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鉱業・金属セクターの 事業リスクトップ 10 20162017

鉱業・金属セクターの 事業リスクトップ10 2016 2017 - EY …...2017/02/01  · 鉱 業・金属セ クターの事 リス トップ10 2016 ~2017 1 Executive summary

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鉱業・金属セクターの事業リスクトップ102016~2017

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It is never the risk that causes damage or creates opportunities — it is how we respond.

事業リスクトップ10

鉱業・金属セクターのリスクレーダー

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資源ナショナリズム

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45

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2015年のランキング

2015年から上昇 2015年と変わらず2015年から下降 2016年に初めてランクイン

201

6–2017

イノベーシ

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合弁事業

エネルギーの確保

成長への転換

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社会的操業許可

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1鉱業・金属セクターの事業リスクトップ 10 2016~ 2017

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「 低価格水準での推移が長期化した市場環境、景気をめぐる不透明感、ボラティリティのすべてが、2016~17年に鉱業・金属セクターが直面するリスクランキングに表れています」

ミゲル・ツバイク EY鉱業・金属セクター・グローバル・リーダー

鉱業・金属セクターの企業は、健全なバランスシートの維持を追求し、また長期間にわたり収益を確保できる基盤作りを進めるなか、キャッシュを重視する姿勢を強めています。

こうした理由から、キャッシュの最適化が、2016~17年には鉱業・金属セクターが直面するリスクランキングの第1位になりました。これには、市場でボラティリティが高まったことをきっかけとする需要や価格の先行き不透明感が影響しています。

キャッシュの最適化には、2015~16年は第6位に付けていた「価格・為替のボラティリティリスク」も含まれます。

現在では資金調達源や融資の確保が特に難しくなっています。銀行が債務不履行リスクの管理を模索するなか、十分な担保を差し出すことができ、高いコストを負担できる企業でなければ、貿易金融や負債による資金調達が認められない現状を反映し、資本の確保が第2位に浮上しました。

多くの鉱山会社が資産生産性をはじめとする生産性のさらなる向上に依然苦慮していることから、生産性が引き続きリスクトップ3に入りました。長期にわたる生産性の向上には、従業員の意識改革を通じた持続可能なロスの削減に加え、総合的で一貫したアプローチを定着させる必要があると私たちは考えます。

今年、トップ10圏内から姿を消したのは投資計画の実行です。新規プロジェクトへの投資が縮小していることが影響しました。

2015~16年のリスク第1位だった「成長への転換」は、他のリスクの重要度が増したため第6位に順位を下げました。コモディティ価格が上昇に転じるタイミングは先になると予想されるため、成長への転換に対する切迫感は後退しました。とはいえ、鉱業・金属セクターの企業の中でも、「生産性が高い」「マネジメントが優れている」「費用対効果が高い」といった特徴を持つ一貫したバリューチェーンの確立に、組織の意識改革によって取り組んでいる企業でなければ、次の拡大局面が訪れたときに成長を実現できないと考えられます。

トップ10リスク

2016~17年

9年間の推移

2008年(スーパーサイクルのピーク)01 キャッシュの最適化 01 人材不足02 資本の確保 02 業界再編03 生産性 03 インフラの整備状況04 社会的操業許可 04 社会的操業許可05 透明性 05 気候変動の概念06 成長への転換 06 コストの高騰07 エネルギーの確保 07 開発パイプラインの縮小08 合弁事業 08 資源ナショナリズム09 サイバーセキュリティ 09 エネルギーの確保10 イノベーション 10 規制の強化

EY鉱業・金属セクター・グローバル・リーダーのミゲル・ツバイクが、主要リスクランキングを解説します。

動画解説

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鉱業・金属セクターの事業リスクトップ 10 2016~ 20172

キャッシュの最適化

10

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78

9

1

イノベーシ

ョン

サイバーセキュ

リティ

合弁事業

エネルギーの確保

成長への転換

透明性

社会的操業許可

生産性

資本の確保

キャッシュの

最適化

現在の市場のボラティリティを考慮すると、キャッシュ創出・維持は今後も中期的な重要課題になると考えられます。

鍵となる考察

(初登場)

鉱業・金属セクターの企業が将来への備えを進めるなか、市場のボラティリティの現状を反映した需要や価格の先行き不透明感が、目の前に立ちはだかっています。長期的な収益確保のために、バランスシート上の流動性確保と営業キャッシュフロー拡大計画の実行を模索しており、キャッシュが再び絶対的な存在になっています。

た。この分析を通して、多くの鉱山会社が、キャッシュフローの改善、コスト削減、そして株主への還元向上を実現する手段として、運転資本に積極的に着目していないことが明らかになりました。トップダウン型のアプローチにボトムアップ型の変革マネジメントを組み合わせることで、これまでに数百億米ドルにも上るキャッシュフローが捻出されています。鉱業・金属セクターでは、運転資本の合算が2,000億米ドル以上に上ることを踏まえると、キャッシュを捻出できる余地はまだまだ残されています。

