19
愛媛県病害虫防除所 担当係長 奈尾雅浩 カンキツ黒点病の防除適期判定に用いる 簡易雨量計の製作法 第19回農作物病害虫フォーラム資料

カンキツ黒点病の防除適期判定に用いる 簡易雨量計の製作法...DT エムダイファー水和剤 マンネブ 600倍 収穫60日前まで/2回以内 収穫60日前まで/2回以内

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

  • 愛媛県病害虫防除所 担当係長 奈尾雅浩

    カンキツ黒点病の防除適期判定に用いる 簡易雨量計の製作法

    第19回農作物病害虫フォーラム資料

  • カンキツの果実で発生する病害

    黒点病 かいよう病

    そうか病 褐色腐敗病 写真:愛媛県 三好孝典氏提供 写真:愛媛県 三好孝典氏提供

    本病被害の 顕在化は 1950年代 後半から

    コスメティック 病害虫 (古橋, 1991) の一種。

  • 1.カンキツ病害の中で最も多く発生する。

    2.果実の商品価値を落とすため被害が大きい。

    3.樹冠の枯れ枝中に形成された胞子が伝染源。

    4.果実発病は、雨水中の胞子数、果面濡れ時間、 降水時間で決定。降雨と発病の関係が大きい。

    カンキツ黒点病とは

  • 愛媛県内におけるカンキツ黒点病の発生状況

    平成23、24年度の発病は、降雨により助長された。

    発病果率(%)

    降水量(mm)

  • カンキツ黒点病の防除 黒点病菌は枯れ枝に生存し伝染源となる

    写真:愛媛県果樹研究センター提供

    胞子は、降雨によって伝播。 これを防除する必要がある。

    大きさ:6-8×3μ m Uecker(1998)

    枯れ枝

    胞子角

  • 井上(1986) マンゼブ剤、マンネブ剤は、散布30日後までの 累積降雨量が 300~350mm の時点で次回散布。

    カンキツ黒点病の防除

    累積降水量が防除実施に影響

    次回散布の目安

    安楽(1978) マンネブ剤を6月上旬に第1回目の薬剤防除を 行い、その後、降水量の合計が 250mm に 達した時の薬剤散布で効果的に防除できる。

  • かんきつ(温州みかん除く) 温州みかん○ (次回の散布は200-250㎜の降雨後または30日以内に散布する薬剤)

    ○ 5月下旬 DT ジマンダイセン水和剤 マンゼブ 600倍 収穫90日前まで/4回以内 収穫30日前まで/4回以内

    ○ ~7月下旬 DT ペンコゼブ水和剤 マンゼブ 600倍 収穫90日前まで/4回以内 収穫30日前まで/4回以内

    DT エムダイファー水和剤 マンネブ 600倍 収穫60日前まで/2回以内 収穫60日前まで/2回以内

    他 デランフロアブル ジチアノン 1,000倍 収穫30日前まで/3回以内 収穫30日前まで/3回以内

    (残効性が劣るので次回の散布を早める薬剤)○ 銅 オキシンドー水和剤80 有機銅 800倍 収穫30日前まで/3回以内 収穫30日前まで/5回以内

    銅 キノンドー水和剤80 有機銅 800倍 収穫30日前まで/3回以内 収穫30日前まで/5回以内

    温州みかん (次回の散布は200-250㎜の降雨後または30日以内に散布する薬剤)8月中旬 DT ジマンダイセン水和剤 マンゼブ 600倍 収穫90日前まで/4回以内 収穫30日前まで/4回以内

    ~9月上旬 DT ペンコゼブ水和剤 マンゼブ 600倍 収穫90日前まで/4回以内 収穫30日前まで/4回以内

    DT エムダイファー水和剤 マンネブ 600倍 収穫60日前まで/2回以内 収穫60日前まで/2回以内

    中晩柑 (残効性が劣るので次回の散布を早める薬剤)

    8月中旬 銅 オキシンドー水和剤80 有機銅 800倍 収穫30日前まで/3回以内 収穫30日前まで/5回以内

    ~9月下旬 銅 キノンドー水和剤80 有機銅 800倍 収穫30日前まで/3回以内 収穫30日前まで/5回以内

    SB ストロビードライフロアブル クレソキシムメチル 2,000倍 収穫14日前まで/3回以内 収穫14日前まで/3回以内

    病害虫の特徴防除上のポイント等 使 用 薬 剤

    (防除上のポイント) 枯枝を取り除く。

    剪定枝を園の近くに放置しない。処理できない場合は、ビニール等で被覆。

    防除薬剤

    一 般 名使用時期/使用回数耕種的防除法

    時期 系統濃 度

    (使用量)

    防除上の留意点(P141)参照

    8月下旬以降に雨の多いときは、9月中・下旬にも追加防除。

    カンキツ黒点病の防除

    マンゼブ剤、マンネブ剤: 次回の散布は 200~250mmの降雨後 または 30日以内に散布する薬剤。

    愛媛県農作物病害虫等防除指針(平成25年)

