16
1 海外・帰国子女研究の文献分析 研究方法論の志向を探って 鹿野  緑 要  旨 本稿の目的は、多様な異文化教育現象の中から「海外の日本人子ども・帰国児童 生徒」について、その現状と推移を概観し、関連した研究の文献を分析することを 主とする。さらに、ボーダーを超えて移動する子どもたちに関する研究の今後の方 向性を探る。親に同行して海外生活をする日本人の子どもたちは約 6 5 千人(2011 現在)に上る。いわゆる海外・帰国子女に関する文献を検索し、主題をまとめたと ころ、教育の課題と展望、教育実践報告の他、言語能力・習得・喪失、心理的側面 から適応・異文化接触と心理・アイデンティティなどが中心的であった。リサーチ 手法は多様であり、今後、特にインタビューやライフヒストリー、ナラティブなど 対話者とのインターアクションを通して構築する形の手法の有用性が期待される。 キーワード:トランスナショナル、多文化に生きる子どもたち、海外子女教育、帰 国子女教育、文献メタ分析 1.はじめに 国家や文化のボーダーを超えた教育現象は、今や日常のこととなってきた。それは主に、 グローバリゼーションが生み出した、地球主義(日常生活が世界システムに組み入れられ ること)とボーダーレス化(人の国際移動の促進、文化のトランスナショナルな動き)の 二つの流れによるものと捉えることができる(佐藤、2007)。加えて、通信ネットワーク の発達による情報の即時化、地球規模でのシステムの一体化も含まれよう。トランスナショ ナリゼーション 1により各国の民族・人種構成が異質化し(同上;p. 11)、日常のレベル で異なる文化背景を持つ人と共生することが求められるようになってきた。たとえば、国 際結婚をして日本に住む夫婦、日本で就労する外国人、留学生、在日する外国人児童生徒(外 国人就労者や国際結婚の家庭の子ども)たちと、私たちは日常的に接触する。また、海外 赴任する日本人ビジネスマン、親に同行して海外で生活する子どもたち(また、その後帰 国する子どもたち)、在外研究を行う日本人研究者、海外勤務する政府関係者など多様な 姿が国外にもある。 そのような背景において、ボーダーを超えて移動する日本人の子どもたち―いわゆる海

海外・帰国子女研究の文献分析 - Nanzan Universityoffice.nanzan-u.ac.jp/ncia/about-cia/item/pdf_13/kenkyu_01.pdf第 2章では海外・帰国子女の現状と推移、第3章では異文化間教育現象の多様性と研究の多

  • Upload
    others

  • View
    2

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

1

海外・帰国子女研究の文献分析―研究方法論の志向を探って

鹿野  緑

要  旨

 本稿の目的は、多様な異文化教育現象の中から「海外の日本人子ども・帰国児童生徒」について、その現状と推移を概観し、関連した研究の文献を分析することを主とする。さらに、ボーダーを超えて移動する子どもたちに関する研究の今後の方向性を探る。親に同行して海外生活をする日本人の子どもたちは約6万5千人(2011

現在)に上る。いわゆる海外・帰国子女に関する文献を検索し、主題をまとめたところ、教育の課題と展望、教育実践報告の他、言語能力・習得・喪失、心理的側面から適応・異文化接触と心理・アイデンティティなどが中心的であった。リサーチ手法は多様であり、今後、特にインタビューやライフヒストリー、ナラティブなど対話者とのインターアクションを通して構築する形の手法の有用性が期待される。