• 資本効率の改善:現有資産から今以上の価値を引き出すことができれば、資産管理能力を改善できる可能性があります。資産管理能力の改善は、予算に制約のある環境で、生産性を高めリスクを管理するのに役立ちます。改善の余地があると考えられる主な領域としては、1)スケジュールを重視した保守管理を行うという方針から設備の総合効率(OEE)に関する適切な指標を用いた「状態に基づく保守管理」へ移行する、2)現在の生産・営業を維持するのに必要な資本増強に優先順位を付ける、3)適切な資本配分や有効なリスクコントロールを円滑にするトップダウン型アプローチを取る ̶ といった手段が考えられます。

私たちの見解では、鉱業・金属セクターの企業が実効性のある流動性管理を集中的に行う必要がある重要な領域が三つあります。

• 価値を損なうことのない持続可能なコスト削減:鉱業業界が好況だったときには、その上昇率が200%に上るなど、著しいコストの上昇がありました。価格が下がり始めると同時に、鉱山会社は人員削減やプロジェクトの延期など、従来型の手段によってコスト削減や利益率の維持を図りました。しかし、低水準での価格推移が長期化する環境では、もっと長期的視点に立った持続可能な手段でコスト管理を行う必要があります。削減すべきコストとそれに要する時間、回収期間、そしてコスト削減の持続期間を把握することが鍵を握ります。利益率を維持し、現在と将来のコスト上昇による影響を避けるためには、今こそ行動を起こす必要があります。鉱業・金属セクターの企業では、イノベーティブなコスト削減策を講じている企業もすでにあります。例えば、出張の必要性の検討をはじめとするあらゆる支出の見直しや、標準部品の国外調達の検討、より有利な価格交渉を目的としたサプライヤーの絞り込みなどが挙げられます。

• 運転資本への着目:私たちは、世界各国・地域の大手鉱山会社80社による運転資本の活用状況を分析したレポート “Making working capital work for you:unlocking cash in the mining sector”を発行しまし

01動画解説

EY鉱業・金属セクター・グローバル・トランザクション・リーダーのリー・ダウンハムが、鉱業・金属セクターにおけるキャッシュの最適化と、考慮すべき重要なポイントを解説します。

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3鉱業・金属セクターの事業リスクトップ 10 2016~ 2017

02資本の確保

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78

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Capital access2

イノベーシ

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サイバーセキュ

リティ

合弁事業

エネルギーの確保

成長への転換

透明性

社会的操業許可

生産性

資本の確保

キャッシュの

最適化

資本へのアクセスが限られているため、企業は代替的な資金調達源の模索やポートフォリオの見直しを検討しています。

鍵となる考察

(2015年は第3位)

鉱業・金属セクターの課題に、資本調達があることに変わりはありません。2015年、資本調達額は前年と比べておよそ10%減少しました。また、同セクターに対する貸付けが急激に減少しただけでなく、そのほとんどが、新規プロジェクトではなく既存の融資の借替えに使われました。

ここ1年にわたって、債務不履行リスクが高まるなか、鉱業・金属セクターの企業の中でも、十分な担保を差し出すことができ、高いコストを負担できる企業でなければ、銀行から貿易金融や長期資金の融資を受けることができません。クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッドと利回りは2016年1月にいずれもピークとなり、それ以降は融資の確保が難しくなっています。

厳しい市況を背景に、これまでとは異なる資金調達戦略がいくつか実行されています。2015

コモディティ市況が改善しない限り、2016年も資本コストは高い状態が続くと予想されます。信用格付けは、ネガティブウォッチが続くか引き下げ傾向にあり、銀行は鉱業・金属セクターへの融資に対して慎重な姿勢を崩していません。資金繰り難に駆り立てられた企業が増資や株主割当発行に動き、株式の希薄化が生じるリスクがあることから、オーストラリア、カナダ、英国の各株式市場は低迷が続くとみられます。

プライベート・エクイティ・ファンドや資本が充実している鉱山会社は、鉱業・金属セクターにあるオポチュニティを模索し続けています。これらの企業らは、慎重な選別を行った上で資本を振り向けると考えられ、低リスク、低コストの事業の中でも、採掘物をエンドユーザー向け市場で販売しやすい事業に対象を絞るとみられます。求められる最低利益率は各企業のリスク選好度次第ですが、関心はおそらく、長期操業できる資産や、戦略的に重要で希少な産業用鉱物に集まると考えられます。

年、大規模なストリーミングファイナンスの実施が11件に上り、調達額は2年前の22億米ドルから42億米ドルに拡大しました1。2016年上期、シルバー・ウィートン社が貴金属に関する9億4,000万米ドル相当のストリーミングファイナンスを発表したほか、フランコ・ネバダ社も、グレンコア社がペルーに保有するAntapaccay鉱山で採れる銀と金について5億米ドルのストリームファイナンスを締結しました。また、ロイヤルティー契約や、オフテイク(長期引取)契約、フォワードセール(先渡売り)、さらには在庫や売掛金を担保とした資金調達(アセットファイナンス)も多数利用されています。

また、事業ポートフォリオの見直しを行った結果、設備投資の削減や変化に即応できる経営体制を目指して非中核事業を売却したり、合弁事業の共同支配者へ少数持分の売却を申し出たりすることもあります。このように資金繰りの余裕を作ることで、ボラティリティへの対処や将来の見通しについて、銀行などを説得することが可能になります。

