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1 平成26年度(第37回) 校内放送指導者講座 報告 平成 26 12 26 日(金)、27 日(土)の2日間、 東京の千代田放送会館で、全国放送教育研究会連盟・N HK主催、日本放送教育協会共催による「第37回校内 放送指導者講座」が開かれました。全国から 119 人の先 生方が参加され各講座で熱心な研修が行われました。 目的 高等学校における校内放送活動の意義と役割を確かめ、その指導についての諸課題を究明するととも に、具体的な指導の充実を図る。 対象 1) 高等学校放送部(委員会・同好会)の指導にあたる者 2) 各都道府県コンテスト担当者および放送コンテストの審査にあたる者 講座一覧 講座1.顧問交流 講座2.実践発表:磐城高校の考え方 講師 福島県立磐城高等学校 中野 淳之 講座3.アナウンス・朗読 審査講習 講師 NHK放送研修センター・日本語センター エグゼクティブアナウンサー 金野 正人 講座4.番組技術と模擬審査 講師 NHK制作局 第1制作センター 青少年・教育番組部 チーフプロデューサー 桑山 裕明

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平成26年度(第37回)

校内放送指導者講座 報告 平成 26 年 12 月 26 日(金)、27 日(土)の2日間、

東京の千代田放送会館で、全国放送教育研究会連盟・N

HK主催、日本放送教育協会共催による「第37回校内

放送指導者講座」が開かれました。全国から 119 人の先

生方が参加され各講座で熱心な研修が行われました。

目的 高等学校における校内放送活動の意義と役割を確かめ、その指導についての諸課題を究明するととも

に、具体的な指導の充実を図る。 対象

(1) 高等学校放送部(委員会・同好会)の指導にあたる者 (2) 各都道府県コンテスト担当者および放送コンテストの審査にあたる者

講座一覧 講座1.顧問交流

講座2.実践発表:磐城高校の考え方

講師 福島県立磐城高等学校 中野 淳之 講座3.アナウンス・朗読 審査講習

講師 NHK放送研修センター・日本語センター エグゼクティブアナウンサー 金野 正人

講座4.番組技術と模擬審査

講師 NHK制作局 第1制作センター

青少年・教育番組部 チーフプロデューサー

桑山 裕明

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講座ごとの内容(概要) 講座1.顧問交流

参加の先生方が、8人から10人の13班に分かれ、日頃の指導や疑問と、具体的な解決策について意

見交換を行いました。 【日常の活動】

もともと放送部はなかったが、生徒に声をかけ立ち上げた

学校のCMを作ろうとし始めているところ

地域のラジオ局でコーナーを持たせてもらっている(地域でも有名)

2日間の文化祭を撮って編集→ダイジェスト版で流す

行事を編集してDVDを頒布

「カン詰めの編集の日」を設けて、そこに向けてスケジュールを作っ

ている

新聞記事をアナ原稿に直す

学校行事・地域の行事の司会・運営

兼部している生徒には両方の大会のチャンスをつぶさないように

委員でやっている生徒にもニュース原稿を書かせる(時間的拘束はしない 読むのは別の生徒)

読みは全員 その中でラジオ班 ビデオ班に分かれる 制作チームは3人以下 役割は各自で決める

編集の基本 全員で学ぶ 行事記録の撮影編集を通してやる気出てくる

先輩たちがやってきたこと、審査員から言われたことを記録しておく(文章とイラスト)

放送部専用の手帳

お昼の放送

3分3人トーク

校内イベント・ニュースの紹介 みんなが頑張っていること 校内のお知らせ

音楽リクエスト 天気予報 教員インタビュー 朝の新聞をもとにトーク

1分半で校内ニュースを3本(多いとき)

曜日ごとにテーマを決める

放送部以外の生徒を呼びインタビュー形式で放送

運動部の結果放送は喜ばれる(部ごとに担当者を決めている・必ず顧問にチェックしてもらう)

木に編成会議 金土で取材 月編集 火リハ 水12:45~放送

ワイヤレスマイクを持って教室に行く(校内放送で流す)

部員集め

授業中に勧誘

パソコンを廊下に置いて、映像を見てもらう

合格発表、入学式でインタビュー(取材クルーで視覚的にもアピール)

腕章をつけて活動 インカムに興味 新入生の前でインカムをつける

オープンスクールなどで作った映像を流す

地域の行事に参加 それを見た中学生が入学してくる

モチベーションの高め方

各行事でアナウンスさせる 何度もやると上手くなってくる 周囲の反応もよくなり、やる気が上がる

作った番組が評価されると嬉しい

地域への取材→とても好意的(励みになる)