キーワード: トランスナショナル、多文化に生きる子どもたち、海外子女教育、帰国子女教育、文献メタ分析

1.はじめに

 国家や文化のボーダーを超えた教育現象は、今や日常のこととなってきた。それは主に、

グローバリゼーションが生み出した、地球主義(日常生活が世界システムに組み入れられ

ること)とボーダーレス化(人の国際移動の促進、文化のトランスナショナルな動き)の

二つの流れによるものと捉えることができる(佐藤、2007)。加えて、通信ネットワーク

の発達による情報の即時化、地球規模でのシステムの一体化も含まれよう。トランスナショ

ナリゼーション 1) により各国の民族・人種構成が異質化し(同上;p. 11)、日常のレベル

で異なる文化背景を持つ人と共生することが求められるようになってきた。たとえば、国

際結婚をして日本に住む夫婦、日本で就労する外国人、留学生、在日する外国人児童生徒(外

国人就労者や国際結婚の家庭の子ども)たちと、私たちは日常的に接触する。また、海外

赴任する日本人ビジネスマン、親に同行して海外で生活する子どもたち(また、その後帰

国する子どもたち)、在外研究を行う日本人研究者、海外勤務する政府関係者など多様な

姿が国外にもある。

 そのような背景において、ボーダーを超えて移動する日本人の子どもたち―いわゆる海

2

国際教育センター紀要 第13号

外子女や帰国子女 2) ―の状況は、どのように変わって来ているのだろうか。また、変化す

る状況の中で何が課題となって来ているのだろうか。

 大沢周子 3) (1986)が自身の子どもの異文化体験を綴った『たったひとつの青い空―海

外帰国子女は現代の棄て児か』が、NHKによってドラマ化されたのは1987年のことであ

る。そのドラマ「絆 4) 」は、たいへん大きな反響を呼んだ。ドラマでは、親の勤務の都合

でアメリカ暮らしをしていた少年が、高校受験の準備のために、父母を残し単身帰国して

くる。日本の中学に入ると、英語の宿題の丸写しを断って孤立し、英語教師から口語英語

を批判され、周囲から「へんじゃぱ」と呼ばれる。そして凄絶な身体的いじめを受けるま

でに追いつめられて行く。ついには日本人の行動を真っ正面から批判し、日本と決別して

父母の待つアメリカのハイスクールに進学することを決意する。

 1960年代より帰国子女の存在は認識されていたが、このドラマが描いたように、帰国

子女を取り巻く問題が教育問題・社会問題として顕在化したのは1980年代のことであっ

た。研究が本格化したのも1980年代である(佐藤、1995)。それを機に海外・帰国子女の

位置づけと教育は転換期を迎える。文化適応の概念を再定義する試みがなされた。また、

文化への不適応を前提とするような教育が批判された(斎藤、1986)。そして、海外・帰

国子女をめぐる課題の提示と教育の再構築(佐藤、1997)等の実践が試みられて来た。中

には、グッドマン(1992)のように、帰国子女を「新しい特権層の出現」と捉えて「一般

の子どもたちよりも有利な立場を獲得した(p. xvii)」とする見方もでてきていた。現在で

は、国際的な経済が変化しており、海外子女をとりまく状況などにも影響があるだろう。

帰国子女の受入については、制度を整えている学校数は増加している 5) (海外子女教育振

興財団、2012)。また、そのまま帰国子女にならない脱・帰国子女化 6) の現象が現れる等、

帰国後の子どもたちを取り巻く新たな傾向も指摘されている。

 本稿の目的は、多様な異文化教育現象の中から「海外の日本人子ども・帰国児童生徒」

を対象にした教育研究について、最近の文献を分析することを主とする。それに基づいて、

ボーダーを超えて移動する子どもたちに関する研究の今後の方向性を探ることとする。第

2章では海外・帰国子女の現状と推移、第3章では異文化間教育現象の多様性と研究の多

様性、第4章では文献のメタ分析と今後の研究の方向性について論ずることを試みる。

2.海外・帰国子女の現状

(1)在留邦人の現状

 外務省「管内在留邦人数統計(平成23年速報版) 7) 」の推計によると、2010年10月1日現在、

日本の領域外に在留している日本人の数(永住者と長期滞在者 8) との合計)は、約114万

人に上る。人数は毎年増加しており、特にアジアでの増加率が高い。在留邦人数を地域別

3

海外・帰国子女研究の文献分析

に見ると、①北米地域(38.74%)がトップで、順に②アジア(27.36%)、③西欧(15.51%)、

④オセアニア(7.98%)、⑤南米(7.33%)と続く。永住者と長期滞在者の集中を地域別に

比較すると、永住者は北米(44.42%)と南米(30.44%)に集中する一方、長期滞在者は

北米(38.76%)、アジア(32.15%)、そして西欧(19.26%)に集中する。その長期滞在者

を職業別に見ると、アジアや中米・カリブ、中東、南米には主に民間企業社員等が、北米

や西欧には主に民間企業社員や留学・研究者等が、アフリカには主に政府関係者等が在留

している。

 海外子女とは、このように「国際活動をしている大人が帯同する学齢期の子どもたち」

をさす。外務省だけではなく文部科学省も支援をしている 9) 。一方、帰国子女とは、「海

外体験後帰国して日本の教育施設にもどる児童生徒」をさす。海外・帰国子女は、親の赴

任等で海外生活を余儀なくされ、その結果日本政府が提供する適切な教育の機会が奪われ

ることから、特別支援が必要とされている。また、中国残留孤児の日本帰国の際に同伴す

る子女等も同じ理由から帰国子女と見なされ、支援のためにさまざまな施策が行なわれて

いる 10) 。

(2)海外子女の現状

 政府は、「主権の及ばない外国において、日本人の子どもが、日本国民にふさわしい教

育を受けやすくするために、憲法の定める教育の機会均等及び義務教育無償の精神に沿っ

て、海外子女教育の振興のために様々な施策を講じ 11) (文部科学省、2011;p. 1)」、在外

教育施設(日本人学校・補習授業校・私立在外教育施設)を設置している。日本人学校は

2012年現在51カ国・地域に88校 12) (同上)あり、国内の小・中学校教育と同等の教育課

程を有するほか、現地の言語・文化・地理・歴史など現地事情に関わる学習も提供するこ

とができる。設置・運営は一般的に現地の日本人会等が主体となって行なう。補習授業校

は56カ国に203校 13) (同上)が設置されており、週末や放課後の時間を使って、国内の学

