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平成 28 年度 学習指導案集 はじめに 学習指導案 Ⅰ類型 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 中学部 体育 高等部 数学 Ⅱ類型 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 中学部 生活単元学習 高等部 作業学習 Ⅲ類型 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 小学部 自立活動(個別) 自立活動(かんかく・コミュニケーション) 自立活動(からだ) 中学部 自立活動(個別) 自立活動(表現・コミュニケーション) 自立活動(からだ・感覚) 高等部 生活活動 特別活動 自立活動(身体・感覚) Ⅳ類型(訪問教育) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 121 中学部 自立活動(個別) 付録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 129 平成 28 年度 福山特別支援学校学習指導案様式 Ⅰ類型 Ⅱ類型 Ⅲ・Ⅳ類型 平成 29 年 3 月 広島県立福山特別支援学校

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平成 28 年度

学習指導案集

はじめに

学習指導案

Ⅰ類型 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

中学部 体育 高等部 数学

Ⅱ類型 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13

中学部 生活単元学習 高等部 作業学習

Ⅲ類型 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27

小学部 自立活動(個別)

自立活動(かんかく・コミュニケーション)

自立活動(からだ)

中学部 自立活動(個別)

自立活動(表現・コミュニケーション)

自立活動(からだ・感覚)

高等部 生活活動

特別活動

自立活動(身体・感覚)

Ⅳ類型(訪問教育) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 121

中学部 自立活動(個別)

付録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 129

平成 28年度 福山特別支援学校学習指導案様式

Ⅰ類型

Ⅱ類型

Ⅲ・Ⅳ類型

平成 29年 3月 広島県立福山特別支援学校

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はじめに

本校は肢体不自由の児童生徒を対象とした特別支援学校です。

個々の児童生徒の障害の実態に応じた教育を行い,豊かな人間性及び,自立し,社会参加する

ための「生きる力」を育むことをミッションとしています。本校では年々児童生徒の障がいの重度・重

複・多様化が進んできています。彼らに対応した魅力ある教育内容を創造し,児童生徒の学びを

確かにしていくことが課題となっています。

授業改善に関する研究テーマを,昨年度から継続して「児童生徒のコミュニケーション能力を育

てる授業作りをめざして~児童生徒の表現・表出する力を培うための指導の在り方~」とし,授業研

究に取り組んできました。今年は授業改善のAPDCAサイクルに則り,本校作成の「重度・重複障

害児のアセスメントチェックリスト-認知・コミュニケーションを中心に-」を活用した実態把握(A)を

ベースにして,授業のP(目標)の設定と具体的なD(指導・支援)の方法へとつなげる視点に着目

しながら,「表現・表出する力を培うための指導」の有効性について研究を進めてまいりました。研

究に取り組むにあたり,より研究テーマを踏まえた学習指導案様式を作成し,それを活用して研究

授業を実施してきました。

本冊子は,今年度実施された研究授業の学習指導案の中から17本を集録しています。本冊子

を本校教職員及び多くの教育関係者に公開することで,多方面から御示唆をいただき,さらなる本

校の授業改善に繋げていくことを目的としています。

皆様からの忌憚のない御意見や御指導を賜りますようお願いいたします。

平成29年3月吉日

広島県立福山特別支援学校

校 長 我 妻 享

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学習指導案集

Ⅰ類型

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2

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3

保健体育科 学習指導案

指導者 ○○ ○○

1 日時・場所 平成 28 年 ○月 ○日(○) 4校時 11:15~12:05

中学部○年○組教室

2 指導形態 決定学級

3 学部・学年 中学部 第○学年○組(Ⅰ類型)

4 単元・題材名(教科書名) 体づくり

5 単元について

〇単元観

本単元は,第 1 学年及び第 2 学年の「体を動かす楽しさや心地よさを味わい,体力を高め,

目的に適した運動を身に付け,組み合わせることができるようにする」ことをねらいとした学習を

受けて,第 3 学年では,「体を動かす楽しさや心地よさを味わい,健康の保持増進や体力の向

上を図り,目的に適した運動の計画を立て取り組む」ことをねらい学習のねらいとしている。

本単元の学習を通じて,体を動かす楽しみや心地よさを味わい,体力の向上を図ることに留

意し,「正しく立つ」ということに注目して意識付けさせたい。「立つ」ことは,日々の暮らしの中で

も中心であり,当該生徒も自立に向けて歩行の練習に取り組んでいる。私はこの「立つ」という

内容を授業で取り入れ,その中で「自分の体に向き合い,体の使い方を知ること」や「運動に親

しみ,自主的に取り組むこと」,「健康・安全を確保すること」などを意識させ,自己の課題に応

じた取り組みに繋がるようにしたい。

特に言語活動の充実を図る観点から,授業の終わりの振り返りの時に発表させる活動を単

元を通して取り入れる。

〇生徒観

生徒は中学部○年の男子生徒 1 名,女子生徒 1 名(A)の計 2 名である。男子生徒

は現在体調不良により,長期欠席中である。女子生徒Aは,アテノーゼ型脳性麻痺に

よる体幹機能障害があるが,身辺自立はできている。しかし,食事やカバンから荷物

などを出すときなどは支援が必要である。1学期は,移動の時に電動車椅子を使用し

ていたが,PTとの連携,また生徒自身の思いとして 2 学期より下校時以外は歩行器

を使用して足の筋肉が衰えないように取り組んでいる。歩行器を使用しなくても,自

力で歩行することが可能ではあるが,左足が内側に屈曲し,体のバランスを上手く取

れずに転倒することが多くある。体育の授業の中では,歩くバランスを考えさせ確認

しながら,歩行器を使用せずに歩行訓練を行っている。

また,生徒のコミュニケーションに関する実態について,①話すこと・聞くことに

ついては,発音が聞き取りにくい場面もあるが,聞き返すことで聞き取れるまで何度

も言い直すことができる。しかし,聞く姿勢として,大きなため息をついたり,机に

横になる様子も見られたりすることがあるため,今後の課題である。②書くことに関

しては,麻痺があるため,手を上手く動かすことができず,時間がかかってしまう。

小さい文字などは書くことが難しい。また,首にも負担がかかるため,教員が代筆し

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4

たり,記述が少ないプリントを作成したりしながら,体への負担が少なくなるように

取り組んでいる。③読むことに関しては,読めない漢字も多くあり,発音が聞き取り

にくいこともある。

〇指導観

この学習を進めていくにあたり,自分の体により向き合う必要がある。これまでの授業の中で,

歩行運動の時間を多く取ってきたが,左足が内側に曲がり,左側にバランスを崩してしまう。そ

のため,「正しく立つ」姿勢に注目させ,意識させながら取り組ませたい。「足の裏全体を地面に

付ける。」→「肩甲骨は地面と垂直にし,平行に保つ。」→「頭は,土踏まずの上に乗せるイメー

ジを持つ。」ということを繰り返し伝えながら取り組む。自分で意識できるようになれば,それを確

認をするためにバスタオルの上で行う。できていればバスタオルを引いても倒れることはないが,

少しでもずれていればバランスを崩して倒れてしまう。転倒などの安全に配慮するためにベッド

に腰をかけさせてから行う。バランスよく立つことができるようになってから歩行練習に入り,常に

姿勢を意識させて活動させる。冬休み明けということであまり家庭では活動できていないことを

想定し,無理に活動させないように様子をしっかり見ながら展開したい。

また,生徒の障害特性への配慮として,姿勢を整えるように意識させる言葉かけを適宜行っ

ていく。学校生活の中で体調が優れない時は,指導者に対して生徒本人から伝えるように指

導をしており,授業時間の中でも本人からの要望があれば,必要に応じて休憩やトイレ等の時

間をとる。

6 単元の目標

(1)「立つ」ということを意識し,体のバランスに気を付けながら取り組むことができる。

(2)各部位を意識し,ゆっくり伸展することができる。

(3)自分の思いを表すことができる。

7 単元・題材の評価規準

体への

関心・意欲・態度

体への

思考・判断・表現 体の技能

体への

知識・理解

・授業に意欲的に取り

組む。

・自分の体に向き合

う。

・自己の課題に応

じた運動の取 り組

み方ができる。

・真っ直ぐ立つことを

意識することができ

る。

・自分でバランスを意

識して取り組むことが

できる。

8 指導と評価の指導計画 [全4時間 ]

次 学習内容 評価

関 思 技 知 評価規準 評価方法

柔軟体操

補強運動

(2時間)

本時2/2

○ ◎

・自分で意識して「立つ」ことが

できたか。

・自己の課題に応じて取り組む

ことができたか。

観察

発表

9 本時の展開

○本時の目標

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(1)正しく「立つ」ことを意識して活動することができる。

○言語活動に関する個々の目標

生徒名 実態 目標 手立て

A

・自分の思い通りに行か

なければ,ため息をつい

たりマイナスになる言葉

を履いたりするなど,表

情や態度に出すことがあ

る。

・自分の思い通りにならな

くても根気強く取り組むこ

とができる。

・気持ちが落ちないよ

うにその都度言葉掛

けを行う。

10 指導過程

学習活動 全体

(□課題 ☆評価基準) 指導上の留意点

導入【5分】

・挨拶

・本時の目標

を確認する。

・体調を確認し,姿勢を正すように促す。

・姿勢を正すように言

葉かけをする。

展開1【25分】

・「正しく立つ」

ことについて説

明する。

・ストレッチ

・「正しく立つ」

・前回説明したことを確認する。

☆自分の言葉で説明できるか。

・バランスを取りながら,体全身をしっかりと伸ば

す。

□自分で意識して伸ばすことができるか。

・立つ練習に取り組む。

□自分でバランスを意識し,取り組むことができる

か。

・説明したことを思い

出す時間を与え,そ

の後詳しく「正しく立

つ」ことについて説明

し,意識づけを行う。

・主体的に取り組む

ように見守ったり,支

援が必要であれば支

援したりする。

・バスタオルの上でバ

ランスを取らせるため

に,転倒しても安全

のようにマットを背面

に 準 備 し て 取 り 組

む。

展開2【10分】

・歩行運動 □一歩一歩自分で意識して踏み出すことができる

か。

☆主体的に活動することができるか。

・肩の傾きや,姿勢を

その都度言葉掛けを

して意識して取り組

めるように支援する。

「正しく立つ」ことを意識して取り組むこ

とができる。

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6

まとめ【5分】

・ストレッチ

・本時のまとめ

・挨拶

・体全身をしっかり伸ばす。

☆感じたことや,頑張ったことを発表することができ

るか。

・体調を確認し,姿勢を正すように促す。

・教員からも頑張って

いたことを発表し,評

価をする。

11 評価の観点

○学習評価

(1)「立つ」ことを理解できたか。

(2)主体的に活動することができたか。

○言語活動に対する評価

(1)思い通りに行かなくても根気強く取り組むことができたか。

(2)授業を通して感じたことや頑張ったことを発表することができたか。

○指導に対する評価

(1)学習内容の分量は適切であったか。

(2)実態に応じた支援は適切であったか。

(3)教材・教具は目標達成に対して効果的であったか。

12 教室内配置図

ホワイトボード

T1

ベッド

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7

数学科 学習指導案

指導者 ○○ ○○

1 日時・場所 平成 28 年 ○月 ○日(○) 3校時 11:00~11:50

高等部○年○組教室

2 指導形態 決定学級

3 学部・学年 高等部 第○学年○組(Ⅰ類型)

4 単元名 2次関数・関数 (「新編 数学Ⅰ 東京書籍」)

5 単元について

〇単元観

本単元では,具体的な事象と関連付けて,数量の変化を2次関数で表現できるように

する。また関数をグラフに表したり,座標の意味・考え方を考察したり,基本的なこと

がらを再確認しながら進めていく。中学校では,1次関数やいろいろな関数(y=ax² )

について学んできているので,その復習をしながら,2次関数(y=ax²+bx+c)を扱って

いく。さらに式を変形し,簡単にグラフの作成ができるように学習を進める。それによ

り,視覚的に理解を深め、増加・減少,最大値・最小値についても正確に把握できるよ

うにする。また,2次方程式や2次不等式を扱う中で,繰り返し練習することで基礎的

な知識の習得と技能の習熟を図る。

特に言語活動の充実を図る観点から,単元を通して解法の過程を発表させる活動を

取り入れる。

〇生徒観

生徒 A は,脳性麻痺による移動機能障害があるが,車いすでの移動は自立している。

杖を使用して歩く訓練をしている。身辺自立もおおむねできており,日常生活に介助

を必要としない場面が多い。また,両手の協応動作が難しく,紐を結ぶこと折り紙を

作ること,文字を書くことなどには時間がかかる。さらに,空間認知が難しく,声掛

けによる支援が必要である。支援が必要な場面において,自分から助けを求めること

が課題となっている。

中学校の数学においては,理解がゆっくりのため,2年生までの内容を履修してい

る。3年生の内容はポイントを絞った履修となっている。「正負の四則演算」「文字式

の計算」「1次方程式」については,夏休みの宿題等で復習をしたときにはよく解けて

いる。1学期の「式の計算」では,整式の加法減法や式の展開は行えている。乗法公

式の展開では,公式を活用することが難しく,具体的に数字を代入していくことが難

しかった。また,「根号を含む式の計算」「1次不等式」は計算の手順を理解し進める

ことができた。

また,生徒のコミュニケーションに関する実態について,①話すこと・聞くことに

ついては,目的や場に応じて,効果的に話したり的確に聞き取ったりすることに課題

がある。具体的には,帰りの会で「楽しかったことや反省点」を聞いたときに,要点

を考えて話すことが定着していない様子が見られる。②書くことに関しては,相手や

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目的に応じて題材を選び,文章の形態や文体,語句などを工夫して書くことを課題と

している。小さい字を書く傾向や先を見通した改行ができないことがあり,見て分か

るノート作りに取り組んでいる。③読むことはおおむね課題なく行うことができる。

生徒 B は,疾病により骨の変形や骨がもろくなっていることから,移動時は車いす

を使用している。車いすでの移動は自立している。また,視神経圧迫による弱視であ

る。矯正視力が 0.1 で,視野が欠けて見える部分があり,光の加減や体調によって見

え方が変わる。単眼鏡を使用して素早く正確に見ることが課題である。

中学校の数学においては,3年生までの内容は履修している。夏休みの宿題等で中

学校の内容を復習したときにはよく解けているが,些細な計算ミスがある。高校にお

ける「式の計算」「実数」「1次不等式」では,中学校の学習内容と結びつけながら理

解をすることができている。

また,生徒のコミュニケーションに関する実態について,①話すこと・聞くことに

ついては,おおむね課題なく行うことができる。②書くことに関してもおおむね課題

なく行うことができる。③読むこと,文章の内容を叙述に即して的確に読み取ったり,

必要に応じて要約や詳述をしたりすることに課題がある。具体的には,教科書を読み

進めていくときに,読みにくい漢字を推測して読むことができず,関係のない言葉で

読むときがある。分からないときは,読めない,見えないと伝えることが課題である。

生徒 C は,肺動脈性高血圧症により体に負担になることはできないため,移動時は

車いすを使用している。車いすでの移動は支援者によって行うが,短い距離を歩くこ

とができる。身辺自立はしている。酸素吸入などは自ら体調管理を行い,不調がある

場合に正確に伝えることが課題である。

中学校の数学においては,2年生までの内容は履修している。ただし中学校に通学

できていない時期もあるため,夏休みの宿題等で中学校の内容を復習したときには,

教科書を見たり友だちに聞いたりして解いた。理解度は高く,高等部での「式の計算」

「実数」「1次不等式」では,練習問題を繰り返し行うなどして習得することができた。

また,生徒のコミュニケーションに関する実態について,①話すこと・聞くことに

ついては,課題を解決したり考えを深めたりするために,相手の立場や考えを尊重し,

表現の仕方や進行の仕方などを工夫して話し合うことが課題である。具体的には,友

だちや教員との会話において,相手の表情や視線,声の調子などの情意的な側面を理

解することが難しい場面がある。相手の立場や考えを尊重することが課題である。②

書くことに関してもおおむね課題なく行うことができる。③読むこともおおむね課題

なく行うことができる。

〇指導観

生徒3名は,関数に関しての習得にばらつきがあるため,中学校の内容を復習しな

がら行っていく必要がある。そこで本授業では,教科書の内容をベースにしながら,

「式を作ろう」という主題を設定し,ワークシートを用いて授業を行っていく。本授

業は,1時間目であるので,用語の確認とともに関数を用いて数量の変化を表現でき

るように例題を用いて考察を深めたい。例題においては,解答のみでなく,そう考え

た過程も発表し,お互いに意見を出しあっていかせたい。

また,生徒の障害特性への配慮として,生徒 A へは,姿勢を整えるように意識させ

る言葉掛けを適宜行っていく。生徒 B は,弱視のために,板書では太いマジックを使

用し,大きく字を書く。教科書は拡大教科書を使用する。生徒 C には,学校生活の中

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9

で体調が優れない時は,指導者に対して生徒本人から伝えるように指導をしており,

授業時間の中でも本人からの要望があれば,必要に応じて休憩やトイレ等の時間をと

る。ワークシートは 22 ポイント以上の文字を使用して作成し,全員に同じものを配付

する。

6 単元の目標

(1)2次関数とそのグラフについて理解し,2次関数を用いて数量の関係や変化を表現する

ことの有用性を認識するとともに,それらを事象の考察に活用できる。

(2)事象から2次関数で表される関係を見いだす。また,2次関数のグラフの特徴について理

解する。

(3)2次関数の値の変化について,グラフを用いて考察したり最大値や最小値を求めたりす

る。

(4)2次方程式の解と2次関数のグラフとの関係について理解するとともに,数量の関係を2

次不等式で表し2次関数のグラフを利用してその解を求める。

7 単元・題材の評価規準

関心・意欲・態度 数学的な

見方や考え方 数学的な技能 知識・理解

値の変化に関心を

もつとともに,関数を

用いて数量の変化を

表現することの有用性

を認識し,事象の考察

に2次関数を活用しよ

うとしている。

事象を2次関数を

用いて考察や表現

したり,その過程を

振り返ったりするこ

となどを通して,関

数的な見方や考え

方を身につけてい

る。

2次関数を用いて

数量の変化を表現

し,関数の値の変化

を調べることができ

る。

2次関数とそのグ

ラフ及び関数の値の

変化における基本的

な概念,原理・法則

などを理解し,知識

を身についている。

8 指導と評価の指導計画 [全 32 時間 ]

次 学習内容 評価

関 見 技 知 評価規準 評価方法

2次関数とそのグラフ(計 15 時間)

・関数(2時間)

◎ ○

・互いに関連しながら変化して

いくものとして関数を理解でき

たか。関数を表す記号 y=f(x)

や定義域・値域の用語の意味

を理解できたか。

ワークシート

観察

・ 2次関数 (7時

間) ○ ◎

・中学校で学んだ 2 乗に比例

する関数の性質を復習し,そ

れをもとに 2次関数について理

ワークシート

観察

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10

解できたか。

・ 2 次 関 数 の最

大 ・ 最 小 ( 3 時

間) ○ ◎

・2 次関数の最大・最小につい

て理解を深め,定義域に応じ

て,最大値や最小値を求める

ことができたか。

ワークシート

観察

・2次関数の決定

(3時間) ○ ◎ ○

・2 次関数のグラフについて与

えられた条件から,その 2 次関

数を決定できたか。

ワークシート

観察

2 次方程式と 2 次不等式(計 17 時間)

・2次方程式

(4時間)

◎ ○

・因数分解による解法や解の

公式を用いて,2 次方程式の

解を求めることができたか。ま

た,2 次方程式の実数解の個

数と判別式Dの符号との関係

を理解できたか。

ワークシート

観察

・2次関数のグラ

フと x 軸の共有

(3時間)

○ ◎

・2 次関数のグラフと x 軸の共

有点と判別式Dの符号との関

係を理解できたか。

ワークシート

観察

・2 次不等式

(4時間)

◎ ○

・2 次関数のグラフと x 軸の共

有点の位置関係から,2 次不

等式の解の意味を理解し,解

を求めることができたか。

・具体的な問題の解決に 2 次

不等式を活用できたか。

ワークシート

観察

・ 2 次不等式の

応用(2時間) ○ ◎

・2 次関数について深く理解で

きたか。

ワークシート

観察

・練習問題

(4時間) ◎ ○ ○

ワークシート

観察

9 本時の展開

○本時の目標

(1)用語の意味を理解し,問題に活用できる。

(2)2次関数を用いて数量の関係や変化を表現する。

○言語活動に関する個々の目標

生徒名 実態 目標 手立て

A ・質問をされたときに,

要点を考えて話すことが

(1)質問をされたときに,

自分の言葉で答えることが

・ワークシートにイメー

ジ図を記入させる。

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11

難しい場面がある。

・小さく詰まった字を書

く傾向がある。

できる。

(2)字の間隔をあけて書く

ことができる。

・ワークシートに補助

線を入れる。

B

・教科書を読み進めてい

くときに,読みにくい漢

字を推測して読むことが

できず,関係のない言葉

で読むときがある。

(1)口頭で説明した内容

を読み取りながら,単眼鏡

でも文字を見て書き写すこ

とができる。

・語句の意味を,既習

の言葉を用いて説明

する。

・文字を大きく書く。

C

・友だちや教員との会話

において,相手の表情や

視線,声の調子などの情

意的な側面を理解するこ

とが難しい場面がある。

(1)友だちや教員の意見

と自分の意見との共通点

や相違点について整理

し,質問がある場合は質

問することができる。

・ワークシートを振り返

る時間を作る。

10 指導過程

学習活動 全体

(□課題 ☆評価基準) 指導上の留意点

導入【3分】

・あいさつ

・ 本 時 のテー

マについて確

認する。

・関数について復習をする。

・テーマ「式を作ろう」を発表し,活動の内容を知る。

・姿勢を正すよう

に言葉掛けをす

る。

展開1【30分】

・用語の確認

・例題を解く

・課題を解く

・ワークシートを配付する。

用語の意味を理解する。

・用語の説明を聞き,書き込んでいく。

☆正しく記入できたか。

・例題を考えていく。

☆文章の意味を理解できたか。

☆立式できたか。

・課題を読む。

・課題に取り組む。

☆ワークシートにイメージ図を記入できたか。

☆立式ができたか。

・ワークシートに全

員が書き込めたか

確認をする。

・文章の意味をイ

メージ図で理解さ

せる。

・教材を用いて,ヒ

ントを与える。

2【10

分】

・発表

・課題について発表をしていく。

☆自分の意見を筋道立てて発表できたか。

☆友だちの意見でわからないことを質問できたか。

自分の言葉で発表する。

2次関数を用いて数量の関係や変化を表現する

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12

まとめ【7分】

・本時のまとめ

・挨拶

・課題について説明し,自分の発表と比較し,説明が

足りない部分を記入し,ワークシートを振り返る時間を

とる。

・課題解決の取組に対する評価をする。

・次回の話をする。

・ワークシートを確

認する様に促す。

・次回の学習内容

について連絡す

る。

11 評価の観点

○学習評価

(1)用語の意味を理解し,問題に活用できたか。

(2)2次関数を用いて数量の関係や変化を表現できたか。

○言語活動に対する評価

(1)ワークシートを見て,振り返りができたか。

(2)自分の言葉で発表し,友だちや教員に伝えることができたか。

○指導に対する評価

(1)学習内容の分量は適切であったか。

(2)実態に応じた支援は適切であったか。

(3)教材・教具は目標達成に対して効果的であったか。

12 教室内配置図

ホワイトボード

教員用机

机 A

B

C

T1

T

2

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13

Ⅱ類型

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生活単元学習 学習指導案

指導者 ○○ ○○

1 日時・場所 平成 28 年○月○日(○) 3校時 11:15~12:05

中学部○学年○組教室

2 学部・学年・学級 中学部 第○学年○組(Ⅱ類型 女子1名)

3 単元名 「福山すこやかセンターへ行こう」

4 単元設定の理由

(1)生徒観

A は,脳性まひによる両上肢機能障害,移動機能障害があり,知的障害を併せ有している。校

内や短い距離であれば車いすで自走できるが,細かな操作をはじめ,日常生活の多くの場面で支

援を必要とする。

学習姿勢は,体幹の弱さから左に傾き,かつ,前傾姿勢となり崩れてしまうことが多く,学習時に

は座位保持椅子に座りかえている。この座位保持椅子は,姿勢保持のために胸ベルト,肩ベルト,

テーブル等を併用しており,姿勢の崩れは少ないが,長時間の使用にあたっては適宜リラクゼーシ

ョンが必要である。

手指の動作については,大きなビーズをつまむ,本をめくる,大きなシール等を指定された場所

へ貼ることができる程度の巧緻性はある。書字については,フェルトペン等を握り持ちして「グルグ

ル」と言いながらなぐり書きをすることができるが,ペン先に注意を向けることが難しく,なぞり書きは

できない。また,上肢機能障害のため,活動時の疲労度は高くなりがちで,活動の連続は注意を要

する。

一般的に,肢体不自由の状態にある生徒は,形を視認し捉える際の反応時間が長くなることや,

周囲の僅かな刺激に過剰に反応しやすいこと,意識の集中が続き難いこと(被転導性)などの課題

があるといわれており,A も例外ではない。事実,視覚情報が増えると,認知に時間がかかるためか,

複数の中から判断して選ぶことが難しくなる。また,何か聞こえてきたり,視界に入ったりすると集中

力が途切れるなど,意識を集中して学習することは苦手である。

話す力については,担任とは休憩時間等に,家庭での出来事や興味の高いこと等を2語文程度

で話すことができ,ある程度は会話も成立している。しかし,日常生活での挨拶等の必要な場面や,

授業での言葉掛けに対しては,頷いたり,首を振ったりするものの,場に応じた言葉で話すことは難

しい。また,困った状況に陥っても,周囲に対して自ら言葉で支援を要求することができない。さらに,

分からないことがあっても,質問をせずにそのままにしていることが多く,次に何をするのか指示を出

さないと動けないでいることが多い。

読む力は,自分の名前や,朝の会の進行ラベル等のまとまりを視認して声に出して読むことはで

きるが,平仮名の一文字読字は困難である。ただし,名前の中のいくつかの仮名文字はマッチング

可能である。

意欲の面では,お気に入りの活動には積極的に取り組むが,新しいことや結果の予測が分から

ないこと,困難さにあたると,すぐに活動をあきらめてしまい,活動の低下した寡黙な状況に陥りやす

い。また,クラスの中では朗らかで意欲的な場面が多いが,新しい場面での活動にチャレンジするこ

とに不安を感じている。

しかしながら,基本的には外出することを楽しみにしている生徒であり,今回の校外学習は事前

学習を重ねることで興味・関心が高まってきており,意欲をもって主体的に学ぼうとする姿勢が随所

にみられ,授業を楽しみにしている様子が伺える。

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(2)単元観

特別支援学校学習指導要領解説総則等編には,「生活単元学習は,児童生徒が生活上の目

標を達成したり,課題を解決したりするために,一連の活動を組織的に経験することによって,自立

的な生活に必要な事柄を実際的・総合的に学習するものである。生活単元学習では,広範囲に各

教科等の内容が扱われる。児童生徒の学習活動は,生活的な目標や課題に沿って組織されるこ

とが大切である。」と示されている。

また,計画の作成に当たっては,実際の生活から発展し,児童生徒の知的障害の状態等や興

味・関心などに応じたものであり,必要な知識・技能の獲得とともに,生活上の望ましい習慣・態度

の形成を図り,身に付けた内容が生活に生かされるものであること,とも示されている。更には,この

指導では,各教科の内容をはじめ,道徳,特別活動及び自立活動の内容が含まれており,児童生

徒の学習活動が,生活的な目標や課題に沿って組織される,とされている。

本単元は,A にとって興味・関心の高い校外学習に関わる単元であり,日常生活において重要

な要素である身なり,あいさつをはじめとするマナーやルールについての学習をその必然をもって設

定することができる。

肢体不自由のある生徒の多くは,絶対的な経験の不足があり,公共のルールやマナーについて

学び,それを生活の中で活用していく機会に乏しい。そのため,家庭,学校,社会での行動規範が

明確に区別されておらず,その違いを意識することも少ないという課題があり,本単元の意義は大き

い。

そして,これらの学習過程においては,A の「福山すこやかセンターへ行ってみたい」という意欲を

もとに,注視する,見比べる,聞く,判断する,話す,書くといった活動を柔軟に設定することができ

るため,生徒実態に応じた言語活動を組み合わせて展開することができると考えた。

また,本単元の学習では,校外学習のファイル(「すこやかに行こうファイル」)が完成していく中で

達成感を味わわせたり,言葉掛けに対して臆することなく返答したりする,などの成功体験を豊富に

重ねることによって,主体的に活動に取り組む高い意欲を育むことができると考える。

校外学習当日には,場に応じた基本的なマナーを校外学習のファイルで確認して,自らが意識

して行動し実行する。そして,学んだ見学先の3つの機能(情報提供,相談,活動)について,校外

学習のファイルと照らし合わせて,実際に施設担当者より説明を受けることで,より深く知ることがで

きる。

そして,事後学習として壁新聞を作り,作成した校外学習のファイルと共に掲示し,本単元で学

んだことを自分の言葉で中学部の生徒に伝える機会を設ける。また,校外学習の記録ビデオを視

聴して,基本的なマナーを身に付けて行動することができたか,自己評価することで,より深い発展

的な学習が期待できる。

以上のことから,本題材は,「体験的な学習を通して,公共のルールやマナーに気付き,それらを

守って生活経験を広げる。」,「行事や課題等に対して,興味や関心をもち,積極的に取り組む態

度を育てる。」,「言葉掛けの意図を理解して判断し,その結果を他者に分かるように伝える成功体

験を通して,意欲をもって主体的に活動する場面を増やすことができる。」の3点を目標とする単元

としてふさわしいと考える。

(3)指導観

主体的な学びのためには,まず第一に,人や物への「関心」を十分に高めることが必要である。

なぜならば,高まった「関心」が生徒を内発的に動機付けて,自ら関わっていく力,すなわち「意欲」

を生み出すからである。

そこで,実態やこれまでの学習の様子を踏まえて,見学先に関する情報を提供する方法として,

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パソコン等の情報機器を活用することで,見学先への「関心」が高まり,この「関心」を土台として,

本時での学習意欲が生まれてくるのではないかと考えた。

画面からの情報を受け取るに当たって,高い「関心」による意欲から,多様な情報に注意を向け

ることができ,その結果,より主体的で深い思考が促されると考えている。併せて,前時で学習した

公共のマナー等の既習事項を活用する場面を設定することで,本時のねらいである,「見学先につ

いて,その内容や特色に関心をもつ。」が達成できるであろうと考えた。

実際の指導に当たって本単元の目標を達成するためには,生徒実態と特性を踏まえた留意点と

して,次のようなことが考えられる。

姿勢が崩れると,上肢操作の妨げとなり疲労度が高くなる。その結果,意識の集中が難しく

なり学習時間が確保しにくくなるので,学習姿勢に配慮する。

注意の持続に課題があるので,対象に視線を導く等の指示を適宜することが必要である。

提示するものの距離や時間は,生徒の視認知の状況を確認しながら調節する。

抽象語を多用せず簡潔で分かりやすい具体的な指示と説明に配慮する。

言葉による応答を求めても,必要な言葉が出てこない場面もあると思われるので,推察して

言葉を掛け,確認してから一緒に復唱することをもって成功体験として味わわせる。

肯定的・称賛的な言葉掛けを多用する。

本時の学習活動は,全体を通じて A の興味・関心の持続と意欲が重要となる内容で構成されて

いるため,常に活動中の表情に注意して判断し,指示と言葉掛けの調節が必要となる。さらに,そ

れを踏まえて,それぞれの指導の場面では,次のように留意し指導していきたい。

「9 指導過程」の学習活動「2」では,校外学習のファイルをめくって確認しながら,これまでの学

習を振り返らせる。これは本時の学習の導入となる活動であるが,この際の A の様子が,今現在の

状況(身体・精神面)を端的に示しているものとして考え,状況によっては学習量や内容の調整が

必要な場合もある。

学習活動「3」では,福山すこやかセンター近隣から建物入口までの映像を視聴する。福山すこ

やかセンターを印象付けるために,今回はセンターの特徴的なマークを活用する。映像の中でその

マークが出てくる場面では,そのマークをカード提示し,図の意味を説明する。そして提示したまま

にしておき,その後の活動につなげる。

学習活動「4」は,インターネットを利用して情報を検索し,調べる活動である。A はパソコンにはと

ても興味を持っているが,キーボードやマウス操作等は困難であるため,タッチパネルとタッチ棒を

活用して,実態に応じた操作しやすい環境を提供する。また,タッチ棒の操作は一人では難しいの

で,指導者からの支援を受けながらの学習となる。画面上の文字盤から平仮名を選ぶ活動では,

画面を拡大して平仮名カードと見比べて選択できるように支援する。ここでは,興味・関心が高く意

欲的に活動することが予想されるが,上肢の操作が長時間続くため,表情から疲労度を判断して,

支援の割合を調整することが必要である。

学習活動「5」は,パソコンの画面上で写真等の資料をスライドさせながら学習し,校外学習のフ

ァイルを完成させることを通じて学習をすすめる。指導計画では,本時は,見学先について,その内

容や特色に関心をもつことが目標となっており,本授業のメインとなる部分である。ここでは,核とな

る見学先の機能(情報提供,相談,活動)は抽象的で分かりにくいので,機能をイラスト化したカー

ドの提示とともにジェスチャーも交えながら説明を加え,その理解を促したい。また,前時で学習した

場に応じた必要なマナーについても再確認する。

校外学習のファイルの作成にあたっては,見学先の資料の一部を電動バサミのスイッチ操作で

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切り出して,ファイルに格納するまでを行う。その際には,資料から切り出す目安となる線を引く活動

を取り入れ,白抜きの厚紙ガイドを活用して,できるだけ自分の力で線を書くことができるように指導

する。

そして,興味のある見学先を選ぶ場面では,3つのタグラベルを用意しておき,完成した校外学

習のファイル(「すこやかに行こうファイル」)から選択したページにラベルを貼り,その場所を声に出

して確認する。

この学習活動では作業的な活動もあるが,本時のねらいを踏まえて,指導者の話をしっかり聞い

て理解する,提示されたものをしっかり見る,じっくり考えて判断する,その結果を相手や目的に応

じて言葉で表現する,あるいは行動する,といった一連の活動の繰り返しを大切にしたい。

本時の指導を通して,今回の見学先への興味・関心を高めて,見学先で意欲をもって主体的に

知ろうとする態度が育まれることを目指したい。

5 単元の目標

○ 体験的な学習を通して,公共のルールやマナーに気付き,それらを守って生活経験を広げ

る。

○ 行事や課題等に対して,興味や関心をもち,積極的に取り組む態度を育てる。

○ 言葉掛けの意図を理解して判断し,その結果を他者に分かるように伝える成功体験を通して,

意欲をもって主体的に活動する場面を増やすことができる。

6 指導計画(全8時間)

次 学習内容 学習目標 時間数

日程,行程,公共のルールなどの

学習

日程や目的地,公共のルールやマナーなどに

ついて理解する。 2時間

インターネット等を活用した,見学

先についての学習

見学先について,その内容や特色に関心をも

つ。

1時間

(本時)

現地での施設見学(校外学習) 学んだことを実行することができる。 4時間

校外学習の事後学習(壁新聞作

り)

思い出を形にすることができる。 1時間

7 本時の目標

○ 見学先について,その内容や特色に関心をもつ。

生徒名 これまでの様子 目標 (具体的評価可能 ) 手立て

A

○ 言葉掛けに対して,必要

な場面での言葉が出にく

い。

○ 自分の名前の平仮名の

まとまりは分かる。一文字

読字は困難である。

○ 「グルグル」と言いながら

なぐり書きをする。

○ 言葉掛けに対して,言

葉で答えることができる

(5割以上)。

○ 平仮名“こ”,“か”を選

ぶことができる。

○ 指定された枠内に線を

書くことができる。

○ 指導者の支援を受けな

○ 意図を理解しやすい平

易な言葉掛けに答えるこ

とで,成功体験 を重ね

る。

○ 画面上で拡大して選び

やすくする。

○ 白抜きの線画ガイドを活

用する。

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○ 興味の持続と集中するこ

とが難しく,困難さに直面

すると,すぐにあきらめて

止めてしまうことが多い。

○ 複数の中から見比べて判

断することが難しい。

がら,一定時間(20 分

以上)集中してパソコン

を利用するこ とができ

る。

○ 特に興味のある見学先

を3か所選ぶことができ

る。

○ 大型液晶タブレット,タッ

チ棒を利用し,使いやす

い環境を提供する。疲労

に配慮し,適宜休息させ

る。

○ 作成した校外学習のファ

イルを活用する。

8 準備物

パソコン,タブレット液晶,タブレット端末,タッチ棒,ファイル,電動バサミ,スイッチ,カード類他

9 学習過程

学習活動 指導上の留意点(□課題 ○ 支援 ☆評価)

1 はじめの挨拶 (1分 ) ○ 顔が十分上がっていないときは,姿勢を整えるように指示する。

2 説明

・振り返り

・目標を知る

(3分 )

これまでの学習を振り返り,本日の学習内容が分かる。

○ 作成したファイルへ注視を促しながら説明し,状況に応じて言葉を掛け,言

葉での表出を促す。

☆ 言葉掛けに言葉で答えることができたか。

3 ビデオ視聴

(5分 )

ビデオを集中して視聴し,指示された画像に注視することができる。

ビデオ視聴(5分)

○ 注意が持続するように,画像を指示し適宜説明を加える。

☆ 映像と提示されたマークが同じであることを理解できたか。

4 インターネットで調

べてみよう

(15 分)

パソコンを活用して情報を検索することができる。

○ 画面を拡大して操作しやすくする。

☆ 平仮名 “こ”,“か”を選ぶことができたか。

○ タッチパネルを活用し,実態に応じた操作しやすい環境を提供する。

☆ 最後まで注意を持続して操作できたか。

5 「すこやかにセンタ

ーに行こうファイル」

を完成させよう

(20 分 )

支援機器を活用し校外学習のファイルを完成させる。

○ 線を書く際はガイドを使用する。

○ 電動バサミをスイッチで操作させる。

☆ ガイドに沿って線を書くことができたか。

見学先の機能(情報提供,相談,活動)を知ることができる。

※しっかり聞く,考える,判断,答える,の活動を重視する。

○ 施設写真をパソコンで閲覧させる際には,実態に配慮して適切な操作支援

を行う。

○ 場に応じた必要なマナーについて,前時の学習から振り返らせるために,活

動の中で活用の必要な場面を設定する。

○ 施設の機能(相談,活動,情報提供)を3枚のカードで示し,カードの提示と

ともにジェスチャーも交えながら,その機能を説明する。

☆ 興味のある見学先を3か所選ぶことができたか。

6 学習の振り返り 本時の学習を振り返る。

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20

(5分 )

○ 作成したファイルへ注視を促しながら説明し,状況に応じて言葉を掛け,言

葉での表出を促す。

☆ 言葉掛けに言葉で答えることができたか。

7 終わりの挨拶 (1

分 )

○ 顔が十分上がっていないときは,姿勢を整えるように指示する。

10 本時の評価の観点

○ 言葉掛けに対して,5割以上,言葉で答えることができたか。

○ 平仮名“こ”,“か”を選ぶことができたか。

○ 指定された枠内に線を書くことができたか。

○ 指導者の支援を受けながら,一定時間(20 分以上)集中してパソコンを利用することができた

か。

○ 特に興味のある見学先を3か所選ぶことができる。

○ 学習内容の分量は適切であったか。

○ 実態に応じた指導・支援は適切であったか。

○ 教材・教具は目標達成に対して効果的であったか。

11 年間指導計画

○ ねらい

・ 体験的な学習を通して,公共のルールやマナーに気付き,それらを守って生活経験を広げ

る。

・ 身近な自然に触れさせ,季節や自然の変化に気付き興味・関心を広げ,日常生活とのかか

わりを知る。

・ 感じたこと,思ったこと,想像したことなどを,様々な素材や技法で自己表現し,作品を作った

り,生活に役立てたりする力を育てる。

・ 行事や課題等に対して,興味や関心をもち,積極的に取り組む態度を育てる。

添付の平成 28 年度年間指導計画 中学部第3学年(重複障害Ⅱ類型)生活単元学習による。

12 教室内配置図

A

T

出入り口

ホ ワ イ ト ボ ー

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21

作業学習 学習指導案

指導者 ○○ ○○ (T1)

指導者 ○○ ○○ (T2)

1 日時・場所 平成 28 年○月○日(○) 3校時 11:00~11:50

「○○(寄宿舎教室)」

2 指導形態 決定学級

3 学部・学年 高等部 ○年○組(類型Ⅱ)

4 単元名 軽作業をしよう(さをり織り)

5 単元設定の理由

〇生徒観

この学級は男子生徒 2 名,女子生徒1名計3名で構成されている。

Aは,脳性麻痺による移動機能障害・両上肢機能障害と,軽度の知的障害を持つ男子

生徒である。基本的には車いすを自走で移動し,自立活動においては「杖」を使って

歩く練習にも取り組んでいるが,下肢の麻痺は重く,上肢の筋力に頼った歩行である。

会話によるコミュニケーションでは,語彙は少ないが,相手に伝えようとする気持ち

を十分に持ちながら伝えることができる。登校時や授業開始時など学校生活のさまざ

まな場面において,ていねいな挨拶をすることが定着している。しかし,しんどさを

訴えることを遠慮して我慢強く学習活動に参加し続けたり,作業に熱中して取り組み

続けたりして,背中や腰に負担をかけてしまうことがある。

「自らの進路」については,就業体験の取り組みにより,卒業後利用する福祉サービ

ス事業所について絞り込むことができているが,日常生活においての「移動支援」等

の利用には消極的であり,「自立した生活」への具体的なイメージを十分に持つことは

できていない。

Bは,幼児期に捻転ジストニアの症状が出始め,歩行が困難になり,ウォーカーと車

いすを交互に使用して移動している。作業や筆記の時には右手の振戦があるために,

手首を固定するなど自分で工夫して取り組んでいる。弱視・眼振により,小さい字が

見えにくい。視野が狭く,全体を見ることも難しいので,文章を読んだり,パソコン

のモニターを注視したりする活動にも,かなりの工夫が必要である。周囲の状況が把

握しにくいために,集団での活動,初対面の相手とのコミュニケーションが苦手であ

る。椅子に腰かける姿勢はかなり安定してきたが,常に自分で体の揺れを抑えながら

の活動になるので,長時間座り続けることはかなり負担をかけていることになる。

「自らの進路」については,寄宿舎での「さをり織り」活動や就業体験の取り組みに

より,卒業後の「活動」の内容は具体的になってきている。余暇活動を営むための公

共交通機関の利用など,「自立した生活」への具体的なイメージを少しずつ持ち始めて

いる。

Cは,二分脊椎による両下肢機能全廃,膀胱・直腸機能障害と,軽度の知的障害があ

る。長時間同じ姿勢でいると,褥瘡が出来やすく,そのため,褥瘡を防ぐために,授

業の時には

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タイマーを使い,20 分おきに椅子からの立ち上がりを行っている。学校生活において

