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パルスレーザ堆積法による BiMO 3 (M=Fe, Fe 1-x Mn x )酸化物薄膜の作製と評価 Preparation and Evaluation of BiMO 3 (M=Fe, Fe 1-x Mn x ) Thin Films Grown by Pulsed Laser Deposition Method 日本大学理工学部 電子情報工学科 0014 番 稲葉隆哲 Department of Electronics & Computer Science, College of Science & Technology, Nihon University, B4, Takaaki Inaba Abstract:本研究では超格子構造と呼ばれる結晶格子に、マルチフェロイック物質のような複数の性質をもつデバ イス作製の実現を期待している。本報告では、人工超格子作製への足掛かりとして、SrTiO 3 (STO)(001)及び(110)基板上に成膜した BiMO 3 (M=Fe, Fe 1-x Mn x ) 薄膜の結晶構造や表面状態等の評価を行った。 BFO/STO(001)薄膜では、成膜後の薄膜表面にはステップテラス構造は確認できず長方形状のグレインが確認でき た。また Reciprocal Space Maps (RSMs)像から STO(103)ピーク周辺に 2 つ、STO(113)及び STO(-1-13)ピーク周辺に 3 つの BFO 由来のピークが確認できた。この結果から、バルクでは rhombohedral である BFO STO(001)のストレス を受けて、STO<110>方向に傾いた monoclinic の結晶構造で成長していることがわかった。 BFMO/STO(001)薄膜においては、成膜後の表面像では基板特有のステップテラス構造は確認できず、グレインが成 長していた。また RSM 像では BFMO に由来するピークが分離していた。これらの結果から BFMO は、基板面と結 晶面が傾いた Orthorhombic、もしくは Rhombohedral で成長していると考えている。 BFO/STO(110)及び BFMO/STO(110)薄膜においては、どちらも成膜後の表面像ではスッテプテラス構造は確認でき ず、STO[001]に沿ってストライプ状にグレインが成長していることが確認できた。RSMs 像からどちらも STO(130) には基板のストレスを受けた BiMO 由来と格子緩和した BiMO 由来の 2 つのピークSTO(222)及び(22-2)には板のストレスを受けた BiMO 由来の 2 つのピークが確認できた。これらの結果から STO(110)上に成膜した BiMO 3 薄膜の結晶構造は STO[001][00-1]に傾いた monoclinic の結晶構造で成長していることがわかった。 1.背景 近年研究が進められているデバイスの一つに、 Magnetic Random Access Memory (MRAM)と呼ばれるも のがある。MRAM は、電荷の制御に加えもう一つの自由 度であるスピンの制御も可能な新規のデバイスである。 MRAM への応用が期待されている物質にマルチフェロ イック物質と呼ばれるものがある。マルチフェロイック 物質とは、強誘電性・強磁性・強弾性の性質を 2 つ以上 併せ持つ物質のことである。この物質は新規の物性を発 現する可能性があるとされ、精力的に研究が行われてい る。本研究では超格子構造と呼ばれる結晶格子に、マル チフェロイック物質のような複数の性質をもつデバイス 作製の実現を期待している。超格子構造とは、複数の物 質を交互に積層させた構造のことである。このような構 造をもつ超格子に外部から電界をかけ、層間での電子移 動を誘起させ、各層に配置された磁性元素間の超交換相 互作用の変化させることができると期待している。この 磁気構造の変化を制御することができれば、室温で強磁 性,強誘電性を有する新規のデバイスを作製することが 可能となる。 [1][2] 過去の研究では、強誘電性強磁性マルチフェロイック、 電界による磁気特性制御の点から注目を集めている BiFeO 3 (BFO)を利用した超格子の作製を行っていた。しか しながら、BFO は高品質な薄膜形成が難しく、室温で完 全に飽和したヒステリシスループが観測できている報告 例は少ない。さらにリーク電流が大きく抗電界が大きい ことから、デバイスに適用した際、動作電圧が高くなる という問題点がある。 2.目的 本研究の最終目標は REMO 3 (RE=Ca, Bi, La M=Fe, Mn, Fe 1-x Mn x )を用いて作製した人工超格子において、その磁 気構造を制御することである。 人工超格子を作製する際には、各薄膜の性質、結晶構 造等を事前に調査し、また数層単位で薄膜総数及び膜厚 を制御する必要がある。 本報告では、 REMO 3 を用いた人工超格子作製への足掛 かりとして、 SrTiO 3 (STO)(001)及び(110)面基板上に成膜 した BiMO 3 (M=Fe, Fe 1-x Mn x ) 薄膜の結晶構造や表面状態 等の評価を行ったので報告する。我々は膜厚制御が可能 であるパルスレーザ堆積法(Pulsed Laser Deposition : PLD) を用いて成膜を行った。 [3] 3.実験方法・条件 3.1 BiFeO 3 /SrTiO 3 (001)薄膜の作製 3.1.1 STO 基板表面処理 本実験では STO(001)5mm×5mm の基板を用いた。基 板をアセトン 5min、アセトン 15min、エタノール 5min 超音波洗浄を行った。これらのプロセスにおいて、その 都度終了するごとに基板表面を観察し、付着物等の有無 を慎重に確認した。次に、純水で 30min の超音波洗浄を 行った後、緩衝フッ酸溶液(BHF : pH = 5.0)にて 45sec 超音 波洗浄を行った。 BHF での洗浄処理後、アルミナ坩堝(和科学株式会社:RESCO04 純度 99.98% 20ml)に入れ高温 電気炉を用いて 920ºC6h アニール処理を行った。 3.1.2 成膜条件 成膜には KrF エキシマレーザーを使用した PLD 法を用 いた。基板は基板ホルダーに Ag ペーストを用いて、基 板ホルダー中央に固定した。ターゲットと基板間の距離 55mm とした。レーザーアブレーションによって発生 したプルームの中央が基板と当たるようにレーザー位置、 ターゲット位置を調整した。ターゲットは BiFeO 3 ターゲ ットを用いた。またプレアブレーションとして、 10Hz3 分間、ターゲットと基板間のシャッターを閉めたままア ブレーションを行った。その他の成膜条件を以下表 1 示す。 3.2 BiFe 1-x Mn x O 3 /SrTiO 3 (001)薄膜の作製 3.2.1 STO 基板表面処理 STO(001)5mm×5mm の基板を用いた。以下、 3.1.1 基板表面処理と同様のプロセスを行った。 3.2.2 成膜条件

