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平成18年度 学位論文 情報の提示方法が印象形成に及ぼす影響 一映像情報と文字情報の比較一 兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 学校教育専攻 学校心理コース MO5091D 是永

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平成18年度 学位論文

情報の提示方法が印象形成に及ぼす影響

   一映像情報と文字情報の比較一

  兵庫教育大学大学院

学校教育研究科 学校教育専攻

   学校心理コース

  MO5091D 是永 崇

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目次

1.問題と目的      1

 1-1.背景      1

 1-2.先行研究から得られる知見

 1-3.本研究の目的      6

2

皿.予備調査

 皿一1。目的

 H-2.方法

 H-3。結果

8

8

9

10

皿.本調査      11

 1H-1.目的     11

 皿一2.方法      12

 皿一3.結果      14

  1 印象評定項目の因子構造      14

  2 メール意識項目の因子構造      15

  3 実験材料による1回目と2回目の印象変化の分析

  4 実験条件の違いによる印象変化量の分析

  5 本当の姿の判断分析      22

  6 メール意識の高低と印象変化量の分析

  7 メール意識の高低による本当の姿の判断分析

19

2426

16

IV.考察      27

  実験材料による1回目と2回目の印象変化の解釈

  条件の違いによる印象変化量の解釈

  本当の姿の判断の解釈      30

  メール意識の高低と印象変化量の解釈

  メール意識の高低と本当の姿の判断の解釈

29

31

32

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  本研究から得られる知見と今後の課題

引用文献      35

謝辞

32

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1.問題と目的

1-1.背景

 人は,見知らぬ人と何かしらの形で出会った時に,ほとんどの場合,初対面から

相手がどういう人物であるか考えるだろう。そして,どのような人物が判断するた

めの情報は,その人物の外見,表情,態度,話し方,服装など,多くを非言語的な

手がかりから得ていると考えられており,これらによって印象の知覚が影響される

ことが明らかになっている(大坊・安藤・池田,1989)。また,これまでに一度も会っ

たことのない人間に対しても,当該他者に関する断片的な情報に基づいて,その人

物の全体的印象を思い描いたりする(林,1998)。

 ところで,近年の電子メディアの普及とともに,電子メールなどの非対面型の対

人コミュニケーションが他者との相互作用において重要な役割を果たすようになっ

てきた(岡本,2002)。それに伴って,人々のコミュニケーションのあり方も確実に変

化してきたといえる。電子メディアを媒介としたコミュニケーションはComputer

MediatedCommunication(以下,CMC)と呼ばれ,今やCMCは全体的にコミュニ

ケーションの最も一般的な形式の一っであるといえる。そして,近年ではCMCか

ら始まる人間関係が多くなってきた。未知の相手とのCMCによっての親密な関係

もよく知られている。つまり,記号と文字によるコミュニケーションを通して相手

がどのような人物か思い描くのである。しかし,CMCはコミュニケーションする

際に,非言語的な情報による送り手の符号化と受け手の解読化が難しいという特性

を持っている(Kiesle葛Siege1,&McFutre,1984)。非言語的な手がかりが欠如してし

まうのである。しかし,その中で絵文字や顔文字などを用いて感情表現を伝えるな

ど,伝えたいメッセージに応じた印象操作が目常的に行われている。

 では,現在において非言語的な手がかりを多く含む対面に基づく情報と,手紙や

電子メールのような文字と記号による情報から受ける印象に差はないのであろうか。

1

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1-2.先行研究で得られている知見

 対面のコミュニケーションでは,非言語的な手がかりが多く含まれ,対人認知を

行う際の情報が多様である。そのため,同じ言葉でも,その声の抑揚や表情によっ

て受け手に与える印象が全く異なり,言語だけの情報に比べ,非言語情報により,

補完的なコミュニケーションが出来る。相手がどんなことを考えているのか,どの

ような情動状態でいるのかを読むことができるため,初期の出会いにおいては,非

言語的行動は親密さを増すために重要な働きをしているのである(大坊・奥田,1998)。

 非言語的な手がかりから得られる印象形成については多くの研究がなされてい

る。川西(2000)は顔から性格や態度といったその人の内面を推測し,他者の全体的

な印象を形成していることを示し,大森・山田・宮田(1997)は瞬目(まばたき)が対

人認知に与える影響を検討しており,瞬目の多さが否定的な印象を与えることを示

している。また,磯・木村・桜木・大坊(2003)は討論場面において,発話中のうな

ずきが好印象を引き出すことを示しているように,顔が見えるだけでも,さまざま

な情報により印象が形成されることが明らかにされている。さらに,顔から受ける

印象では,男性が男性の顔の印象評定を行う場合と女性が男性の顔の印象評定を行

う場合とでは,同じ男性の顔の印象評定において有意に性差があることも認められ

ている(鈴木・渡辺,1982)。

 一方,姿が見えないCMCによる印象形成では,Eメールから得られる情報から

印象形成がなされ,男女によって異なる印象が形成されるという結果を示した白倉

(2003)の研究や,文字情報による相互作用においても,返事が早い人は受け手に誠

実であるという印象を与え,絵文字をよく使うことで好意的な印象を与えるなど,

多様な対人印象が形成されるということを示した金(1999)の研究がある。

 つまり,非言語的な手がかりがあろうとなかろうと印象形成自体は行われる。し

かし,印象形成は行われても,その様相は異なるようである。

CMC研究では対面のコミュニケーションとCMCの違いについての研究が多くな

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的文脈手がかりが欠如していることをCMCの特徴として挙げている。都築・木村

(2000)は,CMCは対面と比較して,親和感情・情報伝達・対人緊張の3つが低いと

いう心理的特性を持つことを示唆している。CMCに比べ,音声の情報が含まれる

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電話でのコミュニケーションにおいても,W皿iams(1975)は電話よりも対面の方が

好ましい印象を与え,印象評価の確信度が高いことを示しているし,笠木・大坊

(2003)は対面よりもCMCでのコミュニケーションのほうが印象を弱く受けること

を明らかにしている。外見的な情報を得ることが出来ず,相手の印象形成の際に多

くの手がかりを利用することが不可能であると考えられるためである。感情面にお

いても,加藤・赤堀(2004)は,異なる意見がある場合に,CMCのみを行う被験者よ

りも対面でのコミュニケーションとCMCを行う被験者の方が敵意感情を高く生じ

ることを示している。

 以上より,CMCでは対面的な相互作用と比べ,非言語的手がかりの伝達が制限

されることで相手に対する印象形成に差異があることがわかる。人が他者を記述す

る際にはまず外見や行動から記述される(Fiske&Cox,1979)ように,非言語的な情

報は記憶されやすく,文字情報による相互作用から形成される印象形成と,対面的

な相互作用から形成される印象形成には非言語的な手がかりの欠如という観点から

見ても,同じ印象が形成されるとは考えにくく,対面的なコミュニケーションのよ

うな非言語的な手がかりの多く含まれる情報に印象の重みがかかることは容易に想

像できる。

 では,CMCでの印象と対面時の印象に違いがあると,対面時の印象が残り,CMC

での印象は薄れてしまうのであろうか。CMCが目常化されている現在においては,

むしろCMCによる印象が対面時の印象に少なからず影響を与えていると考える方

が妥当であると考えられるが,従来のCMCの印象形成の研究を見てみると,岡本

(2003)の対面とCMCでの自己高揚・自己卑下メッセージが印象形成に与える影響

を比較したような,単純にCM:Cと対面場面の比較をおこなうものや,顔文字の提

示量がメール文の印象評定に与える影響の研究(田口,2006)や,金(1999)のCMCの

相互作用から生まれる印象形成にっいての研究のように,CMCのみでの印象変化

の研究が多く,対面場面からCMC場面やCMC場面から対面場面という流れの中

での印象形成を見る研究は少ない。そのため,CMCと対面でのコミュニケーショ

ンの流れの中での印象の変化を見ることは意義のあることだと考える。

 しかし,印象の変化を考える時に無視できない要因が残されている。対面場面と

非対面場面の印象の違いを考えるためには,ポジティブな印象とネガティブな印象

の違いを考慮する必要があるといえる。ポジティブな刺激とネガティブな刺激とで

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は,与える影響がネガティブな刺激の方が強いとされるネガティビティ・バイアス

