24
人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き ~アニメ「めぐみ」等の活用について~ 令和元年7月改訂 兵庫県教育委員会 はじめに 「拉致問題」の経緯 北朝鮮当局による拉致は、日本の主権及び国民の生命と安全に関わる重大な問題であるととも に、拉致被害者やその家族に対する人権侵害であり、早期の解決が望まれる人権課題の一つです。 兵庫県教育委員会では、平成 24 年 11 月に「『北朝鮮当局による拉致問題等』の指導の手引き」 (以下、「指導の手引き」)を作成し、市町組合教育委員会や各学校に対して、研修会等を通じ て、「北朝鮮当局による拉致問題等」(以下、「拉致問題」)を児童生徒の発達の段階等に応じ、正 しい認識を持てるよう伝えてきました。また、平成 20 年内閣官房拉致対策本部作成のアニメ「め ぐみ」の積極的な活用を併せてお願いしてきたところです。 このたび、アニメ「めぐみ」の活用から 10 年が経過するにあたり、学校における「拉致問題」 への取組を改めて一層推進するため、児童生徒の発達の段階に応じたアニメ「めぐみ」等を活用 した学習指導案を新たに作成するなどし、「指導の手引き」を改訂しました。 「拉致問題」については、児童生徒がその重大さを認識し、関心を持つことが、問題解決 に向けた後押しになります。 つきましては、このたび改訂しました「指導の手引き」やアニメ「め ぐみ」等を積極的に活用し、「拉致問題」が今後とも風化することなく、児童生徒が「拉致問題」 について理解を深められるよう取組をお願いします。 1970 年代から 1980 年代にかけ、多くの日本人が不自然な形で行方不明となりました。日本の 当局による捜査や、亡命北朝鮮工作員の証言により、これら事件の多くは北朝鮮当局による拉致 の疑いが濃厚であることが明らかになりました。 平成 14 年9月 17 日、第1回日朝首脳会談において、北朝鮮は長年否定していた日本人の拉致 を初めて認め、謝罪しました。 日本政府は、北朝鮮当局による拉致被害者として、これまでに 17 人を認定しました。このうち 5人については、北朝鮮当局が生存を認め、その後日本に帰国しましたが、残る 12 人の被害者に ついて、横田めぐみさんや有本恵子さん(兵庫県出身)を含む8人は死亡、田中実さん(当時兵 庫県在住)を含む4人は未入境であると、北朝鮮当局は主張しています。 日本政府は、死亡したとされる8人について、「死亡」を裏付けるものが一切存在しないため、 被害者は生存しているという前提に立って被害者の即時帰国と納得のいく説明を行うように北朝 鮮当局に対して求めています。このほかにも拉致の可能性を排除できない失踪者 882 人のうち 兵庫県出身の失踪者は計 28 人もいるといわれており現在も政府や警察を中心に調査・捜査 が進められています。 国際連合においては、平成15年以来毎年、日本が提出している北朝鮮人権状況決議が採択され、 北朝鮮に対し拉致被害者の即時帰国を含めた「拉致問題」の早急な解決を強く要求していますが、 約 40 年という時間の流れとともに、 「拉致問題」が風化していくことが懸念されています。 1

人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

人人権権課課題題

「「北北朝朝鮮鮮当当局局にによよるる拉拉致致問問題題等等」」のの指指導導のの手手引引きき

~~アアニニメメ「「めめぐぐみみ」」等等のの活活用用ににつついいてて~~

令 和 元 年 7 月 改 訂

兵 庫 県 教 育 委 員 会

1 はじめに

2 「拉致問題」の経緯

北朝鮮当局による拉致は、日本の主権及び国民の生命と安全に関わる重大な問題であるととも

に、拉致被害者やその家族に対する人権侵害であり、早期の解決が望まれる人権課題の一つです。

兵庫県教育委員会では、平成 24 年 11 月に「『北朝鮮当局による拉致問題等』の指導の手引き」

(以下、「指導の手引き」)を作成し、市町組合教育委員会や各学校に対して、研修会等を通じ

て、「北朝鮮当局による拉致問題等」(以下、「拉致問題」)を児童生徒の発達の段階等に応じ、正

しい認識を持てるよう伝えてきました。また、平成 20年内閣官房拉致対策本部作成のアニメ「め

ぐみ」の積極的な活用を併せてお願いしてきたところです。

このたび、アニメ「めぐみ」の活用から 10年が経過するにあたり、学校における「拉致問題」

への取組を改めて一層推進するため、児童生徒の発達の段階に応じたアニメ「めぐみ」等を活用

した学習指導案を新たに作成するなどし、「指導の手引き」を改訂しました。

「拉致問題」については、児童生徒がその重大さを認識し、関心を持つことが、問題解決

に向けた後押しになります。つきましては、このたび改訂しました「指導の手引き」やアニメ「め

ぐみ」等を積極的に活用し、「拉致問題」が今後とも風化することなく、児童生徒が「拉致問題」

について理解を深められるよう取組をお願いします。

1970 年代から 1980 年代にかけ、多くの日本人が不自然な形で行方不明となりました。日本の

当局による捜査や、亡命北朝鮮工作員の証言により、これら事件の多くは北朝鮮当局による拉致

の疑いが濃厚であることが明らかになりました。

平成 14 年9月 17 日、第1回日朝首脳会談において、北朝鮮は長年否定していた日本人の拉致

を初めて認め、謝罪しました。

日本政府は、北朝鮮当局による拉致被害者として、これまでに 17 人を認定しました。このうち

5人については、北朝鮮当局が生存を認め、その後日本に帰国しましたが、残る 12人の被害者に

ついて、横田めぐみさんや有本恵子さん(兵庫県出身)を含む8人は死亡、田中実さん(当時兵

庫県在住)を含む4人は未入境であると、北朝鮮当局は主張しています。

日本政府は、死亡したとされる8人について、「死亡」を裏付けるものが一切存在しないため、

被害者は生存しているという前提に立って被害者の即時帰国と納得のいく説明を行うように北朝

鮮当局に対して求めています。このほかにも拉致の可能性を排除できない失踪者 882 人のうち

兵庫県出身の失踪者は計 28 人もいるといわれており、現在も政府や警察を中心に調査・捜査

が進められています。

国際連合においては、平成 15年以来毎年、日本が提出している北朝鮮人権状況決議が採択され、

北朝鮮に対し拉致被害者の即時帰国を含めた「拉致問題」の早急な解決を強く要求していますが、

約 40 年という時間の流れとともに、「拉致問題」が風化していくことが懸念されています。

1

Page 2: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

3 人権課題としての「拉致問題」

4 アニメ「めぐみ」の活用について

※兵庫県関係の政府認定拉致被害者

有本 恵子さん (当時 23 歳)

昭和 58(1983)年7月頃、留学先の欧州で失踪。「よど号」犯の妻の証言により、

「よど号」ハイジャック犯※とその関係者が有本さんの拉致に関与したと見られ

る。安否は未確認であるが、北朝鮮は「ガス事故で死亡」と主張している。

田中 実さん (当時 28歳)

昭和 53(1978)年6月頃、欧州に向け出国した後失踪。安否未確認であり、北朝

鮮は入境を否定している。関係者の証言等から、田中さんは、北朝鮮からの指示を

受けた者にだまされて海外に連れ出された後、北朝鮮に送り込まれたことが判明し

ている。

※「よど号」ハイジャック事件

昭和 45 年(1970)年 3月 31 日、武装した活動家 9人が、日本航空 351 便・通称「よど号」を乗っ取り、北

朝鮮の飛行場に到着した後、北朝鮮当局に投降した事件。

【参考】「北朝鮮による日本人拉致問題 1日も早い帰国の実現に向けて!」(政府拉致問題対策本部)

