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文部科学省委託事業 『次世代自動車エキスパート養成教育プログラム開発事業』 実証実験授業講座名 次世代自動車 基礎地域版 『EV車の充電技術』 1

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文部科学省委託事業『次世代自動車エキスパート養成教育プログラム開発事業』

実証実験授業講座名

  ―  次世代自動車 基礎地域版  ―

『EV車の充電技術』

氏  名

1

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1.リチウムイオンバッテリの概要

(2)放電と充電

負極からリチウムイオンが飛び

出し、正極に入り込む。 正極からリチウムイオンが

飛び出し、負極に入り込む。

(1)構造

リチウムイオンはセパレータの気孔を抜けて移動する。電流が多く流れ過ぎ、異常過熱する

とセパレータが溶けて気孔を防ぐことで、リチウムイオンの流れを止めることで、電流を遮断

する安全装置の役目もある。

(3)形状の種類

筒型、角型、ラミネート型などがあります。

米国のテスラモーターズの車両に使用されています。 ○筒型

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(4)リチウムイオンバッテリのメリット

○自己放電が少ない

○メモリ効果が少ない

約2/3の大きさで同じエネルギーを出すことができる。 ○小型化できる

○軽い 約半分の重量で同じエネルギーを出すことができる。

○長寿命 約1.5 倍ほど長くなっている。

つぎ足し充電を開始した付近で顕著に起電力の低下が起こる現象。

一度完全放電する必要がない。

内部の抵抗増加により、電池を使用していないにもかかわらず、時

間の経過と共に徐々に電気の量が減る現象。

ニッケル水素バッテリと比べた場合

○角型 三菱自動車工業のアイミーブに使用されています。

○ラミネート型 日産自動車のリーフに使用されています。

バッテリの構成単位として、セル(単電池)といいます。この1つのセルでリチウムイオンバッテ

リは約3.6Vの電圧を出力します。

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(5)リチウムイオンバッテリのデメリット

2.リーフのリチウムイオンバッテリ

(1)バッテリパックの構成

○電解液が刺激性がある

電解液が空気中の水分と反応して酸性の蒸気を発生させる。吸引すると急性中毒を

起こす危険性がある。また、皮膚につくと刺激性があるため、取扱いには注意が必要

となる。

:対応策

電解液はセパレータに含浸させているため、万一リチウムイオンバッテリが破損した

場合でも大量に流出しないようにしている。また、強固なバッテリケースを使用し、事

故などの衝撃でも内部が破損しないようにしており、また完全密閉型にすることによ

り、電解液が漏れ出すことを防止している。

電解液の炭酸ジエチル又は炭酸エチレンが揮発性が高く、可燃性である。そのた

め、高温で発火する危険性がある。

○火災などの危険性がある

:対応策

バッテリ温度を常に監視し、温度上昇による加熱を防止している。温度が上昇し

過ぎた場合は、バッテリ温度を下げるため、モータへの出力を制限し、バッテリ温

度の上昇を抑える。

○高コスト

:対応策

できるだけ豊富な素材の利用や、大量生産によりコストを下げる努力を行っている。

材料にレアメタル(希少金属)を使うため、高価になってしまう。

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(2)バッテリパックの諸元

(3)バッテリパックの安全装置

バッテリの面積は一畳(京間)くらい、重さは乗用車の燃料タンク(満タン)時50kgとすると

約6倍、容量は一般家庭の2日分ほどの電気を蓄えられる。

バッテリパックは強固な鉄製でできており、衝撃に耐えれるようになっている。また、完全密閉

型で、浸水によるショートを防いでいる。前後左右の4か所に温度センサが取付られており、

バッテリの温度を監視し、異常過熱による事故を防いでいる。

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3.バッテリの充電技術 (1)充電の規格

○CHAdeMO(チャデモ)

CHAdeMOは、「CHArge de

Move = 動く,進むための

チャージと,その “de” には電

気の意味も込めていること,

そして「クルマの充電中にお

茶でもどうですか」 という3つ

の意味を含んでいます。

幹事企業

・トヨタ自動車株式会社

・日産自動車株式会社

・三菱自動車工業株式会社 など

急速充電器設置数

日本 5484

ヨーロッパ 2352

アメリカ 1306

その他 55

計9197

2015年10月時点

急速充電と普通充電のポートを分けてある。急速充電での車両との通信は、CAN

(Controller Area Network)通信を使用。車両側の情報を急速充電器に送信し、車両に

見合った充電を行い、また家庭への給電も可能。

○COMBO(コンボ)

Combined charging system

(コンバインド・チャージング・システム)

