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福島の進路 2015. 11 ; 調 査 < 要 旨 > 1.震災後の農業 農業の県内総生産(名目)は平成25年度早期推計で1,070億円、農業産出額は平成25年に2,049億 円で、いずれも震災前を下回っている。 2.主力6品目の動向 県が指定する主力6品目(きゅうり、トマト、アスパラガス、もも、日本なし、りんどう)の 合計をみると、農家戸数、栽培面積、販売額、出荷量は震災後の価格低迷や農業従事者の高齢化 等の影響もあり震災前より減少している。避難指示区域の解除や除染の進捗により徐々に園芸産 地復興計画の効果が表れてくるものと期待される。 3.消費者意識 各業界団体等が実施する首都圏・大都市圏等での消費者意識調査をみると、福島県産品に対す る拒絶反応は次第に低下の傾向がみられる。調査の結果が購入につながるのは歓迎すべきだが、福 島県に対する関心を失い、震災・原発事故が風化しつつある結果が反映されていることも危惧され、 消費者に向け発信を継続していくことが求められる。 4.今後の見通し 大手スーパーの復興支援セールが継続的に開催され、海外輸出も再開されるなど、消費者が福 島県産食材を手に取る機会も増えている。食材ごとのばらつきはあるが、価格は全国平均並みに 戻りつつある。風評被害の払拭には相応に時間をかけた地道な活動が必要となるが、震災・原発 事故を風化させないための発信を続けることにより、更なる今後の回復が期待される。 震災後における福島県産農産物の 売上・取引価格の回復状況について はじめに 本県は、太平洋に面する比較的温暖な浜通りか ら豪雪地帯を有する会津まで、気候風土の異なる 地域で構成されており、野菜、米穀類、果物など、 多種多様な農産物を産出している。しかし震災以 降は出荷制限や風評被害など、農業にとって苦難 が続いている。 生産基盤の崩壊や担い手の減少による営農離れ の危機に直面する中、県では新たなプロジェクト を立ち上げ、支援・推進を集中的に行うべく取り 組んでいるところである。本県の農産物といえば、 もも・りんごなどの果物から、米、きゅうりなど の野菜まで、産出額が全国上位に入るものも多い。 本県農業の一日も早い完全復活が待たれる。 県内復興には、震災を契機に大きく揺らいでし まった本県産農産物への信頼を取り戻すことが不 可欠なテーマとなっており、本稿では震災後の本

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福島の進路 2015.11

調 査

<要 旨 >1.震災後の農業   農業の県内総生産(名目)は平成25年度早期推計で1,070億円、農業産出額は平成25年に2,049億円で、いずれも震災前を下回っている。

2.主力6品目の動向   県が指定する主力6品目(きゅうり、トマト、アスパラガス、もも、日本なし、りんどう)の合計をみると、農家戸数、栽培面積、販売額、出荷量は震災後の価格低迷や農業従事者の高齢化等の影響もあり震災前より減少している。避難指示区域の解除や除染の進捗により徐々に園芸産地復興計画の効果が表れてくるものと期待される。

3.消費者意識

   各業界団体等が実施する首都圏・大都市圏等での消費者意識調査をみると、福島県産品に対する拒絶反応は次第に低下の傾向がみられる。調査の結果が購入につながるのは歓迎すべきだが、福島県に対する関心を失い、震災・原発事故が風化しつつある結果が反映されていることも危惧され、消費者に向け発信を継続していくことが求められる。

4.今後の見通し

   大手スーパーの復興支援セールが継続的に開催され、海外輸出も再開されるなど、消費者が福島県産食材を手に取る機会も増えている。食材ごとのばらつきはあるが、価格は全国平均並みに戻りつつある。風評被害の払拭には相応に時間をかけた地道な活動が必要となるが、震災・原発事故を風化させないための発信を続けることにより、更なる今後の回復が期待される。

震災後における福島県産農産物の売上・取引価格の回復状況について

はじめに

 本県は、太平洋に面する比較的温暖な浜通りか

ら豪雪地帯を有する会津まで、気候風土の異なる

地域で構成されており、野菜、米穀類、果物など、

多種多様な農産物を産出している。しかし震災以

降は出荷制限や風評被害など、農業にとって苦難

が続いている。

 生産基盤の崩壊や担い手の減少による営農離れ

の危機に直面する中、県では新たなプロジェクト

を立ち上げ、支援・推進を集中的に行うべく取り

組んでいるところである。本県の農産物といえば、

もも・りんごなどの果物から、米、きゅうりなど

の野菜まで、産出額が全国上位に入るものも多い。

本県農業の一日も早い完全復活が待たれる。

 県内復興には、震災を契機に大きく揺らいでし

まった本県産農産物への信頼を取り戻すことが不

可欠なテーマとなっており、本稿では震災後の本

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福島の進路 2015.11

調 査

県産農産物の売上・取引価格の回復状況を考察し

てみた。

1.本県における農業の規模

⑴ 県内総生産 農業の総生産(名目)は平成25年度早期推計で

1,070億円となり、平成20年度比△14.8%である。

震災により減少した後、増加に転じているが、震

災前の水準には戻っていない(図表1)。

⑵ 農業産出額 農業産出額は平成20年に2,505億円であったが、

それ以降は減少傾向で推移したことに加え、震災

の影響から平成23年には1,851億円まで低下した。

平成25年は2,049億円まで回復しているが、震災

前から1割以上減少したままである。

 平成25年の農業産出額を他の産業と比較すると、

図表1 産業別県内総生産(名目) (単位:百万円)

平成20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度20年度比

第1次産業 144,721 143,624 138,711 112,199 114,676 116,731 △19.3農業 125,482 125,548 122,446 101,603 105,698 106,965 △14.8林業 8,661 8,364 7,650 6,188 5,454 6,111 △29.4水産業 10,578 9,712 8,614 4,409 3,523 3,655 △65.4

