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Copyright (C) 2010 JETRO. All rights reserved. エネルギー効率の向上および再生可能エネルギー利用の促進に向けた米 国連邦政府・主要州のプログラム活用可能性調査 2010 9 日本貿易振興機構(ジェトロ) 海外調査部

エネルギー効率の向上および再生可能エネルギー利用の促進に ... · 2015-02-13 · 1 いずれの予算を環境・エネルギー関連に分類するかは、米国のシンクタンク「Center

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エネルギー効率の向上および再生可能エネルギー利用の促進に向けた米

国連邦政府・主要州のプログラム活用可能性調査

2010 年 9 月

日本貿易振興機構(ジェトロ)

海外調査部

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はじめに

オバマ大統領の就任直後の 2009年 2月 17日に成立した「2009 年米国再生・再投資法

(H.R.1:American Recovery and Reinvestment Act of 2009)」は、総額 7,872億ドルの、そ

れまでに例をみない大規模な景気対策法である。そのうち、環境・エネルギー関連のプログラム

予算として 707 億ドルが配分され、また、環境・エネルギー関連の税制措置として 200億ドルが

手当てされている1。以下の表 1および表 2はその主な内訳である。

表 1 「2009 年米国再生・再投資法」における環境・エネルギー関連予算

スマート・グリッドの整備 170 億ドル

・スマート・グリッドの整備費用 110 億ドル

・建設に関わる債務保証 60 億ドル

建物・電化製品のエネルギー効率向上 258 億ドル

・州政府のエネルギー・プログラム支援 63 億ドル

・低所得者住宅の耐候性向上 50 億ドル

・連邦政府ビルのエネルギー効率向上 45 億ドル

再生可能エネルギーの導入促進 64 億ドル

・石炭火力発電のための二酸化炭素回収・貯留の研究開発 34 億ドル

・再生可能エネルギーの研究開発 25 億ドル

クリーン自動車の開発 33 億ドル

・先進的なバッテリーの研究開発 20 億ドル

公共交通の開発 177 億ドル

・高速鉄道の開発 93 億ドル

環境関連職業訓練 5 億ドル

注 1:税制措置を除く

注 2:金額は 2009年から 2019年までの 11年間の合計

表 2 「2009 年米国再生・再投資法」における環境・エネルギー関連税制措置

再生可能エネルギー発電に対する税控除の延長 131億ドル

再生可能エネルギー発電に対し、「生産税控除」の代

わりに「投資税控除」を選択できるようにする措置 3億ドル

再生可能エネルギー発電等に対する資産税控除の限度

額の撤廃 9億ドル

再生可能エネルギー発電を行う施設への助成のための

債券の発行 6億ドル

連邦政府や地方政府の省エネ措置への助成のための債

券の発行 8億ドル

既存住宅の省エネ措置に対する税額控除の控除率の改

善等 20億ドル

プラグイン電気自動車の購入に対する税控除 20億ドル

注:金額は 2009年から 10年間の合計

1 いずれの予算を環境・エネルギー関連に分類するかは、米国のシンクタンク「Center for America

Progress」の整理による。

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また、2009 年 2月 26日に議会に提出された 2010年度大統領予算教書「新たな責任の時代:

米国の約束の再生」においては、主として次のような環境・エネルギー関連の目標や施策が掲げ

られた。

○ 温室効果ガス排出量を 2020年までに 2005 年レベルの 14%減、2050 年までに 2005

年レベルの 83%減まで削減する。

○ 全排出権をオークション方式によって取引するキャップ・アンド・トレード制度を

導入する。これによる収入のうち 1,500 億ドルをクリーン・エネルギー技術開発に

充て、残額は、社会的弱者とされる家庭、地域社会、企業がクリーン・エネルギー

社会にスムーズに移行出来るよう支援に充てる。

○ 「米国再生・再投資法」並びに 2010年度予算における融資保証によって、再生可能

エネルギーによる発電量を倍増する。

○ 官民連携により、商業規模の二酸化炭素回収・貯留付きの石炭火力発電所を 5 カ所

建設する。また、エネルギー省の二酸化炭素地中貯留実証試験を拡大する。

○ 連邦政府ビルのエネルギー効率向上、低所得者住宅の耐候性向上、州や地方政府の

エネルギー効率向上施策の支援、送配電網の整備などのために、「米国再生・再投

資法」の予算に上乗せした支援を行う2。

さらに、2010 年 2月 1日に発表された 2011年度大統領予算教書でも、大統領はエネルギー問

題の重要性を説き、民間における雇用創出・拡大の面でクリーン・エネルギー分野への積極的な

投資活動の実施を 2011 年度も継続していくとしている3。

一方でオバマ大統領就任後、金融危機の対応に追われた 1年が終了し、米国民の関心はもっぱ

ら今尚低迷し続ける厳しい雇用状況にシフトし、大統領への支持率は低下している。就任後 10

年間かけて 500 万件のグリーン・ジョブ(Green Jobs、環境やエネルギー保全関連の職)を創出

するというオバマ大統領選挙公約の一つ4が、今後どの程度実現されるのかは不明だが、米国再

生・再投資法や 2011年度予算に基づく様々な施策が今後も引き続き具体化していくことで、連

邦政府や各州の環境関連施策は一層充実したものになるとも期待されている。

このように環境・エネルギー施策を巡って大変革の時期にある中、連邦および各州政府のエネ

ルギー効率向上および再生可能エネルギー導入促進施策の「現状」を把握することは、今後の新

たな施策導入を評価する上で重要であるのみならず、米国において環境関連事業を展開するに当

たって、今後のビジネス・チャンスを見極める上でも重要である。

2 Office of Management and Budget(2009年 2月 26日)“A New Era of Responsibility: Renewing

America’s Promise”: http://www.gpo.gov/fdsys/pkg/BUDGET-2010-BUD/pdf/BUDGET-2010-BUD.pdf

3 Government Printing Office(2010年 2月 1日) “Budget of the U.S. Government Fiscal Year 2001” :

http://www.gpo.gov/fdsys/pkg/BUDGET-2011-BUD/pdf/BUDGET-2011-BUD.pdf (p.6)

4 選挙中の発表資料は Barackobama.com、”Barack Obama and Joe Biden: New Energy for America”:

http://www.barackobama.com/pdf/factsheet_energy_speech_080308.pdf (p.3)

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連邦政府・州政府ともに、政府機関のエネルギー削減目標などのエネルギー効率向上および再

生可能エネルギー導入促進関連の制度(規制)を設け、また、グラントやリベート制度、融資制

度、税制優遇措置といった公的な助成プログラムを用意している。本報告書では、連邦および主

要州(米国全体に対する施策の影響が大きいと考えられる州内総生産上位 20位までの州)政府

におけるこれら制度やプログラムの主なものを紹介する。

なお、環境関連装置・機材等の製造者が活用する制度については、二重枠囲いとし、省エネ・

新エネ製品の消費者や利用者が活用する制度と区別した。なお、調査終了時点は 2010年 3月末

となっている。

2010年 9月

日本貿易振興機構(ジェトロ)

ニューヨーク・センター

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目次

はじめに ..................................................................... ii

1 連邦政府における省エネ・新エネ関連助成プログラム.........................- 1 -

1.1 連邦政府のエネルギー計画 ............................................ - 1 -

1.1.1 エネルギー効率向上のための国家行動計画 2025 年に向けたビジョン:変革のた

めの枠組み(National Action Plan for Energy Efficiency Vision for 2025: A

Framework for Change) ...................................................... - 1 -

1.2 連邦政府の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用関連制度..... - 2 -

1.2.1 連邦政府機関およびその建物のエネルギー削減目標 ...................... - 2 -

1.2.2 グリーン電力調達目標(Green Power Purchasing) ...................... - 3 -

1.2.3 連邦の電化製品基準 .................................................. - 4 -

1.3 連邦政府の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用関連プログラム- 4 -

1.3.1 助成プログラム ...................................................... - 4 -

1.3.2 融資プログラム ...................................................... - 6 -

1.3.3 税制優遇措置 ........................................................ - 9 -

2 主要州政府における省エネ・新エネ関連助成プログラム ...................... - 13 -

2.1 カリフォルニア州(州別 GDP第 1位、州別人口第 1位) ................. - 13 -

2.1.1 カリフォルニア州の主なエネルギー計画 ............................... - 14 -

2.1.2 カリフォルニア州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用関連制度- 16 -

2.1.3 カリフォルニア州のエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム- 20 -

2.2 ニューヨーク州(州別 GDP第 2位、州別人口第 3位) ................... - 24 -

2.2.1 ニューヨーク州のエネルギー計画 ..................................... - 24 -

2.2.2 ニューヨーク州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用関連制度- 26 -

2.2.3 ニューヨーク州のエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム- 28 -

2.3 テキサス州(州別 GDP 第 3位、州別人口第 2位) ....................... - 39 -

2.3.1 テキサス州のエネルギー計画 ......................................... - 39 -

2.3.2 テキサス州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度 .. - 40 -

2.3.3 テキサス州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム- 41 -

2.4 フロリダ州(州別 GDP 第 4位、州別人口第 4位) ....................... - 43 -

2.4.1 フロリダ州のエネルギー計画 ......................................... - 43 -

2.4.2 フロリダ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用関連制度 .. - 44 -

2.4.3 フロリダ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム- 46 -

2.5 イリノイ州(州別 GDP 第 5位、州別人口第 5位) ....................... - 48 -

2.5.1 イリノイ州のエネルギー計画 ......................................... - 48 -

2.5.2 イリノイ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用関連制度 .. - 49 -

2.5.3 イリノイ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム- 51 -

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2.6 ペンシルベニア州(州別 GDP第 6位、州別人口第 6位) ................. - 57 -

2.6.1 ペンシルベニア州のエネルギー計画等 ................................. - 57 -

2.6.2 ペンシルベニア州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度- 58 -

2.6.3 ペンシルベニア州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログ

ラム - 60 -

2.7 ニュージャージー州(州別 GDP 第 7位、州別人口第 11 位) .............. - 70 -

2.7.1 ニュージャージー州のエネルギー計画 ................................. - 70 -

2.7.2 ニュージャージー州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用関連制度- 71 -

2.7.3 ニュージャージー州政府機関等が実施する主なエネルギー効率向上・再生可能エネ

ルギー利用促進プログラム ................................................... - 74 -

2.8 オハイオ州(州別 GDP 第 8位、州別人口第 7位) ....................... - 83 -

2.8.1 オハイオ州の主なエネルギー計画等 ................................... - 83 -

2.8.2 オハイオ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用関連制度 .. - 83 -

2.8.3 オハイオ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム- 86 -

2.9 ジョージア州(州別 GDP第 9位、州別人口第 9位) ..................... - 92 -

2.9.1 ジョージア州のエネルギー計画 ....................................... - 92 -

2.9.2 ジョージア州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度 - 93 -

2.9.3 ジョージア州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム- 94 -

2.10 ノースカロライナ州(州別 GDP 第 10位、州別人口第 10 位) ............ - 100 -

2.10.1 ノースカロライナ州のエネルギー計画 .............................. - 100 -

2.10.2 ノースカロライナ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制

度 - 100 -

2.10.3 ノースカロライナ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プ

ログラム - 102 -

2.11 ミシガン州(州別 GDP 第 11位、州別人口第 8位) ..................... - 107 -

2.11.1 ミシガン州のエネルギー計画 ...................................... - 107 -

2.11.2 ミシガン州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度- 108 -

2.11.3 ミシガン州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム- 109 -

2.12 バージニア州(州別 GDP第 12位、州別人口第 12位) .................. - 113 -

2.12.1 バージニア州のエネルギー計画 .................................... - 113 -

2.12.2 バージニア州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度- 114 -

2.12.3 バージニア州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラ

ム - 115 -

2.13 マサチューセッツ州(州別 GDP 第 13位、州別人口第 15 位) ............ - 118 -

2.13.1 マサチューセッツ州のエネルギー計画 .............................. - 118 -

2.13.2 マサチューセッツ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制

度 - 119 -

2.13.3 マサチューセッツ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プ

ログラム - 121 -

2.14 ワシントン州(州別 GDP第 14位、州別人口第 13位) .................. - 130 -

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2.14.1 ワシントン州のエネルギー計画 .................................... - 130 -

2.14.2 ワシントン州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度- 130 -

2.14.3 ワシントン州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラ

ム - 132 -

2.15 メリーランド州(州別 GDP第 15位、州別人口第 19位) ................ - 134 -

2.15.1 メリーランド州のエネルギー計画 .................................. - 134 -

2.15.2 メリーランド州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度- 135 -

2.15.3 メリーランド州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログ

ラム - 138 -

2.16 ミネソタ州(州別 GDP 第 16位、州別人口第 21位) .................... - 144 -

2.16.1 ミネソタ州のエネルギー計画 ...................................... - 144 -

2.16.2 ミネソタ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度- 144 -

2.16.3 ミネソタ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム- 146 -

2.17 アリゾナ州(州別 GDP 第 17位、州別人口第 14位) .................... - 151 -

2.17.1 アリゾナ州のエネルギー計画 ...................................... - 151 -

2.17.2 アリゾナ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度- 151 -

2.17.3 アリゾナ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム- 153 -

2.18 テネシー州(州別 GDP 第 18位、州別人口第 17位) .................... - 156 -

2.18.1 テネシー州のエネルギー計画 ...................................... - 156 -

2.18.2 テネシー州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度- 156 -

2.18.3 テネシー州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム- 157 -

2.19 インディアナ州(州別 GDP第 19位、州別人口第 16位) ................ - 161 -

2.19.1 インディアナ州のエネルギー計画 .................................. - 161 -

2.19.2 インディアナ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度- 162 -

2.19.3 インディアナ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログ

ラム - 163 -

2.20 コロラド州(州別 GDP 第 20位、州別人口第 22位) .................... - 165 -

2.20.1 コロラド州のエネルギー計画 ...................................... - 165 -

2.20.2 コロラド州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度- 166 -

2.20.3 コロラド州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム- 167 -

3 主要州総括表 ......................................................... - 170 -

4 省エネ・新エネに関するコラム .......................................... - 171 -

4.1 2011 年度連邦予算案における省エネ・新エネ予算動向 .................. - 171 -

4.1.1 クリーン・エネルギー経済への転換を目指して ........................ - 171 -

4.1.2 エネルギー省以外の各省関連予算ハイライト .......................... - 173 -

4.2 「2009 年米国再生・再投資法」における環境・エネルギー関連プログラムとその実

施状況 - 174 -

4.2.1 始動 1年後の進捗状況 .............................................. - 174 -

4.2.2 始動 1年目を迎えた今後の課題 ...................................... - 177 -

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4.3 「2009 年米国再生・再投資法」におけるバイアメリカン条項の取り扱い .. - 178 -

4.3.1 経済回復への保護主義的アプローチ .................................. - 178 -

4.3.2 バイアメリカン条項の影響 .......................................... - 179 -

4.4 2010 年一般教書演説において示された省エネ・新エネ分野の政権戦略 .... - 181 -

4.4.1 クリーン・エネルギー経済の形成に向けて ............................ - 181 -

4.4.2 一般教書演説に対する反応 .......................................... - 182 -

4.5 2010 年初旪現在で審議中の省エネ・新エネ関連連邦法案 ................ - 183 -

4.5.1 気候変動関連法案 .................................................. - 183 -

4.5.2 住宅を対象とした省エネおよび耐候化関連法案 ........................ - 185 -

4.5.3 再生可能エネルギー関連法案 ........................................ - 186 -

4.6 省エネ・新エネ分野における海外企業の米国市場への進出状況 .......... - 187 -

4.6.1 米国市場の商機にかける海外企業 .................................... - 187 -

4.6.2 米国再生・再投資法の資金が外資系企業に流出との批判噴出 ............ - 189 -

4.7 省エネ・新エネ分野の米国市場動向 .................................. - 190 -

4.7.1 2010 年米国省エネ市場動向 .......................................... - 190 -

4.7.2 2010 年米国新エネ市場動向 .......................................... - 192 -

図表目次

図 1 米国風力タービン市場の企業別シェア内訳(2008年) .................... - 187 -

図 2 米国太陽電池清算市場の企業別シェア内訳(2008年) .................... - 189 -

表 1 「2009 年米国再生・再投資法」における環境・エネルギー関連予算 ............. ii

表 2 「2009 年米国再生・再投資法」における環境・エネルギー関連税制措置 ......... ii

表 3 連邦政府機関電力消費量目標達成スケジュール ............................ - 3 -

表 4 再生可能エネルギー・グラントの対象となる再生可能エネルギー利用装置..... - 5 -

表 5 税控除額の算出レート .................................................. - 9 -

表 6 事業エネルギー投資税控除の控除対象、控除額と装置要件 ................. - 10 -

表 7 カリフォルニア州の再生可能エネルギー利用発電(2008年) ............... - 14 -

表 8 カリフォルニア・ソーラー・イニシアチブのプログラムの構成 ............. - 16 -

表 9 カリフォルニア・ソーラー・イニシアチブの助成金額の例 ................. - 20 -

表 10 ニューヨーク州の再生可能エネルギー利用発電(2008年) ................ - 24 -

表 11 熱源別発電量の上限 .................................................. - 26 -

表 12 NYSERDA-分散型熱電併給発電の助成対象と助成上限額 ................... - 29 -

表 13 NYSERDA-援助家庭パフォーマンス助成制度の対象と助成額 ............... - 30 -

表 14 NYSERDA-既存施設プログラムの申請手続き ............................. - 33 -

表 15 NYSERDA-再生可能、クリーン・エネルギー、エネルギー効率製品製造・奨励プログ

ラムの助成内容 ......................................................... - 35 -

表 16 テキサス州の再生可能エネルギー利用発電(2008年) .................... - 39 -

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表 17 フロリダ州の再生可能エネルギー利用発電(2008年) .................... - 43 -

表 18 ソーラー・エネルギー・システム・インセンティブ・プログラムの助成額 ... - 46 -

表 19 イリノイ州の再生可能エネルギー利用発電(2008年) .................... - 48 -

表 20 ペンシルベニア州の再生可能エネルギー利用発電(2008 年) .............. - 57 -

表 21 コミュニティ・経済開発局-代替・クリーン・エネルギープログラム助成制度の内

容 ..................................................................... - 61 -

表 22 ニュージャージー州の再生可能エネルギー利用発電(2008 年) ............ - 70 -

表 23 ニュージャージー州における再生可能可能エネルギー源と目標値........... - 72 -

表 24 ニュージャージー利用者立地再生可能エネルギーリベートの対象とその額 ... - 74 -

表 25 エネルギースター住宅プログラムリベートタイプ ........................ - 79 -

表 26 エネルギースターによる住宅性能プログラムの目的と内容 ................ - 80 -

表 27 ヒート・ポンプ融資プログラムの内容 .................................. - 81 -

表 28 オハイオ州の再生可能エネルギー利用発電(2008年) .................... - 83 -

表 29 オハイオ州における削減目標率(2010~2015 年) ........................ - 84 -

表 30 ODOD-先進エネルギー・プログラム・グラントの住宅タイプ別助成金額...... - 87 -

表 31 ODOD - 先進エネルギー・プログラム・グラント ......................... - 88 -

表 32 ODOD-先進エネルギー・プログラム・グラントのフェーズ別助成額.......... - 90 -

表 33 ジョージア州の再生可能エネルギー利用発電(2008年) .................. - 92 -

表 34 クリーン・エネルギー資産リベートプログラムの内容 .................... - 94 -

表 35 住宅用省エネ機器リベートプログラムのリベート額 ...................... - 95 -

表 36 TVAグリーン・パワー転換発電パートナー・プログラムの対象と買取要件 ... - 95 -

表 37 TVAパートナー電力企業のためのエネルギーライト融資プログラムの内容 ... - 97 -

表 38 クリーン・エネルギー税額控除(所得税)の製品別控除上限額 ............ - 98 -

表 39 クリーン・エネルギー税額控除(法人税)の製品別控除上限額 ............ - 98 -

表 40 ノースカロライナ州の再生可能エネルギー利用発電(2008 年) ........... - 100 -

表 41 公益企業の代替エネルギー研究費回収上限額 ........................... - 101 -

表 42 NC グリーン・パワー生産インセンティブの金額 ......................... - 102 -

表 43 再生可能エネルギー税控除の対象製品と控除限度額 ..................... - 106 -

表 44 ミシガン州の再生可能エネルギー利用発電(2008年) ................... - 107 -

表 45 住居用省エネ機器リベートプログラムの製品別リベート額 ............... - 110 -

表 46 バージニア州の再生可能エネルギー利用発電(2008年) ................. - 113 -

表 47 マサチューセッツ州の再生可能エネルギー利用発電(2008 年) ........... - 118 -

表 48 ネット・メータリングの対象発電装置 ................................. - 120 -

表 49 CEC - マサチューセッツ州ソーラー・リベート ......................... - 122 -

表 50 CEC - マサチューセッツ・ソーラー・インセンティブのリベート額算出レート- 123 -

表 51 MTC – マサチューセッツ風力インセンティブ・プログラム ............... - 123 -

表 52 ワシントン州の再生可能エネルギー利用発電(2008年) ................. - 130 -

表 53 メリーランド州の再生可能エネルギー利用発電(2008年) ............... - 134 -

表 54 再生可能エネルギー利用システム目標値 ............................... - 135 -

表 55 コンプライアンス料の内容 ........................................... - 136 -

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表 56 ソーラー・エネルギー・グラント・プログラムのリベート額 ............. - 138 -

表 57 中型ソーラーエネルギー助成プログラム ............................... - 138 -

表 58 グリーン・ビルディング所得税控除の対象と控除額 ..................... - 143 -

表 59 ミネソタ州の再生可能エネルギー利用発電(2008年) ................... - 144 -

表 60 アリゾナ州の再生可能エネルギー利用発電(2008年) ................... - 151 -

表 61 テネシー州の再生可能エネルギー利用発電(2008年) ................... - 156 -

表 62 インディアナ州の再生可能エネルギー利用発電(2008年) ............... - 161 -

表 63 コロラド州の再生可能エネルギー利用発電(2008年) ................... - 165 -

表 64 主要州の基礎情報と制度比較 ......................................... - 170 -

表 65 2011年度予算案におけるエネルギー関連ハイライト ..................... - 172 -

表 66 エネルギー省関連で廃止が提案されている主なプログラム ............... - 172 -

表 67 エネルギー省以外の関連予算ハイライト ............................... - 173 -

表 68 基礎研究関連省庁予算倍増案に関連して 2011 年度大統領予算案に組込まれたエネル

ギー関連予算 .......................................................... - 174 -

表 69 クリーン・エネルギー分野別支出状況(2009 年 12月末時点) ............ - 174 -

表 70 クリーン・エネルギープログラムにより創出・維持される雇用者数........ - 175 -

表 71 省庁別クリーン・エネルギー関連支出状況(2009年 12月 31日時点) ..... - 175 -

表 72 クリーン・エネルギー分野の投資進捗状況と今後の予測 ................. - 176 -

表 73 バイアメリカン条項と適用例外 ....................................... - 179 -

表 74 2010年一般教書演説において打ち出されたクリーン・エネルギー関連政策 . - 181 -

表 75 パイク・リサーチ社による米国省エネ製品・サービス市場動向予測........ - 191 -

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1 連邦政府における省エネ・新エネ関連助成プログラム

米国では、エネルギー効率向上や再生可能エネルギー導入促進のための施策は、主に州政府や

民間の電力供給企業を中心に実施されているが、連邦政府レベルでの施策も多数存在する。多く

はブッシュ政権時代、またはそれ以前に制定された制度であるが、オバマ政権発足以降も、米国

再生・再投資法によって、再生可能エネルギー発電を行う企業などに対する財務省によるグラン

ト制度が新設されたり、再生可能エネルギー発電を行う場合の発電量に応じた法人税控除制度の

適用期限が延長されるなどの改善が加えられている。

1.1 連邦政府のエネルギー計画

1.1.1 エネルギー効率向上のための国家行動計画 2025 年に向けたビジョン:変革のための枠

組み(National Action Plan for Energy Efficiency Vision for 2025: A Framework

for Change)

「国家省エネ行動計画(NAPEE: National Action Plan for Energy Efficiency)」は、電

気・ガス公益企業、公益企業を規制する側(政府機関)、その他の電気・ガス利用者の省エネ問

題に取り組む提携機関の間における連携努力を通して、持続可能で野心的な省エネ問題への取り

組みを推進するために、官民連携イニシアチブとして 2005年秋に発足した(電力・ガス企業、

州政府機関、その他機関が参加する組織によって検討されてきた)。このイニシアチブを通じて、

米国の住宅、建物、学校がエネルギー消費量を削減し、消費者の支払う公共料金を何十億ドルと

節減し、無駄な送電線やガスのパイプライン等の建設ニーズを引き下げることが出来るとしてい

る5。

2008 年 11月にエネルギー省および環境保護庁が NAPEEの成果として発表した報告書(国家省

エネ行動計画 2025年に向けたビジョン:変革のための枠組み)では、2025 年までの省エネ化

に向けた、州政府、公益企業、投資家等その他の関係者が取り組むべき「10の実施目標」が提

示されている。その中で、「利用可能な省エネ資源の活用により、2025年までに予想される電

力消費増加量の 50%以上(電力消費量の 20%、天然ガス消費量の 10%に相当)に対応できる可能

性がある」との見解が示されている。また、この数値を達成する省エネ化が全国的に進めば、そ

の経済効果として、2025 年までに対策を何も取らなかった場合に比べ電力料金が 1,000億ドル

節減され、温室効果ガスも大幅に削減されるとしている。

「10 の実施目標」は次のとおりである。

5 エネルギー省、” National Action Plan for Energy Efficiency”:

http://www.oe.energy.gov/eeactionplan.htm

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目標 1: 費用対効果の高い省エネを優先度の高い資源として位置付ける。

目標 2: 省エネ問題とエネルギー資源問題が同等に対処されるべく、公益企業および

その他プログラム実施者によるインセンティブの調整を図る仕組みを形成す

る。

目標 3: 長期的な省エネ効果の把握に役立つ様な、費用対効果の高い省エネ措置の定

義方法について、確認プロセスを設定する。

目標 4: 電力料金設定者は、透明性の高い評価、計測、検証メカニズムを設定する。

目標 5: 効果的な省エネ対策実施体制を確立する。

目標 6: 堅強な省エネプログラムの実施に向けて、州政府の政策を策定する。

目標 7: 省エネ投資の促進のため、公共料金とインセンティブの調整を図る。

目標 8: 最先端の電力料金請求システムを確立させる。

目標 9: 省エネに関する情報の最先端の共有・伝達を実施する。

目標 10:先進技術の活用のため、制度上の障壁を除去し、かつ、迅速な技術導入を目

指す6。

1.2 連邦政府の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用関連制度7

1.2.1 連邦政府機関およびその建物のエネルギー削減目標

「2005 年エネルギー政策法(EPAct2005: Energy Policy Act of 2005)」を強化した「2007

年エネルギー独立・安全保障法 (EISA: Energy Independence and Security Act of 2007)」

や、2007 年 1月並びに 2009年 10月に発令された大統領令に基づく措置で、連邦政府機関のエ

ネルギー消費量を 2015 年度までに 2003 年比で 30%削減する目標を掲げている。

原則的に「ライフサイクルから見て費用対効果が高いとされる場合」と限定しながらも、以下

に記述する省エネ措置が義務付けられている。

○ 連邦政府機関に対して、可能な限りエネルギースター8認定製品やエネルギー省の

FEMP(連邦政府に対するエネルギー管理プログラム)認定製品からの調達を指示。

6 環境保護庁(2008年 11月)”National Action Plan for Energy Efficiency – Vision for 2025”:

http://www.epa.gov/RDEE/documents/vision.pdf (pp.14 - 16)

7「2.エネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用関連制度」および「3.エネルギー効率向上・再生可能エ

ネルギー利用関連プログラム」は、ノースカロライナ州立大学ソーラーセンターの Database of State

Incentives for Renewables & Efficiency (DSIRE)をもとに記述した。(以下、各州の施策やプログラムにお

いても同じ)なお、主な制度やプログラムを掲げたものであり、全てを網羅するものではない。また、制度によ

っては、既に更新・変更・廃止されている場合もある。

8 エネルギースター:エネルギー省と環境保護庁が共同で実施する、省エネ製品や省エネ慣行の普及プログラム。

省エネ基準に適合する家電や OA機器、住宅などに対する環境ラベリング制度のほか、建物のエネルギー効率向

上に関わるガイドラインの提示などを実施している。なお、パソコン、プリンター、コピー機等の OA製品に対

するラベリング制度は、日本、EU、カナダ等との国際相互承認の対象となっている(国際エネルギースター・プ

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○ 新築建物について、米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)が定める省エネ基準、または、

「国際省エネルギーコード(IECC)」の 30%以下の水準で設計するよう義務付け。

また、新築・改築に関して、持続可能な設計を原則として行うことを義務付け

(EPAct2005)。

○ 新築または本格的な改修工事中の連邦政府の建物について、温水需要の尐なくとも

30%を太陽熱温水器から供給するよう義務付け(EISA)。

○ 20台以上の公用車を所有する連邦政府機関に対し、石油燃料の消費量を 2015 年ま

で毎年 2%削減する一方、非石油系燃料の消費量を毎年 10%ずつ増大させるよう義務

付け。

○ 連邦政府機関に対し、ライフサイクル費用の面で従来型の乗用車を維持するのと比

較的差がないと判断される場合は、プラグイン・ハイブリッド車を購入するよう義

務付け9。

1.2.2 グリーン電力調達目標(Green Power Purchasing)

EPAct2005では、それまでに設定されたエネルギー節減目標値等の幾つかが強化された。

まず、連邦政府機関による電力消費量について、その一定割合を、表 3の目標達成スケジュ

ールに従い、再生可能エネルギー(ソーラー、風力、バイオマス、埋立地ガス、潮力、波力、地

熱、地方自治体の固形廃棄物、水力発電〔既存の水力発電事業の拡張等により新たに強化された

発電能力に限定〕)から供給することを定めている。

表 3 連邦政府機関電力消費量目標達成スケジュール

時期 目標値

2010~2012年度 5.0%

2013 年度以降 7.5%

また、連邦政府機関が再生可能エネルギーを利用して自家発電を行った場合の電力消費量に関

しては、再生可能エネルギークレジット(RECs: Renewable Energy Credit)が通常の 2倍計算

で支給される。

さらに、太陽光発電に関しては、1997 年にエネルギー省により打ち出された「ソーラー屋根

100 万台達成インセンティブ(Million Solar Roof Incentive)」の一環として、2010年までに

連邦政府機関の建物に 2万台の設置が義務付けられた10。

ログラム)。2008年にはエネルギースター制度によって、米国全体で自動車に換算して 2,900万台分の温室効

果ガスが削減され、190億ドルの光熱費が節約されたとされる。

9 DSIRE(2009年 10 月 7 日更新) “Energy Goals and Standards for Federal Government”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=US02R&re=1&ee=1

10 DSIRE(2009年 7月 27 日更新) “U.S. Federal Government - Green Power Purchasing Goal”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=US01R&re=1&ee=1

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1.2.3 連邦の電化製品基準

EPAct2005、EISA、2009 年 2月に大統領からエネルギー長官に発された覚書(Memorandum for

the Secretary of Energy)に基づき、省エネ電化製品に関する基準や目標が設定されている。

主な内容は以下のとおり。

○ エネルギー省は、19の家庭用電化製品(エアコン、暖房機、冷蔵庫、洗濯機、乾燥

機、食器洗い機、除湿機、ボイラー、天井翼など)および 14の商用電化製品(電気

モーター、ボイラー、冷蔵装置、冷蔵機能付き自動販売機など)に関する省エネ達

成基準を策定・提示(EPAct2005)。

○ 電化製品の省エネ基準について、新機種に対する新基準を設定し、既存の基準を改

定(EISA)。主要なものは次のとおり。

・ 2012~2014 年に汎用電球(common light bulbs)の 20~30%省エネ化を達成。

・ 2020年までに同電球の 60%省エネ化を達成。

○ 省エネ基準設定が未完成のものについて、可能な限り迅速に結論を出すよう指示

(覚書)11。

1.3 連邦政府の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用関連プログラム

1.3.1 助成プログラム12

(1) 財務省-再生可能エネルギー・グラント(US Department of Treasury-Renewable

Energy Grants)【再生可能】13

2009 年 2月に成立した「米国再生・再投資法」では、連邦政府による事業エネルギー投資税

控除(ITC: Business Energy Investment Tax Credit)の対象となる企業等(商業、産業、農家

等)に対し、新装置導入において、投資税控除、あるいは財務省実施による当該助成プログラム

のいずれかの利用を選択する権利を付与している14。また、同法では、再生可能電力生産税控除

(PTC: Renewable Electricity Production Tax Credit)の対象となる企業等による新装置導入

に関しても、税控除の代わりに当該助成を受給することを認めている15。

なお、助成金は納税者の総所得申告額には含まれない。また、納税者はこれら複数のインセン

ティブを同時に受給してはならないとされている。

11 DSIRE(2009年 5月 13 日更新) “Federal Appliance Standards”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=US04R&re=1&ee=1

12 助成(grant)、リベート(rebate)、発電量に応じたインセンティブ支給(incentive)制度等を含む。

13 各プログラム名の後に記載されている【省エネ】はエネルギー効率向上(省エネ)プログラムを、【再生可

能】は再生可能エネルギー(代替エネルギー)利用促進プログラムを指す。

14 本論「1.3.3(3)事業エネルギー投資税控除」参照。

15 本論「1.3.3(2)再生可能電力生産税控除」参照。

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財務省-再生可能エネルギー・グラントは、これまで税額控除が中心であった連邦政府の財政

支援策の中にあって、企業等の再生可能エネルギー関連設備設置に対する連邦政府の直接のグラ

ント制度として、「米国再生・再投資法」の目玉的な制度である。助成対象となる設備は、a.建

設開始が 2009 年 1月 1日より前の場合は、2009 年 1 月 1日から 2010 年 12月 31日までに運転

が開始されるもの、または、b.建設開始が 2009年 1月 1日から 2010 年 12月 31日までの場合は、

運転開始が 10年以降、設備の種類ごとの運転開始期限日(クレジット終了日)までのものが対

象となる。対象設備と助成額は、表 4のとおりである。

表 4 再生可能エネルギー・グラントの対象となる再生可能エネルギー利用装置

装置 助成額 装置要件

ソーラー発電装置 資産額の 30%相当 太陽光発電、太陽冷暖房、ハイブリッド太

陽光照明システム(光ファイバーを利用し

て太陽光を室内照明に利用する装置)等が

対象。なお、パッシブ型ソーラー装置16お

よびプールの温水装置は対象外。

燃料電池 資産額の 30%相当(発

電能力 0.5kW あたり

1,500 ドルが上限)

発電能力は 0.5kW 以上で、発電効率が

30%以上のものが対象。

小型風力発電タービン 資産額の 30%相当 発電能力は 100kW 以下のものが対象。

地熱ヒート・ポンプ 資産額の 10%相当 建造物を暖めるためか、または冷却するた

めに使用する、地中熱交換型または地下水

利用型の装置が対象。

マイクロタービン 資産額の 10%相当(発

電能力 1kWあたり 200 ド

ルが上限)

発電能力は 2MW 以下、発電効率が 26%以

上のものが対象。

熱電併給発電装置(CHP) 資産額の 10%相当 発電能力は 50MW 以下、省エネ率 60%以上

のものが対象。ただし、燃料の 90%にバ

イオマスを利用する装置に対しては、省エ

ネ基準を適用しない。

その他所定の設備 資産額の 30%相当 風力エネルギー装置、バイオマス装置、地

熱エネルギー装置、埋立地ガス装置、廃棄

物利用装置、特定の水力発電装置、海洋エ

ネルギー利用装置が対象となる

グラントの受賞対象事業は、第 1回選定分 12事業については 2009年 9月 1 日に、第 2回選定

分 25 事業は 9月 22日に発表され17、合計 37事業に対する助成額の合計は 10 億 5,302 万ドルに

上る。なお、助成対象機種は広範にわたるものの、受賞事業の多くは風力発電設備であり(助成

額全体の 9割超)、その他、ソーラー、バイオ、廃棄物利用装置が選定されている。

16 パッシブ型ソーラー装置:機械を用いずに、建築の工夫などにより太陽熱を利用し、暖房等を行うシステム。

(例:窓から取り入れた太陽熱を蓄熱性のある床などに蓄えさせる「ダイレクトゲイン方式」等)

17 第 1回選定事業は http://www.energy.gov/news/7851.htm、第 2回選定事業は

http://www.energy.gov/news/8038.htm参照。

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(2) 再生可能エネルギー生産インセンティブ(Renewable Energy Production Incentive

〔REPI〕)【再生可能】

州政府、地方政府、先住民族政府(Tribal Government)および地方公益企業、非都市部の電

力協同組合(Rural Electric Cooperative)などが、再生可能エネルギー利用の新規設備により

発電および売電を行う場合、1kWhあたり 2.1セント(現在のレート)計算で 10 年間にわたりイ

ンセンティブ(金銭的な報酬)を支給する制度。

対象となる設備は、ソーラー、風力、地熱、バイオマス、廃棄物の処理ガス、畜産メタンガス、

海洋エネルギー(潮力、波力等)を利用した発電装置や、バイオマスから得られる水素を燃料と

する燃料電池となっている18。

(3) 農務省-米国のための地方エネルギー・プログラム(USDA Rural Energy for America

Program 〔REAP〕- Grant)【省エネ・再生可能】

農業生産者および非都市部(農村部)の中小企業による、再生可能エネルギー利用装置の購入、

省エネ化、関連する事前調査(feasibility study)の実施に対し、農務省が助成金を支給する

プログラム(他に融資保証制度もある19)である。

助成額の上限は事業費用の 25%とされるが、当該プログラムの貸付保証制度(保証上限額は

2,500 万ドル)を同時に利用する際は、合計額が事業費用の 75%を超過してはならない。

農務省には、REAPの他にも、農業生産者や非都市部(農村部)の中小企業による再生可能エ

ネルギー利用の促進やエネルギー効率の向上を図る、州政府、地方政府、部族政府、大学、地方

の電力企業等を対象とした競争的助成制度がある20。

(4) 先住民族エネルギー・プログラム助成(Tribal Energy Program Grant)【省エネ・再

生可能】

先住民族政府による再生可能エネルギー利用や省エネ化に向けた取り組みに対し、エネルギー

省が財政支援、技術支援、教育訓練等を提供する21。

1.3.2 融資プログラム

18 DSIRE(2010年 1月 21 日更新) “Renewable Energy Production Incentive (REPI)”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=US33F&re=1&ee=1

19 本論「1.3.2(2)農務省米国のための地方エネルギー・融資保証プログラム」参照。

20 DSIRE(2009年 5月 27 日更新) “USDA - Rural Energy for America Program (REAP) Grants”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=US05F&re=1&ee=1

21 DSIRE(2009年 8月 19 日更新) “Tribal Energy Program Grant”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=US07F&re=1&ee=1

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(1) エネルギー省-融資保証プログラム (US Department of Energy – Loan Guarantee

Program)【省エネ・再生可能】

大気汚染物質または温室効果ガスの人為的排出を回避、削減、または隔離する事業や、融資保

証が付与された時点における米国内で利用可能な商業化された技術と比較して、より新しい、あ

るいは画期的に向上した技術を活用する事業に対し、融資保証を付与する制度である。当該制度

の下、100 億ドル以上の省エネ、再生可能エネルギー、先進的な送配電事業(研究開発技術は除

く)に対する融資保証権限が付与された。

エネルギー省では、事業を製造プロジェクト、独立型プロジェクト、大型複合プロジェクト

(省エネ、再生可能エネルギー、送電技術の複数要素を取り入れた事業)の 3 つに区分けし、積

極的に推進している。融資保証制度は一般的に研究開発活動に対しては適用されない22。

保証付与額に関する統一的な取り決めは特になく、事業により様々である。

2009 年 7月、エネルギー省では新たに 85億ドルの資金を注入し、革新的な省エネ、再生可能

エネルギー、送配電技術に関する事業を公募した。受益対象となるには、連邦規則集(10 CFR

609)に定義された「新たな、または、飛躍的に向上した技術(New or Significantly Improved

Technologies)」に適合している必要がある。

(2) 農務省-米国のための地方エネルギー・融資保証プログラム(USDA Rural Energy for

America Program 〔REAP〕- Loan Guarantees)【省エネ・再生可能】

制度の目的や支給対象については、既述の「1.3.1(3)農務省:米国のための地方エネルギ

ー・プログラム」の項目を参照されたい。

融資保証上限額は1件あたり 2,500万ドルである23。

(3) クリーン再生可能エネルギー債券発行(CREB: Clean Renewable Energy Bonds)【再生

可能】

CREB は、再生可能エネルギー事業の資金調達の手段として、州政府や地方自治体など政府機

関、電力協同組合、一部民間金融機関により発行される利息ゼロの債券である。債券の発行量は

米国議会によって決定され、内国歳入庁(IRS)が債券発行を希望する機関(州政府や地方自治

体など政府機関、電力協同組合、一部民間金融機関)に割り当て、割り当てられた債券を各機関

が販売する。

このようにして販売された CREBを購入した債権者(bondholder)は、利息が得られない代わ

りに、財務省により毎日定められる税控除率(tax credit rate)の 70%について税控除を受け

22 DSIRE(2009年 12月 14 日更新) “U.S. Department of Energy - Loan Guarantee Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=US48F&re=1&ee=1

23 DSIRE(2009年 5月 27 日更新) “USDA - Rural Energy for America Program (REAP) Loan Guarantees”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=US46F&re=1&ee=1

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ることができる。一方で、CREB の発行により調達された資金を元に組まれた融資の利用者

(borrower)は、CREB の元本に相当する金額だけを返済するだけで良い。

「2008 年エネルギー向上・拡大法(Energy Improvement and Extension Act of 2008)」に

より 8 億ドル分の CREB 債券の発行が認められていたところ、2009 年 2月に成立した「米国再

生・再投資法」により 16億ドル分が追加されたため、発行額は合計で 24億ドルまで許可される

こととなった24。

(4) 適格エネルギー保全債券(Qualified Energy Conservation Bonds 〔QECBs〕)【再生

可能】

CREB と同様に、州政府、自治体、先住民族政府が、「適格エネルギー保全事業(qualified

energy conservation projects)」25の資金調達のために、利息ゼロの債券である QECBを発行

している。QECB の発行量は 2008 年 7月 1 日付けの州の人口が米国総人口に占める割合に基づき

決定され、割り当てられる。割り当てられた債券は、それぞれの州により、一部を「大型地方政

府(large local governments)」(人口 10万人以上の自治体または郡)に配分する。

債権者は、利息が得られない代わりに、財務省により毎日定められる税控除率(tax credit

rate)の 70%について税控除を受けることが出来る。一方で、QECB の発行により調達された資金

を基に組まれた融資の利用者(borrower)は、QECBの元本に相当する金額だけを返済するだけ

で良い。

2008 年エネルギー向上・拡大法によって 8億ドルとされていた許容債券発行量(allowable

bond volume)が、米国再生・再投資法により 32億ドルと 4倍に引き上げられた26。

(5) エネルギー効率担保(Energy Efficient Mortgages)【省エネ・再生可能】

個人が様々なエネルギー効率の高い措置を住宅に施したり、再生可能エネルギー利用装置(太

陽光発電、太陽熱暖房、パッシブ太陽熱暖房、太陽熱温水器、採光装置)を住宅に導入するため

に組まれる民間金融機関による融資に対し、連邦住宅局(Federal Housing Authority)または

退役軍人管理局(Department of Veterans Affairs)によるプログラムを通して連邦政府が保証

を付与する制度である。当該制度により、借用人は省エネ化を図るために必要な融資を受けるこ

とが出来、レンダー(lender)である民間金融機関を債務不履行のリスクから守る27。

24 DSIRE(2009年 10月 28 日更新) “Clean Renewable Energy Bonds (CREBs)”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=US45F&re=1&ee=1

25 定義は比較的緩やかで、公共の建物における省エネ関連資本支出、再生可能エネルギー生産、各種研究開発活

動、エネルギー消費量の節減に資する公共交通設備等様々である。

26 DSIRE(2009年 4月 14 日更新) “Qualified Energy Conservation Bonds (QECBs)”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=US51F&re=1&ee=1

27 DSIRE(2009年 8月 3 日更新) “Energy-Efficient Mortgages”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=US36F&re=1&ee=1

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1.3.3 税制優遇措置

(1) 省エネ商業建物減税(Energy-Efficient Commercial Buildings Tax Deduction)【省

エネ】

当該制度では、(1)屋内照明、(2)建物の外装(building envelope)、(3)建物の電力費

用を所定の基準(ASHRAE Standard 90.1-2001)比で 50%以上削減する冷暖房空調設備や温水器

を、新築または既存の建物に設置する建物の所有者(設置費用を出す場合にはテナントも対象と

なる可能性がある)に対し、減税措置を行う。

減税措置は、導入する技術や省エネ達成率に応じて、1平方フィートあたり 0.3~1.8ドルと

なっている28。

(2) 再生可能電力生産税控除(Renewable Electricity Production Tax Credit 〔PTC〕)

【再生可能】

企業が再生可能エネルギー(埋立地ガス、風力、バイオマス、水力、地熱、潮力、波力など)

を用いて発電並びに売電した場合、法人税を控除する制度である。税控除額の算出レートは次の

表 5 のとおりである。

表 5 税控除額の算出レート

技術 算出レート

風力、地熱、閉ループバイオマス(closed-loop biomass) 2.1 セント/kWh

その他 1.1 セント/kWh

出所:DSIRE(2009年 7月 20 日更新) “Renewable Electricity Production Tax Credit

(PTC).”

なお「米国再生・再投資法」により、本制度の対象者は、税控除の代わりに「事業エネルギー

投資税控除(ITC:次項参照)」または、財務省の「再生可能エネルギー・グラント」のいずれ

かを受給することも可能となった。

(3) 事業エネルギー投資税控除(Business Energy Investment Tax Credit〔ITC〕)【再生

可能】

「米国再生・再投資法」により、既述の再生可能電力生産税控除(PTC)の対象となる納税者は、

PTC を受ける代わりに ITCによる税控除か、既述の財務省による助成金(再生可能エネルギー助

成)のいずれかを選択することが認められた。

当該制度では、企業(商業、産業、公益企業)を対象とし、再生可能エネルギー利用装置(太

陽光(Photovoltaics)、風力、地熱、バイオマスなどを熱源として利用する装置、並びに、太

28 DSIRE(2009年 11月 17 日更新) “Energy-Efficient Commercial Buildings Tax Deduction”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=US40F&re=1&ee=1

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陽熱温水器、太陽熱暖房、地熱ヒート・ポンプ、燃料電池、小型風力タービン、マイクロタービ

ン、熱電併給発電装置〔CHP〕など)の導入費用の一部を法人税から控除する29。詳細は以下表

6 のとおり。

表 6 事業エネルギー投資税控除の控除対象、控除額と装置要件

装置 税控除額 装置要件

ソーラー発電装置 導入費用の 30%(税控除額の上

限設定なし)

燃料電池 導入費用の 30%(税控除額の上

限設定はなし。ただし、発電能力

0.5kW 当たり 1,500ドルを算出レ

ートの上限とする。なお、2008

年 10 月 4日以前に設置された装

置の算出レートの上限は、0.5kW

当たり 500ドルとなる)

発電能力は 0.5kW 以上で、発電効

率が 30%以上のものが対象。

小型風力タービン 導入費用の 30%(米国再生・再

投資法により税控除額の上限設定

が撤廃されたが、2008 年 12月 31

日以前に設置されたものは 4,000

ドルが上限)

発電能力は 100kW 以下のものが対

象。

地熱利用システム 導入費用の 10%(税控除額の上

限設定なし)

地熱ポンプ(ただし、2008年 10

月 3 日以降に設置されたものに限

る)や地熱発電装置が対象。

熱電併給発電装置

(CHP)

導入費用の 10%(税控除額の上

限設定なし)

2008 年 10月 3日以降に設置され

た装置で、発電能力は 50MW 以

下、発電効率 60%以上のものが

対象。ただし、燃料の 90%にバ

イオマスを利用する装置に対して

は、発電効率基準を適用しない。

マイクロタービン 導入費用の 10%(税控除額の上

限設定なし。ただし、発電能力

1kW 当たり 200 ドルを算出レート

の上限とする)

発電能力は 2MW 以下、発電効率

26%以上のものが対象。

出所:DSIRE(2009年 6月 10 日更新) “Business Energy Investment Tax Credit (ITC).”

(4) 住宅向けエネルギー節約補助金税免税(Residential Energy Conservation Subsidy

Exclusion)【省エネ・再生可能】

居住施設(戸建、アパート、コンドミニアム、移動住宅、ボート等)に、エネルギー保全措置

(太陽光発電、太陽熱温水器、太陽熱暖房装置)を行う際に生じる購入および設置のために、公

29 DSIRE(2009年 6月 10 日更新) “Business Energy Investment Tax Credit (ITC)”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=US02F&re=1&ee=1

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益企業から直接的または間接的に補助金を受給した場合、補助金額を所得税/法人税申告額から

控除する30。

(5) 住宅向けエネルギー効率税控除(Residential Energy Efficiency Tax Credit)【省エ

ネ・再生可能】

「2005 年エネルギー政策法(EPAct2005)」により創設され、「2008年エネルギー向上・拡大

法(Energy Improvement and Extension Act of 2008)」および 2009年 2月の「米国再生・再

投資法」により控除期限の延長および控除拡大の措置が図られた制度。

納税者が、既存住宅(納税者の実住・実需物件31)の建物の外装に関する省エネ化措置および

省エネ装置(暖房、冷房、温水器)を導入する際に、購入費および設置のための人件費など

(2009 年 1月 1 日から 2010年 12月 31日までの 2年間に発生したもの)の 30%を税控除対象と

なる。

2 年間の控除額の上限は合計 1,500ドルである。設置にかかる人件費に関しては、建物の外装

改修は税控除の対象とならないが、省エネ装置の設置の場合は当該制度の対象となる32。

(6) 住宅向け再生可能エネルギー税控除(Residential Renewable Energy Tax Credit)

【再生可能】

納税者が、納税者の実住・実需物件たる住宅に、太陽光発電、太陽熱温水器(州政府が指定す

る機関の認証が付与されているもの)、燃料電池(0.5kW以上の発電能力を有し、発電効率が

30%以上のもの)、小型風力発電装置、地熱ヒート・ポンプ(エネルギースター認定のもの)を

導入する際に、購入費および設置のための人件費等を、所得税から控除する制度。

控除の上限は経費の 30%であるが、「米国再生・再投資法」によって 2008 年以降に設置され

た燃料電池を除く各対象機器の控除額上限が撤廃された。燃料電池に関しては、控除額上限の設

定ではなく、算出レートに関する上限が設定されており、発電量 0.5kW当たり 500 ドルとなって

いる。

当該税控除を利用する場合は、財務省による再生可能エネルギーグラント制度を利用すること

はできない33。

30 DSIRE(2009年 7月 27 日更新) “Residential Energy Conservation Subsidy Exclusion (Personal)”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=US03F&re=1&ee=1

DSIRE(2009年 7月 27 日更新) “Residential Energy Conservation Subsidy Exclusion (Corporate)”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=US31F&re=1&ee=1

31 実住・実需物件(primary residence)とは、購入者自らが居住する住宅を指す。

32 DSIRE(2010年 2月 15 日更新) “Residential Energy Efficiency Tax Credit”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=US43F&re=1&ee=1

33 DSIRE(2010年 2月 18日更新) “Residential Renewable Energy Tax Credit”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=US37F&re=1&ee=1

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(7) エネルギー効率電化製品製造税控除(Energy-Efficient Appliance Manufacturing Tax

Credit)【省エネ】

エネルギー効率が良い家庭用食洗機、洗濯機および冷蔵庫の製造者に対する法人税の控除制度。

控除額は機器の種類や性能によって様々であるが、一台につき 45~200 ドルの範囲に設定され

ている。1 課税年度における控除額の上限は、(納税単位)1社あたり 7,500 万ドルである34。

(8) エネルギー効率新築住居の建設企業を対象とした税控除(Energy-Efficient New Home

Tax Credit for Home Builders)【省エネ】

国際省エネルギーコード(IECC: International Energy Conservation Code)の基準に照らし

て冷暖房によるエネルギー消費量を 50%削減し、かつ、エネルギー省が設定する最低限の効率

基準に合致する新築の住居を建設した企業に対し、2,000 ドルの税額控除を認める制度。

プレハブ住宅(Manufactured homes)については、連邦プレハブ住宅建築および安全基準

(Federal Manufactured Home Construction and Safety Standards)を満たし、かつ、エネル

ギー省が設定する最低限の効率基準に合致する場合、2,000ドルの税控除を認めている。

また、連邦プレハブ住宅建築および安全基準を満たし、IECC基準に照らしてエネルギー消費

量を 30%削減するプレハブ住宅建設の場合は 1,000ドルを控除する。ただしこの場合、エネルギ

ー消費削減量の尐なくとも 3分の1が建物の外装改修によるものでなければならない35。

34 DSIRE(2009年 11月 17日更新) “Energy-Efficient Appliance Manufacturing Tax Credit”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=US42F&re=1&ee=1

35 DSIRE(2010年 1月 4日更新) “Energy-Efficient New Homes Tax Credit for Home Builders”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=US41F&re=1&ee=1

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2 主要州政府における省エネ・新エネ関連助成プログラム

2.1 カリフォルニア州(州別 GDP第 1位、州別人口第 1位)36

○ エネルギー消費量は、全米最大のテキサス州に次いで多いが(8,492 兆 BTU〔2007 年〕)、

人口 1人当たりでは、ロードアイランド州、ニューヨーク州に次いで全米で最も尐ない

(2.3 億 BTU/人〔2007 年〕)37。

○ 水力を含む全ての再生可能エネルギー利用装置の導入量(能力ベース)では、水力の割合が

大きいワシントン州に次ぎ第 2位であり、水力を除いた場合もテキサス州に次いで全米第 2

位(第 3位のアイオワ州の約 3.1倍)。

○ 太陽光、太陽熱、地熱、バイオマス発電の導入量は全米第 1位、風力はテキサス州、アイオ

ワ州に次ぐ全米第 3位、水力はワシントン州に次ぐ全米 2位と、幅広い分野において再生可

能エネルギー利用が進む。

○ 州法による温室効果ガス削減の義務付け、フィード・イン・タリフ制度38の導入、高水準の

再生可能ポートフォリオ基準や建物のエネルギー効率基準の導入など、連邦政府や他州をリ

ードする環境先進州。

○ エネルギー効率向上や再生可能エネルギー利用促進のための州政府のプログラムは、カリフ

ォルニア・エネルギー委員会(CEC:California Energy Commission)やカリフォルニア公

益事業委員会(CPUC:California Public Utilities Commission)の助成措置等を中心に充

実している。加えて、郡や市単位の助成措置、民間公益企業による助成措置(DSIRE による

と、100 以上のプログラムが存在)も多数。

36 州別 GDPの出所:U.S. Bureau of Economic Analysis、”News Release: GDP by State”:

http://www.bea.gov/newsreleases/regional/gdp_state/gsp_newsrelease.htm “Per capita real GDP by

state in 2008”の Table 1. Real GDP by State, 2005-2008における 2008年度の部分。

州別人口の出所:CENSUS、” Population Estimates (geographies ranked by estimate)”:

http://factfinder.census.gov/servlet/GCTTable?_bm=y&-geo_id=01000US&-_box_head_nbr=GCT-T1-R&-

ds_name=PEP_2009_EST&-_lang=en&-format=US-40S&-_sse=on (2009年 7月)

37 全州に共通するが、エネルギー消費量および 1人あたりエネルギー消費量の出所は以下のとおり。

・エネルギー消費量:エネルギー省エネルギー情報局(EIA)“Table S3. Energy Consumption Estimates by

Source, 2007”:

http://www.eia.doe.gov/emeu/states/hf.jsp?incfile=sep_sum/plain_html/sum_btu_tot.html Total部分。

・1人あたりエネルギー消費量:エネルギー省エネルギー情報局(EIA)“Table R2. Energy Consumption by

Source and Total Consumption per Capita, Ranked by State, 2007”:

http://www.eia.doe.gov/emeu/states/hf.jsp?incfile=sep_sum/plain_html/rank_use_per_cap.html

Total Consumption per Capita部分。

38 フィード・イン・タリフ制度:再生可能エネルギー利用発電を普及させるために、発電された電力の買取価格

を将来の一定期間にわたって固定する制度。通常、普及の初期に導入した者ほど高い買取価格が設定され、これ

が逓減するため、対象技術の早期普及が促される。

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表 7 カリフォルニア州の再生可能エネルギー利用発電(2008 年)

(単位:MW、能力ベース)

太陽光* 風力 地熱 バイオマス (水力) 水力を除く合計** 人口当たりの

発電量***

528① 2,517③ 2,605① 1,217① (10,032②) 7,221② 196

*:太陽光発電は、オフグリッド(off-grid、独立型専用太陽電池モジュール)を除く。

**:水力を除く合計には、太陽熱による発電 354MWを含む。

***:人口当たりの発電量は水力を含まない。単位はワット/人。

また、○数字は、全 50州の中の順位(5位までを表示)

出所:Renewable Energy Data Book, July 2009, US Department of Energy39

2.1.1 カリフォルニア州の主なエネルギー計画

(1) エネルギー行動計画(Energy Action Plan)

2005 年に発表された「エネルギー行動計画Ⅱ(Energy Action Plan II)」の改定版として、

カリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)およびカリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)に

よって、 2008 年 2月「2008年改定版エネルギー行動計画(2008 Updated Energy Action

Plan)」が発表された。

当該行動計画では、①省エネ、②需要への対応、③再生可能エネルギー、④電力の供給量の妥

当性、信頼性およびインフラ、⑤電力の市場構造、⑥天然ガスの供給、需要およびインフラ、⑦

交通燃料の供給、需要およびインフラ、⑧研究開発および実証、⑨気候変動について、「エネル

ギー行動計画Ⅱ」以降の取り組みを紹介すると共に、今後取り組むべき課題(Next Steps)を次

のように提示している。

① 省エネ

○ 費用対効果の高いあらゆる省エネ実現のための、州全体の戦略計画の策定。

○ 住居用および商用の新築建物、冷暖房空調設備に関する目標実現のための戦略の形

成。

○ 既存建物の省エネ化に向けた、より包括的なアプローチによる戦略の構築。

○ 省エネ化や建物に関する省エネ基準の強化に関する自治体との連携。

39 エネルギー省 (2009年 7月)“Renewable Energy Data Book”:

http://www1.eere.energy.gov/geothermal/pdfs/data_book.pdf

表中の数値は “Renewables 2008 Installed Nameplate Capacity (MW)”(pp. 34, 36, 38, 40)のデータに基

づく。また、全州の順位を示す○数字は、太陽光、風力、地熱、バイオマス、水力は “Top States for

Renewable Electricity Installed Nameplate Capacity (2008)”(p.33)、水力を除く合計は “Top States

for Renewable Electricity Installed Nameplate Capacity (2008)”(p.32)の“Total Renewables (excluding

hydropower)”、人口当たりの発電量は同“Per Capita Renewables (excluding hydropower)”に基づく。

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○ 州全体を包括する戦略計画に合致し、かつ、これを支援するような、2009-2011年

