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英語入試改革の 現状と論点 東京大学高大接続研究開発センター 南風原朝和

英語入試改革の 現状と論点 - 東京大学高大接続研究開発センター · 2019-02-13 · cefr 加点(英語の総点250 を想定した場合) c2→50 c1→40

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英語入試改革の現状と論点

東京大学高大接続研究開発センター

南風原朝和

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大学入学共通テスト実施方針(2017年7月13日)

7.英語の4技能評価

① 資格・検定試験のうち、試験内容・実施体制等が入学者選抜に活用する上で必要な水準及び要件を満たしているものをセンターが認定し(以下、認定を受けた資格・ 検定試験を「認定試験」という。)、その試験結果及びCEFRの段階別成績表示を要請のあった大学に提供する。

② 国は、活用の参考となるよう、CEFRの段階別成績表示による対照表を提示す る。

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大学入学共通テスト実施方針(2017年7月13日)

③ センターは、受検者の負担、高等学校教育への影響等を考慮し、高校3年の4月 ~12月の間の2回までの試験結果を各大学に送付することとする。

④ 共通テストの英語試験については、制度の大幅な変更による受検者・高校・大学への影響を考慮し、認定試験の実施・活用状況等を検証しつつ、平成35年度までは実施し、各大学の判断で共通テストと認定試験のいずれか、又は双方を選択利用することを可能とする。

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国立大学協会の基本方針(2017年11月10日)

(1)「大学入学共通テスト」

② 英語4技能の評価

新テストの枠組みにおいて、センターが認定した民間の資格・検定試験(以下、「認定試験」)を活用することが有効であるが、十分な検証を行いつつ、その実施・定着を図っていくことが必要であることから、国立大学としては、 新テストの枠組みにおける5教科7科目の位置づけとして認定試験を「一般選抜」 の全受験生に課すとともに、平成35年度までは、センターの新テストにおいて実施される英語試験を併せて課すこととし、それらの結果を入学者選抜に活用する。

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★ここに至る議論に,いま各大学がかけている時間をかけるべきだった!

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昨年のシンポジウム(2018年2月10日)

講演者(敬称略)

山田泰造(文部科学省・大学入試室長)

片峰 茂(前・国大協入試委員長)

込山智之(ベネッセ・GTEC開発部長)

羽藤由美(京都工芸繊維大学)阿部公彦(東京大学)宮本久也(全国高校長協会長)

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国立大学協会のガイドライン(2018年3月30日)

2.英語認定試験

(認定試験結果の活用)

新テストの枠組みにおける認定試験結果の活用については、各大学・学部等の方針に基づき、次の方法のいずれか、または双方を組み合わせて活用することを基本とする。

① 一定水準以上の認定試験の結果を出願資格とする。

② CEFRによる対照表に基づき、新テストの英語試験の得点に加点する。

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ブックレットの緊急出版(2018年6月5日)

執筆者(敬称略)

宮本久也(全国高校長協会長)羽藤由美(京都工芸繊維大学)阿部公彦(東京大学)荒井克弘(元・大学入試セン

ター副所長)南風原朝和(東京大学)

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国立大学協会の参考例(2018年6月12日)

2.英語認定試験

(1)出願資格とする場合

出願資格とする水準の具体的な設定については、各大学・学部等が主体的に定める。(中略)具体的には、各大学・学部等の方針により、CEFR対照表に基づき、その一定水準(例えばA2)以上を受験資格とすることが考えられる。

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国立大学協会の参考例(2018年6月12日)

(2)加点方式とする場合

英語認定試験の結果に基づき共通テストの英語の成績に加点する点数の具体的な設定については、各大学・学部等が主体的に定める。(中略)具体的には、各大学・学部等の方針により、英語認定試験の結果に基づく加点の点数をCEFR対照表に基づく水準ごとに定め、その最高点が共通テストの英語の成績と合わせた英語全体の満点に占める割合を、英語4技能学習のインセンティブを与える観点から適切な比重(例えば2割以上)となるようにすることが考えられる

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【論点1】2020年度~2023年度の各大学の英語入試の方針

焦点は,民間試験の使用の是非と,仮に使う場合は使い方をどうするか

“well-informed decision”が求められる

入試の実施主体として,受験生に責任をもって説明のできる方針を

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東京大学新聞2018年6月12日

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東京大学・入学者選抜方法検討WG(2018年7月12日)

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東京大学・現時点での方針(2018年12月25日)

2021年度東京大学一般入試(2020年度実施)においては、従来の出願要件に加え、次の(1)~(3)のうちいずれか1つを求めることとします。

(1) 大学入試センターによって、「大学入試英語成績提供システム」の参加要件を満たすと確認された民間の英語試験(以下、「認定試験」という。)の成績(ただし、CEFRとの対照表でA2レベル以上に相当するもの)。

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東京大学・現時点での方針(2018年12月25日)

(2) 日常の授業における学習状況や試験の成績等から総合的に評価した結果、CEFRのA2レベル以上に相当する英語力があると認められることが明記されている高等学校等による証明書。

(3) 何らかの理由で上記(1) (2)のいずれも提出できない者は、その事情を明記した理由書。

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名古屋大学の「英語力証明書」(2019年2月8日)

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静岡大学の方針(2018年12月26日)

CEFR 加点(英語の総点 250 を想定した場合)

C2→50 C1→40 B2→32 B1→24 A2→16 A1→8

(註4)上記の内容は,2020 年度において,大学入試英語成績提供システムが問題なく運用され,且つ英語認定試験が公正な実施形態で滞りなく実施されている状態であることを前提としています。それと相違する状態となった場合には,状況に応じて,救済措置等を講じる可能性があります。