第2次産業 2,147,872 1,988,918 2,000,970 1,803,840 2,125,217 2,386,519 11.1鉱業 4,103 3,582 3,555 4,339 5,833 7,328 78.6製造業 1,757,808 1,609,207 1,648,557 1,271,079 1,461,475 1,621,134 △7.8建設業 385,961 376,130 348,858 528,422 657,910 758,057 96.4

第3次産業 5,113,545 4,909,061 4,805,270 4,402,343 4,521,811 4,714,188 △7.8電気・ガス・水道業 711,579 656,377 624,261 251,547 313,154 454,223 △36.2卸売・小売業 673,655 614,659 610,613 598,487 601,777 613,111 △9.0金融・保険業 257,223 256,135 248,730 238,448 241,139 239,936 △6.7不動産業 739,667 754,011 758,555 723,922 733,315 742,738 0.4運輸業 313,821 297,063 295,198 296,670 315,733 326,672 4.1情報通信業 190,121 184,156 181,342 172,791 171,811 167,630 △11.8サービス業 1,345,343 1,285,234 1,240,610 1,230,081 1,278,632 1,320,032 △1.9政府サービス生産者 784,736 769,613 749,439 788,564 759,948 745,099 △5.1対家計民間非営利サービス生産者 97,401 91,813 96,521 101,834 106,303 104,748 7.5

第1次~第3次産業計 6,524,003 6,180,177 6,098,990 5,427,985 5,895,453 6,367,591 △2.4福島県「福島県県民経済計算年報」より作成、平成25年度は早期推計第1次~第3次産業計には輸入品に課される税・関税等が含まれないため、県内総生産合計とは一致しない。

農林水産省「生産農業所得統計」より作成

図表2 本県の農業産出額

2,505 2,450 2,330

1,851 2,021 2,049

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000(億円)

平成20年 21年 22年 23年 24年 25年

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調 査

観光消費額(日本人・観光目的)や窯業の製造品

出荷額等と同様の水準となっている。減少はして

いるものの、産出額が2,000億円を超える農業は、

本県において重要な産業であることが改めて確認

できる。

2.福島県産農産物の取引数量・価格

⑴ 主な農産物の収穫量推移 農林水産省が統計を実施している「作況調査」

より、主な農産物の収穫量と全国順位をみると、

ほとんどが震災後に収穫量は低下したものの、復

興支援セールなども開催されたことにより、もも

は震災前の水準を上回っている。また、夏秋期に

出荷される夏秋きゅうりは、震災後も全国1位の

出荷量を維持している。

 一方、米(水稲)は震災前に全国4位の収穫量

であったが、震災後の収穫量は震災前の8割前後

で、7位まで順位が低下したままとなっている。

また、かきは震災前に全国4位の収穫量であった

が、震災後は震災前の3分の1以下まで減少した。

次第に収穫量は増加しているが、平成26年産でも

半分以下の水準にとどまり、順位も13位まで低下

している(図表4)。

図表4 主な福島県産食材の収穫量と全国順位(上段:収穫量、下段:全国順位) (単位:トン)

平成22年産 23年産 24年産 25年産 26年産

も も28,200 29,000 27,500 29,300 29,3002位 2位 2位 2位 2位

り ん ご31,600 26,300 28,100 26,800 27,6005位 5位 5位 5位 5位

日 本 な し23,200 21,600 17,800 19,800 19,6003位 4位 6位 4位 4位

か き14,000 4,550 4,480 4,890 6,4504位 11位 11位 11位 13位

ぶ ど う3,110 3,150 3,300 3,270 2,93012位 12位 11位 12位 12位

米 ( 水 稲 )445,700 353,600 368,700 382,600 366,2004位 7位 7位 7位 7位

夏秋きゅうり40,000 35,700 37,800 33,500 33,7001位 1位 1位 1位 1位

夏秋トマト22,900 17,100 21,500 20,700 20,0004位 8位 4位 5位 5位

資料:農林水産省「作況調査」

農林水産省「生産農業所得統計」、観光庁「全国観光入込客統計」、福島県「工業統計調査結果報告書」より作成

図表3 本県の農業産出額と製造品出荷額等との規模比較(平成25年)

2,082

2,018

2,408

2,874

2,049

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000

観光消費額(日本人・観光目的)

窯業

電機機械器具製造業

食料品製造業

農業産出額

3,500(億円)

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調 査

⑵ 主な農産物の取引価格動向 農林水産省の統計より、主な農産物における震

災前後の取引価格動向について見てみる。

① 米 米の取引価格は、平成26年産米の供給過剰の影

響から全国的に低下している。その中で、福島県

産米の相対取引価格をみると、会津産コシヒカリ

は震災前から全銘柄平均価格を概ね上回り、震災

後も同様の値動きとなっている。一方、中通り・

浜通り産コシヒカリは震災前に全銘柄平均価格並

みであったが、震災後の平成24年は1,000円以上

下落する状況が続いた。平成25年は差が500円程度

まで縮まったが、平成26年の後半以降は再び1,000

円以上下回る状況となっている(図表5)。

 元来、会津産をはじめとする福島県産米はその

品質に高い評価を得ていた。福島第一原発から離

れていることもあり、会津産はそのブランド力を

回復してきていると言えるが、中通り・浜通り産

は震災以降一度も全銘柄平均価格に届いていない。

県内では世界で初めて放射性物質の全量全袋検査

を実施し、安全・安心をアピールしているところ

であるが、取引価格の回復にはいま一歩の状況が

続いている。

② もも ももは、震災以降にスーパーの復興支援セール

等の需要があり、取扱数量自体は増加した。しか

し、一方で取引価格は低下し、平成23年8月中旬

には167円/㎏まで下落した。その後、次第に価格

は上昇し、平成25年9月下旬に453円/㎏となり、

震災以降初めて全国平均(448円)を上回った

資料:農林水産省「米の相対取引価格・数量」より作成 消費税相当額は平成26年3月分まで5%、同4月分以降は8%で算定

図表5 米の相対取引価格推移(出荷業者、速報)

