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非局在化電子を持つ化合物:反応性 非局在化電子を持つカルボカチオン 非局在化電子と pKa 共役ジエンの反応 1

非局在化電子を持つカルボカチオン 非局在化電子と pKa 共役 ...tnagata/education/ochem1/2019/ochem1...CH4 NH3 H2O HF pK a60>36>15.7>3.2 CH3CH3 H2CCH2 HCCH pKa

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  • 非局在化電子を持つ化合物:反応性

    非局在化電子を持つカルボカチオン

    非局在化電子と pKa

    共役ジエンの反応

    1

  • 非局在化電子を持つカルボカチオン

    アリル型カルボカチオン・ベンジル型カルボカチオン

    ローンペアを持つ原子に隣接するカルボカチオン

    2

  • アリル型カチオンとベンジル型カチオン

    CC

    C

    C

    二重結合の「隣」にあるカルボカチオン

    ベンゼン環の「隣」にあるカルボカチオン

    3

  • アリル型カチオン・ベンジル型カチオンの共鳴

    CC

    C CC

    C

    C C C C C

    π電子の非局在化によって安定化する

    CC

    C

    HH

    H H

    H CH

    HCCH3

    H3C CH3≈ ≈

    t-

    4

  • アリル型・ベンジル型でも超共役の効果はある

    CC

    C

    HH

    H H

    HC

    CC

    HH

    H H

    CH3< CC

    C

    HH

    H CH3

    CH3<

    CH

    HCH

    CH3< C

    CH3

    CH3<

    π電子の非局在化のみ π電子の非局在化+超共役1箇所π電子の非局在化+超共役2箇所

    5

  • 【練習問題】下の化合物への HBr の付加反応の機構を巻き矢印で書き、位置選択性の理由を説明しなさい。

    6

  • 【練習問題】下の化合物(スチレン)に水中で Br2 を反応させた。反応機構を巻き矢印で書き、主生成物を示しなさい。

    7

  • ローンペアを持つ原子に隣接するカルボカチオン

    Br C Br C Cl C Cl C

    ハロゲンに隣接するカルボカチオン=ローンペアの非局在化によって安定化される

    O, N に隣接するカルボカチオンも同様に安定化される

    O C O C N C N C

    8

  • 【練習問題】下の化合物に酸触媒でメタノールを付加させた。反応機構を巻き矢印で書き、位置選択性の理由を説明しなさい。

    O

    9

  • 非局在化電子が物質の pKa に及ぼす影響

    カルボン酸はなぜ「酸」なのか

    フェノールはなぜ「酸」なのか

    10

  • pKa とは何か(復習)

    平衡状態では、両辺の物質の濃度の間に以下の関係が成り立つ

    HA + H2O A– + H3O+

    [H3O+][A–]Ka = [HA] 酸解離定数

    HA をブレンステッド酸(=H+ を与える物質)とする

    普通は pKa を用いるpKa = –log10 Ka

    pKa が小さいほど強い酸である

    11

  • 酸の強さは何で決まるのか(復習)

    1.共役塩基が安定なほど、強い酸である。

    H–A + B A– + H–B+

    A‒ が安定なほど、平衡は右に偏る。

    2.共役塩基は「ローンペア電子のエネルギーが低い」ほど安定。

    H A A–H+ +ローンペア

    12

  • 酸の強さを決める要因(復習)1.「同じ周期の原子」の場合、ローンペア電子は  「電気陰性度が高い」ほど安定

    2.「同じ原子で混成状態が違う」場合、ローンペア電子は  「混成軌道の s 性が高い」ほど安定

    3.「違う周期の原子」の場合、ローンペア電子は  「原子軌道が大きい」ほど安定

    HFH2ONH3CH4>pKa 3.215.73660 > >

    CH3CH3 H2C CH2 HC CH

    pKa 60 44 25> >

    HI>

    HBr>

    HCl>

    HFpKa –10–9–73.2

    13

  • 非局在化電子がある場合は?

    H3C CO

    OHOH CH2OHCH3

    pKa 4.8 10 16

    酢酸 フェノール エタノール

    なぜ酢酸、フェノールは普通のアルコールよりも強い酸なのか?

