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ナノ粒子を用いた透明遮へい材の開発研究 (委託研究) -平成 30 年度 英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業- Research and Development of Transparent Materials for Radiation Shield using Nanoparticles (Contract Research) -FY2018 Center of World Intelligence Project for Nuclear Science/Technology and Human Resource Development- 日本原子力研究開発機構 March 2020 Japan Atomic Energy Agency 廃炉国際共同研究センター 九州大学 JAEA-Review 2019-039 DOI:10.11484/jaea-review-2019-039 福島研究開発部門 福島研究開発拠点 Fukushima Research Institute Sector of Fukushima Research and Development Collaborative Laboratories for Advanced Decommissioning Science Kyushu University

ナノ粒子を用いた透明遮へい材の開発研究 (委託研究) - JAEAJAEA-Review 2019-039 - 1 - 1. 英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業の概要

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  • ナノ粒子を用いた透明遮へい材の開発研究(委託研究)

    -平成30年度 英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業-Research and Development of Transparent Materials

    for Radiation Shield using Nanoparticles

    (Contract Research)

    -FY2018 Center of World Intelligence Project for Nuclear Science/Technology

    and Human Resource Development-

    日本原子力研究開発機構

    March 2020

    Japan Atomic Energy Agency

    廃炉国際共同研究センター九州大学

    JAEA-Review

    2019-039

    DOI:10.11484/jaea-review-2019-039

    福島研究開発部門福島研究開発拠点

    Fukushima Research InstituteSector of Fukushima Research and Development

    Collaborative Laboratories for Advanced Decommissioning ScienceKyushu University

  • 本レポートは国立研究開発法人日本原子力研究開発機構が不定期に発行する成果報告書です。

    本レポートの入手並びに著作権利用に関するお問い合わせは、下記あてにお問い合わせ下さい。

    なお、本レポートの全文は日本原子力研究開発機構ホームページ(https://www.jaea.go.jp)より発信されています。

    This report is issued irregularly by Japan Atomic Energy Agency.Inquiries about availability and/or copyright of this report should be addressed toInstitutional Repository Section,Intellectual Resources Management and R&D Collaboration Department,Japan Atomic Energy Agency.2-4 Shirakata, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki-ken 319-1195 JapanTel +81-29-282-6387, Fax +81-29-282-5920, E-mail:[email protected]

    © Japan Atomic Energy Agency, 2020

    国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 研究連携成果展開部 研究成果管理課

    〒319-1195 茨城県那珂郡東海村大字白方 2 番地4電話 029-282-6387, Fax 029-282-5920, E-mail:[email protected]

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    JAEA-Review 2019-039

    ナノ粒子を用いた透明遮へい材の開発研究(委託研究)

    - 平成 30 年度 英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業 -

    日本原子力研究開発機構

    福島研究開発部門 福島研究開発拠点

    廃炉国際共同研究センター

    九州大学

    (2019 年 11 月 25 日受理)

    日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉国際共同研究センター(CLADS)では、平成 30 年度 英

    知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(以下、「本事業」という)を実施している。本

    事業は、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の廃炉等を始めとした原子力

    分野の課題解決に貢献するため、国内外の英知を結集し、様々な分野の知見や経験を、従前の機

    関や分野の壁を越えて緊密に融合・連携させた基礎的・基盤的研究及び人材育成を推進すること

    を目的としている。平成 30 年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省から JAEA に移行する

    ことで、JAEA とアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成を

    より安定的かつ継続的に実施する体制を構築した。

    本研究は、研究課題のうち、平成 30 年度「ナノ粒子を用いた透明遮へい材の開発研究」につい

    て取りまとめたものである。

    本研究は、燃料デブリ取り出しや分析における作業員の被ばく低減や遠隔カメラの光学系・電

    子系の劣化低減を目的として、遮へい材料をナノ粒子化してエポキシ樹脂に分散・固化すること

    により透明な遮へい体を開発する。B4C や W をナノ粒子化して中性子とガンマ線を同時に遮へい

    し、中性子から生じる二次ガンマ線も抑制する遮へい体を開発する。

    本報告書は、日本原子力研究開発機構の英知事業における委託業務として、九州大学が実施し

    た成果に関するものである。

    廃炉国際共同研究センター:〒979-1151 福島県双葉郡富岡町大字本岡字王塚 790-1

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    Research and Development of Transparent Materials for Radiation Shield using Nanoparticles (Contract Research)

    - FY2018 Center of World Intelligence Project for Nuclear Science/Technology and Human Resource Development -

    Collaborative Laboratories for Advanced Decommissioning Science

    Kyushu University

    Fukushima Research Institute, Sector of Fukushima Research and Development

    Japan Atomic Energy Agency Tomioka-machi, Futaba-gun, Fukushima-ken

    (Received November 25, 2019)

    The Collaborative Laboratories for Advanced Decommissioning Science (CLADS), Japan Atomic

    Energy Agency (JAEA), had been conducting the Center of World Intelligence Project for Nuclear Science/Technology and Human Resource Development (hereafter referred to “the Project”) in FY2018. The Project aims to contribute to solving problems in nuclear energy field represented by the decommissioning of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station, Tokyo Electric Power Company Holdings, Inc. For this purpose, intelligence was collected from all over the world, and basic research and human resource development were promoted by closely integrating/collaborating knowledge and experiences in various fields beyond the barrier of conventional organizations and research fields. The sponsor of the Project was moved from the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology to JAEA since the newly adopted proposals in FY2018. On this occasion, JAEA constructed a new research system where JAEA-academia collaboration is reinforced and medium-to-long term research/development and human resource development contributing to the decommissioning are stably and consecutively implemented.

    Among the adopted proposals in FY2018, this report summarizes the research results of the “Research and Development of Transparent Materials for Radiation Shield using Nanoparticles”.

    The present study aims to reduce radiation exposure of workers in debris retrieval/analysis and reduce deterioration of optical and electronic systems in remote cameras. For these purposes, we develop transparent radiation shield by making the shield materials into nanoparticles, and dispersing/solidifying them in epoxy resin. By making B4C and W into nanoparticles, we will also develop a radiation shield that shields both neutrons and gamma-rays, and also suppresses secondary gamma-rays produced from neutrons. Keywords: Transparent Radiation Shield, Neutrons Shielding, Gamma-ray Shielding, Epoxy Resin, Boride Nanoparticle, Heavy Metal Nanoparticle, Thermal Plasma, Plasma Processing

    This work was performed by Kyushu University under contract with Japan Atomic Energy Agency.

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    目次

    1 英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業の概要 ........................................................... 1

    2 平成 30 年度採択課題 ............................................................................................................................. 2

    付録 成果報告書 ......................................................................................................................................... 5

    Contents

    1. Outline of Center of World Intelligence Project for Nuclear Science/Technology and Human Resource

    Development .......................................................................................................................................... 1

    2. Accepted Proposal in FY2018 .................................................................................................................. 2

    Appendix Result Report ............................................................................................................................... 5

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    1. 英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業の概要 文部科学省では、「東京電力(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等研究開発の加速プラン(平

    成 26 年 6 月文部科学省)」等を踏まえ、平成 27 年度から「英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業」(以下、「本事業」という。)を立ち上げ、「戦略的原子力共同研究プログラム」、

    「廃炉加速化研究プログラム」及び「廃止措置研究・人材育成等強化プログラム」を推進してい

    る。 具体的には、国内外の英知を結集し、国内の原子力分野のみならず様々な分野の知見や経験を、

    機関や分野の壁を越え、国際共同研究も含めて緊密に融合・連携させることにより、原子力の課

    題解決に資する基礎的・基盤的研究や産学が連携した人材育成の取組を推進している。 一方、日本原子力研究開発機構(以下、「JAEA」という。)では、平成 27 年に廃炉国際共同研究センター(以下、「CLADS」という。)を組織し、「東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」等を踏まえ、東京電力ホールディング

    ス(株)福島第一原子力発電所廃炉(以下、「1F 廃炉」という。)に係る研究開発を進めている。 また、平成 29 年 4 月に CLADS の中核拠点である「国際共同研究棟」の運用を開始したことを踏まえ、今後は CLADS を中核に、廃炉の現場ニーズを踏まえた国内外の大学、研究機関等との基礎的・基盤的な研究開発及び人材育成の取組を推進することにより、廃炉研究拠点の形成を

    目指すことが期待されている。 このため、本事業では平成 30 年度の新規採択課題から実施主体を文部科学省から JAEA に移行することで、JAEA とアカデミアとの連携を強化し、廃炉に資する中長期的な研究開発・人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築することとし、従来のプログラムを、①共通

    基盤型原子力研究プログラム、②課題解決型廃炉研究プログラム、③国際協力型廃炉研究プログ

    ラム、④研究人材育成型廃炉研究プログラム(平成 31 年度より新設)に再編した。

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    2. 平成 30 年度採択課題 平成 30 年度は「共通基盤型原子力研究プログラム」、「課題解決型廃炉研究プログラム」、「国際協力型廃炉研究プログラム」において、研究課題の採択を決定した。公募の概要は以下のとおり

    である。 · 公募期間:平成 30 年 5 月 22 日(火)~6 月 22 日(金)

    平成 30 年 5 月 22 日(火)~7 月 12 日(木)※日英共同研究のみ · 提案数:

