Upload
others
View
1
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
ルセンティスによる治療を受ける患者さんへ
監修日本大学医学部 眼科 教授湯澤 美都子
杏林大学医学部 眼科 教授岡田 アナベル あやめ医療従事者から患者さんへの説明用資料
1
加齢黄斑変性とは
ゆがんで見える 暗く見える
加齢黄斑変性は、人や物を見分けるのにとまどったり、文字が読みにくいなどが特徴の病気です。
か れい おう はん へん せい
2
加齢黄斑変性とは
日本では、加齢黄斑変性を主とした黄斑変性症は視覚障害者の原因疾患の第4位です。この疾患の主な原因は、加齢や生活習慣の欧米化などです。欧米では以前より主要な失明原因となる怖い病気として知られていましたが、日本でも高齢者の増加に伴って患者さんの数が増えています。
●視覚障害者手帳交付の原因疾患
第1位第2位第3位第4位第5位
緑内障糖尿病網膜症網膜色素変性黄斑変性症高度近視
網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する研究平成17年度総括・分担研究報告書42.わが国における視覚障害の現状
喫煙者に多くみられることが報告されています。
加齢黄斑変性は、歳をとればかかるおそれのある病気です。
3
加齢黄斑変性とは
●眼の基本構造
黄斑(中心窩)
網膜
脈絡膜
視神経
角膜
瞳孔
水晶体
硝子体
脳へ
黄斑は、視細胞が集まっている
大切な場所です。
加齢黄斑変性は、歳をとるとともに黄斑の働きに異常が起こり、視力が低下する疾患です。
中心窩
黄斑
4
加齢黄斑変性とは
●黄斑部の断面図新生血管
網膜脈絡膜
●眼の基本構造
黄斑(中心窩)
網膜
脈絡膜
視神経
角膜
瞳孔
水晶体
硝子体
脳へ
みゃく らく まく
しん せい けっ かん
しん しゅつ がた い しゅく がた
加齢黄斑変性は、脈絡膜から発生する良くない血管(新生血管)が原因で起こります。
新生血管はもろくて弱いため、破れて出血したり、血液中の成分がもれ出して、黄斑が腫れ、ものが見えにくくなります。加齢黄斑変性には「滲出型」と「萎縮型」の2つのタイプがあります。「萎縮型」は病状の進行が比較的緩やかですが、「滲出型」は進行が速く、急激に視力が低下していきます。ルセンティスは「滲出型」の治療に使われる薬剤です。
5
加齢黄斑変性とは
変視症…見たい部分がゆがんで見えます。
滲出型加齢黄斑変性の自覚症状①
へん し しょう
加齢黄斑変性とは
6
視力低下…見たい部分がぼやけて見えます。
滲出型加齢黄斑変性の自覚症状②
7
加齢黄斑変性とは
中心暗点…見たい部分が暗く見えます。ちゅう しん あん てん
滲出型加齢黄斑変性の自覚症状③
加齢黄斑変性とは
8
コントラスト感度低下…見たい部分が不鮮明に見えます。
滲出型加齢黄斑変性の自覚症状④
9
検査について
①問診
②視力検査
③眼底検査
④網膜断層検査 (光干渉断層計)
⑤蛍光眼底造影
加齢黄斑変性が疑われる患者さんの検査の流れ(検査の内容や順番は、施設により異なることがあります。)
10
検査について
黄斑の範囲は、厚生労働省 網膜脈絡膜・視神経萎縮症研究班「加齢黄斑変性の分類と診断基準」に準じた
細隙灯顕微鏡を用いるなどして、眼底に細くて強い光を当て病気の所見を拡大して、眼底にある網膜の状態を調べます。出血や網膜のむくみなどが観察できます。
さい げき とう けん び きょう
滲出型加齢黄斑変性の眼底写真
中心窩
網膜の血管
視神経乳頭
黄斑
正常な眼の眼底写真
眼底検査について
11
検査について
眼底組織の断面の状態を詳しく調べます。網膜の浮き上がりや網膜のむくみ、新生血管などが観察できます。
正常な眼の黄斑像
滲出型加齢黄斑変性の黄斑像
網膜剥離新生血管
網膜断層検査(光干渉断層計)についてもう まく だん そう けん さ ひかり かん しょう だん そう けい
12
検査について
滲出型加齢黄斑変性正常な眼
滲出型加齢黄斑変性正常な眼
フルオレセイン蛍光眼底造影
インドシアニングリーン
蛍光眼底造影
血液を蛍光させる薬剤を腕の静脈から注射し、カメラで眼底の血管の異常を検査します。新生血管や、出血がどこにあるのかがよくわかります。