(negativitybias)の観点から見れば,ポジティブな印象よりもネガティブな印象のほ

うが重視されることになる。情報の極端さが同等であっても人は望ましくないネガ

ティブな印象に注目し,そちらに重みのかかった印象を形成するのであれば,対面

場面とCMC場面の印象の極端さが等しくてもネガティブな印象を持つ方に印象の

重みがかかるはずである。実際に吉川(1989)は文章による人物評定において,ポジ

ティブな印象とネガティブな印象と順序だてて提示した場合,ネガティブな印象が

覆りにくく,残りやすいことを示し,それをその人の本当の姿として捉えてしまう

可能性を示している。また,佐々木・大渕(2002)は初対面の相手との対話場面にお

いて非言語的な手がかりのネガティブな側面が敵対的な社会的認知を喚起させ,ポ

ジティブな側面は好意的な社会的認知を喚起させなかったという結果を示している。

 つまり,CMCと対面時の印象がポジティブな印象とネガティブな印象であると

いう印象のギャップがあった場合には,ネガティブな印象が残りやすいと考えられ

る。そして,ネガティブな印象は重みがかかり,対面の印象も重みがかかるのであ

れば,当然最も印象の重みがかかる情報は対面場面でのネガティブな印象であり,

それが本当のその人の姿であると判断されることになる。また,吉川(1989)が文章

による人物評定による研究を行っていることからもCMCの印象においてもネガテ

ィブな印象は残りやすいと考えられる。

 さらに,吉川の研究では,情報の提示順序によってその重みのかかり方が違うこ

とも示されている。ネガティブな印象とポジティブな印象を順序だてて提示すると,

先にポジティブな印象を提示し,後にネガティブな印象が提示される方が,逆の提

示順序よりも印象の変化が大きいという結果が示されている。

 つまり,対面時のような非言語的な手がかりを含む情報と,CMCのような文字

と記号による情報による印象形成を考える際には,その場面はもちろんのこと,さ

らにポジティブーネガティブという印象の操作,そしてその印象の提示順序まで考

慮する必要がある。そこで,これらの要因を考慮して,どのような情報の提示方法

がもっとも印象変化を起こすのかを調べ,今後のコミュニケーションのあり方を考

察することは,CMCから生まれる印象形成を考える上で意義のあることだと言え

る。

 また,文字によるコミュニケーションの場合,つまりCMCにおいてはEメール

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に対しての好意度によって印象形成に差がうまれるという白倉(2003)の結果も参考

にしなくてはならないと考える。その理由として,近年ではWbb上での匿名掲示

板やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が若者に多く使われており,

文字によるコミュニケーションの好意や慣れという個人の要因が他者に対する認知

のあり方に影響を及ぽすことは容易に考えられ,印象形成において特徴的な違いが

見られると考えるためである。そのため,メールの好意度という個人の要因が印象

形成に違いを生むと考え,検討する。

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1-3.本研究の目的

 そこで本研究では,①情報提示の形態:すなわち,対面時のような非言語的な手

がかりからの情報が多いのかCMCのような文字と記号の情報のみかの要因,②印

象の好悪:すなわち,ポジティブな印象かネガティブな印象かの要因,③提示順序

による要因,これらがそれぞれで独立して印象形成が行われるのではなく,全てを

複合して印象形成が行われるものと考える。

 そして,コミュニケーションのあり方として,現代の特徴であるメールのやり取

りから始まる人間関係,そしてこれまでの代表的な対面のやりとりから始まる人間

関係を想定する。初期の関係において,ポジティブな印象とネガティブな印象とい

う矛盾する情報をメール文の状況と対面の状況に分けて提示することにより,メー

ル文による印象は対面での印象に影響を与えるのか,対面での印象はメール文によ

る印象に影響を与えるのか,ネガティブな印象はポジティブな印象に比べ残りやす

く覆りにくいのかを検討する。また,情報の提示方法により印象形成にどれほど違

いがあるのか,そしてそれがメールの好意度という要因によって影響を受けるのか

を検討し,それがその人の本当の姿と判断されるかどうかを検討する。

 初期の関係に限定した理由は対人関係の初期の段階で形成される対人魅力が,そ

の後の対人関係の親密化を大きく規定するほど重要なものである(中村,1989)と考

えるためである。そして,本当の姿かどうかを判断させる理由は,非言語と文字,

それぞれの情報の持つ印象の確信度を知ることが出来るためである。

 さらに言えば,本研究は,情報の提示方法の違いによる対人認知のあり方を明ら

かにし,比較検討することで,現在の未知の相手と連絡を取る文字情報のみのコミ

ュニケーションから始まる人間関係について考察することも目的とする。

 そこで,本研究では以下の仮説を設定する。

①文字での印象と対面時の印象に違いがあると,先行の印象は後続の印象に影響を

 及ぽす。

②ネガティブな印象はポジティブな印象に比べ,残りやすく,覆りにくい。

③ネガティブな印象を持っ,非言語的な手がかりの多い情報は,後続の印象として

 提示することで,他の提示方法よりも変化が大きくなる。

④ネガティブな情報を提示されると,ポジティブな情報があってもネガティブな情

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 報のほうを本当の姿であると判断する。

⑤メールヘの好意度が高い人ほど文字情報を提示された時の印象変化が大きい。

⑥メールヘの好意度が高い人ほど文字情報を本当の姿であると判断する。

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H.予備調査

皿一1.目的

 本研究ではポジティブな印象とネガティブな印象を実験者が自ら作り出し,直接

会って話すことやメールを行うのではなく,実験材料を作成しその提示による間接

的な実験を行うことにした。直接的な相互作用による実験方法ではなく,間接的な

方法を採用した理由は,直接会って実験を行った場合に被験者の対応や発言によっ

て実験者が一貫してポジティブーネガティブな対応や発言が出来るのか,という疑

問が残るためである。そこで,本実験では対面状況を仮定した非言語的な手がかり

の多いビデオ撮影での映像による情報と,CMCを仮定した実際のメールのやり取

りを印刷した文字による情報の提示を行うことにした。

 予備調査では,実験のために作成した実験材料が本当にポジティブな印象,ネガ

ティブな印象を示すものか,またポジティブな印象とネガティブな印象の間に極端

な差がないかを調べることを目的とする。極端さに差がないことを確認する理由は,

今回の実験では非言語的な手がかりがある情報と文字による情報との間にどのよう

な印象の差があるかではなく,その情報の提示方法や実験材料,それぞれの印象が

持つ重み,つまり影響力を検討するためである。

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H-2.方法

被験者1大学院生15人(男性8名,女性7名,平均年齢24.38歳,SD1,72)

