30
鋼板挿入型ドリフトピン接合による 木質構造接合部の非線形解析と実験 近畿大学大学院 堀智之

鋼板挿入型ドリフトピン接合による 木質構造接合部 …...鋼板挿入型ドリフトピン接合による 木質構造接合部の非線形解析と実験 近畿大学大学院

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鋼板挿入型ドリフトピン接合による 木質構造接合部の非線形解析と実験

近畿大学大学院 堀智之

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研究背景 2

「格子状吹き抜け構造」という従来の木造住宅の吹き抜け構造とは違う、

新たな構造モデルの力学特性を解析する手法の構築が研究されている。しかし、完成させるには、様々な問題がある。

問題点として、実大寸法の格子状吹き抜け構造の正負繰り返し載荷試験をしたところ、接合部である が変形し耐力向上

が乏しかったことがあげられる。

区画梁接合部 GOYA金物

GOYA金物

格子梁接合部 T字型プレート

図5. T字型プレート

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・面材,火打ち仕様とは異なる横架材ユニット

・床または吹き抜けを含む床構面として活用

図1. 格子ユニット一例

2P×2P 2P×3P 4P×4P-2P×2P 4P×4P-1P×2P 4P×4P-3P×4P

1P=910[mm]

図2. 活用例

2730

910

3640

格子状吹き抜け構造(格子ユニット)について

吹き抜け 床張り 可能

格子ユニット 格子状吹き抜け構造

3

基本モジュールを表す記号「P」 ・格子形状・

2P×2P -最小サイズ 4P×4P -最大サイズ

3

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
格子状吹き抜け構造に用いられる格子ユニットとは、 面材仕様・火打ち仕様とは異なった格子状または田の字状の横架材格子ユニットのことである。 本来、床または吹き抜けを含む床構面として活用できる水平構面である。 1P=910mmとし、2P×2Pサイズを最小、4P×4Pサイズを最大なものと設定した。 この格子ユニットを活用することによって、 「吹き抜けであった空間に床を貼り、新たな間仕切りを取り付けて居室を作る」ことや、 逆に「床を取り外して居室から吹き抜けに変更する」ことがより容易に行う事が出来ると考えられる。 さらに、格子部分に床だけでなく、すりガラスやカラーボード、照明などを 住まい手の好みに合わせて自在に取り付けることにより、 従来の吹き抜け空間とは異なる新たな空間デザインの可能性が広がると期待できる。   本研究では、既往の研究ではまだ耐力特性が十分に検証されていない、 吹き抜け面積の最も大きな4P×4P-3P×4Pサイズの吹き抜け格子タイプについて実験および解析を行った。   ((この格子ユニットの特徴として3点が挙げられる。 吹き抜けを有する間取りで床構面および屋根構面の剛性・耐力の確保ができる。 狭小地の住まいにおける、採光・通風の確保ができ、また開放的な空間を演出できる。 住まい手の長期スパンのライフスタイルに合わせて間取りの変更が可能となる。))  
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図3. 構成部材

2730

910

3640

区画梁

ユニットの構成部材について 4

4

格子ユニット構成部材 格子状吹き抜け構造

格子梁 +

区画梁接合部 GOYA金物

剛性 1k

図4. GOYA金物

格子梁接合部 T字型プレート

剛性 2k

図5. T字型プレート

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
格子状吹き抜け構造に用いられる格子ユニットとは、 面材仕様・火打ち仕様とは異なった格子状または田の字状の横架材格子ユニットのことである。 本来、床または吹き抜けを含む床構面として活用できる水平構面である。 1P=910mmとし、2P×2Pサイズを最小、4P×4Pサイズを最大なものと設定した。 この格子ユニットを活用することによって、 「吹き抜けであった空間に床を貼り、新たな間仕切りを取り付けて居室を作る」ことや、 逆に「床を取り外して居室から吹き抜けに変更する」ことがより容易に行う事が出来ると考えられる。 さらに、格子部分に床だけでなく、すりガラスやカラーボード、照明などを 住まい手の好みに合わせて自在に取り付けることにより、 従来の吹き抜け空間とは異なる新たな空間デザインの可能性が広がると期待できる。   本研究では、既往の研究ではまだ耐力特性が十分に検証されていない、 吹き抜け面積の最も大きな4P×4P-3P×4Pサイズの吹き抜け格子タイプについて実験および解析を行った。   ((この格子ユニットの特徴として3点が挙げられる。 吹き抜けを有する間取りで床構面および屋根構面の剛性・耐力の確保ができる。 狭小地の住まいにおける、採光・通風の確保ができ、また開放的な空間を演出できる。 住まい手の長期スパンのライフスタイルに合わせて間取りの変更が可能となる。))  
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実験方法と結果 5

