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パルス通電焼結法を用いた材料加工技術の開発 -WC,WC+T iC粉体添加・混合によるステンレス鋼の表面硬化層形成- 材料環境部 玉井富士夫 円城寺隆志 川上雄士 パルス通電焼結法(PCS ,以下PCS )を用いた粉体複合同時焼結法によるステンレス鋼の 表面硬化層形成について研究した.事前に混合調整したSUS316L-WC,およびSUS316L-WC + TiC混合粉体を硬化層形成用として,SUS316L 粉体(単独)をマトリックス用として黒 鉛型内に充填後,PCS 法によって同時焼結した.得られた焼結体の摩耗特性や組織等を 評価した結果,次のことが明らかとなった.(1) WCおよびTiC粉体の添加効果は顕著であ り,20 wt% 程度以上の添加により,摩耗速度はSUS316Lのそれの1/1 0程度に減少する. (2) 今回の同時焼結条件下では,組織自己傾斜作用によって,添加のWCおよびTiC粉体は より表層近くに凝集するため添加量が少ないにもかかわらず,摩耗特性への添加効果が顕 著となる. 1.はじめに オーステナイト系ステンレス鋼はステンレス鋼の 中で最も耐食性に優れ,溶接等の加工性も良好であ るため,汎用性の高い耐食材料として広く使用され ている.しかし,硬さが低く耐摩耗性に劣るため, 耐食性と耐摩耗性が同時に要求される環境下での使 用,例えばポンプの羽根車,バルブ部品等,摺動部 や土砂摩耗用途での使用に課題が残っており,耐摩 耗性の向上を目的としたオーステナイト系ステンレ ス鋼の硬化技術,特に表面硬化技術の確立が望まれ ている.オーステナイト系ステンレス鋼の表面硬化 技術に関しては,TiCTiNTiAlN等の硬質薄膜を 表面に形成する(一般には10μm以下の厚さ)各種 プレーティング 1) ,窒素イオンを注入してクロム窒 化硬化層を形成するイオン注入 2) 等を除いて,適当 な硬化方法はほとんど存在しない.これら耐摩耗性 を目的とする硬質層形成では,硬化領域の厚さが極 めて薄いため,面圧が高く,厳しい摩耗環境下では, 母材の柔らかさのために摩耗特性が改善しない問題 が生じており,厳しい摩耗環境・条件に耐えるある 程度の厚みを持った(ここでは,0.5 mm以上の硬化 領域を指す)硬化層の形成技術の確立が望まれてい る. 本研究では,PCSを用いた粉体複合同時焼結法に よって,ステンレス鋼表面に硬化領域を形成する方 法について検討した.事前に混合調整した SUS316L-WC,およびSUS316L-WC+ TiC 混合粉体を 硬化層形成用に,SUS316L粉体(単独)をマトリッ クス用に黒鉛型内に充填し,PCS法によって同時焼 結した焼結体の摩耗特性や組織等を評価した. 2.実験方法 2.1焼結実験 本実験では,ステンレス鋼表面の硬化方法として, WC粉体およびWC+TiC粉体のステンレス鋼粉体へ の混合による粒子分散強化を用いた.図1に示すよう な内径: 50 mm,外径: 90 mm,高さ: 60 mmの黒鉛製 ダイ中に,ベースメタルとしてSUS316L粉体100gを, 硬化領域として WC 粉または WC 粉+ TiC 粉と SUS316L粉とを所定量混合した35gの粉体の両方を 2層構造で充填した.硬化領域における強化粒子粉の 混合割合は20および40 wt.%の2種類,強化粒子粉の 種類は,WC 単独と70WC-30TiC( wt. %)混合粉の2種類 とし,事前にSUS316L粉体と混合後,アセトン溶液 を用いた遊星ボールミルで180分間湿式混合した. ここで,粉体の充填量100 g (ベースメタル)および 35 g(硬化領域)は,予備実験から焼結後の試験片 寸法がφ50×厚さ8.5 mm(硬化領域厚さ2.2 mm)に なるように決定した. 焼結はPCS装置(住友石炭工業㈱製SPS3.20MK4を用いて,上下の黒鉛製パンチで充填粉体を加圧し ながら行った.これまでの関連研究 3),4 および予備 実験結果を参考に,20MPaの加圧下で,1323 K×10 min (放射温度計による黒鉛ダイ表面温度)の条件で 行った.なお,昇温時間は1323 Kまで30 minとした. 2.2摩耗実験 摩耗特性の評価はピンオンディスク方式の摩耗試 験によって行った.焼結実験で得られた試験片上下 面の平面研削(硬化領域部分での研削後の表面粗さ は,Rz =0.5程度),並びに端部の切り落とし加工 によって,長さ40×幅40×厚さ8 mmの摩耗試験用デ ィスク試験片を作製した.100 Nの負荷荷重で,