実験材料:実験のため,

・映像情報(以下,ビデオ):ポジティブー男女,ネガティブー男女の4つ,

・文字情報(以下,メール文):ポジティブー男女,ネガティブー男女の4つ,

全8つの実験材料を作成した。

 各実験材料に男女を分けて作成したのは,被験者に同性の実験材料の印象評定を

させるためである。同性に限定した理由は,鈴木・渡辺(1982)の研究において,男

女によって同性の印象評定と異性の印象評定とに差があることも示されていること

や,異性の印象評定を行った場合,映像情報においてその被観察者に対する外見の

好意などによる印象の偏りが考えられるためである。

 実験材料の中の対話は全て学生同士によるものであり,「ある大学で行われた学

生の話を聞く企画の中での,インタビュー(質問)する学生とインタビュー(質問)され

る学生のやりとり」というテーマで行った。被観察者はインタビュー(質問)される

側の学生である。

 ビデオのポジティブ材料では,被観察者はインタビュー者の質問に肯定的に返答

し,相づちやアイコンタクトを適度に返し,積極的に話を進めた。それに対し,ネ

ガティブな材料では,被観察者はインタビュー者の質問に否定的に返答し,相づち

やアイコンタクトが少なく,非協力的な態度を出した。いずれも5分間のビデオで

あり,被観察者のみを斜めの角度から撮影した。

 メール文のポジティブ材料では,被観察者は質問者の質問に肯定的に返答し,メ

ールでのマナーを守り,返事も早く,顔文字を多用した。それに対し,ネガティブ

な条件では,被観察者は質問者の質問に否定的に返答し,質問を途中で切り,非協

力的な答え方をした。いずれも,質問者2通,被観察者2通のメールのやり取りで

ある。

実験場所:適温,適湿で騒音の少ない明るい部屋で,個別に実施した。

手続き:被験者に同性の実験材料を提示後,林(1978)の対人認知構造の20項目に

っいて,7ポイントスケールで評定させた(「1」に近いほどネガティブ,「7」に近い

ほどポジティブ,中性値「4」)。項目についてはp.14のTABLE2を参照。

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n-3.結果

TABLE1に各実験材料の印象評定値および印象の極端さ,それぞれの平均値と標

準偏差(SD)を載せた。印象の極端さは中性値4からの離れ値の絶対値である。8つ

の実験材料の印象評定値の平均値にっいて一元配置の分散分析を行ったところ,材

料間に有意な差が認められたため(F(7,40)ニ42.13,pく.01),Tαkey法による多重比較

を行ったところ,男女の実験材料ともポジティブなビデオおよびメール文の方が,

ネガティブなビデオおよびメール文よりもポジティブであった(ネガティブービデ

オ,ネガティブーメール文くポジティブービデオ,ポジティブーメール文)。次に,極

端さの平均値について一元配置の分散分析を行ったところ,材料問に有意な差が見

られず(F(7,40)二,61,n.s,),ビデオおよびメール文の印象評定値の極端さが各実験材

料の間に差がないことが示された。

 そこで,これらの材料を本実験で使用することにした。

TABU31 各実験材料の印象評定値および印象の極端さの平均と標準偏差

  印象評定値

N 平均値  SD

 極端さ平均値  SD

ポジテイブービデオー男

ネガティブービデオー男

ポジテイブービデオー女

ネガティブービデオー女

ポジティブーメール文一男

ネガティブーメール文一男

ポジティブーメール文一女

ネガティブーメール文一女

2.75

5.61

2.41

5.14

2.61

5。18

2.61

5.30

.52

.63

.33

.46

,53

.64

.56

.66

1.25

1.61

1.59

1.14

1.39

1.18

1.39

1。30

.52

.63

.33

.46

.53

.64

。56

.66

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皿.本調査

皿一1.目的

 本調査では,予備調査で作成した実験材料を用い,以下に示した本研究の仮説を

検証することを目的とする。

【仮説】

①文字での印象と対面時の印象に違いがあると,先行の印象は後続の印象に影響を

 及ぼす。

②ネガティブな印象はポジティブな印象に比べ,残りやすく,覆りにくい。

③ネガティブな印象を持つ,非言語的な手がかりの多い情報は,後続の印象として

 提示することで,他の提示方法よりも変化が大きくなる。

④ネガティブな情報を提示されると,ポジティブな情報があってもネガティブな情

 報のほうを本当の姿であると判断する。

⑤メールヘの好意度が高い人ほど文字情報を提示された時の印象変化が大きい。

⑥メールヘの好意度が高い人ほど文字情報を本当の姿であると判断する。

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皿一2.方法

被験者:大学生および大学院生80名(男40名,女40名,平均年齢23,33歳,SD2.66)。

実験材料:予備調査で作成した8つの実験材料を用いた。

質問紙構成:

 質問紙①:メールヘの意識・利用頻度(都築・木村・松井,2005)にっいての質問紙

の全13項目(5件法)に「好きである」(5件法,1が「当てはまる」,5が「当てはまら

ない」)というによる質問を加えたものを用いた。項目についてはp15のTABLE3を

参照。

 質問紙②:印象評定(林,1978)についての質問紙の全20項目(SD法,r7」に近いほ

どポジティブ,「1」に近いほどネガティブ,中性値「4j)を用いた。項目についてはp

14のTABLE2を参照。

 質問紙③:質問紙②に,「メールとビデオ,どちらが本当の姿を表していると思

いましたか?」(7ポイントスケール,評定尺度法)という項目を加えたものを用いた。

実験場所:適温,適湿で騒音の少ない明るい部屋で,個別に実施した。

実験計画:以下の印象と状況の2つを独立変数とした,2(ポジティブな印象,ネガ

ティブな印象)×2(対面の後にメール,メールの後に対面)の被験者間要因の実験計

画である。

①印象

  1:ポジティブな印象の提示後にネガティブな印象を提示する

  H:ネガティブな印象の提示後にポジティブな印象を提示する

②状況

  1:対面の後にメールのやり取りを想定(ビデオ→メール文)する

  皿:メールのやり取りの後に対面を想定(メール文→ビデオ)する

準実験群として,メールに対する好意度を含む。

手続き:被験者は各条件に男女10名ずつランダムに配置し,実験は男女とも,以

下に示す4っの実験条件に分けて実施し,全て同性の実験材料を提示した。また,

1回目と2回目の実験の合間には3分間の休憩を挟んだ。2回目は1回目に提示し

た実験材料と反対の印象,違う情報提示の形態の実験材料を提示した。

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〔実験条件〕

【1】ポジティブ印象一ビデオ先行条件 (以下,ポジV→ネガM条件)

   1回目:質問紙①・ポジティブービデオ(以下,ポジV)・質問紙②

   2回目:ネガティブーメール文(以下,ネガM)・質問紙③

【2】ネガティブ印象一メール文先行条件 (以下,ネガM→ポジV条件)

   1回目:質問紙①・ネガM・質問紙②

   2回目:ポジV・質問紙③

【3】ネガティブ印象一ビデオ先行条件 (以下,ネガV→ポジM条件)

   1回目:質問紙①・ネガティブービデオ(以下,ネガV)・質問紙②

   2回目:ポジティブーメール文(以下,ポジM)・質問紙③

【4】ポジティブ印象一メール文先行条件 (以下,ポジM→ネガV条件)

   1回目:質問紙①・ポジM・質問紙②

   2回目1ネガV・質問紙③

 被験者には,この実験は人のイメージに関するものであると説明し,先行がビデ

オの条件では「ある大学で,学生の話を聞く企画が行われました。今から見ていた

だくビデオには,その企画に協力してくれることになった学生のインタビューのは

じめの5分間のみの様子が収められています。あなたは,画面には現れていないイ

ンタビューを行っている人の気持ちになってこのビデオを見てください。そしてイ

ンタビューされている学生の話をよく聞いてください。」という教示を行い,1回目

の実験を行った。

 その後,メール文の条件では「先ほど見ていただいたビデオの中のインタビュー

が行われた後,今度は先ほどの学生に,違うインタビュー者によるメールでの質問

が行われました。今から見ていただくメールには,その企画に協力してくれること

になった学生への質問とその回答が記録されています。あなたは,質問者,つまり

メールを送る人の気持ちになってこのメールのやり取りを見てください。そして,

回答者の話をよく読んでください。」という教示を行い,2回目の実験を行った。先

行がメール文の条件の場合はこの逆となる。

 2回目の印象評定では,1回目と2回目のビデオとメール文の情報を合わせた,

全体的な姿の印象評定を行わせた。

13

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皿一3.結果

1印象評定項目の因子構造

 欠損値のない80名の回答を対象に,20項目の印象評定に関する質問項目(2回分)

を用いて,探索的因子分析を行った。林(1978)の対人認知の因子に近づけるために

3因子で主因子法,プロマックス回転による因子分析を行い,複数の因子に同等の

負荷量を示した2項目「生意気な一生意気でない」とr意欲的な一意欲的でない」

を削除した。その結果,3因子が抽出され,林(1978)の因子構造に似ていたため,

第1因子を「個人的親しみやすさj(αr953),第2因子をr社会的望ましさ」(α=.751),

第3因子を「力本性」(α=,762)と名づけた。因子負荷量および因子間相関をTABIE2

に示した。

TAB凪2 印象評定尺度の因子分析結果(主因子法・プロマックス回転)

