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社会生活から 統合失調症を考える 国立精神・神経医療研究センター病院 ソーシャルワーカー 伊藤明美 無断引用・転載を禁ず Copyright © 2014 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) All Rights Reserved

退院支援セミナー 国立精神・神経センター病院の退 …Title 退院支援セミナー 国立精神・神経センター病院の退院促進 の取り組みから

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社会生活から 統合失調症を考える

国立精神・神経医療研究センター病院

ソーシャルワーカー 伊藤明美

※無断引用・転載を禁ず Copyright © 2014 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) All Rights Reserved

本日の内容

★社会生活という側面から症状・障害について考える

★リカバリーを目指す心理社会的アプローチの紹介

★希望のメッセージ

社会との相互作用という観点から

統合失調症からの回復について考える

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統合失調症の症状・障害が その人の社会生活に与える影響

幻聴や幻視などの幻覚

妄想

意欲・気力が低下

感情表現が乏しくなる

認知機能面での障害

・注意力や集中力

・計画や実行などの

遂行機能

例えば・・・

・コミュニケーション上勘違い が生じやすくなり、人づきあいが苦手になる

・そもそも外に出て何かをしたいという気持ちがわかなくなって、社会との接点が減りやすい

・注意力や集中力の継続が難しく、ミスをしやすくなって、自信を持ちにくい

生じやすい 症状・障害

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例えば・・・

・本人が働きたい!と希望しても、支援者や家族が「まだ早い」「段階を経ましょう」と制限してしまいたくなる(周囲は、再発しないように安全策を取りたくなる)

・怠けているように見えてしまい、「甘えている」と言いたくなってしまう

生じやすい 症状・障害

幻聴や幻視などの幻覚

妄想

意欲・気力が低下

感情表現が乏しくなる

認知機能面での障害

・注意力や集中力

・計画や実行などの

遂行機能

統合失調症の症状・障害を持つ人に対して とってしまいがちな周囲の対応

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(WHO, 2001)

心身機能

身体構造 活動 参加

健康状態

(変調または病気)

環境因子 個人因子

「健康状態」は何によって規定されるか ~国際生活機能分類~

生活機能

背景因子 ※無断引用・転載を禁ず Copyright © 2014 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) All Rights Reserved

生物学的 アプローチ

薬など

心理的 アプローチ

心理教育など

社会的 アプローチ

制度活用など

健康向上のためのアプローチ

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支援の手法もひとつだけではない

道行く人がみんな自分の悪口を言っているからという理由で、日中外に出ることが難しいAさん。

Aさんは今すぐ働きたいと希望しています。

「働いていないから、みんな悪口を言うんだ。ちゃんと働きたい!」「仕事となれば、がんばって外に出られるようになるよ!」

<周囲の対応①> 外出が難しい状況で就労は難しいので、まずは、デイケアや作業所など、日中活動できるところをすすめる。

<周囲の対応②> まずは、Aさんがやりたいようにできるよう、サポートする。

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リカバリーを目指す心理社会的プログラム

★ ACT(包括的地域生活支援プログラム)

★ IPS(個別的就労支援方式)

★ IMR(疾病自己管理とリカバリー)

★ WRAP(元気回復行動プラン)

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リカバリーを目指す心理社会的プログラム ACT ~ASSERTIVE COMMUNITY TREATMENT~

包括的地域生活支援プログラム

様々な職種で構成された多職種チームによる密度の濃い支援を、地域社会のなかに訪問することで行うプログラムで、重い精神疾患を持っている方を対象に提供される。

・多職種チームアプローチ

・24時間365日の支援

・利用者ニーズに沿ってケアマネジメントを提供

・チームによるケア

・利用者の生活の場で提供される

など

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リカバリーを目指す心理社会的プログラム IPS ~INDIVIDUAL PLACEMENT AND SUPPORT~

個別的就労支援方式 精神疾患を持っている人たちの自己実現を応援するための援助付き雇用のモデル。「ステップを踏む」という考え方ではなく、「働きたい」という気持ちがある時点で「職につく準備ができている」とする。