出典:Thomson ONE、EY分析

400350300250200150100

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合計件数負債エクイティ

調達額(単位:

億米ドル)

10件数

資本調達――調達額と件数(2011年から2016年第2四半期まで)

1: “The dark side of metal streaming deals:strapped mining companies trade future value for cash”(Financial Post、2015年12月21日)

動画解説

EY鉱業・金属セクター・グローバル・トランザクション・リーダーのリー・ダウンハムが、鉱業・金属セクターにおける資本の確保と、考慮すべき重要なポイントを解説します。

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鉱業・金属セクターの事業リスクトップ 10 2016~ 20174

生産性

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Productivity

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イノベーシ

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サイバーセキュ

リティ

合弁事業

エネルギーの確保

成長への転換

透明性

社会的操業許可

生産性

資本の確保

キャッシュの

最適化

鉱業セクターにおいては、生産性が引き続きオペレーション上の大きな課題になっており、多くの企業が生産性の向上にいまだに苦慮しています。

鍵となる考察

(2015年は第2位)

EYのレポート “Productivity in mining:now comes the hard part”では、好況時における「コストを度外視した規模拡大」の追求は成長重視の流れをもたらし、鉱山会社が規模の拡大を図らなければならなくなったことが指摘されています。規模の拡大を図った結果、経営が複雑になってサイロ型で業務を進める結果となり、連携が取れない組織になってしまいました。そうした組織にありがちな事業部間の壁を取り払うにはには、一貫したアプローチによって対応していくことが求められます。

働時間はすぐにでも最大で5%伸ばすことができるほか、多額の投資をすることなく10%から20%の収益向上を達成できるケースも散見されます。予測可能で安定したオペレーションを実現できれば、生産性、特に(システムや機器などの)操作・運用、保守関連の生産性も向上させることができます。緊急事態への対応業務に費やす時間が少なくなれば、継続的な改善努力をサポートする機会が生まれます。従って、こうした取組みは、安全性の向上、より精度の高い予算の策定、そして高度で総合的な操業計画の立案を実現します。

生産性の改革において人間が果たす重要な役割を過小評価してはいけません。生産性の向上は組織に属する全従業員の責任です。災害ゼロ活動のような損失の回避の活動にひた向きに取り組むことで、企業は見違えるほど変わります。生産性を一つ上のレベルに引き上げるには、リーダーシップを明確にすることだけでなく、企業風土の変革や人材育成への積極的な投資が不可欠です。

企業を構成する各要素の最適化は、個別に行うのではなく、企業の業務システム全体に関連付けて行う必要があります。この点について、鉱業セクターは他のセクターの事例から学ぶことが数多くあると私たちは考えています。損失を回避するため、ひた向きに取り組む意識を組織全体に植え付けるという、製造業のマインドセットを取り入れることで、生産性の大幅な向上や価値の創造が実現できるということが証明されています。例えば、P&G社は、統合的業務システムにより、ここ3年にわたり前年比12億米ドルのコスト削減を達成するという、この分野では突出した成果を挙げています2。また、バリューチェーンのデジタル化を進めるという流れもあります。よりデータ指向の業務管理システムを整備し、リアルタイムの生産報告システムも使いながら、価値創造の流れ全体を管理している企業が増えています。

システムや機器など、保有資産のオペレーションに対する信頼性向上に取り組んでいる企業は、著しい成果を挙げています。生産設備の稼

2: “How Supply Chain Transformation Saved P&G US$1.2 Billion”(GT Nexus社ウェブサイト、2016年5月17日アクセス)

長期的に持続可能な生産性向上を達成するための鍵

総合的な視点による資産の 有効活用

損失回避に 対する強い意識

企業構成員に対する支援

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1 2 3

EY鉱業・金属セクター・グローバル・アドバイザリー・リーダーのポール・ミッチェルが、鉱業セクターにおける生産性の重要性と、鉱山会社が考慮すべき重要なポイントを解説します。

動画解説

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5鉱業・金属セクターの事業リスクトップ 10 2016~ 2017

04社会的操業許可

10

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56

78

9

Social license to operate

4

イノベーシ

ョン

サイバーセキュ

リティ

合弁事業

エネルギーの確保

成長への転換

透明性

社会的操業許可

生産性

資本の確保

キャッシュの

最適化

鉱業・金属セクターの企業はサステナビリティを長期計画に取り入れ、地域社会と協力して操業を行い、社会的操業許可(social license to operate、以下「SLTO」)を保持する必要があります。

鍵となる考察

(2015年は第5位)

鉱山事故や鉱山関連の疾病、住民などからの抗議、さらには鉱山再生義務の不履行が、鉱業・金属セクターのイメージを著しく傷付け、その結果、各社のSLTOを維持することが難しくなっています。以下、最近の事例をいくつか示します。

• 2015年、死亡事故件数は、若干増加しました。そこで、次のような疑問が浮かび上がります:「コスト削減が原因で災害ゼロ活動がおろそかになっていないか?」3、「テクノロジー、仕組み、安全対策が十分整備され、有効に機能しているか?」、「企業は安全文化の向上を台無しにしようとしていないか?」

