48
-1- 情報通信審議会 情報通信政策部会 新事業創出戦略委員会(第6回)議事録 1 日 時 平成 23 年 5 月 16 日(月) 16:00~18:00 2 場 所 総務省8階第1特別会議室 3 出席者 (1) 構成員(敬称略) 新美 育文(主査)、村井 純(主査代理)、岩浪 剛太、神門 典子、 佐々木 俊尚、野村 敦子、堀 義貴、三膳 孝通、村上 輝康、森川 博之、 吉川 尚宏 (2) ゲストスピーカー(敬称略) 奥 律哉(株式会社電通 電通総研)、 吉田 弘(株式会社博報堂DYメディアパートナーズ) (3) 総務省 利根川情報通信国際戦略局長、久保田官房総括審議官、原政策統括官、 武井審議官、岡崎情報通信政策総合研究官、竹内技術政策課長、 安藤情報流通振興課長、前川総合通信基盤局総務課長 (4) 事務局 今林参事官、長塩参事官、谷脇情報通信政策課長、本間情報通信政策課企画官、 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐 4 議題 (1) 構成員等プレゼンテーション ①神門構成員プレゼンテーション ②電通総研プレゼンテーション ③博報堂DYメディアパートナーズプレゼンテーション (2) 論点整理に向けた議論 (3) その他

情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

  • Upload
    others

  • View
    2

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-1-

情報通信審議会 情報通信政策部会

新事業創出戦略委員会(第6回)議事録

1 日 時 平成 23 年 5 月 16 日(月) 16:00~18:00

2 場 所 総務省8階第1特別会議室

3 出席者

(1) 構成員(敬称略)

新美 育文(主査)、村井 純(主査代理)、岩浪 剛太、神門 典子、

佐々木 俊尚、野村 敦子、堀 義貴、三膳 孝通、村上 輝康、森川 博之、

吉川 尚宏

(2) ゲストスピーカー(敬称略)

奥 律哉(株式会社電通 電通総研)、

吉田 弘(株式会社博報堂DYメディアパートナーズ)