放送部=学校のお助けマン 「すごいんだ」と盛り上げる

いい機材が入るとやる気も上がる まずマイク

維持させるためには大会は欠かせない

練習

岩手県放送専門部のサイトに講習化会のデータ(読むだけでも自分で勉強できる)

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他校の生徒とのつながりを持つ

上位校に練習に行く メニューを持って帰る 日頃の取り組み、心構えを学ぶ

OG・OBが来て指導

発声は毎日(朝・昼休み・放課後)

【アナウンス】

ネタ

校内お散歩メモ帳 メモ帳を持って20分間程度校内を歩き、

ネタを見つける

部活前に校門前を掃除 何かが見つかる

材料をインターネットから仕入れ、TVの情報番組のコーナーの感覚で作る生徒が増えている

タウン誌や周年記念誌から

職員室での雑談

まずはインタビュー インタビューの中で面白いものを探す

取材が大切 校内と関わりがあることで校外でも取材(校内で終わらせない)

卒業生や地域の人を活用(卒業生は母校愛があるので優しい)

アンケートを実施する

読んで欲しいネタをポストに投函してもらう

お昼の放送の原稿を深める

(校務員さんの仕事など)日頃スポットが当たらないところに目を向ける

原稿の書き方

初に「○○の話です」

「~しませんか」は× ○○高校では・・・×

大体 初にキャッチがくる(型が決まっている)

「およそ~」「多くの~」ではなく、具体的な数、正確な名称

指示語を避ける

「現在・過去・未来」の三部構成

後半部分にセリフを入れる

情報で終われ

修辞、印象に残る表現、伝える順、セリフで入る、一文の長さ 短く

構造で考える 何が、どこで、どうした

Nコンを録画してきて見せて考えさせる

60人集をとにかく聴かせる 真似させる テープおこしをさせる どう構成されているか研究

“聞き手がハッピーになる原稿”を心がける

まず生の体験(運動部の試合とか)をさせて感動させる

部員・顧問以外の教員に原稿を見てもらう(国語:文法 体育:熱意 )

地区の練習会で他校の教員に手直し

インタビューを入れるとメリハリ 立て直しができる(その人でないと言えないものを)

インタのセリフ、取材を通して引き出した言葉を1~2行

「取材」というと堅くなり過ぎてしまう 普通の会話のほうがいい材料が転がってる

インタビュー相手と雑談させて人間性を知る

体言止めが多いとよくない(上位でも使っている人もいる)

多用すると強調にならない(宮崎は使っても1度まで)

読みにおいては不自然 おさまらない しめられない ドラマチックすぎる

力がある生徒ならそれを読みこなすこともある

読みの練習

発声は15分 1回を長くやるより 短時間を毎日 3日あけるとよくない

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高低、声量、滑舌(ロングトーン、五十音練習帳、サイレンの音を真似るなど)

ラ(440Hz)のどを開く

声を前にとばす 口内だけでふるわせない 息に声をきちんとのせる

5m先の人に届くように

腹筋、複式呼吸→長く息を出す

立って発声するとお腹の動きがわかる 寝て発声する(背骨を固定する)

練習の後いい声になっていることがある いい声が出た時に、指摘してあげる

無声音、鼻濁音の正確さ アクセント、発音(口の形)

新聞読む→1時間で原稿作り

町の広報ビデオなどを音を消して生徒に読ませる(原稿は起こしておいて、キューはこちらで指示)

素人の人でもいいので他の人に聞いてもらう(コメントをもらう)