がらというケースもあります)。また、管財人の管理下に入る鉱山会社や破産する鉱山会社もあり、誰が廃坑費用と跡地の再生費用を負担するのかという疑問が浮上しています。企業がこの問題を解決できなければ、政府が介入する必要があります。オーストラリアのクイーンズランド州では2016年3月、環境浄化にかかる費用を納税者が負担しなければならない事態を防ぐために責任の連鎖法案が提出されました6。

SLTOを確実に維持するためには、サステナビリティを長期計画に取り入れ、そのKPIを生産性と報酬体系に関連付けることが重要です。成功している企業は、地域社会と協力して操業する重要性を認識し、相互価値の創造を通じて責任を果たせることを証明しています。地域社会に所有権の一部を提供したり雇用や資材の調達をその地域から行ったりすることで、地域との連携を深めることができます。

• 珪肺(けいはい)症や塵肺(じんぱい)症(黒肺塵症)などの鉱山関連の疾病が再び関心を集めています。2015年、黒肺塵症の発症が30年ぶりにオーストラリアで確認されました4。これらの病気の患者が再び増えれば、鉱山会社は、規制強化や粉塵制限の新設・強化、操業の変更、賠償責任の負担増に直面することになります。すでに、大規模な健康被害に対する民事訴訟がいくつか提起されています。例えば、2016年5月、南アフリカの高等裁判所は、鉱山で安全対策が十分でなかったことが原因で珪肺症または結核を発症した人は、鉱山会社に対して損害賠償を求める集団訴訟に参加できるとの判決を下しました5。

• 鉱山再生にかかる巨額の費用が原因で、寿命が短い炭鉱の取引成立が難しくなっています。また、取引が成立したとしても、新しい所有者は廃坑費用を免れるために生産を続ける傾向があります(中には赤字を垂れ流しな

3: “No safety, no pain”(Australasian Mine Safety Journal、2015年10月30日、2016年6月16日アクセス)4: “Black Lung disease ̶ Is the sleeping giant waking up”(Clayton Utz insights、2016年5月26日、2016年6月16日アクセス)5: “Ill mineworkers in South Africa win historic silicosis battle”(The Economist、2016年5月23日)6: “Confidence in the mining industry suffers following legislation in Queensland”(Mining Global、2016年5月16日、2016年6月16日アクセス)

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鉱業・金属セクターの事業リスクトップ 10 2016~ 20176

透明性

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Transparency

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合弁事業

エネルギーの確保

成長への転換

透明性

社会的操業許可

生産性

資本の確保

キャッシュの

最適化

資源ナショナリズムはここ1年で、多くの地域で後退した一方、透明性に関するイニシアチブが強化されています。

鍵となる考察

(2015年は第4位)

資源ナショナリズムはここ1年で、多くの地域で後退した一方、各国政府が自国のガバナンス改善を模索するのに伴い、透明性に関するイニシアチブが強化されています。

守できなければ、罰則が科され、刑事罰を受ける場合もあり得ることから、次のような対応が必要となります。

• 必要とされる開示・報告の程度と詳細度を特定し、その上で、適切な報告を行うために必要な、各政府への資金の拠出に関するデータを収集・集計する手順を定める。

• 自社の仕組みを検証し、必要な情報とデータを入手できているかを確認する。

• 信頼性の高いデータを積極的に公開していることが伝わるかを確認する。

各政府への支払いに関する報告は、かなり骨の折れることが多く、その状況は今後も変わらないでしょう。ただ、報告は、投資家の信頼改善や、利害関係者との信頼醸成には役立つ可能性があります。

リオ ティント社が2010年から “Taxes Paid”を毎年発行して納税実績を公表していることを受けて、他の大手グローバル鉱山会社も政府への支払いについて自発的に開示をするようになっています。

資源ナショナリズムではなく透明性の向上に注力すれば、その国の投資環境は改善します。投資家や国外の金融機関に、優れたガバナンスと法の支配に政府が懸命に取り組んでいるというメッセージが明確に示されるからです。透明性の向上は、鉱業・金属セクターの各企業が果たしている社会貢献の姿勢を示すのに役立ちます。地域社会へ多くの情報が公開されるようになり、そしてそれが、相応の責任を果たしていないという訴えに対する反論材料になります。

透明性向上の取組みは、採取産業透明性イニシアチブ(EITI)が作られた2003年に始まりました。その後、各国や地域独自の開示イニシアチブが米国やEU、カナダで次々作られました。これらの規定に関しては、EYのレポート “Disclosing payments to governments in an era of transparency”で詳しく解説しています。

こうしたイニシアチブは、操業地域を問わず、鉱業・金属セクターの企業すべてに影響を及ぼし、場合によっては、複数の基準遵守を余儀なくされているという企業もあります。基準が遵

資源ナショナリズムに関する最新情報資源ナショナリズムに関する最新の四半期レポートは、EYの “Mining & Metal Quarterly Briefing”をご覧ください。

05

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7鉱業・金属セクターの事業リスクトップ 10 2016~ 2017

