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東京国際フォーラム
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1. 施設概要
(1). 概要 東京国際フォーラムは、4 つのホール棟と会議室を備えたガラス棟から構成されるコ
ンベンションセンターである。客席型や平土間式の大小 7 つのホールをはじめ、展示ス
ペース、ギャラリー、33 の会議室などを有している。施設内には、このほか美術館や店
舗、レストランもある。
(2). 諸元 施設の諸元は以下のとおりである。
表 1 施設諸元
施 設 名 称 東京国際フォーラム
所 在 地 東京都千代田区丸ノ内 3-5-1
施 設 用 途 会館・ホール
施 設 構 成 ガラス棟、ホール棟(A 棟~D 棟)
利用建物数 2 棟
敷 地 面 積 27,375 m2
延 床 面 積 145,076 m2
構 造 地上 11 階、地下 3 階
竣 工 1996 年 5 月(開館:1997 年 1 月 10 日)
施 設 所 有 東京都
運 営 株式会社 東京国際フォーラム
利 用 設 備 維 持 管 理
外部委託
写真提供:株式会社 東京国際フォーラム
図 1 施設外観
個別循環方式
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2. 雨水・再生水利用状況
(1). 雨水・再生水導入の経緯 施設建設に際しては、施設規模が大きく利用水量が多いため、水資源の有効活用の観
点からまず雨水利用が検討され、さらに、施設内で排出される厨房排水等も雨水・再生
水として利用し、より一層の有効利用を図ることとした。 なお、東京国際フォーラムは、水資源の有効利用だけでなく、エネルギー利用などの
側面でも様々な環境配慮が行われている。
(2). 雨水・再生水利用設備の諸元 雨水・再生水利用設備の諸元は下記のとおりである。
表 2 雨水・再生水利用設備諸元
雨水・再生水利用の方式 個別循環方式(雨水併用)
利用開始時期 1996 年 5 月
原水種類 厨房排水、厨房排水以外の雑排水、冷却塔ブロー水、雨水
処理方式 凝集加圧浮上処理(厨房排水のみ)、活性汚泥処理、濾過処
理、消毒処理
処理能力 厨房排水・雑排水:672 m3 /日 冷却塔ブロー水:雨水の処理系統で処理(雨水の項参照)
自己処理
利用水量 厨房排水・雑排水:96,838 m3 /年 冷却塔ブロー水: 5,369 m3 /年
供給元 -
受水槽容量 -
再生水
供給受
利用水量 -
処理方式 濾過処理、消毒処理
処理能力 917 m3 /日
集水面積 26,400 m2
雨水貯留槽容量 4,950 m3
雨水
利用水量 43,586 m3 /年
補給水量(種類) 14,226 m3 /年 (上水道)
雑用系用途利用水量(合計) 175,102 m3 /年
雨水・再生水貯留槽容量 512 m3
利用用途 水洗トイレ洗浄用水、冷凍冷蔵庫用冷却水、植栽灌水、屋
上融雪水
稼働日数 365 日
上水系用途使用水量 70,230 m3 /年 ※冷却塔ブロー水は雨水の処理系統で処理されている。
(2007 年 2 月時点、水量は 2005 年度実績値)
東京国際フォーラム
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(3). 雨水・再生水の利用フロー 雨水・再生水の利用に関するフローは下図のとおりである。また、下図中の「写真①」
等は、次ページ以降に示した写真の番号に対応する。
(2007 年 2 月時点、水量は 2005 年度実績値)
図 2 雨水・再生水配水系統図および使用水量 処理系統は、「厨房排水・雑排水処理系」と「雨水・冷却塔ブロー水処理系」の 2 つに
大別できる。 ●厨房排水・雑排水処理系
厨房排水は、凝縮加圧浮上処理(油分除去等)を行った後に雑排水と混合され、活性
汚泥処理、濾過処理を経て、消毒処理の後に雨水・再生水槽へ入る。原水貯留槽の容量
が比較的大きいため、雨水を優先利用している間も、厨房排水や雑排水を貯留しておく
ことができ、利用されずに排水される厨房排水や雑排水はほとんどない。なお、厨房排
水や雑排水を下水道に排出する場合は、凝縮加圧浮上処理、薬液処理を行っている。
広域再生水供給施設 地区再生水供給施設
雨水・再生水槽(14槽)
(容量: 512 m3 )
雨水・再生水利用
(用途:水洗トイレ洗浄用水、冷凍冷蔵庫用冷却水、 植栽灌水、屋上融雪水)
原水 (種類:厨房排水) (種類:雑排水)
(種類:冷却塔ブロー水)
補給水
(種類: 上水道 )
雨水貯留槽(4槽)
(容量:4,950m3 )
余剰排水
自己所有施設
水量: - m3/年
水量: - m3/年
雨水
(集水面積:26,400m2 )
水量:14,226m3/年
水量:175,102m3/年
水量:96,838m3/年 水量:43,586m
3/年
余剰排水
加圧浮上処理
活性汚泥処理
濾過処理 消毒処理 濾過処理
消毒処理
写真①
写真②
写真③~⑧
写真⑩写真⑨
写真⑪
写真⑫~⑯
個別循環方式
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●雨水・冷却塔ブロー水処理系
雨水は冷却塔ブロー水と混合後に濾過処理され、消毒処理の後に雨水・再生水槽(下
図中の「再利用水槽」)へ入る。雨水貯留槽のうち 1 槽は、雨水流出抑制施設として位置
づけられていることから、常に空けておく必要があり、このため雨水・再生水原水とし
て、厨房排水や雑排水よりも雨水を優先的に利用している。この運用により、貯留した
雨水はそのほとんどが雨水・再生水として利用されており、利用されずに排水される雨
水はほとんどない。
消 毒
(塔屋) (3 系統)
消 毒
資料提供:株式会社 東京国際フォーラム
図 3 雨水・再生水配水系統図
東京国際フォーラム
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資料提供:株式会社 東京国際フォーラム
図 4 雨水・再生水処理系統図