NコンのCDを聞いて自分の声も録音して聞き比べる

口の形、舌の位置はNHKアナウンサーの本に載っている

合同練習で他校の良いところをマネる

講習会でベテランが他校の生徒の面倒をみる 複数の先生にチェックしてもらうと良くなる

外部指導者をお願いする 県で講師を呼ぶ 上位大会前はプロの指導も

NHKが出している「アナウンス講座」1万円

NHKに送って添削してくれる講座もある

1月の終わりに引率者で審査する大会がある

アナウンスの講座には行く

日本語センターから来てくれる講習がある

良い読みとは

滑舌・発声・読み 声をしっかり出すことが前提

構造的に読む 係り受けをしっかり

スピードのコントロール 全て同じに読まない 間・スピードを考慮

間は聞く側が思ったことを言える時間

高低のプロミネンスは子供っぽくなる 高さで立てるのではなく、テンポを落とすことで立てる

テンポ・ポーズ・プロミネンスは一体化

自分の声に酔わず、「伝える」という気持ちを大切に 癖がないこと うねる、語尾が上がる×

アクセントはアクセント辞典で確認 電子辞書で音声を確認 全て確認したほうがよい

ことば+助詞、助動詞はアクセント辞典の細かいところまで読み込む

1回しか聞けないアナウンス

伝える順序 聞いてわかること

余韻を残すのではなく、伝えるべきことを伝える、文末までちゃんと

聞き手が「何?」と思ってしまうと、それ以降の情報が伝わらない

間をとる工夫で、「何だろう」と思わせる効果

お勧め教本

NHK基礎から学ぶアナウンス

現代文の朗読術(実践)

NHK先生のための言葉のセミナー

【朗読】

原稿の選び方

テーマにつながる場面がよい

その場面だけでわかるか

一番伝えたいところを決めさせる

冒頭にセリフがあると聞き手が混乱する 会話で終わるのも避ける

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登場人物が多いと辛い 人数は2~3人?

地の文・会話文のバランス重要 地:セリフ=6:4ぐらい

全国大会出場生徒が選んだ場面もぜひ参考にする

演じるのではなく表現する

声色を使ってはいけない(普段の話し方から遠ざかりリアリティが無くなる)

「ラジオ文芸館」おすすめ

朗読の会話 セリフの背後に場面が浮かぶように(役者ではない、画を見ている感覚)

かけ合いの場面 感情をぶつけるのは演劇 朗読は、間で画を思い浮かべるのを待って次のセリフ

登場人物をしっかりイメージ 場面で描かれている人物の動きを想像して間をとる

57回決勝がオススメ

解釈・読みのズレ “伝わるか”部員内でよく聞き合う

息で読む(ささやく)読みは声が遠くへ飛ばない 表現としてはある 全てになってはダメ

全国大会CDをよく聞き、審査結果を比較、検討

シャドーイングで息づかいをまねる

【ドキュメント】

内容を決めてからテレビの方がよいかラジオの方がよいか決める

作っている間にやっぱりラジオ(テレビ)の方が良かったと思うことはある

テレビ、ラジオのどちらにも出来るようにしておく(テレビでもデジタルレコーダーで録っている)

テレビは音が大事 ラジオは想像される絵が大事

著作権処理可能かもチェック

ネタの見つけ方

テレビ、ラジオ、新聞(普段から切り抜いて保存、地元のニュース録画)からヒントを得る

人間模様を加えていく

数多くの取材をする 必ず聞いてくることを決めておく

校内放送のために、普段から取材しているので、その中からコレという素材を番組につなげていく

いくつか素材を持ち寄ってアイデアを出し合い、少しずつ絞っていく

毎日、地域の新聞を持って来させて、興味のある記事を選ばせる

低限、1か月前に筋が決まっていないようであれば諦めさせる

職朝の苦情もネタにする

ドキュメンタリーの撮影

NHKのドキュメンタリーなどをよく見て研究する

逆光にならないように注意する

ロケハンに行き、事前に状況を確認する(映ってはいけないもや、音楽が流れていないかもチェック)

構成の作り方

起承転結 ボードに付箋で貼っていく(はじめは生徒だけだと難しい)

【ドラマ】

限られた空間にしたことで想像がかき立てられた

起承転結を意識して流れを決める

担当の生徒が脚本を書いてくる→全員で見直す という作業を何度かする

演技力はドラマを作っているうちについてくる

シナリオ作り

生徒にいくつかの案を出させて、その中から決めていく

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2つの流れを作ってその間にバトルがないといけない

演じる人を先に決めてそれに合ったシナリオを作った

高校3年間でネタを温めていた

生徒がどこからかネタを取ってくる どこかしら似てしまうことがある 盗作になる懸念

脚本を5~6回書き直し、2か月前から通し稽古、練習して録音する

Nコンに出品するには、年明けから始める(テレビドラマは半年かけても完成させるのが難しい)

