券阪神甲子園球場レフト外

野スタンド下にある甲子園歴史館。阪神タイガース、高校野球の名勝負・名シーン、名選手たちを懐かしい写真や映像、貴重な展示品を通じて紹介しています。そのほか、80年以上にわたる阪神甲子園球場の歴史に関わる史料も展示しています。今回は入場券を5名様にプレゼント。●お問い合わせ/阪神甲子園球場  甲子園歴史館(0798-49-4509)

3

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6

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よ っ こ ら し ょ ! 2014年(平成26年)夏号 <6>

このほど、日経BPクリーンテック研究所が主催の「自治体、異業種と考える社

会イノベーション研究会」で、よっこらしょ編集長春田美砂子が講演しました。

老いの工学研究所が行ってきた「老いの充実を考えるアンケート調査」の結果か

ら浮き彫りとなった「高齢者の幸福度」についてアンケート調査結果を交えつつ

発表しました。今回、講演の内容を記します。

60歳代は高齢者ではない

高齢者=

弱者は間違い?

まず、世間が考える高齢

者像について、考えてみたい

と思います。

各メディア等で発信されて

いる高齢者像は、高齢者イ

コール弱者、高齢者イコール

守られるべき者という流れ

になっているように思われま

す。確かに、高齢者の介護・

医療問題は、現在その状況

の中におかれている方々に

とって大変な問題であること

は理解しております。

私も老いの工学研究所で

の活動を通じて、弱者である

高齢者対策の必要性を痛

感しました。高齢者は弱者

であるから、様々なサービス

を作り上げ、充実させるこ

とで高齢者が安心して生活

できると考えました。ですか

ら、今各業界での高齢者への

アプローチも超高齢化社会

では必要なことの一面である

と考えます。

例えば、機器による利便

性の向上等の生活環境の改

善、高齢者住宅や施設の整

備、訪問医療・訪問介護等の

健康・福祉の充実などがあ

ります。

次に、このアンケート結果

をご覧ください(図1)。これ

は、「健康面」「経済面」「能

力面」の三つの観点から高齢

者を弱者であると思うかに

ついて20歳代〜80歳代の8

51名の方が回答された世

代間アンケートです。

このグラフ(図1)は

「高齢者は健康面で弱者

である」「高齢者は経済的な

弱者である」「高齢者は能

力面で弱者である」という質

問に対して「弱者である」と

肯定した回答割合を示して

います。

健康面については、世代間

格差はなく50歳代の90%を

筆頭に、すべての世代で80%

以上の方が「高齢者は健康

面で弱者である」としていま

す。た

だし、「経済的」「能力

面」においては「健康面」と

まったく逆の傾向が見られ

ます。60歳代までの各年代

の半数以上が経済的にも

能力面でも弱者とは思って

いません。80歳代になってく

ると能力面で弱者と考え

る方が増えては来ますが、

それでも4割以上の方が能

力面でも弱者ではないと考

えています。このアンケート

結果から高齢者イコール弱

者という考え方を、少なく

とも経済的・能力面におい

ては見直す必要があると

私どもは考えて、活動する

べきではないかと思っており

ます。

高齢者の幸福度とは?