図9. 試験体A(E105) 図10. 試験体B(E105)

5

◆実験について:試験体の端部はピン支持とし、頂部を水平ジャッキにより正負繰り返し載荷を行う

◆加力装置のストローク限界に達しても破壊までには至らなかったが、架構の変形性状の違いに起因する接合部の初期不正の影響が確認された。

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
◆提案する格子状吹き抜け構造における床倍率は0.19の性能を有していることを確認した。 ◆両者の耐力特性はほぼ同程度であるが、試験体Aの方が小さな特性を示す結果となった。
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本研究の目的 6

実験により発覚した木造接合部(T字型プレート)についての問題、ドリフトピンの大きさ、ピンを打つ位置、鉄板の厚さなどの設計に必要なメカニズムを、的を絞った実験により把握する。

汎用有限要素ソフトアンシスを使用し、力の流れを正確に把握することにより、格子状吹き抜け構造の完成を目指すことを目的としている。

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鋼板挿入型ドリフトピン実験概要 7

7

鋼板挿入型ドリフトピン

試験体P2-2D

試験体P1-2D

試験体は、同様の形状でドリフトピンの軸径が4D(D=16)のものでピンの本数が1本(P1),2本(P2),3本(P3)があり、それらに対しても同様に実験を行う。

格子梁接合部 T字型プレート

図5. T字型プレート

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
格子梁による床倍率の違いを検証する為に 2つの解析モデルの床倍率の比較を行った。 ひとつは、格子梁なしの区画梁剛性のみのモデル もうひとつは、格子梁があるモデル  の床倍率の検証を行った。 その結果です。 それぞれの床倍率は0.0751、0.230となり、数値としてはおよそ3.1倍にもなった。 この結果から、格子梁があることでかなりの剛性を確保できているといえる。
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8

8

変位計

実験方法

矢印の位置に変位計をセットし試験体の両端部を固定し引っ張り圧縮試験機にセットし引っ張り試験を行う

拡大

変位計

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
 解析結果から接合部剛性 の関係性をみてみると、 以下の図のような関係性が得られた。 区画梁の接合部剛性 k1および格子梁の接合部剛性k2をパラメトリックに変化させた時の架構の水平剛性Kの値を図9,10に示す。 この関係は、区画梁の接合部剛性 k1および格子梁の接合部剛性k2 の値をそれぞれ とし、 それぞれの値が1/10ずつ増えていくたびにお互いの数値はどのように相互変化していくか ということを20回変化させて関係をみたものである。 格子梁の接合部剛性k2に対する水平剛性Kの影響は、区画梁の接合部剛性k1よりも大きいことが示された。
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実験結果(試験体終局状況) 9

P1-2D

P3-2D

P2-2D

P1,P2について終局状況は、鋼板によりピンが引っ張られるため側面に損傷が見られた。

P3については、ドリフトピンの間から部材が完全に割れていることがわかる。これは、ピンとピンの間に応力が集中しているためであると考えられる。

せん断応力度分布(解析)

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解析方法

10

10

◆本研究の解析では、直交異方性体の弾性応力により解析を行う。直交異方性の主軸を(x, y, z)とする直交異方性体を考えると,その弾性応力-ひずみ関係は,次式で与えられる。

Eはヤング係数、Gはせん断弾性係数,nijはi方向の垂直応力によってj方向に生じる垂直ひずみの大きさを表すポアソン比である。式中の弾性コンプライアンスマトリックスは通常の等方性弾性体の場合と同様,対称マトリックスとなる。

