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○仮設住宅に関する提案(「地域社会圏」型配置):山本理顕+横浜国立大学大学院 都市建築スクールY-GSA (1. 既存コミュニティを保護。 2. 弱者を孤立化させない入居者選定方法。) □「一住宅=一家族」型配置ではなく、「地域社会圏」型配置へ 資料提供:山本理顕設計工場 1)「小さいお店を開くことができる」仮設住宅団地 通常の仮設住宅団地では、他人を招き入れることのできない住宅群 と、その数に会わせて設置される集会スペー スなどによって構成さ れます。3 年程の生活を強いられる被災者にとって、この場所 は単なる仮設住宅群ではな く「街」として機能することが求められ ます。そこで「誰もが小さいお店を開くことができる」ような仮設 住宅 団地を提案します。 2) ガラス張り + 土間空間 仮設住戸の多くは玄関先に台所があります。そこで、玄関をガラス 張りにし、路地から見える土間のような場 所を玄関先に設けること で、人をむかい入れることのできる構成 を提案します。例えば おばあちゃんが小さい うどん屋を開いたり、友達同士が居酒屋を開 いて、そこに毎日通うおじいちゃんがいたり。単なる集会所ではな い、 人と人が関わり合う場所が、居住者によって生み出されます。 3) 街の機能 家の一部を使う小さいお店の他に も、小さい公共施設やコンビニを 仮設団地内に設けていきます。住 民組織 や民間企業によって運営さ れ、地域の生活をサポートしてい きます。 4. 自発的増改築へのサポート 2011.09.05 仮設住宅に関する提案 64% 21% デッキ ■風除室の使い方の例 開く事でコミュニケーションの場となる B. 庇端から垂直 C. 庇途中から斜め D 庇端から斜め E. 庇端から突き出て垂直 F. 庇を覆う G. 庇の下 入居方法別風除室の設置状況 個人単位の入居 ■新潟中越地震仮設住宅に見る風除室の例 ■コミュニティ ■サポート 集落単位の入居 「家庭の防災用品」HP より http://blogs.yahoo.co.jp/kateinobousai/MYBLOG/profile.html A. 風除室設置なし この場合、 ・屋外の冷気が流入する ・風・雪が吹き込む 等の問題が起こる。 参考文献 石岡紘太郎(2007)「災害仮設住宅における居住環境の構築における研究」 p237,日本建築学会 斉藤隆太郎(2006)「新潟豪雨災害・中越地震における応急仮設住宅団地に おける配置計画手法の評価」p271,日本建築学会 新潟の仮設住宅では8月頃から風除室の設置 が始められました。今回の東日本大震災でも 仮設住宅への入居が進むにつれ、住人自ら住 み良い仮設住宅団地にする為に、サポートが 求められる事が予想されます。住人の自発的 な行為をサポートする事は、住環境を改善す るだけでなく、コミュニティの維持や創出の きっかけにもなります。 2004年に発生した中越地震により約3000世 帯の仮設住宅が建設されました。地域により その住みこなしは様々で、居住者による増改 築が盛んに行われました。新潟県の仮設住宅 の建設当初は玄関周りに風・雪よけの為の風 除室はなく、殆どが住人たちのセルフビルド でした。 コミュニティの有無が仮設住宅の住まい方に 大きく影響を与えています。また地域や風除 室の設置を行った人によって様々なスタイル の風除室があります。(fig.1,fig.2) 1) 向き合う住戸・玄関配置計画 2) パーソナルサービス+コモンサービス 3) 住棟ごとにずらして配置する 2011.09.05 仮設住宅に関する提案 ・住棟ごとにずらして配置する。 ・玄関をガラス張りにする。 P P N P P P P P P P P P P P P P P P P P C C C コジェネ 銭湯 C C C P P P P P P P P 路地 共有庭 2m 程度 P-パーソナル サービス (料理や修理の できる人々) 主体 機能 場所 (うどん屋、カ レー屋、茶屋、 修理屋等) 関スペース ジェネによるエ ネルギープラン ト、銭湯 etc ティ単位 ・複数住民、 自治体、民間 企業、ボラン ティア団体 C-コモン サービス 住戸同士を「向き合う」形で配置していく。