校教育の教育課程の一部の教科について日本語で授業を行なう。私立の施設としては、学

校法人が母体となった全日制9校 14) (同上)がある。現地の日本人学校は政府認可のもと

日本人会等が設置・運営する施設であり、法人が運営する私立学校とは区別される。

 就学年齢前の幼児・幼稚園児や義務教育後の高校生に対する教育については、私立の高

等部以外実はあまり言及がなく、支援実体も少ないと考えられる。2011年に、中国の上

海に、世界で初めての日本人学校高等部が開かれたばかりである。

 外務省統計 15) および文部科学省の報告書 16) によれば、2011年4月現在、約6万5千人(学

齢期)の海外子女がいる。文部科学省の平成23年(2011年)度版報告書によれば、その

約6万5千人のうち、小学生が約4万8千人、中学生が約1万7千人である。また、推移を

見ると、昭和56年(1981年)には約3万人であったのが、平成3年(1991年)には5万人

4

国際教育センター紀要 第13号

を超えた。それ以降5~6万人台の横ばいまたは微増が続き、平成22年(2010年)には約

6万7千人のピークを迎えている。主な就学形態別子どもの数を図1に示す。日本人学校

に通う海外子女数は全体で約1万9千人、現地校と補習授業校の両方に通うのは約1万5千

人、現地校等に約2万9千人と推計される。特徴的であるのは、アジア、中東などは日本

人学校に通う割合が高く、北米、ヨーロッパ、オセアニアでは、現地校または現地校+補

習授業校の割合が高い。比較のため、図2にアジア(2 ― 1)と北米(2―2)について就学形

態別子ども数を示す。

 次に、海外子女人数の推移を就学形態別(日本人学校、補習授業校+現地校、現地校等)

に作成し、図3 17) に示す。図3は、外務省公館別(学齢)子女数(平成16~23年)、文部

科学省CLARINET資料に基づき作成した。

 1977年に全体で約2万人であった子女数は、1992年に約5万人となり一つのピークを迎

える。それ以降やや減少するが、2000年代に入り再び増加し2011年には約6万5千人に上っ

た。この30数年間で在外邦人全体が増加したことに比例するように、海外に暮らす日本

人子どもの数も着実に増加している。

 全体数のみならず、就学形態にも大きな変化

がある。図3が示すように、1977年から10年程

は、日本人学校に通う子どもたちが最も多かっ

た(1977年は日本人学校8,243人、補習授業校+

現地校7,128人、現地校等4,113人)が、徐々に、

現地校等に通いながら週末には補習授業校で日本

語等を学ぶ子どもが増え、1988年(日本人学校

17,238人、補習授業校+現地校18,049人、現地校

等8,836人)には逆転現象がおきた。さらに2002

年(日本人学校16,516人、補習授業校+現地校

図2―2: 2011年度就学形態別子ども数北米(義務教育段階)(人)

出典: 図1と同様。

図2―1: 2011年度就学形態別子ども数アジア(義務教育段階)(人)

出典: 図1と同様。

図1: 就学形態別子ども数世界全体(義務教育段階)(人)

出典: 文部科学省(2011)、外務省(2011)の統計よりデータを抽出して作成した。

5

海外・帰国子女研究の文献分析

17,296人、現地校等18,234人)には、現地校等のみに通う子どもたちの数がそれ以外を上

回ることとなり、2011年までその傾向が続き、両方を合わせてほぼ7割の約4万5千人が

何らかの形で現地校もしくはインターナショナルスクールに通っている。

 政府以外の海外子女教育支援には、日本人ビジネスマンを海外に派遣する側である日

本在外企業協会(社団法人)や、海外・帰国子女の教育振興を目的とする海外子女教育

振興財団(公益財団法人)などがあり、それぞれの立場から、「海外生活」と「海外・帰

国子女教育」を支援している(日本在外企業協会、2008、2010;海外子女教育振興財団

2007a、2007b、2007c)。

 近代化の歴史の中で異文化体験と言えば、かつては限られたエリート層の留学経験等で

あった。それが、国の経済成長につれ、大勢の一般の子どもたちが家族とともに異文化に

生き、異なる教育制度におかれるようになったということが、この現象の特徴であろう。

(3)帰国子女の現状

 文部科学省は毎年、学校基本調査 18) を実施する。その統計において、帰国子女とは「海

外勤務者等の子女で、引き続き1年を超える期間海外に在留し、年度間(4月から翌年3

月31日)に帰国した児童・生徒」として算入される。学校基本調査のデータに基づき、

学校区分別の人数を図4に示す。

 次に、帰国子女人数の推移を図5に示す。1977年には5千9百人であったのが、海外子

女数の増加に伴って、ピーク時には約1万4千人(1992年度)まで増加した。2000年代に

入ると1万~1万2千人前後となり、2009年度を境に再び減少の傾向を見せている。2011

年度間に帰国した子女は、ほぼ1万人であった。2010年度、2011年度の海外子女数はそれ

ぞれ約6万7千人、約6万5千人と最大となっているが、一方で、帰国する人数は1万人を

割るなど減少の傾向にあり、在外期間の長期化が推測される。図3、図5の推移が示すよ

図3:海外子女就学形態別人数の推移(1977~2011)

6

国際教育センター紀要 第13号

うに、海外子女、帰国子女ともに1992年前後に一旦ピークを迎え、その後やや微減のあ

と再び増加するゆるやかな変形M字型の推移を示している。

 当初、帰国子女の受け入れ教育は、彼らの日本の学校生活への円滑な適応を重要目的と

していた。また、人間形成にとって重要な学齢期に外国にいたことで、異文化体験の否定

的な側面や教育の不利益のみが強調され、「再教育」や「外国剥がし」と呼ばれるような

帰国子女教育の状況があった(海外子女教育史編纂委員会、1991)。しかしある時期には、

特に英語を流暢に操る「バイリンガル」と呼ばれるなどしてもてはやされ、その国際性に

注目が集まったりした。最近では、外国文化で培われたたくましさなどを肯定的に受け取っ

たり、個人の能力を生かしたりする方向性をうちだす学校が増えて来ている(海外子女教

育振興財団、2012)。

3.多文化に生きる子どもたちをめぐる教育現象の多様性

 佐藤郡衛は、異文化間教育を次のように定義し、課題を提示している 19) :

