開発者の ひとこと 台風などで海から運ばれる海塩粒子が配電設備に付着すると、故障停電が発生したり、電線被 覆やカバーなどの樹脂材料が焼損したり、碍子のような磁器材料が破損する設備被害が発生し ます。中部電力ではこうした塩汚損による被害を防止するために海岸付近の配電設備に耐塩対 策を行って、設備取替費用の抑制や故障停電の防止を図ってきました。 平成 24 年の台風 4 号と 17 号の襲来時には、非常にまれな気象条件と内陸部への塩汚損に よる被害が発生しました。配電設備の耐塩対策と被害の概要について報告します。 海岸付近では碍子の保護面を塩汚損から守る塩風受皿を取付しています。 開閉器や変圧器のブッシングには防塩皿を取付しています。 台風 4 号発生時の大気中 Na+ 濃度分布をコンピュータシミュレーションで再現・確認しました。 台風 4 号の被害発生後に現場調査を行って貴重なデータを蓄積しました。 気中海塩濃度などのコンピュータシミュレーションは、 電力中央研究所殿のご協力によって実現することができました。大変感謝しております。 1917時過ぎ、和歌山県南部に上陸、この時の中心気圧: 965hPa、最大風速:35m/s 1920時過ぎ、愛知県東部に再上陸、この時の中心気圧: 970hPa、最大風速:35m/s 2114時頃、静岡県浜松市付近に上陸、この時の 中心気圧:950hPa、最大風速40m/s 浜松営業所 4 2 4 1 5 2 3 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 5 10 15 20 25 2:10 4:10 6:10 8:10 10:10 12:10 14:10 16:10 18:10 20:10 22:10 0:10 VCT() (m/s) (mm) 10239212215故障件数() 平均風速(m/s) 降水量(mm) 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 5 10 15 20 25 2:10 4:10 6:10 8:10 10:10 12:10 14:10 16:10 18:10 20:10 22:10 0:10 VCT() (m/s) (mm) 10239212215故障件数() 平均風速(m/s) 降水量0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 5 10 15 20 25 6:10 8:10 10:10 12:10 14:10 16:10 18:10 20:10 22:10 0:10 2:10 4:10 6:10 8:10 10:10 VCT() (m/s) (mm) 1024619204故障件数() 平均風速(m/s) 降水量(mm) 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 5 10 15 20 25 6:10 8:10 10:10 12:10 14:10 16:10 18:10 20:10 22:10 0:10 2:10 4:10 6:10 8:10 10:10 VCT() (m/s) (mm) 1024619204故障件数() 平均風速(m/s) 降水量(mm) 雨が止んで強風が吹いて からVCT故障が発生 雨が止んでから 強風が吹いた 雨が止んでから 強風が吹いた 強風と同時に 雨が降った 浜松・磐田は台風中心 の東側に入った 浜松・磐田は台風中心 の線上であった VCT6kVの故障は発生していない 雨が止んで強風が吹いて からVCT故障が発生 VCT6kVの故障は発生していない 強風と同時に 雨が降った (1)強風で砕波した部分から海水のしぶきが発生 (2)波、うねり、砕波等により海水中に取り込まれた気泡が破裂する際に海塩粒子が発生 ①スプーム飛沫( r0>20 μm)・・・ 10m/s以上の強風で波頭から水滴が直接飛散 ②ジェット飛沫( 3<r0<50 μm)・・・気泡破裂後、水面から噴出される水が水滴に分裂 ③フィルム飛沫( 0.5<r0<5 μm)・・・水面で破裂した気泡から発生 ・・ ・・ ・・ ・・ (4)海岸付近(汀線~1km以内)では スプーム 飛沫とジェット飛沫が配電設備に湿性沈着 海塩粒子 ・・ ・・ ・・ ・・ (3)移流や乱流拡散により フィルム飛沫が内陸へ 輸送される (6)内陸では フィルム飛沫が 配電設備に乾性沈着 (5)内陸では雲、雨、雪により フィルム飛沫が配電 設備に湿性沈着する 高圧がいしの偏熱破壊 電線被覆のエロージョン ケーブル終端部の焼損 ケーブル終端部の焼損 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ Na+フラックス濃度の分析(雨洗効果考慮なし) 大気中のNa 濃度分布(2012年台風4号) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 配電設備の耐塩対策 配電設備を 塩汚損から守っています