「すべての拉致被害者の帰国を目指して -北朝鮮側主張の問題点-」(政府拉致問題対策本部)

(1) 平成 18 年6月、「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法

律」が施行され、「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題に関し、国民世論の啓

発を図るよう努めること」が、国及び地方公共団体の責務とされました。

(2) 平成 20 年3月、「人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]」が公

表され、「個別的な人権課題」の中に「北朝鮮当局によって拉致された被害者等」が明記

されました。

(3) 平成23年4月、「人権教育・啓発に関する基本計画」が一部変更され、取り組むべき人

権課題の一つとして「北朝鮮当局による拉致問題等」が新たに追記されました。この基

本計画では、「拉致問題の解決のためには、幅広い国民各層及び国際社会の理解と支持が

不可欠であり、その関心と認識を深めることが求められている。」としています。また、

「学校教育においては、児童生徒の発達段階等に応じて、拉致問題等に対する理解を深

めるための取組を推進すること」が明記されました。

(1) アニメ「めぐみ」について

昭和 52 年 11 月、当時中学1年生だった横田めぐみさんが、学校か

らの帰宅途中に北朝鮮当局により拉致された事件を題材に、残された

家族の苦悩や、懸命な救出活動の模様を描いた 25 分のドキュメンタリ

ー・アニメです。

アニメ「めぐみ」については、

DVDの他、拉致問題対策本部の

HP(下記URL)から動画ファ

イルを無料でダウンロードして

活用できます。

[ URL: https://www.rachi.go.jp/jp/megumi/index.html ]

2

Page 3: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

5 「拉致問題」の指導上の留意点

(2) 活用の際の留意点

(ア) 指導者は事前に視聴し、人権教育上のねらいや、どの場面で、どのような発問を児

童生徒に投げかけるかなどについて考えることが大切です。発問によって、心情への

共感や人権課題として認識、「拉致問題」に対する理解などを深めることができます。

[ 発問例 ]

○ 拉致されたことが分かった時、めぐみさんの両親の気持ちはどのようなものだっ

たでしょうか。(拉致被害者家族の心情への共感)

○ めぐみさんの両親は、どのような気持ちで署名を呼びかけているのでしょうか。

(拉致被害者家族の心情への共感)

○ めぐみさんが侵害された(奪われた)権利はどのような権利でしょうか。(人権課

題としての「拉致問題」の認識)

(イ) 北朝鮮当局への非難ではなく、拉致被害者や被害者家族の心の痛みや叫びへの理解

や共感に焦点を当てるとともに、「拉致問題」の解決を自分の問題として捉えようとす

る態度が育つよう配慮することが大切です。

(3) 北朝鮮人権侵害問題啓発週間作文コンクール

平成 29 年度から、中学生及び高校生を対象として、アニメ「め

ぐみ」の視聴や関連書籍、学校での学習等を通じて「拉致問題」に

ついて知り、さらに自分自身で「拉致問題」についての学びや理解

を深めることを目的として、政府・拉致問題対策本部が北朝鮮人権

侵害問題啓発週間作文コンクールを実施しています。作文コンクー

ルに参加することで、拉致被害者やその家族の心情を理解するとと

もに、「拉致問題」の解決のために自分に何ができるのか、何をす

べきかについて深く考える機会となります。

【参考】北朝鮮人権侵害問題啓発週間作文コンクール

(https://mainichi.jp/sp/sakubun/)

(1) 学校教育において「拉致問題」を指導する際には、児童生徒の発達の段階や学校・家

庭・地域社会の実態、教育の政治的中立に配慮することが大切です。

(2) 「拉致問題」を人権課題の一つとして捉えさせ、人権教育の視点に立ち、拉致被害者

やその家族の心の痛みや叫び、つらい気持ちに共感する心情とともに、「拉致問題」の解

決を自分の問題として捉えようとする態度が育つように配慮することが大切です。

また、学習を通して育まれた共感する心は、他の人権課題について学習する際にも大

切であるという点に気づかせ、今後の人権教育に生かすという視点を持つことが大切で

す。

(3) 「拉致問題」は、北朝鮮当局による重大な人権侵害ですが、拉致に関与しない朝鮮半

島の人々や朝鮮半島につながりのある日本で生活する人々に責任を帰する問題ではない

ことをしっかりと押さえる必要があります。本県の学校に在籍する朝鮮半島につながり

のある児童生徒に対する差別や偏見、いじめ、ヘイトスピーチ等が生じないように十分

配慮することが大切です。

※アニメ「めぐみ」での横田めぐみさんの母、早紀江さんの言葉

「私たちは北朝鮮に住む一般市民の人たちを憎んだり恨んだりしている訳ではありません。ただ

親として、今も北朝鮮に囚われの身となっている娘を助け出したいだけなのです!」

3

Page 4: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

6 参考資料等

(4) 小・中学校の社会科、高等学校では公民科などにおいて「拉致問題」は扱われており、

これらの教科書記述との関連を踏まえ、指導することが必要です。

(5) 「拉致問題」の指導の際には、下記のような場面や活動、方法、時期等の組み合わせ

が考えられます。また、本手引き掲載の展開例の事前・事後に、ヘイトスピーチや国際

交流、日本と朝鮮半島とのつながり、多文化共生などに関する授業をすることで一層理

解を深めることができます。

場面 ○教科 ○特別の教科道徳 ○総合的な学習の時間 ○特別活動

○全校集会 ○学年集会 ○人権教育に関する行事(人権教育講演会等)等

方法 ○講義 ○アニメ「めぐみ」等の視聴 ○調べ学習 ○発表 ○作文

時期

6月~9月頃 北朝鮮人権侵害問題啓発週間作文コンクール及びその前後の期間

12/4~12/10 人権週間

12/10~12/16 北朝鮮人権侵害問題啓発週間※2

長期休業等

その他 ○「拉致問題」啓発ポスター※1の掲示 ○通信等での掲載 等

※1「拉致問題」啓発ポスターについて

「拉致問題」の啓発のためのポスターについては、下記まで電子メールに

て請求すれば学校に届きます。

[請求先電子メールアドレス]:[email protected](政府拉致問題対策本部)

[メール記入事項]

・ 送付先の住所(郵便番号含む)、宛名、電話番号

・ デザイン「拉致被害者横田めぐみさん着物姿」(右図)と記載

・ サイズ(B2サイズ、A4サイズのいずれかを記入)

・ 必要枚数

【出典】拉致問題ホームページ(https://www.rachi.go.jp/)]

※2北朝鮮人権侵害問題啓発週間(毎年 12 月 10 日~16 日)について

平成 18 年 6 月に施行された「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に

関する法律」により、国民の間に広く拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題につい

ての関心と認識を深めるために設けられました。この啓発週間を中心に拉致問題の早期解決

を訴えるための様々なイベントが実施されています。

(1) 参考資料・web サイト

【政府拉致問題対策本部】 ○ 「北朝鮮による日本人拉致問題 1日も早い帰国実現に向けて!」 ○ 「すべての拉致被害者の帰国を目指して-北朝鮮側主張の問題点-」

○ 内閣官房拉致問題対策本部ホームページ [ URL: http://www.rachi.go.jp/ ] 上記(1)等の諸資料、視聴覚資料(アニメ「めぐみ」ダウンロード、拉致被害

者ご家族ビデオメッセージ、啓発CM 等)

【法務省人権擁護局】 ○ 「本邦外出身者に対する不等な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(ヘ

イトスピーチ解消法)」条文及び啓発冊子 【兵庫県教育委員会】

○ 中学生用教育資料『きらめき -個性光らせて- 』(平成 26 年3月)「⑨会いたい」

及び「活用の手引き」 ○ 「『ヘイトスピーチ』に対する正しい理解に向けて」

4

Page 5: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

(2) ブルーリボン運動

拉致被害者の救出を求める国民運動は、ブルーリボンと青色を

運動のシンボルにしています。青色は、被害者の祖国日本と北朝

鮮を隔てる「日本海の青」を、また、被害者と家族を唯一結んで

いる「青い空」をイメージしています。

【出典】拉致問題ホームページ(http://www.rachi.go.jp/jp/minkan/index.html)]

(3) 拉致問題Q&A

なぜ北朝鮮は日本人を拉致したのですか?