図4:学校区分別帰国子女数(2011年度帰国)出典: e-Stat政府統計、学校基本調査に基づき作成

した。

図5:帰国子女数の推移出典:図4と同じ

7

海外・帰国子女研究の文献分析

異文化間教育とは、「二つ以上の文化の狭間で生活する人を対象にして、その人間

形成や発達について、他者との関係性を通して把握すること」である。同時に「人

間形成や発達過程をどのように組織していくかを検討していくこと」である。その

中に、「異文化接触を契機にした人間形成の歩みと発達過程を文化間の関係性に注

目して分析していく」ところに特徴があり、「その関係性を組み替え、共生に向け

た新しい関係性を構築していく」ことが課題となる(佐藤、2007;p. 14)。

 異文化を捉える際の問題点として、1)母国の文化を習得された自明のものとし、理解

困難な異文化が存在すると考える二分法に陥る;2)自文化が他者から見れば他文化であ

ることを忘れがちな、互換性の意識が脱落する;3)国民や国語レベルで文化が区分され、

それ以下のカテゴリー(たとえばジェンダーなど)が沈黙を強いられる、ことなどが指摘

されている(稲賀、2000)。文化について、文化人類学的な視座からは「個人から外在す

るもの」が強調されるが、心理学的に見れば、文化とは「個人に内在するもの」で「個人

と環境の相互作用」の中で捉えることができる(箕浦、1988) 20) 。佐藤(同上)は、異文

化間教育を理解する際には、文化の関係性をとらえることが重要であるとして、三つの視

点を提示した。第一は単一文化的視点(一つの文化的な基準を基にした適応モデル)、第

二は比較文化的視点(複数の文化間を比較しそれぞれの特徴を解明する)、第三は異文化

間的視点(複数の文化の接触・相互作用に焦点をあてる)である。つまり、単一文化的視

点をとると、文化Aの人が文化B(マジョリティ)に同化・適応するかどうかが焦点となる。

比較文化的視点をとると、文化Aと文化Bの違いが強調される。一方で、異文化間的視点

をとると、AとBの文化が交差したときの相互作用の結果に焦点がおかれる。佐藤はこの

第三の視点を重要視している。この考え方は、言語接触の相互作用を考える際の複言語主

義的視点と共通する。言語Aと言語Bのバイリンガル話者には、AとBが固定的な割合で

存在するのではなく、融合した新たなC的心的状態が生まれているとする見方が可能であ

る。文化を国家的な固定のものと捉えずに、常に流動的に融合的に人間に影響を及ぼすも

のであると捉えると、子どもの心的状態が文化融合によって新たな状態になったと考える

ことが可能である。第一、第二の文化が融合して第三の新たな文化を独自につくるという、

サードカルチャーキッズ 21) (TCK、3CK)という捉え方もこの三つ目の視点に近いだろう。

その点では、文化を移動して生きる子どもたちは、異文化の狭間に生きるのではなく、多

文化に生きる子どもたちという表現の方がむしろふさわしい。

 「ボーダーを超えて多文化に生きる子どもたち」をとりまく文化接触事象も、彼らに行

なわれる教育現象も多様である。海外で生活する日本人子どもたちの異文化体験・海外子

女教育、帰国した子どもたちの受け入れ・教育、外国人留学生の異文化体験・教育・支援、

在日する外国人児童生徒(特に外国人就労者の家庭の子ども)や中国帰国者の家庭の子ど

8

国際教育センター紀要 第13号

もに対する受け入れ・日本語教育・生活支援、その他多様な対象に及ぶ。そこで、次の章

では、研究の主題・対象・手法を中心に、具体的に海外子女・帰国子女に関する文献を分

析する。

4.海外・帰国子女に関する文献

(1)文献検索の方法

 研究主題を探る目的で、日本人子どもの海外子女・帰国子女を主題とする主な研究論

文を、データベース CiNii Articles 22) を用いて検索した。海外英文論文については ERIC

(Education Research Information Center)にて検索したが、ヒット数が数件であったため

分析には含めなかった。帰国子女という存在が認められるようになったのが1960年代で

あるから、1960年~2012年で検索をかけた。「海外子女」「帰国子女」をキーワードとす

る論文について、それぞれ総数208篇、469篇の文献があり、その中で本文アクセスのあ

るものは23篇、122篇であった。1960年~2012年まで10年毎の検索数を、表1に示す。

CiNiiデータベース以外にも数多く重要な文献があるが、ここから、ある程度キーフレー

ズを絞ることができると考える。

(2)海外・帰国子女に関する文献にみられる研究主題

 主な研究主題を、論文名のワードをもとに分類する。海外子女文献の主題を表2に、帰

国子女文献を表3にまとめる。海外子女については、1)教育の枠組み、2)取組み実践面、

3)実態調査などを観点としたものが主であった。海外子女教育の現状・課題・展望(海

外子女教育振興財団、2007a;2007b;2007cなど)、海外の日本人学校・補習授業校の実

践報告(Langager, 2002;2010など)、海外子女の実態調査の結果(柴山、1994;日本在外

企業協会、2008など)が報告されている。改めて「日本人学校」で検索すると、364篇の

表1:海外・帰国子女を論文名に含む文献(CiNiiデータベース検索)(篇)