(3) 総務省

利根川情報通信国際戦略局長、久保田官房総括審議官、原政策統括官、

武井審議官、岡崎情報通信政策総合研究官、竹内技術政策課長、

安藤情報流通振興課長、前川総合通信基盤局総務課長

(4) 事務局

今林参事官、長塩参事官、谷脇情報通信政策課長、本間情報通信政策課企画官、

長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

4 議題

(1) 構成員等プレゼンテーション

①神門構成員プレゼンテーション

②電通総研プレゼンテーション

③博報堂DYメディアパートナーズプレゼンテーション

(2) 論点整理に向けた議論

(3) その他

Page 2: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-2-

5 議事録

【新美主査】 定刻となりましたので、ただいまから新事業創出戦略委員会の第6回会

合を開催させていただきます。

本日は、皆様ご多用中にもかかわらずご出席いただきましてありがとうございます。

本日、野原さんから急遽ご欠席をするというご連絡をいただいております。また、神

門さんからも急用ができたため遅参するとのご連絡がございます。したがいまして、お

手元にお配りしましたアジェンダのうちの報告順序を変更させていただきたいと思いま

す。神門さんのご報告を最初にということでございましたが、最初に電通総研、次いで

博報堂DYメディアパートナーズ、それから神門さんという順番でご報告をいただきた

いと思います。

それでは、事務局から資料確認等よろしくお願いいたします。

【長谷川情報通信政策課課長補佐】 事務局でございます。

クリップを外していただきまして、資料6-1、神門構成員の説明資料、資料6-2、

電通総研の説明資料、資料6-3、博報堂DYメディアパートナーズの説明資料、資

料6-4、ICT利活用戦略ワーキンググループからの検討状況のご報告の資料、資

料6-5、論点整理(案)の資料がございます。また、資料6-6として、本日ご欠席

の國領構成員からの提出資料がございます。そのほか参考資料をつけております。過不

足等ございましたら、事務局までお申しつけください。

【新美主査】 ありがとうございます。

資料等に過不足はございませんでしょうか。ないようでしたら、早速本日の議題に入

りたいと思います。

先ほど申し上げましたように順序が変わっておりますが、最初に本日のゲスト発表者

をご紹介申し上げます。電通総研の研究主席兼メディアイノベーション研究部長の奥さ

んでございます。

【奥氏】 奥でございます。よろしくお願いいたします。

【新美主査】 博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所所長の吉田さん

でございます。

【吉田氏】 吉田でございます。よろしくお願いします。

【新美主査】 ご発表いただく皆様方には、それぞれ10分程度でご発表いただきたい

Page 3: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-3-

と思います。それぞれのプレゼンテーションの後には、各5分程度事実関係の確認など

の質疑応答の時間を設けたいと存じます。そして、最後、神門さんのプレゼンテーショ

ンが終わった後に、まとめて自由討議をいただくということにしたいと思います。

最初に奥さんからご発表をお願いいたします。

【奥氏】 電通総研におります奥でございます。それでは、私から説明したいと思いま

す。

きょう私がまとめてまいりましたのは、「新事業創出をユーザーセントリックに考え

る」であります。サービスというのは、もちろんイノベーションがあって、技術があっ

て初めて実現できるものですが、現在のユーザーがかなり皆様の思っているのとは違っ

た行動をとられているというのが幾つかありますので、そのあたりをご紹介できればと

いうことでまとめてまいりました。

まずテレビとPCとケータイのユーザー数ですが、これは出荷ベースですので、この

ような数になっているということで、日ごろ見ていただいていると思います。そのユー

ザーベースの普及率である内閣府のデータで見ていただきますと、次のデータになりま

す。これは大変示唆に富むデータだと思っておりまして、一般的に動画を見るデバイス

としてのテレビとパソコンとケータイ、よくいうスリースクリーン、トリプルスクリー

ンですが、テレビの世帯当たりの普及率が99.6%、1世帯あたり普及台数が複数世

帯で2.39台ですね、100世帯で239台ですから。実はパソコンの世帯普及率

が76%でして、24%の世帯ではパソコンはお持ちになっていないということであり

ます。なおかつパソコンを持っている家でも100世帯あたり122台ですので、1世

帯1.2台。リビングルームに1台あるのが普通であろうというのが一般的な家庭の姿

ということです。ケータイにおいてはほぼ9割を超えておりますので、テレビとケータ

イというのは一般的なユビキタス端末になっており、100世帯当たり台数も1家庭当

たり台数の世帯人数およそ2.2~2.3人とイコールですので、1人1台持っている

というのがよくわかると思います。それに対して単数世帯のスコアは出ていますが、パ

ソコンの単数世帯というのは39.2%で、お1人でお住まいになっている方の普及

は4割しかない。これは実は年配の方が持ってないのだろうとお考えになるかと思いま

すが、実は意外と若者も持っていないというのがあります。

次のデータを見ていただきたいのですが、こちらが大きなデータを単数世帯だけ抜き

出したものです。10代刻みになっていまして、左からテレビ、真ん中がパソコン、右

Page 4: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-4-

側のオレンジ色がケータイですが、ごらんになっていただくようにテレビはおよそ9割

を超えているデータで、年配の方ほど100%に近い普及率になっている。ケータイも

若いほうから順次高くて、50代、60代になると8割、7割になりますが、かなりア

クティブに動いている方はみんなお持ちだというふうに考えていいだろうと思うのです。

ところが、パソコンなのですが、パソコンは実は30代と20代がピークです。40

代以降で60%台、47%、37%とどんどん下がってまいります。一般的にICTと

かデジタルとかネットというときに、パソコンのことを思い浮かべるのは、職場のパソ

コンのイメージがあるためなのですが、一般の家庭では意外とそんなに普及していない

ということであります。

このギャップをどう埋めるかということなのですが、右にデータが出ていますが、こ

こをiPad、あるいはタブレット端末と言われるようなもの、あるいはスマートフォ

ンがパソコンのかわりの簡便なグラフィカルユーザインターフェースとして埋めていく

ということは一つあろうかと思います。それから、iOSの場合は、メンテナンスを母

艦のPCあるいはMacがやるということになりますので、そこは面倒を見る方がだれ

か隣にいないと難しいと思いますけれども、グーグルのアンドロイドOSですと、単体

で動きますので、こういう形になっていくのではないかというのが一点考えられると思

っております。

一般的に今社会を席巻しているさまざまなネット上のサービスですが、よく考えてみ

ますと、昔は時間軸をずらすために使われたものがほとんどでした。メールもそうです。

一般的には「後で見ておいてください」ということでメールを差し上げたり、電話をす

るのが申しわけないのでメールで用事を済ますということで時間軸をずらすというのが

基本でした。現在は、右側のライブ視聴など時間軸を合わせる方向にネットのサービス

が使われてきていて、そこにみんなが集中的に興味を持ち、関心を持ち、ソーシャルメ

ディアだということになってきている。ツイッターもフェースブックもそういうことだ

ろうと思います。

このライブの時刻を刻んでいる真ん中というのは、もちろん日本標準時ですが、それ

に一番近いものがテレビの番組編成であって、みんなが共有して持てるという中心軸に

ありますので、そこに近いところでさまざまなソーシャルメディアが活躍していると考

えるのがわかりやすいのではないかと思っております。

広告会社の目線で言いますと、コミュニケーションということでメディアをとらえま

Page 5: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-5-

すので、3つの軸に合わせてみますと、昔4マス時代と言われた時代は、左側にありま

すように情報をメディア会社から視聴者に流すだけという時代でしたが、Web2.0

の時代では、それを検索するということで詳細の情報をユーザーが自ら取りにいくとい

う上の矢印ができたわけです。現在はどうなっているかというと、ソーシャルメディア

の時代ですので、それぞれの4マスとWeb2.0のものもありつつ、横で展開してい

って共有していくということになりますので、今は自らが「いいぞ」ということではな

くて、「いいらしいよ」というリコメンデーションとか周りの評判というのがコミュニ

ケーションの真ん中に入ってくる時代になったというふうに考えられると思います。

そんな中で私どもの研究で、10代ずつで世代を切ると非常にわかりやすいメディア

リテラシー分析というのがあります。きょう申し上げたいのは76世代と86世代

と96世代ですが、1976年生まれというのが、実はPCをすごく上手に使うITリ

テラシーの一番高い方々です。皆様が日ごろ考えられる、若いやつはネットができると

いう代表世代であります。86世代というのは実はケータイを生活の軸にしていますの

で、意外とPCはあまり得意ではないという世代であります。96世代は逆にクラウド

上に何でも置いときゃいいじゃんというデバイスの得手、不得手がないゲーム機も含め

た世代ということでくくっていくと非常にわかりやすいというのがこのデータでありま

す。

細かくは申し上げませんが、ウインドウズ95の時代に大学生として就職活動をし、

リクナビで登録して会社に入るという時代の「76世代」。「86世代」は1999年

のiモードのときに中高校生、「96世代」というのはゲーム機という形で、若い時代

に何を見て育ったかというので、ほぼ彼らの得手、不得手が決まっているということで

あります。

76世代の彼らは、実は読み書きも含め卒論はPCで書いていますしPCを一番使え

るメンバーですが、逆に86世代になりますと、実は読み書きが逆転していまして、ケ

ータイでは「書く」事を主にしており、PCでは「読む」という逆転現象が起こってい

ます。なぜかというと、実はケータイのほうが彼らの身近にあり、ケータイの3インチ

サイズを大きさの基準にしていますので、PCのことを大画面と呼ぶぐらいに大小関係

の捉え方が変わってきております。こういった世代へのアプローチは、PCを中心とす

る76世代へのアプローチとかなり違ってくるのではないかと思うところであります。

96世代は、逆に自分を中心に捉える癖がありますので、人とつながっているのは、

Page 6: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-6-

軽くはつながっていたいのだけれども、あまりかまってほしくない。あるいはオンタイ

ムなサービスに非常に興味がある。自分事、主人公願望というか、あまり細かい人のこ

とは気にしないという、かなり違ったリテラシーを持っているのがメディア観にもあら

われています。彼ら彼女らが10年後には10歳年をとるという意味では新しいターゲ

ットになるということで、少し勘案していく必要があるのではないかと思っております。

次をめくっていただきまして、これはビデオリサーチのデータです。1年ずつの10

年間のMCRというデータでテレビと新聞、ラジオ、インターネットなどの1日当たり

の自宅内の接触時間量をあらわしています。一日当たり大体テレビは約200分で少々

減ったり増えたりはしていますが安定しており、一番右側のモバイルとPC、オレンジ

の部分がかなり増えてきているというのが見て取れると思います。

次が10年前(2000年)と現在(2010年)のデータを個人階層別にあらわし

たものでして、M1というのは「男性の20~34歳」という意味なのですけれども、

それで見ていただくと、実はテレビ接触時間が若干減っている階層があったり、どの世

代もネットが増えています。一番右側のねずみ色のところは、自宅内にいて寝ていない

時間のデータです。それを見ていただくと、一番右のスコアに四十何%と書いていると

思いますが、10年前より10年後のほうがいろんな時間の中でメディアに接触してい

る総量が多くなっているというのがありまして、やはり情報が氾濫する中で、アンテナ

感度を上げているというのは見て取れるかと思います。

一つお話をしたかったのはこのデータであります。これは東京大学の橋元研究室と私

どもと一緒に行った調査です。よく「ネットとテレビというのはカニバっているのでは

ないか」ということが言われますが、カニバるというのはテレビを見る時間をやめてネ

ットを見る時間に当てるという理解ですが、実は複数の日、2日間同じ人を追いかけて

調査をしますと、4つのグループに分かれます。PCネットを両方の日使った人と、全

然使わなかった人、1日目に使った人と2日目だけに使った人の4つのグループに分か

れます。その4つのグループのテレビ視聴時間を並べるとこうなります。

何が言えるかというと、左から2番目ですが、PCネットを1日目だけ利用した人

の1日目のテレビ接触時間のほうが、2日目にPCネットを使わなかった日よりも長い

のです。逆にPCネットを2日目だけ使った人は、2日目のほうが1日目よりテレビ接

触時間は長いのですね。つまり、よく言われているカニバっているのではなくて、同時

行動、ながら行動をよくやっているということが言えます。テレビの接触時間とPCの

Page 7: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-7-

利用時間は共振関係にあるということが言えます。

実は在宅時間の中でテレビとネットとケータイをどういうふうに使っているかを時間

配分で出しますと、このようにきれいに比例配分になります。横を100%にしたグラ

フで見ていただくと次のグラフになりますが、在宅時間が700分以上を超えてくると、

テレビの接触時間は2割、ネットは大体6%程度というスコアに落ちつくのが現状であ

ります。700分以下のところは、もちろん寝たり起きたり、食事したりということを

やらなきゃいけないマスト行動がありますので若干減りますが、こういった現象になっ

ている。これは簡単に言えば、テレビとネットを同時に見るのが便利であり、そういっ

たサービスが今あるからそうなだけで、これを変えられるのかというのは、今後何がで

きるかということにかかってくると思います。

ワンセグも巷間言われているとおりで、本来は家の外で見ていただくということで、

震災のときには帰宅難民の方がごらんになった訳ですけれども、一般的な平時において

は、実は自宅でご覧になっている方が6割以上いらっしゃって、女性に至っては自宅で

しか見ていない方が7割を超えるということであります。これもコンテンツが12セグ

とワンセグは同じものが流れていますので、一般的な54分の番組と6分のニュース・

天気予報というものを編成している限りは、技術的に外で見られるような端末をつくっ

ても、ユーザーの方は自分のマイポータル端末として家の中でご覧になってしまうとい

う典型的な例ではなかろうか思います。

また、DVR、いわゆるハードディスクレコーダーのユーザーの録画再生行動データ

でありますが、こちらも皆さん、比較的若い方がハードディスクレコーダーに番組を録

って、後からスキップしながら見ているんじゃないかと思いがちだと思うのですが、実

は最も使っているのは、女性の50代以上でありまして、それぞれの階層で左が録画分

数、右側が再生分数ですが、録画したものが全部見られるわけではないので、消化率と

いうのはこの程度だという事と、それぞれ年齢が高いほど実は使っている方が多いとい

う、一般的に言われるのと違うことが世の中では起こっていますということです。

次のグラフはイメージ図です。テレビ番組の視聴率の高いもの順に並べているのです

が、放送後、あとから録画した番組を見た人が仮にいれば、視聴率の高い番組ほど、視

聴率が積み上がるだろうと考えられます。

その際、その番組を見た時間というのは、テレビをつけた時にとりあえずやっている

番組を見るのを止めて見るはずなので、逆に視聴率の悪い番組の視聴率は減るだろうと

Page 8: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-8-

いう考え方がこの図のイメージであります。私もこの考え方で当時はDVRの影響をと

らえておりましたが、現在の状況は、実は全般的に視聴率が減ることなく、生活時間の

やりくりをして、録画した番組を当日中に見て、次の放送に間に合わせるというような

主婦あるいは高齢者の方がかなり多いということがわかりました。動画のアーカイブと

かオンデマンドと言われるときに視聴者ニーズをどうとらえるかの参考になると思いま

す。

最後ですが、hulu社のデータであります。いろんな方がこの場でお話になっていると

思いますので、一つコストのことだけ申し上げたいと思いますが、ぐんぐんマーケット

が大きくなっているというこのデータと、hulu社が説明しているCPM(1,000人