は,両足に長下肢装具を装着して過ごし,車椅子を自分でこいで移動も行い,教室で

は,車椅子から椅子に乗り換えて活動している。自立活動では,杖を使用して歩行練

習や立位をしている。コミュニケーションにおいては,言葉によるコミュニケーショ

ンの力は高く,クラスの友だちとの会話や日常生活におけるコミュニケーションを表

情豊かに楽しんで会話をすることができる。質問の受け答えに対しては,語彙が少な

く応答に時間がかかる事が多いので,教員の支援が必要な時もある。手指がとても器

用であり,細かな作業を丁寧に行うことができる。

「自らの進路」については,就業体験の取り組みにより,卒業後利用する福祉サービ

ス事業所について自ら進路決定を行うことができている。余暇活動を営むための「移

動支援」等の利用も積極的に利用し,余暇の楽しみ方を自分なりに模索し始めている。

〇単元観

「作業学習」では「作業内容を確認し見通しを持って活動することを通して,作業を

することへの意欲と作業能力を高める。」「就業体験などを通して作業を行う中で,生

活体験の幅を広げ,卒業後に就労することの意義を理解するとともに,将来の生活に

必要な能力を高める。」ことを目標に,年間を通して「身近な食材を使って調理をしよ

う」「木工・陶芸製品を作ろう」「軽作業をしよう」という三つの単元を軸にして取り

組んでいる。

「軽作業をしよう」の単元においては,年間指導計画の「簡単な作業の手順を理解し,

継続的に作業ができる」という目標のもとに,2年生時から「さをり織り」に取り組

んでいる。

2年生時においては,「さをり織り」の最終段階である「横糸で織る」作業に取り組

んだ。シャトルの運び方や足の踏みかえ,スイッチの切り替えなど,それぞれの手織

機の特性をよく理解して継続的に取り組むことができるようになった。また,横糸に

ついては生徒一人ひとりが自分の好みのものを選び,色の組み合わせを楽しみながら

個性豊かな布を織ることができるようになってきている。

3年生時からは,「横糸で織る」作業にも慣れてきたので,卒業後の福祉サービス事

業所での活動を意識し「製品」を作ることを目標に,「横糸を通した後,布の両端を丁

寧に整える」作業も加えた。また,「さをり織り」の作業内容の全体像を理解するため

に,「タテ糸づくり」「筬(おさ)通し」「ヘルド通し」の作業も取り組ませることにした。

「さをり織りは織る前の準備が大変である」ことを理解することで,卒業後に「さを

り織り」の活動を体験する機会があった時などに,準備をしてくれた人の労苦を理解

することでコミュニケーションが豊かになることを期待している。

〇指導観

新たに加えた「横糸を通した後,布の両端を丁寧に整える」作業では,生徒それぞれ

の就業体験で学んだこと〔表現を楽しむだけでなく,買いたいと思ってもらえるよう

な製品をつくる〕を根拠にして取り組みを始めた。かなり神経を使う作業だが,就業

体験で実際に学んだことなので,三人とも意欲を持って取り組んでいる。自分の体へ

の負担も考慮しながら継続的に取り組むことができるよう指導する。

「タテ糸づくり」の作業手順である「糸かけ」「筬 (おさ)通し」「ヘルド通し」作業は,

生徒それぞれの障害特性に沿って支援をしながら取り組ませている。作業手順はかな

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り理解することができたが,実際の作業では支援が必要な生徒もいる。可能な限り生

徒が主体的に取り組むことができるよう,支援の仕方や補助具の工夫などをしていく。

教員の支援は可能な限り少なくして,生徒が自立的に作業していく展開としたいが,

作業途中で支援が必要な時には生徒から積極的に支援を求めるよう指導する。

作業を継続している間に,少しずつ姿勢が崩れていったり,体に負担をかけてしまっ

たりすることがあるので,一定の時間を状況判断して自分自身で休憩を取り,姿勢を

直し,ストレッチをするように指導する。

6 単元の目標

(1)「作業の手順を理解して主体的に取り組む力」をつける。

(2)「作業に継続的に取り組む力」をつける。

7 指導計画[ さをり織りをしよう 29 時間]

第1次 さをり織りの準備をして織ろう ( 20 時間 )本時

15/10

第2次 織った布を製品にしよう ( 9時間 )

8 本時の目標

〇個々の目標

生徒名 個々の実態・様子 目標 手立て

(男)

・作業には良く慣れて積極

的に取り組むが,時々間違

え て 修 正 が 必 要 な 時 が あ

る。

・作業に集中しすぎて同じ

姿 勢 を 続 け る こ と で 。 背

筋・腰等に負担をかけてし

まう。

・ゆっくりと丁寧に作業を

継続することができる。

・作業時間を意識して,自

分でストレッチをするこ

とができる。

・スピードよりも,ゆっく

りと丁寧に作業すること

の大切さを伝える。

・作業時間を意識して,自

分でストレッチをするよ

うに伝える。

表現・表出

に関する内

・作業中に間違えて修正が

必要な時に,遠慮がちに支

援を求める。

・修正が必要な時に,教員

に積極的に支援を求める

ことができる。

・修正が必要な時に,教員

に積極的に支援を求めよ

うに作業開始時に伝える。

(男)

・作業には良く慣れて積極

的に取り組むが,時々間違

え て 修 正 が 必 要 な 時 が あ

る。

・前屈みの姿勢が続くため

に,背筋等にかなり負担を

かけてしまう。

・ゆっくりと丁寧に作業を

継続することができる。

・作業時間を意識して,自

分でストレッチをするこ

とができる。

・スピードよりも,ゆっく

りと丁寧に作業すること

の大切さを伝える。

・作業時間を意識して,自

分でストレッチをするよ

うに伝える。

表現・表出

に関する内

・作業中に間違えて修正が

必要な時に,遠慮がちに支

援を求める。

・修正が必要な時に,教員

に積極的に支援を求める

ことができる。

・修正が必要な時に,教員

に積極的に支援を求めよ

うに作業開始時に伝える。

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24

(女)

・作業には慣れて,積極的

に取り組むが,丁寧過ぎて

スピードがゆっくりになる

時がある。

・作業に集中しすぎて同じ

姿勢を続けることで,腰に

負担をかけてしまう。

・丁寧に作業を継続するこ

とができる。

・作業時間を意識して,自

分で体位変換することが

できる。

・丁寧に作業することも大

切であるが,時にスピード

も求められる事を伝える。

・作業時間を意識して,自

ら体位変換するように伝

える。

表現・表出

に関する内

・作業中に間違えて修正が

必要な時には,支援を求め

る。

・修正が必要な時に,教員

に的確に支援内容を伝え,

支援を求めることができ

る。

・修正が必要な時に,教員

に的確に支援内容を伝え,

支援を求めように作業開

始時に伝える。

9 準備物

木製手織機 手織糸 筬(おさ)通し用具 経(へ)通し棒

10 指導過程

学習活動 指導上の留意点(□課題 ○支援・配慮 ☆評価)

A B C 全体

1 導入(5分)

・始めの挨拶

(1分)

・本時の説明

(2分)

・準備体操

(2分)

□ 授業 の開 始を意 識

して姿勢を整え,他の

生 徒の 様子 を見て 挨

拶する。

□ 説明 を集 中して 聞

く。

□首や背中など,負担

の かか りや すい部 位

を自分でほぐす。

□ 授業 の開 始を 意 識

して姿勢を整え,日直

の挨拶に応える。

□ 説明 を集 中し て 聞

く。

□首や背中など,負担

の かか りや すい 部 位

を自分でほぐす。

□ 授業 の開 始を 意 識

して姿勢を整え,日直

の挨拶に応える。

□ 説明 を集 中し て 聞

く。

□首や背中など,負担

の かか りや すい 部 位

を自分でほぐす。

日直に授業開

始の挨拶をす

るよう促す。

今日の活動に

ついて,言葉

で説明する。

ほぐす部位に

ついては指示

をしながら取

り組ませる。

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25

2 展開(40 分)

・さをり織りを

する。(A , B,C)

・筬通しを

する。(C)

□ゆっくりと丁寧に

作 業を 継続 するこ と

ができる。

○スピードよりも,ゆ

っ くり と丁 寧に作 業

す るこ との 大切さ を

伝える。

☆ ゆっ くり と丁寧 に

作 業を 継続 するこ と

ができたか。

□ 作業 時間 を意識 し

て,自分でストレッチ

をすることができる。

○ 作業 時間 を意識 し

て,自分でストレッチ

をするように伝える。

☆ 作業 時間 を意識 し

て,自分でストレッチ

を する こと ができ た

か。

□ゆっくりと丁寧に

作 業を 継続 する こ と

ができる。

○スピードよりも,ゆ

っ くり と丁 寧に 作 業

す るこ との 大切 さ を

伝える。

☆ ゆっ くり と丁 寧 に

作 業を 継続 する こ と

ができたか。

□ 作業 時間 を意 識 し

て,自分でストレッチ

をすることができる。

○ 作業 時間 を意 識 し

て,自分でストレッチ

をするように伝える。

☆ 作業 時間 を意 識 し

て,自分でストレッチ

を する こと がで き た

か。

□ ゆっ くり と丁 寧 に

バ ラン スを 考え な が

ら 糸を 通す こと が で

きる。

○戸惑いがある時は,

自 分か ら支 援を 求 め

ることができるよう,

言葉をかける。

☆ 丁寧 に作 業を 継 続

することができたか。

□ ゆっ くり と丁 寧 に

作 業を 継続 する こ と

ができる。

○ 丁寧 さも 必要 で あ

るが,ある程度スピー

ド も求 めら れる こ と

の大切さを伝える。

☆ 丁寧 に作 業を 継 続

することができたか。

生徒それぞれ

の 状 態 を み

て,短い休憩

を入れ,体の

姿勢を整えた

り,ストレッ

チングをした

りするよう働

きかける。

3 まとめ(5分)

・活動の振り返り

(4分)

・終わりの挨拶

(1分)

□活動を振り返り,思

ったことを発言する。

□ 授業 の終 了を意 識

して姿勢を整え,他の

生 徒の 様子 を見て 挨

拶する。

□活動を振り返り,思

ったことを発言する。

□ 授業 の終 了を 意 識

して姿勢を整え,日直

の挨拶に応える。

□活動を振り返り,思

ったことを発言する。

□ 授業 の終 了を 意 識

して姿勢を整え,日直

の挨拶に応える。

活動の中でう

まくいったこ

となどを発言

するように促

す。

11 評価の観点

(1)「作業の手順を理解して主体的に取り組む力」をつけることができたか。

(2)「作業に継続的に取り組む力」をつけることができたか。

修 正 が必 要 な時

に,積極的に支援

を求めることができ

たか。

修 正 が必 要 な時

に,積極的に支援

を求めることができ

たか。

修 正 が必 要 な時

に,積極的に支援

を求めることができ

たか。

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26

12 年間指導計画

〇ねらい

・作業内容を確認し見通しを持って活動することを通して,作業をすることへの意欲

と作業能力を高める。

・就業体験などを通して作業を行う中で,生活体験の幅を広げ,卒業後に就労するこ

との意義を理解するとともに,将来の生活に必要な能力を高める。

〇計画 [作業学習 105 時間 ]

・本時 58/105

13 教室内配置図

T1

T2

入り口

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27

Ⅲ類型

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28

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29

自立活動 (個別 ) 学習指導案

指導者 ○○ ○○

1 日時・場所 平成 28 年○月○日(○) 3校時 11:10~11:55

小学部○年○組教室

2 授業形態 個別

3 学部・学年 小学部 第○学年○組(Ⅲ類型)

4 題材名 自分のペースでがんばろう(個別課題 )

5 題材設定の理由

○ 児童観

Aは,脳腫瘍による体幹機能障害であり,肢体不自由,知的障害,視覚障害 (光覚程度 )を併

せ有し,日常生活全般にわたって支援を必要としている。1日数回のてんかん発作があり,発作は

覚醒が不安定である時,脳がより覚醒している時に起こることが多い。また,てんかん薬の副作用

や夜間の傾眠により,午前中の覚醒が低いことが多い。強い揺さぶり (前庭感覚刺激 )や大音量の

音刺激等の強い刺激を提示しても,朝の登校時から 11 時過ぎまで眠ってしまうことが8割程度あ

る。

肢体不自由の状態としては,低緊張,未定頸,自力で取ることができる可能な姿勢は臥位に限

られ,自力での姿勢変換は困難である。しかし,関節各部の拘縮や変形は少なく,支援を受けて

の胡坐座位,ベンチ椅子座位,立位台による立位等を行うことができ,姿勢上の制限は少ない。

また,肘位,立位において肩関節を圧縮する等の支援により,頭を挙上させようとする動きが見

られつつある。体調不良時は,喘鳴を示したり,排痰が困難になったりすることがあるが,抗重力姿

勢を取る時間を一定時間行う等により自力排痰を促すことができ,ほとんど吸引は必要としない。

上肢の状態としては,右手は麻痺が強く,筋緊張が入る以外の動きはほとんど見られない。しか

し,左手は不随意運動とわずかな随意運動が見られる。触覚を活用している時は,不随意運動が

抑制されていることが多いため,自発の動きが減ったように見られるが,強い触覚刺激を受容すると,

反射以外に左手を引っ込めるような随意運動が表出することがある。

感覚認知に関しては,前庭感覚,聴覚,表在・深部感覚 (固有覚,触覚等 )優位である。

視覚は,光覚程度である。外に出ると眩しさを感じ,目を閉じることもあるが,暗室で目の前に強

い光の点滅を示しても反応がない様子も見られ,視覚の活用は困難である。

触覚は鈍磨気味である。温冷覚は活用できており,保冷剤等の冷たい物に触れてから数秒後

に左手を動かす等の動きも見られる。温度以外の感覚で手を動かすことはほとんどないが,チクチ

クした感触に手を動かすことが時折ある。温冷覚ではない様々な感触の違いに気付くことが課題で

ある。どちらの手で触れても,その刺激に対して左手が反応することが多く,左右が未分化である。

聴覚は,一定以上の大きさの音刺激で,聞かせたい音以外の刺激がない状態の環境でないと

受容が困難であることが多い。しかし,周囲の環境を整え,単音の連続した音やノイズ混じりのホラ

ー音を聞くと目を開いたり,笑顔になったりする。好きな音から反応のない音に切り替わった時に反

応するといった,音に対して注意を持続することが課題である。また,特定の声掛け等の理解は困

難で,課題として「せーの」「もう一回」「抱っこするよ」の特定の短いフレーズと決まった働き掛けの

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30

因果関係の形成を行っている段階である。

前庭感覚・固有感覚の刺激 (揺さぶり,くすぐりあそび)等を好み,覚醒が良好な状態の際は,く

すぐり遊びや揺さぶり遊びに関しては表情に加え,発声で快を表出することができる。前庭感覚・

固有感覚に関しては強い刺激を好み,大きくくすぐると微笑むような表情から,口角が上がり,大き

く発声し,快を表出することができる。

好きな働き掛けを受けた後「もっとしたい」と表情や発声,しぐさで表出できるようになることに繋

げるために,そのステップとして,「快になる働き掛けの始まりと終わりに気付くこと」,「働き掛けの前

後の数秒程度の間と,働き掛けを受けている時に注意を一定時間向けることができる」ことをコミュ

ニケーションの課題としている。また,上記の実態から,他者意識は未形成であり,他の児童等を

意識できている様子はなく,自身にとって快の働き掛けを提示する教員への意識を育んでいる段

階である。

本校の授業研究テーマの副題にある「表現・表出する力」に関して,課題とする表を示す。次の

表は,本校アセスメントチェックリストによる実態把握である。覚醒によって,課題となる項目が異なる

ため,覚醒が良好な場合と不安定な場合の2パターンの課題を設定する。

覚醒

区分 発達段階

- 領域番号

課題とする項目

良好

要求表出 Ⅲ-18 好きな遊びをした後,もう一度してほしそうな表情をする。 (遊びが

終わったら,残念そうな表情をする)

不安定

要求表出 Ⅱ-16 繰り返しの働き掛けに対して,笑う・声を出す等のサイクルを3回

以上維持する。(例:支援者がくすぐる→子供が笑う )

○ 題材観

題材を設定するに当たって,広島県全域で取り組まれている「学びの変革~アクションプラン~」

及び,それに関連する本校の研究テーマの「児童・生徒のコミュニケーション能力を育てるための授

業作りをめざして~児童生徒の表現・表出する力を培うための指導の在り方~」を踏まえる。 (主体

的とは,一般的に「自分の意志・判断によって行動するさま。 (大辞林第三版引用 )」を指す)

しかし,随意的な表出が少なく,外界に対して

注意を向けることに困難さがある児童が主体的

に学ぶためには,興味・関心 (外界に対する気付く,

注意を向ける)を土台とし,意欲 (外界に対しての

「もっと~したい」という欲求 )が生まれ,主体性のある

行動につながるというプロセスが必要であると考える。

本時においては,このプロセスを踏まえた指導を主体的

な学びにつながると考え,児童の興味関心のある題材を

繰り返し行うことで,外界に対する欲求を育み,主体性

のある行動につなげることができるようにする。

本題材は自立活動 (個別 )の時間における指導であり,個々の課題に応じた「自分のペースでが

んばろう」という活動を通年で計画し,基本的な行動を遂行するために必要な力の育成と障害に起

因する困難さを改善・克服するという観点で課題を設定し,取り組んでいる。よって,本題材の年間

目標は,Aの個別の指導計画の年間目標と同一である。年間目標を設定するにあたり,児童観に

示した課題と本校アセスメントチェックリストから導き出した課題となるキーワードを関連させ,年間目

標を導いた。 (矢印の表記について:原因→結果,⇔相互に関連する ) 次のページの図の作成に

主体性のある行動 (表情の変化・随意的

な手の動き等 )

意欲 (外界に対する欲求 )

興味・関心 (外界に注意を向ける)

「主体的な学び」に

つながるプロセス

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31

おいては,児童の課題に加え,将来身に付けてほしい力,保護者の希望及び小学部の学部目標

を関連させた。

そして,本題材の具体的な内容は上記の年間目標及び主体的な学びの視点を踏まえ,年間

通して主に以下の5つの活動を設定している。

1 立位等の抗重力姿勢を一定時間取り,頭部を挙上しようとする。 (年間目標 (2)と関連 )

2 立位台に乗り,支援具を使用して楽器を持ち,左手が動かす。 (2学期途中からの取組 ) (年間

目標 (3)と関連 )

3 ぐにゃぐにゃ,でこぼこ等の感触がする物に触れる。(年間目標 (3)と関連 )

4 最も快反応が出やすい仰臥位でのくすぐり遊びをする。(年間目標 (4)と関連 )

5 快反応が表出しやすい音とそれとは異なる音を聞く。 (年間目標 (4)と関連 )

これらの1から5の内容に対して,細かいステップで目標を設定し,継続して取り組んでいる。本時

においては1,2,3,4の内容を中心に行う。

○ 指導観

指導の留意点として5つのことがあげられる。

(1)目標に集中しやすい支援・環境設定を行う。

複数の刺激を同時に入力されることで,自分に優位な前庭覚・圧覚等の刺激が優位になる。教

員の声に注目させたい時等,1つの刺激に意識を向けさせる時は,それ以外の刺激はできるだけ

少なくなるようにする。人からの働き掛けによる快刺激の表出をねらう際は働きかけを行いながら,声

掛けを行うが,働き掛けの前後においても教員の声を意識させるようにする。 しかし,触覚刺激の

みであると覚醒が落ちることがあるため,覚醒を上げるために,揺さぶり・タッピング等を行いながら,

覚醒を高めるようにする。

(2)簡潔で分かりやすい声掛けを行う。

(身 )肘位,立位において支援を受けて,頭を挙上させようとする動きが見られつつある→(2)

(健 ) 覚醒が不安定,低下しやすい。午前中の覚醒が低いことが多く強い刺激を提示しても眠ってしまう。→(1)

(身 )不随意運動,左手のわずかな随意運動が見られるが,上肢等の動きが少ない→(3)

(身 )低緊張,未定頸等により,姿勢保持,姿勢変換が困難

【年間目標】 (1)13:30~14:30 の覚醒が高くなりやすい時間に,安定した覚醒状態を一定時間維持することができる。 (2)抗重力姿勢を取る中で,支援を受けて頭部を挙上しようとすることができる。 (3)左手の随意的な動きが増える。 (4)揺さぶり遊び等の働き掛けに対して注意を向け,快・不快・期待反応を表出することができる。

【将来身に付けてほしい力・保護者の希望】 ・睡眠,覚醒リズムの安定 ・支援を受け,頭部のコントロールする ・快として受容できる刺激の増加 ・周囲への表情・発声等での明確な表出 ・意図的な左手の活用

(コ)人からの働き掛け(前庭覚刺激 )に対して快反応を表出できるが,期待反応が未形成 (要Ⅲ-16,18)→(4)

(環 )鈍磨気味であり,感触への気付きに困難さがある(触Ⅱ-7)

(環 )音の変化への気付きが困難である(聴Ⅱ-7)

(健 )(環 )注意の持続が困難で,強い刺激でないと受容が困難なことがある(触Ⅱ-7,聴-7)→(4)

(人 )他者意識が未形成である。 (人Ⅰ-3)

【小学部の学部目標】 ・健康で安全な学校生活を送る力を育てる。 ・基本的生活習慣を養う。 ・身のまわりの人や物に関わる力を育てる。

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声掛けとは,児童の受け止めやすさを重視した,音節が少ない声でのアプローチのことを指す。

児童が意識しやすい,短く簡潔な特定のフレーズを使用し,声掛けを行う。

(3)児童が受容しやすい言葉や様々な刺激を提示し,表出をするまで待つ。

感覚が鈍磨で,例えば氷に触れても自分で手を動かし,反応するまでの時間が十数秒かかると

いう実態がある。これらのことに配慮しながら声掛けを行い,刺激を提示する。触れている時間は,

声掛け等は行わず,触覚刺激に意識を向けることができるようにする。

(4)学習姿勢に配慮する。

触れる活動は,不随意運動もあるが動きのある左手の活用のために,左手が上となる側臥位と

する。立位台での立位では,頭部を固定した状態で行い,安定した姿勢にすることで,肩の可動域

が広がるため,左手の動きを促すのに適切な姿勢だと考えられる。また,立位において頭部の挙上

を目的とする場合は,肩関節を圧縮する等支援を行う。

(5)覚醒,睡眠,てんかん発作に配慮する。

薬等の影響により,午前中はどのような状況においても,覚醒が向上せず,学習に参加すること

が困難な場合がある。揺さぶる,タッピング,姿勢変換等を行っても覚醒が向上しない場合は,休

息を一定時間とり,覚醒を促す等の授業内容の一部変更 (3,感触遊びを行わず,それ以外の活

動時間を伸ばす等 )を行う。また,てんかん発作が一日に数回程度あるため,発作時は,安楽な姿

勢を取り,休息時間を取る。落ち着いたら,学習を再開する。

6 題材の目標

・立位,肘位等の抗重力姿勢を一定時間取る中で,頭部を挙上しようとする。

・立位台で頭部を支援された状態で,不随意運動で動いている左手に気付く。

・ぐにゃぐにゃ,でこぼこ等の感触がする物に触れて,左手を動かす。

・最も快反応が出やすい仰臥位でのくすぐり遊びを行い,発声や表情等で反応を示す。

・快反応が表出しやすい音とそれとは異なる音を聞き,変化に気付き表情等で反応を示す。

7 指導計画[全時間]

題材の目標 時数

第1次

姿勢保持力の向上 (立位や肘位での頭部の挙上等 )

前庭感覚刺激に対する快反応の安定

外界への興味関心の形成 (聴覚 )

50 時間

第2次

姿勢保持力の向上 (立位や肘位での頭部の挙上等 )

前庭感覚刺激に対する期待反応の形成

外界への興味関心の形成 (聴覚,触覚 )

50 時間

第3次

姿勢保持力の向上 (立位や肘位での頭部の挙上等 )

前庭感覚刺激に対する期待反応の形成

外界への興味関心の形成 (触覚 )

40 時間

本時 15/40 計 140 時間

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8 本時の目標

9 準備物

・三角マット,立位台,ハンドベル,感触遊びセット(ビー玉,ジェリービーズ,フラッシュポンポン

ボール,マッサージ器,お湯,タオル,触れる物を入れる器 )

10 指導過程(別紙)

11 評価の観点

○ 学習内容の分量は適切であったか。

○ 実態に応じた支援は適切であったか。

○ 教材・教具は目標達成に対して効果的であったか。

○ 立位台の立位を取り,支援を受け頭部を 30 秒程度挙上しようとすることができたか。

○ 立位台上で支援具を使用して楽器を持ち,音を鳴らすことで左手に気付き,表情を変化さ

せることができたか。

○ 様々な感触に触れて,左手を動かすことができたか。

○ くすぐり遊びの始まりと終わりが分かり,活動が終わったらもう一度してほしそうな表情をする

ことができたか。

12 年間指導計画 (別紙参照 )

児童 実態 目標 手立て

(覚醒

良好 )

・低緊張で未定頸。立位台

の立位等において支援す

ると,頭を挙上させようとす

る動きが見られつつある。

・左手の動きがあるが不随

意運動であり,意図的な動

きが見られない。

・極端に冷たい物以外の皮

膚感覚で手を動かすことは

ほとんどない。

・立 位台の立位を取

り,支援を受け頭部を

20 秒程度挙上しようと

する。

・立位台上で左手を動

かすことで,手の動き

に気付き,表情を変化

させる。

・提示した具体物に触

れ,触覚刺激を受容し

左手を動かす。

・肩関節を圧縮することで頭部の

挙上を促す。児童が一定時間頭

を上げようと活動する時間と力を

抜く時間を作る。

・頭部を固定し,上肢を動かしや

すくする。楽器は自分で持てない

ためゴムで固定する。

・初めはマッサージを行い,掌を意

識できるようにする。動きが見られ

やすい刺激の強い物や弱い物を

様子に応じて具体物を提示する。

表現・表

出に関す

る内容

・好きな働き掛けの始まりは

意識できつつあるが,終わ

りが曖昧であり,もっとして

ほしいという期待を表すこと

が難しい。

・くすぐり遊びの始まり

と終わりが分かり,活動

が終わったらもう一度

してほしそうな表情 (笑

顔から真顔に戻った表

情 )をする。

・安楽であり,発声しやすい3角マ

ット上の仰臥位で行う。

・始まりと終わりが分かりやすいよう

に,始める時には肩に手を置き,

終わったら声掛け等せず,変化を

意識できるようにする。

(覚醒

不安定 )

・上記と同様である。

※覚醒が低い際は手へ注

意を向けることは困難であ

るため,活動を変更する。

・立 位台の立位を取

り,支援を受け頭部を

10 秒程度挙上しようと

する。

・肩関節を圧縮することで頭部の

挙上を促す。児童が一定時間頭

を上げようと活動する時間と力を

抜く時間を作る。

表現・表

出に関す

る内容

・上記と同様である。

・覚醒が低いため,くすぐり

遊びが終わったら覚醒が落

ち,寝てしまう。

繰り返しのくすぐり遊び

に対して,笑う・声を出

す等のサイクルを3回

以上維持する。

・上記と同様であるが,遊びと遊び

の間の時間を短くする。

学習活動は,児

童・生徒主体の

文体にする。

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34

13 教室内配置図

出入り口

A T1

立位台

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35

10 指導過程 (別紙 )

学習活動 指導上の留意点 (□課題 ○支援・配慮 ☆評価基準)

1 始まりの挨拶

をし,覚醒 を高

める(7分)

2 立位台で頭

をあげよう(7分 )

3 立位台で左

手を動かそう (7

分 )

4 ストレッチ (2

分 )

5 感触遊びをし

よう(10 分 )

6 くすぐりあそ

び(10 分)

7 終わりの挨拶

(1分 )

○全身を揺らしたり,動かしたりすることで覚醒の向上を促す。

○立位姿勢を行う準備として,立位台に乗る前に下腿三頭筋等のストレッチを行

う。また,学習活動2と関連させ,頭部コントロールの指導の一貫として,向かい合

って腕を引っ張り,頭の引き起こし反応を促す活動を行う。

○教師が児童の肩関節を圧縮させるように支援を行い,頭部の挙上を促す。

○児童が頭を上げようと活動する時間と力を抜く時間を作る。

☆頭部を 20 秒挙上することができたか。

○頭部,顎を支援し固定することで,上肢を動かしやすくする。

○楽器は自分で持つことが困難であるため,ゴムで固定する。また,大きな音が鳴

り,重みのある楽器 (ハンドベル)を持たせ,左手の動きへの気付きを促す。

○覚醒が低くなったらくすぐり等で等覚醒の向上を促す。

☆左手に気付き,表情を変化させることができたか。

・立位台から下りて,肩周辺の筋肉を緩ませるようにストレッチを行う。

○具体物に触れる前に手を意識できるように掌や指一本一本を擦る等を行う。

○動きが見られやすい冷たいジェリーボール,振動するマッサージ器や刺激の少

ない温かいお湯等を様子に応じて提示する。

○児童の手を他動的に動かすことで,具体物に注意を向けさせる。自発の動きを

待つ。同じような刺激が続くと慣れてしまうため,冷たい物の次は温かい物等,刺

激の慣化・脱慣化を繰り返す。

○注意が逸れてしまうことがあるため,触覚刺激以外の刺激はできるだけ減らす。

☆触覚刺激を受容し左手を動かすことができたか。

○安楽であり,発声しやすい三角マット上の仰臥位で行う。

○始まりと終わりの意識を育むために,肩に手を置き,2秒間をあけてから「せー

の」という声掛けをしてから始めるというパターンで,くすぐる。終わったら声掛け等

せず,終わりに気付かせるようにする。そして,表情等の児童の反応に応じて間を

あけ,くすぐり遊びを繰り返す。

☆活動が終わったらもう一度してほしそうな表情をすることができたか。

○抱っこの安楽な状態で,終わりを伝える。

立位台で立位を取り,支援を受け頭部を 30 秒程度挙上しようとする。

立位台上で支援具を使用して楽器を持ち,音を鳴らすことで左手に気付き,

表情を変化させる。

提示した具体物に触れ,触覚刺激を受容し左手を動かす。

くすぐり遊びの始まりと終わりが分かり,活動が終わったらもう一度してほしそうな表情 (笑顔から真顔に戻った表情 )をする。

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36

別紙1 児童(生徒)の実態の参考資料(本校アセスメントチェックリストによるプロフィール表)

〔A〕

月齢

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

Ⅰ 快不快の分化 人の働きかけによ

る快反応 外界への気付き (聴覚 )

外界 への気付 き(皮 膚 感

覚・味覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

光への反応

色への反応

2

反 応 表 出 の芽

生え

大人への注意

人への注意

声への好反応

音への注意

音の変化への気付き

外 界 への興 味 (触 覚 ・味

覚・嗅覚等) 探索 (触覚 )

注視

追視

4

期待反応

やりとりの予測

応 答 性 の あ る

行動

要求の芽生え

人への愛着

やりとりの芽生え

大人への積極性

声の変化への気付き

音の方向性への気付き

音への興味

特定フレーズへの気付き・意味付

物の単純な操作

因果関係の理解の芽生え

探索(視覚)

リーチング

目と手の協応の芽生え

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的

行動

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大 人 の注 意 を

引く

要 求 手 段 の多

様化

指さし要求

やりとりの拡大

共感性の芽生え 名詞等の理解 発語の芽生え

空 間 認 知 の芽

生え

始点と終点の理

手指の活用

保存の概念

比較の概念

模倣

生活場面等の

理解

13

要求の具体化・

明確化

言語を伴う要求

社会性の芽生え

共感性の高まり

言語 指示 ・二 語

文の理解

質問への応答

動詞・形容詞等の

理解

言葉の模倣

名詞等の発語

視 覚 情 報 の活

図形概念の芽生

数 ・量 概 念 の芽

生え

生 活 場 面 での

記憶の活用

見 立 て ・ごっ こ

遊びへの興味

19

24 Ⅶ

自 己 主 張 の芽

生え

言語での要求

他の子供への興

自己意識の芽生

社会性の高まり

理解語彙の増加

言語指示への応

カテゴリー概念の

芽生え

場面 に合 う言

葉の活用

表出語彙の増

二語文等の表

道具の使用

空 間 認 知 の高

まり

数 ・量 概 念 の高

まり

カテゴリー概念の

芽生え

見 立 て ・ごっ こ

遊び

食事 ・排泄 ・衣

服・清潔等 ADL

の基礎

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37

自立活動(個別) 学習指導案

指導者 ○○ ○○

1 日時・場所 平成 28 年○月○日 (○) 1校時 9:10~9:55

プレイルーム~教室

2 授業形態 個別

3 学部・学年 小学部 第○学年○組(Ⅲ類型)

4 題材名 タッチしてみよう

5 題材設定の理由

○児童観

本児は脳性まひ児で,日常生活は全般的に支援が必要である。体調的には給食をよく食べ

るようになり,体力が少しずつ向上してきたようで,大きく体調を崩すことがなくなった。しかし,

発作薬を調整中で幾らか減ってはきたものの,依然として寝起きに眼球が挙上する発作と,突

然の音や接触,あるいは体調的なものから起きる強直間代発作の二種類の発作が一日に何

度も見られる。発作の形が変化してきたり,強くなってきたりしていて,発作薬が適合していると

は言いにくい状況である。また,体調や薬の関係から,覚醒レベルが低く,一日のほとんどを眠

ってしまうということもあれば,30 分しか仮眠をしないでしっかり覚醒しているときも稀にある。日

中の睡眠と覚醒のリズムは,安定していない。

本校アセスメントチェックリスト ver3.1 では,要求表出については,「支援者からの働きかけに

対して視線を動かす」Ⅱ-9,「嫌なことをされると体を反らす,四肢を動かすなどをして嫌な気持

ちや怒りをあらわす」Ⅱ-15の段階である。人間関係では,「不安な状況のときに抱き抱えられる

と落ち着く」Ⅱ-4,「友達の笑い声が聞こえると,微笑んだり笑顔になったりする」Ⅱ-9,が時々

できるという段階で,反応表出,大人への注意の芽生え段階であると思われる。特に,快反応

については安定的な表出は難しく,何に興味を示すか,何だったら絶対的に喜ぶかなど,いろ

いろな素材を提示してみているが,わからないところが課題である。

聴覚・言語においては,「音の変化に反応」(Ⅱ-7)したり,ベルやお帰りの歌で笑顔(Ⅱ-5)

を見せたりする。あくびの後などに「むにゃむにゃ」と喃語のような発声をする事があるが,意味

を持ったものではないと思われる。触覚に関しては,まだ自分で意図的に手を動かすことは多く

ないが,手の過敏性が薄れてきていろいろな物に触ってきている中で,自分の手の動きに興味

関心(Ⅱ-12)が出てきたところと思われる。

○題材観

自立活動(個別)において,朝の自立活動の時間には,主に一日の学校生活を取り組むに

あたっての,バイタルチェックや栄養補給等を含めた活動を行っている。課題別自立活動の時

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38

間には,児童が「何だ?」と感じ,周囲や刺激に対して注意を向けるような,触ったり聞いたりす

る活動を主に行うことにしている。

実態把握から,現段階は前庭覚刺激が受け入れられやすいとのアドバイスを受け,昨年秋

より給食前にピーナッツボールで揺れを感じさせる前庭覚刺激を取り入れてきた。一日の生活

リズム作りと給食前の覚醒も狙ってであったが,一年間取り組んできた中で,安定した反応が見

られなかった。それは主に,寝起きであったり,上を向く発作後であったり,刺激を安定して受け

ることができない状況であったからだと考えた。

そこで,日によって睡眠と覚醒のリズムが安定しない状況の中でも,ある程度一定して刺激を

与えられる時間を発作表で調べると,登校後の1時間が最も覚醒の確率が高いことが分かった。

そこで,登校後にプレイルームに行って,トランポリンで揺れを感じ,「もう一回する?」の問いか

けに手を上げてタッチして応える取り組みを行った。まだタッチすることによってもう一回揺れると

いう因果関係の理解は求めず,偶然でも自分が手を上げたり,笑顔になったり,眼を合わせた

りすることによって何かがおきる程度で良いので,周囲の人との対話を感じとって欲しいと願う。

これは,外界からの刺激を受け止め,いろいろ感じ,思ったことを表出し,その思いを教員と共

有することで,コミュニケーションの基礎が養われ,更に外界への興味関心が拡がっていくと考

えられるからである。

これらのことから,この題材では児童の前庭覚刺激で覚醒レベルを上げ,コミュニケーション

をとり,その後に教室に行って足湯,経腸栄養剤摂取の活動をする。覚醒と睡眠のリズム形成,

体温の調節のための取り組みを行い,安定した健康状態を基盤にして,学校生活の中で「快」

の感情を呼び起こすことを狙うことができる。

そうすることで,ほとんど受動的なA児が,気持ちや願いを周囲に発信したり,能動的に活動

したりすることが増え,覚醒レベルが上がり,発作も減ることを期待する。それが,将来的にA児

の世界を拡げることにつながるのではないかと考えている。

○指導観

指導に当たっては,児童の体調は日々予測が付かず,児童の体調変化に気を配り,体調を

確認しながら指導する。

トランポリンを行うときには,側彎のため体が右へ倒れがちになるのでクッション等を使い,姿

勢に気を付ける。また,児童は気持ちを出すまでに時間がかかることが多いので,トランポリンで

揺れた後は,表情や手の動きを待つようにしながらじっくり気持ちを引き出したい。初めは手が

出にくいことが多いので,肘を支援する等,自分の手の動きに意識を向けさせるようにする。

経腸栄養剤摂取の際は,初めの数口は頭部の角度に配慮しながら,上唇の動きを支援し,

摂食機能の向上を図るようにする。

6 題材の目標

保有する機能や感覚を使い,周囲の様子を知り,感情を表現できる力を養う。

生活リズムや生活習慣の形成を図る。

7 指導計画[140/175 時間]

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39

8 本時の目標

・揺れを感じ,表情を変えたり,眼を合わせたりする。

・支援者の手にタッチしようとする。

・栄養補給をしたり,足湯をしたりして,身体の調子を整える。

9 準備物

トランポリン 体温計 足湯バケツ タオル 経腸栄養剤 コップ お茶 ハブラシ等

1次

・体温調節,栄養補給。

・給食前に揺れを感じ,覚醒レベルを上げたり,給

食に向けて意欲を高めたりする。

100 時間

2次

・登校したことを意識し,覚醒して学校生活を送る。

・体温調節,栄養補給。

・刺激に対する表現・表出をする。

75 時間 本時 36/75

児童名 実態 目標 手立て

児童

・覚醒レベルが低くなりがち

である。

・視力は 0,03 と判定されて

いる。光覚刺激や人の動き

を眼で追う等の反応がある。

・体験の積み重ねが難しく,

新しい体験には固まる。

・しっかり覚醒して活動す

る。

・支援者の手を意識して,

手を伸ばすようになる。

・トランポリンの揺れを感じ

とる。

・体調を見ながら,接触や言

葉掛けをする。

・眼の前で手をひらひらさせて

示す。

・繰り返し体験させる。

表現・表

出に関す

る内容

・冷たいもの,慣れていない

こと,眠いときに活動させる

場合等,不快を表出し,顔

や体に力を入れる。快反応

は一定していない。

・周囲を意識し始めてきてい

る。

・支援者からの働き掛けを

受け,笑う等の快反応が

ある。(要-7)

・支援者からの声掛けに

対して,視線を動かす・発

声等の反応がある。

(要Ⅱ-12)

・いろいろな刺激を体験させ

る。

・いろいろな活動の中で,気

持ちを確かめる言葉掛けを行

う。

・目標物の手の位置を分かり

やすくする。

学習活動は,児

童・生徒主体の

文体にする。

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40

10 指導過程

学習活動

指導上の留意点 (□課題 ○支援・配慮 ☆評価基準)

児童

○顔を固定し,眼を合わせるようにして待つ。

検温。(1分)

足湯をしながら経腸栄

養剤を摂取する。(10

分)

終わりのあいさつをす

る。(1分)

教室 に移 動 する 。 ( 3

分)

問い掛けに対して,手を動かして応える。

顎を上げ過ぎないで,上唇を意識しながら経腸栄養剤を飲む。

○姿勢を整える。

プレイルームへ移動す

る。(2分)

トランポリンで揺れを感

じる。(6分)

始 めのあいさつ 。 ( 1

分)

身支度 を整 える 。 ( 4

分)

○言葉掛けや,周囲を見せることで学校に着いたことを意識させる。

体調を確認する

○SBから降り車椅子に乗せたら,姿勢を整える。

1 回目 抱っこの状態で,トランポリンで揺れを感じる。 2 回目以降 仰臥位で,トランポリンで揺れを感じる。 ○頭が左に倒れないように枕替わりを入れたり,脚や体が右に倒れないように,ひざ下にクッションを入れたりする。

「もう一回する?」という問い掛けに眼を合わせる。

☆問い掛けられていることを知り,意識を向けたか。

☆問い掛けられていることを知り,手を動かそうとしたか。

○目の前で手を動かして,手に気付かせる。

トランポリンの終わりの

『抱っこでの揺れ』をす

る。(1分) ○移動の時の歌を歌いながら,教室に向かっていることを意識させる。

○温まった足を軽くマッサージしながら,自分の脚を意識させる。

○一日の活動に向け,期待できるような言葉掛けを行う等,しっかり語り掛けるようにする。

☆上唇を閉じるようにして飲んだか。

○口腔周辺をマッサージし唇や飲むことを意識させ,首の角度を調節する。

○トランポリンが終わったことを意識させる。

お茶を飲んだり,歯磨

きをしたりする。(15分)

○摂取するものの温度に配慮する。

しっかり覚醒して活動する。

スクールバスから降り

る。(1分)

トランポリンの揺れを感じとる。

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41

11 評価の観点

○ 揺れを感じ,表情を変えたり,眼を合わせたりしたか。

○ 支援者の手にタッチしようとしたか。

○ 上唇を意識して飲んだか。

○ 学習内容の分量は適切であったか。

○ 実態に応じた支援は適切であったか。

○ 教材教具は目標達成に対して,効果的であったか。

12 年間指導計画

13 教室内配置図

自立活動(個別)