ナレーションに頼るのではなく、できるだけ映像や演技で見せる

一部だけの撮り直しは基本しない 光の感じ(トーン)が変わってしまう

効果音は作ったものをストックしておく 全部作る PCで加工

【顧問】

合間ごとに関わり、気になったことは言う 基本的には生徒主体で

ある程度、形になったところで見てみる。

なるべく早めに関わる。 後の 後でダメ出しをしても間に合わない

作品の入り口と出口を決めるよう指導

代替の表現を提案

指導者もアナウンス講座などに参加

細かいことばかり言うと生徒のテンションが下がったので、いろいろ考えながら指導している

「起承転結」はしっかり見てあげる

テーマの絞り込み(何がニュースなのか)を考えさせる

講座2.実践発表:磐城高校の考え方

講師 福島県立磐城高等学校 中野 淳之

講座2では、近年NHK杯全国高校放送コンテストでも素

晴らしい作品を数々発表している福島県立磐城高等学校の中

野淳之先生を講師に迎え、「磐城高校の考え方」というタイト

ルで実践発表をして頂きました。 磐城高校では放送委員会として放送活動がおこなわれてお

り、特に意欲のある生徒が「活動員」としてコンテストやコ

ンクールに挑戦しています。その進学先の保証にも顧問としては気を配っているとのことでした。活動

時間は平日19:00までを遵守。 以下、中野先生の発表スライドから引用させていただくと、 ・どんな大人になってほしいか →アナウンサーや映像作家ではなく、限られた環境でも、良い仕事の出来る人材

・危機的な状況でこそ人は成長する。 4年連続優勝した世代は、高校2年~中学2年で、震災・原発事故を経験 ・番組制作指導の考え方 →同じ方法論でも人が違えば変わる。生徒は学校(学年)によって違うので学校(学年)に合った

指導法を。磐城高校も毎年変わる。正解はない。アプローチは様々。 ・番組制作にどう取り組むか

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→ドキュメントは「今」を切り取る。ドラマは納得のいくまで「造り込む」 番組作りに関しては、以下のような点が話されました。 ・ネタ探しが も大切。 ・足下の高校生活からネタを探す ・インタビューは相手の本音を引き出すものを(情報+表情) ・ナレーションは少なめに ・構成はいかに問題提起をスムーズに行うか、が大事 ・磐城高校は撮影してから構成 ・どうやって感情移入させるか、という 初の30秒がポイント ・テレビならば強い映像を軸に組み立てる ・強い映像(素材)にこだわって欲しい(良い表情、良い場面、良いコメント)

中野先生の指導の方針は、そこにいる生徒に合わせて ・才能を見る ・才能を伸ばす ・才能を組み合わせる ・才能を活用する

とのことでした。 「結果は運、過程は絶対」「失敗は OK、ビビリは NG」とおっしゃる中野先生の言葉 に、生徒の活動を後押しする大きな力を感じました。 また、中野先生がお考えになる「顧問に必要な能力」とは、 ・人を見る眼力 ・状況を見る眼力 ・コミュニケーション能力 ・要約力(因数分解) ・バランス感覚(強みはどこなのかを見た上で)

というご意見でした。 中野先生は、「普段やっていることが一番大切。足元を固めて、活動に取り組む。生徒の 成長が大切。」とお話を結んでいらっしゃいました。放送活動が人間としての成長に大きく 関わるものだと改めて感じさせられた発表でした。また、番組制作に関して〆切を守らせ、 活動の全体像を描く、生徒が決めたことを優先し、 初の視聴者として生徒の作品を視聴 するという顧問の仕事についても大いに示唆を得ました。 講座3.アナウンス・朗読 審査講習

講師 NHK放送研修センター・日本語センター エグゼクティブアナウンサー 金野 正人

講座3では、61大会の決勝でアナウンス・朗読部門の審査をご担当いただいた NHK 放送研修セン

ター・日本語センター エグゼクティブ・アナウンサー 金野正人 先生を講師にお迎えし、模擬審査

をしながら審査のポイントや原稿の書き方、抽出の仕方等についての具体的なご指導をいただきました。

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まず金野先生にご挨拶をいただいた後、審査基準を確認し、早速アナウンスの模擬審査が始まりまし