[「北朝鮮による日本人拉致問題 1日も早い帰国の実現に向けて!」(政府拉致問題対策本部)より抜粋・編集]

Q.なぜ北朝鮮当局は日本人を拉致したのですか?

A.拉致に関する真相は明らかにされていませんが、北朝鮮当局が拉致という未曾有

の国家的犯罪行為を行った背景には、工作員による日本人への身分の偽装、工作員

を日本人に仕てるための教育係としての利用などの理由があったとみられていま

す。

Q.どうなれば、拉致問題が解決したと言えるのですか?

A.拉致問題の解決には、以下の三つを実現する必要があります。

① 全ての拉致被害者の安全を確保し、すぐに帰国させること。

② 北朝鮮当局が、拉致被害の真相を明らかにすること。

③ 北朝鮮当局が、拉致を実行した者を日本に引き渡すこと。

Q.拉致問題を国際社会はどのようにみているのでしょうか。

A.2014 年2月に公表された「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(C

OI)」の最終報告書では、北朝鮮当局による拉致事案の被害者の出身国は、日本

以外にも、韓国、レバノン、タイ、マレーシア、シンガポール、ルーマニア、フ

ランス、イタリア、オランダ、中国といった諸国に及ぶとされています。

拉致問題は、被害者がいる国、いない国を問わず、国際的に追及すべき人権問

題であり、2014 年 12 月、国連総会において、上記COI報告書の内容を踏ま

えた決議が賛成多数で採択されました。国連総会及び人権理事会では、毎年、北

朝鮮人権状況決議が採択されていることからも明らかであるとおり、国際社会は

北朝鮮当局に対し、拉致問題の早急な解決を要求しています。

5

Page 6: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

7 学習指導の展開例

(1) 掲載している学習指導の展開例の一覧

校種 対 象 人権教育

の内容構成 関連領域

アニメ「めぐみ」

の使用 ページ

高学年5・6年生 2-(1)-ア 特別の教科 道徳

(総合的な学習の時間) ○ 7

高学年5・6年生 2-(2)-ア 総合的な学習の時間

(特別の教科 道徳) ○ 9

2・3年 2-(1)-イ 社会科(公民的分野) ○ 11

1~3年 2-(1)-ア 特別の教科 道徳

(総合的な学習の時間) ○ 13

2年 2-(2)-イ 社会科(歴史的分野) ○ 15

1~3年 2-(1)-イ 公民科(現代社会) - 18

1~3年 3-(1)-ア 総合的な学習(探究)の時間

特別活動(ホームルーム活動) - 19

1~3年 2-(2)-ア 総合的な学習(探究)の時間

特別活動(ホームルーム活動) ○ 21

※中 2年 2-(1)-ア 社会科

-

※中学生用教育資料

『きらめき』より

23

(2) 本手引きでは、校種ごとに指導のねらいを以下のように設定し、指導の参考として学

習指導事例を作成しました。

校 種 ね ら い

小学校 拉致被害者の家族の心の痛みや思いに共感することを通して、「拉致問題」に関心

をもたせるとともにその重大性を認識させる。

中学校

「拉致問題」が人権課題の一つであることを理解させ、その重大性を認識させる

とともに、人権を尊重し、人権課題の解決に向けて一人一人が関心を持ち考える

ことの大切さを認識させる。

高等学校

「拉致問題」の概要について理解し、「拉致問題」が人権課題の一つであると認識

させるとともに、自らの問題として捉え、問題解決に向けて主体的に行動しよう

とする意欲や態度を育てる。

(3) 学習指導の展開例の「人権教育の内容構成」は、別添資料1「人権教育の内容構成」

に対応しています。(下表は「人権教育の内容構成」(県教委 H10)より一部抜粋)

内容 重点目標 推進項目

2 人権についての教育

(1) 人権意識の高揚 ア 生命の尊厳についての学習

イ 人権の歴史と思想についての学習

(2) 差別解消への態度の形成 ア 差別と人権問題についての学習

イ 人権の擁護とその活動についての学習

3 人権を尊重した生き方のための

資質や技能を育成する教育

(1) 自立向上の精神の育成 ア 「市民意識」の醸成

イ 個性・能力の身長

(2) 思いやりの心の育成 ア 人間関係の活性化

イ 社会参加の促進

(4) 掲載している事例については、児童生徒の実態に応じて、校種が違っても応用して活

用することができます。

(5) 拉致の概要や拉致被害者及び家族の心情等については、アニメ「めぐみ」の視聴を、

「6 参考資料等」の諸資料による学習に置き換えて実施することもできます。

6

Page 7: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

学年 高学年 5・6年

人権教育の 内容構成

2-(1)-ア 関連領域 特別の教科 道徳(C-15 家族愛・家庭生活の充実)

(総合的な学習の時間)

1 ね ら い

○ 拉致被害者家族の心の痛みや思いに共感させることを通して、「拉致問題」に関心をもたせる

とともにその重大性を認識させる。 ○ めぐみさんの両親の心情や行動について考えることで、家族の子どもに対する愛情や、家

族にとって子どもがかけがえのない価値を持つ存在であることについて理解を深める。

2 教 材 アニメ「めぐみ」、ワークシート

3 配慮事項 手引き「4(2)」及び「5」を参照し、本県に在籍する朝鮮半島につながりの

ある児童生徒に配慮するとともに、子どもには多様な家族構成や家庭状況があ

ることを踏まえ、十分に配慮すること。

4 展開例

学習活動・発問・子どもの反応 指 導 上 の 留 意 点

Q1.自分にとって家族はどのような存在ですか。

いつも衣食住の面倒を見てくれる。

自分を守ってくれている。

いつも怒ってばっかり。

宿題やお手伝いについてうるさい。

家族の愛情を感じたり、家族に反発した

りしたエピソードや経験を出し合う。

○ アニメ「めぐみ」を視聴する。

Q2.めぐみさんがいなくなった時、めぐみさんの

両親はどのような気持ちだったと思いますか。

○ アニメの視聴後、ワークシートに記入する。

なぜいなくなったのか。(家出、誘拐、事故等)

早く見つかってほしい。(帰ってきてほしい)