パルスレーザ堆積法による BiMO3(M=Fe, Fe1-xMn 酸化物 ...yamanoya.ecs.cst.nihon-u.ac.jp/Thesis/ShortThesis_Inaba...パルスレーザ堆積法によるBiMO 3 (M=Fe, Fe

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  • パルスレーザ堆積法による BiMO3(M=Fe, Fe1-xMnx)酸化物薄膜の作製と評価

    Preparation and Evaluation of BiMO3(M=Fe, Fe1-xMnx) Thin Films

    Grown by Pulsed Laser Deposition Method

    日本大学理工学部 電子情報工学科

    0014番 稲葉隆哲

    Department of Electronics & Computer Science,

    College of Science & Technology, Nihon University,

    B4, Takaaki Inaba

    Abstract:本研究では超格子構造と呼ばれる結晶格子に、マルチフェロイック物質のような複数の性質をもつデバイス作製の実現を期待している。本報告では、人工超格子作製への足掛かりとして、SrTiO3(STO)(001)及び(110)面基板上に成膜した BiMO3(M=Fe, Fe1-xMnx) 薄膜の結晶構造や表面状態等の評価を行った。 BFO/STO(001)薄膜では、成膜後の薄膜表面にはステップテラス構造は確認できず長方形状のグレインが確認できた。また Reciprocal Space Maps (RSMs)像から STO(103)ピーク周辺に 2つ、STO(113)及び STO(-1-13)ピーク周辺に 3つの BFO 由来のピークが確認できた。この結果から、バルクでは rhombohedral である BFO が STO(001)のストレスを受けて、STO方向に傾いた monoclinic の結晶構造で成長していることがわかった。 BFMO/STO(001)薄膜においては、成膜後の表面像では基板特有のステップテラス構造は確認できず、グレインが成長していた。また RSM 像では BFMO に由来するピークが分離していた。これらの結果から BFMO は、基板面と結晶面が傾いた Orthorhombic、もしくは Rhombohedral で成長していると考えている。 BFO/STO(110)及び BFMO/STO(110)薄膜においては、どちらも成膜後の表面像ではスッテプテラス構造は確認できず、STO[001]に沿ってストライプ状にグレインが成長していることが確認できた。RSMs像からどちらも STO(130)には基板のストレスを受けた BiMO 由来と格子緩和した BiMO由来の 2つのピーク、STO(222)及び(22-2)には基板のストレスを受けた BiMO 由来の 2 つのピークが確認できた。これらの結果から STO(110)上に成膜した BiMO3薄膜の結晶構造は STO[001]と[00-1]に傾いた monoclinic の結晶構造で成長していることがわかった。