蛍光眼底造影についてけい こう がん てい ぞう えい
13
加齢黄斑変性の治療法
● 光線力学的療法 (PDT: photodynamic therapy)
● 抗血管新生療法 ⇒ルセンティスはこの治療法にあたります。
● レーザー光凝固術 などがあります。
加齢黄斑変性には、いくつかの治療法があります。
こう せん りき がく てき りょう ほう
ひかり ぎょう こ じゅつ
こう けっ かん しん せい りょう ほう
14
加齢黄斑変性の治療法その他の治療法
○
○
○
新生血管抜去術
黄斑移動術
経瞳孔温熱療法(TTT:transpupillary thermotherapy)
薬剤の集積した新生血管
中心窩レーザー
光線力学的療法(PDT: photodynamic therapy)ビスダインという光に反応する薬剤を体内に注射した後に、病変部にレーザーを照射する治療法です。
レーザー光凝固術新生血管をレーザー光で焼き固める治療法です。
新生血管中心窩
レーザー
15
ルセンティス療法
ルセンティス療法(抗血管新生療法)ルセンティス療法は、薬剤を眼内に注射することにより新生血管の増殖や成長を抑制する治療法です。
ルセンティスは、網膜の状態を改善します。
薬剤が新生血管に到達
新生血管
中心窩ルセンティス
ルセンティスは網膜の状態を改善し、視力を改善することが期待できます。
16
ルセンティス療法
12ヵ月後+7.2文字
24ヵ月後+6.6文字
24ヵ月後-14.9文字
12ヵ月後-10.4文字
12(文字数)
-20
-16
-12
-8
-4
0
4
8
12 14 16 18 20 22 24(月)0 2 4 6 8 10
ルセンティス0.5mg(240人)
シャム注射(238人)
**last observation carried forward(LOCF)法で補完
※MARINA: Minimally classic/occult trial of the Anti-VEGF antibody Ranibizumab In the treatment of Neovascular Age-related macular degeneration
Rosenfeld P.J., et al. :N. Engl. J. Med., 355(14), 1419(2006)
(投与した場合)
(ルセンティスを 投与しない場合)
投与前からの平均変化量**
●ルセンティスによる視力スコアの変化
MARINA※試験
平均値±標準誤差
ルセンティスは、滲出型加齢黄斑変性に対する視力改善効果が認められたはじめての治療薬です。(海外データ)
17
ルセンティス療法
10文字 17文字
+6.6文字
治 療 前 治 療 後
参考)ETDRS視力検査での視力変化について
ルセンティスを投与する前と投与した後の視力を評価するために、ETDRS視力検査表が用いられました。前頁(16頁)の視力スコア中の+6.6文字とは、例えば治療前に検査表で10文字まで見えていた患者さんが、治療によって17文字まで見えるようになることに相当します。
18
ルセンティス療法
視力が維持された患者さんの割合
100
(%)
投与6ヵ月後(41人)
100
投与12ヵ月後(41人) (41人) (41人)
100
80
60
40
20
0
% %視力スコアの減少が
15文字未満であった患者の割合
24.4
31.7
0
10
50
40
20
30
視力が改善された患者さんの割合
投与6ヵ月後 投与12ヵ月後
%
%
視力スコアが
15文字以上増加した患者の割合
(%)
ノバルティス ファーマ社内資料
●ルセンティスの視力維持効果 ●ルセンティスの視力改善効果
ルセンティスは、加齢黄斑変性に対する視力維持・改善効果が国内の臨床試験で認められました。
19
ルセンティス療法
新生血管
網膜脈絡膜
p<
p<
(μm)
0
200
600
400
中心窩網膜厚の変化
370.7
150.4113.7
0.0001
0.0001
ノバルティス ファーマ社内資料
平均±標準偏差対応のあるt検定
●網膜中心の厚さ(中心窩網膜厚)