    共通基盤型原子力研究プログラム 49 課題(若手研究 14 課題、一般研究 35 課題) 課題解決型廃炉研究プログラム 28 課題 国際協力型廃炉研究プログラム 5 課題

    これらの提案について、外部有識者から構成される審査委員会において、書面審査及び面接審

    査、日英共同研究については二国間の合同審査を実施し、採択候補課題を選定し、その後、PD(プログラムディレクター)・PO(プログラムオフィサー)会議での審議を経て、表 2-1 に掲げる 19の採択課題を決定した。

    表 2-1 平成 30 年度採択課題一覧(1/3) 共通基盤型原子力研究プログラム 【若手研究】

    課題名 研究代表者 所属機関

    被災地探査や原子力発電所建屋内情報収集のための

    半自律ロボットを用いたセマンティックサーベイマ

    ップ生成システムの開発 河野 仁 東京工芸大学

    汚染土壌の減容を目的とした重液分離による放射性

    微粒子回収法の高度化 山﨑 信哉 筑波大学

    ラドンを代表としたアルファ核種の吸入による内部

    被ばくの横断的生体影響評価 片岡 隆浩 岡山大学

    炉心溶融物の粘性及び表面張力同時測定技術の開発 大石 佑治 大阪大学

    iPS 細胞由来組織細胞における放射線依存的突然変異計測系の確立

    島田 幹男 東京工業大学

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    表 2-1 平成 30 年度採択課題一覧(2/3)

    課題名 研究代表者 所属機関

    レーザー共鳴イオン化を用いた同位体存在度の低い

    ストロンチウム 90 の迅速分析技術開発 岩田 圭弘 東京大学

    【一般研究】

    課題名 研究代表者 所属機関

    放射性核種の長期安定化を指向した使用済みゼオラ

    イト焼結固化技術の開発 新井 剛 芝浦工業大学

    燃料デブリ取り出しを容易にするゲル状充填材の開

    発 牟田 浩明 大阪大学

    レーザー蛍光法を用いた燃料デブリ変質相の同定 斉藤 拓巳 東京大学

    過酷炉心放射線環境における線量測定装置の開発 岡本 保 木更津工業高等

    専門学校

    レーザー加工により発生する微粒子の解析と核種同

    定手法の開発 長谷川 秀一 東京大学

    課題解決型廃炉研究プログラム

    課題名 研究代表者 所属機関

    合金相を含む燃料デブリの安定性評価のための基盤

    研究 桐島 陽 東北大学

    ガンマ線画像スペクトル分光法による高放射線場環

    境の画像化による定量的放射能分布解析法 谷森 達 京都大学

    燃料デブリ取出し時における放射性核種飛散防止技

    術の開発 鈴木 俊一 東京大学

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    表 2-1 平成 30 年度採択課題一覧(3/3)

    課題名 研究代表者 所属機関

    アルファダストの検出を目指した超高位置分解能イ

    メージング装置の開発 黒澤 俊介 東北大学

    ナノ粒子を用いた透明遮へい材の開発研究 渡邉 隆行 九州大学

    先端計測技術の融合で実現する高耐放射線燃料デブ

    リセンサーの研究開発 萩原 雅之

    大学共同利用機

    関法人高エネル

    ギー加速器研究

    機構

    国際協力型廃炉研究プログラム(日英共同研究)

    課題名 研究代表者 所属機関

    放射性微粒子の基礎物性解明による廃炉作業リスク

    低減への貢献 五十嵐 康人 茨城大学

    放射線耐性の高い薄型 SiC 中性子検出器の開発 三澤 毅 京都大学

    国際協力型廃炉研究プログラム(日仏共同研究)

    課題名 研究代表者 所属機関

    採択なし - -

    本報告書は上記のうち、課題解決型廃炉研究プログラム「ナノ粒子を用いた透明遮へい材の開

    発研究」について記したものである。 研究成果を取りまとめた成果報告書を付録として添付する。

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    付録

    成果報告書

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    平成 30 年度

    日本原子力研究開発機構

    英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業

    ナノ粒子を用いた透明遮へい材の開発研究

    (契約番号 30I122)

    成果報告書

    平成 31 年 3 月

    国立大学法人九州大学

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    本報告書は、国立研究開発法人日本原子力研究

    開発機構の「英知を結集した原子力科学技術・人

    材育成推進事業」による委託業務として、国立

    大学法人九州大学が実施した平成 30 年度「ナノ

    粒子を用いた透明遮へい材の開発研究」の成果

    を取りまとめたものです。

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    目次

    概略 ········································································ ⅶ

    1 はじめに

    1.1 研究の背景 ···························································· 1.1-1

    1.2 解決すべき課題と研究の目的 ············································ 1.2-1

    1.3 研究の新規性 ·························································· 1.3-1

    2 業務計画

    2.1 全体計画 ······························································ 2.1-1

    2.2 平成 30 年度の成果の目標及び業務の実施方法 ····························· 2.2-1

    3 平成 30 年度の実施内容及び成果

    3.1 熱プラズマによるホウ化物・重金属ナノ粒子の合成に関する研究 ············ 3.1-1

    3.1.1 ナノ粒子の合成実験 ················································ 3.1-1

    3.1.2 凝集性の制御 ······················································ 3.1-6

    3.2 ナノ粒子を用いた透明遮へい材の製作方法に関する検討 ···················· 3.2-1

    3.2.1 均質な遮へい体の製造方法の検討(再委託先:三幸) ·················· 3.2-1

    3.3 ナノ粒子を用いた透明遮へい材の性能評価に関する研究 ···················· 3.3-1

    3.3.1 遮へい性能の解析評価(再委託先:NUCLTECH) ························ 3.3-1

    3.3.2 遮へい実験用供試体の製作(再委託先:RSC) ························· 3.3-6

    3.3.3 遮へい試験(再委託先:NUCLTECH) ·································· 3.3-8

    3.4 研究推進 ······························································ 3.4-1

    4 結言 ····································································· 4-1

    表一覧

    表 3.1-1 高周波熱プラズマを用いたナノ粒子合成実験条件 ···················· 3.1-11

    表 3.1-2 窒化ホウ素ナノ粒子を用いたビーズミル処理の予備的検討における実験条件

    ································································ 3.1-11

    表 3.1-3 窒化ホウ素ナノ粒子を用いたシンキー製ビーズミル処理における実験条件

    分散剤:PVP ····················································· 3.1-12

    表 3.1-4 窒化ホウ素ナノ粒子を用いたシンキー製ビーズミル処理における実験条件

    分散剤:PEG ····················································· 3.1-12

    表 3.1-5 窒化ホウ素ナノ粒子を用いたシンキー製ビーズミル処理における実験条件

    分散剤:A-6114 ·················································· 3.1-13

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    表 3.1-6 窒化ホウ素ナノ粒子を用いたシンキー製ビーズミル処理における実験条件

    分散剤:表中に記載 ·············································· 3.1-13

    表 3.1-7 窒化ホウ素ナノ粒子を用いたアシザワ・ファインテック社製ビーズミル処理

    における実験条件 分散剤:PVP ·································· 3.1-14

    表 3.1-8 ホウ素-タングステン系ナノ粒子を用いたシンキー製ビーズミル処理の実験条件

    ································································ 3.1-14

    表 3.2-1 ナノ粒子分散エタノールを用いた成形体の作製及び評価 ·············· 3.2-5

    表 3.3-1 遮へい解析の線源として想定した燃料デブリの条件 ·················· 3.3-13

    表 3.3-2 燃料デブリ収納缶を模擬した解析モデルで用いた材質組成 ············ 3.3-13

    表 3.3-3 燃料デブリの中性子源強度 ········································ 3.3-14

    表 3.3-4 燃料デブリからのガンマ線エネルギースペクトル ···················· 3.3-14

    表 3.3-5 燃料ウラン 10 kg 相当の中性子源強度 ······························ 3.3-15

    表 3.3-6 燃料デブリ中のアクチノイド核種からのガンマ線エネルギースペクトル

    ································································ 3.3-15

    表 3.3-7 遮へい解析に用いた中性子線源スペクトルと線量換算係数 ············ 3.3-16

    表 3.3-8 遮へい解析に用いたガンマ線線量換算係数 ·························· 3.3-18

    表 3.3-9 各種の透明遮へい材の原子個数密度組成 ···························· 3.3-19

    表 3.3-10 燃料デブリ収納缶からの中性子に対する各遮へい材の 1/10 価層 ······· 3.3-19

    表 3.3-11 370 GBq の Am-Be を用いる施設での遮へい窓に必要な透明遮へい体の厚さ

    とホウ素化合物添加量との関係 ···································· 3.3-20

    表 3.3-12 主な重金属化合物の屈折率と消衰係数及び 60Co ガンマ線に対する 1/10 価層

    ································································ 3.3-20

    表 3.3-13 燃料デブリ収納缶からの中性子・ガンマ線を管理区域境界の線量率

    (2.5 µSv/h)まで遮へいするのに必要な透明遮へい材の厚さ

    ································································ 3.3-21

    表 3.3-14 燃料デブリ 10 kgU 相当のアクチノイド核種を扱うセルで中性子・ガンマ線

    を管理区域境界の線量率(2.5 µSv/h)まで遮へいするのに必要な

    透明遮へい材の厚さ

    ································································ 3.3-21

    図一覧

    図 2.1-1 業務の全体計画図 ··············································· 2.1-1

    図 3.1-1 高周波熱プラズマ発生装置の概略図 ································ 3.1-15

    図 3.1-2 プラズマトーチの概略図 ·········································· 3.1-15

    図 3.1-3 B—Mo 系における生成物の XRD 分析結果 ······························ 3.1-15

    図 3.1-4 B:Mo=2:1 における生成物の(A)実験直後と(B)実験後半年経過後における

    XRD 分析結果 ····················································· 3.1-16

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    図 3.1-5 XRD より算出した積分強度比と原料組成比の関係 ····················· 3.1-17