個別循環方式
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写真 ① 雨水貯留・排水分岐点
分岐後、右側の配管は雨水貯留槽へ、左側
の配管は公共下水道につながる。配管の上に
見える緑色の制御盤で弁を制御している。
写真 ② 急速濾過機(砂濾過)
雨水、冷却塔ブロー水の主な処理設備の 1つ。自動的に逆洗するシステムを採用してい
る。
写真 ③ 加圧浮上槽
厨房排水中に含まれる油分等の除去を行う
装置。凝集剤を利用し、発生した汚泥は写真
中の矢印方向へ排出される。
写真 ④ 凝集剤留槽槽
加圧浮上処理に関する各種凝集剤がそれぞ
れ個別のタンクで貯留されている。
写真 ⑤ 凝集加圧浮上処理後の処理水槽
この時点で薬剤処理が行われ、公共下水道
に排出できる水質が確保される。
写真 ⑥ 限外濾過機
厨房排水、雑排水の主な処理設備の 1 つ。
原水を加圧し、膜を通過させ濾過する。
東京国際フォーラム
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写真 ⑦ 循環水槽
処理後の水質をセンサー等でチェックする。
問題の発生を事前に検知できる。
写真 ⑧ 循環水槽内の水
無色透明、無臭の再生水ができている。
写真 ⑨ 雨水・再生水槽
雨水、冷却塔ブロー水、厨房排水、雑排水
がそれぞれの工程で処理され、消毒処理後こ
こに一括して貯留される。
写真 ⑩ 上水貯留槽からの補給
上水貯留槽の一つには災害時用に上水が蓄
えられ、そこから上水道を階下の雨水・再生
水槽へ補給できるようになっている。
写真 ⑪ 再生水加圧給水ポンプ
雨水・再生水槽から各利用施設に給水する
ための4基の加圧ポンプ(調査時1基整備中)。
写真 ⑫ 水洗トイレ洗浄用水への利用 見た目には上水道と見分けがつかないほど
きれいな水である。
個別循環方式
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写真 ⑬ 施設内飲食店製氷機
製氷機の稼動状況を検知し、必要な時にの
み冷却水を供給するよう、制御弁を設置。
写真 ⑭ 施設内飲食店冷蔵庫
この冷蔵庫への冷却水供給冷却水の配管は
天井内にある。
写真 ⑮ 植栽灌水
敷地内の植栽の根元にそれぞれパイプが張
り巡らされており、パイプに空けられた穴か
らじわじわと処理水が滴下されるようになっ
ている。
写真 ⑯ ガラス棟天井
天井のガラスが雪の重みで破損しないよう、
降雪時には、屋上に再生水を融雪水として流
す。融雪水はその後、中央の柱(2 本)を通
って回収され、雨水処理設備へ送られ、再処
理される。
東京国際フォーラム
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3. 雨水・再生水利用施設の特徴や運用上の工夫など ●雨水抑制槽からも雨水が利用できるよう工夫
4 槽ある雨水貯留槽の 1 つ「雨水抑制槽」は、流出抑制機能を担保する目的を持ち、
非常に容量が大きく、施設の雨水貯留容量全体の大半を占める。通常、雨水抑制槽は基
本的に空の状態になるように運用する必要がある。従来は、この雨水抑制槽からの雨水
利用は行われておらず、専ら一時的な雨水の貯留と下水道への排水による運用が行われ
ていたが、この雨水抑制槽に貯留された雨水を優先的に雨水・再生水として利用できる
よう施設を改造した。これにより、利用されずに公共下水道へ排水される雨水の量を大
幅に減らすことに成功した。 ●災害時用に蓄えている上水も雨水・再生水の補給水として無駄なく活用
近年、節水対策が功を奏し、雑用系用途使用水量が節減されたことで上水補給量も節
減することができた。これにより、補給水を含む施設全体の上水使用量が大幅に節減で
きた。このため、2 槽ある上水貯留槽の 1 つを災害時用の水槽に転用し、ここに常に一
定量の上水を貯留することにした。災害時用の水も、衛生上定期的な入れ替えが必要で
あるが、この入れ替えにより排出される上水を、雨水・再生水の補給水として利用でき
るよう施設を改造した。これにより、災害時用の水が確保されるとともに、その水を無
駄にすることなく雑用系用途に活用できるようになった。
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使用量(㎥)
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降水量(mm)
水洗トイレその他
冷却水
月別降水量
月別平均降雨量:128.8mm
注:株式会社東京国際フォーラムの資料を基に作成。水洗トイレその他には、融
雪用水や植栽灌水用水を含む。降水量はアメダスデータ(地点:東京)による。 図 5 雨水・再生水利用用途別使用水量(2005 年度実績値)
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年5月
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年6月
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年7月
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年8月
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年9月
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年3月
使用量(㎥)
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50
100
150
200
250
300
降水量(mm)
冷却塔ブロー処理水
雨水処理水量
排水処理水量
上水補給量
月別降水量
月別平均降雨量:128.8mm
注:株式会社東京国際フォーラムの資料を基に作成。降水量
はアメダスデータ(地点:東京)による。 図 6 雨水・再生水利用水量に対する原水ごとの内訳水量(2005 年度実績)