質問項目

  抽出因子      共通性

I     H    皿

1・親しみやすい一親しみにくい .96 一,09 .01 .84

17,感じのよい一感じの悪い .95 。02 一.03 .89

12.心の広い一心の狭い .94 。04 一.14 .76

13.気長な一短気な ,92 .00 一.20 .63

2.人の良い一人の悪い 。81 .12 一、04 .75

9.親切な一親切でない .79 .05 ,00 .68

15.かわいらしい一一にくらしい .77 。02 .08 .69

6,社交的な一社交的でない .71 一.17 .16 ,53

7.人なっっこい一近づきがたい .71 .03 .13 .68

14.うきうきした一沈んだ .52 一.06 .37 .62

4.分別のある一分別のない 。39 .32 一.03 .40

11.軽率でない一軽率な

8.恥ずかしがりの一恥知らずの

16.重厚な一軽薄な

19.責任感のある一責任感のない

10.自信のある一自信のない

20.堂々とした一卑屈な

5.積極的な一消極的な

18.意欲的な一意欲的でない

3.生意気な一生意気でない

.01

一.05

,00

.26

一.15

.20

.39

.48

.53

一:ll:ll

 .56

一.11

一.17

:墓

1艶

301026305

644647686

累積寄与率(%) 53.59 60.13    62,91

因子問相関I

    H    皿

.68

9563

14

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2 メール意識項目の因子構造

 欠損値のない80名の回答を対象に,メール意識に関する13項目に「好きである」

を含めた14項目の質問項目を用いて探索的因子分析を行った。固有値が1以上の3

因子が抽出され,複数の因子に同等の負荷量を示した4項目を削除した。再度,10

項目に対して主因子法,プロマックス回転を行い,第1因子は「他者とのつながり

感」(α=.794),第2因子は「好意感情j(α=.735),第3因子は「親近感」(αニ.694)

と名づけた。なお,因子負荷量および因子相関はTABLE3に示した。

TABLE3 メール意識尺度の因子分析結果(主因子法・プロマックス回転)

質間項目][

子因H

出抽

性通共

1L自分の意思を伝えやすい .76 .22 一.23 .63

6。思いやりを表現できる .64 一.14 .23 .50

1.孤独を和らげる 。60 一.05 .08 .38

9.気軽に心を開く .51 .17 .26 .65

14.好きである

12,疲れる(逆転項目)

10.苦手である(逆転項目)

8.楽しい

3.相手を身近に感じる

7.個人的な話が出来る

4.気軽である

13.意思伝達がすばやい

2.堅苦しい(逆転項目)

5.緊張する(逆転項目)

.00

.05

一.02

一.16

.29

.24

.46

.26

.14

.08

器 .55

 .06

3637269102

7348426233

累積寄与率(%) 39.38 46.08 52.24

因子間相関I

     n

    皿

.57

36

5虞U

15

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3 実験材料による1回目と2回目の印象変化の分析

 TABLE4に欠損値のない80名の回答を対象とした印象評定値と印象変化量を示

した。

 まず,2回目の実験材料が1回目の実験材料によって影響を受けているかどうか

を確認するために,1回目の実験材料と2回目に行われた同一の実験材料の印象評

定値を対応のないt検定により分析し,比較した。例えぱ,1回目のポジVと2回

目のポジVの印象評定値を比較する。ここで差が出れば,2回目のポジVに先行し

たネガMの影響によると考えられる。他の条件についても同じような分析を行った。

これらの平均値をFIGU:昭1に示した。

 その結果,第1因子「個人的親しみやすさ」では男性においては,ポジVはネガM

の影響により,2回目において1回目より有意に低く(tニ2,28,p<.05),ポジMもネ

ガVの影響により2回目において1回目より有意に低かった(t=・3,50,p<.01)。また

女性においても,ポジMがネガVの影響により2回目において1回目より有意に

低かった(t,5.09,p<,01)。

TABLE4 各条件の印象評定値と印象変化量

    MN 条件   (SD)

 1口目一  M    M条件  (SD〉  (SD〉

2口目一     z 、    M         MN 条件     条件   (SD)            (SD)

 1口目静 2回目塾疋   小

因子駈sD

 (

         5.12      10 ポジV         (0.51)      10ネ畑2・76         (0,89)個人的親しみやすさ      10 ネガV 2・24         (0,58)         5。47      10 ポジ贋         (0.82)

ネガ脛 3・34  閑L78   10 ポジV 5・60  (1,04) (1.39)      (0.81)

ポジV 4・51  1・75   10 ネガ謎 3・13  (0.67〉 (0.95)      (0。62)

ポジM 3・94  1・70   10 ネガV 2・65  (L12) (1。24)      (0.64)  2.05    -3.42                5,22ネガV           10 ポジM  (0.96) (1.55)      (0.46)

  3。15ネガM  (0。47)

  5,27ポジV  (0,56)

  4.24ポジ班  (0,40)

  3。17ネガV  (0.64〉

一2。45

(0.83)

2,15(0.97)

1.59(0.72)

一2。05

(0.85)

         4.80     1G ポジV         (0.50)

         3.25     10 ネガM         (0,76)社会的望ましさ

         2,30     10 ネガV         (0.81)

         4.23     10 ポジ嫉         (0.77)

  3。65    -1,15

ネガM  (0.84) (L26〉

  3.90     0.65ポジV  (0.91) (1,19)

  3.78     1.48ポジM  (0.97) (1。04)

ネガV 2・83  甲L40  1.35) 1.27

   4,38           2,8810 ポジV     ネガM   (0,89〉          (0.90)

   3,35           4.3810 ネガM     ポジV   (0.82)    (0。58)   3.23           3。8510 ネガV      ポジM   (0.90)    (0.64)   3.68           3.3810 ポジM     ネガV   1.01)    (1.02)

一1。50

(0。93)

1,03(0.82)

0.63(1.02)

一〇,30

(0.85

       5.00    10 ポジV       (0,68)    10 ネガM 3・77       (1.07〉力本性

       2。27    10 ネガV       (1,26)    10 ポジM 5・30       0.79

ネガM4・27 曙0・73  (0,94) (0,66〉

ポジV 4.57   0。8G  (0.67) (1,28)

ポジM 4.10  1.83  (0.96) (1.06)

ネガV 2・57  -2・73  0.88     1.55

   5,2710 ポジV   (0,73)

10 ネガM 4・43

   (L13)玉0 ネガV 3・50   (0.57)

10 ポジ暫 4.90

   0.69

   4,27ネガM   (0,56)

ポジV 5,30   (O.51)

   4、33ポジM   (0,44)

ネガV 4・23

   0.74()内は標準偏差

一1.00

(0,70〉

0.87(0.88)

0.83(0.71)

一〇.67

0.72

16

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 第2因子「社会的望ましさ」では,男性においては,ポジVはネガMの影響によ

り,2回目において1回目より有意に低かった(t=2.75,p<.05)。

 第3因子r力本性」では,男性においては,ポジMがネガVの影響により2回目

において1回目より有意に低かった(t,3.06,p<.01)。また,女性においてはネガV

がポジMの影響により2回目において1回目より有意に高く(tマ2.48,p<.05),ポジ

MがネガVの影響により2回目において1回目より有意に低かった(t=一2.19,p<.05)。

17

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女性

**

回目2回目 1回目2回目

ネガV  ポジM

回目2回目 で回目2回目

ポジV  ネガM

   女性

7    6    『》    4    3    ハ∠

(印象評定値)

回目2回目

 ポジM

回目2回目

ネガV

回目2回目 1回目2回目

ポジV   ネガM

    女性

1

(条件)

男性【個人的親しみやすさ】

節7象評定6嬉

 5

 4

 3

 2

回目2回目

 ポジM

回目2回目

ネガV

回目2回目

ネガM

1回目2回目

 ポジV

1

**

條件)

7    6    5    ▲1   3    2

(印象評定値)

(条件)

回目2回目 1回目2回目

ネガV   ポジM

   男性

7    6    rD    4    3    ウ』

(印象評定値)

 1回目2回目 1回目2回目

  ポジV   ネガM

【社会的望ましさ】

-㈲

 條

**

(全て**p〈.01*p<.05)

1回目2回目 1回目2回目

ネガV  ポジM

   男性

回目2回目

ネガM

7    6    5    4    3    ウ』

 1一』阻  1回目2回目(条件) ポジv

  【力本性】

節7象評定6蓮

 5

 4

 3

 2

回目2回目 1回目2回目

ネガV   ポジM

(印象評定値)