にわたる公益企業の省エネ化プログラムの形成。

○ 電化製品や建物に関するさらに厳格な追加的規則や基準を作り、それに連動する技

術や設計の研究開発活動を実施。

○ 低所得者に対する省エネ関連インセンティブの強化。

② 需要への対応/③ 再生可能エネルギー

○ 需要応答40型インフラ(demand-response infrastructure)の整備に向けた需要管

理基準の採択。

○ 家庭用の時間帯変動型価格制度の法制化。

○ 全ての電力消費者に対する大幅な料金設定見直し。

○ 先進的なメータリング制度、料金設定、自動需要応答インフラを活用するプログラ

ムの企画。

④ 電力の供給量の妥当性、信頼性およびインフラ

○ 熱電併合(Combined Heat and Power)政策の必要性の検討。

○ 二酸化炭素回収・貯留技術開発の奨励。

⑤ 電力の市場構造

○ 電力市場の再編成と技術の更新。

○ 小売電力の競争市場化の検討。

○ 発電能力を取引する中央市場(centralized capacity market)の開発の検討。

⑥ 天然ガスの供給、需要およびインフラ

○ 天然ガスの世界市場が液化天然ガス(LNG)の供給並びに価格に及ぼす影響に関する

モニタリング・評価の実施。

○ 貯蔵およびパイプラインなど追加的なインフラ開発の必要性の検討。

⑦ 交通燃料の供給、需要およびインフラ

○ 交通燃料インフラのニーズのモニタリング、かつ、その強化に関する提言活動の継

続。

○ 低炭素燃料基準の実施。

○ 代替燃料、並びに、それを利用する自動車のための、戦略的な投資計画の開発。

⑧ 研究開発および実証

○ バイオエネルギー、再生可能エネルギー、交通燃料および自動車、二酸化炭素回

収・貯留技術に特に焦点を当てた開発を実施。

⑨ 気候変動

○ 「2006 年カリフォルニア州地球温暖化対策法(AB32)」41の枠組みへの電力および

天然ガス分野の関与のあり方について、カリフォルニア大気資源協議会(CARB:

California Air Resources Board)に対する提言を実施。

40 需要応答(DR: Demand Response)とは、電力需要が高い時に電力価格を引き上げ、需要が低い時には価格を

引き上げるという仕組みを指す。

41 2006年カリフォルニア州地球温暖化対策法(AB32):2006年 9月に成立した州法で、2020年までに温室効果

ガスを 1990年水準まで削減すべきことを定めている(現在の排出量から 11%削減、2020年の自然体ケースの排

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○ 2050 年に向けた排出削減計画の策定。

○ エネルギー効率の向上を図り、発電量の 33%を再生可能エネルギーにした場合の温

室効果ガス排出に与える影響を評価するためのシナリオ分析を実施。

(2) カリフォルニア・ソーラー・イニシアチブ

2006 年 1月にカリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)が採択したイニシアチブ42。次の機関

を通じ、2016 年までに州全体で 3,000MW のソーラー発電を行うことを目指す。

表 8 カリフォルニア・ソーラー・イニシアチブのプログラムの構成

カリフォルニア公益事

業委員会(CPUC)

カリフォルニア・エネ

ルギー委員会(CEC)

公共公益事業

(Municipal

utilities)

予算

(2007~

2016)

21.7億ドル 4.0 億ドル 7.8 億ドル

ソーラー発電

目標(MW) 1,940MW 360MW 700MW

対象

民間電力事業者のエリ

ア内の全てのシステム

(ただし、新築住宅は

除く)

民間電力事業者の

サービスエリア内の

新築住宅

公共電力事業者の

サービスエリア内の

全てのシステム

開始 2007年 1 月 2007 年 1月 2008 年 1月

出所:DSIRE、CPUCの資料よりワシントンコア作成43

2.1.2 カリフォルニア州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用関連制度

(1) 再生可能ポートフォリオ基準(RPS)

2002 年の州法並びにその後の改正によって、カリフォルニア州の電力小売業者は、小売電力

量における再生可能エネルギー利用による割合を毎年最低 1%ずつ増加させ、2010 年までに全体

の 20%とすることが義務付けられている。

出予測量から 30%の削減を意味する)。カリフォルニア環境保護局の下部組織であるカリフォルニア大気資源

協議会(CARB)が削減計画案等を作成することになっている。

42 California Solar Initiative Program Handbook (CPUC)

http://www.gosolarcalifornia.org/documents/CSI_HANDBOOK.PDF

43・担当委員会、対象、開始時期:出所: DSIRE(2010年 1月 4日更新)“California Solar Initiative”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=CA134F&re=1&ee=1

・数値:CPUC(2009年 1月) “California Public Utilities Commission Staff Progress Report”:

http://www.energy.ca.gov/2009publications/CPUC-1000-2009-002/CPUC-1000-2009-002.PDF (p.7)

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その後、2009 年 9月にシュワルツェネッガー州知事が署名した州知事令(Executive Order

S-21-09)により、新たに 2020 年までに小売電力量全体の 33%を再生可能エネルギー由来とす

ることが全公益企業に義務付けられた。それまではカリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)およ

びカリフォルニア・エネルギー委員会(CEC)が RPSの実施および監督を行っていたが、当該州知

事令により、担当がカリフォルニア州大気資源局(CARB)に変更され、CARB は 2010 年 7月 31

日までに規制(regulations)を採択するよう指示された。CPUC および CECは、今後も CARB の

目標達成に向けた規制作りを支援し、さらに、CARB規制採択までは電力小売量の 20%を再生可

能エネルギーからの発電とする目標値の達成については実施・監督を担当する。CARB には、業

務の重複や一貫性の面から、政策形成並びにプログラム実施に関わる責務を CPUCまたは CEC に

課すことが許可されており、かつ、目標値の引き上げ並びに期限の延長を行う権限を付与されて

いる44。

(2) 電力固定価格買取(フィード・イン・タリフ、Feed-in Tariff)制度

再生可能エネルギー利用発電システム(発電能力上限は 3MW)により発電した電力を、電力供

給企業が一定の期間(10年、15年または 20年)にわたって一定の価格で買い取る制度。

対象となる発電システムは、ソーラー、風力、バイオマス、地熱、埋立地ガス、小型水力、潮

力、波力、燃料電池など広範にわたる。

買取価格は、カリフォルニア公益事業委員会(CPUC)が市場価格と電力の利用時間帯を考慮し

て決定する45。

(3) ネット・メータリング(Net Metering)46

ロサンゼルス市水道電力局(LADWP)を除く全ての電力企業は、発電能力 1MW 以下のソーラー

および風力発電システム(バイオガス発酵槽〔biogas digesters〕の場合、最大 3槽について

10MW 以下)についてネット・メータリング制の導入が義務付けられている。また、民間の電力

企業については、バイオガス利用の発電システムおよび燃料電池についてもネット・メータリン

グ制の導入が義務付けられている。

超過発電量(NEG: Net Excess Generation)に関する顧客への払い戻しは、これまで 12 カ月

ごとに行われていたが、2009年 10月 11 日に制定された州法(AB 920、2010 年 1月 1日施行)

により、顧客は NEGの月々無期限繰越しあるいは NEG 残金の返金のいずれかを選択出来ることと

なった。顧客が後者を選択した場合には、2011年 1月 1日までに CPUCが公開手続(public

44 DSIRE(2009年 9月 17日更新) “Renewables Portfolio Standard”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=CA25R&re=1&ee=1

45 DSIRE(2009年 10月 12日更新)California Feed-In Tariff :

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=CA167F&re=1&ee=1

46 ネット・メータリング制度:電力消費者が自ら発電を行い電力企業に供給する場合に、この供給した電力と消

費者が電力企業から購入する電力とを相殺する制度。消費者にとっては発電した電力を小売価格で買取ってもら

うのと等しく、発電のインセンティブが生まれる。

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proceeding)を通じて NEG残金の払い戻し方法を決定しなくてはならない。これに関して電力企

業には、2010 年 1月 31日までにこれらの新たな選択肢について顧客に通知することが義務付け

られた。顧客が選択を放棄した場合、電力企業は顧客への返金をすることなく、12カ月ごとに

NEG を自らの収益とすることが出来る47。

(4) 建物のエネルギー・コード

2008 年 7月にカリフォルニア州建築基準委員会(BSC:California Building Standards

Commission)が採択した、全米初の州全体を対象とする建物の省エネルギー・コード(2008 年

カリフォルニアグリーンビルディング基準コード、2008 California Green Building Standards

Code)は482009年 8月 1 日に発効したが49、法的拘束力は有していなかった(voluntary)50。

2010 年 1月、BSCはビルディング基準コードの最終版である 2010 年カリフォルニアグリーン

ビルディング基準コード(2010 California Green Building Standards Code、通称 CALGREEN

Code51)を採択したが、当該コードは 2011 年 1月 1日付で法的拘束力を持つ(mandatory)ことと

なる52。

新しいコードには、(2008 年コードにも盛り込まれていた)水利用の 20%削減のほか、屋内

と屋外での別々の水道メーター(separate water meter)の使用や、屋内空気質の改善、埋立地

の建設廃棄物のうち 50%の再利用(diversion)の義務付けなどが盛り込まれている53。

また、2007 年 10 月に制定された州法(AB1103)は、全ての非住宅用ビルの所有者に対して、

年間のエネルギー消費に関する報告を義務付けている。また、2010 年からは、商用ビルの所有

者に対し、買取、リース、出資を申し出た者に対するエネルギー消費状況やエネルギースターに

よる評価に関する情報開示を義務付けている54。

(5) 州政府施設のためのグリーン建物行動計画(Green Building Action Plan)

47 DSIRE(2009年 11月 12日更新)“California - Net Metering”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=CA02R&re=1&ee=1

48 DSIRE(2010年 1月 14日更新)“California State Energy Code”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=CA51R&re=1&ee=1 Summaryの部分。

49 カリフォルニア建築基準委員会(BSC)、“2008 California Green Building Standards Code”:

http://www.documents.dgs.ca.gov/bsc/2009/part11_2008_calgreen_code.pdf

50 DSIRE(2010年 1月 14日更新) “California State Energy Code” Summaryの部分。

51 “2010 California Green Building Standards Code: Nation’s First Mandatory Statewide Standards

Code to Green Construction and Fight Climate Change”:

http://images.emaildirect.com/clients/govpressoffice847/GreenBuildingCodeOnepager.pdf

52 DSIRE(2010年 1月 14日更新) “California State Energy Code” Summaryの部分。

53 同上

54 同上

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州政府のビルの送電系統からの電力利用を 2015 年までに 2003年水準から 20%削減させるこ

とを求める 2005 年の知事令(S-20-04)に基づく措置。

当該知事令では、全ての新築または改築された州政府ビルに、米国グリーンビルディング協会

(United States Green Building Council)による「エネルギーおよび環境設計に関するリーダ

ーシップ(LEED)」55基準でシルバー以上の水準を満たすことが義務付けられた。

さらに、2007 年 10月に制定された州法(AB 532)では、費用対効果と資金状況を考慮した上

で、2009 年 1月 1日までに全ての公的なビルや施設への太陽エネルギー利用装置の設置が義務

付けられている56。

(6) 電化製品効率規制

カリフォルニア州は、1974 年に全米で最初に電化製品の効率基準を採用した州であり、それ

以降、新技術との一貫性を保つべく、継続的に当該基準の見直しを行ってきている。

最新の基準は、カリフォルニア・エネルギー委員会(CEC)によって 2008 年 12月に採択され

た通称「カリフォルニア 2009年電化製品効率規制(California’s 2009 Appliance Efficiency

Regulations)」(カリフォルニア州規則タイトル 20 のセクション 1601~1608〔California

Code of Regulations, Title 20, Sections 1601 through1608〕)であり、これは 2009年 7月

にカリフォルニア州行政法局(California Office of Administrative Law)によって承認され

た。

新規制は、23 品目の電化製品(冷蔵庫、オーディオ製品、自動販売機等)に関する省エネ基

準を設けたものである(一部は、連邦政府の効率基準を根拠としている)。当該規制では、州内

での卸売り後、最終的には州外で小売販売される製品は対象外となる57。

加えて、2007 年の州法(AB1109、通称 Huffman Bill)により、照明に関する省エネ基準が設

けられ、2018 年までに住宅用の室内照明については 2007 年比で最低 50%、商業用および室外の

照明については 2007年比で最低 25%のエネルギー消費削減が求められている58。

(7) 発電源情報開示

55 エネルギーおよび環境設計に関するリーダーシップ(LEED):米国のビル関係業者が組織する環境対策推進団

体である「米国グリーン・ビルディング協議会(USGBC)」が開発した建築物の環境対応評価システム。多くの

項目ごとに基準を満たしていればポイントを加え、一定以上のポイントをクリアした建物は「認定」となる。認

定には、ポイントの高い順にプラチナ、ゴールド、シルバー、(普通の)認定の 4段階がある。

56 DSIRE(2009年 12月 15日更新) “Green Building Action Plan for State Facilities”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=CA49R&re=1&ee=1

57 DSIRE(2009年 11月 5日更新)“Appliance Efficiency Regulations”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=CA48R&re=1&ee=1

58 Californians Against Waste、“AB 1109 (Huffman) Lighting Efficiency & Toxics Reduction Act”:

http://www.cawrecycles.org/issues/current_legislation/ab1109_07

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カリフォルニア州のエネルギー供給業者は、発電源に関する情報を四半期ごとに利用者に開示

しなければならない。また、カリフォルニア・エネルギー委員会(CEC)は、供給業者側の報告

による情報と比較した発電データを、毎年 1回カリフォルニア公益事業委員会(CPUC)に報告する

義務がある59。

2.1.3 カリフォルニア州のエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム

以下に紹介するものは、民間の電力供給企業が独自に実施するプログラムや、州内の一部地域

のみに適用される措置を除いたものとなっている(他州についても同様)。

(1) 助成プログラム

① カリフォルニア・ソーラー・イニシアチブ(California Solar Initiative)【再生可能】

カリフォルニア公益事業委員会(CPUC)、カリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)、公共

公益事業(Municipal utilities)が、「カリフォルニア・ソーラー・イニシアチブ」(上記参

照)に基づき実施する総額 30億ドル超の助成(incentive)制度で、2016 年までにソーラー発

電による 3,000MW の電力供給実現を目標としている。

太陽光発電、太陽熱暖房、太陽熱温水器などのソーラー・システムが対象であるが、助成金額

は、受給機関が政府機関であるか、その他の住宅または商業施設であるかや、発電実績や発電規

模などにより様々である(表 9参照)。ソーラー・システムの設置による累積発電容量

(aggregate capacity of PV)が増大するにつれ、助成金額は減額される。

表 9 カリフォルニア・ソーラー・イニシアチブの助成金額の例

<非住宅建築物(non-residential buildings)および既存住宅60>

○ 発電量が 30kW 以下と見込まれる住宅用・商用:2.50 ドル/W(交流)(Expected

Performance-Based Buydowns: EPBB)61

○ 発電量が 30kW 以下と見込まれる政府機関用・非営利団体用:3.25 ドル/W(交

流)(EPBB)

○ 発電量が 30kW 以上である課税対象者・企業用:最初の 5課税年度にわたり 0.39ド

ル/kWh (Performance-Based Incentives: PBI)62

○ 発電量が 30kW 以上である政府機関・非営利団体:最初の 5課税年度にわたり 0.5 ド

ル/kWh (PBI)

59 カリフォルニア・エネルギー委員会(CEC)、“Background on Senate Bill 1305 - Power Source

Disclosure & the Power Content Label”: http://www.energy.ca.gov/sb1305/background.html

60 DSIRE(2010年 1月 4日更新)“California Solar Initiative”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=CA134F&re=1&ee=1

61 EPBB: 小規模のシステムに関しては、予想される業績(expected performance)に基づき、設置時に助成金を

一括支給する。

62 PBI: 大規模のシステムに関しては、実績に基づき、5年間にわたり助成金を支給する。

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② CEC-新規ソーラー住宅パートナーシップ(CEC-New Solar Homes Partnership)【再生可

能】

カリフォルニア・エネルギー委員会(CEC)が「カリフォルニア・ソーラー・イニシアチブ」

の下、2007年 1 月から 10年間にわたり実施する予算総額 4億ドルの助成制度。

新築住宅(集合住宅も含む)が太陽光発電システムを導入し、系統接続63(grid-connected)

した形で発電を行う場合の助成制度で、特定の電力企業(Pacific Gas and Electric Company、

Southern California Edison Company、San Diego Gas and Electric Company、Bear Valley

Electric Service)の利用者であることが必要。

助成額は、住宅の種類や発電量等により異なる64。

③ 新興再生可能プログラム(Emerging Renewables Program)【再生可能】

カリフォルニア・エネルギー委員会(CEC)が実施するプログラムで、小型の風力発電や再生

可能燃料を用いた燃料電池を導入し、発電を行う場合の助成制度。

風力については 50kWまでの小型の系統接続型が対象。助成金額は、最初の 7.5kW までは 2.5

ドル/W、7.5kW から 30kW までは 1.5ドル/W。

燃料電池については 30kWまでの小型のものが対象。助成金額は 3ドル/W。

システムの主要部品は新品かつ、CECの承認を受けたものである必要がある。また、全ての装

置に最低 5年間の保証が付与されていることと、全てのシステムにパフォーマンス・メーター

(performance meter)がインストールされていることが条件である。

承認された業者が設置する場合は全額助成を受けられるが、自分で設置した場合は、助成額が

15%削減される65。

④ 自家発電インセンティブ・プログラム(SGIP: Self-Generation Incentive Program)【再

生可能】

系統接続されている風力発電、燃料電池発電(ただし、特定の電力企業の顧客であることが必

要)および適格とされる SGIP技術を併用した先進エネルギー貯蔵システム(Advanced Energy

Storage system)が対象。

63 系統連系とは、自家用の発電装置を電力供給企業の商用系統(送電線または配電線)に連系することにより、

負荷装置に電力を供給する事である。電力供給企業の配電路線に電力供給を行う逆潮流が設定されている場合も

ある。

64 DSIRE(2009年 3月 13日更新)” CEC - New Solar Homes Partnership”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=CA150F&re=1&ee=1

65 DSIRE(2009年 4月 20日更新)”Emerging Renewables Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=CA30F&re=1&ee=1

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風力発電、燃料電池に関しては、発電能力 30kW 以上 5MW以下が対象(ただし、助成金の上限

は 3MW まで)、先進エネルギー貯蔵システムに関しては発電能力が 5MW以下が対象となる。この

3 つに共通する点として、発電能力 1MW 以上の事業に関しては、発電能力が 1MW以下の場合は助

成金の 100%、1MW から 2MW以下の場合は同 50%、2MW から 3MW以下の場合は同 25%の支給とな

る。

助成額は、風力発電が 1.5 ドル/W、燃料電池の場合は再生可能燃料使用なら 4.5ドル/W でそ

れ以外の燃料使用であれば 2.5 ドル/W、先進エネルギー貯蔵システムの助成額は再生可能燃料使

用であるか否かにかかわらず 2ドル/Wである。

全てのシステムは新品で、UL 認証(UL listed)66が付与され、全ての安全規格を満たし、かつ、

最低 5 年間の保証が付与されていることが条件である67。

⑤ 学校施設プログラム-近代化グラント(School Facility Program – Modernization

Grants)【省エネ・再生可能】

これまで改築のために州の補助を受けたことがない築 25年以上の学校、または、20年以上経

過した移動教室(relocatable classrooms)が、省エネ化措置を行うか、再生可能エネルギー利

用装置を導入する場合が対象である。

助成額は収容生徒数に基づき法律で定められている額となる。ただし、費用の 40%は地元自

治体等の負担であることが必要である68。

(2) 融資プログラム

① エネルギー効率融資プログラム(Energy Efficiency Financing Program)【省エネ】

カリフォルニア・エネルギー委員会(CEC)が実施する融資制度で、学校、公立病院、地方政

府機関による省エネ装置導入、エネルギー監査、エネルギー研究を対象としている。2009年の

米国再生・再投資法により予算が 2倍以上に増え、現在の予算総額は 4,500 万ドルである。

年利は、米国再生・再投資法からの資金による融資の場合(所定の条件を満たすことが条件)

1.00%、米国再生・再投資法からの資金によらない融資の場合 3.005%(固定)とされる。最大融

66 UL規格:米国保険業者安全試験所(UL: Underwriters Laboratories Inc.)は 1894年に設立された非営利の

独立試験・認証機関であり、製品規格の策定と、それらに順じた製品試験・認証サービスの提供を行っている。

ULマークは米国の多数の州や自治体で採用されているほか、ULが開発する安全規格の 70%以上は ANSI (米国規

格協会) に認められ米国の国家規格として採用されている。(出所:UL Japan、”企業概要”:

http://uljapan.co.jp/gaiyo/gaiyo.html)

67 DSIRE(2009年 10月 13日更新) “Self-Generation Incentive Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=CA23F&re=1&ee=1

68 DSIRE(2009年 1月 26日更新) “School Facility Program - Modernization Grants”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=CA180F&re=1&ee=1

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資額は 300万ドル、最長融資期間はエネルギーコスト削減事業の場合 15年、エネルギー監査の

場合 2 年である69。

② 農業・食品加工エネルギー融資(Agriculture and Food Processing Energy Loans)【省

エネ・再生可能】

カリフォルニア・エネルギー委員会(CEC)が実施する、市場より低金利の融資制度。

農業従事者・食品加工業者(飼料製造業、酒造業などを含む)によるエネルギー効率向上技術

および再生可能エネルギー利用技術の導入が対象で、対象となる技術は、熱源ヒート・ポンプ

(thermal heat pumps)、電気透析薄膜システム(electrodialysis membrane systems)、企業

エネルギー管理システム、加熱冷却トッピングサイクルシステム(heating and cooling

topping cycle systems)、超低窒素酸化物制御による省エネバーナー(ultra-low NOx

controlled energy efficient burners)、太陽光発電(solar photovoltaic 〔PV〕)および太

陽集熱(solar thermal)システム、バイオエネルギー生成のための食品および動物性廃棄物

(food and animal waste)の利用。

年利は 3.2%(固定)、融資額は 5万~50 万ドル、最長融資期間は 7年である70。

2007~2008年の融資申請ガイドブック以降の情報はないが、当時の情報によると、申請希望

者は、必要事項を記入し署名した申請書を CECに送付する。融資には担保が必要で、信用状

(L/C)が最も好ましいが、スタンドバイ信用状(standby L/C)でも良く、信用状が入手不可能

であれば定期預金証書(Certificate of Deposit)も考慮される71。

(3) 税制優遇措置

① ソーラー・エネルギー・システムに対する資産税免除(Property Tax Exclusion for

Solar Energy System)【再生可能】

2016 年 12月 31 日までに設置される特定のソーラー・エネルギー・システム(太陽光発電、

太陽熱発電、太陽熱温水器、太陽熱暖房など)に関し、該当システムの価値の 100%(二重用途

装置の場合同 75%)を資産税から免除する措置である72。

69 DSIRE(2009年 12月 2日更新) “Energy Efficiency Financing Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=CA54F&re=0&ee=1

70 カリフォルニア・エネルギー委員会(CEC)、“Process Energy - Agriculture Loan Solicitation”:

http://www.energy.ca.gov/process/agriculture/loan_solicitation/

71 CEC(2007年 4月)“Loan Application Announcement “ :

http://www.energy.ca.gov/process/agriculture/loan_solicitation/2007-04_AG_LOAN_PACKAGE.PDF (p.5)

72 DSIRE(2009年 12月 21日更新) “Property Tax Exclusion for Solar Energy Systems”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=CA25F&re=1&ee=1

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2.2 ニューヨーク州(州別 GDP第 2位、州別人口第 3位)

○ エネルギー消費量は、全米で 4番目に多い(4,064兆 BTU。2007 年)。一方、人口 1人当た

りではロードアイランド州に次いで全米で 2番目に低い(2.1億 BTU/人〔2007年〕)。

○ 再生可能エネルギー利用では、水力、太陽光、風力、バイオマス発電の導入が比較的進んで

いる。特に、水力発電の導入量(能力ベース)が、ワシントン州、カリフォルニア州、オレ

ゴン州に次いで第 4位と大きいが、ワシントン州の導入量に比べると約 5 分の 1程度。

○ エネルギー効率向上や再生可能エネルギー利用促進のための州政府のプログラムは、ニュー

ヨーク州エネルギー研究開発局(NYSERDA:New York State Energy Research and

Development Authority)の助成措置を中心に極めて充実。その反面、公益企業による助成

措置はあまり充実していない。

表 10 ニューヨーク州の再生可能エネルギー利用発電(2008年)

(単位:MW、能力ベース)

太陽光* 風力 地熱 バイオマス (水力) 水力を除く合計 人口当たりの

発電量**

22 832 0 439 (4,654④) 1,293 66

*:太陽光発電は、オフグリッド(off-grid、独立型専用太陽電池モジュール)を除く。

**:人口当たりの発電量は水力を含まない。単位はワット/人。

また、○内の数字は、全 50州の中の順位を示す(5位までを表示)

出所:Renewable Energy Data Book, July 2009, US Department of Energy

2.2.1 ニューヨーク州のエネルギー計画

(1) ニューヨーク州エネルギー計画(New York State Energy Plan)

2008 年 3月にデービッド・パターソン(David A. Paterson)ニューヨーク州知事によってエ

ネルギー計画制定のための知事令(Executive Order No. 2)が発せられ73、同 4月、ニューヨ

ーク州は、エネルギー計画協議会(Energy Planning Board)およびその作業を支援する省庁連

携によるエネルギー調整作業部会(Energy Coordinating Working Group)を組織74し、2009 年

6 月の完成を目指して作業を開始した75。

73 Nysenergyplan.com、“New York State Energy Plan”: http://www.nysenergyplan.com/#

74 Nysenergyplan.com、 “Framework for Implementing the Work of the NYS Energy Planning Board”(p.

3)2.B Energy Coordinating Working Group参照。

75 Nysenergyplan.com、“ New York State Energy Plan (SEP) Toward a Sustainable Energy Future for New

York”: http://www.nysenergyplan.com/process.html

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その後、2009 年 12 月に発表された「ニューヨーク州エネルギー計画」では、投資を促進し、

雇用を創出し、住民やビジネスのニーズに応えるような、堅強で革新的なクリーン・エネルギー

経済実現の 10年計画を打ち出し、次の 5 つの政策目標を満たすような戦略や勧告を提言してい

る76。

○ 信頼のおけるエネルギーおよび輸送システムの確立。

○ 温室効果ガスの大幅削減に向けたエネルギー体制および輸送システムの実現。

○ エネルギーコストの高騰に関する住民および企業の不安への対応と州の経済競争力

の強化。

○ 全セクターのエネルギー生産および使用に関連する健康および環境リスクの削減。

○ 州内におけるエネルギー供給資源開発による、州のエネルギー独立性と燃料多様化

の向上。

(2) 「再生可能エネルギー作業部会」による提言

再生可能エネルギーや代替燃料産業、環境および農業コミュニティ、学会、公益企業、州およ

び地方政府機関等の 20名のメンバーからなるニューヨーク州の「再生可能エネルギー作業部会

(Renewable Energy Task Force)」が、2008年 4月に、再生可能エネルギー発電の促進に関す

る 16 項目の提言を発表した。

主要提言内容は次のとおりである。

○ 2011 年までに太陽光発電量を現在の 8倍(100MW)にする。

○ 2013 年までに州内における電力需要量の 25%を再生可能エネルギー利用発電により

供給するとの目標達成に向けて、州内の再生可能エネルギー供給を促進し、再生可

能ポートフォリオ基準の達成に向けた十分な財政支援を行う。

○ 州内に再生可能エネルギー関連の企業が立地し、ソーラー、風力、バイオマス、そ

の他技術関連の産業クラスターが形成されるよう、新たなビジネス・インセンティ

ブを開発する。

○ 州内の企業が自らの施設内で再生可能エネルギー発電を行い、これをネット・メー

タリング制度の下で送配電線に戻す(逆潮流)ことが出来るよう、法改正を行う。

Nysenergyplan.com(2008年 5月 30日) “Framework for Implementing the Work of the NYS Energy

Planning Board” :

http://www.nysenergyplan.com/presentations/NYS%20Energy%20Plan%20Framework%20Document2.pdf

(p.4)4. Schedule for Planning Process参照。

76 Nysenergyplan.com、(2009年 12月)“2009 State Energy Plan Volume I”:

http://www.nysenergyplan.com/final/New_York_State_Energy_Plan_VolumeI.pdf (p.13) Executive

Summary参照。

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○ 研修プログラムの提供や中小企業の支援などを通じて、「グリーンカラー労働者

("green collar" workforce、環境分野に従事する労働者)」の支援を行う77。

なお、本提言のうちネット・メータリング制度の拡充に関しては、2008年 8 月に本提言に応

える形で州法改正が行われ、当該制度の対象に非住宅用の太陽光発電と風力発電が追加された78。

2.2.2 ニューヨーク州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用関連制度

(1) 再生可能ポートフォリオ基準(RPS)

2004 年 9月、ニューヨーク州公共サービス委員会(PSC:Public Service Commission)は RPS

を導入し、2005 年 4月に実施規則(implementation rules)を発令した。

当初 2013年までに民間電力企業の発電量の 25%を再生可能エネルギーから供給するとの目標

を掲げていたが、2010 年 1月の改正を受け、2015年までに同 30%に強化された79。

(2) ネット・メータリング制度

太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、嫌気性消化ガス発電が対象(2008 年 8月の州法改

定により、非住宅用太陽光発電と風力システムも対象に追加)である。

発電システムの種類、能力や用途によってネット・メータリングの対象となる発電量の上限が

異なる(表 11参照)。

表 11 熱源別発電量の上限

熱源 発電量の上限

太陽光 住宅用は 25kW、非住宅用は 2MW またはピーク負荷発電量のいずれか尐ない方

風力 住宅用は 25kW、農業ベースは 500kW、非住宅用は 2MW またはピーク負荷発電量の

いずれか尐ない方

バイオガス 500k(農場ベースのみ)

超過発電量(NEG)は基本的に翌月の請求料金へのクレジット付与という形で顧客に払い戻さ

れる。また、住宅用および農場ベースのシステム使用の顧客に対して、毎年の請求期間(annual

billing cycle)の最後に、使用されなかった NEGが返金される。

当該制度の対象は民間公益企業とされている80。

77 New York State Department of Environmental Conservation(2008年 4月)“Environment DEC - Roadmap

to Significantly Increase Renewable Energy Generation in New York Announced”:

http://www.dec.ny.gov/environmentdec/42592.html

78 New York State Department of Environmental Conservation(2008年 9月)“Environment DEC - New Laws

Designed to Spur Investment in Renewable Energy”: http://www.dec.ny.gov/environmentdec/46142.html

79 DSIRE(2010年 1月 12日)“Renewable Portfolio Standard”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY03R&re=1&ee=1

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(3) 州政府機関のためのエネルギー効率基準

全ての州政府機関、知事の権限下にある公益企業に対し、2010年までにエネルギー消費を

1990 年水準から 35%削減することを求める措置。具体的な規定は以下のとおり。

○ 州政府機関は、電化製品を購入する際はエネルギースター製品を購入しなければな

らない。

○ 州政府関係の建物の新築または本格的な改築の際には、可能な限り LEEDグリーン建

物ガイドライン(green building guidelines)に従わなければならない。

○ 州政府関係の建物に関しては、新築の場合は州のエネルギー・コード(住宅・商用

施設の省エネ基準)を 20%以上、改築の場合は 10%以上上回らなければならない。

○ 既存の建物については、省エネおよび屋内空気質に関してエネルギースターの建物

基準を満たすべく努力する81。

(4) 州政府機関の再生可能電力調達

2010 年までに全ての州関係機関における電力調達の 20%を再生可能エネルギー(太陽光、太

陽熱、埋立ガス、風力、バイオマス、地熱、燃料電池、潮力、その他の廃棄物からのメタンガ

ス)利用の電力にすることを求める措置82。

(5) 地方政府の建物のためのエネルギー効率基準

地方政府が資金拠出した建物の新築または本格的な改築の際の省エネ基準を定めた措置。

例えば、予算額 200万ドル以上の新築・改築の場合は、 LEED基準のシルバー以上を満たさな

ければならない(ただし学校や病院の場合は LEED認定基準を満たせば良い)など、費用や建物

の種類などによって、満たすべき省エネ基準が異なる83。

(6) 発電源情報開示

1998 年のニューヨーク公共サービス委員会(PSC)の規則に基づく措置。

80 DSIRE(2009年 9月 9日更新) “New York - Net Metering”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY05R&re=1&ee=1

81 DSIRE(2009年 9月 8日更新)“Energy Standards for Public Buildings”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY13R&re=1&ee=1

82 DSIRE(2009年 10月 21日更新) “New York - Renewable Power Procurement Policy”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY08R&re=1&ee=1

83 DSIRE(2009年 7月 30日更新) “Energy Standards for Public Buildings”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY12R&re=1&ee=1

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州内の発電業者に、発電燃料の内訳、二酸化硫黄・酸化窒素および二酸化炭素の排出量等に関

する年一回の情報開示を求めている84。

2.2.3 ニューヨーク州のエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム

(1) 助成プログラム

① NYSERDA85-太陽光発電奨励プログラム(NYSERDA-PV Incentive Program)【再生可能】

送電線に接続された太陽光発電システムの導入に対する助成制度であり、助成金はシステムの

取り付け業者(installers)に支給されるが、業者はこれを顧客に還元しなければならない。

対象となるシステムは、新品で、UL認証が付与されており、全てのパフォーマンス基準およ

び安全基準を満たしていなければならない。また、全ての装置には最低 5年間の保証が付与され

ていることが必要で、バッテリー・バックアップ・システム(battery back-up systems)には

2 年間の保証期間が必要である。

システムの取り付けは、事前承認を受けた業者(現在 80社以上)により、ニューヨーク州の標

準配線要件(Standardized Interconnection Requirements)に従って行われなければならない86。

助成額は 1ワット(直流)当たり 1.75ドルで、最大助成額は住居用が 1万 3,750 ドル、非居

住用が 11 万 2,500 ドル、非営利・政府系・学校が 5万 6,250ドルである。その他、エネルギー

スター認定住宅(Energy Star Homes)や太陽光発電建築(BIPV: Building-Integrated PV)を

対象とした特別助成(bonus incentive)もある。助成上限額はシステム導入費用の 50%である。

発電量に制限はないが、助成対象となる発電能力は、住居用が 5kW、非住居用が 50kW、非営

利・政府系・学校が 25kWまでとなっている。ただし、システムの発電能力がこれを超える場合

も助成対象となるが、その場合、プログラムの設定する発電能力の上限に基づいて助成額が支給

される。

2008~2009年のプログラム予算総額は 7,530万ドルであった87。

84 ニューヨーク州公共サービス委員会、“Environmental Disclosure (Label) Program”:

http://www.dps.state.ny.us/EnvDisclosureLabel.html

エネルギー省、“Disclosure Policies – New York”:

http://apps3.eere.energy.gov/greenpower/markets/disclosure.shtml#ny

85 NYSERDA(New York State Energy Research and Development Authority)ニューヨーク州エネルギー研究開

発局:1975年に州法によって創設された公益法人。エネルギー消費が環境に与える影響や再生可能資源に関わ

る研究開発のほか、公共料金の一部を財源とするなどして、エネルギー効率向上や再生可能エネルギー利用促進

のためのプログラムや低所得者向けエネルギー関連プログラムなどを実施している。

86 New York State Public Service Commission, “Distributed Generation Information.”

http://www.dps.state.ny.us/distgen.htm

87 DSIRE(2010年 1月 11日更新) “NYSERDA - PV Incentive Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY10F&re=1&ee=1

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② NYSERDA-オンサイト小型風力発電インセンティブ・プログラム(NYSERDA-On-Site Small

Wind Incentive Program)【再生可能】

系統接続型の新規の小型(800W~250kW)の風力発電システムに対する助成制度。

助成額は風力タービンの種類などにより様々であるが、1 カ所当たり 15 万ドルが上限である。

プログラムの予算総額は 207万ドル(2007-2009 年)となっている88。

③ NYSERDA-燃料電池リベートおよびパフォーマンス・インセンティブ(NYSERDA-Fuel Cell

Rebate and Performance Incentive)【再生可能】

新規かつ NYSERDA が承認する発電用燃料電池の導入に対する助成制度。対象となる燃料電池は

製造元により 3年間耐久システム保証(enduring system warranty)が付与されていなければな

らない。また、大型燃料電池に関しては、遠隔データ収集能力、高品質のモニタリング装置およ

びセンサー装置の搭載が必要とされる。

小型燃料電池(25kW未満)は最大 5万ドル、大型燃料電池(25kW 以上)は最大 100 万ドルの

助成が受けられる。

プログラムの予算総額は 1,120 万ドルであったが、2009年 11月 20日をもって申請が締め切

られた89。

④ NYSERDA-分散型熱電併給発電(NYSERDA-Distributed Generation as Combined Heat and

Power 〔DG-CHP〕)【再生可能】

総予算 2,500 万ドルの助成制度。表 12 に示す 3つのカテゴリーから構成されている。

表 12 NYSERDA-分散型熱電併給発電の助成対象と助成上限額

助成対象 内容 助成上限額

実証実験 分散型熱電併給発電プロジェクトの実証

実験

プロジェクト費用の 30%または 200

万ドル(プロジェクト・サイトが複

数ある場合は 400 万ドル)

再委託研究 既存の分散型熱電併給発電プロジェクト

の費用対効果の向上に関わる研究

費用の 50%または 7万 5,000ドル

技術移転研究 分散型熱電併給発電システムの普及に資

する技術移転研究

費用の 75%または 10万ドル

88 DSIRE(2010年 1月 5日更新) “NYSERDA - On-Site Small Wind Incentive Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY35F&re=1&ee=1

89 DSIRE(2010年 1月 6日更新) “NYSERDA - Fuel Cell Rebate and Performance Incentive”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY44F&re=1&ee=1

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⑤ NYSERDA-エンパワー・ニューヨーク(NYSERDA-EmPower New York)【省エネ】

100 世帯以下の集合住宅に居住する、公共料金支援プログラムの対象者、または、所得額が平

均所得の 60%以下の者が対象。

特に照明と冷蔵庫の買換のほか、建物用断熱材(building insulation)、暖房システムのア

ップグレード、隙間風対策(draft reduction)、一部電化製品の燃料転換等、費用対効果の高

い省電力対策を行った場合、費用の全額を助成する。

一般的に追加的措置は大家が費用の 25%を負担する義務があるが、賃貸住居の場合、当該制

度の対象資格のあるテナントに直接的利益をもたらす措置に関しては、大家による費用の一部負

担義務は免除される90。

2006 年 7月~2011年 6月のプログラムの予算総額は 4,940万ドル91。

⑥ NYSERDA-援助家庭パフォーマンス助成制度(NYSERDA-Assisted Home Performance

Grants)【省エネ・再生可能】

省エネ家電(洗濯機、冷蔵庫、エアコン、照明など)や再生可能エネルギー利用装置(太陽光

発電、太陽熱温水器、風力発電、バイオマス、地熱ヒート・ポンプ)を購入した低所得家庭(州

または地域の平均所得の 80%以下)に対し、一部費用を助成する制度である。助成内容は表 13

のとおり。

表 13 NYSERDA-援助家庭パフォーマンス助成制度の対象と助成額

顧客層 助成額

一般顧客 一世帯住宅には最大 5,000ドル。2~4世帯の集合住宅であれ

ば最大 1万ドルを助成。費用の 50%を助成

ナショナルグリッド社92の顧客 一世帯住宅には最大 6,000ドル、2~4世帯の集合住宅であれ

ば最大 1万 2,000 ドル。費用の 60%を助成

設置作業は建築性能研究所(BPI:Building Performance Institute)の認定を受けた業者に

より行われることが条件となる93。

90 DSIRE(2009年 4月 20日更新) “NYSERDA - EmPower New York”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY32F&re=1&ee=1

91 En.openei.org、”NYSERDA - EmPower New York (New York)”:

http://en.openei.org/wiki/NYSERDA_-_EmPower_New_York_%28New_York%29 Program Budgetの部分。

92 National Grid社はロンドンを拠点とする送配電を主力事業とする英国の企業であり、米国においても完全子

企業を通してマサチューセッツ州、ニューハンプシャー州、ニューヨーク州等でサービスを提供している。

93 DSIRE(2009年 4月 20日更新) “NYSERDA - Assisted Home Performance Grants”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY17F&re=1&ee=1

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⑦ NYSERDA-エネルギー・スマート新築プログラム(NYSERDA-Energy Smart New

Construction Program)【省エネ・再生可能】

農業施設、商用施設(卸売・小売)、産業・製造施設、非営利の施設、学校、政府機関、集合

住宅(5世帯以上)の設計、建築、操業に、省エネ装置や再生可能エネルギー設備(パッシブ太

陽熱暖房、地熱ヒート・ポンプ、採光装置)を取り入れることを奨励するための助成プログラム。

本格的な改修工事も当該プログラムの対象となる。

特定の電力企業(Central Hudson Gas & Electric、Consolidated Edison (ConEd)、 New

York State Electric & Gas, National Grid、Orange and Rockland Utilities、Rochester Gas

and Electric Corporation)の利用者が対象となる。

事業の種類に応じて、累積費用の 50~75%を助成する。アップステートの住民に対しては 1

プロジェクトあたり最大 85万ドル、特定の電力企業の顧客には同 165万ドルを助成する。

予算総額は 5,300 万ドルで、当該プログラムは 2010 年末、または予算が枯渇するまで実施さ

れる94。

特に製造業等を対象として産業用プロセス省エネ化プログラム(Industrial & Process

Efficiency Program)を設定し、製造工程(モーター、コンプレッサー等の産業支援システム、

スクラップ削減等の工程、エアフロー管理(Air-flow management)等のデータセンター支援シ

ステム、次世代型サーバー等 ITに関連するもの)の省エネ化措置に必要な費用を最大 50%まで

助成する。NYSERDAからチームが派遣され、各プロジェクトの計測・検証(M&V: Measurement

and Verification)プランを設定する。関心のある企業はまず、[email protected] に連

絡する必要がある95。プログラムへの参加を希望する企業は、まず申請書96を NYSERDA に送付す

る。その後、NYRSERDA のコントラクターである担当者(OPC: Outreach Project Consultant)

が参加希望企業に連絡し、プログラムの詳細について説明するとともに、検討されているプロジ

ェクトに利用可能と考えられる技術的支援の特定を手伝うなどして、プログラムの最終的な申請

作業に対して協力を実施する97。

94 DSIRE(2010年 1月 4日更新) “NYSERDA - Energy Smart New Construction Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY08F&re=1&ee=1

95 DSIRE(2009年 12月)“NYSERDA - New Construction Program – Financial Incentives

Program Opportunity Notiice ((PON))”:http://www.nyserda.org/Funding/1501summary.pdf (p.9)

Industrial & Process Efficiency Program

96 http://www.nyserda.org/Funding/1501atte.pdf

97 DSIRE(2009年 12月)“NYSERDA - New Construction Program – Financial Incentives

Program Opportunity Notiice ((PON))”:http://www.nyserda.org/Funding/1501summary.pdf (p.10) How to

Participate

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⑧ NYSERDA-エネルギー・スマート集合住宅パフォーマンス・プログラム(NYSERDA-Energy

Smart Multifamily Performance Program)【省エネ・再生可能】

新築または既存の低所得者向け集合住宅(5世帯以上)が省エネ装置(洗濯機、乾燥機、食洗

機、冷蔵庫、除湿機、照明、ボイラー、エアコン、断熱材など)、または、再生可能エネルギー

利用装置を導入した場合の助成制度。

助成資格を得るには、不動産が公的補助を受給しているか、居住者の尐なくとも 25%が公的

補助を受給しているか、同 25%の所得が州平均所得の 80%であることを、建物所有者が示さな

ければならない。

2006 年 7月 1 日~2011 年 6月 30日の助成予算総額は、一般家族向けが 2,610 万ドル、低所得

家族向けが 1億 1,460 万ドルとなっているが、当該制度は現在一時停止されている98。

⑨ NYSERDA-既存施設プログラム(NYSERDA-Existing Facilities Program)【省エネ】

産業・製造施設、農業施設、商用施設、非営利の施設、学校、地方政府機関、業者、集合住宅

による、省エネ装置(冷蔵庫、断熱材、照明、ボイラー、エアコン、熱電併給発電装置(CHP)

など)の導入を対象とした助成制度。

電力関連事業の場合は、対象施設が、特定の電力企業(Central Hudson Gas & Electric

Corporation、Consolidated Edison Company of New York, Inc.、New York State Electric &

Gas Corporation、National Grid、Orange and Rockland Utilities, Inc.、Rochester Gas and

Electric Corporation)に対し SBC料金(System Benefits Charge)99を支払っていなければな

らない。天然ガス関連事業の場合は、対象となる施設がコン・エディソン(Con Edison)社に対

し月極料金調整量(MRA: Monthly Rate Adjustment)を支払うか、あるいは、年間使用量が 120

億平方フィート以下でナショナル・フューエル(National Fuel)社を利用する小規模商用施設

でなければならない100。

2010 年の申請締め切りは 6月 30日午後 5時(東部標準時)。申請には事前認定措置の申請と

パフォーマンス・ベースの申請があり、その手続きは次のとおりである101。

98 DSIRE(2010年 1月 19日更新) “NYSERDA - Energy Smart Multifamily Performance Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY36F&re=1&ee=1

99ニューヨーク州では 1996年から、エネルギー効率に関する教育・アウトリーチ活動、研究開発活動、低所得者

向け電気料金補助制度の資金源として、毎月の電気料金に上乗せする形で SBC料金を徴収している。

出所: DSIRE(2009年 8月 18日更新) “System Benefits Charge”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY07R&state=NY&CurrentPageID=1&RE=1&

EE=1

100 DSIRE(2009年 4月 14日更新) “NYSERDA - Existing Facilities Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY46F&re=1&ee=1

101 NYSERDA “NYSERDA - Existing Facilities Program”:

http://www.nyserda.org/Programs/Existing_Facilities/howto.html

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表 14 NYSERDA-既存施設プログラムの申請手続き

申請カテゴリー:事前認定措置(Pre-Qualified Measures)

事前認定された装置(照明、冷暖房空調設備、モーター、天然ガス装置、冷凍庫、業務用食洗

機等)を購入(購入前に NYSERDA に確認を取る方が良い)後、設置を済ませ、90日以内に、

プログラム申請書および事前認定措置申請書を所定の書類(最近の電気料金請求書、装置スペ

ックを示す書類、装置購入および設置作業のインボイス)と合わせて NYSERDA に提出する。

申請カテゴリー:パフォーマンス・ベース(Performance Base)

このカテゴリーは主に大規模な省エネ化措置事業を対象とするもので、具体的には、電気使用

の効率向上、エネルギー貯蔵、天然ガス使用の効率向上、需要応答(demand response)機

能、熱電併給システム(CHP)、産業プロセスの省エネ化等が対象となる。手続きの流れは以

下のとおり。

1. 申請対象施設または施設を代理する立場にある業者が申請書を提出する。申請書

は事業契約前または契約後 90日以内に申請する。事業開始前に NYSERDA による

サイト訪問が行われるため、NYSERDAと連絡を取り合い、準備するもの等の詳細

について確認することが奨励されている。

2. NYSERDAは申請資格を確認後、購入注文(PO: Purchase Order)を申請者に発行

する。

3. 申請者は NYSERDA に対しエンジニア分析(Engineering Analysis、事業内容、経

済効果評価、省エネ効果算定データ、装置スペック等を含むもの。一部事業には

計測・検証(M&V: Measurement and Verification)計画書が必要な場合があ

る)を提出し、認可を得る。熱電併給システムの場合はこの時点で PO が発行さ

れる。

4. NYSERDA、または、そのコンサルタントがエンジニア分析を審査し、サイトの事

前インスペクション(pre-site inspection)を実施し、NYSERDA は申請者に事

業実施許可を与える。

5. 申請者は事業を実施後、NYSERDAにその旨報告し、サイトの事後インスペクショ

ン(post-site inspection)の準備が整ったことを伝える。

6. NYSERDAはサイトの事後インスペクションを実施し、インボイスその他を申請者

から受領する。

7. 結果等の最終確認後、NYSERDA は申請者に助成金を支払う。

⑩ NYSERDA-クリーン・エネルギー・ビジネスの成長および開発(NYSERDA - Clean Energy

Business Growth and Development)【省エネ・再生可能】

ニューヨーク州におけるクリーン・エネルギー関連企業が、新規活動または既存活動の拡張を

通じて事業を成功させ、成長し、新たに市場開拓を行うことを支援するプログラムである。プロ

ジェクト 1案件に対し費用の 50%(ただし、20万ドルが上限)を助成する。

助成対象となる技術や、プロジェクトの目標などの助成受給要件はかなり幅広いが、一方で、

技術は商業化されているかまたは商業化が近いものであること(技術開発や研究開発は助成対象

外)を条件とするなどの制限もある。予算総額は 640 万ドルである102。

申請を希望する企業は、ニューヨーク州におけるクリーン・エネルギー事業の維持・拡大につ

ながる事業開発に取り組むプロジェクト(技術の商用化、資金調達、収益拡大、販売成長を支援

102 DSIRE(2009年 8月 13日更新)“NYSERDA - Clean Energy Business Growth and Development”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY40F&re=1&ee=1

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する事業運営等を含むもの。新製品やサービスの発表、既存の製品やサービスを用いた新規エネ

ルギー関連市場への参入、ベンチャー・ビジネス等新興企業への資金拠出等に関連するものでも

良い)の提案書を 10部提出しなくてはならない。提案書には必ず、(1)エグゼクティブ・サマリ

ー、(2)背景および事業ケース(business case)、(3)事業計画およびスケジュールに関する声

明書(statement of work & schedule)、(4)事業効果、(5)申請者の経歴等、(6)予算、

(7)添付書類103を含むこととされている104。書類はあくまでも簡潔にし、グラフィック等の使

用は避ける。印刷は両面印刷で左上部端の部分をホチキスで止めるのが好ましい。毎ページに申

請者の名前、PON 番号、ページ番号の記載が必要である105。

申請締め切り日(2010 年 6月 2日、11 月 3日)後、10週間以内に審査結果が出る106。

⑪ NYSERDA-エネルギースター住宅建設業者支援(NYSERDA - Energy Star Home Builders)

【省エネ】

建設業界向けに、エネルギースター基準を満たす住宅建設への動きを促進するために設置され

た制度である。エネルギースター認定の建設業者が同基準を満たす住宅を建設する際にインセン

ティブを支給する。

インセンティブの金額は、一般住宅では 750~1,500 ドル(地域によってさらに追加支援の可

能性あり)、展示住宅では 2,500 ドル、モデル住宅では 3,000ドルとなっている107。

⑫ NYSERDA-再生可能、クリーン・エネルギー、エネルギー効率製品製造・奨励プログラム

(NYSERDA - Renewable, Clean Energy, and Energy Efficient Product Manufacturing

Incentive Program)【省エネ・再生可能】

当該制度は、適格とされる製品を製造する施設を、新規開発、あるいは拡張したいと考える製

造業者に資金を供給し、ニューヨーク州における再生可能、クリーン、省エネ製品の製造を増大

させることを目的としている。

助成対象は、ニューヨーク州の主要な民間公益企業に限定される108。その他、個別の企業また

は複数企業がチーム(team)として申請することが出来る109。

103 NYSERDA “NYSERDA - Clean Energy Business Growth and Development”(p.11)Attachment

104 同上、(p.4)Proposal Requirements

105 同上、(p.3)Program Requirements

106 同上、(p.11)Contract Award

107 DSIRE(2009年 4月 20日更新)“NYSERDA - Energy Star Home Builders”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY19F&re=1&ee=1

108 DSIRE(2009年 8月 12日更新)“NYSERDA - Renewable, Clean Energy, and Energy Efficient Product

Manufacturing Incentive Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY19F&re=1&ee=1

109 ニューヨーク州エネルギー研究開発局(NYSERDA: New York State Energy Research and Development

Authority)“Renewable, Clean Energy and Energy Efficiency Product Manufacturing Incentive Program -

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助成の対象技術は次のとおり。

○ 再生可能電力またはクリーン電力を生産したり、その生産を支援するような、再生

可能エネルギーまたはクリーン・エネルギー。

○ 電気を主要インプットとして利用し省エネや省電力効果を大幅に増大させるエンド

ユース省エネ技術(energy-efficient end-use technologies)110。

○ 系統接続型システムの電力貯蔵技術。

助成金額は 1件につき最大 150 万ドルで111、助成金支給は次の 3段階に分けて行われる。

表 15 NYSERDA-再生可能、クリーン・エネルギー、エネルギー効率製品製造・奨励プログラ

ムの助成内容

段階 助成上限額 その他

第 1 段階

(場所並びに施設の

特性付け112)

支援総額の最大 5%、または、最大

7万 5,000ドルのいずれか尐額の方

複数企業による申請の場合は費用

の 50%の費用分担(cost

sharing)が求められる

第 2 段階

(製造前の開発)

支援総額の最大 20%、または、最

大 30 万ドルのいずれか尐額の方

複数企業による申請の場合は費用

の 50%の費用分担が求められる

第 3 段階(製品の製

造) 112万 5,000ドル

複数企業による申請の場合は費用

の 75%の費用分担が求められる

予算総額は 1,000 万ドル113。

申請を希望する企業は、提案書を 12部提出する。提案書には、製造される製品の記述、提案

される施設またはその拡張に関する説明、ニューヨーク州の市場へのその技術の有用性について

盛り込まなくてはならない。また、事業計画、企業財務報告書、全チームメンバーからの支援表

Program Opportunity Notice (PON) No. 1176”:http://www.nyserda.org/funding/1176summary.pdf(p.1)

Fundingの部分。

110 DSIRE(2009年 8月 12日更新) “NYSERDA - Renewable, Clean Energy, and Energy Efficient Product

Manufacturing Incentive Program”

111 ニューヨーク州エネルギー研究開発局(NYSERDA: New York State Energy Research and Development

Authority) “Renewable, Clean Energy and Energy Efficiency Product Manufacturing Incentive Program

- Program Opportunity Notice (PON) No. 1176”(p.3)PHASE 1- Facility and Site Characterization

112 場所並びに施設の選定特性付け(Facility and Site Characterization): 工場生産能力、雇用、敷地要件

(site requirements)の調査で、第 2、3段階に移行する前に、助成金支給から 3カ月以内に完了しなくてはな

らない。出所:同上

113 DSIRE(2009年 8月 12日更新) “NYSERDA - Renewable, Clean Energy, and Energy Efficient Product

Manufacturing Incentive Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY41F&re=1&ee=1

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明書も必要である。そして表紙には必ずチェックリスト(それぞれオリジナルの署名が必要)を

添付することが求められている114。

(2) 融資プログラム

① NYSERDA-エネルギー・スマート住宅融資基金(NYSERDA - Energy Smart Residential

Loan Fund)【省エネ・再生可能】

エネルギー効率向上に資する装置(洗濯機、食器洗い機、冷蔵庫、照明、ボイラー、エアコン

など)や再生可能エネルギー利用装置(太陽光発電、太陽熱温水器、風力発電、バイオマス、地

熱ヒート・ポンプ)の住宅への導入を対象とし、レンダー(lenders、金融機関)を通じて行う

低利融資制度。

レンダーの金利よりも最大 4.0%低い金利での貸付(条件によってはさらに低利の場合もあ

る)を行うもので、融資期間は 10年である。

融資対象となるのは、ニューヨーク州の 6社ある民間の電力または天然ガスの公益企業

(Central Hudson Gas & Electric Corporation、Consolidated Edison Company of New York,

Inc.、National Grid、New York State Electric & Gas Corporation、Orange and Rockland

Utilities, Inc.、Rochester Gas and Electric Corporation)のいずれか 1社の顧客であり、

かつ SBC 料金(System Benefits Charge)115または RPS 料金(Renewable Portfolio Standard

charge116)を支払う者である。

融資額に関しては、1~4人家族が居住する住宅の場合、最大 10年間の融資期間にわたり最大

2 万ドルを融資する。6社のうち Consolidated Edison 社の顧客の場合は最大 3万ドルまで融資

可能となっている117。

② NYSERDA-エネルギースター融資プログラム(Energy Star Financing Program)【省エネ・

再生可能】

114 同上、(p.1)Proposals.と Proposal Submission.