    図 3.1-6 XRD より算出したホウ化モリブデンの積分強度比と原料組成比の関係 ··· 3.1-17

    図 3.1-7 TEM 画像及び粒径分布(a)B:Mo=6:1、(b)B:Mo=4:1 ····················· 3.1-17

    図 3.1-8 TEM 画像及び粒径分布(c)B:Mo=2.5:1、(d)B:Mo=2:1 ··················· 3.1-18

    図 3.1-9 TEM 画像及び粒径分布(e)B:Mo=1:1、(f)B:Mo=0.5:1 ··················· 3.1-18

    図 3.1-10 B-Mo 系における原料組成比と平均粒径の関係 ························ 3.1-19

    図 3.1-11 B-W 系における生成物の XRD 分析結果 ······························· 3.1-19

    図 3.1-12 XRD より算出した積分強度比と原料組成比の関係 ····················· 3.1-20

    図 3.1-13 XRD より算出したホウ化タングステンの積分強度比と原料組成比の関係 · 3.1-20

    図 3.1-14 TEM 画像及び粒径分布(a)B:W=6:1、(b)B:W=4:1 ······················· 3.1-21

    図 3.1-15 TEM 画像及び粒径分布(c)B:W=2.5:1、(d)B:W=2:1 ····················· 3.1-21

    図 3.1-16 TEM 画像及び粒径分布(e)B:W=1:1、(f)B:W=0.5:1 ····················· 3.1-22

    図 3.1-17 B-W 系における原料組成比と平均粒径の関係 ························· 3.1-22

    図 3.1-18 B-C 系における生成物の XRD 分析結果 ······························· 3.1-23

    図 3.1-19 XRD より算出した炭化ホウ素の積分強度比と原料組成比の関係 ········· 3.1-23

    図 3.1-20 TEM 画像及び粒径分布(a)B:C=19:1、(b)B:C=4:1、(c)B:C=2:1 ·········· 3.1-24

    図 3.1-21 B-C 系における平均粒径と原料組成比の関係 ························· 3.1-24

    図 3.1-22 透明遮へい体の作製・評価方法 ···································· 3.1-25

    図 3.1-23 超音波分散装置の概要 ············································ 3.1-25

    図 3.1-24 h-BN ナノ粒子の粒径分布 ·········································· 3.1-26

    図 3.1-25 分散剤として PVP を用いたビーズミル分散処理後の h-BN 液中粒径分布

    h-BN 濃度:0.1wt%、ビーズ粒径:50 µm ····························· 3.1-26

    図 3.1-26 分散剤として PVP を用いたビーズミル分散処理後の可視光透過率

    h-BN 濃度:0.1wt%、ビーズ粒径:50 µm ····························· 3.1-26

    図 3.1-27 550 nm における透過率と PVP 濃度の関係

    h-BN 濃度:0.1wt%、ビーズ粒径:50 µm ····························· 3.1-27

    図 3.1-28 550 nm における透過率の経時変化

    分散剤:PVP、h-BN 濃度:0.1wt%、ビーズ粒径:30 µm ················· 3.1-27

    図 3.1-29 550 nm における透過率と PEG 濃度の関係

    h-BN 濃度:0.1wt%、ビーズ粒径:50 µm ····························· 3.1-27

    図 3.1-30 550 nm における透過率とポリアクリル酸(A-6114)濃度の関係

    h-BN 濃度:0.1wt%、ビーズ粒径:50 µm ····························· 3.1-27

    図 3.1-31 アシザワ実験#1 条件における処理後分散液の写真。10mm 角分光光度計用セル中

    (a)5 min、(b)15 min、(c)60 min、(d)180 min、(e)360 min ·········· 3.1-28

    図 3.1-32 ビーズミル分散処理後の h-BN 液中粒径分布

    h-BN 濃度:0.2wt%、分散剤:PVP、分散剤濃度:100wt%、ビーズ粒径:50 µm

    アシザワ実験#1 に対応 ············································ 3.1-28

    図 3.1-33 メジアン径 D50、D10、及び D90 の経時変化

    h-BN 濃度:0.2wt%、分散剤:PVP、分散剤濃度:100wt%、ビーズ粒径:50 µm

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    アシザワ実験#1 に対応 ············································ 3.1-28

    図 3.1-34 ビーズミル分散処理後分散液の分光透過率

    h-BN 濃度:0.2wt%、分散剤:PVP、分散剤濃度:100wt%、溶媒:エタノール、

    ビーズ粒径:50 µm。アシザワ実験#1 に対応 ························· 3.1-28

    図 3.1-35 550nm における透過率の経時変化

    h-BN 濃度:0.2wt%、分散剤:PVP、分散剤濃度:100wt%、溶媒:エタノール、

    ビーズ粒径:50 µm。アシザワ実験#1 に対応 ························· 3.1-28

    図 3.1-36 アシザワ実験#5 条件における処理後分散液の写真。10mm 角分光光度計用セル中。

    (a)超音波のみ、(b)60 min、(c)180 min、(d)360 min、(e)450 min ···· 3.1-29

    図 3.1-37 ビーズミル分散処理後の h-BN 液中粒径分布

    h-BN 濃度:0.2wt%、分散剤:PVP、分散剤濃度:100wt%、ビーズ粒径:30 µm

    アシザワ実験#5 に対応。アシザワ実験#4 で前処理後のサンプルを使用 · 3.1-29

    図 3.1-38 メジアン径 D50、D10、及び D90 の経時変化

    h-BN 濃度:0.2wt%、分散剤:PVP、分散剤濃度:100wt%、ビーズ粒径:30 µm

    アシザワ実験#5 に対応。アシザワ実験#4 で前処理後のサンプルを使用 · 3.1-29

    図 3.1-39 ビーズミル分散処理後分散液の分光放射率

    h-BN 濃度:0.2wt%、分散剤:PVP、分散剤濃度:100wt%、ビーズ粒径:30 µm

    アシザワ実験#5 に対応。アシザワ実験#4 で前処理後のサンプルを使用 · 3.1-29

    図 3.1-40 550 nm における透過率の経時変化

    h-BN 濃度:0.2wt%、分散剤:PVP、分散剤濃度:100wt%、ビーズ粒径:30 µm

    アシザワ実験#5 に対応。アシザワ実験#4 で前処理後のサンプルを使用 · 3.1-29

    図 3.1-41 ビーズミル分散処理後分散液の分光放射率の h-BN 濃度依存性

    分散剤:PVP、分散剤濃度:100wt%、ビーズ粒径:30 µm

    アシザワ実験#5 に対応。アシザワ実験#4 で前処理後のサンプルを使用 · 3.1-30

    図 3.1-42 550 nm における透過率の h-BN 濃度依存性

    分散剤:PVP、分散剤濃度:100wt%、ビーズ粒径:30 µm

    アシザワ実験#5 に対応。アシザワ実験#4 で前処理後のサンプルを使用 · 3.1-30

    図 3.1-43 シンキー製ビーズミル実験における処理後分散液の写真

    10 mm 角分光光度計用セル中。(a)h-BN 濃度 0.1wt%、PVP 濃度 70wt%、

    (b) h-BN 濃度 0.2wt%、PVP 濃度 70wt%、(c) h-BN 濃度 0.1wt%、PVP 濃度 140wt%、

    (d) h-BN 濃度 0.2wt%、PVP 濃度 140wt% ····························· 3.1-30

    図 3.1-44 ビーズミル分散処理後分散液の分光透過率の B-W ナノ粒子濃度依存性

    分散剤:PVP、分散剤濃度:70wt%、ビーズ粒径:30 µm ··············· 3.1-30

    図 3.1-45 透過率の B-W ナノ粒子濃度依存性。分散剤:PVP、ビーズ粒径:30 µm ·· 3.1-30

    図 3.2-1 透明遮へい体の作製・評価方法 ···································· 3.2-6

    図 3.2-2 ロータリーエバポレータの概略 ···································· 3.2-6

    図 3.2-3 成型体の作製例 ·················································· 3.2-7

    図 3.3-1 原子炉格納容器底部 気中-横アクセス工法の例 ······················ 3.3-22

    図 3.3-2 燃料デブリ収納缶の遮へい解析モデル ······························ 3.3-22

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    図 3.3-3 アクチノイド核種を扱うグローブボックスの遮へい解析モデル