回目2回目

ネガM

 1 L一醒国一   1回目2回目

(条件) ポジV

1回目と2回目での実験材料の印象の変化

          18

FIGURE1

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4 実験条件の違いによる印象変化量の分析

 実験条件の違いによって印象変化量に差があるかどうかを調べるため,印象変化

’量の絶対値を分析のために用い,因子ごと,男女別に一元配置の分散分析を行った。

FIGURE2に第1因子「個人的親しみやすさ」の印象の変化量の絶対値と,各条件の変

化量がポジティブに動いたか,ネガティブに動いたかを示した。男性には条件間に

有意差が認められたため(F(3,36)=4.14,p<.01),Tukey法による多重比較を行った結

果,ポジM→ネガV条件の平均値は他の3条件に比べて有意に変化量が大きかっ

た(ポジV→ネガM条件,ネガM→ポジV条件,ネガV→ポジM条件くポジM→ネガ

V条件)。女性には条件問に有意な差が認められなかった(F(3,36)ニ1.78,n.s.)。また,

男女とも,2回目にポジティブな情報を提示した条件はポジティブな印象に,ネガ

ティブな情報を提示した条件はネガティブな方向に変化した。

4

3.5

3

2.5

2

1.5

1

0.5

印象変化量(絶対値)

*P〈.05

ポジV↓ネガM

ネガV↓ポジM

       性

       男

ネガM↓ポジV

ポジM↓ネガV

ネガv↓ポジM性

       女

ネガM↓ポジV

ポジV↓ネガM

ポジM↓ネガV

4

3

2

1

0

一1

一2

一3

一4

    印象変化の方向(正がポジティブ,負がネガティブ)

ネガV↓ポジM

       性

        男

ネガ酪↓ポジV

ポジV↓ネガM

ポジM↓ネガV

ネガV↓ポジM

       性

       女

ネガM↓ポジV

ポジV↓ネガM

FIGURE2 「個人的親しみやすさ」の各条件の印象変化量と印象変化の方向

ポジ饒↓ネガV

19

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 FIGURE3に第2因子「社会的望ましさ」の印象の変化量の絶対値と,各条件の変化

量がポジティブに動いたか,ネガティブに動いたかを示した。男女別に一元配置の

分散分析を行った結果,男性においては条件間に有意な差が認められなかった

(F(3,36)ニ0.97,n.s。)。女性においては条件間に有意な差が認められたため

(F(3,36)=3.26,p<.05),Tukey法による多重比較を行った結果,ポジV→ネガM条

件の平均値はポジM→ネガV条件の平均値に比べて有意に変化量が大きかった(ポ

ジM→ネガV条件くポジV→ネガM条件)。また,男女とも,2回目にポジティブ

な情報を提示した条件はポジティブな印象に,ネガティブな情報を提示した条件は

ネガティブな方向に変化した。

4

3.5

3

2,5

2

1,5

0.5

0

印象変化量(絶対値)

ネガv↓ポジM性

       男

ネガM↓ポジV

ポジV↓ネガM

ポジM↓ネガV

ポジV↓ネガM

ネガV↓ポジM

       性

ネガ¥ポジv女

ポジM↓ネガV

4

3

2

1

0

一1

一2

一3

一4

   印象変化の方向(正がポジティブ,負がネガティブ)

ネガV↓ポジM性

       男

ネガM↓ポジV

ポジV↓ネガ納

ポジM↓ネガV

ポジM↓ネガV

ネガv↓ポジM性

       女

ネガ麟↓ポジV

ポジV↓ネガM

FIGURE3 「社会的望ましさ」の各条件の印象変化量と印象変化の方向

20

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 FIGURE4に第3因子「力本性」の印象の変化量の絶対値と,各条件の変化量がポジ

ティブに動いたか,ネガティブに動いたかを示した。男女別に一元配置の分散分析

を行った結果,男性において条件間に有意な差が認められ(F(3,36)ニ6,43,p<,01),

Tukey法による多重比較を行った結果,ポジM→ネガV条件の平均値がポジV→

ネガM条件の平均値,ネガM→ポジV条件の平均値よりも有意に変化量が大きか

った(ポジV→ネガM条件,ネガM→ポジV条件くポジM→ネガV条件)。女性に

おいては条件間に有意な差が認められなかった(F(3,36)=0.33,n.s.)。また,男女とも,

2回目にポジティブな情報を提示した条件はポジティブな印象に,ネガティブな情

報を提示した条件はネガティブな方向に変化した。

4

3,5

3

2.5

1。5

0.5

印象変化量(絶対値)

ネガv来ジM性

       男

ネガM↓ポジV

ポジV↓ネガM

ポジM㊧ネガV

ポジ”↓ネガV

ネガV↓ポジM

       性

     . 女

ネガM↓ポジV

ポジV↓ネガM

4

3

2

1

0

一1

一2

一3

一4

    印象変化の方向(正がポジティブ,負がネガティブ)

ポジV↓ネガM

ネガv↓ポジM性

       男

ネガ醗↓ポジV

ポジM↓ネガV

ポジ解↓ネガV

ネガvーポジM性

       女

ネガM↓ポジV

ポジV↓ネガM

FIGURE4 「力本性」の各条件の印象変化量と印象変化の方向

21

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5本当の姿の判断分析

 「メールとビデオ,どちらが本当の姿を表していると思いましたか?jという質

問項目を分析に用いた。これは,メールが「1」,ビデオが「7」の評定尺度法による

回答であり,「4:どちらでもない」が中性値,よりメールの方が本当の姿を表して

いると思うほど「1」に,よりビデオの方が本当の姿を表していると思うほど「7」に近

いように回答させた。

 この質問項目を各被験者が「ネガティブな情報の材料を本当の姿だと思った」の

か「ポジティブな情報の材料を本当の姿だと思った」のかに分けた。例えば,ポジ

M→ネガV条件の被験者がメールの方が本当の姿を表しているという判断を行い,

回答した場合,その被験者はポジティブな情報を本当の姿だという判断をしている

ことになる。そして,「ネガティブな情報の材料を本当の姿だと思った」に分類され

た人数とrポジティブな情報の材料を本当の姿だと思った」に分類された人数によ

る分析を行うことにした。また,分析に際して,回答が得られなかった8名と中性

値の4(どちらでもない)に回答した9名は今回の分析対象外とし,ネガティブかポ

ジティブかの判断を行った63名を分析対象とした(TABIE5)。

TABLE5 判断値の離れ値とどちらを本当の姿に思ったかの人数

計合女男

n   n   n

ネガティブな情報を本当の姿だと思った

ポジティブな情報を本当の姿だと思った

22 20  42

9  12  21

合計 31 32  63

22

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 ズ分析を行った結果,ネガティブな情報を本当の姿だと思った人のほうがポジ

ティブな情報を本当の姿だと思った人よりも有意に多かった(κ2ニ7,0,p<.01)。性差

は認められなかったため(「ネガティブな情報を本当の姿だと思った」と回答した男

女(冗2ニ0,10,n.s,),「ポジティブな情報を本当の姿だと思った」と回答した男女(κ2

=0,43,nS.)),以降は男女一緒に分析を行った。

 また,ポジM→ネガV条件とネガV→ポジM条件のような,提示順序の違いに

よる比較を行ったところ,全条件の提示順序による差は見られなかったため(ズ

=5,11,n.s),どちらが本当かの判断は提示順序によるものではないことが示された。

そこで,実験材料による比較を行ったところ(Figure5),ネガティブなビデオ(ポジ

ティブなメール文)を見た人はポジティブな情報を本当の姿だと思う人よりもネガ

ティブな情報を本当の姿だと判断する人の方が多いことが示された(κ

2=13.33,p<.01)。また,ポジティブなビデオ(ネガティブなメール文)を見た人はポジ

ティブなメール文(ネガティブなビデオ)を見た人よりもポジティブな情報を本当の

姿だと判断する人の方が多いことが示された(ずニ5,76,p<。05)。

魏30

25

20

15

10

5

0

■ネガティブな情報を本当の姿だと,思った

ロポジティブな情報を本当の姿だと思った

ネガティブビデオ条件   ポジティブビデオ条件(ポジティブメール文条件) (ネガティブメール文条件)