当たり到達コスト)の表であります。一番上が地上波テレビで25ドル、無料広告モデ

ルのhuluが63ドルで、有料+無料広告のハイブリッドモデルのhulu Plusが63ドル

です。実は地上波よりもネットのCPMコストが2.5倍も高いということであります。

売っている側からすると高く売りたいというのがありますが、買う側からすると、高い

と買いたくないというのがあります。メディアのサービスが最初始まったときというの

は、なかなかユーザーが増えませんのでネットの場合もCPMは上がります。それがだ

んだんこなれていると下がってくるのだろうと思いますので、2.5倍というのは、今

その途上だろうと思います。

日本でこのスコアに近いものを申し上げますと、地上波のタイム提供とスポットが世

帯CPMで大体1,000円位ですので、個人に換算しますと、粗っぽいですが

約400円位かと思います。それに対して日本の動画サービスの今売値としてのインプ

レッションの単価は、大体1,000円強から3,000円ぐらいですので、比較的CP

Mの比率は近いのですけれども、CPMコストそのものが日本のほうが人口が少ないの

で小さいですから、配信コストをリクープ(回収)できないというようなことも含め、

手間がかかることを考えると、ちょっと難しいのかなというのが日本の現状ではなかろ

うかと思います。

動画配信の広告モデルをユーザー視点と事業者視点に分けますと、ユーザー側からす

ると、やっぱりわかりやすいこと、それからitunesなどアップル系のもので言いますと、

デバイスを入れかえても、あるいは買いかえても、シームレスに対応できるプラットフ

ォームであること、こういうことが、やっぱりユーザーを動かすドライバーになるでし

ょうし、一番下のほうの事業者視点で申し上げれば、CPMそのものが、日本のマーケ

Page 9: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-9-

ットは米国と違いますから、やっぱ米国並みにやるのはかなりきついなというのと、サ

ーバーや電力などのインフラコストとか土地代といったものも日本のほうが高いですし、

権利処理については、皆さんご案内のとおりまだまだ複雑です。さらにはテレビの番組

セールスの手法の違いもありますので、そのあたりをクリアにしていかないと、なかな

か前には進みにくいのではないか思っております。

どうしても新しいサービスというのはユーザーに告知するのが大変難しいという側面

があります。地上波というのは、新聞に毎日番組情報としてラテ欄(EPG)が出ます

が、実は左側のスポーツ新聞の馬柱広告なのですけれども、私も最近まで知らなかった

のですが、JRAさんの馬柱の広告は、広告ではなく新聞の記事になっています。純広

です。しかし、大井競馬とか地方競馬については広告としてスポーツ紙では扱われてい

ます。どんなサービスかをお知らせする、どんなコンテンツがあるかをお知らせするに

はかなりの積極的な広報活動も必要で、そういったところなしには前に進めにくいので

はないかというようなことを思っております。

ということで最後に、一つのメディアでリーチ型のサービスをやる場合と、ネットが

得意とするサーチ型をやる場合、そしてスマートTVのような両方のものをワンデバイ

スでやるといった概念を持ったときに、ユーザーがほんとうにそれを便利と思うかどう

か、あるいは別々にあったほうがいいのか、例えば今は放送・通信融合という意味では

みんな勝手なことをやりながらそういうことを使い分けしているわけですが、そういっ

たものも含めて考える必要があって、どうしてもネット、そしてキラーコンテンツと言

えば動画、そしてアーカイブ、ビデオ・オン・デマンドと考えがちですが、まだまだ柱

となるには少し弱いのではないか。もっともっと新しい今までとは違う新事業というの

を少し柱に据えながらやっていかなければいけない状況にあるのではないかというのが、

私の今日申し上げたいところであります。

以上です。

【新美主査】 どうもありがとうございます。

それでは、ただいまのプレゼンテーションにつきまして、議論にわたらない範囲での

ご質問がございましたら、よろしくお願いします。

【村上構成員】 このビデオリサーチのデータ、これはテレビを持っていない人も含ま

れているのですか。

【奥氏】 MCRのデータですね。

Page 10: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-10-

【村上構成員】 はい。要するに、若い人の問題というのは、テレビを持たないのでは

ないかという問題があるのでお聞きします。

【奥氏】 一般的なテレビ視聴率のデータは、テレビ保有世帯を対象にしています。し

かし、このMCRのデータは、テレビを持ってない方も含まれています。いろんなメデ

ィアを同時にとりますので、テレビを持ってない方も含まれます。なので、比較的代表

的な世相をあらわしたデータだとお考えいただければと思います。

【新美主査】 ありがとうございます。ほかにご質問はございますか。

【野村構成員】 最後のスライドのところで、ツイッターとフェースブックの円が右か

ら左へ移動した意味を教えていただきたいと思います。

【奥氏】 これですね。よくごらんいただいてありがとうございます。

ツイッター、フェースブックというのは、当たり前ですけれども、ネット上のものな

ので、能動的にやり、パーソナル利用だということでは右下のケータイとかパソコンの

位置にあるのですけれども、実は震災報道も含めてですけれども、ツイッターとフェー

スブックである程度フォローしたり、ある程度の数の方とお友達になっていれば、受動

的なメディアとして必要な情報が取れる時代になりました。つまり、あまりカチャカチ

ャ「前のめり」にならなくても、最初だけちゃんとやっていれば、実は報道と同じぐら

いの情報が得られるという意味で、少し受動型にシフトしてきたのではないか。特に震

災を経てそういうことが言えるのではないかということで、少し左側に寄せてみたとい

う思いであります。

【新美主査】 ありがとうございます。

それでは、続きまして、博報堂DYメディアパートナーズの吉田さんからご発表をお

願いいたします。

【吉田氏】 では、博報堂DYメディアパートナーズメディア環境研究所吉田からご説

明を差し上げます。タイトルは『メディア環境の「イマ」と「ミライ」』。電通総研と

相当かぶるところもございますので、駆け足でご説明させていただきたいと思います。

きょうご紹介するデータは、私どもが独自に行っております「メディア定点調査」

(http://www.media-kankyo.jp#whatwedo)というもので、東京、大阪、愛知、高知で

やっている私どもの調査でございます。調査機関はビデオリサーチで、調査時期はちょ

っと古いのですが、昨年の1月のデータです。ことしのデータも来月ぐらいに皆さんに

公開することになっておりますが、きょうは、昨年のデータでお願いいたします。

Page 11: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-11-

まず、トータルのメディア接触時間です。このグラフは東京、大阪、愛知、高知を比

べたものでございます。赤がテレビ、紫色がラジオ、水色が新聞、ピンクが雑誌、紺が

パソコンからのインターネット接続、緑がケータイからのインターネット接続となりま

す。大体傾向は各地区とも同じようなものでございますが、顕著に違うのが、パソコン

からのインターネット接続になります。東京が77.4分に対して、高知になります

と43.0分と、大都市から地方に行くごとに少しずつパソコンからのインターネット

接続の時間が減っていくことがわかります。ケータイのほうはそれに比べてあまり変わ

らないという特色があるかと思います。

先ほどはいわゆる全層を見たわけですが、このページは東京地区のデータを性、年齢

ごとに分けたグラフでございます。こうしてみると、随分様相が変わってまいりまして、

例えば男性20代のところを見ていただくとわかるのですが、赤い部分のテレビ

が110分に比べて、紺のパソコンからのインターネット接続が140分と、実を言う

とテレビ視聴時間をパソコンからのインターネット接続時間が超えているという層がご

ざいます。

ほかにも、女性のティーン、15歳から19歳のところになりますと、一番右端のケ

ータイからのインターネット接続が104分と、これもほかの年代に比べて非常に高く

なっていることがわかると思います。

次からは、おのおののいわゆるメディアサービスの利用経験を比べたグラフでござい

ます。

まず放送関連のメディアサービスです。いわゆる地デジの放送から始まってBS、C

S、CATV、IPTV、データ放送、ワンセグ、EPG、ビデオ・オン・デマンド、

いわゆるテレビを使って視聴するインターネット、インターネットラジオ、ハードディ

スク内蔵型レコーダーといったもの、これらを東京、大阪、愛知、高知ごとにグラフを

比べたものでございます。傾向は似ていますが、若干高知が下回るところがあるという

ところでございます。ワンセグに至ってはちょっと差がついているところがございます。

こちらは先ほどと同じように東京地区の調査データを性、年齢ごとに分けたものでご

ざいます。これも傾向は似ているのですが、特にワンセグ、やはりケータイを使いこな

すという点から、こちらのオレンジの線、60代は使っている数はものすごく低いです

が、若い層、ティーンですとか20代、30代の方は利用率が高いということになって

おります。

Page 12: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-12-

女性も傾向は似ております。こういった傾向での普及になっているということでござ

います。

次がインターネット関連のメディアサービスですが、PCからのインターネット接続

という意味でございます。冒頭ございましたように、全体的に東京、大阪、愛知、高知

といった順番でインターネット系の利用経験は高くなっています。上から読み上げます

と、インターネット、そのものずばり閲覧ですが、eメール、チャット/メッセンジャ

ー、メールマガジン、ブログ作成、ミニブログ、つまりツイッターですね、SNS、ポ

ットキャスティング、ファイル交換ソフト、楽曲配信サービス、ブロードバンド動画配

信サービス、動画投稿・閲覧サービス、ネットショッピング、ネットオークション、3

Dバーチャルコミュニティ、インターネットを通じた通話といった順番になっておりま

すけれども、こうしたサービスの利用経験をグラフにしたものになっております。やは

り高知がこの利用率に関しては差がついており、若干低いと言えると思います。

これをまた、東京のデータですが、性、年齢ごとに比べてみますと、ものすごい差が

見えてまいります。紺色が15歳から19歳、ティーン男性に対して、ピンクが20代

というところで、その辺は当然利用率はものすごく高いわけですが、60代になると地

べたをはいつくばるように低い数字になってしまいます。3Dバーチャルコミュニティ

に関しては、これは5年ぐらい前からデータをとっているのですが、やはり全層、利用

率は相当伸び悩んだというところでございます。

女性も同様で特にSNSや動画投稿での世代間の格差が激しいといったところでござ

います。

ケータイのサービスについては、先ほどのパソコンに比べて地域差はあまり激しくな

いといったところでございます。

このグラフは男性におけるケータイサービスの性、年代ごとの利用経験の差でござい

ます。これも60代の経験がものすごく低くなってしまっていることがわかります。

次は、女性ですね。これは皆様ご想像のとおり10代、20代がものすごく高い、ど

のサービスをとったにしてもものすごく利用経験率が高いというところです。一番下の

携帯小説とか携帯電話、携帯まんが等がございますが、この辺になると、もう相当格差

が広がっているということが見て取れるかと思います。

こういった形で、新しいメディアサービス等々の利用経験というのは年々増えている

わけですが、テレビのような「生活者があまねく接触するメディアサービス」というも

Page 13: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-13-

のは、必ずしも増えてきているわけではないというのが現状でございます。特にPC・

携帯系サービスの世代間、年代間の格差は大きいというところです。

メディアへの接触量に関しては、きょうは時系列のデータをお持ちしませんでしたが、

時系列でデータを比較しますと、やはり中期的には飽和傾向にありますし、先ほど3D

バーチャルコミュニティの例も出しましたが、ブームが去ったものも散見されるところ

で、ネットを中心としたデジタル系のサービスというものは、もはや新市場とは言わな

くてよいのではないかと思います。つまり、生活者が取捨選択を行う普通のサービスに

なったということで、いわゆるデジタルが上り調子でアナログが下り調子的なステレオ

タイプということではなく、同じデジタルの中でも取捨選択が行われる時代になってい

るということが言えると思います。

さて、いままで「現状」をずっと見てきたわけですが、私どもメディア環境研究所

で、2020年にメディアはどのようになっていくのかということで7つのキーワード

を抽出いたしました。こちらに書いてある7つ(「指さす」「厚みを味わう」「かしこ

くなる」「ふりそそぐ」「探さない」「壁が消える」「海を渡る」)がそのキーワード

でございます。ちょっと概念論になってしまいますが、どんなキーワードかというのを

簡単にご説明いたします。

1つ目が「指差す」です。自分にとって一番おもしろいコンテンツを指差し共有する

ということです。これは皆さん、ツイッターやフェースブックをやられる方はわかると

思うのですけれども、「今こんなおもしろい番組をテレビでやっているよ」みたいな情

報が瞬間に広がっていくことで、こうした「SNSを使った情報・コンテンツのリアル

タイム共有」が広がっていくでしょう。

2番目は「厚みを味わう」です。これは位置情報ですとか、3Dですとか、オーギュ

メントリアリティ(AR)等々、一つの情報に対してものすごく多くの情報がどんどん

付加されていく。ユーザーもそうした情報全部を消化する人もいれば、一つだけ、ある

いは少しだけ取得・利用する人もいるということで、そういった「ひとつの対象に関す

る多様な付加情報の取捨選択」が広まっていくというようなことがあるかと思います。

3番目、「かしこくなる」です。これはもう言わずもがなスマートにやっていくとい

うところで、ホームネットワークやスマートグリッドなど、家の中はものすごくスマー

トになっていきますねというところです。

4番目、外に出ますと、ただでさえスマートになったデバイスに向かって、4GやI

Page 14: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-14-

PDC、次世代衛星等々、今後出てくるさらに新しいインフラのサービス経由で、いろ

いろなコンテンツなり情報が「ふりそそぐ」環境が実現してくるでしょう。

次の5番目は「探さない」。これもちまたでよく言われておりますが、ライフログで

すとか、脳科学を使ったニューロマーケティング等、技術革新が急激に進んでいるため、

従来のような「検索」で探さなくても新しい情報に出会えるようになります。

6番目、「壁が消える」というのは、いわゆるコンテンツも今までのエンターテイン

メントや報道といったようなコンテンツだけではなくて、教育や医療、行政、あるいは

そうしたデータ同士が連携したり結合した「ハイブリッドな情報」に接触する機会が増

えてまいります。そういった今までコンテンツと思っていなかったコンテンツもユーザ

ーにとってはコンテンツというような時代になってくるでしょう。

7番目は、言わずもがなの「海をわたる」というところで、どんどん自動翻訳等の技

術も広がるでしょうから、国内外のコンテンツに自由にアクセスできるようになる。

と、このようなキーワードを出させていただきました。

こうした変化を一言にまとめ、我々は「ダイナミックメディア」という言葉で表現さ

せていただきました。これは昨年冬に出した我々のキーワードでございますが、この震

災の影響に相当直面しているというところだと思います。

ご参考までに災害直後、どんなメディアにユーザーは接触したのかという調査データ

をお持ちいたしました。「災害直後にどんなメディアに接触しましたか」というネット

でのアンケート調査でございます。震災直後の東京のデータでございますけれども、時

間帯は昼から夕方にかけてという時間でしたので、外に出ている方、家の中というより

は会社にいたり、外にいる方が多かったわけですが、テレビに接触した方がこれだけ多

かった。一番左です。意外と多かったのが、先ほど電通総研の話もありましたけれども、

通常家の中で見ているテレビ放送も、このときばかりはワンセグ経由で出先から接触さ

れたという数字が相当出ていると思います。

意外にポータルサイト等も接触した方が多いということが見て取れると思います。も

ちろん地震が起きて、すぐ新聞を見る人はいないと思いますが(笑)、やはり新聞を見

る方はいらっしゃらなかったというところです。

次が災害後1週間、2週間でどう変わったかをグラフにしたものでございます。災害

直後から就寝まで、その日何を見たかというのが青い棒グラフ、災害後1週間の週

末、3月12日、13日が赤いグラフで、2週間後に接触したメディアは何かというの