男性は「配偶者」に左右

今から高齢者の幸福度は

何と関係しているのかという

本題に入ります。

このアンケートの目的は、

現在の高齢者は、現在の状

況を幸福と思っているのかを

調査することでした。

アンケートでは、まず

「あなたの現在の生活の満

足度、幸福度を100点満

点として何点とするか」

を自己採点してもらった

後、約50の質問項目について

回答して頂いています。

当初、幸福度の平均は60

点程度、そして年代別に差

異が出てくるのではないかと

考えておりました。しかしア

ンケート結果を見ると、高齢

者の幸福度が予想よりも高

い結果となり、80点以上を

「幸福度が高い高齢者」、80

点未満を「幸福度が低い高

齢者」としました。

また、年代間の差異はあま

りなく、性別による差異が

非常に大きいことがわかり

ました。

まず、高齢男性の幸福度

についてです。

高齢男性の幸福を左右す

るのは、「配偶者との同居」

です。

「今の配偶者と結婚してよ

かった」という質問項目に対

して、幸福度が高い男性は肯

定回答をしている割合が高

く、また約8割が配偶者と

同居しています。一人暮らし

でも「幸福だ」と感じている

高齢男性はたった4%、一桁で

す。それに引き替え、「今の

配偶者と結婚してよかった」

という質問に対して肯定回

答をしている女性の割合は

男性ほど多くはなく、また

「配偶者と同居」している割

合は半数を下回る結果で

す。さて

、配偶者に男性の幸福

度がこれほど左右される理

由はなんでしょうか?