115ニューヨーク州では 1996年から、エネルギー効率に関する教育・アウトリーチ活動、研究開発活動、低所得

者向け電気料金補助制度の資金源として、毎月の電気料金に上乗せする形で SBC料金を徴収している。

出所: DSIRE(2009年 8月 18日更新) “System Benefits Charge”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY07R&state=NY&CurrentPageID=1&RE=1&

EE=1

116 ニューヨーク州では、再生可能ポートフォリオ基準(RPS)プログラムの運営費を、毎月の電気料金に RPS料

金を上乗せする形で徴収している。

出所: DSIRE(2009年 8月 18日更新) “Renewable Portfolio Standard”

117 DSIRE(2010年 1月 20日更新) “NYSERDA - Energy Smart Residential Loan Fund”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY06F&re=1&ee=1

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1~2 世帯の住宅が適格とされる省エネ装置(洗濯機、食器洗い機、冷蔵庫、除湿機、天井翼、

温水器、照明、ボイラー、エアコン、断熱材など)または、再生可能エネルギー利用装置(太陽

光発電、太陽熱温水器、風力発電、バイオマス、地熱ヒート・ポンプ)を導入する際に提供する

無担保融資制度。

融資に当たっては、ビルディング・パフォーマンス機関(BPI)の認定業者による包括的住宅

評価(CHA)を受ける必要がある。CHA後、借り手は業者と共に具体的な改善内容を決定する。

融資決定後、業者に直接支払いが行われ、借り手は融資の返済を開始する。

融資最大額は申請者の信用度(credit score)により 1万 5,000 ドルか 2万ドルとされる。年

率 5.99%で、融資期間は 3、5、7、10年118。

(3) 税制優遇措置

① 太陽エネルギー消費税免除(Solar Sales Tax Exemption)【再生可能】

太陽光発電装置、太陽熱温水器、太陽熱暖房機、パッシブ太陽熱暖房機の購入に関わる消費税

の免除制度119。

② エネルギー効率向上資産税免除(Energy Conservation Improvements Property Tax

Exemption)【省エネ・再生可能】

1~4 世帯の居住施設が、省エネ装置(温水器、エアコン、ボイラー、断熱材など)や再生可

能エネルギー装置(地熱ヒート・ポンプ、バイオマス燃料ストーブ)を導入した場合に、その改

善措置による住宅価値の上昇分を、不動産税、一般地方税、学区税、特別付加価値税から免除す

る措置120。

③ グリーン・ビルディング税控除プログラム(Green Building Tax Credit Program)【省エ

ネ・再生可能】

特定の環境基準に合致する省エネ型ビルの建築や再生可能エネルギー利用システム(太陽光発

電、太陽熱温水器、太陽熱暖房、パッシブ太陽熱暖房、採光システム、燃料電池)の導入費用を、

法人税、個人所得税、銀行税などから控除出来る(個人向け住宅は対象外)。

ビル 1棟当たりの控除上限額は 200万ドルである121。

118 DSIRE(2010年 4月 23日更新) “NYSERDA - Energy Star Financing Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY20F&re=1&ee=1

119 DSIRE(2009年 4月 10日更新) “Solar Sales Tax Exemption”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY24F&re=1&ee=1

120 DSIRE(2009年 4月 29日更新) “Energy Conservation Improvements Property Tax Exemption”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY27F&re=1&ee=1

121 DSIRE(2009年 7月 17日更新) “Green Building Tax Credit Program (Corporate)”:

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④ ソーラーおよび燃料電池税還付(Solar and Fuel Cell Tax Credit)【再生可能】

個人住宅や集合住宅による太陽光発電、太陽熱温水器、太陽熱暖房装置、燃料電池の導入費用

を個人所得税から控除する制度。

当該制度対象となる装置の発電能力については、ソーラー・システムの場合は最大 10kW(集

合住宅の場合は最大 50kW)、燃料電池の場合は最大 25kW と設定されている。

控除額は、ソーラー・システムの場合は、導入費用の 25%(最大 5,000ドル)、燃料電池の

場合は導入費用の 20%(最大 1,500ドル)である。課税年度の納税額を上回る控除額について

は、翌五課税年度に繰り越すことが認められている122。

⑤ リベート可能クリーン暖房燃料税控除(Refundable Clean Heating Fuel Tax Credit)

【再生可能】

家庭用暖房、または温水器用に必要なバイオディーゼル燃料の購入費を、個人所得税から控除

する制度。

従来型家庭用暖房油中のバイオディーゼル燃料混入割合 1%につき 0.01ドル/ガロンを控除

する(上限は 0.20 ドル/ガロン)123。

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY05F&re=1&ee=1

122 DSIRE(2009年 5月 27日更新) “Solar and Fuel Cell Tax Credit”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY03F&re=1&ee=1

123 DSIRE(2009年 12月 15日更新) “Refundable Clean Heating Fuel Tax Credit”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NY54F&re=1&ee=1

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2.3 テキサス州(州別 GDP 第 3位、州別人口第 2位)

○ エネルギー消費量が 50州の中で最大で(11,834 兆 BTU。2007 年)、人口 1人当たりのエネ

ルギー消費量もアラスカ州、ワイオミング州、ルイジアナ州、ノースダコタ州に次いで 5番

目に大きい(5.0億 BTU。2007 年)。石油(27の石油精製所での一日あたりの原油精製量は

470 万バレルで、全米の 4分の 1に相当124)や天然ガス(全米の天然ガス生産量の 10 分の 3

を生産125)の生産州であるとともに、一大エネルギー消費州である。

○ 風力発電装置の導入量(能力ベース)は全米第 1 位(西テキサス州だけで風力タービンの設

置数は 2,000 を超える126)。

○ 太陽光、太陽熱、バイオマス、水力など風力以外の再生可能エネルギーの利用は進んでいな

い。このため、州のエネルギー計画では、今後の太陽光発電の導入促進を課題の一つとして

いる。

○ エネルギー効率向上や再生可能エネルギー利用促進のための州政府のプログラムは、それほ

ど多くないが、民間公益企業による融資および助成制度(特にリベート制度)は充実してお

り、DSIRE によると、70 以上のプログラムが存在する。

表 16 テキサス州の再生可能エネルギー利用発電(2008年)

(単位:MW、能力ベース)

太陽光* 風力 地熱 バイオマス (水力) 水力を除く合計 人口当たりの

発電量**

4 7,118① 0 295 (672) 7,417① 305

*:太陽光発電は、オフグリッド(off-grid、独立型専用太陽電池モジュール)を除く。

**:人口当たりの発電量は水力を含まない。単位はワット/人。

また、○数字は、全 50州の中の順位(5位までを表示)

出所:Renewable Energy Data Book, July 2009, US Department of Energy

2.3.1 テキサス州のエネルギー計画

(1) 2008年テキサス州エネルギー計画(2008 Texas State Energy Plan)

州知事直轄の競争審議会(Competitiveness Council)は 2008 年 7月に、テキサス州エネルギ

ー計画を発表127した。バランスの取れた、競争力のある価格の下、信頼あるエネルギー供給のあ

124 エネルギー省エネルギー情報局(EIA) “State Energy Profiles - Texas”:

http://tonto.eia.doe.gov/state/state_energy_profiles.cfm?sid=TX Texas Quick Factsの部分。

125 同上

126 同上

127 Governor’s Competitiveness Council. (2008年 7月)“2008 Texas State Energy Plan”:

http://governor.state.tx.us/files/gcc/2008_Texas_State_Energy_Plan.pdf

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り方や、石油や天然ガス等のエネルギー供給州としての将来像に主眼を置くとともに、より良い

エネルギー消費のあり方、再生可能エネルギーやクリーン・エネルギーの開発促進に言及するな

ど、広範な内容となっている。

本計画では、テキサス州のエネルギー供給や消費などに関し 37の提言を行っている。このう

ち、省エネや再生可能エネルギーの促進、地球環境問題等に関連する主な提言は次のとおりであ

る。

○ 新たなソーラー・エネルギー開発を促進するために、低所得者層向けの税控除の適

用範囲を再生可能エネルギー利用装置の設置者に拡大。

○ 太陽光発電システムの購入者または設置者に対する消費税の免除措置を創設。

○ 州として連邦政府における二酸化炭素削減の議論に積極的に参加し、テキサス州の

エネルギー生産が米国に与える経済的価値を説明。

○ 仮に連邦政府が厳格な二酸化炭素規制を課すことになると、テキサス州は大きな費

用負担を負うことになる。このため、電力消費者に対して、電力の節約や燃料の多

様化に伴うコストと便益などに関する情報の普及活動を強化。また、石油や電力企

業、公益施設委員会(PUC)等は、二酸化炭素規制のコストに関する州民への情報普

及活動に向けてパートナーシップを組織化。

○ クリーン・コール技術を促進するために、州政府は、亜炭を利用した坑口における

大規模なクリーン・コール発電施設の開発や、二酸化炭素の回収・地中貯留(CCS)

や石油増進回収(EOR)のための技術革新に関わる懸賞金制度を創設。

○ 州政府は、テキサス州産亜炭利用施設からの CCS のための装置に対する 5年間の消

費税の免除制度を創設。

○ 風力発電の能力を向上させるための送電インフラを整備。

○ 渡り鳥への配慮など自然環境等に調和させる形で、テキサス湾岸の風力発電を促進。

2.3.2 テキサス州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度

(1) 再生可能ポートフォリオ基準(RPS)

2015 年までに 5,880MW(州の電力需要の 5%に相当。このうち、風力以外の再生可能エネルギ

ーによる目標発電量は 500MW)を、2025 年までに 1万 MWを再生可能エネルギー利用の発電にす

るとの目標を掲げている。

対象となる再生エネルギー利用発電装置は、1999年 9月以降に設置されたソーラー、風力、

地熱、水力、波力、潮力、バイオマス、廃棄物ガス等となっている128。

128 DSIRE(2009年 6月 17日更新) “Renewable Generation Requirement”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=TX03R&re=1&ee=1

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(2) 州政府建物における代替エネルギー利用の要求

新規の州政府ビルの建築・改修に当たり、再生可能エネルギー利用装置(太陽光発電、太陽熱

暖房、太陽熱温水器、パッシブ太陽熱暖房、風力、バイオマス、地熱ヒート・ポンプ)導入費用

の試算を義務付け、従来型の装置に比べ経済的に実行可能であると認められる時は、当該装置を

導入するよう義務付けている129。

(3) 公共機関に対するエネルギー効率向上の要求

公共機関(州政府、地方政府、学校など)に対して、2007年 9月より 6年間にわたり、毎年

5%エネルギー消費を削減することを求めている130。

(4) 発電源情報開示

テキサス公益事業委員会(PUCT: Public Utility Commission of Texas)は、州内の小売り

電力供給業者に対し、尐なくとも年 2回、顧客に対する発電源の内訳、排出レベルなどの情報開

示を行うことを義務付けている131。

2.3.3 テキサス州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム

(1) 融資プログラム

① ローンスター・リボルビング融資プログラム(LoanSTAR Revolving Loan Program)【省エ

ネ・再生可能】

州エネルギー節約局(SECO:State Energy Conservation Office)が実施する最大 500万ドル

の低利融資制度。

公立学校、大学、病院等の公共施設が省エネ設備(照明、ボイラー、エアコン、建物の断熱材

など)や再生可能エネルギー設備(太陽光発電、太陽熱暖房、太陽熱温水器、パッシブ太陽熱暖

房、風力発電、地熱ヒート・ポンプなど)を導入する場合が対象である。

融資の内容は、年利 3%で最長 10年間となっている132。

129 DSIRE(2009年 4月 7日更新) ” Alternative Energy in New State Construction”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=TX06R&re=1&ee=1

130 DSIRE(2009年 7月 23日更新) ” Energy Efficiency Goals and Requirements for Public Entities”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=TX13R&re=1&ee=1

131 エネルギー省、”Disclosure Policies – Texas”:

http://apps3.eere.energy.gov/greenpower/markets/disclosure.shtml#tx

132 DSIRE(2009年 4月 24日更新) “LoanSTAR Revolving Loan Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=TX12F&re=1&ee=1

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(2) 税制優遇措置

① 再生可能エネルギー・システム資産税免除(Renewable Energy Systems Property Tax

Exemption)【再生可能】

太陽光発電、太陽熱暖房、太陽熱温水器、パッシブ太陽熱暖房、太陽熱プール温水器、風力発

電、バイオマス発電、嫌気性消化ガス発電などの導入に対する資産税の免除制度133。

② 太陽・風力エネルギー・ビジネス法人所得税免除(Solar and Wind Energy Business

Franchise Tax Exemption)【再生可能】

太陽光発電、太陽熱暖房、太陽熱温水器、風力発電装置の製造、販売、設置を専門とする企業

のフランチャイズ税を免除する制度134。

③ 省エネ製品のためのメモリアルデーウィークエンド消費税免除(Memorial Day Weekend

Sales Tax Holiday for Energy-Efficient Products)【省エネ】

メモリアルデー・ウィークエンド135の連休中に、エネルギースター基準を満たす省エネ型のエ

アコン(上限 6,000 ドル)、冷蔵庫(上限 2,000ドル)、洗濯機、乾燥機、食器洗い機、除湿機、

天井翼、白熱灯・蛍光灯、プログラム可能なサーモスタットを購入する際、消費税136を免除する

制度137。

133 DSIRE(2009年 3月 23日更新) “Renewable Energy Systems Property Tax Exemption”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=TX03F&re=1&ee=1

134 DSIRE(2009年 11月 13日更新) “Solar and Wind Energy Business Franchise Tax Exemption”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=TX02F&re=1&ee=1

135 5 月の最終月曜日は連邦政府の祝日(Memorial Day)で、その直前の土日から続く三連休をこのように称する。

136 消費税は地域によって異なるが、6.25%~8.25%である。

137 DSIRE(2009年 7月 17日更新) “Memorial Day Weekend Sales Tax Holiday for Energy-Efficient

Products”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=TX58F&re=1&ee=1

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2.4 フロリダ州(州別 GDP 第 4位、州別人口第 4位)

○ エネルギー消費量はテキサス州、カリフォルニア州に次いで大きいが(4,602 兆 BTU。2007

年)、人口 1人当たりでは 8番目に小さい(2.5 億 BTU/人。2007 年)。

○ バイオマス発電は、カリフォルニア州に次いで第 2位の導入実績を誇る(なお、オレンジの

主要生産地である同州では現在、かんきつ類からの廃棄物を利用して 400 万ガロンのエタノ

ール生産を行う施設の建設が計画されており、これが実現すれば同原料からエタノールを生

産する世界初の施設となり得る138)。しかし、他の再生可能エネルギー発電装置の導入は進

んでいない。

○ 再生可能エネルギー利用発電の小売り電力全体に占める割合は、現在のところ 3%に過ぎな

いが、これを 2020年末までに 20%に引き上げるとの野心的な再生可能ポートフォリオ基準

を州議会にて審議中。

○ エネルギー効率向上や再生可能エネルギー利用促進のための州政府のプログラムは、あまり

充実しているとは言えないが、公益企業による助成措置は多く、DSIREによると、30以上の

プログラムが存在する。

表 17 フロリダ州の再生可能エネルギー利用発電(2008年)

(単位:MW、能力ベース)

太陽光* 風力 地熱 バイオマス (水力) 水力を除く合計 人口当たりの発

電量**

3 0 0 1,158② (56) 1,161 63

*:太陽光発電は、オフグリッド(off-grid、独立型専用太陽電池モジュール)を除く。

**:人口当たりの発電量は水力を含まない。単位はワット/人。

また、○数字は、全 50州の中の順位(5位までを表示)

出所:Renewable Energy Data Book, July 2009, US Department of Energy

2.4.1 フロリダ州のエネルギー計画

(1) 2006年フロリダ・エネルギー計画(Florida’s Energy Plan)

フロリダ州のエネルギー計画は、2005年 11月に当時のジェブ・ブッシュ(Jeb Bush)知事が

州の包括的なエネルギー計画の開発を目的とした知事命令(Executive Order 05-241)に署名し

たことから始まる。これを受けて、2006 年 1月に、州の環境保護局(DEP: Florida Department

of Environmental Protection)により、現在および将来の州のエネルギー需要の評価、規制障

壁の削減、エネルギー源の多様化、省エネの促進、代替エネルギー技術の開発に対する経済的イ

138 エネルギー省エネルギー情報局(EIA) “State Energy Profiles - Florida”:

http://tonto.eia.doe.gov/state/state_energy_profiles.cfm?sid=FL Florida Quick Factsの部分。

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ンセンティブの提言等を内容とする「2006 年フロリダ・エネルギー計画(Florida’s Energy

Plan)」が発表された。

本計画に掲げられた提言のうち、省エネや再生可能エネルギーの促進に関するものは次のとお

り。

○ 燃料の多様化、燃料供給信頼性、エネルギー安全保障を促進する。

○ 省エネや代替エネルギー技術を啓蒙する。

○ 任意の執行権限を使い、環境法の違反者には懲罰金の代わりに公共の利益に資する

代替エネルギー・プロジェクトの実施を義務付ける。

○ 全ての新規の州政府の建物について、LEED 基準への適合を義務付ける。また、地方

政府や地域の開発者に対し、高度の環境基準に適応した建設慣習を推奨する。

○ 再生可能エネルギー・システムの開発および実施に関わる研究・実証プロジェクト

に対する助成資金を提供する。

○ 住宅および商用ビルへの太陽光発電や太陽熱利用装置の設置に関わる初期投資の軽

減化に向けたリベート制度を創設する。

○ エネルギースター基準に合致する製品の購入に対するリベート制度を創設する。

○ 補助電源としての燃料電池の製造、購入または利用を対象とした、消費税や法人税

の優遇措置を創設する139。

これらの提言は、後述の「再生可能エネルギー技術グラント・プログラム」や「ソーラー・エ

ネルギー・システム・インセンティブ・プログラム」、省エネ製品に対する税制優遇措置などの

創設につながった。

2.4.2 フロリダ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用関連制度

(1) 再生可能ポートフォリオ基準(RPS)

2009 年 1月 30 日にフロリダ公共サービス委員会(PSC:Public Service Commission)が再生

可能ポートフォリオ基準(RPS)のルール案を州議会に提出し、現在審議中となっている。

この RPS案では、民間の電力供給企業のみを対象とし、小売り電力全体に占める再生可能エネ

ルギーからの電力の割合を以下のように順次増やすことを目指している。なお、現在のフロリダ

州の再生可能エネルギー由来の電力の割合は 3%未満であり、極めて野心的な目標といえる140。

139 myfloridaclimate.com、“2006 Florida Energy Act”:

http://myfloridaclimate.com/climate_quick_links/florida_energy_climate_commission/policy_and_resourc

es2/2006_florida_energy_act 2006 Energy Plan 参照。

140 フロリダ公共サービス委員会(PSC)(2009年 1月 30日)“Draft Renewable Portfolio Standard Rule”:

http://www.psc.state.fl.us/utilities/electricgas/RenewableEnergy/2009_FPSC_Draft_RPS_Rule.pdf

(p.9)Table 1の RPS Percentage and Timing

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2012年末

2015年末

2018年末

2020年末

7%

12%

18%

20%

(2) ネット・メータリング

2008 年 3月、フロリダ公共サービス委員会(PSC)が発電能力 2MW までの再生可能エネルギー

利用システムのネット・メータリングに関する規則を採択した。

州の民間公益企業のサービスを利用し、太陽エネルギー、地熱、風力、バイオマスエネルギー、

潮力、水素、廃熱、水力を利用して発電を行う顧客を対象とする141。

(3) 州政府関係機関等の公共建物のエネルギー効率向上

フロリダ州法第 255 章(フロリダ建物エネルギー節約法、Florida Energy Conservation in

Building Act of 1974、Florida Statute § 255.251)」に基づき、州政府関係の建物を建設す

る際には、費用対効果が高い場合は、ソーラー・エネルギー利用装置(太陽光発電、太陽熱温水

器、太陽熱暖房、パッシブ太陽熱暖房、採光システム等)の導入やエネルギー効率向上のための

措置を図ることが義務付けられている142。

また、同法により、新築の学校施設に関しては、パッシブ・ソーラー設計を取り入れることが

義務付けられている。

さらに、同法第 1013章(Fla. Stat. § 1013.44)により、1日当たり温水需要量が 1,000 ガ

ロン以上である学校施設は、経済的に可能な限り、温水供給量の最低 65%を太陽熱温水器によ

って賄うことが求められている。

2007 年に制定された知事令(Executive Order 07-126)は、州政府関係機関に対する温室効

果ガス削減目標値として、2012 年までに現状比 10%減、2017年までに 25%減、2025年までに

40%減を掲げている。

また、2008年 6月に制定された州法(HB 7135)では、州政府によって資金調達され州政府に

よって建築される建物については、米国グリーンビルディング協会(USGBC: U.S. Green

Building Council)の定めた LEED基準の遵守が求められている143。

141 DSIRE(2010年 2月 1日) “Florida - Net Metering”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=FL19R&re=1&ee=1

142 環境保護庁、 “Clean Energy - Florida”: http://www.epa.gov/rdee/energy-programs/state-and-

local/states/fl.html Lead By Example—Clean Energy Goals for Public Facilities参照。

143 DSIRE(2009年 5月 6日) “Energy Conservation in Public Buildings”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=FL04R&re=1&ee=1

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(4) 発電源情報開示

フロリダ公共サービス委員会(PSC)が 1999年に採択した規則に基づき、州内の民間の電力供

給企業には、四半期ごとの発電用燃料の内訳の開示が求められている144。

2.4.3 フロリダ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム

(1) 助成プログラム

① ソーラー・エネルギー・システム・インセンティブ・プログラム(Solar Energy System

Incentives Program)【再生可能】

太陽光発電装置(発電能力 2kW以上のもの)、太陽熱温水器(建物全体の需要の 50%以上を供

給するもの)、太陽熱プール温水器の導入を対象とした助成制度。

プログラム全体の予算は、2006-07年度が 250万ドル、2007-08年度が 350 万ドル、2008-09

年度が 500万ドルで145、助成額は以下のとおりとなっている

表 18 ソーラー・エネルギー・システム・インセンティブ・プログラムの助成額

装置 助成額

太陽光発電 4 ドル/ワット(直流)(最大助成額は住宅用で 2 万ドル、商用で 10 万

ドル)

太陽熱温水器

住宅用では設置 1 回当たり 500 ドル、商用・非営利・集合住宅・公共施

設では1日 1,000BTU(計測義務あり)当たり 15 ドル(最大助成額は

5,000 ドル)

太陽熱プール温水器 設置 1回当たり 100ドル。

出所:DSIRE(2009年 12月 1日) “Solar Energy System Incentives Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=FL33F&re=1&ee=1

② 再生可能エネルギー技術グラント・プログラム(Renewable Energy Technologies Grant

Program)【再生可能】

企業、学校、地方政府、非営利団体などによる再生可能エネルギー技術(太陽光発電、太陽熱

温水器、太陽熱暖房、風力、バイオマス、水力、地熱発電、地熱ヒート・ポンプ、波力、潮力な

ど)の実証、商業化、研究開発プロジェクトのためのマッチング・グラント。

2008~09 年度のプログラム予算額は 1,500 万ドルだったが、2009~2010年については予算は

拠出されていない。

144 エネルギー省、”Green Power Network – Disclosure Policies”:

http://apps3.eere.energy.gov/greenpower/markets/disclosure.shtml#fl Florida参照。

145 DSIRE(2009年 12月 1日) “Solar Energy System Incentives Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=FL33F&re=1&ee=1

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(2) 税制優遇措置

① 再生可能エネルギー装置消費税免除(Renewable Energy Equipment Sales Tax

Exemption)【再生可能】

再生可能燃料自動車、水素供給装置(総額 200 万ドルまで)、商用固定型水素燃料電池(同

100 万ドルまで)、一定の基準を満たすバイオ・ディーゼルやエタノールの供給装置や備蓄装置

(同 100 万ドルまで)の購入に関し、消費税を返還する制度146。

② 再生可能エネルギー発電税控除(Renewable Energy Production Tax Credit)【再生可

能】

再生可能エネルギー(太陽光、風力、バイオマス、水力、地熱、波力、潮力など)による発電

に対する法人税の控除。発電 1kW当たり 0.01ドル相当を控除する。

当該制度は、2007年 1月 1日から 2010 年 6月 30日に発電・販売される電力を対象とするも

のである。2008~2011 年の間に当該制度による法人税控除の申請を希望する納税者は、毎年 2

月 1 日までにフロリダ州税務局(Department of Revenue)に対し控除配分を申請する必要があ

る。5年間にわたる繰り延べ控除申請が可能である。

個々のプロジェクトに関する最大控除額の設定はないが、州の1会計年度中の控除総額は 500

万ドルである147。

③ 再生可能エネルギー技術投資税控除(Renewable Energy Technologies Investment Tax

Credit)【再生可能】

水素自動車、自動車用水素供給ステーション、商用固定型水素燃料電池、バイオディーゼルお

よびエタノールの製造、備蓄および供給施設に関わる資本費用、操業および維持管理費用、研究

開発費用の 75%を法人税から控除する制度148。

146 DSIRE(2010年 1月 14日) “Renewable Energy Equipment Sales Tax Exemption”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=FL78F&re=1&ee=1

147 DSIRE(2009年 6月 17日) “Renewable Energy Production Tax Credit”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=FL36F&re=1&ee=1

148 DSIRE(2009年 9月 15日) “Renewable Energy Technologies Investment Tax Credit”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=FL35F&re=1&ee=1

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2.5 イリノイ州(州別 GDP 第 5位、州別人口第 5位)

○ エネルギー消費量は全米で 6番目に多く(4,043 兆 BTU。2007 年)、人口 1人当たりでは、

全米平均(3.4億 BTU/人。2007 年)より若干尐ない(3.1億 BTU/人。2007 年)。

○ 風力やバイオマス発電が若干導入されているが、全体的に再生可能エネルギー利用発電はあ

まり進んでいない。

○ イリノイ州におけるエタノール生産量は全米第 1 位、石油精製量は中西部第 1位149。

○ 2025 年半ばまでに電力の 25%を再生可能エネルギー発電によって賄うとの再生可能ポート

フォリオ基準を採用している。このうち 75%以上を風力発電により賄うとされるとともに、

導入に伴う電力料金上昇の上限が定められていることが特徴的。

○ エネルギー効率向上や再生可能エネルギー利用促進のためプログラムは、「イリノイ州商

業・経済機会局(DCEO:Department of Commerce and Economic Opportunity)」が実施す

る助成措置は充実しているものの、税制優遇措置や電力企業等が実施するものは、あまり充

実していない。

○ 州内 6カ所にある発電所には原子炉が合計 11基あり、全米の原子力による発電量の 10 分の

1以上を発電しており、原子力発電所が存在する 31州の中で最大の発電能力を有している

150。

表 19 イリノイ州の再生可能エネルギー利用発電(2008年)

(単位:MW、能力ベース)

太陽光* 風力 地熱 バイオマス (水力) 水力を除く合計 人口当たりの

発電量**

3 915 0 164 (38) 1,082 84

*:太陽光発電は、オフグリッド(off-grid、独立型専用太陽電池モジュール)を除く。

**:人口当たりの発電量は水力を含まない。単位はワット/人。

出所:Renewable Energy Data Book, July 2009, US Department of Energy

2.5.1 イリノイ州のエネルギー計画

(1) 「イリノイ持続可能なエネルギー計画」

2005 年にロッド・ブラゴジェビッチ(Rod R. Blagojevich)前州知事が「イリノイ州の持続

可能なエネルギー計画(Illinois Sustainable Energy Plan)」と題するエネルギー計画を発表

し、これをイリノイ州商務委員会(Illinois Commerce Commission)が同年 7 月に採択した。こ

149 エネルギー省エネルギー情報局(EIA)”State Energy Profile - Illinois”:

http://tonto.eia.doe.gov/state/state_energy_profiles.cfm?sid=IL Illionis Quick Facts

150 エネルギー省エネルギー情報局(EIA)“Illinois Nuclear Industry”:

http://www.eia.doe.gov/cneaf/nuclear/page/at_a_glance/states/statesil.html

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の計画により、州の再生可能ポートフォリオ基準(RPS)やエネルギー効率向上目標などが提示

された151。さらに翌年 8 月、ブラゴジェビッチ前州知事により、外国からの石油輸入依存状態か

ら脱却し、州内で自給可能な代替燃料への転換を図る、長期的な包括エネルギー計画(エネルギ

ー独立計画、Energy Independence Plan)が発表されているが、こちらは採択されていない152。

2.5.2 イリノイ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用関連制度

(1) 再生可能ポートフォリオ基準(RPS)

イリノイ州では、民間電力供給企業の再生可能エネルギー利用による発電量の割合について、

次のような目標値を掲げている。

2010 年 6月1日までに

2015 年 6月1日までに

2020 年 6月1日までに

2025 年 6月1日までに

5%

10%

17.5%

25%

再生可能エネルギー発電のうち、最低 75%は風力発電によって賄うこととされている。

また、費用対効果の高い再生可能エネルギーの使用が求められており、電力消費者に転嫁でき

る費用の上限が定められている153。

(2) ネット・メータリング

州内の民間電力供給企業は、発電能力 40kW以下の再生可能エネルギー発電装置(太陽光、風

力、バイオマス、水力、嫌気性消化ガス、再生可能燃料を用いた燃料電池、マイクロタービン)

により発電された電力について、ネット・メータリング制度の採用が義務付けられている154。

(3) 州政府機関におけるエネルギー効率の向上

2005 年に制定された州法に基づき「グリーン・ビルディング諮問委員会(GBAC:Green

Building Advisory Committee)」が組織され、イリノイ州資本開発委員会(Illinois Capital

151 American Council for an Energy-Efficient Economy(2009年 9月 26日)“Illinois Sustainable Energy

Plan”:http://www.aceee.org/conf/05ee/05eer_sfrenkel.pdf

152 イリノイ州政府によるプレスリリース(2006年 8月 22日) “ Gov. Blagojevich unveils ambitious

energy independence plan to reduce Illinois’ reliance on foreign oil”:

http://www.illinois.gov/PressReleases/ShowPressRelease.cfm?SubjectID=2&RecNum=5200

153 DSIRE(2009年 8月 26日更新)” Renewable Portfolio Standard”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IL04R&re=1&ee=1

154 DSIRE(2009年 5月 12日更新)”Illinois - Net Metering”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IL13R&re=1&ee=1

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Development Board)による、州政府機関建築物の新築あるいは大規模な改築に関する環境基準の

作成作業の支援を行った。これに基づき、「州による建築のためのグリーン建造物ガイドライン

(Green Building Guidelines for State Construction)」が作成され、その後採択された155。

当該ガイドラインの主な内容は次のとおり。

○ 「大規模な改築」とは、予算が、仮に現在の建造物の全面建替をするとした場合に

必要な費用の 40%以上となる場合を指す。

○ 面積が 1万平方フィート未満の建物の場合は、LEED基準の最高基準を満たさねばな

らない。

○ 面積が 1万平方フィート以上の建物の場合は、LEED基準の「シルバー」以上を満た

さねばならない。

○ いずれの場合も、基準を満たすことにより不合理な財政的負担が発生することが考

えられ、それを論証・文書化できる場合には、適用しない156。

また、2007 年に制定された州法では、州政府の主要な機関に対し、10年以内にエネルギー消

費の 10%削減、並びに、エアコン、コンピューター、事務用品などの調達にあたってはエネル

ギースター認定製品を購入することが義務付けられた157。

(4) 州政府のグリーン発電購買目標

2007 年、「3-4-5 再生可能エネルギー・チャレンジ(3-4-5 renewable energy

challenge)」と称する州政府としての取り組みを発表し、州政府機関による電力購入の一定割

合を再生可能エネルギーを用いた発電によるものにすることが目標として設定された。具体的な

目標値は次のとおり158。

2007 年末

2008 年末

2009 年末

3%

4%

5%

155 DSIRE(2009年 10月 1日更新)” Energy Efficiency in State Government”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IL16R&re=1&ee=1

156 イリノイ州資本開発委員会、“Capital Development Board - Green Building Guidelines for State

Construction”: http://www.cdb.state.il.us/forms/download/CDB%20Green%20Building%20Guidelines.pdf

157 DSIRE(2009年 10月 1日更新)” Energy Efficiency in State Government”

158 DSIRE(2009年 5月 12日更新)”Illinois - Green Power Purchasing”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IL06R&re=1&ee=1

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(5) 発電源情報開示

州内の全ての電力小売り企業は、四半期ごとに、発電源となる燃料の内訳を円グラフで示した

ものを顧客への請求書と共に送付することが義務付けられている。また、四半期ごとに、二酸化

炭素、窒素酸化物、二酸化硫黄の総排出ガス量と、発電源に原因があると考えられている高レベ

ル・低レベル核廃棄物量を、顧客への請求書送付時に同封しなければならない159。

2.5.3 イリノイ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム

(1) 助成プログラム

① DCEO - 太陽エネルギー・インセンティブ・プログラム(DCEO - Solar Energy Incentive

Program)【再生可能】

イリノイ州商業・経済機会局(DCEO)による助成プログラムで、集合住宅、企業、学校、地方

政府、非営利団体が 5万ドル以上の規模の太陽熱暖房、太陽熱温水器、太陽熱プール温水器、太

陽光発電を導入する場合が対象である(ただし、個人住宅は対象外)。

助成額は、太陽熱利用装置は費用の 30%、LEED 基準でシルバー以上の評価を得ている太陽光発

電装置は 3ドル/ワット(直流)で算出された金額、革新的太陽光発電装置(建物複合型、また

は、高効率デザインのもの)は 3.25ドル/ワット(直流)で算出された金額である。なお、いず

れの場合も、1件当たり総額 25 万ドルが上限となっている。

装置は承認された業者によって設置される必要があり、また、適切な保険が適用されている必

要がある160。

② DCEO - ソーラーおよび風力エネルギーリベートプログラム(DCEO - Solar and Wind

Energy Rebate Program)【再生可能】

電力企業などからの出資を財源とし、イリノイ州商業・経済機会局(DCEO)が管理する「再生

可能エネルギー源信託基金(Renewable Energy Resources Trust Fund)」によるリベート・プ

ログラム。

2009 年 1月 1 日以降に設置された太陽エネルギー利用装置(太陽光発電、太陽熱温水器、太

陽熱暖房、太陽熱プール暖房、風力発電システム)が対象。特定の電力・ガス企業から供給を受

けていること、許可を受けた業者が設置することなどの条件がある。

159 エネルギー省、”Green Power Network – Disclosure Policies”:

http://apps3.eere.energy.gov/greenpower/markets/disclosure.shtml#il Illinois参照。

160 イリノイ州商業・経済機会局(DCEO)、” Solar Energy Incentive Program”:

http://www.commerce.state.il.us/dceo/Bureaus/Energy_Recycling/Energy/Clean+Energy/02-

solar+Energy+Incentive+Program.htm

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太陽熱温水器および暖房機は、SRCC認証161が付与されているか、それに相当する機関による

認定が付与されている必要がある。かつ、一日当たり 5万 BTUs(英熱量)162以上の能力か、60

平方フィート以上の集熱器を有したものに限る。

太陽光発電は、発電能力が 1kW以上のもので、UL認証が付与されているか、または 1年以上

の屋外試験に合格したものに限る。

太陽熱プール温水器は、一般に開放されたプール用に限る。

風力発電システムは、発電能力が 1~100kWのもので、かつ、1 エーカー以上の土地区画にお

いて、300 フィート以内に存在するいかなる構造物等よりも最低 30 フィート高い位置で、さら

に高さ 60 フィート以上の塔に設置されなければならない。

リベート額は、住宅用および商業施設の場合は、費用(装置費用と設置費用)の 30%、非営利

団体(学校を含む)および政府機関の場合は 50%。上限額は 5万ドル。ただし、申請者は費用の

最低 25%を負担しなければならない163。

③ バイオガス・バイオマスのエネルギー化グラント・プログラム(DCEO - Biogas and

Biomass to Energy Grant Program)【再生可能】

イリノイ州商業・経済機会局(DCEO)が運営し、「再生可能エネルギー源信託基金(RERTF:

Renewable Energy Resources Trust Fund)」を財源とする再生可能エネルギー開発推進のための

助成制度。バイオガスまたはバイオマスの熱電併給発電(CHP)への利用が助成対象となる。

フィージビリティ・スタディ(FS)調査、または関連装置の設置にかかる費用の 50%を助成。

(ただし、FS調査は 2,500ドル、バイオガス利用の装置の設置は 22万 5,000 ドル、バイオマス

利用の装置の設置は 50万ドルが上限)164。

④ DCEO - エネルギー効率型低価格住宅建設プログラム(DCEO - Energy Efficient

Affordable Housing Construction Program)【省エネ】

イリノイ州の非営利・営利の住宅開発業者(housing developers)が、低価格住宅の改築

(rehab: rehabilitation)または新たな建設の際に、エネルギー効率対策を講じることを推進

する制度である。

161 SRCC(Solar Rating and Certification Corporation) はオイルショックを契機に 1974年に設立された独

立認証機関であり、太陽エネルギーを利用した集熱器と集熱システムを対象とした独自の認定基準に基づき、認

定証を発行している。

出所:http://www.solar-rating.org/about/about.htm

162 BTU(英熱量):1ポンドの水の温度を 1°F上げるのに必要な熱量。1BTUは約 1,055ジュール(約 252カロリ

ー)。

163 DSIRE(2010年 2月 16日更新) “DCEO - Solar and Wind Energy Rebate Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IL05F&re=1&ee=1

164 DSIRE(2009年 9月 1日更新) “DCEO - Biogas and Biomass to Energy Grant Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IL26F&re=1&ee=1

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助成は、低・中所得者向け住宅の新築・改築に際し、省エネ装置(洗濯機、冷蔵庫、食器洗い

機、温水器、エアコン、ボイラー、断熱材等)を導入した開発業者に対して行われる。

助成上限額は、改築か新築の別、並びに、住宅の種類や規模により様々である(例えば、1家

庭用住宅を新築する場合は 3,000 ドル、二世帯住宅の場合は 5,000 ドル)165。

⑤ DCEO - 公的部門電気効率プログラム(DCEO - Public Sector Electric Efficiency

Programs)【省エネ】

特定の電力企業から電力供給を受ける地方政府、連邦政府、公立学校、大学などの公的機関が

省エネ装置(冷蔵庫、照明、暖房、エアコンなど)を導入する際の助成(リベートおよびグラン

ト)制度。

「標準」助成と、標準助成の対象となる施策を組み合わせるなどした「特別」助成がある。

「標準」助成の金額は装置の種類、規模、省エネ効果によって様々に異なる。「特別」助成額は、

年間節電量を基に、最大算出レート 0.08 ドル/kWhで計算された金額となる。助成額は、プロジ

ェクト費用の 75%、または、追加的措置の費用の 100%を超過してはならない。リベートの上限額

は 5 万ドル、グラントの場合は 20万ドルである166。

⑥ DCEO - 公的部門新築プログラム(DCEO - Public Sector New Construction Program)

【省エネ】

面積が1万 5,000平方フィート以上の学校、連邦政府、州政府、地方政府等、公的機関の建物

の新築または大規模な改築に関し、省エネに資する事業を対象として助成を行う。

助成対象となる建物は、特定の電力企業(Commonwealth Edison 〔ComEd〕または Ameren

affiliated utilities 〔AmerenCILCO, AmerenIP, and AmerenCIPS〕)から電力供給を受けてい

ることが条件である。

助成額は、省エネ効果が州の商用省エネ・コード(2006 IECC)をどれだけ上回るかなどによ

り様々。例えば、省エネ効果が省エネ・コードを 10%上回る場合は、助成額は 0.2 ドル/平方

フィート、最大助成額は 10万ドルである。また、省エネ効果が省エネ・コードを 30%上回る場

合は、助成額は 1ドル/平方フィート、最大助成額は 20万ドルとなっている。167

165 DSIRE(2009年 5月 21日更新) “DCEO - Energy Efficient Affordable Housing Construction Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IL14F&re=1&ee=1

166 DSIRE(2009年 8月 26日更新)“DCEO - Public Sector Electric Efficiency Programs”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IL29F&re=1&ee=1

167 DSIRE(2009年 7月 9日更新) “DCEO - Public Sector New Construction and Retrofit Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IL30F&re=1&ee=1

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⑦ DCEO - 大規模顧客エネルギー分析プログラム(DCEO - Large-Customer Energy Analysis

Program)【省エネ】

製造業者、病院、大規模商業施設、大学、地方政府機関などの大規模エネルギー利用施設で、

エネルギー・コストが年間 50万ドル以上のものが対象となる。

助成額は、エネルギー効率向上のための行動計画の開発費用の 50%(最大 1 万ドル)、技術支

援費用の 50%(最大 1 万ドル)となっている168。

(申請手続きに関する情報はウェブサイト上に掲載されていないため、DCEO の担当者に連絡し

確認する必要がある)

⑧ イリノイ州財務公社再生可能エネルギー・プロジェクト・ファイナンス(Illinois

Finance Authority Renewable Energy Project Financing)【再生可能】

イリノイ州財務公社(IFA:Illinois Finance Authority)は、イリノイ州知事の経済開発ア

ジェンダを支援すべく、債券発行、融資業務、設備投資を行う州の機関である。

2009 年に制定された州法(S.B. 1906)により、IFA は、営利企業並びに非営利団体による再

生可能エネルギー事業への資金援助手段として、非課税債券を発行することが許可された。

対象となる技術は、風力、太陽熱、太陽電池、太陽電池パネル、バイオディーゼル、作物およ

び有機廃棄物バイオマス、埋立地ガス等である。また、再生可能エネルギー利用により発電され

た電力を送電する装置も対象となる169。

⑨ イリノイ州住宅用省エネ機器リベート(Illinois - Residential Energy-Efficient

Appliance Rebates)【省エネ】

「米国再生・再投資法」により州に支給された資金を原資に実施されるプログラムで、省エネ

機器の住宅への導入費用に対し、リベートを行うものである。

フェーズ 1が 2010年 1月 31 日から開始されたが、リベート対象となるのは、2010 年 1月 31

日以降に購入された省エネ冷暖房装置および温水器である。リベートは業者を通じて装置購入時

に行われる。

フェーズ 2は 2010年 4月 16 日~25日までに実施される予定であり、エネルギースター認定

の冷蔵庫、洗濯機、食洗機、冷凍庫、屋内型エアコン等、ホワイト・グッズ(white goods)170

と称される製品が対象である。リベートは購入時に 15%割引の形で行われる。古い機器の買い替

えの場合は、さらに、メール・イン・リベート(mail-in rebate、購入後個人的に郵送でリベー

168 DSIRE(2009年 11月 6日更新) “DCEO - Large-Customer Energy Analysis Program (LEAP)”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IL19F&re=1&ee=1

169 DSIRE(2009年 8月 3日更新) “Illinois Finance Authority Renewable Energy Project Financing”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IL46F&re=1&ee=1

170 ホワイト・グッズとは大型白物家電(冷蔵庫、洗濯機、食洗機、冷凍庫、屋内型エアコンなど)を指す。

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ト申請を行うこと)の対象となる可能性があり、冷蔵庫・冷凍庫のリサイクルには 100ドル、洗

濯機・食洗機のリサイクルには 50ドルが返金される。

予算総額は 1,237万 9,000ドルである171。

(2) 税制優遇措置

① 太陽エネルギー・システムに対する特別査定(Special Assessment for Solar Energy

Systems)【再生可能】

太陽光発電、太陽熱暖房機、パッシブ太陽熱暖房機、太陽熱温水器の導入に関わる資産税の評

価に際し、従来型エネルギー・システムと同等の価値に抑えて評価する措置172。

② 商業用風力発電装置の資産価値評価(Commercial Wind Energy Property Valuation)【再

生可能】

商業、産業、公益企業セクターで、売電目的の発電に使用される風力発電装置(発電能力は

500kW 以上)の資産価値を、36 万ドル/MW で算出する措置(2007 年から 5年間有効)173。

③ ハイ・インパクト・ビジネス風力発電事業を対象とした消費税免除(Sales Tax Exemption

for Wind Energy Business Designated High Impact Business)【再生可能】

エンタープライズ・ゾーン(Enterprise Zone)という通常ハイ・インパクト・ビジネス

(HIB: High Impact Business)174認定対象外とされるエリアに、新たに風力発電施設を建設す

るビジネスに対してハイ・インパクト・ビジネス認定を付与し、州の消費税(6.25%)を免除す

る措置。

171 DSIRE(2010年 1月 20日更新) “Illinois - Residential Energy-Efficient Appliance Rebates”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IL57F&re=1&ee=1

172 DSIRE(2009年 10月 5日更新) “Special Assessment for Solar Energy Systems”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IL01F&re=1&ee=1

173 DSIRE(2009年 10月 5日更新) “Commercial Wind Energy Property Valuation”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IL25F&re=1&ee=1

174 ハイ・インパクト・ビジネスプログラムは、イリノイ州が大規模経済開発活動の奨励策として税に関するイ

ンセンティブを提供するプログラムである。対象となるには、事業の最低投資額が 1,200万ドルで 500名のフル

タイムの従業員の雇用を創出するものであるか、あるいは、投資額が 3,000万ドルで 1,500名のフルタイムの従

業員の雇用を創出するものでなければならない。

出所:イリノイ州商業・経済機会局(DCEO)、” High Impact Business (HIB)”:

http://www.commerce.state.il.us/dceo/Bureaus/Business_Development/Tax+Assistance/HIB.htm

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風力発電施設は、新たに建設されるか、または既存施設を拡張したものでなければならず、

2009 年 7 月 1日以降に操業開始したものでなければならない。風力タービンの発電能力は 500kW

以上でなければならない175。

HIB 申請はまず、申請を希望する企業が DCEOに申請書を提出し、それが 30 日以内に審査され

る(初期審査)。初期審査により DCEOから追加書類が必要と判断された場合、企業はさらに、

30 日以内に所定の追加書類を揃え、提出する。初期審査により却下された場合、企業は 30日以

内に再申請することが可能で、再提出された申請書への最終判断は、提出後 30 日以内に出され

る。HIB 認定が下りた場合は、申請した企業に対して、DCEOから書面で HIB認定企業であること

を示す書類が届き、さらにそのコピーが DCEOからイリノイ州税務局(Illinois Department of

Revenue)に送付される176。

175 DSIRE(2009年 10月 5日更新) “Commercial Wind Energy Property Valuation”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IL25F&re=1&ee=1

176 DCEO“Tax Assistance - High Impact Business (HIB)”:

http://www.commerce.state.il.us/dceo/Bureaus/Business_Development/Tax+Assistance/HIB.htm

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2.6 ペンシルベニア州(州別 GDP第 6位、州別人口第 6位)

○ エネルギー消費量は、全米で 6番目に多く(4,006兆 BTU。2007 年)、人口 1人当たりのエ

ネルギー消費量は、全米平均より若干尐ない(3.2億 BTU/人。2007年)。

○ ウェストバージニア州、ケンタッキー州に次ぐ石炭産出州である177とともに、原子力発電は

イリノイ州に次いで第 2 位の規模(能力ベース)178。

○ 再生可能エネルギー利用は、バイオマス以外の分野は進んでいない。

○ 2020 年までに 18%との再生可能ポートフォリオ基準を掲げているが、石炭ガス化複合発電

(IGCC)179による電力も代替エネルギーの一種として対象としているところが特徴的。

○ 州政府等が実施する助成プログラムでは、中小企業に特化したグラントや融資制度の設定が

特徴的。他方で、税制優遇措置は充実していない。

表 20 ペンシルベニア州の再生可能エネルギー利用発電(2008 年)

(単位:MW、能力ベース)

太陽光* 風力 地熱 バイオマス (水力) 水力を除く合計 人口当たりの

発電量**

4 361 0 565 (775) 930 75

*:太陽光発電は、オフグリッド(off-grid、独立型専用太陽電池モジュール)を除く。

**:人口当たりの発電量は水力を含まない。単位はワット/人。

出所:Renewable Energy Data Book, July 2009, US Department of Energy

2.6.1 ペンシルベニア州のエネルギー計画等

(1) 「エネルギー独立戦略(Energy Independence Strategy)」

2007 年 2月に州知事は、エネルギー費用を管理し、エネルギーの独立性を高め、経済を活性

化させるためのエネルギー戦略を発表した。

エネルギー効率向上および再生可能エネルギー導入促進のために、主として次の財政的手当て

を行うとしている。

177 エネルギー省エネルギー情報局(EIA)” Coal Production and Number of Mines by State and Mine

Type”: http://www.eia.doe.gov/cneaf/coal/page/acr/table1.html

178 エネルギー省エネルギー情報局(EIA)”State Energy Profiles - Pennsylvania”:

http://tonto.eia.doe.gov/state/state_energy_profiles.cfm?sid=PA Coal, Electricity, and Renewables

179 石炭ガス化複合発電(IGCC):石炭をガス化炉内で燃焼することにより合成ガス(H2+CO)にし、ガスタービ

ンと蒸気タービンの複合タービンにより発電を行う先進的石炭火力発電システムの 1つ。蒸気タービンのみで発

電する通常の微粉炭火力発電に比べて高効率であり、燃料の節約と CO2排出量の削減に寄与するなどの特徴があ

る。

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○ 企業や公的機関のソーラーを除く再生可能エネルギー・プロジェクトの支援のため

のグラントや融資制度に 1億 6,500万ドル

○ 住宅または中小企業向けに、ソーラー・エネルギー装置の設置に対するグラント、

融資、リベート制度に 1億ドル

○ 住宅または中小企業向けに、省エネ装置を導入した場合や建物の耐候性を高めた場

合の助成制度に 9,250 万ドル

○ ソーラー部門の経済的な開発のためのグラントや融資に 8,000万ドル。インキュベ

ーター支援サービス、事業立ち上げのためのエネルギー効率向上技術の研究などの

初期段階の活動を支援する「ベン・フランクリン技術開発機構」に 4,000 万ドル

○ 風力および地熱利用技術に 2,500 万ドル

○ グリーン・ビルディングに 2,500 万ドル

○ 低所得者住宅向けエネルギー効率向上支援に 4,000万ドル

○ 発電に伴う公害防止措置に 2,500 万ドル

○ ペンシルベニア住宅金融局(Pennsylvania Housing Finance Agency)のエネルギー

効率向上融資基金(Energy Efficiency Loan Fund)に 500万ドル180

2.6.2 ペンシルベニア州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度

(1) 再生可能ポートフォリオ基準(RPS)

2004 年 11月の州法「代替エネルギー・ポートフォリオ基準法(Alternative Energy

Portfolio Standards Act of 2004)181」に基づく措置。

再生可能エネルギーの種類によって次の「第1分類」「第 2分類」に分類し、州内の発電・送

電事業者に対して、2020 年までに小売り電力全体の 18%(第 1分類で 8%、第 2分類で 10%)

を再生可能エネルギーで賄うことを義務付けている182。

第 1 分類 太陽光、太陽熱、風力、小規模水力、地熱、バイオマス、バイオマスからのメ

タン・ガス、炭層メタン、燃料電池による発電

第 2 分類 廃炭、分散型発電システム、大規模水力、自治体の固定廃棄物、木屑、産業副

産物、石炭ガス化複合発電(IGCC)

180 ペンシルベニア州環境保護局、”About EIS”:

http://www.depweb.state.pa.us/portal/server.pt/community/energy_independence/10473/about_eis/553042

181 ペンシルベニア公益事業委員会(Pennsylvania Public Utility Commission)、 “Alternative Energy

Portfolio Standards (AEPS) Program Web Site”:

http://www.puc.state.pa.us/electric/electric_alt_energy.aspx

182 DSIRE(2009年 9月 1日更新) “Alternative Energy Portfolio Standard”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA06R&re=1&ee=1

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(2) ネット・メータリング

2004 年 11月の州法「代替エネルギー・ポートフォリオ基準法」に基づき、2006年にペンシル

ベニア公益事業委員会(PUC:Public Utility Commission)が導入した措置。

民間の電力企業に対し、発電能力 50kW以下の発電システムにより住宅顧客(residential

customers)が発電する電力、および同 3MW 以下の発電システムにより企業等の非住宅顧客

(nonresidential customers)が発電する電力について、ネット・メータリングの実施を義務付

ける制度。

太陽光、太陽熱、風力、水力、地熱、バイオマス、燃料電池、熱電併給発電(CHP)、自治体

の固形廃棄物、廃炭、炭層メタン、その他の分散型発電が対象183である。

(3) 州政府関係機関の建物のエネルギー効率基準

2004 年、知事令(Executive Order 2004-12)に基づく措置で、州政府関係機関における様々な

エネルギー効率化が義務付けられた。これにより、2006 年には州政府関係機関の建物の年間エ

ネルギー消費量の 10%削減が達成されたと推計されている。

その後、2008 年 6月に州知事により、2010年までに州政府関係機関におけるエネルギー消費

のさらなる 10%削減を目指してエネルギー効率化措置を取ることが命じられた184。

(4) 州政府関係機関に対するグリーン電力購入要求

ペンシルベニア州は、州内の再生可能エネルギー利用電力供給企業(現在は Renewable Energy

Choice, Inc社)との契約により、州政府機関による電力消費量の一部を再生可能エネルギー源

から調達する取り組みを進めて来た。

2000 年には、州政府機関の電力の 5%をグリーン電力(風力またはバイオマスを発電源とする

もの)によって調達するとの目標が設定されたが、2004 年にはこれが 10%に倍増され、さらに、

2006 年には 20%に倍増された。その後、2008年 6月には、州政府による年間電力消費量の 28%

に目標値が引き上げられ、現時点では 30%となっている。州知事により 2010 年中旪までに 50%

達成が掲げられている185。

183 DSIRE(2009年 12月 9日更新) “Pennsylvania - Net Metering”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA03R&re=1&ee=1

184 DSIRE(2009年 7月 21日更新) “Energy Management and Conservation in State Facilities”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA12R&re=1&ee=1

185 DSIRE(2009年 7月 7日更新) “Pennsylvania - Green Power Purchasing”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA05R&re=1&ee=1

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(5) 建物エネルギー・コード

2004 年に州の労働・産業局(DLI:Department of Labor & Industry)は、国際コード協議会

(ICC:International Code Council)による国際建物コード(IBC:International Building

Code)やその他のコードなどを元にした商業用並びに住宅用を対象とした建物エネルギー・コー

ドを採択している186。

(6) 発電源情報開示

1998 年のペンシルベニア公益事業委員会(PUC)の規則に基づく措置。

電力の小売業者に対し、発電源情報に関する消費者の合理的な要求への対応を義務付けると共

に、発電源のデータについて独立した監査機関の認証を得、毎年 1回 PUC に報告するよう義務付

けている187。

2.6.3 ペンシルベニア州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム

(1) 助成プログラム

① ペンシルベニア・エネルギー開発機関-グラント(Pennsylvania Energy Development

Authority(PEDA)-Grants)【省エネ・再生可能】

企業、非営利団体、学校、地方政府などが行う、再生可能エネルギー技術(代替交通燃料、ソ

ーラー、風力、水力発電、地熱利用、バイオマス、廃棄物ガス、炭層メタン・ガス、廃炭利用発

電、燃料電池、石炭ガス化複合発電〔IGCC〕など)や省エネ技術(排熱回収。具体的な技術指定

はなし)の研究開発に対する助成。

1 件あたりの最大助成額は 150 万ドルで、実施者にはコスト負担が求められる188。

② コミュニティ・経済開発局-代替・クリーン・エネルギープログラム(グラントおよび融

資保証)(DCED-Alternative and Clean Energy Program)【再生可能】

2008 年 7月、広範囲にわたり再生可能エネルギーおよび省エネ技術を支援する予算総額 6億

5,000 万ドルの代替エネルギー法が制定された。当該法律には代替エネルギーおよびクリーン・

186 DSIRE(2009年 3月 20日更新) “Pennsylvania Building Energy Codes”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA08R&re=1&ee=1

187 エネルギー省、”Green Power Network – Disclosure Policies”:

http://apps3.eere.energy.gov/greenpower/markets/disclosure.shtml#pa Pennsylvania参照。

188 DSIRE(2009年 6月 4日更新) “Pennsylvania Energy Development Authority (PEDA) - Grants”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA16F&re=1&ee=1

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エネルギー生産プロジェクトを対象としたグラント並びに融資制度の創設に関する条項も含まれ

ており、当該プログラムはそれに相当する。

当該プログラムは、ペンシルベニア州財務局(CFA:Commonwealth Financing Authority)の

監督下で、コミュニティ・経済開発局(DCED:Department of Community and Economic

Development)および環境保護局(DEP:Department of Environmental Protection)が共同実施

する融資、グラント、融資保証制度である。

助成制度(グラントおよび融資保証)の支給対象は、営利企業および非営利団体、経済開発団

体、および地方政府や学校等による、省エネ化措置の実施並びに代替エネルギーシステムの導入

である。

助成金の使途は、クリーン・エネルギー事業と代替エネルギー生産事業の二つに分類されてい

る。

表 21 コミュニティ・経済開発局-代替・クリーン・エネルギープログラム助成制度の内容

事業 内容

クリーン・エネルギー事

省エネ機器(冷暖房、照明機器等。該当する場合はエネルギース

ター認定製品であること)の購入、代替エネルギー・ポートフォ

リオ基準法(AEPS)に規定された資源(太陽エネルギーを除く)

を利用する代替エネルギーシステムの導入や既存システムの取り

替え等に必要とされる費用。

代替エネルギー生産事業 代替エネルギー・ポートフォリオ基準法(AEPS)に規定された資

源(太陽エネルギーを除く)を利用して発電を行う代替エネルギ

ー事業、代替燃料の製造または生産を行う施設、代替エネルギー

または代替燃料の研究開発施設等の建設または開発等に必要な費

用。

製造施設の建設や開発のための助成金は、助成承認後 3年間に予定される新規雇用者数を基に、

一人当たり 1万ドルを上限として算出される。その他代替エネルギーおよびクリーン・エネルギ

ー事業への助成金の上限額は 200万ドル、省エネ契約(ESCOs)の上限額は 50 万ドルである。

融資保証は、申請者が債務不履行に陥った場合にグラントの形で支給され、不足金額の 75%

(上限 500万ドル)が提供される189。

申請を希望する企業は、DCEDのシングル・アプリケーション・フォー・アシスタンス

(single application for assistance)のサイトから申請を行う。サイトからの申請が済んだ

ら、その申請書を 10部印刷し、所定の添付書類と、署名ページ(signature page)と共に郵送

する。申請書は代替クリーン・エネルギー・プログラムの採択審査予定日(日程は

www.newPA.com で確認可能)から尐なくとも 60日前には受領されていなければならない。申請

許可が下りた場合、申請者は、決定を知らせる書簡(commitment letter)の発行日から数えて

189 DSIRE(2009年 9月 4日更新) “DCED - Alternative and Clean Energy Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA45F&re=1&ee=1

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45 日以内に署名し、返送しなければならない。グラントはプロジェクト期間を通して最大 12回

まで、最低 30日の間隔を開けて支給される190。

③ コミュニティ・経済開発局-ハイパフォーマンス建物インセンティブプログラム(グラン

トおよび融資保証)(DCED-High Performance Building Incentives Program)【再生可

能】

2008 年 7月、広範囲にわたり再生可能エネルギーおよび省エネ技術を支援する予算総額 6億

5,000 万ドルの代替エネルギー法が制定された。当該法律には代替エネルギーおよびクリーン・

エネルギー生産プロジェクトを対象としたグラント並びに融資制度の創設(予算総額 2,500 万ド

ル)に関する条項も含まれており、当該プログラムはそれに相当する。

当該プログラムは、ペンシルベニア州財務局(CFA)の監督下で、コミュニティ・経済開発局

(DCED)および環境保護局(DEP)が共同実施する融資、グラント、融資保証制度である。

助成制度(グラントおよび融資保証)の支給対象は、中小企業(従業員数 100人以下)および

個人による、住宅または商業施設の新築、あるいは、本格的な改築であり、使途は土地の購入、

ハイパフォーマンス建造物の建設または改築のための費用、事業設計費用等とされる。新築ある

いは本格的な改築の行われた建物は LEED 基準のゴールド水準を達成しなければならない。

助成金額は、事業費用の 10%(上限 50 万ドル)。

融資保証は、申請者が債務不履行に陥った場合にグラントの形で支給され、住宅事業の場合は

10 万ドル、中小企業事業の場合は 200万ドルを上限に提供される191。

④ コミュニティ・経済開発局-ソーラー・エネルギー・インセンティブ・プログラム(グラ

ントおよび融資保証)(DCED-Solar Energy Incentives Program)【再生可能】

2008 年 7月、広範囲にわたり再生可能エネルギーおよび省エネ技術を支援する予算総額 6億

5,000 万ドルの代替エネルギー法が制定された。当該法律にはソーラー・エネルギー技術を対象

としたグラント並びに融資制度の創設(予算総額 8,000 万ドル)に関する条項も含まれており、

当該プログラムはそれに相当する。

当該プログラムは、ペンシルベニア州財務局(CFA)の監督下で、コミュニティ・経済開発局

(DCED)および環境保護局(DEP)が共同実施する融資、グラント、融資保証制度である。

助成制度(グラントおよび融資保証)の支給対象は、営利企業および非営利団体、経済開発団

体、および地方政府や学校等による、ソーラー・エネルギー・システム導入に関わる土地・建物

190 DCED(2010年 3月) “Alternative and Clean Energy – Program Guidelines”:

http://www.newpa.com/find-and-apply-for-funding/funding-and-program-finder/funding-

detail/index.aspx?progId=212

の Guidelinesから PDFをダウンロード。ガイドラインの (p.9) Application Proceduresと(p.10)Procedures

for Accessing Fundsを参照。

191 DSIRE(2009年 4月 22日更新)“DCED - High Performance Building Incentives Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA36F&re=1&ee=1

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の購入、建物の建設または改築、ソーラー・システム製造のための機器購入、ソーラー発電施設

の購入・設置・建設、フィージビリティー・スタディー、許可料、一般管理費(事業費の 3%が

上限)等とされる。

助成金額は、製造施設の場合、助成承認後 3年間に予定される新規雇用者数を基に、一人当た

り 5,000 ドルを上限として算出される。エネルギー生産施設の場合は基本的に 100 万ドルを上限

として助成金が支給される(事業内容によってはそれ以上も検討される)。事業計画およびフィ

ージビリティー・スタディーの場合は、調査費用の 50%、あるいは、17万 5,000ドルのうち金額

の低い方が支給される。

融資保証は、申請者が債務不履行に陥った場合にグラントの形で支給され、不足金額の 75%

(上限 3,000 万ドル)が提供される192。

申請を希望する企業は、DCED のシングル・アプリケーション・フォー・アシスタンス

(single application for assistance)のサイトから申請を行う。サイトからの申請が済んだ

ら、その申請書を 10部印刷し、所定の添付書類と、署名ページ(signature page)とを共に郵

送する。申請書は代替クリーン・エネルギー・プログラムの採択審査予定日(日程は

www.newPA.com で確認可能)から尐なくとも 60日前には受領されていなければならない。申請

許可が下りた場合、申請者は、決定を知らせる書簡(commitment letter)の発行日から数えて

45 日以内に署名し、返送しなければならない。グラントはプロジェクト期間を通して最大 12回

まで、最低 30日の間隔をあけて支給される193。

⑤ コミュニティ・経済開発局-風力・地熱インセンティブ・プログラム(DCED-Wind and

Geothermal Incentives Program)【再生可能】

2008 年 7月、広範囲にわたり再生可能エネルギーおよび省エネ技術を支援する予算総額 6億

5,000 万ドルの代替エネルギー法が制定された。当該法律には、風力および地熱技術を対象とし

た予算総額 2,500 万ドルの助成および融資プログラムの創設を規定する条項も含まれており、こ

の風力・地熱インセンティブ・プログラムがそれに該当する。

当該プログラムは、ペンシルベニア州財務局(CFA)の監督下で、コミュニティ・経済開発局

(DCED)および環境保護局(DEP)が共同実施するもので、風力・地熱技術発展のために融資、

グラント、融資保証を行う(融資制度に関しては、後述の融資プログラム参照)。

助成制度(グラントおよび融資保証)の支給対象は、企業(非営利団体含む)、経済開発団体、

地方政府や学校、さらに、住宅(実住・実需物件)に地熱冷暖房システムを設置しようとする個

人である。

192 DSIRE(2009年 8月 12日更新) “DCED - Solar Energy Incentives Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA43F&re=1&ee=1

193 DCED(2010年 3月) “Alternative and Clean Energy – Program Guidelines”:

http://www.newpa.com/find-and-apply-for-funding/funding-and-program-finder/funding-

detail/index.aspx?progId=212

の Guidelinesから PDFをダウンロード。ガイドラインの (p.9) Application Proceduresと(p.10)Procedures

for Accessing Fundsを参照。

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助成金の使途は、土地・建物の購入・整備、地熱ヒート・ポンプまたは風力エネルギー生産並