た。61大会の準決勝に残った3年生の中から選んだ4人のアナウンスを CD で流し、本番さながらの

審査を行いました。そのあと、審査用紙を回収し、集計を行っている間、6人グループで討議をしてい

ただきました。ベテランの先生方の、豊富な経験に裏打ちされたお話と、審査初体験の先生方からの素

朴で新鮮な視点が混ざり合う大変貴重な話し合いが行われました。金野先生も会場をまわってこの話し

合いの様子をご覧になり、そのお声に耳を傾けてくださいました。 そして審査結果の発表をし、会場の審査点と当日のコンテスト点、そして金野先生の審査点を見なが

ら、金野先生に貴重なアドバイスをいただきました。朗読もこの流れで行いました。金野先生は、実際

の原稿を時にご自身で音声化しながら、より具体的にご指導くださいました。以下、金野先生のお話し

くださった内容をかいつまんで挙げてみます。 ① アナウンス ・立てるべき内容をしっかり吟味し、現場でリポートしていく気持ちで、動機を持って原稿に向き合

うことが大切。 ・文章も統一感をもたせて、聞いている人が分かりやすいように配慮するとよい。 ・人物を掘り下げるエピソードは、その例でよいのかをしっかり吟味しよう。また、当人だけの取材

ではなく、周囲の声も入れると客観的に人物像が浮き上がってくる。 ・意味のくくりがあいまいだと正確に伝わらない。切れ目をどこにするかも重要。 ・結局は聞き手が分かったかどうか、伝わったかどうかにかかっている。そのための自然なイントネ

ーションや間、緩急のバランスを考えてほしい。 ② 朗読 ・自分以外の他人の書いた文章を読む。この時、「字」を読むのではなく、意味を伝えるという意識を

持ってほしい。読み手が内容をとらえ、考え、表現する。 ・表現に唯一絶対はない。 ・冒頭の一文はとても大切。朗読の世界に引き込む役割。 ・抽出部分の選び方で大きく変わる。伝えやすく印象的な場面であるかどうかの検証を忘れずに。 ・セリフ部分はその前後の表現に注意し、普段の会話を意識して不自然にならないよう表現する。 (ここで金野先生は、乃南アサの短編「青年のお礼」の会話部分を例に挙げ、実際に実演してくださ

いました。) 真剣に審査に取り組む参加の先生方の熱意と、金野先生の具体的な示唆に富んだお話とで、充実し

た165分が流れました。 講座4.番組技術と模擬審査

講師 NHK制作局 第1制作センター

青少年・教育番組部 チーフプロデューサー

桑山 裕明

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午前中は模擬審査、午後は桑山プロデューサーによる講義とワークショップ。 説明 10:10~ 司会より進行の説明 ・本日(講座4)の流れについて ・審査基準説明(下線部は強調していた部分) (前提)脚本は参加資格を有する自校生徒のオリジナル作品であること (前提)研究主題「私たち高校生と放送」のテーマに沿った、高校生に向けた内容であること (審査)技術面については、構成・演出、演技、技術(録音・撮影・編集など)に着目すること。 (審査)60~80 点が目安だが、自由に採点するということ (審査)審査用紙の説明 模擬審査(創作ラジオドラマ) 10:16~ 創作ラジオドラマの模擬審査開始 作品1 … 大雪による停電を舞台にした、家族のつながりを描いた作品 10:16~10:24 作品2 … 演劇部員の衝突と和解を描いた作品 10:24~10:32 作品3 … 日常に潜む何気ない幸せへの気付きを描いた作品 10:33~10:41 作品4 … 放送部の発声練習を題材にした作品 10:41~10:49

・審査用紙回収 10:49~10:51 なお、作品と作品の間には 30 秒程度の時間が確保されていた。(採点やメモ等のため) 10 分間休憩 模擬審査(創作テレビドラマ) 11:01~ 創作テレビドラマの模擬審査開始 作品1 … 「※ただしイケメンに限る」をモチーフにCGを多用した作品 11:01~11:09 作品2 … 友人の死を受け入れるまでの葛藤をホラー風に描いた作品 11:10~11:18 作品3 … 極限状態でのエゴと自己犠牲を題材にした作品 11:19~11:27 作品4 … 放送部員の恋を題材にした作品 11:28~11:36

審査用紙回収 11:36~11:38 ラジオドラマ同様、作品と作品の間には 30 秒~1 分程度の時間が確保されていた。 ディスカッション 11:38~ 班ごとのディスカッション ・司会から説明(机を向い合せるなど)11:38~11:40 ・ディスカッション 11:40~12:29 ・司会から説明(机を戻す、午後のワークショップでは班を分割、など)12:29~12:31 昼休みを挟み、午後の部へ。