    1.背景 近年研究が進められているデバイスの一つに、Magnetic Random Access Memory (MRAM)と呼ばれるものがある。MRAM は、電荷の制御に加えもう一つの自由度であるスピンの制御も可能な新規のデバイスである。MRAM への応用が期待されている物質にマルチフェロイック物質と呼ばれるものがある。マルチフェロイック物質とは、強誘電性・強磁性・強弾性の性質を 2 つ以上併せ持つ物質のことである。この物質は新規の物性を発現する可能性があるとされ、精力的に研究が行われている。本研究では超格子構造と呼ばれる結晶格子に、マルチフェロイック物質のような複数の性質をもつデバイス作製の実現を期待している。超格子構造とは、複数の物質を交互に積層させた構造のことである。このような構造をもつ超格子に外部から電界をかけ、層間での電子移動を誘起させ、各層に配置された磁性元素間の超交換相互作用の変化させることができると期待している。この磁気構造の変化を制御することができれば、室温で強磁性,強誘電性を有する新規のデバイスを作製することが可能となる。[1][2]

    過去の研究では、強誘電性強磁性マルチフェロイック、電界による磁気特性制御の点から注目を集めているBiFeO3(BFO)を利用した超格子の作製を行っていた。しかしながら、BFO は高品質な薄膜形成が難しく、室温で完全に飽和したヒステリシスループが観測できている報告例は少ない。さらにリーク電流が大きく抗電界が大きいことから、デバイスに適用した際、動作電圧が高くなるという問題点がある。

    2.目的 本研究の最終目標は REMO3(RE=Ca, Bi, La M=Fe, Mn, Fe1-xMnx)を用いて作製した人工超格子において、その磁気構造を制御することである。 人工超格子を作製する際には、各薄膜の性質、結晶構

    造等を事前に調査し、また数層単位で薄膜総数及び膜厚を制御する必要がある。 本報告では、REMO3を用いた人工超格子作製への足掛

    かりとして、SrTiO3(STO)(001)及び(110)面基板上に成膜した BiMO3(M=Fe, Fe1-xMnx) 薄膜の結晶構造や表面状態等の評価を行ったので報告する。我々は膜厚制御が可能であるパルスレーザ堆積法(Pulsed Laser Deposition : PLD)を用いて成膜を行った。[3]

    3.実験方法・条件 3.1 BiFeO3/SrTiO3(001)薄膜の作製 3.1.1 STO 基板表面処理 本実験では STO(001)の 5mm×5mmの基板を用いた。基板をアセトン 5min、アセトン 15min、エタノール 5min超音波洗浄を行った。これらのプロセスにおいて、その都度終了するごとに基板表面を観察し、付着物等の有無を慎重に確認した。次に、純水で 30minの超音波洗浄を行った後、緩衝フッ酸溶液(BHF : pH = 5.0)にて 45sec 超音波洗浄を行った。BHF での洗浄処理後、アルミナ坩堝(新和科学株式会社:RESCO04 純度 99.98% 20ml)に入れ高温電気炉を用いて 920ºC、6hアニール処理を行った。

    3.1.2成膜条件 成膜にはKrFエキシマレーザーを使用した PLD法を用いた。基板は基板ホルダーに Agペーストを用いて、基板ホルダー中央に固定した。ターゲットと基板間の距離は 55mmとした。レーザーアブレーションによって発生したプルームの中央が基板と当たるようにレーザー位置、ターゲット位置を調整した。ターゲットは BiFeO3ターゲットを用いた。またプレアブレーションとして、10Hz、3分間、ターゲットと基板間のシャッターを閉めたままアブレーションを行った。その他の成膜条件を以下表 1に示す。