02,0004,0006,0008,00010,00012,00014,00016,00018,00020,000

9月 11 1月 3 5 7 9 11 1月 3 5 7 9 11 1月 3 5 7 9 11 1月 3 5 7 9 11 1月 3 5 7

ひとめぼれ全銘柄平均価格(全国)

(円/玄米60㎏税込)

平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年

コシヒカリ中通りコシヒカリ浜通り

コシヒカリ会津

平成27年

資料:農林水産省「青果物卸売市場調査」

図表6 福島県産「もも」の取扱数量及び取引価格

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1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬7月 8月 9月 7月 8月 9月 7月 8月 9月 7月 8月 9月 7月 8月 9月 7月 8月 9月

(トン)

平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 平成27年

(円/㎏)

数量(左軸)価格(福島、右軸)価格(全国、右軸)

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福島の進路 2015.11

調 査

(図表6)。

 収穫量が全国2位である本県産のももは、元来

甘くて美味しいと定評がある。山梨県産は4月に

は市場へ出回り始め、7月に取扱量がピークを迎

える。一方、本県産の取扱が増加するのは7月下

旬から8月にかけてであり、市場における8月の

取扱量は本県産が圧倒的に多くなる。既に取扱量

では震災前を上回っており、安全性と美味しさの

更なる PRにより全国平均と同等以上の価格設定

が期待される。

③ その他の品目 米、もも以外の主な品目の取引価格をみると、

トマト、ピーマン、さやいんげんは、全国平均と

の差が開く時期もありながら、直近では全国平均

に近い水準を維持し、きゅうりは全国平均を上

回っている。一方、日本なしは平成23年に全国平

均を大きく下回って以降、差は縮まっているもの

の全国平均には届いていない(図表7-1~5)。

④ 今後の見通し 価格については、震災直後の全国平均との大幅

に乖離した状況から回復がなかなか進まないもの

もあり、安全・安心が消費者に浸透するには更に

時間を要するものとみられる。しかし品目ごとの

ばらつきはあるものの、全国の市場における取扱

数量は震災前と比べ遜色ない水準まで概ね回復し、

品目によっては既に震災前を上回る時期もある。

 相応に時間をかけた地道な活動が必要となるが、

取引量の増加とともに取引価格が全国平均に並ぶ

品目もあり、消費者に浸透することで更なる今後

の回復が期待される。

資料:農林水産省「青果物卸売市場調査」

図表7-1 福島県産「きゅうり」の取扱数量及び取引価格

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1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬7月 8月 9月 7月 8月 9月 7月 8月 9月 7月 8月 9月 7月 8月 9月 7月 8月 9月

(トン) (円/㎏)数量(左軸)価格(福島、右軸)価格(全国、右軸)

平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 平成27年

資料:農林水産省「青果物卸売市場調査」

図表7-2 福島県産「トマト」の取扱数量及び取引価格

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800

下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬7月 8月 9月 7月 8月 9月 7月 8月 9月 7月 8月 9月 7月 8月 9月 7月 8月 9月

(トン) (円/㎏)

平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 平成27年

数量(左軸)価格(福島、右軸)価格(全国、右軸)

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福島の進路 2015.11

調 査

資料:農林水産省「青果物卸売市場調査」

図表7-3 福島県産「ピーマン」の取扱数量及び取引価格

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400

下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬7月 8月 9月 7月 8月 9月 7月 8月 9月 7月 8月 9月 7月 8月 9月 7月 8月 9月

(トン)

平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 平成27年

(円/㎏)

数量(左軸)価格(福島、右軸)価格(全国、右軸)

資料:農林水産省「青果物卸売市場調査」

図表7-4 福島県産「さやいんげん」の取扱数量及び取引価格

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400

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1,000

1,200

1,400

1,600

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下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬7月 8月 9月 7月 8月 9月 7月 8月 9月 7月 8月 9月 7月 8月 9月 7月 8月 9月

(トン)

数量(左軸)価格(福島、右軸)価格(全国、右軸)

平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 平成27年

(円/㎏)

資料:農林水産省「青果物卸売市場調査」

図表7-5 福島県産「日本なし」の取扱数量及び取引価格

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2,000

2,500

上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 下旬 上旬 中旬9月 10月 9月 10月 9月 9月 8月 9月 10月 8月 9月

(トン) (円/㎏)

数量(左軸)価格(福島、右軸)価格(全国、右軸)

平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 平成27年

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福島の進路 2015.11

調 査

3.増加する耕作放棄地

⑴ 農業経営体数は全国で最も多い 平成22年の本県の農業経営体数は71,654経営体

で、全国で最も多いが、平成17年の81,791経営体

から1割以上減少した。震災前から減少傾向で推

移しており、全国的にも同様の動きとなっている

(図表8)。

⑵  経営耕地面積は10ヘクタール未満が大半を占める

 経営耕地面積規模別の農業経営体数は、北海道

を除く全ての都道府県で10ヘクタール未満規模の

割合が9割を超えている。本県は10ヘクタール未

満規模の割合が98.9%で、東北・隣接県の中では

最も高い(図表9)。

 農林業センサスにおける農業経営体の定義は、「農産物の生産を行うか又は委託を受けて農作業を行い、⑴経営耕地面積が30アール以上、⑵農作物の作付面積又は栽培面積、家畜の飼養頭羽数又は出荷羽数等、一定の外形基準以上の規模(露地野菜15アール、施設野菜350㎡、搾乳牛1頭等)、⑶農作業の受託を実施、のいずれかに該当する者」。