びに送電施設の購入・建設・設置、事業計画策定並びにフィージビリティ・スタディ、許認可な

どに要する費用、管理費(ただし助成金の 3%以内)とされる。

助成金は、製造施設の場合は、融資承認後 3年間に予定される新規雇用者数を基に一人当たり

5,000 ドルを上限として算出される。また、発電施設の場合は最大 100万ドルが助成金として支

給される。計画策定並びにフィージビリティ・スタディの場合、当該費用の 50%または 17 万

5,000 ドルのうち、低い方を助成金として支給する194。

融資保証は、申請者が債務不履行に陥った場合にグラントの形で支給され、融資保証限度額は、

債務不履行額の 75%を上限とし、最大 500 万ドルまでとなっている。この場合の返済期間は最

長 5 年間である195。

申請を希望する企業は、DCEDのシングル・アプリケーション・フォー・アシスタンス

(single application for assistance)のサイトから申請を行う。サイトからの申請が済んだ

ら、その申請書を 10部印刷し、所定の添付書類と、署名ページ(signature page)とを共に郵

送する。申請書は代替・クリーン・エネルギープログラムの採択審査予定日(日程は

www.newPA.com で確認可能)から尐なくとも 60日前には受領されていなければならない。申請

許可が下りた場合、申請者は、決定を知らせる書簡(commitment letter)の発行日から数えて

45 日以内に署名し、返送しなければならない。グラントはプロジェクト期間を通して最大 12回

まで、最低 30日の間隔を開けて支給される196。

⑥ キーストーン・ヘルプ・エネルギー効率融資・リベートプログラム(Keystone HELP

Energy Efficiency Loan & Rebate Program)【省エネ・再生可能】

当該プログラムでは、高効率暖房、エアコン、断熱材、窓、ドア、地熱利用や家全体の改修に

よるエネルギー効率化などのエネルギー効率化装置・措置、バイオマス利用装置、地熱ヒート・

ポンプ、ソーラーを除く代替エネルギー利用冷暖房装置等の再生可能エネルギー利用装置の導入

に対し、融資やリベートを行うことにより、住宅所有者のエネルギー効率化への取り組みを支援

する(当該プログラムの融資制度については、後述の融資プログラムを参照)。

州政府によるプログラムではあるが、実際の運営はペンシルベニア州の省エネ事業レンダーで

ある AFC First Financial Corporation が担当している。

194 DSIRE(2009年 8月 11日更新) “DCED - Wind and Geothermal Incentives Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA41F&re=1&ee=1

195 DSIRE(2009年 8月 11日更新) “DCED - Wind and Geothermal Incentives Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA41F&re=1&ee=1

196 DCED(2010年 3月) “Alternative and Clean Energy – Program Guidelines”:

http://www.newpa.com/find-and-apply-for-funding/funding-and-program-finder/funding-

detail/index.aspx?progId=212

の Guidelinesから PDFをダウンロード。ガイドラインの (p.9) Application Proceduresと(p.10)Procedures

for Accessing Fundsを参照。

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世帯収入が 15 万ドルを超過しない 1~2世帯住宅(実住・実需物件)に居住し、適格とされる

改修を行う住宅所有者が対象となる。設置される装置は新品でなければならず、かつ、設置作業

は条件を満たす業者によって行われなければならない。

リベート制度には次の 2種類がある。

エネルギースターリベート 先進的機能エネルギースターリベート

エネルギースター基準に適合する装置

の設置や、同基準を満たす改善を行う

際に、購入・設置費用の 10%(最大

250ドル)を払い戻す。

エネルギースター基準を超える機能を

有する装置を設置する際に、購入・設

置費用の 10%(最大 500ドル)を払い

戻す。

なお、同一年度内にリベートと融資の両方を受けることはできない197。

⑦ ハイパフォーマンス・グリーン学校計画助成(High Performance Green Schools Planning

Grants)【省エネ・再生可能】

学校新築時に包括的なエネルギー効率向上対策を講じ、かつ、再生可能エネルギーを利用する

設備を導入する場合に、グリーン建築の設計のためのシミュレーション、モデル化、コンサルテ

ィング等、「ソフト面」に関わる作業にグラントを提供する制度。

LEED 基準でシルバー以上(シルバーの上はゴールドとプラチナ)の基準を満たす建物でなけ

ればならない。

助成額は規模やプロジェクトの種類により様々である(参考として、2008 年の助成額は 1件

当たり 2万 5,000 ドル)198。

⑧ ペンシルベニア・エネルギー収穫助成プログラム(Pennsylvania Energy Harvest Grant

Program)【省エネ・再生可能】

当該プログラムは、州の環境保護局(DEP)および農業局(Pennsylvania Department of

Agriculture)が、空気質の改善、土地の保全、地方の分水嶺保護、州内の農業コミュニティへの

経済機会の提供を目的として、2003年以降実施している。

本プログラムは、非営利団体、学校、地方政府機関などが、汚染の低減、環境の質の向上、エ

ネルギー使用量の削減のため、クリーンかつ再生可能なエネルギー技術(太陽光発電、太陽熱発

電、太陽熱暖房、太陽熱温水、風力、嫌気性消化ガス、太陽光発電、風力、バイオマス、燃料電

池、小型水力発電などの分散型発電)を導入する場合のグラント制度である。

最大助成額は 50万ドルである199。

197 DSIRE(2009年 8月 7日更新)“Keystone HELP Energy Efficiency Loan & Rebate Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA19F&re=1&ee=1

198 DSIRE(2009年 7月 16日更新)“High Performance Green Schools Planning Grants”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA25F&re=1&ee=1

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⑧ 中小企業アドバンテージ助成プログラム(Small Business Advantage Grant Program)

【省エネ】

州の環境保護局(DEP)が実施するプログラムで、営利企業(フルタイムの従業員数 100人以

下)によるエネルギー効率向上装置(照明、冷蔵装置、ボイラー、熱交換器など)の導入を対象

としたグラント制度。

助成額は 1件当たり最大 7,500 ドルであり、マッチングファンド方式により事業費用の 50%

を上限に決定される。

申請者は、1年間に 15%以上の経済的な利益あるいは節約が事業成果として得られることを論

証しなければならない200。

⑨ 中小企業エネルギー効率助成プログラム(Small Business Energy Efficiency Grant

Program)【省エネ】

2008 年 7月に創設された総額 6億 5,000 万ドルの「代替エネルギー投資基金」のうち、300 万

ドルを充てた新規のプログラム。

フルタイムの従業員 100 人以下の中小企業がエネルギー効率向上装置(暖房、エアコン、照明、

商用冷蔵庫、窓、断熱材など)を導入する場合のグラント制度。

対象となる装置はエネルギースター基準を満たし、年間のエネルギー費用を 1,000 ドル、また

は 20%以上節約する必要がある。(窓取り付け型エアコン、暖炉、自動販売機等一部の装置は

対象外)

導入費用の 25%、または 2 万 5,000ドルが助成の上限である。

2009 年 1月 12 日以降に発生した費用が対象で、助成期限は同年 5月 1日(または財源がなく

なるまで)とされており、現在、当該プログラムでは公募は行われていない。

助成を受けた企業は、プロジェクト終了後に、12カ月分のエネルギー節約データを提出する

義務がある201。

(2) 融資プログラム

① コミュニティ・経済開発局-代替・クリーン・エネルギープログラム(DCED-Alternative

and Clean Energy Program)(融資)【再生可能】

199 DSIRE(2009年 4月 16日更新)“Pennsylvania Energy Harvest Grant Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA06F&re=1&ee=1

200 DSIRE(2009年 4月 17日更新) “Small Business Advantage Grant Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA20F&re=1&ee=1

201 DSIRE(2009年 7月 1日更新) “Small Business Energy Efficiency Grant Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA30F&re=1&ee=1

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(プログラムの実施機関、対象となる事業等の基本情報、申請方法に関しては、当該プログラム

のグラント制度を参照)

融資は、金利 5%(固定)で、最長返済期間は 10年。

製造施設の建設や開発のための融資金額は、融資承認後 3年間に予定される新規雇用者数を基

に、一人当たり 3万 5,000ドルを上限として算出される。3年間の新規雇用者数が基準を満たさ

なかった場合、その時点の融資残高に対する金利が 3%引き上げられる可能性がある。一般的に、

融資上限額は 500 万ドルとなっている202。

② コミュニティ・経済開発局-ハイパフォーマンス建物インセンティブプログラム(融資)

(DCED-High Performance Building Incentives Program)【再生可能】

(プログラムの実施機関、対象となる事業等の基本情報、申請方法に関しては、当該プログラム

のグラント制度を参照)

融資は、金利 4%(固定)で、住宅事業の場合は 10 万ドル、中小企業事業の場合は 200万ド

ルを上限に提供される。最長返済期間は 10年203。

③ コミュニティ・経済開発局-ソーラー・エネルギー・インセンティブ・プログラム(融

資)(DCED-Solar Energy Incentives Program)【再生可能】

(プログラムの実施機関、対象となる事業等の基本情報、申請方法に関しては、当該プログラム

のグラント制度を参照)

融資は、金利 5%(固定)で、最長返済期間は、装置購入費用の場合 10年、不動産購入の場

合は 15 年である。製造施設の建設や改築のための融資金額は、融資承認後 3年間に予定される

新規雇用者数を基に、一人当たり 3万 5,000 ドルを上限として算出される。エネルギー生産事業

のための融資金額の上限は通常 500万ドルである204。

④ コミュニティ・経済開発局-風力・地熱インセンティブ・プログラム(DCED-Wind and

Geothermal Incentives Program)【再生可能】

2008 年 7月に創設された「代替エネルギー投資基金」の支援を受けて州のコミュニティ・経

済開発局(DCED)が実施するグラント、融資、融資保証制度(当該プログラム支給対象等の基本

情報、申請方法、および、助成および融資保証の際の限度額等に関しては、当該プログラムのグ

ラント制度を参照)。

202 DSIRE(2009年 9月 3日更新) “DCED - Alternative and Clean Energy Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA46F&re=1&ee=1

203 DSIRE(2009年 4月 22日更新) “DCED - High Performance Building Incentives Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA36F&re=1&ee=1

204 DSIRE(2009年 8月 12日更新) “DCED - Solar Energy Incentives Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA43F&re=1&ee=1

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融資は 2009年 8月時点で、固定金利 5%で提供されており、最長返済期間は、装置では 10年

間、不動産では 15年間となっている。融資上限額は、製造施設向けの場合は融資承認後 3 年間

に予定される新規雇用者数を基に一人当たり 3万 5,000 ドルを上限として算出され、発電事業向

けの場合は 500 万ドルに設定されている205。

⑤ キーストーン・ヘルプ・エネルギー融資・リベートプログラム(Keystone HELP Energy

Efficiency Loan & Rebate Program)【省エネ・再生可能】

当該プログラムでは、高効率暖房、エアコン、断熱材、窓、ドア、地熱利用や家全体の改修に

よるエネルギー効率化などのエネルギー効率化装置・措置、バイオマス利用装置、地熱ヒート・

ポンプ、ソーラーを除く代替エネルギー利用冷暖房装置等の再生可能エネルギー利用装置の導入

に対し融資を提供することにより、住宅所有者のエネルギー効率化への取り組みを支援する(当

該プログラム支給対象等の基本情報、および、リベート制度の限度額等に関しては、既出の助成

プログラムの記述を参照)。

融資には次の種類がある。

○ エネルギースター融資(無担保):エネルギースター基準に適合する装置の設置、

または、プログラム基準を満たすその他改修の実施を対象とする。融資額は 1,000

~1 万 5,000ドル、固定金利 6.99%、返済期限は 3、5、10年である。

○ 先進的機能エネルギースター融資(無担保):エネルギースター基準を超える機能

を有する装置の設置を対象とする。融資額は 1,000~1万 5,000ドル、固定金利

5.99%、返済期限は 3、5、10年である。

○ 改装・修繕エネルギースター融資(担保付):エネルギースター基準を満たす装置

の設置、または、プログラム基準を満たすその他改修の実施を対象とする。融資額

は 1 万 5,000~3 万 5,000 ドル、固定金利は 6.375-8.875%、返済期限は 10、15、

20年である。所得が 15万ドルを超える住宅所有者も当該融資の対象となる可能性

がある。

○ 住宅全体の改善融資(無担保):エネルギー効率の向上のため、認定されたエネル

ギー監査業者が推薦する住宅全体の改善の実施が対象となる。融資額は 1,000~1万

5,000 ドル、固定金利 4.99%、返済期限は 3、5、10年である。

○ 住宅全体の改善融資(担保付):エネルギー効率の向上のため、認定されたエネル

ギー監査業者が推薦する住宅全体の改善の実施が対象となる。エネルギー監査は事

業完了後も行う義務がある(事業完了後のエネルギー監査終了後、適格申請者と認

められた場合、キーストーン・ヘルプによるエネルギー監査費用として 325ドルが

支給される)。融資額は 5,000~3万 5,000 ドル、固定金利 3.875-6.375%、返済

期限は 10、15、20年である。

205 DSIRE(2009年 8月 11日更新) “DCED - Wind and Geothermal Incentives Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA41F&re=1&ee=1

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当該制度にはリベート制度も設けられているが、同一年度内で融資とリベートの両方の受給は

出来ない206。

⑥ 中小企業公害防止支援会計融資プログラム(Small Business Pollution Prevetion

Assistance Account Loan Program)【省エネ】

州の環境保護局(DEP)およびコミュニティ・経済開発局(DCED)が実施する低利融資制度。

中小企業(フルタイムの従業員数 100人以下)による省エネ並びに汚染防止プロジェクト(省

エネ型照明、モーター、製作機械の導入等)を支援する。

融資額は事業総額の 75%を上限とし、最大 10万ドルまで支給する。

固定金利 2%。返済期間は最長 10年207。

(3) 税制優遇措置

① 商用風力発電施設に対する資産税評価(Property Tax Assessment for Commercial Wind

Farms)【再生可能】

租税査定官が、商用、産業用の風力発電施設(風力タービンおよび塔や基盤などの関連施設)

の資産税評価を行う際、これらを資産価値の増加分に算入しない措置208。

206 DSIRE(2009年 8月 7日更新) “Keystone HELP Energy Efficiency Loan & Rebate Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA19F&re=1&ee=1

207 DSIRE(2009年 8月 11日更新) “Small Business Pollution Prevention Assistance Account Loan

Program”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA21F&re=1&ee=1

208 DSIRE(2009年 9月 14日更新) “Property Tax Assessment for Commercial Wind Farms”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=PA26F&re=1&ee=1

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2.7 ニュージャージー州(州別 GDP第 7 位、州別人口第 11位)

○ エネルギー消費量は全米第 12位(2,744 兆 BTU。2007 年)で、人口 1人当たりでは尐ない

方から 19番目(3.2億 BTU/人。2007年)。

○ 太陽光発電の導入量(能力ベース)は、カリフォルニア州に次いで第 2位。(ただし、同州

の 7分の 1以下の規模)

○ 再生可能ポートフォリオ基準に関しては、2021年までに 22.5%との比較的高い目標値を掲

げるとともに、ソーラー発電に特化した目標値を掲げるなど、きめ細かい基準を設定してい

る。なお、2008 年 10 月に発表されたエネルギー基本計画では、2020年までに 30%とさら

に高い目標値を掲げ、これに向けて努力すべきとしている。

○ ニュージャージー州の電力需要量の半分以上は、原子力発電によって供給されている209。

○ エネルギー効率向上や再生可能エネルギー利用促進のための州政府のプログラムとしては、

電力等の利用者から料金に上乗せする形で徴収した資金に基づく「ニュージャージー・クリ

ーン・エネルギー・プログラム」の助成制度が充実している。

表 22 ニュージャージー州の再生可能エネルギー利用発電(2008 年)

(単位:MW、能力ベース)

太陽光* 風力 地熱 バイオマス (水力) 水力を除く合計 人口当たりの

発電量**

70② 8 0 243 (13) 321 37

*:太陽光発電は、オフグリッド(off-grid、独立型専用太陽電池モジュール)を除く。

**:人口当たりの発電量は水力を含まない。単位はワット/人。

また、○数字は、全 50州の中の順位(5位までを表示)

出所:Renewable Energy Data Book, July 2009, US Department of Energy

2.7.1 ニュージャージー州のエネルギー計画

(1) エネルギー基本計画(Energy Master Plan)

1987 年の州法は、州政府に対し、10年ごとのエネルギー基本計画の策定および 3年ごとの見

直しを求めている。前回の基本計画策定は 1991年に、見直し作業は 1995 年に行われていたため、

同法の規定を受け、2008 年 10 月に最新のエネルギー基本計画が発表された210。

209 エネルギー省エネルギー情報局(EIA)”State Energy Profiles – New Jersey”:

http://tonto.eia.doe.gov/state/state_energy_profiles.cfm?sid=PA New Jersey Quick Facts

210 ニュージャージー州、” 1987 Law Requires New Jersey to Formulate the EMP”:

http://www.state.nj.us/emp/about/

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この 2008年版エネルギー基本計画では、現在の施策を継続した場合の「現状維持シナリオ」

と新たな施策を講じる「代替シナリオ」により、2020 年のエネルギーを取り巻く状況を予想し、

その課題と考えられる解決策や目標を提示している。

「現状維持シナリオ」では、次の 4つの課題を予想している。

課題 1. 電力供給の成長が、依然として需要に追いつかない。

課題 2. エネルギー価格は過去数年にわたり著しく高騰すると共に不安定さを増し、こ

の傾向が継続するものと予想される。

課題 3. 何らかの手を打たないと、地球温暖化対策等への対処の負荷が増大し続ける。

課題 4. 電力の供給や価格に対する州政府の権限が、以前に比べ格段に縮小する。

これに対して「代替シナリオ」では、これらの課題を克服し、達成すべき次の 5つの目標を提

示している。

目標 1. エネルギーの節約およびエネルギー効率を最大限にする(2020年までに尐なく

ともエネルギー消費を 20%削減する)。

目標 2. ピーク時の電力需要量の低減化を図る。

目標 3. 既存の再生可能ポートフォリオ基準を超え、2020年までに電力需要の 30%を再

生可能エネルギー由来で対応出来るよう努力する。

目標 4. 21世紀のエネルギー・インフラを開発する(スマート・グリッドの開発、発電

量力の増強など)。

目標 5. 州内の産業を活性化に資するべく、革新的なクリーン・エネルギー技術や事業

に投資する。

この「代替シナリオ」を実現すれば、2020 年までに、州内の消費者は 64億ドルを節約するこ

とが可能で、エネルギー・インフラへの投資額が約 330 億ドルを達成し、2015 年までに 2万人

の雇用が創設できるとしている211。

2.7.2 ニュージャージー州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用関連制度

(1) 再生可能ポートフォリオ基準(RPS)

ニュージャージー州の RPSは、米国内でも最も野心的なものの一つであり、州内における小売

販売の顧客を持つ電力供給企業に対し、2021 エネルギー年度(2020 年 6月~2021年 5月)まで

に州内で販売する電力の 22.5%を再生可能エネルギーから調達しなければならないとしている。

さらに、RPSでは、ソーラー発電からの調達量を 2021 エネルギー年度中に尐なくとも 2,518 ギ

211 ニュージャージー州ウェブサイト(2008年 10月)“New Jersey Energy Master Plan”:

http://www.state.nj.us/emp/docs/pdf/081022_emp.pdf

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ガワット時(GWh)、同 2026年度以降は毎年 5,316GWh にするよう、電力供給企業に義務付けて

いる212。

同州の RPS は、再生可能エネルギー源を「クラス I」と「クラス II」(およびソーラー)に分

類し、それぞれ目標値を設定している。

表 23 ニュージャージー州における再生可能可能エネルギー源と目標値

クラス 発電源 目標値

(2021 エネルギー年度)

クラスⅠ

ソーラー、風力、地熱、波力、潮力、埋立地ガス、バ

イオマス(嫌気性消化等)、再生可能エネルギー利用

の燃料電池

17.88%

クラス II 発電能力が 30MW 以下の水力発電、州の環境保護局が認

定するエネルギー源回収装置 2.50%

ソーラー 2.12%

(2,518GWh)

現状の全般的な基準は上記のように 2021 年で終了するため、ニュージャージー公益企業理事

会(BPU:Board of Public Utilities)では、2022年以降の目標値について、2021 年時点と同

等またはそれ以上の水準にする規則を採択する方針である。213。

(2) ネット・メータリング

民間公益企業の全顧客(居住者、商業、産業)を対象とする。

ソーラー、風力、地熱、波力、潮力、埋立地ガス、バイオマスを利用する発電システム(再生

可能エネルギー利用の燃料電池も含む)が対象となる。システムの発電能力の上限は 2MWとされ

る。

発電総量に制限はないが、州全体のピーク時の電力需要量の 2.5%を超える発電量が登録され

た場合、ニュージャージー公益企業理事会(BPU)の許可を得れば、公益企業はネット・メータ

リングを止めることが出来る214。

(3) 州政府関連建物のエネルギー基準

2008 年 1月に制定された州法に基づく措置。

212 2010年 1月に制定された州法(S.B. 3520)により、ソーラー発電によるものだけ、パーセンテージ表示から

熱量表示(GWh、ギガワット時)に切り替えられた。

出所:DSIRE(2010年 1月 29日更新) “Renewables Portfolio Standard”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NJ05R&re=1&ee=1

213 同上

214 DSIRE(2010年 2月 2日更新) “ReNew Jersey - Net Metering”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NJ03R&re=1&ee=1

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面積 1万 5,000 平方フィート以上の州政府関連機関の専用建物に対し、LEED 基準では「シル

バー」以上、「グリーン・ビルディング・イニシアチブ」215におけるグリーン・グローブ格付け

システムで 2段階以上、あるいは、その他の定評ある持続可能な建物認定プログラムで数値評価

による同様の格付け基準を満たすことが義務付けられている216。

(4) 公立学校施設のエネルギー基準

2002 年 7月の州知事令(Executive Order #24)によって、公立学校を新設する際には、設計

に LEED 基準のバージョン 2.0ガイドラインを満たすことが義務付けられている(ただし費用や

時間の節約のため、LEED 認定を受ける必要はない)217。

(5) 発電源情報開示

1999 年の州法に基づき、全ての電力供給事業者は、発電燃料の種類および大気への排出物質

(二酸化炭素、二酸化硫黄、窒素酸化物)に関する情報を年に 2回顧客に開示することが義務付

けられている。

その他、大気汚染物質に関しては地域平均値との比較を行うこと、情報開示のデータに関して

は直近 12 カ月間のもので、かつ、独立業者によるエネルギー監査が行われたものでなければな

らない218。

215 グリーン・ビルディング・イニシアチブ:建物のエネルギー効率等を評価し、認証する「グリーン・グロー

ブ」制度を提供する米国の非営利機関。「グリーン・グローブ」制度は、建物の効率性等を 1,000項目にわたり

評価し、そのうち 35%以上をクリアする建物に対し、1~4段階の格付けを与える制度。

216 DSIRE(2009年 5月 7日更新) “High Performance Building Standards in New State Construction”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NJ16R&re=1&ee=1

217 DSIRE(2009年 5月 7日更新) “Energy Efficiency in New School Construction”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NJ14R&re=1&ee=1

218 エネルギー省、“Disclosure Policies – New Jersey”:

http://apps3.eere.energy.gov/greenpower/markets/disclosure.shtml#nj

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2.7.3 ニュージャージー州政府機関等が実施する主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギ

ー利用促進プログラム

(1) 助成プログラム

① ニュージャージー利用者立地再生可能エネルギーリベート(New Jersey Customer-Sited

Renewable Energy Rebates)【再生可能】

「ニュージャージー・クリーン・エネルギー・プログラム(New Jersey Clean Energy

Program)」219に基づく制度であり、企業、商業、産業、住宅、非営利団体、学校、州・連邦政

府、先住民族政府等による再生可能エネルギー発電に対するリベートを行うものである。

制度対象となる発電源、最大発電能力、リベート額は表 24のとおり。

表 24 ニュージャージー利用者立地再生可能エネルギーリベートの対象とその額

発電源 最大発電能力 リベート額

太陽光(住宅用) 設定なし 1.55ドル/Wが標準リベート額

太陽光(非住宅用) 50kW(直流) 0.90ドル/Wが標準リベート額

燃料電池、持続可能バイオマス 設定なし 設置費用の 30%(上限額は 98 万

5,000 ドル)

熱電併給発電(CHP)型燃料電池、

持続可能バイオマス 設定なし

設置費用の 40%(上限額は 151

万 2,500 ドル)

風力 設定なし 住宅用では 5万 1,200 ドル、その

他 54 万 3,000 ドル。

発電量は一般的にその立地場所における従来の(新築の場合は予測される)消費電力量を超過し

てはならない。

また、農家、商業、産業、非営利団体、特定企業顧客は、州の税務局より納税証明書(Tax

Clearance Certificate)を入手する必要がある220。

申請を希望する企業等は、申請書、技術ワークシート、年間電力消費量に関する書類、インス

トール予定のシステム契約書(署名付き)、関係施設の地図等の所定の書類を揃え、申請する

(初期申請)。申請後、書類に不備がある場合は 30日以内に申請者側に伝達される。前払い金

(upfront incentive)を受け取ることを希望する者については、この初期申請の審査結果およ

びプログラムの予算状況によって前払い金の支給が決定され、支給が認められた場合には前払い

金承認レター(upfront incentive approval letter)が送付される。前払い金を希望しない者

219 ニュージャージ・クリーン・エネルギー・プログラム:民間電力・ガス供給企業7社の利用料金に上乗せし、

徴収する資金を元に、エネルギー効率の向上および「クラスⅠ」の再生可能エネルギー発電の導入促進を目的と

した助成措置を行うプログラム。ニュージャージ公益企業理事会(BPU)が運営している。

220 DSIRE(2010年 1月 28日更新)“New Jersey Customer-Sited Renewable Energy Rebates”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NJ04F&re=1&ee=1

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には、プロジェクトが承認されるとプロジェクト支援レター(project assistance letter)が

送付される。

プロジェクトの承認後 12カ月以内に申請者はインストールを完了させ、最終事業書類(最終

前払い金申請書〔final upfront incentive application〕、エネルギースター監査によるホー

ム・パフォーマンス〔Home Performance〕、証書〔evidence〕、修正された技術ワークシート、

納税証明書)を準備する。設置された装置は、当該プログラムのインスペクションか品質管理審

査(quality assurance review)を受け、その後その地域の定めるインスペクションをクリアし

なければならない。

全ての書類を受領後、通常 60日以内にリベートが行われる。特に、前払い金を受け取らなか

った者には通常 30日以内にリベートが行われる221。

② ニュージャージー・スマート・スタート・ビルディング(直接設置プログラム)(New

Jersey Smart Start Buildings - Direct Install Program)【省エネ】

当該制度では、直近 12カ月間のピーク時の電力需要量が 200kW 以下の産業および商業セクタ

ーの顧客(Atlantic City Electric、Jersey Central Power & Light、 Rockland Electric

Company、New Jersey Natural Gas、Elizabethtown Gas、PSE&G、South Jersey Gas の顧客に限

定)を対象として、省エネ装置の導入・設置等、即時利用可能な省エネ改修措置に対して、費用

の最大 80%を払い戻す。

対象となる装置は、省エネ冷暖房空調システム、照明、冷蔵機器、モーター等である222。

申請を希望する企業等は、当該制度の参加業者(participating contractor)に連絡し、エネ

ルギー査定(Energy Assessment)を受ける。この業者が、申請者の申請書並びに同意書への記

入を手伝う。査定に基づき、リベートの対象となる措置等を決定し、申請者は作業内容を示す書

類(Scope of Work document)に署名する。その後、業者は設置を行い、完了後に申請者は事業

完了を示す書類(Project Completion Form)に署名する。その後、プログラム担当者がプロジ

ェクト完了を認証し、申請者は業者に申請者による負担額を支払い、残額は当該制度が業者に支

払う223。

③ ニュージャージー・スマート・スタート・ビルディング(新築および改修)(New Jersey

SmartStart Building - New Construction and Retrofits)【省エネ・再生可能】

「ニュージャージー・クリーン・エネルギー・プログラム」に基づく措置。

221 Njcleanenergy.com(2009年 1月)“Renewable Energy Incentive Program Guidebook ”:

http://www.njcleanenergy.com/files/file/Renewable_Programs/CORE/REIPGuidebookfinal0202mq.pdf

(p.7) Initial Application (p.3) Final Application

222 DSIRE(2010年 2月 11日更新)“New Jersey SmartStart Buildings - Direct Install Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NJ35F&re=1&ee=1

223 Njcleanenergy.com“Six Simple Steps to Participation”:

http://www.njcleanenergy.com/commercial-industrial/programs/direct-install/steps-to-participation

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商業・産業ビル、学校の新築・改築時に、エネルギー効率の高い技術を用いた装置(温水器、

照明、ボイラー、ヒート・ポンプ、エアコン、モーター等)や再生可能エネルギーを利用した装

置(地熱ヒート・ポンプ)の導入にリベートを支給する制度である。新築の場合は、公立学校を

除き、特定地域(New Jersey Smart Growth areas)内に所在するものに限定される。

また、当該制度は、特定の電気・ガス企業(Atlantic City Electric、Jersey Central Power

& Light、Rockland Electric Company、New Jersey Natural Gas、 Elizabethtown Gas、PSE&G、

South Jersey Gas)の顧客であれば、ニュージャージー州の住民以外にも適用される。

一方、商業・産業分野の申請者は、州の税務局より納税証明書を入手する必要がある。

リベート額は、装置の種類、サイズ、エネルギー効率等によって様々であるが、電気料金のア

カウント 1件当たり年間 50万ドルを上限としている。

当該プログラムでは、リベートという財政支援以外に、設計補助や技術支援等も行っている224。

申請希望者は、事前承認(pre-approval)のために、設置が計画されている装置タイプに関す

る申請書を提出する。その際、必要に応じて作業計画シート(worksheet)や製造者によるスペ

ック表(manufacturer’s specification sheet)を添付する。プログラム担当者が申請書の審

査を行い、承認・却下・アップグレードの推奨等を決定する225。

④ ニュージャージー・スマート・スタート・ビルディング(ペイ・フォー・パフォーマン

ス・プログラム)(New Jersey Smart Start Buildings - Pay for Performance

Program)【省エネ】

「ニュージャージー・クリーン・エネルギー・プログラム」に基づく措置で、ピーク時の電力

需要量が 200kW 以上とされる建物を対象とし、省エネの程度に応じたインセンティブ(リベー

ト)を支給する。

対象となるのは、特定の電気・ガス企業(Atlantic City Electric、Jersey Central Power &

Light、Rockland Electric Company、New Jersey Natural Gas、 Elizabethtown Gas、PSE&G、

South Jersey Gas)の顧客とされる。

リベート額は、建物のタイプ(既存の建物か、または、新築ないし本格的な改築が行われた建

物か)と、省エネ措置による省エネ化の検証結果等によって様々である226。

224 DSIRE(2010年 1月 26日更新)“New Jersey SmartStart Buildings - New Construction and Retrofits”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NJ18F&re=1&ee=1

225 Njcleanenergy.com“New Jersey SmartStart Buildings – Program Overview”:

http://www.njcleanenergy.com/commercial-industrial/programs/nj-smartstart-buildings/nj-smartstart-

buildings

226 DSIRE(2010年 1月 27日更新)“New Jersey SmartStart Buildings - Pay for Performance Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NJ27F&re=1&ee=1

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⑤ 再生可能エネルギー製造インセンティブ(最終消費者用の太陽光発電システム設置)

(Renewable Energy Manufacturing Incentives 〔for End-Use PV Installations〕)

【再生可能】

当該制度では、商業、産業、住宅(集合住宅も含む)、非営利、学校、地方政府、州政府、部

族政府、連邦政府、農家等に、再生可能エネルギー利用装置を導入する際、発電量や装置の発電

能力に応じたリベートを支給する。

対象となる装置は太陽光システム(集光パネル、インバーター、搭載システム)である。

2010 年のプログラム予算は 100万ドル227。

当該プログラムの下でニュージャージー州認定の製造業者(certified New Jersey

manufacturer)となるには、製品コスト(労働費用、一般管理費、部品、原料を含む)の最低

50%がニュージャージー州内に拠点を持つ施設に由来する製品を供給している必要がある。また、

製品は所定の UL 基準を満たし、商業化されているものでなければならない。さらに、毎年製造

監査(manufacturing audit)を受ける必要がある228。

⑥ 家庭用太陽熱温水器パイロットプログラム(Solar Domestic Hot Water Pilot Program)

【再生可能】

州内の居住者(Atlantic City Electric、Jersey Central Power & Light、Public Service

Electric & Gas 、Rockland Electric Companyの顧客に限定)が、既存の温水器の取替え、改

修等の目的で太陽熱温水器(新品に限定)を購入・設置する際に、1システムあたり 1,200 ドル

を上限としてリベートを支給する229。

⑦ クール・アドバンテージ・プログラム(COOL Advantage Program)【省エネ】

「ニュージャージー・クリーン・エネルギー・プログラム」に基づく当該プログラムでは、新

品のエアコン並びに、ヒート・ポンプ、地熱ポンプの購入や設置に際し、顧客と設置業者の双方

にリベートを行う。

対象機器は、季節エネルギー効率比(SEER)、エネルギー効率比(EER)、暖房季節性能係数

(HSPF)といったエネルギー効率指標の一定基準を満たしている必要がある。

リベート額は、措置や機器のエネルギー効率により決定されるが、100~150 ドルで行われる。

対象となるには、特定の電力企業(Atlantic City Electric、Jersey Central Power & Light、

PSE&G、Rockland Electric Company)の顧客でなければならない。また、新築住宅における設置

227 DSIRE(2010年 1月 19日更新) “Renewable Energy Manufacturing Incentives (for End-Use PV

Installations)”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NJ33F&re=1&ee=1

228 同上

229 DSIRE(2010年 1月 20日更新) “Solar Domestic Hot Water Pilot Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NJ29F&re=1&ee=1

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の場合は、当該住宅の所在地が特定地域(Smart Growth Area または Designated Center)内で

ある必要がある。

後述のニュージャージー州「エネルギースター住宅新築プログラム(New Jersey Energy Star

Home New Construction)」の助成受給者は、当該プログラム対象外となる230。

⑧ ウォーム・アドバンテージ・プログラム(WARM Advantage Program)【省エネ】

「ニュージャージー・クリーン・エネルギー・プログラム」に基づく当該プログラムでは、天

然ガスを利用した暖房システム並びに温水器のエネルギー効率性向上に向け、加熱炉、ボイラー、

温水器を対象としたリベートが提供されている。

対象機器は、エネルギー係数(EF)および年間燃料使用効率(AFUE)の一定基準を満たしてい

る必要がある。

リベート額はエネルギー効率によって決定されるが、加熱炉およびボイラーであれば 300~

400 ドル、温水器の場合 25~300 ドルが提供される。

リベートの対象となるには、特定の電力企業(Elizabethtown Gas, New Jersey Natural Gas,

Public Service Electric and Gas, or South Jersey Gas)の顧客でなければならない。また、

新築住宅における設置の場合は、当該住宅の所在地が特定地域(Smart Growth Area)内である

必要がある。

後述のニュージャージー州「エネルギースター住宅新築プログラム」の助成受給者は、当該プ

ログラム対象外となる231。

⑨ エネルギースター住宅プログラム(ENERGY STAR Homes Program)【省エネ】

州内の特定地域(New Jersey Smart Growth areas)において、エネルギースター基準に適合

する住宅の建築を行い、2006年国際省エネルギーコード(2006 International Energy

Conservation Code)に沿って建設された住宅より 15%省エネ率の高い住宅を建設した業者に対

し、リベートを行う制度である。リベートには、ベース・インセンティブとして 2種類存在する。

230 Njcleanenergy.com“Renewable Energy Manufacturing Incentive”:

http://www.njcleanenergy.com/renewable-energy/programs/renewable-energy-manufacturing-incentive For

Manufacturers

231 DSIRE(2009年 4月 10日更新) “WARMAdvantage Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NJ11F&re=1&ee=1

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表 25 エネルギースター住宅プログラムリベートタイプ

タイプ 条件 上限額

Tier I 面積 4,000平方フィート以下。HERS 基準(Home Energy Rating

Scal)232のスコアが 85点以下。

2,900 ドル

Tier II 面積 4,000平方フィート以上。HERS基準のスコアが 65 点以下。 設定なし

集合住宅の所有者は、州の税務局より納税証明書を入手する必要がある233。

⑩ エネルギースター製品リベート(Energy Star Product Rebates)【省エネ】

「ニュージャージー・クリーン・エネルギー・プログラム」の1つであり、エネルギー効率の

向上を図る家庭機器(エネルギースター基準を満たすもののみ)の購入費を州の居住者に払い戻

す制度である。

リベートの対象は、「ニュージャージー・クリーン・エネルギー・プログラム」の資金源とな

る州の社会利益料金(SBC: Societal Benefits Charge)を回収する電力供給企業(Atlantic

City Electric; Jersey Central Power & Light; PSE&G Electric; Rockland Electric

Company)の利用者に限定される。

リベート額は、洗濯機が 75 ドル(2010 年 12月 31日まで有効)、除湿機が 25ドル(2010 年

12 月 31 日まで有効)、室内型エアコンが 20ドル(通常毎年 5~8 月に利用可能な夏季限定プロ

グラム)に設定されている。

2010 年の予算総額は 2,870 万ドルである234。

⑪ エネルギースターによる住宅性能プログラム(リベート)(Home Performance with

Energy Star Program - Rebate)【省エネ・再生可能】

エネルギースターの認定を受けた洗濯機、乾燥機、食洗機、冷蔵庫、除湿機、天井翼、温水器、

照明、加熱炉、ボイラー、ヒート・ポンプ、エアコン、熱回収器、断熱材等のエネルギー効率向

上を図る技術を利用した装置や、地熱ポンプ等再生可能エネルギーを利用した装置の設置により、

232 エネルギースター基準を満たすエネルギー効率を達するにはどんな措置を取るべきかを評価するため、エネ

ルギー効率化措置に踏み出す前に、HERS係数(HERS Index)と呼ばれる住宅を対象とした点数評価(100点満

点)を実施する。

出所:Energystar.gov、“What is HERS Rating?”:

http://www.energystar.gov/index.cfm?c=bldrs_lenders_raters.nh_HERS

233 DSIRE(2009年 4月 1日更新) “ENERGY STAR Homes Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NJ16F&re=1&ee=1

234 DSIRE(2010年 1月 20日更新) “Energy Star Product Rebates”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NJ24F&re=1&ee=1

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住宅のエネルギー効率向上に取り組む住宅所有者に対し、エネルギー評価に関する支援、リベー

ト、融資を行う制度である。融資以外のプログラムに関しては表 26のとおりである。

表 26 エネルギースターによる住宅性能プログラムの目的と内容

目的 インセンティブ内容

エネルギー評価 通常 300ドルのエネルギー評価を 125ドルで提供。

コンパクト蛍光灯を 10本無料提供。

エアシーリング

(air sealing)

エアシーリングの必要性の分析結果に基づき、最大 1,000ドルまで

無料で提供。

省エネ機器の設置 住宅エネルギー消費

量削減率(X) リベート額

5%≦X<25% 設置費用の 10%(最大 2,000ドル)

25%≦X 設置費用の 50%(最大1万ドル)(融資

プログラムと併用可能)

所得が連邦政府貧困ガイ

ドラインで 225~400%の

水準にある世帯による省

エネ機器の設置

住宅エネルギー消費

量削減率(X) リベート額

5%≦X<25%

設置費用の 50%(最大1万ドル)(金利

ゼロの融資プログラムと併用可能)

25%≦X 設置費用の 75%(最大1万ドル)(金利

ゼロの融資プログラムと併用可能)

顧客はエネルギー・ファイナンス・ソリューション(EFS)に対してリベート申請を行なわな

ければならない。リベートは、顧客に対して直接行われる場合と、業者に対して行われる場合と

がある。

また、設置作業はビルディング性能機構(BPI: Building Performance Institution)が認定

する業者によって行われなければならない。

当該プログラムには融資制度もあるが、詳細は後述の「融資プログラム」に詳しい235。

⑫ ニュージャージー快適パートナー・プログラム(New Jersey Comfort Partners Program)

【省エネ】

当該プログラムでは、エネルギー消費量が非常に多く、かつ、所得額が連邦政府貧困ガイドラ

インの 225%以下の世帯を対象として、省エネ装置(冷蔵庫、機器用断熱材、温水器、照明器具、

エアコン等)の無料設置を行う。

対象となるには、その住宅が顧客の実住・実需物件であること、1~14世帯の集合住宅である

こと、そして、その顧客に電気またはガス料金の支払責任があることが必要である。

同プログラムでは、財政支援以外に、省エネに関する包括的な教育やカウンセリング制度もあ

る。

2010 年度予算額は 3,110 万ドルとなっている236。

235 DSIRE(2009年 12月 7日更新) “Home Performance with Energy Star Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NJ22F&re=1&ee=1

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(2) 融資プログラム

① エネルギースターによる住宅性能プログラム(融資)(Home Performance with Energy

Star Program - Loan)【省エネ・再生可能】

エネルギースターの認定を受けた洗濯機、乾燥機、食洗機、冷蔵庫、除湿機、天井翼、温水器、

照明、加熱炉、ボイラー、ヒート・ポンプ、エアコン、熱回収器、断熱材等のエネルギー効率向

上を図る技術を利用した装置や、地熱ポンプ等再生可能エネルギーを利用した装置の設置により、

住宅のエネルギー効率向上に取り組む住宅所有者に対し、エネルギー評価に関する支援、リベー

ト、融資を行う制度である(リベートについては既述の助成部分を参照)。

ヒート・ポンプ融資プログラムの詳細は下記の表のとおりである。

表 27 ヒート・ポンプ融資プログラムの内容

目的 住宅エネルギー

消費量削減率(X) 固定金利 融資額 返済期間

省エネ機器の

設置

5%≦X<25% 5.99% 2,500~2 万ドル

3、5、7、10

年間 25%≦X

0%(リベー

トプログラ

ムと併用可

能)

2,500~1 万ドル

融資申請は、住宅所有者によってエネルギー・ファイナンス・ソリューション(EFS)に対し

て行われなければならない。

また、設置はビルディング性能機構(Building Performance Institution)が認定する業者が

実施することが求められている237。

② クリーン・エネルギー・ソリューション設備投資融資(グラントプログラム)(Clean

Energy Solutions Capital Investment Loan/Grant Program)【省エネ・再生可能】

最終消費者の省エネ化措置、熱電併給発電装置(CHP)、再生可能ポートフォリオ基準の下で

クラス I、IIに規定された資源を利用する再生可能エネルギー事業を含む最先端の発電事業を対

象として、融資(またはグラント)を提供する。

在ニュージャージー州の商業、産業セクターおよび各種機関が対象となる。

融資(グラント)対象事業は、設備費用が最低 100万ドルで、ニュージャージー州で雇用を創

設し、所定の規制要件に見合うものとされている。

236 DSIRE(2010年 1月 20日更新) “New Jersey Comfort Partners Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NJ20F&re=1&ee=1

237 DSIRE(2009年 12月 7日更新)“Home Performance with Energy Star Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NJ17F&re=1&ee=1

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融資は、ゼロ金利、最長返済期間 10年の条件で、事業費用の 50%を最大 500 万ドルまで提供

する。融資額の一部はグラントとして支給することが認められており、その場合、最大 250 万ド

ルを、要求額の 80%を超過しない範囲で支給する。商業ビルの省エネ事業を対象としたグラント

は、要求額の 20%まで支給可能となっている。グラントは必ず融資と連動した形で支給され、単

独支給はない238。

申請を希望する企業等は、申請書(intake forms、ニュージャージー州ライセンスを持つエン

ジニアからの認証が必要)を提出(技術的な審査も行われる)後、ビジネス開発担当官

(business development officer)からプログラム受給資格の可否についての連絡がある。受給

資格があるとされた企業等は、オンラインで最終申請(full application)を行う239。

(3) 税制優遇措置

① 太陽エネルギー消費税免除(Solar Energy Sales Tax Exemption)【再生可能】

太陽光発電、太陽熱発電、太陽熱温水器、太陽熱暖房(パッシブも含む)、太陽熱プール温水

器等の装置の購入に際し、消費税を免除する措置240。

② 再生可能エネルギー・システムのための資産税免除(Property Tax Exemption for

Renewable Energy Systems)【再生可能】

太陽光、風力、廃棄物ガス、バイオマス、水力、地熱、燃料電池、潮力、波力等を利用した発

電システムの導入により生じた土地価格の上昇分を、資産税から免除する措置241。

238ニュージャージー州経済開発局(New Jersey Economic Development Authority)“Clean Energy Solutions

Capital Investment Loan/Grant Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NJ28F&re=1&ee=1

239 DSIRE(2009年 6月 30日更新)“Clean Energy Solutions Capital Investment (CESCI) Loan/Grant

Frequently Asked Questions”: http://www.njeda.com/web/pdf/cesci_faqs.pdf (p.2)11) Q: Can you

explain the application process?

240 DSIRE(2009年 2月 27日更新)“Solar Energy Sales Tax Exemption”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NJ01F&re=1&ee=1

241 DSIRE(2009年 10月 27日更新)“Property Tax Exemption for Renewable Energy Systems”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NJ25F&re=1&ee=1

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2.8 オハイオ州(州別 GDP 第 8位、州別人口第 7位)

○ エネルギー消費量は全米で 5番目に多く(4,049 兆 BTU。2007 年)、人口 1人当たりのエネ

ルギー消費量は 3.5億 BTU/人(2007年)で、全米平均より若干多い。

○ オハイオ州の発電量の 9 割近くは石炭火力発電によるものである242。

○ 再生可能エネルギー利用は、全体的にあまり進んでいない。

○ 州政府等が実施する助成プログラムでは、電力消費者から徴収した資金による「先進的エネ

ルギー基金」に基づき、オハイオ州開発局(ODOD:Ohio Department of Development)が実

施する、再生可能エネルギー利用促進グラント制度が充実している。

表 28 オハイオ州の再生可能エネルギー利用発電(2008年)

(単位:MW、能力ベース)

太陽光* 風力 地熱 バイオマス (水力) 水力を除く合計 人口当たりの

発電量**

1 7 0 140 (128) 148 13

*:太陽光発電は、オフグリッド(off-grid、独立型専用太陽電池モジュール)を除く。

**:人口当たりの発電量は水力を含まない。単位はワット/人。

出所:Renewable Energy Data Book, July 2009, US Department of Energy

2.8.1 オハイオ州の主なエネルギー計画等

現在のところ、州全体を対象とした包括的なエネルギー計画は存在しない。

2.8.2 オハイオ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用関連制度

(1) 再生可能ポートフォリオ基準

2005 年 8月に制定された州法(S.B.221)により、民間電力供給企業(地方自治体の電力供給

企業や電力協同組合は対象外)に対し、2025 年までに小売り電力の 25%を再生可能エネルギー

利用発電から供給することを義務付けている。2010~2015年の削減目標率は以下のとおりとな

っている。

242 エネルギー省エネルギー情報局(EIA)”State Energy Profiles – Ohio”:

http://tonto.eia.doe.gov/state/state_energy_profiles.cfm?sid=OH Ohio Quick Facts

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表 29 オハイオ州における削減目標率(2010~2015 年)

年 再生可能エネルギー利用

(%)

ソーラー利用

(%)

2010 0.5 0.010

2011 1.0 0.030

2012 1.5 0.060

2013 2.0 0.090

2014 2.5 0.12

2015 3.5 0.15

さらに、同法では、電力供給企業に対して「エネルギー効率化・ピーク需要削減プログラム

(energy efficiency and peak demand reduction programs)」の実施を義務付け、2025年ま

でに 22%のエネルギー節減と、2009 年にピーク時の電力需要量の 1.0%削減を義務付けており、

後者に関しては、その後 2018年まで毎年 0.75%削減していくことを求めている。

対象となる再生可能エネルギーは、太陽光、太陽熱、風力、地熱、バイオマス、バイオ由来の

メタン・ガス、埋立地ガス、一定の要件を満たす水力発電などである。また、クリーン・コール、

第三世代の先進的原子力発電243、分散型の熱電併給発電(CHP)、燃料電池、固形廃棄物利用な

ど幅広いエネルギー源も含む244。

(2) ネット・メータリング

州内の電力供給企業に対し、ソーラー、風力、バイオマス、埋立地ガス、水力、燃料電池、マ

イクロタービン等を利用して発電する顧客を対象としたネット・メータリングの実施を義務付け

ている。

発電システムに関する発電能力の制限は設定されていない。

病院施設による発電電力の買い取り価格(tariff)のみ別設定となっており、発電時の市場価

格が適用される245。

(3) 州政府関連建物のライフ・サイクル分析および省エネ基準

1995 年の州法により、新たな州政府機関建物の建築に関して、次の事項が義務付けられた。

○ 州政府の資金拠出により 5,000 平方フィート以上の建物を建設する際、事前にライ

フ・サイクル費用分析を行わなければならない。

243 第三世代原子炉とは、現在一般に普及している商用原子炉(第二世代型)に安全性や経済性などの面で改良

を加えた改良型原子炉を指す。

244 DSIRE(2010年 1月 6日更新) “Alternative Energy Rousource Standard”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=OH14R&re=1&ee=1

245 DSIRE(2009年 7月 13日更新) “Ohio - Net Metering”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=OH02R&re=1&ee=1

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○ 2万平方フィート以上の州政府機関建物をリースする際、エネルギー消費に関する

分析を行わなければならない。

○ 高等教育機関を除く州政府機関建物には、「建物管理認定(BOC)」プログラム、ま

たは、オハイオ行政サービス局エネルギー・サービス事務所(Office of Energy

Services, Department of Administrative Services)の定める同等のプログラムが

認定するビル管理者(building operator)を最低 1名置かなければならない。

また、2007年に制定された州法(HB 251)に基づき、州の高等教育機関のトップで構成された

大学協議会(inter-university council)は、高等教育機関向けの省エネ・エネルギー保全ガイ

ドラインを作成した。同ガイドラインの主な内容は以下のとおりである。

○ エネルギー消費量削減目標値を、2014年までに 2004 年水準比 20%減に設定。

○ 費用が 10万ドルを超過する学内・外における設備等の新規改修事業を行う際の最低

エネルギー効率基準を設定。

○ 2万平方フィート以上の建物のリース時の最低エネルギー効率基準設定。

○ 各大学の理事会に対し、省エネ・エネルギー保全に関する 15年計画の策定、かつ、

定期的に協議会に対し進捗状況報告を行うメカニズムの確立246を義務付け。

(4) 公立学校のエネルギー効率基準

全ての新築の公立学校で LEED基準の「シルバー」を満たしていない学校に対し、最終的に同

基準の「ゴールド」達成を目指すことが求められている247。

(5) 発電源情報開示

2000 年にオハイオ公益事業委員会(PUCO:Public Utilities Commission of Ohio)が採択し

た規則に基づく措置。

電力供給企業に対し、年に 1回、四半期ごとの発電エネルギー源の種類、二酸化炭素・二酸化

硫黄・窒素酸化物の排出、高レベル・低レベル放射性廃棄物に関する情報開示を義務付けている

248。

246 DSIRE(2009年 7月 9日更新) “Ohio - Life Cycle Analysis and Energy Conservation Standards for

State Buildings”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=OH13R&re=1&ee=1

247 DSIRE(2009年 7月 17日更新) “Energy Efficiency and Sustainable Design in New School

Construction”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=OH15R&re=1&ee=1

248 エネルギー省、”Disclosure Policies – Ohio”:

http://apps3.eere.energy.gov/greenpower/markets/disclosure.shtml#oh

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2.8.3 オハイオ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム

(1) 助成プログラム

① ODOD-先進エネルギー・プログラム・グラント(住宅用太陽光エネルギー・インセンティ

ブ)(ODOD-Advanced Energy Program Grants-Residential Solar Photovoltaic Energy

Incentive)【再生可能】

民間電力供給企業(American Electric Power、Dayton Power & Light、 Duke Energy、

FirstEnergy)の電気料金に上乗せする形で徴収された資金による「先進的エネルギー基金(Ohio

Advanced Energy Fund)」249を基に、オハイオ州開発局(ODOD)が実施するグラント制度。

助成対象となるには、プロジェクトは当該 4社のいずれかのサービス地域内で行われなければ

ならない。

対象となる太陽光発電システムについては、発電能力は 2kW以上、かつ、送配電網に接続され

ていなければならない。

助成額は、3ドル/1ワット(直流)で最大 2万 5,000 ドルとなっている。

またシステム設置は、ODOD のエネルギー部(OEO)の認定業者により行われなければならない250。

② ODOD-先進エネルギー・プログラム・グラント(住宅用風力エネルギー・インセンティブ)

(ODOD-Advanced Energy Program Grants-Residential Wind Energy Incentive)【再生可

能】

「先進的エネルギー基金」に基づき、オハイオ州開発局(ODOD)が実施するグラント制度。

助成対象となるには、プロジェクトが民間電力供給企業 4社(American Electric Power、

Dayton Power & Light、Duke Energy、FirstEnergy)のいずれかのサービス地域内で行われなけ

ればならない。

住宅の送配電網に接続された 3,000kWh以上の能力を有する風力発電システムを導入する場合

が対象。

助成額は、2万 5,000 ドルを上限として、年間発電見込み量を基に 2ドル/kWh(交流)で算

出した額、または、システム費用の 50%のいずれか低い額。

システム設置は、ODOD のエネルギー部(OEO)の認定業者により行われなければならない251。

249 DSIRE(2009年 10月 5日更新) “Advanced Energy Fund”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=OH11R&re=1&ee=0

250 DSIRE(2009年 12月 7日更新) “ODOD - Advanced Energy Program Grants - Residential Solar

Photovoltaic Energy Incentive”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=OH30F&re=1&ee=1

251 DSIRE(2009年 12月 7日更新) “ODOD - Advanced Energy Program Grants - Residential Wind Energy

Incentive”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=OH27F&re=1&ee=1

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③ ODOD-先進エネルギー・プログラム・グラント(集合住宅太陽熱インセンティブ)(ODOD-

Advanced Energy Program Grants-Multi-Family Residential Solar Thermal Incentive)

【再生可能】

「先進的エネルギー基金」に基づき、オハイオ州開発局(ODOD)が実施するグラント制度。

助成対象となるには、プロジェクトが民間電力供給企業 4社(American Electric Power、

Dayton Power & Light、Duke Energy、FirstEnergy)のいずれかのサービス地域内で行われなけ

ればならない。

集合住宅の新規建設または改修事業における太陽熱暖房あるいは太陽熱温水器(取り外し可能

なものを除く)の設置が助成の対象とされる。

助成金額は住宅のタイプにより下記のとおり 3つに区分されている252。

表 30 ODOD-先進エネルギー・プログラム・グラントの住宅タイプ別助成金額

住宅タイプ 助成額 集合住宅(3階建て

以上)の助成上限額

集合住宅(2階建てま

で)の助成上限額

家賃設定が市場価格

によるもの

30 ドル/1kBtu/日、

または、システム費

用の 50%のいずれか

低い額

7万 5,000 ドル/建物 8,000 ドル/世帯

家賃設定が市場価格

より低価格であるも

50 ドル/1kBtu/日、

または、システム費

用の 50%のいずれか

低い額

10万ドル/建物 1万ドル/世帯

家賃設定が市場価格

より低価格で、かつ

建物が LEED 基準/エ

ネルギースター基準

を満たすもの

システム費用の 50% システム費用の 50% システム費用の 50%

注:集合住宅の建物の高さに関する定義の詳細は、オハイオ州開発局(ODOD)発表資料253を参照。

④ ODOD - 先進エネルギー・プログラム・グラント(非住宅用再生可能エネルギー)(ODOD -

Advanced Energy Program Grants-Non-Residential Renewable Energy)【再生可能】

「先進的エネルギー基金」に基づき、オハイオ州開発局(ODOD)が実施するグラント制度。

252 DSIRE(2009年 12月 7日更新) “ODOD - Advanced Energy Program Grants - Multi-Family Residential

Solar Thermal Incentive”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=OH28F&re=1&ee=1

253 オハイオ州開発局(ODOD)(2008年 12月 31日) “Solar Thermal Energy Incentive

for Affordable Residential Housing Units”:

http://www.development.ohio.gov/cms/uploadedfiles/CDD/OEE/NOFA%2009-03%20brand%20lite.pdf (p. 5)

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助成対象となるには、プロジェクトが民間電力供給企業 4社(American Electric Power、

Dayton Power & Light、Duke Energy、FirstEnergy)のいずれかのサービス地域内で行われなけ

ればならない。

企業、産業、連邦政府、州政府、地方政府、学校、非営利団体などが新たに風力発電、太陽光

発電、太陽熱利用システムを導入する場合が対象となる。詳細は以下のとおり。

表 31 ODOD - 先進エネルギー・プログラム・グラント

システム 発電能力要件 助成額 助成上限額

風力エネルギー利用

システム

年間 3,000kWh(交

流)(設置場所にお

ける平均風速ベー

ス)

年間発電見込み量を

元に 2.00 ドル/kWh

で算出した額

システム費用の 40%、ま

たは 20 万ドルのいずれか

低い額

太陽熱利用システム

(ソーラ集熱器は

SRCC 認証付きでなけ

ればならない)

通常所有形式の場合

200kBtu/日、第三者

所 有 形 式 の 場 合

500kBtu/日

30ドル/1kBtu/日

システム費用の 50%、ま

たは、通常所有形式の場

合 15 万ドル、第三者所有

形式の場合 20 万ドルのう

ち、いずれか低い額

太陽光利用システム

通常所有形式の場合

10kW(直流)、第三

者所有形式の場合

50kW(直流)

3.5 ドル/ワット(直

流)

システム費用の 50%、ま

たは、通常所有形式の場

合 15 万ドル、第三者所有

形式の場合 20 万ドルのう

ち、いずれか低い額

対象システムは新品、かつ、製造者による保証書付きでなければならない。また、風力および

太陽光利用システムは送配電網に接続されていなければならない254。

申請を希望する企業等は、申請書、技術ワークシート、主要部品および労働費用に関する予算、

電力サービスプロバイダー証明(電力請求書あるいはプロバイダーからのレター)、事業に必要

な資金力があることを証明する書類、技術ワークシート中に要請されている図面、レター、その

他資料(原本 1部、コピー2部)を ODOD の担当者に提出する255。

⑤ ODOD-先進エネルギー・プログラム・グラント(非住宅用分散型エネルギー)(ODOD-

Advanced Energy Program Grants-Non-Residential Distributed Energy)【再生可能】

「先進的エネルギー基金」に基づき、オハイオ州開発局(ODOD)が実施するグラント制度。

助成対象となるには、プロジェクトが民間電力供給企業 4社(American Electric Power、

Dayton Power & Light、Duke Energy、FirstEnergy)のいずれかのサービス地域内で行われなけ

ればならない。

254 DSIRE(2009年 12月 7日更新) “ODOD - Advanced Energy Program Grants - Non-Residential Renewable

Energy Incentive”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=OH12F&re=1&ee=1

255 ODOD “Advanced Energy Fund – Notice of Funding Available - Renewable Energy Program (NOFA #08-

09)”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=OH12F&re=1&ee=1 (p.5)

Application Submissions and Inquiries

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企業、産業、連邦政府、州政府、地方政府、学校、非営利団体などが新たに、バイオガス、埋

立地ガス、嫌気性消化ガス、燃料電池、熱電併給発電装置(CHP)などの再生可能エネルギー利

用装置の導入により分散型発電を行う場合が対象となる(ソーラーや風力発電は前出の「非住宅

用再生可能エネルギー・グラント」の対象)。

システムの発電能力は 25MW 以下でなければならない。助成額は、事業費の 25%で上限は 10

万ドルとなっている。また、事業費の最低 10%を株式投資しなければならない256。

申請を希望する企業等は、申請書、技術ワークシート、主要部品および労働費用に関する予算、

電力サービスプロバイダー証明(電力請求書あるいはプロバイダーからのレター)、事業に必要

な資金力があることを証明する書類、技術ワークシート中に要請されている図面、レター、その

他資料を(原本 1部、コピー4部)ODOD の担当者に提出する257。

⑥ ODOD-先進エネルギー・プログラム・グラント(産業エネルギー効率)(ODOD-Advanced

Energy Program Grants- Energy Efficiency for Manufacturers)【再生可能】

「先進的エネルギー基金」に基づき、オハイオ州開発局(ODOD)が実施するグラント制度。

助成対象となるには、プロジェクトが民間電力供給企業 4社(American Electric Power、

Dayton Power & Light、Duke Energy、FirstEnergy)のいずれかのサービス地域内で行われなけ

ればならない。

製造施設における省エネ・プロジェクト(高効率の照明、ボイラー、エアコン、モーター、暖

房等の導入)が対象とされる。

既存システムに比べ、エネルギー消費量を 15%以上削減することが求められている。

当該プログラムは 3段階に分かれており、各フェーズにおける内容および助成額は下記のとお

りである258。

256 DSIRE(2009年 12月 7日更新) “ODOD - Advanced Energy Program Grants - Non-Residential

Distributed Energy Incentive”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=OH29F&re=1&ee=1