自分たちが厳しくし過ぎたのか。

拉致被害者のめぐみさんの両親の心情

の変化について注目するよう促す。

内容や語句について補足するとともに、

社会科の学習内容との関連を図る。

実話であり現在未解決の課題であるこ

とを確認する。

これまで愛情を注いで育ててきためぐ

みさんを必死で探す家族に着目させ、突

然いなくなったわが子を思う悲痛な気

持ちに気づかせる。

Q3.街頭で救出を呼び掛けていた時、めぐみさん

の両親はどのような気持ちだったと思いますか。

○ ワークシートに記入し班内で発表する。

娘に早く会いたい。

もっと関心を持ってほしい。力を貸してほしい。

絶対あきらめない。できることはすべてやる。

Q4.通行人の反応が冷たくても活動を続けること

ができたのはなぜだろう。

・大変だがなんとしても娘を助け出したい。自分たちだ

けでは解決できないので協力を求めるしかない。

・他にできることがない。

めぐみさんの両親の何とかしてわが子

を助け「拉致問題」を解決したいという

思いや行動から、親子愛や家族愛につい

て考えさせる。

[補助発問]

・もし自分なら同じようなことができる

だろうか。

自分にはできない。/手伝うことなら

できるかも。/しようと思わない。 等

Q5.学習後、自分にとって家族、家族にとっての

自分について、どのような存在だと思うようにな

りましたか。

○ ワークシートに記入する。

家族の絆や家族愛について、自分の家族

に当てはめて考えさせ、家族への感謝や

敬愛の気持ちに気づかせ、家族の一員と

しての立場や役割への自覚を促す。

7

Page 8: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

家族の存在・つながりについて考えよう

年 組 名前( )

1 自分にとって家族はどのような存在ですか。

2 めぐみさんがいなくなった時、めぐみさんの両親はどのような気持ちだったと思

いますか。

3 街頭で救出を呼びかけていた時、めぐみさんの両親はどのような気持ちだったと

思いますか。

4 通行人の反応が冷たくても活動を続けることができたのはなぜだと思いますか。 [自分の考え] [班で出た意見]

5 この時間の学習をして、自分にとっての家族や、家族にとっての自分について、

どのような存在だと思うようになりましたか。

小学生用ワークシート

8

Page 9: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

学年 高学年 5・6年

人権教育の 内容構成

2-(2)-ア 関連領域 総合的な学習の時間

(特別の教科 道徳C-15 家族愛・家庭生活の充実)

1 ね ら い

○ 拉致被害者家族の心の痛みや思いに共感させることを通して、「拉致問題」に関心をもたせる

とともにその重大性を認識させる。 ○ めぐみさんの両親の心情や行動について考えることで、家族の子どもに対する愛情や、家

族にとって子どもがかけがえのない価値を持つ存在であることについて理解を深める。 ○ めぐみさんは、中学 1 年生の時に拉致され、それ以降家族に会うことも連絡することもで

きない状況に追いやられたことから、拉致問題は、生命や安全を脅かす重大な人権問題であ

ることを認識させる。

2 教 材 アニメ「めぐみ」、ワークシート

3 配慮事項 手引き「4(2)」及び「5」を参照し、本県に在籍する朝鮮半島につながりの

ある児童生徒に配慮するとともに、子どもには多様な家族構成や家庭状況があ

ることを踏まえ、十分に配慮すること。

4 展開例

学 習 内 容 指 導 上 の 留 意 点

○ アニメ「めぐみ」を視聴する。

○ アニメの視聴後、ワークシートに記入する。

社会科で学習した拉致問題と関連させ、現実

に起こっているいまだに解決されていない問

題であることを確認する。

必要に応じて、語句や内容について補足・説

明する。

Q1.めぐみさんがいなくなった時、両親

はどんな思いだったでしょうか。

・どこへ行ってしまったのだろう。

・事故にあってしまったのか。

・早く会いたい。

Q2.めぐみさんが北朝鮮に拉致されたこ

とがわかり、救出を呼びかける両親はど

んな思いだったでしょうか。

・私が身代わりになりたい。

・絶対に助けるからね。

・日本中の人に関心をもってもらい、救出し

たい。

これまで愛情を注いで育ててきためぐみさん

を必死で探す家族に着目させ、突然いなくな

ったわが子を思う悲痛な気持ちに気づかせ

る。

めぐみさんの両親の何とかしてわが子を助け

拉致問題を解決したいという思いに気づか

せ、親子愛や家族愛について考えさせる。

○ 拉致問題を通して自分の身の回りにある人

権にかかわる問題について考える。

拉致問題が決して許されない犯罪行為であ

り、生命や安全を脅かす問題であることを理

解させる。

「身の回りに苦しい思いをしている人がいな

いか」を振り返らせる。

人権課題について、関心を持ち、自分事と捉

えて考えることが大切であることに気づかせ

る。

9

Page 10: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

拉致ら ち

問題について知ろう(アニメ「めぐみ」)

年 組 名前( )

1 めぐみさんがいなくなった時、両親はどんな思いだったでしょう。

2 めぐみさんが北朝鮮に拉致ら ち

されたことがわかり、救出を呼びかける両親はどん

な思いだったでしょうか。

3 拉致ら ち

問題について考えたことや、アニメ「めぐみ」を見た感想を書きましょう。

小学生用ワークシート

10

Page 11: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

学年 2・3年人権教育の 内容構成

2-(1)-イ 関連領域 社会科 公民的分野

1 ね ら い

○ 「拉致問題」が人権課題の一つであることを理解させ、その重大性を認識させるとともに、

人権を尊重し、人権課題の解決に向けて一人一人が関心を持ち考えることの大切さを認識さ

せる。 ○ アニメ「めぐみ」の視聴を通して、「日本国憲法」が定める自由権及び「児童の権利に関す

る条約」に示された権利や自由権に触れながら、人権の大切さを理解する。 ○ 基本的人権の尊重とはどのようなことか、めぐみさんの事例を通して考え、自らの意見を

持つとともに、意欲的に話し合おうとする。

2 単 元 名 人間の尊重と日本国憲法の基本的原則

3 教 材 教科書(社会科 公民的分野)、アニメ「めぐみ」、ワークシート、資料集等

4 配慮事項 手引き「4(2)」及び「5」を参照し、本県に在籍する朝鮮半島につながりの

ある児童生徒に配慮すること。

5 展 開 例

学習活動・発問・子どもの反応 指 導 上 の 留 意 点

Q1.「日本国憲法」が保障している基本的人権のう

ち、自由権にはどのようなものがありましたか。

○ ワークシートに記入し、発表する。 精神の自由(思想・良心の自由等)

・身体の自由(奴隷的拘束・苦役からの自由等) ・経済活動の自由(居住・移転・職業選択の自由等)

Q2.世界ではどのように人権は保障されているの

でしょうか。

・国際連合・ユネスコ・ユニセフ・世界人権宣言 ・児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)

教科書の該当ページで既習事項を振り返る。

発表内容を簡潔に板書し、ある程度挙がったら教師で補足する。

資料集等で「世界人権宣言」や「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」等の取り決めや国際機関について確認する。

自由権侵害の事例として、アニメ「めぐみ」を視聴することを説明する。

○ アニメ「めぐみ」を視聴する。

Q3.どの場面で、どのような人権が侵害されてい

たでしょうか。

○ ワークシートに記入し、班で共有する。 ・[日本国憲法]…Q1参考 ・[児童(子ども)の権利条約]…家族と離されない権利、本人の意思に反して他国に連れ去られない権利、親と会える権利

○ 班ごとに班内で出た意見を発表し、侵害された

人権について確認する。

資料として、日本国憲法や「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」の条文を使用するよう指示する。