パルス 通電焼結法 を用いた 材料加工技術 の開発パルス 通電焼結法 を用いた 材料加工技術 の開発-WC,WC+TiC 粉体添加 ・混合 による

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Page 1: パルス 通電焼結法 を用いた 材料加工技術 の開発パルス 通電焼結法 を用いた 材料加工技術 の開発-WC,WC+TiC 粉体添加 ・混合 による

パルス通電焼結法を用いた材料加工技術の開発

-WC,WC+TiC 粉体添加・混合によるステンレス鋼の表面硬化層形成-

材料環境部

玉井富士夫 円城寺隆志 川上雄士

パルス通電焼結法(PCS,以下PCS)を用いた粉体複合同時焼結法によるステンレス鋼の

表面硬化層形成について研究した.事前に混合調整したSUS316L-WC,およびSUS316L-WC +TiC混合粉体を硬化層形成用として,SUS316L 粉体(単独)をマトリックス用として黒

鉛型内に充填後,PCS 法によって同時焼結した.得られた焼結体の摩耗特性や組織等を

評価した結果,次のことが明らかとなった.(1)WCおよびTiC粉体の添加効果は顕著であ

り,20 wt% 程度以上の添加により,摩耗速度はSUS316Lのそれの1/10程度に減少する.

(2)今回の同時焼結条件下では,組織自己傾斜作用によって,添加のWCおよびTiC粉体は

より表層近くに凝集するため添加量が少ないにもかかわらず,摩耗特性への添加効果が顕

著となる.

1.はじめに

オーステナイト系ステンレス鋼はステンレス鋼の

中で最も耐食性に優れ,溶接等の加工性も良好であ

るため,汎用性の高い耐食材料として広く使用され

ている.しかし,硬さが低く耐摩耗性に劣るため,

耐食性と耐摩耗性が同時に要求される環境下での使

用,例えばポンプの羽根車,バルブ部品等,摺動部

や土砂摩耗用途での使用に課題が残っており,耐摩

耗性の向上を目的としたオーステナイト系ステンレ

ス鋼の硬化技術,特に表面硬化技術の確立が望まれ

ている.オーステナイト系ステンレス鋼の表面硬化

技術に関しては,TiCやTiN,TiAlN等の硬質薄膜を

表面に形成する(一般には10μm以下の厚さ)各種

プレーティング1),窒素イオンを注入してクロム窒

化硬化層を形成するイオン注入2)等を除いて,適当

な硬化方法はほとんど存在しない.これら耐摩耗性

を目的とする硬質層形成では,硬化領域の厚さが極

めて薄いため,面圧が高く,厳しい摩耗環境下では,

母材の柔らかさのために摩耗特性が改善しない問題

が生じており,厳しい摩耗環境・条件に耐えるある

程度の厚みを持った(ここでは,0.5 mm以上の硬化

領域を指す)硬化層の形成技術の確立が望まれてい

る.

本研究では,PCSを用いた粉体複合同時焼結法に

よって,ステンレス鋼表面に硬化領域を形成する方

法について検討した.事前に混合調整した

SUS316L-WC,およびSUS316L-WC+TiC混合粉体を

硬化層形成用に,SUS316L粉体(単独)をマトリッ

クス用に黒鉛型内に充填し,PCS法によって同時焼

結した焼結体の摩耗特性や組織等を評価した.