図表8 農業経営体数(平成22年) (単位:経営体、%)

順位 都道府県 平成22年 参考:平成17年 17年比増加率1 福 島 71,654 81,791 △12.42 茨 城 71,542 85,511 △16.33 新 潟 68,245 83,599 △18.44 長 野 64,289 77,304 △16.85 兵 庫 57,766 65,953 △12.46 岩 手 57,001 68,746 △17.17 千 葉 55,387 64,325 △13.98 宮 城 50,741 63,992 △20.79 秋 田 48,521 61,259 △20.810 栃 木 48,463 56,544 △14.3

農林水産省「2010年世界農林業センサス」より作成

図表9 経営耕地面積規模別経営体数と構成比(平成22年) (単位:経営体、%)

都道府県 経営体数 経営耕地面積規模別経営体数 構  成  比

10ha未満 10ha以上 50ha未満

50ha以上 100ha未満 100ha以上 10ha未満 10ha以上

50ha未満50ha以上 100ha未満 100ha以上

北 海 道 46,549 19,272 21,678 4,692 907 41.40 46.57 10.08 1.95青 森 44,667 43,241 1,335 62 29 96.81 2.99 0.14 0.06岩 手 57,001 55,586 1,248 125 42 97.52 2.19 0.22 0.07宮 城 50,741 49,423 1,191 102 25 97.40 2.35 0.20 0.05秋 田 48,521 46,676 1,772 64 9 96.20 3.65 0.13 0.02山 形 40,831 39,750 987 62 32 97.35 2.42 0.15 0.08福 島 71,654 70,865 761 27 1 98.90 1.06 0.04 0.00茨 城 71,542 70,531 949 56 6 98.59 1.33 0.08 0.01栃 木 48,463 47,397 1,030 29 7 97.80 2.13 0.06 0.01群 馬 32,567 32,202 356 6 3 98.88 1.09 0.02 0.01農林水産省「2010年世界農林業センサス」より作成

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福島の進路 2015.11

調 査

⑶ 耕作放棄地は増加が続く 耕作放棄地は全国・本県ともに増加が続いてい

る。平成22年の耕作放棄地面積は、全国で39.6万

ヘクタールとなり、埼玉県の面積を上回る規模ま

で拡大している(図表10)。

 平成に入って以降、耕作放棄地は一貫して増加

しており、震災前からこの傾向は強まっていた。

 本県の耕作放棄地面積は、平成22年に22,394ヘ

クタールとなり、全国で最も大きくなっている。

耕作放棄地面積が2万ヘクタールを超えているの

は本県と茨城県のみである。農家の形態別にみる

と、全国では土地持ち非農家の所有する面積が最

も大きいのに対し、本県では販売農家の所有する

面積が約5割を占めているのが特徴である。販

売農家の所有する耕作放棄地面積は平成22年に

10,981ヘクタールで、都道府県別でも圧倒的に大

きい(図表10、11、12)。

 図表9にある通り、農業経営体は経営耕地面積

農林水産省「農林業センサス」より作成

図表10 耕作放棄地面積推移(全国)

13.1 12.313.5

21.724.4

34.3 38.6 39.6

2.7 2.5

2.9

4.75.6

8.1 9.710.6

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

S50 55 60 H2 7 12 17 22年

(万ha) (%)

販売農家自給的農家土地持ち非農家耕作放棄地面積率(右軸)

 農林業センサスにおける耕作放棄地の定義は、「以前耕地であったもので、過去1年間以上作物を栽培せず、この数年の間に再び耕作するはっきりとした考えのない土地」。 耕作放棄地面積率=耕作放棄地面積÷(経営耕地面積+耕作放棄地面積)×100 販売農家は、経営耕地面積が30アール以上又は農産物販売金額が50万円以上の農家。 自給的農家は、経営耕地面積が30アール未満かつ農産物販売金額が50万円未満の農家。 土地持ち非農家は、農家以外で耕地及び耕作放棄地を5アール以上所有している世帯。

農林水産省「農林業センサス」より作成

図表11 耕作放棄地面積推移(福島県)

2.7 2.73.9

9.0

14.9

20.221.7 22.4

1.5 1.6 2.3

5.5

9.5

13.1

14.915.7

0.02.04.06.08.010.012.014.016.018.0

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

S50 55 60 H2 7 12 17 22年

(%)(千ha)

販売農家自給的農家土地持ち非農家耕作放棄地面積率(右軸)

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福島の進路 2015.11

調 査

図表12 耕作放棄地面積の大きい都道府県(平成22年)耕作放棄地合計(ha) うち販売農家(ha) うち自給的農家(ha) うち土地持ち非農家(ha)

