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兵庫教育大学学校教育学研究, 2017, 第30巻, pp.107-113
課題設定 ・ 解決力 を育成す るスマ ー ト フ オンア プリ 開発 を用いた
プロ グラ ミ ング導入教育の実践- 大学生を対象と した課外教育の事例一
107
Practice of Introductory Programming Education for Problem Solving Skill Development Using Smartphone Application Development : Example of Extracurricular Activities for University Students
福 井 昌 則* 森 山 潤** FUKUI Masanori MORIYAMA Jun
本研究の目的は , 学習者の課題設定 ・ 解決力 を育成す るために, スマ ー ト フ オンア プリ 開発 を題材と す る プロ グラ ミ ン
グ導入教育を実践し , その効果を検証す るこ と である . 私立大学の学部生, 大学院生計 6 名を対象に, 課外教育と し て 5
日間のプロ グラ ミ ング導入教育 を実施し た. 題材は iPhone アプリ開発と し , Swift を用いて自己紹介アプリ や数学的ゲー
ムア プリ を制作 させる学習活動 を展開 し た. 事前事後調査の結果, 本実践には, プロ グラ ミ ング初学者である受講生が抱
いていた不安感 を和 らげ, 主体的な プロ グラ ミ ングの工夫 を高める効果のあ るこ と が確認 さ れた.
キーワー ド : プロ グラ ミ ング教育, 課題設定 ・ 解決力 , Swift, 数学的ゲーム
1 . は じ めに
本研究の目的は, 学習者の課題設定 ・ 解決力 を育成す
るために , スマ ー ト フ オンア プリ 開発 を題材 と す る プロ
グラ ミ ング導入教育を実践し , その効果を検証するこ と
で あ る .
政府は産業競争力会議において, 2020年から義務教育
課程におい て プロ グラ ミ ング教育 を必修化にす る こ と を
発表 ' ) し , 平成29年 3 月には, 小中学校の新学習指導
要領が公示 さ れ, 2017年度には高等学校次期学習指導要
領が公示 さ れる予定 と な っ てい る 2). その中で , 小中学
校におけ る プロ グラ ミ ン グ教育必修化がな さ れ, 高校情
報科において も 「情報 I」 「情報 n」 (仮称) の設置な ど, さ ら な る プロ グラ ミ ング教育の充実が図 ら れる こ と が予
測さ れる. 世界最先端 IT 国家創造宣言によ れば, 初等 ・
中等教育段階におけ る プロ グラ ミ ン グに関す る教育の充
実と と も に, 「日本の IT 社会をリ ー ド し , 世界にも通用
する IT 人材の創出」 を目標と し てかかげ, IT に対する
興味 を育むと と も に, IT を活用 し て多様化す る課題に
創造的に取り 組む力 を育成 し , グロ ーバル化への対応と
し て , IT を活用 し て課題解決を図 る力 な どの育成 を ね
ら い と し てい る 3).こ のよ う な状況におい て , プロ グラ ミ ン グ教育 を さ ら
に充実 さ せる ためには , 単 に教育課程におけ る プロ グラ
ミ ン グ教育の時間拡充 だけ ではな く , プロ グラ ミ ン グに
対す る興味 ・ 関心 を高める題材の開発や, プロ グラ ミ ン
グ的思考な どを育成する指導方法の確立が重要であ る .プロ グラ ミ ング教育 を通 し て身につけ るこ と が期待 さ
れてい る力 と し て総務省は, 「創造力の向上」 「課題解決
力の向上」 「表現力の向上」 「合理性, 論理的思考力の向
上」 「意欲の向上 (内発的な動機づけ効果)」 「 コーディ
ン グ ・ プロ グラ ミ ン グス キルの向上」 「 コ ン ピ ュ ー タ の
原理に関す る理解」 の 7 つをあげており , こ れら の 7 つの力は 「21世紀型スキル」 の大半 を カバーでき る と し て
い る 4). 21世紀型スキルと は, 白水 ら によ れば, 21世紀
の知識基盤社会で求めら れる能力 であり , 他者と の対話
の中で , テ ク ノ ロ ジーも駆使 し て, 問題に対す る解や新
しい物事のやり方, 考え方, まと め方, さ らに深い問い
な ど, 私たち人類にと っ ての 「知識」 を生み出すスキル
のこ と で あ る 5). こ のよ う な21世紀型ス キルは , こ れか
らの高度情報化社会を生き る上で必要な力の一つと言え
る . 総務省の同資料によ れば, プロ グラ ミ ン グ人材に関
する段階的な育成手法と し て典型的な指導方法な どを整
理 し てお り , 例え ばテキス ト 型言語が使え る時期には
「 (a) スキル習得型, (b) モチベーシ ョ ン向上型, (c) 課題
設定 ・ 解決力育成型」 の 3 つをあげてい る . (c) の課題
設定 ・ 解決力育成型では 「作り たいモ ノ や目標を最初に
具体化」 す る こ と や 「 どのよ う な プロ グラ ムを作 る か
(What) を考え てから , どのよ う に プロ グラ ミ ン グす る
か (How) を考え る よ う にす る .」 な どと い っ た特徴 を
あげ, 「自 ら考え , 成果を伝え る力 を育むこ と」 を育成
方法に関する考え方の基盤と し てい る 4). こ れら の力 を
育成す るこ と は, グロ ーバルな視点で活躍す る人材育成
においても重要であ る . 内閣官房情報通信 ( IT) 総合戦
略室は , プロ グラ ミ ン グ教育 を通 じ ての学びをよ り 効果
的にす るための前提と し て , ①課題に対 し てチ ャ レ ンジ
し続け る力 , ②異なる意見を認識 ・ 許容 し , 対話する力
( コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ン力 ) の 2 点 を掲げ, ①の観点にお
い て , 「 ただ単純に コ ーディ ングがで き る人材」 を創出
* 兵庫教育大学大学院 (修士課程) 教科教育実践開発専攻生活 ・ 健康 ・ 情報系教育コース 平成29年 6 月27 日受理
* * 兵庫教育大学大学院教科教育実践開発専攻生活 ・ 健康 ・ 情報系教育コ ース, 教育実践高度化専攻授業実践開発 コ ース 教授
108 学校教育学研究, 2017, 第30巻
す る ための プロ グラ ミ ン グ教育ではな く , 「常に自 ら が
考え, 行動し , 失敗や挫折を繰り 返し ながら成長し てい
く こ と が出来る人材 を育成 し てい く 」 と いう こ と が重要
であ る と 述べてい る 5).現在, 全国の小中学, 高校, 大学ではプロ グラ ミ ング
教育に対する様々な取り 組みが行われは じめており , 少
なからず実践報告が見ら れるよ う にな っ てき た. 例えば, 文部科学省のプロ グラ ミ ング教育実践ガイ ドでは, 小中
高校それぞれ4 つの幅広い実践事例を報告 し てい る . そ
し て プロ グラ ミ ング教育の実践上の工夫と し て, 教員は
目標を細分化 し , 小 さ な目標を達成す る体験を積み重ね
ながら最終目標に近づけ るよ う スモ ールス テ ッ プで課題
を設定す る こ と によ り , 児童生徒の 「 プロ グラ ミ ン グは
難しい」 と いう 思い込みを払拭させ, 自分に も でき ると
いう 自己効力感を高めさせているこ と , そ し て児童生徒
はあ る程度自分で コ ン ピ ュ ータ を動かす こ と がで き るよ
う にな る と , 自分自身で発展 ・ 改良する と い っ た工夫 を
す る様子が見 ら れる 7) と指摘 し てい る . その他に も , 簡単 な プロ グラ ムを用い てロ ボ ッ ト を走 ら れる こ と がで
き る比較的安価なキ ッ ト な どを活用 し た実践は多 く 見ら
れる . し か し森 ら は, 大学新入生の Pc スキルについ て
の調査の結果, プロ グラ ミ ン グについ て 「わから ない」
「使 っ たこ と な し」 を選んだ学生がほぼ90% で , ほと ん
どの高校 で プロ グラ ミ ン グ教育は行 われてい ない 8) と
述べており , 校種 を問わず プロ グラ ミ ング導入教育の充
実 さ せる方略を検討するこ と が重要と な っ てい る.上述 し た問題点 を解決する題材と し て, スマー ト フ オ
ン上で動 く ア プリ ケーシ ョ ン開発 (以下, ア プリ ケーシ ョ
ンをア プリ と略記) が考え ら れる . 近年 , 児童生徒の中
で も爆発的にスマー ト フ オンが普及し てい る. 内閣府の
資料によ れば, 平成27年度のスマー ト フ オン所有率は, 小学生で23.7%, 中学生で45.6%, 高校生で93.6%, 小
中高生全体では53.3% 9) で あ り , 身近 な デバイ ス と し
て広 く 普及し てい る . 大学生のスマー ト フ オン所有率に
関する内閣府な どの調査は見当たら ないが, 20~ 29歳の
スマー ト フ オン所有率が一番高いという データからみて, 大学生にスマ ー ト フ オンは身近なデバイ ス と し て広 く 普
及 し てい る . こ のよ う な身近なデバイ ス上で動 く ア プリ
ケ ーシ ョ ンには興味 を持つ人が多 く , 実際にそのよ う な
ア プリ 開発に対す るニ ーズも多 い .スマ ー ト フ オンア プリ 開発の一 つに iPhone ア プリ 開
発があり , 中高生を対象と し たア プリ 開発教育 を実施し
てい る団体 と し て Li fe is Tech! な どが知 ら れてい る . Life is Tech! は, 「創造する力」 と 「つく る技術」 の習
得 を テ ーマ に プロ グラ ミ ング教育 を行 っ てお り , iPhone プロ グラ ミ ング講座では 「 カ ウ ン ト ア ッ プ」 「電卓」 「 ス
タ ン プ」 「目覚 し時計」 な どを題材と し た プロ グラ ミ ン
グを行 っ た後, オリ ジナルア プリ を作 る と い っ たカ リ キュ
ラ ムを18回構成で実施 し てい る'°) . し かし実施内容の詳
細な分析や報告がみら れず, ホームページの記載内容か
ら見て, 総務省が掲げる課題設定 ・ 解決力 を育むこ と を
行 う 段階は, 最終段階であ る オリ ジナルア プリ を作成す
る と こ ろ に見 ら れる も のの, 詳細な内容につい ては定か
ではない . また中高生 (小学生は姉妹校で対応) 対象で
あり , 18歳以上の受講生に対 し て門戸が開かれていない. 北門は, 大学教育におけ る プロ グラ ミ ン グを専門と し な
い学生に対する実践と し て, ゼミ 生対象に 4 年間にわた
り Objective-C によ る iPhone ア プリ 開発 を行 っ てき たと
報告'') し てい る . し かし , 学生が課題設定 し て実装 し
たかな どと い つたこ と に関す る記載がな く , データ ベー
ス を用いたアプリ制作が導入教育 と し て活用でき るか定
かではない .以上のこ と から , 校種や受講者の対象 を問わず, 課題
設定 ・ 解決力 を高める プロ グラ ミ ング導入教育の充実が
重要であり , かつ多 く の人にと っ て身近であ るスマー ト
フ オン上で動 く スマー ト フ オンア プリ 開発 を用い るこ と
で生徒の興味関心 を高めら れるこ と が期待 さ れる . 一方
で , 課題設定 ・ 解決力 を高めるこ と を取り 入れたスマー
ト フ オンア プリ 開発 を用い た プロ グラ ミ ン グ導入教育は,
筆者の知 る限り において先行研究 を も たないのが現状で
あ る .