    3.2 BiFe1-xMnxO3/SrTiO3(001)薄膜の作製 3.2.1 STO 基板表面処理

    STO(001)の 5mm×5mmの基板を用いた。以下、3.1.1 の基板表面処理と同様のプロセスを行った。

    3.2.2 成膜条件

  • 成膜にはKrFエキシマレーザーを使用した PLD法を用いた。基板は基板ホルダーに Agペーストを用いて、基板ホルダー中央に固定した。ターゲットと基板間の距離は 55mmとした。レーザーアブレーションによって発生したプルームの中央が基板と当たるようにレーザー位置、ターゲット位置を調整した。ターゲットは BiFe1-xMnxO3ターゲットを用いた。またプレアブレーションとして、10Hz、3 分間、ターゲットと基板間のシャッターを閉めたままアブレーションを行った。その他の成膜条件を以下表 2に示す。

    表 1 STO(001)上に成膜した BFO薄膜の成膜条件

    表 2 STO(001)上に成膜した BFMO 薄膜の成膜条件

    3.3 BiFeO3/ SrTiO3(110)薄膜の作製 3.3.1 STO 基板表面処理

    STO(110)の 5mm×5mmの基板を用いた。基板をアセトン 5min、アセトン 15min、エタノール 5min超音波洗浄を行った。これらのプロセスにおいて、その都度終了するごとに基板表面を観察し、付着物等の有無を慎重に確認した。次に、純水で 30min の超音波洗浄を行った後、緩衝フッ酸溶液(BHF : pH = 5.0)にて 45sec 超音波洗浄を行った。BHF での洗浄処理後、アルミナ坩堝(新和科学株式会社:RESCO04 純度 99.98% 20ml)に入れ高温電気炉を用いて 1100ºC、2hアニール処理を行った。

    3.3.2 成膜条件 成膜にはKrFエキシマレーザーを使用した PLD法を用いた。基板は基板ホルダーに Agペーストを用いて、基板ホルダー中央に固定した。ターゲットと基板間の距離は 55mmとした。レーザーアブレーションによって発生

    したプルームの中央が基板と当たるようにレーザー位置、ターゲット位置を調整した。ターゲットは BiFeO3ターゲットを用いた。またプレアブレーションとして、10Hz、3分間、ターゲットと基板間のシャッターを閉めたままアブレーションを行った。その他の成膜条件を以下表 3に示す。

    3.4 BiFe1-xMnxO3/SrTiO3(110)薄膜の作製 3.4.1 STO 基板表面処理

    STO(110)の 5mm×5mmの基板を用いた。以下、3.3.1 の基板表面処理と同様のプロセスを行った。

    3.4.2 成膜条件 成膜にはKrFエキシマレーザーを使用した PLD法を用いた。基板は基板ホルダーに Agペーストを用いて、基板ホルダー中央に固定した。ターゲットと基板間の距離は 55mmとした。レーザーアブレーションによって発生したプルームの中央が基板と当たるようにレーザー位置、ターゲット位置を調整した。ターゲットは BiFe1-xMnxO3ターゲットを用いた。またプレアブレーションとして、10Hz、3 分間、ターゲットと基板間のシャッターを閉めたままアブレーションを行った。その他の成膜条件を以下表 4に示す。