257 ODOD “Advanced Energy Fund Incentive Grant– Notice of Funding Available – Distributed Energy

Resources (NOFA #07-01)”: http://www.development.ohio.gov/cms/uploadedfiles/CDD/OEE/DERNOFA0701.pdf

258 DSIRE(2009年 12月 7日更新) “ODOD - Advanced Energy Program Grants - Energy Efficiency for

Manufacturers”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=OH13F&re=1&ee=1

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表 32 ODOD-先進エネルギー・プログラム・グラントのフェーズ別助成額

フェーズ 内容 助成額

I. エネルギー管理状況診断 エネルギー局(OEO)が無料

で提供するエネルギー管理

状況診断サービスでは、同

業他社のデータに照らし合

わせ、診断結果のベンチマ

ークを行い、それによって

判断された 5つの行動ステ

ップ(Five Action Steps)

を提示する。

(無料サービス。OEO がソフトウ

ェアのライセンス料も負担)

II. エネルギー管理計画/技

術機会評価

OEOと企業が連携してエネル

ギー管理計画を作成し、工

場における省エネ化に貢献

する技術機会をリストアッ

プする。

費用の 50%(上限は 1万 5,000

ドル)(OEO負担)

III. 事業実施/資金提供

(助成)

システム設置 費用の 25%(上限は 5万ドル)

(OEO 負担)。費用残額に関し

て、先進的エネルギー基金

(AEF)(上限 5 万ドル)からの

調達を奨励

申請を希望する企業等は、申請書、技術ワークシート、主要部品および労働費用に関する予算、

電力サービスプロバイダー証明(電力請求書あるいはプロバイダーからのレター)(原本 1部、

コピー3部)を ODODの担当者に提出する259。

(2) 融資プログラム

① エコ・リンク-オハイオ州民のためのエネルギー保全プログラム(Energy Conservation

for Ohioans 〔ECO-Link〕 Program)【省エネ・再生可能】

オハイオ州財務局が、州内の銀行と提携して行うプログラムで、州内の住宅所有者が省エネ化

や再生可能エネルギーシステム導入を図る際に、市場より低い金利で融資を提供する制度。

融資対象者は、オハイオ州の居住者で、一世帯住宅を所有する者である。

定評のある省エネ基準を満たす、各種省エネ機器(充電器、洗濯機、除湿機、食洗機、冷蔵庫、

冷凍庫、エアコン、空気清浄機等)、省エネ温水器(潜熱回収型ガス給湯機、ヒートポンプ給湯

機等)、省エネ冷暖房装置、再生可能エネルギーシステム(太陽光、住宅用風力タービン〔発電

能力は 100kW 以下〕)、窓、ドア、シーリング材等が対象となる。

259 ODOD “Advanced Energy Fund – Energy Efficiency Program for Manufacturers – Notice of Funding

Available for Phase III Implementations (NOFA #10-03)”:

http://www.odod.state.oh.us/cms/uploadedfiles/CDD/OEE/EE%20NOFA%2010-03.pdf

(p.4)Application Submissions and Inquiries

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返済期間が 5年の融資について、融資額 2万 5,000 ドルまで、金利を 3%引き下げた形で提供

する260。

(3) 税制優遇措置

① エネルギー転換施設 消費税/資産税/法人税免除(Energy Conversion Facilities

Sales/ Property/ Corporate Tax Exemption)【省エネ・再生可能】

エネルギーの転換(基本的に、エネルギー源を化石燃料から代替燃料または技術に転換するこ

とを指す)、熱効率の向上(基本的に、商業あるいは産業プロセスで生成される廃棄熱・蒸気の

回収を指す)、固形廃棄物のエネルギー転換などに利用される資産に適用される免税措置。太陽

光発電、太陽熱温水器、太陽熱暖房、風力利用システム、バイオマス利用システム、埋立地ガス

利用システムの導入に対する消費税、資産税、法人税の免除制度261。

260 DSIRE(2009年 9月 17日更新) “Energy Conservation for Ohioans (ECO-Link) Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=OH48F&re=1&ee=1

261 DSIRE(2009年 6月 19日更新) “Energy Conversion Facilities Sales Tax Exemption”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=OH04F&re=1&ee=1

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2.9 ジョージア州(州別 GDP 第 9位、州別人口第 9 位)

○ エネルギー消費量は第 9 位(3,146 兆 BTU。2006 年)で、人口 1人当たりのエネルギー消費

量は 50州の平均とほぼ同じ(3.4億 BTU/人。2006年)。

○ 再生可能エネルギーは、水力やバイオマス(全米第 5位)が導入されているものの、他の再

生可能エネルギーはほとんど導入されていない。

○ 木材や廃材を利用した発電量では全米でトップクラス262。

○ 再生可能ポートフォリオ基準は導入していない。

○ 2カ所ある原子力発電所における発電量は、全米の発電量の約 4分の 1263。

○ 州政府の助成プログラムに関しては、数種類の税制優遇措置が存在するが、助成金プログラ

ムなどは充実していない。ただし、民間電力供給企業などによる助成プログラムは比較的充

実しており、DSIREによると、30弱のプログラムが存在する。

表 33 ジョージア州の再生可能エネルギー利用発電(2008年)

(単位:MW、能力ベース)

太陽光* 風力 地熱 バイオマス (水力) 水力を除く

合計

人口当たりの

発電量**

0 0 0 712⑤ (1,932) 712 74

*:太陽光発電は、オフグリッド(off-grid、独立型専用太陽電池モジュール)を除く。

**:人口当たりの発電量は水力を含まない。単位はワット/人。

出所:Renewable Energy Data Book, July 2009, US Department of Energy

2.9.1 ジョージア州のエネルギー計画

(1) 「2009年改定版 州のエネルギー戦略(2009 State Energy Strategy Upgrade)」

2006 年の報告書を改定する形で、2009年 2月に州知事より発表されたエネルギー計画。

今後予想される人口増加に伴うエネルギー需要の増大に対処するために、優先事項の第 1位に

エネルギー効率の向上、第 2位に再生可能エネルギー利用の促進、第 3位に原子力や石炭利用を

含む既存技術の向上を掲げている。

具体的には、主として次の提言等を行っている。

○ 政府関係施設におけるエネルギー消費を 2020年までに 15%削減。

○ 州全体を網羅するエネルギー需要予測の作成。

○ 再生可能エネルギー利用およびエネルギー効率向上に関わる各種税控除制度の継続。

262 同上

263 同上

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○ 企業や地方政府に対し、エネルギー効率向上やエネルギー保全に関わる技術支援を

提供。

○ 送電システムの近代化を支援。

○ 代替燃料の小売インフラを整備。

○ 石炭ガス化複合発電(IGCC)や二酸化炭素回収・貯留(CCS)を活用。

○ クリーン・コール技術の研究開発を支援。

○ エネルギー効率向上に関する教育を継続264。

2.9.2 ジョージア州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度

(1) ネット・メータリング

全電力供給企業に対して、前年度におけるピーク電力需要量の 0.2%を上限とするネット・メ

ータリングを義務付けている。

ネット・メータリングの対象となるのは、発電能力が、住宅用の場合最大 10kW、商用の場合

最大 100kWの、ソーラー、風力、燃料電池を利用した発電である265。

(2) 公共の建物のためのエネルギー効率基準

エネルギー使用量削減を目指し、2008 年 4月の知事令(Executive Order 04.24.08.02)にお

いて「2020年までに州知事が達成すべきエネルギー問題(Governor's Energy Challenge

2020)」と題する行動計画が発表された。当該計画では、2020年までにエネルギー消費量の

2007 年水準比 15%削減が目標として掲げられている266。

264 GEFA (Georgia Environmental Facilities Authority) Division of Energy Resources、”Energy

Publications”: http://www.gefa.org/index.aspx?page=192 “State Energy Strategy for Georgia”の”

The 2009 State Energy Strategy Update”

265 DSIRE(2009年 6月 18日更新) “Georgia - Net Metering”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=GA02R&re=1&ee=1

266 DSIRE(2009年 9月 25日更新) “Georgia Governor's Energy Challenge 2020”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=GA09R&re=1&ee=1

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2.9.3 ジョージア州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム

(1) 助成プログラム

① クリーン・エネルギー資産リベートプログラム(Clean Energy Property Rebate

Program)【省エネ・再生可能】

当該プログラムは、2009年 4月に制定された州法(HB 473)の下、「米国再生・再投資法」

により州に支給された資金を原資に実施されている。

企業、非営利団体、学校が、省エネ装置(照明、センサー等)の設置、建物全体の包括的な省

エネ化措置、再生可能エネルギー利用装置(太陽熱、太陽光、風力を利用する装置や地熱ポンプ

等)の設置を行う際に、装置費用の最大 35%をリベートとして支給する制度である。リベート

の詳細は下記のとおりとなる。

表 34 クリーン・エネルギー資産リベートプログラムの内容

発電源 上限額

ソーラー、風力 50万ドル

家庭用太陽熱温水器 10万ドル

地熱ポンプ 10万ドル

照明の取替え 0.6ドル/平方フィートで計算した金額、または、10万ドルのい

ずれか低額

建物の省エネ化 1.8ドル/平方フィートで計算した金額、または、10万ドルのい

ずれか低額

プログラム予算額は 449万 5,000ドルである267。

② 住宅用省エネ機器リベートプログラム(Residential Energy-Efficient Appliance Rebate

Program)【省エネ・再生可能】

2010 年 2月 12 日より開始された当該プログラムは、米国再生・再投資法により州に支給され

た資金を原資に実施されている。

当該プログラムの対象となるには、住宅用のエネルギースター認定製品(冷凍・冷蔵庫、洗濯

機、食洗機、冷暖房機器、各種温水器等)を既存機器と置き換えることが条件とされ、さらにオ

ンラインまたは電話によるリベート申請後 30日以内に証明書類を提出しなければならない。リ

ベートはプリペイド方式のクレジットカードの発行によって行われる。

リベート額の設定は次のとおりである。

267 DSIRE(2009年 11月 30日更新) “Clean Energy Property Rebate Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=GA50F&re=1&ee=1

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表 35 住宅用省エネ機器リベートプログラムのリベート額

製品 リベート額

冷凍庫 25ドル

屋内用エアコン 30ドル

冷蔵庫 50ドル

洗濯機、食洗機 50~99ドル

ガス貯蔵式給湯器、セントラル空調システム、油炉 99ドル

電熱ポンプ式湯給湯器、ガス焚きタンクレス給湯器、ソーラー型給

湯器(電力またはガスによるバックアップ機能付き)、空気熱源ヒ

ート・ポンプ、ガス炉、オイルバーナー、ガスボイラー

199ドル

当該プログラムにおけるリベート予算総額は 864万 2,490ドルである268。

③ TVA グリーン・パワー転換発電パートナー・プログラム(TVA-Green Power Switch

Generation Partners Program)【再生可能】

テネシー川流域開発公社(TVA:Tennessee Valley Authority)269が環境保護に資する活動の

機会として、住宅所有者および企業に対し、金銭的インセンティブを提供する広域プログラムで

ある。2009年 10 月現在、TVA管轄 7州において電力供給企業 91社が参加している。

当該プログラムは、住宅所有者および企業が、太陽光、埋立地ガス、風力、バイオマス、水力

等の再生可能エネルギー利用装置を導入し、発電を行った場合、その電力を TVAが市場価格を超

える買い取り価格で全て買い取るものである。対象となる装置の発電能力要件や買い取り価格等

は次のとおりである。

表 36 TVA グリーン・パワー転換発電パートナー・プログラムの対象と買取要件

発電能力要件 電力買い取り価格

(プレミアム) 買い取り率 その他

最低 500 ワット(交

流)(最大 999 ワッ

ト)

ソーラーの場合 0.12

ドル/kWh、風力、小

型水力、バイオマス

利用の場合 0.03 ドル

/kWh を、電力小売り

価格に上乗せする。

発電力の 100% 新規参画者のシステ

ム導入費用として

1,000ドルを支給。

買い取られた電力は、月々の請求書にクレジットとして反映され、消費電力料金から差し引か

れる。また、この制度は開始日から 10年間、その実施が保証される270。

268 DSIRE(2010年 2月 3日更新) “Georgia - Residential Energy-Efficient Appliance Rebate Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=GA51F&re=1&ee=1

269 テネシー川流域開発公社(TVA):TVA法に基づき設立された国内最大の公共発電企業。各種の地域振興プロ

グラムを提供している。「発電パートナープログラム」には、現在管轄 7州(アラバマ州、ジョージア州、ケン

タッキー州、ミシシッピ州、ノースカロライナ州、テネシー州、バージニア州)において 91社の電力供給企業

が参加している。

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④ TVA パートナー電力企業のためのエネルギーライト新築住宅プログラム(TVA Partner

Utilities - Energy Right New Homes Program)【省エネ】

当該プログラムは、HERS 基準で 4.5または 5と評価された建物を建設した業者に対し、マッ

チング方式でリベートを行う広域プログラムである。

また、当該プログラムはプレハブ住宅ディーラー(manufactured home dealers)とも提携し

ており271、1軒当たり 300 ドルを支給し、空調業者が非効率な空調システムを、効率的な

SEER13272熱ポンプにアップグレード出来るよう支援している273。

⑤ TVA パートナー電力企業のためのエネルギーライト温水器リベートプログラム(TVA

Partner Utilities - Energy Right Water Heater Rebate Program)【省エネ】

当該プログラムは、住宅および中小企業による省エネ効果の高い温水器の設置を促すべく、温

水器(通常は電動タイプで、容量は 30ガロン以上)1台当たり 50 ドルを支給する制度である。

支給は設置業者に対して行われる274。

(2) 融資プログラム

① TVA パートナー電力企業のためのエネルギーライト融資(ヒート・ポンプ)プログラム

(TVA Partner Utilities - Energy Right Heat Pump Loan Program)【省エネ】

当該プログラムは、住宅や中小企業への省エネ効果の高い熱ポンプの設置を促進するためのプ

ログラムで、TVA がレンダーを通じて住宅用熱ポンプの設置のための 10年融資を提供するもの

である。返済は、顧客の利用する電力企業によって発行される月々の電気料金請求書に、返済の

月額分が加算される形で請求される。

270 DSIRE(2009年 11月 6日更新) “TVA - Generation Partners Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=TN02F&re=1&ee=1

テネシー川流域開発公社(TVA)“Green Power Switch Generation Partners:

”http://www.tva.com/greenpowerswitch/partners/

271 Energy Rigth Partners, “Manufactured Home Contractors.”

http://www.energyrightpartners.com/manu_homes.htm

272 SEER(Seasonal Energy Efficiency Ratio)とは季節別に設定されたエネルギー効率標準指標である。

出所:About.com、”SEER”: http://homerepair.about.com/od/termsst/g/SEER.htm

273 DSIRE(2009年 7月 17日更新) “TVA Partner Utilities - Energy Right New Homes Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=GA49F&re=1&ee=1

274 DSIRE(2009年 7月 17日更新) “TVA Partner Utilities - Energy Right Water Heater Rebate

Program”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=GA48F&re=1&ee=1

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表 37 TVA パートナー電力企業のためのエネルギーライト融資プログラムの内容

融資上限額 金利 返済期間

1世帯の場合 1 万ドル、集合住宅の場合 1万 2,500ドル 6~8% 10年間

設置、性能、耐候性に関する基準や、業者ネットワーク(Quality Contractor Network)を通

して、質の高い装置の設置が行われるよう配慮されている275。

(3) 税制優遇措置

① バイオマス消費・利用税免除(Biomass Sales and Use Tax Exemption)【再生可能】

発電や蒸気発生等に利用されるバイオマス原料(穀物、植物、廃材など)の購入に対する州の

消費・利用税の免除制度276。

② 4日間のエネルギー効率製品に対する消費税免除(Four-Day Sales Tax Exemption for

Energy-Efficient Products)【省エネ】

毎年 4日間にわたり(2009 年は 10月 1~4日に実施)、エネルギースター基準に適合する電

化製品等(洗濯機、乾燥機、食洗機、冷蔵庫、除湿機、温水器、エアコン、プログラム可能な温

度自動調整器、天井翼、窓、ドア等)を購入する際、州の消費税を免除する制度。

購入製品の価格が 1,500 ドル以下の場合は、州の消費税(利用税)、その他地方消費税が免除

される277。

③ クリーン・エネルギー税額控除-所得税(Clean Energy Tax Credit - Personal)【再生

可能】

一世帯住宅向けの再生可能エネルギー利用装置(太陽光発電システム、太陽熱暖房機、太陽熱

温水器、風力発電システム、地熱ヒート・ポンプヒート・ポンプ)の設置費用を所得税から控除

する制度。

控除額は導入装置の購入・設置費用の 35%とされる。1件当たりの控除上限額は次のとおり。

275 DSIRE(2009年 7月 17日更新) “TVA Partner Utilities - Energy Right Heat Pump Loan Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=GA47F&re=1&ee=1

276 DSIRE(2009年 8月 3日更新)“Biomass Sales and Use Tax Exemption”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=GA08F&re=1&ee=1

277 DSIRE(2009年 8月 12日更新)“Four-Day Sales Tax Exemption for Energy-Efficient Products”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=GA05F&re=1&ee=1

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表 38 クリーン・エネルギー税額控除(所得税)の製品別控除上限額

製品 控除上限額

家庭用太陽熱温水器 一世帯あたり 2,500ドル

太陽光発電、アクティブ太陽熱暖房、風力システム 一世帯あたり 1 万 500 ドル

エネルギースター基準を満たす地熱ヒート・ポンプ 設置 1回あたり 2,000 ドル

控除申請の前に、納税者はジョージア州税務官(Georgia tax commissioner)に申請書を提出

し、承認を受けなければならない(1納税年度における税控除上限額は個人・法人税合わせて総

額 250 万ドル)278。

④ クリーン・エネルギー税額控除-法人税(Clean Energy Tax Credit - Corporate)【省エ

ネ・再生可能】

商用・産業、集合住宅、農業施設等において、再生可能エネルギー利用装置(太陽光、太陽熱、

太陽熱暖房、太陽熱温水器、採光装置、風力、バイオマスを利用する装置、地熱ヒート・ポンプ

等)や一部省エネ機器(照明、センサー等)の設置、また、建物の省エネ化に向けた包括的措置

を図る際、設置費用を法人税から控除する制度。

製品による控除額算出方法、控除上限額は次のとおりとなる。

表 39 クリーン・エネルギー税額控除(法人税)の製品別控除上限額

製品 控除額算出方法

再生可能エネルギー利用装置(設置場所が

一世帯家族専用住宅以外)

購入・設置費用の 35%

照明取り替え 0.6ドル/平方フィート

建設中に設置された省エネ製品 1.8ドル/平方フィート

製品 控除上限額

家庭用太陽熱温水器 設置 1回あたり 10万ドル

太陽光、採光装置、太陽熱暖房、バイオマ

ス装置、風力エネルギーシステム

設置 1回あたり 50万ドル

エネルギースター認定地熱ヒート・ポンプ 設置 1回あたり 10万ドル

照明取り替え 10万ドル

建設中に設置された省エネ製品 10万ドル

控除申請の前に、納税者はジョージア州税務官に申請書を提出し、承認を受けなければならな

い(1納税年度における税控除上限額は個人・法人税合わせて総額 250万ドル)279。

278 DSIRE(2009年 4月 9日更新)“Clean Energy Tax Credit (Personal)”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=GA36F&re=1&ee=1

279 DSIRE(2009年 4月 20日更新)“Clean Energy Tax Credit (Corporate)”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=GA37F&re=1&ee=1

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申請を希望する企業等は、ジョージア州環境施設局(GEFA: Georgia Environmental

Facilities Authority)に事前申請書(preapplication form)を提出する。GEFA から受け取り

を確認するレターが届いたら、税務局(Department of Revenue)の書式(IT-CEP-AP)を記入し、

GEFA からのレターと共に税務局に提出する。承認が下りたら、州の所得税申告時に控除を申請

する(署名入りの書式 IT-CEPの添付も必要)280。

280 GEFA“Georgia Clean Energy Property Tax Credit Instructions”:

http://www.gefa.org/Index.aspx?page=426

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2.10 ノースカロライナ州(州別 GDP第 10 位、州別人口第 10位)

○ エネルギー消費量は全米第 13位(2,700 兆 BTU。2007 年)で、人口 1人当たりでは尐ない

方から 13番目(3.0億 BTU/人。2007年)。

○ 再生可能エネルギー利用発電は、水力やバイオマス発電が比較的導入されているものの全体

として進んでいない。

○ 発電量のうち、石炭火力発電によるものが約 5分の 1、原子力発電(州内 3カ所)によるも

のが約 3分の 1を占める281。

○ 再生可能ポートフォリオ基準に関しては、2021年までに 12.5%との目標値を掲げており、

これは他州に比べてあまり厳しくない。再生可能エネルギー全体の導入目標のほかに、豚お

よび家禽類の廃棄物利用発電の目標値を定めているところが特徴的。

○ 州政府の助成プログラムに関しては、エネルギー効率の向上に対するものよりも、現在導入

が進んでいない再生可能エネルギー利用装置の導入に対する助成が比較的充実していること

が特徴的。

表 40 ノースカロライナ州の再生可能エネルギー利用発電(2008 年)

(単位:MW、能力ベース)

太陽光* 風力 地熱 バイオマス (水力) 水力を除く

合計

人口当たりの

発電量**

5 0 0 367 (1,828) 372 40

*:太陽光発電は、オフグリッド(off-grid、独立型専用太陽電池モジュール)を除く。

**:人口当たりの発電量は水力を含まない。単位はワット/人。

出所:Renewable Energy Data Book, July 2009, US Department of Energy

2.10.1 ノースカロライナ州のエネルギー計画

2003 年のエネルギー計画を 2005年にリバイスしたものの、これ以降、州政府のエネルギー計

画は作成されていない。

2.10.2 ノースカロライナ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度

(1) 再生可能ポートフォリオ基準

2007 年の州法(Senate Bill 3)によって、全ての民間の電力供給企業に対し、2021 年までに

小売電力の 12.5%を特定の再生可能エネルギーから供給することが義務付けられている。

281 エネルギー省エネルギー情報局(EIA)”State Energy Profiles – North Carolina”:

http://tonto.eia.doe.gov/state/state_energy_profiles.cfm?sid=NC Coal, Electricity, and Renewables

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地方自治体が運営する電力供給企業や電力組合は、2018年までに 10%を再生可能エネルギー

から供給しなければならない。

対象となる再生可能エネルギーは、太陽光、太陽熱、風力、発電能力が 10MW 以下の水力、波

力、大気浄化法(Clean Air Act)で定められた BACT(Best Available Control Technology、

利用可能な最高の管理技術)を利用したバイオマス、埋立地ガス、廃熱利用の熱電併給発電

(CHP)、再生可能エネルギーから発生する水素等である。

再生可能エネルギー全体の目標値の他に特定エネルギー源に関する個別の目標値も設定されて

おり、ソーラー利用は 2018年までに 0.2%、豚の廃棄物利用は 2018 年までに 0.2%、家禽類の

廃棄物利用は 2014 年までに 90 万 MWhとされている。

公益企業は再生可能エネルギー資源の累積費用を代替エネルギー研究費として年間 100万ドル

まで顧客から回収する権利があるが、この場合の利用者に転嫁可能な上限額は次のように定めら

れている282。

表 41 公益企業の代替エネルギー研究費回収上限額

セクター 2012年 2015 年

住宅 12ドル 34 ドル

商業 150ドル 150 ドル

産業 1,000ドル 1,000 ドル

出所:DSIRE(2009年 8月 27日更新) “Renewable Energy and Energy Efficiency Portfolio

Standard”:http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NC09R&re=1&ee=1

(2) ネット・メータリング

2005 年のノースカロライナ公益事業委員会(NCUC)規則に基づき、州内の民間公益企業 3社

(Duke Energy、Progress Energy、Dominion North Carolina Power)に対し、ネット・メータリ

ングを義務付けている。

ネット・メータリング対象となる再生可能エネルギーは、太陽光、埋立地ガス、風力、風力、

バイオマス、水力、熱電併給発電(CHP)、潮力等である。

最大発電能力は、住宅用は 20kW、非住宅用は 100kW283。

(3) 州政府関連建物のエネルギー基準

2007 年および 2008年の州法に基づく措置。

282 DSIRE(2009年 8月 27日更新) “Renewable Energy and Energy Efficiency Portfolio Standard”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NC09R&re=1&ee=1

283 DSIRE(2009年 4月 16日更新) “North Carolina - Net Metering”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NC05R&re=1&ee=1

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州、ノースカロライナ大学、ノースカロライナ州立コミュニティ・カレッジの所有する新築、

または大幅な改築(改築事業の費用が補償金額の 50%を超過するもの)を行った 2万平方フィ

ート以上の建物が対象となる。

建物は、「米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)」が定める特定のエネルギー効率基準(ASHRAE

90.1-2004)を、新築建物の場合は 30%、大幅な改築の場合は 20%上回る様に設計・建設・認定

されなければならない。

新築建物に関しては節水基準が設定されており、飲用水に関して、ノースカロライナ州水道規

定(North Carolina Plumbing Code)より 20%、屋外における水使用量に関して、従来型シス

テムを使う典型的な設備より 50%、それぞれ消費量を尐なくすることが求められている284。

2.10.3 ノースカロライナ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラ

(1) 助成プログラム

① NC グリーン・パワー生産インセンティブ(NC GreenPower Production Incentive)【再生

可能】

当該制度は、州政府や電力企業等によって創設された非営利機関である「NC グリーン・パワ

ー(NC GreenPower)」が運営しており、ソーラー、風力、小型水力(発電能力 10MW以下)およ

びバイオマス資源(いずれも系統接続されたものに限る)等の再生可能エネルギーを利用した発

電に対し、対価を支払う制度である。

制度に参加するには、各自利用するノースカロライナ州の電力企業と NCグリーン・パワーと

電力購入同意書(power-purchase agreements)を取り交わす必要がある。

表 42 NCグリーン・パワー生産インセンティブの金額

システム

インセンティブ金額

NC グリーン・パワー

プログラムより 電力供給企業より 合計

小型ソーラー 0.15 ドル/kWh 0.04ドル/kWh 0.19 ドル/kWh

小型風力 0.06 ドル/kWh 0.04ドル/kWh 0.10 ドル/kWh

ネット・メータリング制度の利用者は、当該制度対象外となる285。

284 DSIRE(2009年 3月 30日更新) “Conservation of Energy and Water Use in State Buildings”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NC10R&re=1&ee=1

285 DSIRE(2009年 2月 10日更新) “NC GreenPower Production Incentive”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NC05F&re=1&ee=1

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② ノースカロライナ・グリーン・ビジネス基金(North Carolina Green Business Fund)

【省エネ・再生可能】

従業員 100人以下の中小企業または非営利団体、州政府機関、地方政府機関が行う省エネ型建

物の開発、再生可能エネルギー利用技術の開発や商業化などに対するグラント制度で、助成上限

額は 10 万ドルである。

米国再生・再投資法による資金により予算額が大幅に拡大し、2009~2010 年度予算は 500万

ドルとなっている286。

③ TVA グリーン・パワー・転換発電パートナー・プログラム(TVA-Green Power Switch

Generation Partners Program)【再生可能】

本論「2.9.3(1)③TVA グリーン・パワー転換発電パートナー・プログラム」参照287。

④ ノースカロライナ州住宅金融庁によるシステムビジョン・エネルギー保証プログラム

(Housing Finance Agency – System Vision Energy Guarantee Program)【省エネ】

ノースカロライナ州住宅金融庁は、同州の非営利組織 Advanced Energyが開発した、省エネ冷

暖房装置や住環境快適度に保証を付与し、かつ、エネルギースター認定の住宅建築を支援するシ

ステムビジョン(SystemVision)プログラムを活用した省エネ策を講じた低価格住宅の建設を奨

励している。

当該プログラムにおいて、同庁は、非営利団体や地方政府によって建設される住宅 1軒当たり

4,000 ドルを助成する。また、その他、システムビジョン基準と共に、住宅認定プログラム

(Healthy Built Homes program、または類似するプログラム)からも認定された場合には、追

加助成として 1軒当たり 1,000 ドルが支給される288。

⑤ スチームトラップ・リベートプログラム(Steam Trap Rebate Program)【省エネ】

暖房または加工に蒸気を利用する施設に対し、スチームトラップの機能調査費用の一部を払い

戻すプログラム。スチームトラップとは、蒸気輸送配管で発生するドレンを排出し、蒸気は漏ら

さない自動弁を指す。

調査を希望する施設はまず施設内のスチームトラップの場所を確認し、所定の方法を用いて機

能状態を確認する。確認結果に基づき、スチームトラップの機能状況、状態、修理や取替の必要

286 DSIRE(2009年 8月 11日更新) “North Carolina Green Business Fund”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NC47F&re=1&ee=1

287 DSIRE(2009年 11月 6日更新) “TVA - Generation Partners Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NC02F&re=1&ee=1

288 DSIRE(2009年 7月 15日更新) “Housing Finance Agency - SystemVision Energy Guarantee Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NC68F&re=1&ee=1

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の有無等に関する報告書をその他必要書類と共にノースカロライナ州行政局州エネルギー部

(North Carolina Department of Administration, State Energy Office)に提出し、審査を受

ける。

リベート額は、プログラムの対象施設に対して、1~500個までに 1個当たり 8ドル、501~

1,000 個までに 1 個当たり 5ドルを支給する。所在箇所が確認されても調査対象外となったスチ

ームトラップについては 1個につき 2ドルを支給する。スチームトラップの数は、調査対象外の

ものを含め 1,000 個を超えてはならず、支給上限額は 6,500ドルである289。

⑥ TVA パートナー電力企業のためのエネルギーライト新築住宅プログラム(TVA Partner

Utilities - Energy Right New Homes Program)【省エネ】

本論「2.9.3(1)④TVA パートナー電力企業のためのエネルギーライト新築住宅プログラム」

参照290。

⑦ TVA パートナー電力企業のためのエネルギーライト温水器リベートプログラム(TVA

Partner Utilities - Energy Right Water Heater Rebate Program)【省エネ】

本論「2.9.3(1)⑤TVA パートナー電力企業のためのエネルギーライト温水器リベートプログ

ラム」参照291。

(2) 融資プログラム

① エネルギー向上融資プログラム(Energy Improvement Loan Program)【省エネ・再生可

能】

企業、地方政府、公立学校、コミュニティ・カレッジ、非営利機関がエネルギー効率の高い機

器や再生可能エネルギー・システムを導入する場合の低利融資制度。

再生可能エネルギー・システム(ソーラー、風力、小規模水力発電〔発電能力は 20MW 以下〕、

バイオマス)の導入に対する年利は 1%となっている。

一方、エネルギー効率向上のためのプロジェクト(暖房・空調の開発、エネルギー管理の向上、

高効率照明、建物の外装改修等)の場合は年利 3%と決められている。

最長融資期間はいずれも 10 年間292。

289 DSIRE(2009年 7月 24日更新) “Steam Trap Rebate Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NC21F&re=1&ee=1

290 DSIRE(2009年 7月 17日更新) “TVA Partner Utilities - Energy Right New Homes Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NC71F&re=1&ee=1

291 DSIRE(2009年 7月 17日更新) “TVA Partner Utilities - Energy Right Water Heater Rebate

Program”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NC70F&re=1&ee=1

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② TVA パートナー電力企業のためのエネルギーライト融資(ヒート・ポンプ)プログラム

(TVA Partner Utilities - Energy Right Heat Pump Loan Program)【省エネ】

本論「2.9.3(2)①TVAパートナー電力企業のためのエネルギーライト融資(ヒート・ポン

プ)プログラム」参照293。

(3) 税制優遇措置

① エネルギー効率電気機器のための消費税免除(Sales Tax Holiday for Energy-Efficient

Appliances)【省エネ・再生可能】

エネルギースター認定の省エネ電気機器(洗濯機、乾燥機、冷蔵庫、除湿機、天井翼、ヒー

ト・ポンプ、エアコン、制御用サーモスタット、地熱ヒート・ポンプ)を、11 月の第 1金曜日

から次の日曜日までに購入した場合、消費税を免除する(ただし、転売や貸出用は対象外)294。

② アクティブ・ソーラー冷暖房システム税免除(Active Solar Heating and Cooling

Systems Exemption)【再生可能】

アクティブ・ソーラー冷暖房装置295の導入による固定資産税の算出に当たり、当該装置の評価

額を従来型装置と同じかそれ以下とする制度296。

③ ソーラー発電システム資産税減税(Property Tax Abatement for Solar Electric

System)【再生可能】

太陽光発電システムの評価価値の 80%を資産税から免除する措置297。

292 DSIRE(2009年 7月 17日更新) “Energy Improvement Loan Program (EILP)”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NC01F&re=1&ee=1

293 DSIRE(2009年 7月 17日更新) “TVA Partner Utilities - Energy Right Heat Pump Loan Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NC69F&re=1&ee=1

294 DSIRE(2009年 7月 16日更新) “Sales Tax Holiday for Energy-Efficient Appliances”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NC50F&re=1&ee=1

295 アクティブ・ソーラー冷暖房システムとは、採光装置によって集めた太陽エネルギーを、システム内の別の

コンポーネント(部品)に、機械または電気装置を用いて移動させるシステムを指す。それに対して、パッシブ

(熱電導〔conduct〕、熱移動〔convection〕、熱放射〔radiation〕)技術は、自然な熱移動を促すような、主

として建築技術を指す。(出所:EcoGeneration Solutions LLC. Companiesによるウェブサイト、

http://www.cogeneration.net/Solar_Heating_And_Cooling.htm About Solar Heating and Cooling)

296 DSIRE(2009年 9月 21日更新) “Active Solar Heating and Cooling Systems Exemption”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NC09F&re=1&ee=1

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④ 再生可能エネルギー税控除(Renewable Energy Tax Credit)【再生可能】

再生可能エネルギー(太陽光発電、太陽熱暖房〔パッシブも含む〕、太陽熱温水器、風力、バ

イオマス、水力、バイオ燃料等)関連機器の導入費用の 35%相当を法人税・所得税から控除す

る制度。

表 43 再生可能エネルギー税控除の対象製品と控除限度額

製品 課税免除上限額

住居用アクティブソーラー暖房(residential active

space heating)、ソーラー暖房給湯システム(combined

active space and domestic water-heating systems)、

パッシブソーラー暖房(passive space heating)

3,500ドル/世帯

ソーラー型温水プールシステム(solar pool-heating

systems)を含む、住居用ソーラー給湯システム 1,400ドル/世帯

住居用の、太陽光システム、風力エネルギーシステム、再

生可能エネルギーシステムの一部 10,500 ドル/設置

住居用の、地熱ヒート・ポンプ、給湯/アクティブ型冷暖

房のための地熱利用装置 8,400 ドル

商用/産業施設用の、ソーラー、風力、水力、地熱、バイ

オマスを利用する全装置(太陽光発電、昼光照明

(daylighting)、ソーラー給湯・暖房システムを含む)

250万ドル/設置

その他、対象となる装置の発電能力に関する制限はないが、充電能力に関しては上限設定があ

り、水力発電装置は最大 50kWh(直流)、その他技術の場合は最大 35kWh とされている。また、

装置は新品でなければならない298。

297 DSIRE(2009年 12月 21日更新) “Property Tax Abatement for Solar Electric Systems”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NC51F&re=1&ee=1

298 DSIRE(2009年 8月 31日更新) “Renewable Energy Tax Credit (Corporate)”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NC19F&re=1&ee=1

DSIRE(2009年 8月 31日更新) “Renewable Energy Tax Credit (Personal)”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=NC20F&re=1&ee=1

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2.11 ミシガン州(州別 GDP 第 11位、州別人口第 8位)

○ エネルギー消費量は全米第 10位(3,027 兆 BTU・2007 年)で、人口 1人当たりでは尐ない

方から 14番目。

○ 水力およびバイオマス(全米第 10位)発電は比較的導入されているが、その他の再生可能

エネルギー利用発電はほとんど行われていない。

○ 原子力発電(州内 3カ所)による電力供給量は、州の発電量の 4分の 1以上を占める299。

○ 2008 年 10 月に制定された州法により、2015年までに小売り電力の 10%を再生可能エネル

ギー利用発電により賄うとの比較的穏やかな再生可能ポートフォリオ基準(RPS)が制定さ

れた。これは、石炭ガス化複合発電(IGCC)、二酸化炭素の 80%以上を回収・貯留する石

炭火力発電などの先進的クリーン・エネルギー技術利用発電も対象としているところが特徴

的である。

○ エネルギー効率向上や再生可能エネルギー利用促進のための州政府のプログラムは、あまり

充実していない。

表 44 ミシガン州の再生可能エネルギー利用発電(2008年)

(単位:MW、能力ベース)

太陽光* 風力 地熱 バイオマス (水力) 水力を除く

合計

人口当たりの

発電量**

0 129 0 430 (374) 559 56

*:太陽光発電は、オフグリッド(off-grid、独立型専用太陽電池モジュール)を除く。

**:人口当たりの発電量は水力を含まない。単位はワット/人。

出所:Renewable Energy Data Book, July 2009, US Department of Energy

2.11.1 ミシガン州のエネルギー計画

(1) 「ミシガン州 21 世紀電力エネルギー計画」(Michigan’s 21st Century Electric

Energy Plan)

2007 年 1月にミシガン州公益サービス委員会より発表されたエネルギー計画で、2025年にか

けての電力需要を予測するとともに、将来の電力供給の在り方やエネルギー効率向上のための提

言として次の事項を挙げている。

○ 再生可能ポートフォリオ基準(RPS)について、2015 年までに供給電力の 10%を再

生可能エネルギーから賄うとの法定目標値の達成に向けて努力し、その進捗状況に

基づき 2025年までの目標値を 20%に引き上げるか検討。

299 エネルギー省エネルギー情報局(EIA)”State Energy Profiles – Michigan”:

http://tonto.eia.doe.gov/state/state_energy_profiles.cfm?sid=MI Coal, Electricity, and Renewables

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○ ソーラー、風力、燃料電池などの再生可能エネルギーシステムの住宅への導入に対

する資産税を軽減。

○ 1~2 カ所の発電所において、ソーラー発電の配電信頼性(distribution

reliability)や夏季の電力費用への影響を調査するパイロットプログラムを、州の

エネルギー委員会により実施。

○ ネット・メータリング制度を発電能力が 150kW以下の全ての再生可能エネルギー利

用施設および熱電併給施設に拡大300。

2.11.2 ミシガン州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度

(1) 再生可能ポートフォリオ基準

2008 年 10月の州法により、民間の電力企業、電力供給組合、地方自治体の公営電力企業、代

替発電電力供給企業(alternative electric suppliers)に対し、2015年までに小売電力の

10%を再生可能エネルギー利用発電により供給することが義務付けられた。

2015 年の目標達成に向けて、次のとおり毎年達成すべき目標も設けられている。

2012 年

2013 年

2014 年

2015 年

2015 年目標の 20%

2015 年目標の 33%

2015 年目標の 50%

2015 年目標の 100%

対象となる再生可能エネルギーは、太陽光、太陽熱、風力、地熱、バイオマス、自治体の固形

廃棄物、埋立地ガス、既存の水力発電(新たにダム建設を伴うものは対象外)、波力、潮力を含

む。その他に、石炭ガス化発電(IGCC)、二酸化炭素の 85%以上を回収・貯留する石炭火力発

電などの先進的クリーン・エネルギー技術利用発電も対象となる301。

(2) ネット・メータリング

2005 年 3月にミシガン州公共サービス委員会(PSC)と電力企業との間で交わされた合意に基

づき、開始当時は拘束力を持たない制度であったが、2008年 10月に制定された州法(P.A.

295)により、拘束力を持った。

民間の電力企業、電力供給組合、非都市部の電力送電企業、代替発電電力供給企業が対象とな

る。

「正規型(true)」と「修正型(modified)」の 2種類に分けられ、特に正規型の対象となる

装置は、発電能力 20kW以下の、ソーラー、風力、バイオマス、地熱、埋立地ガス、地方自治体

300 ミシガン州公益サービス委員会(2007年 1月) “Michigan’s 21st Century Electric Energy Plan”:

http://www.michigan.gov/documents/mpsc/21stcenturyenergyplan_185274_7.pdf

301 DSIRE(2009年 10月 22日更新) “Renewable Energy Standard”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MI16R&re=1&ee=1

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の固形廃棄物、水力、波力などの再生可能エネルギーを利用するものとされる(正規型ネットメ

ータリング制度)システム発電能力が 20~550kWのものも「修正型」ネット・メータリング制度

の対象とされているが、一部については装置への課金によりネット・メータリングとは言い難い

制度となっている。

「正規型」ネット・メータリングにおける各電力企業の受入上限は、ピーク時の電力需要量の

0.5%である302。

(3) 州政府建物のエネルギー効率基準

2008 年 10月に制定された州法により、州政府は、電力購入量を 2015年までに 2002 年比で

25%削減することが義務付けられた303。

(4) 発電源情報開示

2000 年の州法に基づき、全ての電力供給企業は、年に 1~2回、利用者に対し、発電源、排出

ガス中の二酸化炭素・二酸化硫黄・窒素酸化物の量、高レベル放射性廃棄物などに関するデータ

の開示を行うことが義務付けられた304。

2.11.3 ミシガン州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム

(1) 助成プログラム

① エネルギー効率グラント(Energy Efficiency Grants)【省エネ】

ミシガン公益サービス委員会(PSC:Public Service Commission)が実施するグラント制度で、

企業、非営利団体、政府機関、学校によるエネルギー効率向上に資するプロジェクト、あるいは、

再生可能エネルギー利用の促進に資するプロジェクトが対象となる。

エネルギー効率技術に関する具体的な規定はないが、再生可能エネルギー使用技術の場合、太

陽光、太陽熱温水器、風力、バイオガス利用、燃料電池が対象である305。

302 DSIRE(2009年 6月 4日更新) “Michigan - Net Metering”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MI15R&re=1&ee=1

303 DSIRE(2009年 8月 10日更新) “Energy Efficiency in State Buildings”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MI05R&re=1&ee=1

304 エネルギー省、”Green Power Network – Disclosure Policies - Michigan”:

http://apps3.eere.energy.gov/greenpower/markets/disclosure.shtml#mi

305 DSIRE(2009年 3月 2日更新) “Energy Efficiency Grants”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MI14F&re=1&ee=1

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② バイオマス・エネルギー・プログラム・グラント(Biomass Energy Program Grants)【再

生可能】

バイオ燃料やバイオエネルギーに関する教育、バイオ燃料関係のインフラ整備、バイオマス技

術の開発・実証等、各種事業に対する助成制度であり、非営利団体、学校、地方政府、州政府が

対象とされる。助成額は事業によって様々に異なる306。

③ 住居用省エネ機器リベートプログラム(Residential Energy - Efficient Appliance

Rebate Program)【省エネ・再生可能】

2009 年 2月に制定された「米国再生・再投資法」の下、既存の機器を新品の省エネタイプの

ものに取り換えるべく、エネルギー省から総額 3億ドルがワシントン DCを含む全米の州と米国

領に支給されており、ミシガン州もその 1つである。

リベート対象となるのは、2010 年 2月 10日以降に購入された、住宅用の省エネタイプの機器

(洗濯機、食洗機、冷蔵庫、温水器、炉)および再生可能エネルギー利用機器(太陽熱温水器)

である。

表 45 住居用省エネ機器リベートプログラムの製品別リベート額

製品 リベート額

太陽熱温水器 費用の 20%(最大 1,200 ドル)

炉(プロパンまたは石油) 300ドル

洗濯機 50ドル

食洗機 エネルギースター認定: 25ドル

CEE Tier 3307認定: 50ドル

冷蔵庫 エネルギースター認定: 50ドル

CEE Tier 3認定: 100 ドル

温水器(プロパン) 100ドル

同州の予算額は 882万ドルである308。

306 DSIRE(2009年 9月 21日更新) “Biomass Energy Program Grants”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MI08F&re=1&ee=1

307 CEE(Consortium for Energy Efficiency、省エネコンソーシアム)は非省エネ製品並びにサービスの製造・

購入を促進する、非営利の全国組織である。CEEも独自の省エネ認定基準を設けており、Tier 3は省エネ 3段階

基準の内、最高ランクを示す。

出所:housewares.about.com、” What is the CEE and How Does it Apply to Home Appliances”:

http://housewares.about.com/od/majorappliances/f/CEEtiercertification.htm

308 DSIRE(2010年 2月 10日更新) “Michigan - Residential Energy-Efficient Appliance Rebate

Program”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MI65F&re=1&ee=1

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(2) 税制優遇措置

① 非還付方式事業活動税控除(Nonrefundable Business Activity Tax Credit)【再生可

能】

代替エネルギーの製造、あるいは研究開発活動に従事する企業(ネクスト・エネルギー・オー

ソリティー〔NextEnergy Authority〕309により認可を受けたものに限る)は、ミシガン州の事業

税から非還付方式の税控除を申請することが出来る。

対象技術は、太陽熱温水器、太陽熱暖房、太陽光、風力、バイオマス、燃料電池、熱電併給発

電装置(CHP)、マイクロタービン等と幅広い310。

② 還付方式給与税控除(Refundable Payroll Tax Credit)【再生可能】

ネクスト・エネルギー・オーソリティーにより認可を受けたルネサンス・ゾーン

(Renaissance Zone)311内で代替エネルギーの製造、あるいは研究開発活動に従事する企業は、

還付方式の給与税控除を申請することができる。

対象技術として、太陽熱温水器、太陽熱暖房、太陽光、風力、バイオマス、燃料電池、熱電併

給発電装置(CHP)、マイクロタービン等312が指定されている。

③ 還付方式太陽光製造税控除(Refundable Photovoltaic Manufacturing Tax Credit)【再

生可能】

所定基準を満たす太陽光製造施設を建設する納税者は、還付方式の事業税控除を申請すること

が出来る。

納税者は、当該制度の利用のため、ミシガン州経済開発局(MEGA:Michigan Economic Growth

Authority)との間で、2011年 12月 31日までに施設の建設を完了するとの同意書を交わさねば

ならない。

税控除額は、当該施設の建築資本費用の 25%とされ、1,500 万~2,500 万ドルを上限とする313。

309 ネクストエナジー(NextEnergy)とはミシガン州を代替エネルギー技術の研究、、開発、商業化、製造部門

において世界のリーダー的存在に引き上げるための、包括的な経済開発計画であり、海外のエネルギー資源への

依存度を低減し、環境に配慮するなどの目的で設定された。

310 DSIRE(2009年 12月 7日更新) “Nonrefundable Business Activity Tax Credit”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MI15F&re=1&ee=1

311 指定地域内の企業は、全ての州・地方税を免除される。

出所:”Renaissance Zones”: http://ref.michigan.org/medc/services/sitedevelopment/renzone/

312 DSIRE(2009年 12月 7日更新) “Refundable Payroll Tax Credit”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MI07F&re=1&ee=1

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④ 再生可能エネルギー復興ゾーン(Renewable Energy Renaissance Zones)【再生可能】

再生可能エネルギー復興ゾーン内の施設(商業、産業、州政府)は、最大 15 年間(最後の 3

年間は毎年 25%ずつ課税率が引き上げられる)について、ミシガン州の事業税、教育税、所得税、

不動産税、自治体所得税の支払いが免除される314。

⑤ 代替エネルギー個人資産税免除(Alternative Energy Personal Property Tax

Exemption)【再生可能】

代替エネルギー技術の製造、あるいは研究開発活動に従事する企業等を対象とし、発電能力

2MW 以下(複合装置は 10MW以下。風力、太陽光、燃料電池については制限なし)の再生可能エ

ネルギー装置(太陽光発電、太陽熱暖房、風力、バイオマス発電、燃料電池など)が対象となる、

代替エネルギー利用自動車、代替エネルギー技術関連ビジネスなどを、個人資産税から免除する

制度315。

⑥ エネルギー効率住宅向上税控除(Energy Efficient Home Improvements Tax Credit)【省

エネ】

個人所得の確定申告額が 3 万 7,500ドル以下の個人、または、合算申告額が 7万 5,000ドル以

下の夫婦を対象とする制度である。

2008 年 12月 31 日から 2012年 1月 1日までの間に購入されたエネルギースターに適合する冷

蔵庫、洗濯機、食洗機、断熱材、温水器、炉および窓の設置費用の 10%(個人による確定申告

の場合は 75ドル、夫婦合算による場合は 150ドルを上限とする)を控除する316。

⑦ バイオマス・ガス化およびメタン消化装置資産税控除(Biomass Gasification and

Methane Digester Property Tax Exemption)【再生可能】

農地における特定のメタン消化装置、バイオマス・ガス発生装置を不動産税および個人資産税

から免除する。

対象となる装置には、州の農業局による認定が必要である317。

313 DSIRE(2009年 12月 3日更新) “Refundable Photovoltaic Manufacturing Tax Credit”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MI31F&re=1&ee=1

314 DSIRE(2010年 1月 12日更新) “Renewable Energy Renaissance Zones”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MI21F&re=1&ee=1

315 DSIRE(2009年 12月 7日更新) “Alternative Energy Personal Property Tax Exemption”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MI18F&re=1&ee=1

316 DSIRE(2009年 7月 16日更新) “Energy Efficient Home Improvements Tax Credit”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MI20F&re=1&ee=1

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2.12 バージニア州(州別 GDP 第 12位、州別人口第 12 位)

○ エネルギー消費量は全米で第 14位(2,611 兆 BTU。2007年)で、人口 1 人当たりでは 50

州の平均とほぼ同じ(3.3 億 BTU/人。2006年)。

○ 水力およびバイオマス(全米で第 4位)発電は比較的導入されているが、その他の再生可能

エネルギー利用発電はほとんど進んでいない。

○ 州の発電量の約 3分の 1 は原子力発電(原子力発電所は州内に 2カ所)による318。

○ 2007 年に策定されたエネルギー計画において、将来の温室効果ガス削減目標やエネルギー

効率向上目標などを設定しているが、エネルギー効率向上や再生可能エネルギー利用促進の

ための州政府のプログラムはあまり充実していない。なお、2009 年 3月の州法により、拘

束力を有さない再生可能ポートフォリオ基準が設定された。

表 46 バージニア州の再生可能エネルギー利用発電(2008年)

(単位:MW、能力ベース)

太陽光* 風力 地熱 バイオマス (水力) 水力を除く合計 人口当たりの

発電量**

0 0 0 760④ (743) 760 98

*:太陽光発電は、オフグリッド(off-grid、独立型専用太陽電池モジュール)を除く。

**:人口当たりの発電量は水力を含まない。単位はワット/人。

出所:Renewable Energy Data Book, July 2009, US Department of Energy

2.12.1 バージニア州のエネルギー計画

(1) バージニアエネルギー計画(Virginia Energy Plan)

2007 年 9月に策定された 10年間のエネルギー計画。

省エネを強化し、必要なエネルギー源を確保し、温室効果ガスを削減するための目標として、

次の 4 点を掲げている。

目標 1. 省エネとクリーン燃料技術分野を強化することにより、エネルギー消費の伸びの

40%削減とエネルギー生産の 20%増大を実現させ、州のエネルギーの独立性を高

める。

目標 2. 省エネ活動の障壁を取り除くため、消費者に対するエネルギー教育を強化する。

目標 3. 温室効果ガスの排出量を 2025 年までに 30%削減し、2000年水準に戻す。

目標 4. 強みである代替交通燃料、原子力、海洋エネルギー生産、二酸化炭素回収・貯留

などの分野におけるビジネスの拡大並びに研究開発活動の強化を通じて、経済開

317 DSIRE(2010年 2月 9日更新) “Biomass Gasification and Methane Digester Property Tax Exemption”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MI22F&re=1&ee=1

318 エネルギー省エネルギー情報局(EIA)”State Energy Profiles – Virginia”:

http://tonto.eia.doe.gov/state/state_energy_profiles.cfm?sid=VA Virginia Quick Facts

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発の機会を有効活用する。

また、省エネ製品購入時の消費税免除期間に関して、現行の秋季実施期間中に対象外とされる

製品向けに春季開催を提言するなど、税制優遇措置の拡大も検討されている319。

2.12.2 バージニア州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度

(1) 再生可能ポートフォリオ基準(RPS)

バージニア州では、2009 年 3月に制定された州法(HB 1994)により、民間公益企業を対象と

し、再生可能エネルギー利用による発電量について次のとおり「非拘束の」目標値を設定してい

る。

2010年までに 2007年の電力売上の 4%相当

2016年までに 2007年の電力売上の 7%相当

2022年までに 2007年の電力売上の 12%相当

2025年までに 2007年の電力売上の 15%相当

対象となる熱源は、太陽光、太陽熱、風力、水力、地熱、波力、潮力、バイオマスであるが、

特にソーラーおよび風力の場合の発電量は、仕組み上、実際発電された電力の 2倍量として扱わ

れる。

バージニア州企業委員会(SCC: State Corporation Commission)は、RPS に参加する電力企

業に対し、RPS 目標の達成状況に応じ、利益率の引き上げという形でパフォーマンス・インセン

ティブを支給する予定である320。

(2) ネット・メータリング

民間の電力供給企業および電力協同組合(electric cooperatives)を対象とする(公営の電

力企業は対象外)もので、太陽光、風力、水力、持続可能なバイオマス、廃棄物、波力、潮力お

よび地熱による発電に関し、各電力企業の前年のピーク時の電力需要量の 1%を上限としている。

システムの発電能力の上限は住宅用は 10k非住宅用は 500kWと設定されているが、2009 年 4

月に制定された州法(HB 2155)により、各電力企業の判断で、この枠を超える容量を持つ場合

でも対象とすることが可能となった321。

319 バージニア州鉱山・鉱物・エネルギー局(Virginia Department of Mines Minerals and

Energy)”Virginia Energy Plan”: http://www.dmme.virginia.gov/vaenergyplan.shtml

320 DSIRE(2009年 4月 3日更新) “Voluntary Renewable Energy Portfolio Goal”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=VA10R&re=1&ee=1

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(3) 州政府関係建物のエネルギー基準

2009 年 6月に州知事により署名された知事令(Executive Order 82)に基づき、総床面積

5,000 平方フィート以上の建物を新築する場合、および、建造物価値の 50%を超える費用をかけ

た本格的な改修を行う場合、LEED 基準でシルバー以上、または、グリーン・グローブ格付けシ

ステムで 2段階以上を満たすことに加え、州政府関係機関はエネルギースター認定の機器や装置

の購入またはリースを行うことが義務付けられている322。

(4) 発電源情報開示

バージニア州企業委員会(SCC)の 2001 年の規則では、電力サービス業者に対し、発電源およ

び排出に関するデータを年一回、利用者および SCCに開示することを義務付けている323。

2.12.3 バージニア州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム

(1) 助成プログラム

① ソーラー製造インセンティブ・グラント・プログラム(Solar Manufacturing Incentive

Grant (SMIG) Program)【再生可能】

州内における太陽光発電パネルの製造に対する助成制度。

助成額は次のとおり324(年間助成限度額は 450万ドル)。

1年目~2年目

3年目~4年目

5年目~6年目

0.75ドル/W

0.50ドル/W

0.25ドル/W

② 省エネリベートプログラム(Energy Efficiency Rebate Program)【省エネ】

321 DSIRE(2009年 7月 1日更新) “Virginia - Net Metering”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=VA02R&re=1&ee=1

322 DSIRE(2009年 6月 15日更新) “State Buildings Energy Reduction Plan”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=VA12R&re=1&ee=1

323 エネルギー省、”Green Power Network – Partial Disclosure Requirements - Virginia”:

http://apps3.eere.energy.gov/greenpower/markets/disclosure.shtml#va

324 DSIRE(2010年 1月 25日更新) “Solar Manufacturing Incentive Grant (SMIG) Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=VA08F&re=1&ee=1

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「米国再生・再投資法」の資金を用いてバージニア州鉱山・鉄鉱・エネルギー局(DMME:

Department of Mines Minerals and Energy)が実施するプログラムで、住宅所有者や商業セク

ター(企業、農家、軽産業事業体)による様々な省エネ機器の取替えに対し、リベートを支給す

るものである。

リベート対象となるには、事前予約申請を行う必要がある。

また、エネルギー監査を行う場合は、所定機関の認可を受けた業者によらねばならない。

対象となる機器は、温水器、炉、ボイラー、ヒート・ポンプ、建物用断熱材、窓など様々であ

り、取替え対象製品より省エネ効果が高く、新品であることが要件となる。

リベート額は、住宅所有者向けが最大 2,000ドル、商業セクター向けは最大 4,000 ドルで、エ

ネルギー監査を行う場合、それぞれ 250 ドルが追加で付与される。

予算総額は住宅所有者向けが 700万ドル、商業セクター向けが 800万ドルで、資金が枯渇する

まで継続される325。

③ TVA グリーン・パワー・転換発電パートナー・プログラム(TVA-Green Power Switch

Generation Partners Program)【再生可能】

本論「2.9.3(1)③TVA グリーン・パワー転換発電パートナー・プログラム」参照326。

④ TVA パートナー電力企業のためのエネルギーライト新築住宅プログラム(TVA Partner

Utilities - Energy Right New Homes Program)【省エネ】

本論「2.9.3(1)④TVAパートナー電力企業のためのエネルギーライト新築住宅プログラム」

参照327。

⑤ TVA パートナー電力企業のためのエネルギーライト温水器リベートプログラム(TVA

Partner Utilities - Energy Right Water Heater Rebate Program)【省エネ】

本論「2.9.3(1)⑤TVAパートナー電力企業のためのエネルギーライト温水器リベートプログ

ラム」参照328。

325 DSIRE(2009年 12月 1日更新) “Energy Efficiency Rebate Program - Residential”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=VA27F&re=1&ee=1

DSIRE(2009年 12月 1日更新) “Energy Efficiency Rebate Program - Commercial”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=VA28F&re=1&ee=1

326 DSIRE(2009年 11月 6日更新) “TVA - Generation Partners Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=VA05F&re=1&ee=1

327 DSIRE(2009年 7月 17日更新) “TVA Partner Utilities - Energy Right New Homes Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=VA23F&re=1&ee=1

328 DSIRE(2009年 7月 17日更新) “TVA Partner Utilities - Energy Right Water Heater Rebate

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=VA22F&re=1&ee=1

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(2) 融資プログラム

① TVA パートナー電力企業のためのエネルギーライト融資(ヒート・ポンプ)プログラム

(TVA Partner Utilities - Energy Right Heat Pump Loan Program)【省エネ】

本論「2.9.3(2)①TVA パートナー電力企業のためのエネルギーライト融資(ヒート・ポン

プ)プログラム」参照329。

② コモンウェルス・エネルギー・リース・プログラム(Commonwealth's Energy Leasing

Program)【省エネ】

バージニア州財務局とバージニア州鉱山・鉄鉱・エネルギー局(DMME)によるプログラムで、

バージニア州議会による予算決定対象となる全ての州政府機関が省エネ化措置(照明、ダクト、

建物用断熱材、窓、ドア、モーター等の購入等)を図る場合に、最低 1万ドルを融資(返済期間

は 3、5、7年)する330。

(3) 税制優遇措置

① 省エネ製品の消費税免除(Sales Tax Exemptions for Energy-Efficient Products)【省

エネ】

毎年 10 月第 2 月曜日までの 4日間、1機あたり 2,500 ドル以下のエネルギースター認証製品

(洗濯機、乾燥機、食器洗い機、冷蔵庫、エアコン、除湿機、プログラム可能な温度自動調整器、

天井翼、照明)を住宅用に購入する場合、消費税を免除する。

州政府への所得税確定申告に際し、一部省エネ製品331購入のために支払った消費税の 20%

(上限は 500 ドル)を控除できる332。

329 DSIRE(2009年 7月 17日更新) “TVA Partner Utilities - Energy Right Heat Pump Loan Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=VA21F&re=1&ee=1

330 DSIRE(2009年 9月 25日更新) “Commonwealth's Energy Leasing Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=VA14F&re=1&ee=1

331 製品リストはこちらを参照されたい:http://www.dmme.virginia.gov/DE/taxcredit.shtml

332 DSIRE(2009年 4月 10日更新) “Sales Tax Exemption for Energy-Efficient Products”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=VA17F&re=1&ee=1