2 . 題材の開発
本稿では, 第 1 章で述べた問題点 を解決す るこ と を目
的と し , 導入教育で活用可能な題材の開発を行 った. 要
件は , 次の 4 点 で あ る .
(1) iPhone アプリ 開発を行う .(2) 自身で課題設定し解決する.(3) プレゼ ンテー シ ョ ンを積極的 に行 う .
(4) 自己紹介アプリ , 数学的ゲームを題材と する.(1) は, 多 く の受講生に と っ て身近な iPhone ア プリ
を題材とす るこ と で, 興味 ・ 関心を引き , 不安感や苦手
意識の軽減が期待 で き る と 考え た . iPhone ア プ リ 開発
の入門書は , ユ ーザイ ン タ フ ェ ースの取 り 扱い に関す る
内容が大半 を占めており , それら を使う こ と で複雑なア
ル ゴリ ズ ムを実装 し な く と も , あ る程度動 き のあ る ア プ
リ を作成す るこ と がで き , 「思っ たよ り 簡単」 な どと 感
じ さ せ る こ と が期待 で き る . UI 設計 は , x -code の
storyboard を活用す るこ と で比較的容易に行う こ と がで
き る . x -code 7以降から , 無料で実機転送可能と なり , ア プリ 開発がよ り 身近に感 じ ら れるよ う にな っ た . 開発
で用いる言語の Swift は, 2014年に Apple がリ リ ース し
た新 しい プロ グラ ミ ン グ言語であり , 「 モ ダン, 安全 , 高速, イ ン タ ラ ク テ ィ ブ」 を特徴 と し て掲げてい る . 例
えば, 文末にセ ミ コロ ンを必要と し ないこ と から , 多 く
の初学者が く こ と が多 いセ ミ コロ ンのつけ忘 れによ る
コ ンパイ ルエ ラ ーを回避するこ と ができ る利点 を有す る . し か し , Swift のバージ ョ ンが上がる と文法が変わる こ
と があるこ と , 以前の文法が使えな く なっ て しまう こ と , 他言語 と 類似 し ない文法があ るこ と な どがあ るため, 指
導にあ た っ ては注意が必要で あ る .
(2) , (3) は, 総務省の資料にある , 「主体的に考え , アイ デア を形に し て , それを周囲に伝え ていけ る力 を子
ども たち自身が身につけ る こ と を目指 し てい る . そのた
めに, 手段を学ぶだけでな く , 新 しい ものを自分で生み
出 し , 形にす るための試行錯誤を経て, 最後にそれを周
囲に発信する経験まで行う . その経験を通 じ て, 子 ども
たちが将来未知の問題に対面 し た時に, 自 らの力で乗り
越え ら れる よ う な力 を育 んでい く . 」 4) と の指摘に基づ
く . 本稿ではこ の内容を , 「自身で課題設定 し解決させ
るこ と (課題設定 ・ 解決力)」 と 「成果を伝え る力」 を
身につけ る こ と と捉え , そ れを身につけ る こ と をねら い
と し た授業 を行う こ と と し た. つまり , 課題設定 ・ 解決
力の育成のために, 受講生自身が実装する内容を考え , そ れを実装す る活動 を行い , その内容につい て プレ ゼ ン
テーシ ョ ン (以下 プレゼ ンと 略記) す る こ と を繰り 返 し
て行う . そのこ と で, 自身で課題設定 し解決する力 , お
よ びそれを伝え る力 を育成す る こ と を通 し て , 双方の重
要性 を感 じ させる こ と をねら い と す る .(4) を設定し た理由は次の 2 点である. まず, 自己紹
介ア プリ は複雑な アルゴリ ズムを学んでいない段階で も , ボタ ンタ ッ プで文字や画像を表示するこ と , 画面遷移な
どを活用するこ と で, 動き をつけた魅力ある ものにでき , 参加する受講生の構成次第では, お互い を全 く 知ら ない
こ と があり 得 る ため, 交流を図 る目的 も兼ねてい る . そ
の後, 題材と し て数学的ゲームを用い る . 山上は, 数独
を用いた プロ グラ ミ ング授業 を実践 し , 生徒の興味 ・ 関
心 を高め, 達成感 を酸成でき たと 報告 し てい る'2) . ま た
筆者 らは , 数学的ゲームを用い た プロ グラ ミ ン グ授業の
試行的実践で, 生徒の主体的な態度の育成やテーマの有
用性につい て報告 '3) し てい る . 数学的 ゲ ームは , ①問
題がよ り 良 く 構造化 さ れており モデル化 しやすいこ と , ②変数の数学的な処理によ っ て解決方法 を探究するため
アルゴリ ズム的な思考 を促 し やすい こ と , ③ゲームの必
勝法の探究な ど, 興味 ・ 関心を高めやすいこ と , ④多 く
の予備知識を必要とせず, 受講生が取り 組みやすいこ と , と い っ た特徴 を有 し ており , 新 しい ア プリ を考え出すと
いう こ と に対 し て無理だと感 じ る受講生も一部を変更す
れば違った問題になる特徴を利用 して, 自身で課題設定 ・
解決を行う こ と が期待でき る . そ し て自身で作成 し た問
題に対 し て興味 を持 っ て も らい , 完成 させるこ と を目指
す. また, 具体的な プレイ を通し てアルゴリ ズムを考え
て説明 し実装す るこ と で , 基本的なアルゴリ ズムの学習
を促進するこ と を目指す.全体の流れと し ては, 「各回の前半に アル ゴリ ズ ムを
学習」 → 「各回の後半に自身で実装する問題を考えても
ら う」 → 「それを作成, 発表し ても ら う」 と いう 活動を
繰り 返 し行う . 使え る アルゴリ ズムは授業 ごと に増え て
い く ため , 自身のア プリ を どん どん良い も のと す る こ と
が期待でき る . そ し て自身で課題設定を行い , 基本的な
アルゴリ ズムを作品作成の プロ セスの一部 と し て楽 し み
ながら , 課題設定 ・ 解決力およ びプロ グラ ミ ン グに主体
的に取り 組む態度 を育成す る こ と をねら い と す る .