2.実験方法

2.1 焼結実験

本実験では,ステンレス鋼表面の硬化方法として,

WC粉体およびWC+TiC粉体のステンレス鋼粉体へ

の混合による粒子分散強化を用いた.図1に示すよう

な内径:50 mm,外径:90 mm,高さ:60 mmの黒鉛製

ダイ中に,ベースメタルとしてSUS316L粉体100gを,

硬化 領域とし て WC 粉また は WC 粉 +TiC 粉 と

SUS316L粉とを所定量混合した35gの粉体の両方を

2層構造で充填した.硬化領域における強化粒子粉の

混合割合は20および40 wt.%の2種類,強化粒子粉の

種類は,WC単独と70WC-30TiC( wt. %)混合粉の2種類

とし,事前にSUS316L粉体と混合後,アセトン溶液

を用いた遊星ボールミルで180分間湿式混合した.

ここで,粉体の充填量100 g(ベースメタル)および

35 g(硬化領域)は,予備実験から焼結後の試験片

寸法がφ50×厚さ8.5 mm(硬化領域厚さ2.2 mm)に

なるように決定した.

焼結はPCS装置(住友石炭工業㈱製SPS3.20MK4)を用いて,上下の黒鉛製パンチで充填粉体を加圧し

ながら行った.これまでの関連研究3),4)および予備

実験結果を参考に,20MPaの加圧下で,1323 K×10 min(放射温度計による黒鉛ダイ表面温度)の条件で

行った.なお,昇温時間は1323 Kまで30 minとした.

2.2 摩耗実験

摩耗特性の評価はピンオンディスク方式の摩耗試

験によって行った.焼結実験で得られた試験片上下

面の平面研削(硬化領域部分での研削後の表面粗さ

は,Rz = 0.5程度),並びに端部の切り落とし加工

によって,長さ40×幅40×厚さ8 mmの摩耗試験用デ

ィスク試験片を作製した.100 Nの負荷荷重で,

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SKH51相当(硬さ約HRC 65)のφ5.0 mmピン(押し

つけ面形状:平面)をこのディスク試験片に押しつ

け,ピンオンディスク摩耗試験を行った.ディスク

の回転数は100 rpm,回転中心からの距離(半径)は

15 mmであり,全摩耗試験時間は180 minを最大とし

た.表面粗さ計を用いた断面形状測定と,摩耗試験

前後の試験片重量変化から摩耗特性を評価した.な

お,摩耗試験条件はベースメタルであるSUS316Lを用いた同様の予備実験によって,決定した.ここで,

摩耗試験での限界条件として,最大摩耗量3.0 mm,

摩擦力70 N(焼付き判定条件)を与えた.図2にピン

オンディスク摩耗試験の実施状況を示す.

2.3 硬さ測定および組織観察

摩耗実験後,試験片中央付近(摩耗試験に供した

以外の部分)の硬さ測定,摩耗試験片の一部を切り

出した試料を用いた光学顕微鏡による断面の組織観

察およびEPMAによる元素分析を行った.硬さ測定

はロックウェル試験機を用いたHRAとして行い,断

面組織観察および元素分析では,特にWC等強化粒子

の分布・分散状態について検討した.

Graphite die

Graphite rod

SUS316L powder

WC,WC+TiC-SUS316L mixed

φ50φ90

60

図1 使用した黒鉛型と原料粉末充填の模式図

図2 ピンオンディスク摩耗試験(中央角板が試験片)

3.結果および考察

3.1 摩耗特性

表1 に摩耗試験の結果を摩耗減量速度に整理して,

ピンの重量減量速度と共に示す.WC並びにTiC 粉体添加の効果は顕著であり,SUS 316Lの場合の摩耗

速度が 0.145 mg/min であるのに対し,WC並びに

TiC 粉体を添加した試験片では,最も摩耗速度の速

いWC20 wt%添加でも 0.021 mg/min と1桁摩耗速度

が遅くなっている.そして, SUS316L-40wt.% (70WC-30TiC) 試験片では,摩耗速度は0.013 mg/minと最も遅くなっている.この摩耗特性の違いは,