配電設備の耐塩対策 配電設備を 塩汚損から守って …...平成24年の台風4号と17号の襲来時には、非常にまれな気象条件と内陸部への塩汚損に

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開発者の

ひとこと

台風などで海から運ばれる海塩粒子が配電設備に付着すると、故障停電が発生したり、電線被覆やカバーなどの樹脂材料が焼損したり、碍子のような磁器材料が破損する設備被害が発生します。中部電力ではこうした塩汚損による被害を防止するために海岸付近の配電設備に耐塩対策を行って、設備取替費用の抑制や故障停電の防止を図ってきました。平成24年の台風4号と17号の襲来時には、非常にまれな気象条件と内陸部への塩汚損による被害が発生しました。配電設備の耐塩対策と被害の概要について報告します。

海岸付近では碍子の保護面を塩汚損から守る塩風受皿を取付しています。開閉器や変圧器のブッシングには防塩皿を取付しています。台風4号発生時の大気中Na+濃度分布をコンピュータシミュレーションで再現・確認しました。台風4号の被害発生後に現場調査を行って貴重なデータを蓄積しました。

気中海塩濃度などのコンピュータシミュレーションは、電力中央研究所殿のご協力によって実現することができました。大変感謝しております。

19日17時過ぎ、和歌山県南部に上陸、この時の中心気圧:

965hPa、最大風速:35m/s

19日20時過ぎ、愛知県東部に再上陸、この時の中心気圧:

970hPa、最大風速:35m/s

21日14時頃、静岡県浜松市付近に上陸、この時の

中心気圧:950hPa、最大風速40m/s

浜松営業所 )ターデ告報定確庁象気(図路経風台所業営田磐

台風4号

平成24年

台風15号

平成23年

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VCT故

障件

数(件

)※

発生

時刻

は四捨

五入

した

平均

風速

(m/s

)降

水量

(mm

)

時刻(10分間隔) 平成23年9月21日~22日 台風15号 磐田地点

故障件数(件)

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した

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風速

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)降

水量

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)

時刻(10分間隔) 平成23年9月21日~22日 台風15号 浜松地点

故障件数(件)

平均風速(m/s)

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は四

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した

平均

風速

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)降

水量

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時刻(10分間隔) 平成24年6月19日~20日 台風4号 磐田地点

故障件数(件)

平均風速(m/s)

降水量(mm)

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VCT故

障件

数(件

)※

発生

時刻

は四捨

五入

した

平均

風速

(m/s

)降

水量

(mm

)

時刻(10分間隔) 平成24年6月19日~20日 台風4号 浜松地点

故障件数(件)

平均風速(m/s)

降水量(mm)

雨が止んで強風が吹いて

からVCT故障が発生

雨が止んでから

強風が吹いた

雨が止んでから

強風が吹いた

強風と同時に

雨が降った

浜松・磐田は台風中心

の東側に入った

浜松・磐田は台風中心

の線上であった

VCT6kVの故障は発生していない

雨が止んで強風が吹いて

からVCT故障が発生

VCT6kVの故障は発生していない

強風と同時に

雨が降った

(1)強風で砕波した部分から海水のしぶきが発生

(2)波、うねり、砕波等により海水中に取り込まれた気泡が破裂する際に海塩粒子が発生

①スプーム飛沫(r0>20μm)・・・10m/s以上の強風で波頭から水滴が直接飛散

②ジェット飛沫(3<r0<50μm)・・・気泡破裂後、水面から噴出される水が水滴に分裂

③フィルム飛沫(0.5<r0<5μm)・・・水面で破裂した気泡から発生

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(4)海岸付近(汀線~1km以内)では スプーム

飛沫とジェット飛沫が配電設備に湿性沈着

海塩粒子

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(3)移流や乱流拡散により

フィルム飛沫が内陸へ

輸送される

(6)内陸では フィルム飛沫が

配電設備に乾性沈着

(5)内陸では雲、雨、雪により

フィルム飛沫が配電

設備に湿性沈着する

高圧がいしの偏熱破壊

電線被覆のエロージョン

ケーブル終端部の焼損

ケーブル終端部の焼損

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■Na+フラックス濃度の分析(雨洗効果考慮なし)大気中のNa+濃度分布(2012年台風4号)

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背景・目的

背景・目的

特 長

配電設備の耐塩対策

配電設備を塩汚損から守っています