    (1 次元球モデル) ················································· 3.3-23

    図 3.3-4 Am-Be 中性子源施設の遮へい解析モデル(1 次元球モデル) ············· 3.3-23

    図 3.3-5 Am-Be 中性子源エネルギースペクトル ······························· 3.3-24

    図 3.3-6 燃料デブリ収納缶に対する各種透明材料中での中性子及び

    二次ガンマ線線量減衰の比較 ······································ 3.3-24

    図 3.3-7 370 GBq Am-Be 線源からの中性子に対する透明遮へい材中での

    窒化ホウ素(h-BN)の濃度ごとの中性子・二次ガンマ線

    線量率 ·························································· 3.3-25

    図 3.3-8 370 GBq Am-Be 線源からの中性子に対する透明遮へい材中での

    炭化ホウ素(B4C)の濃度ごとの中性子・二次ガンマ線

    線量率 ·························································· 3.3-25

    図 3.3-9 370 GBq Am-Be 線源からの中性子に対する透明遮へい材中での

    ホウ化モリブデン(MoB2)の濃度ごとの中性子・二次ガンマ線

    線量率 ·························································· 3.3-26

    図 3.3-10 370 GBq Am-Be 線源からの中性子に対する透明遮へい材中での

    ホウ化タングステン(W2B5)の濃度ごとの中性子・二次ガンマ線

    線量率 ·························································· 3.3-26

    図 3.3-11 各種重金属化合物を入れた透明遮へい体中での 60Co ガンマ線による

    線量率の減衰 ···················································· 3.3-27

    図 3.3-12 燃料デブリ収納缶を線源とした透明材中のガンマ線線量率と全線量率 ·· 3.3-28

    図 3.3-13 燃料デブリ中のアクチノイド核種を線源とした透明材中のガンマ線

    線量率と全線量率 ················································ 3.3-28

    図 3.3-14 型枠の健全性確認 ················································ 3.3-29

    図 3.3-15 型枠のマスキング ················································ 3.3-29

    図 3.3-16 ビーカー内での主剤と硬化剤の撹拌 ································ 3.3-29

    図 3.3-17 脱泡混練機の撹拌爪 ·············································· 3.3-29

    図 3.3-18 撹拌槽へのエポキシ樹脂の注入 ···································· 3.3-29

    図 3.3-19 脱泡混練の開始 ·················································· 3.3-29

    図 3.3-20 混練後のエポキシ樹脂のビーカーへの注入 ·························· 3.3-30

    図 3.3-21 真空中での再脱泡 ················································ 3.3-30

    図 3.3-22 アクリル型枠への注入 ············································ 3.3-30

    図 3.3-23 アクリル型枠内での再々脱泡 ······································ 3.3-30

    図 3.3-24 作製した h-BN 入り供試体(左)とナノ粒子なし供試体(右) ········· 3.3-30

    図 3.3-25 中性子遮へい性能評価のための遮へい実験の構成図 ·················· 3.3-31

    図 3.3-26 中性子遮へい性能評価のための遮へい実験の配置写真 ················ 3.3-31

    図 3.3-27 二次ガンマ線抑制性能試験の遮へい実験配置写真 ···················· 3.3-32

    図 3.3-28 供試体上でのガラスバッジの配置 ·································· 3.3-32

    図 3.3-29 中性子遮へい性能試験結果と解析結果の比較 ························ 3.3-33

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    図 3.3-30 二次ガンマ線抑制性能試験結果と解析結果の比較 ···················· 3.3-33

    図 3.3-31 ガラスバッジを用いた供試体上の中性子及びガンマ線線量測定結果 ···· 3.3-34

    略語一覧

    BOC : Beginning Of Cycle (サイクル初期)

    CLADS : Collaborative Laboratories for (廃炉国際共同研究センター)

    Advenced Decommissionning Science

    h-BN : hyxagonal-Bron Nitride (六方晶窒化ホウ素)

    IRID : International Research Institute (技術研究組合 国際廃炉研究開発機構)

    for Nuclear Decommissioning

    JAEA : Japan Atomic Energy Agency (日本原子力研究開発機構)

    PEG : Polyethylene glycol (ポリエチレングリコール)

    PVP : Polyvinylpyrrolidone (ポリビニルピロリドン)