目標 題材名 指導内容 時間数

(全 595 時間)

・生活リズムを整える。

・様々な活動に参加していく。

・声や表情,体の動きなどで

気持ちを伝える。

朝の生活 バイタルチェック 足湯

栄養補給 水分補給

排泄確認

嚥下機能の維持,向上

口腔内衛生

食に関する興味・関心,咀嚼力の向

側彎の進行抑制 からだつくり

マッサージ

周囲への興味関心を拡げる

手,脚,体の操作性の向上

コミュニケーション など

175

給食

210

個別課題

210

↑ 畳 ↑

ホワイトボード

長机

T1

A

長机

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42

児童の実態把握の参考資料(本校アセスメントチェックリスト ver3.1 によるプロフィール表)

月齢

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0 Ⅰ

快不快の表出 人の働きかけによ

る快反応

外界への気付き (聴覚 ) 外 界への気付 き (皮 膚 感

覚・味覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

2 Ⅱ

反応表出

大人への注意

大人への注意

声への好反応

音への注意

音の変化への気付き

感触の変化への気付き

手への気付き

注視

追視

4

期待反応

声のやりとり

応 答 性 の あ る

行動

要求

特定の支援者へ

気 付

大人への積極性

声の変化への気付き

音の方向性への気付き

特定フレーズへの気付き・意味付

物の単純な操作

因果関係の理解

リーチング

探索(視覚)

リーチング

7

選択

指さし理解

自分への気付き

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解

複雑な因果関係の理解

探索的行動

操作性の高まり

物の永続性

視覚的変化への興味

探索行動

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大 人 の注 意 を

引く具体物を用

い た 要 求

指さし要求

やりとりの拡大

共感性

名詞等の理解

言語指示への応

言葉の模倣

発語

空 間 認 知 の芽

生え

始点と終点の理

手指の活用

保存の概念

比較の概念

模倣

生 活 場 面 等 の

理解

13

要求の具体化・

明確化

言語を伴う要求

社会性の芽生え

共感性の高まり

二語文の理解

質問への応答

動詞・形容詞等の

理解

表出語彙の増

名詞等の発語

視 覚 情 報 の活

図 形 概 念 の芽

生え

数 ・量概念の芽

生え

生活場面での記

憶の活用

見立て・ごっこ遊

びへの興味

19

24 Ⅶ

自 己 主 張 の芽

生え

二 語 文 での要

他の子供への興

自己意識の芽生

社会性の高まり

理解語彙の増加

カテゴリー概念の

生え

言葉での要求

二語文等の表

道具の使用

空 間 認 知 の高

まり

数 ・量概念の高

まり

カテゴ リー概 念

芽生え

見立て・ごっこ遊

食 事 ・排 泄 ・衣

服・清潔等 ADL

の基礎

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43

自立活動(個別) 学習指導案

指導者 ○○ ○○

1 日時・場所 平成 28 年 ○月 ○日(○) 2校時 10:10~10:55

小学部○年○組教室

2 授業形態 個別

3 学部・学年 小学部 第○学年○組(Ⅲ類型 女子1名)

4 題材名 ひらがなであそぼう

5 題材設定の理由

○ 児童観

本児童は,福山型先天性筋ジストロフィー,知的障害を併せ有している。食事,排せつ,着

替えは部分的には自力で可能であるが,基本的には介助が必要である。体力面では日々の

活動の中で疲れやすく,また,その疲労は回復しにくい。学校でも疲労度が高い場合は,朝か

ら寝ることがあり,休息をとらせるようにしている。

移動は電動車椅子を使用している。基本的な操作技術は獲得しており,20m範囲であれば,

目的の所まで一人で移動することが可能である。左手で操作するため操作中は身体が左側に

倒れていることが多い。

見る力については,新認知チェックリスト奈良養護版(別紙1)を活用して,実態を把握してい

る。生活上は問題ないが,注視する力及び細部まで見比べる力が弱いため,ひらがなの字形

の弁別や選択肢が多くなると指示された物を選択することが難しい。また,空間を認知する力

が弱いため簡単な位置関係の模倣も困難である。これまで視覚認知力を高める指導(電動車

椅子等)を4年生の時から取り組んでおり,少しずつ力を付けてきている。ひらがなの字形の弁

別は,約 39 字程度できるようになってきており,選択肢が4つでも可能である。位置関係の模

倣では,3×1の位置マッチングから開始し,2×2の位置マッチングもできるようになった。

話す力については,学習到達度チェックリスト(別紙2)を活用して,実態を把握している。担

任や児童が関心が高い指導者に対しては2語文や3語文程度で話すことができる。また,会話

のやりとりの回数が増えてきているため,ある程度の会話も成立している。しかし,場面緘黙の

様子を呈し,声で返答等を求められる場面や,慣れていない人の前等のプレッシャーがかかる

場面では,話すことが難しくなるだけではなく,過度な緊張のあまり動きが遅くなったり,動けなく

なったりすることがある。

読む力については,学習到達度チェックリスト(別紙2)を活用して,実態を把握している。学

習場面では,自分の名前に気付くだけではなく,「も,ま,こ」は,ポスター等に書いてある中か

ら見つけ,声に出して指導者に伝えることがある。「お,わ,な」等のひらがなについては,1文字

ずつ提示すると「お,おおはたせんせい」等と言う。

4年生になった当初は学習に集中することが難しかった。継続して,学校での学習と家庭で

の宿題を毎日取り組むことによって,現在では学習習慣が定着し,学ぶことを楽しみにしてい

る。

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44

○ 題材観

自立活動では,年間指導計画により,個々の教育的ニーズに応じて「自分のペースでがん

ばろう」という活動を通年で設定し,基本的な行動を遂行するために必要な力の育成と,障害

に起因する困難さを改善・克服するという観点で課題に取り組んでいる。

本題材では,「環境の把握(5)認知や行動の手掛かりとなる概念の形成に関すること」と「コ

ミュニケーション(3)言語の形成と活用に関すること」に重点を置く。なぜならば,進行性の疾患

のためコミュニケーション手段の確立が急務だからである。イラストカードでは,伝えたいことを表

現するには限界がある。自由に表現することのできるひらがなでのコミュニケーション手段が児

童にとって一番適したものであると考えられる。本題材に関連する個別の指導計画(自立活

動)に記されている目標から関連している区分・項目を抜粋し,併せて記されている支援内容と

整理すると,次の表1のようになる。

表1 自立活動の目標と支援の内容(個別の指導計画より)

区分・項目 目標 支援の内容

環境の把握(5)

認知や行動の手掛

かりとなる概念の形

成に関すること。

・ 4×4の簡単

な位置マッチン

グができる。

・最初は,2×2の位置マッチング,積み木の色の数を

少なくする等,児童のできる難易度から設定する。

・積み木の位置を指導者と一緒に確認して,積み木を

並べる。

コミュニケーション(3)

言語の形成と活用

に関すること

・ひらがなの字

形の違いを区

別する。

・拾い読みでき

るひらがなを増

やす。

・文字マッチング,形のマッチングを繰り返し行う。

・ひらがなカルタをして,文字と音を結びつける。

・語頭音と語尾音クイズをして,語頭音と語尾音を意

識させる。

・絵本を読ませて,拾い読みさせる。

・なぞり書きをして,文字の形を捉えさせる。

これらの目標を達成するためには,視覚認知力の向上により視覚情報を処理して活用する

力が必要となる。これら視覚認知の力が段階的・複合的に高まることで表1の目標の達成につ

ながるのではないかと考えている。次にそれら視覚認知の力の関係を整理した図を示す。

図1 視覚認知力の向上を土台とする視覚情報の処理と活用

視覚情報の処理と活用

○視覚情報を基に記憶と照らし合わせて判断する力

(例)安全に留意した電動車いすの操作

○判断した結果を言葉や行動で表現し,周囲に分かるように伝える力

(例)ひらがなを拾い読みし,指導者に伝える

視覚認知力の向上

○空間を認知する力(位置マッチング学習)

○対象を細部まで見比べる力(ひらがなカルタ,マッチング学習)

○対象を注視する力(ひらがなカルタ,マッチング学習)

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45

具体的な活動内容は,導入となるひらがなカルタ,位置とひらがなのマッチング学習である。

「ひらがなカルタ」は,対象を注視する力,細部まで見比べる力を付けることをねらいとしている。

また,様々なひらがなを見慣れること,イラストを手掛かりにして語彙を増やすことができる。イラ

ストを手掛かりにして学習させることで,間違えることや分からないことを軽減することができる。

「できる,分かる」学習を積み重ねることにより,主体的に学習に取り組もうとする高い意欲を育

むことができると考える。

「マッチング学習」は,対象を注視する力,細部まで見比べる力を付けることをねらいとしてい

る。位置マッチングは,3×3の空間の中で位置関係を認識する力も付けることができる。空間

を認知することを高めることにより,上下・左右等の概念を育むことができると考える。

以上のことから,本題材は「ひらがな全ての字のマッチング,4×4の位置マッチングができ

る。」,「10 字程度のひらがなの拾い読みができる。」の2点を目標とする題材としてふさわしいと

考える。

○ 指導観

指導に当たって本題材の目標を達成するためには,児童実態と特性を踏まえた留意点とし

て次のようなことが考えられる。

・長時間座位姿勢をとると疲労度が高まる。その結果,集中して学習を継続することが難しくな

るため,活動の合間に休息をとらせる。

・必要のない視覚や聴覚情報が入ってくると意識が逸れやすい。その結果,学習時間が確保

しにくくなるため,カーテンをする,周りの教室から聴覚刺激が入らないようにする等して,環境

を整える。

本時の学習活動は,全体を通じてA児の意欲が重要となるため,活動中は児童の表情に注

意し,指示と言葉掛けの調節を行う。さらに,それを踏まえて,それぞれの指導の場面では,次

のように留意し,指導していきたい。

「2 目標を知ろう」では,児童にイラストと文字を同時に提示して,授業の流れと目標を知る

活動を通して,児童に学ぶ準備をさせる。また,必要に応じて具体物を提示し,学習内容がわ

かるようにする。

「3 ひらがなカルタ」では,20 枚同時に提示し,指導者が読み札を読み,提示している中か

ら正しい札を選択する活動である。音韻と字形が一致している札は,一音のみ読む。しかし,音

韻と字形が一致していない文字もあるため,まずはイラストと音韻,ひらがなの字形の対応関係

を意識させることを目指し,音を聞いて記憶し,提示されている札を見比べて選択させていく。

間違えた札については,札を注視させ,声に出して読字し,復唱を促す。指導者と競わせる活

動も児童の意欲向上に効果的であるため,児童の札を取る様子を見て,指導者も札を取る。

札に記載されているイラストのサイズが違うものを用意し,児童の正答率に合わせて,徐々にイ

ラストを小さくし,字に注目するように促す。また,取り札にない札を読み揺さぶりをかけることに

よって,確実な定着を図る。

図2 文字カルタ 図3 3×3の位置マッチング 図4 文字マッチング

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46

「休息」では,姿勢変換をすることで心身ともに気持ちを切り替えて,次の活動に取組めるよ

うに促していく。

「4 マッチング学習」では,位置マッチング,ひらがなマッチングの2種類の活動の順番を決

めさせる活動を行い,学習に主体的に取組む準備をさせてからそれぞれの活動を開始する。

位置マッチングでは,まずは3×3の位置が明確に分かるように土台を9分割にし,一つ一つの

位置を明確にする。また,提示する積み木の数を3個程度,色の数を2色から始め,児童の正

答率の状況を確認し,難易度を調整していく。必要であれば,同じ課題を数回繰り返し行う。

ひらがなマッチングでは,最初は形の類似している文字を一緒に提示せず,違いが明確な文

字を一緒に提示する。児童の正答率の状況によって,類似する文字を提示したり,選択肢に

ない文字を提示することで,ひらがなの字形の弁別の確実な定着を図っていく。どちらの活動も

言葉掛けを精選し,児童が思考することのできる時間を十分に確保する。授業後半になると疲

労度が高まり,学習意欲が下がることで,集中力の低下が予想される。児童の意欲を高めるた

めに気持ちを盛り上げるような言葉掛けをしたり,出題数や難易度を変更したり,身体を休ませ

てリフレッシュしたりすることが必要である。

なお,全体の振り返りは本時では取り扱わない。全体の振り返りより,各活動後に振り返りを

した方が効果的なためである。

学習活動全般を通じて,児童に活動の終わりが分かるようにタイムタイマーを使用する。

6 題材の目標

・ひらがな全ての字のマッチング,4×4の位置マッチングができる。

・10 字程度のひらがなの拾い読みができる。

7 指導計画[全 95 時間]

第1次 ひらがなをしろう (10 時間)

第2次 しっかりみよう (25 時間 )

第3次 ひらがなであそぼう (35 時間) 本時 7/35

第4次 えほんをよもう (25 時間)

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8 本時の目標

9 準備物

タブレット端末,手袋,カルタ,位置マッチングセット,ひらがなカード

児童・生徒 実態 目標 手立て

・2×2の位置マッチン

グはできるが,3×3の

マッチングは5割程度

できる。

3×3の簡単な位

置マッチングができ

る。(6割)

土台を9分割にし,位置を把

握しやすくする。

積み木の数を3個程度,色を2

種類から始める。

正答率の状況によって,繰り返

し同じ課題を数回する。

表現・表出

に関する内

ひらがな全ての音とひ

らがなの文字が書い

てある札が6割程度

結びついている。

・ひらがなの字形の弁

別が7割程度できる。

ひらがなの音を聞

いて,正しいひらが

なの文字の書いて

ある札を選択でき

る。(7割)

ひらがなのマッチン

グができる。(8割)

イラストと文字が一緒に書いて

ある札を使用する。

見慣れている文字について

は,ひらがな1字のみで札を読

む。

正答率が高い文字は,イラスト

を小さくしたものを使用する。

探すひらがなカードの注視を

促す。

正答率の状況によって,類似

する文字や選択肢にない文字

を提示する。

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48

10 指導過程

学習活動 指導上の留意点(□課題 ○支援 ☆評価)

1 始めの挨拶 (1分) ○指導者の方に顔が向いていないときは,姿勢を整えるように指

示する。

2 目標を知ろう

(2分)

○学習内容カードへ注視を促しながら説明し,学習内容を提示す

る。必要であれば,具体物を提示する。

3 ひらがなカルタ

(13 分)

ひらがなの音を聞いて,正しいひらがなの札を選択する。

○指導者も札を児童より先に取ったり,言葉掛けをしたりして注意

を持続させる。

○正答率の高い札は,最初の1文字だけ読む,イラストのサイズが

小さい札にする。

○札を確認させるために取り札にない札を読む。

☆ひらがなの音を聞いて,正しいひらがなの札を選択できたか。

休息 (5分)

4 マッチング学習

・位置マッチング

(10 分)

・ひらがなのマッチング

(13 分)

活動の順番を決める。

○活動の順番を決める際にイラスト文字カードで迷うようであれば,

具体物を提示する。

☆活動の順番を決めることができたか。

3×3の位置マッチングをする。

○見本と児童の台を見比べるように,言葉掛け,指さし等で注意を

持続させる。状況に応じて,ヒントを伝える。

○9分割にしている土台で行い,位置を把握しやすいようにする。

○積み木の数を3個程度,色の数を2種類からはじめ,正答率の

状況を見て,徐々に難易度を高くしていく。

○正答率の状況を見て,同じ課題を数回繰り返し行う。

☆3×3の位置マッチングができたか。

ひらがなのマッチングをする。

○注視を促すために探すひらがなカードを動かす。

○初めは違いが明確な文字から同時に提示し,正答率の状況を

見て,類似する文字や取り札にない文字を提示する。

☆ひらがなのマッチングができたか。

5 終わりの挨拶 (1分) ○指導者の方に顔が向いていないときは,姿勢を整えるように指

示する。

11 評価の観点

○ 3×3の簡単な位置マッチングができたか。(6割)

○ ひらがなの音を聞いて,正しいひらがなの札を選択できたか。(7割)

○ ひらがなのマッチングができたか。(8割)

指導の目標

○ 学習内容の分量は適切であったか。

○ 実態に応じた支援は適切であったか。

○ 教材・教具は目標達成に対して効果的であったか。

学習活動は,児

童・生徒主体の

文体にする。

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49

12 年間指導計画

自立活動(個別)では,個々の課題に取り組む活動として,「自分のペースでがんばろう(個

別課題)」の時間を設けている。それぞれの課題については,集中的に取り組むのではなく,年

間を通じてバランスよく授業時数を配分している。

目 標 題 材 名 時間数 時間数

・文字概念を確立する。

ひらがなをしろう 10

95 しっかりみよう 25

ひらがなであそぼう 35

えほんをよもう 25

・大小,多い少ない等の概念を確立する。

・1~3までの数概念を確立する。

くらべよう 20 35

かぞえよう 15

・コミュニケーション力をつける。 しっかりはなそう 14 14

合 計 144 144

13 教室内配置図

出入口

児童A 指導者 カーテン

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50

別紙1 児童(生徒)の実態の参考資料(新認知チェックリスト奈良養護版) 7月

細部視知覚 Ⅵ水準 H27.11 H28.7

細視Ⅵ-1 5種大小はめ板を順番に系列弁別する △ ○

細視Ⅵ-2 複雑な図から地を弁別できる ○ ○

細視Ⅵ-3 長方形2×3種の絵カードの構成ができる △ ○

細視Ⅵ-4 2×3種の位置の把握ができる × △

細視Ⅵ-5 異なる3種の積み木を見本通りに積む(重ね合わせはしな

い) ? △

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51

「3 ひらがなカルタ」の評価シート

う お か け こ し そ て と な へ ふ ほ ま み め も ゆ ろ わ

大 小 大 小 無 大 小 大 大 無 無 小 小 無 無 大 無 無 大 無

×

大:イラスト(1×1) 小:イラスト(0.5×0.5) 無:イラストなし

「4 3×3の位置マッチング」評価シート

課題1 課題2

課題3 課題4

:赤 :黄

「4 ひらがなマッチング」の評価シート

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

×

評価

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52

別紙2児童の実態の参考資料(学習到達度チェックリスト)7月の結果

項目 聞くこと 話すこと 読むこと 書くこと 数と計算 量と測

定 図形

スコア 48 36 48 36 24 24 36

12

24

36

48

60

聞くこと話すこと読むこと書くこと数と計算量と測定 図形

スコア(月齢)

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53

自立活動(かんかく・コミュニケーション)学習指導案

指導者 ○○ ○○(T1)

○○ ○○(T2)

○○ ○○(T3)

1 日時・場所 平成 28 年○月○日(○)3校時 (11:10~11:55)

小学部○年○組教室

2 授業形態 決定学級

3 学部・学年 小学部 第○学年○組(Ⅲ類型)

4 題材名 音を鳴らそう

5 題材設定の理由

○児童観

本学級は,肢体不自由と知的障害を合わせ有する重複障害学級であり,女児3名が

在籍している。

A児は,脳性麻痺による体幹機能障害がある。身体の動きに関しては,筋緊張が強

く,全身に力が入ることが多いため,指導者が後ろから支えてのあぐら座位等で緊張

を緩めながら様々な活動を行っている。音楽を聴くことが好きで,聞き覚えのある曲

が流れると,笑顔を見せることが多い。触れ合い遊びでは,くすぐられることを期待

して待つ様子が見られるようになってきたが,繰り返しの活動によって見通しをもた

せることが必要である。楽器遊びでは,提示された楽器に自分から手を伸ばし触れる

ことができるが,楽器を握ることや一人で繰り返し鳴らすことには課題がある。感覚

遊びでは,落ち着いていろいろな刺激を受け止めることができるようになってきたが,

様々な感覚を活用する経験は不足している。コミュニケーションに関する実態として

は,好きな活動の後「もう1回する?」という言葉掛けに対して発声やハイタッチ等

で応える様子が見られるようになってきたが,時間を要することが多い。

B児は,脳性麻痺による体幹機能障害がある。身体の動きに関しては,指導者の少

しの支えであぐら座位を取ったり,自分で寝返りをして姿勢変換をしたりすることが

できる。音楽を聴くことや楽器を鳴らすことが好きで,指導者が歌を歌うと一緒に声

を出そうとすることがある。触れ合い遊びでは,くすぐられた後にもっとしてほしそ

うな表情をして声を出すことがあるが,くすぐられる前の期待反応はあまり見られな

い。そのため,くすぐり遊びが始まることを想起させる工夫が必要である。楽器遊び

では,マラカスや鈴等の楽器を片手で握り,振って音を鳴らすことができるが,振る

以外の動きで楽器を鳴らした経験は少ない。感覚遊びでは,いろいろな物に触る活動

を通して,注意は長く続かないが,対象物を注視しながら触ることができつつある。

コミュニケーションに関する実態としては,好きな遊びをする際,興味のある道具や

玩具を見ると,笑顔を見せたり声を出したりして期待を表すことがあるが,確実では

なかったり,場面が限定的であったりすることが多い。

C児は,疾病による体幹機能障害がある。身体の動きに関しては,低緊張があり体

幹を支えることや自力での座位保持が難しく,身体が前に倒れることが多い。音楽を

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54

聴くことが好きで,曲が流れると表情が緩んだり,喜んで笑ったりする様子がみられ

る。触れ合い遊びでは,指導者とのやりとりを重ねる経験を通して,くすぐられるこ

とを喜び,笑顔を見せることが増えてきた。楽器遊びでは,提示された楽器を見て手

を伸ばし,鈴やマラカスを握ることができるが,振ると鳴る楽器以外は使った経験は

ほとんど無い。感覚遊びでは,トランポリンやピーナッツボール等の揺れの刺激が好

きで,快反応の表出があるが,視覚や触覚を活用した遊びの経験は不足している。コ

ミュニケーションに関する実態としては,指導者からの働きかけに対し,喜んで笑顔

を表出することが多いが,好きな遊びを再度行おうとした際の期待反応の表出はあま

り見られない。

それぞれの詳しい実態は,コミュニケーションに関するプロフィール表に示す。

○題材観

本題材は,特別支援学校学習指導要領の自立活動の内容「人間関係の形成」の(1)

他者とのかかわりの基礎に関すること,「コミュニケーション」の(1)コミュニケー

ションの基礎的能力に関すること,「環境の把握」の(1)保有する感覚の活用に関す

ることを踏まえて設定したものである。本題材は,児童の興味関心の深い音楽を通し

て,①触れ合い遊び②楽器遊び③感覚遊びの3つの内容で構成する。

触れ合い(くすぐり)遊びは,歌に合わせて,指導者の指で手のひらや腕,お腹等

に触れられ,歌の終わりにくすぐられる内容となっている。歌の繰り返しが多いため,

見通しがもちやすく,児童の表出が促されると考える。また,指導者の声色や表情,

指の動き,歌のテンポ等の変化を肌で感じることができるため,くすぐられるまでの

期待や,くすぐられる楽しさ,くすぐられた後の満足感や,もっとして欲しいという

要求等の様々な表出が期待できる。

楽器遊びは,複数の楽器の音を聴くことで,音の違いに気付いたり,好きな音や楽

器を見つけたりすることを通して,児童の表出を促すことが期待できる。また,自分

で楽器を操作することで音が鳴ることを理解すると,もっと鳴らそうとする児童の主

体性が高まると考える。

感覚遊びでは,色鮮やかな蝶々に見立てたビニールを,横になった児童に近付けた

り,児童から遠ざけたりしながら揺らし,風船を降らせる活動を行う。児童が色鮮や

かな蝶々や,揺れるビニールに気付いたり,降ってくる風船に触れたりすることで,

視覚や触覚等の様々な感覚を活用することができると考える。

○指導観

指導に当たっては次のことに留意して,授業を進めていきたい。

自立活動の内容から

「人間関係の形成」について,触れ合い遊びでは,児童の好むくすぐり遊びを繰り

返し行ったり,向かい合って行ったりすることで,指導者を意識できるようにしたい。

特定の指導者が傍にいる安心できる状況の中で,他の指導者からも働きかけることで,

複数の指導者との関わりを促していきたい。

「環境の把握」について,色のはっきりとした絵本や教材を使用することで,児童

が対象物に気付いたり,注目したりすることができるようにしたい。児童は,教材の

形や色を視覚で,硬さやなめらかさを触覚で,指導者の言葉掛けを聴覚で感じる等,

様々な感覚を関連させながら動作を行っているため,児童の保有する感覚で受け止め

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55

やすいよう,刺激や情報の与え方に配慮したい。

本校研究テーマ「児童生徒のコミュニケーション能力を育てる授業作りをめざして」

の観点から

授業構成は題材を通して①触れ合い遊び②楽器遊び③感覚遊びの流れで統一し,児

童が見通しをもつことで,指導者からの働きかけを受け止めることができるようにし

たい。働きかけを行った後は言葉掛けや児童に触れる等は行わず,児童の反応を待ち,

児童の表出を促したい。また,言葉掛けや間の取り方を工夫し,興味関心をもたせた

り,期待させたりするような関わり方によって,児童の表出する力を高めたい。

6年目研修研究テーマ「児童生徒の主体的な学びを促すための授業作り」の観点から

本学級の児童の「主体的な学びの姿」を,自分から教材等に手を伸ばし活動しよう

とする姿,自分で考え判断して行う姿と捉える。今までの学習を通して,繰り返しの

活動により,提示された楽器に自分から手を伸ばそうとしたり,楽器を握り何度も鳴

らそうとしたりする等,主体的な姿が見られるようになってきた。本授業では,今ま

で使った経験の少ない楽器を扱うことで,児童が自分から音を鳴らそうと繰り返し試

したり,指導者と一緒に音を鳴らしたりする活動を通して,音の鳴らし方を考え,判

断し,行おうする主体的な学びに繋げていきたい。

6 題材の目標

・身近な指導者や友達と一緒に,同じ場所で遊んだり活動したりすることを経験し,人とのか

かわりの基礎を培う。

・いろいろな活動を通して,表情,視線,声,しぐさ,動き等を引き出し,表出を促すことで,コ

ミュニケーションに必要な基礎的な力を培う。

7 指導計画[全 43 時間]

第1次 音に慣れよう 16 時間

第2次 音を鳴らそう 17 時間 (本時 13 / 17 )

第3次 音で遊ぼう 10 時間

8 本時の目標

○全体の目標

・指導者とのやりとりの中で,表情や発声で期待や要求を表出することができる。

・自分から楽器に手を伸ばしたり,音を鳴らしたりすることができる。

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○個々の目標

9 準備物

CD,カセットデッキ,歌詞カード,大型絵本「はらぺこあおむし」,あおむしの人形,指導者の手

に着けるあおむし,ツリーチャイム,トライアングル,タブレット型端末,蝶々(ビニール),風船

10 指導過程 (別紙1)

11 評価の観点

・本時の目標を達成することができたか。

・児童の表出・表現する力を促すための手立ては適切であったか。

・児童の主体的な学びを促すための手立ては適切であったか。

12 年間指導計画(別紙2)

児童名 実態 目標 手立て

楽器を一人で握ることは難しいが,提示された楽器 に 自 分 か ら 手 を 伸 ばし,触れることができる。

タブレット型端末の楽器の画面に触れると音が鳴ることに気付き,繰り返し触れて音を鳴らすことができる。

児童の目線に配慮し,タブレット型端末を提示する。児童の動きが見られない場合は,音を鳴らして気付かせたり,手を添えて一緒に鳴らしたりする。

表現・表出に

関する内容

好きな遊びの後,「もう1回する?」という言葉掛けに発声やタッチで答えることがある。

くすぐり遊びの後「もう1回する?」という言葉掛けに対して,表情や声で期待を表すことができる。(要Ⅲ‐20)

くすぐり遊びの後,落ち着いたのを確認し,「もう1回する?」と言葉掛けをして児童の反応を待つ。

片手で楽器を握り,振って音を鳴らすことができる。

ばちを握ったまま,自分で手を動かしてトライアングルの音を鳴らすことができる。

ばちを握るように促し,児童の手の動かしやすい場所に楽器を提示する。鳴らし方が分からない場合は,手本を示したり,一緒に鳴らしたりする。

表現・表出に

関する内容

ピーナッツボールや毛布ブランコで遊ぶ際,興味のある道具を見ると,声を出したり笑顔を見せたりして期待を表すことがある。

くすぐり遊びをする際,指導者や指導者の手(あおむし)を見て声や笑顔で期待を表すことができる。(要Ⅲ‐23)

指導者の手に着けるあおむしは,色のはっきりしたものにし,児童の目の前で提示する。児童があおむしに注意を向けてから,くすぐり遊びを行うことを伝え,期待の表出を促す。

提示されたものを見て手を伸ばし,鈴やマラカスを握ることができる。

楽器に自分から手を伸ばし,触れたり,手を動かしたりして音を鳴らすことができる。

児童が手を伸ばしやすい位置に楽器を提示し,自分から触れようとするのを待つ。時間がかかる場合は楽器の音を聴かせたり,手を添えて一緒に鳴らしたりする。

表現・表出に

関する内容

ピーナッツボールやくすぐり遊び等では,指導者の働きかけに対し,喜んで笑顔を表出する。

くすぐり遊びの直後に,再度行おうとする際,表情で期待を表すことができる。

(要Ⅲ‐19)

くすぐり遊びを繰り返し行い,児童が発声や笑顔等の快反応を表出することができるようにする。1回目が終わった後に,少し間を開け,期待の表出を待つ。

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57

13 教室内配置図

① 活動1,2,3,5,6 ②活動4

〔A〕

月齢

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

Ⅰ 快不快の分化 人の働きかけによ

る快反応 外界への気付き (聴覚 )

外界 への気付 き(皮 膚 感

覚・味覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

光への反応

色への反応

2

反 応 表 出 の芽

生え

大人への注意

人への注意

声への好反応

音への注意

音の変化への気付き

外 界 への興 味 (触 覚 ・味

覚・嗅覚等) 探索 (触覚 )

注視

追視

4

期待反応

やりとりの予測

応 答 性 の あ る

行動

要求の芽生え

人への愛着

やりとりの芽生え

大人への積極性

声の変化への気付き

音の方向性への気付き

音への興味

特定フレーズへの気付き・意味付

物の単純な操作

因果関係の理解の芽生え

探索(視覚)

リーチング

目と手の協応の芽生え

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的

行動

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大 人 の注 意 を

引く

要 求 手 段 の多

様化

指さし要求

やりとりの拡大

共感性の芽生え 名詞等の理解 発語の芽生え

空 間 認 知 の芽

生え

始点と終点の理

手指の活用

保存の概念

比較の概念

模倣

生活場面等の

理解

○コミュニケーションに関するプロフィール表

C

T1

T2 T3

B

A

入口

C

T1

T2 T3

B

A

入口

~ ~

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58

〔B〕

〔C〕

月齢

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

Ⅰ 快不快の分化 人の働きかけによ

る快反応 外界への気付き (聴覚 )

外界 への気付 き(皮 膚 感

覚・味覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

光への反応

色への反応

2

反 応 表 出 の芽

生え

大人への注意

人への注意

声への好反応

音への注意

音の変化への気付き

外 界 への興 味 (触 覚 ・味

覚・嗅覚等) 探索 (触覚 )

注視

追視

4

期待反応

やりとりの予測

応 答 性 の あ る

行動

要求の芽生え

人への愛着

やりとりの芽生え

大人への積極性

声の変化への気付き

音の方向性への気付き

音への興味

特定フレーズへの気付き・意味付

物の単純な操作

因果関係の理解の芽生え

探索(視覚)

リーチング

目と手の協応の芽生え

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的

行動

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大 人 の注 意 を

引く

要 求 手 段 の多

様化

指さし要求

やりとりの拡大

共感性の芽生え 名詞等の理解 発語の芽生え

空 間 認 知 の芽

生え

始点と終点の理

手指の活用

保存の概念

比較の概念

模倣

生活場面等の

理解

階 コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

Ⅰ 快不快の分化 人の働きかけによ

る快反応 外界への気付き (聴覚 )

外界 への気付 き(皮 膚 感

覚・味覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

光への反応

色への反応

2

反 応 表 出 の芽

生え

大人への注意

人への注意

声への好反応

音への注意

音の変化への気付き

外 界 への興 味 (触 覚 ・味

覚・嗅覚等) 探索 (触覚 )

注視

追視

4

期待反応

やりとりの予測

応 答 性 の あ る

行動

要求の芽生え

人への愛着

やりとりの芽生え

大人への積極性

声の変化への気付き

音の方向性への気付き

音への興味

特定フレーズへの気付き・意味付

物の単純な操作

因果関係の理解の芽生え

探索(視覚)

リーチング

目と手の協応の芽生え

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的

行動

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大 人 の注 意 を

引く

要 求 手 段 の多

様化

指さし要求

やりとりの拡大

共感性の芽生え 名詞等の理解 発語の芽生え

空 間 認 知 の芽

生え

始点と終点の理

手指の活用

保存の概念

比較の概念

模倣

生活場面等の

理解

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59

10 指導過程 

学習活動指導上の留意点(□課題 ○支援・配慮 ☆評価基準)

A T3 B T1 C T2 全体

(別紙1)

1.始まりの挨拶をする。       (5分)

○身体の緊張を緩めながら,座位を取らせ,学習の始まりを意識させる。

○クッションチェアに座らせ,姿勢を整えることで,学習の始まりを意識させる。

○後ろから支え,あぐら座位を取らせることで,学習の始まりを意識させる。

○姿勢を整え,注意が向いたことを確かめてから挨拶をする。○「てとてとてと」を歌い,学習の始まりを意識させる。また,児童同士で手を合わせ,友達を意識させる。

2.触れ合い遊び(くすぐり遊び)をする。       (20分)

①大型絵本「はらぺこあおむし」を見る。

②くすぐり遊びを2回行う。 ○くすぐり遊びの後,落ち着いたのを確認し「もう1回する?」と言葉掛けをして,児童の反応を待つ。

☆くすぐり遊びの後「もう一回する?」という言葉掛けに対して,声を出したり,手を挙げたりして期待を表すことができたか。

○指導者の手に着けるあおむしは,色のはっきりしたものにし,児童の目の前で提示することで,注目しやすくする。児童があおむしに注意を向けてから,くすぐり遊びを行うことを伝え,期待の表出を促す。

☆くすぐり遊びをする際,指導者やあおむし(指導者の手)を見て,声を出したり,笑顔を見せたりして期待を表すことができたか。

○くすぐり遊びを繰り返し行い,児童が発声や笑顔等の快反応を表出することができるようにする。1回目が終わった後に,少し間を開け,期待の表出を待つ。

☆くすぐり遊びの直後に,再度行おうとする際,表情が緩んだり,笑顔を見せたりして期待を表すことができたか。

○お話CDに合わせてページをめくったり指差しをしたりすることで,注意を促す。○絵本を見終わった後,あおむしの人形を登場させることで,興味関心を引き出す。○くすぐり遊びをする際は,児童の楽な姿勢を取らせ,向い合って行うことで指導者を意識させる。○指導者の手にあおむしを着けて児童の身体に触れたり,声色や表情,指の動き,歌のテンポ等を変化させたりすることで,児童の表出を促す。○1回目が終わった後は,「もう1回する?」と児童に尋ね,反応を待つ。○2回目は,指導者が変わってくすぐり遊びを行うことで,関わりを広げる。

3.楽器遊びをする。       (10分)

①楽器の音を聴く。

②楽器の音を鳴らす。

③曲に合わせて鳴らす。○児童の目線に配慮し,タブレット型端末を提示する。児童の動きが見られない場合は,音を鳴らして気付かせたり,手を添えて一緒に鳴らしたりする。

☆タブレット型端末の画面に触れると音が鳴ることに気付き,繰り返し触れて音を鳴らすことができたか。

○ばちを握るように促し,児童の手の動かしやすい場所に楽器を提示する。鳴らし方が分からない場合は,手本を示したり,一緒に鳴らしたりする。

☆ばちを握ったまま,自分で手を動かしてトライアングルの音を鳴らすことができたか。

○児童が手を伸ばしやすい位置に楽器を提示し,自分から触れようとするのを待つ。時間がかかる場合は楽器の音を聴かせたり,手を添えて一緒に鳴らしたりする。

☆楽器に自分から手を伸ばし,触れたり,手を動かしたりして音を鳴らすことができたか。

○児童の注意を向けてから楽器を順に鳴らし,音が鳴ったことや,音の違いに気付かせる。○楽器を鳴らす時には,児童から楽器が見えないようにし,楽器を鳴らすことを楽しみにできるようにする。○楽器を児童に提示する際は,児童の目線や手を伸ばしやすい位置等に気を付ける。○児童が楽器に触ったり,鳴らしたりするのを待ち,一人で鳴らすことが難しい場合は指導者と一緒に鳴らす。

4.感覚遊びをする。       (5分)

①横になり,ビニールの揺れを感じる。

②降ってくる風船やカラーボールに触れる。

○緊張が強い場合は,身体をさすったり,傍で言葉掛けをしたりする。蝶々や風船に注意を向け,児童の上から降らせる。

☆力を抜いた状態でビニールの揺れに気付いて表情を変え,蝶々や風船に自分から触れることができたか。

○蝶々や風船は鮮やかなものを扱い,児童の注目を促す。注目するのが難しい場合は,言葉掛けをしたり,一緒に触ったりする。

☆蝶々や,降ってくる風船に注目し,追視したり,笑顔をみせたりしながら触れることができたか。

○揺れの速さを一定にして,児童が揺れに気付き,ビニールに触れようとすることができるようにする。

☆ビニールの揺れに気付き,自分から手を伸ばして笑顔で触れることができたか。

○色鮮やかな蝶々に見立てたビニールを児童に近付けたり,児童から遠ざけたりすることで,揺れに気付かせる。○風船を降らせ,児童が自分から触れたり,感触を楽しんだりできるようにする。

5.終わりの挨拶をする。       (5分)

○身体の緊張を緩めながら,座位を取らせ,学習の終わりを意識させる。

○クッションチェアに座らせ,姿勢を整えることで,学習の終わりを意識させる。

○後ろから支え,あぐら座位を取らせることで,学習の終わりを意識させる。

○具体物を提示しながら,児童の具体的な様子を伝え,振り返る。○姿勢を整え,注意が向いたことを確かめてから挨拶をする。

くすぐり遊びの後「もう一回す

る?」という言葉掛けに対して,

表情や声で期待を表す。

くすぐり遊びをする際,指導者

やあおむし(指導者の手)を見

て,声や笑顔で期待を表す。

くすぐり遊びの直後に,再度行

おうとする際,表情で期待を表

す。

タブレット型端末の楽器の画

面に触れると音が鳴ることに

気付き,繰り返し触れて音を鳴

らす。

ばちを握ったまま,自分で手を

動かしてトライアングルの音を

鳴らす。

楽器に自分から手を伸ばし,

触れたり,手を動かしたりして

音を鳴らす。

身体の力を抜いた状態でビ

ニールの揺れに気付いて表情

を変え,蝶々や風船に自分か

ら触れる。

蝶々や,降ってくる風船に注目

し,追視したり,笑顔を見せた

りしながら触れる。

ビニールの揺れに気付き,自

分から手を伸ばして笑顔で触

れる。

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60

自立活動(かんかく・コミュニケーション) 学習指導案

指導者 ○○ ○○(T1)

○○ ○○(T2)

1 日時・場所 平成 28 年○月○日(○) 3校時 11:10~11:55

小学部○年○組教室

2 授業形態 決定学級

3 学部・学年 小学部 第○学年○組(Ⅲ類型)(男子1名,女子1名)

4 題材名 毛糸であそぼう

5 題材設定の理由

○ 児童観

本学級には,男子1名(A),女子1名(B)の計2名の児童が在籍している。

A 児は,ダウン症,知的障害を主な障害としている。移動については,片手支援で平地だけ

でなく坂道や階段の上り下りをすることができる。3m程度であればハイガードで自力歩行するこ

とが可能である。水筒のふたを開けて注ぎ口のボタンを押し,片方の手でコップを,もう片方の

手で水筒を持ってこぼさないように注ぐことができる等,日常生活動作において一部支援が必

要であるが,困難は少ない。これまで日常生活動作を支援されていた経験から,困っても困っ

た状態のまま,指導者の助けを待つことが多い。

見る力については,3年生1学期より指導者と交互に1つの活動をする学習や,まねっこ遊び

をする学習の積み重ねにより,指導者の身体の動きを真似ることが増えてきた。これまでの学習

により,6つの中から提示された果物の具体物と同じ物を選択したり,色や形が全く異なる2つ

の具体物を見本と同じ位置に配置したりすることができる。体育館や自立活動室,プレイルー

ム等の写真カードから行きたい場所を選択し,教員の導きなしにその場所へ行くことができる。

聞く力については,「お茶」や「靴」等,毎日繰り返し使用する物と名称は結びついているように

思われるが,理解語句は少ない。慣れた場面において1つの指示は実行できるが,指示が2つ

あると,2つ目の指示を実行することが難しい。話す力については,「おはよう」や「いただきま

す」等の言葉を指導者の言葉掛けを聞いて,似たような音節で発声することができる。指さし要

求ができるが,特定の物を指ささず,曖昧に指さしをして何かを得ようとすることが多い。本校ア

セスメントチェックリスト ver.3.0 では,要求表出Ⅶ段階の要求の明確化,言語理解Ⅵ段階の二

語文の理解が課題となる。新認知チェックリスト奈良養護版では,第Ⅱ層Ⅴ水準対応知覚水

準が課題となる。

B 児は,急性脳症の後遺症による体幹機能障害,および視覚障害を主な障害とし,併せて

聴覚障害を有している。日常生活動作は全般的に支援が必要である。身体の状態について

は,全般的に強い緊張を有し,様々な刺激を要因として姿勢反射を起こしやすい。身体各部も

固く関節可動域の制限があるため,自発的に身体を動かすことは難しい。姿勢については,座

位保持機能付きの車椅子による座位姿勢や,床上での仰臥位,側臥位や伏臥位,ニーリング

アクションを用いた膝立ち等をとることが可能である。

感覚認知は,聴覚,前庭覚優位の状態にある。視覚は,接近性瞬目や追視は見られず,視

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61

覚情報を外部の手掛かりとして活用することは難しいと思われる。聴覚は,検査で 70db(会話

聞き取り可能)程度との評価があり,場の状況に応じて補聴器の装着をしている。周波数の高

い音には不快を示すが,耳元での人の声や太鼓の音には目を大きく開き,傾聴する様子を見

せ,口角を上げて笑顔を表出することがある。その一方で発声はほとんど見られず,声掛けや

関わりに対しての応答の手段が十分とはいえない。触覚刺激に対しては過敏さがあり,特に手

の平や顔に触れられることを嫌がる。抱きかかえられることや,揺れ,決まった活動の繰り返しを

好み,口元をゆるめることが多い。本校アセスメントチェックリスト ver.3.0 では,要求表出のⅡ段

階である反応表出の芽生え,聴覚・言語のⅡ段階である音の変化への気付き,触覚等のⅡ段

階である外界への興味が課題となる。

○ 題材観

自立活動(かんかく・コミュニケーション)では,年間を通じて“かんかくあそび”の単元が設定さ

れており,年間の目標は次の通りである。

児童の2学期の個別の指導計画に記されている目標の内,自立活動(かんかく・コミュニケー

ション)に関連した目標と,将来つけて欲しい力は次の通りである。

自立活動(かんかく・コミュニケーション)では,これまで「こいのぼり」や「たなばた」,「秋の果

物」等の題材を設定し,A児は,「環境の把握(5)認知や行動の手掛かりとなる概念の形成に

関すること」と「コミュニケーション(2)言語の受容と表出に関すること」に,B児は,「環境の把握

(1)保有する感覚の活用に関すること」と「コミュニケーション(1)コミュニケーションの基礎的能

力に関すること」に重点を置いて学習を重ねてきた。

それぞれの題材において,A児には,「環境の把握(5)認知や行動の手掛かりとなる概念の

形成に関すること」に関連して,具体物や色の弁別,位置マッチングを設定した。「コミュニケー

ション(2)言語の受容と表出に関すること」に関連しては,具体物や写真カードを用いて同じ物

の選択をする活動,写真カードを用いたやりとりを行う活動を設定した。位置マッチングを通し

ては,見比べる力をつけることをねらう。同じ物の選択を通しては,「同じ」の概念形成と見比べ

る力,具体物と写真カードを結び付ける力,言葉の理解をねらう。これらの活動は,児童の将

来つけて欲しい力として掲げている2点双方につながるものであると考える。

児童 個別の指導計画による目標 将来つけて欲しい力

・見本を見て,同じ位置に物を収めたり,カ ードを貼ったりすることができる。 (環境の把握)