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2.13 マサチューセッツ州(州別 GDP第 13 位、州別人口第 15位)

○ エネルギー消費量は全米第 25位(1,515 兆 BTU。2007 年)で、人口 1人当たりではロード

アイランド州、ニューヨーク州、カリフォルニア州に次いで尐ない(2.3 億 BTU/人〔2007

年〕で、これはテキサス州の半分以下に相当する)。

○ 電力供給量の約 4分の 1 が石炭火力発電によるものである333。

○ 再生可能エネルギー導入量は、水力およびバイオマスが比較的導入されている。その他、太

陽光も若干利用されているが、まだ規模が小さく、全米で最も導入が進んでいるカリフォル

ニア州の約 1.5%に留まっている。

○ 再生可能ポートフォリオ基準のほかに、代替エネルギー・ポートフォリオ基準と称して二酸

化炭素回収・貯留(CCS)付きの石炭ガス化複合発電(IGCC)や熱電併給発電(CHP)の導入

目標値を掲げているところが特徴的。

○ エネルギー効率の向上や再生可能エネルギー利用促進のための州政府によるプログラムは、

電力料金に若干の上乗せをして得た資金などによる「エネルギー効率基金」および「再生可

能エネルギー信託基金」を管理するマサチューセッツ技術協同組合(MTC)が実施する助成

プログラムが充実。

○ また、再生可能エネルギーに関する初期段階の技術開発に対する低利融資制度や省エネや再

生可能エネルギー導入促進に資する特許許諾からの収入に関する税制優遇措置など、技術開

発支援の制度が充実していることも特徴的。

○ 民間の電力供給企業などによる助成制度も比較的充実(DSIRE によると、約 40のプログラ

ムが存在)。

表 47 マサチューセッツ州の再生可能エネルギー利用発電(2008 年)

(単位:MW、能力ベース)

太陽光* 風力 地熱 バイオマス (水力) 水力を除く

合計

人口当たりの

発電量**

8 5 0 375 (272) 388 60

*:太陽光発電は、オフグリッド(off-grid、独立型専用太陽電池モジュール)を除く。

**:人口当たりの発電量は水力を含まない。単位はワット/人。

出所:Renewable Energy Data Book, July 2009, US Department of Energy)

2.13.1 マサチューセッツ州のエネルギー計画

現在のところ、州全域を対象とした包括的なエネルギー計画は存在しない。

333 エネルギー省エネルギー情報局(EIA)”State Energy Profiles – Masachusetts”:

http://tonto.eia.doe.gov/state/state_energy_profiles.cfm?sid=VA Masachusetts Quick Facts

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2.13.2 マサチューセッツ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度

(1) 再生可能ポートフォリオ基準(RPS)および代替エネルギー・ポートフォリオ基準

(APS)

マサチューセッツ州における RPSは民間電力企業、並びに、小売電力供給企業を対象としてい

る。現在実施されている RPSは、2008年 7月に制定された州法(S.B. 2768)によってそれまで

の基準を本格的に引き上げたものである。当該州法により、RPSは、装置導入時期によって下記

のとおり「クラス I、II」という 2つの基準に区分された。

クラスI:小売り電力のうち、1997年末以後に導入された装置による再生可能エネルギー

(太陽光、太陽熱、風力、波力、潮力、再生可能燃料を利用した燃料電池、埋立地ガス、一定の

基準を満たす水力発電、バイオマス、地熱発電など)利用発電の割合を次のスケジュール(毎年

設定されているが、以下では 5年ごとの目標値を掲載)で引き上げていくことが義務付けられて

いる。

2010 年末

2015 年末

2020 年末

2021 年~

販売電力量の 5%

販売電力量の 10%

販売電力量の 15%

毎年 1%ずつ目標値を引き上げる

クラス II:1997 年末以前に導入された装置による再生可能エネルギー(太陽光、太陽熱、風

力、波力、潮力、再生可能燃料を利用した燃料電池、埋立地ガス、一定の基準を満たす水力発電、

バイオマス、地熱発電など)利用発電による最終利用者への電力供給量を、2009年以降は年間

小売り電力量の 3.6%とすることが義務付けられている。この他、廃棄物エネルギー最低限基準

が設定されており、最終利用者への電力供給量に関して、年間電力販売量の 3.5%を廃棄物利用

エネルギーから供給することが義務付けられている。

さらに、2009 年 1 月 1 日に開始された「代替エネルギー・ポートフォリオ基準(APS)」の下、

小売電力企業に対し、二酸化炭素回収・貯留(CCS)付きの石炭ガス化複合発電(IGCC)、熱電

併給発電(CHP)、フライホイール・エネルギー蓄電池334などの技術を用いて発電した電力量を

2020 年までに販売電力量の 5%とする旨義務付けている335。

334 フライホイール・エネルギー蓄電池:電力をフライホイール(ローター)の回転運動に変換して蓄電する装

置。

335 DSIRE(2010年 1月 14日更新) “Renewable Portfolio Standard”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MA05R&re=1&ee=1

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(2) ネット・メータリング

マサチューセッツ州では、州内の民間電力供給企業を対象としたネット・メータリング制度を

施行しており、発電装置の発電能力により「クラス I~Ⅲ」の 3つに区分している。詳細は下記

のとおりである。超過発電量(NEG)の取り扱いは、装置のクラス、並びに、顧客の種類によっ

て異なる。

表 48 ネット・メータリングの対象発電装置

クラス 対象となる発電装置

クラスI

発電能力が 60kW 以下の、再生可能エネルギー(太陽光、太陽熱、風力、バイ

オマス、水力、地熱、燃料電池、自治体の固形廃棄物、熱電併給発電、汚泥発

電など)利用発電装置。

クラス II 発電能力が 60kW から 1MW 以下の、再生可能エネルギー(太陽光、太陽熱、風

力、農産品) 利用発電装置。

クラス III 発電能力が 1MW から 2MW 以下の、再生可能エネルギー(太陽光、太陽熱、風

力、農産品)利用発電装置。

各電力企業の受入上限は、ピーク時の電力需要量の 1%336。

(3) 州政府のエネルギー効率向上

2007 年 4月に制定された知事令(Executive Order 484)に基づく措置であり、多数のエネル

ギー基準が設定されている。以下はその一部である。

○ 州政府が所有、あるいはリースしている建物全体のエネルギー消費量を、2012 年ま

でに 2004年比で 20%、2020年までに同 35%削減する。

○ 州政府による温室効果ガス排出量(調整前)を、2012 年までに 2002 年比で 25%、

2020 年までに同 40%、2050年までに同 80%削減する。

○ 2万平方フィートを超える州政府の建物を新築、または、本格的に改修する場合、

「マサチューセッツ持続可能設計ラウンドテーブル(Commonwealth of

Massachusetts Sustainable Design Roundtable)」が定める省エネ基準(マサチュ

ーセッツ LEED プラスグリーン建物基準、Massachusetts LEED Plus green building

standard)に適合させる。

○ 州政府の消費電力量の内、2012 年までに 15%を、2020 年までに 30%を再生可能エ

ネルギー利用により発電された電力とする337。

336 DSIRE(2009年 8月 31日更新) “Massachusetts - Net Metering”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MA01R&re=1&ee=1

337 DSIRE(2009年 5月 7日更新) “Energy Reduction Plan for State Buildings”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MA13R&re=1&ee=1

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(4) 発電源情報開示

1998 年にマサチューセッツ州通信・エネルギー局(Massachusetts Department of

Telecommunications and Energy)が発表したの最終規則に基づく措置。

州内の電力供給企業に対し、四半期に一度、発電源の内訳や排出ガスに関する最終利用者への

情報開示を義務付けている338。

2.13.3 マサチューセッツ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラ

(1) 助成プログラム

① MTC-クリーン・エネルギー開発事前財政イニシアチブ(グラント)(MTC-Clean Energy

Pre-Development Financing Initiative 〔Grant〕)【再生可能】

新しい系統接続型の再生可能エネルギー発電システムに関するフィージビリティ・スタディに

対する助成制度。

風力発電(3MW 以上)、水力発電(250kW 以上)、廃棄物ガス発電(250kW 以上)、嫌気性消

化ガスによる発電装置(250kW 以上)、特定のバイオマス燃料を利用した低排出の先進電力変換

技術(3MW 以上)などが対象。

公的機関(連邦政府、州政府、地方政府)が行うもののみが対象。

助成額は最大 5万ドルで、最低 25%の自己負担が必要。

システムはニュー・イングランド 6州いずれに設置されていてもよい(ただし、電気の一部を

施設内で消費する場合は、マサチューセッツ州内の設備のみが対象)。

② CEC - マサチューセッツ州ソーラー・リベート(CEC - Commonwealth Solar II Rebates)

【再生可能】

当該制度は、住宅(集合住宅も含む)、商用施設、産業施設、非営利団体、学校、政府機関、

農業等のセクターにおける、系統接続型339の太陽光発電システムの設置に対し、マサチューセッ

ツ州クリーン・エネルギーセンター(CEC:Clean Energy Center)がリベートを提供する、年間

予算額 400万ドル(四半期ごとの予算額は 100万ドル)のプログラムである。

338 エネルギー省、”Green Power Network – Partial Disclosure Requirements - Massachusetts”:

http://apps3.eere.energy.gov/greenpower/markets/disclosure.shtml#ma

339 電力企業の電力系統(送電線)と太陽光パネルを連系(接続)することにより、電気の売買を可能とするシ

ステム。自家発電量が使用量を超過している時には余剰電力を電力企業に売る事ができ、逆の場合は電力企業か

ら電気を受け取る事が出来る。

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表 49 CEC - マサチューセッツ州ソーラー・リベート

セクター 発電能力上限 リベート額 リベート上限額

住宅 設定なし 1.00 ~ 2.10ドル/W(直流) 1 万 500ドル

商用 5kW 1.00 ~ 2.10 ドル/W(直流)

・5,500 ドル(システムの所有

権が、電力の最終消費者〔host

customer〕にある場合)

・25 万ドル(システム所有権

が、複合住宅の所有者等、所謂

「親企業」にある場合)

当該プログラムの対象は、特定の電力供給企業(民間では Fitchburg Gas and Electric

Light 〔Unitil〕、National Grid、NSTAR Electric、Western Massachusetts Electric。最近

では自治体運営による電力供給企業の一部も追加された)の顧客340。

申請を希望する企業等は、申請書類(連絡先および施設情報、PV 事業技術および費用ワーク

シート、リベート・ワークシート、所定の添付書類、署名および承諾書を含む)を CECに提出す

る。CEC の審査に合格すると、アウォード・パケット(award packet:承認レター、事業完了書、

事業変更書、生産追跡システムに関する情報シートから構成)が送付され、それ以降、インスト

ールや接続を行うことができる。終了後に事業完了書を提出し、支払い手続きに入る。CEC によ

るインスペクション(必要とされた場合)終了後、リベートの支払いが費用支払い者に対して直

接行われる(通常、事業完了書等を受領して 60日以内)341。

③ CEC - マサチューセッツ・ソーラー・インセンティブ(CEC - Commonwealth Solar

Stimulus)【再生可能】342

「米国再生・再投資法」による資金を基に、マサチューセッツ州クリーン・エネルギー・セン

ター(CEC)がリベートを行う、予算総額 800 万ドル(リベートは 2 ブロックに分けて行われる。

終了した第 1ブロックの予算額は 400万ドル)のプログラムである。

企業、産業、非営利団体、学校、政府等による太陽光発電システムの設置が対象となる。

システムの発電能力(X)は 5kW超 200kW以下で、リベート上限額は 1事業あたり 16万 2,500 ド

ル(電力の最終消費者〔host customer〕1人、あるいは、親企業 1件あたり 100万ドル)とさ

れる。

リベート額の算出レートは次のとおりである。

340 DSIRE(2010年 1月 26日更新) “CEC - Commonwealth Solar II Rebates”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MA71F&currentpageid=3&EE=1&RE=1

341 CEC “Commonwealth Solar II – PV Rebate Program - Program Manual”:

http://masscec.com/masscec/file/CSII_Solicitation_V13_Final.pdf (p.20から申請関連情報)

CEC “Commonwealth Solar II”: http://masscec.com/index.cfm?pid=10860

Attachment A1 Commercialから書類をダウンロード。

342 DSIRE(2010年 1月 28日更新) “CEC - Commonwealth Solar Stimulus”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MA97F&re=1&ee=1

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表 50 CEC - マサチューセッツ・ソーラー・インセンティブのリベート額算出レート

発電量(Y) リベート額算出レート

1 kW≦Y≦25kW 1.50 ドル/W(直流)

25kW<Y≦100 kW 1.00 ドル/W(直流)

100kW<Y≦200 kW 0.50 ドル/W(直流)

④ MTC – マサチューセッツ風力インセンティブプログラム(マイクロ風力発電イニシアチブ)

(MTC - Commonwealth Wind Incentive Program – Micro Wind Initiative)【再生可能】

マサチューセッツ州再生可能エネルギー信託基金(Massachusetts Renewable Energy Trust)

を運営するマサチューセッツ技術協同組合(MTC)が実施するリベートプログラムで、発電能力

10kW 以下の小型風力発電装置を対象とする。

特定の民間電力企業(Fitchburg Gas and Electric Light 〔Unitil〕、Massachusetts

Electric 〔National Grid〕、Nantucket Electric 〔National Grid〕、NSTAR Electric、

Western Massachusetts Electric)の顧客であれば、官民、営利・非営利の別を問わずプログラ

ム対象となる(学校も含む)。

装置は、新品で、UL認証が付与され、その他所定の基準を満たし、かつ、最低 5年間の保証

が付与されていなければならない。また、エネルギー監査を受けなければならない343。

表 51 MTC – マサチューセッツ風力インセンティブ・プログラム

リベート段階 内容 リベート額

第 1回リベート 装置の設置終了時に支給され

る。

・1.25 ドル/Wで算出された

金額

・この他、初回支給時には装

置の発電能力に関係なく

1,000 ドルを支給

第 2回リベート 装置の設置後 1年間、MTC 発

電追跡システム(MTC

Production Tracking

System)に対して毎月発電量

を報告しなければならず、そ

の発電量に応じて支給され

る。

・2ドル/kWh で算出された金

申請を希望する企業等は、設置業者(installer)を通してマサチューセッツ代替エネルギー

信託(MRET: Massachusetts Renewable Energy Trust)に対して申請を行う(申請書類の署名は

設置業者が行う)。承認が下りたらリベート誓約書(rebate commitment letter)等が申請を希

望する企業等(Awarded applicant)に送られてくるので、必要書類に署名し返送する。その後、

343 DSIRE(2009年 6月 11日更新) “MTC - Commonwealth Wind Incentive Program – Micro Wind

Initiative”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MA22F&re=0&ee=0

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装置の設置を実行する。設置終了後、事業完了書を提出する。MRET によるインスペクション後、

支払いが申請者に直接行われる344。

⑤ MTC – マサチューセッツ水力発電イニシアチブ(MTC - Commonwealth Hydropower

Initiative)【再生可能】

マサチューセッツ技術協同組合(MTC:Massachusetts Technology Collaborative)による当

該イニシアチブでは、マサチューセッツ州 RPS基準を満たす、または、今後満たすとされる水力

発電設備(発電能力の上限は 25MW)に関して、事前調査に対し最大 4万ドル、改修・再開発・

開発に対し最大 60万ドルを助成する。申請する側にも費用負担義務があり、負担割合は事前調

査費用の 20%、改修・再開発・開発費用の 50%となっている。

特定の民間電力企業(Fitchburg Gas and Electric Light 〔Unitil〕、Massachusetts

Electric 〔National Grid〕、Nantucket Electric 〔National Grid〕、NSTAR Electric、

Western Massachusetts Electric)の顧客であれば、官民、営利・非営利の別を問わずプログラ

ム対象となる(学校も含む)。

事業実施により尐なくとも年間 20万 kWh の追加発電量を達成しなければならず、また、最低

20 年間は発電を継続しなければならない345。

⑥ MTC – マサチューセッツ風力発電インセンティブ・プログラム(商用風力発電イニシアチ

ブ/助成)(MTC - Commonwealth Wind Incentive Program - Commercial Wind

Initiative)【再生可能】

マサチューセッツ技術協同組合(MTC)による当該イニシアチブでは、電力の卸売を行う商用

風力発電事業、または、ネット・メータリング制度対象基準を満たさないものの電力の自家消費

を行う事業の事前調査を対象として、最大 5万 5,000 ドルを助成する。申請する側に費用負担義

務があり、負担率は事業費用の 25%とされている。第 2回目の募集が 2010 年 3月 9日に終了し

たばかりであり、次回の募集は 5月以降とみられる346。

風力発電装置の発電能力は 2MW以上で、設置場所が陸地であることが必要である347。

当該イニシアチブの融資部分については、後述の融資プログラムにおける該当部分を参照のこ

と。

344 MRET“Commonwealth Wind Incentive Program – Micro Scale – Design & Construction Rebates”:

http://www.masstech.org/wind/micro_wind/CWIPMS-02_Solicitation.pdf (p.11から申請情報)

345 DSIRE(2009年 9月 21日更新) “MTC - Commonwealth Hydropower Initiative”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MA90F&re=1&ee=1

346 Renewable Energy Trust “Commonwealth Wind Incentive Program”:

http://www.masstech.org/renewableenergy/commonwealth_wind/commercial_wind.html

347 DSIRE(2009年 9月 14日更新) “MTC - Commonwealth Wind Incentive Program - Commercial Wind

Initiative”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MA88F&re=1&ee=1

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⑦ MTC – マサチューセッツ風力発電インセンティブプログラム(コミュニティ規模風力発電

イニシアチブ)(MTC - Commonwealth Wind Incentive Program - Community-Scale Wind

Initiative)【再生可能】

マサチューセッツ技術協同組合(MTC)による当該イニシアチブでは、風力発電装置(発電能

力は 100kW以上)の事前調査および建設・設計事業に対し 2万~60 万ドルを助成する。助成上

限額は民間事業が 40万ドル、公的事業が 60万ドルである。

特定の民間電力企業(Fitchburg Gas and Electric Light 〔Unitil〕、 Massachusetts

Electric 〔National Grid〕、Nantucket Electric 〔National Grid〕、NSTAR Electric、

Western Massachusetts Electric)の顧客であれば、官民、営利・非営利の別を問わずプログラ

ム対象となる(農業も含む)。

装置に関する要件として、発電能力は 100kW以上でなければならず、設置場所である施設は系

統接続されており、再生可能エネルギー利用による発電量の尐なくとも 50%を自家消費する必

要がある。また、装置には UL認証が付与され、その他所定の基準を満たし、かつ、最低 2 年間

の保証が付与されていなければならない348。

申請を希望する企業等は、ウェブサイトにあるステップ 1~8に沿って申請手続きを行うが、

流れとしては業者選定、申請書類(ウェブサイトからダウンロード可)提出、競争的審査、申請

から通常 8週間以内に決定通知、採択された場合は契約締結、という順序となる349。

⑧ マス・エネルギー-再生可能エネルギー認証インセンティブ(Mass Energy-Renewable

Energy Certificate Incentive)【再生可能】

マサチューセッツ州でマス・エネルギー消費者連盟(Mass Energy Consumers Alliance)、ロ

ードアイランド州でピープルズ・パワー・アンド・ライト(People’s Power & Light)として

活動するニューイングランド・エネルギー消費者連盟(ECANE:Energy Consumers Alliance of

New England)によるプログラムで、太陽光発電システムおよび小型風力発電システム(いずれ

も 1998 年以降に設置されたもの)により発電された電力を、再生可能エネルギークレジット

(RECs)として ECANE が買取る制度。太陽光発電システムと小型風力発電システムからの RECs

は、低インパクト水力発電システムとバイオマス発電システムの RECsと併せてニューイングラ

ンド・グリーンスタート(New England GreenStart)350という再生可能エネルギー商品にパッケ

ージ化され、販売される。

348 DSIRE(2009年 10月 7日更新) “MTC - Commonwealth Wind Incentive Program - Community-Scale Wind

Initiative”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MA82F&re=1&ee=1

349 CEC“Commonwealth Wind Community Scale”: http://masscec.com/index.cfm?pid=11047

申請書類もこのウェブサイトに掲載されている。

350 この商品は、グリーンアップ(GreenUp)という、民間電力企業の National Grid社による再生可能エネルギ

ー商品をオプションとして消費者に提供するプログラムを通して取引される。希望者はまず登録申請をし、その

際、ニューイングランド・グリーンスタートによる電力供給量を電力総消費量の 100% (最終的な電気料金は、

一般的な家庭の従来の電気代に 1カ月約 12.50ドルを加算した金額となるとされる)にするか、50%(最終的な

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買取り価格は 0.03ドル/kWhで、ECANEと 3年間契約を締結する。契約終了後は、システム所

有者は ECANE との契約を更新するか、または、グリーンパワー市場において RECsを販売する他

の機会を検討することができる。太陽光発電システムおよび小型風力発電システムの所有者は、

グリーンパワー市場の推進を目的として RECsの寄付を選択することも可能である。RECs販売収

入によって、ネット・メータリング制度から得られる利益が減ることはない351。

(2) 融資プログラム

① MTC-クリーン・エネルギー開発前財政イニシアチブ(融資)(MTC-Clean Energy Pre-

Development Financing Initiative 〔Loan〕)【再生可能】

新しい系統接続型の再生可能エネルギー発電システムに関するフィージビリティ・スタディな

どに対する助成制度。

風力発電(3MW 以上)、水力発電(250kW以上)、埋立地ガス発電(250kW 以上)、嫌気性消

化ガスによる発電装置(250kW 以上)、特定のバイオ燃料を利用した低排出かつ先進的な電力変

換技術(3MW以上)などが対象。

フィージビリティ・スタディ融資と、開発前活動(施設設計、環境調査、許認可など)融資の

2 種類がある。

フィージビリティ・スタディ融資は、民間の非営利団体のみが対象で、5万ドルまでの無担保

融資が受けられる。

開発前融資は公的機関、民間の非営利団体、民間企業などが対象で、風力およびバイオマスに

関しては 25万ドルまでの無担保融資が、その他の再生可能エネルギーに関しては 15万ドルまで

の無担保融資が受けられる。なお、いずれの場合も 25%の費用負担が求められる。

システムはニュー・イングランド 6州いずれに設置されていてもよい(ただし、電気の一部を

施設内で消費する場合は、マサチューセッツ州内の設備のみが対象)。

② CEC - 持続可能なエネルギー経済開発(SEED)イニシアチブ(CEC-Sustainable Energy

Economic Development (SEED) Initiative)【再生可能】

民間企業が再生可能エネルギー関連の初期段階の技術開発を行う際の低利融資制度。

独創性があるもののベンチャーキャピタル(VC)による十分な支援を受ける程商業化の可能性

が示されていない技術が対象となる。

電気料金は、一般的な家庭の従来の電気代に 1カ月約 6.25ドルを加算した金額となるとされる)にするかとい

う選択をする(https://www2908.ssldomain.com/NewEnglandGreen/enroll.cfm)。この商品に支払われた料金の

尐なくとも 57%は税控除の対象となる。出所:マス・エネルギー消費者連盟、” Why Choose New England

GreenStart?”: http://www.massenergy.com/Green.Why.Choose.html#Tax

電気料金についての記述は、画面左上のリンク “Join Now!”を参照。

351 DSIRE(2009年 7月 13日更新) “Mass Energy - Renewable Energy Certificate Incentive”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MA10F&re=1&ee=1

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融資額の上限は 1社あたり 50万ドルで、融資期間は 12カ月352。

③ MTC-ビジネス拡大イニシアチブ(MTC-Business Expansion Incentive)【再生可能】

企業がマサチューセッツ州内で再生可能エネルギー関連製品の製造を開始する際の低利融資制

度。

24 カ月間にわたり必要な資金の 50%まで融資可能。なお、1社あたりの上限は、案件によっ

て 50 万~300 万ドル。

④ MTC – マサチューセッツ州風力発電インセンティブプログラム(商用風力発電イニシアチ

ブ/融資)(MTC - Commonwealth Wind Incentive Program - Commercial Wind

Initiative)【再生可能】353

マサチューセッツ技術協同組合(MTC)による当該イニシアチブでは、風力発電装置(発電能

力は 2MW 以上)の事業開始前の活動、または、ネット・メータリング制度対象基準を満たさない

ものの電力の自家消費を行う事業について、最大 25万ドルの無担保融資(金利はプライムレー

トに 2%加算)を提供する。事業開始前の活動とは、土地の購入またはリース契約の締結、追加

的な環境分析、開発戦略の修正、財務分析等とされている。

特定の民間電力企業(Fitchburg Gas and Electric Light 〔Unitil〕、Massachusetts

Electric 〔National Grid〕、Nantucket Electric 〔National Grid〕、NSTAR Electric、

Western Massachusetts Electric)の顧客であれば、官民、営利・非営利の別を問わずプログラ

ム対象となる354。

352 DSIRE(2010年 2月 3日更新) “CEC - Sustainable Energy Economic Development (SEED)

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MA24F&re=1&ee=1

353 DSIRE(2009年 9月 14日更新) “MTC - Commonwealth Wind Incentive Program - Commercial Wind

Initiative”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MA89F&re=1&ee=1

354 同上

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(3) 税制優遇制度

① 再生可能エネルギー装置消費税免除(Renewable Energy Equipment Sales Tax

Exemption)【再生可能】

住宅用の太陽熱温水器、太陽光発電、太陽熱暖房、風力、地熱ヒート・ポンプの購入に対する

消費税の免除制度355。

② 再生可能エネルギー資産税免除(Renewable Energy Property Tax Exemption)【再生可

能】

太陽光発電、太陽熱発電、太陽熱暖房、太陽熱温水器、風力発電、水力発電の装置導入に伴う

地方資産税の価値の増加分について、20 年間課税免除する制度。水力発電装置に関しては、地

元自治体に対し、前年度の総収入の 5%を支払うことに同意することが条件となる356。

③ 住民を対象とした再生可能エネルギー所得税控除(Residential Renewable Energy Income

Tax Credit)【再生可能】

太陽光発電、風力発電、太陽熱温水器、太陽熱暖房装置に関し、個人的利用のための購入費お

よび設置費用の 15%(最大 1,000 ドル)を所得税から控除する357。

④ 太陽光・風力発電システムを対象とした物品税の低減措置(Excise Tax Deduction for

Solar or Wind-Powered Systems)【再生可能】

企業が太陽熱温水器、太陽熱暖房、風力発電システムなどを導入する際、人件費など設置の際

に支払われた金額を、純収入(net income)から控除することが出来る358。

⑤ 太陽光・風力発電システムを対象とした物品税免除(Excise Tax Exemption for Solar-

or Wind-Powered Systems)【再生可能】

355 DSIRE(2009年 4月 21日更新) “Renewable Energy Equipment Sales Tax Exemption“:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MA05F&re=1&ee=1

356 DSIRE(2009年 10月 5日更新) “Renewable Energy Property Tax Exemption”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MA01F&re=1&ee=1

357 DSIRE(2009年 10月 5日更新) “Residential Renewable Energy Income Tax Credit”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MA06F&re=1&ee=1

358 DSIRE(2009年 4月 30日更新) “Excise Tax Deduction for Solar- or Wind-Powered Systems”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MA03F&re=1&ee=1

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企業の太陽熱温水器、太陽熱暖房、風力発電システムなどの導入に関し、有形固定資産分の物

品税を免除する制度。

免除期間は、対象システムの減価償却年数359。

⑥ 代替エネルギーおよび省エネルギー特許免除(個人・法人)(Alternative Energy and

Energy Conservation Patent Exemption 〔personal, company〕)【省エネ・再生可能】

個人または企業が、代替エネルギー開発や省エネに寄与するとみなされる特許の販売や特許使

用料(ロイヤルティー:royalty)から得た収入を、所得税および法人税から控除できる制度360。

359 同上

360 DSIRE(2009年 6月 19日更新) “Alternative Energy and Energy Conservation Patent Exemption

(Corporate) “: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MA02F&re=1&ee=1;

DSIRE(2009年 6月 19日更新) “Alternative Energy and Energy Conservation Patent Exemption

(Personal) “: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MA08F&re=1&ee=1

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2.14 ワシントン州(州別 GDP 第 14位、州別人口第 13 位)

○ エネルギー消費量は全米第 17位(2,067 兆 BTU。2007 年)で、人口 1人当たりでは全米平

均より若干尐ない(3.2 億 BTU/人。2007 年)。

○ 再生可能エネルギー導入量に関しては、水力が全米第 1位を誇る(全米の水力発電量の 4分

の 3近くはワシントン州で行われている361)。その他、風力(全米第 5位)やバイオマスの

導入が比較的進んでいる。

○ 民間公益企業によるエネルギー効率の向上や再生可能エネルギー利用促進のためのプログラ

ムが極めて充実している(DSIRE によると、100 を超えるプログラムが存在)。

表 52 ワシントン州の再生可能エネルギー利用発電(2008年)

(単位:MW、能力ベース)

太陽光* 風力 地熱 バイオマス (水力) 水力を除く合計 人口当たりの

発電量**

4⑤ 1,447⑤ 0 350 (20,807①) 1,801⑤ 275

*:太陽光発電は、オフグリッド(off-grid、独立型専用太陽電池モジュール)を除く。

**:人口当たりの発電量は水力を含まない。単位はワット/人。

○数字は、全 50州の中の順位(第 5位までを表示)

出所:Renewable Energy Data Book, July 2009, US Department of Energy

2.14.1 ワシントン州のエネルギー計画

2 年に1度、州のコミュニティ貿易経済局(Department of Community, Trade, and Economic

Development)が過去のエネルギー需給動向などをまとめたエネルギー報告を作成しているが、

州全体を対象とした包括的なエネルギー計画は現在のところ存在しない。

2.14.2 ワシントン州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度

(1) 再生可能ポートフォリオ基準(RPS)

ワシントン州は、2006 年の州民投票(Initiative 937)により、再生可能ポートフォリオ基

準を導入した(州民投票による導入はコロラド州に次いで 2例目)。

州内にある電力供給企業 62 社中、17社(州内の電力の 84%を供給)が制度の対象とされてお

り、以下に示したスケジュールで再生可能エネルギーを利用した発電量の割合引き上げを、所定

の再生可能エネルギー資源利用や同等の再生可能エネルギークレジット(RECs)の獲得をとおし

て達成することが義務付けられている。

361 エネルギー省エネルギー情報局(EIA)”State Energy Profiles – Washington”:

http://tonto.eia.doe.gov/state/state_energy_profiles.cfm?sid=WA Washington Quick Facts

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2012 年 1 月 1日 ~ 2015年 12月 31日

2016 年 1 月 1日 ~ 2019年 12月 31日

2020 年 1 月 1日 ~

3%

9%

15%

対象となる再生可能エネルギーは、ソーラー、風力、水力、地熱、埋立地ガス、波力、潮力、

下水処理施設からのガス、バイオ・ディーゼル燃料、動物廃棄物を原料としたバイオマス、木材

やエネルギー用に栽培された穀物を原料とした固形有機燃料などである。

対象企業は、2012 年以降毎年、ワシントン公益・運輸委員会(Washington Utilities and

Transportation Commission)およびコミュニティ貿易経済局(CTED)に、目標値達成に向けた

進捗状況と、翌年の目標値に関する報告をしなければならない。例外が適用される可能性もある

が、省エネおよび再生可能エネルギー利用目標を満たさなかった場合、50ドル/MWh の行政罰則

金(administrative penalty)が州政府により課される362。

(2) ネット・メータリング

発電能力 100kW 以下のソーラー、風力、水力、動物廃棄物からのバイオガス、熱電併給発電

(CHP)等の再生エネルギーを利用した発電装置、燃料電池が対象。

自治体の電力供給企業や電力供給組合などを含む、全ての電力供給企業がネット・メータリン

グ制度の対象となるが、当該各企業および組合は、ネット・メータリングによる累積自家発電能

力が 1996 年のピーク時電力需要量の 0.25%(2014年に、現状の 0.25% から 0.5%への引き上げ

が予定されている)に達するまで顧客からのネット・メータリング対象となる希望を受け付けな

ければならない。

超過発電量(NEG)に関しては、翌月の電気料金請求書において、各企業により定められた小

売価格で算出した金額をクレジット付与の形で顧客に還元する。一方、毎年 4 月 30日付で未処

理のまま残っている NEGについては、顧客に還元せず、電力企業が吸収する363。

(3) 州政府機関の建物のエネルギー基準およびエネルギー削減基準

2005 年の知事令(Executive Order 05-01)により、州政府機関が建物(面積が 2万 5,000 平

方フィート以上)を新築する際、並びに、既存の建物(面積が 2万 5,000 平方フィート以上)の

60%以上を改築する場合、LEED 基準のシルバー以上を満たすか、または、定評ある第三者による

認定を受けることが義務付けられている。

また、州政府関係機関は、エネルギー効率向上や再生可能エネルギー利用などによって、エネ

ルギーの購入量を 2009 年 9月 1日までに、2003 年を基準として 10%削減することが求められて

いる。

362 DSIRE(2009年 9月 21日更新) “Renewable Energy Standard”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=WA15R&re=1&ee=1

363 DSIRE(2009年 5月 22日更新) “Washington - Net Metering”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=WA01R&re=1&ee=1

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さらに、2005 年 7月の州法(SB 5509)では、床面積 5,000平方フィート以上の建物を対象と

したガイドラインを設定し、全ての州政府機関、高等教育機関、その他州政府から資金提供を受

ける団体が、建物の設計、建設、メンテナンスにおいて、LEED基準のシルバー以上を満たすこ

とを義務付けている364。

(4) 発電情報開示

州内の小売り電気供給企業に対し、尐なくとも年 4回(小規模企業等は年 1 回)、利用者への

発電源の内訳の開示を義務付ける制度365。

2.14.3 ワシントン州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム

(1) 助成プログラム

① ワシントン州立大学 学外エネルギー・プログラム(WSU Extension Energy Program-

Manufacturing Efficiency Program)【省エネ】

州内の省エネ事業(電力または天然ガス)を実施する産業セクター(商業分野や公益事業等は

対象外)に対し、1社または 1事業あたり最大 1万ドルを助成する。

助成対象企業は、併せてエンジニアリング技術支援、エネルギー査定、ベスト・プラクティス

に関する訓練などを受けることができる366。

② ワシントン再生可能エネルギー生産インセンティブ(Washington Renewable Energy

Production Incentives)【再生可能】

系統接続型の再生可能エネルギー発電を行う個人、企業、非営利団体、地方政府、電力企業に

対し、発電量に応じた金銭的インセンティブを支給する。

対象となる発電装置は、太陽光、太陽熱、風力、嫌気性消化ガスを利用するもの。

助成額は、0.12 ~0.54 ドル/kWhで算出され、年間上限額は 5,000 ドルである。発電に伴う

RECs の所有権は、自家発電を行う顧客にある。ソーラー・モジュールやインバーターが州企業

製である場合などは助成額が上乗せされる。1プロジェクトあたりの年間の上限は 2,000ドル。

364 DSIRE(2009年 5月 18日更新) “Green Building and Energy Reduction Standards for State

Agencies”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=WA14R&re=1&ee=1

365 エネルギー省、”Green Power Network – Full Disclosure Requirements - Washington”:

http://apps3.eere.energy.gov/greenpower/markets/disclosure.shtml#ma

366 DSIRE(2009年 4月 1日更新) “WSU Extension Energy Program - Manufacturing Efficiency Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=WA130F&re=1&ee=1

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自家発電を行う顧客へのインセンティブの支払いは、州内の電力供給企業が行うが、支払った

分は税額控除が可能である。控除上限額は 10万ドル、あるいは、課税対象となる売電額の 1%

の内、いずれか低い方とされる367。

③ 低価格住宅のためのエバーグリーン持続可能な開発基準(Evergreen Sustainable

Development Standard for Affordable Housing)【省エネ・再生可能】

コミュニティ貿易経済局(CTED)が 2008 年 7月に創設した助成制度で、「ワシントン州住宅

信託基金(WA State Housing Trust Fund)」の資金を利用したもの。

持続可能な建物造り(場所の選定、節水、省エネ化と再生可能エネルギー技術の利用、環境に

優しい建設の実施や環境を考慮した建物素材の使用、屋内大気質の向上)を行う低所得者住宅に

対し、導入された内容を点数化し、得点数に応じた助成を行う368。

(2) 税制優遇措置

① 再生可能エネルギー消費税免除(Renewable Energy Sales and Use Tax Exemption)【再

生可能】

発電能力 1kW 以上の発電装置(太陽光、風力、バイオマス、潮力、波力、地熱、嫌気性消化ガ

ス、埋立地ガスを利用するもの)や燃料電池の購入・設置に関して、消費税を免除する措置369。

② ソーラー発電装置の製造業者に対する減税措置(Tax Abatement for Solar

Manufacturers)【再生可能】

州内の太陽光発電モジュールおよびそのシリコン資材の製造者および卸売取扱者の「ビジネス

職業税(business and occupation 〔B&O〕 tax)」を 43%削減する措置370。

367 DSIRE(2009年 5月 19日更新) “Washington Renewable Energy Production Incentives”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=WA27F&re=1&ee=1

368 DSIRE(2009年 5月 7日更新) “Evergreen Sustainable Development Standard for Affordable

Housing”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=WA127F&re=1&ee=1

369 DSIRE(2009年 5月 19日更新) “Renewable Energy Sales and Use Tax Exemption”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=WA04F&re=1&ee=1

370 DSIRE(2009年 5月 19日更新) “Tax Abatement for Solar Manufacturers”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=WA28F&re=1&ee=1

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2.15 メリーランド州(州別 GDP第 15位、州別人口第 19位)

○ エネルギー消費量は全米第 26位(1,488 兆 BTU。2007 年)であり、人口 1 人当たりでは 10

番目に尐ない(2.6億 BTU/人。2007年)。

○ 再生可能エネルギーの導入は全般的にあまり進んでいない。

○ 電力供給量の 4分の 1以上は原子力発電(原子力発電所は州内 1カ所)によるものである371。

○ エネルギー効率の向上や再生可能エネルギー利用の促進のためのプログラムは、メリーラン

ド・エネルギー機構(MEA:Maryland Energy Administration)によるグラントやリベート

制度が充実しているほか、再生可能エネルギー関係の税制優遇措置も多数存在する。

表 53 メリーランド州の再生可能エネルギー利用発電(2008年)

(単位:MW、能力ベース)

太陽光* 風力 地熱 バイオマス (水力) 水力を除く合計 人口当たりの

発電量**

2 0 0 155 (527) 158 28

*:太陽光発電は、オフグリッド(off-grid、独立型専用太陽電池モジュール)を除く。

**:人口当たりの発電量は水力を含まない。単位はワット/人。

出所:Renewable Energy Data Book, July 2009, US Department of Energy

2.15.1 メリーランド州のエネルギー計画

(1) メリーランド戦略的電力計画(Maryland Strategic Electricity Plan)

包括的な州のエネルギー計画は 1993年以降作成されていないが、早ければ 2011年にも夏場の

電力不足が危惧される現状に鑑み、メリーランド・エネルギー機構(MEA)が 2008 年 1月に戦略

的電力計画を発表している。この中では電力料金を提言しつつ、電力を安定供給し、かつ、地球

環境問題などへの対処を図るための提言として次を掲げている。

○ 地域温室効果ガス・イニシアチブ(RGGI:Regional Greenhouse Gas Initiative)

372における二酸化炭素排出権の売却利益を原資として戦略的エネルギー投資基金を

371 エネルギー省エネルギー情報局(EIA)”State Energy Profiles –Maryland”:

http://tonto.eia.doe.gov/state/state_energy_profiles.cfm?sid=MD Maryland Quick Facts

372 地域温室効果ガス・イニシアチブ(RGGI):北西部のコネチカット、デラウェア、メーン、メリーランド、

マサチューセッツ、ニューハンプシャー、ニュージャージー、ニューヨーク、ロードアイランド、バーモントの

10の州が参加するキャップ・アンド・トレード方式の二酸化炭素削減プログラム。25MW以上の能力を有する発

電所に対し、二酸化炭素の排出量を 2018年までに 2009年比で 10%削減することを義務付けている。2009年初

より運用が開始された。

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創設し、エネルギー効率の向上、再生可能エネルギー分野の発展、クリーン・エネ

ルギー産業の育成などに活用。

○ エネルギースター製品へのリベート、住宅エネルギー監査およびエアコン向け遮断

可能負荷装置(interruptible load devices)へのインセンティブなど、各種省エ

ネプログラムを実施することにより、電力消費量およびピーク時の電力需要量の削

減を電力企業に義務付け。

○ 再生可能ポートフォリオ基準の強化、ソーラーや地熱発電に関わるグラント制度の

強化、政府によるグリーン電力調達の奨励などを通じて、州の電力供給能力を増強。

○ 2年に一度は州の包括的エネルギー計画を作成。

○ 州政府機関の連携によるグリーン労働力開発作業部会を立ち上げ、州のクリーン・

エネルギーおよび再生可能エネルギー産業を飛躍させるクリーン・エネルギー・セ

ンター(MCEC)を創設するなどし、クリーン・エネルギー関連の新興産業の育成に

向けた動きを活性化373。

2.15.2 メリーランド州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度

(1) 再生可能ポートフォリオ基準

再生可能エネルギー利用システムを、第 1層(ソーラー、風力、バイオマス〔大鋸屑を除く〕、

埋立地または汚水処理施設における有機物質の嫌気性消化により発生するメタン、埋立地ガス、

地熱、波力、潮力を利用するもの、メタン/バイオマス利用の燃料電池、2004 年 1月 1日時点で

発電能力が 30MW 以下とされた小型水力発電プラントなど)、第 2 層(ポンプ貯蓄型以外の水力

発電、廃棄物発電)に分類し、電力供給企業に対し、それぞれの層について発電目標値を設定し

ている。なお第 1層のソーラー発電に関しては取り置き率が設けられている。目標値は毎年設定

されているが、以下では 2010年から 5年ごとの目標値を紹介する。

表 54 再生可能エネルギー利用システム目標値

年 ソーラー 第 1層 第 2層

2010 年 0.025% 3.0% 2.5%

2015 年 0.25% 10.25% 2.5%

2020 年 1.5% 16.5% 0%

2022年以降 2.0% 18.0% 0%

電力供給企業には、再生可能エネルギーの導入の進捗状況について、公益サービス委員会

(Maryland’s Public Service Commission)に対し毎年報告する義務があり、目標値を達成で

きなかった場合は、コンプライアンス料を「メリーランド州戦略的エネルギー投資基金(SEIF:

373 Maryland Energy Administration“Maryland Strategic Electricity Plan”:

http://www.energy.state.md.us/about/reports/documents/MEASTRATEGICELECTRICITYPLAN.pdf

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State Strategic Energy Investment Fund)」374に支払う必要がある。なお、メリーランド・エ

ネルギー機構(MEA)が管理する当該基金は、第 1層の再生可能エネルギーの普及に関わるグラ

ントや融資プログラムに活用される(ただし、ソーラー発電に関わるコンプライアンス料の使途

は、ソーラーエネルギー利用開発目的に限定される)375。

表 55 コンプライアンス料の内容

ソーラー 第 1層 第 2層

35 セント/kWh(2010年)

なお、2010年以降は、2年ご

とに 5 セントずつ引き下げ、

2023 年以降は 5 セント/kWh。

・2セント/kWh(2010 年)

なお、2011年以降は 4セント

/kWh。

・工業プロセスにおける電力

に関しては別に設定がされて

おり、2006~2008年の 0.8セ

ント/kWh から引き下げを行

い、2017 年には 0.2セント

/kWh とする。

・1.5セント/kWh

・工業プロセスにおける電力

に関する別設定はない。

(2) ネット・メータリング

メリーランド州のネット・メータリング制度は、地方自治体の電力供給企業や電力供給組合を

含む州内の全ての電力供給企業が対象となっている。

対象となる発電装置の発電能力は最大 2MWであり、全てのネット・メーターリング対象装置の

発電能力の集計は最大 1,500MW とされる。また、対象となる再生可能エネルギーは、太陽光、風

力、バイオマス、熱電併給(CHP)、嫌気性消化ガスである。

超過発電量(NEG)に関しては、12カ月を 1サイクルとして扱い、基本的に翌月の電気料金請

求書において、各企業により定められた小売価格で算出した金額を顧客に還元する。一方、12

カ月後未処理のまま残っている NEGについては、顧客への還元はせず、電力企業が吸収する376。

374 メリーランド州は 2006年に地域温室効果ガスイニシアチブ(RGGI: Regional Greenhouse Gas Initiative)

に加盟しており、SEIFは RGGIが実施する排出権取引市場からの収益金(毎年 8,000万~1億 4,000万ドル)で

運営され、電気料金への加算金や税金による収入に頼らないのが特徴的である。

出所:“Maryland Strategic Energy Investment Fund: Regional Greenhouse Gas Initiative”

http://www.energy.state.md.us/news/press/documents/MDStrategicEnergyInvestmentFund.pdf (p.1)

Bill’s Provisions参照。

375 DSIRE(2009年 5月 22日更新) “Renewable Energy Portfolio Standard”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD05R&re=1&ee=1

376 DSIRE(2009年 7月 1日更新) “Maryland - Net Metering”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD03R&re=1&ee=1

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(3) 州政府建物のエネルギー基準

2008 年 7月に発効した州法「メリーランド・ハイ・パフォーマンス建物法(Maryland High

Performance Buildings Act)」に基づく措置。

州政府の建物や州政府からの資金拠出による学校校舎の新築、または、大規模な改修(面積が

7,500 平方フィート以上に及ぶ改修、新規建設時に建物エンベロープ(building shell)の再利

用、冷暖房空調設備/電気/配管システムの取替え)に際して、LEED 基準のシルバー以上か、そ

の他定評のある認定基準を満たすことなどを義務付けている。

当該義務付けにより学校の新築の際に生じる追加費用に関しては、2010~2014 年の間は、地

方自治体の負担分の 50%を州政府が負担する。

この他、2006 年の州法(S.B. 267)により、州政府建物のエネルギー利用を 2010年までに

2005 年基準から 10%削減することが義務付けられた377。

(4) クリーン・エネルギー調達

2001 年の知事令に基づく措置。

州政府の所有する施設における電力消費量の 6%を、グリーンエネルギー資源(ソーラー、風

力、埋立地ガス、その他のバイオマス)を利用した発電から調達することを義務付けている。た

だし、この場合、地方自治体の固形廃棄物からの発電量の割合を 50%以下と定めている。

州政府の建物における電力消費量を 2010 年までに 15%削減することを義務付けたほか、電気

機器の購入に関して、エネルギースターの認定製品、あるいは、エネルギースター認定製品中に

希望する機器が無い場合は、エネルギー効率のランクが上位 25%とされる製品を購入すること

が義務付けられている378。

(5) 発電源情報開示

1997 年の電力供給企業規制に関する州法に基づく措置。

電力供給企業に対し、6カ月に 1度(4月と 10月)、発電源の内訳や排出に関する情報を利用

者に開示することをを義務付けている379。

377 DSIRE(2009年 5月 11日更新) “Energy Conservation in State Buildings”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD12R&re=1&ee=1

378 DSIRE(2009年 4月 20日更新) “Maryland - Clean Energy Procurement”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD07R&re=1&ee=1

379 エネルギー省、”Green Power Network – Full Disclosure Requirements - Maryland”:

http://apps3.eere.energy.gov/greenpower/markets/disclosure.shtml#md

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2.15.3 メリーランド州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム

(1) 助成プログラム等

① ソーラー・エネルギー・グラント・プログラム(Solar Energy Grant Program)【再生可

能】

メリーランド・エネルギー機構(MEA)が実施するプログラムで、住宅、企業、地方政府、非

営利団体による、太陽熱温水器や太陽光発電装置(発電能力が 20kW 以下のもので、系統接続の

有無は問わない)などの導入費用に対し、リベートが支払われる。

表 56 ソーラー・エネルギー・グラント・プログラムのリベート額

装置 リベート額

太陽熱温水器 2,000ドルか、設置費用の 30%の内、金額の低い方。

太陽熱発電

発電量 2 kW以下: 1.25 ドル/W(直流)

次の 6kW : 0.75 ドル/W(直流)

次の 12kW: 0.25 ドル/W(直流)

(上限額は 10万ドル)

装置には最小発電能力についての制限が、装置が設置されるセクターや装置の敷地面積や種類

により細かく定められている380。

② 中型ソーラーエネルギー助成プログラム(Mid-Size Solar Energy Grant Program)【再生

可能】

「米国再生・再投資法」による資金拠出を受けて、メリーランド・エネルギー機構(MEA)が

実施するプログラムで、企業および非営利団体による、太陽光発電装置およびソーラーホットシ

ステム(SHW: solar hot systems)等の導入費用に対し、リベートを支払う。

表 57 中型ソーラーエネルギー助成プログラム

装置 装置要件 リベート額

太陽熱発電 ・発電能力が 20~100kW のもので、系統連系さ

れており、UL 基準等所定の基準を全て満たさ

ねばならない。

・地面に設置されたシステム(発電能力 60kW

以上)は、NEPA(National Environmental

Policy Act)要件を満たさねばならない。

発電量 20kW以下:500 ドル/kW

(直流)

次の 30kW : 250 ドル/kW(直

流)

次の 50kW: 150 ドル/W(直流)

(上限 2万 5,000 ドル)

SHW ・システムは面積 100 平方フィートより大きく

なければならない。

・太陽集熱器(SHW collectors)には SRCC

設置された装置費用の 15%

(上限 2万 5,000 ドル)

380 DSIRE(2009年 10月 21日更新) “Solar Energy Grant Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD14F&re=1&ee=1

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OG-100 認定が付与されていなければならな

い。

システムおよび部品は全て新品でなければならない。

プログラム予算額は 2011年度まで 145万ドルである381。

③ 風力助成プログラム(Windswept Grant Program)【再生可能】

メリーランド・エネルギー機構(MEA)が実施する住宅用・非住宅用の風力発電システム(発

電能力は 1~100kW)の導入に対するリベート制度。

リベートは、最初の 5kWの発電量については 2,800ドル/kW、5kW を超過する分は 2,100 ドル

/kW で算出される。上限額は、2万ドルか、その他各種プログラムによる助成額を除いた設置費

用残額の 50%の内、金額の低い方とされる。

対象となるシステムはカリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)の対象小型タービン・リス

トまたはニューヨーク州エネルギー研究開発局(NYSERDA)が指定するものに限る382。

④ 地熱ヒート・ポンプ・グラント(Geothermal Heat Pump Grants)【再生可能】

メリーランド・エネルギー機構(MEA)がメリーランド州戦略的エネルギー投資基金(SEIF)

の資金を利用して実施するプログラムで、商業セクターや住宅が一定以上のエネルギー効率を有

する地熱ヒート・ポンプを導入する際、リベートを行う。

住宅用・非住宅用の地熱ヒート・ポンプ共に、冷却能力 1トン(1万 2,000 BTUsに相当)当

たり 500 ドルの助成が受けられる(上限額は、住宅用が 3,000ドル、非住宅用が 1万ドル)。

プールやホット・タブ等、熱貯蔵以外の優先機能を備えるものは対象外である383。

⑤ 農家対象の省エネリベート(Energy Conservation Rebates for Farms)【再生可能】

メリーランド州戦略的エネルギー投資基金(SEIF)の資金により実施されるプログラムで、州

内の農家による所定の省エネ装置の購入・設置に対し、リベートを行うものである。

当該制度の対象は、照明、冷暖房空調設備、モーター、農業機械、カスタマイズされた省エネ

化措置と様々である。

リベート額は、照明のアップグレードは 0.06 ドル/kWh、その他節電措置が 0.08 ドル/kWh、プ

ロパンの節減が 1.50ドル/ガロンで算出される。上限額は設置費用総額の 50%とされる。

381 DSIRE(2009年 11月 12日更新) “Mid-Size Solar Energy Grant Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD47F&re=1&ee=1

382 DSIRE(2009年 10月 21日更新) “Windswept Grant Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD22F&re=1&ee=1

383 DSIRE(2009年 10月 21日更新) “Geothermal Heat Pump Grants”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD21F&re=1&ee=1

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その他、エネルギー監査も提供しており、申請者が監査によって推奨された 1~2つの改善策

を採用した場合、費用の 300ドルは返却される384。

⑥ メリーランド農業・資源産業開発企業 地方ビジネス・エネルギー効率プログラム

(MARBIDCO Rural Business Energy Efficiency Program)【再生可能】

メリーランド農業・資源産業開発企業(MARBIDCO:Maryland Agricultural and Resource-

Based Industry Development Corporation)が実施するプログラムで、農業従事者および非都市

部の企業が省エネ化に向けて装置や技術を購入する際、グラントの支給、そして希望者に対して

オプションとして金利低減(interest rate buy-downs)を行う。

グラントの金額は、総費用の 10%とされ、5,000 ドルが上限となっている。

オプションの金利低減プログラムには、レンダー(金融機関)の同意が必要である。プライム

レート金利に 1%を加算したものより低い金利で提供される融資が対象となり、その結果、最終

的な金利をプライムレート比で 3%またはそれ以上低減させる。融資締結時に、融資貸出手数料

(loan origination fee)の 0.25%を MARBIDCO に支払う385。

(2) 融資プログラム

① ジェーン・E・ロートン管理融資プログラム(Jane E. Lawton Conservation Loan

Program)【省エネ・再生可能】

メリーランド・エネルギー機構(MEA)が実施するプログラムで、地方政府(公立学校やコミ

ュニティ大学を含む)や非営利団体(病院や私立学校を含む)が省エネ技術や再生可能エネルギ

ー利用装置を導入する際に、低利で融資を提供する。

当該年に必要な費用の 40%、または 60 万ドルが融資の上限。

2010 年度は、2010年 3月 1日まで融資案件 1件あたり 30万ドルを上限とし融資が行われるが、

それ以降は融資額の引き上げがケースバイケースで考慮される。利率は個別の相談によるが、必

ず市場より低利設定されることになっており、現在の平均利率は約 2%である。その他、融資期

間は最長 10年とされている。

プログラム予算は年間およそ 150万ドルであるが、MEAは毎年非営利団体向けに一定期間一部

取り置きすることが義務付けられており、2010年度は予算の 20%を 2010年 3月 1日まで取り置

くこととされている386。

384 DSIRE(2009年 11月 12日更新) “Energy Conservation Rebates for Farms”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD48F&re=1&ee=1

385 DSIRE(2009年 4月 8日更新) “MARBIDCO Rural Business Energy Efficiency Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD25F&re=1&ee=1

386 DSIRE(2009年 1月 5日更新) “Jane E. Lawton Conservation Loan Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD02F&re=1&ee=1

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② 州機関融資プログラム(State Agency Loan Program)【省エネ・再生可能】

メリーランド・エネルギー機構(MEA)が実施するプログラムで、州政府による、州政府施設

への費用対効果の高いエネルギー効率措置(再生可能エネルギーの導入を含む)を対象とした融

資を提供するものである。資金はエネルギー過剰請求返還基金(Energy Overcharge

Restitution Fund) から拠出されるが、2009年度にはメリーランド州が参加する RGGIによる

排出権取引の収益から 80 万ドルがプログラム資金として追加されている。融資を受けるものは、

1%の融資手数料を支払わねばならないが、無利子で融資を受けることが出来る。

当該プログラムを通じた融資総額は毎年 100万ドルに上る387。

③ エンパワーメリーランド商業・産業対象省エネ融資制度(EmPOWER Maryland Commercial

and Industrial Efficiency Loan Fund)【省エネ】388

メリーランド・エネルギー機構(MEA)が実施するプログラムで、メリーランド州内の商業・

産業関連施設に省エネ措置(冷蔵庫、断熱材、モーター、窓、照明のアップグレード等)を行う

際に融資を提供する。

融資対象となるには、単純投資回収期間(simple paybck period、減価償却費や税金等のコス

トを考慮せずに算出された投資回収期間)が 10年以下でなければならない。

融資額は 3万 5,000~75万ドルとされ、複数融資を組むことが可能だが、総額は 75万ドルを

超過してはならない。

固定金利は 2.5%、返済期間は最長 10年間とされる。

(3) 税制優遇措置

① 再生可能エネルギー利用装置消費税免除(Sales and Use Tax Exemption for Renewable

Energy Equipment)【再生可能】

住宅や非住宅施設で利用するための、太陽光発電装置、太陽熱発電装置、太陽熱温水器、太陽

熱暖房、地熱ヒート・ポンプの購入費用について、消費税課税を免除する措置。

太陽熱プール温水器やパッシブ・ソーラー装置は対象外389。

387 DSIRE(2009年 7月 8日更新) “State Agency Loan Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD08F&re=1&ee=1

388 DSIRE(2009年 12月 8日更新) “EmPOWER Maryland Commercial and Industrial Efficiency Loan Fund”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD49F&re=1&ee=1

389 DSIRE(2009年 5月 22日更新) “Sales and Use Tax Exemption for Renewable Energy Equipment”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD27F&re=1&ee=1

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② 暖房燃料用木材税免除(Wood Heating Fuel Exemption)【再生可能】

住宅や非住宅施設で利用するための家庭暖房用木材の購入費用について、消費税課税を免除す

る措置390。

③ ソーラー・風力発電システムのための資産税免除(Property Tax Exemption for Solar

and Wind Energy Systems)【再生可能】

住宅や企業が太陽光発電装置や太陽熱温水器を導入した場合、州政府による資産税課税を免除

する(地方自治体による資産税課税は免除されない)391。

④ バイオ暖房油税控除(Bio-Heating Oil Tax Credit)【再生可能】

個人または企業が、暖房または給湯のためにバイオディーゼル混入燃料油(バイオディーゼル

の最低混入率は 5%)を購入した場合、1ガロン当たり 0.03ドル(年間の上限額は 500ドル)を

所得税または法人税から控除する。

2012 年末まで継続される予定392。

⑤ クリーン・エネルギー生産税控除(Clean Energy Production Tax Credit)【再生可能】

個人、商業施設、集合住宅、企業(電力企業を含む)が、再生可能エネルギー(太陽光、太陽

熱、風力、地熱、水力、地方自治体の固形廃棄物、バイオマス〔嫌気性消化ガス、埋立地ガス、

廃水処理ガス、木材からのセルロース素材などを含む〕)を利用して発電した電力を、生産税か

ら控除する。

メリーランド・エネルギー機構(MEA)に申請し、認定を受けた個人または法人のみが、5年

間にわたって、州所得税または州法人税控除を受けることが出来る。控除額は 0.0085 ドル/kWh

(混焼〔co-firing〕による発電の場合 0.005ドル/kWh)で算出し、5年間の控除額上限は合計

250 万ドル393。

390 DSIRE(2009年 11月 16日更新) “Wood Heating Fuel Exemption”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD01F&re=1&ee=1

391 DSIRE(2009年 5月 22日更新) “Property Tax Exemption for Solar and Wind Energy Systems”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD20F&re=1&ee=1

392 DSIRE(2009年 12月 17日更新) “Bio-Heating Oil Tax Credit (Corporate)”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD31F&re=1&ee=1

DSIRE(2009年 12月 17日更新) “Bio-Heating Oil Tax Credit (Personal)”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD30F&re=1&ee=1

393 DSIRE(2009年 11月 6日更新) “Clean Energy Production Tax Credit (Corporate)”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD16F&re=1&ee=1

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⑥ グリーン・ビルディング所得税控除(個人・法人)(Income Tax Credit for Green

Buildings)【省エネ・再生可能】

米国グリーン・ビルディング協議会(U.S. Green Building Council)の建設または改築要件

を満たす非住宅建物および集合住宅(いずれの場合も面積 2万平方フィート以上が条件)を対象

とする所得税控除プログラムである。改築の場合は、建物規模の拡張率が 25%以下か、または、

建物が当該制度の優先地域に所在する場合のみについて当該制度の対象となる394。

表 58 グリーン・ビルディング所得税控除の対象と控除額

装置 控除額

建物一体型太陽光発電 累積費用の 20%

建物非一体型太陽光発電 累積費用の 25%

燃料電池 費用(設置費用も含む)の 30%

風力発電タービン 費用(設置費用も含む)の 25%

グリーン建物建設または改修 認可費用(120 ドル/平方フィート以下)の 6~8%

⑦ 再生可能エネルギー利用冷暖房の特別資産評価(Special Property Assessment for

Renewable Heating & Cooling System)【再生可能】

住宅、産業・商業施設が、太陽熱暖房、または地熱ヒート・ポンプ(2008 年の法改正で追

加)を導入した場合、資産税の評価に当たって、当該装置の価値を通常の冷暖房装置のものとみ

なす措置395。

DSIRE(2009年 11月 6日更新) “Clean Energy Production Tax Credit (Personal)”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD17F&re=1&ee=1