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    概略

    燃料デブリには 242Cm や 244Cm などの自発核分裂性核種や 238Pu などのα線放出核種が含まれており、

    自発核分裂に伴い発生する中性子やα線と酸素などの軽元素との(α、n)反応で発生する中性子がデ

    ブリから放射されている。これらの燃料デブリの炉外への取り出しや分析の際には、これに関わる作

    業員の中性子による外部被ばくを十分に低減しなければならない。デブリ取り出しのために格納容器

    内を詳細に調査する際には、遠隔操作カメラを用いて格納容器内の様子を観察しながら行うと考えら

    れるが、透明な中性子遮へい材をカメラの「フィルター」として用いることで、光学系(ガラス)や

    撮像素子の中性子照射による劣化低減にも寄与する。

    中性子遮へい材では、中性子の遮へいと同時に、熱中性子が水素に吸収されて生じる二次ガンマ線

    の発生量を抑制する必要があり、このためにホウ素などの熱中性子吸収材を添加すると透明性が損な

    われてしまうために、透明材に十分な中性子及び二次ガンマ線の遮へい性能を持たせることは難しか

    った。また、透明な中性子遮へい材は水素を主とする軽い元素から成るためにガンマ線に対する遮へ

    い性能は高くなく、ガンマ線を遮へいするためには重金属を含む鉛ガラスなどを併用する必要があり、

    透明性を低下させる要因となっていた。

    本研究の目的は、燃料デブリの取り出しや分析における作業の効率を保ちながら、作業者の被ばく

    を低減することのできる透明な中性子及びガンマ線を遮へいできる材料を開発し、かつ、実際に福島

    第一原子力発電所の廃炉作業やデブリ分析で用いることができるように量産するための技術も開発す

    ることにある。

    熱プラズマによるホウ化物・重金属ナノ粒子の合成に関する研究においては、高周波熱プラ

    ズマを用いて、ホウ素、炭化ホウ素、ホウ化モリブデン、ホウ化タングステンナノ粒子の合成

    に成功した。生成ナノ粒子の平均粒径は30 nm以下であり、特にB-W系、B-Mo系では20 nm以下

    の粒子が得られた。高周波熱プラズマは高温かつ高化学活性であり、他の熱プラズマと比較

    して被処理物質の滞留時間が長いという特長を有する。さらにプラズマ尾炎部での超急冷が

    可能であるため、従来では合成しにくい形態、結晶構造、化学組成のナノ材料の合成を得意と

    する。ホウ化モリブデンナノ粒子及びホウ化タングステンナノ粒子の合成において、原料組成

    比が生成物に与える影響について検討した。B-Mo系では、B/(B+Mo)≥0.5においてホウ化モリ

    ブデンナノ粒子が生成した。B/(B+Mo)が増加するにつれてホウ化モリブデンの収率が増加し、

    また、原料組成比を制御することで、他の合成方法では困難なMoB4の生成が可能であった。B-

    W系では、B/(B+W)≥0.67においてホウ化モリブデンナノ粒子が生成した。B/(B+W)が増加するに

    つれてホウ化タングステンの収率が増加し、また、原料組成比を制御することで、他の合成方

    法では困難なWB4の生成が可能であった。原料としてB粉末とC粉末を用い、炭化ホウ素ナノ粒

    子の合成を行った。現状の高周波熱プラズマによる炭化ホウ素ナノ粒子合成の報告の多くは、

    原料としてマイクロサイズのB4C粉末を用いており、高周波熱プラズマでB粉末とC粉末を処理

    し、炭化ホウ素ナノ粒子を合成した報告例はない。B粉末とC粉末を原料として炭化ホウ素ナノ

    粒子を合成するとともに、原料の組成比が生成物の組成及び粒径に与える影響を明らかにした。

    凝集性の制御に関しては、可視光の波長以下の粒径(10-20 nm)となるようにナノ粒子の凝集を

    制御する方法を開発した。有機溶媒中で凝集制御方法を検討し、つぎにこれをエポキシ樹脂に混練す

    る方法の検討を行った。超音波分散に加えてビーズミル処理を行うことで、分散性・透明度は劇的に

    向上した。10 mm角のエタノール溶液では、目標濃度の0.1wt%においても透過度が90%以上と透明性の

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    - 15 - vii

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    高い分散液が得られた。

    ナノ粒子を用いた透明遮へい材の製造方法の検討においては、ナノ粒子の凝集を防ぎながら、

    かつ、遮蔽体内に均一に混練するための方法を検討した。ナノ粒子を用いた透明遮へい材のア

    ルコールとエポキシ主剤との混合試験として、主剤(YX8000)とエタノール相溶性確認実験を行

    った。蒸留によりエポキシ主剤中のエタノールを除去し、硬化剤を添加したところ、通常通りの

    硬化体が得られることを確認した。ホウ酸を添加したエタノールを使用した場合も樹脂の硬化に

    影響はないことを確認した。

    ナノ粒子を用いた透明遮へい材の性能評価に関する研究においては、遮へい解析により最適

    なナノ化粒子の配合比を探るとともに、開発する遮へい材の厚さと中性子・ガンマ線遮へい性能

    との関係を、想定されるさまざまな中性子及びガンマ線源について評価した。デブリを取り扱う

    ホットセルでの利用を念頭に、各種ホウ化物(B4C、BN、MoB2、W2B5)を含む透明遮へい体に核

    分裂中性子が入射したときの中性子及び二次ガンマ線線量分布を計算し、二次ガンマ線線量

    抑制に必要な添加量を求めた。

    遮へい実験用供試体の製作においては、均一性などに留意しながら遮へい実験用供試体を製作

    した。遮へい試験で用いる供試体として、添加物の入らない透明遮へい体試料(20 cm×20

    cm×5 cm)を6枚、h-BNナノ粒子を0.2wt%含む試料を3枚製作した。

    遮へい試験においては、試作した遮へい材に対してAm-Beを線源とした中性子遮へい試験を行

    い、遮へい性能の均一性などを確かめた。解析評価結果とこの試験結果を比較することで、解析

    評価結果の精度と妥当性を検証するとともに、ナノ粒子の添加による二次ガンマ線生成抑制、ガ

    ンマ線遮へい性能向上の確証を得た。中性子遮へい実験においては、h-BNナノ粒子を入れた場合

    と入れない場合の中性子遮へい性能及び二次ガンマ線抑制性能についての概算の評価が得られ、

    事前の解析値とほぼ合うことを確認した。

    研究推進においては、研究代表者の下で各研究項目間ならびに廃炉国際共同研究センター

    (CLADS)等との連携を密にして研究を進めた。また、研究実施計画を推進するための打合せ

    や会議等を適宜開催した。2018年11月9日の第1回ワークショップ(情報連絡会)に参加して

    研究計画の説明と意見交換を行った。また、2019年1月8日と3月15日に内部評価委員会を開催

    し、本研究の計画・内容と成果に関して、有識者の意見を伺った。

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    1.1-1

    1. はじめに

    1.1 研究の背景

    燃料デブリには 242Cm や 244Cm などの自発核分裂性核種や 238Pu などのα線放出核種が含まれており、

    自発核分裂に伴い発生する中性子やα線と酸素などの軽元素との(α、n)反応で発生する中性子がデ

    ブリから放射されている。これらの燃料デブリを炉外に取り出し、その分析を行う際には、これに関

    わる作業員の中性子による外部被ばくを十分に低減しなければならない。

    取り出される燃料デブリの形状や組成は多様であり、格納容器外にデブリを取り出した後に、格納

    容器外に設置した簡易セル内で、作業員が直接にデブリを観察しながら搬出のための操作を行うこと

    も考えられる。このようなセルに、中性子やガンマ線を十分に遮へいできる透明な遮へい材でできた

    窓があれば、作業効率が大幅に向上する。

    また、現在、設計が進められている日本原子力研究開発機構の大熊分析・研究センター第二棟では、

    燃料デブリの分析を行うホットセルやグローブボックスが設置されることになっており、これらに用

    いる透明窓には、研究者の被ばく低減のために、既存の RI 分析施設と違って中性子に対する十分な遮

    へいが求められる。

    加えて、デブリ取り出しのために格納容器内を詳細に調査する際には、遠隔操作カメラを用いて格

    納容器内の様子を観察しながら行うと考えられるが、透明な中性子遮へい材をカメラの「フィルター」

    として用いることで、光学系(ガラス)や撮像素子の中性子照射による劣化低減にも寄与する。

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    - 17 - 1.1-1

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    1.2-1

    1.2 解決すべき課題と研究の目的

    中性子遮へい材では、中性子の遮へいと同時に、熱中性子が水素に吸収されて生じる二次ガンマ線

    の発生量を抑制する必要があり、このためにホウ素などの熱中性子吸収材を添加すると透明性が損な

    われてしまうために、透明材に十分な中性子及び二次ガンマ線の遮へい性能を持たせることは難しか

    った。また、透明な中性子遮へい材は水素を主とする軽い元素から成るためにガンマ線に対する遮へ

    い性能は高くなく、ガンマ線を遮へいするためには重金属を含む鉛ガラスなどを併用する必要があり、

    透明性を低下させる要因となっていた。 本研究の目的は、燃料デブリの取り出しや分析における作業の効率を保ちながら、作業者の被ばく

    を低減することのできる透明な中性子及びガンマ線を遮へいできる材料を開発し、かつ、実際に福島

    第一原子力発電所の廃炉作業やデブリ分析で用いることができるように量産するための技術も開発す

    ることにある。

    本研究では、燃料デブリ取り出しや分析における作業員の被ばく低減などを目的として、ナノ粒子

    技術を用いた、次の要件を満たす透明材料を開発することを研究目標とする。

    ① 中性子遮へい性能:従来の透明材(ガラス・アクリルなど)よりも 20%以上、高い中性子遮へい

    性能を持つ。

    ② 二次ガンマ線生成抑制:遮へい材中の水素の吸収により生じる二次ガンマ線の発生を抑制できる。

    具体的には中性子線量を 1 万分の一程度に低減する遮へい体厚さ(コンクリートで約 1 m の厚さ

    に相当)において、二次ガンマ線量が中性子線量と同等以下のレベルとなるようにする。これは、

    B4Cなどのホウ素化合物を約1.5wt%程度添加することで達成できる。

    ③ ガンマ線遮へい性能:透明性を保ちながらガンマ線にも十分な遮へい性能を持つ。具体的には鉛

    ガラスや鉛アクリル、あるいはコンクリートと同等程度のガンマ線遮へい性能を持つ材料を開発

    する。これはタングステンのような重金属を体積割合で3.5%程度含めることで達成できる。

    ④ 量産性:工業的に十分な量の透明材を製造できるように、直径 10~20 nm のナノ粒子を 1 時間当

    たり 200~300 g 程度製造できる技術を開発する。また、ナノ粒子の凝集を防ぎながら均一に遮

    へい材内に分散させる技術や作製した遮へい体中にナノ粒子が均一に分散していることを確認す

    るための技術も開発する。

    JAEA-Review 2019-039

    - 18 -1.2-1

  • JAEA-Review 2019-039

    1.3-1

    1.3 研究の新規性

    放射線遮へい材の開発は原子力開発の黎明期から行われてきたものであるが、ナノ粒子を用い

    て、その性能を向上させる試みは、これまで行われては来なかった。また、前述のようにグロー

    ブボックスなどの透明材として従来から用いられてきたアクリルに比べて、今回開発する中性子

    遮へい材の母材となるエポキシ樹脂 C1M は、1/10 価層(線量が 1/10 となる厚さ)が約 20%少な

    く、これを用いることで、これまでに無い性能の透明中性子遮へい材を開発することができる。

    中性子及びガンマ線の双方に効果のある透明遮へい材の開発:これまで、鉛ガラスや鉛アクリ