・自分で行きたい場所を選択し,伝えること ができる。

(環境の把握,コミュニケーション)

・身振りや写真を用いて他者と正しくコミュニケーションをとる力 ・自立歩行で行きたい場所まで目的を持って安全に移動する力

・感触の違いに気付いて,表情や筋緊張で表す。(環境の把握) ・音や揺れ等による繰り返しの働き掛けを受けて,笑顔を表す。 (コミュニケーション)

・主体的に周囲と関わる力 ・興味・関心と遊びの拡大

○感覚・受容・表出・人間関係・感覚認知・コミュニケーションに関すること

・視覚,聴覚,触覚,嗅覚,味覚などいろいろな感覚器官を活用させ,感覚を育てる。

・心地よい経験をすることで情緒の安定を図り,快の表出を促す。

・いろいろな活動を通して,表情,視線,声,しぐさ,動きなどをひき出し,表出を促すことで,コ

ミュニケーションに必要な基礎的な力を培う。

・身近な教師や友だちと一緒に同じ場所で遊んだり活動したりすることを経験させ,人とのかか

わりの基礎を培う。

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62

B児においては,「環境の把握(1)保有する感覚の活用に関すること」に関連して,異なる感

触の物に交互に触らせる活動と様々な音を聞く活動を設定した。この活動を通して,外界に注

意を向ける力を育むことをねらう。「コミュニケーション(1)コミュニケーションの基礎的能力に関

すること」に関連しては,聴覚刺激による決まった活動を繰り返す場面と,決まった声掛けの後

揺さぶる場面を設定した。この活動を通して,聴覚での注意の持続と快経験の蓄積,期待反

応の形成をねらう。これらの活動は,児童の将来つけて欲しい力である,主体的に周囲と関わ

る力,興味・関心と遊びの拡大につながるものであると考える。

本題材では,毛糸を主な教材として設定した。毛糸は A 児にとって興味関心が高い活動で

あるため,活動の中で写真カードを用いたやりとりを設定することで,写真カードを使用した要

求を行う場面の拡大がねらえる。また,色の弁別能力を育むこともねらえる。題材全体を通して,

1時間ごとに学習の成果をツリーに飾ることで,活動に目的をもたせたい。B児にとっては,毛糸

玉の中に手を入れることで,包まれるような感触を味わえ,手で物に触れることへの快経験を積

むことがねらえる。毛糸を切り刻んだ中に手を入れることで,毛糸玉の中に手を入れたときとは

異なる手触りを味わうこともできる。

本時では,A 児は写真カードを用いて,B 児が使う毛糸が入った箱の選択をさせる。B 児に

箱を届けること,その結果として自分の活動に必要な物が入った箱を受け取ることで,写真カ

ードを用いた2つの指示の理解を促すこと,自己有用感や達成感を高めることをねらう。毛糸を

用いた活動内容としては,紐通しや紐の巻つけをさせる。それぞれの活動で色の弁別能力を

育むことをねらう。これらの活動前に,自発的な要求を引き出したい。B 児においては触覚刺激

に対する注意の持続をねらい,毛糸のほかにどんぐりを用いる。明らかに異なる素材である毛

糸とどんぐりを交互に触れさせることで手触りの違いを感じさせ,触覚への注意の持続をねらう。

聴覚刺激に対する注意の持続,期待反応の形成をねらっては,どんぐりと指導者の声を用いる。

聞き慣れた指導者の声とは異質などんぐりの転がる音を交互に聞かせることを通して,快の表

出を促す。快の表出が安定した後にどんぐりを別の音に変えて同じ働き掛けをし,どんぐりの音

が変わったことに気付かせたい。

○ 指導観

指導に当たっては,次のようなことに留意する。

「2 手遊び歌」では,A児においては,指導者と正対し,指導者の動きに注意を向け,模倣

を促す。B児においては,安楽な状態になる抱きかかえ姿勢をとり,曲に合わせて身体の各部

位を圧迫しながら触れていく。授業の始めに手遊び歌を設定することで,A児には指導者の動

きを見て真似るという意識付けを行う。B児には,安楽な姿勢で声掛けをしながら身体に触れる

ことで,少しずつ触覚過敏をやわらげ,次の活動につなげていく。

「3 毛糸遊び」では,児童の実態が異なるため,個別に取り組む。A児は,まず,B 児と毛糸

が入った箱の2つの写真カードを提示し,B 児が学習に使用する毛糸が入った箱を2色から選

択させ,B 児の元に届けさせる。A 児に渡す箱の中には毛糸以外の教材を入れておき,自発

的な毛糸の要求を引き出す。毛糸を使った活動では,活動内容は数種類用意し,児童の興

味関心に応じて活動時間や活動内容を変更する。同じ色の毛糸通しでは,赤,青,黄の3色

を用いる。活動中,児童が困った様子を見せたときは児童から指導者に要求があるまで待つ。

B児は,「触る活動」では,ニーリングアクションを用いた膝立ちの姿勢をとらせ,上肢の筋緊

張をゆるめさせる。肩から指先まで圧迫しながら触れ,触覚過敏をやわらげていく。児童の表情

や筋緊張から過敏さが軽減したと判断してから,毛糸とどんぐりに手の平全体で交互に触れさ

せる。触っている最中に声掛けは行わず,触ることに注意を向けさせる。「聞く活動」では,側臥

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位をとらせる。プラスティックケースの中を転がるどんぐりの音を聞かせ,注意を引いた後,指導

者の声とどんぐりが転がる音を交互に聞かせる。声掛けは,決まった言葉をできるだけ同じ抑揚,

長さで声掛けを行う。働き掛けによる快の表出が安定した後,どんぐりの音を鈴に変更し,児童

の表情の変化を見取る。繰り返し活動をしばらく繰り返しても表情の変化が少ない場合は,前

庭覚刺激による繰り返しの活動を行ったり,指導者を交代したりすることで刺激を変えて行う。

6 題材の目標

・様々な感覚を活用して刺激を受容し,表情や発声,身振り等で表出・表現する。

7 指導計画[全 14 時間]

第1次 毛糸に触れよう (2時間)

第2次 毛糸に触れ,表情や身振りで表そう (12 時間 ) 本時 6 / 12

8 本時の目標

○全体の目標

・様々な感覚を活用して刺激を受容し,表情や発声,身振り等で表出・表現することができる。

○個々の目標

9 準備物

毛糸(赤,青,黄,白,ピンク),箱(赤,青,黄,白),写真カード(箱,児童),どんぐり,アルミト

レイ,プラスチックトレイ,鈴

児童・生徒 実態 目標 手立て

・A 児にとって,箱と B児が一直線上に見えるとき,2つの箱から写真カードと同じ箱を選択して,B 児に渡すことができる。

・台紙と同じ色の紐が何本か通っているものを見て,3色から同じ色の紐を選択することができる。

・A 児にとって,箱を選択した後,振り返らないと B 児が見えない環境で,2つの箱から写真カードと同じ箱を選択して,B 児に渡す。

・台紙に紐が全く通っていない状態で,穴と同じ色の毛糸を 3色 から選 択する。

・箱と B 児の写真カード2枚を提示す

る。

・ A 児にとって,箱を選択した後,振

り返らないと B児が見えない位置に,

2つの箱を置く。

・3色の毛糸を用意する。

・穴の数だけ毛糸を用意する。

表現・表出に

関する内容

・指導者が教材を提示するまで待つ。

・毛糸がないことに気付き,身振りで要求する。

・毛糸以外の教材を提示し,児童か

らの要求を待つ。

・児童からの働き掛けがない場合は,

毛糸を見せたり模倣を促したりする。

B

・触覚過敏があり,手の平で刺激を適切に受容することに困難がある。

・触っている物が変化 した こ とに気 付き,筋緊張や表情で表出する。

(触Ⅱ-11)

・ニーリングアクションを用いた膝立ち

姿勢をとらせる。

・指導者と手の握り合いを行うことで

触覚過敏をやわらげた後,手の平

全体で物に触らせる。

・声掛けを精選し,触ることに注意を

向けさせる。

表現・表出に

関する内容

・繰り返しの活動に笑顔を表出する。

・繰 り返 しの活動が変わったことに気付き,筋緊張や表情で表出する。

(要Ⅲ-16)

・側臥位や座位をとらせる。

・声掛けをするときは児童に触れず,

決まった言葉をできるだけ同じ抑

揚,長さで声掛けする。

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64

10 指導過程

学習活動 指導上の留意点 (□課題 ○支援・配慮 ☆評価基準)

A T2 B T1 全体

1 始まりの挨拶

(1分)

2 手遊び歌

「毛のあそび」(5分)

3 毛糸遊び

(35 分)

4 ふりかえり

(3分)

5 終わりの挨拶

(1分)

・学習姿勢を整えて挨拶する。 ・数字を模倣させる。 ○児童と正対し,ゆっくり動きを見せる。 ・毛糸運びをする。(5分) ○箱と B 児の写真カード2枚 を提示する。 ○A 児にとって,箱を選択した 後,振り返らないと B 児が見え ない位置に,2つの箱を置く。 ☆2つの箱から写真カードと同じ色の箱を選択し,B 児の所へ運ぶことができたか。 ・自分の毛糸をもらう。(3分) ○毛糸以外の教材と,毛糸の 写真カードを提示し,児童か らの要求を待つ。 ○児童からの働き掛けがない場合は,毛糸を見せたり言葉掛けをしたりする。 ☆毛糸がないことに気付き,身振りで要求することができたか。 ・毛糸を使った活動をする。(27 分) ○3色の毛糸を用意する。 ○毛糸通しの他に,ペットボトルの中に毛糸をつめる活動,台紙に巻きつける活動を用意する。 ・活動の成果物を見ながら指導者と一緒に頑張ったことを確認する。 ・挨拶の前に,学習姿勢を整える。

・学習姿勢を整えて挨拶する。 ○抱きかかえ,耳元で歌をうたいながら身体に触れる。 ・どんぐりと毛糸に交互に触れる。(20 分) ○ニーリングアクションを用いた膝立ち姿勢をとらせる。 ○指導者と手の握り合いによって触覚過敏をやわらげた後,手の平全体で物に触らせる。 ○声掛けを精選し,触ることに注意を向けさせる。 ☆触っている物が変化したことに気付き,筋緊張や表情で表出することができたか。 ・「指導者の声とどんぐりの音」と「指導者の声と鈴の音」を交互に聞く。(15 分) ○側臥位をとらせる。 ○決まった言葉をできるだけ同じ抑揚 ,長さで声掛けする。 ○児童に触れず,聞くことに注意を向けさせる。 ○T1の声に対して表情の変化が少ない場合や,働き掛けにすぐに表情の変化が見られた場合は,T2と交替する。 ☆繰り返しの活動が変わったことに気付き,筋緊張や表情で表出する。 ・一番表情がよかった活動を行う。 ・挨拶の前に,学習姿勢を整える。

・お互い向かい合う。 ・児童の様子を見ながら歌の速さを調節する。

・お互いが活 動 に 集中できるよう に , 少 し離 れ た 位置で行う。 ・お互い向かい合う。 ・お互い向かい合う。

学習活動は,児

童・生徒主体の

文体にする。

2つの箱から写真カードと同じ色の箱を選択し,B 児の所へ運ぶ。

繰り返しの活動が変わったことに気付き,筋緊張や表情で表出する。

触っている物が変化したことに気付き,筋緊張や表情で表出する。

毛糸がないことに気付き,身振りで要求する。

台紙に紐が全く通っていない状態で,穴と同じ色の毛糸を3色から選択する。

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65

11 評価の観点

○様々な感覚を活用して刺激を受容し,表情や発声,身振り等で表出・表現すること

ができたか。

個別の目標

A ○2つの箱から写真カードと同じ色の箱を選択し,B 児の所へ運ぶことができたか。

○毛糸がないことに気付き,身振りで要求することができたか。

○台紙に紐が全く通っていない状態で,穴と同じ色の毛糸を3色から選択することがで

きたか。

B ○触っている物が変化したことに気付き,筋緊張や表情で表出することができたか。

○繰り返しの活動が変わったことに気付き,筋緊張や表情で表出することができたか。

指導の目標

○ 学習内容の分量は適切であったか。

○ 実態に応じた支援は適切であったか。

○ 教材・教具は目標達成に対して効果的であったか。

12 年間指導計画

目 標 題 材 名 時間数

・視覚,聴覚,触覚,嗅覚,味覚などいろ

いろな感覚器官を活用させ,感覚を育て

る。

・心地よい経験をすることで情緒の安定を

図り,快の表出を促す。

・いろいろな活動を通して,表情,視線,

声,しぐさ,動きなどをひき出し,表出を促

すことで,コミュニケーションに必要な基礎

的な力を培う。

・身近な教師や友だちと一緒に同じ場所

で遊んだり活動したりすることを経験させ,

人とのかかわりの基礎を培う。

こいのぼり 10

しんぶんしであそぼう 15

たなばた 19

秋のくだもの 31

毛糸であそぼう 14

冬をかんじよう 20

春をかんじよう 10

合 計 119

13 教室内配置図

入口

A B

T2

T1

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66

別紙1

〔A〕

(1)児童の実態の参考資料

本校アセスメントチェックリス

トによるプロフィール表より

(2)新認知チェックリスト奈良養護版より

〔B〕児童の実態の参考資料 本校アセスメントチェックリストによるプロフィール表より

月齢

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 言語理解 言語表出

10 Ⅴ

大人の注意を引く やりとりの拡大

名詞等の理解 発語の芽生え 要求手段の多様化 共感性の芽生え

指さし要求

13 Ⅵ

要求の具体化・明確化 社会性の芽生え 言語指示・二語文の理解 言葉の模倣

言語を伴う要求 共感性の高まり 質問への応答

名詞等の発語 動詞・形容詞等の理解

19

24

自己主張の芽生え 他の子供への興

理解語彙の増加 場面に合う言葉の活用

言語での要求 自己意識の芽生え 言語指示への応答 表出語彙の増加

社会性の高まり カテゴリー概念の芽生え 二語文等の表出

月齢

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

Ⅰ 快不快の分化 人の働きかけによる

快反応 外界への気付き(聴覚)

外界への気付き(皮膚感覚・味

覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

光への反応

色への反応

2

反応表出の芽生

大人への注意

人への注意

声への好反応

音への注意

音の変化への気付き

外界への興味(触覚・味覚・嗅

覚等) 探索(触覚)

注視

追視

4

期待反応

やりとりの予測

応答性のある行

要求の芽生え

人への愛着

やりとりの芽生え

大人への積極性

声の変化への気付き

音の方向性への気付き

音への興味

特定フレーズへの気付き・意味付け

物の単純な操作

因果関係の理解の芽生え

探索(視覚)

リーチング

目と手の協応の芽生え

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的行

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

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67

自立活動(からだ) 学習指導案

指導者 ○○ ○○(T1)

○○ ○○(T2)

1 日時・場所 平成 28 年 ○月 ○日(○) 2 校時 10:10~10:55

小学部○学年○組教室

2 授業形態 決定学級

3 学部・学年 小学部 第○学年○組(Ⅲ類型)

4 題材名 からだをうごかそう

5 題材設定の理由

○ 児童観

本学級は,男子児童2名が在籍する重複学級である。児童A,児童Bともに視覚障害,知

的障害,肢体不自由を併せ有する。

Aの視力は光覚程度で,眼前 10cm 以内の光源に気付くが,注視や追視をする様子は全く

見られない。物が顔に近付いていることに気付くような様子を見せることがあるが,視覚を活用

して物を認識することは困難である。

聴覚については,遠くから聞こえる音や小さな音に気付き,反応が見られる。擬音語等を好

み,「ドン」や「ポン」という声,ベルの音等で笑顔になる。言葉の意味理解は難しいが,「だっこ

するよ」等日常よく使われる言葉は,周囲の状況や直前の活動等の情報を含めて,意味をお

おまかに把握している様子である

触覚については,感触の変化に気付くことができるが,反応に時間がかかることがある。体の

正面の手が届く範囲内であれば,探索してスイッチを押すこともできる。

日常的に座位保持装置付き車いすや,床上での背臥位姿勢で過ごすことが多い。筋緊張

が高く,特に左半身の緊張が高い。左手でスイッチを押すことができるが,指先を使って押すこ

とが多い。また意図的に物を把持することもできない。机からボールを落とす遊びを行っている。

狙って落とすのではなく,偶然落ちることが多い。しかしボールが落ちたら音が鳴るという関係が

分かってきているようで,手もとからボールが離れると音を期待している様子も見られる。

手位の姿勢について,右腕は体をしっかり支えられるが左腕が曲がりやすく体を支えることが

難しい。手位の体勢になり体の動きが止まるまで左腕を支え,動きが止まり支援を止め,同時

に言葉掛けで姿勢保持を促すと,数秒程度姿勢を保持することができる。最長で 5 秒程度の

時間姿勢保持をすることができる。

Bの視力は光覚程度で,眼前 10cm 程度のところにある直径 10cm の蛍光色の円に気付く

様子があるが,注視や追視をする様子は見られない。

聴覚については,「歯磨き」という言葉を聞くと,口を開けたり手を口周辺に動かして歯ブラシ

を持とうとしたりすることが多く,周囲の状況や直前の活動と関係なく特定の単語に一定の反応

を示す。

日常的に座位保持装置付き車いすや床上での背臥位,側臥位,腹臥位姿勢で過ごすこと

が多い。低緊張であり,未定頸であるため,座位をとるには支援が必要である。また座位姿勢

からの頭上げは,肩甲帯を伸展させ,力が入りやすいようにするなどの支援を受けることにより行う

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68

ことができるが,数回程度である。右半身の麻痺が強く,右手を意図的に動かすことは難しい。

左手は軽いものを把持したり腕を伸ばしてスイッチを押したりすることができる。玩具や楽器を鳴

らして遊ぶことが好きであり,左側臥位,腹臥位,背臥位,座位の姿勢をとり,左手を使って遊

ぶ学習活動を行っている。しかし遊んでいる時に対象の玩具や楽器を見失うと,探索をしようと

しなかったり探索してもすぐに諦めたりし,支援者がそれらを元の位置に戻してくれるまで何もし

なかったり自己刺激をしたりするようになる。

発作に関して,覚醒レベルが高い時にはほとんど見られず,覚醒レベルが低い時や睡眠か

ら目覚めた時には発作が引き起こることが多い。特に睡眠から目覚めた時には,発作が連続し

て起こることが多く,最長で 1 時間 30 分間継続することもある。

本校作成のアセスメントチェックリストから,児童の課題を「別紙1 児童(生徒)の実態の参

考資料(本校アセスメントチェックリストによるプロフィール表)」に示す。

○ 題材観

自立活動(からだ)では,主に健康の保持と身体の動き,環境の把握に関することを扱う。本

題材では,「身体の動き(1)姿勢と運動・動作の基本的技能に関すること。」と「環境の把握(1)

保有する感覚の活用に関すること。」を中心に授業を行っていく。

本題材に関連するA,Bの個別の指導計画に記載されている目標は,以下の通りである。

身体の動きに関わる学習では,体操,ストレッチ,様々な姿勢での姿勢保持を行う活動を用

意した。ABの実態が異なるため,様々な姿勢での姿勢保持に対する学習する内容は個々で

異なる。Aは主に手位で姿勢保持,Bは座位の姿勢で頭上げの学習活動を行う。

Aは筋緊張の緩和,手のひらの意識,姿勢の発達を目標とし,体操,ストレッチ,手位の姿

勢保持の活動を行う。A は筋緊張が高いため,体操やストレッチは筋緊張を和らげ,姿勢保持

の活動に繋げることがねらいである。手位の姿勢に関して,現在 A は手のひらに意識が低く,

指先のほうに意識が強く,スイッチを押す操作も主に指先で行っている。手位の姿勢の保持を

することにより,手のひらに意識が高まり,スイッチ等の操作性の向上に繋げることがねらいであ

る。また姿勢の発達としては,将来的に手を使った状態で座位を保持することができるようにな

ることや円背や体の拘縮予防をねらいとしている。

Bは QOL の向上を目標とし,体操,ストレッチ,座位の姿勢での頭上げの活動を行う。体操

やストレッチは筋緊張を高めるねらいがある。また頭上げの活動は,異常な姿勢反射を抑制し,

適切な姿勢反応を促すことができ,上肢の操作性の向上や側彎等の変形を予防,適切な呼

吸状態の維持など,QOL の向上に繋がることが期待できる。

環境の把握に関わる学習についても,AB の実態にあった題材を用いた課題別活動を用意

した。

A は身体の動き(操作性)を意識しつつ,空間認知や因果関係の理解を促すことを目標とし

て,机から音の出るおもちゃを落として音を鳴らす活動を行う。音に対しては,種類にもよるが A

身体の動き 環境の把握

A 支援によって手位をとり,5秒程度保持する

ことができる。

机から物を落とす,ピアノなどの楽器で音を

鳴らす等の遊びと操作と結果の関係を理解

して行うことができる。

B 座位の姿勢で頭上げを 10 回行うことができ

る。

玩具や楽器を探り,それを見付けて遊んだり

音を鳴らしたりすることができる。

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69

にとって快の表情が見られやすい刺激である。つまりこの活動のねらいは,おもちゃを落とすと

音が鳴るという因果関係を理解することや遊びのバリエーションを広げることである。

Bは身体の動きを意識しつつ,空間認知の理解や成功体験の経験を積み重ね,探索意欲

の向上を目標とし,玩具や楽器で遊んでいる時に,それらの対象物が手の届く範囲の場所に

移動しても,探索し見つけ,再度遊ぶ活動を行う。 Bは左手を使って玩具や楽器で遊ぶことが

好きであるが,玩具や楽器を見失うとすぐに諦めたり,支援者がそれらを元の位置に戻してくれ

るまで待ったりする場面が多くみられる。

そこで本題材ではBが玩具や楽器で遊んでいる時に,こちらからそれらの対象物を手の届く

範囲の場所に移動させ,Bに言葉掛け等で探索を促し,見つけて再び遊ぶ学習を展開する。

一度見失った玩具や楽器を再び見つけて遊べることができたという成功体験を積み重ねること

で,探索する意欲が向上し,支援者がそばにいなくても一人で遊ぶことができるようになる。

○ 指導観

指導にあたっては,個々の児童の課題を同じ教室で取り組むことから環境面での配慮を行

っていく。それぞれの学習活動が混同しないように,同じ空間でもお互い少し離れた場所で学

習活動を行ったり,おもちゃや楽器,ベンチ椅子や机など個々の好きなものや実態にあった物

を用いたりして指導に当たる。また活動の説明や前触れ,言葉掛けは,個々の実態にあった端

的で分かりやすく,統一したものにする。

体操・ストレッチでは,Aは力を抜くことができるように可動域の範囲内で繰り返し体を動かす。

Bは覚醒を高めることができるよう,体を大きく動かすようにする。必要であれば,揺さぶり等を用

いて覚醒を高めることができるようにする。

姿勢保持に関して,Aは手位の姿勢の活動を行う前に,手のひらを触ったり指を広げたりし,

手のひらを意識させるようにする。また手位の姿勢を取ったときには指を開き,しっかり手のひら

で体を支えるようにする。体の動きが止まるまでは左腕を支えておき,姿勢が崩れないようにす

る。体の動きが止まると支援を止め,同時に言葉掛けで姿勢保持をするように促す。最初は指

導者が十分に支援するが,徐々に支援を減らし,自分で頭を上げるよう促す。

環境の把握に関わる活動について,A は鈴の入ったボール等を用意し,児童がボールに触

れるとすぐに机から落ちるように設定する。最初のうちはボールまで手を誘導し,ボールのある

場所に意識を向かせるようにする。ピアノ等好きな音のする楽器では,最初に手を導き,少し動

いただけで音が鳴るようにし,徐々に支援を減らしていく。B は好きな玩具や楽器を用意し,そ

れらを探索し発見できたという達成感を積み重ね,次も自力で探索して発見しようとする意欲を

高めたい。適切な言葉掛けや玩具等を左手に当て,探索するように促す。

児童たちは,授業中に発作が起こったり服薬や睡眠リズムの乱れにより覚醒が下がったりす

る可能性がある。発作が起こった場合には見守るようにし,音や接触等の刺激を減らす。また,

それぞれ適宜休憩を取り,覚醒状態や体調等の様子を見ながら活動を行うようにする。

6 題材の目標

・いろいろな姿勢や身体の動きを感じ取り,姿勢をコントロールしようとする力を高める。

・身体の動きを意識しつつ,いろいろな感覚器官を使って感覚を高め,人や物に関わろう

とする。

7 指導計画[全 70 時間]

第1次 からだをうごかそう (26 時間)

第2次 からだをうごかそう (26 時間 ) 本時 8/26

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70

第3次 からだをうごかそう (18 時間)

8 本時の目標

○全体の目標

・姿勢の保持をすることができる。

・個々の課題別活動を行うことができる。

○個々の目標

児童名 実態 目標 手立て

・右腕は体をしっかり支

えられるが左腕が曲が

りやすく体を支えること

が難しい。手位の体勢

になり体の動きが止ま

るまで左腕を支え,動

きが止まり支援を止め

ると数秒間姿勢を保持

することができる。(最

長で 5 秒程度)

・支援によって手位をと

り,5秒程度保持するこ

とができる。

・手位の体勢をつくる。体の動

きが止まるまでは左腕を支えて

おき,姿勢が崩れないようにす

る。体の動きが止まると支援を

止め,同時に言葉掛けで姿勢

保持をするように促す。

表現・表

出に関す

る内容

・狙って落とすのでは

なく,偶然落ちることが

多い。しかしボールが

落ちたら音が鳴るという

関係が分かってきてい

るようで,手もとからボ

ールが離れると音を期

待している様子も見ら

れる。

・机から物を落とす,ピ

アノなどの楽器で音を

鳴らす等の遊びを操作

と結果の関係を理解し

て行うことができる。

・鈴の入ったボールを用意し,児童

がボールに触れるとすぐに机から落

ちるように設置する。最初のうちはボ

ールまで手を誘導する。またピアノ等

好きな音のする楽器を用意する。最

初は手を導き,少し動いただけで音

が鳴るようにし,徐々に支援を減らし

ていく。

・座位姿勢からの頭上

げは,支援を受けること

により行うことができる

が,数回程度である

・座位の姿勢で頭上

げを 10 回行うことがで

きる。

・揺れや関節の圧縮により筋緊

張を高める。また肩甲帯を伸展

させ,力が入りやすいようにする。

表現・表

出に関す

る内容

・左手を使い玩具や楽

器で遊ぶことはできる

が,それらの対象物が

手の届く範囲の場所に

移動した時に,探索を

しようとしなかったり,探

索しても見つけられ

ず,すぐに諦めてしまっ

たり自己刺激をしたり

することがある。

・玩具や楽器で遊んで

いる時に,それらの対

象物が手の届く範囲の

場所に移動しても,探

索し見つけ,再度遊ぶ

ことができる。

・座位・左側臥位・腹臥位の姿

勢や車椅子で活動を行うように

する。言葉掛けをしたり,おもち

ゃ等を児童の手に当て,見つけ

て遊ぶように促したりする。また

座位姿勢時には机を用意す

る。

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71

9 準備物

玩具 キーボード ベンチ椅子 机 スイッチ マラカス 鉄琴 ピアノ CD デッキ CD

10 指導過程

学習活動 指導上の留意点 (□課題 ○支援・配慮 ☆評価基準)

A T1 B T2 全体

1 始まりの挨拶

をする。 (2分)

2 体操・ストレッ

チをする。(6分)

3 姿勢を保持

する。

(15 分)

4 個々の課題

別活動を行う。

(20 分)

○体を安定させてベンチ

椅子に座らせる。

○児童の左手にスイッチ

をあて,探索を促して押

させる。

○力が抜けるよう,繰 り

返し体を動かす。

○手位の体勢をつくる。

体の動きが止まるまで

は左腕を支えておき,

姿勢が崩れないように

する。体の動きが止まる

と支援を止め,同時に

言葉掛けで姿勢保持を

するように促す。

☆支援によって手位をと

り,5秒程度保持すること

ができたか。

○児童がボールに触れ

るとすぐに机から落ちる

ように設定する。最初の

うちはボールまで手を誘

○体を安定させてベンチ

椅子に座らせる。

○児童の左手にスイッチ

をあて,探索を促して押

させる。

○ゆっくりと大きく体を動

かす。

○揺さぶりや言葉掛けに

より覚醒を高める。

○体をしっかりと支えて

安定させる。

○肩甲帯を伸展させ,力

が入りやすいようにする。

☆座位姿勢で頭を 10 回

上げることができたか。

○座位・左側臥位・腹

臥位の姿勢や車椅子

で活動を行 うようにす

○統一した言葉掛けを

する。

○テンポをゆっくりにした

ラジオ体操の曲を流す。

○児童の体調等に合わ

せ,支援を工夫する。

○必要があれば休息を

入れる。

○それぞれの学習活動

が混同しないように,同

じ空間でもお互い少し

離れた場所で学習活

動を行う。またおもちゃ

や楽器,ベンチ椅子や

机など個々の好きなも

のや実態にあった物を

用いる。

○活動の説明や前触

学習活動は,児

童・生徒主体の

文体にする。

・支援によって手位をと

り,5秒程度保持するこ

とができる。

・座位姿勢で頭を 10 回

上げる。

・玩具や楽器で遊んで

いる時に,それらの対

象物が手の届く範囲の

場所に移動しても,探

索し見つけ,再度遊ぶ

ことができる。

・机から物を落とす,ピ

アノなどの楽器で音を

鳴らす等の遊びと操作

を結果の関係を理解し

て行うことができる。

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72

11 評価の観点

A:①支援によって手位をとり,5秒程度保持することができたか。

②机から物を落とす,ピアノなどの楽器で音を鳴らす等の遊びを操作と結果の関係を理解

して行うことができたか。

B:①座位姿勢で頭を 10 回上げることができたか。

②玩具や楽器で遊んでいる時に,それらの対象物が手の届く範囲の場所に移動しても,探

索し見つけ,再度遊ぶことができたか。

12 年間指導計画

別紙に添付した年間指導計画による。

13 教室内配置図

5 終わりの挨拶

をする。 (2分)

導し,ボールのある場

所に意識を向かせるよ

うにする。ピアノ等好き

な音のする楽器では,

最初に手を導き,少し

動いただけで音が鳴る

ようにする。

☆手を使って物を机から

落としたり楽器で音を鳴

らしたりするなど,手を使

って様々な遊びをするこ

とができたか。

○児童の左手にスイッチ

をあて,探索を促して押

させる。

る。言葉掛けをしたり,

おもちゃ等を児童の手

に当て,見つけて遊ぶ

ように促したりする。また

座位の姿勢時には机を

用意する。

☆玩具や楽器で遊んで

いる時に,それらの対

象物が手の届く範囲の

場所に移動しても,探

索し見つけ,再度遊ぶ

ことができたか。

○児童の左手にスイッチ

をあて,探索を促して押

させる。

れ,言葉掛けは,個々

の実態にあった端的で

分かりやすく,統一した

ものにする。

○活動をしっかり評価す

る。

○年○組教室

○年○組教室

B A

ベンチ椅子 ベンチ椅子

T1 T2

入口

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73

別紙1 児童(生徒)の実態の参考資料(本校アセスメントチェックリストによるプロフィール表)

〔A〕

〔B〕

Microsoft Word 97-2003 文書

月齢

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

Ⅰ 快不快の分化 人の働きかけによ

る快反応 外界への気付き (聴覚 )

外界 への気付 き(皮 膚 感

覚・味覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

光への反応

色への反応

2

反 応 表 出 の芽

生え

大人への注意

人への注意

声への好反応

音への注意

音の変化への気付き

外界への興味(触覚・味

覚・嗅覚等) 探索 (触覚 )

注視

追視

4

期待反応

やりとりの予測

応 答 性 の あ る

行動

要求の芽生え

人への愛着

やりとりの芽生

大人への積極性

声の変化への気付き

音の方向性への気付き

音への興味

特定フレーズへの気付き・意味付

物の単純な操作

因果関係の理解の芽生え

探索(視覚)

リーチング

目と手の協応の芽生え

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的

行動

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

Microsoft Word 97-2003 文書

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

Ⅰ 快不快の分化 人 の働 きかけに

よる快反応 外界への気付き (聴覚 )

外界への気付 き(皮 膚 感

覚・味覚・嗅覚等)

外 界 へ の 気 付 き ( 視

覚)

光への反応

色への反応

2

反 応 表 出 の芽

生え

大人への注意

人への注意

声への好反応

音への注意

音の変化への気付き

外界への興味(触覚・味

覚・嗅覚等) 探索 (触覚 )

注視

追視

4

期待反応

やりとりの予測

応 答 性 の あ る

行動

要求の芽生え

人への愛着

やりとりの芽生

大人への積極性

声の変化への気付き

音の方向性への気付き

音への興味

特定フレーズへの気付き・意味付

物の単純な操作

因果関係の理解の芽生え

探索(視覚)

リーチング

目と手の協応の芽生え

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的

行動

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

~ ~

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74

自立活動 学習指導案

指導者 ○○ ○○

1 日時・場所 平成 28 年○月○日(○) 2 校時 10:15~11:05

中学部○年○組教室

2 授業形態 個別

3 学部・学年 中学部 第○学年○組(Ⅲ類型 男子 1 名)

4 題材名 呼吸状態を安定させ,感覚遊びをしよう

5 題材設定の理由

○ 生徒観

本生徒は,急性脳症による体幹機能障害と先天性疾病による心臓機能障害を有しており,

酸素吸入や吸引,経管栄養が必要である。毎日服用している薬や座薬の影響等で覚醒レベ

ルが下がり,眠っている時やウトウトしている時が多い。自力排痰をすることはできるが,覚醒レ

ベルが下がったり,体調が崩れたりすると,咳嗽反射が弱くなり,SPO2 値が安定しない。そのた

め,体位変換を行い排痰を促す必要がある。姿勢によっては呼吸がしにくくなるため,呼吸状

態を見ながら体位変換を行う必要がある。仰向けにする時は,肩下にタオルを入れて気道を確

保し,側臥位や腹臥位にする時は,下顎を上げ,呼吸が入りやすいように顔の位置を調整して

いる。普段から呼吸が浅く,肩を上げての努力呼吸が見られるため,胸郭を広げ,深い呼吸が

できるようにすることが必要である。

活動においては,心臓機能障害があるため,急激に心臓に負担がかかるような活動は制限

されている。揺れることを好み笑顔がでるが,肺からの出血につながるため激しい運動はできな

い。11 月下旬に右足の大腿骨を骨折したため,足の動きや震えには十分注意していく必要が

ある。

本生徒は,視覚に障害があり,聴覚は,周囲の音や声に眼を左右に動かし,音に変化が見

られると目を大きく開けて注意して聴いている様子が見られ,好きな音や音楽には笑顔を見せ

る。言葉の理解は難しく,音として捉えていると考えられ,本校のアセスメントチェックリスト聴覚・

言語は「Ⅱ 音の変化への気付き」「Ⅲ 声の変化の気付き」段階である。「おはよう」や日頃の

問いかけには舌を動かして反応している様子が見られるが,生徒の表出はその日の体調や覚

醒状態に大きく左右されているため,刺激の受容が不安定である。好きな活動の後は余韻に

浸っているような笑顔が見られる時もあるが,もう一度して欲しそうな期待反応は見られにくい。

本校のアセスメントチェックリストの要求表出は「Ⅱ 反応表出の芽生え」段階である。嫌な時は

「ウー」と声を出したり,眉間にしわを寄せたりする。緊張が入ると,身体が弓なりになり,力が入

りすぎるとチアノーゼが出る。この時は,腰骨を落として,緊張を緩める必要がある。

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75

○ 題材観

個別の指導計画の年間目標でのコミュニケーション能力を育てる取組として働き掛けを受け

入れ,表情で応えることを目標としている。本題材では,呼吸状態の安定,働き掛けに対しての

反応の表出及び,期待反応の表出を目的にしている。呼吸状態の安定は,学習の基盤となり

うるため必要であり,呼吸が深くなることで覚醒状態の向上や健康状態の安定につながり,外

界からの刺激にも注意を向けやすくなる。首回りの運動は頸部の緊張をとり,嚥下をスムーズに

させることができる。感覚刺激では生徒の中で優位な感覚である聴覚に働き掛けを行うことで

外界への気付きを表出しやすいと考える。聴覚は,心理的安定,言語獲得,コミュニケーション,

覚醒行動,空間認知,音楽の享受などに不可欠な感覚である。そのため,色々な音を聴き,

音の変化に気付き,好きな音に安定した表出が見られるようになることがコミュニケーションにつ

ながると考える。

○ 指導観

指導にあたっては,生徒の呼吸状態,緊張の入り方,足の震えに留意しながら行っていく。

覚醒レベルが下がっている時や眠っている時は,身体を動かして呼吸状態を安定させていく。

緊張が入り身体が反り返る時は状況に応じて姿勢を変え,腰骨を落として緊張を緩め,働き掛

けが受容できるようにする。足の震えは,骨折につながるため足首と膝を持ち,震えを止めなが

ら活動を行っていく。首回りの運動は車椅子上で頸部を伸ばしたり,左右に顔を動かす。生徒

の動きに合わせてゆっくり動かすようにする。仰臥位,側臥位では,胸郭を広げるようにし,呼吸

をサポートする。生徒の健康状態は日によって異なるため,状況に応じて活動を行っていく。ま

た,痰が溜まり始めた時は呼吸介助を行い,排痰を促すようにする。覚醒レベルが上がってい

る時に,聴覚への働き掛けを行い,前半は身の回りの音等を1つずつ聴かせ,働き掛けを受容

する時間をもつ。後半には,音の変化に気付けるように,好きな音とそうでない音を混ぜて聴か

せる。

6 題材の目標

○ 呼吸状態を安定させることができる。

○ 働き掛けに対して,眼の動き,舌の動き,笑う等の反応を表すことができる。

○ 次の働き掛けに期待した反応を表出することができる。

7 指導計画 [ 全 75 時間 ]

※ 長期欠席の為に,学習時間が確保されておらず,目標が達成できていないために,本時

は第 2 次の内容を行う。

次 第1次 第2次 第3次

時数 25 時間 25 時間(本時 16/25) 25 時間

目標 働き掛けに反応する。

働き掛けに対して,安定した

反応を示す。 次の働き掛けに期待を表す。

呼吸状態の安定

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76

8 本時の目標

9 準備物

音の出るもの(ipad,楽器等)

生徒 実態 目標 手立て

・呼吸状態が不安定

で,呼吸ケアが必要で

ある。

・2 つの音を同時に聴

くと聴き分けようとして

いる様子を見せる。

・深く呼吸することが

できる。

・ 音 の変 化 に気 づ

き,眼の動き,笑い等

の反応を表すことが

できる。

・仰臥位や側臥位で胸郭を広げ

るように身体を動かす。

・好きな音と別の音を同時に聴

かせるようにする。

表現・表出に

関する内容

・働き掛けに対して,

眼を大きく開く,舌を

動かす,笑うことはある

が,身体状態の影響

が大きく不安定であ

る。

・働き掛けを受け,眼

を大きく開く,舌を動

かす,笑う等の反応

を1つ1つの働き掛け

に対して安定して表

すことができる。

(要Ⅱ-6,Ⅱ-9)

・耳元で話しかけ,声に注意を

向けさせるようにする。

・耳元で音を流し,注意を向ける

ようにする。

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77

10 指導過程

学習活動 指導上の留意点 (□課題 ○支援・配慮 ☆評価基準)

1 始まりの挨拶

をする。(2分)

2 首回りの運動

をする。(10 分)

3 聴覚刺激を

楽しむ。(10 分)

4 車椅子 から

降 り,胸郭を広

げる運動を行う。

(14 分)

5 聴覚刺激を

楽しむ。(10 分)

6 学習の振り返

りをする。(2分)

7 終わりの挨拶

をする。(2分)