課題設定 ・ 解決力 を育成す るスマ ー ト フ オンア プリ 開発 を用い た プロ グラ ミ ング導入教育の実践 109
3 . 研究方法
3.1. 対象及び時期
・ 場所 : 私立 R 大学
・ 人数 : 同大学学部生, 大学院生計 6 名 (男 5 名, 女 1名) , 理系 3 名, 文系 3 名. 受講生のプロ フ ィ ールを
Table t に示す.・ 実施時期および授業時間 : 2016年 6 月 4 日, 11日, 18
日, 25日, 7月 2 日の5日間, 1 日あたり90分 X 3 コ
マ
・ 参加者は, 同大学エ ク ス テ ン シ ョ ンセ ン タ ーで募集 し ,
単位な どは出ない課外教育での実施と し た.
Table 1 受講者の所属と プロ グラ ミ ング経験
性別 所属 ・ 学年 プロ グラ ミ ン グ経験
男
男
男
男
女
男
理工学部 1 回生
理工学部 2回生
経済学部 1 回生
経済学部 4回生
経済学部 4回生
MOT 修士課程 2回生
あり (Java 初歩) あり (C言語 初歩)
な し
な し
な し
あり (R 初歩)
3.2. 実践内容
前章で開発 した題材を用いて, 以下の内容およ び条件
で実践授業 を行な っ た.・ システム要件 : 0SX 10.10 (Yosemite) も し く は 0SX
10.11 (El Capitan) , X-code 7以降, Swift2・ 第一回目の最初, およ び毎回の授業後にア ンケー ト に
よ る調査を行う . 授業内容を Table 2に示す.
Table 2 授業の内容
実施日 実施内容
第1 日目 X-codeの使い方, 変数(var,let),UILabel, UIButton, Ullmage, UllmageView
第2日目 if, for, UISwitch, 乱数, メ ソ ッ ド, アプリ転送
ゲームの作成, 発表
第3日目 ifのネス ト , forのネスト , UITableViewUISlider, ゲームの作成, 発表
第4日目 配列 , ア ニ メ ー シ ョ ン , 音声 , アイ コ ンの作成
ゲームの作成, 発表
第5 日目 ゲームの作成, 発表, 総括
3.3. 調査項目
本実践の第 1 日目, 毎回の授業後, およ び最終日に, 調査票を用いたア ンケー ト 調査 を実施 し た.
事前調査の項目と し て, 以下の項目 1 , 項目 2 を準備
し た . 項目 2 は 「 4 : と ても 3 : まあまあ 2 : あまり
1 : まったく 」 の 4 件法で回答を求めた.
l ie 学校教育学研究, 2017, 第30巻
項目 1将来的に , どのよ う な形で プロ グラ ミ ン グに関わり た
いですか. 一つ選んで下 さ い .a : プロ グラ マ と し て b : 趣味と し て
c : 特に開発は し ないが, よ リ ア プリ な どを活用す る
ため
d : 特にな し e : その他
項目 21 ) プロ グラ ミ ングに対す るイ メ ージは良い .2 ) プロ グラ ミ ングを学ぶこ とは自分の役に立つと思う . 3 ) プロ グラ ミ ン グを学ぶこ と は不安に感 じ る .
4 ) プロ グラ ミ ン グの学 び方 を学 びたい と 思う .5 ) プロ グラ ミ ングの文法や手法 を身につけ ら れる自信
があ る .
6 ) 本講座中の演習課題が自分ででき る自信がある .7 ) プロ グラ ミ ングの力 を生活の中で活かす自信がある .
ま た, 毎回の授業後に行う 調査の項目と し て, 以下の
項目 3 を準備 し , 「 4 : と ても 3 : まあまあ 2 : あま
り 1 : ま っ た く 」 の 4 件法で回答 を求めた. また, 2 項目につい て自由記述 を求めた.項目 31 ) 今日の講義はよ く わかっ た.2 ) 今日の講義は面白かった.3 ) 今日の講義は興味深い内容だった.4 ) 今日の講義は役に立った.5 ) 今日の講義で自信を持てた.6 ) 今日の講義は満足だ.7 ) も っ と プロ グラ ミ ン グをやっ てみたい .
8 ) 自分なり に工夫できた.・ どう いう 点で工夫できま し たか.・ 今日の講義の感想があれば教え て下 さ い .
事後調査の項目と し て, 項目 2 と項目 3 を準備 した. それに加え , 以下の項目も 4 件法で回答 を求めた.・ 今後 さ ら に プロ グラ ミ ン グをやっ てみたい .・ 今後 プロ グラ ミ ン グにな んら かの形で関わっ てい き た
い
また 4 項目について自由記述を求めた.・ こ れから さ ら に プロ グラ ミ ン グ学習 を通 し て どんな こ
と を身に付け たいですか.・ こ れから さ ら に プロ グラ ミ ン グを学ぶこ と につい て ,
何か思う こ と や希望があり ますか.・ 全体と し て どのよ う に成長でき ま し たか.・ 全体 を通 し て , 講義のよ かっ た点は どこ ですか.・ 全体 を通 し て , 講義のよ く なかっ た点は どこ ですか.
