ベトナムの農産物の生産と流通

国際農林水産業研究センター（JIRCAS）

安藤益夫・小杉 正

農業概況 北東部

北西部

紅河デルタ

中央沿岸北部

中央沿岸南部

中部高原

南東部

メコンデルタ

南北１７００Km（北緯８～２３度）

・北部：四季有り，温暖冬季尐雨気候

・中部：台風銀座，高原の冷涼気候・南部：熱帯モンスーン気候，

年間温度差僅か

地域的多様性と生産の多様化

国土面積３３万㎢うち平地は２１％（７万㎢）で、紅河・メコン両デルタに集中。

農業粗生産額推移

0

20000

40000

60000

80000

100000

120000

140000

160000

1995 1998 2001 2004 2007

南部 中部 北部

１

１

２．２

４３％

10億VND

水稲作付面積単位：1000ha

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

1995 2001 2003 2005 2007

北部 中部 南部

５４％ ５７％ ５７％ ５８％ ５７％

米生産量単位：1000ｔ

0

5000

10000

15000

20000

25000

30000

35000

40000

1995 2001 2003 2005 2007

北部 中部 南部

果樹作付面積

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1995 1998 2001 2007

南部 中部 北部

単位：1000ha

１

２．２

５２％

５１％

５２％

６２％

野菜作付面積

0

100

200

300

400

500

600

700

800

1995 1998 2001 2007

南部 中部 北部

単位：1000ha

１

２．１

野菜生産量

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

1995 1998 2001 2007

南部 中部 北部

単位：1000ｔ

１

２．６

３．３

１

ランドム省の野菜生産量

0

100

200

300

400

500

600

700

800

1995 2000 2002 2003 2004 2005

ラムドン省 ダラット市

単位：１０００ｔ

１

４．２

１

２．７

ベトナムの対日農産物輸出

主要品目 2000 2002 2004 2006 2008

コーヒー豆 24.3 (1.00) 19.9 (0.82) 21.6 (0.89) 46.4 (1.91) 129.5 (5.33)

天然ゴム 5.2 (1.00) 9.5 (1.83) 14.2 (2.76) 27.8 (5.38) 34.2 (6.61)

冷凍野菜 2.9 (1.00) 4.4 (1.51) 12 (4.11) 14.5 (4.94) 13.2 (4.50)

切花　　　　　　　　　　　　　　　　　　1.5 (1.00) 3.6 (2.42) 6.1 (4.16) 8.3 (5.62) 10.1 (6.88)

生鮮・乾燥果実 2.8 (1.00) 6.8 (2.43) 4.5 (1.60) 3.3 (1.18) 5.1 (1.84)

香辛料 1.9 (1.00) 1.5 (0.80) 1.8 (0.95) 2.9 (1.53) 3.9 (2.05)

　農産物 106.8 (1.00) 140.1 (1.31) 164.6 (1.54) 271.2 (2.54) 375 (3.51)

単位：億円

ホーチミン

ハノイ

ダナン

ランドン省ダラットⅣ

バックザン省Ⅱ

ニンビン省Ⅰ

クワンナム省Ⅲ

ティエンザン省Ⅴ

各産地事例の紹介

Ⅰドンザオ食料輸出会社(http://doveco.com.vn/)

ハノイの南、車で約２時間半（ﾆﾝﾋﾞﾝ省）

1955年国営会社として設立

→ JSC(Joint Stock Company)

野菜・果樹の生産・加工→輸出

取扱品目：パイナップル，コーン，

キュウリ，レイシ，パッション

フルーツetc

原料調達・直営農場：2,500ha

・契約農家：3,500ha個別農家(2000戸超)＋農家グループ(100程度)

※パッションフルーツについては、南部２省より調達。

・契約栽培：

文書で毎年契約更新

（価格，量，購入期間）

契約違反の場合は、ペナルティー有

必要資材はすべて会社が供給

資金融資も実施(９％／年)

会社派遣の技術者による栽培技術指導

6,000ha

Ⅱバックザン食料輸出会社(http://www.baveco.com.vn/)

ハノイの東、車で約２時間（バックザン省）

1963年：アルコール生産会社として設立

1994年：食品加工会社に転身→JSC(2005

年)