Page 15: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-15-

がグリーンのグラフです。となりますと、やはり相当メディア接触も通常に戻ってまい

りまして、それに、新聞等は相当よく見られているとか、ポータルサイト等も相当見ら

れているというのが見て取れるかと思います。

あと、東電のサイト等は、これは通常にはない、こういった情報行動もあらわれてい

るのかなというところです。

ということで、冒頭申し上げましたようにメディア環境の変化が7つのキーワード、

ダイナミックメディアというようなキーワードを出しました。さらに、震災後、日本人

のメディア接触がどう変化するのかというところを考えると、これもいろいろ世間でも

話が出ておりますように、メディアサイド、例えば震災のときにNHKや民放各社が、

例えばユーストリームで配信をしたとか、NHKはグーグルのパーソンファインダーで

情報を提供したとか、そういったように、一時的ながらもメディアサイドも相当ダイナ

ミックな行動に出られたのかなという感じはしております。

一方、震災時の日本人のメディア生活、すなわち受け手側の話ですが、当然メディア

総接触量は増大しているわけですが、情報を比較したりとか、通常見ていないような海

外のサイトとか、研究者のサイトを見たりとか、つまり一次情報を取得したわけで、震

災時には、生活者サイドのメディアリテラシーも瞬間的には相当変わってきたのかなと

いう感じはしております。ただし、それが瞬間的な話なのか、今後も続いていくのかと

いったことに関しては、今後も継続してウオッチする必要があると思います。

最後に、このようにメディア環境の変化が激しい中で、広告業界が直面している課題

を幾つか抽出してまいりました。

1つ目が、多様化する広告に関するフォーマットの標準化です。テレビや新聞のよう

に歴史のあるメディアでない、いわゆるスマートフォン、タブレット等、どんどん新し

い広告規格ができてまいりますので、そういったものに標準化をしていく必要がありま

す。

よく言われるようにライフログに関しては、個人情報等々の問題もございまして、そ

こに対するガイドライン的なものは、やはり相当切望されているというところでござい

ます。また、SNS、ソーシャルメディアに関するガイドライン的なものも定める必要

があります。さらに、広告に関する著作権、あり方もさらなる検討が必要でしょう。今

後メディア環境の変化がますます激しくなりますので、こういった課題には柔軟に対応

しておく必要があるというのが、我々広告業界からの意見のようでございます。

Page 16: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-16-

ということで、こういったご紹介も兼ねてご説明を差し上げました。

【新美主査】 どうもありがとうございます。

それでは、ただいまの吉田さんのご発表に対するご質問がありましたら、よろしくお

願いします。

【村上構成員】 18ページの災害時から2週間のメディア接触変化というデータがあ

りますけれども、これはソーシャルメディアという聞き方をすると、どんな結果になる

のでしょうか。

【吉田氏】 ソーシャルメディアというと……。

【村上構成員】 ツイッターから2ちゃんまでを入れる、あるいはツイッターからアメ

ーバまでを入れて聞くとどうなるか、ということです。少なくとも、ミクシィとフェー

スブックは足せるのではないでしょうか。

【吉田氏】 これは足すという話ではございません、使っている人がみんな違うもので

すから。フェースブックを使っている方とミクシィを使っている方が全然違う層でござ

いますので、ここに書いてございますように、意外とミクシィなんかは、いわゆるフェ

ースブックの時代などと言われつつも、実はミクシィがものすごく活躍したという話も

ございますように、いわゆるソーシャルメディアとくくるよりも個別のサービスでくく

ったほうがいいかと思います。

【村上構成員】 ミクシィとツイッターは違う人が使っているとすると、ミクシィ+ツ

イッター+フェースブックという聞き方をすると、積み上がるのでしょうか。

【吉田氏】 いや、ミクシィを使っている方でツイッターを使っている方もいらっしゃ

いますし、それはそれぞれです。

【村上構成員】 それは分別できないのですね。

【吉田氏】 はい。

【新美主査】 重複部分があるということですね。

【吉田氏】 そうです。

【新美主査】 ありがとうございます。

それでは、吉田さんへのご質問はこれぐらいにいたしまして、続きまして神門さんか

らご発表いただきたいと思います。お願いします。

【神門構成員】 国立情報学研究所の神門と申します。私は情報検索が専門ですので、

この委員会では、プラットフォーム、キャリア、その上のメディアが話題の中心ですが、

Page 17: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-17-

情報検索は、さらにその上にあるコンテンツ、そして、ユーザがコンテンツにどのよう

にアクセスして、有効に使うのを支援するかという少し種類の違う話です。今後の何か

ヒントになることがあればと思っております。

まず、簡単に自己紹介をいたします。私は、情報検索、人間のように言語を理解する

言語処理技術、情報検索システムでクエリの背後にある利用者のニーズを捉える新しい

形を目指して研究をしております。その1点めに関連して、自分たちが新しいシステム

をつくるだけではなく、NTCIR(えんてぃさいる)という、同じデータを使って、同

じ基盤上で多くの研究チームが情報検索システムの「力比べ」をする国際評価会を12

年ほど企画運営しております。1年半を1サイクルとして、サイクルごとに、新しい研

究部門を立ち上げながら続けてきました。これは似たようなものがアメリカの商務省の

傘下にあるNISTが運営するTREC、ヨーロッパで行われているCLEFがあり、

それらとあわせて世界3大検索エバリュエーションと呼ばれています。情報検索の研究

では、メカニズム自体の有効性を評価することは非常に重要です。ほかにもシェアード

タスク、あるいはデータチャレンジというような名前で、同じデータセットを使い、同

じ基盤の上で、多数の研究チームが実験をして、結果を比較しながら互いに学び合う場

をつくっていこうという活動があります。これらが、情報検索、情報アクセス技術の発

展の一つの力になってきたと言われています。私どもがやっているエンティサイルは日

本語、中国語、韓国語、英語を主に対象にしていますが、参加しているのは世界各国か

らです。この写真がそのときの様子です。運営も国際的にやっています。

きょうは3つほどお話をさせていただきたいます。1点目は、グランドチャレンジの

あり方です。この委員会で、以前、研究成果がなかなか事業に結びつかないねというお

話がありました。今はインクリメンタルな研究ではなくて、グランドチャレンジが必要

なのだというお話と、それと同時に、グランドチャレンジもいいけれども、その実証的

評価というのはどうなのだろうかというようなご意見が出ていたようなことを記憶して

います。

情報検索、情報アクセス技術の分野のグランドチャレンジでは、2月の半ばに皆さん

の話題に上ったのが、アメリカのジョパディというクイズ番組でグランドチャンピオン

に勝ったIBMのワトソンという、質問応答システムです。非常に複雑な質問に対して、

他の回答者と同じスピードで答える。あらかじめ知識が埋め込まれているわけではなく、

非定型の膨大なテキスト情報から知識を取り出して答えを導いています。それを非常に

Page 18: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-18-

多数のコンポーネントをつなげ、また、多数の仮説に対する処理を並列化して行い、最

も確信度が高いものを選んでいくことで実現しています。これを開発するための研究も

コンポーネントベースで進めたため比較的短期間で達成することができました。背景に

は、いろいろな要素技術が進歩し、Wikipediaや言語処理のリソースもそろってきたち

ょうどいいタイミングだったということがありますが、ここでは、こういったコンポー

ネントベースでの研究の進め方がグランドチャレンジを実現しているということに着目

したいと思います。ここで用いた技術は、医療文書や社内文書など、実社会で必要とさ

れるテキストに対する高度な理解と処理の技術として実用化が進んでいます。

グランドチャレンジといって何か大きいものを一から全部つくるわけではなく、大き

な目標があって、それに向かって、いろいろなコンポーネントを研究するチームの成果

を組み合わせて達成する方式です。これは、日本のような小さい研究グループでも、集

まって、「僕たちはここのコンポーネントで力を発揮できる」という、それぞれの得意

な分野でのトップレベルの成果をうまく組み合わせられる枠組みがあれば、新しい力に

なると考えています。

情報検索や情報アクセスの技術は非常に複雑になってきて、日本の大学のように、小

さい研究グループが多い環境では、一つの研究グループで、エンド・トゥ・エンド(シ

ステムの全工程)で、非常にすぐれたシステムをつくるのは難しくなっています。また、

一つのコンポーネントの出来が悪いと全体がだめになる場合もあります。こういうコン

ポーネントベースで自分の得意とするところで頑張れるという仕組みをつくっていくの

も日本的な研究の頑張り方だと思います。

アメリカでは、さきほどのワトソンとも関連しますが、OAQA(Open Advancement

of Question Answering Systems)というIBMとカーネギーメロン大学が主導してい

るコンポーネントをオープンソースにして登録し合うムーブメントがあり、実際IBM

とCMUはお互いの権利を保持したままオープンソースにしてコンポーネントを使うと

いう契約を交わし、ほかにも主要な研究団体が参加しています。こういった基盤がその

研究を早く進ませています。

ここで重要なのは、コンポーネントの一つ一つを徹底的に評価して、ほんとうにその

コンポーネントがちゃんと動いているのかどうか、どれくらい効果があるのかというこ

との評価を徹底して行うことです。

アメリカでは、情報検索や情報アクセス技術の研究に対し、国防省やCIAの上位機

Page 19: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-19-

関から非常に大きな研究資金が出ています。これの一つの特徴は、日本の大型プロジェ

クトで行う最後の社会実験としての実証テストではなく、研究開発の初期段階から、核

となるアルゴリズム自体の評価をオープンに、きちんとやっていることです。さきほど

お話しした、米国のTRECは、そのようなオープンな評価の場となっています。政府

から研究助成を受けたチームは必ず参加し、同じプログラムの助成を受けたチームのみ

ならず、世界中のいろいろなチームと同じ基盤で比較評価します。そこでうまくいかな

いと、研究助成の次のステージには進めない仕組みで、オープンな形でそれぞれの研究

の進捗が見られるという特徴があります。また、評価用データ作成を集中して行うため、

大規模で信頼性の高いテストを比較的低コストで実現できます。実験用データセットは

公開し、研究のすそ野の拡大や研究の再現性にも役だっています。

私どものNTCIRも日本発のプロジェクトではありますが、参加者の8割は海外チ

ームで、たとえば、AQUAINTというCIAの上位機関が出資者となっていた質問

応答システム高度化のための大型助成プログラムの指定評価として指定されています。

助成されたチームは参加し、他の多くの参加者と一緒に評価実験をしました。

評価には、研究開発の段階に応じていろいろなフェーズがあります。例えば製薬会社

で薬を開発するときには、最初は試験管でアイデアをいろいろ示してみて、うまくいっ

たものだけ動物実験、さらにうまくいくと人間の実験、臨床試験といきます。後の方に

なるほど、実験遂行には多くのコストがかかり、いろいろな統制できない要因が関わり、

結果の解釈が難しくなります。

同じように情報検索や情報アクセス技術の研究でも、最初にいろいろなアイデアがあ

ったときに、そのアイデアがどれぐらい有効なのかをすぐに検証して、数値で示せる環

境があると、よりむだのない形でその先に進めます。社会実験としての実証実験が一番

最後のフェーズⅣの実験だとすると、その前にもそれぞれ研究のグループで検証してい

ると思いますが、それが外部には見えない。また、その研究、実験を行うための労力が

非常に大きい。そこを共有したり、再利用できる仕組みがあると、研究がより早く進み

ます。

今のが1つ目の、グランドチャレンジのあり方です。中では協調的に、オープンな方

法で進める方策についてです。

2番目にお話ししたいのは、探索的検索とその支援です。先ほど、「2020年、検

索しない、探さない」というキーワードが出てきましたけれども、私は探すと考えてい

Page 20: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-20-

ますが、特に探索的な検索ということが非常にキーとなっていると思います。右上の小

さいところに、ちょっと小さくて恐縮ですけれども、検索のタイプということがありま

す。Look up、Lean、Investigationという3つがあって、今のサーチエンジンは主とし

て、look up、ファクト検索、答えがあらかじめわかっている、わかってなくても答え

があるということがわかっている、例えばあしたの天気予報といったような、一回クエ

リを入れてパッと返ってくればいいというものに特化して技術が進んできました。

しかし、私たちの人間生活の中では、もっといろいろ大きな課題、非常にあいまいな

課題、何を探したらいいかわからないというような課題がたくさんあり、そうした学び

ながら、探索しながら出てきた結果に触発されて、あっ、こっちがおもしろそうだ、あ

っ、こうだったのだというふうに理解を積み上げながら探していく、1回のクエリとレ

スポンスという形ではおさまらない、探しながら、発見しながら、学びながら探索する

探索的検索、エクスプロラトリー・サーチが、実は人間生活の上では非常に大きな分野

を占めています。まだまだこれをサポートする仕組みについては研究が緒についたばか

りです。スマートフォンやWebが人間生活全般に身近になればなるほど、こういった

より大きな範囲での、より大きな課題についての、評価、あるいは何が答えであるのか、

答えがあるのかないのかもわからない、何が欲しいのかもわからない、探しながら何が

欲しいのか、どうやって探すのかを学んでいきながら答えを見出す、何かを学ぶといっ

たようなエクスプロラトリー・サーチを支援する仕組みということが求められているの

だろうと思います。

こういったエクスプロラトリー・サーチ、探索なサーチの支援としては、幾つかキー

となるようなものがあります。今、既に使われているクエリ作成や修正の支援。また、

検索結果をある観点によって分析したり、可視化したり、フィルタリングしたり、リン

クしたりして、利用者が検索結果の中から新たな発見をしたり、意思決定を助けるよう

な提示をする。それから、利用者の状況、タクス、問題、コンテクストに応じた支援を

提供する。利用者の知識レベルに応じた支援をする。そしてコラボラティブ・サーチ、

協調的な検索、自分とは違うようにほかの人は検索するわけですから、それを見られる、

あるいはそれで推薦を受けるといったようなことが助けになる。それは同時に進むこと

もあれば、過去にやった人のものが見られる。自分の検索をしている中では、その履歴

や進捗情報、迷子になってしまわないで、自分が今どこで何をしているのかがわかる。

各種センサ、GPS、検索や閲覧履歴、行動や購買履歴などから利用者の状況やほしい

Page 21: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-21-

ものを推測して提案することはできるようになるでしょう。ですが、それだけではなく、

大きな問題の解決をするときには、そのフレームワークというものがあって、それがあ

るかないか、それかわかっているかわかってないかで探索がスムーズに進むかどうかが、

今までの利用者の調査などからわかってきます。探索や検索結果の分析や評価の戦略や

フレームワークをしっていることが情報リテラシーです。

ですので、情報リテラシーをあまりもたないノービスなユーザには、その人の理解や

知識、読解力におうじて、これはこういう問題設定なのだよ、こういうフレームワーク

なのだよ、次にはこういうことをやればいいんだよというようなことを教えてあげられ

る、そういったような仕組みがあることによって、こういったエクスプロラトリーがい

ろいろな技術、いろいろな知識レベルの方々どなたにとってもうまくいくようになると

いうようなことが考えられます。検索をしながら、情報の扱いをまなんでいき、そうい

うリテラシーがある人にはそのような支援をしないということです。

最後に、こういった研究を支える上で、研究者がいつもひっかかってしまう法的な問

題があります。さきほどのOAQAのように、各コンポーネントをオープンソースにし

て、みんなでコンポーネントを登録し合って、それをつないでうまく使えればいいね、

研究は早く進むね、大きいものができるね、自分の得意なところだけ頑張ればいいねと