394 DSIRE(2009年 7月 9日更新) “Income Tax Credit for Green Buildings (Corporate)”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD09F&re=1&ee=1

DSIRE(2009年 7月 9日更新)“Income Tax Credit for Green Buildings (Personal)”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD10F&re=1&ee=1

395 DSIRE(2009年 5月 6日更新) “Special Property Assessment for Renewable Heating & Cooling

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MD12F&re=1&ee=1

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2.16 ミネソタ州(州別 GDP 第 16位、州別人口第 21 位)

○ エネルギー消費量は全米第 20位(1,875 兆 BTU。2007 年)で、人口 1人当たりでは全米平

均より若干多い(3.6 億 BTU/人。2007 年)。

○ 再生可能エネルギーの中では風力発電の導入が進んでいる(全米第 4位。だたし、テキサス

州の 25%程度に留まる)。

○ 電力供給量の 4分の 1以上は原子力発電(原子力発電所は州内 2カ所)によるものである396。

○ 州政府のエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進のための助成制度では、低利融

資制度が充実。また、民間による各種助成制度も充実している(DSIREによると、80を超え

るプログラムが存在)。

表 59 ミネソタ州の再生可能エネルギー利用発電(2008年)

(単位:MW、能力ベース)

太陽光* 風力 地熱 バイオマス (水力) 水力を除く合計 人口当たりの

発電量**

1 1,754④ 0 445 (186) 2,200③ 421⑤

*:太陽光発電は、オフグリッド(off-grid、独立型専用太陽電池モジュール)を除く。

**:人口当たりの発電量は水力を含まない。単位はワット/人。

また、○数字は、全 50州の中の順位(第 5位までを表示)

出所:Renewable Energy Data Book, July 2009, US Department of Energy

2.16.1 ミネソタ州のエネルギー計画

現在のところ、州全域を対象とした包括的なエネルギー計画は存在しない。

2.16.2 ミネソタ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度

(1) 再生可能ポートフォリオ基準(RPS)

電力供給企業を、エクセル・エナジー社(Xcel Energy)397とその他(民間に加え、自治体の

公営企業を含む)に分け、それぞれ RPS を設定し、小売り電力に占める再生可能エネルギー由来

の電力の割合を高めることを求めている。

396 エネルギー省エネルギー情報局(EIA)”State Energy Profiles –Minnesota”:

http://tonto.eia.doe.gov/state/state_energy_profiles.cfm?sid=MN Minnesota Quick Facts

397ミネソタ、コロラド、ミシガン、ニューメキシコ、ノースダコタ、サウスダコタ、テキサスおよびウィスコン

シン州の 330万世帯に電力および天然ガスを供給する民間公益企業。16の石炭火力発電所、28の天然ガス火力

発電所、26の水力発電所、2つの原子力発電所を保有している。

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エクセル・エナジー社 その他の電力供給企業

2010年末 15%

2012年末 18%

2016年末 25%

2020年末 30%

また、2020年末の目標値 30%のうち、

尐なくとも 25%は風力発電由来とする

2012 年末 12%

2016 年末 17%

2020 年末 20%

2025 年末 25%

対象となる再生可能エネルギーは、太陽光、太陽熱、風力、バイオマス、水力、自治体の固形

廃棄物、埋立地ガス、嫌気性消化ガスなどである398。

(2) ネット・メータリング

全ての民間および地方自治体の電力供給企業、電力供給組合に、40kW以下の発電に対するネ

ット・メータリングを求めている。

総量としての上限は設定していない。

対象となる発電源は、太陽光、風力、バイオマス、水力、埋立地ガス、自治体の固形廃棄物、

嫌気性消化ガス、熱電力複合発電などである399。

(3) 州政府建物のエネルギー削減計画

エネルギースターへの取り組みを誓った 2005年の知事令(Executive Order 05-16)に基づき、

全ての州政府関係の建物に対し、冷暖房の温度設定の調整や代替燃料の購入などを通じたエネル

ギー効率の向上を求めている400。

(4) 発電源情報開示

2002 年のミネソタ公益事業委員会(PUC)の規則に基づく措置。

電力供給事業者に対し、年に 2回の発電源および排出ガスに関する情報の利用者への開示を義

務付けている401。

398 DSIRE(2009年 6月 19日更新) “Renewables Portfolio Standard”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MN14R&re=1&ee=1

399 DSIRE(2009年 9月 23日更新) “Minnesota - Net Metering”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MN01R&re=1&ee=1

400 DSIRE(2009年 6月 5日更新) “Energy Reduction Plan for State Buildings”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MN12R&re=1&ee=1

401 エネルギー省、”Green Power Network – Full Disclosure Requirements - Minnesota”:

http://apps3.eere.energy.gov/greenpower/markets/disclosure.shtml#mn

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2.16.3 ミネソタ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム

(1) 助成プログラム

① 再生可能エネルギー装置グラント(Renewable Energy Equipment Grant)【再生可能】

低所得者を対象とした住宅が太陽熱暖房、あるいは、バイオ燃料暖房システムを導入する際に、

最大 4,700ドルを支給するグラント制度。

バイオ燃料利用装置は連邦環境保護庁(EPA:Environmental Protection Agency)によるフェ

ーズ 2 排出ガス基準(Phase II emission standards)に適合せねばならない402。

② ソーラー発電レガシー助成(Solar Energy Legacy Grants)【再生可能】

ミネソタ天然資源局(Minnesota Department of Natural Resources)が運用する制度で、公

園内や地域・州規模の主要山道上において、地方政府によるソーラー発電装置(太陽光発電、太

陽熱温水器等)の設置を助成するものである。

助成上限額は事業総費用(装置の購入と設置)の 75%とされており、1万~15 万ドルの範囲で

支給される。また、事業総費用の最低 25%は州政府による支援以外から現金で調達することとさ

れているが、これに関しては事業総費用の最低 25%を省エネ化措置に充当することでの対応が認

められている。

プログラム予算は 2010年度が 48万 7,500 ドル、2011 年度が 58 万 5,000 ドルである403。

③ 住宅用太陽光発電(PV)リベート・プログラム(Residential Solar-Electric 〔PV〕

Rebate Program)【再生可能】

ミネソタ商務局(Minnesota Department of Commerce)内のエネルギー安全保障事務所

(OES:Office of Energy Security)が、「米国再生・再投資法」による資金を用いて実施する

プログラムで、州内の実住・実需物件に住む居住者による、太陽光発電システム導入に対するリ

ベート制度。

リベート額は 7,500~1万ドル。

装置に関しては、発電能力は 0.5kW以上でなければならず、新品で、UL基準を満たし、イン

バーターおよび集光パネルの保証期間がそれぞれ 5年と 20年付与されていることが条件である404。

402 DSIRE(2009年 2月 10日更新)“Renewable Energy Equipment Grant”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MN115F&re=1&ee=1

403 DSIRE(2009年 12月 21日更新)“Solar Energy Legacy Grants”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MN135F&re=1&ee=1; ミネソタ天然資源局、

“Solar Energy Legacy Grants”: http://www.dnr.state.mn.us/grants/recreation/se_legacy.html

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④ 住宅用ソーラー温水リベート・プログラム(Residential Solar Hot Water Rebate

Program)【再生可能】

ミネソタ商務局エネルギー安全保障事務所(OES)が実施する、住宅または集合住宅への太陽

熱温水器(新品に限定され、既存システムの修理は対象外)の導入に対するリベート制度。

助成額は次のとおり405。

1 世帯住宅 システム費用の 25%または 2,000 ドルのうち低い金額

2~3世帯の集合住宅 システム費用の 25%または 4,000 ドルのうち低い金額

4 世帯以上の集合住宅 システム費用の 25%または 1 万ドルのうち低い金額

⑤ ミネソタ 再生可能エネルギー生産インセンティブ(Minnesota - Renewable Energy

Production Incentive)【再生可能】

商業セクター、住居、非営利団体等による水力、嫌気性消化ガス、並びに風力(ただし、風力

発電装置の発電能力の上限は 2MW)を利用した発電に対し、インセンティブ(金額は 1.0~1.5

セント/1kWhで算出)を支払う制度406。

(2) 融資プログラム

① 住宅エネルギー融資プログラム(Home Energy Loan Program)【省エネ】

ミネソタ住宅財政局(Minnesota Housing Finance Agency)の融資プログラムで、エネルギー

環境財政資源センター(Center for Energy and Environment Financial Resources)が運営し

ている。

1989 年 5月 1 日以前に建築された住宅に、エネルギー効率の良い製品(温水器、ボイラー、

エアコン、炉、建物の断熱材、窓、ドアなど)を導入する場合が対象。

1~4世帯用の住宅が対象となるが、商用スペースが建物全体の 49%以下を占めている場合も

対象となる。

年利 6.25%で最大 1万ドル、5年間の融資が可能407。

404 DSIRE(2010年 2月 8日更新)“Residential Solar-Electric (PV) Rebate Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MN09F&re=1&ee=1

405 DSIRE(2010年 2月 17日更新) “Residential Solar Hot Water Rebate Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MN114F&re=1&ee=1

406 DSIRE(2009年 6月 29日更新) “Minnesota - Renewable Energy Production Incentive”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MN06F&re=1&ee=1

407 DSIRE(2009年 7月 10日更新) “Home Energy Loan Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MN14F&re=1&ee=1

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② ミネソタ住宅財政局-賃貸住宅修繕融資プログラム(MHFA Rental Rehabilitation Loan

Program)【省エネ】

ミネソタ住宅財政局(Minnesota Housing Finance Agency)が実施する低利融資制度で、低・

中所得者向けの賃貸住宅による、建物全体のエネルギー効率を向上させるための修繕が対象。

年利 6%で最長 15年間の融資が可能。

融資上限額は 1~2世帯用住宅は 2万 5,000 ドル、3世帯以上の集合住宅の場合は、1世帯あ

たり 1 万ドル、または、建物 1棟あたり 10万ドルのいずれか低い金額とされる。さらに、融資

額が 5,000ドルを超える場合には担保が必要となる。

建物内に商用スペースがある場合、居住スペースが総フロア面積の 50%以上であれば、当該制

度の対象となる408。

③ 賃貸住宅エネルギー融資基金(Rental Energy Loan Fund)【省エネ】

ミネソタ商務局からの財政的支援を受け、エネルギー・環境センター(Center for Energy

and Environment)が実施する低利融資制度。

1989 年 5月 1 日以前に建築され、かつ、賃貸物件が尐なくとも 1部屋ある建物の、省エネ化

を図る改修か、または、省エネ装置(温水器、照明、断熱材、窓、ドア、暖房機)の導入を対象

とした融資が行われる。

年利 4%で最長 5年間融資可能。融資額は借用人 1人あたり 1万ドルが上限409。

④ 地区エネルギー団体-ミネソタ・エネルギー融資プログラム(NEC Minnesota Energy Loan

Program)【省エネ・再生可能】

地区エネルギー団体(NEC: Neighborhood Energy Connection)が実施する当該プログラムで、

住宅(1~4世帯向け)が所定の省エネ装置(温水器、炉、エアコン、断熱材、天井翼、照明、

窓など)や再生可能エネルギー利用装置(太陽光発電、太陽熱温水器、地熱発電)を導入する場

合、有担保低利融資を提供する制度である。

1 世帯あたりの年収が 9万 1,300 ドル未満の家庭が対象となる。

融資希望者は、まず地区エネルギー団体に連絡し、エネルギー監査を受け、監査の結果、推奨

された改善案のうち最低 1つを実行しなければならない。

年利 6.25%(固定)で最長 20 年間融資可能。融資上限額は 3万 5,000ドルである410。

408 DSIRE(2009年 7月 10日更新) “MHFA Rental Rehabilitation Loan Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MN76F&re=1&ee=1

409 DSIRE(2009年 7月 10日更新) “Rental Energy Loan Fund”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MN15F&re=1&ee=1

410 DSIRE(2009年 4月 10日更新) “NEC Minnesota Energy Loan Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MN113F&re=1&ee=1

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⑤ 農業発展融資プログラム(Agricultural Improvement Loan Program)【再生可能】

ミネソタ農業局(Minnesota Department of Agriculture)がミネソタ地方財政機関(RFA:

Rural Finance Authority)を通じて実施する低利融資制度で、農家(総資産が 40万 9,000 ドル

以下)による恒久農業施設への風力、バイオマス、嫌気性消化ガスを利用した発電装置の設置が

対象となる。

RFA は州の 400 を超える民間金融機関と提携して融資を行うが、RFAの融資上限は融資元本の

45%、または 30 万ドルのうち、低い金額の方とされる。

2009 年 9月現在の RFA による金利は 4.5%のである。民間金融機関からの融資部分に関する金

利等については、借用人と金融機関による交渉で決定される。

融資期間は最長 10年411。

⑥ 持続可能な農業融資プログラム(Sustainable Agriculture Loan Program)【省エネ・再

生可能】

農場の環境面および経済面の持続可能性(viability)を強化する資本支出(capital

expenditures)を対象とした融資制度であり、環境並びに収益の両面で改善が見られる様々な省

エネ化および再生可能エネルギー事業を対象とする。これまで支援されてきたものは、風力ター

ビン、ソーラー型穀物乾燥機(solar grain dryers)、給水ポンプ、農家設置施設による小型燃

料生産(small on-farm fuel production)、バイオマス燃焼炉等だが、多くは土壌保全目的の

ものとなっている。

融資上限額は、農家 1世帯あたり 4万ドルだが、共同事業であれば 1事業あたり 16万ドル(1

世帯あたりの上限額は変わらず)までとなっている。

固定金利 3%(将来的に変更される可能性もあるが、上昇したとしても 6%を超えない)、返済

期間は最長 7年間である412。

⑦ 付加価値株融資参加プログラム(Value-Added Stock Loan Participation Program)【再

生可能】

ミネソタ地方財政機関(RFA)が、州の 400を超える民間金融機関と提携して融資を行う制度

で、農家(総資産が 40万 9,000 ドル以下)が協同組合(cooperative)、有限企業(limited

liability company)、有限責任事業組合(limited liability partnership)の保有株を購入す

る際に融資を行う制度である。

411 DSIRE(2009年 9月 10日更新) “Agricultural Improvement Loan Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MN05F&re=1&ee=1

412 DSIRE(2009年 6月 2日更新) “Sustainable Agriculture Loan Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MN124F&re=1&ee=1

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RFA は、融資元本の 45%までを支給し、金利(固定)については 4.0%、または金融機関による

金利の半分のうち、低い率の方が採用される。金融機関による融資部分に関する金利(変動性ま

たは固定性)は、借用者が金融機関と個別に交渉して決定する。

融資額は、株購入費用の 95%以下に制限されている413。

⑧ メタン消化融資プログラム(Methane Digester Loan Program)【再生可能】

ミネソタ農業局(Minnesota Department of Agriculture)による無利子融資制度であり、畜

産業者(livestock producers)による農牧場への嫌気性消化装置の設置が対象である。

融資方法には、ミネソタ地方財政機関(RFA)が直接融資を行う場合と、州の 400 を超える民

間金融機関と提携して融資を行う場合とがあり、後者の場合の RFA による融資上限は融資元本の

45%とされる。いずれの場合においても、RFAによる融資上限額は 25万ドルである。

無利子であり、返済期間は最長 10年間である414。

(3) 税制優遇措置

① 風力・太陽光発電システム控除(Wind and Solar-Electric 〔PV〕 System Exemption)

【再生可能】

風力発電、太陽光発電装置の設置によって増加した価値に対する、資産税の免除制度415。

② ソーラー・エネルギー消費税免除(Solar Energy Sales Tax Exemption)【再生可能】

太陽光発電、太陽熱暖房、太陽熱温水器の購入に対する消費税の免除制度416。

③ 風力消費税免除(Wind Energy Sales Tax Exemption)【再生可能】

風力発電装置と、その取り付け・修繕・取替え等に必要な材料の購入費用に対する消費税の免

除制度417。

413 DSIRE(2009年 9月 10日更新)“Value-Added Stock Loan Participation Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MN04F&re=1&ee=1

414 DSIRE(2009年 12月 3日更新)“Methane Digester Loan Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MN111F&re=1&ee=1

415 DSIRE(2009年 7月 2日更新)“Wind and Solar-Electric (PV) Systems Exemption”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MN01F&re=1&ee=1

416 DSIRE(2009年 7月 2日更新)“Solar Energy Sales Tax Exemption”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MN16F&re=1&ee=1

417 DSIRE(2009年 10月 28日更新)“Wind Energy Sales Tax Exemption”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=MN10F&re=1&ee=1

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2.17 アリゾナ州(州別 GDP 第 17位、州別人口第 14 位)

○ エネルギー消費量は全米第 24位(1,578 兆 BTU。2007年)であり、人口 1 人当たりでは尐

ない方から 6番目(2.5 億 BTU/人。2007 年)。

○ 再生可能エネルギー導入については、太陽光発電が若干進んでいる(全米第 5位。ただし第

1位のカリフォルニア州に比べると約 5%程度に留まる)が、水力(全米第 6位。ただし第 1

位のワシントン州に比べると約 13%程度に留まる)を除いて、その他の分野ではほとんど進

んでいない。水力を除く再生可能エネルギー導入量は全米第 9位であるが、第 1位のワシン

トン州に比べると約 12%、第 5位のニューヨーク州に比べると約 47%程度に留まっている。

○ アリゾナ州の電力供給量の約 5分の 2は石炭火力発電によるものであり、残りを天然ガスお

よび原子力発電により供給している418。

○ 州政府のエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラムに関しては、グラン

トやリベートなどの助成プログラムや融資プログラムは設定されておらず、税制優遇措置の

みとなっており、他州に比べ後進が目立つ。

表 60 アリゾナ州の再生可能エネルギー利用発電(2008年)

(単位:MW、能力ベース)

太陽光* 風力 地熱 バイオマス (水力) 水力を除く合計** 人口当たりの

発電量***

25⑤ 0 0 40 (2,718) 66 10

*:太陽光発電は、オフグリッド(off-grid、独立型専用太陽電池モジュール)を除く。

**:水力を除く合計には、太陽熱発電 1MWを含む。

***:人口当たりの発電量は水力を含まない。単位はワット/人。

また、○数字は、全 50州の中の順位(5位までを表示)

出所:Renewable Energy Data Book, July 2009, US Department of Energy

2.17.1 アリゾナ州のエネルギー計画

現在のところ、州全域を対象とした包括的なエネルギー計画は存在しない。

2.17.2 アリゾナ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度

(1) 再生可能ポートフォリオ基準(RPS)

小売り先の顧客がアリゾナ州内に在住する電力供給企業が対象だが、例外として、顧客の半数

以上が州外に在住する電力供給企業も対象となる。

418 エネルギー省エネルギー情報局(EIA)”State Energy Profiles – Arizona”:

http://tonto.eia.doe.gov/state/state_energy_profiles.cfm?sid=AZ Coal, Electricity, and Renewables

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対象となる電力供給企業は、所定の再生可能エネルギー源(太陽光、太陽熱、風力、バイオマ

ス、地熱、埋立地ガス、嫌気性消化ガス等)からの小売電力需要量を 2025 年までに 15%まで引

き上げ、それ以降はその水準を維持しなければならない。このため、電力供給企業はこの基準に

適合するだけの再生可能エネルギークレジット(RECs)を取得する必要がある。

RPS の目標値は、次のスケジュールで以下のとおり設定されている([ ]内の数値は、目標値

中の分散型発電源〔distributed renewable resources〕の割合を示す)。目標値は毎年定めら

れているが、以下では 5年ごとの値を紹介する419。

2010 年

2015 年

2020 年

2025 年

2.5% [20%]

5.0% [30%]

10.0% [30%]

15.0% [30%]

(2) ネット・メータリング

全ての投資者所有による電力供給企業および電力供給組合を対象としており、太陽光、太陽熱、

風力、バイオマス、地熱、埋立地ガス、自治体の固形廃棄物、小型水力、嫌気性消化ガスを利用

した発電、並びに熱電併給発電(CHP)、再生可能燃料利用の燃料電池が対象となる。

装置に関する発電能力については明確に上限設定されているわけではないが、顧客の全接続負

荷(total connected load)の 125%を超過しないものとされている。

超過発電量(NEG)は基本的に翌月の請求料金へのクレジット(電力企業による 1kWhあたりの

電力小売料金で算出)付与という形で顧客に払い戻される。年末の最終請求書上の NEG残金は顧

客に返金される420。

(3) 州政府のグリーン建物基準

2005 年以降に州政府の出資により建築された全ての建物は、使用電力の 10%を再生可能エネ

ルギー(ソーラー、風力、バイオマス等)から調達し、かつ、LEED 基準のシルバー以上を満た

すように設計・建設されなければならない421。

419 DSIRE(2009年 7月 16日更新) “Renewable Energy Standard”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=AZ03R&re=1&ee=1

420 DSIRE(2009年 5月 1日更新) “Arizona - Net Metering”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=AZ24R&re=1&ee=1

421 DSIRE(2009年 11月 24日更新) “Renewable Energy and Green Building Standards in New State

Buildings”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=AZ16R&re=1&ee=1

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2.17.3 アリゾナ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム

(1) 税制優遇措置

① ソーラー・風力利用装置消費税免除(Solar and Wind Equipment Sales Tax Exemption)

【再生可能】

アリゾナ州収入局(Arizona Department of Revenue)に登録済みの小売業者からソーラー・

エネルギー装置(太陽光発電装置、太陽熱発電装置、パッシブ・ソーラー暖房装置、太陽熱暖房

機、太陽熱温水器)や風力エネルギー装置(風力発電装置のほか、風力利用給水ポンプ〔wind-

powered water pumps〕)を購入する場合、および登録済みの設置業者にそれら装置の設置を依

頼する場合の消費税の免除制度422。

② 再生可能エネルギー事業税インセンティブ(Renewable Energy Business Tax

Incentives)【再生可能】

2009 年 7月に制定された州法(SB 1403)による制度で、再生可能エネルギー利用製品の製造

業者による州内での製造施設や企業本部の設立・拡張に対し、所得税および資産税の控除を行う。

所得税控除の対象となるには、新規フルタイム従業員の 51%の給与水準が州平均の 125%以上で

あり、かつ、全フルタイム従業員の健康保険料金の 80%以上を事業主が負担していることが条件

である。

所得税控除額は、納税者の設備投資総額の 10%以下であり、製造施設の場合は設備投資 50 万

ドルあたり最低 1.5名、企業本部の場合は設備投資 20 万ドルあたり最低 1名のフルタイム従業

員を生み出すことが必要である。

資産税控除の対象となるには、2,500 万ドルの設備投資(施設、機器、土地、インフラ)が必

要である。アリゾナ州商務局(Arizona Department of Commerce)によって承認された場合、フ

ルタイム従業員の 51%の給与水準が州平均の 125~199%以上ならば 10年間、同 200%以上ならば

15 年間、その資産は「クラス 6資産(class 6 property423)」として扱われる424。

③ エネルギー装置資産税免除(Energy Equipment Property Tax Exemption)【省エネ・再生

可能】

422 DSIRE(2009年 6月 11日更新) “Solar and Wind Equipment Sales Tax Exemption”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=AZ08F&re=1&ee=1

423 クラス 6資産の査定率(assessment ratio)は 5%とされているため、例えば 10万ドルの資産価値を 5,000ド

ルとして扱い、課税対象額が実際の資産価値に比べ大幅に下がる。

424 DSIRE(2009年 8月 4日更新) “Renewable Energy Business Tax Incentives”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=AZ41F&re=1&ee=1

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2006 年の制度開始時は、ソーラー発電装置だけを対象としていたが、2009 年 7月に制定され

た州法(HB 2332)により、対象がその他再生可能エネルギー(風力、森林の間伐〔forest

thinnings〕、農業廃棄物、バイオガス、バイオマス、地熱、低衝撃水力)利用技術、熱電併給

発電(CHP)、省エネ建材(energy efficient building components)425にも拡大された。

対象装置や建材の導入で増加した資産価値を、資産税から免除する426。

④ 薪ストーブ控除(Qualifying Wood Stove Deduction)【再生可能】

既存の住宅用薪ストーブから所定基準を満たすタイプのものに取り換える費用を、最大 500ド

ルまで個人所得税控除(personal deduction)の対象とする427

⑤ 住宅用ソーラーおよび風力エネルギー・システム税控除(Residential Solar & Wind

Energy System Tax Credit)【再生可能】

個人が住宅用にソーラー・システム(太陽光発電、太陽熱発電、パッシブ・ソーラー暖房装置、

太陽熱温水器、太陽熱暖房など)や風力発電装置(風力発電装置および風力利用ポンプ)を導入

する際、費用の 25%を所得税から控除する。

控除上限額は導入装置の数に関わらず最大 1,000 ドルとされる。また、5年間にわたり繰り延

べが可能である428。

⑥ 非住宅用ソーラー・風力税控除(Non-residential Solar & Wind Tax Credit)【再生可

能】

企業(商業・産業)、非営利団体、学校、政府機関(連邦、州、地方、先住民)、農家による、

ソーラー発電装置(太陽光発電、太陽熱発電、パッシブ・ソーラー暖房、太陽熱温水器、太陽熱

暖房など)や風力発電装置の導入費用の 10%を、法人税または所得税から控除する制度。

1 年間の控除上限額は、建物 1棟あたり 2万 5,000ドル、複数棟に対する控除が適用される場

合は全部で 5万ドルが上限とされる。また、5年間にわたり繰り延べが可能である429。

425建物や建材がエネルギースター基準、または、LEED基準等に適合する高性能建材を指す。

426 DSIRE(2009年 8月 5日更新) “Energy Equipment Property Tax Exemption”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=AZ20F&re=1&ee=1

427 DSIRE(2009年 6月 9日更新) “Qualifying Wood Stove Deduction”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=AZ10F&re=1&ee=1

428 DSIRE(2009年 5月 12日更新)“Residential Solar and Wind Energy Systems Tax Credit”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=AZ01F&re=1&ee=1

429 DSIRE(2009年 5月 12日更新)“Non-Residential Solar and Wind Energy Systems Tax

Credit(Corporate)”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=AZ18F&re=1&ee=1

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⑦ エネルギー効率住宅を対象とした所得税減算(Income Tax Subtraction for Energy

Efficient residences)【省エネ】

一定の省エネ基準を満たす 1世帯住宅、コンドミニアム(condominiums)、タウンハウス

(town houses)を売却した納税者を対象とする制度で、不動産手数料(commissions)、諸税、

金利等を除いた販売価格の 5%、最大 5,000ドルを課税所得から減算する430。

⑧ 再生可能エネルギー利用地の資産税評価(Property Tax Assessment for Renewable

Energy Property)【再生可能】

州内で操業する電力企業所有の再生可能エネルギー(太陽熱、太陽光、風力、バイオマス、水

力等)利用装置の資産税について、資産価値を減価償却後の価額(depreciated cost)の 20%と

して査定する制度である431。

430 DSIRE(2009年 8月 6日更新)“Income Tax Subtraction for Energy-Efficient Residences”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=AZ17F&re=1&ee=1

431 DSIRE(2009年 7月 7日更新)“Property Tax Assessment for Renewable Energy Property”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=AZ30F&re=1&ee=1

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2.18 テネシー州(州別 GDP 第 18位、州別人口第 17 位)

○ エネルギー消費量は全米で 15 番目に多く(2,331 兆 BTU。2007 年)、人口 1 人当たりでは、

消費量の多い方から 18番目(3.8億 BTU/人。2007年)。

○ 再生可能ポートフォリオ基準や州全域にわたるネット・メータリング制度は導入していない。

○ 再生可能エネルギー導入は風力と水力で多尐見られるが、全般的にほとんど進んでいない。

○ テネシー州の発電量の 9 割はテネシー川流域開発公社(TVA)による432。

○ 発電量の半分以上は石炭火力発電によるもので、残りは原子力発電並びに水力発電で供給し

ている433。

○ エネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラムは、州政府、(民間)公益企

業のいずれにおいても数が限られている。

表 61 テネシー州の再生可能エネルギー利用発電(2008年)

(単位:MW、能力ベース)

太陽光* 風力 地熱 バイオマス (水力) 水力を除く合計 人口当たりの

発電量**

0 29 0 176 (2,418) 205 33

*:太陽光発電は、オフグリッド(off-grid、独立型専用太陽電池モジュール)を除く。

**:人口当たりの発電量は水力を含まない。単位はワット/人。

出所:Renewable Energy Data Book, July 2009, US Department of Energy

2.18.1 テネシー州のエネルギー計画

2008 年 3月の知事令によって設置された「エネルギー政策に関する作業部会(Governor's

Task Force On Energy Policy)」においてエネルギー計画が策定中となっている。

2.18.2 テネシー州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度

(1) 州政府のエネルギー基準

2008 年 12月の知事令に基づく措置。

州政府が事務用品、電気機器、照明、冷暖房機器などを購入する際に、可能な限りエネルギー

スターの認定製品の購入を求めている434。

432 エネルギー省エネルギー情報局(EIA)”State Energy Profiles – Tennessee”:

http://tonto.eia.doe.gov/state/state_energy_profiles.cfm?sid=TN Tennessee Quick Facts

433 同上 Coal, Electricity, and Renewables

434 DSIRE(2009年 7月 7日更新) “Energy Star Procurement Requirement for Agencies”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=TN04R&re=1&ee=1

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2.18.3 テネシー州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム

(1) 助成プログラム

① テネシー州クリーン・エネルギー技術グラント(Tennessee Clean Energy Technology

Grant)【再生可能】

テネシー州経済・コミュニティ開発局(State of Tennessee Economic and Community

Development Energy Division)が実施する助成制度で、商用施設または産業施設への太陽光発

電装置、太陽熱温水器、風力発電、水素利用燃料電池などの設置費用の 40%(最大助成額は 7

万 5,000 ドル)を助成する435。

② 学校省エネ化イニシアチブ(助成)(Energy Efficient Schools Initiative - Grants)

【省エネ】

学校による照明や冷暖房空調設備のアップグレード、エネルギー管理者の雇用等にかかる費用

を、生徒一人あたり 22ドルを上限とし、助成する436。

当該制度の融資部分については、本論「2.18.3(2)②学校省エネ化イニシアチブ(融資)」

参照。

③ TVA パートナー電力企業のためのエネルギーライト新築住宅プログラム(TVA Partner

Utilities - Energy Right New Homes Program)【省エネ】

本論「2.9.3(1)④TVA パートナー電力企業のためのエネルギーライト新築住宅プログラム」

参照437。

④ TVA パートナー電力企業のためのエネルギーライト温水器リベートプログラム(TVA

Partner Utilities - Energy Right Water Heater Rebate Program)【省エネ】

本論「2.9.3(1)⑤TVA パートナー電力企業のためのエネルギーライト温水器リベートプログ

ラム」参照438。

435 DSIRE(2010年 2月 12日更新) “Tennessee Clean Energy Technology Grant”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=TN50F&re=1&ee=1

436 DSIRE(2010年 12月 8日更新) “Energy Efficient Schools Initiative - Grants”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=TN56F&re=1&ee=1

437 DSIRE(2009年 7月 17日更新) “All TVA Partner Utilities - Energy Right New Homes Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=TN54F&re=1&ee=1

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⑤ TVA グリーン・パワー・転換発電パートナー・プログラム(TVA-Green Power Switch

Generation Partners Program)【再生可能】

本論「2.9.3(1)③TVA グリーン・パワー転換発電パートナー・プログラム」参照439。

(2) 融資プログラム

① 地方政府エネルギー融資プログラム(Local Government Energy Loan Program)【省エ

ネ】

市または郡が所有する裁判所、行政ビル、学校などにエネルギー効率の高い装置(エアコン、

照明、冷却装置、炉、ボイラー、ヒート・ポンプ)を導入する際、低利融資を行う制度。

年利約 3%(ただし、三ツ星コミュニティ〔Three-Star communities〕440に所在する企業に対

しては金利ゼロ)で最大 50万ドルまで融資する。返済期間は最長 7年間である441。

② 学校省エネ化イニシアチブ(融資)(Energy Efficient Schools Initiative - Loans)

【省エネ】

学校による照明や冷暖房空調設備のアップグレード、エネルギー管理人の雇用等にかかる費用

について、生徒一人あたり 66ドルを上限とし、融資する442。

438 DSIRE(2009年 7月 17日更新) “All TVA Partner Utilities - Energy Right Water Heater Rebate

Program”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=TN53F&re=1&ee=1

439 DSIRE(2009年 11月 6日更新) “TVA - Generation Partners Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=TN02F&re=1&ee=1

テネシー川流域開発公社(TVA)“Green Power Switch Generation Partners”:

http://www.tva.com/greenpowerswitch/partners/

440 コミュニティの経済発展に必要な戦略的行動計画を作成し、それに基づき様々な活動を行うプログラムであ

る。テネシー州ウェブサイトより。

http://www.state.tn.us/ecd/pdfs/Is%20Your%20Community%20Ready%20for%20Three%20Star.pdf; Tenessee

Departmet of Economic and Community Development, “Tennessee Three-Star Program.”

http://www.state.tn.us/ecd/CD_three_star.html

441 DSIRE(2009年 7月 9日更新) “Local Government Energy Loan Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=TN05F&re=1&ee=1

442 DSIRE(2010年 12月 8日更新) “Energy Efficient Schools Initiative - Loans”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=TN57F&re=1&ee=1

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③ TVA パートナー電力企業のためのエネルギーライト熱ポンプ融資プログラム(TVA Partner

Utilities - Energy Right Heat Pump Loan Program)【省エネ】

本論「2.9.3(2)①TVAパートナー電力企業のためのエネルギーライト融資(ヒート・ポン

プ)プログラム」参照443。

④ 中小企業エネルギー融資プログラム(Small Business Energy Loan Program)【省エネ・

再生可能】

当該プログラムは、従業員数 300名以下、あるいは、年間総売上高 350 万ドル以下の中小企業

を対象とし、断熱材、二重窓、省エネ冷暖房、省エネ照明の導入のために融資を行う。

返済期間は最長 7年間で、通常は金利 3%で提供されるが、三ツ星コミュニティに所在する企

業に対しては金利ゼロで融資を行う。希望すれば、無料でエネルギー監査を提供する444。

(3) 税制優遇措置

① 風力エネルギー・システム税免除(Wind Energy Systems Exemption)【再生可能】

公共電力企業、産業施設、商用施設による風力エネルギー・システムの導入費用に関して、資

産税の課税対象額を導入費用の 3分の 1までとする制度445。

② クリーン・エネルギー製造施設を対象とした消費税および利用税免除(Sales and Use Tax

Credit for Qualified Facility Manufacturing Clean Energy Technology)【再生可能】

2009 年 6月に制定された州法(Tennessee Clean Energy Future Act of 2009)により、新興

産業を対象とした消費税および利用税免除プログラム(Sales and Use Tax Credit for

Emerging Industries)の対象が、クリーン・エネルギー技術製造企業にまで拡大された。対象

となるクリーン・エネルギー技術は、バイオマス、地熱、水素、水力、ソーラー、風力等を利用

443 DSIRE(2009年 7月 17日更新) “All TVA Partner Utilities - Energy Right Heat Pump Loan Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=TN52F&re=1&ee=1

444 Department of Economic & Community Development、Small Business Energy Loan Program”:

http://www.state.tn.us/ecd/BD_smallbizenergy.html; DSIRE(2009年 10月 15日更新) “Small Business

Energy Loan Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=TN01F&re=1&ee=1

445 DSIRE(2009年 10月 5日更新) “Wind Energy Systems Exemption”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=TN03F&re=1&ee=1

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した省エネ技術となっている。当該プログラムの対象企業は、投資額が最低 1 億ドルで、かつ、

10 年間にわたり 50のポストの賃金が州平均賃金水準の 150%に維持されなければならない446。

446 DSIRE(2009年 7月 9日更新) “Sales and Use Tax Credit for Qualified Facility Manufacturing Clean

Energy Technology”: http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=TN55F&re=1&ee=1

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2.19 インディアナ州(州別 GDP第 19位、州別人口第 16位)

○ エネルギー消費量は全米で 11番目に多く(2,904兆 BTU。2007 年)、人口 1人当たりでは

消費量の多い方から 10番目(4.6億 BTU/人。2007年)。

○ インディアナ州の電力はほぼ石炭火力発電で賄われており、第 2位の天然ガスによる電力供

給量でも 5%以下に留まっている447。

○ 再生可能エネルギー利用はほとんど進んでおらず、再生可能エネルギー導入量(水力を除

く)は全米で 5番目に尐ない。

○ 再生可能ポートフォリオ基準は導入していない。

○ エネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラムに関しては、州政府によるも

のはあまり充実していないが、民間公益企業によるプログラムは比較的充実している

(DSIRE によると、30 を超えるプログラムが存在)。

表 62 インディアナ州の再生可能エネルギー利用発電(2008年)

(単位:MW、能力ベース)

太陽光* 風力 地熱 バイオマス (水力) 水力を除く合計 人口当たりの

発電量**

1 131 0 42 (92) 173 27

*:太陽光発電は、オフグリッド(off-grid、独立型専用太陽電池モジュール)を除く。

**:人口当たりの発電量は水力を含まない。単位はワット/人。

出所:Renewable Energy Data Book, July 2009, US Department of Energy

2.19.1 インディアナ州のエネルギー計画

(1) 戦略的エネルギー計画「インディアナ州産エネルギーによる経済成長」

2006 月に発表された州のエネルギー計画。

①州内の天然資源(石炭、バイオマス)から必要なエネルギーを生産することによりエネルギ

ー輸入州としての現状からの脱却を図り、経済成長の促進および雇用創出を目指す、②クリー

ン・コールおよびバイオマスから電力、天然ガス、輸送燃料を生産する、③エネルギー効率の向

上やエネルギー関連のインフラの強化を図ることを目標に掲げ、その達成に向けて、以下を含む

各種提言を行っている。

○ 2005-06年インディアナ州クリーン・エネルギー法(Clean Indiana Energy Acts

of 2005-06)の適用を拡大し、所定のクリーンコール発電施設やバイオ燃料利用施

設に対する税控除を実現する。

447 エネルギー省エネルギー情報局(EIA)”State Energy Profiles – Arizona”:

http://tonto.eia.doe.gov/state/state_energy_profiles.cfm?sid=IN Coal, Electricity, and Renewables

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○ 2005 年米国エネルギー政策法(2005 U.S. Energy Policy Act)による連邦税控除

および融資保証の利用可能性を探る。

○ 自家発電(non-utility energy)およびインフラ事業を行う能力を強化し、州のエ

ネルギー独立性向上とエネルギー供給システムの信頼度アップを図る。

○ 自家発電を行う者による送電線接続を容易にする政策を策定する。マリオン郡(州

都インディアナポリスを含む郡)の政府機関の建物の電力消費量のうち、2010 年ま

でに 10%、2025 年までに 25%を、再生可能エネルギー利用発電事業者からの供給

とする。

○ 電力供給企業が財政的な負担なしに顧客への省エネ促進が出来る様に、価格規制の

代替となる制度作りを支援する448。

2.19.2 インディアナ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度

(1) ネット・メータリング

2004 年のインディアナ州公益企業規制委員会(IURC)の規則に基づく措置。

民間の電力供給企業のみが受入義務を負う。

対象となる発電源は、太陽光、風力、能力 10kW以下の水力で、各電力企業総量としての受入

れの上限は、直近の夏のピーク電力の 0.1%449。

(2) 州政府のグリーン電力購入

上述の 2006年の戦略的エネルギー計画「インディアナ州産エネルギーによる経済成長」の提

言に基づき、マリオン郡の政府関係の建物の電力消費のうち 2010 年までに 10%を、2025年まで

に 25%を再生可能エネルギー(太陽光、太陽熱、風力、バイオマス、地熱、埋立地ガス、嫌気

性消化ガス、自治体の固形廃棄物)由来のものにすることが求められている450。

(3) 州政府建物のエネルギー効率基準

2008 年 6月の知事令に基づく措置。

448 インディアナ州政府、”Economic Growth from Hoosier Homegrown Energy: Indiana’s Strategic Energy

Plan”: http://www.in.gov/oed/files/Energy_Strategic_Plan_1-2.pdf

449 DSIRE(2009年 11月 30日更新) “Indiana - Net Metering”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IN05R&re=1&ee=1

450 DSIRE(2009年 5月 12日更新) “Indiana - Green Power Purchasing”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IN07R&re=1&ee=1

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全ての新築の州政府建物について、「エネルギーおよび環境設計に関するリーダーシップ

(LEED)」基準のシルバー以上を満たすこと、または、連邦環境保護庁(EPA)のエネルギース

ター建物基準に合致することなどを求めている451。

2.19.3 インディアナ州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム

(1) 助成プログラム

① 代替電力エネルギー・グラント・プログラム(Alternative Power & Energy Grant

Program)【再生可能】

企業、商用施設、非営利団体、学校、州政府、地方政府などが代替エネルギー装置を導入し、

化石燃料の消費を軽減し、公的教育を強化する場合の助成制度。

対象となる代替エネルギー装置は、太陽光発電、太陽熱温水器、風力発電、熱電併給発電

(CHP)、嫌気性消化ガス利用発電。

助成額は、太陽光発電は 5 ドル/能力 W(直流)、風力発電は 2.5 ドル/能力 W(直流)、太陽

熱温水器・熱電気複合発電・嫌気性消化ガスは費用の 50%で、いずれも助成の上限は 2万 5,000

ドル452。

② インディアナ州住宅用省エネ機器リベート(Indiana - Residential Energy-Efficient

Appliance Rebates)【再生可能】

「米国再生・再投資法」から州政府に拠出された資金を活用した制度であり、住宅所有者(1

世帯)によるエネルギースター認定製品(ガス燃焼炉、ガスボイラー、冷暖房空調設備、空気熱

源ヒート・ポンプ〔Air-Source Heat Pump〕、地熱ポンプ)の購入・設置費用に対し、リベート

を行う。リベート額は次のとおりである453。

ガス燃焼炉

ガスボイラー

冷暖房空調設備(HVAC)

空気熱源ヒート・ポンプ

地熱ポンプ

300ドル

500ドル

150ドル

500ドル

1,000ドル

451 DSIRE(2010年 1月 4日更新) “Energy Efficient State Building Initiative”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IN08R&re=1&ee=1

452 DSIRE(2009年 10月 2日更新) “Alternative Power & Energy Grant Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IN02F&re=1&ee=1

453 DSIRE(2010年 2月 2日更新) “Indiana - Residential Energy-Efficient Appliance Rebates”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IN58F&re=1&ee=1

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(2) 税制優遇措置

① 再生可能エネルギー資産税免除(Renewable Energy Property Tax Exemption)【再生可

能】

太陽熱温水器および太陽熱暖房(太陽光発電装置は対象外)、風力発電、水力発電、地熱発電、

地熱ヒート・ポンプの導入に対する資産税の免除制度454。

② エネルギー節約税控除(Energy Savings Tax Credit)【省エネ】

個人または中小企業がエネルギースター認証製品(エアコン、炉、プログラム可能なサーモス

タット、温水器)を購入する場合の所得税や法人税等に対する税額控除制度。

控除額は導入費用の 20%(ただし、単年当たり 100ドルが上限)。翌年度以降の繰り延べは

認められない455。

454 DSIRE(2009年 10月 5日更新) “Renewable Energy Property Tax Exemption”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IN01F&re=1&ee=1

455 DSIRE(2009年 7月 8日更新) “Energy Savings Tax Credit (Corporate)”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IN51F&re=1&ee=1; DSIRE(2009年 7月 8

日更新) “Energy Savings Tax Credit (Personal)”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=IN50F&re=1&ee=1

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2.20 コロラド州(州別 GDP 第 20位、州別人口第 22 位)

○ エネルギー消費量は全米第 27位(1,479 兆 BTU。2007 年)、人口 1人当たりでは消費量の

尐ないほうから 17番目(3.1億 BTU/人。2007年)。

○ 再生可能エネルギー導入に関しては、太陽光(全米第 3位。ただし第 1位のカリフォルニア

州の約 7%程度)や風力(全米第 6位)が目立つが、その他はほとんど進んでいない。

○ コロラド州は全米で第 1 位の天然ガス産出量を誇り、全米における天然ガス産出量の約 5%

を占める456。

○ 一方で、コロラド州の電力の 7割以上は石炭火力発電により賄われており、天然ガスによる

発電量は 4分の 1である457。

○ 州政府が実施する州全域に適用されるエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プ

ログラムは乏しいが、一部地域のみに適用されるプログラムや民間公益企業によるプログラ

ムが比較的充実している(DSIRE によると、民間公益企業によるものは約 30存在する)。

表 63 コロラド州の再生可能エネルギー利用発電(2008年)

(単位:MW、能力ベース)

太陽光* 風力 地熱 バイオマス (水力) 水力を除く合計 人口当たりの

発電量**

36③ 1,068 0 18 (649) 1,122 227

*:太陽光発電は、オフグリッド(off-grid、独立型専用太陽電池モジュール)を除く。

**:人口当たりの発電量は水力を含まない。単位はワット/人。

また、○数字は、全 50州の中の順位(第 5位までを表示)

出所:Renewable Energy Data Book, July 2009, US Department of Energy

2.20.1 コロラド州のエネルギー計画

(1) コロラド州気候変動計画

2007 年 11月に州知事より発表された「コロラド州気候変動計画(Colorado Climate Action

Plan458)」において、州の温室効果ガス削減について、2020年までに 2005 年比で 20%、2050 年

までに同 80%削減という目標が明示されており、その達成に向けて取り組むべきエネルギー関

連施策として次の項目が掲げられている。

456 エネルギー省エネルギー情報局(EIA)“State Energy Profiles – Colorado”:

http://tonto.eia.doe.gov/state/state_energy_profiles.cfm?sid=CO Natural Gas

457 同上 Coal, Electricity, and Renewables

458 コロラド州政府(2007年 11月)“Colorado Climate Action Plan”:

http://www.colorado.gov/energy/in/uploaded_pdf/ColoradoClimateActionPlan_001.pdf

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○ 費用対効果が高く、雇用を創出し、消費者の費用負担を軽減するような電力供給企業のエネ

ルギー効率向上施策を支援。

○ 利用可能な再生可能エネルギー源を拡大し、新たなクリーン・コール技術を活用。

○ 石炭ガス化複合発電(IGCC)や二酸化炭素地中貯留(geologic sequestration)などのクリ

ーン・コール技術に関わる研究開発活動に関し、産学連携や官民協力を推進。

○ 州政府のエネルギー消費量を 2012年までに 20%削減。

○ 州政府の公用車のガソリン消費量を 2012 年までに 25%削減。

2.20.2 コロラド州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進制度

(1) 再生可能ポートフォリオ基準(RPS)

コロラド州は 2004年 11月に行われた住民投票により、全米で初めて再生可能ポートフォリオ

基準の導入を果たした州として知られる。

対象となる発電源は、太陽光、太陽熱、風力、バイオマス、水力、地熱、埋立地ガス、嫌気性

消化ガス、再生可能燃料を用いた燃料電池などである。

この RPS により定められた、再生可能エネルギーの利用による発電割合の引き上げに関する目

標値は次のとおりである459。

民間の電力供給企業 地方自治体の電力供給企業、電力供給組合

2008~2010年 5%

2011~2014年 10%

2015~2019年 15%

2020 年~ 20%

各目標値の 4%以上は太陽光発電により、ま

た、その半分は顧客の自家発電装置によること

が求められている

2008~2010年 1%

2011~2014年 3%

2015~2019年 6%

2020 年~ 10%

太陽光発電に特化した目標値は定められていな

(2) ネット・メータリング制度

コロラド州では、民間の電力供給企業(地方自治体の小規模電力供給企業は除く)によるネッ

ト・メータリングの導入を義務付けている。

対象となる装置が利用する再生可能エネルギーは太陽光、太陽熱、風力、バイオマス、地熱等

であり、小型水力発電装置や再生可能燃料を用いた燃料電池も対象に含まれる。

発電装置の発電能力の上限は、顧客の契約先が、民間電力供給企業の場合、顧客の年間平均電

力消費量の 120%、地方自治体の電力供給企業および電力供給組合の場合、住宅用が 10kW、産

業・商用が 25kW である。

459 DSIRE(2009年 6月 10日更新)“Renewable Energy Standard”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=CO24R&re=1&ee=1

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超過発電量(NEG)は、翌月の料金請求において電力量(kWh)によるクレジット付与という形

で顧客に払い戻される。また、年末に残った NEG は顧客に返金される460。

(3) 州政府建物のエネルギー基準

州政府機関の建物に関し、可能な限りエネルギースター認定製品の購入を求めているほか、

2012 年 6 月末までに達成すべき目標として次の項目を掲げている。

○ 水の消費量を 2005 年比で 10%削減

○ 紙の消費量を 2005 年比で 20%削減

○ 石油の消費量を 2005年比で 25%削減

また、州政府による出資率が 25%以上となる全ての建物の新築、または、面積 5,000 平方フ

ィート以上に及ぶ本格的な改修事業において、LEED 基準のゴールドの達成を義務付けている461。

(4) 発電源情報開示

1999 年のコロラド州公共公益企業委員会(PUC:Public Utilities Commission)の規則に基

づく措置。

民間電力供給企業(発電能力は 100MW以上)に対し、年 2回(4月と 10月)、顧客への発電

源情報の開示を義務付けている462。

2.20.3 コロラド州の主なエネルギー効率向上・再生可能エネルギー利用促進プログラム

(1) 助成プログラム

① 新エネルギー経済開発(NEED)グラントプログラム(New Energy Economic Development

Grant Program)【省エネ・再生可能】

コロラド州知事エネルギー室(GEO: Governor's Energy Office)が実施する当該プログラム

では、商業・産業セクター、住宅による、省エネ技術や再生可能エネルギー利用装置(ソーラー、

風力、バイオマス、小型水力、再生可能燃料など)の導入に際し、グラントを支給している。

460 DSIRE(2009年 9月 18日更新)“Colorado - Net Metering”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=CO26R&re=1&ee=1

461 DSIRE(2009年 5月 4日更新)“Greening of State Government”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=CO35R&re=1&ee=1

462 エネルギー省、“Green Power Network – Disclosure Policies - Colorado”:

http://apps3.eere.energy.gov/greenpower/markets/disclosure.shtml#co

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当該プログラムは、元々、州のクリーン・エネルギー基金(賭博税〔gaming tax〕と鉱産税

〔severance tax〕による税収が原資)により運営されているが、2009年の「米国再生・再投資

法」による追加資金 200万ドルを得、2009 年 7月から新ラウンドが開始されている(申し込み

期間は 2009年 8 月 28 日で終了しており、現在は応募受付は行われていない)463。

② 地方断熱材リベートプログラム(Local Insulation Rebate Programs)【省エネ】

コロラド州知事エネルギー室(GEO)が創設した当該リベートプログラムでは、住宅(州内の

一部に限定)への断熱材やシーリング材(air sealing)の導入増加を目指し、設置費用の 20%

(最大 300ドル)の払い戻しを行う464。

③ 地方小型風力発電リベートプログラム(Local Small Wind Rebate Programs)【再生可

能】

コロラド州知事エネルギー室(GEO)が実施する当該プログラムでは、電力共同組合 3団体と

自治体の電力企業 1社に対しマッチング方式465の助成金を支給し、企業や住民による小型風力発

電装置(系統連系され、かつ、ネット・メータリングの対象であることが条件)の導入費用に対

するリベートを提供している。

細かな規則は各企業の裁量に任されているが、基本原則としては、リベートは装置1台あたり

最初の 10kWまでの発電量に限定して行うこと、かつ、リベート額は設置された費用の 50%を超

過しないこととされている466。

(2) 税制優遇措置

① 再生可能エネルギー資産税評価の特例(Renewable Energy Property Tax Assessment)

【再生可能】

商用の大規模再生可能エネルギー発電施設(太陽光、太陽熱、風力、水力、地熱、埋立地ガス、

嫌気性消化ガス、自治体の固形廃棄物利用)の資産税評価に当たって、当該施設を再生可能エネ

ルギー利用ではないものとみなして税額を抑える措置467。

463 DSIRE(2009年 7月 30日更新)“New Energy Economic Development Grant Program”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=CO145F&re=1&ee=1

464 DSIRE(2009年 6月 6日更新)“Local Insulation Rebate Programs”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=CO150F&re=1&ee=1

465州知事エネルギー室(GEO)および各電力企業がそれぞれ 2万 5,000ドルを拠出し、各電力企業が独自にプロ

グラムを運用する。

466 DSIRE(2009年 7月 8日更新)” Local Small Wind Rebate Programs”:

http://www.dsireusa.org/incentives/incentive.cfm?Incentive_Code=CO153F&re=1&ee=1

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3 主要州総括表

表 64 主要州の基礎情報と制度比較

州の規模 エネルギー消費量(注1) 再生可能エネルギー導入量 州政府の制度 助成措置

州政府関係機関の助成措置

民間企業

等の助成

措置 GDP

順位

人口

順位

エネルギー

消費量

(Q BTU)

人口 1人当たり

のエネルギー消費

量(M BTU)

太陽光発電

導入量

(MW)(能力

ベース)

風力発電導入

量(MW)(能力

ベース)

再生可能

ポートフォリオ基準

ネット

メータリング

グラント、

リベート等

融資制

税制優

カリフォルニア 1 1 8.5 233 (49) 528 (1) 2,517 (3) 33%(2020年) ○ ◎ △ △ ◎

ニューヨーク 2 3 4.1 209 (50) 22 (6) 832 (9) 30%(2015年) ○ ◎ △ ◎ ◎

テキサス 3 2 11.8 296 (5) 4 7,118 (1) 5,880MW(2015年)

1万 MW(2025年) × × △ ○ ◎

フロリダ 4 4 4.6 253 (44) 3 0 20%(2020年) ○ △ × ○ ◎

イリノイ 5 5 4.0 315 (34) 3 915 (8) 25%(2025年) ○ ◎ × ○ ◎

ペンシルベニア 6 6 4.0 323 (30) 4 361 18%(2020年) ○ ◎ ◎ △ ◎

ニュージャージー 7 11 2.7 317 (33) 70 (2) 8 22.5%(2021年) ○ ◎ △ △ △

オハイオ 8 7 4.0 353 (23) 1 7 25%(2025年) ○ ◎ △ △ ◎

ジョージア 9 9 3.1 329 (29) 0 0 × ○ ◎ △ ○ ◎

ノースカロライナ 10 10 2.7 299 (39) 5 0 12.5%(2021年) ○ ◎ △ ○ ◎

ミシガン 11 8 3.0 301 (38) 0 129 10%(2015年) ○ ○ × ◎ ◎

バージニア 12 12 2.6 339 (26) 0 0 15%(2025年) ○ ◎ △ △ ○

マサチューセッツ 13 15 1.5 234 (48) 8 (9) 5 15%(2020年) ○ ◎ ○ ◎ ◎

ワシントン 14 13 2.1 321 (31) 4 1,447 (5) 15%(2020年) ○ ○ × △ ◎

メリーランド 15 19 1.5 265 (42) 3 0 20%(2022年) ○ ◎ ○ ◎ ◎

ミネソタ 16 21 1.9 362 (21) 1 1,754 (4) 25%(2025年) ○ ◎ ◎ ○ ◎

アリゾナ 17 14 1.6 248 (46) 25 (5) 0 15%(2025年) ○ × × ◎ ◎

テネシー 18 17 2.3 379 (18) 0 29 × × ◎ ○ △ ◎

インディアナ 19 16 2.9 458 (10) 0 131 × ○ △ × △ ◎

コロラド 20 22 1.5 305 (35) 36 (3) 1,068 (6) 20%(2020年) ○ ○ × △ ◎

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4 省エネ・新エネに関するコラム

本章は、米国における省エネ・新エネの動向を考察するために 7つのトピックを取り上げ、

政策や市場をめぐる状況について分析したものである。

4.1 2011 年度連邦予算案における省エネ・新エネ予算動向

4.1.1 クリーン・エネルギー経済への転換を目指して

オバマ政権では、エネルギー効率および再生可能エネルギー問題は、温室効果ガス削減という

国際社会における気候変動問題の取り組みとして認識している。また、それだけでなく、クリー

ン・エネルギー経済への早期移行を実現し米国社会に根付かせていくことが、深刻な国内失業問

題を解決し、低迷する米国経済を復興させる、まさに起死回生のチャンスと捉えている。2009

年の大統領選においても、オバマ氏は繰り返し「クリーン・エネルギーが数百万規模の雇用を創

出する」というビジョンを提示したこともあり、オバマ政権においてこの分野における基礎研究

開発支援および産業支援など包括的な施策が現在急ピッチで進められている。

これに関連し、2010年 2月 1日に議会に提出された 2011年度大統領予算では、基礎エネルギ

ー科学研究、応用エネルギー研究開発、革新的なエネルギー関連技術の早期商業化、クリーン・

エネルギー技術(ソーラー、バイオマス、地熱、風力、原子力、低排出石炭発電等)の開発およ

び導入、スマートグリッド基盤整備468等、この分野における多角的支援策が提示された。

2011 年度大統領予算案で提示されたエネルギー省向けの省エネおよび再生可能エネルギー関

連予算ハイライトは次のとおりである。

468 “Budget of the U.S. Government Fiscal Year 2011”(2010年 2月 1日):

http://www.whitehouse.gov/omb/budget/fy2011/assets/budget.pdf(p.28) Invest in a Smart, Energy-

Efficient, and Reliable Electric Grid.

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表 65 2011 年度予算案におけるエネルギー関連ハイライト

○ ハイリスク・ハイリターンのエネルギー関連の先端研究開発活動を行うエネルギー省フ

ァンディングエージェンシー、エネルギー先端研究計画局(ARPA-E : Advanced Research

Projects Agency-Energy)に対し 3億ドル

○ 革新的なエネルギー関連技術の早期商業化支援策として、先進的原子力発電所を対象と

した融資保証権限として 360億ドル、革新的なエネルギー効率・再生可能エネルギープ

ロジェクトを対象とした 30億~50億ドルの貸付額に対する助成金(credit subsidy)と

して 5億ドル

○ エネルギー省科学局(Office of Science)予算額を前年度比 4.6%(2億 2,600万ドル)

増額し、基礎研究活動や研究所の活動を支援

○ 科学局のエネルギーフロンティア研究センター(Energy Frontier Research Centers)

プログラムに 4,000万ドル、エネルギー・イノベーション・ハブ構想(Energy

Innovation Hubs)に 1 億 700万ドル

○ 気候変動問題に取り組み、新産業を開発し、新規雇用を創出するエネルギー技術分野に

おいて米国を世界のリーダーとして位置付けるべく、応用エネルギー研究開発活動に 23

億ドル469。

○ クリーン・エネルギー技術(ソーラー、バイオマス、地熱、風力、原子力、低排出石炭

発電など)の開発および配備を支援し、低炭素経済への移行を急ピッチで実施

○ 風力、ソーラー、地熱発電分野の研究活動の拡大に新たに 1 億 800万ドル超

出所:2011年度大統領予算、エネルギー省

一方で財政削減の一環として、気候変動問題の取り組みやクリーン・エネルギー経済の形成の

障壁となると考えられる各種プログラムの中止も打ち出されている点が注目される。特に、無駄

な政府支出の削減策の一環として、石油、ガス、石炭企業が対象となる 12の減税措置を打ち切

るなど、非効率な化石燃料への助成金を削減し、今後 10年間にかけて 390億ドル近くの税収増

大を図る470としている。エネルギー省関連で打ち切りが提案されている主な項目は次のとおりで

ある。

表 66 エネルギー省関連で廃止が提案されている主なプログラム

○ エネルギー省の超深海探査プログラム(Ultra-Deepwater exploration program)を打ち

切り、5,000 万ドルを節減

○ エネルギー省の戦略的石油備蓄(Strategic Petroleum Reserve)拡大計画を中止し、

7,100 万ドルを節減

出所:エネルギー省

この大統領予算について、エネルギー省のスティーブン・チュー長官(Steven Chu)は、

「無駄な支出を失くし、イノベーションやクリーン・エネルギー分野に対する賢い投資によって

米国人の雇用を促進し、米国の世界市場における競争力を維持するもの」であり、さらに、「エ

ネルギー研究への新たなアプローチを支援し、次世代の科学者やエンジニアに投資し、原子力発

469 “Budget of the U.S. Government Fiscal Year 2011”(2010年 2月 1日)(p.73) Department of

Energy - Funding Highlights

470 同上(p.44) Eliminate Funding for Inefficient Fossil Fuel Subsidies.