<IPSの基本原則>

①誰もが利用可能である ~働きたいことだけが条件~

②治療や生活支援といった他領域サービスが統合され実施

③一般就労を目指す

④年金や生活保護受給に関する個別相談の機会を提供

⑤迅速に仕事探しを始める

⑥就労後も継続して支援を提供

⑦利用者の好みと選択を尊重

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リカバリーを目指す心理社会的プログラム IMR ~ILLNESS MANAGEMENT AND RECOVERY~

疾病自己管理とリカバリー

利用者が目標を定め、それに沿って実践していく心理社会教育プログラム。心理教育や生活技能訓練、ストレスマネジメントなど様々な手法のエッセンスを取り入れたパッケージ。

・リカバリーとは

・精神疾患と症状を知る

・ストレス脆弱性モデルを知る

・ソーシャルサポートの形成

・薬物療法を効果的につかう

・再発をへらす

・ストレスに対処する

・問題と症状への対処

・福祉・保健・医療サービスの利用 ※無断引用・転載を禁ず Copyright © 2014 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) All Rights Reserved

リカバリーを目指す心理社会的プログラム WRAP ~WELLNESS RECOVERY ACTION PLAN~

元気回復行動プラン

元気でいるために、そして気分がすぐれないときに元気になるために、また自分で責任をもって生活の主導権を握り、自ら望むような人生を送るために、あなた自身でデザインするプランがWRAPです。(メアリーエレン コープランド)

・まず、元気に役立つ道具箱を作る→各プランで利用する!

・その1:日常生活管理プラン(「いい感じ」でいられるプラン)

・その2:調子をくずす引き金と行動プラン

・その3:調子をくずしかけてるサインと行動プラン

・その4:調子が悪くなってきたときのサインと行動プラン

・その5:クライシスプラン(自分一人では対処しきれない時)

・その6:クライシスを脱した時のプラン

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ストレングスモデル

★支援実践の哲学

・人びとはリカバリーし、生活を改善し高めることができる

・できないことや苦手なことよりもストレングス(強み)に焦点をあてる

etc…

★ストレングスとは

その人が持っている

人柄 / 個性、才能/技術、環境、関心 / 願望、経験

など

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★ビレッジでは、以前に私が不可能だと思っていたことが、あちこちで実現している様子を見ます。・・・(省略)・・・希望を持つスタッフが希望を持つメンバーを作り出すのです。(『リカバリーへの道』マーク・レーガン)

★リカバリーへの鍵は、重篤な精神障害のある人に対してもあきらめず、改善することへの現実的な楽観主義を持ち続け、自分への自信を失っている人を心から気遣い、自信を持たせ、そして共感を伝えることができるような支援にかかっているのです。(『精神障害と回復』リバーマン)

★Hope;周囲が希望を持つことで、本人の希望が生まれる。

(Drダイアモンド;マディソンモデル視察時の講話より)

「希望」「楽観主義」

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最後に パトリシア・ディーガン博士のことば

★ディーガン博士:心理学博士。統合失調症をもち、当事者研究を精力的におこなっているリカバリー運動の第一人者。

★リカバリーは旅(過程)であり、生き方であり、構えであり、日々の挑戦の仕方です。平坦な一本調子の直線的な旅(過程)ではありません。ときに道は不安定となり、つまづき、旅の途中で止まってしまうこともあります。けれど、気を取り直してもう一度はじめることもできるのです。この旅で必要とされるのは、障がいへの挑戦を体験することです。障がいによる制限の中、あるいはそれを超えて、健全さと意志という新しく貴重な感覚を再構築することなのです。リカバリーの旅で求めている事は、地域の中でふつうに暮らし、働き、愛し、そこで自分が重要な貢献をすることなのです。

(Deegan,1996) ※無断引用・転載を禁ず Copyright © 2014 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) All Rights Reserved

ご清聴ありがとうございました

国立精神・神経医療研究センター病院

ソーシャルワーカー 伊藤明美

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