06成長への転換

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Switch to growth

6

イノベーシ

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サイバーセキュ

リティ

合弁事業

エネルギーの確保

成長への転換

透明性

生産性

資本の確保

キャッシュの

最適化

社会的操業許可

買い手市場を活用し適切なタイミングで成長への転換を進めれば、長期的な株主価値を押し上げることができます。

鍵となる考察

(2015年は第1位)

鉱業・金属セクターの企業は、近年まん延している、景気循環に影響された短期的な目先の利益の追求をやめる必要があります。現在はコモディティ価格が長期にわたり低位で推移する様相を呈していますが、競争で一歩先を行くには、未来の成長に向けて備えておくことが不可欠です。オーガニックな成長か買収などを利用するかを問わず、成長機会を明確に把握しておくことが大切です。そのためには、市場(資本市場、世界の需給、地政学的動向、顧客の行動)と競争状況を常に把握しておく必要があります。また、場合によっては、既存の事業ポートフォリオを縮小して、将来の成長機会に利用できる資金と貴重な資源を確保しておく必要もあります。

流動性の管理は、資産ポートフォリオとのバランスを取り、資産ポートフォリオがサイクル全体を通じて株主に魅力的な利益を還元できるようにする必要があります。各社は、現金支出の削減と財務上の柔軟性向上に注力していますが、ボラティリティが高い状態が続いている今は、市況の回復に備えてポートフォリオを再構築する好機であると私たちは捉えています。

短期的な資金繰りに目を配りながら成長機会を特定するという作業は、経営陣が考慮すべき重要な検討事項です。株主価値の創造を検討するときは、これが特に重要になります。デジタル戦略や、適切なスキルと人材の育成も、そうした作業の一つであり、将来必要となる多様性と人材について考える絶好の機会となります。それにより、市況が本格的に回復した後では取得が難しくなるであろう資産を、タイミングを見計らって取得できるようになるでしょう。また、余計な買収プレミアムを支払って企業価値が損なわれる事態を避けたり、競争に勝つために質の高い資産を機会に応じ市場に先駆けて取得したりする上でも役立つと考えられます。

2016年上期、時宜を得た権益・資産買収が何件かありました。その狙いは、特定の金属を事業ポートフォリオに組み入れるためや、販売手数料の改善、操業上の相乗効果の実現、既存事業の規模の拡大など多岐にわたります。例えば、バリック・ゴールド社はボールドマウンテン鉱山とラウンドマウンテン鉱山を6億1,000万米ドルでキンロス・ゴールド社に売却し、ポートフォリオとコスト構造の改善を図りました7。可採年数の改善と戦略上の目標達成だけでなく、これらの取引にとって、短期的に株主価値を増やすことで、従来のコスト削減の取組みを補完する役割も果たします。現在は、財務状況が健全な中堅企業が質の高い資産を購入する絶好の時期かもしれません。というのも、大手鉱山会社が、ポートフォリオの見直しを進めており、中核事業に合わない資産を売却しているからです。チャイナ・モリブデン社の場合、現在の市況を利用し、41億5,000万米ドルを投じてアングロ・アメリカン社とフリーポート・マクモラン社から2016年上期最大規模の権益・資産買収を実行しました。これを受けて、チャイナ・モリブデン社が買収によって大手グローバル鉱山会社の一角になるとの憶測が流れています8。

7: “Kinross acquires strategic Nevada assets”(Kinross Gold Corporation社プレスリリース、2015年11月12日)8: “China Molybdenum still in market for ‘tier 1’ assets”(SNL、2016年6月24日)

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鉱業・金属セクターの事業リスクトップ 10 2016~ 20178

エネルギーの確保

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9 Access to energy

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イノベーシ

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サイバーセキュ

リティ

合弁事業

エネルギーの確保

成長への転換

透明性

社会的操業許可

生産性

資本の確保

キャッシュの

最適化

エネルギーの確保は、もはやエネルギー不足だけでなく、有形・無形の長期的な利益を実現するために最適なエネルギー源を特定して優先順位を付け採用する能力の問題になっています。

鍵となる考察

(2015年は第8位)

エネルギー消費は、鉱山の操業予算の15%から40%を占めるため、当然そのコストは適切なエネルギー源の選択においては重要な検討事項の一つです。しかし、コストは極めて大きな戦略的な意思決定にとって一要素にすぎません。他にも以下の検討事項があります。

• 鉱山寿命を通じたエネルギーの入手可能性とコストに関する不確実性

• カウンターパーティーリスク

• 操業上の選択肢

• エネルギーの選択による社会、財務、評判への影響

今日の鉱業・金属セクターの企業は複数のエネルギー源を組み合わせてエネルギーを調達しており、そのほとんどが化石燃料、水力、再生可能エネルギーの組合わせです。その組み合わせは、場所、エネルギー供給者、資本の利用可能性によって異なります。風力エネルギーや太陽光エネルギーを中心に再生可能エネルギーの獲得をめぐる競争が急速に激化していることを踏まえ、大量にエネルギーを消費する企業