    表 3 STO(110)上に成膜した BFO薄膜の成膜条件

    表 4 STO(110)上に成膜した BFMO 薄膜の成膜条件

    4.評価方法・条件 4.1 X線回折(X-ray diffraction : XRD) 4.1.1 評価方法

    ターゲット BFO

    基板温度[°C ] 670

    使用レーザー KrF

    レーザー波長[nm] 248

    レーザー周波数[Hz] 4

    レーザーエネルギー密度[J/cm2] 2.6

    雰囲気 O2

    圧力[Pa] 20

    流量[ccm] 20

    成膜時間[min] 16.0

    ターゲット BFMO

    基板温度[°C ] 670

    使用レーザー KrF

    レーザー波長[nm] 248

    レーザー周波数[Hz] 4

    レーザーエネルギー密度[J/cm2] 2.7

    雰囲気 O2

    圧力[Pa] 20

    流量[ccm] 20

    成膜時間[min] 16.0

    ターゲット BFO

    基板温度[°C ] 670

    使用レーザー KrF

    レーザー波長[nm] 248

    レーザー周波数[Hz] 4

    レーザーエネルギー密度[J/cm2] 2.7

    雰囲気 O2

    圧力[Pa] 20

    流量[ccm] 20

    成膜時間[min] 16.0

    ターゲット BFMO

    基板温度[°C ] 670

    使用レーザー KrF

    レーザー波長[nm] 248

    レーザー周波数[Hz] 4

    レーザーエネルギー密度[J/cm2] 2.7

    雰囲気 O2

    圧力[Pa] 20

    流量[ccm] 20

    成膜時間[min] 16.0

  • 成膜後の各薄膜を XRD 装置(BRUKER AXS D8 DISCOVER)で測定し、そのピークからどのような薄膜が作製されているのか評価を行った。 4.1.2 原理 原子が規則正しく並んだ結晶に X線が入射すると、特

    定の方向で強い X 線が観察される。これを回折現象と呼ぶ。図 1 に結晶格子によるブラッグ条件の図を示す。平行にならんでいる原子面の間隔を d として、平行面に対する X線の入射角と反射角を θとする。それぞれの面からの散乱は、隣接する面からの散乱波と、行路差 2dsinθが波長の整数倍 nλに等しい時にだけ位相がそろって回折が起こる。

    2dsinθ = nλ (1)

    物質はそれぞれに特有な規則性を持つ結晶を作ることから、XRD では化合物の種類や、結晶の大きさ、材料中に存在する結晶方位の分布状態(結晶配向)、結晶に掛かる残留応力の評価を行うことができる。 本研究では X線源に Cu-Kα線(波長 λ=1.542Å)を用い

    た。このとき、モノクロメータにより Cu-Kβ 線を除去した。

    図 1 ブラッグ回折条件

    4.2 Scanning Probe Microscope(SPM)

    4.2.1 評価方法 アニール処理後の STO基板と成膜後の各薄膜の表面形状像を SPM(SII社製 SPA400 筐体 ワークステーション SPI3800N)のダイナミックフォースモード(DFM)で測定し、評価を行った。

    4.2.2 DFM 原理 DFM は SPMの測定モードのひとつであり、サイクリックコンタクトモードと呼ばれる試料を周期的に触れて測定するモード、ノンコンタクトモードと呼ばれる表面にふれないで測定するモード、コンタクトモードと呼ばれる表面に触れて測定するモードがある。サイクリックコンタクトは表面形状、位相像などの検出に利用され、ノンコンタクトモードは、磁気力顕微鏡、表面電位顕微鏡に利用される。コンタクトモードは AFM と比較してやわらかい試料にも適用が可能である。 図 2に DFMの原理図を示す。DFMもコンタクト AFMと

    同じで原子間力を検出している。DFM では探針背面に装着されている圧電素子にてカンチレバーに共振操作を起こす。探針と試料間に力が働くとカンチレバーの振幅が変化、カンチレバーの微小な変化量を検出するためにレーザー光をカンチエレバー先端に照射して反射光を検出器で検出して振幅を一定に保つように Z軸の電圧をフィードバック、制御を行う。この状態で平面方向に XY軸の圧電素子を制御、振幅量一定つまり探針、試料間に作用する力を一定に保ったまま表面の微小な凹凸を走査する。振動振幅は針先が触り始める接触点まで空気のダンピングによってわずかながら減少する。探針がさわるか触らないかの接触点では、様々な引力を受ける。この接触点での引力の値の増加を接触点と捕らえ探針が試料の表面との境界で振幅を制御できるため DFMでは軟らかい試料の表面を触れずに測定することが可能となる。本実験では作製した膜の上に積層を行うため試料表面に触れずに形状を取ることができる DFMを用いた。

