ハラル制度の概要・実務 と市場開拓のハードル

中京大学・並河良一

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目次

ハラル制度の概要ハラル制度とは

法的な位置づけ

政策的位置づけ

制度の構成

日本企業のハラル市場開拓のハードル

宗教的背景

標準規格

組織

生産施設

原料

技術情報

輸送・保管

要員

販売・陳列

宗教と技術

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１．ハラル制度の概要

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ハラル制度

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食品に関するハラル制度

イスラム法にしたがった食品の規準を定め、これを管理する制度

適合食品に表示

不適合食品の生産、流通、輸入などを制限

制度の内容

使用できない食材

食品の生産、流通等の現場での行動基準

健康、安全、栄養、品質

制度の性格

宗教的な背景

技術的な概念

国際規格との整合性

法的な位置づけ

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原則：任意規格

プラス評価を受ける優良規格

ハラル食品の製造、調製、取扱い及び貯蔵に関する一般ガイドライ（MS:1500）

マレーシア標準法（Standard of Malaysia Act 1996）を根拠とする規格

強制規格の性格もMS規格が規制法、地方条

例で援用される場合には、強制規格として機能

食肉の処理法の規定は強制規格

違反は輸入不可

政策的位置づけ

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宗教政策

国教であるイスラム教の教義の実施・推進

食品衛生政策

安全な食品等の提供

経済政策

投資の誘致

輸出の促進

近隣ASEAN諸国との競争

人口が少ない

ハラル規格をテコにして経済成長を

制度の構成

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「ハラル制度の実務」参照

ハラル規格の内容：ハラル認証の要件

組織、体制

施設および機械

食材

食肉処理の要件

食品衛生

貯蔵・輸送、陳列・販売・提供

包装・表示

ハラル認証の手続き

手続き

現地における監査方法

審査項目

２．市場開拓のハードル

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市場開拓のハードル：宗教的背景(1)

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日本人に馴染みがない

イスラム教徒が少ない

敬虔な宗教的な行為

異なる社会制度

紛争とともに報道

西欧的産業活動と相容れない要素

例：イスラム金融

イスラム法

世俗法との重複

どちらが優先か

イスラム法は、世俗法（民事法、刑事法、訴訟法、行政法）に及ぶ

成文化されていない

学派により、国により差異

イスラム金融

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金利の回避

概念図

Halal「食品」は、便法なし

銀行個人投資預金

企業

配当100万円

配当の配分90万円

元本保証なし

預金

銀行製造

企業

機器購入機器賃貸

プラント

企業

リース料

設備資金の融資

銀行個人 住宅

会社

住宅を購入1000万円

住宅を販売分割契約払1000万円＋α

住宅ローン

市場開拓のハードル：宗教的背景(2)ハラル制度

成文化しない国

公権的な解釈

マレーシアでは全国ファトワ（Fatwa）評議会

イスラム教における勧告、布告、見解などを扱う機関

個別の判断ファトワ（Fatwa）

例：ショック機械の利用範囲

認証機関が宗教団体

マレーシアの認証機関イスラム開発局：JAKIM

Department of Islamic Development MalaysiaJabatan Kemajuan Islam

宗教色の強い機関

JAKIM→HDC(2006.9)→JAKIM(2010.8)

ハラル産業開発公社:HDCHalal Industry Development Corporation首相府直属の産業振興機関

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市場開拓のハードル：標準規格(1)

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制度の国際的不統一

国際規格がない

各国が独自に規格

他国の規格を認めない

自国より緩やかな基準の国の認証を評価しない

国情の相違（中東のハラル制度）

マレーシア、インドネシア、ブルネイ、シンガポール

相互受入協定

検討中

イスラム諸国会議機構：OIC

Global Halal StandardASEAN

General Guideline on the Preparation and Handling of Halal Food

策定済CODEX

General Guideline for Use of the Term ”Halal”

市場開拓のハードル：標準規格(2)