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
・下端をピン支持された四辺形に閉じた骨組構造の解析を行った。 ・接合部を回転ばねとした骨組モデルを荷重に対して各部材に生じる応力および架構の変形をたわみ角法に基づき定式化をして解析を行った。 ①たわみ角の基本式 ②モーメントのつり合い式 ③部材角の関係式 ④せん断力のつり合い式 ⑤条件式       ↓ ①~⑤を連立して 解を求める。
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Hillのポテンシャル理論- 11

11

木材のように年輪に対して繊維方向、接線方向、半径方向のように荷重のかける向きによって強弱がある場合は方向異方性のHillポテンシャル理論を用いる。Hillの基準は材料の異方性降伏を考慮するためにvon Misesの降伏条件を拡張したものであり,この基準が等方硬化則として使用される場合,降伏関数は以下の通り求められる。

σ0=参照降伏応力 εp=相当塑性ひずみ、 {σ}=応力ベクトル [Cp]=塑性コンプライアンスマトリックス

材料は3つの対称直交平面を持つと仮定すると,材料座標系がこれらの対称平面に対し法線方向である場合,塑性コンプライアンスマトリックスは以下のように表される。

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
・解析モデルは図のように接合部を回転ばねとした骨組モデルを対象とした。 区画梁の接合部剛性をK1, 格子梁部分の接合部剛性をk2とし、先ほどのスクリーンで示した値を扱った。
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採用する材料定数と降伏応力値 12

12

方向 値 単位 備考

ヤング係数E L 10500 N/mm2 EL R 420 N/mm2 EL/25 T 420 N/mm2 EL/25

せん断弾性係数G LR 700 N/mm2 EL/15 RT 700 N/mm2 EL/15 TL 700 N/mm2 EL/15

ポアソン比ν LR 0 RT 0 TL 0

記号 値(N/mm2) 備考 降伏応力比Rij

単軸降伏応力 FL 30.0 FL FL/FL=1.000 FR 3.75 FL/8 FR/FL=0.1250 FT 3.75 FL/8 FT/FL=0.1250

せん断降伏応力 FLR 3.00 FL/10 FLR/FL=0.1732 FRT 3.00 FL/10 FRT/FL=0.1732 FTL 3.00 FL/10 FTL/FL=0.1732

表1 採用する材料定数

表2 採用する降伏応力値

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有限要素法による弾塑性解析 13

13

φ1224

800

120

300

スリット11mm

11

解析モデルは,下図に示す試験体に対し,ドリフトピン(P)本数および端距離(直径D=12mmのドリフトピン径の2倍,4倍,6倍)の異なるモデルで解析する。

解析モデル(基本形状)

φ1224

800

φ1248

800

φ1272

800

φ12

24

800

75

φ12

48

800

75

φ12

72

800

75

P1-2D

P2-2D

P1-6D P1-4D

P2-6D P2-4D

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モデルの要素分割 14

解析は,試験体の対称性を利用し,1/2解析モデルによって解析を行った。 2D-1モデル,4D-1モデルの要素分割を示す。

2D-1モデル 4D-1モデル

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解析結果

15

0

5

10

15

20

25

0 1 2 3 4 5

荷重

(kN

)

変位(mm)

解析

実験

0

5

10

15

20

25

30

0 1 2 3 4 5

荷重

(kN

)

変位(mm)

解析

実験

2D-1モデルの荷重変位関係

2D-1モデルの相当応力度分布

4D-1モデルの荷重変位関係

4D-1モデルの相当応力度分布

ピンの位置が端から近いもの ピンの位置が端から遠いもの

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二つのモデルの比較 16

4Dと2Dのモデルを比較すると解析と実験の結果はほぼ同じ値を示した。そして、4Dと2Dでは2Dの方が少ない荷重で大きく変位していることが確認された。 0

5

10

15

20

25

30

0 1 2 3 4 5

荷重

(kN)

変位(mm)

4D-1・解析

4D-1・実験

2D-1・解析

2D-1・実験

相当応力の分布と実験の終局状況を見ても全く同じ箇所が破壊されており、実験と解析の妥当性が伺える。しかしピンと木材の接触要素を考慮しないと解析結果に大幅場なずれが生じることが確認できた。

