電気絶縁油 Envirotemp FR3® Fluid 日本ケミカルズ販売株式会社

Envirotemp FR3 は、難燃性植物系天然エステルの電

気絶縁油です。そのユニークな環境性、火災安全性、

化学的・電気的特性に利点があり、配電用変圧器や電

力変圧器に使用されるよう処方されています。

Envirotemp FR3 は、食用植物油と食用グレードの性

能向上添加剤が配合されています。加えて、石油やハ

ロゲン、シリコン、腐食性硫黄など問題のある物質を

含んでいません。また、急性水生毒性試験では、毒性

はないとの試験結果でした。グリーンの色調は好まし

い環境性をイメージさせ、容易に石油系の絶縁油と区

別することができます。

Envirotemp FR3 は、非常に高い燃焼点（約 360℃）

と引火点（約 330℃）を有しており、現在市場で得ら

れる燃焼点が高いと言われる電気絶縁油の中では、最

も高い着火温度です。「高燃焼点」、「可燃性が低い」

油とされ、NEC に準拠し、UL（Underwriters

Laboratories）や FM（FM Global）により「可燃性

の低い電気絶縁油」としてリストアップされています。

Envirotemp FR3 は、トランスの標準的な構造素材や

部品に影響がなく、流体を処理する機器やその取扱い

にも影響しません。Envirotemp FR3 は鉱油系電気絶

縁油に近い粘度を有することや、新規あるいは継続的

なサービスにおいて優れた電気絶縁性を有すること、

長期における優れた化学的安定性によって、熱的特性

が改善されることが明らかになっています。この優れ

た性能は、1998 年以来 15,000 件以上の採用により

実証されています。

優れた環境特性や火災安全性のために、Envirotemp

FR3 の用途は、電力用トランスに加えて、電圧調整器、

区分開閉器、トランスを有する整流器などの様々な装

置への適用が拡大しています。また、トランスや電気

絶縁油を充填した配電機器のような再充填用途へも

使用されます。

性能

Envirotemp FR3 のユニークな化学構造は、優れた特

性を示します。負荷開閉器の媒体として使用されると

き、他の電気絶縁油に比べて良好な絶縁耐力を維持し、

電気的なストレス下で最も低いガス生成性を示して

います。その冷却性能は他の低可燃性流体に比べて優

ENVIROTEMP FR3®

代表性状

項目 代表値 試験法

電気特性

電気絶縁強度 56kV @25℃(2.0mm gap) ASTM D1816

比誘電率 3.2 @25℃ ASTM D924

誘電正接0.08 @25℃

3.0 @100℃ASTM D924

体積抵抗 20X1012 Ωcm @25℃ ASTM D1169

対インパルス電圧強度 226kV @25℃ ASTM D3300

ガス生成性 -79 (μℓ/min) ASTM D2300

物理・化学的特性

比重 0.92 @25℃ ASTM D1298

界面張力 24 mN/m @25℃ ASTM D971

酸価　（中和価） 0.04 mgKOH/g ASTM D974

動粘度34 mm2/sec @40℃

8 mm2/sec @100℃ASTM D445

水分 30 mg/kg ASTM D1533B

比飽和水分量 2 - 3% CPS Method

空気の溶解度 16% @25℃, 1atm ASTM D2779

概観 透明、薄緑色 ASTM D1524

色 L0.5 ASTM D1500

熱特性

引火点（密閉型） 318℃ ASTM D93

引火点（開放型） 330℃ ASTM D92

燃焼点（開放型） 360℃ ASTM D92

流動点 -21℃ ASTM D97

熱伝導度 4.0 X 10-4 cal/cm/℃　@25℃ CPS Method

膨張率 7.4 X 10-4 cc/cc/℃　＠25℃ CPS Method

熱容量2.10 J/g/℃　@50℃

2.30 J/g/℃　@100℃ASTM E1269

環境性

BOB/COD 45% SM5210B

水系生分解性 100%EPA OPPTS

835.3100

易分解性 100%EPA OPPTS

835.3110

急性毒性（マス稚魚） 試験終点で死亡率ゼロ OECD 203

れており、あらゆる条件でのテストサイクルにおいて、

有意な粘度変化は認められていません。普及絶縁油と

比べて、コーキングやスラッジ生成においても優れた

耐性を示します。同じ加速コーキング試験において、

Envirotemp FR3 のコーク生成量は鉱物油の 1/20 で

した。Doble Laboratories のスラッジ試験では、ス

ラッジの生成は認められませんでした。

熱安定性試験

Envirotemp FR3 は絶縁紙によって保持されている

水分を引き抜き、絶縁紙によって追い出された水を吸

収する優れた性能を有します。また、熱に曝されたと

きの分解から化学的に絶縁紙の分子を保護します。こ

れらにより、絶縁紙の劣化速度を最小にさせます。