海外子女 帰国子女23)

すべて 本文アクセス すべて 本文アクセス

1960~1969 0 0 1960~1969 1 0

1970~1979 25 1 1970~1979 21 5

1980~1989 70 8 1980~1989 117 35

1990~1999 58 11 1990~1999 146 41

2000~2009 48 3 2000~2009 131 16

2010~2012 7 0 2010~2012 23 5

合計24) 208 23 合計 469 122

9

海外・帰国子女研究の文献分析

主に現状分析・課題や取組みについての実践的文献があった。その他、4)言語学的側面

として、母語保持や現地言語の習得、二言語を学ぶバイリンガリズムなどの研究も行われ

ている(湯川、2003など)。また、5)心理的側面を探る、異文化接触と心理や適応・不

適応を探る研究(梶田、他、1999)は帰国子女研究のそれらと比べてあまり多く検索され

なかったが、位置取り(佐藤・小林、2006)の他、フィールドワークや定性調査を通した

アイデンティティ研究(渋谷、2007など)も重要さを増している。海外・帰国子女テー

マを継続的に扱うジャーナル等は後述する。資料やジャーナリスティックな記事などは省

いた。

 海外子女というキーワードを含まないが関連する文献を刊行物別に見ると、例えば東京

学芸大学『在外教育施設における指導実践記録』はCiNii上326件の実践報告がある。最

近のものを見ると、日本人学校の教育課程編成を教務主任の立場から報告したもの(永井、

2010)、ニューヨーク日本人学校の教育課程遂行(小野、2010)、ヨハネスブルグ日本人学

校校内の植物調査と取り組み(石川、2010)、ハノイ日本人学校での進路指導の取り組み(青

谷、2010)などが見られる。また、政府刊行物として、文部省教育助成局海外子女教育課、

文部科学省国際教育課などから資料・調査結果が提供されている。民間団体である日本在

外企業協会は、『グローバル経営』誌などを通して定期的に発信を行なっている。

 次に、CiNiiの帰国子女文献から主題を分類し表3に示す。1980年代から本格的な研究

が始まっていることが数字からも示唆されている。帰国子女を取り巻く教育の状況を実践

報告したものに加え、諸問題を1)教育学的観点(課題・展望、実践・受け入れ取り組み、

国際理解教育)、2)言語学的観点(言語能力・習得・喪失、日本語教育)、3)心理学・社

会学的観点(適応、心理、アイデンティティ)から調査した内容が中心となっていた。さ

らに、キャリアやライフスタイルに関する研究や、保健・衛生的な報告も少数だがなされ

ている。帰国子女問題が大きな社会問題・教育問題と捉えられてきた経緯からか、適応・

不適応(徳田、1999;三島、1999;布施、2001;小島・深田、2011など)や、心理(浅川他、

表2:〈海外子女文献〉

主な主題 2000―2012 1990―1999 1980―1989 1970―1979

(1)海外子女教育の課題・展望 16 14 24 11

(2)海外子女教育の施策 - - - 3

(3)海外日本人校実践 6 7 14 5

(4)母語と第二言語能力・習得 3 3 1 -

(5)母語教育 1 2 1 1

(6)適応・不適応 1 1 - 3

(7)異文化接触と心理 - 3 - -

(8)海外子女生活の実態・動向 - 6 6 1

10

国際教育センター紀要 第13号

1996;箕浦、1988など)アイデンティティ(吉田、2003;横、2005など)などの多くの

研究が行なわれ、分析されている。国際化に伴って帰国子女は珍しい存在ではなくなり、

また肯定的に捉えられるようになったことから、帰国子女研究はあまり見当たらなくなっ

たという見方もあるが(小島・深田、2011)、顕在化してこない現象をあぶり出すために

もこのような研究は継続して行なわれるべきものであろう。また、言語面の研究(上條・

石黒・伊藤、1991;友田2009、2010)、言語接触に生きた経験を持つ帰国子女たちの習得・

保持・喪失、談話研究などは、事例研究のつみかさねこそが貴重な質的データとなりうる

だろう。

(3)海外・帰国子女研究の手法

 一口に海外・帰国子女研究といっても、その研究・実践報告の主題は多岐に渡ることが

わかった。ここで得られた文献には教育実践報告、および、海外・帰国子女教育のあり方

や異文化間教育の捉え方への提言などが多数あった。リサーチのその手法も多様であった。

言語習得の要因や心理的な構成概念などを探るための質問紙法など、すでに教育学・心理

学関連分野では確立した統計分析手法が使われている。また、事例研究には量的・質的デー

タの両方を含むミックスト・メソッドがあり、異文化事象を捉えるにはバランスのとれた

手法であろう。

 一般的な海外・帰国子女関連の著書には、親が記録をまとめるダイアリー型のエッセー

や、自らが振り返りながら語るライフヒストリー(川上、2010)などが近年出版されている。

最近では、アイデンティティや、異文化体験と心理など見えない構成要素をあぶり出す研

究は、対話の相手とインターアクションをとりながら構築するものであると捉えられる(湯

川、2011)。インタビューを受けながら、自身のライフをまとめ再構築していくというプ

表3:〈帰国子女文献〉