避難生 活の中でも孤独にならないよう、あいさつ等のコミ ュニケーションを促します。 玄関先に小さな生活のたまり場を作ります。避 難生活の間に増える自転車等の持ち物や洗濯物 を干す場所を確保し、近所の人と会話をする場 所や子供たちの遊び場としても使われます。 cf.参考plan[(社)プレハブ建築協会 応急仮設住宅 参考図面] 2. 仮設住宅配置計画について 5. イメージパース 2011.09.05 仮設住宅に関する提案 パーゴラ 家の前の路地に架けるだけで、少しだけ屋外空間 が心地よく、過ごし易くなる。 ガラス扉の玄関/小さなお店 ガラス扉で、路地に向かって開いた土間が ある玄関は、小さなお店にもなるし 隣の人とちょっと話したり出来る場所。 共有庭(生活の場所) 寝室の窓が向き合う路地は、洗濯物干し場 などとして使われる生活動線。 路地(コミュニティの場所) 玄関が向きあう路地は、小さなお店が並び 軒先には、花壇やベンチが置かれるコミュニティの場所。 ① 住田町仮設住宅(実施):岩手県住田町(住田住宅産業) 建設地:岩手県住田町 概 要:木造/平屋一戸建て/面積 29.81 ㎡(9 坪相当) 仮設住宅群 仮設住宅の外観 仮設住宅の室内 平面図 住田町では昭和53年に林業関係者等で組織する住田町林業振興協議会が中心となって、「住田町林業振興計 画書」を策定し、拡大造林の推進、木材の生産 から流通・加工、さらに住宅生産・販売に至る一連のシステ ム化を推進してき ました。また、平成 5 年度にはそれまでの検証と新たな課題に対応すべく、第 2 次住田町 林業振興計画を策定し、産業循環を図る地域林業の総合的システム の形成を目指し、施策を展開してきました。 「森林・林業日本一のまちづくり」は、地域森林・林業の活性化、とりわけ 豊富な森林資源が循環できるシス テムを構築するとともに、環境に配慮した循 環型地域社会の実現に向け、長期的な展望に立った施策のあり 方と方向を示し たものです。 プレハブ住宅とはひと味もふた味も違うすべて杉材でできた住宅が、山あいに全部で 93 棟が立ち並びます。 住田町は震災で甚大な被害を受けた陸前高田市、大船渡市、釜石市に隣接していますが、海に接していない ため津波による被害を受けなかった。それでも町長の多田欣一氏は仮設住宅の建設を即断したといいます。 住田町はもともと林業の町。ハイチや中国・四川の地震被害を見て、多田町長は昨年秋ごろから木造の仮設 住宅が災害時に役立つと考え、第3セクターの「住田住宅産業」に図面作成を指示していていたとのことです。 建設が始まると、町内の他の建設会社や地元で「気仙大工」といわれる伝統の腕を持つ大工たちも協力し、 5 月末には目標の 93 戸すべてが完成しました。 今では約300人の被災者が入居しています。 □先見の明「Made in 住田町」 住田町は林業振興に力を入れ、第3セクターの産地 直送型住宅会社も設立、FSC の認証を取った森林か ら木材生産まで行っています。その一貫として住宅 建設を行っており、町内に原木の調達から製材、プ レカット工場まで揃っていました。震災前より大災 害に備えて資材を備え仮設住宅の構想も練っていた ため、震災直後より、町長の号令のもと災害救助法 の認定を待たず建設に着手しました。建設費は森の 再生プロジェクトを手がけている㈳モア・トゥリー ズなどが出資。後に、応急仮設住宅と認められました。 資料提供:鈴木利美、出典:住田町 HP □森林・林業日本一のまちづくり 3月11 日に起きた東日本大地震では非常に多くの方々が住む場所を失いました。避難された方はこれから数年 間仮住まいを余儀なくされるでしょう。応急仮設住宅の早急な建設が進められていますが、従来の仮設住宅の住 環境が良くないものであるということは従来の体験からも明らかです。復興が長期化するのを見据え、被災者の 方々がより人間らしい生活ができるような仮説住宅を提案します。 /「火石団地」 13戸・「本町団地」 17戸・「中上団地」63戸