Envirotemp FR3 中で劣化した絶縁紙は、普及絶縁油

中で劣化した絶縁紙の 5~8 倍の寿命延長を示しまし

た。

次表は、Envirotemp FR3 中や鉱油系絶縁油中で劣化

したクラフト紙の絶縁寿命に達する時間を比較して

おります。IEEE C57.91 ガイドを使用して計算され

た絶縁寿命時間も比較として示されています。加速劣

化試験では、非熱的に性能向上したクラフト紙が熱的

に劣化し難くなっていることも確認しています。

変圧器の絶縁紙寿命（時間）

火災安全性

Envirotemp FR3 の燃焼点は、NEC の最低である

300℃を超え、360℃です。また、引火点は、今日使

用されているほとんどの難燃性電気絶縁油よりも高

く、約 330℃です。Envirotemp FR3 は、NEC の要

求に従って FM Global や UL によって、低可燃性電気

絶縁油として承認されています。The National Fire

Protection Association からは、Envirotemp FR3 が

充填された変圧器に関する火災や爆発の報告はあり

ません。

大規模試験でも小規模でも、Envirotemp FR3 は他の

PCB 代替よりもより高い火災安全性を示しています。

大規模試験では、Envirotemp FR3 から引き起こされ

るプール火災の可能性は低く、設置制約を考慮する必

要がないほど熱放出速度が低いと FM Global は結論

しました。FM Global は Envirotemp FR3 を FM

Global 標準 3990 で承認された変圧器用絶縁油であ

鉱物油 Envirotemp FR3 IEEEベース 鉱物油 Envirotemp FR3 IEEEベース

残存引張強度50％25％

31004000

>4000>4000

16023327

240490

13004000

323671

重合度3200 >4000 3697 480 3400 746

150℃ 170℃

147

276 300 330

165

312 343 360

電気絶縁油の引火点と燃焼点

引火点 燃焼点

ることを認めています。OSHA では、この FM Global

標準が NEC Section 110-3(b)にリストおよびラベル

されている製品の定義に適合していると認識されて

います。この標準は、Envirotemp FR3 を充填した変

圧器が、スプリンクラーがなくてもアーチ状の天井が

なくても、壁の隙間が最低のちょうど 36 インチであ

っても、屋内に設置することができるとしています。

UL は種々の流体の危険度を比較できる標準 340 を開

発しました。次の図は Envirotemp FR3 に与えられ

た評価を示しています。

火災危険度 UL 標準 340

FM Global はまた、耐火壁あるいは消火装置がない、

10,000 ガロン以下の絶縁油が充填された変圧器が建

物や他の機器との間隔が 5 フィート以下でも使用で

きることを承認した耐火性絶縁油であると認識して

います。

規制適合

低可燃性流体は、発電所や変電所の National

Electrical Safety Code のセクション 15 の火災保護

物として認識されています。Envirotemp FR3 は、リ

ストにある低可燃性流体として、National Electrical

Code セクション 450-23 の要求に適合しており、ま

た、OSHA∮1910.305 セクション 5(v)にも適合して

います。

Envirotemp FR3 は、FM が承認し、UL が NEC450-23

の｢低可燃性｣と分類し、NEC のリスト製品の定義に

も適合しています。

環境と健康

Envirotemp FR3 は特に、健康や環境のリスクを最小

限にするよう処方されています。また、食用植物油と

食用グレードの性能向上添加剤から成ります。ベース

油は再生可能資源由来で、一般的な種子から得られて

おり、リサイクルおよび再使用が可能です。

Envirotemp FR3 は、遺伝子組み換え植物油を必要と

していません。そのトレードマークであるグリーンの

色は他の電気絶縁油と区別されます。その生分解性は、

環境保護庁（EPA）の究極の生分解性とされる標準物

質と同等です。

最も感度の高い急性毒性試験の一つである、Trout

Fry Acute Toxicity 試験 OECD 203 において、

Envirotemp FR3 は、全試験において死亡率ゼロを達

成し、他の絶縁油を上回る結果を示しました。

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 2-3 4-5 4-5 4-5

10-20

30-40

90

Envirotemp FR3

普及電気絶縁油

リファレンス材 クエン酸ナトリウム

（EPA究極生分解性）

好気湛水生分解性グラフ