           **p〈.01  *p<.05

Figure5 どちらを本当の姿だと思ったかの人数と分析結果

23

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6 メール意識の高低と印象変化量の分析

 メール意識の高低が印象変化量に関わっているかを調べるために,メール意識に

ついて抽出された3因子について,各被験者をそれぞれの因子の高群と低群に分け

た。今回の質問項目は,例えば「楽しい」という質問に対し,逆転項目以外は「1」が

当てはまる,「5」が当てはまらないという5件法で行い,それをそのまま得点とし

たため,得点が少ないほどメールに対して好意を持っていることになる。

 メール意識の分析においては,被験者数の関係により,男女を一緒にして分析を

行った。

 メール意識の第1因子r他者とのつながり感」は合計点の平均点が11.00点であっ

たため,11点以下を高群,12点以上を低群とし,第2因子「社会的望ましさ」は合

計点の平均点が7.98点であったため,7点以下を高群,8点以上を低群とし,第3

因子「力本性」は合計点の平均点が6。93点であったため,6点以下を高群,7点以上

を低群とした。メール意識の得点による分類後の人数,平均値およぴ標準偏差を

TABLE6に示した。

 次に,この変化量が2回目にメール文の提示を行う条件とビデオの提示を行う条

件とで差があるかどうかを検討するため,メール意識の高群と低群をさらに2回目

がメール文かビデオかに分け,二要因分散分析を行った(TABIE7)。その結果,メー

ル意識の「他者とのつながり感」は「個人的親しみやすさ」において

(F(1,76〉=0。15,n.鼠),r社会的望ましさ∫において(F(1,76)=0.11,n.s.),r力本性」にお

いて(F(1,76)ニ1.00,n.s,)交互作用が認められなかった。・

TABLE6 メール意識の得点による分類後の人数,平均および標準偏差

因子 高群  低群

他者とのっながり感

好意感情

親近感

nMSD顔MSDnM凹

44

2.06(0.48)

36

1.95(0.70)

39

2.27(0.82)

  )     )     )

6648468410274

3..4..4 .

 30 20 30

  (    (    

!巴¥

()内は標準偏差

24

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 メール意識の「好意感情」は「個人的親しみやすさ」において交互作用が認められ

なかったが(F(1,76)=1.64,n.s♪,r社会的望ましさ」において交互作用が認められたた

め(F(1,76)ニ7.35,p<,01.),丁磁ey法による多重比較を行ったところ,低群の2回目

にメール文を提示する群が低群の2回目にビデオを提示する群よりも変化量が有意

に高かった(低群:2回目ビデオく低群:2回目メール文)。「力本性」においても交互

作用が認められたため(F(1,76)=4.87,p<.05),Tukey法による多重比較を行ったとこ

毛ろ,いずれの条件にも有意差が認められなかった。

 メール意識のr親近感」は「個人的親しみやすさ」において(F(1,76)=2.11,n.s,),「社

会的望ましさ」において(F(1,76)=271,n.s.), 「力本性」において(F(1,76)ニ3.86,n.s.)

交互作用が認められなかった。

TABLE7 メール意識の高低とメール文の提示順序の差

      資   20     20A:メール文 M  2,12   L64

     SD (L18) (0.97)

      n   24     16B:ビデオ  M  2.61  1.31

     SD (L93〉 (1.08)

2回目の条件       他とのっながり感        1:高群  2:低群

 因子好意感月

因子

 17    231.81     1.93

(0.92) (1.23)

 19     21

2.63     2.07

(1.23) (1.24)

1:高群  2:低群 1:高群  2:低群

  親近感

個人的親しみやすさ

 14     26

2.13     1.92

(LO3) (1.15)

25    152。56     1.67

(1。41) (0.77)

             R   20    20       A:メール文 M  1.48  0.90             SD   (1.26)    (0.82)社会的望ましさ             n   24     16        B:ビデオ  M  1.01  1。01             SD   (0.59)    (1.19)

 多重比較

 多重比較

 ま7     230.74      1.52

(0.82) (1.16)

 19     21

1.11     0.61

(LO6) (L10)

    B2〈A2

 14     26

1.21     1.05

(1.玉5) (1.10)

 25    151.13     0.58

(0.98) (1.22)

力本性

      A:メール文 M

     SD     パB:ビデオ  M

     SD

 20     20

1。22     0.80

(0.98) (0.97)

 24     16

1.57     1.50

(0.81) (1。15)

 i7     23

0.88     !。26

(0.71〉    (0.98)

 19     21

1.67     0.90

(1.55) (1.18)

 14     26

1.12     1.03

(0,78) (0.98)

25    151.73      0.60

(1。41) (1.05)

多重比較

( 〉内は標準偏

25

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7 メール意識の高低による本当の姿の判断分析

 メール意識の高低によってネガティブな情報とポジティブな情報による本当の姿

の判断に違いがあるかどうかを調べるために,まず,各因子のネガティブビデオ条

件の高群と低群,またポジティブビデオ条件の高群と低群において,「ネガティブな

情報を本当の姿だと思った」か「ポジティブな情報を本当の姿だと思った」かを,

クロス集計にて比較した(TABLE8)。

 その結果,「他者とのつながり感」ではネガティブビデオ条件においても(κ2

ニ0.12,n,s.),ポジティブビデオ条件においても有意差が認められなかった(κ2

=0.28,n。s,)。

 「好意感情」ではネガティブビデオ条件において有意差が認められなかったが(κ2

=024,n。s♪,ポジティブビデオ条件においては有意差が認められたため(κ2

=6.80,p<.01),「ネガティブな情報を本当の姿だと思った」のみで冗2検定を行った

ところ,高群と低群に有意な差が認められた(冗2=4.77,p<.05)が,「ポジティブな情

報を本当の姿だと思った」では有意差は認められなかった(κ2ニ2,25,n,s。)。

 「親近感」ではネガティブビデオ条件において有意差が認められず(冗2=1.00,n.s),

ポジティブビデオ条件においても有意差が認められなかった(冗2ニ0.06,n.s.)。

TABLE8条件とどちらを本当の姿と思ったのかの人数

ネガティブビデオ条件  ポジティブビデオ条件

(ポジティブメール条件) (ネガティブメール条件)

高群  低群  合計   高群  低群  合計

                     ロ             

    他者とのつながり感ネガティブな情報を

      17本当の姿だと思った

ポジティブな情報を

      3本当の姿だと思った

8   25

2   5

8   9    17

9   7    16

計ムロ 20   10  30 17   16   33

好意感情

ネガティブな情報を

      13本当の姿だと思った

ポジティブな情報を

      2本当の姿だと思った

12   25

3   5

   *4   13   17

11   5    16

計A・ 15   15   30 15   18   33

親近感

ネガティブな情報を

      16本当の姿だと思った

ポジティブな情報を

      2本当の姿だと思った

9   25

3   5

6   11   17

5   11   16

計合 18     12    30      11     22      33

*P〈,05

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Iv.考察

 本研究では,初期の関係において,ポジティブな印象とネガティブな印象という

矛盾する情報をメール文の状況と対面の状況に分けて提示することにより,メール

文による印象は対面での印象に影響を与えるのか,対面での印象はメール文による

印象に影響を与えるのか,ネガティブな印象はポジティブな印象に比べ残りやすく

覆りにくいのか,情報の提示方法により印象形成にどれほど違いがあるのか,また,

メー一ルヘの好意度によって印象や判断に変化があるのかどうかを検討した。

実験材料による1回目と2回目の印象変化の解釈

 情報の提示方法による印象変化量の違いを検討するために,2回目の実験材料が

1回目の実験材料によって影響を受けているかどうかを確認した。

 その結果,「個人的親しみやすさ」において,男性はポジティブなビデオがネガテ

ィブなメールの影響を,またポジティブなメールがネガティブなビデオの影響を受

け,1回目の評定値よりもネガティブな印象になっていた。女性はポジティブなメ

ールがネガティブなビデオの影響を受け,1回目の評定値よりもネガティブな印象

になっていた。ポジティブなビデオはネガティブなメールによって1回目の評定値

よりもネガティブな印象になるとは言えなかった。また,男女とも,ネガティブな

実験材料はポジティブな実験材料によって1回目の評定値よりもポジティブな印象

になるとは言えなかった。

 「社会的望ましさ」において,男性はポジティブなビデオがネガティブなメールの

影響を受け,1回目の評定値よりもネガティブな印象になっていた。また,それ以

外の材料については2回目の実験材料が1回目の実験材料によって影響を受けてい

るとは言えなかった。女性においては2回目のどの実験材料も1回目の実験材料に

よって影響を受けているとは言えなかった。

 「力本性」において,男性はポジティブなメールがネガティブなビデオの影響を受

け,1回目の評定値よりもネガティブな印象になっていた。また,それ以外の材料

については2回目の実験材料が1回目の実験材料によって影響を受けているとは言

えなかった。女性はポジティブなメールがネガティブなビデオの影響を受け,1回

目の評定値よりもネガティブな印象になっていた。また,ネガティブなビデオがポ

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ジティブなメールの影響を受け,1回目の評定値よりもポジティブな印象になって

