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[講  師] [講演要旨] 高橋 義人 京都大学名誉教授、平安女学院大学特任教授 1945年栃木県生まれ。国際ゲーテ協会元理事、国際異文化交流独文学会前副会長。主著に『悪魔の神話学』(岩波書店)、『形態と象徴』 (岩波書店)、『ドイツ人のこころ』(岩波新書)、『魔女とヨーロッパ』(岩波書店)、『グノーシス 異端と近代』(共著、岩波書店)、『グリム童 話の世界』(岩波新書)、『10代のための古典名句名言』(共著、岩波ジュニア文庫)、ゲーテ『色彩論 完訳版』(共訳、工作舎)などがある。 『豊饒の海』最終巻に、京都醍醐寺近くの国道沿いの自動車捨場の場面が出てくる。この場面は日本文化の死の象徴になっている。日本文化 が死に絶えてゆくのをどうにかして救いたい。そのために三島由紀夫は多くを書き、多くを戦った。『豊饒の海』に日本文化が滅びゆく近代史 が描かれているとすれば、『文化防衛論』には瀕死の日本文化を救おうとする三島の命がけの治療法が記されている。今日、日本人はフラグ メントと化している。それは、今の日本人に時間的連続性と空間的連続性が断たれているからである。満開の桜の花を見て、紀貫之や西行の 和歌を思い浮かべるとき、過去と現在は時間的に連続する。花見先で知人に出会い、今日はいい花見日和ですねと談笑すれば、空間的連続 性が生まれ、人は幸せになる。花と同様、文化は人に時間的連続性と空間的連続性を与えてくれる。文化は贅沢品ではなく、人間の生活にと って本質的なものである。そうした文化の重要性が分からないばかりか、それを弾圧しようとする人たちが国の内外にいる。それに対しては 戦わなければならない。その行為を三島は「刀」と呼び、「菊と刀」という文武両道に日本人の精神の基本構造を見いだした。さらには、和辻 哲郎、津田左右吉に沿いつつ、彼独自の象徴天皇制論を展開した。三島の死後、日本は「菊と刀」の国から「菊と金」の国に向う道を加速させ ている。そんな病める日本への処方箋ははたしてあるのだろうか。三島由紀夫とみなさまと一緒に考えたい。 [参考図書] ご講演の内容の理解を促進するために次の図書が有益です。 三島由紀夫 『文化防衛論』ちくま文庫 三島由紀夫、空っぽになってしまった日本を衝く 思想・文学 〒619-0225 京都府木津川市木津川台9丁目3番地 2020年7月21日(火)18:00~20:00 2020年7月20日(月) 国際高等研究所コミュニティホール 2,000円 お釣りのないようご協力ください) ホームページからお申し込み下さい https://www.iias.or.jp/communication/goethe 25名 (先着順) 80 ゲーテの会事務局 Tel : 0774-73-4000  e-mail : [email protected] 主催:公益財団法人国際高等研究所 ゲーテ 満月の夜開くけいはんな哲学カフェ 日 時 会 場 参加費 定 員 締 切 申し込み 「ゲーテの会」開催にあたり… ・当面は飲食のご提供を控えさせていただきます ・講師および参加者同士の懇談、交流をお控えいただきますようお願いいたします ・申込時に氏名と連絡先のご提供をお願いいたします ・周辺地域での感染拡大の可能性が報告された場合は開催を中止する場合がありますのでご了承ください お問い合わせ 新型コロナウイルス 感染拡大防止のため 内容を変更して 開催します 日本と世界の歴史の転換点で、転轍機 を動かした「先覚者」の事跡をたどる 「新しい文明」の萌芽を探る

ゲーテ 「新しい文明」の萌芽を探る...[講 師] [講演要旨] 高橋 義人京都大学名誉教授、平安女学院大学特任教授 1945年栃木県生まれ。国際ゲーテ協会元理事、国際異文化交流独文学会前副会長。主著に『悪魔の神話学』(岩波書店)、『形態と