都道府県 面 積 都道府県 面 積 都道府県 面 積 都道府県 面 積

1 福 島 22,394 1 福 島 10,981 1 長 野 6,296 1 北 海 道 10,117

2 茨 城 21,120 2 茨 城 7,511 2 茨 城 5,031 2 千 葉 8,769

3 千 葉 17,963 3 千 葉 5,963 3 福 島 4,715 3 茨 城 8,577

4 北 海 道 17,632 4 北 海 道 5,805 4 群 馬 4,577 4 青 森 7,776

5 長 野 17,146 5 青 森 5,292 5 埼 玉 3,520 5 埼 玉 6,767

6 青 森 15,212 6 岩 手 5,279 6 岩 手 3,257 6 群 馬 6,708

7 岩 手 13,933 7 長 野 4,596 7 千 葉 3,232 7 福 島 6,698

8 群 馬 13,901 8 宮 城 4,429 8 静 岡 3,182 8 静 岡 6,463

9 静 岡 12,494 9 新 潟 3,823 9 広 島 3,118 9 長 野 6,255

10 埼 玉 12,395 10 熊 本 3,747 10 鹿 児 島 2,967 10 鹿 児 島 5,966

農林水産省「2010年世界農林業センサス」より作成

が10ヘクタール未満の規模に集中しており、経営

体数が最も多い本県では当然、小規模な経営体も

他県に比べ多い。小規模な経営体では、収益性や

後継者問題などから作付けを取りやめるケースも

多くなるとみられ、耕作放棄地面積合計が全国1

位の大きな要因と考えられる。

 さらに、本県においては震災後の避難区域の設

定などもあり、管理されない農地は確実に増加し

ているものと見込まれる。

 耕作放棄地は、数年放置すると荒廃が進んでし

まう危険があり、病害虫や鳥獣による被害、雑草

の繁茂など、営農環境の悪化を引き起こすことが

考えられる。しかし、整備をしてもその地域では

借り手がいないなどの理由で、そのままになって

いるケースは多いものと思われる。

 平成27年3月に閣議決定された「食料・農業・

農村基本計画」では、荒廃農地の再生利用への取

り組みを推進するとされている。農業の担い手へ

の農地集積・集約化を推進することにより、耕作

放棄地が有効に活用され、本県農業の規模拡大に

つながるよう期待したい。

4.福島県による取り組みの効果

 県では、平成22年から24年までの3年間、「ふ

くしま園芸産地パワーアップ・プロジェクト」を

展開し、「ふくしまの恵みイレブン※」のうち主

力6品目の産地生産力・ブランド力強化を図った。

出荷量は復興支援等により増加する品目もあるな

ど一定の効果がみられたが、震災の影響は大きく、

思うような伸びにはつながらなかった。

 しかし、主力6品目の産地生産力・ブランド力

強化は本県にとり重要な課題であることから、園

芸産地復興計画に基づく取り組みが継続的に行わ

れている。平成26年の実施状況を見てみる。

※  きゅうり、トマト、アスパラガス、もも、日本なし、りんどう、米、地鶏、なめこ、ヒラメ、福島牛の11品目。このうち下線部を主力6品目に指定。りんどうは食材ではなく観賞用。

⑴ 主力6品目の推移 平成26年の園芸産地復興計画による指標に対す

る達成度合いをみると、農家戸数、栽培面積は、

震災後の価格低迷による生産意欲の低下や農業従

事者の高齢化等の要因もあり、平成26年目標の

96~97%の達成率となった。販売額は、放射性物

質検査の徹底や産地情報の積極的な配信等の活動

に一定の効果があり、きゅうりが目標比+14.8%、

ももが+3.5%と上回った。出荷量は、ももが復

興支援販売等の効果で目標比+1.1%となったが、

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福島の進路 2015.11

調 査

図表13 主力6品目の推移(園芸産地復興計画の実績数値)農家戸数 (単位:戸、%)

平成22年実績 平成24年実績 平成25年実績 平成26年目標 平成26年実績目 標 比

き ゅ う り 2,422 2,423 2,318 2,444 2,301 △5.9ト マ ト 812 791 787 825 770 △6.7ア ス パ ラ ガ ス 1,298 1,033 988 1,060 913 △13.9も も 3,081 2,858 2,836 2,754 2,859 3.8日 本 な し 995 912 881 883 849 △3.9リ ン ド ウ 61 58 56 59 56 △5.16 品 目 合 計 8,669 8,075 7,866 8,025 7,748 △3.5

資料:福島県

栽培面積 (単位:ha、%)

平成22年実績 平成24年実績 平成25年実績 平成26年目標 平成26年実績目 標 比

き ゅ う り 390 372 357 370 347 △6.2ト マ ト 145 139 135 142 126 △11.3ア ス パ ラ ガ ス 323 276 257 285 240 △15.8も も 1,461 1,489 1,468 1,475 1,458 △1.2日 本 な し 831 788 782 781 765 △2.0リ ン ド ウ 15 16 17 17 17 0.06 品 目 合 計 3,165 3,080 3,016 3,070 2,953 △3.8

資料:福島県

販売額 (単位:百万円、%)

平成22年実績 平成24年実績 平成25年実績 平成26年目標 平成26年実績目 標 比

き ゅ う り 7,231 5,253 7,474 6,499 7,463 14.8ト マ ト 3,504 3,070 3,439 3,722 2,783 △25.2ア ス パ ラ ガ ス 1,183 787 954 1,044 874 △16.3も も 5,875 4,568 5,650 4,853 5,024 3.5日 本 な し 2,462 1,607 1,768 2,016 1,713 △15.0リ ン ド ウ 94 99 101 109 91 △16.56 品 目 合 計 20,348 15,384 19,390 18,243 17,948 △1.6

資料:福島県

出荷量

平成22年実績 平成24年実績 平成25年実績 平成26年目標 平成26年実績目 標 比

き ゅ う り(トン) 26,987 28,051 25,440 28,661 24,815 △13.4ト マ ト(トン) 9,893 11,323 10,902 11,751 9,936 △15.4アスパラガス(トン) 1,396 1,045 1,179 1,354 970 △28.4も も(トン) 12,853 13,125 15,570 13,937 14,087 1.1日 本 な し(トン) 8,271 6,917 8,192 8,076 7,349 △9.0リ ン ド ウ(本) 2,548 2,498 2,637 3,020 2,694 △10.8