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電部門の再興を含んだ全米におけるクリーン・エネルギー事業を活性化させるもの」であるとし

て、高く評価している471。

4.1.2 エネルギー省以外の各省関連予算ハイライト

2011 年度大統領予算では、エネルギー省以外にも全米科学財団、農務省、商務省、内務省に

おいて、研究開発や再生可能エネルギー利用を促進するための民間支援、奨学金等、多岐にわた

る用途で関連予算措置が見られる。

表 67 エネルギー省以外の関連予算ハイライト

全米科学財団

○ クリーン・エネルギー分野関連の就職や起業を目指す大学生および大学院生を対象とし

た奨学金制度予算に 1,900 万ドル

○ 再生可能エネルギー技術を含む環境関連分野の省庁連携による研究活動の立ち上げに 7

億 7,600 万ドル

農務省

○ 再生可能エネルギー・プログラム(先進型バイオマス作物を利用する生物精製所、セル

ロース系並びにその他先進型バイオ燃料開発研究、化石燃料依存型電力企業の再生可能

エネルギーへの転換支援など)に予算を配分

商務省

○ 米国標準技術局(NIST:National Institute of Standards and Technology)の予算(7

億 1,200 万ドル)の中で、エネルギー保全システムの開発および汎用性拡大についての

活動も支援

内務省

○ 連邦政府所有の土地および水域における再生可能エネルギープロジェクト開発におい

て、連邦政府機関の牽引役としての内務省の役割を強化し、内務省管轄地における発電

能力を 2011 年末までに最低 9,000MW 許可する目標を掲げ、この目的のために 1,400万ド

ルを支給

出所:2011年度大統領予算

また、ブッシュ政権では、基礎研究実施・支援を行う 3連邦機関(全米科学財団、エネルギ

ー省科学局、商務省 NIST)の予算を 2006 年度から 10 年間で倍増することが示されたものの、

緊縮財政や軍事費拡大の煽りを受け、2007 年度、2008 年度共に目標達成には至っていない。し

かし、科学および基礎研究分野への投資こそ長期的な経済成長を促すと考えるオバマ政権では、

このブッシュ政権が掲げた目標の達成を目指し、2009 年度予算以降、倍増計画に沿った形での

予算増を行うことを発表している472。これに関連して、2011年度大統領予算案には次の予算が

組み込まれている。

471 同上

472 “Budget of the U.S. Government Fiscal Year 2011”(2010年 2月 1日): (p.25) Invest in Science

Research and Development.

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表 68 基礎研究関連省庁予算倍増案に関連して 2011 年度大統領予算案に組込まれたエネルギ

ー関連予算

○ エネルギー独立問題および気候変動問題に対処するため、エネルギーの生産・貯蔵・利

用の新手法を研究する基礎エネルギー科学研究予算として 18 億ドル473。

4.2 「2009 年米国再生・再投資法」における環境・エネルギー関連プログラムとその実施状

4.2.1 始動 1年後の進捗状況

「米国再生・再投資法」によるクリーン・エネルギー分野への歳出予算として約 900億ドル

が予定されているが、うち、2009 年 12月末時点で約 300億ドルの予算使途が決定し、この中で

約 50 億ドルが実際に支出(あるいは減税措置の形で支出)されている474。これを分野別に見る

と、エネルギー効率、再生可能エネルギー、輸送の 3 分野に対する予算額が最も多くなってい

る(表 69 参照)。

表 69 クリーン・エネルギー分野別支出状況(2009 年 12月末時点)

単位:100万ドル

分野 歳出額 2009 年 12月末時点

予算拠出先決定済 支出済

エネルギー効率 19,935 11,913 1,162

再生可能エネルギー利用発電 26,598 1,513 1,479

電力網の最新化 10,453 2,666 72

最新自動車・燃料技術 6,142 3,149 450

従来型輸送・高速鉄道 18,113 8,834 1,805

炭素回収・隔離(CCS) 3,400 425 4

グリーンイノベーション・研修 3,549 2,197 123

クリーン・エネルギー装置製造 1,624 14 14

その他 408 148 12

合計 90,222 30,861 5,121

出所:大統領経済諮問委員会 (2009年 1月 13日)“The Economic Impact of the American

Recovery and Reinvestment Act of 2009 – Second Quarterly Report”(p.42)Table 11.

また、米国再生・再投資法の経済効果としては、2009 年度第 4 四半期までにクリーン・エネ

ルギー分野において約 6万 3,200人分の雇用創出・維持が実現したと推計されている(表 70参

照)。

473 同上(p.25) Invest in Science Research and Development.

474 大統領経済諮問委員会 (2009年 1月 13日)“The Economic Impact of the American Recovery and

Reinvestment Act of 2009 – Second Quarterly Report”:

http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/microsites/100113-economic-impact-arra-second-

quarterly-report.pdf

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表 70 クリーン・エネルギープログラムにより創出・維持される雇用者数

分野 2009 年第 4四半期までに創出・維持された雇用者数

エネルギー効率 14,500

再生エネルギー利用発電 16,900

電力網最新化 1,000

最新自動車・燃料技術 5,800

従来型輸送・高速鉄道 22,900

炭素回収・隔離(CCS) 100

グリーンイノベーション・研修 1,700

クリーン・エネルギー装置製造 200

その他 200

合計 63.200

出所: 同上(p.38) Table 13.

さらに、米国再生・再投資法によるクリーン・エネルギー関連予算の支出状況を省庁別に表し

たのが表 71であるが、これによると、歳出予算額の第 1位はエネルギー省(約 352億ドル)、

第 2 位は運輸省(約 180億ドル)、第 3 位は連邦調達庁(約 48億ドル)となっていることが分

かる。なお、歳出予算額に比べ支出額が低い理由は、クリーン・エネルギー関連の投資のほとん

どがグラントや政府調達の形で実施されるため、プロジェクトに認可が下りる時期(即ちプロジ

ェクト予算決定時期)と実際の支払の時期に時間的な開きがあるためである475。

表 71 省庁別クリーン・エネルギー関連支出状況(2009 年 12月 31 日時点)

単位:100万ドル

省庁 歳出額 2009 年 12月末時点

予算拠出先決定済 支出

商務省 6 1 0

国防総省・退役軍人省 922 354 46

エネルギー省 35,235 16,608 712

環境保護庁 300 294 28

連邦調達庁 4,800 1,980 387

住宅都市開発省 850 608 84

内務省 41 7 1

労働省 500 55 0

全米科学財団 77 64 3

運輸省 17,968 8,774 1,745

租税条項 29,523 2,115 2,115

合計 90,222 30,861 5,121

出所: 同上(p.42)Table 12.

475 同上(p.36)

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また 2009年 12 月 15日には、ジョー・バイデン副大統領(Joe Biden)が大統領に宛て覚書

「クリーン・エネルギー経済への移行に関する進捗報告」476を提出しており、この中で、米国再

生・再投資法の下で進められてきたクリーン・エネルギー分野の投資の進捗状況および今後の予

測について次のとおり報告している。

表 72 クリーン・エネルギー分野の投資進捗状況と今後の予測

エネルギー効率 2009 年 1 月 1日の状況 2012 年予測

住宅用エネルギー効率改修 年間 10万件 合計 100万件

電化製品に対する標準設定数

(年間平均)

1年あたり 1種類

(2001~2008年)

1 年あたり 6種類

(2009~2012 年)

再生可能エネルギー 2009 年 1 月 1日の状況 2012 年予測

再生可能エネルギー(ソーラ

ー、風力、地熱)利用発電能

27.8GW(ギガワット) 目標値 55.6GW を達成または

超過

再生可能エネルギー利用発電

装置製造容量

6GW 目標値 12GWを達成または超

スマートグリッド 2009 年 1 月 1日の状況 2013 年予測

スマートメーター設置数 800 万戸 2013 年までに 2,600万台。

2015 年までに 4,000万台。

グリッド稼働状況監視センサ

ー設置数

160 個

電力網内での設置状況は不十

877 個

米国全体の電力網の監視が実

先進自動車および燃料技術 2009 年 1 月 1日の状況 2015 年予測

米国内の電気自動車製造工場

0 3 工場

先進バッテリー製造能力 ほぼ皆無

年間 50万台のプラグインハ

イブリッド電気自動車

(PHEV)製造に十分な能力

米国内の先進バッテリーおよ

び電気動力部品(Electric

Drive Components)の製造工

場数

2工場 30 工場

電気自動車(EV:Electric

Vehicle)充電スタンド数

500 カ所以下 1 万カ所以上

先進バイオ燃料精製所数 商業規模では 0 2012 年までに 19の商業規模

の精製所を試験導入

平均燃費 25.1mpg 2010 年末までに 27.3mpg

炭素回収 2009 年 1 月 1日の状況 2015 年予測

大型 CCS 設備が付設されてい

る商業規模の発電所数

0 5

年間あたり炭素隔離量 ほぼ皆無 1,200 万トン以上

476 副大統領から大統領への覚書(2009年 12月 15日)“Progress Report: The Transformation to A Clean

Energy Economy”: http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/administration-

official/vice_president_memo_on_clean_energy_economy.pdf

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原子力発電 2009 年 1 月 1日の状況 2011 年予測

原子力発電所新設数 1970 年代以降、新設許可は

ゼロ

条件付きの融資保証を 2カ所

の原子力発電所(合計 3~4

の原子炉)建設に対し付与

科学およびイノベーション 2009 年 1 月 1日の状況 2012 年予測

ARPA-E 予算 0 最大 100件のハイリスク・ハ

イリターン先進エネルギー技

術研究プロジェクトに対して

400 万ドル拠出

出所:“Progress Report: The Transformation to A Clean Energy Economy”:

http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/administration-

official/vice_president_memo_on_clean_energy_economy.pdf

同覚書ではまた、米国再生・再投資法の下での資金拠出が、民間投資の呼び水として機能して

いる状況を強調している477。その成果の一つとして風力発電における民間投資の活性化を挙げた

他、風力タービン、ソーラーパネルやその他の再生可能エネルギー発電装置の部品の製造能力の

増強とそれによる雇用効果として、民間資金による投資と併せて 2012年までに合計 5万 8,000

人の新規雇用が予測されていることを挙げている478。

4.2.2 始動 1年目を迎えた今後の課題

一方で各種産業団体からは、管轄省庁の体力的な問題、手続き面の問題等が障壁となり、クリ

ーン・エネルギー分野の投資活動が期待した程スムーズに進捗していないという不満も表明され

ている。

例えば、2009 年 5月、太陽エネルギー産業協会 (Solar Energy Industries Association)、

米国風力エネルギー協会(American Wind Energy Association)、米国水力協会(National

Hydropower Association)等 7つの産業団体が、大統領並びにエネルギー長官らに対して提出

した書簡によると、米国再生・再投資法の下で 380億ドルの予算充当が行われたエネルギー省

の融資保証プログラムに関して、税控除やグラント等その他の政府支援との併用を認めること、

環境コンプライアンス検証義務の重複を失くすこと等、実施に当たって必要となる手続き複数に

ついて修正を求めている479。また、2009 年 9月には、米国のビジネス有力紙「ウォール・スト

リート・ジャーナル紙(Wall Street Journal)」は、エネルギー省は体力的に米国再生・再投

資法による責務をこなせる状態ではなく、1,000億ドル以上の貸付および融資保証の遅れにつな

がっていると指摘している480。

477 同上(p.1)

478 同上(p.2)Renewable Energy

479 大統領への書簡(2009年 5月 19日): http://www.uschpa.org/files/public/LoanProgramPOTUS.pdf

480 Wall Street Journal(2009年 9月 9日)“Watchdog Says Energy Department Not Prepared for Stimulus

Funds”http://online.wsj.com/article/SB125252847543896577.html

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さらに同様の懸念は政府内部からも出ており、例えば、エネルギー省の監査総監(inspector

general)481は 2009 年 3月にエネルギー省の対応体制の不備について既に警鐘を鳴らしている。

これに加えて 2010 年 2月発表の低所得者住宅対象の耐候性向上プログラムの進捗に関する同総

監による特別報告書では、「米国再生・再投資法」による資金拠出を受けた各州は、2009 年 12

月末までに予算の 50%まで使用することを許可されていた482にも関わらず、実際は、予算総額の

8%以下でしかない 3億 6,820 万ドルしかグラントとしてエネルギー省から拠出されておらず、

また、事業完了件数が予定された件数に占める割合も平均約 5%という非常に低率となっている

状況を指摘しており483、エネルギー省が米国再生・再投資法による巨額予算を有効活用できてい

ない現状が浮き彫りとなっている。さらに、「米国再生・再投資法」によるクリーン・エネルギ

ー関連分野に対する巨額の予算増強に、各種制度やプログラムの拡大・強化を含めた包括的な戦

略の見直しについて戸惑いをみせる州も多く、それが支出の低迷にもつながっているという。

雇用創出の実現、クリーン・エネルギー経済への移行、エネルギー安定供給の実現等、この分

野を取り巻く数多くの重要アジェンダをいかに効率的かつ効果的に達成していくのか、始動 2

年目にしてオバマ政権を初め関係省庁は正念場を迎えている。

4.3 「2009 年米国再生・再投資法」におけるバイアメリカン条項の取り扱い

4.3.1 経済回復への保護主義的アプローチ

「米国再生・再投資法」の中にバイアメリカン(Buy American)条項が入れられたことで、

国際社会からは保護主義の再来である反発が高まっているが、民間においては、バイアメリカン

条項の強化拡大を訴える産業団体がある一方で、同条項のために大口の契約を失い、従業員の大

規模なリストラに踏み切った企業もみられるなどその反応は割れている。

バイアメリカン条項は、2009 年 2月 17 日に成立した「米国再生・再投資法」484の下、連邦政

府機関による調達事業関連で米国製品の使用を義務付けたもので、貴重な税金が米国市民以外の

雇用やビジネスに奪われることのないようにとの意図が強く反映されたものであった。

米国以外にも不況が長期化する中で保護措置を取る国は他にも見られており、2009年 6 月に

韓国ソウル市で開催された世界銀行年次総会では、2009 年 3月までに G20諸国のうち 17カ国に

おいて 47 件に上る保護主義的措置の発動が確認されたとの報告が行われている485。

481 各連邦政府機関の中に設置されているポストで、独立かつ客観的に省庁の運営監督を行う。

482 エネルギー省監査総督室(2009年 2月) “Progress in Implementing the Department of Energy's

Weatherization Assistance Program Under the American Recovery and Reinvestment Act”:

http://www.ig.energy.gov/documents/OAS-RA-10-04.pdf (p.2)

483 同上(p.3および p.9 Appendix II)

484 米国再生・再投資法全文:http://frwebgate.access.gpo.gov/cgi-

bin/getdoc.cgi?dbname=111_cong_public_laws&docid=f:publ005.111.pdf (p.303)Sec. 1605 Buy American.

485 World Bank’s Annual Bank Conference on Development Economics(2009年 6月 22日) “The Global

Financial Crisis: Causes and Policy Responses”:

http://siteresources.worldbank.org/INTABCDESK2009/Resources/SaKong-speech.pdf (p.9)

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しかし、2009 年 4月初旪にイギリス・ロンドンで開催された G20 首脳会合(金融サミット)

の場において、オバマ大統領は貿易保護主義に反対し、国境を越えた貿易および投資活動の促進

に賛同する項目を含む G20共同宣言に署名しており、バイアメリカン条項を盛り込んだ形で成

立から 2カ月経った「米国再生・再投資法」とのギャップが大きく取りざたされた486。

同条項の挿入に当たっては、法案審議の段階から経済学者等からバイアメリカン条項の米国経

済への逆効果について警鐘が鳴らされてきている。例えば、国内雇用成長戦略としての保護主義

的アプローチを取ることに対する懐疑的な見解として、ワシントン DCに所在する有力経済系シ

ンクタンクであるピーターソン国際経済研究所(IIE: Peterson Institute of International

Economics)は、「同条項の雇用効果は 9,000 人分しかない」と分析している487。また、「1930

年に米国政府が外国産品 2万品以上に対する関税を引き上げたことにより、貿易相手国の反発

を招き、米国貿易輸出入額は 70%落ち込み、深刻な雇用問題を引き起こした」という米国の苦

い歴史的経験を指摘する米国の経済学者の声488も聞かれている。

4.3.2 バイアメリカン条項の影響

「米国再生・再投資法」のバイアメリカン条項(第 1605条)では、米国連邦政府が調達する

工業製品等を米国産に限定することがうたわれており、「米国再生・再投資法」による予算を資

金源とする連邦政府機関並びにその調達先による事業が条項適用対象となる。バイアメリカン条

項の目的は、米国製品を優遇することで、米国の雇用を拡大・維持することにある。

表 73 バイアメリカン条項と適用例外

バイアメリカン条項内容 適用例外

米国再生・再投資法により予算措置が取られ

た、公的建造物または公共事業の建設、改

築、メンテナンス、修復において、米国産の

鉄、鉄鋼、工業製品の使用を義務付け

米国産品の優遇が、公益に反する場合

質・量共に(事業遂行に)十分な鉄、鉄鋼、

製造製品が米国で生産されていない場合

米国で生産された鉄、鉄鋼、製造製品の利用

が 25%以上の事業コスト上昇を招く場合

○ 上記 3つの適用例外理由のいずれかに該当する場合、連邦省庁の長官は当該条項遵守義務を

放棄出来る

○ 米国の締結した国際協定に抵触してはならない

486 英政府ロンドンサミット 2009ウェブサイト”Global plan for recovery and reform”:

http://www.londonsummit.gov.uk/resources/en/news/15766232/communique-020409

487 New York Times(2009年 6月 3日)“The Peril of ‘Buy American’ ”:

http://www.nytimes.com/2009/06/03/opinion/03weds1.html

488 American Public Media(2009年 6月 8日)“'Buy American' will lose U.S. more jobs”:

http://marketplace.publicradio.org/display/web/2009/06/08/pm_buy_american/

1930年に成立したスムート・ホーレー関税法(Smoot-Hawley Tariff Act)は約 900品目に上る輸入品の関税引

き上げを行い、これが世界の貿易取引量が激減を招き、世界恐慌へとつながっていった。

出所: Wall Street Journal(2009年 2月 5日) “Congress Wants a Trade War”:

http://online.wsj.com/article/SB123380102867150621.html

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しかしこれによる悪影響も既に出てきており、例えば、原則として外国製品が利用出来なくな

ったことから、企業は代用品となる国産品を探す手間が増え489、同条項への抵触リスクを恐れ、

国内外企業による連邦政府調達事業離れも増加している。

国外企業との取引がある米国企業の中には、契約打ち切りの憂き目に遭い、業績に深刻な影響

を受け、さらには従業員解雇という事態に陥った企業も出ている。例えば、ペンシルベニア州の

鉄鋼企業デュフェルコ・ファレル社(Duferco Farrell)では、バイアメリカン条項の影響によ

り、取引額が最も多かった取引先との契約打ち切りを強いられ、従業員 600名の解雇に至って

いる490。カナダ企業との取引が 25%を占める汚水処理装置製造企業のアクエリアス・テクノロ

ジー社(Aquarius Technologies:本社ウィスコンシン州)も、バイアメリカン条項が業績に悪

影響を与える可能性があると表明している491。

特にカナダ企業(米国企業のカナダ子企業含む)は、米国の州政府や地方自治体からの調達に

参加する機会が多いが、「米国再生・再投資法」の影響によりこれらについても多数の業者が締

め出される事態が発生することとなった。これを受けて 2009年 6 月にカナダ地方自治体連盟

(Federation of Canadian Municipalities)が反バイアメリカン決議を通過させるなど492一時

事態は硬直したものの、2010 年 2月 16日、米国・カナダ両政府の間で、米加政府調達協定

(Canada-U.S. Agreement on Government Procurement)を締結することで、カナダ政府をバイ

アメリカン条項適用対象外とすることが決定し、緊張状態の一時的収束に至っている。

この様な苦い経験にも関わらず、2010 年 3月 3日にはチャールズ・シューマー上院議員

(Charles Schumer: ニューヨーク州選出、民主党)らが、「米国再生・再投資法」からの支援

を受けた再生可能エネルギー事業の予算の多くが外国企業に流れているとして、同事業へのバイ

アメリカン条項適用を要請する法案の上院提出493を行っている。特に槍玉に挙げられたのは、テ

キサス州で計画が進行中の中国の瀋陽動力集団(Shenyang Power Group)、テキサス州の米企

業シエロ・ウィンド・パワー(Cielo Wind Power)、米国再生可能エネルギー・グループ(U.S.

Renewable Energy Group)によるジョイントベンチャー事業で、テキサス州西部に 3万 6,000

エーカーの敷地に 648メガワット相当の発電容量を擁するウィンド・ファーム建設を目指すも

のである。この事業に対して「米国再生・再投資法」から 4億 5,000 万ドルの資金拠出が行わ

れたことについて、「米国内ではなく中国における雇用創出を支援するもの」とシューマー議員

489 New York Times(2009年 6月 3日)“The Peril of ‘Buy American’”:

http://www.nytimes.com/2009/06/03/opinion/03weds1.html

490 同上

491 Wall Street Journal(2009年 9月 17日)“How 'Buy American' Can Hurt U.S. Firms”:

http://online.wsj.com/article/SB125306012124114135.html

492 CBC News(2009年 6月 6日)“Canadian mayors pass anti-'Buy American' resolution”:

http://www.cbc.ca/canada/story/2009/06/06/mayors-resolution.html

493 Renewableenrgyworld.com(2010年 3月 4日)“Senate Proposal Could Hurt US Wind Industry”:

http://www.renewableenergyworld.com/rea/news/article/2010/03/senate-proposal-could-hurt-us-wind-

industry

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は批判している494。これに対して米国風力エネルギー協会(AWEA)のデニス・ボード代表

(Denise Bode)は、「既に建設業界は 25%、製造業は 13%の失業率に苦しんでいる最中、さ

らに、5万人相当の失業を生み出しかねない」とし、「既に風力業界 8万 5,000 人の内半数の雇

用維持に役立ってきた米国再生・再投資法による最も効果のある雇用創出努力を台無しにするも

の495」とし、断固法案成立反対の意を表明している。

しかし、2010 年 3月現在 9.7%という高い失業率にあえぐ米国では、今後も依然として各方面

で保護主義色が色濃く影を落としていくものと予想される。

4.4 2010 年一般教書演説において示された省エネ・新エネ分野の政権戦略

4.4.1 クリーン・エネルギー経済の形成に向けて

2010 年 1月 27 日、オバマ大統領による一般教書演説が行われたが、この演説の中で、オバマ

大統領は、クリーン・エネルギー分野への投資を急ピッチで進めるドイツ、中国、インドを引き

合いに出し、米国こそクリーン・エネルギー経済国として世界経済をリードすべきであり、これ

ら諸外国への追随は断固許さないという決意を表明すると共に、不況の中で増加する気候変動問

題への懐疑派に対し、省エネおよびクリーン・エネルギー分野への支援継続の必要性を訴えかけ

た496。

このように一般教書演説では、省エネ化やクリーンかつ再生可能なエネルギー分野を今後の米

国経済の基盤を形成する新しい雇用機会とオバマ政権では捉えていることが示された形となった

が、大統領が一般教書の中で打ち出したクリーン・エネルギー関連の発言の要旨を次の表にまと

めた。

表 74 2010 年一般教書演説において打ち出されたクリーン・エネルギー関連政策

クリーン・エネルギー製品の製造拡大

住宅省エネ化措置に対するリベート支給

クリーン・エネルギー関連施設の建設

イノベーション奨励(オバマ大統領は、昨年における基礎研究分野に対する投資額は米国史

上最大であり、これが世界で最も安価なソーラーセルの開発等につながる可能性と発言。ま

た、昨年のクリーン・エネルギー分野への投資により、ノースカロライナ州のある企業は先

進電池製造関連の雇用を全米で 1,200人創出、カリフォルニア州のある企業はソーラーパネ

ル製造に 1,000 人の雇用を創出したことを紹介)

494 チャールズ・シューマー上院議員ウェブサイト(2010年 3月 3日)“Schumer, Casey, Brown & Tester

urge Obama administration to suspend stimulus program funneling billions overseas”:

http://schumer.senate.gov/record.cfm?id=322732&

495 Renewablenergyworld.com(2010年 3月 4日)“Senate Proposal Could Hurt US Wind Industry”:

http://www.renewableenergyworld.com/rea/news/article/2010/03/senate-proposal-could-hurt-us-wind-

industry

496 ホワイトハウス(2010年 1月 27日)“Remarks by the President in State of the Union Address”:

http://www.whitehouse.gov/the-press-office/remarks-president-state-union-address

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安全な原子力発電所を建設

先進バイオ燃料およびクリーンコール技術分野への投資を継続

石油・ガスの海底開発解禁に向け努力

クリーン・エネルギーを収益性のあるものにすべくインセンティブを盛り込んだ包括的エネ

ルギー気候変動法案成立

高速鉄道建設(オバマ政権では、高速鉄道建設を、米国市民の交通手段の便宜と多様化を図

るだけでなく、年間約 300万トンの温室効果ガス排出量を削減可能な「グリーン」な交通手

段の米国経済活動への導入と位置づけ497)

海外に雇用を流出させる企業に対し税優遇措置をカット

オバマ大統領は演説中、「クリーン・エネルギー分野における雇用を創出すべく、我々は生産

活動を拡大し、省エネ化を進め、インセンティブを継続的に支給することが重要である」と述べ、

就任直後に成立させた「米国再生・再投資法」による 800億ドル相当の予算を利用して、米国

のエネルギー資源の多様化を図り、外国産石油への依存度を低下させる計画を改めて確認してい

る。その目的を達成するために、原子力産業の再興に 30年ぶりに踏み出し、最先端のバイオ燃

料およびクリーンコール技術分野の急成長を図り、さらに、石油およびガスの海底採掘活動を解

禁することに対する賛同を求めている。また、クリーン・エネルギー経済への完全移行と米国に

おける何百万もの新たな雇用機会を創出すべく、国家のエネルギー独立を推進し、かつ、気候変

動問題への取り組みを推し進める包括的エネルギーおよび気候変動法案成立の必要性を訴えた498。

4.4.2 一般教書演説に対する反応

今回の大統領一般教書演説に対する各種エネルギー問題推進団体の反応は概ね良好である。米

国の有力な環境保護団体である天然資源保全協会(NRDC: Natural Resources Defense

Council)は、包括的エネルギー気候変動法案の成立を大統領が要請した点について評価499する

と共に、高速鉄道建設についても雇用創出の良い機会となりうるだけでなく、米国のエネルギー

独立にも有用500であるとしている。また、太陽エネルギー産業協会(SEWA: Solar Energy

Industrial Association)も、「米国再生・再投資法によって業界は 40%成長し、全米で 1万

497 Wall Street Journal(2009年 4月 16日)“Working on the Railroad: Obama’s Green Pitch for High-

Speed Trains”: http://blogs.wsj.com/environmentalcapital/2009/04/16/working-on-the-railroad-

obamas-green-pitch-for-high-speed-trains/tab/article/

498 ホワイトハウス(2010年 1月 27日)“Putting Washington at the Service of the Middle Class”:

http://www.whitehouse.gov/blog/2010/01/27/putting-washington-service-middle-class

499 NRDC(2010年 1月 27日)“NRDC President Frances Beinecke Backs Obama's Call to Pass Clean Energy

Legislation that Puts America Back to Work”: http://www.nrdc.org/media/2010/100127a.asp

500 NRDC (2010年 1月 28日)“NRDC Executive Director Peter Lehner Responds to President Obama's

Investment Announcement on High-Speed Rail”: http://www.nrdc.org/media/2010/100128c.asp

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8,000 人もの雇用を創出した」と現政権の政策を評価すると共に、ソーラー発電装置の設置や発

電所の建設でもさらに、海外にアウトソース出来ない雇用機会が期待できるとの見解を示した501。

その他、環境・再生可能エネルギー分野において全米でも先駆的な立場にあるカリフォルニア

州のアーノルド・シュワルツネッガー知事(Arnold Schwarzenegger)は、今回の発表を「カリ

フォルニア州の雇用問題への素晴らしいニュース」と評価し、カリフォルニア州も建設予定地の

一つとされている高速鉄道建設がもたらす経済効果に大きな期待を示した502。

一方、一般教書演説に対する共和党の反対演説は、バージニア州のボブ・マクドネル州知事

(Bob McDonnell)が同党を代表して行ったが、マクドネル州知事はこの中で、オバマ政権によ

る石油・ガスの海底採掘計画並びに原子力計画の立ち遅れを指摘し、また、キャップ・アンド・

トレード制度によるエネルギー税の導入は雇用喪失を招くものであると一部の施策に対する批判

を展開している503。それ以外にも、一般教書演説の中でオバマ大統領はクリーン・エネルギー経

済移行策の一つとして、ペンシルベニア州スリーマイル島の原子力発電所事故以来、再開されな

かった原子力発電所の新規建設を宣言したが、今後の放射性廃棄物の処理問題については具体案

を提示しておらず、全米 100 カ所以上に一時的に貯蔵したままの 7万 7,000トン以上の放射性

廃棄物の今後の処理が不透明であることに対しては各方面から批判の声が上がっている504。

4.5 2010 年初旬現在で審議中の省エネ・新エネ関連連邦法案

オバマ政権発足後から現在に至るまで、省エネおよび再生可能エネルギーに関連する各種法案

が米国議会において審議されている。以下では 2010 年初旪現在で審議中の主要法案について、

その内容や審議状況を簡単に紹介する。

4.5.1 気候変動関連法案

気候変動関連法案の審議は議会において難航しており、2010年 2月初旪時点でオバマ大統領

自身、包括的な気候変動法案の成立に関しては敗北とも取れるような発言をするなど505、気候変

動関連法案を巡る情勢は厳しいものとなっている。また、世論の関心も低下しており、また、地

球温暖化問題自体がでっち上げだと考える米国民の割合は 2008年に比べて 2 倍の 16%にまで増

501 Environment News Service(2010年 1月 27日)“Clean Energy Jobs Top Priority in Obama's State of

the Union Address”: http://www.ens-newswire.com/ens/jan2010/2010-01-27-02.html

502 同上

503 CBS News(2010年 1月 27日)“Bob McDonnell's GOP Response: Full Text”:

http://www.cbsnews.com/stories/2010/01/27/politics/stateofunion/main6148483.shtml

504 ロイター(2010年 3月 5日)“Obama, politics and nuclear waste”: http://blogs.reuters.com/great-

debate/2010/03/05/obama-politics-and-nuclear-waste/

505 New American(2010年 2月 4日)“Obama Concedes Cap-and-trade Defeat”:

http://www.thenewamerican.com/index.php/usnews/politics/2884-obama-concedes-cap-and-trade-defeat

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加506している。議会ではこの他にも医療保険制度改革法案等、政権にとって最も優先度が高い法

案に関する審議が重なっていることから、気候変動法案に関する審議は医療保険制度改革法案が

成立した後に行われるとみられる。以下では、気候変動関連法案のうち主要なものを簡単に取り

まとめた。

「2009 年米国クリーン・エネルギーおよび安全保障法案(American Clean Energy and

Security Act of 2009: H.R.2454、通称ワックスマン・マーキー法案)」

キャップ・アンド・トレード制度による排出権取引条項や建造物を対象とした新しい省エネ基

準等を含む同法案は、今後の米国のエネルギー戦略の根幹となる包括的な気候変動関連法案とし

て高い注目を集めた。この法案では、米国におけるエネルギー消費量を 2020 年までに約 5%、

2030 年までには約 12%削減するとしている他、温室効果ガス排出量を、キャップ・アンド・ト

レード制度の実施により 2020 年までに 2005 年比で 17%、2050年までに同 83%削減することを

定めている507。

同法案の審議は 2009年 5 月中旪から開始され、翌 6月 26日に賛成 219票、反対 212票の僅

差で下院を通過した同法は、下院本会議投票では、共和党から賛成票へ流れた議員は 8名に留

まった一方で、民主党からは 44名が反対票に回るなど、民主党からの離党が目立ち、カリスマ

的人気を誇って当選したオバマ大統領の手腕の限界を印象付ける結果ともなった。

「クリーン・エネルギー雇用および米国パワー法案(Clean Energy Jobs and American Power

Act: S. 1733、通称ケリー・ボクサー法案)」

上記で紹介した「2009 年米国クリーン・エネルギーおよび安全保障法案」の上院案であるが、

本法案が成立することで、①キャップ・アンド・トレード制度により消費者が負担するエネルギ

ー費用が増大する、②エネルギー集約型産業が、よりコストのよりかからない海外に拠点を変更

する、③それにより米国内の雇用状況が悪化するといった影響が出ることに対する懸念が多方面

から出されていることもあり、審議は難航している508。このため、法案の仕切り直しを図るべく、

超党派有力議員のジョン・ケリー(John Kerry:マサチューセッツ州選出、民主党)、リンジ

ー・グラハム(Lindsay Graham:サウスカロライナ州選出、共和党)、ジョー・リーバーマン

(Joe Lieberman:コネチカット州選出、独立系)が 2009 年末から妥協案作成に動き出している509が、2010年 3 月に入った時点で法案は完成していない。

506 ロイター(2010年 2月 25日) “Key senators do not see climate bill in 2010”:

http://www.reuters.com/article/idUSTRE61O5GR20100225

507 Politico.com(2009年 6月 28日)“House passes climate-change bill”:

http://www.politico.com/news/stories/0609/24232.html

508 ロイター(2009年 7月 16日)“Cap-and-trade bill economic benefits disputed in Senate”:

http://www.ibtimes.com/articles/20090716/cap-and-trade-bill-economic-benefits-disputed-in-

senate.htm

509 Wall Street Journal(2009年 12月 10日)“Climate Bill: Kerry, Graham and Lieberman’s Compromise

Plan”: http://blogs.wsj.com/environmentalcapital/2009/12/10/climate-bill-kerry-graham-and-

liebermans-compromise-plan/tab/article/

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「米国再生のための炭素制限・エネルギー法(Carbon Limits and Energy for American

Renewal (CLEAR) Act、S.2877)」

2009 年 12月にマリア・カントウェル議員(Maria Cantwell:ワシントン州選出、民主党)ス

ーザン・コリンズ議員(Susan Collins:メーン州選出、共和党)によって提出された法案で、

キャップ・アンド・ディビデント制度(cap and dividend)という排出権の売却収入の 75%を米

国の納税者に分配する方式を提示したことで注目された510。

4.5.2 住宅を対象とした省エネおよび耐候化関連法案

住宅を対象とした省エネ措置については、2009年 2月に成立した「米国再生・再投資法」

(例:第 1121条で住宅を対象とした省エネ化に対する税控除措置を規定)により既に様々なリ

ベートや税控除等のインセンティブプログラムが動き出している一方で、2009 年 6月に下院を

通過したワックスマン・マーキー法案(前述参照)においても、第 202条で「エネルギーおよ

び環境パフォーマンス改良プログラム(REEP: Retrofit for Energy and Environmental

Performance)」として、住宅および非住宅建造物を対象としたエネルギー効率および環境基準

の開発を行うことが定められている。

2010 年 3月現在、その他にも住宅の省エネ化を対象とした税優遇措置法案は複数存在511する

が、例えば「建造物省エネ拡大インセンティブ法案(The Expanding Building Efficiency

Incentives Act of 2009、S. 1637)」では、新築住宅の省エネ化措置に対する 1,000~2,000

ドルの税控除措置を 1年間延長する(よって 2012年を通して有効となる)条項を盛り込んでい

る。

さらに、住宅耐候化推進に向けてオバマ大統領が提唱した「ホームスター・プログラム

(HOMESTAR Program)」を法制化することを目指す動きも民主党上院議員を中心に進んでいる512。

ホームスター・プログラムでは、改修措置の対象が住宅の一部であるか、それとも、全体に対す

るものかによって金額等の細かな規定は違ってくるものの、現在の草案では、最大 3,000 ドル

までのリベートを支給する方向で作業が進んでいる。プログラム予算額は 60 億ドルが想定され

ており、これにより最大 300 万軒の住宅における住宅対候化が行われるとあって、失業率 25%

の苦境に立たされている建設業界や関連業界からは、法案の成立に向けて歓迎の声が上がってい

510 Huffington Post (2009 年 12 月 14 日) “The Cantwell-Collins CLEAR Act Helps Consumers, the Climate,

and the Economy”: http://www.huffingtonpost.com/mike-sandler/the-cantwell-collins-

clea_b_390353.html

511“Summaries: Energy Efficiency Tax Bills”:

http://energy.senate.gov/public/_files/EnergyEffiencyTaxBillsSummaries0.pdf

512 エネルギー・環境小委員会の民主党スタッフによる草案:

http://energy.senate.gov/public/_files/END10173.pdf

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る513。また、エネルギー・環境小委員会(House Energy and the Environment Subcommittee)

委員長のエドワード・マーキー議員(Ed Markey: マサチューセッツ州選出、民主党)は、この

プログラムの実施により、従来型の家庭用電気機器から省エネタイプのものへの取替えが進み、

家庭と電力企業の間で電力消費量の情報交換が行われることにより最終的に節電効果が期待され

るスマート・メーター(smart meter)の導入や、ワイヤレス型の通信ネットワーク化が進むと、

スマートグリッド整備面への効果にも期待を寄せている。このプログラムの実現による経済効果

は、今後 2年間に 15万人分の雇用創出、建物所有者が負担する電気代の削減効果が 30億ドル

超、温室効果ガスの削減量が自動車 400 万台からの排出ガスに相当するとの試算が出ており514、

各方面からの期待は高い。

4.5.3 再生可能エネルギー関連法案

再生可能エネルギー産業が一刻も早い成立を待ち望んでいるのが、連邦レベルによる再生可能

エネルギー発電基準(RES: Renewable Electricity Standard)の導入をうたう連邦法515の成立

である。

このような連邦基準設置を規定する法案は複数あり、2010年 3 月現在、上院において審議中

の「米国クリーン・エネルギーリーダーシップ法案(American Clean Energy Leadership Act

of 2009、S.1462)」、既に下院を通過している前出の「2009年米国クリーン・エネルギーおよ

び安全保障法案」並びにその上院版である「クリーン・エネルギー雇用および米国パワー法案」

がそれらの例として挙げられる。特に上院案では、2020 年までに電力の 15%(下院法案では同

年までに 20%と規定)を再生可能エネルギーからの発電または省エネ措置により賄うことと規

定516しており、下院案よりは緩やかな内容となっている。

RES の目標設定により、技術開発や事業拡大等の計画が実施し易くなるため、各種関連団体は

法案審議自体を歓迎517する一方、より厳しい目標値設定を求める声が強い。例えば、米国風力発

513 Wall Street Journal(2010年 3月 10日)“Owens Corning Supports President Obama's HOMESTAR

Program to Create U.S. Jobs and Improve Energy Efficiency in America's Homes”:

http://online.wsj.com/article/PR-CO-20100303-907948.html?mod=wsjcrmain

514 ニューヨークタイムズ(2010年 3月 8日)“Democrats to Turn Spotlight on Energy Efficiency

Programs This Week”:

http://www.nytimes.com/gwire/2010/03/08/08greenwire-democrats-to-turn-spotlight-on-energy-efficien-

54735.html; The United States Committee on Energy and Natural Resources(2010年 3月) “Home Star:

A Short Summary”: http://energy.senate.gov/public/_files/HomeStarShortSummary.pdf

515 Renewable Energy Focus.com(2010年 2月 10日)“US renewable energy industry wants key

legislation passed this year”: http://www.renewableenergyfocus.com/view/7173/us-renewable-energy-

industry-wants-key-legislation-passed-this-year/

516 Energy.senate.gov “American Clean Energy Leadership Act of 2009”:

http://energy.senate.gov/public/_files/FULLSUMMARYACELAEnergyBill20090.pdf (p.2)

517 Renewable Energy Focus.com(2010年 2月 10日)“US renewable energy industry wants key

legislation passed this year”

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電協会(American Wind Energy Association)を始めとする各種団体が所属する「雇用のため

の再生可能エネルギー発電同盟(RES Alliance for Jobs)」は、再生可能エネルギーによる電

力供給量の目標値を、2025年までに全体の 25%に引き上げるよう求めている518。この団体の委

託によりナビガント・コンサルティング社(Navigant Consulting)が実施した調査報告による

と、RES 目標値を 2025 年までに 25%と設定した場合、新たに 27 万 4,000 人分の雇用を創出し、

さらに、236 万人分の通年雇用効果があるという519。この声が審議にどの程度反映されるか、今

後の審議状況が注目される。

4.6 省エネ・新エネ分野における海外企業の米国市場への進出状況

4.6.1 米国市場の商機にかける海外企業

今後大きく飛躍すると期待されている米国省エネ・再生可能市場における海外企業の進出が著

しい。

例えば、風力発電部門では、2000~2008 年の間に米国における発電容量が 10倍に増加するな

ど520その成長は目覚しく、これにチャンスを見出した海外企業が、米国企業との提携などを含め、

米国市場に新規参入するケースが目立つようになっている。2008 年の米国風力タービン市場の

企業別シェア(図 1 参照)を見ると、市場の約 4 割は GE 風力部門(GE Wind)が占めているが、

第 2 位以降はデンマーク、インド、スペイン、日本の各企業が名を連ねており、米国風力ター

ビン市場の半分を外国企業が占めている。

図 1 米国風力タービン市場の企業別シェア内訳(2008 年)

518 RES-Alliance for Jobs (2010年 2月 4日)“Jobs Impact of a National Renewable Electricity

Standard”: http://www.res-alliance.org/res-jobs-study

519 Navigant Consulting, Inc. (2010年 2月 2日) “Jobs Impact of a National Renewable Electricity

Standard –Final Report”:

http://www.res-alliance.org/public/RESAllianceNavigantJobsStudy.pdf(p.4)

520 エネルギー省(2009年 7月)“2008 Renewable Energy Data Book”:

http://www1.eere.energy.gov/maps_data/pdfs/eere_databook.pdf (p.57)Wind: Summary

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注:REpower(ドイツ)は 2009年 12月に Suzlon社(インド)に買収されている。

出所:エネルギー省(2009年 7月)“2008 Renewable Energy Data Book”:

http://www1.eere.energy.gov/maps_data/pdfs/eere_databook.pdf

特に最近は中国系企業の風力発電市場での活躍も目立ってきており、中国企業のゴールドウィ

ンド社(Goldwind)は、米国企業ダコタ・ウィンド社(Dakota Wind)と提携し、2009年 12月

にはミネソタ州に風力タービン 3機(1機あたりの発電容量は 15MW)を建設した他、2010 年末

までには発電容量を 150MWまで拡大する予定としている。また中国国営企業の中国広東核電集

団(China Guangdong Nuclear Power Corp)も 2010 年中に米国で風力発電所を建設し、2020 年

までに発電容量を 3,000MWまで強化するとの目標を出している521。

さらに、太陽光や太陽熱を利用するソーラー発電が米国全体の発電量に占める割合は 0.1%522

とまだまだ僅かではあるものの、2000~2008年の間に 3倍に増加523しており、このソーラー部

門においても、近年米国市場における海外企業の存在感が益々強まりつつある524。元々、世界太

陽電池生産市場の上位約 40%は、中国、日本、ドイツ系企業で占められるなど525、海外企業が

この分野において先手を走っており、また、中国526や台湾等アジア諸国で実施されている国を挙

521 Lexis-Nexisの SNL Electric Utility Report(2010年 2月 15日) “Most renewable energy stimulus

money going to companies outside US”

522 エネルギー省(2009年 7月)“2008 Renewable Energy Data Book”(p.10) U.S. Electric Net

Generation (2008)

523 同上(p.66)U.S. Total Installed Solar Energy Nameplate Capacity and Generation

524 同上(p.69)U.S. Cell Production 2008

525 エネルギー省(2009年 7月)“2008 Renewable Energy Data Book”(p.10) U.S. Electric Net

Generation (2008)(p.69)Global Solar PV Production 2008

526 2009年 5月、中国政府が「新エネルギー産業振興規画」(2009~2020年)を作成中で、再生可能エネルギー

分野に対する 4,400億ドルの予算充当が検討されている事が分かっている。

出所:EXPO Solar PV Korea (2009年 10月 29日)”Can Asia Become a New Solar Power Hub?”:

http://www.exposolar.org/2010/japan/press/contents.asp?idx=64&page=1&search=&searchstring

ドイツ

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げてのソーラー産業発展政策も拍車をかけ、クリーン・エネルギー経済黎明期の米国市場に対す

る海外企業からの視線は熱いものとなっている。

米国における太陽電池生産市場の企業別シェア(図 2参照)を見ると、現在市場の約 7 割を

米国企業が占めているが、ドイツおよびイギリス系企業のシェアも約 24%を占めている。ソーラ

ー電子製品メーカー世界大手のドイツ企業ソーラー・ワールド AG 社(SolarWorld AG)は、

2006 年からカリフォルニア州やオレゴン州など 3州において工場を構え、シリコン・ウエハー

や PV 製品の製造を進めている527。また、2009年 11月に中国最大手のサンテック社(Suntech)

がアリゾナ州に全米初の製造工場の建設計画を発表528。また、2010 年 3月には中国の太陽光発

電装置メーカーのトリナ・ソーラー社(Trina Solar)が米国企業のエスコ・ホールセール・エ

レクトリック社(Essco Wholesale Electric)への販売契約の締結を発表529したほか、多数の海

外企業が市場参入や生産拡大を行い、米国市場における足場固めに取り掛かっている。

図 2 米国太陽電池清算市場の企業別シェア内訳(2008 年)

出所:同上

4.6.2 米国再生・再投資法の資金が外資系企業に流出との批判噴出

このような海外企業躍進の中、連邦政府の資金が外資系企業に付与されていることに対する批

判が高まっている。米国首都ワシントン DC にあるアメリカン大学(American University)は、

米国再生・再投資法から予算が拠出されている再生可能エネルギー事業の予算約 22億ドルのう

527 Solar World “Our core business is photovoltaics”: http://www.solarworld-usa.com/About-

us.155.0.html

528 サンテック社”History and Milestones”: http://www.suntech-

power.com/index.php?option=com_content&view=article&id=81&Itemid=80&lang=en

529 Yahoo! Finance(2010年 3月 10日)“Trina Solar Signs Sales Agreement with U.S. Wholesale

Distributor Essco”: http://finance.yahoo.com/news/Trina-Solar-Signs-Sales-prnews-

209204868.html?x=0&.v=82

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ち約 80%が米国外に本社を構えるエネルギー関連企業に流出していると分析しており、また、風

力発電企業に対する連邦補助金 10億ドルのうち約 8 割が海外を本社とする企業に付与されてい

るという530。

エネルギー省が「米国再生・再投資法」の資金を利用して実施するプログラムの下で、単体

のグラントとしては受給額最大となる 1 億 7,800万ドルを支給されたのは、インフラおよび不

動産開発投資企業であるバブコック・アンド・ブラウン社(Babcock & Brown Ltd.)である。

同社はオーストラリア企業であり、日本で生産された三菱重工製風力タービン 118機を用いて

テキサス州に風力発電所を建設する事業を手がけている531。また、テキサス州の大規模風力発電

所建設事業に関して、部品や装置の供給面や資金面での中国系風力タービンメーカーであるエ

ー・パワー発電システム社(A-Power Energy Generation Systems)に大きな利益が発生するこ

とが政治的にも問題となっており、チャールズ・シューマー上院議員が約 4億 5,000万ドルに

及ぶグラント支給阻止要請を出すまでに至っている532。

総額で見ると、「米国再生・再投資法」によるクリーン・エネルギー関連のグラント総支給額

のトップは、スペイン系の公益企業であるイベルドロラ SA社(Iberdrola SA)の 5億 7,700 万

ドルで、その他高額支給先として、2億 7,750万ドルを付与されたポルトガル系の公益企業ホラ

イズン EDPR社(Horizon-EDPR)が続いており、一方で米国企業は全体で総額 2億 9,070万ドル

の獲得のみに留まっているという533。

このため、2011 年度大統領予算案ではクリーン・エネルギー技術関連予算としてさらに 47億

ドルの予算措置を取り、うち 24億ドルを省エネおよび再生可能エネルギー関連プログラムに割

り当てることを提唱しているものの、米国企業がその恩恵を受ける可能性は尐ないと、今回の調

査を担当したアメリカン大学関係者は見ている。

4.7 省エネ・新エネ分野の米国市場動向

4.7.1 2010 年米国省エネ市場動向

米国の省エネ市場の動向は様々な指標から探ることが出来るが、一般的に同市場は急速な拡大

傾向にある。以下は、省エネ市場の状況を示す代表的な指標を紹介したものである。

○ 米国の公益企業の省エネプログラム関連支出:2009年に前年比 43%増の 53億ドル

に達する。内訳は、節電(electric energy efficiency)関連に 44億ドル、天然ガ

ス関連に 9億 3,000 万ドルで、このうち、天然ガス関連(住宅対象のものが多い)

530 SNL Electric Utility Report(2010年 2月 15日) “Most renewable energy stimulus money going to

companies outside US”

531 同上

532 ロイター(2009年 11月 5日)“Sen. Schumer assails Texas wind power project”:

http://www.reuters.com/article/idUSTRE5A44JR20091105

533 SNL Electric Utility Report(2010年 2月 15日) “Most renewable energy stimulus money going to

companies outside US”

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の支出増大が顕著で前年比 79%増を記録し、節電関連(商業および産業施設が中

心)も同 38%増の伸びを見せている534。

○ 燃費の良い自動車売上:オバマ政権では、2012年以降燃費基準の厳格化を予定して

おり、2016年までの燃費達成目標は 2009 年比 36%増の 1ガロンあたり 34.1マイル

としている。こうした状況に対応すべく、自動車メーカー各社はエンジンサイズの

拡大、部品の軽量化、LED(発光ダイオード)電球の使用、省エネ型エアコン装置の

搭載等により自動車のエネルギー効率並びに燃費向上を図っており、2010年もこれ

らの分野における技術開発や製品の堅調な需要が期待できる。2009 年 3月には、オ

バマ大統領が 2015 年までに全米の道路にプラグインハイブリッド電気自動車

(PHEVs : Plug-in Hybrid Electric Vehicles)を 100 万台走らせるというビジョ

ンを発表し、それを受けて連邦政府による当該分野への研究開発プログラムも拡充

されている(トヨタは、業界初の自社製リチウムイオン・バッテリーを搭載したプ

ラグイン・プリウスを 2011年に発表予定)。また電気自動車(EV: Electric-Drive

Vehicles)分野においても、2010年末には GMが「シボレーボルト」および日産自

動車が「リーフ(Leaf)」投入を予定しており、メーカー側では 1年目の予想自動

車販売台数を 1万台と予想している535。

○ 住宅向け省エネ製品・サービス:地球環境保護関連市場の専門調査企業であるパイ

ク・リサーチ社(Pike Research)の報告によると、米国の住宅販売市場の売り上げ

が減尐し、近年の住宅リフォーム市場の鈍化による住宅向けの製品およびサービス

の需要が大幅に落ち込みを見せるのと対照的に、住宅向け省エネ製品・サービスの

売上が伸びているという。同社は当該市場の 2009~2014 年にかけての市場動向を次

のように予測している536。

表 75 パイク・リサーチ社による米国省エネ製品・サービス市場動向予測

エネルギー監査ビジネス市場は、2009年の 81億ドルから 2014年には約 3倍の 234億ドルに

急成長

省エネ住宅改装市場(電気系統システムのアップグレード、家庭用電気器具、大型装置、冷

暖房換気装置(HVAC)、屋根・窓・ドアの取替えを含む)は、2009 年の 383億ドルから 2014

年までに 502億ドルに拡大

エネルギースター認定の冷蔵庫および洗濯機の売上は 2009~2014 年にかけて 219億ドルに拡

534 Intelligentutility.com(2010年 2月 25日)“U.S. Utilities Spent S5.3 Billion on Energy

Efficiency Programs in 2009”: http://www.intelligentutility.com/article/10/02/us-utilities-spent-

53-billion-energy-efficiency-programs-2009

535 Greencars.com(2010年 2月 25日)“2010 Market Trends”:

http://www.greenercars.org/highlights_mkttrends.htm

536 Appliancedesign.com(2010年 2月 8日)“Home Energy Efficiency Market Poised for Strong Growth”:

http://www.appliancedesign.com/Articles/Breaking_News/BNP_GUID_9-5-2006_A_10000000000000752915

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4.7.2 2010 年米国新エネ市場動向

2008 年の米国における発電総量において、再生可能エネルギーが占める割合は 3.1%(うち、

バイオマス 1.4%、風力 1.3%、地熱 0.4%、ソーラー0.1%)しかなく、石炭(48.5%)、天然ガス

(21.3%)、原子力(19.6%)、水力(6.0%)、石油(1.1%)といった従来型エネルギーが主と

なっており537、依然として再生可能エネルギー由来発電の黎明期であること、そして、同分野の

エネルギービジネスが飛躍できる余地があることがうかがえる。

再生可能エネルギーのうち、米国発電量の 1.4%と最大の割合を占めるバイオマス538において、

2000~2008 年にかけて発電容量や発電量は大きく変化していない。個別分野を見ると、米国に

おけるバイオディーゼル燃料539生産量は 2008年は 6億 6,700万ガロンで、この内 8割は欧州市

場に向けに販売されている。しかし、2008 年に欧州において米国からのバイオディーゼル燃料

の輸入に関する反発の動きに見舞われ、さらに、米国産バイオディーゼル燃料の原料の大半を占

める大豆価格が 30%上昇したことも重なって、閉鎖に追い込まれるバイオディーゼル燃料生産工

場も出ている。一方、2010年に注目される分野としては、セルロース系エタノール生産に関す

る動きを挙げることが出来、特に、産業用酵素生産世界最大手であるデンマークのノボザイムズ

社(Novozymes)が生産工程に必要な新型酵素の商業化に成功したことを発表し、バイオエタノ

ール燃料540が 1ガロンあたり 2ドルという、ガソリン価格と同じかそれ以下の値段で提供可能に

なるという画期的な進歩を遂げている541。さらにノボザイムズ社の競合である酵素メーカー大手

ダニスコ社(Danisco)の一部門であるジェネンコア社(Genencor:本社カリフォルニア州)も

同様の価格引下げを実現できる新型酵素の商業化を発表しており、今後の市場化競争に注目され

る542。

また米国発電量の 1.3%を占める風力発電は、世界的にみても最も急速に成長する再生可能エ

ネルギー技術分野であり543、米国でも、2000~2008年の間に風力による発電容量は 10倍に増加

544し、特に 2008 年には前年度比 51%の記録的な成長を記録545する等、米国の風力発電市場の急

537 エネルギー省(2009年 7月)“2008 Renewable Energy Data Book” :

http://www1.eere.energy.gov/maps_data/pdfs/eere_databook.pdf(p.10) U.S. Electric Net Generation

(2008)

538 同上

539 菜種油、大豆油など植物抽出油を軽油に混合したもの。

540 サトウキビやトウモロコシ等を発酵させ、蒸留して生産したエタノールを、そのまま、または、ガソリンと

混合した燃料として、自動車等の燃料に使う。

541 Green Car Congress(2010年 2月 16日)“New Novozymes Enzymes for Cellulosic Ethanol Enable

Production Cost Below USS2 Per Gallon: http://www.greencarcongress.com/2010/02/cellicctec2-

20100216.html

542 ニューヨークタイムズ(2010年 2月 16日)“Economics Improve for First Commercial Cellulosic

Ethanol Plants”: http://www.nytimes.com/cwire/2010/02/16/16climatewire-economics-improve-for-

first-commercial-cellu-93478.html

543 同上(p.4)Key Findings, continued

544 同上 (p.57)Wind: Summary

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速な成長が著しい。風力タービンの世界大手であるドイツのシーメンス社(Siemens)も、15年

後のグローバル風力発電市場は現在の 400 億ドル規模から 7倍以上の 3,000億ドル市場に拡大

するとし、最大の成長市場を北米地域と見据えている546。

地熱は米国発電量の 0.4%で、米国の地熱発電による発電量は 2000~2008年の間あまり変化

がないものの、この分野における米国の発電容量は世界第 1位であり、その殆どがカリフォル

ニア州に集中している547。現在米国内で 144カ所において新たな地熱発電所が建設中であり、今

後 2~3 年の間に発電容量 7GW の達成も可能と見られている。2008 年には、全米で必要とされる

総電力量の 0.4%548(3,040MW549)が地熱発電により賄われていたが、エネルギー省では短期的に

地熱発電によって全米で必要とされる総電力量の 5%(20GW)を供給可能であり、長期的には

100GW までの成長を予測している550。その他、最も有効な省エネおよび建造物からの温室効果ガ

ス排出量削減措置の一つとされる地熱ヒート・ポンプの普及は依然進んでいないものの、環境保

護庁(EPA: Environmental Protection Agency)では、可能な限り導入を進めることで、2030

年に米国が新たに必要とする電力量(218GW)の 42~48%に相当する電力生産を行う発電所(発

電容量は 91~105GW)の新規建設を回避でき、また、毎年 330億~380億ドルの電気代節減が可

能と推計している551。

最後に、ソーラー発電が 2008 年の米国発電量のうち占める割合は 0.1%しかないが、ソーラ

ーPV(solar PV)市場は今後数年間に亘り高い成長率を記録し、中でもモジュール生産やシス

テム設置において大型産業に発展するとの予測が出ている552。今後もソーラー市場への新規参入

は継続して行われる見込みであるが、特に商業ベースの大規模 PV およびセントラルステーショ

ン型553公益企業規模 PV(central-station utility-scale PV)の目覚しい成長が予測されてお

545 同上(p.17)Renewable Electricity in the U.S.: Summary

546 Greeninc.blogs.nytimes.com(2010年 2月 9日)“Siemens Touts Growth in Renewables and the Value

of the American Market”: http://greeninc.blogs.nytimes.com/2010/02/09/siemens-touts-growth-in-

renewables-and-the-value-of-the-american-market/

547 エネルギー省(2009年 7月)“2008 Renewable Energy Data Book”(p.73)Geothermal: Summary

548 同上(p.10) U.S. Electric Net Generation (2008)

549 同上(p.74)表中の U.S. Geothermal Electricity Generation

550 NewEnergyWorldNetwork.com(2009年 12月 16日)“US geothermal power to grow in 2010, according to

GEA”: http://www.newenergyworldnetwork.com/renewable-energy-news/news_type/policy-by_technology-

new-news/us-geothermal-power-to-grow-in-2010-according-to-gea.html

551 Sensors(2010年 2月 1日)“Monitoring Geothermal Heat Pumps”: http://www.sensorsmag.com/da-

control/monitoring-geothermal-heat-pumps-6745

552 CEE(2010年 3月 5日)“The State of the Efficiency Program Industry Budgets, Expenditures, and

Impacts 2009”: http://www.cee1.org/files/StateofEEIndustry2009.pdf

553 周囲に設置された多数の反射鏡によって中央塔に太陽熱を集めて水を沸騰させ、それにより発生する蒸気で

タービンを押し発電する方法。

出所: Legalplanet. Com(2010年 2月 23日)“DOE Bets on Central Station Solar — Is It the Right

Horse?”: http://legalplanet.wordpress.com/2010/02/23/doe-bets-on-central-station-solar-is-it-the-

right-horse/

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り、ソーラー発電装置導入のスピードは今や風力発電部門を凌ぎ、発電分野において最も急速に

成長する分野となっている。一方で、斬新な PV技術の実用化は極めて難しく、今後 10年間程

は結晶化シリコン(crystalline silicon)アモルファスシリコン(amorphous silicon)、カ

ドミウムテルル半導体(カドテル、CdTe)、CIGS(太陽電池等に利用される素材の一種で、銅、

インジウム、ガリウム、セレンの化合物を用いた薄膜状物質)のみが市場化されるに留まると見

込まれている554。

以上

おことわり

本報告書は、利用者の判断・責任においてご利用ください。万が一、本報告書に基づく事業展

開で不利益等の問題が生じた場合、ジェトロは一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

554 Renewableenergyfocus.com(2010年 2月 10日)“Large solar PV to dominate US market”:

http://www.renewableenergyfocus.com/view/7428/large-solar-pv-to-dominate-us-market/

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