仮設住宅に関する提案(「地域社会圏」型配置):山本理顕 ......仮設住宅に関する提案(「地域社会圏」型配置):山本理顕+横浜国立大学大学院

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Page 1: 仮設住宅に関する提案(「地域社会圏」型配置):山本理顕 ......仮設住宅に関する提案(「地域社会圏」型配置):山本理顕+横浜国立大学大学院

○仮設住宅に関する提案(「地域社会圏」型配置):山本理顕+横浜国立大学大学院 都市建築スクール Y-GSA

(1. 既存コミュニティを保護。 2. 弱者を孤立化させない入居者選定方法。)□「一住宅=一家族」型配置ではなく、「地域社会圏」型配置へ

資料提供:山本理顕設計工場

1)「小さいお店を開くことができる」仮設住宅団地

 通常の仮設住宅団地では、他人を招き入れることのできない住宅群 と、その数に会わせて設置される集会スペー

スなどによって構成さ れます。3 年程の生活を強いられる被災者にとって、この場所 は単なる仮設住宅群ではな

く「街」として機能することが求められ ます。そこで「誰もが小さいお店を開くことができる」ような仮設 住宅

団地を提案します。

2) ガラス張り +土間空間

 仮設住戸の多くは玄関先に台所があります。そこで、玄関をガラス 張りにし、路地から見える土間のような場

所を玄関先に設けること で、人をむかい入れることのできる構成 を提案します。例えば おばあちゃんが小さい

うどん屋を開いたり、友達同士が居酒屋を開 いて、そこに毎日通うおじいちゃんがいたり。単なる集会所ではな

い、 人と人が関わり合う場所が、居住者によって生み出されます。

3) 街の機能

 家の一部を使う小さいお店の他に も、小さい公共施設やコンビニを 仮設団地内に設けていきます。住 民組織

や民間企業によって運営さ れ、地域の生活をサポートしてい きます。

4. 自発的増改築へのサポート 2011.09.05仮設住宅に関する提案

64%

21%

デッキ

■風除室の使い方の例 開く事でコミュニケーションの場となる

B. 庇端から垂直 C. 庇途中から斜め

D庇端から斜め E. 庇端から突き出て垂直

F. 庇を覆う G. 庇の下

入居方法別風除室の設置状況

個人単位の入居

■新潟中越地震仮設住宅に見る風除室の例 ■コミュニティ ■サポート集落単位の入居

「家庭の防災用品」HPよりhttp://blogs.yahoo.co.jp/kateinobousai/MYBLOG/profile.html

A. 風除室設置なし

この場合、

・屋外の冷気が流入する

・風・雪が吹き込む

等の問題が起こる。

参考文献石岡紘太郎(2007)「災害仮設住宅における居住環境の構築における研究」p237,日本建築学会斉藤隆太郎(2006)「新潟豪雨災害・中越地震における応急仮設住宅団地における配置計画手法の評価」p271,日本建築学会

新潟の仮設住宅では8月頃から風除室の設置

が始められました。今回の東日本大震災でも

仮設住宅への入居が進むにつれ、住人自ら住

み良い仮設住宅団地にする為に、サポートが

求められる事が予想されます。住人の自発的

な行為をサポートする事は、住環境を改善す

るだけでなく、コミュニティの維持や創出の

きっかけにもなります。

2004年に発生した中越地震により約3000世

帯の仮設住宅が建設されました。地域により

その住みこなしは様々で、居住者による増改

築が盛んに行われました。新潟県の仮設住宅

の建設当初は玄関周りに風・雪よけの為の風

除室はなく、殆どが住人たちのセルフビルド

でした。

コミュニティの有無が仮設住宅の住まい方に

大きく影響を与えています。また地域や風除

室の設置を行った人によって様々なスタイル

の風除室があります。(fig.1,fig.2)

1) 向き合う住戸・玄関配置計画 2) パーソナルサービス+コモンサービス 3) 住棟ごとにずらして配置する

2011.09.05仮設住宅に関する提案・住棟ごとにずらして配置する。

・玄関をガラス張りにする。

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者住居・ (料理や修理のできる人々)

主体 機能 場所

店おなさ小・ (うどん屋、カレー屋、茶屋、修理屋等)

玄の居住各・ 関スペース

コ、ニビンコ・ ジェネによるエネルギープラント、銭湯etc

ニュミコ・ ティ単位

・複数住民、自治体、民間企業、ボランティア団体

C-コモンサービス

住戸同士を「向き合う」形で配置していく。避難生活の中でも孤独にならないよう、あいさつ等のコミュニケーションを促します。

玄関先に小さな生活のたまり場を作ります。避難生活の間に増える自転車等の持ち物や洗濯物を干す場所を確保し、近所の人と会話をする場所や子供たちの遊び場としても使われます。

cf.参考plan[(社)プレハブ建築協会 応急仮設住宅 参考図面]