    14

  • 酢酸とその共役塩基

    H3C CO

    O HH3C C

    O

    O H

    H3C CO

    OH3C C

    O

    O

    酢酸

    酢酸の共役塩基

    どちらもローンペア電子・π電子の非局在化がある

    15

  • 共鳴寄与体の寄与の度合いが違う

    H3C CO

    O HH3C C

    O

    O H

    電荷が分離した「不自然」な構造=非局在化の効果が小さい

    H3C CO

    OH3C C

    O

    O

    どちらも同じように「自然な」構造=非局在化の効果が大きい

    酢酸よりも、酢酸の共役塩基の方が非局在化の効果が大きい

    16

  • 普通のアルコール:非局在化の効果なし

    CH2OHH3C

    CH2OH3C

    エタノール

    エタノールの共役塩基

    どちらもローンペア電子の非局在化は起こさない

    17

  • 酢酸がエタノールと比べて酸性である理由

    H3C CO

    O HH3C C

    O

    O

    – H+

    CH2OHH3C CH2OH3C– H+

    酢酸→共役塩基

    エタノール→共役塩基

    共役塩基になると安定化する→酸性が強い

    18

  • フェノールとその共役塩基

    OH OH OH OH OH

    O O O O O

    フェノール

    フェノールの共役塩基

    電荷が分離した「不自然」な構造=非局在化の効果が小さい

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  • フェノールがエタノールと比べて酸性である理由

    CH2OHH3C CH2OH3C– H+エタノール

    →共役塩基

    OH – H+ Oフェノール→共役塩基

    共役塩基になると安定化する→酸性が強い

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  • なぜフェノールは酢酸よりも弱い酸?

    O O O O O

    フェノールの共役塩基

    H3C CO

    OH3C C

    O

    O

    酢酸の共役塩基

    芳香族性を失っているので寄与が小さい=安定化の度合いが小さい

    21

  • 【練習問題】アニリンはシクロヘキシルアミンよりも弱い塩基である。理由を説明しなさい。

    NH2 NH2

    アニリン シクロヘキシルアミン

    22

  • 共役ジエンの反応

    1,2-付加と1,4-付加

    23

  • ジエンの分類ジエン:C=C 二重結合を二つ持つ化合物

    C C C CC

    CC

    CC

    CC

    C

    集積ジエン二つの二重結合が炭素原子1個を共有

    共役ジエン二つの二重結合が

    単結合一つを隔てて隣接

    孤立ジエン二つの二重結合が

    1個以上の sp3 炭素を隔てて隣接

    π電子の非局在化が起きる

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  • 共役系

    共役ジエンで、π電子が非局在化している部分=「共役系」

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  • 孤立ジエンと共役ジエンの反応の違い

    孤立ジエン:それぞれの二重結合は単独のアルケンと同様に反応CH3 CH3

    BrH BrCH3

    H+ Br

    H

    共役ジエン:1,2-付加と1,4-付加が起きる

    CC

    CC

    H

    H

    H

    HH

    H+ HBr

    ,

    CC

    CC

    H

    H

    H

    HHH

    +H

    Br

    CC

    CC

    H

    H

    HHH

    H

    HBr

    (直接付加)(共役付加)

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  • 共役ジエンへの HBr の付加:反応機構

    CC

    CC

    H

    H

    H

    HH

    H

    H Br CCC

    CH

    H

    H

    H HH

    H

    CC

    CC

    H

    H

    H

    HH

    HH

    + Br

    CC

    CC

    H

    H

    H

    H HH

    H

    アリル型なので下のものより安定

    (「二級だから」じゃない!)

    非局在化による安定化

    共役系への求電子剤の付加は末端で起きるH+

    H

    H

    27

  • 共役ジエンへの HBr の付加

    CC

    CC

    H

    H

    H

    H HH

    H + BrC

    CC

    CH

    H

    H

    H HH

    HBr

    CC

    CC

    H

    H

    H

    H HH

    H + BrC

    CC

    CH

    H

    HH H

    H

    HBr

    CC

    CC

    H

    H

    H

    H HH

    H + BrC

    CC

    CH

    H

    HH H

    H

    HBr

    1,2-付加体の生成

    1,4-付加体の生成

    こう書いてもよい

    ※ 共鳴寄与体は「書き方が違うだけで同じもの」なので、どちらを使っても反応機構は書けるし、どちらで書いてもよい

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  • 【練習問題】2-メチル-1,3-ブタジエンに1当量の HBr を反応させた。反応機構を巻き矢印で書き、生成物の位置選択性について説明しなさい。

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