    図 2 DFM の測定原理 カンチレバーからの反射レーザーを感知する

    5.結果

    5.1 BFO/STO(001)の結果 5.1.1 BFO/STO(001)成膜前後の表面像 アニール処理した成膜前の基板表面像及び、BFO成膜後の薄膜表面像をそれぞれ図 3(a), (b)に示す。成膜前の表面像ではステップテラス構造が確認できたが、BFO成膜後の薄膜表面にはステップテラス構造は確認できず長方形状のグレインが確認できた。

    (a)成膜前の基板表面像 (b)BFO 成膜後の薄膜表面像 (2µm×2µm) (5µm×5µm)

    図 3 BFO/STO(001)成膜前後の表面像

    3.5 0.0 nm 4.6 nm 0.0

  • 5.1.2 BFO/STO(001)薄膜の X 線解析 BFO/STO(001)薄膜の Reciprocal Space Maps(RSMs)像を図 4(a),(b),(c)に示す。(a)は STO(103)周辺、(b)は STO(113)周辺、(c)は STO(-1-13)周辺の RSM 像である。STO(103)ピーク周辺に 2 つのピーク、STO(113)及び STO(-1-13)ピーク周辺に 3つのピークが確認できた。この結果は、BFO薄膜が STO方向に傾いた monoclinic 構造を示し 4つのグレインで構成されていることを示している。それぞれのグレイン I, II, III, IV を図 5に示す。(a)STO(103)では、グレイン I, IIと III, IV に由来する 2つのピークが観測できた。(b)STO(113)では、グレイン I に由来する δ,IVに由来する ε,II,III に由来する ζの 3つのピークが観測できた。X 線を STO[-1-10]方向に沿って入射すると、II,IIIに由来する ζは、RSM 像では tetragonal のように観測された。(c)STO(-1-13)では、X 線を STO[110]方向に沿って入射しているため Iと IVのピーク強度が入れ替わって観測された。図 4(a),(b),(c)から BFO 薄膜の格子定数がa=0.5489nm, b=0.5525nm, c=0.4071nm, β = 89.03º であることがわかった。

    図 4 BFO/STO(001)の RSM像 (a)STO(103)周辺 (b)STO(113)周辺 (c)STO(-1-13)周辺

    図 5 X 線入射方向から観測した 4 つの BFO グレイン (a)X 線を STO[100]に沿って入射した場合 (b)X 線を STO[110]に沿って入射した場合

    5.2 BFMO/STO(001)の結果 5.2.1 BFMO/STO(001)成膜前後の表面像 アニール処理した成膜前の基板表面像及び、BFMO 成

    膜後の薄膜表面像をそれぞれ図 6(a), (b)に示す。成膜前の表面像ではステップテラス構造が確認できたが、BFMO成膜後の表面はステップテラス構造が確認できずグレインが成長していることがわかった。

    5.2.2 BFMO/STO(001)の X線解析 BFMO/STO(001)薄膜の RSMs像を図 7(a),(b),(c)に示す。どれも基板と薄膜のピークが確認でき、薄膜のピークが分離していた。

    (a)成膜前の基板表面像 (b)BFMO 成膜後の薄膜表面像 (2µm×2µm) (1µm×1µm)

    図 6 BFO/STO(001)成膜前後の表面像

    図 7 BFMO/STO(001)の RSM 像 (a)STO(103)周辺 (b)STO(113)周辺 (c)STO(-1-13)周辺

    5.3 BFO/STO(110)薄膜の結果 5.3.1 BFO/STO(110)成膜前後の表面像 アニール処理した成膜前の基板表面像及び、BFMO成膜後の薄膜表面像をそれぞれ図 8(a), (b)に示す。成膜前の表面像では基板特有のステップテラス構造が確認できた。BFO/STO(110)成膜後の薄膜表面像にはステップテラス構造は確認できず、STO[001]に沿ってストライプ状にグレインが成長していることが確認できた。

    5.3.2 BFO/STO(001)薄膜の X 線解析 BFO/STO(110)薄膜の RSMs像を図 9(a),(b),(c)に示す。(a)は STO(130)周辺、(b)は STO(222)周辺、(c)は STO(22-2)周辺の RSM 像である。STO(130)には基板のストレスを受けた BFO 由来と格子緩和した BFO 由来の 2つのピーク、STO(222)及び(22-2)には基板のストレスを受けたBFO 由来の 2 つのピークが確認できた。この結果は、BFO薄膜が STO及び方向に傾いた monoclinic 構造を示し 2つのグレインで構成されていることを示して