    ルなどの透明ガンマ線遮へい材は存在したが、中性子とガンマ線の双方を効果的に遮へいする透

    明な遮へい材は無かった。本研究で開発するものが初となる。

    これまでの透明中性子遮へい材では、二次ガンマ線による線量を低減するために鉛ガラスなど

    を後ろに配置する、といった方法が採られてきた。また、使用済み核燃料輸送容器など、透明性

    の必要性のない中性子遮へい材では、ホウ素などの熱中性子吸収材を添加することで二次ガンマ

    線の生成を抑制してきた。透明材の中で二次ガンマ線生成を抑制する試みは初めてのものである。

    ホウ素化合物のナノ粒子化:ホウ化物ナノ粒子の合成には、原料として B2H6、BF3 などの毒性、

    腐食性や爆発性を有するものが用いられているが、熱プラズマででは固体ホウ素などを用いるこ

    とができる。原料として安全な固体原料を使用できることは、プロセスの安全性や経済性の改善

    となる。しかし固体ホウ素は高融点、高沸点であることから、ホウ化物ナノ粒子の合成はほとん

    ど行われてこなかった。特にホウ素同士が結合し、正 20 面体や正 8 面体などのユニットをつく

    り、そのユニット同士が骨組みの隙間に金属が入りこんだ多ホウ化物のナノ粒子合成もほとんど

    行われていない。

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    - 19 - 1.3-1

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    2.1-1

    2. 業務計画

    2.1 全体計画

    本業務の全体計画図を図 2.1-1 に示す。九州大学は熱プラズマによるナノ粒子の大量合成を目

    標としてホウ化ナノ粒子と重金属ナノ粒子の合成を行い、再委託機関とその協力機関は透明遮

    へい体の実用化を目標として、ナノ化粒子を含む透明遮へい材の試作、性能評価、試験を行っ

    て、その成果を合わせることで、先に示した要件を満たす中性子遮へい材が製造可能であるこ

    とを示す。また、遮へい材のユーザーとなる研究機関や燃料デブリ取り出しに関わるプラント

    メーカー、関連企業等から構成される外部有識者による助言委員会を設置し、開発した遮へい

    材の実用化に向けて効果的かつ効率的な研究開発を推進する。

    図 2.1-1 業務の全体計画図

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    - 20 -2.1-1

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    2.2-1

    2.2 平成 30 年度の成果の目標及び業務の実施方法

    平成 30 年度は、ホウ化物や重金属ナノ粒子の合成方法に関する検討を行いながら、これらの

    ナノ化粒子を含む透明遮へい体の試作を 10 cm 角程度の小試験片に関して行って、透明性や施工

    性を確認するとともに、解析によって遮へい性能の評価を行う。これを基に、第二年度ではより

    大きな試験体(数十 cm 角程度)を試作するとともに、透明性や施工性に関して最適となるナノ

    化粒子の粒径や組成の検討を行う。第一、第二年次を通じて、ナノ粒子を均一に分散させるため

    の混練方法を、混練のシミュレーションと実際に試験体製作を行いながら検討する。また、第一、

    第二年次では高周波熱プラズマ装置を用いて 1 時間当たり 30~50 g のナノ粒子を試験的に生成

    するが、第三年次では量産を見据えて、多相交流アークで 1 時間当たり 200~300 g の率でナノ

    粒子を生成するための試験を行う。また、試作した試験体を用いて、中性子照射施設(Cf-252

    線源または加速器)でビーム状の中性子による遮へい実験を行い、透過後の中性子及び一次・二

    次ガンマ線線量の遮へい体に平行な面における分布を測定することで、ナノ化粒子の遮へい体内

    での分布の均一性を確かめる。

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    - 21 - 2.2-1

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    3.1-1

    3. 平成 30 年度の実施内容及び成果

    3.1 熱プラズマによるホウ化物・重金属ナノ粒子の合成に関する研究

    3.1.1 ナノ粒子の合成実験

    (1)実験装置

    本研究では高周波誘導熱プラズマ装置 JHS-35M(日本電子株式会社製、周波数 4MHz、最大出力

    35 kW)を利用した。図 3.1-1 に実験装置の概略図を示す。本装置はプラズマ発生部であるプラ

    ズマトーチ、ナノ粒子を合成する反応チャンバ、ナノ粒子を回収する粉末フィルター、高周波電

    流を供給するための高周波発振機、及び原料粉体を供給するための粉体供給装置に大別される。

    図 3.1-2 にプラズマトーチ部分の概略図を示す。プラズマトーチは熱的保護のため冷却水を流

    すことのできる二重管構造をとっている。二重管の内側は内径 42 mm の窒化珪素管、外側は石英

    ガラス管で構成されており、高さは 151 mm である。石英ガラスの管外には銅製のコイルが 3 周

    巻かれており、コイルは周波数 4MHz、最大出力 35 kW の高周波発振機に接続されている。また、

    コイル内部にも冷却水が流れる構造となっている。プラズマトーチ中心軸上にはキャリアガスと

    ともに原料粉体を供給するためのインジェクションプローブが設置されており、水冷されている.

    プラズマを発生させている間、プラズマトーチ上部には渦流が発生するため、インジェクション

    プローブの先端はプラズマトーチ上部から 15 mm の位置に固定している。

    プラズマトーチに供給するシースガスは、管の断面に対して半径方向及び接線方向から導入す

    る。半径方向のガスはプラズマの安定化及びプラズマトーチの熱的保護のために旋回流を形成す

    る。また、インジェクションプローブを保護するためにインナーガスが供給されている。シース

    ガス、インナーガス、キャリアガスには Ar を用いた。

    (2)原料粉体

    B-Mo 系ナノ粒子の合成では、原料として純 B 粉末及び純 Mo 粉末を用いた。純 B 粉末は、株式

    会社高純度化学製で純度 99%、平均粒径 45 µm である。純 Mo 粉末は、株式会社高純度化学製で

    純度 99.9%、平均粒径 1.5 µm である。

    B-W 系ナノ粒子の合成では、原料として純 B 粉末及び純 W 粉末を用いた。純 B 粉末は、前述し

    たものと同様である。純 W 粉末は、株式会社高純度化学製で純度 99.9%、平均粒径 0.6 µm であ

    る。

    B-C 系ナノ粒子の合成では、原料として純 B 粉末及び純 C(Graphite)粉末を用いた。純 B 粉末

    は、前述したものと同様である。純 C 粉末は、株式会社高純度化学製で純度 99.9%、平均粒径 20

    µm である。

    原料粉体は、所定の組成比になるよう乳鉢を用いて均一に混合し、その後、乾燥機にて 120℃

    で 24 時間以上乾燥させた。粉体供給装置は日本電子株式会社製 TP-Z120031FDR を用いた。攪拌

    (実施計画)

    高周波熱プラズマに固体のホウ素、金属微粉体を原料として供給し、熱プラズマ中で蒸発

    させ、その下流で粒径 10〜20 nm 程度のホウ化物ナノ粒子を合成して、二次ガンマ線生成抑

    制の素材とする。また、タングステンなどの重金属ナノ粒子の合成も試み、ホウ化物ナノ粒

    子と混合して、ガンマ線の遮蔽も同時に達成する遮へい材の実証試験用の素材とする。

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    - 22 -3.1-1

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    3.1-2

    翼と供給板によって押し出された原料粉体は、キャリアガスの流れによって生じる拡散・吸引力

    によって運搬される。攪拌翼及び供給板の回転速度により、原料供給量を調節することができる。

    (3)実験条件

    実験条件を表 3.1-1 に示す。周波数 4MHz、圧力は大気圧下で実験を行った。プラズマ出力は

    20 kW とし、シースガス、インナーガス及びキャリアガスは Ar を使用し、流量はそれぞれ 60

    L/min、5 L/min 及び 3 L/min とした。粉体供給量は 0.3 g/min とした。また、実験後、1vol%程

    度の酸素濃度下において、1 時間の徐酸化処理を行った。

    (4)分析方法

    生成物の定性分析のために粉末 X 線回折(XRD)を行った。測定には Rigaku 株式会社製の粉末 X

    線回折装置 MultiFlex を用いた。X 線源には CuKαを用いた。測定条件は、走査範囲 5~90deg、

    サンプリング幅 0.02deg、スキャン速度 2.00 deg/min、管電圧 40 kV、管電流 50 mA、散乱スリ

    ット 1.0deg、受光スリット 0.15 nm、発散スリット 1.0deg とした。

    生成物の形態、粒径分布の測定には、透過型電子顕微鏡(TEM)を利用した。生成物をエタノー

    ル中で超音波分散処理を行った後、マイクログリッドに滴下し、自然乾燥の後に真空乾燥させた

    ものを観察試料とした。TEM は日本電子株式会社製 JEM-2100HCKM を利用した。加速電圧は 200

    kV とした.

    生成物中の化合物の有無の確認、粒子中の元素の半定量をするためにエネルギー分散分光法

    (STEM-EDS)を行った。観察試料は TEM と同様のものを用いた。装置は JEM-ARM 200F 及び JEM-

    ARM200CF を利用した。

    合成したナノ粒子の TEM 像より粒径分布を測定した。TEM 像より無作為に粒子を 200 個以上抽

    出し、平均粒径と粒径分布を算出した。粒径の評価には Feret 径を利用し、その算術平均値を平

    均粒径とした。

    (5)ホウ素−モリブデン系ナノ粒子の合成

    ホウ素、モリブデン、タングステンは高融点であるため、一般的な重金属ホウ化物の合成方法

    であるメカノケミカル法や自己増殖高温合成などの既往の方法では、重金属ホウ化物ナノ粒子の

    生成は困難である。高周波熱プラズマは単一プロセスで高純度なナノ粒子の大量合成が可能であ

    るが、重金属ホウ化物ナノ粒子の合成に関する研究報告例は少なく、その生成機構も十分に理解

    されていない。そこで、本研究では、重金属ホウ化物ナノ粒子を合成するとともに、原料の組成

    比が生成物の組成及び粒径に与える影響を明らかにした。

    原料中の B と Mo の組成比を変化させた場合の生成物の組成及び粒径への影響を検討した。シ

    ースガスとして Ar(60 L/min)、インナーガスとして Ar(5.0 L/min)、キャリアガスとして

    Ar(3.0 L/min)を用い、プラズマ出力は 20 kW とした。原料として平均粒径 45 µm の B 粉末と平

    均粒径 1.5 µm の Mo 粉末を用い、原料供給量は 0.3 g/min とした。また、原料中の B と Mo の組

    成比は、(a) B:Mo=6:1、(b) B:Mo=4:1、(c) B:Mo=2.5:1、(d) B:Mo=2:1、(e) B:Mo=1:1、(f)

    B:Mo=0.5:1 とした。

    原料組成比を変化させた場合の生成物の XRD 分析結果を図 3.1-3 に示す.B/(B+Mo)≥0.5 にお

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    3.1-3

    いて、目的物質であるホウ化モリブデンが生成した。いずれの条件においても Mo の単体のピー

    クが確認された。また、B の酸化物である B2O3 のピークもいずれの条件においても微小ながら確

    認されたが、これは、Mo と反応しなかった B が、生成したナノ粒子を回収する際や保存してい

    る際に空気と反応したためである。生成されたホウ化モリブデンは、(d) B:Mo=2:1 と(e)