いうことは言われても、実際には権利者、開発者やスポンサーの権利を保全し、共有も

促進するにはどういう枠組みがいいのだろうか。また、先ほどもあったSNSとかマイ

クロブログといった非常にプライバシーにかかわるデータがあります。さらに、利用者

のコンテクストということになると、ログはどうしても切り離して考えることはできま

せん。こういったものを研究に使うためには、どうすればいいのか。何か技術的な解決

策があるのか、法的な専門家との協働という形で研究を進めるのか、あるいは国民の中

で、きちんと適切に使っている研究だったらよいというコンセンサスが生まれるムーブ

メントがあれば、そういったものも助けになるだろうと思います。

きょうは情報検索や質問応答などの情報アクセス技術といった観点から、まず、グラ

ンドチャレンジの創成とその基盤として、コンポーネントベースとオープン・アドバン

スメントという形でも成り立つだろうということ、それから研究基盤を共有することに

よって、研究を可視化し、スピードアップし、研究者にとっての共通の課題や個別のニ

ーズに対応するようなことができるだろうということについてお話しさせていただきま

した。

Page 22: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-22-

2番目としては、Look upと言われる単純なりクエリレスポンスだけではなく、探索

的な検索ということが、これから先、利用者にとって最もなじみのある、助けになる、

それぞれの方にとって一番助けになるような形で情報や知識を得られる方法としてキー

になるというご提案をしました。最後に、その研究促進にかかわる法的な問題というこ

とを考える場が必要であるということをご提案させていただきました。

以上です。

【新美主査】 どうもありがとうございます。

それでは、ただいまの神門さんのプレゼンテーションにつきましてご質問がありまし

たらお願いします。よろしいでしょうか。

自由討議の時間も次に用意してございまして、討議の中でも確認できますので、自由

討議に移りたいと思います。

お三方からプレゼンテーションをいただきましたので、それを全体で見て、あるいは

それぞれのご報告者に対するコメントでもよろしいですので、よろしくお願いいたしま

す。

村井さん、お願いします。

【村井主査代理】 3件のプレゼンテーション、ありがとうございました。これらはい

ずれにせよテクノロジーの問題で、最初のお二方は、今あるメディアやサービスがどう

いうインパクトを持ったかを、震災時の状況を踏まえた調査等に基づいてお話をしてい

ただいた部分があると思いますし、神門先生のご発表も情報アクセスの技術に関する調

査研究ということかと思います。そこで質問ですが、これから未来に向けて技術がどう

なっていくべきか、今回の震災で新たに分かったことも色々あるかと思いますが、1つ

には、今回、非常に貴重なデータだと感じたのは、個人個人がどう反応したかというデ

ータです。かなり特別な状況の中でのそうしたデータが集まったと思うのですが、その

中で一番知りたい点であるのにあまりお話いただけなかったことは、人は今のメディア

にどんな不満を持っているのかという点です。今あるものに対してもっとこうだったら

いいのに等、テレビも含めて、今のメディアにどんな不満を人々が持っているのかにつ

いて、もしデータをお持ちでしたらぜひ教えていただきたいと思います。検索や情報ア

クセス技術も含めまして。

【新美主査】 いかがでしょうか。大変難しい質問になると思いますが。

【村井主査代理】 調査の段階でそういうことはわかるわけですよね。もっとこうだっ

Page 23: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-23-

たらいいのにと言われていることはないですか。

【新美主査】 いかがでしょうか。奥さん、吉田さん、あるいは神門さんにしても、そ

れぞれのお立場から、正面からのお答えでなくてもいいですけれども、お感じになった

ところ、あるいはお考えのあるところをいただければと思います。

【奥氏】 幾つか調査もしていますし、いろんな知見もあるわけですけれども、まず震

災の前に尖閣諸島のビデオが出たときの、最初に知ったメディアは何ですかという調査

をしました。それは実は翌日の朝のニュースと朝刊だったのですね。実際あの事件が起

こったのは前日の夜で、ツイッター上で私は見ましたけれども、前の日に見ようと思え

ばユーチューブで見られたのですが、実際は、私も見にはいきましたけれども、みんな

見にいったみたいで、回線が混雑していたのかちゃんとしたまともな動画は見られませ

んでした。そういう意味では、メディアとして、ジャーナリズムとしてネットを使うと

いうのは、もうかなり自由にできるようになりました。ところが、それをお知らせする

機能に関しては、やはり4マスの力は相変わらず強いなというのは実感であります。

震災について、一番多かったのは、NHKもそうですし、民放もそうですけれども、

全体論の中で伝えようとしますけれども、もちろん被災地は全然違う状況で、欲しい情

報が違うということで、マスメディアでやらなきゃいけないことと、本来もっと被災地

で何が足らないのかというのをもっとしっかり見きわめて、そこを手当てしていくとい

うメディアに期待されている役割にもかなりの差がありました。この3月11日の件に

関して、全体のマクロ目線で見るときのメディアに期待されることと、ほんとうにその

中にいらっしゃる方で「こうだったらいいのにな」というのは違うのだというのはすご

く実感もありますし、消費行動に関する期待値というか、今後のインデックスみたいな

ものも、西に行くほど何ともないけど、東に行って被災地に近いところほどかなり落ち

込んでいるというのが実態ですので、難しいなというのはあります。

【新美主査】 ありがとうございます。吉田さん、お願いできますか。

【吉田氏】 今回の震災のケースをお話ししますと、やはり神戸のときと一番違うのは

今回の震災は、相当局所的に、例えば三陸の沿岸部とか福島の原発の周りとか、あと内

陸のほうとか、そういうところで状況が異なっている点だと思います。これは先ほど奥

さんの話にもありましたけれども、マスメディアというのは、局所ではなく、幅広く到

達してしまいますので、報道のあり方も、広告も難しいわけです。一方、被災者の方々

等は、コミュニティFM的なものがいまだに活躍しています。というのは、半径何百メ

Page 24: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-24-

ートル、数キロぐらいの距離の情報伝達回路がそもそも無かったということだと思いま

す。確かにツイッターでハッシュタグをつけるという行為で、それに近いことはできる

のでしょうけれども、現状、なかなかそこまではできていないというのを考えますと、

実はそういったほんとうのコミュニティに関する、メディアと言っていいのか、情報イ

ンフラと言っていいのかわかりませんけれども、そのあたりが機能しなかったという点

が、僕は今回の震災で一番気になったところであります。

また、マスメディアを中心としたジャーナリズムに関しましては、ある意味判官びい

きなところがございますから、当然被災者の立場に立ってコメントをしていくのは当然

のところでございますので、そういったところはやむを得ないのかなという感じはして

おりますが、情報インフラに関してはものすごく困っている方に届けるメディアがない

というのが問題かなと感じております。

【新美主査】 ありがとうございます。神門さん、ありましたらお願いします。

【神門構成員】 事務局の方々から、震災の議論は前回までとうかがっていたので、震

災についてはお話ししなかったのですが、私が関連する研究コミュニティでは、例えば、

Anpi-NLP、安否情報をよりよく探すために自然言語処理技術を使おうという動きが震災

後すぐに立ち上がりました。被災された方々の安否情報は重要で、できるだけ正確な情

報を大量に整理する必要があります。しかしながら情報は多様な形態で分散しており、

名前を1文字間違える、平仮名と漢字との違い、ある人の安全が確認されるとその情報

は電子的に残されにくい、など、いろいろな問題があります。そこで、言語処理を専門

とした研究者・技術者が、情報の解析、集約、マッチング(名寄せなど)の技術を用い、

Twitter、ブログ、SNSなどの安否情報に注目し、Google社の"Google Person Finder"の

データと照合しながら、最新の安否情報をできるだけ整理しようというものです。たと

えば、ツイッターなどで人を探す、「だれだれさんを探しています」みたいなものを、

いろんな表現で同じ意味のことを探しているけれども、単純にマッチするのではうまく

探せないので、そういったことをテキスト・エンテイルメント、含意というのですけれ

ども、これとこれは同じ意味であることを推論するための仕組みを急いでつくろうとい

う動きが震災の直後からありました。情報アクセス技術から震災でお困りのことを助け

ることができないかな、何かしなくちゃいられないというような形で始まりました。

【新美主査】 ありがとうございます。今のお話を受けまして、村井さん、いかがです

か。

Page 25: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-25-

【村井主査代理】 ありがとうございます。やはりそういった局所性の問題であるとか、

安否確認のメソッドというのは、かなり具体的な要求だと思います。今のメディアでそ

の部分が提供できていないということは、これからのメディアを考える上での重要なポ

イントではないかと思いました。ありがとうございます。

【新美主査】 ほかにございますか。

【佐々木構成員】 震災のニュースに関しては、テレビが重要だったのか、新聞なのか、

ソーシャルメディアなのかというのは、実はあまり意味がない。なぜかというと、結局

アフォーダブルかどうか、要するに、到達しやすかったからそれを見ただけという可能

性は結構あるわけなのですね。特に、例えば津波で被災したところでは、停電したりと

か、いろんなことが起きて、結局テレビも見られない。見られるのは、実は避難所に張

ってある掲示板だけみたいな、そういうことが起きる。そうすると、避難所の紙の掲示

板が最も有効メディアだという話になってしまうのですけれども、ほんとうはそれがニ

ーズがあったわけではなくて、それしか見られなかったからそれを見ていたという当た

り前の話なわけです。こういうのをアフォーダブルという言い方をするのですけれども。

ということを考えると、今回、僕も被災地へ4月の後半に3日間ぐらい行っていろい

ろ見てきたのですけれども、結局アナログとデジタルの境目の問題というのは非常に重

要だったのではないのかと。結局、さっきの紙の掲示板の問題にしろ、あと三陸地方は

特にそうなのですけれども、高齢者が非常に多くて、例えばツイッターとか、そういう

ものは一切使いこなせない人が大量にいらっしゃるという状況の中では、ものすごくた

くさんのアナログのニーズみたいなものがそこにあふれているのだけれども、それが東

京にうまく伝わっていない問題というのがあるのですね。おおむね現地では、避難所で

ニーズを集めて、それを自治体のボランティアセンターとかに吸い上げて、それが県の

災害ボランティアセンターに行って、そこからNPOとかに回ってくるという情報の流

れ方をしているのですけれども、そもそも被災地の避難所のレベルでうまく情報がすく

い上げられていない。そこに一人、例えばソーシャルメディアを使いこなすような優秀

な若い人がいるかどうかで全く状況は違ってきている。そういう若い人がいると、その

ニーズをうまくすくい上げて東京に発信し、東京からそれに応じて物資が行ったりとか

ボランティアが行ったりするという状況が起きてきた。そういう人がいないところでは、

何をどう言っていいのかわからないので、自治体の職員に文句を言うだけで終わってし

まっているというちょっと悲しいような状況が起きているわけなのですね。

Page 26: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-26-

ということを考えると、多分これは被災地の問題だけではなくて、いろんなところで

起きてくると思うのですけれども、そういういわゆるデジタルディバイドの向こう側に

いるようなアナログ情報しか扱えないような人たちをどうやってデジタルに結びつける

のか。リテラシーの問題だというふうにさんざん語ってきたわけなのですけれども、必

ずしもリテラシーを高める教育でうまくいくのかというと、そうではないだろう。だっ

たら、どこかでそのアナログの情報とデジタルの情報をうまく結びつけるような、ある

いはそこで変換するような、地デジでアナ・アナ変換みたいな言葉がありますけれども、

それと似たようなアナ・デジ変換というような作業がどこかに必要なのではないかなと

いうのが一つです。

あともう一個、これは全然違う位相の観点になるのですけれども、テレビかソーシャ

ルメディアかみたいな区分けというのも、実はあまり有効性がなくなってきたなという

ことを今回すごく強く感じていて、例えばこれは有名な話なのですけれども、2009

年と2010年を比較すると、アメリカでは視聴率が若干上がったという話があるので

す、2010年に。この原因は、正確には分析されてないのですけれども、割にあちこ

ちで指摘されているのは、これはフェースブック、ツイッター効果ではないか。要する

に、今までテレビに接触してなかった層の人たちが、ツイッターやフェースブックでテ

レビが話題になっているのを見て、ついスイッチを入れてしまってテレビを見るように

なった、そういうケースが結構多いのではないかということなのです。

今回も、例えばツイッター上で震災関連のさまざまな新聞情報とか、あるいはテレビ、

NHKなんかでやっている番組の情報なんかをやりとりされて、それにひもづいて多く

人がテレビや新聞の情報を見るということはかなり起きてきている。そうすると、ここ

では明らかにリアルタイム性の強いツイッター、あるいはソーシャル的な、いわゆるイ

ンタレストグラフと言われるような興味対象でつながっていくような人脈図みたいなも

のをベースに、そこで新聞やテレビの情報が流布していくようなモデルというのができ

てきているわけで、明らかにその相互補完性のモデルが急速に今回浮上してきているの

ではないか。その辺も考えておかないといけない一つの大きなテーマではないかと思い

ます。

以上です。

【新美主査】 今のご意見には私も同感でして、非常に重要な指摘だと思います。それ

ぞれのメディアといいますか、手段で特性がある中で、相互に影響し合っているという

Page 27: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-27-

感じを持ちました。ですから、今後の切り口の一つになっていくのかと思いながら伺っ

ておりました。

ほかにご意見がございましたらお願いします。

【吉川構成員】 今の佐々木さんとの話とも関係しますし、奥さんと吉田さんのプレゼ

ンテーションにも関係するのですが、奥さんと吉田さんのプレゼンテーションのそれぞ

れの12ページなのですけれども、このデータを見ると、50代、それから60代のリ

テラシーが大きく30代、40代、20代と乖離しているなというのがわかります。最

近デジタルディバイドという言葉もあまり使われなくなったのですけれども、やっぱり

よく使う人のほうが、例えばネットショッピングなんかもよく使っているというふうに

こういうデータから見て受け取れます。ここの委員会は新事業創出、ICTの市場のパ

イを広げようということですから、デジタルディバイドを解消し、特にシニアの人にリ

テラシーを上げていただくというのが重要なのかと思うのですが、ぜひお伺いしたいの

は、アクティブシニアの人というのは、どうやって使いこなすようになったのか、その

きっかけは、例えばパソコン教室に通って習うようになったのか、子供の影響なのか。

もしアクティブシニアがICTをほんとうにアクティブに使っているとすると、そのき

っかけが何だったのかということについて、もしご存じでしたら、奥さん、吉田さん、

教えていただければと思います。

【奥氏】 実はデジタルでディバイドされているのがシニアという文脈が今もあるので

すが、我々が様子を見ている限りでは、PCサイトやメールの利用者はシニア全体の

約4分の1にもなります。全く我々の予想と反して、デジタル機器、パソコンを使いこ

なして、かなり楽しく、お金と、それから余暇の時間を潤沢に持っていますので、楽し

んでいるデジタルシニア層というのはいらっしゃるということです。例えばお孫さんと

スカイプで「しりとり」をしたりとか、子どもや孫のブログを本人に言わずに確認をし

て、おじいちゃん、おばあちゃんが孫や子どもの見守りをするという逆の確認をしたり、

結構やられているので、これもまた通説で話してしまうと勘違いするのではないか。

どういうきっかけで使うようになったかと聞きますと、もちろんパソコン教室に行っ

てみたという方もいますし、それからちょっと気のきいた仲間がやっていたので使い始

めたとか、あるいは男の方の場合は、60、70の方というのは、実は事業というか、

会社である程度のITリテラシーはありますので、その先をやればいいだけ。しか

も60歳を過ぎますと、もちろん普通のサラリーマンで言うと定年になりますので、社