資料:福島県

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調 査

長雨などの気象条件の影響もあり、全体では目標

を下回った(図表13)。

⑵ 農業従事者の高齢化と震災の影響 農業経営体数については、農業従事者の高齢化

に伴う後継者問題などもあり、震災以前から減少

傾向で推移してきた。加えて、原発事故による栽

培面積の減少もあり、これまでのところ園芸産地

復興計画の目標達成には今一歩の状況である。

 農林水産省まとめ(平成26年2月1日現在)に

図表14 被災3県における農業経営体の被災・経営再開状況(平成26年2月1日現在) (単位:経営体、%)

平成22年世界農林業センサス

(平成22年2月1日現在)

震災被害のあった農業経営体

被 害 数 営農を再開している

営農を再開していない(不明含む)被害割合 再開割合

福 島 県 71,654 17,200 24.0 10,500 61.0 6,710

岩 手 県 57,001 7,700 13.5 7,480 97.1 220

宮 城 県 50,741 7,290 14.4 5,130 70.4 2,160

3 県 合 計 179,396 32,100 17.9 23,100 72.0 9,080

資料:農林水産省震災被害のあった農業経営体数は下一桁または二桁を四捨五入しているため、合計と内訳が一致しない場合がある。

福島県HPより

ふくしまの恵みイレブン

りんどう

福島牛

地鶏川俣シャモ会津地鶏

トマト

アスパラガス

美しく豊かな自然の中で、生産者の愛情をいっぱいに受けて育った福島牛は、鮮やかな色合いと良質の霜降りをもつ絶品の牛肉です。柔らかな肉質、風味豊かでまろやかな美味しさをぜひ一度ご堪能ください。

県内各地で栽培している福島県を代表する野菜です。7~9月が旬で、夏秋期の出荷量は全国1位。新鮮なパリッとした食感とみずみずしさが特徴です。(全国4位)

紫やピンクなどバラエティ豊かな花色の品種を栽培し、9月上旬から咲く濃い青紫の「ふくしまほのか」や9月中旬から咲く紫ピンクの「ふくしまかれん」等が人気で、仏花からフラワーアレンジメントまで幅広く利用できます。(全国4位)

もも

日本なし

ふくしまイレブン おいしさのヒミツ紫やかな花

くしししししま さのヒイレブブブブン

福島の秋の味覚、日本なし。甘味が強く果汁の多い「幸水」や「豊水」、県オリジナル品種「涼豊」、大玉の「新高」などを生産しています。シャリシャリッとした食感と口に広がる爽やかな甘さをどうぞご賞味ください。(全国4位)

福島の秋の味覚、日本なし。甘味が強く果汁の多い「幸水」や「豊水」、県オリジナル品種「涼豊」、大玉の「新高」などを生産しています。シャリシャリッとした食感と口に広がる爽やかな甘さをどうぞご賞味ください。(全国4位)

なめこ

軍鶏をもとに改良した川俣シャモは、旨みに優れ、低脂肪低カロリーでヘルシー。会津地鶏は、適度な歯ごたえとコク、旨みをもつ肉質が特徴です。

全国生産の20%を占める福島県の桃。7月上旬の「はつひめ」、8月の「あかつき」、9月の「ゆうぞら」と続きます。特に「あかつき」は献上桃としても有名で、とろけるように甘くみずみずしい最高品質の桃は贈答用にも最適です。(全国2位)

ヒラメ

豊かな風土で育った県産米は、食味でも高い評価を受けています。作付けの中心は「コシヒカリ」と「ひとめぼれ」で、県オリジナル品種「天のつぶ」も生産しています。(全国7位)

気候が温暖な浜通りでは、大規模な施設で年間を通して生産しています。会津・中通りでは、甘味がのった完熟トマトを生産しており、品質の良い夏秋トマトとして人気を呼んでいます。(全国9位)

会津地域を中心に県内各地で生産しています。「ウェルカム」のほか、福島県のオリジナル品種の「ハルキタル」、紫色の「はるむらさきエフ」を生産しています。(全国6位)

〈会津地鶏〉 〈川俣シャモ〉

福島県の多彩な農林水産物を代表する生産量が全国上位の11品目です福島県の多彩な農林水産物を代表する生産量が全国上位の11品目です

ふくしまイレブンふくしまイレブンふくしまイレブンとは

原木栽培なめこは、ぬめりが強く歯ごたえがしっかりしており、なめこ本来の美味しさが味わえ、10~11月が旬です。菌床栽培なめこは福島県が発祥地で、なめこの美味しさを一年中、手軽に楽しむことができます。(全国4位)

※全国順位は平成25年度の生産量

果果ルルしししににだだだ

とができます。(全国4位)福島県は全国でも有数のヒラメ産地。黒潮と親潮が混じり合う栄養豊かな海で育まれた県産ヒラメは、食味に優れ、首都圏では「常磐もの」として高く評価されています。