    B:Mo=1:1 においては Mo2B、(c) B:Mo=2.5:1 においては Mo2B 及び MoB、(b) B:Mo=4:1 においては

    Mo2B、MoB 及び MoB2、(a) B:Mo=6:1 においては Mo2B、MoB、MoB2及び MoB4であった。このように、

    B/(B+Mo)が増加するにつれてホウ化モリブデンの種類が増え、また、Mo に対して B が過剰であ

    る MoB2や MoB4が確認されるようになった。

    図 3.1-4 に(d) B:Mo=2:1 とした条件の(A)実験直後と(B)実験から約半年後におこなった XRD

    分析結果を示す。(A)実験直後のサンプルにおいて確認されたピークは B2O3、Mo2B、Mo であった

    が、(B)実験から約半年後のサンプルにおいて確認されたピークは H3BO3、Mo2B、Mo であった。サ

    ンプルは褐色のバイアル瓶にて保存していたが、B2O3 が空気と反応し、H3BO3 に変化したと考える。

    図 3.1-5 に XRD 分析結果より算出した積分強度比と原料組成比の関係を示す。B/(B+Mo)が増加

    するにつれて Mo の単体や Mo の酸化物である MoO2 の割合は減少し、目的物質であるホウ化モリ

    ブデンの割合が増加した。なお、(a) B:Mo=6:1 において、生成物中のホウ化モリブデンの割合

    は約 97%と非常に高い収率であった。図 3.1-6 にそれぞれのホウ化モリブデン(Mo2B、MoB、MoB2、

    MoB4)の積分強度比と原料組成比の関係を示す。B/(B+Mo)が増加するにつれて、B に対して Mo が

    過剰な Mo2B の割合が減少し、Mo に対して B が過剰な MoB2や MoB4の割合が増加した。

    原料組成比を(a) B:Mo=6:1、(b) B:Mo=4:1 とした条件の生成物の TEM 画像及び粒径分布を図

    3.1-7 に、(c) B:Mo=2.5:1、(d) B:Mo=2:1 とした条件の生成物の TEM 画像及び粒径分布を図

    3.1-8 に、(e) B:Mo=1:1、(f) B:Mo=0.5:1 とした条件の生成物の TEM 画像及び粒径分布を図

    3.1-9 に示す。B/(B+Mo)≥0.67 において、ナノ粒子はほぼ球状粒子であったが、B/(B+Mo)≤0.5 に

    おいては、球状粒子だけではなく、角張った粒子や棒状粒子が数多く確認された。

    生成物の平均粒径と原料組成比の関係を図 3.1-10 に示す。平均粒径は、それぞれ(a) 18 nm、

    (b) 16 nm、(c) 32 nm、(d) 29 nm、(e) 29 nm、(f) 22 nm であった。測定した平均粒径にはば

    らつきがあったが、この原因としては、原料組成比によって生成物が異なることや、実験ごとに

    フィルターでの回収量は異なり、原料供給量にばらつきがあることが挙げられる。そのため、原

    料組成比の変化は平均粒径にあまり影響しないと考える。

    (6)ホウ素−タングステン系ナノ粒子の合成

    原料中の B と W の組成比を変化させた場合の生成物の組成及び粒径への影響を検討した。シー

    スガスとして Ar(60 L/min)、インナーガスとして Ar(5.0 L/min)、キャリアガスとして Ar(3.0

    L/min)を用い、プラズマ出力は 20 kW とした。原料として平均粒径 45 µm の B 粉末と平均粒径

    0.6 µm の W 粉末を用い、原料供給量は 0.3 g/min とした。また、原料中の B と W の組成比は、

    (a) B:W=5:1、(b) B:W=4:1、(c) B:W=2.5:1、(d) B:W=2:1、(e) B:W=1:1、(f) B:W=0.5:1 とし

    た。

    原料組成比を変化させた場合の生成物の XRD 分析結果を図 3.1-11 に示す。B/(B+W)≥0.67 にお

    いて、目的物質であるホウ化タングステンが生成した。いずれの条件においても B の酸化物であ

    る B2O3のピークが微小ながら確認された。これは、B-Mo 系の場合と同様に、W と反応しなかった

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    - 24 -3.1-3

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    3.1-4

    B が、生成したナノ粒子を回収する際や保存している際に空気と反応したためである。生成され

    たホウ化タングステンは、(c) B:Mo=2.5:1 と(d) B:Mo=2:1 においては W2B、(a) B:W=6:1 と(b)