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模擬審査結果発表 13:30~ ・模擬審査の集計結果発表 ・今回、テレビドラマの 4 作品の上映順は、実はコンテスト本番の得点順にしてあった。 (前日のアナウンス・朗読の模擬審査では、 初の作品を70点にする審査方法が提示されていた。) 桑山プロデューサーより 13:40~ ・見られる番組をどう作るか。 番組は見られることが第一歩なので、見たくなる、見続けたくなる番組作りのコツを伝える。

まずは、作品全体の起承転結のバランスに注意すること。 「起」はコンパクトにまとめ、「承」と「転」に時間を割くとよい。

・ベースプランは授業から 学習指導要領は非常に参考になる。「情報活用能力」の項は特に有用。

情報活用能力=情報の質+情報伝達、というノウハウを利用するとよい。 ・後戻りできない中で疑問を作らない伝え方 再上映や再オンエアは無いので、疑問に答えを用意する。 ・情報発信の鉄則「受け手には責任がない」 受け止め理解できるような番組をつくる。 ・情報発信とは、分解⇒絞り込み⇒構成である。 自分+外の情報を収集・分解 ⇒ 必要なものだけを絞り込み ⇒ 相手に伝わるように構成 ・大前提として、「知りたい・驚き・共感」すべてを含むこと。 知的好奇心を刺激し、サプライズを提供し、共感できるような番組を。 ・こだわりは問題児となる。 ねらいを明確にして、絞り込みを大切に。 ・飽きさせない工夫 3分に一度、(明日すぐ役立つ情報)(自分も経験があるが、他人にも興味のある情報)(新しい視点) (自分のポジションが確かめられる)(新しい情報)のいずれかを入れる。

・見終わった後、分かったことがある。 相手に作品のねらい、テーマが伝わるかどうか。 ワークショップ① 14:00~ ①アイスブレイク ・班をつくる ・各自、自分の一番好きな俳優の名前を挙げる ⇒ その 50 音順で班内の役割分担 ②作品114:05~14:45 作品を再度見て、「~が分かった。~の情報から。」という形で作品のねらいを再発見する。 「ねらいの設定 ⇒ 作品制作」の逆、いわば作品のリバースエンジニアリングを行うのが目的である。 テーマを再発見し、そこに至る方法論(作品作り)が妥当であるか否かを確認する。

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まずは個人作業で意見を出し、班ごとのグループワークでまとめる。 ・説明 14:05~14:09 ・再上映 14:09~14:17 ・個人作業とグループワーク 14:17~14:35 ・グループ発表(5 名)と解説 14:35~14:45 グループワーク中に桑山プロデューサーが机間巡視を行い、5名(5班)すべてが違うものを発表した。 (自分から動くことは大切、男子高校生のばかばかしさ、など) 同じ作品でも視聴者によって受け取る情報が違う、という事が事実を伴って改めて提示された。 ③作品314:46~15:20 同様に、「~が分かった。~の情報から。」という形で作品のねらいを再発見する。 ・再上映 14:46~14:55 ・個人作業とグループワーク 14:55~15:10 ・グループ発表(5 名)15:12~15:15 ・まとめて解説 15:15~15:20 2度目なので、非常にスムーズなグループワークが展開されていた。 「絞り込み」について 15:25~ ねらいを明確に伝えるためにどうやって情報を絞り込めばよいのか。 ・共感は大前提として、「驚き・感動・不思議」が必要。「不思議」という感情をどう引き起こすか。 ・共感とは、感情移入を意味する。 ・相手(視聴者)を意識した作品作り。 ・別視点からの情報を加える。 ・楽しい(=笑い or 感動) ・筋が通っている+納得感 ワークショップ② 15:27~ 文字メディアとTV(映像+音声)のメリットとデメリットについて、小学 6 年生が分かるように説明。 ・説明 15:27~15:29 ・個人作業とグループワーク 15:29~15:40 ・発表(1 名)と解説 15:40~15:43 時間的な余裕が少なくなってきたため1名のみの発表にとどまったが、冒頭で説明された「地上波テレ

ビとコンテスト用作品の違い」の再確認を インタビューについて 15:43~ ・手法としてインタビューが使えるのは、その相手にしか言えない情報、つまり「動機」と「説明」を

挿入したい場合のみ。ここにインタビュイーの感情が出ていたら、より good。

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・証言取りやつぶやきから本音を取り出したい場合は、必ず事前取材が必要となる。 再取材で言葉尻がしっかりした印象に残る言葉を得る、あるいは心理操作でつぶやかせる、など。 この部分において、インタビュアーの手腕は問われる。