普通と急速充電を同一ポートで行う。アメリカとドイツでは形状が違い、アメリカ用ポートの上段

の普通充電ポートはCAHdeMOと同じものを使用している。通信は電力線通信(PLC)を利用

する。これにより、電力会社の発電量と車両の出発時間などを考慮して充電を行え、電力の安

定化を図っている。実用化されたのが最近。

・独 フォルクスワーゲン

・独 ダイムラー

・独 BMW など

・米 ゼネラル・モーターズ

・米 フォード など

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(2)リーフの充電方法

(3)アイミーブの充電方法

○満充電からの航続可能距離

2010年~2012年式のリーフで満充電からの航続可能距離は200km。

・16kWhは約7時間

・10.5kWhは約4.5時間

急速充電80%まで

・16kWhは30分

・10.5kWhは15分

普通充電200Vで

普通充電100Vで

・16kWhは約21時間

・10.5kWhは約14時間

○満充電からの航続可能距離

16kWhモデルで180km、10.5kWhモデルで120km

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(4)普通充電(200V)と急速充電の違い

(5)普通充電の概要

(6)普通充電の制御

(7)急速充電の概要

・急速充電は充電電流が高いため、早い段階から上限電圧に達するため、電流を下げていく。

・普通充電は充電電流が低いため、満充電付近で電流を下げていく。

車載充電器がバッテリ状態に合わせて、充電をコントロールする。

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(7)急速充電の概要

(9)各充電方法の電圧と電流

(10)充電に必要な工事

(8)急速充電の制御

急速充電器がバッテリコントローラと情報交換しながら、バッテリを充電する。

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(10)充電に必要な工事

(11)充電時の注意事項

大電流(約20A)を必要とするため、充電器用のコンセント専用の電源回路と、充電器専用の

漏電遮断付きブレーカーを必ず接地する。また屋外に設置する場合は、手元スイッチ⑤を設置

することで、プラグを挿した後にスイッチを入れることで、雨などでも安全に充電が行える。

○延長用コンセントやコードリールを利用しての普通充電はしない。 大電流が流れるため、発

熱や火災などのおそれがある。

○充電前に充電ポート及び充電プラグに水やほこりがなどの異物が入っていないことを確認す

る。そのまま使用すると漏電や感電の原因となる恐れとなる。

○充電ポートおよび充電プラグに損傷、腐食、サビがある場合は、または接続時に緩みがある

場合は充電を行わない。漏電、感電、ショート、火災の原因となります。

○充電ポート及び充電プラグの金属端子部に手を触れないこと。感電事故につながるおそれ

となる。

○接続部に強く水が掛かるおそれがある場合は充電しないこと。濡れた手で充電プラグの抜き

差しをしないこと。漏電、感電、ショートの原因となります。

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4.バッテリの管理 (1)バッテリの温度と容量

(2)バッテリの充電と容量

(3)バッテリの劣化する要因とその対策

差しをしないこと。漏電、感電、ショートの原因となります。

バッテリ容量と温度の関係(イメージ)

バッテリは、外気温など環境により温度は変化しますが、それ以外にも過放電(急加速)

や充電時にも発熱し温度が上昇します。

バッテリ容量と充電状態の関係(イメージ)

バッテリの充電量を常に100%の状態にするよりも、80%付近で止める方が10年後

の容量は減りにくくなります。

○満充電や、残量が空の状態で放置

○バッテリ温度が高い

・充電時に満充電ではなく80%程度で止める。

・残量が残り30%~40%まで減らしてから充電する。

・充電回数は少なくする。

・充電が空の状態で放置しない。

・直射日光を避け、涼しい場所で保管する。

・高温下で充電しない。

・急加速などを行うと過放電により、バッテリが高温となる。

・急速充電を控える。

:対策

:対策

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5.バッテリと充電技術の今後

(2)非接触充電

(1)バッテリ性能

・急速充電を控える。

1次コイルに電気を流すことで磁界が発生。その磁界が2次コイルを通ることで、2次コイルに

電流が発生する電磁誘導を利用したもので、充電プラグを挿すことなく、充電が可能となる。

また高速道路に埋め込むことで、充電しながら走行できるようにする研究もされています。

現在、世界でバッテリの研究は盛んに行われています。それにより日々進化したバッテリが

登場しています。

日産リーフも2010年発売当初は航続可能距離200㎞でしたが、バッテリの素材の変更など

により、現在は280㎞(30kWh車)と40%も伸びています。また、信頼性と寿命性能も向上し

ています。

これからの研究・開発により、更に安全で、劣化しにくく、たくさんの電気を貯められ、充電時間

も短くて済むようなバッテリが出てくると考えられます。

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セルは96個付いていますので、セル電圧96まで表示されます。

6.外部診断機を使っての点検(実習)

電気自動車に限らず、近年の自動車は異常が発見された不具合箇所や、車両のコ

ンピュータに入力される各種センサの出力値などを、外部診断機を車両に接続する

ことで確認することができます。

今回は、G-SCAN2という診断機を使用して、リーフのリチウムイオンバッテリの各セル

電圧と、バッテリ温度センサのデータを確認してみましょう。下記の表は各セルの参考値

となります。

バッテリ温度センサはバッテリパック内に4か所に取付されています。温度センサのデー

タを確認してみましょう。下記の表は温度センサの参考値となります。

○バッテリのセル電圧センサ

○バッテリ温度センサ

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