    B:Mo=4:1 においては W2B、WB、W2B5及び WB4であった。このように、B/(B+W)が大きくなるにつれ

    てホウ化タングステンの種類が増え、また、W に対して B が過剰である W2B5や WB4が確認される

    ようになった。

    図 3.1-12 に XRD 分析結果より算出した積分強度比と原料組成比の関係を示す。B/(B+W)が増加

    するにつれて W の単体と W の酸化物である WO3を合計した割合は減少し、目的物質であるホウ化

    タングステンの割合は増加している。また、図 3.1-13 にそれぞれのホウ化タングステン(W2B、

    WB、W2B5、WB4)の積分強度比と原料組成比の関係を示。B/(B+W)が増加するにつれて、B に対して

    W が過剰な W2B の割合が減少し、W に対して B が過剰な WB4の割合が増加した。

    原料組成比を(a) B:W=6:1、(b) B:W=4:1 とした条件の生成物の TEM 画像及び粒径分布を図

    3.1-14 に、(c) B:W=2.5:1、(d) B:W=2:1 とした条件の生成物の TEM 画像及び粒径分布を図 3.1-

    15 に、(e) B:W=1:1、(f) B:W=0.5:1 とした条件の生成物の TEM 画像及び粒径分布を図 3.1-16 に

    示す.B/(B+W)≥0.67 においては、ナノ粒子はほぼ球状粒子であったが、B/(B+W)≤0.5 においては、

    球状粒子は少なく、主に角張った粒子や棒状粒子であった。

    生成物の平均粒径と原料組成比の関係を図 3.1-17 に示す。平均粒径は、それぞれ(a) 13 nm、

    (b) 15 nm、(c) 18 nm、(d) 17 nm、(e) 16 nm、及び(f) 16 nm であった。平均粒径に大きな差

    はなく、原料組成比の変化は平均粒径にあまり影響しないと考える。

    (7)炭化ホウ素ナノ粒子の合成

    原料として B 粉末と C 粉末を用い、炭化ホウ素ナノ粒子の合成を試みた。現状の高周波熱プラ

    ズマによる炭化ホウ素ナノ粒子合成の報告の多くは、原料としてマイクロサイズの B4C 粉末を用

    いており、高周波熱プラズマで B 粉末と C 粉末を処理し、炭化ホウ素ナノ粒子を合成した報告例

    はない。そこで、本研究では、B 粉末と C 粉末を原料として炭化ホウ素ナノ粒子を合成するとと

    もに、原料の組成比が生成物の組成及び粒径に与える影響を明らかにする。

    原料中の B と C の組成比を変化させた場合の生成物の組成及び粒径への影響を検討した.シー

    スガスとして Ar(60 L/min)、インナーガスとして Ar(5.0 L/min)、キャリアガスとして Ar(3.0

    L/min)を用い、プラズマ出力は 20 kW とした。原料として平均粒径 45 µm の B 粉末と平均粒径

    20 µm の C 粉末を用い、原料供給量は 0.3 g/min とした。また、原料中の B と C の組成比は、

    (a) B:C=19:1、(b) B:C=4:1、及び(c) B:C=2:1 とした。

    原料組成比を変化させた場合の生成物の XRD 分析結果を図 3.1-18 に示す。いずれの条件にお

    いても目的物質である B4C が生成した。(a) B:C=19:1 においては、B4C の他に、B の単体のピー

    クも確認された。(b) B:C=4:1 及び(c) B:C=2:1 においては、B4C の他に、C の単体のピークも確

    認された。また.B/(B+C)≥0.8 において、B の酸化物である B2O3 のピークが確認された。これは、

    前述した B-Mo 系や B-W 系と同様に、C と反応しなかった B が、ナノ粒子を回収する際や保存し

    ている際に空気と反応したためである。

    図 3.1-19 に XRD 分析結果より算出した積分強度比と原料組成比の関係を示す。(a) B:C=19:1

    においては、B4C に対して B が過剰であるため、B の単体や B2O3 が高い割合で確認された。また、

    B/(B+C)が増加するにつれて B2O3の割合も増加した。(c) B:C=2:1 においては、B4C に対して C が

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    3.1-5

    過剰であるため、C の単体が高い割合で確認された。

    原料組成比を(a) B:C=19:1、(b) B:C=4:1、及び(c) B:C=2:1 とした条件の生成物の TEM 画像

    及び粒径分布を図 3.1-20 に示す。いずれの条件においても、ほとんどの粒子が球状であった。

    生成物の平均粒径と原料組成比の関係を図 3.1-21 に示す。平均粒径は、それぞれ(a) 19 nm、

    (b) 24 nm、及び(c) 19 nm であった。平均粒径に大きな差はなく、原料組成比の変化は平均粒

    径にあまり影響しないと考える。

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    3.1-6

    3.1.2 凝集性の制御

    (1)分散実験方法及び条件

    本研究では、図 3.1-22にそのフローチャートを示すように、2つの工程に分けて、ナノ粒子の

    凝集抑制及びエポキシ樹脂への混錬方法を検討した。工程(1)では、蒸気圧の観点から、エタノ

    ールを分散液として用い、透明なナノ粒子分散エタノールの作製を検討した。まず、熱プラズマ

    を用いてナノ粒子を合成し(サブ工程1-1)、得られたナノ粒子をエタノール中で各種分散処理(サ

    ブ工程 1-2 及び 1-3)を行うことで、ナノ粒子分散エタノールを得る。次に、工程(2)として、ナ

    ノ粒子分散エタノールをエポキシ樹脂主剤と混合し(サブ工程 2-1)、蒸留によりエタノールのみ

    を除去し、ナノ粒子分散エポキシ樹脂主剤を作製する(サブ工程 2-2)。その後、硬化剤を所定量

    添加、混錬処理を施し(サブ工程 2-3)、所定の透明容器中に溶液を注ぎ、数日間室温で静置する

    ことでナノ粒子分散透明エポキシ樹脂硬化体を得る。以下、詳細を説明する。

    サブ工程 1-2、1-3 における分散方法としては、超音波分散、及びビーズミル分散を用いた。

    超音波分散には、日本精機製作所製超音波ホモジナイザーUS-150T を用い、ビーズミル分散には

    アシザワ・ファインテック株式会社製ラボスターミニ DMS65、株式会社シンキー製自転・公転ナ

    ノ粉砕機 NP-100 を比較・検討した。

    超音波分散器の装置概要を図 3.1-23 に示す。本装置は、定格出力 150 W、発信周波数 19.5kHz

    である。所定量のナノ粒子、分散剤、エタノールを混合し、アルミニウムカップ中で攪拌する

    (ナノ粒子含有エタノール液)。分散処理を施す前のエタノール中では、粉は基本的に沈殿して

    いる。この分散処理前溶液中に、直径 20 mm の超音波振動素子を導入し、超音波分散処理を行っ

    た。なお、超音波分散のみの処理では、液中での凝集を完全にほどき、完全に分散させることは

    困難であった。そこで、以下のサブ工程 1-3 でのビーズミル分散処理が重要である。

    サブ工程 1-3 における予備実験では、株式会社シンキー製ビーズミル分散器を用いた。本装置

    は、ジルコニア容器内にて、粒径数十 µm から数 mm のジルコニアボールを被処理粒子に衝突させ

    ることで、凝集したナノ粒子の分散を進行させるバッチ方式の装置である。その後、メッシュフ

    ィルターでジルコニアボールのみを分離・回収する。自転・公転ともに最大回転数は 2000rpm で

    ある。

    同様に、サブ工程 1-3 における予備実験では、アシザワ・ファインテック株式会社製ビーズミ

    ル分散器を用いた。本装置は、ジルコニア容器内にて、粒径 30~300 µm のジルコニアボールを

    被処理粒子に衝突させる循環方式の装置である。ビーズ室の周速を 6~15 m/s で変更できる。装

    置形状が異なるため、定量的な比較はできないが、先述のシンキー製ビーズミルと比較して、粒

    子の持つ運動エネルギーが小さいため、粒子の解砕や、それによる再凝集を防ぐことができる。

    (実施計画)

    可視光の波長以下の粒径(10〜20 nm)となるようにナノ粒子の凝集を制御する方法を開発

    する。有機溶媒中で凝集制御方法を検討し、つぎにこれをエポキシ樹脂に混練する方法の検

    討を行う。

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    3.1-7

    (2)液中粒径と透過度の評価方法

    凝集性を判断する上で、液中の凝集粒径を測定することは極めて重要である。本研究では、マ

    ルバーン社製のゼータサイザーナノ SZ を用いて、動的光散乱法に基づき粒径分布を測定した。

    同様に、透過性を定量的に判断することも、本研究においては重要な指標である。そこで、日

    本分光(株)製の紫外可視分光光度計 V-500 を用いて可視域における分光透過率を測定した。ま

    た、その代表的な値として、550 nm における透過率を判断指標とした。以下、特別な記載がなけ

    れば、透過率は 550 nm における透過率を指す。

    (3)分散実験に用いたサンプル

    分散実験の条件検討では、多量のサンプルが必要となる。3.1.1 で説明した熱プラズマ合成ナ

    ノ粒子は、現状は 1 g/min オーダーの生産速度であるため、条件出しに多量のサンプルを使用す

    ることができない。そこで、市販品である六方晶窒化ホウ素(h-BN)ナノ粒子(株式会社MARUKA

    製、AP-170S)を用いて分散条件を検討した。用いたh-BNナノ粒子の一次粒径分布を図3.1-24に

    示す。メジアン径 D50 は約 40 nm であり、比較的シャープな分布を呈している。本研究では、粒

    径が 10〜20 nm のナノ粒子を分散させることで、レイリー散乱を低減させる必要があるため、今

    回用いた h-BN ナノ粒子の粒径は十分に小さいとは言えない。しかし、現段階では分散条件の最

    適化が主目的であるため、実験に用いるには問題はないと結論付けた。

    熱プラズマで合成したホウ素-タングステン系ナノ粒子に関しても、一部の条件ではあるがエ

    タノール中での分散実験を行った。主に W:B=1:4 の条件で得られた平均粒径 14 nm のナノ粒子を

    使用した。生成物中のホウ化タングステンは、W2B、WB、W2B5、及び WB4 であり、エタノールに溶

    解しないことは確認されている。一方、ホウ素-モリブデン系ナノ粒子に関しても予備的な分散

    実験を試みたが、一部のホウ化モリブデンがエタノールに溶解するため、今回は分散実験には用

    いなかった。

    (4)六方晶窒化ホウ素(h-BN)ナノ粒子の分散実験結果

    ➀ シンキー製ビーズミルを用いた予備的検討

    シンキー製のビーズミル装置を用いた分散予備実験の条件及びメジアン径 D50の結果を表 3.1-

    2 にまとめる。まず、適切な分散装置側の実験条件を絞り込むために、処理時間、回転数、ナノ

    粒子の液中濃度を変化させた。

    分散処理時間の影響を評価するために、所定の時間ごとに分散処理を停止し、凝集径を測定す

    ることで、分散の進行度合いを評価した(T1)。15分経過時点で、液中での凝集径 D50が最も小

    さい。この主原因としては、分散処理の進行に伴い、液中温度が増加し、再凝集が促進されたた

    めだと考えられる。したがって、15 分が最適であると判断し、以降の 50 µm のビーズを用いた際

    の分散実験では、15 分を処理時間とした。

    回転数が及ぼす影響を、T1と T2の実験結果を比較することで検討した。1200rpmと 1500rpmで

    は、1500rpm の方が液中での凝集径が小さくなっている。また、2000rpm の条件では、ビーズ粒

    子とナノ粒子同士の摩擦による加熱が大きく、液中温度が適用温度以上に上昇してしまうことが

    分かったため、実験は行っていない。したがって、本実験では 1500rpm が適切な回転数であると

    判断した。

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    分散処理中のナノ粒子濃度の影響を T1、T3 の実験結果を比較することで検討した。粉体濃度

    が 2.5wt%と低い場合(T3)、粉体濃度(4.2wt%~20wt%)が高い場合(T1)と比較して分散の進行が

    遅いことがわかる。本来は平衡に達したときの液中凝集径で比較・評価すべきである。しかし、

    分散の進行が遅いと、30分経過頃から液中温度が上昇し、再凝集が生じることがあらかじめわか

    っているため、高濃度条件の方が適切であると判断した。

    以上より、シンキー製ビーズミルの分散実験条件としては、分散時間 15分、回転速度 1500rpm、

    粒子濃度 4.2wt%以上とすることとし、引き続き適切な分散剤の選定を行った。

    ② シンキー製ビーズミルを用いた分散実験結果

    シンキー製のビーズミル装置を用いた分散実験条件を表 3.1-3~6 にまとめる。以下、分散剤

    ごとに記載する。

    1) ポリビニルピロリドン(PVP)に関する検討

    PVP は、非イオン性の水溶性ポリマーで、有機溶剤に溶解しやすい、種々の樹脂に溶解しやす

    いという特徴を有し、分散剤として代表的な高分子であり、主に立体反発による凝集抑制が見込

    まれる。PVP 濃度を 1~100wt%とし、分散処理中の h-BN 粒子濃度は 6.7wt%とした。その他の条件

    は表に記載の通りである。液中の凝集粒径分布の評価、及び可視光域の透過率の分析時は、h-BN

    濃度は 0.1wt%に調整した。液中の凝集粒径分布を図 3.1-25 に示す。いずれの条件においても、

    分散が十分に進行しておらず、数百 nm に平均値を持つ分布が確認された。対応する分光透過率

    を図 3.1-26 に示す。また、550 nm における透過率と PVP 濃度の関係を図 3.1-27 に示す。PVP 添

    加濃度が 30wt%以下では、添加濃度の増加とともに透過率が向上し、30wt%時に 550 nm における

    透過率が50%を示した。30wt%以上の濃度域では、添加濃度の上昇とともに透過率がやや減少して

    いく傾向が見られた。

    いずれの条件においても、十分な透過率が得られなかったことから、ビーズ粒径に関して再度

    検討した。50 µm のビーズを用いて分散を進行させた後、30 µm 粒径のビーズに入替え、引き続

    き分散処理を行った。処理時間に対する透過率の経時変化を図 3.1-28 に示す。15 分間の 50 µm

    ビーズでの前処理後、30 µm ビーズを用いた処理を行い、2 分ごとに透過度を計測したところ、

    22 分以降において、透過率が平衡に達し、90%程度の高い透過率が得られた。この結果より、2

    種類のビーズ径を用いた二段工程が有用であることが示された。

    2) ポリエチレングリコール(PEG)に関する検討

    PEG は、エチレングリコールが重合した構造を持つ高分子であり、ナノ粒子表面に吸着させる

    ことで、立体反発による凝集抑制が見込まれる。まず、HO-(CH2-CH2-O)n-H の n=15 の PEG 濃度を

    10~100wt%とし、その他の条件は PVP と同様として分散処理を行った。液中粒径分布を計測する

    先述のゼータサイザーが使用不可であったため、透過率で評価する。PEG 濃度と透過率の関係を

    図 3.1-29 に示す。結果として、PVP と比べて極めて低い透過率であった。他にも、n = 5、20 の

    分子量の異なる PEG を評価したが、分散処理後にすぐに凝集が生じる等、その後の透過率評価に

    値する結果は得られなかった。

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    3) ポリアクリル酸(A-6114)に関する検討

    ポリア