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岩手県立大学の方針(2018年11月26日)

高校生の皆さんへ(学長メッセージ)

本学では、2021年度入学者選抜の一般選抜においては、大学入試センターが認定した英語の資格・検定試験(認定試験)を利用することを本年 4 月に公表しましたが、この方針を変更し、 認定試験を利用しないこととしました。

その理由は、岩手県内を含め地方において、高校生に等しく認定試験を受検する機会が確保できるか、受検料や会場までの交通費など認定試験への経済的負担が多いことなど、不安を抱えたまま受検することを心配したためです。(後略)

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毎日新聞2019年1月30日

日本経済新聞2019年1月14日

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朝日新聞2019年2月10日

実際には「使用しない/必須としない」

を含めた三択

岩手県立大学のような見直し・変更も

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【論点2】民間試験を共通テストで使用する際の課題の検証

広く指摘されている以下の課題は解消されるのか

・異なる試験間の比較可能性 - CEFR自体の限界も

・試験や採点の質 ー 結果の報告=成績提供システムの運用も

・受験機会の公平性

・セキュリティ,キャパシティ,合理的配慮等 - 事故対応も

・試験対策による高校教育への影響

※ 2018年12月,大学入試英語4技能ワーキンググループを設置

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【論点3】高等学校における英語運用能力の評価のあり方

入試の際に求められる証明書のための評価だけでなく,より広く,高等学校での英語運用能力の評価のあり方

あわせて,高等学校における英語運用能力を高める指導のあり方

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大学入学共通テスト実施方針(再掲)

(2017年7月13日)

7.英語の4技能評価

④ 共通テストの英語試験については、制度の大幅な変更による受検者・高校・大学への影響を考慮し、認定試験の実施・活用状況等を検証しつつ、平成35年度までは実施し、各大学の判断で共通テストと認定試験のいずれか、又は双方を選択利用することを可能とする。

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【論点4 】2024年度以降の共通テスト「英語」の存続・廃止

現時点でも懸念の多い民間試験に一本化するのか

“well-informed decision”が求められる

入試の実施主体として,受験生に責任をもって説明のできる方針を

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国立大学協会の意見(2017年6月14日)

1 共通テストの在り方

(2)英語4技能の評価

認定試験を「活用する」ことと、認定試験をもって共通テストの「代替とする」こととは、その実質に断絶がある。共通テストの英語試験を廃止して認定試験に切り替えることは、認定試験をもって共通テストの「代替とする」ことであり、試験の作問主体が大学入試センターでないことがもたらす影響を詳細に検討すべきである。

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国立大学協会の意見(2017年6月14日)

具体的には、これまでの大学入試センター試験における英語試験の果たしてきた役割・実績を検証するとともに、新たに導入する認定試験について、認定の基準、学習指導要領との整合性、受験機会の公平性を担保する方法や、種類の異なる認定試験の成績評価の在り方などについて早急に検討し、それらの見通しを示すべきである。そのような情報がない中ではあまりにも不確定な事項が多く、現時点で共通テストの英語試験の廃止の可否を判断することは拙速と言わざるを得ない。

したがって、少なくとも共通テストにおける英語試験の存続については、平成33年度入学者選抜に導入される認定試験の実施・活用状況等を検証の上、その後のしかるべき時期にあらためて判断すべきである。

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国の公式見解(2018年7月27日)

【城井崇衆議院議員からの質問主意書(2018年7月17日提出)】

政府は、二〇二四年度実施の入試から、英語については新テストを廃止して民間試験のみとすることを検討しているのか。仮に、検討しているとすれば、民間試験導入の検証をせずに、新テスト廃止を検討する理由について、政府の認識を明らかにされたい。また、英語の新テスト廃止については、国立大学協会は慎重な検討を求めているが、政府の認識を明らかにされたい。

【答弁書(2018年7月27日)】

平成三十五年度までは引き続き実施することとしているところであり、その後の取扱いについては、現時点でお答えすることは困難である。

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【論点5 】センター試験「英語」の検証

センター試験「英語」は,どのような試験だったか

センター試験全体は,どのように作成・実施されてきたのか

高等学校での「対策」の実態はどうであったか

民間試験の「英語」と比べるとどうなのか

存続するとしたら,どのような改善が求められるか

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論点のまとめ

【1】2020年度~2023年度の各大学の英語入試の方針

→【2】民間試験を共通テストで使用する際の課題の検証

→【3】高等学校における英語運用能力の評価のあり方

【4】2024年度以降の共通テスト「英語」の存続・廃止

→【5】センター試験「英語」の検証

講演者には,論点2, 3, 5について論じていただき,それを通して,

論点1, 4 に関する“well-informed decision”に資することが目的

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本日の登壇者のご紹介

大塚雄作先生

前・大学入試センター副所長(試験・研究統括官)

荘島宏二郎先生

大学入試センターの試験評価解析研究部門に所属

松井孝志先生

英語教育,特にライティングの指導の専門家

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本日の登壇者のご紹介

亘理陽一先生

静岡県と協力して,高校生の英語運用能力のアセスメント

に関する実践的研究に従事

笹のぶえ先生

文科省の「大学入学共通テスト」検討・準備グループ

および大学入試英語4技能ワーキンググループの委員

石井洋二郎先生

東京大学の入学者選抜方法検討ワーキンググループの座長 31

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本日の進行

お一人,約20分間の講演

荘島先生の後と,最後の笹先生の後に休憩

2回の休憩時間に質問用紙の回収

質問票の整理・読み上げは,高大接続研究開発センターの

濱中淳子 教授(入試企画部門)

宇佐美 慧 准教授(追跡調査部門)が担当

以上

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