EPA Test OPPTS 835.3100

経過時間（日）

CO

2放出（％

対理論量）

Envirotemp FR3 は、食用グレードのオイルや添加剤

を使用しているので、Federal Regulation of Used

Oil に該当しません。代わりに、Edible Oil Reguratory

Reform Act（米国の民事法）では、Envirotemp FR3

は、現在および将来の規制緩和の対象となりえます。

漏洩時の対策は、自然浄化を選択することが可能とな

っています。他の絶縁油と比較して Envirotemp FR3

のわずかに高い粘度が、薄膜層が暖かい空気の流れに

曝されたとき、ポリマー化する可能性があるので、表

面に沿って広がって、表層の土壌に浸透させないよう

になります。

環境保護庁（EPA）、OSHA、運輸省（DOT）では、

Envirotemp FR3 を危険物としてリストしていませ

ん。経口毒性の動物試験では、毒性反応も人体の接触

反応も報告されていません。Envirotemp FR3 は、生

物濃縮あるいは変異性について分類されていません

し、「環境に好ましい製品」としての分類上の候補で

す。Hazardous Material Information System のレ

ーティングは健康および反応性の両方で０です。

National Toxicology Program、International

Agency for Research for Cancer や OSHA では、発

ガン性物質のリストにはありません。Envirotemp

FR3 の熱分解副生物は本質的に CO2 と H2O に限られ

ますが、酸素の供給量や温度に依って CO がトレース

程度生成することもあります。Envirotemp FR3 は、

フラン類やダイオキシン、シリケートのいずれも生成

しません。

天然種子ベースの電気絶縁油の使用は、2005 年 2 月

10 日付 7 CFR 2902 のバイオベース材料として

USDA による米国政府の購買優先材料となっていま

す。環境に好ましい代替材料の使用や手続きを促進す

る ISO 14000 や他の類似する環境プログラムの優れ

た選択肢でもあります。Envirotemp FR3 の MSDS

は、弊社までご要望ください。

用途

新型変圧器

Envirotemp FR3 を充填した屋内用、潜水艦用、屋外

用配電および高圧変圧器は、全世界で数社の変圧器メ

ーカから購入可能です。

屋内使用については、Envirotemp FR3 を充填した変

圧器は、液体を使用しないタイプよりも液体を使用す

るタイプで、技術実証や性能で優れていることが示さ

れ、他の如何なる変圧器と比較しても、より低いライ

フサイクルコストになります。

Envirotemp FR3 を充填した変圧器は、屋外、電力系

統あるいは地下設備に対して、爆発や火災に対する安

全性に余裕を持たせる優れた選択肢の一つになりま

す。鉱油系絶縁油のような他の絶縁油と比較して、環

境負荷からの保護が望まれる場所にも好適です。建物

や価値の高い設備と接近している場所や屋上設置、歩

行者が近くにいる場所などの安全性を高める屋外用

途にも推奨されます。Envirotemp FR3 が使用されて

いる変圧器のタイプは柱状変圧器、地上設置型変圧器、

小型～大型の変電設備、送電変電所、昇圧発電機など

です。Envirotemp FR3 を充填した変圧器は産業およ

び政府の両方に承認されています。Envirotemp FR3

の健康面および環境面の優れた性能により、

Envirotemp FR3 を充填した変圧器は食品や医薬品

製造設備でしばしば選定されます。

変圧器への絶縁油再充填

Envirotemp FR3 は、環境面や安全面から鉱物油を充

填した変圧器の環境面および火災面での安全性を向

上させるために、その代替として適しています。

Envirotemp FR3 は鉱油系絶縁油、高分子量炭化水素

や、殆どの PCB 代替油に相溶します。他のどの絶縁

油とも異なり、変圧器に残る再充填前の絶縁油が、

Envirotemp FR3 の燃焼点を NEC 最下限の 300℃以

下にしないようにしなければなりません。これは、入

れ替えられた絶縁油と鉱物油の残油との間で、絶縁紙

中での平衡が完全に達した後でも、そうならなくては

なりません。

Envirotemp FR3 を再充填する利点を付け加えると、

高い絶縁耐力、クラフト紙の絶縁性能という点での誘

電率の良好な適合性、優れた潤滑性、材料適合性、普

及絶縁油に近い膨張係数を有する点があります。

Envirotemp FR3 は、また、劣化によって水分を含む

変圧器の絶縁材の乾燥材としての機能もあり、この性

質は変圧器の絶縁システムの使用期間を延長するの

に役立ちます。

Envirotemp FR3 は、真空脱気下でわずかなシリコン

オイルを溶かすので、絶縁油中の気泡を発生させませ

ん。シリコンとは異なり、Envirotemp FR3 は塗装の