4 . 結果と考察
4.1. 事前調査の結果
事前調査の結果, 将来の自分と プロ グラ ミ ングと の関
連性については, a 「 プロ グラマ と し て」 が 2 名, b 「趣
味 と し て」 が 2 名, c 「特に開発は し ないが, よ リ ア プ
リ な どを活用す る ため」 が 2 名であ っ た . なお , a の選
択肢 を選んだ受講生はいずれも理工学部の学生であ っ た.
項目 2 の項日 と 結果を Table 3に示す . Table 3から , 3 ) 「 プロ グラ ミ ングを学ぶこ と は不安に感 じ る . 」 が他
項目に比べ s.D が高かっ た . こ のこ と から , 本受講者
は , プロ グラ ミ ン グの学習に対 し て抱 く 不安感におい て
個人差が大きい こ と が示唆さ れた .
Table 3 項目 2 の事前調査の結果
項目 平均 S D 1) プ ロ グラ ミ ン グに対 す る イ メ ージ は良 い.
2) プロ グラ ミ ングを学ぶこ と は自分の役に立つ と 思 う .
3) プロ グラ ミ ン グを学ぶこ と は不安に感 じ る .
4) プロ グラ ミ ングの学び方 を学びた い と 思 う .
5) プロ グラ ミ ングの文法や手法 を身につけ ら れる自信がある
6) 本講座中の演習課題が自分ででき る自信がある.
7) プロ グラ ミ ン グの力 を生活の中で活かす自信があ る.
0
7
7
0
7
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6
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6
1
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1
3
1
3
3
2
3
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3
3
5
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8
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5
2
5
0
0
0
0
0
0
0
4.2. 第 1 日目 (基本的操作と自己紹介アプリ作成)上記の実態を有する受講者に対 して次のよう に指導を
展開 し た . 第 1 日日の午前に x -code の使い方や入力 の
ルール , プロ グラ ミ ン グの基本 と な る変数 , 基本的 な
u I を学習 し て も らい , 午後から自己紹介ア プリ の内容
や動き , 設計について考え て も らい , 自己紹介ア プリ 開
発 を行 っ て も ら っ た .
こ の時点では, まだ分岐や反復は未習であり , 全体と
し て基本的な UI パーツ と 画面遷移から だけ で成り 立 っ
てい る作品がほと んどであ っ たが, 画面遷移や色合い , 画像な どを工夫するこ と を通 し て, と て も よい自己紹介
ア プリ と な っ てい た . 画面設計次第で ア プリ ら し く な る
という 意見が出さ れた. また受講生の多 く はプレゼンテー
シ ョ ンに慣れており , 積極的な交流が行われ, 受講生同
士の関係を深めるこ と ができ た. 授業後の自由記述では, 感想と し て 「思っ たよ り 簡単にでき てよかっ た.」 「次回
以降のも楽 し みです . 」 「 プロ グラ ミ ン グをやっ たこ と が
なかっ たので不安だ っ たんですが, と て も楽 しかっ たで
す.」 「エ ディ タがき れい .」 な どのコ メ ン ト が得ら れた .
Fig.1 実践の様子
4.3. 第 2 日目 (反復,分岐と丁半当てゲームの作成)午前に i f, for, UISwitch, 乱数, メ ソ ッ ドな どを学習
し て も らい , 実機転送について指導 し た . なお受講生全
員 iPhone ユ ーザであ っ た . 実際に転送で き る こ と を期
待 し て参加 し た学生も多 く , 事前調査の自由記述欄で
「授業でやっ て欲 しい内容」 と し てリ クエ ス ト が多かっ
課題設定 ・ 解決力 を育成す るスマ ー ト フ オンア プリ 開発 を用い た プロ グラ ミ ング導入教育の実践
Fig 2 受講生によ る発表
た項目であ る . 実際に所持 し てい る iPhone に比較的簡
単 に転送で き る こ と を知 つた受講生は, iPhone ら し い
動き を どう やっ たら実装で き るかについ て活発な意見交
換 を行 っ てい た. 午後から は数学的ゲームの一種であ る
丁半当てゲームを作成 し ても ら っ た. 丁半当てゲームは, いわゆる 「丁半博打」 のこ と であるが, 教育的観点から
「博打」 と い う 表現 を避け た . 丁半当 て ゲームは , サイ
コロ 2 つを同時に投げ, サイ コロの目の合計値が丁 (偶数) , 半 (奇数) かを当 て るゲームであ り , ほと ん どの
受講生に と っ て既知のゲームであ っ たが, こ の問題 をそ
のま ま作 るのではな く ,ゲーム自体 を自分自身で変形や
改良を行う こ と , そ し て u I を自身で設計す るこ と を条
件 と し , 作成 し て も ら う こ と と し た. サイ コロ の丁半 を
当 て る こ と で世界旅行 をす る ゲームや , サ ッ カ ーと 組み
合わせたゲームな ど, オリ ジナ リ テ ィ のあ る ゲームが提
案 さ れた . 作成後の発表時には, 他の受講生から お互い
のア プリ の改善案や良かっ た点な どについての議論 を行 っ
ても らい , 講義 を終了 し た. 授業後の自由記述では, 感
想と して 「自分で作り上げて行く と こ ろがと ても面白い ! 少 しずつ機能が増え て行 く のも楽 しい ! 」 「 for が最初よ
く わから な く て嫌に な り そ う で し た . で も わかっ て ス ツ
キリ しま し た.」 「x code は美 し く て素晴ら し く て最高で
す ! 」 「実機転送で感動 しま し た.」 な どと い っ た コ メ ン
ト が得 ら れた.