いた。それ以外の実験材料については2回目の実験材料が1回目の実験材料によっ

て影響を受けているとは言えなかった。

 以上の結果より,男性においては「個人的親しみやすさ」とr社会的望ましさ」の次

元においてネガティブなメールがポジティブなビデオに影響を与えているが,ポジ

ティブなメールはネガティブなビデオに影響を与えているとは言えず,仮説①は,

メールの影響について言えば,ネガティブなメールの場合にのみ支持された。女性

においては「力本性」の次元においてポジティブなメールがネガティブなビデオに影

響を与えているが,ネガティブなメールは影響を与えておらず,仮説①は,メール

について言えば,ポジティブなメール文の場合にのみ支持されたといえる。

 また,仮説①のビデオの影響について言えば,男性において,「個人的親しみやす

さ」と「力本性」の次元においてネガティブなビデオがポジティブなメールに影響を

与えているが,ポジティブなビデオはネガティブなビデオに影響を与えているとは

言えず,仮説①のビデオにおいてはネガティブなビデオの場合にのみ支持された。

女性においても,男性と同様に「個人的親しみやすさ」と「力本性」の次元においてネ

ガティブなビデオがポジティブなメールに影響を与えているが,ポジティブなビデ

オはネガティブなビデオに影響を与えているとは言えず,仮説①のビデオにおいて

はネガティブなビデオの場合にのみ支持された。

 さらに,仮説②においても,男性においては「個人的親しみやすさ」においてネガ

ティブな情報のビデオとメール,両方がポジティブな印象に大きく影響を与えてお

り,またネガティブな情報はポジティブな情報によって覆されにくいことが示され,

仮説②が支持されたと言える。それに対して,女性においてはネガティブな情報は

ポジティブな情報によって覆されにくいことが示されているが,非言語的な手がか

りを含むネガティブな情報のみポジティブな印象に大きく影響を与えていることか

ら,仮説②はネガティブな非言語的な手がかりの多い情報にのみ支持された。仮説

①,②においてどちらも男女に違いがあることは興味深い。

 では,なぜ,男性はどのようなメディアであろうとネガティブな印象の影響を受

けやすいのに対し,女性は非言語的な手がかりの多い情報のメディアのネガティブ

な印象に影響を受けやすく,その印象が残りやすいのだろうか。そして,なぜ女性

においてのみポジティブなメールが影響を与えていたのだろうか。

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 この結果については,男女の印象の受けやすさについての研究がなされていない

ため,新しい結果であるといえる。そのため,推察に過ぎないが,女性においてネ

ガティブな情報が影響を与えているのが映像情報に集中し,ポジティブな文字情報

が印象に影響を与えていた理由として,女性のほうが,パーソン・ポジティビティ

が高いことが上げられる。パーソン・ポジティビティは蘭(1990)が「他者を好意的に,

そして肯定的に認知する傾向」と呼んでいる。実際に,潮村(1995)は印象評定におい

て,男性よりも女性のほうがこの傾向が高いことを示している。女性はその傾向の

高さと,文字情報における非言語的な手がかりの少なさから,男性よりも好意的な

印象に注意を向けるのではないだろうか。

 また,今回の研究では2回目の実験材料の提示後に1回目と2回目のトータルな

人物像の印象評定を行った。そのため,2回目の惰報の印象が残るのは当然である

と考えられるが,男女ともほとんどの因子で1回目のネガティブな情報がポジティ

ブな情報によって影響を受けていないことからも,ネガティブな情報の覆しにくさ

をうかがうことが出来る。

条件の違いによる印象変化量の解釈

 実験条件の違いによって,印象変化量に違いがあるかどうかを検討した結果,全

ての条件において,2回目に提示した情報の印象の方向に印象評定値が変化するこ

とが示された。

 そして,男性のみにおいてネガティブな映像情報はポジティブな情報の後に提示

されることで「個人的親しみやすさ」において最も印象変化が大きくなることが示さ

れ,また「力本性」においても他の2条件よりも印象変化が大きくなることからも,

仮説③が支持されたと言える。「個人的親しみやすさ」においてはネガティブな映像

情報が持つ印象の影響力が強いことが示され,さらに順序効果による印象変化の差

があることが確認されたことを示している。しかし,ネガティブな文字情報につい

ては他の条件に比べて印象の影響力の強さは見られず,順序効果も見られない。つ

まり,ネガティブな印象であるからといって,必ずしもそちらに重みがかかった印

象形成がなされるわけではなく,ポジティブな印象が持つ情報のメディアによって

左右されることが考えられる。本研究では,ネガティブな文字情報の提示条件には

ポジティブな映像情報が提示された。非言語的な手がかりが多い映像情報の場合,

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文字情報よりも重みがかかった印象形成がされると考えられるため,ネガティブな

印象と非言語的な手がかりの持つ印象の重みが拮抗し,変化量に差が見られなかっ

たのだと考えられる。

 一方,女性においては印象の各因子においてまとまりのある結果は得られず,仮

説③は支持されなかった。男女で印象変化に差が見られたのは何故だろうか。その

理由として考えられるのは,女性の友人関係のあり方が考えられる。今回,女性が

いずれの条件にも差を示さなかった「個人的親しみやすさ」と「力本性」は,初期の出

会いにおいて,対等な関係の両者が友人関係に発展するために必要な要因であると

考えられる。女性の友人関係は男性に比べ,関係の早い段階から自分のプライベー

トな情報や感情を提示し合うため,お互いの気持ちを察し合うことが上手いといえ

る(大坊・奥田,1998)。また,女性の方が思いやりのある行動を行う傾向が強く,相

手の気持ちを読み取るとそれが素直に行動に出やすいという結果も示されている

(菊池,1988)。っまり女性は,相手の気持ちを察することでポジティブな印象がネガ

ティブな印象を補うものであると考えることが出来るのではないだろうか。例えば,

男性において印象変化が大きかったポジティブなメール文の後にネガティブな映像

情報を示した場合,女性はポジティブなメール文のような肯定的な態度を対面だと

なかなか出せないので,メールでそのような態度を出しているのではないだろうか

と考え,印象変化量の差が条件の違いによってそこまで大きくならないと考えるこ

とが出来る。

本当の姿の判断の解釈

 情報の提示方法の違いから,どのような情報がその人の本当の姿と判断されやす

いのかを検討した結果,ネガティブな情報とポジティブな情報を提示した場合には,

ネガティブな情報のほうを本当の姿であると判断することが示され,仮説④が支持

された。また,ネガティブな映像情報を提示するとポジティブな情報があってもそ

ちらを本当の姿であると判断されやすく,ポジティブな映像情報はポジティブな文

字情報よりも本当の姿であると判断されやすいことが示された。

 この結果から,非言語的な手がかりは相手が本当はどんな人物であるのかを判断

する際に重要な役割を持っていることが分かる。実際に,対人関係の初期の段階で

は対人魅力を規定する手がかりのうち,容貌やスタイルといった外見的な特徴の優

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位性が高いと言われている(大坊,1998)ため,そちらの情報に本当の姿を求める確率