コスト削減に加え、再生可能エネルギーの採用やエネルギー消費量の削減といった意志決定は、炭素排出量を削減するという国内や地域の政策や法律の影響も受けています。リオ ティント社やアングロ・アメリカン社など複数の鉱山会社が、地球の温度上昇を2℃未満に抑えるという協定を支持し、気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)でのパリ行動誓約に署名しています。リオ ティント社は、エネルギーソリューションを改善する技術開発にも注力しています。例えば、エネルギー効率の優れたAPテクノロジーを利用して同社が所有するキティマット・アルミニウム製錬所を近代化した結果、同製錬所のエネルギー強度は30%向上しています10。

消費者が妥当な長期電力購入契約を積極的に結ぶようになれば、第三者による再生可能エネルギー施設の開発、建設、資金調達が可能になり、結果的に消費者に有利な電力の調達が可能になります。コモディティ価格とエネルギー価格は営業利益に大きく影響するため、鉱業・金属セクターでは再生可能エネルギーとよりスマートなエネルギーソリューションを今まで以上に重視するという動きが今後も続く見通しです。

は、必要なエネルギーの調達・生産の在り方の根本的な見直しを進めています。再生可能エネルギーであれば固定価格で長期的に電力を調達できるため、原油・ガス価格や電力の輸入価格といった、将来の燃料価格の変動リスクを軽減することができます。再生可能エネルギーはまた、温室効果ガス税や炭素税など汚染物質に関連する直接・間接的な費用の負担も減らします。その他にも国内のインセンティブ制度の利用、税務上償却可能なキャピタルアローワンス、または送電費用の削減を通じて財務に直接的な利益をもたらします。南アフリカやチリなどの市場の再生可能エネルギー施設は、現在国内の電力会社が提供するどの電力よりも安い価格で発電をしており、現地でのディーゼル発電と比較してもその価格は著しく低い水準です。

現地での再生可能エネルギーの生産・効率化技術やマイクログリッドが奏功し、鉱業・金属セクターの企業は大幅な操業コストの削減を実現しています。ハイブリッド型太陽光発電と蓄電機能を組み合わせた複合システムを利用することで 9、燃料を輸送して現場で発電するオフグリッドの生産拠点で発生しているコストを半減させることができます。そのうえ、ディーゼル発電によって生み出される温室効果ガスや汚染物質を削減することから、財務面、社会面、レピュテーション面でもメリットがあるはずです。

9: “Energy storage, PV-hybrid systems offer huge potential for off-grid mining sector”(pv-magazine(2015年3月18日、2016年6月16日アクセス)10: “Balancing energy needs and environmental impacts”(リオ ティント社のウェブサイト、2016年7月15日アクセス)

07

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9鉱業・金属セクターの事業リスクトップ 10 2016~ 2017

08合弁事業

10

12

34

56

78

9

Joint ventures

8

イノベーシ

ョン

サイバーセキュ

リティ

合弁事業

エネルギーの確保

成長への転換

透明性

社会的操業許可

生産性

資本の確保

キャッシュの

最適化

合弁事業には大きな利点がありますが、広範囲に影響が及びかねない操業上の意思決定に関与できないノンオペレーター会社にとっては、非常に大きなリスク要因になります。

鍵となる考察

(初登場)

企業が合弁事業に参加する目的は、資本の集約やリスク軽減、資源・技術の確保、サプライチェーンの最適化、市場シェアの獲得、規制対応、政治的対応などさまざまです。

BHPビリトン社のアンドリュー・マッケンジーCEOは、同グループ自らが操業していない合弁事業におけるガバナンスを見直すべきか検討していると話し、合弁事業の徹底的な検証を行いました。マッケンジーCEOによると、BHPビリトンは「将来的には、自社操業していない鉱山事業については石油型モデルの方が適当かどうか」を検討する模様です11。

合弁事業の共同支配者であるノンオペレーター会社は、自社の投資を守るためにどのようなリスク軽減戦略を講じるべきかを検討する必要があります。ノンオペレーター会社による監査の実施や、ノンオペレーター会社の経営陣を送り込んで透明性を向上させるということが考えられます。積極的な投資家が公式に抗議すれば、オペレーター会社による自己満足的な経営から脱却し、操業する上で全ステークホルダーの利益をもっと考慮した意思決定が求められるようになると考えられます。

合弁事業は、順調に運営されていれば、ステークホルダーに多大な価値をもたらし、企業のポートフォリオの価値や資源・能力の確保を大きく改善できるという可能性があります。しかし、合弁関係がうまくいかないと極めて大きな混乱が生じることがあり、とりわけ、プロジェクトの日程や重要な意思決定事項に大きな影響が生じます。それは、中核事業への悪影響だけではありません。合弁事業の失敗が多大なコストと時間を要する仲裁や訴訟に発展すれば、合弁事業や親会社にとって、混乱した状況は避けられないでしょう。

ノンオペレーター会社は、採掘現場での日々の業務遂行に対して発言する機会が極めて限られているため、特に操業リスクにさらされると考えられます。オペレーター会社による意思決定が、ノンオペレーター会社が得られる価値を損なう場合もあれば、場合によっては、事故など操業上の問題が生じたときは厳しい処罰や大きな責任を負わされる事態に発展する可能性もあります。ここ数年で操業リスクが複雑化、不安定化しており、オペレーター会社もノンオペレーター会社もリスクを合理的に評価できないままプロジェクトを開始してしまうことがほとんどです。