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P1,P2モデルの端距離の比較 17

P2のせん断応力度分布

0

20

40

60

80

100

120

0 1 2 3 4 5

荷重

(kN

)

変位(mm)

P1-6D

P1-4D

P1-2D

0

20

40

60

80

100

120

0 1 2 3 4 5

荷重

(kN

)

変位(mm)

P2-6D

P2-4D

P2-2D

P2モデルの端距離の比較 P1モデルの端距離の比較

P1のせん断応力度分布

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ピン軸径(2D,4D)ごとの比較 18

2D

0

10

20

30

40

50

60

70

0 2 4 6 8

荷重

(kN

)

変位(mm)

2D-1

2D-2

2D-3

0

10

20

30

40

50

60

70

0 2 4 6 8

荷重

(kN

)

変位(mm)

4D-1

4D-2

4D-3

4D

◆2Dはドリフトピンの数が増えるごとに、耐力も2倍、3倍と大きくなっていることがわかる。

◆4Dでも2Dと同様にドリフトピンの数が増えるごとに変位も増大していくことが分かった。

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ドリフトピンの曲げ実験 19

実験目的:格子状吹き抜け構造の鋼板に挿入されている格子梁のドリフトピンの耐力を正確に把握する。

2730

910

3640

格子梁接合部

T字型プレート

剛性

2k

図5. T字型プレート

ドリフトピン

実験方法 変位計をセットし、試験体を引っ張り圧縮試験機にセット。両端に支えを持たせレーザーによりピンの真ん中を圧縮し鋼材の変位,荷重,曲げ応力度,ひずみ度を計測する。同じ試験体を3つ用意し同様の実験を行い実験によるデータの正確さと合わせて結果を検討する。

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実験結果 20

試験体終局状況

試験体1 試験体3 試験体2

0

2

4

6

8

10

12

0 5 10 15

荷重

(kN

)

変位(mm)

試験体1

試験体2

試験体3

正確な実験データを取るため材質SS400の同型のドリフトピン3つの耐力実験を行った。荷重と変位の関係から初期剛性は高く約6KNを超えるまでは変位もそれほど大きくはなかったが、6KNを超えてからは大きく変位し10KNで約15mm変位した。

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解析概要 21

解析モデル 試験体1

解析は実験で使用したドリフトピンと全く同じ形状、厚さ、ヤング係数で解析を行い力の流れと応力集中箇所の算定を目的とし解析を行った。加える応力は実験と同様にピンの頂部の真ん中に応力を加え荷重と変位を求める

ヤング係数:230KN/mm2

摩擦系数:0.00002≒0 降伏応力値は実験から得

られた値とする

ポアソン比:0.3

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解析結果 22

解析終局応力度分布

試験体1終局状況

解析の応力度分布からピンの中心部に応力が集中していることが分かる。解析結果と実験結果を比較すると6kNまでは両者とも弾性域であるが6kNを超えてからは塑性域に入り、徐々に変位が大きくなり最大で14㎜の変位が確認された。また金属などの等方性材料は解析でほぼ同じ値になることがわかった。

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鋼板挿入型ドリフトピン接合実大実験 23

目的:これまで行ってきた実験のまとめとして行った実験の結果から分かったそれぞれの問題点を考慮した実験を行う。

問題点①:ドリフトピンの数が増えるにつれ、ピンとピンの間に応力が集中し部材が真ん中から割裂してしまったこと

問題点②:ドリフトピン1本の耐力は約10kNであったこと

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問題点の解決 24

問題点①について:ドリフトピンが一列に並んでいたため応力を分散できずにピンとピンの間に応力が集中してしまったと考えられるので、今回の実験では応力の分散を図るためピンの間にある程度の不規則性を持たせることとした。

問題点②について:ドリフトピンの本数を82本と前回よりも多くすることでピン1本が負担する耐力を軽減させる。もっとも単純な計算であるが一本につき約10kN負担するので、82本であれば全体で約820kNの耐力が期待されるのではないかと予想される。