その理由として、私は男性

が定年退職し会社という組

織から離れた時、これからい

るべき自分の場所に男性が

所属するコミュニティがないこ

とが関係しているのではない

かと思います。

以前宝塚で老人クラブを

立ち上げ運営している70歳

代の男性の代表者の方にお

話を聞く機会があり、その

方が、「宝塚でもこの地域に

住まわれている方は、一流企

業に勤務し定年した方が多

いんです。定年まで家庭や地

域の活動のことは妻に任せ

て、仕事一筋に働いてきた方

が多い。仕事に行かなくなっ

たからといっても、近所の方

は顔見知り程度。また一流企

業に勤務していたという男の

プライドで、簡単に地域に溶

け込むということが難しい。

だからどんどん家にひきこ

もってしまう男性が多いんで

す。それじゃいけない。解決

していかないといけないと

思ったのが、老人クラブを立

ち上げたきっかけです」と

おっしゃっていました。

たしかに老いの工学研究

所主催の座談会に出席され

るのも、圧倒的に女性の方で

す。最高87歳の女性の方も

参加されました。男性の方

は見ず知らずの方が集まる

座談会に参加されることは

稀です。その座談会に出席

された女性の方は

「女性は、ずっと地域のコ

ミュニティの中で生きていま

す。結婚してからは、自治会

やPTAで地域のコミュニティ

の中に所属しています。だか

ら高齢者になったからと言っ

て、自分の所属するコミュニ

ティがそれまでと劇的に変

化するわけではありません」

とおっしゃっていたことが印

象に残っています。

もし高齢男性のコミュニ

ティ参加の機会が増えてく

ればこのアンケート結果も

今後変化していく可能性が

あるのではないでしょうか。

女性は「経済面」と「精神

面」に影響

一方、女性の幸福度について

見ていきましょう。

高齢女性の幸福度を左右

するのは、「経済面の安心と

精神的自立」という結果で

す。70

〜80歳代の女性の方

は、やはり精神的に強い。結

婚されている方は、しっかり

家庭を守ってきた方が多い。

そして未婚の方は、今の世間

とは比べものにならないくら

い女性にとっては逆風の男社

会の中で勤め上げた方々が

多くいらっしゃいます。

女性の方が平均寿命が長

いということは皆さんご存じ

のことと思います。となる

と、結婚されている方の多く

は、ご主人が亡くなった後、

20年以上一人で生きていかな

ければいけないと考えている

方が多いということです。そ

してボランティアであれ趣味

であれ、それをするためには

経済面の安心が必要なんで

すね。

また、経済的な安心だけで

はなく精神的に自立できて

いることも女性が幸福であ

ることの重要なポイントで

す。座談会に参加されてい

る80歳代の女性の方々は、ご

主人を亡くされている方が

多くいます。そしてその悲し

みを受け入れ、乗り越え、自

分の生き方を楽しんでいる

方々ばかりです。

座談会に参加される方

は、ご自身の老後の生き方に

自分なりの考えをお持ちで

あり、それを初対面の方に

も堂々と発言されます。座

談会に参加される方は、50

歳代から80歳代まで本当に

さまざまな年代の方です。で

すが、ご自身の生き方や考

え方、そして人生の終い方ま

で考えている方は70歳代後

半から80歳代の方々です。

ですから、幸福度の差は、

年齢とともに拡大していく

ということなのだと思いま

す。「老い」に抗うのではな

く、肯定的に捉え、自分の人

生の終い方をしっかり見据

えてるかがこの差を生みだ

しているのではないでしょう

か。今

まで使ってきました「高

齢者」という言葉は、高齢者

の方に好感を持って受け入

れられているのでしょうか?

研究所のアンケート調査

でも、「高齢者」という言葉

に好感を持たれていた方は

8%程度でした。「シニア」は

アンケート調査でも60%程

度の方が好感をもたれてい

ましたが、その一方で、カタカ

ナ言葉への違和感を持たれ

ている方も多くいらっしゃい

ました。

高齢者ではなく〝向齢者〞

老いと向き合うことからス

タート

アンケート結果等を基に、

私どもが理想とする生き方

をされている高齢者をどう

呼ぶか、を考え、老いの工学

研究所では「向齢者」という

言葉を作りました。「向齢

者」とは「齢に向き合う者」

という意味です。年齢に抗

う「抗齢者」ではなく、老い

を受け入れ、しっかりと向き

合って生きる「向齢者」の考

え方や生き方を提言し啓蒙

することが老いの工学研究

所が目指す社会を創造す

ることになるのではないかと

考えました。

もちろん、いろいろな立場

での考え方があると思いま

す。身体的状況が次第に変

化していく現実もやはりあ

ります。ただ、私どもは高齢

者を弱者と考えない立場で

取り組んでいくことを選び

ました。

そしてそれを次世代にも

提言していくこともこれから

の活動として考えます。

私は老いの工学研究所で

の活動を通して両親と向き

合うことの必要性を痛感し

ました。「親が好きなように

決めればいい」という言葉を

よく聞きます。それは本当

に親の自主性を尊重してい

るではなく、話し合うことを

避けているだけなのではない

かと思ったのです。また、両親

の老後と向き合うことで、自

分のこれからの生き方を考

える機会になるのではないか

と思いました。

このようなことを考える

きっかけを与えてくれたの

も、座談会・インタビュー等で

出会った「老い」を受け入れ、

向き合いながらご自身の生

き方をしっかり生きていらっ

しゃる「向齢者」の方々です。

今後、私どもは、今まさに

人生の後半期を生きる人々

や次の世代が、「向齢者」と

なるために身につけるべき考

え方や生き方を追求してま

いりたいと思っております。

ご清聴ありがとうござい

ました。

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

能力面で弱者である

経済的な弱者である

健康面で弱者である

80代70代60代50代40代30代20代

【図1】今の高齢者は、自分自身をどのように捉えているか?

(各質問に「そうだ」「ややそうだ」と答えた割合)