きゅうり

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福島の進路 2015.11

調 査

よると、震災により被害のあった本県の農業経営

体数は17,200に上った。これは平成22年世界農林

業センサスにおける農業経営体数71,654の24.0%

に該当する。同様に岩手県は13.5%、宮城県は

14.4%であり、本県では原発事故による被害が大

きかったことがわかる。このうち既に営農を再開

している割合は、岩手県97.1%、宮城県70.4%に

対し本県は61.0%にとどまっている(図表14)。

調査から1年半以上が経過した現時点においても、

原発事故の影響が長期化し、再開したくともス

タートラインに着くことができない農業経営体が

多くある。このような状況下で目標に対し実績が

思うように伸びて行かないことには、歯がゆい思

いを抱かざるを得ない。

 しかし、消費者への情報提供の観点から、本県

農産品の安全性や美味しさを PRし続けることは

重要である。他の被災県と置かれた状況は異なり

相応の時間が必要となるが、避難指示区域の解除

や除染の進捗により、徐々に効果が表れてくるも

のと思われ、全県をあげた取り組みが継続される

ことに期待したい。

5.本県産品に対する消費状況

⑴ 学校給食における活用状況 学校給食に関しては、検査結果による数値だけ

福島県教育庁健康教育課「学校給食における地場産物の活用状況調査結果」より作成※全国の平成23年度には被災3県は含まれず

福島県教育庁健康教育課「学校給食における地場産物の活用状況調査結果」より作成

図表15 学校給食における地場産物の活用状況

図表16 食品類別活用状況

37.1%

26.1%

36.1%

25.0% 25.7%

18.3%

25.1%

19.1%

25.8%

21.9%

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

福島県 全国

震災により調査未実施

調査結果公表未了

平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度

21.9%

13.9%

16.4%

1.7%

3.9%

15.1%

27.2%

14.9%

20.5%

13.2%

51.6%

19.1%

16.5%

14.9%

0.9%

2.6%

8.3%

22.1%

11.0%

20.7%

11.9%

51.8%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

合計

鳥獣肉類(卵類)

鳥獣肉類(肉類)

魚介類

きのこ類

果実類

その他野菜類

緑黄色野菜類

豆類

いも及びでんぷん類

穀類

平成25年度

平成26年度

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調 査

でなく保護者の心情も大きな影響を与えるものと

考えられ、思うように活用が進んでいない状況に

ある。

 福島県教育庁が実施した「学校給食における地

場産物の活用状況調査結果」によると、学校給食

における本県の地場産物活用割合は平成21年度に

は37.1%で全国を上回っていたが、平成24年度に

は18.3%まで低下した。平成26年度は21.9%まで

回復したが震災前の約6割にとどまり、全国平均

(平成25年度25.8%)を下回っている(図表15)。

食品類別では、30%を超えたのは穀類のみとなっ

た(図表16)。震災前に3分の1以上で地場産物

が活用されていたことを考えると、震災後に推移

している状況は、保護者の理解を得ることの難し

さが表れている。

⑵ 意識調査等の結果 震災を機に、各業界団体などが本県産品に対す

るアンケートを実施し、その結果を公表している。

主な調査結果をまとめてみた。

① 首都圏消費者の意識調査 福島県商工会連合会が平成26年9月に首都圏の

一般消費者を対象に実施した調査によると、本県

産品を「買わない」と回答した割合は30.6%で

あった。これは平成24年9月の調査とほぼ同水準

であり、首都圏の消費者の本県産品に対する意識

はほとんど変化がなく、風評被害の根強さが表れ

る結果となった(図表17)。

② 被災地・大都市圏消費者の意識調査 消費者庁が被災地と大都市圏の消費者を対象に

実施している意識調査によると、本県産品の購入

資料:福島県商工会連合会

資料:消費者庁「風評被害に関する消費者意識の実態調査」

図表17 首都圏消費者の本県産品に対する意識

図表18 食品を買うことをためらう産地

買わない30.4

買う機会がない19.0

気にならない26.2

買う14.4

わからない8.2

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

平成24年9月

30.2 19.0 27.4 11.8 2.8 8.8平成25年12月

30.6 19.6 25.2 12.8 3.0 8.8平成26年9月

加工品を買わない 1.8

0.71.21.11.41.7

その他

2.22.52.72.7

4.1

東日本全域

6.97.6

6.37.1

8.1

北関東

4.75.4

4.85.5

6.6

東北全域

12.612.9

11.513.0

14.9被災地を中心とした東北

17.419.6

15.317.9

19.4

福島県

0 5 10 15 20 25(%)