図3 に示すように摩耗試験の断面形状にも顕著に現

れている.SUS 316Lの場合,深さ10 μm程度の溝が

明 瞭 に 刻 ま れ て い る が , SUS316L-40 wt.% (70WC-30TiC) 試験片では, 2μm程度のわずかな凹

部が確認されるだけである.ここで,表1の摩耗試験

結果を詳細に検討すると,WC粉体等硬質粒子の添加

量については,20 wt%より40 wt%と添加量の多い方

が摩耗特性が良くなる傾向があり,添加粒子の種類

については,WC単独添加よりも70WC-30TiC混合粉

添加の方が摩耗特性が良くなっている.

また,SKH51製押付けピンの重量減量については,

ディスク側試験片の摩耗量が減少するにつれて,摩

耗減量が多くなる傾向にあるが,WC単独添加より

も70WC-30TiC混合粉添加の方が,ピンの重量減量は

少ない.TiCの添加によって,ピン-ディスク間の

潤滑特性が改善された結果と考えられる.図4にピン

オンディスク摩耗試験後の試験片外観を示す.(a)

がSUS 316Lディスク試験片で,(b)がSUS316L-40 wt.% (70WC-30TiC)ディスク試験片である.図3での

断面形状の違いは外観からも明瞭に確認でき,SUS 316Lの場合,粗さの粗い溝状のピントレース痕が明

瞭 に 刻 ま れ て い る が , SUS316L-40 wt.% (70WC-30TiC) 試験片では,わずかなトレース痕が

確認できるのみである.

表1 ピンオンディスク摩耗試験結果

Material

SUS316L

SUS316L-20wt%WC

SUS316L-40wt%WC

SUS316L-20wt%(70WC-30TiC)

SUS316L-40wt%(70WC-30TiC)

Speed of weight loss (mg / min)

Weight loss speed of pin (mg / min)

0.145

0.021

0.015

0.019

0.0128

0.01

0.0162

0.02

0.0028

0.0133

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(a)SUS316Lデ

(b)SUS316L-40ディスク

図4 ピンオンディ

(a) SUS 316Lディスク試験片

w試

(b) SUS316L-40 wt.% (70WC-30TiC)ディスク 試験片

図3 摩耗試験後の表面粗さ計での断面形状測定結果

スク試験片外観

t.% (70WC-30TiC) 験片外観

ク試験後の試験片

3.2 組織および硬さ

3.2.1 光学顕微鏡による組織観察

図5に SUS316L-20wt.%WC試験片(図の(a)),

SUS316L-20wt.% (70WC-30TiC)試験片(図の(b)),

SUS316L-40wt.% WC 試 験 片 ( 図 の (c)) ,

SUS316L-40wt.% (70WC-30TiC) 試験片(図の(d))の

表面付近の断面観察結果を光学顕微鏡写真として,

一覧にして示す.硬化領域のトータル厚さは(a)の場

合が約1.2mm, (b)の場合が約2.2mm,(c)の場合が約

1.4mm,(d)の場合が約2.1mmである.これらは,試料

表面を平面研削加工した後の断面であるため,厚さ

は焼結したままのものよりも相対的に薄くなってい

る(研磨加工しろはおおよそ0.1~0.3mm).ここで,

WC単独添加とTiC複合添加を厚さの面から比較する

と,TiC複合添加の場合が,TiCの比重が小さいため

にWC単独添加の1.5倍程度に厚くなる傾向がある.硬

化領域を詳細に観察すると,表面近くに硬化粒子で

あるWCやTiCが50~100μmに渡って高濃度に凝集し

た領域が見られ,その傾向はWC単独添加の場合に顕

著となっている.この硬化粒子凝集領域の存在によ

って,硬化領域は一種の傾斜構造になっており(自

己傾斜構造),後述する表面硬さや硬化領域の密着

性に影響しているものと考えられる.この成因につ

いては詳細不明であるが,今回の焼結温度が1323K

(黒鉛型表面温度で)と,SUS316L単独焼結に必要な

温度1123Kよりも相当高温であり,SUS316L粉体単独

焼結の場合の溶融温度に極めて近かったことで,硬

化領域のSUS316Lが半溶融状態となり,下方へ沈降す

る傾向にあったと考えられる.