「拉致問題」は重大な人権侵害問題であることと、「拉致問題」をはじめとする他者の人権を侵害する行為は許してはいけないということを確認する。

Q4.「拉致問題」などの人権侵害に気づいたときに

自分にできることは何がありますか。

○ ワークシートに記入し発表する。 ○ 感想をワークシートに記入する。

人権を守るために自分ができることは何かを考える。

「拉致問題」やその他の人権課題も、加害者と被害者だけでの問題ではなく、見過ごしたり風化させたりすることなく関心を持つことが重要であると気づかせる。

※ 「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」については、「子どもの権利条約カードブ

ック」(日本ユニセフ協会)も参考になる。

11

Page 12: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

事例をもとに人権尊重について考えよう

年 組 名前( )

1 「日本国憲法」が保障している基本的人権のうち、自由権にはどのようなものが

ありましたか。

2 世界ではどのように人権は保障されているのでしょうか。

3 どの場面で、どのような人権が侵害されていたでしょうか。

4 「拉致問題」やいじめなどの人権侵害に気づいた時に、自分にできることは何だ

と思いますか。

○ アニメ「めぐみ」の印象的な場面や感想を記入しましょう。

中学生用ワークシート

12

Page 13: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

学年 1~3年人権教育の 内容構成

2-(1)-ア 関連領域 特別の教科 道徳(C-11公正・公平・社会正義)

(総合的な学習の時間)

1 ね ら い

○ 「拉致問題」が人権課題の一つであることを理解させ、その重大性を認識させるとともに、人

権を尊重し、人権課題の解決に向けて一人一人が関心を持ち考えることの大切さを認識させる。 ○ アニメ「めぐみ」の視聴を通して、「拉致問題」を事例として、よりよい社会の実現に向けて、

公正・公平・正義を重んじる精神が不可欠であるということをについて理解を深める。

2 教 材 アニメ「めぐみ」、ワークシート

3 配慮事項 手引き「4(2)」及び「5」を参照し、本県に在籍する朝鮮半島につながりの

ある児童生徒に配慮すること。

4 展 開 例

学習活動・発問・子どもの反応 指 導 上 の 留 意 点

Q1.このような場面で、これまでにどう思ったり行動

したりしましたか。

・席を譲ってあげた、など勇気を持って実際に行動した。 ・何かしなければ、と思ったができなかった。 ・気づいたけれども、知らないふりをした。

以下の例のような、いくつかの「見て見ぬふり」の場面を提示し、これまでの自分を振り返らせる。

例 1)電車内で自分が座っていて、高齢者が立っていることに気づいたとき。

例 2)友だちが他の人にいやなことをされて困っているとき。 など

○ アニメ「めぐみ」を、冒頭から署名活動の場面終了(16分頃)まで視聴する。

Q2.街頭で救出を呼び掛けていた時、めぐみさんの両

親はどのような気持ちだったと思いますか。

Q3.署名活動をする横田夫妻の前を通り過ぎた人々に

ついてどう思いますか。

○ ワークシートに記入し近隣やグループで共有する。 ○ 自分の意見やグループの意見を発表する。 「人々が関心を持っていなくても仕方ない」意見 「拉致問題」についてよくわからないから仕方がない。 「拉致問題」に興味がない。 自分には関係ない。 「人々が関心を持たないのはひどい」意見 困っている人を放ってはおけない。 1 人でも多く関心を持ち、小さな協力をすることが助けになるのではないか。

チラシを受け取ったり、署名をしたりすることぐらいたいした手間ではない。

生徒の発言について、基本的には共感的な態度で聞くが、在日朝鮮人へのヘイトスピーチのような内容については、適切に指導する。

「自分ならどうするか」ということを踏まえて考えさせる。

2つの立場が対比できるように意見を板書する。

一人一人が「拉致問題」に関心を持つことが、「拉致問題」の風化を防ぎ、拉致被害者家族の支えになり、「拉致問題」の解決の後押しとなることを説明する。

○ アニメ「めぐみ」の続きを最後まで視聴する。

アニメ「めぐみ」についての感想は、授業の最後に記入するか、家庭学習課題とする。

Q4.「拉致問題」と他の人権課題には、どのような共

通点があると思いますか。

○ ワークシートに記入し、発表する。 当事者以外の無関心は問題解決を困難にする。 当事者だけでなく多くの人が関心を持ち行動しなければ解決に向かわない。

「拉致問題」も他の人権課題も、当事者以外が関心を持たなければ見過ごされてしまい、解決が困難であることに気づかせる。

見て見ぬふりをするのではなく、自ら人権課題の解決に向けて行動することがよりよい社会につながることを確認する。

○ アニメ「めぐみ」の印象的な場面や感想を記入する。

※ 高等学校の特別活動(学級活動)等での実施も可能である。

13

Page 14: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

よりよい社会に向けて自分にもできることってなんだろう

年 組 名前( )

1 事例の場面に居合わせたとき、どのように思ったり行動したりしましたか。

2 街頭で救出を呼びかけていた時、めぐみさんの両親はどのような気持ちだったと

思いますか。

3 署名活動をする横田夫妻の前を通り過ぎた人々についてどう思いますか。

自分の意見: 他者の意見:

4 「拉致問題」といじめなど他の人権課題には、どのような共通点があると思いま

すか。

自分の意見: 他者の意見:

○ アニメ「めぐみ」の印象的な場面や感想を記入しましょう。

中学生用ワークシート

14

Page 15: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

学年 2年 人権教育の 内容構成

2-(2)-イ 関連領域 社会科 歴史的分野

1 ね ら い

○ 「拉致問題」が人権課題の一つであることを理解させ、その重大性を認識させるとともに、

人権を尊重し、人権課題の解決に向けて一人一人が関心を持ち考えることの大切さを認識さ

せる。 ○ 冷戦後の国際社会における、民族や宗教を巡る対立、我が国と近隣諸国との間の領土をめ

ぐる問題、「拉致問題」など様々な課題について理解する。 ○ 国際社会(近隣諸国)における課題の解決に向けて、国際協調の取組や、多くの人々が関

心を持ち、国家の利害に左右されない人権尊重の精神に基づいた人と人との関係を築くこと

が大切であるということに気づかせる。

2 単 元 名 現代の日本と世界

3 教 材 教科書(社会科 歴史的分野)、アニメ「めぐみ」、ワークシート、資料「日本

と韓国のつながり」(平成 24年度中学生人権作文コンテスト入賞作品)

4 配慮事項 手引き「4(2)」及び「5」を参照し、本県に在籍する朝鮮半島につながりの

ある児童生徒に配慮すること。

5 展 開 例

学 習 内 容 指 導 上 の 留 意 点 ○ 冷戦後の国際社会の諸課題について確認する。

Q1.冷戦後の国際社会で生じた対立や問題に

はどのようなものがありましたか。

テロ(米同時多発テロ)、難民(クルド人)、竹島や

尖閣諸島をめぐる領土問題・拉致問題 など

教科書等で歴史的事項の復習をするとと

もに、「拉致問題」の存在を理解させる。

「拉致問題」について補足する。

○ アニメ「めぐみ」を視聴する。

Q2.めぐみさんが拉致される前と後での、両

親の気持ちの変化を考えましょう。

○ 拉致される前

めぐみさんに幸せになってほしい。

家族でずっと一緒に幸せに過ごしたい。

○ 拉致の判明後

死亡だなんて絶対に信じない!