岩手で生まれ育った私に

とって、東日本大震災は他人

事ではありません。いてもたっ

てもいられずカメラを片手に

被災地にはいりました。

とりあえず思い出の写真を

無くされた方々を避難所で

撮影して、写真を差し上げる

ことからはじめました。

震災から半年以上すぎて、

宮城県仙台市の南にある山

元町を歩いていたときです。

ほぼ壊滅状態の空き地で黙々

と農作業をしているおじいさ

んがいるではありませんか。し

かもそこにはビニールハウスが

しっかりとたっているのです。話

を聞いてみることにしました。

やはり今回の震災で、ご自

宅や畑は津波を被ってしまっ

たそうです。自治体や学者は

被災した農家に「除塩しない

と塩害で作物は育たない」と

指導していたのですが岩佐さ

んのすごいところは、そんなこ

とを気にせず、すぐ畑仕事を

始めたことです。芋、葉もの、

大根と、どんどん植えていき、

岩佐さんの作物は見事に育っ

ていきました。

これには警告した役人や学

者もびっくりしてしまい、それ

を見ていたまわりの農家も、

これを見て奮い立ち、みんな

畑仕事をはじめたそうです。

岩佐さんの優しく人なつっこ

い笑顔をまた見たくて、年末

にもお伺いしました。ビニールハ

ウスでは、イチゴが見事に実を

付けていました。

私は岩佐さんの「心配して

いても何も始まらない。とり

あえず、やるべきことをやる」

という強さに惹かれてしまい、

何枚も何枚もシャッターを押

していました。

「老いの矜持」岩佐喜代志さん(

74歳)

宮城県亘理郡山元町

イチゴ/野菜農家

誇りを持って、堂々と生きるお年寄りを撮っていく写真家 小山一芳さんのギャラリー

「命は永らえる為ではなく、 生かすためにある。」

講演録

講演テーマ

「高齢者の『幸福感』」

Page 7: 超高齢社会における問題はなにかoikohken.or.jp/letter/vol3.pdf · あ0㍍にたどり着く、若い朝出発して夕方360たとえば、3000㍍をけるつもりで登ろうと。と。心臓のリハビリも続ことを山でやってみよう言葉を思い出し、同じ寄り半日仕事」という

7よ っ こ ら し ょ !<7> 2014年(平成26年)夏号

60歳代は高齢者ではない

高齢者=

弱者は間違い?

まず、世間が考える高齢

者像について、考えてみたい

と思います。

各メディア等で発信されて

いる高齢者像は、高齢者イ

コール弱者、高齢者イコール

守られるべき者という流れ

になっているように思われま

す。確かに、高齢者の介護・

医療問題は、現在その状況

の中におかれている方々に

とって大変な問題であること

は理解しております。

私も老いの工学研究所で

の活動を通じて、弱者である

高齢者対策の必要性を痛

感しました。高齢者は弱者

であるから、様々なサービス

を作り上げ、充実させるこ

とで高齢者が安心して生活

できると考えました。ですか

ら、今各業界での高齢者への

アプローチも超高齢化社会

では必要なことの一面である

と考えます。

例えば、機器による利便

性の向上等の生活環境の改

善、高齢者住宅や施設の整

備、訪問医療・訪問介護等の

健康・福祉の充実などがあ

ります。

次に、このアンケート結果

をご覧ください(図1)。これ

は、「健康面」「経済面」「能

力面」の三つの観点から高齢

者を弱者であると思うかに

ついて20歳代〜80歳代の8

51名の方が回答された世

代間アンケートです。

このグラフ(図1)は

「高齢者は健康面で弱者

である」「高齢者は経済的な

弱者である」「高齢者は能

力面で弱者である」という質

問に対して「弱者である」と

肯定した回答割合を示して

います。

健康面については、世代間

格差はなく50歳代の90%を

筆頭に、すべての世代で80%

以上の方が「高齢者は健康

面で弱者である」としていま

す。た

だし、「経済的」「能力

面」においては「健康面」と

まったく逆の傾向が見られ

ます。60歳代までの各年代

の半数以上が経済的にも

能力面でも弱者とは思って

いません。80歳代になってく

ると能力面で弱者と考え

る方が増えては来ますが、

それでも4割以上の方が能

力面でも弱者ではないと考

えています。このアンケート

結果から高齢者イコール弱

者という考え方を、少なく

とも経済的・能力面におい

ては見直す必要があると

私どもは考えて、活動する

べきではないかと思っており

ます。

高齢者の幸福度とは?