果樹・野菜の加工→輸出

取扱品目：ガック(ベトナム独自のフルーツ)，

リイチ(当地域はベトナム最大の産地)，

キュウリ，コーン，カボチャetc

契約栽培による原料調達

・村当局の立会いの下で、集落単位の農家グループと契約(購入価格，時期etc)

バックザン省内の約10村(60集落＝約3000戸)

・会社：種子・肥料・農薬の提供(費用は収穫後回収)

（品質の均一性保持のため）

無利子の資金貸付，教育実施

・農家：栽培技術，標準品質，集荷場所等の遵守 → 契約違反は翌年の更新不可

加工処理能力の余裕があるので、契約農家グループの拡大を志向

Ⅲカムハ農業サービス協同組合

ダナン市近郊, 車で約40分(クワンナム省ホイアン市)

1978年設立 構成員：1,050戸

管内に約18haの野菜団地がある。

約250戸の農家が耕作。平均規模：8～12ａ程度

タマネギ等を始め、16種類の野菜生産

有機肥料として海草利用。Viet GAPを実施。

農協主導による収穫・調製・出荷の組織的対応

ＳＭ(メトロ・メクシー)への契約出荷

市によるハード面(灌漑施設等)での支援も充実

観光農業の取り組み

Ⅳダラット アグリフード会社

1976年：国営会社として設立‘80年代からタマネギ、キャベツを日本、台湾、シンガポール、

香港に輸出。

1999年：JSC形態へ移行

野菜を中心とした生産・加工→ 輸出

輸出の90％は日本向け

取扱品目：ホウレンソウ、カボチャ、インゲン、ポテト、パプリカ、ワサビ、枝豆(国内

向け)

ダラットは、フランス植民時代の1940年代から野菜生産が行なわれ、海抜1500mの高地条件と水にも恵まれた歴史と伝統のある産地。当社はその代表的存在。

原料調達

500戸程度の個別農家＋３農家グループ

安全性研修コース参加を条件とした

作業日誌の励行

技術指導チーム(15名×２チーム)による栽培指導

日本基準に基づく施肥・農薬

使用残留農薬等の厳しいチェック

収穫・出荷は会社の収穫チームが実施

(農家自ら収穫することはない)

水管理施設や資金面での援助

契約農家

直営農場

圃場：450ha（２カ所），労働者：600名

（安全で均質な原料調達システム）

直営加工工場

400名

Ⅴティエンザン野菜・果樹輸出会社

メコンデルタ・ティエンザン省

1977年国営会社として設立

→2006年 JSCへ

果樹・野菜の生産・加工→輸出

取扱品目：パイナップル，パパイヤ，

コーンetc

原料調達

1,400戸程度

（3,500ha）

10年間の長期契約

契約農家 産地集荷業者

一般農家

ティエンザン会社

調達総量の30％

(約20人)

調達総量の70％契約

（２種類の契約に基づく原料調達）

ロット確保の困難

戸数 土地なし 0.2ha以下 0.2～0.5hａ 0.5～1hａ 1～2ha 2～3ha 3ha以上 計

北部 4576469 0.4% 37.1% 46.5% 10.5% 4.0% 1.0% 0.5% 100%中部 3123888 1.0% 22.8% 44.1% 18.2% 9.5% 2.7% 1.7% 100%南部 2989396 13.3% 9.3% 22.8% 23.7% 19.3% 6.9% 4.6% 100%

全体 10689753 4.2% 25.1% 39.2% 16.4% 9.9% 3.2% 2.0% 100%（２００１年）

経営面積別農家割合

経営規模の零細性（特に北部・中部）

栽培技術の未熟性

ベトナム農業の特徴と制約

農村道路の狭隘性

プリミティブな輸送手段（自転車・オートバイ）

集荷の困難性

効率的市場流通システムの不備市場情報入手や代金決済面での不便性

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

キャベツ トマト キュウリ キングオレンジ

（VND／kg）

主要野菜・果樹の月別卸売価格(ダラット市周辺)

2008年

価格の季節変動も大きい

海外消費者 消費者

大都市卸売市場

中小卸売業者

中小卸売業者

都市小売市場 地方小売市場

小売業者

加工会社 集荷業者

産地卸市場

卸売業者

輸出業者

市場外流通 市場流通

企業自営農場 野菜生産農家

野菜生産農家グループ 野

菜の流通経路

契約

（臨時契約）

安全な農産物の安定確保

①農場の直接経営

②契約方式による農家(G)の内部化