が高いのだろう。そしてそれはネガティブなものである程,高い確率で判断される

ことになることが示唆された。このことはネガティビティ・バイアスの解釈から説

明がつく。人は望ましい行動は単に社会的規範に従っているに過ぎない場合が多く,

望ましくない行動は非難を受けやすいと言う点でコストの大きい行動であり,それ

をあえて行った行為者本来の性格である可能性が高いと考えられることである(山

本・外山・池上・遠藤・北村・宮本,2005)。そのため,ネガティブな映像情報が高

い確率で本当の姿と判断されたのだろう。

 またポジティブな映像情報とネガティブな文字情報を提示した条件では判断の差

がなかった。この理由については印象変化量同様,非言語情報とネガティブな情報

が拮抗し,確信度を鈍らせ,判断に差が見られなかったと考えることができる。

メール意識の高低と印象変化量の解釈

 本研究では,文字によるコミュニケーションの好意や慣れという個人の要因が他

者に対する認知のあり方に影響を及ぽし,メールの好意度が高い人ほど文字情報を

提示された時の印象変化が大きいと考えた。

 メール意識の高群と低群に被験者を分類し分析を行ったが,その結果から特徴的

な差は見られず仮説⑤は支持されなかった。

 高群と低群に文宇情報提示の変化に差がなかった理由については,まず,高群と

低群の統制が不十分であったことが上げられる。「好意感情」では,低群の平均値カミ

2.60点,r親近感」においては低群の平均値が3.02点と質問紙のr3:どちらでもな

い」に近い値になっている。そのため,低群といっても,好意感情が低い,親近感

が低いとは言いがたい。しかし,今回の研究の被験者は一般の大学生を無作為に抽

出した80名であるため,今回使用した質問紙自体がそもそも高群と低群に統制す

ることが難しい項目であったと言える。現在,メールはありふれているもので,ほ

とんどの学生が日常的にメールのやりとりを行っており,目常生活の中で必須のツ

ールとなっている。そのため,メールに対する意識に極端な差がなくなってきてい

るのではないだろうか。学生はメールが好きだからといって,必ずしもその情報に

信頼を寄せるわけではなく,あくまでツールとしてのメールの存在に魅力を感じて

いるのと考えられる。今回の結果から,もちろんメールのやりとりによって印象は

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作られるが,そこにメールに対しての意識の差は関係がない可能性が示された。白

倉(2003)の研究においても,差が生まれるだけで,変化の高低は明らかにしていな

い。印象に差を生む要因はメールに対する意識ではなく,他にあると考えることが

出来る。

メール意識の高低と本当の姿の判断の解釈

 メール意識の高群と低群によって,本当の姿の判断が異なると考え,分析を行っ

たが,結果からメール意識の高群は文字情報を本当の姿と判断するとは言えず,仮

説⑥は支持されなかった。

 この結果からも,メール意識と印象変化に関係がなかったように,メールが好き

だからといって,その情報に信頼を寄せるわけではない可能性が示された。

本研究から得られる知見と今後の課題

 本研究は,対面でのコミュニケーション場面を仮定した映像情報とCMC場面を

仮定した文字情報の提示による実験を行った。そのため,本研究の結果が直接現実

のコミュニケーション場面における印象形成のあり方であると断言することは出来

ない。しかし,メール文から受ける印象が対面時の印象に影響を及ぽす可能性を示

すことが出来た点では意義のあることだと考えられる。男性においてはネガティブ

な印象を持つメール文が,女性においてはポジティブな印象を持つメール文が対面

時のギャップに影響を及ぽす可能性があるということは,男性同士の出会いにおい

ては,初期のメール文のやり取りが否定的なものであれば,それによって対面時の

好印象が悪い方向へ引きずられる可能性があり,女性同士の出会いにおいては,初

期のメール文のやり取りが肯定的なものであれば,対面時の悪印象を良い方向へ引

っ張ることができる可能性があるということである。つまりこの結果は,もともと

容易に印象操作が可能なメールというツールによって,印象形成に変化を生むこと

が意図的に可能であるということを示している。

 メールから始まる人間関係について,泊(2003)は大学生の1割程度の男女が見知

らぬ相手とCMCを行い,その後実際に会ったことがあるという結果を示している。

警視庁(2005)のデータを見ても,「出会い系サイト」の利用によってr見知らぬ人」と

メールのやり取りを行ったことのある20歳未満の若者は男性では10パーセントを

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超えており,出会い系サイトに利用によって何らかのトラブルに巻き込まれた6割

以上は女子中・高生であると示している。本研究の結果と,このデータは無関係で

あると言うことは出来ない。メールによる印象操作が可能であると言う事実からも,

そして,人間関係の維持のために必須のツールとなっているメールをより有用なも

のとして使うためにも,このようなメールの可能性やその利用の仕方をより教えて

いくことが重要であると考えられる。

 今回の研究では被験者と被観察者が同性の場合のデータであるため,異性とのコ

ミュニケーション場面について言及することは出来ない。しかし,文字から始まる

コミュニケーションを考える際には同性と同様に異性とのやり取りを考慮する必要

がある。実際にr出会い系サイト」の利用状況は若年層において同性とのやりとりを

行ったことのある者と異性とのやり取りを行ったことのある者の人数が同程度の割

合を示していることからも(内閣府,2003),異性とのコミュニケーション場面での印

象形成についてさらに研究する必要があると考えられる。

 さらに,本研究において参考にした吉川(1989)の研究の「悪印象が残りやすく,

覆りにくい」という結果に一致する結果が得られたことも意義のあることだと考え

られる。男性においては「個人的親しみやすさ」において,ネガティブなビデオもメ

ール文も先行して提示した場合には,2回目のポジティブな印象に影響を与えてお

り,逆にポジティブなビデオとメール文は2回目のネガティブな印象を覆すことが

出来なかった。これは吉川(1989)の結果に近いものであった。女性においてはこの

結果は得られなかったが,吉川(1989)の研究では男性のみの研究を行っているため,

今回の結果の確認は出来ない。しかし,この結果は新しい知見であると言える。本

研究で得られた男女での異なる影響の受け方は,鈴木・渡部(1982)の顔から受ける

印象が男女で異なることを示している研究と近いものがあるが,CMCと対面場面

での印象形成においては男女差について触れた研究がほとんどないため,今後,こ

の男女差についてより深く研究をしていく必要があると考えられる。

 また,初期の出会いにおいては肯定的なメールのやり取り後に対面時の悪印象が

見られたときに最も印象が悪くなり,対面時の悪印象を本当のその人だと判断され

てしまうことが男性の揚合に明らかにされた。女性の場合には男性のような結果は

得られなかった。しかし,男女とも1回目の印象と逆の印象を2回目に見た場合に

は,どのような情報でも逆の印象の方向に印象が変化することが示され,対面時が

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ネガティブな印象であった場合,その後いくら肯定的なメールのやり取りを行って

好印象を抱かせようとしても,対面時のネガティブな印象の方を本当のその人の姿

だと思わせてしまう可能性が示唆された。このことにより,ネガティブな対面時の

情報の影響力の強さが明らかになったと言える。

 以上のように,本研究ではメールと対面時の印象が互いの情報に与える影響とネ

ガティブな印象の影響力の強さについての可能性を示すことが出来た。しかし,本

研究では印象変化に関する要因を明らかにすることが出来なかった。メールに対す

る意識によってメール文の提示時の印象変化に違いが見られなかったことから,今

後,メールと対面時の印象の変化を規定する要因は何なのか,研究を進めていく必

要がある。また,対面と非対面の設定においても今回はビデオとメール文を用いた。

現実を想定した場面設定であるとはいえ,本研究の結果が現実場面に適応可能なデ

ータであると言うことは出来ない。実験材料においても,ネガティブな印象とポジ

ティブな印象が全ての次元で完全に統制されていたわけではない。そのため,対面

と非対面の場面設定,また,ポジティブとネガティブな印象をより厳密に統制した

研究を行う必要がある。これらは今回の研究を通して得られた今後の課題として,

検討していく必要があろう。

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引用・参考文献

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謝辞

本研究を進めるにあたり、ご協力いただきました多くの方々に深

く御礼申し上げます。指導教官の古川雅文先生にはお忙しい申、い

つもご丁寧にご指導いただきました。また、学校心理コースの諸先

生方には、研究を進める上で、責重なご指導をいただき、ありがと

うございました。

 そして、本研究の趣旨をご理解いただき、お忙しいにもかかわら

ず、調査にご協力いただいた95名の学生の皆さん、多くのお知り

舎いの学生を紹介していただいた皆さんに、この場を借りて心より

感謝申し上げます。また、同じ学校心理コース生として、共に時問

を過ごしてくださった皆さんには、いつも貴重なご意見や励ましの

ことばをかけていただきました。皆さんとの時問は私の大学院生活

を支えてくれた大切な宝です。

 最後に、3年問いつも私を支えてくれた山ロ県の家族に感謝をさ

さげます。大学院で学んだ多くのことを、今後の人生に活かしてい

けるよう、日々、努力していきたいと思います。

2006年12月20日     是永 崇