4.4. 第3 日目 (Delegate と丁半当てゲームの作成)午前に i f, for のネス ト , UITableView を学習 し ても
ら い , 実機転送を行 っ て も ら っ た. UITableView を用い
た ア プリ を実機転送 し た と こ ろ , そのア プリ がス ムーズ
にス ク ロ ールす る様子 を見て , 第 1 , 2 日目に行 な っ た
プロ グラ ミ ングと 異なるこ と に驚いてい る様子が伺え た.
ま た UITableView な どに用い る Delegate は , 他の言語
を経験 し たこ と があ る受講生であればそれほど理解が難
し く はないが (Java の impliments な ど と対応 さ せて説
明 を行な う と , す んなり と 理解は さ れる) , ほと んどプ
ロ グラ ミ ン グの経験がない受講生にと っ ては理解 しづ ら
い場合が多 い . そのよ う な受講生に対 し ては, Delegate のと こ ろで ク ラ スについての考え方や継承について少 し
触れるこ と で , 理解を促すこ と が可能と なる .
111
午後からは, 前回から作成 し てい る ア プリ に さ ら に追
加する機能について自身で考えて設定し, 実装しても ら っ
た. そ し て , 作成後発表 し て も ら っ たが, それまでの学
習内容である分岐や反復を積極的に使う こ と で, 前回よ
り ゲーム性が高まり , 学習 したアルゴリ ズムがゲーム性
の向上に有効である と感 じてい る様子が伺えた .そ し て , 受講生がア プリ 開発 を行 な っ てい る と き に,
「 for の入れ子みたいなのがわかり に く い んですが どう し
たら理解でき るで し よう か」 と いう 質問がな さ れた . そ
こ で 「 for は具体的に全部書き出 し てみて , それの どこ
が繰り 返 さ れてい るかと い う こ と を明 ら かに し てから書
い てみる と わかり やすいですよ」 と伝え , 「 5 の段, 6 の段の九九 を計算す る プロ グラ ムを作成せよ . 」 と い う
問題を例示 し , 「 1 . 全部書き出す」 → 「 2 . 変数を使
う」 → 「 3 . for を 1 つ使う」 → 「 4 . for を 2 つ使う」
と , 順に進めていけばよいこ と を , 箇所 を特定 し ながら
説明 し たと こ ろ , for のネ ス ト につい て理解で き たよ う
であ っ た . 授業後の自由記述では, 感想と し て 「例で丁
寧に説明 し ていただいたおかげで for 文がよ く 理解で き
ま し た ! プロ グラ ムやコ ン ピ ュ ータは, 人間と かけ離れ
た考え方 を使 っ てい るよ う なイ メ ー ジがあ っ たんですが,
どこ か人間 つぼいですね. 」 「 う ま く 動 く と気持ちいいで
す . 」 「 テーブル ビュ ーは結構簡単に作 れたのに動 き がす
ごいです. 自分の iPhone でやっ てみる と感動 しま し た. 」「 for を何回も つかう やつが難 しかっ た. 」 「でき るこ と が
ふえ て き た気 がす る . 」 「 い き な り こ れ (筆 者注 : Delegate のこ と ) をやっ た ら わから なかっ た と 思います
が, あ る程度わかっ てき たので と て も便利 だと わかり 嬉
しいです . 」 な どと い っ た コ メ ン ト が得 ら れた .
4.5. 第 4 日目 ( アニメ ーシ ョ ンと丁半当てゲームの作成)午前に配列 , 簡単 な アニ メ ー シ ョ ン , 音声 , アイ コ ン
の作成を指導 し , 午後からは前回に引き続きゲーム作成
を行 な っ て も ら っ た . 受講生の中に音声編集の経験者が
いたため, その受講生が中心と な っ て, 皆で協調的に活
動 を行 っ て も ら っ た . アイ コ ンの作成は Keynote, 画像
の リ サイ ズや加工は Preview な ど と い っ た , 最初か ら
M ac に イ ン ス ト ール さ れて い る ソ フ ト ウ ェ ア で も 行 え
るこ と を指導 し , 完成後発表を行 っ ても ら っ た. 音声と
アニ メ ー シ ョ ンが入 るこ と で , よ リ ア プリ と し ての完成
度が増 した . 授業後の自由記述では, 感想と し て 「 キー
ノ ー ト を初めて使いま し たが, 使いやす く てよ かっ たで
す . プレ ビュ ーの機能に も驚き ま し た . 他に もい ろ んな
アプリ教え て下 さい . 」 「次回の授業でなんと か完成でき
そう なと こ ろまで来てよかっ たです. 」 「自分の音声編集
の技術が生き てよ かっ た . 」 「完成度がどんどん高 く のが
嬉 しいです ! 」 な どと い っ た コ メ ン ト が得 ら れた .
4.6. 第 5 日目 (丁半当てゲームの完成と総括)午前から ゲーム作成 を継続 し ても らい , 午後は総括 と
し て作品 と 講義の感想 を含めた プレゼ ンを行 っ て も ら っ
た . 最後に受講生同士で ア プリ のレ ビュ ーを行 っ て も ら
l l 2 学校教育学研究, 2017, 第30巻
い , ア プリ のよい と こ ろ と改善点, 今後の抱負 な どにつ
いて話し ても らい, 講義 を終了 し た. Fig 3~ 6に, 受講
生が完成させた作品の一部 を示す. アプリ のタイ ト ルは, 受講生本人がつけたものであり , 作成者本人の許諾が取
れた 4 作品のみを掲載 し てい る .
有意差はみら れなか っ たが
た」 では, F (4,20) = 2.62, % 水準で有意傾向を示 し た.