11: “BHP Billiton puts joint ventures under review after dam breach”(Financial Times、2015年11月16日)

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鉱業・金属セクターの事業リスクトップ 10 2016~ 201710

09サイバーセキュリティ

10

12

34

56

78

9

Cybersecurity

9

イノベーシ

ョン

サイバーセキュ

リティ

合弁事業

エネルギーの確保

成長への転換

透明性

社会的操業許可

生産性

資本の確保

キャッシュの

最適化

ITと運用テクノロジー(operational technology、以下「OT」)プラットフォームを脅かすサイバーリスクを把握することは、鉱業・金属セクターの企業が直面している大きな課題の一つです。

鍵となる考察

(2015年は第9位)

鉱業・金属セクターの企業は ITセキュリティの強化に取り組み始めていますが、サイバーリスクへの対応にまだぜい弱な点が残っており、リスクを順調に克服しているものではないと多くが認めています。EYが毎年実施しているグローバル・インフォメーション・セキュリティ調査でも、鉱業・金属セクターの企業のうち約21%が、ITセキュリティ戦略をいまだに構築していないことが分かっています12。つまり、鉱業・金属セクターの多くが、基本的なサイバーセキュリティの構築において後れをとっているのです。

サイバーセキュリティだけではなくサイバーリスクにも焦点を当てることが不可欠です。サイバーリスクは、経済的リスクだけではなく、本質的には評判リスクでもあり知的財産リスクでもあります。企業は、サイバー攻撃を受けにくい仕組み作り、悪意ある行動の検知、脅威への対応、セキュリティ意識を高めるための研修に力を注ぐ必要があります。多くの企業が、サイバーリスクはビジネスにとって重大であると認識しており、それが各社のリスクレジスターに反映されています。先進的な企業は、OTセキュリティには、OT技術力の確立と需要の高い貴重なスペシャリストに多額の投資をする必要があることに気付きつつあります。残念ながら、そうした企業以外は、コモディティ価格の低迷という理由から、サイバー関連の取組みに振り向けられる予算が限られています。予算がなければ、資金や人材といった経営資源を十分割り当てて、サイバーリスクを適切に管理することはできません。

ITとOTに関するプラットフォーム、プロトコル、手法はこれまで分離されてきましたが、これらの融合が、鉱業・金属セクターの企業にとって最大の脅威を生み出すと私たちは考えています。インターネットプロトコルを活用するOTインフラについては、IT環境並みのサイバーリスクに対するコントロール、各種手続き、仕組み、ガバナンスをOT環境に適用する必要があります。しかし、OTセキュリティがCEOの検討事項として浮上してきたのはつい最近のことであり、生産、安全、評判に影響を及ぼしかねない、機密データと運用上の整合性が今もなお大きな弱点になっています。ITとOTの両環境に存在するサイバーリスクや、外部のサプライヤーが構成するネットワーク全体またはバリューチェーン全体に存在するサイバーリスクの基本的な理解は、鉱業・金属セクターの企業にとって生き残りにかかわる問題です。

12: “Global Information Security Survey” (EY、2015年)

サイバーセキュリティ機能

サイバーリスクについてリアルタイムの情報がない。

63%

情報セキュリティ戦略を構築していない。

21%

セキュリティ・オペレーション・センター(SOC)がない。

66%

消えつつある(ネットワークなどの)境界

高度な攻撃は検知できそうにない。39%

ぜい弱な点を特定する能力が備わっていない。

39%

脅威を解析する仕組みが整っていない。

55%

サイバーリスクの脅威拡大

機動性の欠如

予算不足

人材不足

サイバー犯罪者の攻撃力の拡大

大する内部のプレッ

シャ

拡大する外的脅威

出典: “Global Information Security Survey, 2015”における鉱業・金属セクターの企業調査(EY)

EYのアジア太平洋地域サイバーセキュリティ担当マネージング・パートナーのポール・オルークが、順調な事業運営にとってサイバーセキュリティが重要なリスクであることを理解すべき理由を解説します。

動画解説

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11鉱業・金属セクターの事業リスクトップ 10 2016~ 2017

10イノベーション

10

12

34

56

78

910

イノベーシ

ョン

サイバーセキュ

リティ

合弁事業

エネルギーの確保

成長への転換

透明性

社会的操業許可

生産性

資本の確保

キャッシュの

最適化

イノベーションは生産性向上を実現する重要な手段ですが、現在の市況が影響し、企業はイノベーションへの投資を控えています。

鍵となる考察

(2015年は第10位)

コモディティ市況の低迷と、それに伴う投資の縮小にもかかわらず、イノベーションは主要リスクの一つであることに変わりはありません。というのも、イノベーションは生産性向上を実現する重要な手段であり、生産性を向上できれば、市況が回復したときに長期にわたって競争優位に立てるからです。

• 連携が鍵を握る:将来の成長に備えるには、今こそ、同業他社や他のセクター、サービス会社、学術機関とイノベーションのための連携を図るべきだと私たちは考えています。私たちがインタビューした企業の多くが、連携を図る意思はあるが、イノベーションについて現在は従業員やサービスプロバイダーまかせになっていると述べています。それは連携に必要な文化、多様性、あるいは体制が整備されているかには関係ありません。