主な主題 2000―2012 1990―1999 1980―1989 1970―1979 1960―1969

(1)帰国子女教育の課題・展望 25 29 14 1 1

(2)帰国子女教育実践・受け入れ取組み 25 33 31 13 -

(3)国際理解教育 2 - 4 - -

(4)言語能力・習得・喪失 18 16 9 - -

(5)日本語教育 8 - 3 1 -

(6)適応・不適応 10 11 12 3 -

(7)異文化接触と心理・態度変容 19 7 11 - -

(8)アイデンティティ 5 3 1 - -

(9)ライフスタイル・キャリア 24 10 3 - -

(10)保健相談・精神衛生 - 8 5 - -

11

海外・帰国子女研究の文献分析

ロセスである。その意味では、インタビューやフォーカス・グループ・ディスカッション

のような構築主義の手法は有効であると思われる。実証主義と構築主義の比較や、有用な

質的リサーチ手法については、Cresswell(2009)、Heigham & Croker(2009)などに詳しい。

5.おわりに

 海外に行くことが、今や、容易になった―ストレスレスになった―と感じられることは

ないだろうか。ボーダーを超えることが、必ずしも隔絶した異文化の中に浸るということ

とイコールではなくなってきたという意味においてである。背景には、IT通信技術がも

たらすネットワークの発達によるところが大きいだろう。Skypeで会話したり、Facebook

やTwitterなどのSNS(ソーシャル・ネットワーク・システム)で、母国の人とつながっ

ていられるからだ。しかし、リアリティーはボーダーを超えた「異文化の社会」の中にあ

り、やはり異なる文化・制度の中に生きることはなんらかの心理的影響があり、容易なこ

とではないだろう。

 本稿では、海外子女と帰国子女の現状と推移をまず概観し、関連する文献を主題と手法

を中心に調べた。親に同行して海外体験をする子どもたちは2011年現在で約6万5千人で

ある。同じ年度内に帰国した帰国子女は約1万人である。その教育に関わる人たちの継続

的かつ献身的な努力は、特筆に値する。一方で、時代とともに海外・帰国子女の存在が変

わったと言われる。キャリアやライフスタイルを見ると、帰国子女がもはや日本文化への

再同化を強要されるような存在ではなく、国際化の社会でこそ能力を発揮できる特別な層

になりつつあるようだ。しかし、英語が流暢であることで見逃されてしまう学力面の課題

などにも慎重な考慮が必要になる。言語習得と学力などのリサーチも有用だろう。また、

異なる学校制度の間を移動することによる不利益や、人間形成に重要な学齢期に移動する

子どもの心理的側面については、やはり継続して研究を行なう必要がある。それにより、

海外・帰国子女に対する理解がさらに深まることを期待する。

(注)

1) 佐藤郡衛(2007)『改訂新版:国際化と教育―異文化間教育学の視点から』㈶放送大学教育振興会、による.人々の国境を越えた移動、越境の日常化により事実上、国境が消失した状況.異文化との接触の機会が拡大する.

2) 「子女」を差別用語とする向きがあり、「帰国生徒」や「帰国生」という呼び方もあるが、文部科学省では、従来、海外子女・帰国子女、海外子女教育・帰国子女教育という用語を用いている.

3) 大沢は、テレビ局特派員の夫の転勤に伴い、1976年~1982年の6年間1男2女とともにニューヨークに滞在した.

12

国際教育センター紀要 第13号

4) 1987年10月24日、NHKドラマスペシャルとして放送された.中島丈博作.海外帰国子女(配役:野村祐人)に対する凄絶ないじめを通して、日本人の心の閉鎖性を浮き彫りにすることを主題とした.第3回芸術作品賞受賞作品.芸術選奨文部大臣賞受賞作品.

5) 『帰国子女のための学校便覧2012』(海外子女教育振興財団、2012)に掲載されている受入校は、小学校87校、中学校228校、中等教育学校(一貫校)11校、高等学校406校に上る.

6) 帰国しない子女.日本に帰国せず現地に残ったり、またはそれ以外の国の学校に通い続ける.または、一旦帰国した後、現地の学校に復帰するなどの選択をする児童生徒もいる.荘司(1994)の例などをはじめ、教育の最終目的地を日本としない例が多数ある.

7) 外務省(2010)『海外在留邦人数調査統計(平成23年速報版)』http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/tokei/hojin/11/pdfs/1.pdfより.アクセス日2012年8月26日.

8) 三ヶ月以上滞在し、永住権を持たない者(外務省、2011).

9) 文部科学省CLARINETホームページより.http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/002/001.htm アクセス日2012年8月26日.

10) 文部科学省『帰国子女教育の充実』http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/others/detail/1318588.htm アクセス日2012年8

月26日.

11) 文部科学省(2011)『海外で学ぶ日本の子どもたち―我が国の海外子女教育の現状―』平成23年度版.p. 1.