8 ) 「自分なり に工夫でき
= .07 で平均点の向上が10
Table 4 項目3 の推移
Fig 3 サイ コロ サッ カ一 Fig 4 顔文字 く んと遊ぼう
Fig 5 Universal Fig 6 “The Yoku-bari”
今後の抱負 と し ては, 「今後 も プロ グラ ミ ン グを続け
て , 大会な どに出 し てみたい . 」 「留学の予定があるので
すが, 留学先で プロ グラ ミ ングの授業 を受け てみよ う と
思います. 」 「非常によい経験がで き てよかっ たです. 」な どと い っ た コ メ ン ト が得 ら れた. 授業後の自由記述で
は, 感想と し て 「この講習会に参加する前に一回自分で
ネ ッ ト見ながらやろう と したのですが, よ く わから なかっ
たので諦めてま した. 今回受講して本当によかったです. 」「今ま でやっ てき た プロ グラ ムと は違い , 狭い画面の中
で う ま く 作 るのが難 しかっ た . で も面白かっ た ! 」 「僕
もあいち やれや U22で賞 を取れるよ う になり たいです. 」「 わから ない こ と も丁寧に教え て下 さ り , 本当にあり が
と う ご ざいま し た .」 「間に合 っ てよ かっ たです .」 な ど
と い っ た コ メ ン ト が得 ら れた .
4.7. 実践の評価
毎回の授業後に項目 2 と 項目 3 につい て , そ れぞれ
「 4 : と ても 3 : まあまあ 2 : あま り 1 : ま っ た く 」
の 4 件法で回答を求めた. そ して項日 3 については各回, つまり 5 時点における平均点を分散分析で比較した. そ
の質問項目およ び結果を Table 4に示す. 1 ) ~ 7 ) に
項目 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 F値
1) 今日 の講義 はよ く わか った
2) 今日の講義は面白かった
3) 今日の講義は興味深い内容だ った
4) 今日の講義は役に立 った
5) 今日の講義で自信を持てた
6) 今日の講義は満足だ.
7) も っ と プ ロ グ ラ ミ ン グをや っ て みた い
8) 自分な り に工夫できた
674 7)
000 0)
833 7)
674 7)
505 0)
833 7)
674 7)
334 7)
3(0
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3(0
3(0
3(0
3(0
3(0
3(0
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000 0)
000 0)
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000 0)
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4(0
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3(0
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833 7)
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000 0)
674 7)
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0 000)
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0 000)
6747)
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3(0
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4(0
4(0
3(0
4(0
0 7 4.0 -
nl2 1.
1 52 .
1 2 3 .
1 82
ni ce
n26 2
†
† p< 10, p< 05 (n = 6 df = 4,20)
また, 事前と事後において, 項目 2 について質問 を行
い , 対応のあ る t 検定 を行 っ た . その結果 を Table 5に
示す. 3 ) 「学ぶこ と が不安」 の平均値が 5 %水準で有
意に減衰す る効果が示 さ れた . 他の項目に関 し ては, 有
意差はなかっ た .
Table 5 項目2 の推移
項目 事前 事後 p 1) プ ロ グラ ミ ン グに対 す る イ メ ー ジは良し
2) プロ グラ ミ ングを学ぶこ と は自分 の役に立つ と 思 う
3) プ ロ グラ ミ ングを学ぶこ と は不安に感 し る
4) プ ロ グラ ミ ングの学び方 を学 びた い と思 う
5) プ ロ グラ ミ ン グの文法や手法 を身に つけ ら れる自信があ る
6) 本講座中の演習課題が自分でで き る自信がある
7) プ ロ グラ ミ ングの力 を生活の中で 活かす自信があ る
05)
72)
78)
05)
75)
32)
65)
3(0
3(0
2(0
3(0
3(0
3(0
3(0
31)
31)
05)
31)
05)
77)
00)
84
84
55
84
55
66
57
3(0
3(0
1(0
3(0
3(0
3(0
3(0
一
M* i
-M
' p< 05 (rl=6)
理系学生の作品と文系学生の作品を比較する と , 理系
学生の作品の方がよ り 複雑なアルゴリ ズムを用いてい る
箇所はあ っ たも のの, 動き と し ては文理関係な く 作り 込
ま れてお り , プロ グラ ミ ン グ未経験者であ っ た受講生の
作品も十分楽 しめるものであっ た (例えば Fig5な ど) . よ っ て , プロ グラ ミ ン グ未経験者であ っ て も , 学習内容
や自身で調べた内容およ び協調的に活動 した結果を十分
に活かし て作品 を仕上げるこ と ができ たと考え ら れる .こ こ で, 事後調査で自由記述欄に記入 し ても ら っ た内
容を示す.・ 「受講 し てよかっ た .」・ 「 も っ と ア プリ 開発 をやり たい .」・ 「留学先でも プロ グラ ミ ングを受講します. 」・ 「思 っ たよ り 難 し く な く て , プロ グラ ミ ン グの基礎が
わかっ たよ う に思います . 」・ 「配列が難し く てよ く 理解でき なかっ たのが残念で
課題設定 ・ 解決力 を育成するスマ ー ト フ オンア プリ 開発 を用いた プロ グラ ミ ング導入教育の実践
し た.」・ 「最後は音 も 出せ るよ う にな り , デザイ ンはいまい
ち だっ たが, よ く でき たと思う .」・ 「Swi量が C 言語と 違う と こ ろが最初な れませんで
し たが, xcode が教え て く れるので使いこ なせるよ う
になり たいです. 」こ れら の コ メ ン ト から , Swi ft の配列 にやや難 し い点
があるこ と が見受け ら れたが, 全体と し て受講生の興味
関心 を大いに高め, 初学者がプロ グラ ミ ングに対 し て抱
く 不安感を取り 除き , 基本的なアルゴリ ズムを作品作成
のプロ セスの一部と し て楽 し みながら , 課題設定 ・ 解決
力およ びプロ グラ ミ ン グに主体的に取り 組む態度 を育成
するこ と ができ たと示唆 さ れた. また今回参加 し た受講
生の多 く は プロ グラ ミ ング未経験者であ っ たが, 事前事
後で プロ グラ ミ ングに対す る意識や興味 を損 なう こ と な
く , 学ぶ不安を軽減するこ と ができ たと考え ら れ, 全体
と し て 「自分なり に工夫でき た」 と いう 意識を向上させ
るこ と ができ た. また, 回数が進むにつれてやれるこ と
が増え たこ と に喜びを感 じ てい る コ メ ン ト や達成感が得
ら れてい る コ メ ン ト が見 ら れた .以上のこ と から , 初学者 を対象 と し た題材 と し ての有
用性を確認するこ と ができ た.