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Page 1: ゲーテ 「新しい文明」の萌芽を探る...[講 師] [講演要旨] 高橋 義人京都大学名誉教授、平安女学院大学特任教授 1945年栃木県生まれ。国際ゲーテ協会元理事、国際異文化交流独文学会前副会長。主著に『悪魔の神話学』(岩波書店)、『形態と

[講  師]

[講演要旨]

高橋 義人 京都大学名誉教授、平安女学院大学特任教授

1945年栃木県生まれ。国際ゲーテ協会元理事、国際異文化交流独文学会前副会長。主著に『悪魔の神話学』(岩波書店)、『形態と象徴』(岩波書店)、『ドイツ人のこころ』(岩波新書)、『魔女とヨーロッパ』(岩波書店)、『グノーシス 異端と近代』(共著、岩波書店)、『グリム童話の世界』(岩波新書)、『10代のための古典名句名言』(共著、岩波ジュニア文庫)、ゲーテ『色彩論 完訳版』(共訳、工作舎)などがある。

『豊饒の海』最終巻に、京都醍醐寺近くの国道沿いの自動車捨場の場面が出てくる。この場面は日本文化の死の象徴になっている。日本文化が死に絶えてゆくのをどうにかして救いたい。そのために三島由紀夫は多くを書き、多くを戦った。『豊饒の海』に日本文化が滅びゆく近代史が描かれているとすれば、『文化防衛論』には瀕死の日本文化を救おうとする三島の命がけの治療法が記されている。今日、日本人はフラグメントと化している。それは、今の日本人に時間的連続性と空間的連続性が断たれているからである。満開の桜の花を見て、紀貫之や西行の和歌を思い浮かべるとき、過去と現在は時間的に連続する。花見先で知人に出会い、今日はいい花見日和ですねと談笑すれば、空間的連続性が生まれ、人は幸せになる。花と同様、文化は人に時間的連続性と空間的連続性を与えてくれる。文化は贅沢品ではなく、人間の生活にとって本質的なものである。そうした文化の重要性が分からないばかりか、それを弾圧しようとする人たちが国の内外にいる。それに対しては戦わなければならない。その行為を三島は「刀」と呼び、「菊と刀」という文武両道に日本人の精神の基本構造を見いだした。さらには、和辻哲郎、津田左右吉に沿いつつ、彼独自の象徴天皇制論を展開した。三島の死後、日本は「菊と刀」の国から「菊と金」の国に向う道を加速させている。そんな病める日本への処方箋ははたしてあるのだろうか。三島由紀夫とみなさまと一緒に考えたい。

[参考図書]ご講演の内容の理解を促進するために次の図書が有益です。

三島由紀夫 『文化防衛論』ちくま文庫

三島由紀夫、空っぽになってしまった日本を衝く

思想・文学

〒619-0225 京都府木津川市木津川台9丁目3番地

2020年7月21日(火) 18:00~20:00

2020年7月20日(月)

国際高等研究所コミュニティホール

2,000円(お釣りのないようご協力ください)ホームページからお申し込み下さいhttps://www.iias.or.jp/communication/goethe

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第 80 回

ゲーテの会事務局Tel : 0774-73-4000  e-mail : [email protected]主催:公益財団法人国際高等研究所

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「ゲーテの会」開催にあたり…・当面は飲食のご提供を控えさせていただきます・講師および参加者同士の懇談、交流をお控えいただきますようお願いいたします・申込時に氏名と連絡先のご提供をお願いいたします・周辺地域での感染拡大の可能性が報告された場合は開催を中止する場合がありますのでご了承ください

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「新しい文明」の萌芽を探る

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けいはんな学研都市の建設理念は、「従来の近代科学技術文明を乗り越え、新たな地球文明を創造するために、西欧が生み出した文明の成果と自らに固有の東洋的文化を統合する」ことにあります。研究所の庭園にあるゲーテの胸像はその理念のシンボルです。満月の夜は国際高等研究所で、人類の未来と幸福、そしてけいはんな学研都市について考えてみませんか。