挨拶の前に,呼吸状態を確認し,学習姿勢を整える。

〇 表情に注意し,挨拶をする。

車椅子上で,首回りを伸ばす。

○首を前後,左右にゆっくり動かす。

○生徒の動きに合わせて,首を動かしていく。

いろいろな音を聴く。

〇身の回りの音等いろいろな種類の音を聴かせる。

〇表情や緊張の入り方に注意を向けながら,音を聴かせる。

☆働き掛けを受け,眼を動かす,舌を動かす,笑う等の反応を1つ1つの働き

掛けに対して安定して表すことができたか。

仰臥位,左下側臥位をとり,胸郭を広げるケアを受ける。

〇表情や身体の動き,緊張の入り方,身体の震えに注意してゆっくり行う。

〇動かす身体の部位を伝えながら動かしていく。

〇緊張が入った時は腰落とし,緩める。

☆深い呼吸をすることができたか。

いろいろな音を聴く

〇好きな音に,別の音を被せて聴かせる。

〇表情や緊張の入り方に注意を向けながら,音を聴かせる。

☆音の変化に気づき,眼の動き等で反応を表すことができたか。

☆働き掛けを受け,眼を動かす,舌を動かす,笑う等の反応を1つ1つの働き

掛けに対して安定して表すことができたか。

本時の学習活動で最も表出があったものを再度繰り返す。

〇表情に注意して,活動を行う。

挨拶の前に,呼吸状態を確認し,学習姿勢を整える。

〇表情に注意し,挨拶をする。

学習活動は,児

童・生徒主体の

文体にする。

・働き掛けを受け,眼を動かす,舌を動かす,笑う等の反応を1つ1つ

の働き掛けに対して安定して表すことができる。

・深い呼吸をすることができる。

・働き掛けを受け,眼を動かす,舌を動かす,笑う等の反応を1つ1つの働き

掛けに対して安定して表すことができる。

・音の変化に気づき,眼の動き等で反応を表すことができる。

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78

11 評価の観点

個別の目標

○ 深い呼吸をすることができたか。

○ 働き掛けを受け,眼を大きく開く,舌を動かす,笑う等の反応を表すことができた

か。

○ 音の変化に気づき,眼の動き等で反応を表すことができたか。

指導の目標

○ 学習内容の分量は適切であったか。

○ 実態に応じた支援は適切であったか。

○ 教材・教具は目標達成に対して効果的であったか。

12 年間指導計画

自立活動(個別)では,個々の課題に取り組む活動として「自分のペースでがんばろう(個別

課題)」の時間を設けている。それぞれの課題について,集中的に取り組むのではなく,年間を

通じてバランスよく授業を配分している。

13 教室内配置図

目 標(年間指導計画から) 題 材 名 時間数

○リラックスして活動に参加する。

○いろいろなものに関わり,興味を

広げる。

○働き掛けを受け入れ,表情で応え

る。

・呼吸状態を安定させ,いろいろ

な刺激を受容しよう。 50(1学期)

・呼吸状態を安定させ,感覚遊び

をしよう。 75(2学期)

・呼吸状態を安定させ,好きな感

覚遊びに応じよう。 50(3学期)

合 計 175(年間)

水道

生徒 教

員 生徒

教員 机

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79

別紙1 生徒の実態の参考資料(本校アセスメントチェックリストによるプロフィール表)

〔A〕

月齢

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

Ⅰ 快不快の分化 人の働きかけによ

る快反応 外界への気付き (聴覚 )

外界 への気付 き(皮 膚 感

覚・味覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

光への反応

色への反応

2

反 応 表 出 の芽

生え

大人への注意

人への注意

声への好反応

音への注意

音の変化への気付き

外 界 への興 味 (触 覚 ・味

覚・嗅覚等) 探索 (触覚 )

注視

追視

4

期待反応

やりとりの予測

応 答 性 の あ る

行動

要求の芽生え

人への愛着

やりとりの芽生え

大人への積極性

声の変化への気付き

音の方向性への気付き

音への興味

特定フレーズへの気付き・意味付

物の単純な操作

因果関係の理解の芽生え

探索(視覚)

リーチング

目と手の協応の芽生え

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的

行動

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大 人 の注 意 を

引く

要 求 手 段 の多

様化

指さし要求

やりとりの拡大

共感性の芽生え 名詞等の理解 発語の芽生え

空 間 認 知 の芽

生え

始点と終点の理

手指の活用

保存の概念

比較の概念

模倣

生活場面等の

理解

13

要求の具体化・

明確化

言語を伴う要求

社会性の芽生え

共感性の高まり

言語 指示 ・二 語

文の理解

質問への応答

動詞・形容詞等の

理解

言葉の模倣

名詞等の発語

視 覚 情 報 の活

図形概念の芽生

数 ・量 概 念 の芽

生え

生 活 場 面 での

記憶の活用

見 立 て ・ごっ こ

遊びへの興味

19

24 Ⅶ

自 己 主 張 の芽

生え

言語での要求

他の子供への興

自己意識の芽生

社会性の高まり

理解語彙の増加

言語指示への応

カテゴリー概念の

芽生え

場面 に合 う言

葉の活用

表出語彙の増

二語文等の表

道具の使用

空 間 認 知 の高

まり

数 ・量 概 念 の高

まり

カテゴリー概念の

芽生え

見 立 て ・ごっ こ

遊び

食事 ・排泄 ・衣

服・清潔等 ADL

の基礎

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80

自立活動(表現・コミュニケーション) 学習指導案

指導者 ○○ ○○(T1)

○○ ○○(T2)

1 日時・場所 平成 28 年○月○日(○) 3校時 11:15~12:05

中学部○年○組教室

2 授業形態 決定学級

3 学部・学年 中学部 第○学年○組(Ⅲ類型)

4 題材名 音楽あそびをしよう

5 題材設定の理由

○ 生徒観

本学級は女子2名である。Aは本校小学部から進学。Bは地域の小学校から進学してきた

生徒である。2名の実態には差があるが,いずれも肢体不自由と知的障害を併せ有しており,

座位保持車椅子を使用し,日常生活全般にわたって支援を必要としている。

Aは,車椅子に座るように四つ這いを促すと,車椅子まで這っていき,膝立ちが一分程度で

きる。背筋を伸ばしてあぐら座りもできる。寝返りや一人座りをすることで,自分で姿勢も変えるこ

とができる。右手右足はよく動かし,履いている靴は足を使って自分で脱ぐ。右手を主に使い,

指先の動きは紙をちぎったり掴んだりひもの結び目をほどくなど,手元をよく見て作業をすること

ができる。ぬいぐるみや人形やテレビ画面など,動く物を身を乗り出してよく見ている。絵本やお

もちゃやカードなど,以前は手にするとすぐに投げていたが最近では,興味のあるものは自分で

持ってよく見た後,投げたり相手の反応を見て楽しんだりすることもある。相手の顔を見て慣れ

た相手だと目を見て微笑む。揺れる遊具やくすぐられること,手遊び歌が好きで,人がしている

のを見て自分で身体の向きを変えたり移動したりすることも増えてきた。

Bは,不快な時は声を出したり泣いたりする。排泄時には,泣いて声を出すことがある。授業

では,教員の動きに対して,それまで動いていた動きをピタッと止めたり,声を出したりすることが

ある。弛緩がうまくできないため,力が入り手や足をバタバタ動かす。特に摂食時には全身に力

が入るので体力を消耗する。友だちの動きを見て,足や腰を使って自分から友だちの方へ寄っ

て行ったりすることも多くなってきた。キラキラする飾りに興味を示し,自分からさわって揺らした

り,手を伸ばして掴もうとする場面が見られるようになってきた。抱っこをして全身を揺らすと緩み,

力も抜けて落ち着いてくる。

○ 題材観

本題材は,季節を大切にした活動をする中で,友だちを意識すること,興味のあるものに手

を出すことをねらいとしている。

今までの楽しかった体験を振り返りながら,揺れることが好きなので,音楽あそびをする中で,バ

スに乗った雰囲気をつくり再現していく。バスのハンドルに生徒の握りやすい細めのフープを使

用する。冬のあそびのひとつとして,雪を意識させるものもある。寒い冷たい中での外のあそび

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81

も楽しいものがあるんだということを感じてほしい。体験したことがないであろう雪投げや雪だるま

作りを模擬体験させてやりたい。雪玉は二人の実態に応じて,握りやすく持ちやすいもののデ

コレーションボールや毛糸玉を使用する。リズムを感じて二人で雪投げをしたり雪玉を転がしあ

って少しずつ大きい雪玉を作り,あそびの中で二人で力を合わせて身体を動かし,雪玉から雪

だるまを完成させるという題材を取り入れる。

○ 指導観

指導にあたっては, 表現・コミュニケーションで学年やクラスの歌として,授業の初めにテーマソ

ングを歌うことを意識づけしていく。そして,季節の歌を歌い季節を感じさせるようにする。バスの

模擬体験として,フープを使用して身体を揺らす。雪あそびでは,教室を雪山に見立てて雰囲

気をつくり,冬のイメージを広げ易くする。本物の雪の冷たさを感じさせるため,冷たいものにさ

わらせる。その後は,さわり心地が良く握り易くて柔らかいものを使用し,自分から手を伸ばして

雪玉を握ったりさわったりさせる。そして,友だちを意識して雪玉を投げたり転がしたりすることに

つなげていく。生徒が活動しやすく分かりやすいようにするために,まず指導者が動いて提示し

たものをしっかり見せる場面も作る。

Aには,音楽に合わせ,自由に身体を動かして表現できるようにしていく。また,Bには,指導者

が一緒に手を握ることで,安心し落ち着いて活動ができるようにしていく。

6 題材の目標

○ 音楽活動の中で,興味のあるものに手を出すことができる。

○ 友だちを意識し,関わりをもつ。

7 指導計画 [全 11 時間]

第一学期 4 (4時間)

第二学期 4 (4時間 )

第三学期 3 (3時間 ) ・・・・・ 本時 1 / 3

8 本時の目標

○全体の目標

活動を通して,自分の身体を動かすことができる。

楽曲などを通して,他者への関心をもつことができる。

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82

○個々の目標

9 準備物

歌詞カード(げんきななかま・ふゆのおと・バスにのって), デコレーションボール(小・中)

毛糸玉, 白玉(大), MD, CD, MD・CDラジカセ, 雪だるま, 雪うさぎ, ハンドル(フー

プ), イラスト(氷のピアノ・雪山・バス・オートバイ・雪投げ・雪だるま)

10 指導過程

別紙の通り

11 評価の観点

全体の目標

○ 友だちに視線をむけて,楽しい気持ちを表現し,自分から身体を動かすことが

できたか

個別の目標

A ○ハンドル(フープ)を自分から握ったり雪玉にさわろうとしたか。

○友だちを意識し,視線を向けることができたか。

B ○雪玉あそびで自分から手を伸ばして握ろうとしたか。

○友だちや指導者を意識し,相手を見て動くことができたか。

生徒 実態 目標 手立て

・興味のあるものは,自分で持ってよく見た後,投げる。 ・テレビや絵本は,身を乗り出して見る。 ・ 右 耳 は聴 こえに くい。

・ハンドル(フープ)を自分から握ったり雪玉にさわったりする。 ・相手を見て雪玉を投げたり転がしたりする。

自分から触れられる場所に,ハンドル(フープ)や雪玉を提示する。

相手を意識する言葉掛けをし,自発性を促すようにする。

表現・表出に関する内容

・言葉掛けに対して右腕を握ったりお尻を振ったりして嬉しい気持ちを表現する。 ・支援者を意識して見る。

・リズムを感じて,手やお尻を動かし,笑顔を見せる。 ・友だちに対して,自分から視線をむける。

・速さやリズムを工夫し,バスのあそびうたや雪あそびを行う。 ・友だちが見える位置を取らせ,繰り返し言葉掛けをする。

B

・キラキラするものに興味を示し,自分から手を伸ばして揺らすことがある。 ・言葉掛けをして物を近付けると,自分から掴むことがある。

・ハンドル(フープ)に手を伸ばしたりさわったりする。 ・雪玉に自分から手を伸ばしてさわったり握ったりする。

・ハンドル(フープ)がさわれる位置や姿勢を取りながら,指導者が抱いて速さを変えて動く。 ・雪玉にさわったり握ったり転がしたりできるような姿勢を取らせるようにする。

表現・表出に関する内容

・自分から身体を動かして向きを変えることで表現する。 ・光るものや動く物を追 視 する こ とができる。 ・音はよく聴こえているが,慣れない音や大きい音は,あまり好まない。

・友だちや指導者に視線を向ける。

・繰り返し行う中で,言葉掛けをしながら安心できる環境をつくるようにする。

学習活動は,児

童・生徒主体の

文体にする。

Page 87: º Ø Û*f æ L7 gakusyu...Û*f æ _ L7 cLu_ Û*f æ _ L è8® º íííííííííííííííííííííííííííííííííí >/ p Û4 /*ñ 9×'¼4 X Û é8® º íííííííííííííííííííííííííííííííííí

83

指導の目標

○ 学習内容の分量は適切であったか。

○ 実態に応じた支援は適切であったか。

○ 教材・教具は目標達成に対して効果的であったか。

12 年間指導計画

13 教室内配置図

10 指導過程 (別紙 )

目 標(年間指導計画から) 題 材 名 時間数

○「快」の感覚を引き出し,情緒の安定を図る。

○身体表現や表情・発声などで,自分の思いや

感情を表す力を育てる。

○友だちや周囲を意識する。

音楽あそびをしよう 4 (1学期)

音楽あそびをしよう 4 (2学期)

音楽あそびをしよう 3 (3学期)

合 計 11 (年間)

学習活動 指導上の留意点 (□課題 ○支援・配慮 ☆評価基準)

A T2 B T1 全体 1 始まりの

挨拶・説明

(3分)

挨拶の前に,学習姿勢を整

える。

○生徒の目を見てゆっくり話

しかける。

挨拶の前に正しい姿勢を整

える。

○生徒の手を握り,目を見て

ゆっくり話しかける。

・学習の始まりを意識させる。

・T1 に注意を向けるよう

に促す。

・簡潔に本時の活動を伝え

る。

・不安を感じさせないように,

正面から言葉掛けする。

出入り口

ホワイトボード

ロッカー

A

B

T1

T2

移動式白板 歌詞カード

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84

2 テーマソング

季節の歌

(7分)

○友だちの名前を言葉掛け

する。 (T2)

☆友だちに視線を向けること

ができたか。

○友だちの名前を言葉掛け

する。 (T1)

☆友だちに視線を向けること

ができたか。

・身体を動かし,友だちを見

ることができるように,お互い

を向いあわせる。

3 あそびうた (15 分)

○自分から触れられる場所

にハンドル(フープ)を提示

する。 (T2)

☆ハンドル(フープ)を自分

から握ることができたか。

○速さやリズムを工夫して動

く。 (T2)

☆身体を動かし,笑顔を見

せることができたか。

○ハンドル(フープ)がさわれ

る位置や姿勢を取りながら,

指導者が抱いて速さを変え

て動く。 (T1)

☆ハンドル(フープ)に手を伸

ばして握ることができたか。

○リラックスして活動ができる

ように言葉掛けする。 (T1)

☆友だちや指導者に視線を

むけることができたか。

・いろいろな道があることを身

体を揺らす中で知らせる。

・速さやリズムを感じさせるた

め,膝にのせたり,後ろから

抱えるようにしたりして揺 ら

す。

4 雪玉あそび

(20 分)

○相手を意識する言葉掛け

をし,自発性を促すようにす

る。 (T2)

☆自分から雪玉にさわり,投

げたり転がしたりすることがで

きたか。

○友だちが見える位置を取らせ,繰り返し言葉掛けをする。 (T2)

☆自分から友だちに視線を

向けることができたか。

○雪玉にさわったり握ったり

転がしたりできるような姿勢を

取らせる。 (T1)

☆自分から手を伸ばして,雪

玉にさわったり握ったりするこ

とができたか。

○繰り返し行う中でリラックス

して活動ができるように言葉

掛けする。 (T1)

☆自分から友だちに視線を

向けることができたか。

・雪玉に触れさせ,冷たいこ

とを知らせる。

・繰 り返し行う中で,相手を

見て雪玉を投げるように言葉

掛けをする。

・雪玉を転がすことで,だんだ

ん大きくなっていくことに気付

かせる。

5 振り返り

(3分)

○生徒の目を見てゆっくり話しかける。 (T2)

○生徒の手を握り,目を見て

ゆっくり話しかける。 (T1)

・活動を振り返り,自分の身

体を動かすことができたか,

他者への関心をもつことがで

きたか評価する。

6 終わりの

挨拶

(2分)

挨拶の前に正しい姿勢を整

える。

○生徒の目を見て言葉掛け

する。 (T2)

挨拶の前に正しい姿勢を整

える。

○生徒の手を握り,目を見て

言葉掛けする。 (T1)

・学 習 の終わりを意識 させ

る。

・T1 に注意を向けるように促

す。

曲を聴きながら ,自分から

手を振ったり友だちに視線

を向けたりする。

曲を聴きながら ,手を動か

したり友だちに視線を向け

たりする。

ハンドル(フープ)に手を伸

ばしたりさわったりする。

雪玉に自分からさわった

り,投げたり転がしたりす

る。

雪玉に自分から手を伸ばし

てさわったり握ったりする。

ハンドル(フープ)を自分か

ら握ったり,さわったりす

る。

リズムを感じて手やお尻を

動かし,笑顔を見せる。

友だちや指導者に,視線を

向ける。

友だちに対して,自分から

視線を向ける。

友だちや指導者に,視線を

向ける。

指導者と一緒に活動を振り

返る。

指導者と一緒に活動を振り

返る。

Page 89: º Ø Û*f æ L7 gakusyu...Û*f æ _ L7 cLu_ Û*f æ _ L è8® º íííííííííííííííííííííííííííííííííí >/ p Û4 /*ñ 9×'¼4 X Û é8® º íííííííííííííííííííííííííííííííííí

85

別紙1 児童(生徒)の実態の参考資料(本校アセスメントチェックリストによるプロフィール表)

〔A〕

〔B〕

階 コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

Ⅰ 快不快の分化 人の働きかけによ

る快反応 外界への気付き (聴覚 )

外界 への気付 き(皮 膚 感

覚・味覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

光への反応

色への反応

2

反 応 表 出 の芽

生え

大人への注意

人への注意

声への好反応

音への注意

音の変化への気付き

外 界 への興 味 (触 覚 ・味

覚・嗅覚等) 探索 (触覚 )

注視

追視

4

期待反応

やりとりの予測

応 答 性 の あ る

行動

要求の芽生え

人への愛着

やりとりの芽生え

大人への積極性

声の変化への気付き

音の方向性への気付き

音への興味

特定フレーズへの気付き・意味付

物の単純な操作

因果関係の理解の芽生え

探索(視覚)

リーチング

目と手の協応の芽生え

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的

行動

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大 人 の注 意 を

引く

要 求 手 段 の多

様化

指さし要求

やりとりの拡大

共感性の芽生え 名詞等の理解 発語の芽生え

空 間 認 知 の芽

生え

始点と終点の理

手指の活用

保存の概念

比較の概念

模倣

生活場面等の

理解

月齢

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

Ⅰ 快不快の分化 人の働きかけによ

る快反応 外界への気付き (聴覚 )

外界 への気付 き(皮 膚 感

覚・味覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

光への反応

色への反応

2

反 応 表 出 の芽

生え

大人への注意

人への注意

声への好反応

音への注意

音の変化への気付き

外 界 への興 味 (触 覚 ・味

覚・嗅覚等) 探索 (触覚 )

注視

追視

4

期待反応

やりとりの予測

応 答 性 の あ る

行動

要求の芽生え

人への愛着

やりとりの芽生え

大人への積極性

声の変化への気付き

音の方向性への気付き

音への興味

特定フレーズへの気付き・意味付

物の単純な操作

因果関係の理解の芽生え

探索(視覚)

リーチング

目と手の協応の芽生え

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的

行動

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大 人 の注 意 を

引く

要 求 手 段 の多

様化

指さし要求

やりとりの拡大

共感性の芽生え 名詞等の理解 発語の芽生え

空 間 認 知 の芽

生え

始点と終点の理

手指の活用

保存の概念

比較の概念

模倣

生活場面等の

理解

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86

自立活動(表現・コミュニケーション) 学習指導案

指導者 ○○ ○○(T1)

○○ ○○(T2)

○○ ○○(T3)

1 日時・場所 平成 28 年 ○月 ○日(○) 2校時 10:15~11:05

中学部○年○組教室

2 授業形態 決定学級

3 学部・学年 中学部 第○学年○組(Ⅲ類型)

4 題材名 いろんなあそびで楽しもう

5 題材設定の理由

○ 生徒観

3名の生徒はそれぞれ脳性麻痺による移動機能障害がある。教室では主に 2 名が車椅子で,

1名は背もたれがあると姿勢を崩しやすいので,背もたれのない椅子に腰かけている。

A は脳性麻痺の痙直型とアテトーゼ型の混合と見られる。右足首は内旋傾向にあり,つかまり

立ちで立位を保とうとしても不安定である。車椅子から降りると,四つ這いにより移動できるが,

バランスを崩しやすい。言葉による簡単な働きかけを理解することもでき,慣れないと聞き取りに

くいが,その場に応じた意志を限られた言語で表現することもできる。自分の思いが先行しがち

で,注目を集めたり,感情が高ぶったりすると,かえって身体は思い通りにならず,「そこまでや

らなければよかったのに・・・」と落胆する結果になることがある。落ち着いて感情をコントロールし,

周囲といかに協調して過ごしていけるかが課題であったが,それも最近では,話を聞いて納得

できると落ち着けるなど,随分と改善されてきている。

B は3肢に強く麻痺が見られ,比較的マヒの軽いと思われる左手で食事をしたり,文字を書いた

りすることも可能である。右体側に身体が傾き姿勢を崩すことが多く,車椅子に限らず椅子に

腰かけていても,集中すればするほど身体は傾いてしまう。体幹を意識させて体を起こすよう指

導している。言語による表現も可能で,発音が曖昧になったり苦手な言い回しがあったりするが,

日常よく使う単語であれば応答もできる。お話やテレビなどの中身はほぼ理解できているが,休

み中の出来事や感想などを表現したり,ちょっと通路をあけて欲しいという程度の日常の困った

ことを,言葉で相手に伝えることに,戸惑っている姿が見られる。

C は現在自立歩行が可能であるが,C が歩くようになったのは小学部に入ってからである。足

元を注視しないこともあって,ちょっとした舗装の段差に躓くことも多く,歩行中も目が離せない。

右足のほうが外旋傾向にあり,安定性も弱い。階段を昇降していても,右体側に手すりがあると

安定するが,左体側の手すりを利用するのは苦手である。歩行も含め,目と手足の協応が不

十分で,意志を伴った身体の操作性の向上が課題である。言語による指示は通りにくいところ

があるが,本人の周囲への関心は高まってきていると思われる。期待を込めて表情を変化させ

目を合わせたり,物を注視したりする場面も見られるようになってきている。感情が盛り上がった

り,周囲に反応したりして拍手を繰り返す経験の中から,本人の何らかの意欲や周囲との関係

を意識したことの表れとして,拍手によって肯定的な感情を表出していると思われる場面が見ら

れることもある。一方で,一日の間に感情の起伏が顕著に表れ,テンションが高くなる時はまだ

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87

よいが,殻に閉じこもったように周囲への関心を示さなくなる時間帯も生じる。

○ 題材観

年間指導計画の自立活動(表現・コミュニケーション)の中では,1年を通してほぼ毎月「お話を

聞こう」「模倣をしよう」「リズムを感じよう」「音楽あそびをしよう」の単元(題材)がある。今回取り

上げた「いろんなあそびで楽しもう」は,学期に1~2回程度あるものだが,年に4回は学級合同

での時間設定もされている。その理由としては,「働きかけを受け止めて,自分の思いを表出す

る」ために,特に集団で行う方が,活動の幅や他者とのかかわりが広がり,コミュニケーションの

力を高めるために有効であるとの理由による。また,単元(題材)の目標としては,「活動を通し

て,相手とかかわったり,自分の役割や順番に気付いたりし,他者とのかかわりを広げる」とある。

つまり,3人の活動を関連付けて広がりを持たせつつ,個別の課題にも取り組むところに,この

単元(題材)の面白さと,難しさがある。

ABC の現在の様子と課題を踏まえ,今回の「いろんなあそびで楽しもう」では,プラスチックボー

ルが入る程度の穴(25個)をあけた,90cm四方の土台を準備し,それを舞台にあそびを考え

ることにした。このゲームを考えるに当たって思い描いていたことは,まず B がゲームの中で困る

こと,それを A に伝えるということ,そして A が B の求めに応じるということである。2人のコミュニ

ケーション上の課題を踏まえて,以上のような場面が実現できたら面白いのではないかと考えた。

C にはゲームで使うボールを飛ばす道具を用意することで,ゲームに参加していく役割を持た

せることにした。C は机を叩いて音を出したりスイッチを押したりすることを好む傾向があり,ゲー

ムの中でスイッチに C の好む鈴をつけて意識を向かわせ,自分が押したことでボールを発射し

て,A や B と一緒にゲームに参加する楽しさを感じてもらいたい。

○ 指導観

ゲーム的な競い合う要素はなるべく少なくして,パズルを協力して作っていくような感覚で展開

できたらと考えている。全体を通して,姿勢を意識させることに留意したい。またコミュニケーショ

ンを促しつつゆっくりと進めていきたい。

A は何事にも意欲的で,周囲への関心も高いが,肝心な場面で不随意運動を起こしやすく,

自分の思い通りの活動とはなりにくいことが多い。そのため落ち着いた行動を意識させるととも

に,周りからの働きかけに耳を傾けながら,運動と行動をコントロールするよう指導したい。

B は A にどれだけ関わることができるのか難しさはあるが,B からの発言や行動を,指導者の方

でフォローしながら待つ姿勢も必要であると考えている。B はゲームに対する理解力も高く,指

導者の意図に気付き,かえって否定的な行動をとることも考えられる。B にはゲームの趣旨を踏

まえつつ,非言語的であっても,まずは伝えようとする姿勢を評価するようにしていく。

体調や雰囲気に弱く固まってしまうことも心配される C なので,好きな音などで誘導しつつ,ボ

ールの行方や A や B との関わりを意識させるよう指導したい。

6 題材の目標

○ 周囲への関心と注意力を高め,働きかけを行ったり受け止めたりできる。

○ 感情や姿勢を維持することに努め,最後まで集中を持続することができる。

7 指導計画[全 9 時間]

第1次 (2時間)

第2次 (1時間 )

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88

第3次 (2時間)

第4次 (2時間) 本時 1/2

第5次 (2時間)

8 本時の目標

○全体の目標

・周囲からの働きかけに気付いたり,自分で働きかけようとする意欲を持つ。

・感情のコントロールや姿勢を保つことを意識する。

○個々の目標

9 準備物

段ボール製の台,プラスチック製ボール,紙コップ,補助具(ボールの発射台),シール

座布団,椅子,ホワイトボード,顔写真

10 指導過程(別紙 1)

児童・生徒 実態 目標 手立て

・注目されたり,意欲

が出すぎると,身体や

感情のコントロールが

難しい。

・集中すると,型はめ

などにも継続して取り

組める。

・感情を抑え,ゲーム

のルールに従って,

集中して取り組める。

・待つ態勢を確保できるよう補助

し,動く際には身体を支えるため

の助言を行って,ゲームに集中

できるようフォローする。

表現・表出に

関する内容

・周囲が見えなくなるこ

とがあり,独善的になり

やすい。

・相手との順番ややり

取 りを意識させ,簡

単な声を掛けることが

できる。

・順番ややり取りの基本的な言

葉を確認しながら,うまくできたら

褒めて気持ちを持続させる。

B

・姿勢を崩しやすく,ま

た意欲を持続すること

が難しい。

・最後まで継続して

ゲームに取組みなが

ら,姿勢を意識する。

・前後左右方向への動きを誘

い,身体の正面を意識させる。

表現・表出に

関する内容

・相手への働きかけを

躊躇して,待ったり諦

めたりする。

・必要なコミュニケー

ションを図ろうとする

意欲を持つ。

・場面設定を行って,働きかけに

必要な言い回しを示唆する。

C

・気持ちが高まっても,

意識が下がっても,周

囲への関心が薄れ,

目と手の協応が難し

い。

・ゲームに参加する

意欲を持ちながら,

道具の操作を行う。

・簡単な道具を用意するととも

に,行動と結果の因果関係を感

じられるよう繰り返し役割を指導

する。

表現・表出に

関する内容

・道具や人への関心を

持続できない。

・声掛け等に反応し

たり,道具やボールを

注視する。

・タイミングを合わせた拍手や,

道具の存在を強調して,意欲を

保つ。

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89

11 評価の観点

○全体の目標

・周囲からの働きかけに気付いたり,働きかけようとする意欲を示せたか。

・感情のコントロールをして,姿勢を保つことに努める。

○個別の目標

A ・感情を抑え,ゲームのルールに従い参加できる。

・相手からの働きかけに,意識を向けることができる。

B ・姿勢を保って,最後まで集中できる。

・場面に応じてボールの受け渡しなど声を出して,コミュニケーションを図ろうとすること

ができる。

C ・道具の操作を行い,ゲームに参加できる。

・意欲を保ち,呼びかけに応えて操作する姿勢を見せる。

○指導の目標

・ゲームの進行をリードしながら,各生徒の状態に適した対応ができたか。

・コミュニケーションを図る場面が,効果的に設定できたか。

12 年間指導計画

目標(年間指導計画から) 題材名 時間数

・「快」の感覚を引き出し,情緒の安

定を図る。

・身体表現や表情・発声などで,自分

のおもいや感情を表す力を培う。

・コミュニケーションに必要な基礎的

な力を培うとともに言語の受容と表

出に関する力を身に付けさせる。

・身近な人との人間関係を発展させ、

周囲の人とのかかわりの拡充を図る。

お話を聞こう

22 時間

模倣をしよう

8時間

リズムを感じよう

20 時間

音楽あそびをしよう

11 時間

いろんなあそびで楽しもう

9時間

合計 70 時間(年間)

13 教室内配置図

入り口

A B

T1 C

T2 T3

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90

別紙 1 10 指導過程

学習活動

指導上の留意点 (□課題 ○支援・配慮 ☆評価基準)

A T2 B T3 C T1 全体

1 始めの挨拶を

する。(2分)

2 本時の説明

(4分)

3 配置につく

(4分)

4 ゲーム

(30 分)

5 得点発表・

終わりの挨拶。

(10 分)

□語尾をきちんと発

音する。

□話に集中して意

欲を持つ。

□落ち着いて,決め

られたポジションで

ゲームを待つことが

できる。

○落ち着ける姿勢

を保ち,気分をコン

トロールする。

□ゲームのルールに

従って,順番を守っ

てプレイできる。

○ボールに注目 さ

せて,落ち着けるよ

う声を掛ける。

☆最後までゲームを

放棄せず参加でき

たか。

○順番や得点,コミ

ュニケーションを意

識させて,楽しみを

持続させる。

☆最後までゲームに

参加して楽しみを共

有できたか。

□気持ちの切り替え

を行い,スムーズに

行動できる。

○移動を促し補助

を行う。

□姿勢を意識 して

伸ばす。

□流れに注目 して

見通しが持てる。

□位置についたら,

姿勢を意識できる。

○ゲームをする上

で,姿勢を正すと有

利であることを理解

させる。

□動 きのあ るたび

に,姿勢を正そうと

意識できる。

○様子を見てできて

いないときは,その

都度,声を掛ける。

☆座布団を利用し,

姿勢 を維持できた

か。

○相手とのボールの

受け渡しや,ゲーム

の合図を行わせる。

☆順番に気付 き,

自らコミュニケーショ

ンをとれたか。

□終 わ り を意 識 し

て , 自 ら行 動 で き

る。

○移動を指示し,見

守る。

□指導者や他の生

徒に視線を向ける。

□姿勢 を伸ばして

聞く。

□位置についたら,

ボタンに興味を示す

ことができる。

○何度か練習をし

てみる。

□声や合図に反応

しながら,ボタンを押

すことができる。

○友だちの様子に

着目させたり,ボー

ルの行方に注意を

促す。

☆積極的にゲーム

に参加できたか。

○興味 を引 く音や

声掛け,合図を続

ける。

☆最後までゲームに

意識 を向 けて,操

作を行えたか。

□姿勢を整え,落ち

着いて過ごせる。

○道具等から身体

を離して,指導者の

方に注目させる。

・リラックスした雰囲

気づくりをする。

・ホワイトボードに注

目させて説明を行う

・椅 子や座布団 を

用意して,姿勢を保

ちやすくして,ゲー

ムに意識が向くよう

配慮する。

・ゲームの決まった

手順を繰り返し,見

通しを持ちやすくす

る。

・簡単な声掛けやや

り取りを促し,コミュ

ニケーションの場面

を作る。

終わりを意識させ,

ホワイトボードに注

目を促す。

順 番 や ル ー ル に

従って,楽しくや

り取りする。

ルールに従って,

必 要 な コ ミ ュ ニ

ケ ー シ ョ ン や 簡

単な会話を行う。

最 後 ま で ゲ ー ム

に意識を向け,反

応を続ける。

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91

添付資料 1

児童(生徒)の実態の参考資料(本校アセスメントチェックリストによるプロフィール表)

〔A〕

〔B〕

月齢

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的

行動

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大 人 の注 意 を

引く

要 求 手 段 の多

様化

指さし要求

やりとりの拡大

共感性の芽生え 名詞等の理解 発語の芽生え

空 間 認 知 の芽

生え

始点と終点の理

手指の活用

保存の概念

比較の概念

模倣

生活場面等の

理解

13

要求の具体化・

明確化

言語を伴う要求

社会性の芽生え

共感性の高まり

言語 指示 ・二 語

文の理解

質問への応答

動詞・形容詞等の

理解

言葉の模倣

名詞等の発語

視 覚 情 報 の活

図形概念の芽生

数 ・量 概 念 の芽

生え

生 活 場 面 での

記憶の活用

見 立 て ・ごっ こ

あ そ び へ の 興

19

24 Ⅶ

自 己 主 張 の芽

生え

言語での要求

他の子供への興

自己意識の芽生

社会性の高まり

理解語彙の増加

言語指示への応

カテゴリー概念の

芽生え

場面 に合 う言

葉の活用

表出語彙の増

二語文等の表

道具の使用

空 間 認 知 の高

まり

数 ・量 概 念 の高

まり

カテゴリー概念の

芽生え

見 立 て ・ごっ こ

あそび

食事 ・排泄 ・衣

服・清潔等 ADL

の基礎

月齢

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的

行動

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大 人 の注 意 を

引く

要 求 手 段 の多

様化

指さし要求

やりとりの拡大

共感性の芽生え 名詞等の理解 発語の芽生え

空 間 認 知 の芽

生え

始点と終点の理

手指の活用

保存の概念

比較の概念

模倣

生活場面等の

理解

13

要求の具体化・

明確化

言語を伴う要求

社会性の芽生え

共感性の高まり

言語 指示 ・二 語

文の理解

質問への応答

動詞・形容詞等の

理解

言葉の模倣

名詞等の発語

視 覚 情 報 の活

図形概念の芽生

数 ・量 概 念 の芽

生え

生 活 場 面 での

記憶の活用

見 立 て ・ごっ こ

あ そ び へ の 興

19

24 Ⅶ

自 己 主 張 の芽

生え

言語での要求

他の子供への興

自己意識の芽生

社会性の高まり

理解語彙の増加

言語指示への応

カテゴリー概念の

芽生え

場面 に合 う言

葉の活用

表出語彙の増

二語文等の表

道具の使用

空 間 認 知 の高

まり

数 ・量 概 念 の高

まり

カテゴリー概念の

芽生え

見 立 て ・ごっ こ

あそび

食事 ・排泄 ・衣

服・清潔等 ADL

の基礎

~ ~

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92

〔C〕

階 コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

Ⅰ 快不快の分化 人の働きかけによ

る快反応 外界への気付き (聴覚 )

外界 への気付 き(皮 膚 感

覚・味覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

光への反応

色への反応

2

反 応 表 出 の芽

生え

大人への注意

人への注意

声への好反応

音への注意

音の変化への気付き

外 界 への興 味 (触 覚 ・味

覚・嗅覚等) 探索 (触覚 )

注視

追視

4

期待反応

やりとりの予測

応 答 性 の あ る

行動

要求の芽生え

人への愛着

やりとりの芽生え

大人への積極性

声の変化への気付き

音の方向性への気付き

音への興味

特定フレーズへの気付き・意味付

物の単純な操作

因果関係の理解の芽生え

探索(視覚)

リーチング

目と手の協応の芽生え

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的

行動

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大 人 の注 意 を

引く

要 求 手 段 の多

様化

指さし要求

やりとりの拡大

共感性の芽生え 名詞等の理解 発語の芽生え

空 間 認 知 の芽

生え

始点と終点の理

手指の活用

保存の概念

比較の概念

模倣

生活場面等の

理解

13

要求の具体化・

明確化

言語を伴う要求

社会性の芽生え

共感性の高まり

言語 指示 ・二 語

文の理解

質問への応答

動詞・形容詞等の

理解

言葉の模倣

名詞等の発語

視 覚 情 報 の活

図形概念の芽生

数 ・量 概 念 の芽

生え

生 活 場 面 での

記憶の活用

見 立 て ・ごっ こ

あ そ び へ の 興

19

24 Ⅶ

自 己 主 張 の芽

生え

言語での要求

他の子供への興

自己意識の芽生

社会性の高まり

理解語彙の増加

言語指示への応

カテゴリー概念の

芽生え

場面 に合 う言

葉の活用

表出語彙の増

二語文等の表

道具の使用

空 間 認 知 の高

まり

数 ・量 概 念 の高

まり

カテゴリー概念の

芽生え

見 立 て ・ごっ こ

あそび

食事 ・排泄 ・衣

服・清潔等 ADL

の基礎

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93

特別活動 学習指導

指導者 ○○ ○○(T1)

○○ ○○(T2)

○○ ○○(T3)

1 日時・場所 平成 28 年 ○月 ○日(○) 3校時 11:00~11:50

高等部○年○組教室

2 授業形態 決定学級

3 学部・学年 高等部 第○学年○組(Ⅲ類型)

4 題材名 生徒会活動について(全校のつどいに向けて)

5 題材設定の理由

○ 生徒観

高等部第○学年は計 10 名である。本学級は男子2名(A・C)と女子1名(B)の計3名であ

る。3名とも本校中学部から進学した生徒である。いずれも肢体不自由と知的障害を併せ有し

ており,座位保持車いすを使用し,日常生活全般にわたって支援を必要としている。また,3名

とも医療的ケアを必要とする生徒である。

Aは肢体不自由並びに知的障害を併せ有する生徒である。てんかん発作があり,寝起き時

に発作が起きることが多い。姿勢については,側彎症もあり床での座位姿勢は難しく補助を必

要とする。医療的ケアの内容は,胃ろうからの経管栄養,痰の吸引,座薬の挿入,薬剤の吸入

である。身体の動きについては,両上下肢共に麻痺があり動作には介助を必要とする。コミュニ

ケーションや他者との関係作りについては,発語はないが表情から本人の感情を読み取ること

ができる。言葉を掛けられると相手の方に視線を向けたり,表情で反応したりと他者に対する興

味を示す様子が見られる。他者(友だちや自分に関わりのある人)との繋がりを好み,自分の周

りで他者がしていることを気に掛けてよく把握している。おかしかった言動(特に失敗したり慌て

て右往左往したりした時)には笑顔を示し,怒ったときには眉間にしわを寄せるなど顔の表情で

喜怒哀楽の感情を表している。

Bは脳性麻痺による肢体不自由並びに知的障害を併せ有する生徒である。姿勢については,

身体全体に緊張があり,右半身の筋力が比較的強い。また,両足が開きやすい。座位の姿勢

では,あぐらをかいて前に手を置くと一人でバランスを少しの間とれる。医療的ケアの内容は薬

剤の吸入,痰の吸引,座薬の挿入である。身体の動きについては,右手は過敏で不随意運動

が起き,左手は拘縮しているため,開きにくい。左腕は麻痺があり,固くなっている。コミュニケー

ションや他者との関係作りについては,快,不快がはっきりしており,自分の思いを泣いたり笑っ

たり,表情豊かに表現する。不快な時は右手を口に入れたり,頭を後ろに反らしたりして表現す

る。楽しい時には,口をピチャピチャ鳴らしたり,口角を上げて笑ったり,右手をよく動かしたりし

て表現している。集中している時は,じっとして動きが止まる。他者と関わることも好きなようで,

自分から関わっていくことはないが,「全校のつどい」などの集まりの中で,他者の話をよく聞い

ている。床で横になっている時に傍で横になっている生徒が寝返りをして身体が触れてきても

嫌な顔をせずにいるということもある。

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94

Cは肢体不自由並びに知的障害を併せ有する生徒である。てんかん発作もある。視力につい

ては,医師に「光覚程度」と言われてはいるが,追視したり近くのものに視線を合わせて見つめ

たりするなどの反応が見られる。姿勢については,背筋が弱いので,座位保持椅子に座って食

事や水分を摂る際など,活動の内容によって角度を細かく調節する必要がある。股関節リリー

ス手術を行っている。床での座位姿勢は難しく補助を必要とする。医療的ケアの内容は,痰の

吸引,座薬の挿入である。身体の動きについては,寝返りで移動したり,玩具で遊んだり,言葉

掛けに声や表情で答えたり,相手の反応を期待して声を出したり,軟らかい物をつかんで投げ

たりできる。コミュニケーションや他者との関係作りについては,快・不快な気持ちを声や表情,

態度で表現する。もっと遊んでほしいという気持ちを声に出したり,相手に笑いかけたりすること

で訴える。食事や水分補給時に,「おいしい」「もっと欲しい」という気持ちを一定の声や表情で

伝える等によって表現している。床にいる時に,気になる人の方に寝返りをして近寄っていこうと

するといった積極的な行動をする時もあり,他者と関わりたいという思いを感じられる。

○ 題材観

特別活動は,年間指導計画の中で生徒会活動にむけた意識付けや準備を学習内容として位

置づけている。基本的には決定学級での学習だが,生徒会活動に向けてのHR委員からの連

絡や行事の振り返り等の際には学年合同の時間も設定している。生徒たちにとって,友だちを

意識でき,学年への帰属意識を実感できる時間として捉えている。

高等部○年 10 名の内,本校中学部から5名が進学し,5名は他校からの進学である。本学級

を含め中学部から進学した生徒はみなⅢ類型に在籍している。幅広い類型に在籍する生徒は,

日常的にはそれぞれの学級または類型の中で或は個別で学習を行っている。その生徒同士

のつながりを深め,更にはコミュニケーションの力を発揮することが期待できる場として,生徒会

活動の役割は大きいと考える。

生徒会活動は,本校生徒の自主的な活動であり主体的な学びの場として生徒指導の一環と

して取り組んでいる。その中で,各担任は生徒指導の3機能「生徒に自己存在間を与えること」

「共感的人間関係を育成すること」「自己決定の場を与え自己の可能性の開発を援助すること」

の実現に向けた取組を行っている。高等部卒業後各々社会に出ていく生徒たちにとって,他

者とのつながりは大変重要である。コミュニケーションによって他者とつながることで他者から生

徒が支えられ,或は生徒が他者を支えていく。そのことが生活をより豊かにしていくと考える。そ

の基礎となる他者への興味関心を持つこと,一番身近な同学年や先輩後輩の友だちと主体

的につながる意欲を持つことを,生徒会活動を通してねらっている。

本次は,生徒会活動の一つであり 12 月に行う「全校のつどい」に向けた準備を題材とする。

「全校のつどい」は生徒会及び児童会執行部が中心となり内容を計画,立案しそして各学年

代表のHR委員会で決定していく。それを学年に伝えて各児童生徒が実施に向けた準備をし

て作り上げている。具体的には今回の「全校のつどい」の内容である『好きな歌総選挙』『プレ

ゼント交換ゲーム』の準備を題材とする。

○ 指導観

指導にあたっては「全校のつどい」に対する生徒のイメージが深まるように指導していく。『好き

な歌総選挙』は自分の好きな曲を投票して投票の多い曲を当日全校で歌うという内容である。

各々の好きな曲を学習の中で発表し実際に曲を聞くことで,発表する生徒にとって,自分の事

を伝えられること,他の生徒にとっては発表する生徒の興味を知ることをねらえ,お互いの思い

を実感しやすくなると考える。曲を流す際にはその曲を好きな理由を他の生徒へ伝えていく。そ

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95

のことで,曲を選んだ生徒への関心を高めたい。『プレゼント交換ゲーム』は各々が作ったプレ

ゼントを持ち寄り全児童生徒で交換していくという内容である。本時の学習では,プレゼントの

制作を行う。どの人に渡るかを考え楽しみながら作ることで,他者への関心を持つことの切っ掛

け作りをねらうことができると考える。制作では,生徒の動作を大切にして,材料の質感を感じら

れるように指導していく。そのことで,制作への意欲を高めたい。出来上がった作品を互いに見

合うことで,プレゼントを制作したことの達成感を高める。3人で交換してみることで,作品を当

日プレゼントすることをイメージして「全校のつどい」参加への意欲を高めたい。

6 題材の目標 ・全校のつどいについて日程や内容を確認し,役割分担をする。

7 指導計画[全6時間]