Page 28: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-28-

会とつながっている感を出すにもネットを駆使しないと。今や忘年会のお知らせも、ゴ

ルフのコンペのお知らせも手紙や電話では来ないので、そういうふうに使う方が多いで

す。

女性の場合は、おばあさんとかになりますけども、逆にFXの投資とか、ああいった

ことをやられたりとか、それから通販なんかも結構やられていますので、一概に年配の

方はお使いにならないということではどうもない。

逆に、やっていない人はどうしてというと、きっかけがないというのと、パソコン売

り場に行ってもわけがわからないという、要は入り口がないということなので、そうい

うところを少し丁寧にやれば、十分生活を潤すようなことが、今の技術だけでもできる

のではないかと思っています。

【新美主査】 ありがとうございます。

【岩浪構成員】 今のお話にも少し関係するのですけど、いずれにせよ、もうユーザー

が主役の時代ですので、ユーザーがどう考えて、どう利用しているかというのをこうや

って調査するのは極めて重要ですので、このような調査は定点的にやってもらいたいな

と思います。一方で、新産業創出という観点でそれをどう読むかというお話はなかなか

単純じゃないなというふうに思っていたりします。

もちろんこういった一つの、奥さんが最初に言われた、これは広告的なところから見

ていらっしゃるというので、その観点ではそれで正しいのだと思うのですけど、僕

も2001年かな、モバイルITフォーラムというのができて、第4世代の移動体通信

のアプリケーション専門委員会で、ユーザーはどんな使い方をするのかという調査

を2003年から4~5年ずっとユーザー調査をやったことがあります。

すると、今後半で奥さんが言ったお話と同じような話が出てきて、シニアの方にリテ

ラシーがないだろうと思って聞くと、「何言っているんだ、俺はもうショルダーホンの

ころから買っているんだよ」みたいなことを言って、ものすごく詳しい方がいるんです

ね。

考えてみると、IBMのPCが出たのは1981年、今から30年前なので、当

時30歳でバリバリやっていた人は、今や60歳なんです。その方は当然ICTにすご

い詳しいですね、おそらく。そのようなこともあるかと思えば、大学生で、私はパソコ

ンとかなんかは苦手なんですなんていう子もいたりします。

否定するわけではないのですが、よくある年代別に分けてどうのというやり方では、

Page 29: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-29-

なかなか捉え切れないところがあるのではないかと思うんです。

例えば典型的なのが、2003年の調査でも、今、テレビは見ている、ケータイは使

っている、だけど、10代はパソコンは使っていません、みたいな調査データが出てい

ますよね。翻って、2003年から8年たっているわけで、その当時、10代だった子

が20代になっているわけですが、それではその人が今PCを使っていないかというと、

これを見てもわかるように、約80%が使っているわけです。

つまり、10代が使っていないから、今後はPCレスになるのか、といったら、まず

そんなことはなくて、そこら辺は、結構そういう見誤りをしてしまうことがある。

それから、奥さんの話でも、13ページ、テレビもネットも見ていますという話です

ね。先ほどの村上さんの質問にもありましたけれども、他のサービスなんかも、結局は

やたらといろんなものを同時に使っている人と、ものすごくそういうのから引いてしま

っている人と、同じ年代でも結構いたりするので、いずれにしろ、ユーザー調査という

のは少し細かく見てやらないと、新産業創出をどうするかというテーマは道を誤りかね

ないなと、そんな気がしました。

【新美主査】 ありがとうございます。

【堀構成員】 僕はラジオの出身者なので、先ほどの佐々木さんのアナ・デジ変換とい

うのは非常に重要だと思っていて、少なくとも東北地方でコミュニティFMがある部分

力を発揮したことは間違いないと思うのです。新潟中越地震のときも多分そうだったの

です。では、東京に置きかえたときに、多分コミュニティFMはほとんど機能しないだ

ろうし、AMのラジオでも東京のほうが多分東北より聞こえにくいはずなのです。だか

ら、デジタルで簡単に聞けるラジコというのが、あの震災の直後にエリア制限を外して

非常に画期的なことだったと思っていても、実際に50代、60代の人がスマートフォ

ンでラジコを聞けたかということをちゃんと検証しないといけないでしょうということ

が一つですね。

さっきおっしゃられていた世代で区切ると、ものすごく見誤ることがあって、ラジオ

といったときも、東北地方でラジオを持っている人と、東京でラジオの受信機を持って

いる人にはどういう人がいるかといったときに、僕らは10代の女の子、男の子と接し

ていますから、まず人生でラジオのスイッチをつけたことがないという人がいるわけで

すね。ラジオを見たことがない。どうやって聞くのですかという人がどんどん増えてい

る。これは逆に言うと、アクティブでないアナログ世代です。ケータイは持っています。

Page 30: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-30-

でも、自宅に電話線は引いていません、新聞は取っていませんという人が増えてい

る。60代、70代の人たちと10代、20代の人たちで、両方情報が補完し合えない

状況になっている。それをデジタルで補完するのか、アナログで補完するのかというこ

とを新しいビジネスの中に入れなければいけないだろうなと。

すごくおもしろい例があって、被災地の自治体から、1カ月以上たってから、みんな

気分が沈んでいるので盛り上げてくれないかと。Jポップのアーティストが行きましょ

うと言ったら、演歌にしてくださいというオファーがあった。東京で考えているニーズ

と現地のニーズに、実に情報が乖離していて、たくさんいろんなお客さんがいるのだと

いうことがデジタルでわかったときに、いわゆるマス的なことで判断をしてしまうと、

ものすごく抜けが多くなってくるのではないかと思います。ですから、アナ・デジ変換

というアナログをデジタルで有効に活用することとツイッターみたいなことというのは、

特に東京でなったときに、今回のように簡単にはいかないと思うのです。だから、ぜひ

そこもフラットに、東京の場合と地方の場合というのは、実際の生活のパターンが違う

ということを含めて考えていただければと思います。

【新美主査】 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

【村上構成員】 奥さんの資料の最後のページ、24ページ、これをさっきからずっと

にらんでいるのですが、これの10年後とか20年後というのは、さっきツイッター、

フェースブックがつーっと左に動きましたが、他のメディアも含めると全体として、ど

ういうふうになるのでしょうか。要するに、通信・放送融合というのは、これらが重な

り合ったり、相互補完しあったりするという話ということになります。

【奥氏】 これは私、10年来、ずっとポンチ絵として使っているデータで、意味が2

つあります。1つは、情報を出す側の事業者、新聞社とか放送局とかが、もともとリー

チ型という1対Nで出していくのが得意だったテレビというものと、どちらかというと

検索型という形で1対1のサーチ型のネット、ドメインの違う仕事がありますと。これ

がBSデジタル、地デジ、それから今後のスマートTVという名のもとで、一つのプラ

ットフォームで両方できますというのが今言われているわけですね。そこにほんとうに

ニーズがあるのかどうかです。私もわからないですけれども、パナソニックとか、ある

いはシャープのようにタブレット端末をテレビにリンクしてツーウインドウでという考

え方もあります。グーグルTVのようにワンウインドウのものもあります。私が先ほど

申し上げたとおり、実はテレビとネットが当時に使われている。同時に使われているの

Page 31: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-31-

だったら一つのサービスで固めてしまえばいいではないかと思うのですが、それがワン

ウインドウでやったほうがいいのかどうかというのが、一つモデルとしてまずあると思

います。

2点目は、ユーザー視点です。ユーザー側は逆にそんなことはどうでもよくて、NH

Kを見ながら、別にアマゾンドットコムで物を買うとか、好きにやっているわけですね。

そこを垂直型にモデルが組めるかどうかという意味で見ていく必要があると思います。

事業をする側にすると、リーチ型かサーチ型のどちらかが事業ドメインになります。

しかし、ユーザーサイドの受け取り方が、思惑とは違う方向になって不思議なことが

受けて、爆発的にドライブがかかって普及率が上がったりということもあります。

この位置関係というのはすごく大事な絵で、事業のドメインなのか、ユーザーに対す

るサービスの絵なのか、デバイスそのものが何を意味するのか。例えばiPadなので

すけれども、使用シーンはほとんど自宅なんですね。あれを外に持って使われる方はそ

んなにいないです。私も持って歩きますけれども、持って歩くときというのはWiFi

環境の中で、新幹線の中で30分、1時間の時間があるときに使おうということになり

ますが、そうじゃないときは、基本はスマートフォン、iPhoneで用事が済むわけ

ですね。

そう考えていくと、今のサービスは意外と自宅で使うもののほうが多くて、位置情報

との連動とか、新しく屋外に出るようなサービスというのは今から出てくるものなので、

これがいつまで通用するかわかりませんけれども、そういったあたりというのはすごく

大きいのではないか。だから、いわゆる縦型折り畳みケータイとPCの間にタブレット

PCというのが入ったときに、それがどこで使われるサービスなのか。今はまだあの大

きさのデバイスというのはソファーに置いといて、ちょっとゆっくりしたときに使うリ

ビングやベッドサイドのメディアになっているので、それをどう活性化させるかは知恵

の絞りようかなというところも含めて、この絵を入れたということであります。

【村上構成員】 ありがとうございます。そうすると、こういう位置関係にあるメディ

アはこれからも存在し続けると。

【奥氏】 そうですね。

【村上構成員】 おそらくもう一つ、垂直に立つもう一つの軸があって、サービスとい

う軸か、事業という軸か分かりませんが、それがこれらのメディアをいい方向に向けて

つないでいくというような考え方でしょうか。

Page 32: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-32-

【奥氏】 さまざまなやり方があると思っています。

【新美主査】 ありがとうございます。

まだご議論がおありだろうと思いますけれども、次の論点整理に向けた議論に移って

いきたいと思います。

その議論に入る前に、「ICT利活用戦略WG」の座長をしております村上さんから

「ICT利活用戦略WG」の検討状況についてご報告をいただきたいと思います。その

後、続けて事務局から論点整理(案)についてご説明をいただきたいと思います。

また、本日ご欠席の國領さんから資料6-6としてご意見が提出されておりますので、

これも適宜ご参照いただきたいと思います。

なお、村上さんへのご質問は、事務局からの論点整理(案)の説明の後に、自由討議

の時間を設けますので、その中でよろしくお願いしたいと思います。

それでは、まず村上さんからよろしくお願いいたします。

【村上構成員】 それでは、資料6-4を使いながら報告をさせていただきたいと思い

ます。

2ページ目をごらんいただきます。このワーキンググループは、もともと日本のIC

Tは、国際的に見てネットワーク環境の整備は進んでいるけれども、利活用がおくれて

いるという認識があって、それにどう対応するかという問題と、政権交代とか事業仕分

けのプロセスで、総務省のICT利活用施策の効率性だとか、公正性とか説明責任の担

保、あるいは効果の最大化というような要請が出てきたものに対してどうこたえるかと

いうところからスタートしました。

2月にスタートしたわけなのですけれども、3月11日の大震災の勃発によりまして、

日本の震災の復興とか再生プロセスにおけるICT利活用の在り方はどうなのかという

課題、つまり、第3の課題が加わりました。そういう非常に複雑で緊迫した状況の中で

議論を行ってきたわけなのですが、そういう議論を3ページのメンバーで、4ページの

ようなスケジュールで、5ページのような中身を検討してまいりました。

具体的に議論したものは6ページ、7ページに第3回と第4回をお示ししているわけ

なのですが、ここで出てきました議論、意見は、いずれも構成員が総務省のICT利活

用分野で豊かな経験を持っていらっしゃる方々であったことから議論は多岐にわたりま

したが、意見そのものは非常に示唆に富むものが多いということがございましたので、

報告資料は、できるだけそれらの個別の意見をお示しするという形でまとめております。

Page 33: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-33-

本日の私からの報告は、それを踏まえまして、ワーキンググループでの検討がどんな筋

道で行われてきたかというところを中心に報告をさせていただければと思います。

既にこの委員会の第3回に、私から第1回、第2回のワーキンググループについての

報告をさせていただきました。そこで分野別の縦割のICT利活用施策の展開に加えて

共通基盤的な横串の施策展開が重要だというような問題提起があったということを申し

上げました。この横串の議論というのは、言いかえますプラットフォームという視点が

大事だということかと思います。

それに加えまして、ICT利活用から情報利活用への転換とか、どちらかといいます

と、技術ドリブンで議論されてきたICT利活用を、より課題ドリブンな、あるいは奥

さんからもお話がありましたが、ユーザードリブンな推進に対するニーズが高まってい

るというようなこと、あるいは実証実験を重ねるだけではなくて、それをICT利活用

施策の事業化とか普及に向けてのロードマッピングにまでつないでいくことの重要性で

すとか、その際にICT利活用を推進する総務省と、その成果を実現する立場にありま

す事業官庁や自治体との連携、コラボレーションが重要であること、あるいはちょっと

毛色は違いますけれども、オープン、モバイル、ソーシャルという新しい利活用環境の

中で、オープンなユーザーインターフェースですとか、コンテンツとかサービスの重要

性が高まっているというようなことを前回指摘させていただきました。

そういうおさらいをベースにしまして、この第3回のワーキンググループの議論が行

われたわけですけれども、6ページにあります第3回のものは、主として今申し上げま

したICT利活用から情報利活用へというテーマ、情報利活用というテーマをめぐって

議論が行われました。最近、ICTの世界でオープン・ガバメントですとか「ガバメン

ト2.0」ですとか、ビッグデータというような切り口の話題が盛んになってきている

わけなのですが、そういう流れを反映した情報利活用という視点をめぐりまして非常に

多様な議論が行われました。

情報利活用につきましては、これから国とか自治体、医療機関、交通管理機関、ある

いは通信産業、あるいはソーシャルメディアもそうですけれども、こういうところから

大量の一次情報が開示され、世の中に出てくるということが大前提になります。その前

提に立って、このワーキンググループの國領座長代理から2つの検討の視点が提示され

ました。1つは原材料であります情報そのものの信頼性とかクオリティーの確保をどう

するかという視点、もう一つは、その情報をどう価値にしていくか、あるいはノウハウ

Page 34: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-34-

化していくかという視点、この2つであります。

第1の視点の情報の信頼性とかクオリティーという面では、これからは情報の出し手

が100%の信頼性、あるいは品質を担保するという考え方ではなくて、できるだけあ

るがままの姿で、タイミングを失わないように開示していくという姿勢が必要であると

いうことと、ただし、その情報の出し手がどういう属性を持った主体であるか、つまり、

だれであるかということと、どんなコンテクストやタイミングのもとで出されたものか、

つまりいつ出されたものであるかということについての情報が必ず伴わなければいけな

いという点と、第3に、その情報の評価につきましては、専門性を持った多様なプロフ

ェッショナルが発する情報をユーザーが常に利活用できるような環境をつくっていくこ

とが大事だという3つのポイントが出てまいりました。

そういう議論の中から、一次情報の出し手と受け手と仲介する専門家の間を結びます

柔軟なアーキテクチャーが浮かび上がってきていると思います。

第2の視点の情報の価値化とかノウハウ化という側面では、民間部門あるいはユーザ

ーの自由な情報利活用が最も重要な大前提だということが確認されました。その面から

は、引き出す情報の価値と、それにかけるコストの関係ですとか、裁量的な情報、つま

りあればいいという情報と、絶対なければいけない必需的な情報、この区別の重要性と