どんなことをしても救出したい!

解決のために、多くの人の力を貸してほしい。

アニメの視聴後、ワークシートに両親の思

いや願いを書かせる。

めぐみさんの両親の、家族や娘の幸せを願

う気持ちや、娘の無事を信じ、救出を誓う

悲痛な気持ちに着目させる。

救出を決してあきらめない両親の姿から、

家族の愛、親の愛を感じ取らせる。

「拉致問題」が大きな人権侵害であり、許

されない行為であることをおさえる。

国際対立や国際問題により、一般人の人権

や生活が損なわれることに気づかせる。

Q3.拉致問題の解決に向けて、私たちにでき

ることはどんなことでしょうか。

拉致問題に関心を持ち、もっと知るようにする。

署名活動に参加する。

DVD の内容も参考にして考えさせる。

拉致問題について知り、関心を持つことが

まず大切ということを確認する。

「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」等につい

て紹介する。

Q4.国際社会での諸課題の解決に向けて、ど

のような取組が必要でしょうか。

○ 国際社会(国際連合や国際機関)への働きかけや国際協調(他国との連携、平和的な交渉)などの取組について確認する。

○ 「日本と韓国のつながり」(平成 24 年度中学生

人権作文コンテスト入賞作品)を読む。

拉致問題の解決に向けた動きとして、日朝

首脳会談や国連への働きかけ、米・韓等と

の協調について説明する。

作文から、国家間の対立での諸課題につい

て、国家の利害に左右されない人権尊重の

精神に基づいた人と人との関係づくりが

大切であるということに気づかせる。

5 まとめ

国際社会での諸課題について、自分事とし

て関心を持ち、人権尊重や交流の視点から

考えることの大切さに気づかせる。

15

Page 16: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

冷戦後の国際社会の諸課題について考えよう

年 組 名前( )

Q1.冷戦後の国際社会で生じた対立や問題にはどのようなものがありましたか。

対立・紛争・問題の名称 内容等

Q2.めぐみさんが拉致される前と後での、ご両親の気持ちの変化を考えましょう。

拉致前 拉致判明後

Q3.拉致問題の解決に向けて、私たちにできることはどんなことでしょうか。

○ 国際社会での諸課題の解決に向けて、どのような取組が必要でしょうか。

中学生用ワークシート

16

Page 17: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

17

Page 18: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

学年 1~3年人権教育の 内容構成

2-(1)-イ 関連領域 公民科 現代社会

1 ね ら い

○ 「拉致問題」の概要について理解し、「拉致問題」が人権課題の一つであると認識させると

ともに、自らの問題として捉え、問題解決に向けて主体的に行動しようとする意欲や態度を

育てる。 ○ 世界的な人権保障の動きについて、国際社会における人権問題と「児童の権利に関する条

約」等人権に関する条約や国際機関等の役割や意義を理解するとともに、「北朝鮮当局による

拉致問題」を具体的な事例として考察することで、国際社会での人権課題の解決や人権保障

を進めるために必要な取組を理解する。

2 単 元 名 国際社会の動向と日本の果たすべき役割

3 教 材 教科書、資料集、「北朝鮮による日本人拉致問題 1日も早い帰国実現に向けて」

(拉致問題対策本部)

4 配慮事項 手引き「5」を参照し、本県に在籍する朝鮮半島につながりのある児童生徒

に配慮すること。

5 展 開 例

学習活動・発問・子どもの反応 指 導 上 の 留 意 点

Q1.20 世紀以降の世界中でおこった(おこっている)人

権侵害・人権問題にはどのようなものがありますか。

○ 発問について考え、発表する。

・ホロコースト、アパルトヘイト、クルド人問題、ミャンマー

難民、アボリジニーの迫害、白豪主義、拉致問題 等

Q2.国際社会では、私たちの人権はどのように保障され

ているのでしょうか。

例:世界人権宣言、国際人権規約、児童の権利に関する条約、

難民条約、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR) 等

○ 第二次世界大戦後に成立した国際的な人権に関する取り

決めや国際機関等をノートにまとめる。

個人または隣と相談して考えさせ、

できるだけ多く挙げさせる。

板書で人権問題をまとめる。

資料プリントや ICT 機器などで写真

や新聞、ニュースを示し、補足する。

「拉致問題」が出たときは、「Q3.」

は省略する。

それぞれの条約や国際機関等の概要

については教科書や資料集等で確認

する。

Q3.この図が関係する人権問題は何でしょうか。(「拉致

被害者の帰国」や「日朝首脳会談」の図を提示)

○ 資料をもとに「拉致問題」の概要をノートにまとめる。

例:1970~1980年代、日本全国で、北朝鮮工作員によって、横

田めぐみさんや有本恵子さんなどが拉致された。2002年の日朝

首脳会談で進展、5人が帰国。その後12人は未帰国のまま。

Q4.「拉致問題」の解決に向けて、どのような取組がなさ

れているのでしょうか。

・日朝間の交渉(安全保障、経済、国交正常化等)

・国際連合や関係国など国際社会への働きかけ

・国内への啓発・周知等

資料:「北朝鮮による日本人拉致問題

1日も早い帰国実現に向けて」(拉致問題

対策本部)

概要については、小中学校での学習

やアニメ「めぐみ」の視聴の状況を

踏まえ、簡潔に確認する。

「拉致問題」は今なお継続している重

大な人権課題であることを確認する。

「拉致問題」への取組について、国内

外、人権、安全保障、経済、国際関

係など、多面的・多角的な視点に気

づかせ、理解を深める。

高校生など若い世代の関心を高める

ことが課題であることを説明する。

Q5.「拉致問題」をはじめ、国際社会での人権課題の解決

や人権保障をすすめるためには、何が必要でしょうか。

・国内への働きかけ、国際社会への働きかけ、国際ルール 等

国際的な人権課題の解決や人権保障

のためには、人権に関する条約等の

遵守や国際協力、若い世代など人々

の関心が必要であることを確認する。

18

Page 19: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

学年 1~3年人権教育の 内容構成

3-(1)-ア 関連領域 総合的な学習(探究)の時間 特別活動(ホームルーム活動)

1 ね ら い

○ 「拉致問題」の概要について理解し、「拉致問題」が人権課題の一つであると認識させると

ともに、自らの問題として捉え、問題解決に向けて主体的に行動しようとする意欲や態度を

育てる。 ○ 「拉致問題」をはじめとする人権課題の解決には、多くの人々が関心を持ち、自分たちに

できることを具体的に考えるなど、解決に向けた積極的な態度が重要だということに気づか

せる。

2 教 材 「北朝鮮による日本人拉致問題 1日も早い帰国実現に向けて」(政府拉致問

題対策本部)、「拉致被害者やその家族のメッセージ」「兵庫内の中学生の皆

さんへ」(中学生用教育資料「きらめき」活用の手引き)、ワークシート

3 配慮事項 手引き「4(2)」及び「5」を参照し、本県に在籍する朝鮮半島につながりの

ある児童生徒に配慮すること。

4 展 開 例

学習活動・発問・子どもの反応 指 導 上 の 留 意 点

Q1.「拉致問題」の概要や経緯はどうなっていたの

でしょうか。

○ 資料をもとに、ワークシート「1」を記入する。

資料1:「北朝鮮による日本人拉致問題 1日も

早い帰国実現に向けて」(拉致問題対策本部)

資料2:「アニメ「めぐみ」絵コンテ ダイジェ

スト版」(拉致問題対策本部ホームページ)