8 本時の目標

○全体の目標

・他者の選曲をしっかり聴くことで友だちへの関心を深める。

・作品(プレゼント)を制作することで「全校のつどい」へ参加意欲を高める。

○個々の目標

児童・生徒 実態 目標 手立て

・他者の動きや表情を見

たり声を聞いたりした時,

関心のあることに視線を

向ける姿が見られる。

・他者との関わりを好み,

関わりを実感していること

を笑顔で表現する。

・CDから流れる曲を選

んだ友だちに視線を向

ける。

・作品制作時に手に力

を入れたり,材料に視線

を向けたりしてプレゼント

を制作していることを実

感する。

・曲と友だちとが合致しやすいように

聴きながら友だちの名前を言葉掛け

したり,姿勢を変えさせたりして友だち

に視線を向けやすくする。

・自分が作ったものがプレゼントになる

ことが意識してできるよう留意して言

葉掛けをする。手の動きによって表現

したデザインをそのまま生かす。見え

やすい位置に材料などを置き,自発

性を促すようにする。

表現・表出に

関する内容

・他者の言葉や,好きな

音楽を聴き,楽 しさを表

情で表す。

・聞いた曲の素直な感

想を笑顔などの表情で

表現する。

・感想を表現しやすいように緊張を緩

めリラックスした姿勢で聴かせる。

第1次 日程を確認しよう (1時間)

第2次 内容について考えよう(ゲーム) (1時間)

第3次 自分の思いを表現しよう(選曲) (2時間)

第4次 友だちのことを考えよう(プレゼント制作 ) (2時間) 本時 5/6

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96

B

・他者からの声掛けに表

情等で応えることは少な

いが,好きな音楽を聴きリ

ラックスした表情はよく見

られる。

・自分から他者を意識し

て関わろうとすることは見

られないが,傍にいること

は理解している。

・CDから流れる曲を選

んだ友だちに視線を向

けたり,手を伸ばしたりす

る。

・材料を自分から手に取

ったり,視線を向けたりし

て制作 している実感を

持つ

・曲が聴きやすく出来るように姿勢に

留意する。友だちの名前を言葉掛け

したり,友だちに視線を向けやすいよ

うに姿勢を変えたり或は写真を見せた

りする。

・自分が作ったものがプレゼントになる

ことが意識できることに留意しながら

言葉掛けをする。活動しやすいように

姿勢や材料の位置に留意する。意欲

を持ちやすいように言葉掛けで支援

をする。

表現・表出に

関する内容

・快,不快を手や体の動

きで表現する。楽しい時

は口角を上げて笑い,右

手をよく動かす。

・友だちに対して自分か

ら視線を向けたり,笑顔

を見せたりする。

・言葉掛け後は一定程度待ち,視線

を向ける等の行為が見られるかを確

かめる。

C

・他者の動きを感じたり声

や音を聞いたりした時,顔

を向けて存在を確かめる

姿が見られる。

・他者と関わりを持つこと

を望んでいる。視線に入

るものに手を伸ばし掴む

姿が見られる。

・CDから流れる曲を選

んだ友だちに視線を向

けたり,感想を表情で表

したりして友だちを意識

する。

・自分で手に掴んだ材

料の配置決めや貼り付

けを支援者と一緒にす

ることで制作する実感を

持つ。

・曲を聞いているときに,選んだ友だ

ちを意識しやすくするように,名前を

言葉掛けしたり,姿勢を向けさせたり

する。

・自分が作ったものがプレゼントになる

ことが意識できる言葉掛けをするよう

に留意する。意欲を持ちやすいように

言葉掛けで支援をする。活動しやす

いように姿勢や材料の位置に留意す

る。

表現・表出に

関する内容

・快・不快な気持ちを声や

表情,態度で表現する。

言葉掛けに対して,返事

で応える。

・友だちから手を伸ばし

たり近寄ったりすることや

視線を感じ,言葉や手

を動かしての動作で返

事をする。

・視野に入るように留意する。生徒が

反応するまで,他の生徒がCの視野

に留まるようにする。

9 準備物

CDデッキ CD プレゼント作品材料 制作に必要な道具

10 指導過程(別紙)

11 評価の観点

全体の目標

○ 生徒が他の生徒に対して意識を向けることが出来たか。

○ 「全校のつどい」を意識して意欲的に制作活動出来たか。

個別の目標

A ○ 友だちを意識することが出来たか。

学習活動は,児

童・生徒主体の

文体にする。

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97

○ 「全校のつどい」を意識し制作することが出来たか。

○ 感情を素直に表すことが出来たか。

B ○ 友だちを意識することが出来たか。

○ 「全校のつどい」を意識し制作することが出来たか。

○ 言葉掛けに対して動作や表情で応えることができたか。

C ○ 友だちを意識することが出来たか。

○ 「全校のつどい」を意識し制作することが出来たか。

○ 伝える相手を意識して表現出来たか。

指導の目標

○ 学習内容の分量は適切であったか。

○ 実態に応じた支援は適切であったか。

○ 教材・教具は目標達成に対して効果的であったか。

12 年間指導計画

目 標 題 材 名 時間数

○生活経験を広めて社会参加への積極

的な態度を養い,社会性や豊かな人間性

を高める。

○仲間と一緒に活動していくことを通して,

集団の中で協力して経験させる。

生徒会入会式に向けて

生徒総会に向けて

生徒総会について

7月全校のつどいに向けて

生徒集会に向けて

7(1学期)

9月全校のつどいに向けて

12 月全校のつどいに向けて 8(2学期)

生徒会役員選挙に向けて 5(3学期)

合 計 20(年間)

13 教室内配置図

出入り口

A T

B T

C T

C B A

テーブル

ベッド

A

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98

別紙1 10 指導過程

学習活動 指導上の留意点 (□課題 ○支援・配慮 ☆評価基準)

A T1 B T2 C T3 全体

1 始 まりの挨

拶,説明 (5分 )

挨拶の前に,学習姿

勢を整える。

○生徒の目を見てゆ

っくり話しかける。

挨拶の前に,学習姿

勢を整える。

○生徒の目を見てゆ

っくり話しかける。

挨拶の前に,学習姿

勢を整える。

○生徒の名前を呼び

返事を促す。

・学習の始まりを意識

させる

・T1に注意を向けるよ

うに促す。

・本時の活動を伝え

る。

2 友だちを意

識する(15分)

□曲を聴こう

○曲を聴かせながら

友だちの名前を言葉

掛けしたり,姿勢を変

えさせたりする。T1

☆友だちを意識する

ことが出来たか。

○感想を表現しやす

いように緊張を緩めリ

ラックスした姿勢で聴

かせる。T1

☆感情を素直に表す

ことが出来たか。

□曲を聴こう

○曲を聴く時の姿勢

に留意する。

T2

○友だちの名前を言

葉掛けしたり、友だち

の写真を見せたりす

る。T2

☆友だちを意識する

ことが出来たか。

○言葉掛け後は一

定程度待ち,視線を

向ける等の行為が見

られるかを確かめる。

T2

☆言葉掛けに対して

動作や表情で応える

ことができたか。

□曲を聴こう

○名前を言葉掛けし

たり,姿勢を向けさせ

たりする。T3

☆友だちを意識する

ことが出来たか。

○視線に入って言葉

掛けをするように留

意する。生徒が反応

するまで,視線に留

まる。 T3

☆伝える相手を意識

して表現出来たか。

・Aの選んだ曲から順

番に流していく。

・曲が聞きやすいよう

にCDデッキの向きに

留意する。

・生徒に緊張等が見

られる場合は,リラック

スできるように必要に

応 じて床に下 りさせ

る。

3 つどいを意

識する(20分)

□プレゼントを作る。

○プレゼントになるこ

とが意識できることに

留意しながら言葉掛

けをする。T1

☆つどいを意識し制

作することが出来た

か。

□プレゼントを作る。

○プレゼントになるこ

とが意識できることに

留意しながら言葉掛

けをする。T2

☆つどいを意識し制

作することが出来た

か。

□プレゼントを作る。

○プレゼントになるこ

とが意識できる言葉

掛けをする。

T3☆つどいを意識し

て制作することが出

来たか。

・テーブル若しくは車

イス作業机で制作さ

せる。

・生徒が理解しやす

いよう,材料や道具の

配置に留意する。

作品制作時に手に

力を入れたり,材料

に視線を向けたりし

てプレゼントを制作

していることを実感

する。

材料を自分から手

に取ったり,視線を

向けたりして制作し

ている実感を持つ

自分で手に掴んだ

材料の配置決めや

貼り付けを支援者と

一緒にすることで制

作 す る 実 感 を 持

つ。

CDから流れる曲

を選んだ友だちに

視線を向ける。

聞いた曲の素直

な感想を笑顔など

の表情で表現す

る。

CDから流れる曲を

選 んだ友 だちに視

線を向けたり,手を

伸ばしたりする。

友だちに対して自分

から視 線 を向 けた

り,笑顔を見せたり

する。

CDから流れる曲を

選んだ友だちに視

線を向けたり,感想

を表情で表したりし

て友だちを意 識す

る。

友だちから手を伸ば

したり近寄ったりする

ことや視線を感じ,

言葉や手を動かして

の動作で返事をす

る。

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99

4 作品鑑賞

(5分)

□お互いの作品を見

る。

○誰の作品かを言葉

掛けして伝える。

□お互いの作品を見

る。

○誰の作品かを言葉

掛けして伝える。

□お互いの作品を見

る。

○誰の作品かを言葉

掛けして伝える。

一人ずつ作品紹介す

る。

作品を制作した生徒

の傍に置き理解しや

すくする。

5 振り返り (3分)

6 終わりの挨拶

(2分)

指導者と一緒に活動を振り返る。 挨拶の前に,学習姿勢を整える。 ○生徒の目を見てゆっくり話しかける。

指導者と一緒に活動を振り返る。 挨拶の前に,学習姿勢を整える。 ○生徒の目を見てゆっくり話しかける。

指導者から質問に挙手して応える。 挨拶の前に,学習姿勢を整える。 ○生徒の名前を呼び返事を促す。

・活動をしっかりと評価する。 ・学習の終わりを意識させる。 ・T1 に注意 を向けるように促す。

別紙2 生徒の実態の参考資料(本校アセスメントチェックリストによるプロフィール表)

〔A〕

月齢

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

Ⅰ 快不快の分化 人の働きかけによ

る快反応 外界への気付き (聴覚 )

外界への気 付 き(皮 膚 感

覚・味覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

光への反応

色への反応

2

反 応 表 出 の芽

生え

大人への注意

人への注意

声への好反応

音への注意

音の変化への気付き

外 界 への興 味 (触 覚 ・ 味

覚・嗅覚等) 探索 (触覚 )

注視

追視

4

期待反応

やりとりの予測

応 答 性 の あ る

行動

要求の芽生え

人への愛着

やりとりの芽生え

大人への積極性

声の変化への気付き

音の方向性への気付き

音への興味

特定フレーズへの気付き・意味付

物の単純な操作

因果関係の理解の芽生え

探索(視覚)

リーチング

目と手の協応の芽生え

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的

行動

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大 人 の注 意 を

引く

要 求 手 段 の多

様化

指さし要求

やりとりの拡大

共感性の芽生え 名詞等の理解 発語の芽生え

空 間 認 知 の芽

生え

始 点 と 終 点 の

理解

手指の活用

保存の概念

比較の概念

模倣

生活場面等の

理解

13

要求の具体化・

明確化

言語を伴う要求

社会性の芽生え

共感性の高まり

言語指示 ・二 語

文の理解

質問への応答

動詞・形容詞等の

理解

言葉の模倣

名詞等の発語

視 覚 情 報 の活

図形概念の芽生

数 ・量 概 念 の芽

生え

生 活 場 面 での

記憶の活用

見 立 て ・ごっこ

遊びへの興味

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100

〔B〕

〔C〕

月齢

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

Ⅰ 快不快の分化 人の働きかけによ

る快反応 外界への気付き (聴覚 )

外界への気 付 き(皮 膚 感

覚・味覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

光への反応

色への反応

2

反 応 表 出 の芽

生え

大人への注意

人への注意

声への好反応

音への注意

音の変化への気付き

外 界 への興 味 (触 覚 ・ 味

覚・嗅覚等)

探索 (触覚 )

注視

追視

4

期待反応

やりとりの予測

応 答 性 の あ る

行動

要求の芽生え

人への愛着

やりとりの芽生え

大人への積極性

声の変化への気付き

音の方向性への気付き

音への興味

特定フレーズへの気付き・意味付

物の単純な操作

因果関係の理解の芽生え

探索(視覚)

リーチング

目と手の協応の芽生え

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的

行動

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大 人 の注 意 を

引く

要 求 手 段 の多

様化

指さし要求

やりとりの拡大

共感性の芽生え 名詞等の理解 発語の芽生え

空 間 認 知 の芽

生え

始 点 と 終 点 の

理解

手指の活用

保存の概念

比較の概念

模倣

生活場面等の

理解

13

要求の具体化・

明確化

言語を伴う要求

社会性の芽生え

共感性の高まり

言語指示 ・二 語

文の理解

質問への応答

動詞・形容詞等の

理解

言葉の模倣

名詞等の発語

視 覚 情 報 の活

図形概念の芽生

数 ・量 概 念 の芽

生え

生 活 場 面 での

記憶の活用

見 立 て ・ごっこ

遊びへの興味

月齢

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

Ⅰ 快不快の分化 人の働きかけによ

る快反応 外界への気付き (聴覚 )

外界への気 付 き(皮 膚 感

覚・味覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

光への反応

色への反応

2

反 応 表 出 の芽

生え

大人への注意

人への注意

声への好反応

音への注意

音の変化への気付き

外 界 への興 味 (触 覚 ・ 味

覚・嗅覚等) 探索 (触覚 )

注視

追視

4

期待反応

やりとりの予測

応 答 性 の あ る

行動

要求の芽生え

人への愛着

やりとりの芽生え

大人への積極性

声の変化への気付き

音の方向性への気付き

音への興味

特定フレーズへの気付き・意味付

物の単純な操作

因果関係の理解の芽生え

探索(視覚)

リーチング

目と手の協応の芽生え

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的

行動

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大 人 の注 意 を

引く

要 求 手 段 の多

様化

指さし要求

やりとりの拡大

共感性の芽生え 名詞等の理解 発語の芽生え

空 間 認 知 の芽

生え

始 点 と 終 点 の

理解

手指の活用

保存の概念

比較の概念

模倣

生活場面等の

理解

13

要求の具体化・

明確化

言語を伴う要求

社会性の芽生え

共感性の高まり

言語指示 ・二 語

文の理解

質問への応答

動詞・形容詞等の

理解

言葉の模倣

名詞等の発語

視 覚 情 報 の活

図形概念の芽生

数 ・量 概 念 の芽

生え

生 活 場 面 での

記憶の活用

見 立 て ・ごっこ

遊びへの興味

~ ~

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101

生活活動 学習指導案

指導者 ○○ ○○(T1)

○○ ○○(T2)

○○ ○○(T3)

1 日時・場所 平成 28 年 ○月○日(金) 2校時 10:05~10:55

高等部 家庭科室

2 授業形態 決定学級

3 学部・学年 高等部 第○学年○組 (Ⅲ類型)

4 単元名 表現活動をしよう③

5 単元設定の理由

○ 生徒観

本学級は,男子生徒1名(A),女子生徒2名(B,C)の計3名が在籍している。3名の実態は

異なるが,いずれの生徒も肢体不自由と知的障害を併せ有しており,日常生活全般にわたっ

て支援が必要である。学級の雰囲気は明るく穏やかで,毎日の朝の会では互いを意識し,笑

顔や発声が見られる。

生徒Aは,末梢神経変成疾患と診断されており,全身の筋力低下と筋委縮の状態にある。

体力は低く,疲れやすいが,緊張等の精神的な疲労による場合も多い。学校での姿勢は,車

椅子における座位で過ごすことが多いが,円背のため,骨盤が後ろへ傾斜する滑り座りとなっ

たり,体幹の筋力の弱さから,頭部が前下方に垂れ下がったりする姿勢になりがちである。下肢

を動かすことは難しいが,上肢はゆっくりと動かすことができる。重い物は持てないが,500g 程

度の物は自力で持ち上げられる。上肢の柔軟性と可動域は十分にあり,両手を肩より上に挙

げる,補助箸を使って食事をとる,電動車椅子を操作して移動する等ができる。特に指先は器

用で,ゆっくりした動作ではあるが, iPad でゲームをしたり画面上の選択肢をタッチして挨拶等

のコミュニケーションをとったり就業体験や授業の中で細かな軽作業に取り組んだりしている。

コミュニケーション手段は iPad を使用して挨拶を行ったり,視線を動かして提示された選択

肢から応答を選んだりすることが多い。2年次から,より幅広い手段を活用できるよう,表情や頷

き,首振り,指さし等の方法にも取り組んでいる。担任には多くの手段を活用しているが,自信

がなかったり他の教師から求められたりした場合はなかなか返事ができない。認知面では,学

校生活に関する情報を担任からの話,時間割,写真等を活用して理解し,見通しをもって過ご

すことができている。長期記憶や語彙力が未熟で前学期の学校行事や学習で時々使う場所

や物について尋ねても覚えていなかったり「わからない」と答えたりすることが多い。一方で,毎

日の家庭でのおやつは,菓子の種類や商品名を会話の中で言葉のみで提示された選択肢か

ら選んで伝えられる等,興味が高いものに対する語彙力はある。

緘黙な傾向はあるが,感情は豊かで学習への興味・関心が高く,授業者や対象物を注視し,

集中して学習に取り組んでいる。中学部時から平仮名五十音の学習をしており,1字ずつゆっ

くり読むことができるが,平仮名で書かれた文を読んで理解することは難しい。場面緘黙のため

か,環境の変化や周囲の視線があると,本来の力を発揮できないことがある。学校での発語は

無いが,担任や親しみをもっている教師とやり取りする際は,笑い声が出ることがある。

生徒Bは,脳性麻痺(アテトーゼと痙直の混合型)による体幹機能障害があり,重度の肢体

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102

不自由,知的障害,視覚障害を併せ有している。熱がこもりやすい等,体温調節が難しい面は

あるが,健康状態は比較的良好であり,休まず登校している。体幹の状態としては,左凸の側

彎,腰椎の前彎があり,学校では,床上でクッションを使用した側臥位や腹臥位の姿勢を多く

とっている。摂食時や学習時・移動時においては,未定頸で頭部および上半身の保持が難し

いため,車椅子上でチルトを深く倒し,臥位に近い座位姿勢をとっている。また,四肢に可動域

制限があり,自力での姿勢変換は困難である。さらに,手指が拘縮し変形しているため,物の

把持も難しい。しかし,側臥位の状態でいるとき,スイッチや手触りを感じられる毛糸等をそばに

置いて音や手触りを感じさせると,不安定ではあるが頭や手を動かして探そうとする姿も見られ

る。筋緊張が強くない場合は,教師の支援を伴いながら右手でスイッチを押すことができ,笑顔

や喜んで発声する様子が見られる。しかしながら,スイッチを押したこととそれによる作用の因果

関係は理解できていない。外部から音声や触れる等の強い刺激を感じたり,感情が高ぶったり,

同じ姿勢が 30 分以上続いたりすると,筋緊張が強くなり後弓反張が起きやすい。

視覚は暗室でのライトや強い太陽の光に反応がある程度だが,聴覚は十分活用しており,

静かな環境に置かれた場合,人が近づく気配,物音等小さな物音にも注意を寄せて頭を動か

す等反応している。触覚に過敏の傾向はなく,どちらかというと鈍麻傾向ではないかと思われる。

素材に触れたことに気付くことはできているが,明らかに差異のある2つの素材を交互に触れさ

せても反応に違いがないことが多い。味覚については,刻み食の給食を食べる際,味の濃いお

肉や甘いデザートに笑顔を見せ,嚥下のスピードも上がるが,酸っぱいものを食べた時には顔

をしかめる等,表情や意欲に違いがあり,嗜好が見られる。

コミュニケーション面においては,人に対する愛着が強く,慣れ親しんだ教師の言葉掛けに

笑顔や発声で反応し,積極的に関わろうとする態度を見せる。発声や笑い声はあるが,発語は

ない。語彙は,日常的によく使う言葉(お茶,ジュース,お母さん),好きな活動を表す言葉(歌,

トランポリン,絵本)等の意味理解をし始めた段階である。文単位での長い会話を理解すること

は難しい。しかし,場の雰囲気をよく感じ取っており,毎日朝の会で学級の友だちが集まってき

たり,はじめの挨拶を聞いたりすると期待感を表す発声が見られたり,筋緊張が強くなり身体に

痛みを感じて涙が出たとき,「抱っこする?」と声をかけると途端に泣き止んだりする等,感情表

現が豊かである。

生徒Cは,脳炎後遺症による移動機能障害,両上肢機能全廃,体幹機能障害があり,重

度の肢体不自由と知的障害を併せ有している。体幹の状態としては,右凸の側彎,腰椎の前

彎があり,学校では,車椅子に乗る際はコルセットを装着し,チルトを倒した座位姿勢で過ごす

ことが多い。ただし,長時間の同一姿勢では筋緊張が強くなり疲労感が増すため,適宜,側臥

位や腹臥位等の姿勢をとっている。車椅子での座位や臥位姿勢では興味のある方向に顔を

向けることができる。また,側臥位で興味のある人や物を追視し,頭を仰け反らせることがある。

四肢は可動域制限があり,下肢の随意運動は難しいが,楽しい活動等で感情が高ぶると全身

に力が入るとともにペダルを踏むような激しい動きが両足に見られることがある。上肢は腕,手

首ともに拘縮して握り込んだような恰好である。手指も拘縮,変形しており,手先に力が入らな

いことから,物を握ったり振ったりすることはできない。本校卒業後の生活で,少しでも手を動か

して楽器を鳴らす等,主体的な動きを身に付かせたいとの思いから,スイッチでおもちゃを動か

したり,スイッチ状のタンバリンを鳴らしたりする学習に取り組んできた。現段階では,自分の手

の動きとの因果関係が分かっておらず,音やおもちゃの動きに関心を寄せている程度である。

また,手元と対象物を注視し続けられない,手に意識を向けることはできても随意的な動きが引

き出せず,動いたとしても上肢を引き込みがちである等の課題がある。

視覚に関しては,認知力が高く,iPad やテレビ画面の動画・写真へ興味を示し,人物の顔を

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103

注視することができる。また,廊下等離れた場所から見知った人が手を振るとそちらに気付き,

笑顔を向けたりする。聴覚に問題はなく,大きな物音に驚いて身体をこわばらせたり音声のする

方に顔を向けて興味を示したりする。触覚では,生徒B同様過敏の傾向はなく,どちらかという

と鈍麻傾向だと思われる。周囲に人の動きや物音がある環境では,触覚刺激を受けても周りの

視覚・聴覚刺激の方へ関心がいき,よそ見してしまいがちである。静かな環境で,手や顔にい

ろいろな素材を触れさせると,モップやタオルのようなふわふわした素材では手元を注視したり,

舌を出したりして素材に意識を集中する姿が見られる。味覚に関しては,冷たい物が苦手で,

アイスや冷たい飲み物に顔をしかめて不快感を表出する。食べ物の好き嫌いはあまりないが,

味付けの濃い肉料理を好み,よく口が開き,嚥下も早い。特に甘いデザートが好きで,舌を出

して注視し,食べたいという意欲を示す。食形態はペースト食である。

コミュニケーション面では,1年次は声をかけられると誰に対しても笑顔を返すといった様子だ

ったが,2年次になると,朝の登校後,側臥位になりリラックスした状態で学級の友だちや教師と

顔を合わせると自分から「あー」と発声で関わりをもとうとする姿が時々見られるようになってきた。

発語はなく,仰臥位や座位での発声は難しい。また,呼名や健康観察等の返事が求められる

場面では,自分が問われていることに気付き始めた段階である。意識して声を出そうとした時は,

かすれ声が出たり,あまり声は出ないが口を開いたりする。言葉の理解については,日常的によ

く使う言葉(お茶,ジュース,給食等)に反応が見られるが,理解できる語彙は非常に少ない。

人への興味・関心が高く,言葉掛けに期待感を示して笑顔で応えるが,選択肢の両方に笑顔

を返す等,言葉の理解は難しい。楽しい雰囲気や人の笑い声,繰り返しの音やオノマトペ(擬

音語・擬態語)を好み,笑顔や笑い声を表出する。また,聞き慣れた歌等の好きな活動では,

笑顔になったり,側臥位で教師の歌声を聞くと,時折合わせるように「あー」と声を出したりす

る。

なお,生徒実態の参考資料として,生徒 A は福岡大学 徳永豊教授による「学習到達度チェ

ックリスト 2014」からの抜粋,生徒B・Cは本校アセスメントチェックリスト(ver.3.1)によるプロフィ

ール表を別紙に記載する。

〇単元観

「生活活動」は,自立活動を主とした教育課程類型(Ⅲ類型)に設定した「自立活動」をベー

スとした本校独自の「各教科等を合わせた指導」である。重度・重複障害を有し,多様な児童

生徒実態に応じた題材を扱い,幅広い指導の取組を行うことを目的として,次の5つの観点に

立って指導内容を選定する。

(1)自立活動の6区分の内容を基本として,児童生徒の実態に合わせて指導できるもの

(2)実際の生活から発展し,児童生徒の興味・関心を高める内容で構成されるもの

(3)自立活動を主とした教育課程類型(Ⅲ類型)の児童生徒の多くが課題としている「コミュ

ニケーション」の基礎的な力を培うことができるもの

(4)集団に参加するための決まりを経験したり,認識できたりするもの

(5)家庭や学校,身近な環境や社会を認識し,自分との関係に気付くことができるもの

本単元は,「調理活動」と「音楽活動・創作活動」で構成されており,「音楽活動・創作活動」

では読み聞かせや音楽活動を通して,季節や身の回りの物,事象に興味・関心をもたせ,教

師と一緒に歌や楽器演奏,作品づくりに取り組む中で表現活動を行う。

本題材は,「調理活動」を扱う。生徒実態から,生徒Aと生徒B・Cの間には身体面,認知面

ともに大きな実態差があり,限られた時間内に調理を行うことは難しい。したがって,調理そのも

のは行わず,「調理に関わる活動・動作」として,関連する活動や動作を取り上げ,自立活動を

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104

ベースとした個々の目標や活動を明確に設定することで,5つの観点の中でも特に(1),(2),

(3)に焦点を当てて活動に取り組むことができると考える。また,「生活活動」は自立活動と国

語,社会,音楽,美術,家庭,職業,道徳を合わせた指導であり,本題材では,自立活動をベ

ースに家庭,国語の内容に重点を置いて指導する。さらに,生徒実態が異なることから,自立

活動と各教科の目標値を個々の実態に合わせて変えることとする。

「食」は生徒3人が共通して高い興味・関心を寄せている分野であり,実際の生活にも欠か

せないものである。本題材で簡単な調理を扱うにあたっては,生徒の主体的な気持ちの表現・

表出や意思決定能力を育むことをねらいとし,調理に関わる活動・動作を体験する食べ物を3

つの身近な食べ物から選択させたい。具体的には,「ハンバーグ」「プリン」「野菜サラダ」の名

前を単語カードや写真,実物で学習したり,実際の食べ物の匂いや味から好きなものを選択し

たりする活動を行った上で,生徒自身に好きな食べ物を選択,決定させたい。これらの活動を

行うことで,生徒Aには国語の読みの力を身に付けたり,友だちの食形態や好みに気付き,自

分だけの意見ではなく他者の思いを汲み取って意思決定したりするといった「コミュニケーショ

ン」の基礎的な力の育成をねらうことができる。生徒B・Cは本校アセスメントチェックリストによる

プロフィール表に示すとおり,認知面の聴覚・言語において生徒Bは「言葉の理解」,生徒Cは

「特定フレーズへの気づき・意味付け」を課題としている。調理に関わる活動・動作を行う前に,

繰り返し実際の食べ物の匂いや味とともに名前を聞かせる学習を行うことで,「食べ物の名前

の意味付け」をねらう。本時は,「調理活動」の最後の時間にあたる。自分たち選んだ食べ物を

再確認し,活動に入る。「やってみたい」「食べたい」といった期待感,意欲を表情や発声,身

体の動き等で表出することをねらいとして行っていく。また,生徒Aには配膳を行わせ,生徒A

の配膳の様子を生徒B・Cには電動車椅子の音や動きで気づかせるとともに,近くに寄った時,

ボディタッチや発声,表情等を通して互いにコミュニケーションを図らせる。このことによって,自

立活動の「人間関係の形成」において,3者ともそれぞれが目標とする行動や反応をねらうこと

ができる。

○ 指導観

指導にあたっては,生徒の経験不足,語彙の未熟さを踏まえ,身近な食品を取り上げて学習

への意欲を高める。その際,家庭や給食,放課後等デイサービス等日常生活の中で口にした

ことがあり,特に好きだろうと思われる「ハンバーグ」「プリン」,反対にあまり好きではないと思わ

れる「野菜サラダ」を提示し,好き嫌いを表出しやすく,本題材の学習が強く印象づけられるよう

に工夫する。生徒Aについては,「パン」「ごはん」等の給食の主食を読んで選択し,他の2人に

伝えられる程度の読みの力があるため,3つの食品に限定せず,より多くの身近な食品の単語

カードと写真のマッチングを行い,平仮名で書かれた食品の名前を読むこともねらいとして個別

の指導を行う。生徒B・Cは(特に生徒Bは視覚障害を有するため)写真から食品を認知したり

選択したりすることが難しいため,3つの食品の実物を提示し,匂いや味といった感覚刺激を与

え,フィードバックする学習を繰り返すことで好き嫌いを表出したり言葉と結び付けたりすること

ができるようにしていく。

本題材の学習は,毎時間家庭科室で行う,授業のはじめに決まった音楽を流す,活動に入

る時点で調理の匂いや温かさを感じられるような事前準備をしておく,といった手立てを行い,

学習内容に見通しや期待感がもてるようにしたい。

また,活動では生徒に課題を明確に提示するとともに,実態に応じた支援や工夫を行い,主

体的に取り組むことができるような学習環境を整える。そして,生徒の課題への取組や他者との

関わりを受け止め,肯定的に評価することで,安心して自己表現ができる雰囲気を作り,達成

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105

感やコミュニケーションへの意欲がもてるようにしたい。

6 単元の目標

(1) 表現活動を通して,様々な素材に触れ,簡単な調理を行うことができる。

(2) 教科書等の読み聞かせや,季節や日常の出来事に関心をもち,教師と一緒に歌や楽器

を奏でたり,作品を描いたり,作ったりして表現することができる。

7 指導計画[全 10 時間] 本時 4/10

第1次 3人で調理に関わる活動・動作を体験しよう(4時間) 本時は4/4

振り返り・まとめ(1時間)

第2次 音楽活動・創作活動(4時間)

振り返り・まとめ(1時間)

8 本時の目標

○全体の目標

・食べ物の匂いや味を感じたり,教師や友だちと関わりをもったりする活動を通して自分の気

持ちを表現・表出することができる。

・調理に関わる活動・動作に主体的に取り組もうとし,身体を動かすことができる。

○個々の目標

生徒 実態 目標 手立て

・1人で簡単な調理に取り組んだ

経験はない。給食の配膳の経験

はあるが,継続して取り組んでは

いない。

・日常生活で繰り返し聞く話の内

容のあらましが分かる。繰り返し目

にする平仮名で書かれた簡単な

言葉を読むことができる。

・1人で難しい時に教師に自ら

支援を頼みながら,卵を割った

り材料を混ぜたりすることができ

る。

・本時で作る食品名を読み,実

物と結び付けることができる。

・活動に取り組みやすい姿勢

に留意し,机の高さ,器具や食

器の重さ・配置等の環境整備

を行う。

・食品名として学習する語句の

精選を行い,前時までに繰り

返し学習を行う。

表現・

表出に

関する

内容

・学級の教師や友だちに対し,視

線やボディタッチ, iPad を用いて

挨拶・応答等のコミュニケーション

を図っている。場面緘黙があり,

人に注目されるのが苦手である。

・学級の友だちのそばまで電動

車椅子で移動し,ボディタッチ

や iPad 等相手に伝わる手段を

用いて関わりをもつことができ

る。

・生徒Aが自分の仕事に責任

感と自信をもてるような言葉掛

けを行う。

B

・手指に拘縮があり,物の把持や

簡単な作業を行うことは難しい。

・給食の介助時,次に食べたい物

を尋ねると明確に応えられることも

あるが,言葉掛けだけでは応答が

難しいこともある。

・調理に関わる活動・動作を通

して,教師の支援を伴いなが

ら,手を動かすことができる。

・食品に関する簡単な話し掛け

が分かり,3つの食べ物から好き

な物を選択できる。

・生徒が意欲をもてるような言葉掛

けと姿勢への配慮を行い,繰り返

し一緒に活動に取り組む中で手

の動きを引き出す。

・言葉掛けとともに実物を提示

し,匂いからも好みを選べるよう

にする。

表現・

表出に

関する

内容

・触覚が鈍麻傾向にあり,差異の

ある素材に対して反応の違いが

見られないことが多い。声を出そう

とする意識が見られるが,身体の

緊張や姿勢によっては声が出な

い。

・教師や友だちを意識した表情の

変化や発声が見られる。

・感覚刺激や教師や友だちの

働きかけに対して,自分の気持

ちを表情・発声で表したり,身

体を動かしたりする。

・触覚や匂い,友だちの働きか

け等の刺激を感じ取らせる際

は,その感覚刺激をしっかり受

容し,反応を表出することがで

きるように静かな環境づくりをす

る。

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106

9 準備物

食材,食品,調理器具,食器,写真,単語カード,タブレット端末,パソコン,テレビ,CD

10 指導過程

生徒 実態 目標 手立て

・手指に拘縮があり,物の把持や

簡単な作業を行うことはできない。

促されると手元を注視できるが,

集中が続かない。

・給食の介助時,次に食べたい物

を尋ねると明確に応えられることも

あるが,言葉掛けだけでは応答が

難しいことが多い。

・調理に関わる活動・動作を通

して,教師の支援を伴いなが

ら,食材や手元を注視すること

ができる。

・食品に関する簡単な話し掛け

が分かり,3つの食べ物から好き

な物を選択できる。

・生徒が意欲をもてるような言

葉掛けと姿勢への配慮を行うと

ともに,食材や器具を目の前で

見せたり,指さしで手元に注意

を向けさせたりする。

・言葉掛けとともに実物を提示

し,見た目や匂いからも好みを

選べるようにする。

表現・

表出に

関する

内容

・触覚が鈍麻傾向にあり,差異の

ある素材に対して反応の違いが

見られないことが多い。声を出そう

とする意識が見られるが,身体の

緊張や姿勢によっては声が出な

い。

・教師や友だちを意識し,追視し

たり言葉掛けに対する笑顔が見ら

れたりする。

・感覚刺激や教師や友だちの

働きかけに対して,自分の気持

ちを表情・視線で表したり,身

体を動かしたりする。

・触覚や匂い,友だちの働きか

け等の刺激を感じ取らせる際

は,その感覚刺激をしっかり受

容し,反応を表出することがで

きるように静かな環境づくりや

指さし等で集中を促す。

学習活動 指導上の留意点 (□課題 ○支援・配慮 ☆評価基準)

A (T2) B (T3) C (T1) 全体

1 始まりの挨拶をす

る。音楽を聴く。

本時の目標を確

認する。

(5分)

○学習活動に取り組みや

すい姿勢を整える。

○決まった音楽を聞かせ

て,見通しをもたせる。

2 前時の学習内容

を復習する。

□3人で何の調理を

体験するか確認

する。

□前時の授業のよう

すをビデオで振り返

り,再確認する。

(生徒Bは必要であ

れば畳に移動する)

(10 分)

○単語カードのみで

の選択が難しい場合

は,写真と単語カー

ドのマッチングを通し

て復習し,見当をつ

けさせる。

☆複数の単語カード

から選択することがで

きたか。

☆写真カードを用

いて発表すること

ができたか。

○1度目は言葉掛け

だけで選択させ,難

しい場合は,2度目

は実物 の匂 いと言

葉で選択させる。

☆3つの選択肢から

表情 ,発声で選択

することができたか。

〇実物を提示する。

☆表情等で応答す

ることができたか。

○1度目は言葉掛け

だけで選択させ,難

しい場合は,2度目

は実物を見て選択さ

せる。

☆3つの選択肢から

表情 ,視線で選択

することができたか。

〇実物を提示する。

☆表情等で応答す

ることができたか。

〇生徒 A が単語カード

を読むことに集中し,且

つ生徒 B・C への言葉

掛けに気をとられないよ

う,生徒 A は2人から離

れて行わせる。

○車椅子上での座位

姿勢をとるが,筋緊張

等で活動がしづらいよう

であれば,側臥位や腹

臥位等へ姿勢変換を

行う。

〇ビデオの映像,音声

から振り返りを行い,生

徒 A の発表に自信をも

たせるとともに,写真を

用いて生徒 B・C と関わ

りをもたせる。

iPad を用いて挨

拶をする。

教師を注視して話

を聞く。

教師の話に対して

表 情 や発 声 で反

応する。

食べたい物を言葉

と匂いから選択す

る。

食 べ た い物 を 言 葉

と 写 真 カー ド か ら

選択する。

今 日 調 理 の 体 験

を す る 食 べ 物 を

単 語 カ ー ド か ら

選択する。

前 時 に 3人 で 決

め た 食 べ物 を 発

表する。

ビデオや生徒 A の

発表,教師の話を聞

き,表情等で応答す

る。

ビデオや生徒 A の

発表,教師の話を聞

き,表情等で応答す

る。

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107

学習活動 指導上の留意点 (□課題 ○支援・配慮 ☆評価基準)

A (T2) B (T3) C (T1) 全体

3 調理に関わる活動・動作を行う。役割分担と取り組む内容の説明をする。

□担当の教師と協力して個々に活動をする。

(生徒 B は適宜移動

する) (15 分)

〇活動に取り組みや

すい姿勢に留意し,

器具や食材の配置

等の支援を行う。生

徒 A の要求を待って

手助けする。

☆難しい時に教師に

ボディタッチや指さし

等を用いて支援を頼

みながら取 り組めた

か。

○生徒に意欲をもたせ

る言葉掛けを行い,繰

り返し一緒に活動に取

り組む中で手の動きを

引き出す。

☆手の動きが見られた

か。感覚刺激に対して

表情が変化したか。

○生徒に意欲をもたせ

る言葉掛けを行うととも

に,食材や食器を目の

前で見せたり,指 さし

で注意を促したりする。

☆提示された物と自分

の手元を注視すること

ができたか。感覚刺激

に対して表情が変化し

たか。

○実 演 と 写 真 を通 し

て,仕事内容を端的に

伝える。

○活動を2~3つに絞

り,食品は事前に準備

しておく。

〇個々に担当する教師

が「〇〇するよ」と言葉

掛けを行い,自分がす

ること,動きに対して意

識付けをする。

○必要に応じてストレッ

チや姿勢変換等を行っ

て筋緊張をとり,手が動

かしやすくなるよう考慮

する。

4 配膳を行う。

(10 分)

〇生徒 B・C に食事

を持ってきたことが伝

わるようにボディタッ

チや iPad を用いての

言葉掛けを行 うよう

指導する。

☆生徒 B・C の傍ま

で電動車椅子で移

動できたか。生徒 B・

C にボディタッチや

iPad を用いて配膳を

伝えられたか。

〇生徒 A の移動中は

静かに待たせ,電動車

椅子の音に注意を促

す。平易 な言葉掛け

で,生徒 A が食事を運

んできたことを伝え,食

品の匂いを感じ取らせ

る。

☆友だちのボディタッ

チや食品の匂いを感じ

取り自分の気持ちを表

情や発声で表せたか。

○生徒Aの移動中は,

電動車椅子の動きに

注意を促す。

生徒Aのボディタッチ

に対し,視線や注意を

向けられていない場合

は,言葉掛けや指さし

で注意を促す。

☆友だちの働きかけや

食品を注視し,自分の

気持ちを表情や発声

で表せたか。

○予め用意しておいた

味見用の食材を配膳さ

せる。

○生徒Aが配膳を行い

やすく,生徒B・Cと関わ

りがもちやすいように動

線に気をつける。

○静かな環境づくりを

行い,生徒Aの動きに

生徒B・Cが注意を向け

られるようにする。

5 まとめ

味見をする。

感想を教師と一

緒に発表する。

終わりの挨拶 を

する。

(10 分)