男性は「配偶者」に左右

今から高齢者の幸福度は

何と関係しているのかという

本題に入ります。

このアンケートの目的は、

現在の高齢者は、現在の状

況を幸福と思っているのかを

調査することでした。

アンケートでは、まず

「あなたの現在の生活の満

足度、幸福度を100点満

点として何点とするか」

を自己採点してもらった

後、約50の質問項目について

回答して頂いています。

当初、幸福度の平均は60

点程度、そして年代別に差

異が出てくるのではないかと

考えておりました。しかしア

ンケート結果を見ると、高齢

者の幸福度が予想よりも高

い結果となり、80点以上を

「幸福度が高い高齢者」、80

点未満を「幸福度が低い高

齢者」としました。

また、年代間の差異はあま

りなく、性別による差異が

非常に大きいことがわかり

ました。

まず、高齢男性の幸福度

についてです。

高齢男性の幸福を左右す

るのは、「配偶者との同居」

です。

「今の配偶者と結婚してよ

かった」という質問項目に対

して、幸福度が高い男性は肯

定回答をしている割合が高

く、また約8割が配偶者と

同居しています。一人暮らし

でも「幸福だ」と感じている

高齢男性はたった4%、一桁で

す。それに引き替え、「今の

配偶者と結婚してよかった」

という質問に対して肯定回

答をしている女性の割合は

男性ほど多くはなく、また

「配偶者と同居」している割

合は半数を下回る結果で

す。さて

、配偶者に男性の幸福

度がこれほど左右される理

由はなんでしょうか?