兵庫県に関係する拉致被害者として有本恵子

さん、田中実さんにも触れる。

○ 「拉致問題」など人権課題に対しては、高校生など

の若い世代に求められることとして、以下の3点を確

認する。

①「知る」、②「関心を持つ」、③「解決に向けて自

分にできることを考える」

○ ワークシート「2」に記入する。

Q2.「拉致問題」という人権課題に対して、自分た

ちにできることは何でしょうか。

例:啓発・周知用のポスター作成・配布・掲示、署名活

動への協力、拉致被害者家族への応援メッセージ、

家族や友人などへの伝達や話し合い

○ 個人作業およびグループワークにより、ワークシー

ト「3」を完成させる。

○ 発表に向けて A3 用紙(又は模造紙)にまとめる。

曽我ひとみさんや蓮池薫さんなどの拉致被害

者やその家族が、「拉致問題」の風化を懸念

しており、若い世代に「拉致問題」について

知り、関心を持つこと期待していることにも

触れる。

時期や内容について具体性を持って考えるよ

う促す。

[全体発表(各班2分程度)]

○ 1枚の用紙にまとめたものをもとに各班が発表す

る。(案の選定の理由、手順、課題など)

○ 他班の発表を聞き、ワークシート「4」に記入する。

時間や状況によっては、全班の成果物を教室

内に掲示し、見て回る方法でもよい。

多種多様な選択肢に気付かせる。

Q3.この時間の学習の中で、他の人権課題にも生

かせると思ったことは何ですか。

自分たちにできることを具体的に考えること

や、「拉致問題」をはじめとした人権課題の

解消に向けた積極的な態度は、他の人権課題

にも通じるということを念押しする。

19

Page 20: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

人権課題の解決に向けて考えよう(「拉致問題」について)

1 「拉致問題」について

いつ

誰を

誰が

なぜ

どこで

どのように

2 拉致被害者や拉致被害者の家族は、解決に向けて、一般の人や子どもたちに対してどのよう

なことを望んでいるでしょうか。

3 「拉致問題」という人権課題に対して、自分たちにできることを考えよう。

自分たち

にできる

(できそうな)

取組・行動

実施まで

の手順

実施に

当たって

想定される

課題・困難

4 全ての班の発表から、自分にもできそうなものを挙げてみよう。また、そう思った理由も書

いてみよう。

やってみよ

うと思った

取組・行動

そう思った

理由

5 この時間の学習の中で、他の人権課題にも生かせると思ったことは何ですか。

高校生用ワークシート

20

Page 21: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

学年 1・2年人権教育の 内容構成

2-(2)-ア 関連領域 総合的な学習(探究)の時間 特別活動(ホームルーム活動)

1 ね ら い

○ 「拉致問題」の概要について理解し、「拉致問題」が人権課題の一つであると認識させると

ともに、自らの問題として捉え、問題解決に向けて主体的に行動しようとする意欲や態度を

育てる。 ○ 「拉致問題」をはじめとする人権課題の解決には、多くの人々が関心を持ち、自分たちに

できることを具体的に考えるなど、解決に向けた積極的な態度が重要だということに気づか

せる。

2 教 材 アニメ「めぐみ」、ワークシート

4 配慮事項 手引き「4(2)」及び「5」を参照し、本県に在籍する朝鮮半島につながりの

ある児童生徒に配慮すること。

4 展 開 例

学習活動・発問・子どもの反応 指 導 上 の 留 意 点

○ アニメ「めぐみ」を視聴する。

必要に応じて、視聴の前後に語句や内容について補足・説明する。

公民科で学習した拉致問題と関連させ、現実に起こっているいまだに解決されていない問題であることを確認する。

1 「めぐみさんの拉致」の問題点

Q1.登場人物の心情や人権の面でどのよう

な点が問題だったでしょうか。

・めぐみさんに対して、生命や安全を脅かし、絶望や不安、恐怖を与えた。

・家族から幸せを奪い、精神的苦痛を与えた。 ・世界人権宣言や児童の権利に関する条約、日本国憲法で保障されている自由(人権)を奪った。(=人権侵害)

めぐみさんやその家族の「心情」と「人権」の両方の面について考えさせるよう留意する。

自由(人権)については、日本国憲法や世界人権宣言、児童の権利に関する条約を資料として配布し確認すると理解が深まる。

「拉致問題」は重大な人権侵害問題であることと、「拉致問題」をはじめとする他者の人権を侵害する行為を許してはいけないということを確認する。

2 高校生としての自分にもできること

Q2.「拉致問題」という人権課題に対して、

自分たちにできることは何でしょうか。

例:もっと理解を深め関心を持つ、啓発・周知

用のポスター作成、署名活動への協力、拉

致被害者家族への応援メッセージ、家族や

友人などへの伝達や話し合い

DVD での、めぐみさんの家族の署名活動などの

地道で必死な活動が、国や人の心を動かしていったことをおさえ、一人一人が拉致問題への関心や認識を深めることや自らの課題としてとらえることの大切さを理解させる。

解決に向けて行動しようという態度につなげる

ことが重要であり、今後も具体的に考えるよう

促す。

3 身の回りにある人権課題との共通点

Q3.「拉致問題」の学習について、他の人

権課題にも生かせるのはどのような点で

しょうか。

「拉致問題」や他の人権課題について、関心を

持ち、自分たちにできることを具体的に考える

ことは、他の人権課題にも通じるということに

気づかせる。

○ アニメ「めぐみ」の印象的な場面や感想を

記入する 授業外へのつながりとして、北朝鮮人権侵害問

題啓発週間作文コンクールを紹介する。

※アニメ「めぐみ」を活用した展開例は、「中学校 学習指導事例」の「特別の教科道徳・特

別活動」も参考にできます。

21

Page 22: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

「拉致問題」等の人権課題の解決に向けて

年 組 名前( )

Q1.「拉致問題」は、登場人物の心情や人権の面からみるとどのような点が問題で

しょうか。

心情の面:

人権の面:

Q2.「拉致問題」という人権課題に対して、自分たちにできることは何でしょうか。

Q3.「拉致問題」の学習について、他の人権課題にも生かせるのはどのような点で

しょうか。

○ アニメ「めぐみ」の印象的な場面や感想を記入しましょう。

高校生用ワークシート

22

Page 23: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

※ 中学生用教育資料『きらめき-個性光らせて-』活用の手引き(兵庫県教育委員会)より抜粋

No. ⑨ 分類 2―(2)―イ 資料名 会いたい 学年 2年 領域 社会

1 ねらい

○ 拉致問題が重大な人権侵害であることを理解するとともに、解決に向けて一人一人が考え

ることの大切さを認識する。 2 趣旨

○ 拉致被害者やその家族の苦悩や願いについて考えさせ、自らの問題として考えていこうと

する姿勢を育てる。 ○ 在日韓国・朝鮮人の人々の思いを理解しながら、真の解決に向けて一人一人が何をすべき

かを考えさせる。 3 配慮事項

○ 地域性や外国人生徒へ配慮し、人と人との関係は国家の利益に左右されることはないこと

を理解させる。 ○ 政治的、政策的な問題には触れないようにし、人道的な観点からの学習を進める。

4 展開例

学 習 内 容 指 導 上 の 留 意 点 1 資料を読む。 2 拉致被害者の家族の思いを考える。

・ずっと毎日心配するだろうな。 ・楽しいと感じることがなくなる。 ・時間が止まってしまう。

・夢も希望もなくなる。 3 在日韓国・朝鮮人の人々の思いを知る。 ○ 拉致問題のことを聞いてきた時のユミの気

持ちを考える。 ・わたしのことをどう思っているのか。

・在日韓国・朝鮮人がいじめられないかな。 ・早く解決してほしい。 ・悩みに気づいてあげられずにごめんね。 ・ユミには何も責任はないよ。

・これからもずっと友だちでいてほしい。 ・いっしょにできることを考えよう。

4 解決のためにできることを考える。 ○ 「私にできること、私にもしなければな

らないこと」について考える。 ・いろいろな人権課題に目を向ける。 ・「被害者や家族の悩みや願いを忘れていな

い。」というメッセージを伝え続ける。

・拉致問題についての補足説明をする。 ・自分の家族がいなくなった状況を想像しなが

ら、考えさせる。 ・横田さんのお母さんのメッセージをもう一度読

んでもよい。 ・拉致問題は国家の一部の指導グループによる犯

罪行為であり、在日韓国・朝鮮人の人々、また

北朝鮮の国民には罪はないことを認識させる。 ・拉致問題に関連して在日韓国・朝鮮人の人々へ

のいじめがあった事実を伝え、そうした行動の

過ちに気づかせる。 ・一人一人を尊重し、理解し、共生を求めていく

ことが、真の解決につながることを認識させ

る。 ・拉致問題は必ず解決しなければならない問題で

あることを認識させ、社会全体で解決を図ろう

とすることが必要であることを認識させる。 ・自分の言動が、悩みを抱える人に勇気や希望を

与えることを認識させる。

5 参考

○ 「きらめき」(平成 15 年度版)⑨「私が私であるために」の学習とつなげていくことができる。 ○ 学習にあたっては、アニメ「めぐみ」も活用できる。

「突然この家からいなくなったら┅」に続く気持ちを考えましょう。

「私」はユミにどんな話をするのでしょう。

23

Page 24: 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引きjinken-bo/megumi/tebiki zenpen pdf.pdf · 人権課題 「北朝鮮当局による拉致問題等」の指導の手引き

― 24 ―

拉致問題とは

 1970年代から1980年代にかけ、多くの日本人が不自然な形で行方不明となりました。日本の当局による捜査や、亡命北朝鮮工作員の証言により、これらの事件の多くは北朝鮮当局による拉致の疑いが濃厚であることが明らかになりました。 平成14(2002)年9月17日、第1回日朝首脳会議において、北朝鮮は長年否定していた日本人拉致を初めて認め、謝罪しました。 日本政府は、北朝鮮当局による拉致被害者として、これまでに17人を認定しました。このうち5人については、北朝鮮当局が生存を認め、その後この5人は日本に帰国しました。残る12人の被害者について、横田めぐみさんや有本恵子さん(神戸市)を含む8人は死亡、4人は未入境であると、北朝鮮当局は主張しています。日本政府は、死亡したとされる8人について、「死亡」を裏付けるものが一切存在しないため、被害者は生存しているという前提に立って被害者の即時帰国と納得のいく説明を行うように北朝鮮当局に対して求めています。このほかにも拉致の可能性を排除できない事案があるとの認識の下、調査・捜査を進めています。 政府は、総理大臣を本部長、拉致問題担当大臣、内閣官房長官及び外務大臣を副本部長とし、すべての国務大臣を構成員とする拉致問題対策本部を設置しています。そして、被害者家族は、平成9(1997)年3月に「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(家族会)」を結成しました。また、支援団体として、「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)」、「北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟(拉致議連)」、「特定失踪者問題調査会(調査会)」等があります。 国際連合においては、平成15(2003)年以来毎年、日本が提出している北朝鮮人権状況決議が採択され、北朝鮮に対し拉致被害者の即時帰国を含めた拉致問題の早急な解決を強く要求しています。

兵庫県内の中学生の皆さんへ            有本 明弘 嘉代子   娘恵子は、1960(昭和35)年、私たちの三女として、この長田に生まれました。幼いころからおとなしくて、引っ込み思案でしたが、私たちの言うことをよく理解してくれる子どもでした。 そんな恵子が、私たちの反対を押し切って、どうしてもやりたいと言ったことがありました。ヨーロッパへの語学留学でした。恵子は高校に進学したころから英語への興味が高まり、神戸市外国語大学に進学しました。そして卒業の直前になって、「イギリスに留学したい。」と言い出したのです。費用もコツコツと自分で貯めていたようです。恵子の幼稚園の時の先生も「引っ込み思案だった恵子さんが一人で外国へ行きたいと言い出すなど信じられない。」と言われましたが、それだけ、英語への関心が高く、自分の夢を実現したいという思いが強かったのだと思います。留学中の恵子は月に一度は手紙をくれていました。とても楽しそうで、とても積極的になっていたように感じました。しかし、その留学先で拉致をされたのですから、今となっては、「どうしてあの時、どんなことをしてでも留学を止めなかったのか。」と後悔の念ばかりが募ります。 1983年に音信が途絶えてから、30年の月日が経ちました。しかし、恵子のことを忘れる日など一日もありませんでした。「ちゃんとご飯食べているのかな」と、いつも思っています。「どんな気持ちで過ごしているのだろう。ずいぶん苦しい思いもしているのだろう。あの子の人生はいったい何なんだろう。」いろんなことを考えてしまいます。私たちに心配をかけ、悲しませたことについても恵子は苦しんでいるのではないかと想像します。拉致が分かった20年前から、私たちは夫婦二人で救出を訴えてきました。街頭で署名も求めました。しかし、はじめのころはその署名もほとんどしてもらえませんでした。2002年、日本の首相が訪朝してやっと大きくとりあげられるようになりました。恵子が帰ってきてくれるその日まで、私たちは取組を続けます。決してあきらめません。 しかし、これまで、多くの人たちに支援をしてもらいました。ずっと支援をしてくださっている方がこんな手紙をくださったこともありました。「今は、東北に震災の復興のお手伝いにきています。でも、有本さんのことは忘れてないからね。」という内容でした。「ある人の悲しみに気づける人は、いろんな人の悲しみにも気づけるのかもしれない。ひとつの課題に関心のある人は、他の多くの課題にも関心をもっているのかもしれない。」ふと、そんなことを思います。 在日朝鮮人の方の中にも、ずっと手紙をくださる方がおられます。メッセージと絵を刻んだ置物を送ってくださったこともありました。そこには、「一日も早く会えますように」という文字が刻まれていました。その方も、ご家族は今も北朝鮮におられ、会うこともできないようです。国交が正常化されて、いろんな問題が解決することを願っておられます。そう考えたら、私たちも、在日朝鮮人の方々も願いは同じなのかもしれません。拉致問題に関して、在日朝鮮人へのいじめが起こったことがありました。在日朝鮮人の方には何の罪もありません。人をいじめることは、ひきょうなことです。同じ人間として、仲良くするのは当然です。 私たちが、恵子のことをずっと思い続けているように、みなさんのご家族も、いつもみなさんのことを考えておられます。心配をかけないようにしてあげてくださいね。そして、先生方のおっしゃることもよく聞いてくださいね。先生方もみなさんのことをいつも考えておられますよ。 多くのことを学んで、いろんなことに関心をもって、だれもが「この国に生まれてよかった。」と思える国にしてください。これからの日本をよくできるのは、中学生のみなさんです。     平成25年12月 

参考資料

24

Administrator
白塗り