いうような論点が指摘されております。

特にこれまでは高度ICT人材育成ということを言ってきたのですが、それとはちょ

っと違います高度情報利活用人材というようなものの育成も重要になってくるのではな

いかという意見がございました。

7ページですが、第4回では、震災時のICT利活用の課題について議論を行いまし

た。大きく分けて、1つは、情報の発信・共有の在り方と、制度面の課題と、ICT利

活用政策の在り方という大きく3つの側面から議論が行われました。

第1の情報の発信とか共有のところでは、まずは行政からの情報発信の問題につきま

して、発信する情報の量とか内容とか信頼性とかがどうであったのか、あるいは利用者

のアクセシビリティをちゃんと考えていたのか、あるいはリアルタイム性を持った電子

政府というのが動いたかというような点で非常に厳しい意見が出されました。

それに対して、この資料には出ておりませんけれども、総務省サイドからも非常時の

ミラーサイトの確保ですとか、ファイルの軽量化ですとか、ソーシャルメディアとの連

携の必要性というような、今回の震災のプロセスでの経験に即したような論点が提示さ

Page 35: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-35-

れまして、こういうものを平時からの防災計画の中に組み込んでおくべきだというよう

な具体的な提案もございました。

また、情報共有のための被災地と被災地の外とをつなぐ情報のファシリテーター機能

というものが非常に重要であるということ、あるいは被災地の情報発信力を担う地域I

CT利活用人材というものの育成、それからICTは、先ほど佐々木さん、堀さんから

ご発言がありましたけれども、デジタル情報を扱うだけではなくて、アナログからデジ

タル、デジタルからアナログへの情報変換の仕組みを組み込んでおくことが重要である

という議論がここでも行われました。

それから、第2の制度的な課題としましては、個人情報保護と公共の利益のバランス

について、もう少し根本的な再検討が必要ではないかという問題提起が行われました。

災害の度合い、あるいは公共の利益の度合いに応じて、個人情報保護法の解除レベル

をレベル1、レベル2、レベル3というように分野を横断して横串を差すような形でレ

ベル分けをして、それぞれのレベルに応じた個人情報の取り扱いの在り方を規定すべき

なのではないかという非常に建設的な問題提起がございました。これは今回の震災の被

災地での非常に切羽詰まった医療の現場の経験から出てきた知見であります。ぜひ真剣

にこの議論をしていただければと思います。

同様に国民IDですとか、企業IDの在り方につきましても、こういうレベル分けの

考え方が必要であるというような論点もございました。

それから、第3番目の震災後のICT利活用政策の在り方につきましては、ICTは

実証実験を通じて実証しているだけではだめだ、具体的に社会システムの中に何らかの

形で実装されていないと、こういうときには役に立たないということがはっきりわかっ

たということと、非常時に得られました復興プロセスのマネジメント、これからも進ん

でいくことですけれども、この知見を平時の仕組みの中に実装していく必要があるとい

う指摘も行われています。

また、このワーキンググループでは、通常の委員会に加えましてより突っ込んだ議論

をネット上のメーリングリストで行いました。その内容も8ページから11ページに、

ブルーのところですけれども、示しております。縦軸と横軸の問題、それからICT利

活用から情報利活用という問題、それから利活用施策の在り方の問題、それからプロジ

ェクト管理の具体的な在り方等についてかなり突っ込んだ議論を行っておりますので、

こういう個別の意見の中で有用な意見につきましては、ぜひこれからの論点整理ですと

Page 36: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-36-

か、一次取りまとめのプロセスの中で取り込んでいただければと思います。

以上が私からの報告でございます。

【新美主査】 ありがとうございます。

それでは、続きまして事務局のほうから論点整理(案)についてご説明をお願いしま

す。

【谷脇情報通信政策課長】 それでは、続きまして資料6-5、論点整理の案について

ご説明させていただきます。

全体は大きく分けて3つのパートに分かれております。最初のパートが現状認識でご

ざいます。「東日本復興と日本再生に向けて」というところでございますけれども、2

つ目の白丸をごらんいただきますと、この委員会を含みます情報通信審議会の諮問でご

ざいますが、本格的な知識情報社会の実現に向けて、2020年ころまでを視野に入れ

て今後のICT政策の方向性についての総合戦略を描くということを目的として検討を

始めていただいたところでございます。

こうした中、本年3月、東日本大震災が発生をしたところでございます。したがいま

して、総合戦略を描くに際しても当初の政策アジェンダを大きく変更する必要が生まれ

ているのではないか。具体的には今次震災において被災地間、あるいは被災地と被災地

外を結ぶ情報のやりとりが断絶し、復旧に多大な課題が生じているように、災害時はも

とより復興のプロセスにおいても情報の円滑なやりとりをハード・ソフト両面において

実現する情報流通連携基盤(プラットフォーム)の構築がICT政策の機軸となるので

はないか。

また、今後の復旧・復興プロセスは長期に及ぶものと考えられますが、被災地の地方

自治体が主体となる東日本復興のプロセス及びその原動力となる国家としての日本再生

を同時並行的に推進していく必要があるのではないかとしております。

「日本復興とICT」ということでございます。ICTが果たすべき役割、効果でご

ざいますけれども、3つ書いてございます。

まず1つ目が、ICTは行政、医療、教育、農林水産業等の幅広い分野における効率

性の向上や高付加価値化を実現するものであり、また、ICTがもたらす経済波及効果

が全産業中最高水準であることから、復興プロセスにおいてICT関連投資は極めて重

要な投資であると位置づけることが必要ではないか。

また、復興のプロセスで必要となる道路などの社会資本、あるいは電力などのライフ

Page 37: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-37-

ラインの運用にICTを最大限活用し、国のいわば神経網であるICTを活用した情報

流通連携基盤をハード・ソフト両面で構築することによって、耐災害性が強く、かつ高

付加価値性を有する社会インフラの高度化を実現することが可能となるのではないか。

また、3点目として、防災・減災の視点及び復興プロセスにおいてICTを活用した

コミュニケーション力の強化を図ることが必要ではないかとしております。

次に、3、「ICT政策の基本理念」として5つ掲げてございます。

まず1つ目が、冗長性のある有機的なネットワーク連携を実現していく必要があるの

ではないか。

2つ目として、インターネットの持つソーシャルメディアとしての機能などを活用し

ながら、地域(コミュニティ)のきずなを強固なものとする共生型のネット社会の構築

が必要ではないか。

また3点目として、生産拠点の海外流出による産業の空洞化を防ぐとともに、アジア

の成長を取り込んだICT産業の復興を実現するため、ICT産業のグローバル展開、

あるいはICTによる相手国の課題解決等の国際連携、国際協調を推進すべきではない

か。

4点目として、被災地の主要産業である農林水産業の復興、行政、医療、教育等の公

的サービスの瞬断なき提供を実現するためのICTの利活用の促進や新事業の創出を目

指すべきではないか。

5点目としまして、中期的な電力需給の逼迫や環境負荷の低減に対応し、日本の生産

力を最大限維持していくためのグリーンICTを推進する必要があるのではないか、と

しております。

次に、3ページ目の「各戦略の位置づけ」というところでございます。何点か書いて

ございますが、まず1点目として、東日本復興においては、地方自治体が主体となるこ

とが大前提であり、政府は最大限これを支援することが必要ではないか。また、東日本

復興に関しては、単に損壊した機能を旧に復するだけではなく、被災地が希望を持つこ

とができる新たな創造的な復興が求められるのではないか。

2つ目として、日本の再生においては、ICTを起点とする施策展開ではなくて、日

本再生に向けた課題、とりわけ日本経済の抱える供給制約を打開する観点からICTが

どのように貢献できるのかという視点からの検討が必要ではないか。

この東日本復興と日本再生の両面において厳しい財政状況にかんがみ、政府が果たす

Page 38: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-38-

べき役割として、アウトカム目標やスケジュールの明確化、アカウンタビリティが従来

以上に求められているのではないか。

注を打ってございます。研究開発→実証→標準仕様化→広域展開といった各ステージ

の明確化・体系化と一体的な推進、各年度における事後評価の徹底・公表による政策推

進におけるアカウンタビリティが求められるのではないか。

4点目ですが、地域の復興、活性化をICT政策の基本に据え、研究開発、新事業創

出、国際連携・協調といった各戦略との整合性・統一性を確保し、産学官の役割分担を

明確化する必要があるのではないか。

また、東日本復興及び日本再生を通じた世界最先端の情報流通連携基盤(プラットフ

ォーム)を構築し、2020年頃に知識情報社会という新たな社会経済システムを構築

することを長期的な目標として設定する必要があるのではないかというふうに整理をし

てございます。

次に4ページ目でございます。「本委員会の新事業創出戦略の方向性」、その中でも

「基本的な考え方」というところでございます。6点書いてございます。

まず1点目として、耐災害性の強いネットワークの構築、あるいは情報やデータの復

元力・耐災害性を高めるという観点からクラウドサービスの積極導入などICTの利活

用を促進する必要があるのではないか。

また2点目として、個別分野の情報化を促進するという縦軸の観点から脱却し、情報

セキュリティやICT人材育成、情報流通連携基盤の構築といった横軸の視点への転換

が必要ではないか。

3点目として、同業他社連携あるいは異業種連携など、各企業等の得意とする経営資

源を持ち寄り、新たなソリューシュンなどを産み出す非連続なオープンイノベーション

の創出が求められるのではないか。

4点目として、デジタル機器のコモディティ化が急速に進展する中で、モノづくりと

サービス提供を一体としてとらえる「モノのサービス化」に力点を置く必要があるので

はないか。

5点目として、ユーザードリブンな傾向の高まりに対応し、標準化戦略としては、民

間主導のデファクト標準、とりわけフォーラム標準の支援を強化していく必要があるの

ではないか。

最後に6点目として、新事業創出戦略の推進により得られたアウトカムについては、

Page 39: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-39-

広く全国に展開するとともに、できるだけ課題を共有する諸外国にも展開することが国

際協調・国際貢献の視点から求められるのではないかとしております。

次に5ページ目でございますけれども、検討の方向性として、ひとまず4点に整理を

してございます。

まず1点目として、災害に強い社会の構築。具体的な例示として、耐災害性に優れた

ネットワークの構築、あるいは災害情報のきめ細かな提供のための地域に密着した放送

の充実・強化、あるいはスマートクラウド戦略の推進、就労形態の抜本的な見直しに向

けた、例えばテレワークの推進といったような点でございます。

2点目として、電力不足等の供給制約への対応ということで、日本型のスマートグリ

ッドの推進、それからグリーンICTの推進としてございます。ここで日本型というふ

うに書いておりますのは、単に送配電網の近代化ということだけではなく、デマンドレ

スポンスといいましょうか、需要者側が先導、主導することができる、いわばエネルギ

ーの地産地消型のマイクログリッドといったような点を念頭に置いております。

3点目として、日本再生のための成長力確保という点でございますが、「ガバメン

ト2.0」といったような政府が保有する情報をマネージしやすい形で提供していくと

いったような官民連携を含む情報流通連携基盤の構築、それから電波を利用した新たな

事業の創出などを書いてございます。

最後に、ICTの利活用推進のための環境整備として、ICTの利活用を阻む規制・

制度の見直し、あるいはユーザビリティの向上、きょうも出ておりますが、高度ICT

利活用人材の育成、情報セキュリティの強化などを頭出ししてございます。

次に6ページ目でございますが、3つに分かれている中の3点目、今後の検討課題と

いうところでございます。

まず「復興プロセスの進展とICT政策の在り方」でございます。今後の復興プロセ

スにおいては、被災地の地方自治体のニーズ、経済動向等により、今後とも環境が大き

く変わっていく可能性がございます。ことしの夏に第一次の取りまとめをお願いしてい

るところでございますけれども、それ以降も引き続きICT政策の方向性について、復

興の関連も含めて検討を深めていくことが必要ではないか。

2点目として、「復興プロセスと知識情報社会の構築に向けて」ということで、復興

プロセスの先にある2020年ころの目指すべき社会を具体化していくことが必要では

ないか。具体的には3つのパーツに分かれております。

Page 40: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-40-

まず1点目として、「通信・放送ネットワークの将来像」というところでございます。

例えば、M2M通信が普及し、あらゆるものがネットに接続されることによりリアル

空間とサイバー空間の連携が強化される真のユビキタスネット社会が実現するとともに、

時間や距離の概念を超えてサイバー空間内における社会経済活動が高度化した世界が実

現していくのではないか。

従来のネットワークを起点とする垂直統合型の事業モデルから、各レイヤー間で自由

に機能を組み合わせて事業モデルを構築する可能性が高まる一方で、情報流通連携基盤

を軸とした新たな垂直統合型の事業モデルが主流となる可能性があるのではないか。そ

の際、デバイスと放送・通信ネットワークの紐帯関係が緩くなり、端末、ネットワーク

の別を問わず情報が双方向で流通する仕組みのウエイトが高まるのではないかとしてお

ります。

7ページ目でございます。1対Nを基本とする放送網、1対1を基本とする通信網に

加え、N対Nを基本とするソーシャルメディアが有機的に組み合わされ、各ネットワー

ク(メディア)の特性を生かしつつ、各利用者のニーズに応じて自由に連携可能な市場

環境になっていくのではないか。

また、新たな垂直統合型の事業モデルがグローバル市場において主流となるとすれば、

我が国のICT産業がこうした事業モデルに組み込まれ、柔軟な事業展開が阻まれる可

能性があるのではないか。

次に、2点目として「ICT利活用の変化」として、集合知の活用、それから「つな

がり力」を活用したコンセンサスの形成など、利用者が主体となったICTの利活用が

進んでいくのではないか。

また、少子高齢化の進展等により心身機能やライフステージに合った仕事の開発など、

ICTの利活用に従来にはなかった視点を加えていく必要があるのではないか。

次に、③といたしまして「ICT利用環境の整備」という点で、ソーシャルメディア

の普及の中で必要な利用環境の整備を進めていく必要があるのではないか。

あるいは、コンテンツ・アプリケーション等の上位レイヤーとネットワーク等の下位

レイヤーとの公正競争確保の観点から、引き続きネットワークの中立性の在り方につい

て検討を深めていく必要があるのではないか。

3点目として、ICT利用環境という意味で、グローバル化が進んでいく中で、クラ

ウドサービスをめぐる国際的なコンセンサスの醸成ですとか、あるいはグローバルなD

Page 41: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-41-

oS攻撃への対応など他国との連携強化が必要ではないかという視点でございます。

最後に8ページ目をごらんいただきますと、参考として、この中で特に大きく取り上

げております情報流通連携基盤について図で示したものでございます。

この図が意味するところは、レイヤーで分かれております、とりわけ上から2つ目の

プラットフォームレイヤー、ここが情報流通連携基盤でございますが、これが連携する

ことによって、一番上の情報コンテンツの部分の連携が進む、あるいはマッシュアップ

によって新たな価値が生み出される可能性がある。

特にプラットフォームということで具体的に何を考えるかとしますと、例えば右下に

ございますように、APIの標準化、異なる領域間のデータフォーマットの連携、ある

いは認証・課金機能の連携、各領域において異なります個人情報の取り扱いに関するル

ールの整合性の確保、こういった点が検討課題例として考えられるのではないかという

ことで整理をさせていただいたものでございます。

事務局からは以上でございます。

【新美主査】 ありがとうございます。

それでは、ただいまから村上さんのご報告と事務局の論点整理(案)についての報告

