1
最終処分場でメタンの数値を図る。ごみがすべて むき出しになっているため、周囲への汚染も深刻だ ※1「よりよいアジアの未来を目指して」をテーマ に、アジアの“隣人”たちと顔の見える関係の中 で、共有する課題を解決するための取り組みを助 成するプログラム。 ※2 ごみを「Reduce(減らす)」、「Reuse(再使 用)、「Recycle(再資源化)」の略。資源の再利 用のキーワードとして使用される。 8寿10 調特集 グローバル人材の育成 世界という名の舞台へ インドネシアの高校生と ごみ問題を解決! 埼玉県 from SAITAMA 2つの国の高校生が協力し合ってごみ問題に立ち向かう―。 埼玉県の筑波大学附属坂戸高等学校の生徒が立ち上がり、 インドネシアのコルニタ高校との協働プロジェクトが始まった。 国立公園の清掃活動を終えた両校の生徒。「みんなでやると あっという間でした!」。互いのごみ問題について話しながらの 作業は有意義だったようだ “一つ一つの心掛けが大切”と話し合 い、みんなで食べたランチのごみも分別 11 7ごみ山で出会った子どもたち。みんな無邪気に走り 回っていたが「学校には行っているのかな・・・。もっ と話してみたかったです」 坂戸市 ごみを探して森の中に 入っていくインドネシア と日本 の 高 校 生 。共に 汗を流すことで連帯感 が生まれる May 2011 20 21 May 2011

インドネシアの高校生と ごみ問題を解決! · 校の生徒たちが協働で解決策をあぶり出された問題点を基に、両や地域調査などを実施。

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: インドネシアの高校生と ごみ問題を解決! · 校の生徒たちが協働で解決策をあぶり出された問題点を基に、両や地域調査などを実施。

最終処分場でメタンの数値を図る。ごみがすべてむき出しになっているため、周囲への汚染も深刻だ

※1「よりよいアジアの未来を目指して」をテーマに、アジアの“隣人”たちと顔の見える関係の中で、共有する課題を解決するための取り組みを助成するプログラム。※2 ごみを「Reduce(減らす)」、「Reuse(再使用)、「Recycle(再資源化)」の略。資源の再利用のキーワードとして使用される。

       