平成25年2月平成25年8月平成26年2月平成26年8月平成27年2月

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福島の進路 2015.11

調 査

資料:日本食肉消費総合センター

図表19-1 福島県産牛肉の購入について

1.8

1.3

0.5

27.2

26.8

21.1

38.7

38.1

34.7

安ければ購入したい28.6

14.7

23.0

29.5

購入したくない34.0

17.7

10.9

14.3

わからない15.2

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

平成23年

24年

25年

26年

他の原産地の食肉と同程度の価格ならば購入したい  21.0

割高でも購入したい 1.2

資料:日本食肉消費総合センター

図表19-2 福島県産豚肉の購入について

1.7

1.3

0.6

30.7

28.2

22.1

39.4

36.8

33.4

安ければ購入したい29.1

16.5

23.5

30.0

購入したくない32.7

11.7

10.2

13.7

わからない14.8

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

平成23年

24年

25年

26年

他の原産地の食肉と同程度の価格ならば購入したい  22.0

割高でも購入したい 1.4

資料:日本食肉消費総合センター

図表19-3 福島県産鶏肉の購入について

1.9

1.5

0.6

31.9

28.6

22.5

38.6

36.4

34.0

安ければ購入したい28.7

16.9

23.7

29.6

購入したくない33.3

10.6

9.8

13.3

わからない14.8

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

平成23年

24年

25年

26年

他の原産地の食肉と同程度の価格ならば購入したい  21.7

割高でも購入したい 1.5

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福島の進路 2015.11

調 査

を「ためらう」と回答したのは平成27年2月で

17.4%となった。平成25年2月初回調査時の19.4%

より減少しているが、再び増加している時期もみ

られる。東北全域と比べると10%以上高く、依然

として本県産品購入に不安を抱く人が多い結果と

なった(図表18)。

③ 食肉(牛、豚、鶏)の購入に関する調査 日本食肉消費総合センターが実施した食肉に関

する調査(牛肉、豚肉、鶏肉)では、福島県産を

「購入したくない」と回答した割合は平成23年に

30%台半ばであったが、平成24年は30%前後とな

り、平成25年には25%を下回った。さらに平成26

年には10%台半ばまで低下しており、「他の原産

地と同程度の価格なら」、「安ければ」を含め購入

に肯定的な割合は7割程度まで回復している(図

表19-1~3)。一方、同調査では、岩手・宮城・

栃木県産に関して「購入したくない」割合が一桁

台まで低下している結果も出ており、本県産に対

する根強い拒絶反応も残っていることがわかる。

⑶ 消費者意識に対する課題 それぞれの消費者意識調査をみると、震災直後

に比べ福島県産品に対する拒絶反応は徐々に少な

くなっている傾向がみられる。しかし、購入に否

定的な回答が他の被災県や隣接県産より大きく上

回る状況は変わらない。さらに、放射性物質検査

により安全であるとの結果が出ても、本県産に対

する拒絶反応を引き続き抱く消費者が多いという

事実も受け止めなければならない。

 安全を確認した上で購入につながることは歓迎

すべきだが、震災から一定期間が経過し次第に福

島県に対する関心を失った結果が反映されること

も危惧される。震災・原発事故が風化し、次第に

福島県について考えなくなってしまうと放射線量

の高いイメージがそのまま定着する恐れがあり、

それを防ぐためにも、それぞれの団体等が定期的

に調査を実施し、消費者に向け発信を継続してい

くことが求められる。

6.県産品の海外輸出の再開

⑴ 諸外国における輸入停止の状況 原発事故以降、多くの国・地域で輸入停止措置

が採られた。次第に規制は緩和されつつあるが、

福島県を中心とする被災地域では輸入停止解除の

目途がたっていない状況である。本県に対しては

中国が全ての食品・飼料を、台湾が全ての食品

(酒類を除く)を対象とするなど輸入規制が厳し

く、香港や韓国でも果実、野菜など、本県で収穫

量の多い農産物が軒並み停止されている(図表

20)。 

 ある国が輸入停止措置を継続していることは、

その国が未だ本県の農産物に対して不安を抱いて

いると他の国へアピールしていることと解釈され

かねない。韓国が本県を含む8県の水産物輸入を

全面禁止していることに対し、わが国は不当な措

置であるとしてWTOに提訴しているが、被災県

のイメージ固定化を防ぐためにも一日も早い解除

が望まれる。そのためにはトップセールスなどの

継続も必要であると考える。

図表20 主な輸出先国・地域の本県に対する輸入停止措置 (平成27年8月7日現在)

輸出先 国・地域 輸入停止措置対象品目

中    国 全ての食品、飼料

香    港 果実、野菜、牛乳、乳飲料、粉ミルク

台    湾 全ての食品(酒類を除く)

韓    国 葉菜類、果実、米、キノコ類等

資料:農林水産省

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福島の進路 2015.11

調 査

⑵ 新たな輸出先の開拓 震災により本県産の果物は輸出が停止されてい

たが、平成24年に震災後初めてタイへももとりん

ごが輸出された(図表21)。翌25年には、なしや

ぶどうなどもタイへ輸出され、ももは約2トンが

完売した。また、マレーシアへも約1トンのもも

が輸出され、スーパーマーケットやレストランな

どで販売され、好評を博した。

 今年9月には、県と JA全農福島がインドネシ

アでももとなしを紹介するセミナーを開催し、果

物の安全性や本県の魅力などを説明した他、試食

会を行った。これに伴い、今回ももとなし合計約

1トンを輸出し販売した。

 現地においては、輸出されたももなどは、日本

国内と比べ販売価格は高く、「高級品」となって

いる。広く浸透するまでには地道な努力が必要と

なるが、福島県産は現地で普段食べられているも

のとは比べものにならないほど「甘く美味しい」

と感じる品質を有している。今後の輸出の拡大に

期待したい。

7.おわりに

⑴  我々が普段口にする食材は生きるための元と

なるものであり、当然ながら安全・安心が最も

大切である。県内で実施されている放射性物質

検査は結果が公表されており、基準値内に収ま

る結果になっている。消費者の多くは基準値を

超えた食材が流通していないことを理解してい

ると思われる。しかし、消費者意識アンケート

の結果などをみると、実際の購入行動には結び

付いていないこともわかり、このギャップを埋

めることが大きな課題である。

⑵  風評被害は一朝一夕には払拭することはでき

ず、相応に時間をかけ地道な活動で多くの消費

者に働きかけることが必要である。食材に関し

ても実際に手にして味わってみないとその良さ

を見出すのは難しく、復興支援セールなどは多

くの消費者に PRする有効な機会であると思わ

れ、今後も継続的な開催が望まれる。

⑶  豊かな自然環境に恵まれた本県では、多くの

食材で収穫量が全国上位に位置している。消費

者の意識が変わるまでに時間は必要となるが、

県内復興を目指す上で農業の復活は欠かすこと

はできない。年数が経過することで震災・原発

事故が風化することは避けなければならず、継

続した取り組みが実を結ぶことを期待したい。

(担当:木村)

図表21 県産農産物の輸出実績 (単位:㎏)

輸 出 先 品  目 平成23年度 24年度 25年度中 国 ( 香 港 ) 精米 17,000 - -

タ イ

りんご(ふじ) - 860 400もも(ゆうぞら、川中島白桃 他) - 1,100 1,925ぶどう(巨峰、シャインマスカット) - - 44なし(新高、豊水、幸水) - - 250トマト、アスパラガス - - 69

マ レ ー シ アもも(川中島白桃 他) - - 1,200ぶどう(巨峰、シャインマスカット) - - 36りんご(ふじ) - - 500

そ の 他(ドバイ、アメリカ等) もも(ゆうぞら)、福島牛等 - 443 626

合   計 17,000 2,403 5,050

福島県「福島県農林水産業の現状」