(30人) (28人) (26人)ベースライン 投与6ヵ月後 投与12ヵ月後
ルセンティスにより、網膜の厚さが治療前に比べ減少しました。
20
ルセンティス療法
点眼消毒・麻酔 注射
まず、点眼液による消毒と麻酔をおこないます。その後、白眼の部分から眼の中心の硝子体という場所に向けて注射します。
ルセンティスは注射薬です。
21
治療スケジュール
治療開始
1ヵ月後
2ヵ月後
3ヵ月後
12ヵ月後
●●●●
●
検査 注射
月1回3ヵ月間注射します。
定期的に検査を行い必要に応じて注射をします。
必ず治療を受けてください。 主治医の指示に従ってください。
導入期
維持期
月1回ルセンティスを白眼の部分から眼の中心の硝子体という場所に向けて注射します。これを3 ヵ月間繰り返します。
必要に応じて月1回、視力検査と眼底検査、光干渉断層撮影等を行います。検査結果により、必要に応じてルセンティスを投与します。
●1年間のスケジュール例(主治医とよく相談してください)
ルセンティスによる薬物療法は、『導入期』と『維持期』に分けられます。
22
治療スケジュール
3日後
2日後
1日後
治療日
1日前
2日前
3日前
抗菌点眼剤
ルセンティス
抗菌点眼剤
感染を予防するための点眼です。治療日には、病院で眼や眼の周りを十分消毒し、麻酔薬を点眼や注射等した後で、ルセンティスを注射します。
ルセンティスの注射を受ける前後3日間は、必ず抗菌点眼剤(抗生物質の目薬)を点眼しましょう。
23
注意すること
● 眼の痛みや不快感● 眼充血の悪化● 目やに● 光に対する過敏症● 飛蚊症(目の前を小さな「浮遊物」が
飛んでいるように見える)
● 視力の低下を感じる
注射後1週間は感染のおそれがあるので、以下の症状がある場合は直ちに治療医に診てもらいましょう。
24
注意すること
● 治療後に眼がかすむなどの症状が続いている間は、高いところにあがったり、自動車の運転など危険を伴う機械の操作はしないでください。
● 一般薬(薬局で売っている薬)を含めて、新しく他の薬を使用する場合は、担当医に必ず伝えてください。
● 注射後の入浴、洗顔、洗髪については、担当医の指示に従ってください。
● 喫煙が加齢黄斑変性に良くないことがわかっています。できるだけ早く禁煙することが大事です。
×××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××眼に不快感があっても、手で眼をこすらないようにしましょう。
治療後に注意すること。
25
副作用について
日本で行われた臨床試験では、総症例88人中21人(23.9%)に副作用が報告されました。主な副作用は、眼圧上昇8人(9.1%)、視力低下3人(3.4%)、眼痛3人(3.4%)、網膜出血2人(2.3%)、一過性視力低下2人(2.3%)が報告されました。
ルセンティスの副作用
26
副作用について
● 薬剤を眼に注射するときやその後に、非常にまれですが、細菌などが眼の中に入る場合があります。そのような場合には、強い炎症(眼内炎)が起こることがありますので、注射後は担当医の指示に十分に従うようにしてください。
● 全身性の副作用として、脳卒中が報告されています。 以前に脳卒中または一過性脳虚血発作を起こしたことのある方は、担当医にお伝えください。
● 注射した後に視力が低下したと感じたり、からだに異常が起きたなど、いつもとは異なることに気づかれましたら、直ちに担当医にご連絡ください。
とくに注射後は、担当医の指示に従うことが大切です。
ルセンティスの副作用
27
日頃からチェック
1. アムスラーチャートは30cm離してください。2. 必ず片目ずつチェックしましょう。3. 老眼鏡はかけたままチェックしましょう。※治療中の眼だけでなく、もう一方の眼もチェックしましょう。
線がぼやけて薄暗く見える
中心がゆがんで見える
部分的に欠けて見える
●下記のように見えたり、以前と比べて見え方がひどくなった場合は、 担当医に相談しましょう。
加齢黄斑変性 チェックシート(アムスラーチャート)
日頃からご自分でもチェックしましょう。
28
LUC005CI(N002)4.5TP2010年12月作成
SMH014