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各国別にHalal認証取得

輸出

国ごとに現地審査員の招聘

審査コスト

現地生産

大規模生産に限界

現地需要の大きな国に立地

輸出実績のある国に立地

マレーシアの海外対策

海外工場への審査員派遣登録費＋認定料金（2年）：2,100＄

実費（交通費、宿泊費）

海外審査機関のオーソライズ→同機関の認証書はマレーシアで通用。

JAKIMが認めた団体は47団体（36カ国）（2009年11月）

日本にはない

エジプトの豪州製品のHalalマーク

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牛肉 ミートパイ

市場開拓のハードル：組織

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経営者の責務社内組織の整備

イスラム教徒のハラル管理者を任命

イスラム教徒で構成される委員会を設置

ハラル研修研修内容：ハラルの原則とその適用

対象：ハラル管理者およびハラル委員会構成員

努力義務十分な経営資源（労働力、設備、資金等）を投入

日本企業のハードルイスラム教徒の数

管理職クラスのイスラム教徒の確保

研修の講師の確保

市場開拓のハードル：生産施設

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食品加工等装置、道具、機械、加工器具はハラル専用

不浄の物に使用したラインの儀礼的洗浄による転用後の再転用は不可

同じ機器の洗浄を繰り返して、ハラル製品用と非ハラル用に日常的に転用することは不可

ハラル製品工場は養豚場、下水処理場から5km離れていること

食肉処理処理施設や・加工施設は、ハラル専用

「施設」とは、建物・構造物・土地など

処理ライン、用具、道具はハラル専用

日本企業のハードル専用施設、専用ライン

生産規模

設備コスト

立地点の選定

佐賀牛事件

佐賀牛事件

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背景和牛肉の海外市場の開拓

経緯佐賀県職員が和牛肉をバッグでUAEに持込み

(社)佐賀県畜産公社ISO22000（食品安全マネジメントシステム）取得

UAEのHalal認証未了

輸送中のHalalも確保できず

試供試食会（2008年9月）

レセプション（同11月）

事実関係県の認識

サンプルは制度の対象外

UAEからのクレームはなし

国内空港で家畜伝染病予防法に基づく輸出検疫を受けず2009年4月

知事：減給

担当幹部・職員：減給等

国内施設の認証取得

市場開拓のハードル：原料

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原料はハラルであること納入者のハラル認証書を要確認

派生品豚脂→乳化剤、調味料

豚皮→ゼラチンアイスクリーム、マシュマロ、ヨーグルト、ゼリーに多用

豚皮→コラーゲン化粧品に多用

内臓→酵素食品製造プロセスに多用

インドネシア味の素事件

日本企業のハードルハラル納入業者の確保

外観・形状での判断

豚以外の動物由来品牛皮、牛骨、鶏皮、魚皮→ゼラチン

他の動物→酵素

木質材料（オガ屑、木材チップ、ヤシ穀）、石炭→活性炭

責任の主体終生産者（←納入者）

インドネシア味の素事件（1）事実関係

2000年9月

Halal認証機関（ウラマー評議会（MUI））が、インドネシア味の素社製AJI-NO-MOTOを

ハラル不適合とした

Halalの認証更新時の検査

不適合の理由

グルタミン酸ソーダ生産菌の保存用培地に、豚由来の酵素で生産された大豆蛋白分解物質を使用

経緯

12月にMUIから製品回収指示

警察が同社日本人幹部を拘束

処分の理由

Non-Halal食品をHalalとして市販

決着

ワヒド大統領がMUI見解を否定

背景（見市2001）

政治的背景

ワヒド大統領の非イスラムへの寛容さへの過激派の反発

社会的な背景

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インドネシア味の素事件（2）

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技術的には？

製品は豚由来物質（Derivatives）を含有せず

原料は、豚由来でない

生産用微生物は豚由来でない

微生物の培地は豚由来でない

培地の原料は豚由来でない

技術的な構図原料

グルタミン酸

ソーダ

大豆

タンパク質

分解物

保存培地

微生物

豚

酵素

市場開拓のハードル：技術情報

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申請書類「製品情報」すべての原材料の種類

原料納入（製造）者の詳細

原料のハラル認証

原料製造のフローチャートを入手

仲介業者（商社等）ではなく、製造者の発行したもの

原材料の品種を変更例：原料小麦の品種を市場動向等により切り替える場合

すべての品種を記載

日本企業のハードル原料開示

企業秘密

原料製造のフローチャート原料製造者の企業秘密

市場開拓のハードル：輸送・保管

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輸送

輸送車両はハラル専用

輸送時は、非ハラルの物との混載不可

ハラル食品は真空パックでダンボールに入れたものであっても混載は不可

保管

保管時は非ハラルの物から隔離

不浄の程度の重い製品は専用の場所に保管

日本企業のハードル

専用輸送車両の確保

保管時のハラルの確保

ハラルに対応できる輸送企業、倉庫企業の存在

輸送・保管担当者の確保

市場開拓のハードル：要員

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食肉処理プロセス

処理者は要件を満たすイスラム教徒

処理者は所轄官庁が発行するハラル食肉処理証明書を保有

検査員（監督者）は要件を満たすイスラム教徒

電流、電圧を監督者は要件を満たすイスラム教徒

審査機関

日本企業のハードル

イスラム教徒の確保

国内のイスラム教徒数

数千～数万（？）

オーストラリアのイスラム教徒

30万人

市場開拓のハードル：販売・陳列・提供

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販売、陳列、提供の段階非ハラルのものと隔離

実態：スーパーでの非ハラル食品の扱い

販売場所は区別

カートは区別

納品口は区別

保管庫は区別

ホテル調理場食器類はハラル食堂専用

調理場ハラル料理専用

非ハラル調理場から離す

食材の他料理との共用制限

非ハラル調理場との移動制限

食材、料理

職員

日本企業のハードル日系スーパーなどの対応

スーパーマーケット

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非ハラル食品売場の入口 通路の右が非ハラル食品売場

スーパーマーケット

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非ハラル食品売場の陳列

市場開拓のハードル：宗教と技術

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議論の余地はない

何が不浄か

何が接触か

何が動物愛護か

オーストラリア牛肉の輸入禁止事件

技術思想との関係

筑波での質問

包装と輸送のハラル

豚由来酵素と牛由来酵素

アルコール含有率

感覚的理解

規制法との関係

社内の説得

マレーシアのハラル制度の特徴

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技術的な性格

成文化

工業規格の位置づけ

多くの食品をカバー

Halal Hub政策

HDC

Halal企業優遇措置

国際Halal見本市

Halal Park

運用が合理的

近代国家

リベラル

ビジネスライク

透明性（パブリック・コメント制）

多民族国家

イスラム教徒：約65%

宗教的厳密性は維持

OIC標準規格作成の基礎