12) 日本人学校88校の地域別内訳は、アジアに35校、欧州に21校、中南米に14校、中東に8校、北米に4校、オセアニアに3校である.長期滞在者の多い北米とアジアを比較すると、アジアに日本人学校が圧倒的に多いことがわかる.

13) 補習授業校203校の地域別内訳は、北米に87校、欧州に64校、アジアに19校、オセアニアに11校、中南米に9校、アフリカに7校、中東に6校である(文部科学省、2011).

14) 2012年4月1日現在、如水館バンコク高等部、早稲田大学系属早稲田渋谷シンガポール校、慶応義塾ニューヨーク学院、西大和学園カリフォルニア校、聖学院アトランタ国際学校、立教英国学院、帝京ロンドン学園、フランス甲南学園トゥレーヌ高等部、スイス公文学園高等部の9つの私立施設が開校している(文部科学省CLARINETホームページより).

15) 外務省(2011)『公館別(学齢)子女数(平成23年4月15日現在)』により.http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/tokei/hojin_sj/pdfs/23.pdf アクセス日2012年8月31日.

16) 文部科学省『海外子女教育の概要』

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/002/001.htm アクセス日2012年8月20日.

17) 基となったデータは、外務省公館別子女数統計.(http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/tokei/

hojin_sj/pdfs/23.pdf)および文部科学省CLARINET資料(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/004/001/001/005.pdf)から得て、図を作成した.

18) 政府統計(e-Sat) 学校基本調査年次統計より.

19) 佐藤郡衛(2007)『改訂新版:国際化と教育―異文化間教育学の視点から(第4版)』㈶放送大学教育振興会.

20) 箕浦康子(1988)「日本帰国後の海外体験の心理的再編成過程」、『社会心理学研究』第3巻第2号、日本社会心理学会、pp. 3 ― 4 .

21) 「発達段階のかなりの年数を、両親の属する文化圏の外で過ごす子ども.TCKとも呼ばれる(Pollock & Van Reken, 2009; ポロック&ヴァン・リーケン、2010)」母国の文化を第一、移り住んだ新しい文化を第二とすると、TCKはこの二つの文化を融合した第三の文化を独自に

13

海外・帰国子女研究の文献分析

作り出すという捉え方.同様の経験をした他のTCKに対して帰属意識を持ちやすいと言われる.

22) 学協会刊行物・大学研究紀要・国立国会図書館の雑誌記事の検索データベース.http://ci.nii.ac.jp/info/ja/cinii_articles.html

23) 帰国児童生徒をキーワードとしたものは26篇あったが、帰国子女との重複が多いため含めない.

24) 帰国子女と海外子女の両方を含むものは48篇ある.分析には含めていない.

引用/参考文献

浅川潔司・和気清・古川雅文・夏野良司(1996)「帰国子女の学校適応に関する微視発達的研究」『兵庫教育大学研究紀要第1分冊、学校教育・幼児教育・障害児教育』16、pp. 75 ― 82.

稲賀繁美(2000)『異文化理解の倫理にむけて』名古屋大学出版会.

大沢周子(1986)『たった一つの青い空―海外帰国子女は現代の棄て児か』文芸春秋.

海外子女教育史編纂委員会(1991)『海外子女教育史』海外子女教育振興財団.

海外子女教育振興財団(2007a)『海外子女教育シリーズ(1)海外で育つ日本の子どもたち』Global Angle(19)、pp. 22―24.

海外子女教育振興財団(2007b)『海外子女教育シリーズ(2)日本人学校への期待』Global Angle(20)、pp. 21―23.

海外子女教育振興財団(2007c)『海外子女教育シリーズ(3)補習授業校とは』Global Angle(21)、pp. 22―24.

海外子女教育振興財団(2012)『帰国子女のための学校便覧2012』

外務省(2011a)『海外在留邦人数調査統計(平成23年速報版)』http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/tokei/hojin/11/pdfs/1.pdfより.アクセス日2012年8月26日.

外務省(2011b)『公館別(学齢)子女数(平成23年4月15日現在)』により.http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/tokei/hojin_sj/pdfs/23.pdf アクセス日2012年8月31日.

梶田正己、他(1999)「北米地域に在住する海外日本人児童・生徒の異文化適応調査研究」名古屋大学教育学部紀要、心理学46、pp. 1 ― 3.

上條雅子・石黒敏明・伊藤克敏(1991)「帰国子女の言語習得・喪失過程」『神奈川大学言語研究』14、pp. 101 ― 140.

川上郁雄(2010)『異なる言語の間で育った子どもたちのライフヒストリー:私も「移動する子ども」だった』くろしお出版.

グッドマン、ロジャー(1992)『帰国子女:新しい特権層の出現』(長島信弘・清水郷美 訳)岩波書店.

小島奈々恵・深田博己(2011)「帰国子女のホスト国適応と母国再適応:アメリカからの帰国子女」『広島大学心理学研究』11、pp. 295 ― 302.

斎藤耕二(1986)「帰国子女教育の適応・人格形成・日本語習得に関する研究」、東京学芸

佐藤郡衛(編著)(1995)『転換期にたつ帰国子女教育』多賀出版.

佐藤郡衛(1997)『海外・帰国子女教育の再構築』玉川大学出版部.