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(a) SUS316L-20wt.%WC

(b) SUS316L-20wt.% (70WC-30TiC)

3.2.2 硬さ特性

表2に各試験片の表面硬さ測定結果をHRAとして,

試験片裏面にあたるSUS316Lの硬さと共に,一覧にし

て示す.なお,表中には換算したビッカース硬さ(HV)

を併記している.表面硬さはSUS316L-20wt.%WC 試験片でHRA : 79.1(HV:620),最も硬いSUS316L -40wt.% (70WC-30TiC) 試験片でHRA:83.8(HV:820)

と,硬化粒子の配合割合に比べ,極めて高い傾向に

ある.このことは,前述の表面近くに存在するWCや

TiCの高濃度凝集領域形成と深く関係すると考えら

れる.

3.2.3 EPMAによる観察と分析

図6にSUS316L-40wt.% (70WC-30TiC) 試験片の

SUS316L/ SUS316L-40wt.% (70WC-30TiC)界面近くの

(c) SUS316L-40wt.%WC

(d) SUS316L-40wt.% (70WC-30TiC)

表2 表面硬さ測定結果

Layer (Base metal and hard phase )

SUS316L

SUS316L-20wt%WC

SUS316L-40wt%WC

SUS316L-20wt%(70WC-30TiC)

SUS316L-40wt%(70WC-30TiC)

Hardness HRA (HV)

62.9 (268)

79.1 (620)

81.4 (705)

81.4 (705)

83.8 (820)

図 5 各試験片の断面組織(硬化領域近傍)

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C

図6 EPMAによる

(70WC-30TiC

EPMAによる元素マ

料によらず比較的は

硬化領域側の2つに

短時間であったこと

素拡散はそれほど顕

る.また、硬化領域

と同様に、硬化粒子

散している様子がよ

である Fe や Cr がそれらの粒子間に存在している.遊星

ボールミルによる混合が十分に行われていたと考えられC

Cr Cr

SUS316L/SUS316) 界面近くの面分

ッピング結果を示

っきりしており,

分かれている.焼結

から,TiCやWCの著ではなかった結

では,3.2.1節の光

であるWCとTiCが比

く分かり、SUS316L

Fe

Fe

Compo

る.

4.おわりに

SUS316L-WC,およびSUS316L-WC+TiC混合粉体

を,予め黒鉛型内に充填したSUS316L粉体の上部に

充填した後,パルス通電焼結法を用いた粉体複合同

時焼結法によって,同時焼結した.焼結後,硬化領

域の摩耗特性や組織等を評価した.得られた結果を

まとめると以下のとおりである.

(1) WCおよびTiC粉体の添加効果は顕著であり,

Compo

TiTi WW

L-40wt.% 析結果

す.界面は試

SUS316L側と

時間が比較的

分解および元

果と考えられ

学顕微鏡組織

較的均一に分

マトリックス成分

20wt%程度以上の添加により,摩耗速度はSUS316Lのそれの1/10程度に減少する.PCS法による粉体同時

焼結法は,有効な表面硬化方法が少ないオーステナ

イト系ステンレス鋼の表面硬化方法に成り得る.

(2) 今回の同時焼結条件下では,組織自己傾斜作用

によって,添加のWCおよびTiC粉体はより表層近く

に凝集するため,添加量が少ないにもかかわらず,

摩耗特性への添加効果が顕著となる.

(3) 硬化領域では,WC,TiCの硬化粒子が比較的均一

に分散しており,また,硬化領域/SUS316L界面は比

較的明瞭である.

参考文献

1) I.Itoh, et al. : Surface and Coatings Technology, 39/40 (1989), p.531.

2) 金属表面技術,39 (1988).3) 玉井,円城寺,佐賀県工業技術センター研究報告

書 2004 No.13,pp.32-34(2005-9).4) 玉井,円城寺,川上,佐賀県工業技術センター研

究報告書 2004 No.13,pp.35-39(2005-9).

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