その理由として、私は男性

が定年退職し会社という組

織から離れた時、これからい

るべき自分の場所に男性が

所属するコミュニティがないこ

とが関係しているのではない

かと思います。

以前宝塚で老人クラブを

立ち上げ運営している70歳

代の男性の代表者の方にお

話を聞く機会があり、その

方が、「宝塚でもこの地域に

住まわれている方は、一流企

業に勤務し定年した方が多

いんです。定年まで家庭や地

域の活動のことは妻に任せ

て、仕事一筋に働いてきた方

が多い。仕事に行かなくなっ

たからといっても、近所の方

は顔見知り程度。また一流企

業に勤務していたという男の

プライドで、簡単に地域に溶

け込むということが難しい。

だからどんどん家にひきこ

もってしまう男性が多いんで

す。それじゃいけない。解決

していかないといけないと

思ったのが、老人クラブを立

ち上げたきっかけです」と

おっしゃっていました。

たしかに老いの工学研究

所主催の座談会に出席され

るのも、圧倒的に女性の方で

す。最高87歳の女性の方も

参加されました。男性の方

は見ず知らずの方が集まる

座談会に参加されることは

稀です。その座談会に出席

された女性の方は

「女性は、ずっと地域のコ

ミュニティの中で生きていま

す。結婚してからは、自治会

やPTAで地域のコミュニティ

の中に所属しています。だか

ら高齢者になったからと言っ

て、自分の所属するコミュニ

ティがそれまでと劇的に変

化するわけではありません」

とおっしゃっていたことが印

象に残っています。

もし高齢男性のコミュニ

ティ参加の機会が増えてく

ればこのアンケート結果も

今後変化していく可能性が

あるのではないでしょうか。

女性は「経済面」と「精神

面」に影響

一方、女性の幸福度について

見ていきましょう。

高齢女性の幸福度を左右

するのは、「経済面の安心と

精神的自立」という結果で

す。70

〜80歳代の女性の方

は、やはり精神的に強い。結

婚されている方は、しっかり

家庭を守ってきた方が多い。

そして未婚の方は、今の世間

とは比べものにならないくら

い女性にとっては逆風の男社

会の中で勤め上げた方々が

多くいらっしゃいます。

女性の方が平均寿命が長

いということは皆さんご存じ

のことと思います。となる

と、結婚されている方の多く

は、ご主人が亡くなった後、

20年以上一人で生きていかな

ければいけないと考えている

方が多いということです。そ

してボランティアであれ趣味

であれ、それをするためには

経済面の安心が必要なんで

すね。

また、経済的な安心だけで

はなく精神的に自立できて

いることも女性が幸福であ

ることの重要なポイントで

す。座談会に参加されてい

る80歳代の女性の方々は、ご

主人を亡くされている方が

多くいます。そしてその悲し

みを受け入れ、乗り越え、自

分の生き方を楽しんでいる

方々ばかりです。

座談会に参加される方

は、ご自身の老後の生き方に

自分なりの考えをお持ちで

あり、それを初対面の方に

も堂々と発言されます。座

談会に参加される方は、50

歳代から80歳代まで本当に

さまざまな年代の方です。で

すが、ご自身の生き方や考

え方、そして人生の終い方ま

で考えている方は70歳代後

半から80歳代の方々です。

ですから、幸福度の差は、

年齢とともに拡大していく

ということなのだと思いま

す。「老い」に抗うのではな

く、肯定的に捉え、自分の人

生の終い方をしっかり見据

えてるかがこの差を生みだ

しているのではないでしょう

か。今

まで使ってきました「高

齢者」という言葉は、高齢者

の方に好感を持って受け入

れられているのでしょうか?

研究所のアンケート調査

でも、「高齢者」という言葉

に好感を持たれていた方は

8%程度でした。「シニア」は

アンケート調査でも60%程

度の方が好感をもたれてい

ましたが、その一方で、カタカ

ナ言葉への違和感を持たれ

ている方も多くいらっしゃい

ました。

高齢者ではなく〝向齢者〞

老いと向き合うことからス

タート

アンケート結果等を基に、

私どもが理想とする生き方

をされている高齢者をどう

呼ぶか、を考え、老いの工学

研究所では「向齢者」という

言葉を作りました。「向齢

者」とは「齢に向き合う者」

という意味です。年齢に抗

う「抗齢者」ではなく、老い

を受け入れ、しっかりと向き

合って生きる「向齢者」の考

え方や生き方を提言し啓蒙

することが老いの工学研究

所が目指す社会を創造す

ることになるのではないかと

考えました。

もちろん、いろいろな立場

での考え方があると思いま

す。身体的状況が次第に変

化していく現実もやはりあ

ります。ただ、私どもは高齢

者を弱者と考えない立場で

取り組んでいくことを選び

ました。

そしてそれを次世代にも

提言していくこともこれから

の活動として考えます。

私は老いの工学研究所で

の活動を通して両親と向き

合うことの必要性を痛感し

ました。「親が好きなように

決めればいい」という言葉を

よく聞きます。それは本当

に親の自主性を尊重してい

るではなく、話し合うことを

避けているだけなのではない

かと思ったのです。また、両親

の老後と向き合うことで、自

分のこれからの生き方を考

える機会になるのではないか

と思いました。

このようなことを考える

きっかけを与えてくれたの

も、座談会・インタビュー等で

出会った「老い」を受け入れ、

向き合いながらご自身の生

き方をしっかり生きていらっ

しゃる「向齢者」の方々です。

今後、私どもは、今まさに

人生の後半期を生きる人々

や次の世代が、「向齢者」と

なるために身につけるべき考

え方や生き方を追求してま

いりたいと思っております。

ご清聴ありがとうござい

ました。

「向齢者」とは・・・「老い」を受け入れ

「老い」としっかり向き合って生きる

向齢者(齢に向き合う者)

抗齢者(齢に抗う者)