佐藤郡衛(2007)『改訂新版:国際化と教育―異文化間教育学の視点から』(財)放送大学教育振興会. 佐藤郡衛・小林聡子(2006)「アメリカにおける日本人生徒のエスニシティをめぐる位置取りの

政治:ロサンゼルス地域のA高校のELDを事例にして」『国際教育評論』3、pp. 29 ― 43.

柴山真琴(1994)「1990年前後のバンコク日本人学校通学児の社会科環境:海外子女教育理念と

14

国際教育センター紀要 第13号

の乖離の解消策はあるか」『東京大学教育学部紀要』33、pp. 211 ― 220.

荘司忠志(1994)『息子たちは脱・帰国子女―欧米の教育事情と異文化体験』東京経済.

友田路(2009)「日本人帰国子女の第二言語喪失―冠詞誤用と他者の前提性理解」『言語情報科学』7、pp. 159 ― 174.

友田路(2010)「日本人帰国子女に見られる第二言語喪失過程―冠詞・所有格形の縦断的調査から」『言語情報科学』8、pp. 149 ― 165

徳田克己(1999)「「ドイツへ帰りたい」が口癖の帰国子女A君の不適応について」『日本保育学会大会研究論文集』52、pp. 782 ― 783.

日本在外企業協会(2008)第5回「海外・帰国子女教育に関するアンケート」調査報告―増加傾向の海外派遣者数と微増の海外子女数.『グローバル経営』(313).

日本在外企業協会(2011)「2011年海外・帰国子女教育に関するアンケート」調査結果について」日本在外企業協会.

早津邑子(2009)「幼児の母語習得にどう取り組むか(特集 海外子女教育を考える)」『グローバル経営』332号、pp. 12 ― 15.

布施晶子(2001)「帰国子女の適応スタイルに関する一考察:外国における日本文化の浸透度・順化度に関する調査(アメリカの場合)」『日本教育心理学会総会発表論文集』43、p. 50.

ポロック、デビッド・C、ヴァン・リーケン、ルース・E(2010)『サードカルチャーキッズ 多文化の間で生きる子どもたち』

三島浩路(1999)「帰国子女の学校適応を促進する要因について II」『日本教育心理学会総会発表論文集』41、p. 621.

箕浦康子(1988)「日本帰国後の海外体験の心理的再編成過程」、『社会心理学研究』第3巻第2号、日本社会心理学会、pp. 3 ― 11.

文部科学省(2011)『海外で学ぶ日本の子どもたち-我が国の海外子女教育の現状-』平成23年度版.

文部科学省海外子女教育、帰国・外国人児童生徒教育等に関するホームページCLARINET

(Children Living Abroad and Returnees Internet)http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/main7_a2.htm アクセス日2012年8月20日.

湯川笑子(2011)「バイリンガル教育のためのリサーチ・メソッドーリサーチの種類と必要要件―」『母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究』7、pp. 25 ― 45.

湯本和子(2003)「海外子女の二言語能力調査:カミンズの二言語総合依存説、敷居説の検証」『JACET全国大会要項』42、pp. 248 ― 249.

横麻衣子(2005)「帰国子女の国籍における心理的側面からみたアイデンティティの生成過程」『人間科学研究』18、p. 33.

吉田研作(2003)「帰国子女のアイデンティティ形成に見られる要因」『コミュニケーション障害学』20(1)、pp. 25 ― 29.

ランガガー・マーク(2010)「バイリテラシー習得媒体としての補習教育-二つの学習言語を両立させる日本人海外子女の事例」教育研究52、pp. 17 ― 28.

Cresswell, J. W. (2009) Qualitative, Quantitative, and Mixed Methods Approaches. Third Edition. Sage

Publication, Inc.

e-Sat(政府統計の総合窓口ウェブ)より学校基本調査、年次統計http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001015843&cycode=0

Heigham, J. & Croker, R. (2009) Qualitative Research in Applied Linguistics: A Practical Introduction.

Palgrave Macmillan.

15

海外・帰国子女研究の文献分析

Langager, M. (2002) Nurturing on Saturdays: A Hoshuko for Japanese Expatriate Children (Educational

Philosophy). International Christian University Educational Studies, 44, 17 ― 31.

Pollock, D. C. & Van Reken, R. E., (2009). Third Culture Kids: Growing Up Among Worlds. Nicholas

Brealey.

16

国際教育センター紀要 第13号

An Analysis of the Studies on Japanese Overseas Children and Returnees

Midori SHIKANO

Abstract

  This paper is a meta-analysis of the studies on Japanese school-aged children living

overseas and returnees who returned home after a certain length of residence overseas.

Firstly, the writer provides a historical overview of the children living overseas, who are

numbered approximately 65,000 as of 2011, and of the returnees. The results of a CiNii

database search indicated that the research topics of 677 studies include: 1) educational

issues and challenges of the schools; 2) bilingual language proficiency, acquisition,

or attrition of the individuals; and 3) their acculturation, cross-cultural contact, and

identity. The research methodologies varied from statistics-based studies to interviews,

in addition to practical reports. The writer lastly suggests that the constructive

qualitative research methods including life history and narrative inquiry, or even the

mixed methods, would be more useful in order to find out underlying constituents of

psychological aspects.

Keywords : transnational, children in multiculturalism, education for the Japanese

children living overseas, education for the returnees, meta-analysis