• 投資リターンに対する非現実的な期待:特に株主価値への圧力が影響して多くの企業がイノベーション投資の回収期間を短く見積もっており、70%が2年未満で回収すべきであると答えています。私たちの考えでは、イノベーションは短期的、長期的、両方の展望を必要とします。短期的な利益改善を実現するための原動力ではなく、長期的なリターンを改善するけん引役でなければいけません。

イノベーションを成功させるためには、1)戦略に沿ったイノベーションプログラムを策定する、2)明確な変革マネジメントプログラムを定める、3)適切な体制、プロセス、仕組みを整備する、4)何よりも、テクノロジーだけに焦点を当てない。そして最終的には、業界を根底から変える変化はイノベーション以外では実現できないため、チームに失敗を繰り返すことを容認する必要があります。

EYは、直近の半年から1年にわたりオーストラリア、カナダ、南アフリカでイノベーションセミナーをいくつか開催し、イノベーションに関するセクター別調査を実施しました。その中で、いくつか共通のテーマが浮き彫りになったので、以下にその例をまとめました。

• 予算不足:これまでは鉱業セクターがイノベーションに投じる資金は、他のセクターを著しく下回ってきました。多くがイノベーション戦略を構築しているにもかかわらず、コモディティ価格の下落が響き、イノベーション向けに別の予算がある企業はほとんどなく、多くのイノベーションプログラムが保留になっています。

• 多くの阻害要因:イノベーションへの投資を阻む要因として今回の調査で上位にランクされたのは、技術的な不確実性、スキル不足、イノベーション文化の欠落の順で、予算の不足が第4位でした。

• 変革につながらないイノベーション:鉱業セクターが現在進めているイノベーションは、変革をもたらすというより、少しでも速いまたは効率的な業務遂行に焦点が当てられています。これでは、短期的な利益は得られるかもしれませんが、鉱業セクターがいずれ成長サイクルを迎えたときに必要になる思い切った変化は望めません。

EY鉱業・金属セクター・グローバル・アドバイザリー・リーダーのポール・ミッチェルが、イノベーションが2016年の主な事業リスクである理由と、鉱業・金属セクターの企業にとってそれが何を意味するかを解説します。

動画解説

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1

2

3開発パイプラインの縮小

価格・為替

のボラティリティ

鉛・亜鉛

成長への転換

コモディティ市場のトップリスク

資本の維持1

2

3 生産性の向上

エネルギーの確保

アルミニウム

代替資源の脅威

1

2

3 キャッシュの最適化

社会的操業

許可(鉱山の再生)

石炭

生産性

生産性)1

2

3価格・為替

のボラティリティ

資本配分

鉄鉱石

(特に資産の

1

2

3 投資計画の実行

生産性の向上

カリウム

価格・為替の

ボラティリティ 1

2

3 供給不足

生産性の向上

価格・為替の

ボラティリティ

鉱業・金属セクターの事業リスクトップ 10 2016~ 201712

注:価格および為替のボラティリティには、キャッシュの最適化と資本の確保という事業リスクの上位二つが含まれます。

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価格および為替の

ボラティリティ1

2

3 エネルギー・水の確保

資源ナショナリズム

価格・為替の

ボラティリティ1

2

3 成長への転換

生産性の向上

1

2

3 資源ナショナリズム

投資計画の実行

ニッケル

価格・為替の

ボラティリティ 1

2

3 生産性の向上

社会的操業許可

PGM(白金族)

価格・為替の

ボラティリティ

1

2

3価格・為替

のボラティリティ

代替資源の脅威

鉄鋼

過剰生産能力

1

2

3価格・為替

のボラティリティ

規制の強化

ウラン

代替資源の脅威

13鉱業・金属セクターの事業リスクトップ 10 2016~ 2017

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EYについて

EYは、アシュアランス、税務、トランザクションおよびアドバイザリーなどの分野における世界的なリーダーです。私たちの深い洞察と高品質なサービスは、世界中の資本市場や経済活動に信頼をもたらします。私たちはさまざまなステークホルダーの期待に応えるチームを率いるリーダーを生み出していきます。そうすることで、構成員、クライアント、そして地域社会のために、より良い社会の構築に貢献します。

EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバル・ネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。詳しくは、ey.com をご覧ください。

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EY Japanは、EYの日本におけるメンバーファームの総称です。新日本有限責任監査法人、EY税理士法人、EYトランザクション・アドバイザリー・サービス株式会社、EYアドバイザリー株式会社などの13法人から構成されており、各メンバーファームは法的に独立した法人です。詳しくはeyjapan.jpをご覧ください。

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EYのグローバル鉱業・金属セクターは、クライアントのさまざまなビジネスニーズに応えるべく人財と知識を結集、アシュアランス、税務、トランザクション、アドバイザリーの各サービスに関する深い知識と業界における豊富な実績を持つプロフェッショナルからなるグローバルネットワークと連携しています。市場動向とその影響を明らかにし、業界に関するさまざまな課題に対する新たな見解を提供することによって、クライアントの目標達成と競争優位性の確立を強力に支援します。

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