よわい

よわい

やはり今回の震災で、ご自

宅や畑は津波を被ってしまっ

たそうです。自治体や学者は

被災した農家に「除塩しない

と塩害で作物は育たない」と

指導していたのですが岩佐さ

んのすごいところは、そんなこ

とを気にせず、すぐ畑仕事を

始めたことです。芋、葉もの、

大根と、どんどん植えていき、

岩佐さんの作物は見事に育っ

ていきました。

これには警告した役人や学

者もびっくりしてしまい、それ

を見ていたまわりの農家も、

これを見て奮い立ち、みんな

畑仕事をはじめたそうです。

岩佐さんの優しく人なつっこ

い笑顔をまた見たくて、年末

にもお伺いしました。ビニールハ

ウスでは、イチゴが見事に実を

付けていました。

私は岩佐さんの「心配して

いても何も始まらない。とり

あえず、やるべきことをやる」

という強さに惹かれてしまい、

何枚も何枚もシャッターを押

していました。

Page 8: 超高齢社会における問題はなにかoikohken.or.jp/letter/vol3.pdf · あ0㍍にたどり着く、若い朝出発して夕方360たとえば、3000㍍をけるつもりで登ろうと。と。心臓のリハビリも続ことを山でやってみよう言葉を思い出し、同じ寄り半日仕事」という

8よ っ こ ら し ょ ! 2014年(平成26年)夏号 <8>

掲示板(モニター会員から寄せられた意見を掲載しています。)

質問 『現在の高齢者、高齢化社会について感じていることは?』

皆様からのご意見をお待ちしています。 ●ファックス : 06-6223-2420 ●Eメール : [email protected]

老いの工学研究所では、毎週月曜日の13時

から理事や研究員が集まって喧々諤々の会議

をしています。議論白熱したり、複雑で深い

テーマに考え込んだりと、毎回容易な会議で

はありませんが、そんなときの絶好の息抜き、

なごみになっているのが地方名産の和菓子。い

つの頃からか、出張に行った人が名産の和菓

子を買って来るようになり、今では暗黙の

ルールになりました。誰かが出張に行くと聞

くと、翌週の会議に登場するお菓子は何

か?などと、クイズにしたりしています。

かく言う私、福岡への出張で買い忘れたこ

とがあります。会議当日に気付いて「しまっ

た」と思ったものの後の祭り。それで責められ

るわけではないのですが・・・、お土産の買い忘

れは何となく気まずいものです。もちろん次

の出張では、長崎名産のお菓子「ザビエル」を

しっかり買って帰りました。読者の皆さんのお

気に入りは、どんなお菓子ですか?(川)

* 

* 

巻頭インタビューの取材で、「超人」三浦雄一

郎さんに会いました。その時のこぼれ話をひ

とつ。三浦さんはたった一人で全国を飛び回っ

ているそうで、インタビューの時にそのことを

尋ねてみました。「そうですよ。ほとんどの講

演会へは一人で移動します。マネージャーも付

き人もいませんから、荷物も全部自分で運び

ます。今日もこのリュックに荷物を全部入れ

ています。だいたいリュックの重さは10㎏〜15

㎏ぐらいになりますから、トレーニングにちょ

うどいい重さです。」と笑いながら言われまし

た。インタビュー後、10㎏のリュックと片足1㎏

の重り付の靴を履き、次の講演会がある福

岡に向けて、一人で出発されました。

次に、私が気づかされた一言です。

それは、講師として出席した日経BP社講

演会終了後、30歳も半ばを過ぎた参加者の

方が「今日くらい『老い』という言葉を何回も

聞いた日はありません。3時間くらいだったの

に。かなりびっくりしました!!」と言われた言

葉です。

『老い』という言葉は、研究所の会議でもよ

く出てくる言葉ですので、私の中で日常的に

なり過ぎていたのかもしれません。確かに、私

も研究所で活動する以前は、日常の会話に

『老い』という言葉はほとんどありませんでし

た。今

は『老い』という言葉が身近になっている

とも言えますが(研究所の名前にも入ってい

るくらいですから)、もしかしたら、その言葉の

持つ意味の多様性に私が鈍感になっていたの

かもしれません。(春)

編集後記

エネルギーの使い道…日本人の寿命が延び、年金、健康保険のおかげで街には多くの老年者が、朝から晩までグランドゴルフ、カラオケに膨大なエネルギーを放出している。老人センターには元気な人があふれている。国はこうしたエネルギーを生産的に吸収すべきではないか。同時に、老年者自身も、そのエネルギーを生産的に、社会に役立つ形で使うことを考えなければならない。