剥離も起こしません。また、強度の絶縁耐力低下を引

き起こすスイッチング中の酸化シリコンの生成もあ

りません。

ロードブレークスイッチング装置

Envirotemp FR3 の優れた絶縁耐力の保持、優れた潤

滑性、低いガス生成傾向により、-10℃以上の作動温

度では、Envirotemp FR3 は優れたスイッチング媒体

になります。実証された用途は、Bay-O-Net や限流

ヒューズ、オン－オフおよび４位置スイッチ、真空自

己停電保護装置のような高圧負荷遮断補器を有する

新規およびレトロフィットの高圧負荷遮断補器を有

する区分開閉器や変圧器です。

鉱物油との粘度差のために、各用途の適性は非常に低

い温度環境下で設置する場合には、機器製造メーカに

よる検討が必要になります。

他の用途

Envirotemp FR3 の本来持っている安全性や性能、性

状は、工業用電磁石、超電導モーター、クライストロ

ンモジュレータ、変圧器／整流器、伝熱用途以外の電

燃焼点（ASTM D92）

引火点（ASTM D92）

Envirotemp FR3中の普及油の混入比率（wt％）

温度

（℃

）

普及油の混入によるEnvirotemp FR3の引火点と燃焼点の変化

Envirotemp FR3

R-Temp

普及電気絶縁油

シリコン油

測定限界

開閉操作の回数（回）

絶縁耐力

D-8

77

(kV

)

絶縁油の電気開閉による絶縁耐力保持の比較

気機器への使用にも繋がります。Envirotemp FR3 は、

稼働部品を有する機器に重要な性質である、良好な潤

滑性を有しています。絶縁紙の劣化を最小にする優れ

た性能、約 79μℓ／min の低いガス生成能を有する

ために、高電圧ブッシング用途は有望です。

市場実績の歴史

1996 年の市場投入以来、Envirotemp FR3 を充填し

た変電所の変圧器や装置の設置は、約十年で累計数は

数万件に上ります。絶縁油の性能や火災安全性は完璧

です。新規の用途に加えて、レトロフィット（油の入

れ替え）は順調に進んでいます。Envirotemp FR3 の

実用でのモニタリングでは、初期のプロトタイプも含

めて、画期的に安定して稼働しています。溶存ガス分

析も、変圧器の予防的なメンテナンスのために行われ

ています。

一般情報

貯蔵および取扱

Envirotemp FR3 の貯蔵や取り扱いのための詳細手

順は、鉱油系絶縁油に準じます。絶縁油製造時には非

常に低い水分量を維持するために、大気への暴露時間

を最小にする必要があります。ドラムやトートは、屋

内あるいは、太陽光などから保護できるような屋外に

貯蔵されるべきです。

注）電気絶縁油として使用し、適正な性状を維持する

ためには、酸素や湿気、その他の異物の混入は最小限

にならなければなりません。短期間の貯蔵を除いて、

Envirotemp FR3 に浸される材料は空気に触れては

なりません。薄膜の天然エステルは普及電気絶縁油よ

りも早く重合しやすい傾向があります。Envirotemp

FR3 を機器から抜き取ったときには、不活性ガスで機

器を充填するか、Envirotemp FR3 を再充填する、あ

るいは鉱物油で洗浄することを推奨します。変圧器の

力率に注意しなければならないところでは、熱風によ

る乾燥は、天然エステルで満たされた組み立て部品に

は行ってはなりません。追加の乾燥を必要とする場合

には、乾燥方法は絶縁油が空気に曝されないよう、過

剰に酸化されないようにすることが必要です。

メンテナンス

Envirotemp FR3 が充填された機器の定期的なメン

テナンス試験は、鉱油の場合と同じスケジュールで実

施されるべきです。絶縁油サンプルの主な試験は、

１．絶縁耐力：Envirotemp FR3の長期使用継続のた

めには、IEEE C57.147の最低許容限界であるASTM

D1816の2mm gap 限界は 40 kV (≤69 kV), 47 kV

(69 ≤ kV < 230), and50 kV (≥ 230 kV)です。

２．引火点と燃焼点

少量の鉱物油では、Envirotemp FR3の燃焼点を大き

く下げません。7％以上の混入は燃焼点を300℃以下

に下げるかもしれません。もし混入が起こったときに

は、引火点と燃焼点を測定すべきです。

３．溶存ガス分析

Envirotemp FR3の溶存ガス分析は特に、高価な装置

や限界負荷を受ける装置には有用です。

４．色と外観

色や外観、誘電正接、酸価、抵抗、粘度や界面張力は

絶縁油へのコンタミや異常な劣化の指標です。

絶縁油が修復不可能な場合には、潤滑油再生業者への

販売含めた廃棄処分や精製、あるいは産業用ボイラー

や炉の燃料供給業者へ引き取ってもらいます。

日本ケミカルズ販売株式会社

〒150-0022

東京都渋谷区恵比寿南１－１－１

☏03-3719-0366

Fax:03-3719-1752

URL:http://www.ncstokyo.co.jp/