2. 仮設住宅配置計画について

5. イメージパース 2011.09.05仮設住宅に関する提案

パーゴラ家の前の路地に架けるだけで、少しだけ屋外空間

が心地よく、過ごし易くなる。ガラス扉の玄関/小さなお店ガラス扉で、路地に向かって開いた土間が

ある玄関は、小さなお店にもなるし

隣の人とちょっと話したり出来る場所。

共有庭(生活の場所)寝室の窓が向き合う路地は、洗濯物干し場

などとして使われる生活動線。

路地(コミュニティの場所)玄関が向きあう路地は、小さなお店が並び

軒先には、花壇やベンチが置かれるコミュニティの場所。

① 住田町仮設住宅(実施):岩手県住田町(住田住宅産業)

建設地:岩手県住田町

概 要:木造/平屋一戸建て/面積 29.81 ㎡(9坪相当)

仮設住宅群

仮設住宅の外観

仮設住宅の室内平面図

住田町では昭和 53 年に林業関係者等で組織する住田町林業振興協議会が中心となって、「住田町林業振興計

画書」を策定し、拡大造林の推進、木材の生産 から流通・加工、さらに住宅生産・販売に至る一連のシステ

ム化を推進してき ました。また、平成 5年度にはそれまでの検証と新たな課題に対応すべく、第 2 次住田町

林業振興計画を策定し、産業循環を図る地域林業の総合的システム の形成を目指し、施策を展開してきました。

「森林・林業日本一のまちづくり」は、地域森林・林業の活性化、とりわけ 豊富な森林資源が循環できるシス

テムを構築するとともに、環境に配慮した循 環型地域社会の実現に向け、長期的な展望に立った施策のあり

方と方向を示し たものです。

プレハブ住宅とはひと味もふた味も違うすべて杉材でできた住宅が、山あいに全部で 93 棟が立ち並びます。

住田町は震災で甚大な被害を受けた陸前高田市、大船渡市、釜石市に隣接していますが、海に接していない

ため津波による被害を受けなかった。それでも町長の多田欣一氏は仮設住宅の建設を即断したといいます。

住田町はもともと林業の町。ハイチや中国・四川の地震被害を見て、多田町長は昨年秋ごろから木造の仮設

住宅が災害時に役立つと考え、第 3セクターの「住田住宅産業」に図面作成を指示していていたとのことです。

建設が始まると、町内の他の建設会社や地元で「気仙大工」といわれる伝統の腕を持つ大工たちも協力し、

5月末には目標の 93 戸すべてが完成しました。

今では約300人の被災者が入居しています。

□先見の明「Made in 住田町」

住田町は林業振興に力を入れ、第3セクターの産地

直送型住宅会社も設立、FSC の認証を取った森林か

ら木材生産まで行っています。その一貫として住宅

建設を行っており、町内に原木の調達から製材、プ

レカット工場まで揃っていました。震災前より大災

害に備えて資材を備え仮設住宅の構想も練っていた

ため、震災直後より、町長の号令のもと災害救助法

の認定を待たず建設に着手しました。建設費は森の

再生プロジェクトを手がけている㈳モア・トゥリー

ズなどが出資。後に、応急仮設住宅と認められました。

資料提供:鈴木利美、出典:住田町 HP

□森林・林業日本一のまちづくり

仮設住宅の室内平面図

テムを構築するとともに、環境に配慮した循 環型地域社会の実現に向け、長期的な展望に立った施策のあり

住田町は林業振興に力を入れ、第3セクターの産地

FSC の認証を取った森林か

ら木材生産まで行っています。その一貫として住宅

建設を行っており、町内に原木の調達から製材、プ

震災前より大災

害に備えて資材を備え仮設住宅の構想も練っていた

ため、震災直後より、町長の号令のもと災害救助法

の認定を待たず建設に着手しました。建設費は森の

再生プロジェクトを手がけている㈳モア・トゥリー

ズなどが出資。後に、応急仮設住宅と認められました。

3月11日に起きた東日本大地震では非常に多くの方々が住む場所を失いました。避難された方はこれから数年

間仮住まいを余儀なくされるでしょう。応急仮設住宅の早急な建設が進められていますが、従来の仮設住宅の住

環境が良くないものであるということは従来の体験からも明らかです。復興が長期化するのを見据え、被災者の

方々がより人間らしい生活ができるような仮説住宅を提案します。

      /「火石団地」 13 戸・「本町団地」 17 戸・「中上団地」63 戸