○複数の選択肢 を

iPad と言葉掛けで提

示する。

☆ iPad から自分の気

持ちを選択し,発表

することができたか。

○生徒の表出を待つと

ともに,気持ちを汲み

取 り ,端 的 に代 弁 す

る。

☆味見時また教師の

言葉掛けに対 して表

情が変化したか。

○生徒の表出を待つと

ともに,気持ちを汲み

取 り ,端 的 に代 弁 す

る。

☆味見時また教師の

言葉掛けに対 して表

情が変化したか。

○予め用意しておいた味

見用の食材(生徒 B,C は

ペースト食)を味見する。

○発表の場面では,他の

生徒を注視し静かに聞く

等,基本的なマナーに留

意させる。

○達成感や自己有用感

がもてるよう肯定的な評価

を行う。

教 師 に 自 ら 支 援

を頼みながら ,卵

を割 った り材 料 を

混ぜたりする。

食 材 に 触 れ る 活

動,ミルサーのス

イ ッ チ を 押 す 活

動,温度差のある

2つの食器に触れ

る活動を通して,

教師の支援を伴い

ながら,手を動か

す。

食 材 に 触 れ る 活

動,ミルサーのス

イ ッ チ を 押 す 活

動,温度差のある

2つの食器に触れ

る活動を通して,

教師の支援を伴い

ながら,物や手元

を注視する。

教 師 の 支 援 を 受

け な が ら 配 膳 に

取り組み,友だち

と関わりをもつ。

友だちの働きかけ

や食品の匂いを受

けて,自分の気持

ちを表情や発声で

表す。

友だちの動きに関

心をもって追視し

働きかけや食品を

見て,自分の気持

ちを表情で表す。

「美味しい」「もっ

と食べたい」「嫌い」

などの気持ちを表

情等で伝える。

「美味しい」「もっ

と食べたい」「嫌い」

などの気持ちを表

情等で伝える。

教 師 と 一 緒 に 味 の

感 想 と が ん ば っ た

ことを iPad を用い

て発表する。

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108

11 評価の観点

全体

○食べ物の匂いや味を感じたり,教師や友だちと関わりをもったりする活動を通して自分の

気持ちを表現・表出することができたか。

○調理に関わる活動・動作に主体的に取り組もうとし,身体を動かすことができたか。

○教師や友だちと個々に合った手段を用いて,やり取りをすることができたか。

個別の目標

A ○1人で難しい時に教師に自ら支援を頼みながら卵を割ったり材料を混ぜたりすることがで きたか。

○本時で作る食品名を読み,実物と結び付けることができたか。

○学級の友だちのそばまで電動車椅子で移動し,ボディタッチや iPad 等相手に伝わる手

段を用いて関わりをもつことができたか。

B ○調理に関わる活動・動作を通して,教師の支援を伴いながら,手を動かせたか。

○食品に関する簡単な話し掛けが分かり,3つの食べ物から好きな物を選択できたか。

○感覚刺激や教師や友だちの働きかけに対して,自分の気持ちを表情・発声で表したり,

身体を動かしたりできたか。

C ○調理に関わる活動・動作を通して,教師の支援を伴いながら,食材や手元を注視できた

か。

○食品に関する簡単な話し掛けが分かり,3つの食べ物から好きな物を選択できたか。

○感覚刺激や教師や友だちの働きかけに対して,自分の気持ちを表情・視線で表したり,

身体を動かしたりできたか。

指導の目標

○学習内容の分量は適切であったか。

○実態に応じた支援は適切であったか。

○教材・教具は目標達成に対して効果的であったか。

12 年間指導計画

(添付資料の通り)

13 教室内配置図

作業台

A

長机

ホワイトボー

B C T

T

作業台

出入り口

畳 T

3 B

T

1 C

出入り口

説明時

T

コンロ

コンロ

流し

流し

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109

別紙1 生徒実態の参考資料

学習到達度チェックリスト 2014 及び本校アセスメントチェックリストから実態把握を示す。網掛

けしている部分は現段階での課題である。

(生徒A)

区分 段階・スコア 主な目標

聞くこと 60 「なぜ」「どのように」といった質問に答える。

話すこと 36 短い挨拶や会話を自分から始める。( iPad 等代替手段を用いて)

読むこと 72 書かれている事柄の順序や場面の様子等に気付いたり,想像を

広げたりして本や文章を読んでいる。

書くこと 60 ひらがなを使って,自分の名前を書く。

数と計算 36 簡単な数を「どちらが多い」で選択する。

量と測定 60 食事の時間,就寝時間等が分かる。

図形 60 形を簡単なモデル,絵,パターンを使って表す。

※段階・スコアの数値は,月齢を表す。

(生徒B)

月齢

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

快不快の表出 人の働きかけによ

る快反応

外界への気付き (聴覚 ) 外界への気付き(皮膚

感覚・味覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

2 Ⅱ

反応表出 大人への注意 音への注意 感 触 の 変 化 へ の 気 付

注視

大人への注意 声への好反応 音の変化への気付き 手への気付き 追視

4 Ⅲ

期待反応 特定の支援者への

気付き

大人への積極性

声の変化への気付き 物の単純な操作 探索(視覚)

声のやりとり

応答性のある行動

音の方向性への気付き

特定フレーズへの意味付け

因果関係の理解

リーチング

リーチング

要求

7 Ⅳ

選択 自分への気付き 音等への記憶の蓄積 複雑な因果関係の理解 物の永続性

指さし理解 他者意図の理解 言葉の理解の芽生え 探索的行動 視覚的変化への興味

操作性の高まり 探索的行動

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大人の注意を引く やりとりの拡大 名詞等の理解 言葉の模倣 空間認知の芽生え 保存の概念 模倣

具 体 物 を 用 い た 要

求 指さし要求

共感性 言語指示への応答 発語 始点と終点の理解

手指の活用

比較の概念 生活場面等の理解

13

要求の具体化・

明確化

社会性の芽生え 二語文の理解

質問への応答

表出語彙の増

加 視覚情報の活用

図形概念の芽生え 生活 場面 での 記憶

の活用

言語を伴う要求 共感性の高まり 動詞・形容詞等の理解 名詞等の発語 数量概念の芽生え ごっこ遊びへの興味

19

24

自己主張の芽生え 他の子供への興味 理解語彙の増加 言語での要求 道具の使用 数・量概念の高まり 見立て・ごっこ遊び

二語文での要求 自己意識の芽生え

社会性の高まり

カテゴリー概念の

芽生え

二語文等の表

空間認知の高まり カテゴリー概念の

芽生え

食事・排泄・衣服・

清潔等 ADL の基礎

~ ~

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110

月齢

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

快不快の表出 人の働きかけによ

る快反応

外界への気付き (聴覚 ) 外界への気付き(皮膚

感覚・味覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

2 Ⅱ

反応表出 大人への注意 音への注意 感 触 の 変 化 へ の 気 付

注視

大人への注意 声への好反応 音の変化への気付き 手への気付き 追視

4 Ⅲ

期待反応 特定の支援者への

気付き

大人への積極性

声の変化への気付き 物の単純な操作 探索(視覚)

声のやりとり

応答性のある行動

音の方向性への気付き 因果関係の理解

リーチング

リーチング

特定フレーズへの意味付け

要求

7 Ⅳ

選択 自分への気付き 音等への記憶の蓄積 複雑な因果関係の理解 物の永続性

指さし理解 他者意図の理解 言葉の理解の芽生え 探索的行動 視覚的変化への興味

操作性の高まり 探索的行動

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大人の注意を引く やりとりの拡大 名詞等の理解 言葉の模倣 空間認知の芽生え 保存の概念 模倣

具 体 物 を 用 い た 要

求 指さし要求

共感性 言語指示への応答 発語 始点と終点の理解

手指の活用

比較の概念 生活場面等の理解

13

要求の具体化・

明確化

社会性の芽生え 二語文の理解

質問への応答

表出語彙の増

加 視覚情報の活用

図形概念の芽生え 生活 場面 での 記憶

の活用

言語を伴う要求 共感性の高まり 動詞・形容詞等の理解 名詞等の発語 数量概念の芽生え ごっこ遊びへの興味

19

24

自己主張の芽生え 他の子供への興味 理解語彙の増加 言語での要求 道具の使用 数・量概念の高まり 見立て・ごっこ遊び

二語文での要求 自己意識の芽生え

社会性の高まり

カテゴリー概念の

芽生え

二語文等の表

空間認知の高まり カテゴリー概念の

芽生え

食事・排泄・衣服・

清潔等 ADL の基礎

(生徒C)

(生徒C)

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111

自立活動(身体・感覚)学習指導案

指導者 ○○ ○○(T1)

○○ ○○(T2)

○○ ○○(T3)

1 日時・場所 平成 28 年○月○日(○) 2校時 10:05~10:55

高等部○年○組教室

2 授業形態 決定学級

3 学部・学年 高等部 第○学年○組(Ⅲ類型)

4 題材名 リラックスして体を動かそう

5 題材設定の理由

○ 生徒観

本学級は女子2名(A・C)と男子 1 名(B)の計3名である。3名の実態には差はあるが,いず

れも肢体不自由と知的障害を合わせ有しており,座位保持車いすを使用し,日常生活全般に

わたって支援を必要としている。

Aは肢体不自由並びに,知的障害,脳性まひ及び感覚(視覚)障害を併せ有する生徒であ

る。視覚障害の程度は光覚を感じることができる程度と思われる。てんかん発作があり,覚醒の

程度に関わらず発作が起きることがある。姿勢については,床では支援なしで割座の座位をと

ったりすることができるが円背になる。身体の動きについては,右上肢に麻痺があるため,随意

に動く左上肢で操作を行うことができる。下肢は股関節脱臼をしているが,左足に力を入れるこ

とはできる。コミュニケーションについては,表情や発声・行動から本人の感情を読み取ることが

できる。また発語はないが,特定の言葉掛けを受けると次の活動に見通しをもち期待を表す様

子も見られる。声掛けされると相手の方を向いたり,呼応して発声をしたりと他者に対する興味

や愛着が見られる。昨年度3学期から薬の量が増え,日中の覚醒状態が安定しない日々が続

いている。また心理的に不安定な状態に陥り,こぶしで顎を叩く行為をすることが多い。この行

為は,不快感や眠気,苛立ちなど様々な感情・状態を表していることもあれば,顎を刺激して

振動や音を得る感覚遊びや,自己刺激的な常同行為と思われる場合もあり,行為の明確な原

因はわからない。

Bは,肢体不自由及び知的障害がある。体調によっては一日に点頭てんかん発作が複数回

起こり,発作後は覚醒が低くなることが多い。また,両上肢を前に突き出すような不随意運動が

起こることがある。この不随意運動が起きている時は,身体のコントロールができなくなり,注視

や操作が難しくなる。姿勢については,強い側彎があり座位姿勢をとると左に傾きやすいためコ

ルセットを着用している。身体の動きについては,握力は弱いが,片手で物を把持することがで

きる。コミュニケーションについては,ある程度表情で快不快を読み取ることができる。気になる

ものを視界でとらえると,リーチングや四つ這いで床面を移動して取りに行こうとする様子が見ら

れ,「好き」「欲しい」などの意思の表出と捉えられる。特定の玩具に強い興味を示すが,それ以

外のものに対する関心は非常に薄い。言葉掛けなどで働きかけると相手の顔を一瞬注視する

ことがあるが,それに対して声を返すなどの明確なレスポンスは少ない。自分から四つ這いで教

員に近づいたり,手を伸ばして触ろうとしたりすることは時々あるが,他者に対しする興味は安

定して向けられていない。立位の姿勢を好み,その補助をして欲しいと周囲の教員に手を伸ば

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112

し,抱きつこうとすることがある。

Cは,肢体不自由と知的障害がある。栄養摂取と睡眠のリズムに課題があり,日中でも覚醒

が低くなることが多い。視覚的な認知能力は高い。好きな教員やキャラクター,よく行く場所,

好きな物などはのいくつかの言葉は,名称のみで理解する様子もみられ,ある程度内言語が存

在しているようである。姿勢については,上肢の右側に強い側彎がある。さらに,上肢・下肢とも

に拘縮が強く,姿勢を自力で変換することは難しい。30 分程度車いす座位で同じ姿勢をとると,

痛みからか不快を訴えることがある。身体の動きについては,左手で操作を行う。指関節に拘

縮があるが,指で挟み込むようにして物を掴むことができる。コミュニケーションについては,質

問に対して挙手や頷きで YES/NO を示すことができる。好みもはっきりしており,2つの具体物

を同時に提示してもどちらが自分が好きな物か,また欲しい物かを指さしで選択することができ

る。他者に対する興味は高く,指さしや手さしで人を呼んだり,自分の要求をかなえてもらおうと

対象物を指さして相手に伝えようとすることもできる。

次の表は,本校アセスメントチェックリストによる実態把握である。本校の授業研究テーマの

副題にある「表現・表出する力」に関して,生徒個々の課題とする項目を示す。

区分 発達段階- 領域番号

課題とする項目

A 要求表出 Ⅲ-32 好きな遊びをした後に「もう一回する?」等の言葉掛けをすると

発声や動きで応答する。

聴覚・言語 Ⅲ-24 特定の単語や話題を理解している様子をあらわす。

B 要求表出 Ⅱ-8 支援者からボディタッチをうけ,笑う等の快反応がある。

人間関係 Ⅱ-5 反応の良い音がある。

C 人間関係 Ⅵ-48 支援者と交代でボールを投げ合う遊びを好む。

言語理解 Ⅴ-41 物の名称のいくつかを理解する。

上記の表で「人間関係 Ⅵ-48 支援者と交代でボールを投げ合う遊びを好む」とあるが,これ

は支援者との役割交替のある遊びを指している。

○ 題材観

自立活動は,生徒の人間としての調和的発達を目指して,個々の障害による学習上又は生

活上の困難を改善・克服することを目的として設定された領域である。それゆえに本授業は,

日々の行動観察やアセスメントチェックリスト等から得られた生徒の実態から導き出された個別

の指導計画の目標を踏まえた上で,本授業の目標設定及び指導を行っていく必要がある。

生徒の個別の指導計画において,自立活動(身体・感覚)の領域で重点的に指導を行うとし

た目標を示す。

生徒 自立活動の 6区分

目標

心理的な安定 外の刺激に対して興味を向けることで,気持ちを落ち着かせることが

できる。(スイッチ操作等の遊びの拡大から心理的な安定をねらう)

身体の動き ベンチ椅子で下肢を意識し,足に力を入れて座る。

環境の把握 ☆ 特定の単語や話題を理解している様子をあらわす。

コミュニケーション ☆ 好きな遊びをした後に「もう一回?」という言葉掛けに対して,発声

で応答する。

B 健康の保持 側彎進行防止のため,しっかりと体を動かす。

心理的な安定 様々なことを体験し,興味の持てるものを増やす。

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113

身体の動き つかまり立ちをする回数を増やし,体幹を安定させる。

コミュニケーション ☆ 自分の気持ちを様々な場面で表現できる。

心理的な安定☆ 自分の要求を確実に相手に伝えることにより,情緒の安定を図る。

環境の把握 活動の周りの友だちに興味を持ち,リラックスして活動に取

り組む。

身体の動き リラックスしてマッサージやストレッチを受ける。

コミュニケーション ☆ 表情や身振りなど様々な方法で自分の気持ちを伝える。

(☆印は表現・表出に関わる項目)

また,「表現・表出する力」に関わる内容としては,生徒観に挙げたアセスメントチェックリスト

から具体的な目標を立てると,以下のようになる。

生徒 「表現・表出する力」に関わる目標

A ①「もう一回?」に対するの発声による応答(YES)の明確化

②言葉掛けを言語としての音の理解

B ①指導者や支援者に対する安定した興味

②刺激の受容と快反応の表出

C ①指導者とのターンテーキングを伴う遊び

②色の名前・形の名前の名称の理解

これらの目標を踏まえ,本授業を組み立てていく。

「身体・感覚」では身体の動きに関わる学習と,感覚の受容や表出,認知を高める学習の2つ

の要素を設定した。

本授業は決定学級の授業ではあるが,生徒3人の実態差があるため,感覚の受容や表出・

認知を高める学習については,それぞれの実態にあった題材を用いた,課題別活動を用意し

た。

Aは,身体の動き(操作性)を意識しつつ,空間認知や因果関係の理解を促すことを目標と

して,スイッチを押すと風が吹いたり振動したりする装置を使った活動を行う。風や振動といった

刺激は,Aが心理的に不安定になったときに提示すると,注意をそちらに向けやすく,快の表

情が見られやすい刺激である。Aがスイッチの因果関係を理解し,遊びのバリエーションを広げ

ることができれば,心理的な不安定な状況になったときスイッチで遊ぶことで気持ちを切り替え

ることができるようになると考えられる。また,タブレット型端末で曲を聞く活動も設定した。本人

には好きな曲や音がある。好きな刺激を楽しみたいという本人の要求を,「もう一回?」の質問

に対して発声で返すことで達成されるという成功経験を積ませたい。そして発声することがもつ

意味に気付かせていきたい。

Bは興味・関心の幅を広げることを目標とし,様々な触刺激や聴覚刺激を受容し,表出を促

すことで,「好きなこと」「苦手なこと」を見つける活動を用意した。手に過敏性があり,何かに触

ったときに手を引っ込めてしまうことがあるため,周囲が「嫌なんだ」と判断し触る経験を減らして

しまったことが,興味・関心の幅を狭めている理由の一つとして考えられる。そこで手をマッサー

ジし,じっくりと様々な素材に触らせたり聞かせたりすることで,本人の表出を確かめたい。

Cは視覚的にとらえられる情報に言語をつけて学ぶことで,内言語を増やすことを目標とし,

顔写真パズルと形・色の見本見合わせ課題を行う。言葉掛けを行うことで形の名前や色の名

前を理解したり,「同じ」「違う」という概念を理解させたい。この活動は,言葉で問われた内容に

対して,Cが自分の思いを適切に表現したり,「自分の要求を確実に相手に伝える」などの表

現・表出する力を培うことにも繋がると考えている。また見合わせ課題を行うなかで ,指導者の手

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114

本を見る・説明を聞く→生徒が課題に取り組む,という指導者と生徒とのターンテーキングを意

識した学習の形態をとる。これは,生徒が一方的に思いを伝えていくのではなく,相手の番・自

分の番を意識したやりとりのコミュニケーションに繋がっていくと考えている。

身体の動きに関わる学習では,ストレッチと姿勢をとる活動の2つを用意した。個々の実態が

異なるため,必要なストレッチや運動は個々で異なる。それゆえ,場を共有して活動の時間のメ

リハリをつけながら活動を個々で行うこととする。

Aはストレッチで下肢,特に足首や股関節をほぐした後に,ベンチ椅子座位を行い,10 分間

姿勢を意識して座る活動を用意した。時々左右前後にゆさぶりを入れながら,自分の体を意識

し,立ち直り反応を促したり,下肢を意識させたりする。

Bはストレッチと立位・ウォーカーでの活動を行う。この活動は,側彎の抑制のためにしっかり

と体を伸ばすことと,指導者と一緒に活動を行うことで,指導者へ注意を向けたり,指導者との

心地よい・楽しい経験を増やしたりすることをねらっている。

Cはストレッチと側臥位での肩甲骨周りのマッサージを行う。C は必要に応じて吸引と吸入の

医療的ケアが必要な生徒である。痰が絡むと呼吸状態が悪くなり SpO2の値が下がることが多

い。それ故に身体を伸ばすストレッチと側臥位でのマッサージを通して,深いしっかりとした呼吸

を促すことを目的とする。

○ 指導観

「リラックスして体を動かそう」という題材を取り扱うに当たり,「生徒が一人一人落ち着いた状

態で,それぞれの活動に取り組むことができる環境作り」に配慮して指導していく。

指導に当たっては,個々の生徒の課題を同じ教室で取り組むことから,環境面での配慮に

重点を置きたい。指導者の声のトーンも考慮する必要がある。また,音を聞く活動では生徒・指

導者ともにイヤフォンを着用し,生徒が音に集中できる環境を用意する。

活動の説明や前触れ,言葉掛けは,それぞれの生徒の実態に合わせた,端的で分かりやす

いものにする。また自立活動は日々の繰り返しの取組であり,個々の生徒に掛ける言葉も統一

している。それらの言葉を本授業でも用い,言葉掛けをする場合は,生徒が指導者を意識でき

るようにしっかりと顔を見せたり,肩を叩く等で注意を引いてから行う。

そして活動の中で,生徒の表出や表現をしっかりと待つ。そしてA・Bが表出した時には「楽

しいね」「おもしろいね」など生徒の感情を読み取り,言葉としてフィードバックしていく。Cについ

ては課題に正解した時には,しっかりと褒めて達成感を持たせ,次の活動に続く意欲を高めた

い。

また,生徒たちは,睡眠リズムの乱れや服薬,発作等により,授業中に覚醒が下がることが

多い。それぞれの覚醒状態や体調等の様子をみながら,活動を行う必要がある。また眠気や

不快感がある場合は,その時に行う活動が生徒にとって苦痛な経験にならないように配慮し,

適宜休憩を取り,状態が安定するまで待つことも必要であると考える。

6 題材の目標

○リラックスした状態(※緊張等がなく,外からの刺激に対して注意を向けられるような状態)

で,感じたり体を動かしたりする。

7 指導計画[全 20 時間]

第1次 リラックスしていろいろな刺激を感じてみよう (8時間) 本時 5/8

第2次 感覚あそび (6時間 )

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115

第3次 刺激を感じて気持ちを表そう (6時間 )

8 本時の目標

○全体の目標

落ち着いた状態で個々の課題別活動を行うことができる。

指導者や他の生徒に対して意識を向けることができる。

○個々の目標

9 準備物

A スイッチ(温風ドライヤー,マッサージ機),タブレット型端末,イヤフォン,ベンチ椅子

B 触る教材(つるつる,ざらざら,ふわふわ等),タブレット型端末,イヤフォン

SRCウォーカー

C 見本見合わせ課題(カード・見本),ミニボード,三角マット,クッション,タオル

10 指導過程(別紙)

児童・生徒 実態 目標 手立て

・風や振動による刺激を好み,快の表情や反応を表すことが多い。 ・音声を録音したスイッチを自分で押すことで,音が出ることには気づきがある。スイッチとの因果関係に気づき始めている。 ・座位姿勢をとると円背になる。

・スイッチを押すと風が吹いたり振動したりする玩具で遊ぶ。(触Ⅳ-28) ・10 分間ベンチ椅子で座位姿勢をとる。

・始めはスイッチの位置に生徒の手を導き,スイッチの存在に気付かせる。何度か一緒に ON/OFFを行う。 ・スイッチを押す行動が安定して見られてきたら,スイッチの場所を意図的に少しずらして,スイッチを意図的に探索できるかを確かめる。 ・ベンチ椅子に一緒に座り,骨盤を立てるように支援を行う。 ・左右に体を傾け,立ち直り反応を促し,生徒が身体の位置や傾きに意識を向けるようにする。

表現・表出に

関する内容

・活動を中断したときに,「もう一回?」と言葉掛けすると,声で応答することがある。

・ 「もう一回?」という言葉掛けを聞いて,発声で応答し,活動を繰り返してもらう。(要Ⅲ-32)

・言葉掛けの後は 10 秒程度待ち,応答的な行為が見られるかを確かめる。 ・声での応答が安定してから,応答が無くなった時に活動を終わり,発声と活動の繰り返しの関連に気付かせる。

B

・興味の幅が狭い。 ・刺激から「快」の感覚を得られることが少ない。

・触感覚,聴覚からの刺激に対して,表情や発声等で反応する。(人Ⅱ-5)

・触る感覚や,聞かせる音を選定し,どのような刺激に反応があるのか一つずつ様子を観察する。 ・数回繰り返して刺激を与える。前後の刺激は違いの分かりやすいものにする。

表現・表出に

関する内容

・人への興味が安定しない。 ・言葉掛けをした時に相手に顔を向けることがある。

・指導者からのボディタッチを受けて快反応を示す。(要Ⅱ-8)

・やさしく声をかけながら,安心できる環境をつくるようにする。 ・「○○するよ」と先に前触れをしてから様々な運動を一緒に行う。 ・活動の後は本人の表出を待つ。

C

・好きなキャラクターや人の動きを見ることに興味がある。 ・「同じ」という概念が未形成である。

・提示された見本と同じ形または色を選ぶ。(数Ⅵ-46・47)

・見本を示す時には「まる」「あか」など名称の言葉掛けも合わせて行う。 ・指 さしで選択させ,正解であれば「同じ」と言葉掛けし,しっかりと褒める。

表現・表出に

関する内容

・提示された物に対する興味は強く,すぐに手を出そうとする。 ・「自分の番」という意識が強く,待ったり相手と交互に行うことが難しい。

・課題を指導者と交互に行う。(人Ⅵ-48)

・手を出そうとしたときに,「まって」「きくよ」などルールを最初にしっかりと伝え確認する。 ・回答を求める場面では,「C さんの番,どうぞ」と手差しをし,生徒の番であることが分かるように示す。

学習活動は,児

童・生徒主体の

文体にする。

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116

11 評価の観点

全体

○生徒が落ち着いた状態で個々の課題別活動を行うことができたか。

○生徒が指導者や他の生徒に対して意識を向けることができたか。

個別の目標

A ○スイッチを押すと風が吹いたり振動したりする玩具で遊ぶことができたか。

○10 分間ベンチ椅子で座位姿勢をとることができたか。

○「もう一回?」という言葉掛けを聞いて,発声で応答し,活動を繰り返してもらうことが

できたか。

B ○触感覚,聴覚からの刺激に対して,表情や発声等で反応することができたか。

○指導者からのボディタッチを受けて快反応を示すことができたか。

C ○提示された見本と同じ形または色を選ぶことができたか。

○課題を指導者と交互に行うことができたか。

指導の目標

○ 学習内容の分量は適切であったか。

○ 実態に応じた支援は適切であったか

○ 教材・教具は目標達成に対して効果的であったか。

12 年間指導計画

(添付資料の通り)

13 教室内配置図

C

A

B C

T

T

T

A B

出入り口

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117

別紙1 児童(生徒)の実態の参考資料(本校アセスメントチェックリストによるプロフィール表)

〔A〕

〔B〕

月齢

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

Ⅰ 快不快の分化 人の働きかけによる

快反応 外界への気付き(聴覚)

外界への気付き(皮膚感覚・味

覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

光への反応

色への反応

2

反応表出の芽生

大人への注意

人への注意

声への好反応

音への注意

音の変化への気付き

外界への興味(触覚・味覚・嗅

覚等) 探索(触覚)

注視

追視

4

期待反応

やりとりの予測

応答性のある行

要求の芽生え

人への愛着

やりとりの芽生え

大人への積極性

声の変化への気付き

音の方向性への気付き

音への興味

特定フレーズへの気付き・意味付け

物の単純な操作

因果関係の理解の芽生え

探索(視覚)

リーチング

目と手の協応の芽生え

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的行

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大人の注意を引く

要求手段の多様

指さし要求

やりとりの拡大

共感性の芽生え 名詞等の理解 発語の芽生え

空間認知の芽生

始点と終点の理解

手指の活用

保存の概念

比較の概念

模倣

生活場面等の理

13

要求の具体化・

明確化

言語を伴う要求

社会性の芽生え

共感性の高まり

言語指示・二語文

の理解

質問への応答

動詞・形容詞等の理

言葉の模倣

名詞等の発語

視覚情報の活用

図形概念の芽生え

数・量概念の芽生え

生活場面での記

憶の活用

見立て・ごっこ遊

びへの興味

月齢

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

Ⅰ 快不快の分化 人の働きかけによる

快反応 外界への気付き(聴覚)

外界への気付き(皮膚感覚・味

覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

光への反応

色への反応

2

反応表出の芽生

大人への注意

人への注意

声への好反応

音への注意

音の変化への気付き

外界への興味(触覚・味覚・嗅

覚等)

探索(触覚)

注視

追視

4

期待反応

やりとりの予測

応答性のある行

要求の芽生え

人への愛着

やりとりの芽生え

大人への積極性

声の変化への気付き

音の方向性への気付き

音への興味

特定フレーズへの気付き・意味付け

物の単純な操作

因果関係の理解の芽生え

探索(視覚)

リーチング

目と手の協応の芽生え

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的行

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大人の注意を引く

要求手段の多様

指さし要求

やりとりの拡大

共感性の芽生え 名詞等の理解 発語の芽生え

空間認知の芽生

始点と終点の理解

手指の活用

保存の概念

比較の概念

模倣

生活場面等の理

13

要求の具体化・

明確化

言語を伴う要求

社会性の芽生え

共感性の高まり

言語指示・二語文

の理解

質問への応答

動詞・形容詞等の理

言葉の模倣

名詞等の発語

視覚情報の活用

図形概念の芽生え

数・量概念の芽生え

生活場面での記

憶の活用

見立て・ごっこ遊

びへの興味

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118

〔C〕

10指導過程(別紙)

月齢

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

Ⅰ 快不快の分化 人の働きかけによる

快反応 外界への気付き(聴覚)

外界への気付き(皮膚感覚・味

覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

光への反応

色への反応

2

反応表出の芽生

大人への注意

人への注意

声への好反応

音への注意

音の変化への気付き

外界への興味(触覚・味覚・嗅

覚等) 探索(触覚)

注視

追視

4

期待反応

やりとりの予測

応答性のある行

要求の芽生え

人への愛着

やりとりの芽生え

大人への積極性

声の変化への気付き

音の方向性への気付き

音への興味

特定フレーズへの気付き・意味付け

物の単純な操作

因果関係の理解の芽生え

探索(視覚)

リーチング

目と手の協応の芽生え

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的行

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大人の注意を引く

要求手段の多様

指さし要求

やりとりの拡大

共感性の芽生え 名詞等の理解 発語の芽生え

空間認知の芽生

始点と終点の理解

手指の活用

保存の概念

比較の概念

模倣

生活場面等の理

13

要求の具体化・

明確化

言語を伴う要求

社会性の芽生え

共感性の高まり

言語指示・二語文

の理解

質問への応答

動詞・形容詞等の理

言葉の模倣

名詞等の発語

視覚情報の活用

図形概念の芽生え

数・量概念の芽生え

生活場面での記

憶の活用

見立て・ごっこ遊

びへの興味

19

24 Ⅶ

自己主張の芽生

言語での要求

他の子供への興味

自己意識の芽生え

社会性の高まり

理解語彙の増加

言語指示への応答

カテゴリー概念の芽

生え

場面に合う言葉

の活用

表出語彙の増加

二語文等の表出

道具の使用

空間認知の高まり

数・量概念の高まり

カテゴリー概念の

芽生え

見立て・ごっこ遊

食事・排泄・衣服・

清潔等 ADL の基

学習活動 指導上の留意点 (□課題 ○支援・配慮 ☆評価基準)

A T1 B T2 C T3 全体 1 始まりの挨拶 説明(5分)

挨拶の前に,学習姿勢を整える。 ○生徒の耳元で「はじめ」の言葉掛けをする。

挨拶の前に,学習姿勢を整える。 ○挨拶の前に立位をとり,覚醒を高める。

挨拶の前に,学習姿勢を整える。 ○挙手で挨拶を行うよう例示する。

・T1に注意を向けるように促す。 ・個々の生徒の活動を伝える。

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119

2 課題別活動 (15分)

□スイッチで遊ぼう スイッチを押すと風が吹いたり,振動したりする玩具で遊ぶ。(触Ⅳ-28) ○風や振動の刺激に気付くまで活動を繰り返し,注意が向けられるまで繰り返す。 ○スイッチを意図的に場所をずらしたり,手を別の所に離したりする。 ☆スイッチから手が離れた時に,スイッチを探索することができたか。 □曲を聞こう 「もう一回?」と問われたときに,発声で応答し,曲を繰り返してもらう。(要Ⅲ-32) ○何回か聞き,気持ちが高まってきてから言葉掛けを行う。 ○発声以外では繰り返さない。 ☆発声で応答し,繰り返してもらうことができたか。

□触ってみよう・聞いてみよう 触感覚,聴覚刺激に対して反応を示す。(人Ⅱ-5) ○音刺激を聞くときは,イヤフォンを着用する。触る前には手に圧をかけて触る。 ○「さわるよ」「きくよ」の前触れを必ず行い,一回の刺激を分かりやすくする。 ○生徒の表出の様子をしっかりと観察する。 ☆刺激に対して,表情や発声で表出が見られたか。

□写真パズル 課題を指導者と交代で行う。(人Ⅵ-48) ○毎回指導者が例を見せてから生徒に行わせる。 ○生徒が行う番には,「C さんどうぞ」と言葉掛けする。 ☆生徒が指導者の番の時に待つことができたか。 □見本合わせ課題 提示された見本と同じ色または形を選ぶ。(数Ⅵ-46・47) ○見本に対して 2 択で行う。「あか」「まる」など決まった言葉掛けを行う。 ○不正解の時にはもう一度選ばせ,正しい選択肢に導く。 ○正解した時は褒める。 ☆見本と同じ色または形を選ぶことができたか。

・活動時間のタイマーをかける。 ・互いの活動を阻害しないように,授業環境に配慮しながら行う。

3 ストレッチ 4 姿勢をとろう

(25分)

カーペットに降りる。 ○嫌がったり,不快を示す場合は,姿勢を変えたり,別の方法をとる。 □ベンチ椅子座位 10分間座位姿勢をとる。 ○骨盤をしっかり足をはさみ,骨盤を立てた状態で姿勢を保持する。 ○左右へゆさぶりをかけ,身体の軸を意識させる。 ☆10 分間座位姿勢を取ることができたか。

カーペットに降りる。 ○側彎に配慮しながら,体を伸ばすように支援する。 □立位・ウォーカー指導者からのボディタッチを受けて快反応を示す。(要Ⅱ-8) ○立位を取るときに,ゆさぶりを入れたりして快表情を引き出すことを繰り返す。 ○快反応を示した時に,正面で顔を見せ,しっかりと指導者を意識させる。 ☆快反応を示すことができたか。

カーペットに降りる。 ○生徒が力を抜けるように言葉掛けする。 □側臥位 ○肩甲骨周りをマッサージして,深い呼吸を促す。 ○生徒の健康状態・覚醒状態に留意しながら様子を見つつ活動量を調整する。

・T1がストレッチを行う部位を全体に伝える。 ・タイマーで時間を示す。 ・続く姿勢の活動に繋がるよう,部位を意識して行う。 ・活動の前には言葉掛けを行う。

5 ふりかえり (3分)

6 終わりの挨拶

(2分)

指導者と一緒に活動を振り返る。 挨拶の前に,学習姿勢を整える。 ○生徒の耳元で「おわり」の言葉掛けをする。

指導者と一緒に活動を振り返る。 挨拶の前に,学習姿勢を整える。 ○挨拶の時には日直の生徒に注意を向かせる。

指導者から質問に挙手して応える。 挨拶の前に,学習姿勢を整える。 ○挙手で挨拶を行うよ例示する。

・活動をしっかりと評価する。 ・生徒らが互いの活動を伝えあえるように支援する。

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120

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121

Ⅳ類型

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122

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123

自立活動 学習指導案

指導者 ○○ ○○

1 日時・場所 平成 28年○月○日(○) 14:30~15:30

訪問生徒宅

2 授業形態 個別

3 学部・学年 中学部 第○学年訪問(Ⅳ類型)

4 題材名 感覚を活用しよう

5 題材設定の理由

○ 生徒観

本生徒は,体幹機能障害・両上肢機能全廃を有している男子である。昨年度までは地域の小学校の

特別支援学級(知的)に在籍していたが,本校へ今年4月に入学し,現在Ⅳ類型教育課程で学習を行っ

ている。併せて視覚障害,知的障害も有しているため,日常生活全般に介助が必要である。日中の覚醒

のレベルが低く,特に午前中は眠って過ごすことが多い。

呼吸機能は年々低下傾向で,自宅では時々酸素吸入装置で1~3ℓほどの酸素を入れている。心拍数

も不安定なことが多く,日中と夜間で差が大きく,モニターをつけて過ごさなければならない。時々「ゼェゼ

ェ」「ヒューヒュー」といった喘鳴呼吸をすることもある。気管切開はしておらず,排痰は頻回に口腔内の吸

引を必要とする。

嚥下機能に関しては,小学校まで栄養剤にとろみをつけてたものを経口摂取させていたが,中学部か

らは胃ろうの滴下での注入に変わっている。小学校高学年からは体調を崩しやすい状態が続いており,

治療を継続しているところである。体温調節も苦手で,熱はこもりやすく一旦発熱すると解熱するのに数日

間は要する。

姿勢については,変形が進んでいるため,仰臥位で両足を屈曲させた状態で過ごしている。右後方に

頭を向けており,布団に接触している右耳の軟骨が褥瘡している。支援があれば後ろから支える形であぐ

ら座位になり学習することもできるが,自力ではバランスを保つことはできない。以前は座位保持椅子で食

卓に家族と並ぶことができていたが,現在はしていない。筋緊張が不随意で強く入ることがあり,その際に

は背中を浮かし足を伸ばすようにした後,痛みにより激しく泣き出すことがある。その筋緊張により鼻や口

から嘔吐することがあるため,身体的な活動の制限は多い。

認知面では聴覚が優位であり,好きな音や声が聞こえると笑顔を見せたり,笑い声のような発声をしたり

して快表現を示すことができる。反対に不快な時は無表情になったり,口や目を動かしたり,「あー,あー」

と発声をして意思を示すことができる。言語理解は「よくできたね」「楽しかったね」等の評価の言葉を聞く

と,笑顔になることがあることから,周囲の支援者や活動等の状況を多少理解していると思われる。

視覚的には光る玩具を提示すると声を出して喜び,追視することから,眼前 10 センチほどの光覚程度

だと思われる。5秒程度で刺激に気付き,「ああああ」と笑い声を出すなど快表現を示している。手足や身

体の皮膚感覚は全体的に鈍麻で,足の裏や鼻の下など特定の部位を強く押したり,くすぐったりすると反

応を示すが,それらの部位以外には反応が見られない。

○ 題材観

Ⅳ類型の年間指導計画では目標として次のように設定されている。

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124

○健康の保持,心理的な安定,人間関係の形成,環境の把握,身体の動き,コミュニケーション

に関すること

・身体のリラクゼーションを図りながら,健康の保持を図る。

・いろいろな感触・感覚を受けいれ,感覚を活用することを経験させる。

・周りからの働きかけを受けとめ,コミュニケーションなど,他者とのかかわりの基礎を築く。

本題材を通していろいろな素材を触ったり,音楽や玩具を用いて遊んだりと実態把握をしなが

ら本生徒の保有する感覚へとアプローチを行ってきた。学習を重ねてきた中で,様々な素材に触

れる活動へは不快な表情を表すことが多かったのに対して,音楽や歌が流れたり,光る玩具を活

用して遊ぶ活動に対しては確実に笑顔になることが多く,快反応としての発声を示すことができ

ていることが分かった。

このことから本生徒は本校作成の「重度・重複障害児のアセスメントチェックリスト Ver.3.0

の要求表出Ⅲ―30「好きな遊びに使用する道具や玩具を見て,身振り,発声で期待をあらわす」

の部分までは概ね達成できていると考え,次の段階においてⅢ-32「好きな遊びをした後,『もう

1回する?』等の言葉掛けをすると発声や動きで応答する」ことを目指すこととした。併せて本

題材は自立活動6区分「2心理的な安定 (1)情緒の安定に関すること。」と「4 環境の把握

(1)保有する感覚の活用に関すること。」に重点を置き,年間指導計画においては,「快刺激で

リラックスした状態を保つ」と「やりとりを通して意思表示をする」という年間目標を設定して

いる。

上記のことから自立活動においては,本生徒の興味・関心の高い光や音の出る教材を使った活

動を設定し,快の状態にある時間を継続させる。その結果として周囲の変化に気付くようになり,

外界からの働きかけへと意識が向上していくと想定する。さらには自らも「もっとやりたい」等

の働きかけをするようになると考え,やり取りを繰り返し行うことで経験を蓄積し,記憶の定着

を図るものする。

○ 指導観

インリアルとは「ことばの遅れのある子どものためのコミュニケーション・アプローチ」であり,楽しく意味の

あるやり取りを経験する中で、コミュニケーションの力を伸ばしていくとしている。また子どもは「はなしこと

ば」を獲得するより前に,音声や行為によるコミュニケーションの方法を身につけ,ことば以外の視線,手

の動き,表情などもコミュニケーション行動の重要な要素と捉え,育てていくことと定義している。このように

コミュニケーションを両者の関係で見ていく視点を持ちながら①子どもの発達レベルに合わせる②会話や

遊びの主導権を子どもに持たせる③相手が始められるように待ち時間をとる④子どものリズムに合わせる

⑤やり取りを行う⑥遊びや会話を共有し,コミュニケーションを楽しむという6つの原則を前提とする。

併せて子どもの発達を促そうとするあまり話しかけすぎたり,何かをさせようと指示的になったりしがちに

なるので,①子どもを静かに見守る②子どもの興味や遊びを観察する③子どもの気持ちや発達の問題を

理解する④子どもの言おうとしていることに耳を傾けるといった4つの基本姿勢を心がけていきたい。

実際の指導に当たっては,同席している保護者と健康状態を随時確認し,刺激に対しての表情の変化,

緊張状態,発声の仕方等を判断していく。本時の予告「音が鳴る玩具を持ってきたよ」「パネルシアターす

るよ」等の声掛けも期待感を抱かせるのに大変有効であることが多いので,積極的に伝えていきたい。そ

れぞれの活動においては以下の点にも注意をしていくこととする。

「10 指導計画」の学習活動「1」では生徒と一緒にスイッチを押す。訪問の本生徒にとっては週に1度

の授業となるため,授業の雰囲気作りを目的に元気に行い,前回の訪問日からの体調の変化等の聞き取

りを行う。

「2」及び「3」の活動からは,体調が良ければ仰臥位から座位へと姿勢変換を促してみる。パネルシア

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125

ター上映時にはどのような姿勢においても譜面台を調節し,目線の高さにパネルを設置する。数種類用

意したパネルシアターの絵を目前に提示して,活動を意識させる。好きな歌が含まれているので,楽しい

気持ちを高めて,笑顔や笑い声を引き出したい。

「3」の活動では絵本の読み聞かせを行った後,フェルトで作成したさつまいもでいも掘りの模倣遊びを

行う。さつまいもに実際に触ったり,匂わせたりして感覚を活用した活動になるようにする。姿勢は体調を

考慮して,座位または仰臥位で行う。

「4」では玩具を提示して活動することを伝える。玩具での活動は本生徒の最も好きな活動である。動く

玩具を追視させたり,物や光の動きの違いによって笑顔になったり,表情を変えたりすることを目指した

い。。一通り玩具遊びを行い,反応を確かめ,「もう1度したい?」と問いかけて応答を待つ。何らかの応答

があれば反応がよかったものを再度行う。興奮して心拍数が急激に上昇したりする場合は,活動を止めて

休憩を取るようにする。

6 題材の目標

・好きな刺激を受けとめ,快の反応を示すことができる。

・もっと遊びたいという気持ちを要求することができる。

7 指導計画[全 210 時間]