(奈良県 川越さん。74歳・男性)

老いも若きも…人生の方向をつかめていない高齢者が、スーパーマーケットや図書館などに行き、その居心地の良さに時間を空費している。老人センターに集う人々の一部が、履物や傘、せっけんなどを平気で持っていく。駅周辺の自転車がなくなるのと、同じくらいではないか。老いも若きもマナーの悪さは同じ。今どきの若者は・・・とよく言うけれど、今どきの高齢者は・・・とも言いたくなる。

(神戸市 MKさん。69歳・女性)

あぁはなりたくない…今や、65歳以上が24%を超える高齢社会になっております。私も昭和3年生まれの85歳ですが、戦中を生き抜き、戦後の食糧難にも耐え、まだ元気で頑張っています。ただし、道行く高齢者の姿を見て色々と反省もします。あぁはなりたくないと感じるような高齢者が、少なくないからです。

(堺市 Oさん。85歳・女性)

健康だけ?…「人の世話にならないようにしたい。」そんな高齢者の不安を見透かすように、最近、サプリメントや健康食品に有名人を使ったコマーシャルが多い。ホントにそんな効果があるのか、誇大広告ではないのかと、いつも疑問に思います。だいたい、健康であればそれでいいのでしょうか?充実や幸せ、思い残すことのない人生、子供たちへ残すことや伝えること。高齢者は、もっと考えることがあるのではないかと思います。

(京都市 佐々木さん。72歳・女性)

恵まれている…現在の高齢者の方々は幸せだと思います。それなりの苦労はありましたが、夢のある時代を過ごし、少しの資産があり、それなりの年金も入り、引退しても大きな不安はなく過ごすことができます。今は、毎日の生活を愉しみ、優しい介護の方々に見守られ、風景を眺めたり、楽しい食事をしたり、安心して暮らしています。私たちの世代は、本当に恵まれているのではないでしょうか。

(大阪市 HSさん。82歳・女性)

死に様は生き様…できれば元気で死にたい。認知症にはなりたくない。ガンになれば必ず殺してくれるので私はガンで死にたい・・など、色々と死について考えるようになりました。でも、死に様は生き様・・・! 所詮、人間は生きてきたように死ぬのだとも思います。

(京都府 坂部さん。76歳・男性)

死ぬまで自分で…年寄りを大事にするのは、昔の話のように思うことが多々あります。それは、年寄りが甘えているからかもしれません。自分でできることは、死ぬまで自分でやらないと。人にしてもらっていてはダメです。自分が年をとるに連れ、高齢者は若い人の手本になるように振る舞わねばと思うようになりました。

(宝塚市 ONさん。67歳・女性)

幸せの型…テレビや新聞などで、大勢の家族に囲まれているのが幸福の見本であるかのように報道しているのに違和感を覚えます。幸せの型はさまざま。満足している人でもふと不幸せを感じることもあるはず。様々な型を、肯定的に捉えるような報道を望みます。

(大阪市 本田さん。64歳・男性)

その時を待つ…自分も老人だが、見習いたい老人が少ない。若さ志向の風潮で、老成、円熟、死の受容など老いの精神性が取り上げられない。老人は長い間、人間を見てきた。洞察力がある。静かに冷たく自分の扱われ方を見ているものである。あわてふためかず、用意して静かにその時を待てばよろし。動物に見習うべし。

(伊丹市 YNさん。81歳・男性)

妻の分まで…8才年下の妻が、三年ほど前に62才で他界しました。一年くらいは頭の中が空白で、ただただNHKの深夜放送を聞いていました。その後、色々な方の人生の話を伺い、人生のこれからを見つめるため、気持ちにけじめをつけました。今はこの世の生を、妻の分まで生きて楽しんでいます。

(芦屋市 ISさん。75歳・男性)