前回の実験 今回の実験

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試験体概要 25

105

105

450

210

3000 650 650 3000

8160

3980

3430

580 580

3430

430 4307300

3980

48

溝形鋼200-90-8-13.5-L450鋼鈑(SS400)450-580-t9

ドリフトピンDP16-210(丸鋼φ16-L210×40本)

構造用LVL 105-450(120E-320F/55V-47H)

M16ボルトL185 スチフナ(t=9)

高力TCボルトM20-L60

ドリフトピンDP16用孔加工木材:φ16孔,鋼材:φ16.5孔

φ18貫通孔(φ50段差孔)

φ22孔

105 105

210

450

200

550 550

50505050

φ18貫通孔(φ50段差孔)

900 900 900 900

8 8

φ18貫通孔(φ50段差孔) φ18貫通孔(φ50段差孔) φ18貫通孔(φ50段差孔)

140

φ18貫通孔(φ50段差孔) φ18貫通孔(φ50段差孔) φ18貫通孔(φ50段差孔)

φ18貫通孔(φ50段差孔)

50

25

M16ボルトL185

25

50

87.5

87.5

900900900900 1409

鋼鈑:φ18孔木材:φ18貫通孔(φ50段差孔)

87.5

50

87.5

50

φ22孔

φ22孔

φ22孔

φ22孔

φ22孔

φ22孔

φ22孔

φ22孔

φ22孔

φ22孔

48

9

200

部品

その他すべてφ16.5孔

48

48

鋼鈑450-580-t9(SS400)

φ18孔

450

48

580

100

φ22孔

50

87.5

87.5

87.5

87.5

50

ドリフトピンDP16用孔加工木材:φ16孔,鋼材:φ16.5孔

484848484848484848

48

48

48

33

33

48

48

48

48

480

488 488

484848484848484848

48

48

48

33

48

48

48

33

試験体前長8150㎜。

ドリフトピンの本数82本。

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実験概要 26

実験は試験体の中心からの1300㎜の部分を頂部から金物を当てその金に荷重をかける方法で圧縮試験を行う。またD1~D7は変位計の位置を示す。

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実験結果(試験体終局状況) 27

試験体(実験前) 試験体終局状況

試験体(接合部) 試験体(接合部)終局状況

接合部終局状況

試験体は前回の実験とは異なりピンとピンの間から部材が破断することはなく、木材の中にある鋼板が先に破断し試験機のストローク限界となった。

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実験結果(変位計ごとの変位荷重) 28

真ん中に設置した変位計が最高変位を記録し120kNで20㎜変位することがわかる。D2の変位計も大きく変位を記録しているがこれは実験の手違いにより実験途中で変位計がずれたためこのような値となった。曲げに対するヤング係数は6.66kN/㎟となった。また最大曲げモーメントは180kNmであり、耐力は400kNと予想の半分程度耐力であった。

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まとめ 29

本研究の目的

目的①:接合部(T字型プレート)の耐力を向上させることにより、格子状吹き抜け構造の完成を目指す。

目的②:接合部の耐力向上のための実験と解析の結果を比較し解析の妥当性の検討を行う。

0

5

10

15

20

25

30

0 1 2 3 4 5

荷重

(kN

)

変位(mm)

4D-1・解析

4D-1・実験

2D-1・解析

2D-1・実験

Page 30: 鋼板挿入型ドリフトピン接合による 木質構造接合部 …...鋼板挿入型ドリフトピン接合による 木質構造接合部の非線形解析と実験 近畿大学大学院

それぞれの成果のまとめ 30

目的①の成果:最終的に行った鋼板挿入型ドリフトピン接合部の実大実験では耐力400kNm、曲げに対するヤング係数は6.66kN/㎟となりまだまだ耐力の向上が不可欠であることがわかった。これまでの実験では接合部問題に対しての実験解析を行っただけであるので、今後は今までに行った実験をもとに格子状吹き抜け構造の実大実験を行い、改めて問題を把握し格子状吹き抜け構造の完成を目指してほしい。

目的②の成果:鋼鈑挿入型ドリフトピン接合では, Hillのポテンシャル理論にもとずく木質材料の異方性また,ドリフトピンと木材との接合面には接触問題を考慮しなければ、部材の寸法や降伏応力値等を同じにしても全く違い値になることがわかった。