  • マンゼブ剤およびマンネブ剤の散布間隔は

    累積降水量が200~250mm に達した時、 または散布後1ヶ月を経過した時。 新品種の中で本病にもっとも弱い‘せとか’は マンゼブ剤およびマンネブ剤の散布間隔は

    累積降水量約180mm または散布後約25日。 黒点病に弱い品種(河内晩柑、清見、天草等)についても 散布間隔を短くする。

    農作物病害虫等防除指針(平成25年)

    天草 写真:愛媛県 菊池孝氏、山西和廣氏、兵頭洋仁氏提供

    カンキツ黒点病の防除上の留意点

    清見 せとか

    愛媛果樹研セ(2007) 研究成果より

  • カンキツ黒点病の防除目安

    写真:佐賀県 野口真弓氏提供 写真:佐賀県 田代暢哉氏提供

    簡易雨量計の利用

    幾つかの 型式・手法が 考案されている。

  • 発生予察の手法検討委託事業において、 「簡易雨量計を用いた防除適期判定法の検討」を実施。

    雨量計を試作 長期モニタリング型

    材料費:3,770円 活栓付き

  • 短期モニタリング型 より簡易化 するために

    235mm

    φ 125mm

    図 短期モニタリング型・通常品種用

    φ 120mm

    空気穴

    210mm

    図 短期モニタリング型・罹病性品種用

    170mm

    φ 100mm

    φ 97mm

    空気穴

    満水になった時点が防除時期→防除後、貯水リセット

    材料費:2,518円 材料費:710円

  • 短期モニタリング型

    短期モニタリング型・罹病性品種用

    短期モニタリング型・通常品種用

    問題点:晴天日が続いた時の貯水の蒸発

  • 簡易雨量計設置上の問題点:晴天時の貯水蒸発

  • 気象観測 システムの 雨量計

    あらかじめ 容器に注水し その後の

    水位変化を記録。

    調査目的:晴天時の貯水蒸発量を把握。

    実際に各種簡易雨量計を屋外へ設置。

  • 調査結果

    020406080

    100120

    8/12 8/19 8/22 8/22 8/26 9/2 9/5 9/5 9/9 9/19 9/19 9/24 9/24 10/1 10/7 10/13 10/20 10/31

    降水量

    (mm

    リセ

    ット

    リセ

    ット

    リセ

    ット

    リセ

    ット

    欠測

    欠測

    降水量(mm)

    改良型は、貯水蒸発 抑制パーツを設置。

    3

    7

    11

    15

    19

    23

    8/12 8/19 8/22 8/22 8/26 9/2 9/5 9/5 9/9 9/19 9/19 9/24 9/24 10/1 10/7 10/13 10/20 10/31

    既存型

    改良型水位

    (cm

    リセ

    ット

    リセ

    ット

    リセ

    ット

    リセ

    ット

    長期モニタリング型・活栓付き容器作成

    水位(cm)

    長期モニタリング型・活栓付き容器作成

  • 5

    8

    11

    14

    17

    20

    8/12 8/19 8/22 8/22 8/26 9/2 9/5 9/5 9/9 9/19 9/19 9/24 9/24 10/1 10/7 10/7 10/13 10/20 10/31

    既存型

    改良型水位

    (cm

    リセ

    ット

    リセ

    ット

    リセ

    ット

    リセ

    ット

    リセ

    ット

    7

    10

    13

    16

    19

    8/12 8/19 8/22 8/22 8/26 9/2 9/5 9/5 9/9 9/19 9/19 9/24 9/24 10/1 10/7 10/13 10/20 10/31

    既存型

    改良型水位

    (cm

    リセ

    ット

    リセ

    ット

    リセ

    ット

    リセ

    ット

    改良型は、貯水蒸発 抑制パーツを設置。

    短期モニタリング型・通 常 品 種 用

    短期モニタリング型・罹病性品種用

    調査結果

    降水量(mm)

    水位(cm)

    水位(cm)

    改良型との 蒸発差が大きい。

  • より廉価な簡易雨量計の製作 1

    ペットボトルの利用

    500ml容器は 高さが足りない。

    同じ直径の容器を用いれば 高さが降水量となる。 同型2容器の組み合わせが 適する。

    900ml容器 1500ml容器 1容器の 切り分け 利用は 不適。

  • 100円ショップの製品利用

    ・商品1個は100円。 ・デザイン性の 高いものは不適。 ・持ち運び用の 「取って」付きは 園地の設置に有効。

    より廉価な簡易雨量計の製作 2

    適宜目盛りをつける。

  • 今回の試験結果 1.カンキツ黒点病の防除適期を判定できる 数種の「簡易雨量計」を製作した。

    2.長期モニタリング型、短期モニタリング型、 より廉価な装置を製作した。

    3.短期モニタリング型においては晴天時には、 「貯水蒸発抑制パーツ」を必要とした。

    製作した各種簡易雨量計