5 . まと めと今後の課題
本稿では, 大学生を対象と し た課題設定 ・ 解決力 を育
成す る スマ ー ト フ オンア プリ 開発 を用い た プロ グラ ミ ン
グ導入教育 を実践し , 受講生の興味 ・ 関心を高め, 初学
者がプロ グラ ミ ングに対 し て抱 く 不安感を取り 除き , 基
本的な アルゴリ ズムを作品作成の プロ セスの一部と し て
楽 し みながら , 課題設定 ・ 解決力およ びプロ グラ ミ ン グ
に主体的に取り 組む態度 を育成するこ と ができ た.今後, 大学生以外の生徒を対象と し た実践を通し て,
他校種におけ る実践可能性を検証する と と も に, さ ら な
る題材の改善 を行 う 必要があ る . ま た , iPhone ア プ リ
開発以外のテーマ を活用 し た実践モデルの検討が必要と
な ろ う .
注
本論文は, 2016年12月 3 日開催の第 1 回国際 ICT 利
用研究学会において, 筆者が口頭発表し た 「情報活用能
力の育成 を日的 と し た初学者対象 iPhone プロ グラ ミ ン
グ教育の実践」 '4) を大幅加筆 ・ 修正 し た も のであ る .
謝辞
本実践の開講にあたり , 株式会社 E-prost の鹿間正仁
氏にご尽力いただいた. こ こ に感謝申し上げます.
[文献]1 ) 首相官邸 : 第26回産業競争力会議 (2016)
http://www.kantei.go.jp/Jp/singi/keizaisaisei/skk1(aigi/dai26/gijiyoushi.pdf (2017.06.20アクセス確認)
2 ) 文部科学省 : 新学習指導要領 (平成29年 3 月公示)
113
改定のポイ ント (2017)http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/_ icsFiles/afieldfile/2017/06/16/1384662_2.pdf (2017.06.20アク
セス確認)
3 ) 首相官邸 : 世界最先端 IT 国家創造宣言 (2016)http://www.kantei.go.jp/Jp/singi/it2/kettei/pdf/20150630/siryou1.pdf (2017.06.20アク セス確認)
4 ) 総務省 : プロ グラ ミ ング人材育成の在り 方に関す る
調査研究報告書 (2016) http://www.soumu.go.jp/ main_content/000361430.pdf (2017.06.20アク セス確
認)5 ) 白水始, 三宅なほみ, 益川弘如, 望月俊男 (監訳 ・
著) : 21世紀型スキル : 新 たな学びと 評価の新たな
かたち, 北大路書房, pp 207-223. (2014)6 ) 内閣官房情報通信 (IT) 総合戦略室 : 人材育成にお
け る プロ グラ ミ ング教育の位置付け等 に係 る調査
結果報告 書 (2016) http://www.kantei.go jp/Jp/singi/it2/senmon_bunka/pdfンkekka_shosai.pdf (2017.06.20ア ク セ ス確認 )
7 ) 文部科学省 : 平成26年度文部科学省委託事業 情報
教育指導力向上支援事業プロ グラ ミ ング教育実践ガ
イ ド (2015)http://Jouhouka.mext.go.jp/schoo1/pdf /programing_guide.pdf (2017.06.20アクセス確認)
8 ) 森幹彦 他 8 名 : 教科 「情報」 の履修状況と情報リ
テラ シに関する大学新入生の状況 - 平成24年度京
都大学新入生ア ンケー ト の結果から 一 , 情報処理学
会研究報告イ ンタ ーネ ッ ト と運用技術 シンポジウム,
pp23-30. (2012)9 ) 内閣府 : 平成27年度青少年のイ ンターネ ッ ト利用環
境実態報告書 (2015)http://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/chousa/ h27/jittai_html/2-1-1.html (2017.06.20アクセス確認)
10) Li fe is Tech! ホ ームペ ー ジ https://li fe-is-tech.com/(2017.05.23アクセス確認)
11) 北門達男 : iPhone ア プリ 開発中級教育に関す る一
考察, 商経学叢経営学部開設10周年記念論文集,pp.159-166. (2013)
12) 山上道恵 : パズルの解法 を通 じて学ぶプロ グラ ミ ン
グの基礎, 日本情報科教育学会誌 , v ol.2, No.1, pp33-38. (2009)
13) 福井昌則, 森山潤 : サイ コロ を用いたゲームを題材
と す る初学者向け Java プロ グラ ミ ン グ学習の実践,第33 回日本産業技術教育学会近畿支部研究発表会講
演論文集, pp27-28. (2016)14) 福井昌則 : 情報活用能力の育成を目的と した初学者
対象 iPhone プロ グラ ミ ング教育の実践, 第 1 回国
際 ICT 利用研究学会全国大会講演論文集 , A3-1(2016)