 日本からはるか6000キロ。

飛行機で約7時間、インドネシア

の首都ジャカルタに到着すると、

市街地には高層ビルが立ち並び、

道路には車やバイクがひしめき

合っていた。「なんだかイメージ

と違うなあ」。そんなことを考え

ながら幹線道路に入ると、バスの

車窓から、あちこちにごみが散ら

ばっているのが見えた。ペットボ

トル、ビニール袋、新聞紙、紙パッ

ク…。何もかもが、日本では見た

ことのない光景だ。

 3月中旬、筑波大学附属坂戸高

等学校の2年生5人は、公益財団

法人トヨタ財団の「アジア隣人プ

ログラム」※1の活動の一環で、生

まれて初めてインドネシアを8

日間訪れた。

 坂戸高校は全国でもいち早く、

初めての途上国へ

ゴール農科大学附属コルニタ高

校とともにごみ問題に取り組ん

でいる。

 「インドネシアと日本、共通の

課題を考えてたどり着いたのが

〝ごみ〞でした」と話すのは、この

活動の立役者となった農業科の

建元喜寿先生。流ちょうなインド

ネシア語を話す彼は、インドネシ

アの青年海外協力隊OB。「昔か

ら国際協力に興味はあったので

すが、現職教員特別参加制度があ

ると知って。教師生活10年という

区切りを迎え、挑戦してみようと

思ったんです」。2008年から

2年間、地方の国立公園に派遣さ

れ、地域住民や公園の来訪者への

環境教育、エコツーリズムのプロ

モーション活動などに携わった。

 そして帰国後、協力隊の経験を

いかに生徒たちに伝えるべきか

模索した時―。「一回きりの交流

ではなく、生徒が自ら考え、継続

的に行動できるような仕組みを

作りたかったんです」。そこで見

つけたのがトヨタ財団のプログ

ラムだった。真っ先に参加に手を

挙げたリーダーの北川拓実くん

は、「ごみは僕たちにとっても身

近な問題。インドネシアとの違い

にも興味がありました」と話す。

 2年間のプロジェクトでは、そ

れぞれの国や学校が抱えるごみ

問題を共有し、現地訪問やテレビ

電話を通じてディスカッション

や地域調査などを実施。そこから

あぶり出された問題点を基に、両

校の生徒たちが協働で解決策を

考えていくというものだ。

 「スラマットシアン!」

 「こんにちは!」

 インドネシア語と日本語であ

いさつを交わす両校の生徒たち。

共に学んで

つながるきずな

特集 グローバル人材の育成世界という名の舞台へ

インドネシアの高校生とごみ問題を解決!

埼 玉 県

from SAITAMA

2つの国の高校生が協力し合ってごみ問題に立ち向かう―。埼玉県の筑波大学附属坂戸高等学校の生徒が立ち上がり、インドネシアのコルニタ高校との協働プロジェクトが始まった。

国立公園の清掃活動を終えた両校の生徒。「みんなでやるとあっという間でした!」。互いのごみ問題について話しながらの作業は有意義だったようだ

“一つ一つの心掛けが大切”と話し合い、みんなで食べたランチのごみも分別

テレビ電話で顔を合わせてはい

たものの、初対面はお互いちょっ

と恥ずかしそうだ。

 プロジェクトのキックオフと

なる今回の滞在。「インドネシア

の環境問題を肌で感じてほしか

った」と建元先生。両校の生徒が

3R※2の取り組みなどを発表し

合った後、国立公園の清掃活動を

実施。途中、ヒルにかまれるなど

〝途上国ならでは〞のハプニング

もあったが、次第に打ち解けてい

った。

 その後、皆で集めたごみを持っ

て最終処分場に。そこで出会った

のが、ごみ山で働く子どもたちだ

った。「悲しそうな顔をしている

のかなと思っていたら、とても素

敵な笑顔をしていました。苦しい

生活のはずなのに、なんでだろう

…。もっと深く知りたいです」と

鈴木球予さん。現地での体験を通

じて、生徒たちはそれぞれの〝新

たなテーマ〞を発見したようだ。

 今後は月2回、毎回テーマを設

けテレビ会議を通じて議論。さら

に、両校の生徒が行き来し、最終

的には、日本語、英語、インドネシ

ア語でごみ問題の解決策を一冊

の本にまとめる予定だ。「海外っ

て遠い存在だと思っていたけれ

ど、一気に身近に感じました。も

っといろいろなことが話せるよ

うに英語も頑張りたい」と中村勇

太くんは意欲的だ。

 実は彼らが今回旅立ったのは、

3月11日の東日本大震災の翌日。

現地では、町を歩く人々に「家族

は大丈夫か?」など温かい言葉を

掛けてもらった。「インドネシア

でも過去に何度も大きな地震が

起こっています。その経験を共有

し、将来、何かあればいつでもお

互い助け合うことのできる友人

をつくってほしい」と建元先生。

 それが〝グローバル人材〞とし

ての第一歩にもなるはず―。今年

中には、インドネシアの環境NP

Oバリ・バイオダイバーシタス

が橋渡しとなって、新たにバリ島

の高校とアグロフォレストリー

のプロジェクトを立ち上げる。

 「私たちだからできること、ま

だまだたくさんあるはず。頑張り

ます!」と、岡安悠希さんと岩本

千夏さん。7月にはインドネシア

の高校生が来日予定。彼らの活動

はまだ、始まったばかりだ。

ごみ山で出会った子どもたち。みんな無邪気に走り回っていたが「学校には行っているのかな・・・。もっと話してみたかったです」

坂戸市

1994年に「総合学科」を設置

した高校の一つ。校内の農場や工

場を活用した選択科目などが特

徴的で、自分の将来の方向性に合

わせて、自由にカリキュラムを組

むことができる。また、筑波大学

と連携した留学生やアフガニス

タンの教員研修の受け入れなど

の国際的な活動にも注力。昨年か

らは「アジア隣人プログラム」の

助成を受けて、インドネシアのボ

ごみを探して森の中に入っていくインドネシアと日本の高校生。共に汗を流すことで連帯感が生まれる

May 2011 2021 May 2011