を踏まえた上で、自由討論をしていただきたいと思います。ご自由にご発言いただけれ

ばと思います。

【村井主査代理】 どれも議論が尽くされたことかと思いますが、2点、気がついたこ

とを申し上げて、そういう議論がもし今までのところであったら教えていただきたいと

思います。

1点目は、先ほど以前のメディアの話も出ていましたが、要するに、一つの視点とし

て公共空間とプライベート空間、公共メディアとプライベートなメディアという分け方

があると思います。やはりラジオというのは公共空間の役割を担っていて、法制度もそ

のバックアップとしてあり、そのための役割を果たしている。放送は、テレビも含めて

そうだと思いますが、このあたりに関してのプライベートなコミュニケーション、ある

いはエンターテインメントのためのメディア、それから公共の空間の役割を担っている

のではないのでしょうか。

また、だれがその役割を担うのかということについては、情報通信政策においてずっ

と議論されていたことであり、つまり、官の役割と民の役割について、インターネット

が出てきたときとはまた違う複雑な役割分担が出てくるのではないかと思いますが、こ

Page 42: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-42-

のあたりの議論はどうなっていたのか、あるいはそのことについてどう書き込んでいく

のかというのが1点目の質問です。

2点目は、これはお2人の話でいずれも出てきた垂直と水平という点です。これも大

変重要な視点だと思います。今回の大変大きな歴史的な経験を踏まえて、ますますそう

いった縦割の社会の中で横串を通す、あるいは水平的な基盤をつくる情報通信が大変重

要な役割を担うということだと思いますが、そうだとすると、これに対する具体策は何

なのかということです。2000年から内閣で情報通信の議論をしてきたことが、各省

庁の中で情報通信政策を進めなければいけないということに対して一定の役割を果たし

てきたと思いますが、これがさらに具体的に進むためにはどうすればいいのか。この話、

つまり、ヨコ・タテという議論の中での具体策については、今回踏み込まなくてよいの

かということでございます。

この2点がわたしからの質問でございます。

【新美主査】 では、今の点、よろしくお願いします。

【村上構成員】 まず公と私と官と民という軸についてなんですけれども、事務局から

ご報告いただいた論点整理(案)とワーキンググループで議論したところに若干の食い

違いといいますか、重なり合わないところがあるとすると、公や官が生み出す情報を、

プライベートな目的あるいは公的な目的でもいいんですが特定の目的に向けて、官民が

連携して生み出すような世界、つまりデータ、情報がどんどん公から、あるいは官から

開示されていくことによって生まれてくるダイナミズムというのがあるのではないか、

という論点の部分です。

この震災のプロセスにおいても、そういう一次的な情報がどんどん出てくる。それを

利用者は見るわけですけれども、それを専門家の助けを借りながら、自分でその一次的

な情報を判断せざるを得ないような局面もあったということがあると思うんですけれど

も、そういう情報に対する接し方、データに対する接し方が、この震災のプロセスの一

つの非常に大きな特色だったのではないかと私は思っているのです。そういう一次的な

データ、あまり加工されていない、大規模なデータをどんどん社会に、私の分野、民の

分野に入れていくことによって官民の連携ですとか、公と私の関係をアウフヘーベンす

るような効用を生み出す世界が出てくるのではないかという部分が、かなりこのワーキ

ンググループでは分厚く議論をされました。

それから、垂直と水平、このICT利活用、村井さんが2000年からやってこられ

Page 43: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-43-

たような延長線上でのICT利活用という面では、ワーキンググループの議論では、こ

れまで、この場でも実証実験アプローチに対するいかがなものかというご意見はたくさ

んあったのですけれども、実証実験アプローチそのものが意味がないということではな

くて、実証実験にしても、もうちょっと手前の取り組みにしても、最終的にそれがどう

いう成果をもたらすのかというところについて、先ほどの神門さんの4つのチェーン論

にあったように、最初の箱、あるいは2番目の箱をやるにしても、最後の箱まで、社会

的な実装に至るイメージを持つような実証実験、研究開発というのが今求められていて、

それがないとなかなか、情報社会はこれからどうなるかわかりませんけれども、そこで

出されてきたような厳しい視点に対峙することは難しいのではないかというような議論

をしています。

ですから、タテ・ヨコというよりも、実証と実装をつなぐという発想をこれからのI

CT利活用への取り組みは常に持たなければいけないのではないかという議論がござい

ました。

【新美主査】 ありがとうございます。村上さんの1番の問題と絡むのですけれども、

ワーキングの報告ですが、情報の信頼性というのを少しきちんと見ておかなければいけ

ないのではないかという気がします。今、村上さんは、公から出す情報というのですけ

れども、第一次データを出すかどうかで、今回スピードのデータで随分問題になったの

ですが、やっぱりどれくらいの確からしさであるのかということを明らかにすれば、で

きるだけ官が持つ情報は出したほうがいいと思うのです。そうすると、いろんな専門家

がコメントしますので、そういう信頼性というのはどうやって確保するかという仕組み

が、ICTの問題を考えていく上では大事だろうと思うのです。

その意味で、この論点整理(案)の中では、情報セキュリティは書いてあるのですけ

れども、情報の信頼性確保のための環境整備みたいなことは少し意識して今後も議論し

ていったほうがいいのではないかと、お話を伺って思ったのです。これは座長としてで

はなくて、メンバーの一人としての意見であります。

【村上構成員】 まさにそうだと思います。それと、これまでどうしてもレイヤーで考

えてきたわけなのですけれども、最終的にはレイヤーに帰着するかと思いますけれども、

一次的な情報の持つメリットというものをおそらく日本社会は、例えば米国と比べると

あまり享受していないのだと思います。医療にしても交通にしてもそうだと思いますけ

れども、そういうものが生み出されてくる、どんどん出てくることが重要です。今回の

Page 44: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-44-

震災は、必要なところにはいろいろ出てきたということだと思うのですけれども、この

勢いをぜひもっと拡大していくような取り組みというのがあればいいなと思います。

それは同時に、個人情報保護とか、匿名化という問題を、もう一回真正面から議論を

する。それはここの場の議論かどうかわかりませんけれども、議論する必要があるとい

うような論調がございました。

【新美主査】 テクノロジーではなくてずれるかもしれませんが、せっかくいいテクノ

ロジーが整備されても、上に乗っかっていく情報が信頼できないということになると、

宝の持ち腐れになりますので、同時にそういったシステムをビルトインしていくという

ことを考えておく必要があるのだろうと思います。

特に、今回いろんなところでチェーンメールだとか、いろんなうわさが出てきてしま

ったということですが、これはテクノロジーが進歩しているから、様々な情報が出ても

いいと思うのですけれども、それをどう評価するか。いい悪いではなくて、どういう論

拠でどんなものが出ているのかということをみんなで議論できる、そういうシステムを

つくらないと、結局はICTそのものが使われなくなってしまう、ないしは信頼されな

くなってしまう。そういう懸念を持ったものですから、お話を伺っていて、ぜひそうい

う側面も入れていかなければいけないなと感じた次第です。

ほかに、どうぞ。

【三膳構成員】 情報の信頼性の話に関して言えば、ちょっと視点が違っていまして、

多分得られる情報というか、人間が取得できる情報は、無限に時間があるわけではない

ので、見る情報は限られるだろう。そうすると、当たらない情報、検証可能で合ってい

るか、ずれているかがわかれば見られなくなるだけだと思っています。なので、どんど

ん出すべきだ。出てくる情報が当たっていれば、それは参照されるだろうし、外れてい

れば、見られなくなるという方向のほうがむしろいいような気がしています。正しさを

担保しよう、しようと思うと、今までと同じようにやっぱり遅くなるのではないかとい

う懸念がすごくあるということです。

あと2点ほど。さっきメディアの話をいろいろ聞いていて、一つだけ思ったのは、今

のメディアはどうしても一つ広告というのと切り離せないようなところがあると思って

いて、広告あるいはスポンサー、あるいはそういうビジネスの方向のほうからすると、

どうしても大量に伝える必要性を志向しがちなのかなという気がしています。だから、

メディアの特性としてやはり大きくなる。そうすると、やっぱり個に、コミュニティ系

Page 45: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-45-

のところに伝える、そういう話とかとそごが出てくる。メディアのモデルとコミュニテ

ィのモデルが齟齬が出るようなところがあるかもしれないということを思ったことがあ

ります。

それから、実際に今後の震災のことに関して言えば、震災を今回テーマにやっぱり入

れていかなければいけない。復興というところはあると思うのですけれども、やっぱり

忘れてはいけないと思っているのは、我々は新事業創出戦略という部分があると思うの

で、そこで得られた議論の中身をうまく適用する、要するに、我々自身でここで議論し

てきたテーマ、その議論が実は復興のほうに、あるいは震災対策に使えるという書き込

み、やり方ができたほうがいいのかなという気がしています。

以上です。

【新美主査】 ありがとうございます。ほかに、どうぞ。

【森川構成員】 2つほどお話をさせてください。

論点整理のところはうまくまとまっているかと思います。

1点目ですが、情報流通連携基盤は確かに非常に重要で、M2M時代に向けては、や

っぱりしっかりやっていかなければいけないのですけれども、情報流通連携基盤をやる

に当たっては、ICT屋がほかの分野に積極的に出ていくというところが非常に重要か

なと思っています。この中にも異業種間連携と書いてありますが、例えば総務省は医療

系はいろいろな実証実験などをしていますけれども、医療系以外はあまりない。例えば

資源とか水とか、建築とか土木とか農業とか、そういったところに我々ICT屋が出て

いくことで、新しいサービス、新しい事業が出ていくのかなと思っています。

さらに震災に関係すると、例えば情報共有が問題だというふうに言われていますけれ

ども、被災地で活動しているNPO法人、NGO法人に僕は数日間しかいませんでした

けれども、数日間だけでは全然わからないのですね。情報共有が問題だというのは、み

んな叫んでいるのだけれども、どこがどう問題なのか全体を把握できている人がいない。

そこに1カ月とか数カ月いるような人をどんどん送り込むような施策みたいなものをや

っていくのが必要かなと。すなわちICT屋の背中を押していろいろなところに行って

らっしゃいと「行ってらっしゃいプロジェクト」みたいなものをやってもいいのではな

いかと思っています。

2つ目は、これは実証実験にもかかわるのですけれども、やはり今までの実証実験が

非常に小粒であったなと思っています。この震災を契機にして、安全・安心が非常にク

Page 46: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-46-

ローズアップされてきましたので、極限状況に対応できるような研究開発あるいは実証

実験みたいなものをやっていくことで、アメリカの軍のDARPAの研究開発に匹敵す

るような研究開発、あるいは実証実験をしっかりと行うことができるのかと思いました

ので、ぜひともそういったこともお考えいただければと思います。

以上です。

【新美主査】 ありがとうございます。それでは、岩浪さん、お願いします。

【岩浪構成員】 村上さんの資料で6ページ、7ページあたりに、個人の情報をもっと

活用するような住民基本台帳IDだとか、国民IDだとか、こういう議論がありますが、

これは非常に重要だと思います。

この手の話は、アメリカでは社会保障番号とか、韓国でも住民登録番号とかにあたり

ますが、これは実際ユーザーからすると、自分が自分であるということをちゃんと証明

してインターネット上で行動するには非常に重要なものだと思っています。

したがって、これはしっかり推進することが、この新産業創出の切り札になるのでは

ないかと思っているのですが、この手の議論は何しろ中途半端にやると、必ずうまく導

入できないという事態になりますね。

その理由は一つで、政府が信頼されていないからということだと思っています。

したがって、政府が何かIDをつけて管理するみたいなイメージになったら、まず一

発でやられてしまうんだと思うんです。ところが、詳しい方なんかはわかっていると思

いますけど、本当は自分が自分であるということを証明するのに、どこかのクレジット

カード会社だとか、キャリアに証明してもらうんじゃなくて、本来だったら自分が住ん

でいる市役所とか、そういう公的なところに証明してもらいたいという人が多いのでは

ないかと思います。

いずれにしろ、そういう議論にしてほしいなと思うんですが、そうすると、まずはユ

ーザーにとって便利なんだ、ユーザーのためのものなんだという話を最初に出さないと。

今、アメリカではDNTの議論があって、Do Not TrackをFTCが強制する、強制と

いうか、政府規制とするかどうかで結構議論になっていますね。実際これは技術的にも、

マイクロソフトのIE9が搭載を表明したり、FireFox4も搭載していたり、グーグル

は逆にグズグズ言っていたりしてるようですけど、この話はユーザーが自分で自分の情

報をオフできます、トラッキングをオフできますということで、自分の意思でオンにし

たら便利ですよという議論になっているんだと思うんです。

Page 47: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-47-

いずれにしろ、まずそのようなユーザー側からの利点の話がなくて、最初から何か政

府側の利点みたいな話が来てしまうと、かつての二の舞になってしまうかなと思います。

このテーマは非常に重要だと思いますので、ぜひともよろしくお願いいたします。

【新美主査】 ありがとうございます。ほかにどうぞ。

【吉川構成員】 すみません。ちょっと時間が来ていますけれども、事務局の論点整理

の8ページの情報流通連携基盤という言葉が今回のキーワードなんですけれども、何年

か前に韓国でiモードみたいなサービスが普及する場合に、なかなか普及しないので、

韓国政府がモバイルキャリアに、国が定めたプラットフォームというのをつくったこと

があるんです。結局それは雲散霧消してしまいましてですね。申し上げたいのは、多分

これは国がいわゆるデジュールスタンダード型でこういうプラットフォームをつくりま

しょうといっても、多分うまくいかないだろう。民間企業はプラットフォームレイヤー

で、まさにデファクトスタンダードをつくりたくて必死に今やっているわけですね。で

は、政府は何をするのかというのは、これは結構考えないといけないわけで、横に結び

つけている矢印があって、強いて言うと、村上さんのペーパーにもありましたが、イン

ターオペラビリティというんでしょうか、たとえ標準が違ったとしても、相互に運用性

があるというのを担保するのが政府の役割なのかなということと、もう一つ、実はプラ

ットフォームレイヤーとはいえ、「ガバメント2.0」の話があったように、政府が持

っているデータというのは、ある意味でプラットフォーム的に基盤として利用してくだ

さいというのが今回の新機軸かなと思っていまして、もう少しそういったニュアンスを

この絵に入れる必要があるかなというふうに思っております。

【新美主査】 ありがとうございます。重要な指摘だと思います。今後も議論をきちん

と重ねていきたいと思います。

ほかにご意見はございますか。あと一方くらいご意見があればと思いますが、よろし

いでしょうか。

ご議論は以上にしたいと思います。次回会合について、事務局からご案内をいただけ

ますでしょうか。

【谷脇情報通信政策課長】 次回会合でございますけれども、引き続き本日のご議論を

踏まえて、論点整理の案について具体化をしていただきたいと考えております。ご議論

の時間は本日も限られておりましたので、本日の論点整理(案)につきまして、各構成

員の皆様から追加のご意見などございましたら、5月20日(金曜日)までにご意見を

Page 48: 情報通信審議会 情報通信政策部会 1 日 時 平成23年5月16日( … · 情報通信審議会 情報通信政策部会 ... 長谷川情報通信政策課課長補佐、恩賀情報通信政策課課長補佐

-48-

メールで事務局にお寄せいただきたいと思っております。詳細につきましては、別途メ

ールでご連絡をさせていただきたいと存じます。

【新美主査】 ありがとうございます。

それでは、本日の会合はこれにて終了したいと思います。どうもありがとうございま

した。

以上