8 本時の目標

9 準備物

アルコール消毒液,体温計,ステップバイステップ,ウェットティッシュ,玩具,パネルシアタ

ー,絵本,ぬいぐるみ,さつまいも

児童・生徒 実態 目標 手立て

・1日のうちに何度かは

仰臥位から座位になっ

て過ごすことがある。

・座位へと姿勢変換

し,活動を行う。

モニターを見ながら体調が良い

時に保護者の協力のもと座位に

なる。

表現・表出に

関する内容

・うれしい,楽しい時に

は声を出して笑顔にな

る。より楽しい時は身体

を震わせて大きく笑い

声をあげる。

・楽しい活動に対して

快表現を示し,笑顔

や発声で意志表示す

ることができる。

・興味・関心の高い玩具や音楽を

使用し,楽しい経験の蓄積を行

う。

・楽しさを共感し,気持ちを盛り上

げる。

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126

10 指導過程

11 評価の観点

○保有する感覚で刺激を受けとめることができたか。

○快の表情と声を出すことができたか。

○もっと遊びたいという気持ちを声や深呼吸等で要求することができたか。

学習活動 指導上の留意点 (□課題 ○支援・配慮 ☆評価基準)

1 始まりの挨拶をす

る。 (3分)

2 パネルシアター

を鑑賞する。

(10分)

3 絵本を読んで模

倣遊びをする。

(15分)

4 音の出る玩具で

遊ぶ。

(20分)

5 学習を振り返り,終

わりの挨拶をする。

(2分)

入室して挨拶をする。

○表情,むくみ,全身の緊張状態,モニター等を見ながら,保護者に様子を聞く。

○スイッチを右手で押させる。健康状態を確認し,本時の学習内容を伝える。

学習内容を理解し,期待感を示す

☆本時の予告を聞いて,笑顔で期待感を示すことができたか。

パネルシアターの台とパネルを用意をする。

○絵本やぬいぐるみを提示し,始まりを期待させる。

○音楽を流し,パネルシアターを演じる。

「はらぺこあおむし」「おはようくれよん」等

笑顔や笑い声など快表現を表出する

☆お話・音楽・歌などを聞いて快表現を表出することができたか。

「さつまのおいも」を読んで,フェルトのさつま芋を触って遊ぶ。

○さつまいもの実物を触らせる。

○ツルに見立てた紐を引っ張らせる。

笑顔や笑い声など快表現を表出する

☆やり取りを通して,保有する感覚で笑顔等の反応を示すことができたか。

うさぎの玩具を提示し,遊び方を説明する。

○生徒がたいこを叩くことで,玩具のうさぎの木琴を赤外線で連動させる。

○右手でたいこを叩かせ,上手く反応した時にはその状況を伝える。

遊びが成功したのが分かり,快表現を表出する

☆もう一度したいという要求が表れるか

☆やり取りを通して,保有する感覚で笑顔等の反応を示すことができたか。

サウンド絵本(木琴)で遊ぶ。

○右手にバチを握らせ,一緒にクリスマスソングを演奏する。

遊びが成功したのが分かり,快表現を表出する

☆もう一度したいという要求が表れるか

☆やり取りを通して,保有する感覚で笑顔等の反応を示すことができたか。

終わりの挨拶をする。

○本時を振りかえり,評価を伝える。

○次時の予定を伝える。

学習活動は,児

童・生徒主体の文

体にする。

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127

12 年間指導計画

個別の指導計画による

13 自宅部屋内配置図

児童(生徒)の実態の参考資料(本校アセスメントチェックリストによるプロフィール

モニター

ベッド A

○T

水道

月齢

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

Ⅰ 快不快の分化 人の働きかけによる

快反応 外界への気付き(聴覚)

外界への気付き(皮膚感覚・味

覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

光への反応

色への反応

2

反応表出の芽生

大人への注意

人への注意

声への好反応

音への注意

音の変化への気付き

外界への興味(触覚・味覚・嗅

覚等) 探索(触覚)

注視

追視

4

期待反応

やりとりの予測

応答性のある行

要求の芽生え

人への愛着

やりとりの芽生え

大人への積極性

声の変化への気付き

音の方向性への気付き

音への興味

特定フレーズへの気付き・意味付け

物の単純な操作

因果関係の理解の芽生え

探索(視覚)

リーチング

目と手の協応の芽生え

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的行

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大人の注意を引く

要求手段の多様

指さし要求

やりとりの拡大

共感性の芽生え 名詞等の理解 発語の芽生え

空間認知の芽生

始点と終点の理解

手指の活用

保存の概念

比較の概念

模倣

生活場面等の理

13

要求の具体化・

明確化

言語を伴う要求

社会性の芽生え

共感性の高まり

言語指示・二語文

の理解

質問への応答

動詞・形容詞等の理

言葉の模倣

名詞等の発語

視覚情報の活用

図形概念の芽生え

数・量概念の芽生え

生活場面での記

憶の活用

見立て・ごっこ遊

びへの興味

19

24 Ⅶ

自己主張の芽生

言語での要求

他の子供への興味

自己意識の芽生え

社会性の高まり

理解語彙の増加

言語指示への応答

カテゴリー概念の芽

生え

場面に合う言葉

の活用

表出語彙の増加

二語文等の表出

道具の使用

空間認知の高まり

数・量概念の高まり

カテゴリー概念の

芽生え

見立て・ごっこ遊

食事・排泄・衣服・

清潔等 ADL の基

~ ~

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128

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129

付録

平成 28年度 福山特別支援学校

学習指導案様式

Ⅰ類型

Ⅱ類型

Ⅲ・Ⅳ類型

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130

地理歴史科 学習指導案

(※ ○ 音楽科 学習指導案 × 音楽 学習指導)

指導者 山田 一郎

1 日時・場所 平成 28年 6月 日( ) 3校時 11:00~11:50

高3年1組教室 (※正式な教室名で)

2 指導形態 決定学級(年間指導計画に沿って)

3 学部・学年 高等部 第3学年 1組(Ⅰ類型)

4 単元・題材名(教科書名) 国際環境の変化と明治維新 3 明治新政府の諸改革と社会の変化

(「日本史A 現代からの歴史」)

5 単元について

〇単元観(こういう単元・題材を用意した)

本単元は,戊辰戦争以降の明治維新の制度改革や富国強兵・文明開化等の近代化が我が国を欧米

諸国と対等の地位に引き上げようとする立場で推進・受容されていったこと,そしてその反動として,対外

的には近隣アジア諸国との摩擦を生み出し,国内的には士族の反乱・農民一揆が起き,のちの自由民権

運動につながるという内容を取り扱っている。

本単元の学習を通じて,中央集権国家を目指す明治政府の様々な政策と,その政策に対して人々が

どのような影響を受け,どのように国の形が変わっていったのかを考察させたい。また本単元の歴史事象

について,地図・年表等の資料の読取り,指導者の発問及び調べ学習などの学習活動を設定することを

通じて,生徒に多面的・多角的に考察する力を身に付けさせたい。

特に言語活動の充実を図る観点から,資料を読み取る活動の後に,読み取った内容とそれに対する

考察をワークシートにまとめさせ,発表させる活動を単元を通して取り入れる。

※ここでは本時の内容に対することだけではなく本単元・題材全体のことも

併せて示すとよい。

〇生徒観(学級を構成している人数や雰囲気,単元・題材に関わるこれまでの取組の様子,経験,興味

関心,技能,障害に関わることについて書いてあると分かりやすい)

生徒は高等部 3 年の男子生徒 1 名である。二分脊椎の障害があるが,身辺自立ができており,

日常生活に介助を必要としない。気温の変化や疲労の蓄積により体調を崩しやすく,本人が自分

の体について意識し,管理することが課題となっている。

生徒は中学校社会の歴史分野の中で日本史を履修している。中学校で習った歴史的事象の名称

や,ゲームやドラマ等で登場する歴史上の人物などの名称は,発問に対し単語で答えることがで

きるが,事象どうしの時系列や相互の関係などは曖昧な部分が多い。日本史Aは高等部 3 年から

履修を始めた。これまでに江戸幕府の成立から討幕までの流れを既習している。

また,生徒のコミュニケーションに関する実態について,①話すこと・聞くことについては,

目的や場に応じて,効果的に話したり的確に聞き取ったりすることに課題がある。具体的には,

授業中に指導者が口頭で説明した内容の要点を聞き取り,要点を考えて記録するという活動が定

着していない様子が見られる②書くことに関しては,論理の展開を工夫し,資料に適切に引用す

るなどして,説得力のある文章を書くことを課題としている。文章を「自分の言葉で論理的に書

く」ことを目標に,文章を組み立てて相手に伝える学習を様々な教科で取り組んでいる。③読む

ことはおおむね課題なく行うことができる。

Ⅰ類型用

言語活動の充実を単元にど

のように落としていくか。

児童生徒一人一人の実態を記入。 ③コミュニケーションに関する課題(言語活動の充実との関連性をもたせる)…学習指導要領「国語総合」の目標及び内容の系統表を参考に。

※数字は一桁全角,2桁以上は半角

※ 記入例を青字で,注意事項を

赤文字で記しています。

これらを参考にして,適宜学習指

導案を作成してください。

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131

単元の目標と評価規準は表裏一体とな

る。

〇指導観(生徒観や単元観・題材観をふまえ,本単元における,学習展開や指導方法の工夫,評価の進

め方,指導上の留意点などを具体的に記述する。)

本校のカリキュラムにおいては,日本史 A の内容を精選して教える必要がある。そこで本授業では,教

科書の内容をベースにしながら,「なぜ明治政府は中央集権体制を築いたのか?」という主題を設定し,

資料等を適宜提示しながら授業を行っていく。

単元は全5時間を計画しており,前時までに明治政府が,初期に行った諸政策についての基本的な学

習をおこない政府側からの中央集権国家体制を目指す理由についての考察を深めてきた。

そこで本授業では明治初期の農民らの視点から,「明治政府の政策は農民の生活にどのような影響を

もたらしたか」というテーマをかかげ,明治維新を改めてみていく。明治政府に対する農民の心情の変化,

そして様々な政策がどのように農民の生活に影響を与えたのかを,時系列に沿って資料を提示し,それ

を読み解きながら考察を深めていく。その際にはワークシートを用いて,資料を読み取った内容を生徒が

書き込んで内容を整理し,本授業の最後には生徒がテーマに対するまとめを発表する。

また,生徒の障害特性への配慮として,姿勢を整えるように意識させる言葉かけを適宜行っていく。学

校生活の中で体調が優れない時は,指導者に対して生徒本人から伝えるように指導をしており,授業時

間の中でも本人からの要望があれば,必要に応じて休憩やトイレ等の時間をとる。

※~ために,~する,~したい,~させたい などと記入

6 単元の目標(学習指導要領に示された目標を踏まえて,本単元での到達目標を具体的に記述する。)

(1)明治初期の我が国の動向に対する関心と課題意識を高め,明治維新とその課題について意欲的

に追及させる。

(2)明治初期の我が国の動向から課題を見出させ,国内及び東アジアの地理的条件・国際環境を関連

付けて近代化政策や欧米文化の導入にたいして国民の間に受容と反発があったことを多面的・多

角的に考察させる。

(3)・・・・

(4)・・・・

7 単元・題材の評価規準(※単元の内容に即した具体的な評価規準を明記する。教科によって

評価の観点の表現は異なる場合がある。)

歴史的事象への

関心・意欲・態度

歴史的な

思考・判断・表現

資料活用の

技能・表現

歴史的事象についての

知識・理解

・明治初期の日本の動

向に対する関心を高め

ている。

・明治維新の際の課題

意識を高める。

・明治初期の日本の

動向から課題を見出

している。

・国内の様々な立場

の視点から,明治維

新について考察して

いる。

・明治初期の日本の動

向に関する諸資料を

適切に読み取って,文

章や図表などでまとめ

る。

・明治初期の日本の動

向について基本的な

事柄を,国際環境と関

連付けて理解してい

る。

単元の学習内容に即した評価規準を記入する。

(国語等の教科によっては3つの観点になる場合もある)

児童生徒観に記入した障害特性について,授業の中での配慮事項はこちらに記入。

例)Aの弱視への対応として,板書では大きく字を書く,太いマジックを使用,拡大教科

書を使用し,T2が指さしをする・・・・等

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132

8 指導と評価の指導計画 [全5時間]

次 学習内容 評価

関 思 技 知 評価規準 評価方法

「なぜ明治政府は

中央集権体制を

築いたのか」その1

江戸幕府体制と明

治政府の打ち出し

た政策を比較する

ことで,明治政府

が抱える課題につ

いて考察する。

(2時間)

○ ◎ ○

・明治政府の課題について列挙

できる。(ワークシート)

・江戸幕府時代の制度と明治政

府が打ち出した制度の違いから,

明治政府の課題について考察す

ることができる。

・・・

ワークシート

観察

「なぜ明治政府は

中央集権体制を

築いたのか」その2

・・・

(2時間)

○ ◎

○が付いた観点について,

7 単元・題材の評価規準に書い

た内容の,具体的な評価につい

て記入する。

「明治政府の政策

は農民の生活にど

のような影響をもた

らしたか」

・・・

(1時間)

◎ ○

9 本時の展開

○本時の目標(※6 単元・題材の目標を踏まえて,重点化した本時の具体的な目標を記述する。)

・本時の教科の目標を記入する(多くても2つ)

(1)明治初期の農民の生活が記された資料や図を読み解き,内容を理解する。

(2)農民の立場から明治維新はどのようなものであったかを考察し,発表する。

どのように評価

するかを記入

各次,2個が目安

特に評価するものには

◎をつける

4つの観点の頭文字で記入。

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133

○言語活動に関する個々の目標

生徒名 実態 目標 手立て

A

・口頭で説明した内容の要

点に気付けないことがあ

る。

・話を聞き,要点を記録す

る(メモをとる)という活

動が定着していない。

・文章を自分の言葉で論理的

に書くことに課題がある。

(1)資料の読み取りや,指導

者の話を聞く中から,要点に

気付きメモをとることができ

る。

(2)要点をまとめ,自分の言

葉で文章をつくり発表する。

・ワークシートに要点を

記入する設問を設け,

指導者が話す前に確認

させる。

・要点を気づかせるよう

なフレーズを話の中に

盛り込む。

・要点どうしの関連性を

ワークシートの中に書き

込ませる。

B

C

10 指導過程

学習活動 全体

(□課題 ☆評価基準) 指導上の留意点

導入【5分】

・あいさつ

・本時のテーマ

について確認

する。

・前時までに学習した,明治政府の政策について確認す

る。そしてそれらが国の体制づくりをする政府の視点から

行われたものであることに気付かせる。

・「明治政府の政策が,農民の生活にどのような影響をも

たらしたか」という疑問をもつ。

・姿勢を正すように

言葉かけをする。

・必要に応じて資料

集や教科書の対応

の頁を参照させる。

実態から導き出される課題に対する目標を記述します。

目標達成に向けて,児童生徒の実態にあった手立てを考え,記入します。

※「言語活動」に関する個々の目標について

自立活動等で個々の目標を記入する際には,実態-目標-手立てと表の横並びで関連性をもって記入しま

す。しかし教科学習の際には,児童生徒のコミュニケーションに関する複数の実態から目標や手立てを考慮

することもあるので,それぞれ欄の項目数が同じではないこともあります。

例)実態の 3つの項目から導き出される目標が 1つあり,それに対する手立てが 2つある。

テーマを板書

個々の児童生徒に対する配慮事項(障害への対応・支援)についてはこちらに記入。 (例:Aのプリントの見え方を確認する。必要に応じて書見台の角度を調整するなど)

言語活動に関する,これまでの

様子や課題を記述します。

※児童生徒観に記入したコミュニ

ケーションに関する実態の内容で

課題となる内容を具体的に書きま

しょう。

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134

展開1【20分】

・明治初期の農

民の資料①を

提示する。

・地租改正条例

が農民に与えた

影響を考察す

る。

・ワークシートを配付する。

・資料の読み取りをする。黙読後,内容について発問す

る。

○資料を読み解き,資料の内容と農民の感情を理解す

る。

☆地租改正条例が出された時の資料で,農民たちの不満

や困惑感を読み取ることができたか。

・地租改正条例の基本的な内容を発問で確認する。

・江戸時代の物納と地租改正での地価に対する税率での

金納の違いを確認する。

・なぜ農民は地租改正条例に対して不満や困惑感を感じ

ていたのか?(発問)

①江戸時代の年貢の負担と変化はあったのか?

→税負担は同じくらいか,または増加していた。農民たち

は江戸幕府の税負担に不満が強く,明治新政府になるこ

とで税負担の軽減をもためていた。

②天候等で不作の時は?

→税負担は変わらず,農民たちの負担は大きくなり,田畑

を手放すものもでた。

③金納になることでの困難さは?

→物価に左右され,不安定な状況であった。

☆資料からの情報や,発問から要点を読み取り,地租改

正条例が農民の生活に与えた影響をワークシートに記入

することができたか。

・ワークシートの設

問の要点を先に確

認させる。

・必要に応じて読み

方や,ヒントを提示

する。

・資料集の図を提

・ワークシートに発

問に対する回答の

要点を書きもらして

いる場合は,言葉

かけする。

・姿勢を正すよう,

言葉かけする。

展開2【15分】

・明治初期の農

民の資料②を

提示する。

・徴兵令が…

(中略)

・資料の読み取りを行う。

(中略)

まとめ【10分】

・本時のまとめ

・挨拶

・ワークシートを振り返る時間をとる。(2分間)

☆地租改正条例・徴兵令等が農民の生活に与えた影響を

まとめ,自分の言葉で発表することができたか。

・発表に対する評価をする。

・要点が抜けていた

場合はワークシート

を確認する様に促

す。

・次回の学習内容

について連絡する。

・評価は目標の語尾を「~で

きたか」や「~している」に

する。

・どの観点をどのように評価

しているのかを記入

・言語活動に関する課題は

で記入し,他の課題とわ

けて読み手にわかりやすくす

る。

(板書)1873 地租改正条例

○資料に記された困惑感はどのような理由からか考察

し,地租改正が農民へ与えた影響についてワークシート

に要点を記入する。

○「明治政府の政策が,農民の生活にどのような影響を

もたらしたか」の問いに,ワークシートをふりかえり,要点

を踏まえて発表する。

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135

11 評価の観点(※9の本時の目標の語尾を「~することができたか?」を基本としますが,授業内容や

教材,支援,指導者としての評価も示す。)

○学習評価

(1)明治初期の農民の生活が記された資料や,図を読み解き,内容を理解することができたか。

(2)農民の立場から明治維新はどのようなものであったかを考察し,発表することができたか。

○言語活動に対する評価

(1)資料の読み取りや,指導者の話を聞く中から,要点に気付きメモをとることができたか。

(2)要点をまとめ,自分の言葉で文章をつくり発表することができたか。

○指導に対する評価

(1)学習内容の分量は適切であったか。

(2)実態に応じた支援は適切であったか。

(3)教材・教具は目標達成に対して効果的であったか。

12 教室内配置図(※児童生徒及び指導者全員の配置がわかるよう書き込む)

※ 最後に添付資料として,該当の年間指導計画または単元計画(A4縮小版)を添付してく

ださい。

※授業者としての指導に

対する評価

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136

生活単元学習 学習指導案

(※ ○作業学習 学習指導案 × 生活単元学習指導案

○ 音楽科 学習指導案 × 音楽 学習指導案)

指導者 山田一郎(T1)

鈴木花子(T2)

(名前はフルネームで記入)

1 日時・場所 平成 28年 4月 1日(月) 3校時 11:10~11:55

中学部2年2組教室(※正式な教室名で記入)

2 指導形態 決定学級 学年 学年合同など(年間指導計画に基づき記入)

3 学部・学年 中学部 第2学年2組(Ⅱ類型)(※原則決定学級と教育課程を記入)

4 単元名

5 単元設定の理由

○ 児童(生徒)観

(こういう児童生徒でこのような教育課題があるという内容を記入します。その際,的確な実態把握に

より障害による困難さと不足している力について示します。また,これまでの学習の履歴や経験,つ

けてきた力についても記すとよいでしょう)

(研究テーマに基づきコミュニケーションについての実態を記入)

※本校チェックリストが活用できる児童生徒については,そこから把握されたこと(おおよその発達段階や

課題・目標となる項目等)についても示すとよいでしょう。

※知的代替となる目標と内容一覧(自立活動ガイドブック第5版実践編 12 頁~15 頁参照)の国語の目

標・内容を参考にアセスメントをしてください。

例)児童生徒のコミュニケーションに関する実態は,おおよそ小学部国語の第3段階の実態である。特に

内容の(1)身近な人の話を聞いて,内容のあらましが分かる,という点が特に課題となる。・・・(具体的な

様子など)

○ 題材観 (児童生徒観を踏まえて,こういう活動,学習内容を用意したという内容を記入します。)

活動内容を羅列するのではなく,本題材で学習する内容の意味や必要性,学習を通して

児童・生徒に身につくことが期待される内容について示します。また本題材が自立活動の

どの内容に重点を置かれているのかをより明確にします。

本年度の研究テーマを踏まえ,コミュニケーションおよび「表現・表出する力」を育てる内

容を示します。

また,ここでは本時の内容に対することだけではなく本題材全体のことも併せて示すとよ

いでしょう。

○ 指導観 (児童生徒観や題材観をふまえ,~のように指導するという内容を記入します。)

6 単元の目標 取り上げた単元を通して,児童生徒に求める内容を記入します。

(1)

Ⅱ類型用

※ 記入例を青字で,注意事項

を赤文字で記しています。

これらを参考にして,適宜学習

指導案を作成してください。

数字は一桁全角,2

桁以上は半角

【文頭例】指導に当たっては

「~していく。」,「~の(イメージ)を深めたい。」,「~ように設定する。」

「~達成感を高め,~意欲を高めたい。」

設定した単元(題材)は

(この単元(題材)で指導

すると・・・)

【文末例】

「~をねらうことができ

る。」

「~を実感しやすい。」

「児童にとっては~」

「~を自ら展開することが

できる。」

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137

7 指導計画[全 時間] 年間指導計画との整合性に十分留意してください。

第1次 ( 時間) 本時 /

第2次 ( 時間)

8 本時の目標

○全体の目標(※集団での授業の場合に記します。個別指導の場合は,個々の目標が本時の目標と

なります)1~7の内容との整合性に留意しましょう。

〇個々の目標

(※児童生徒がこの授業で中心的にがんばることを書く所なので,児童・生徒主体の書き方にする)

コミュニケーションについての実態把握・目標も記入する

児童・生徒名 個々の実態・様子 目標 手立て

・買い物で,「商品を手

に入れるためには,お金

を渡す」という理解が不

十分である。

・欲しい商品を買うときに

は,お金を出すことができ

る。

・見本をみせ,お金がいる

ことをレジの場面で話した

後,お金を支払わせる。

表現・表出に

関する内容

・ ・ ・

B ・ ・ ・

表現・表出に

関する内容

・話の内容をおよその内容

を聞き取ることができる。

・自分の意見などを相手に

分かるように話す。

・生徒が何を伝えたいのか

ある程度把握する。

・意識的に話す場面を作

る。話の中で説明をして分

かるようにする。

表現・表出に

関する内容

例えば,全50時間,本時 20/25(第1次)の場

合では,1次としての目標 7-8 割に到達している

こと,全体として4割程度達成していることを意

味します

・1~7や全体の目標に示された内

容との整合性を図る。

・実態―目標―手立ての記述内容の

整合性を図る。

的確な実態把握であったか,実態から導かれた目標は明確であったか,目標の達成のための手立

ては適切であったかを検証することにより,指導の在り方を研究する。

実態から導き出される課題に対する目標を記述します。 本校アセスメントチェックリストを活用した場合は,その課題となる項目を末尾に記入します。(複数可) 例)要求表出Ⅱ段階7「支援者からの働き掛けを受け,

笑う等の快反応がある」→要Ⅱ-7

目標がチェックリストの項目から見出された場合は,手引の内容を参考にしながら,児童生徒の実態にあった手立てを考え,記入します。

表現・表出に関する,こ

れまでの様子や課題を

記述します。

※リストの領域名(略称)

要求表出→要 人間関係→人

聴覚・言語→聴 言語理解→言理

言語表出→言表 触覚等→触

視覚等→視 視覚・操作等→操

数量・概念→数 ADL→A

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138

9 準備物

10 指導過程(文章量によっては別紙とします)

学習活動 指導上の留意点 (□課題 ○支援・配慮 ☆評価基準)

A T1① B T2 C T3 全体

1 始まりの挨拶

をする。

(3分)

3 学習活動

(10分)

挨拶の前に,学

習姿勢 を 整 え

る。

○児童の目を見

てゆっくり話しか

ける。

○見本をみせ,

お金がいることを

レジの場面で話

した後,お金を

支払わせる。

☆貼る場所を意

識して貼ることが

できたか。

挨拶の前に,正しい

姿勢に整える。

○骨盤の傾きをまっすぐにする

○生徒が何を伝え

たいのかある程度

把握する。(T2)②

○意識的に話す場

面を作る。話の中で

説明をして分かるよ

うにする。

☆分かるように話す

ことができたか。

①のように

挨拶の前に,立位台に立つ。

楽しく明るい雰囲気をつくる。

学習活動は,児童・生

徒主体の文体にする。

・欲しい商品を

買うときには,お

金を出すことが

できる。

2 学習活動

(15分)

・自分の意見な

どを相手に分

か る よ う に 話

す。

8本時の目標○個々の目標を踏まえて基本的に

は,課題―支援―評価を一組として示す。☆評

価不要の配慮事項もある。

全体欄には,全体に共通する留

意点,環境・状況設定等につい

て記述する。

□→課題を記入。

○→支援の内容を記入する。

☆→評価の観点(指標)

研究テーマである表現・表出に関する

課題は, で記入することで他の

課題と区別し,読み手にわかりやすく

する。

全体としての活動を簡潔

に時系列に記述する。ま

た,時間配分についても

明記する。

課題の達成に向けての

支援・手立てを具体的に

記述する。

各学習活動における,

個々の課題を記述す

る。

どのような観点で児童生

徒の学習の様子や課題

達成の状況を評価する

のかが分かりやすくな

る。 T1,T2などの記号で,複数いる指導者の誰がその児

童生徒の指導を担当するのかを明記する。途中で担

当が交代する,複数対応等は②にように本文中に示

す。

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139

11 評価の観点(※8の本時,個々の目標の語尾を「~することができたか」を基本としますが,授業内容や

教材,支援,指導者としての評価も示してあるとよいでしょう。)

○ 買い物ごっこを通じてお金の価値を知ることができたか

個別の目標

○ 自分からお金を出すことができたか。

○ ・・・・(表現・表出に関する目標)

○ ・・・・(個々の目標)

○ 分かるように話をすることができたか。

指導の目標

○ 学習内容の分量は適切であったか。

○ 実態に応じた支援は適切であったか。

○ 教材・教具は目標達成に対して効果的であったか。

12. 年間指導計画

〇ねらい その教科などの年間目標を記入

〇計画 1学期・2学期・3学期に計画していることをおおまかに記入

※決定学級で行う場合は,該当の年間指導計画の中から関連する計画を抜粋して記します。

13. 教室内配置図(※児童生徒及び指導者の配置がわかるよう書き込んでください)

その他,次の点について留意してください。

※ 最後に添付資料として,該当の年間指導計画(A4縮小版)を添付してください。

※ 本校チェックリスト対象となる児童生徒であればプロフィール表を作成し添付してくださ

い。

※本時の目標からの評価(個別指導では不要)

※授業者としての指導に

対する評価

※個々の目標からの評価

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140

別紙1 児童(生徒)の実態の参考資料(本校アセスメントチェックリストによるプロフィール表)

〔A〕

月齢

段階

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

Ⅰ 快不快の分化 人の働きかけによ

る快反応 外界への気付き (聴覚 )

外界 への気付 き(皮 膚 感

覚・味覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

光への反応

色への反応

2

反 応 表 出 の芽

生え

大人への注意

人への注意

声への好反応

音への注意

音の変化への気付き

外 界 への興 味 (触 覚 ・味

覚・嗅覚等) 探索 (触覚 )

注視

追視

4

期待反応

やりとりの予測

応 答 性 の あ る

行動

要求の芽生え

人への愛着

やりとりの芽生え

大人への積極性

声の変化への気付き

音の方向性への気付き

音への興味

特定フレーズへの気付き・意味付

物の単純な操作

因果関係の理解の芽生え

探索(視覚)

リーチング

目と手の協応の芽生え

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的

行動

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大 人 の注 意 を

引く

要 求 手 段 の多

様化

指さし要求

やりとりの拡大

共感性の芽生え 名詞等の理解 発語の芽生え

空 間 認 知 の芽

生え

始点と終点の理

手指の活用

保存の概念

比較の概念

模倣

生活場面等の

理解

13

要求の具体化・

明確化

言語を伴う要求

社会性の芽生え

共感性の高まり

言語 指示 ・二 語

文の

理解

質問への応答

動詞・形容詞等の

理解

言葉の模倣

名詞等の発語

視 覚 情 報 の活

図形概念の芽生

数 ・量 概 念 の芽

生え

生 活 場 面 での

記憶の活用

見 立 て ・ごっ こ

遊びへの興味

19

24 Ⅶ

自 己 主 張 の芽

生え

言語での要求

他の子供への興

自己意識の芽生

社会性の高まり

理解語彙の増加

言語指示への応

カテゴリー概念の

芽生え

場面 に合 う言

葉の活用

表出語彙の増

二語文等の表

道具の使用

空 間 認 知 の高

まり

数 ・量 概 念 の高

まり

カテゴリー概念の

芽生え

見 立 て ・ごっ こ

遊び

食事 ・排泄 ・衣

服・清潔等 ADL

の基礎

※記入例

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141

自立活動(○○・○○) 学習指導案

指導者 山田一郎(T1)

鈴木花子(T2)

(氏名はフルネームで記入)

1 日時・場所 平成 28 年 4月 1 日(木) 3校時 11:10~11:55

小2年3組教室(※正式な教室名で記入)

2 授業形態 決定学級(※年間指導計画に基づき記入)

3 学部・学年 小学部 第2学年3組(Ⅲ類型)

(※原則,決定学級と教育課程を記入)

4 題材名 例:座ってみよう,触ってみよう,お話をしようなど

(※児童生徒の視点に立ち,一人一人の課題を踏まえて,年間指導計画に基づき設定 )

5 題材設定の理由

○ 児童(生徒)観 (こういう児童生徒でこのような教育課題があるという内容を記入します。そ

の際,的確な実態把握により,障害による困難さと不足している力について

示します。また,これまでの学習の履歴や経験,つけてきた力についても記す

とよいでしょう)

(研究テーマに基づきコミュニケーションについての実態を記入)

※本校チェックリストが活用できる児童生徒については,そこから把握された

こと(おおよその発達段階や課題・目標となる項目等)についても示すとよい

でしょう。

○ 題材観 (児童生徒観を踏まえて,こういう活動,学習内容を用意した,という内容を記入

します。)

活動内容を羅列するのではなく,本題材で学習する内容の意味や必要性,児童

生徒に身につくことが期待される内容について示します。また,本題材が自立活動

のどの内容に重点を置かれているのかをより明確にします。

本年度の研究テーマを踏まえ,コミュニケーションおよび「表現・表出する力」を育

てる内容を示します。

また,ここでは本時の内容に対することだけではなく本題材全体のことも併せて示

すとよいでしょう。

○ 指導観 (児童生徒観や題材観をふまえ,~のように指導する)

6 題材の目標 取り上げた題材を通して,児童生徒にねらうものを記入します。

※ 記入例を青字で,注意事項を赤

文字で記しています。

これらを参考にして,適宜学習指導

案を作成してください。

ⅢⅣ類型用

数字は一桁全角,

2桁以上は半角

・活動がイメージしやすい表現

活動の意欲が高まるような表現

分かりやすい表現が望ましい

【文頭例】指導に当たっては

【文末例】「~していく。」,「~の(イメージ)を深めたい。」,「~ように設

定する。」「~達成感を高め,~意欲を高めたい。」

設定した単元(題材)は

(この単元(題材)で指

導すると・・・)

【文末例】

「~をねらうことがで

きる。」

「~を実感しやすい。」

「児童にとっては~」

「~を自ら展開するこ

とができる。」

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142

7 指導計画[全 時間]年間指導計画との整合性を十分留意してください。

第1次 ( 時間) 本時 /

第2次 ( 時間 )

8 本時の目標

○全体の目標

例:自分から身体を動かす。

○個々の目標(※個別の指導の場合は個々の目標を全体の目標として記します。)

(※個別の指導計画を踏まえて,実態,目標,手立てを示します)

児童・生徒 実態 目標 手立て

A 興味のあるものに手

を伸ばそうとする姿

が見られる。

自分から玩具など

の興味のあるもの

に手を伸ばす。

手の筋緊張を緩め,状態を確

認しながら指導を行う。見えや

すい位置や手が伸ばしやすい

位置に玩具などを置き,自発

性を促すようにする。

表現・表出に

関する内容

・ ・

B ・ ・ ・

表現・表出に

関する内容

・「快」の感覚を得られ

ることが少なく,表しに

くい。

・ 笑 い 声 を 出 し て

「快 」の感覚を表出

する。(要Ⅱ-7)

好きな遊びを繰り返し行う。声を

かけながら,安心できる環境をつ

くるようにする。

C

表現・表出に

関する内容

例えば,全50時間,本時 20/25(第1次)

の場合では,1次としての目標 7-8 割に到

達していること,全体として4割程度達成

していることを意識してください。

・1~7や全体の目標に示され

た内容との整合性を図る。

・実態 -目標 -手立ての整合性を

図る。

的確な実態把握であったか,実態から導かれた目標は明確であったか,目標の達成のた

めの手立ては適切であったかを検証することにより,指導の在り方を研究する。

※「全体の目標」は,決定学級の授業の場合に記します。個別指導の場合は,個々の目標が本時の目標となります。 ※1~7の内容との整合性に留意しましょう。

※リストの領域名(略称)

要求表出→要 人間関係→人 聴覚・言語→聴 言語理解→言理

言語表出→言 表触覚等→触 視覚等→視 視覚・操作等→操

数量・概念→数 ADL→A

実態から導き出される課題に対する目標を記述します。本校アセスメントチェックリストで見出された課題となる項目を末尾に記入します。(複数可) 例)要求表出Ⅱ段階7「支援者からの働き掛けを

受け,笑う等の快反応がある」→要Ⅱ-7

表現・表出に関する,

これまでの様子や課

題を記述します。

目標となったチェックリストの項目の手引の内容を参考にしながら,児童生徒の実態にあった手立てを考え,記入します。

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143

※個々の目標からの評価

9 準備物

10 指導過程(文章量によっては別紙とします)

11 評価の観点(※8 の本時,個々の目標の語尾を「~することができたか」を基本としますが,

授業内容や教材,支援,指導者としての評価も示してあるとよいでしょう。)

○ 自分から体を動かすことができたか

個別の目標

A ○ 自分から興味のあるものに手を動かすことができたか。

○ ・・・・(表現・表出に関わる目標の評価)

B ○ ・・・・(個々の目標の評価)

○ 笑い声を出せたか。

C ○ ・・・・(個々の目標の評価)

○ ・・・・(表現・表出に関わる目標の評価)

学習活動 指導上の留意点 (□課題 ○支援・配慮 ☆評価基準)

A T1① B T2 C T3 全体

1 始まりの挨拶

をする。(3分)

2 玩具で遊ぶ。

(10 分)

3 音を鳴らす

(10 分)

挨拶の前に,学 習

姿勢を整える。

○児童の目を見てゆ

っくり話しかける。

○手の筋緊張を緩

め,状態を確認しな

がら指導を行う。

○見えやすい位置

や手が伸ばしやすい

位置に玩具などを置

き,自発性を促すよ

うにする。(T1)②

☆自分から玩具に

手を伸ばすことがで

きたか。

挨拶の前に,正し

い姿勢を整える。

○骨盤の傾きをま

っすぐにする

○好きな遊びを繰

り返し行う。(T2)②

○声をかけながら,

安心できる環境を

つくるようにする。

☆教員との遊びを

通して笑顔などの

表 情 が 見 ら れ た

か。

挨拶の前に,立

位台に立つ。

楽しく明るい雰

囲気をつくる。

学習活動は,児

童・生徒主体の

文体にする。

・自 分 から玩 具

などの興味のあ

るものに手 を伸

ばす。

課題の達成に向けて

の支援・手立てを具体

的に記述する。

各 学 習 活 動 におけ

る,個々の課題 を記

述する。

□→課題を記入。

○→支援の内容を記入する。

☆→評価の観点(指標)

・笑い声を出して

「快」の感覚を表

出する。 研究テーマである表現・表出に関

する課題は, で記入すること

で他の課題と区別し,読み手にわ

かりやすくする。

8本時の目標○個々の目標を踏まえて基

本的には,課題―支援―評価を一組として

示す。☆評価不要の配慮事項もある。

全体としての活動を簡

潔に時系列に記述す

る。また,時間配分につ

いても明記する。

全体欄には,全体に共通す

る留意点,環境・状況設定等

について記述する。

どのような観点で児童

生徒の学習の様子や

課題達成の状況を評

価するのかが分かりや

すくなる。 ①のように,T1,T2などの記号で,複数いる指導

者の誰がその児童生徒の指導を担当するのかを

明記する。途中で担当が交代する,複数対応等

は②にように本文中に示す。

※本時の目標からの評価(個別指導では不要)

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144

指導の目標

○ 学習内容の分量は適切であったか。

○ 実態に応じた支援は適切であったか。

○ 教材・教具は目標達成に対して効果的であったか。

12 年間指導計画

※決定学級で行う場合は,該当の年間指導計画の中から関連する計画を抜粋して記します。

記入例

目 標(年間指導計画から) 題 材 名 時間数

○感覚を育てる。

○情緒の安定を図る。

○季節の違いを感じる。

○友だちや周囲を意識する。

さわってみよう 35(1学期)

何がちがうかな 35(2学期)

一緒にさわってみよう 35(3学期)

合 計 105(年間)

※個別の授業の時は,“個別の指導計画による”と記入することを基本としますがが,7 指導

計画において記されている計画が通年ではない場合は,その前後を記しましょう。

個別指導の場合は個別の指導計画がベースとなるので,例えば,個の目標に対する指導と

して“まわりを探してみよう”という単元で7 指導計画にて 25 時間毎の 1-3 次の計75時

間の単元で示した場合は,ここにはその前後の 100 時間を次のように示すと,指導のスモール

ステップが段階的に整理されいることがよく分かります。

記入例

目 標(個別の指導計画から) 題 材 名 時間数

○ 周囲に興味をもち,自ら関わる。

○ 対象物を見て手を動かす。

○ 理解できることばを増やす。

よく見て手を伸ばそう 50(1学期)

まわりを探してみよう 75(2学期)

自分で選んで遊ぼう 50(3学期)

合 計 175(年間)

13 教室内配置図(※児童生徒及び指導者の配置がわかるよう書き込んでください)

その他,次の2点について留意してください。

※ 本校チェックリスト対象となる児童生徒であればプロフィール表を作成し添付し

てください。

※ 最後に添付資料として,該当の年間指導計画(A4 縮小版)を添付してくださ

い。

※ⅢⅣ類型で本校チェックリストが活用できる児童生徒についてはプロフィール表を作成し,指

導案の中に入れるのではなく,参考資料として最後に添付します。※表は児童生徒の人数分,

作成します。(3 人なら表は3つになります)

プロフィール表は,児童生徒の課題となる段階のキーワードに網掛けをします。

※授業者としての指導

に対する評価

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145

〔A〕

〔B〕

( プロフィール表 略 )

〔C〕

( プロフィール表 略 )

コミュニケーション 認知

要求表出 人間関係 聴覚・言語 触覚等 視覚等

0

Ⅰ 快不快の分化 人の働きかけによ

る快反応 外界への気付き (聴覚 )

外界への気付 き (皮 膚 感

覚・味覚・嗅覚等)

外界への気付き(視覚)

光への反応

色への反応

2

反 応 表 出 の芽

生え

大人への注意

人への注意

声への好反応

音への注意

音の変化への気付き

外 界 への興 味 (触 覚 ・ 味

覚・嗅覚等) 探索 (触覚 )

注視

追視

4

期待反応

やりとりの予測

応 答 性 の あ る

行動

要求の芽生え

人への愛着

やりとりの芽生え

大人への積極性

声の変化への気付き

音の方向性への気付き

音への興味

特定フレーズへの気付き・意味付

物の単純な操作

因果関係の理解の芽生え

探索(視覚)

リーチング

目と手の協応の芽生え

7

要求表出

選択の表出

指さし理解

自分への気付き

大人への自発的

行動

他者意図の理解

音等への記憶の蓄積

言葉の理解の芽生え

探索的操作

因果関係の理解

操作性の高まり

物の永続性の芽生え

視覚的変化への興味

探索的操作の芽生え

言語理解 言語表出 視覚・操作等 数量・概念 ADL

10

大 人 の注 意 を

引く

要 求 手 段 の多

様化

指さし要求

やりとりの拡大

共感性の芽生え 名詞等の理解 発語の芽生え

空 間 認 知 の芽

生え

始 点 と 終 点 の

理解

手指の活用

保存の概念

比較の概念

模倣

生活場面等の

理解

13

要求の具体化・

明確化

言語を伴う要求

社会性の芽生え

共感性の高まり

言語指示 ・二 語

文の理解

質問への応答

動詞・形容詞等の

理解

言葉の模倣

名詞等の発語

視 覚 情 報 の活

図形概念の芽生

数 ・量 概 念 の芽

生え

生 活 場 面 での

記憶の活用

見 立 て ・ごっこ

遊びへの興味

19

24 Ⅶ

自 己 主 張 の芽

生え

言語での要求

他の子供への興

自己意識の芽生

社会性の高まり

理解語彙の増加

言語指示への応

カテゴリー概念の

芽生え

場面 に合 う言

葉の活用

表出語彙の増

二語文等の表

道具の使用

空 間 認 知 の高

まり

数 ・量 概 念 の高

まり

カテゴリー概念の

芽生え

見 立 て ・ごっこ

遊び

食事 ・排泄 ・衣

服 ・ 清 潔 等

ADL の基礎

※記入例

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146

平成28年度

学 習 指 導 案 集

発行日 平成29年3月

発行者 広島県立福山特別支援学校

〒720-0841

広島県福山市津之郷町津之郷280-3

TEL 084-951-1513

FAX 084-951-3864

http://www.fukuyama-sh.hiroshima-c.ed.jp/

編集者 広島県立福山特別支援学校 教育研究部