    2.5 2.6 2.77.2

    7.3

    7.4

    7.5

    7.6

    7.7

    7.8

    q[0

    01] (

    nm

    -1)

    q[100]

    (nm-1)

    100

    2.06x100

    4.23x100

    8.71x100

    1.79x101

    3.68x101

    7.58x101

    1.56x102

    3.21x102

    6.60x102

    1.36x103

    2.79x103

    5.74x103

    1.18x104

    2.43x104

    5.00x104

    3.6 3.77.2

    7.3

    7.4

    7.5

    7.6

    7.7

    7.8

    q[0

    01

    ] (n

    m-1)

    q[-1-10]

    (nm-1)

    100

    1.85x100

    3.41x100

    6.31x100

    1.17x101

    2.15x101

    3.98x101

    7.36x101

    1.36x102

    2.51x102

    4.64x102

    8.58x102

    1.58x103

    2.93x103

    5.41x103

    104

    3.6 3.77.2

    7.3

    7.4

    7.5

    7.6

    7.7

    7.8

    q[0

    01] (

    nm

    -1)

    q[1-10]

    (nm-1)

    100

    1.85x100

    3.41x100

    6.31x100

    1.17x101

    2.15x101

    3.98x101

    7.36x101

    1.36x102

    2.51x102

    4.64x102

    8.58x102

    1.58x103

    2.93x103

    5.41x103

    104

    (b) (c) (a)

    q[0

    01

    ](n

    m-1

    )

    q[100]

    (nm-1

    ) q[-1-10]

    (nm-1

    ) q[110](nm-1

    )

    Sub Sub Sub

    δ

    ε

    ε ζ

    δ

    ζ

    (b) (a)

    X-ray[100] X-ray[110]

    STO

    BFO BFO

    [100]

    [010]

    [001

    ]

    STO sub.

    BFO BFO BFO

    [1-10]

    [-110]

    [110] [-1-10]

    [001

    ]

    BFO BFO

    BFO BFO

    [010]

    [100

    ]

    [001]

    [110]

    BFO

    (001)

    X-ray[110] X-ray[100]

    II I

    III IV

    III IV I II IV II III I

    0.0 4.7 nm 17.0 nm 0.0

    (a) (b) (c)

    3.5 3.6 3.77.30

    7.35

    7.40

    7.45

    7.50

    7.55

    7.60

    7.65

    7.70

    7.75

    7.80

    q[-1-10]

    (nm-1)

    5.00x100

    7.92x100

    1.26x101

    1.99x101

    3.15x101

    5.00x101

    7.92x101

    1.26x102

    1.99x102

    3.15x102

    5.00x102

    3.5 3.6 3.77.30

    7.35

    7.40

    7.45

    7.50

    7.55

    7.60

    7.65

    7.70

    7.75

    7.80

    q[110]

    (nm-1)

    7.00

    10.4

    15.3

    22.6

    33.5

    49.5

    73.2

    108

    160

    237

    350

    2.4 2.5 2.6 2.77.30

    7.35

    7.40

    7.45

    7.50

    7.55

    7.60

    7.65

    7.70

    7.75

    7.80

    7.00

    11.3

    18.3

    29.5

    47.7

    77.1

    125

    201

    326

    526

    850

    q[100]

    (nm-1)

    q[0

    01](

    nm

    -1)

  • いる。それぞれのグレイン V,VI を図 10に示す。(a)STO(130)では、Vと VIが同じグレインとして観測された。(b)STO(222)では、V に由来するピーク ηと VIに由来するピーク℩の 2 つが確認できた。(c)STO(22-2)では、(b)の場合のX線の入射方向から反対方向に入射しているため、Vと VIに由来するピークが反転しているのがわかった。RSM 像から STO(110)上に成膜した BFO の格子定数は a=0.5611 nm, b=0.5662 nm, c=0.3907 nm, β = 89.33º であり、STO[00-1]及び[001]方向に傾いた monoclinic 構造で2 つのグレインで構成されていることがわかった。

    (a)成膜前の基板表面像 (b)BFO 成膜後の薄膜表面像 (2µm×2µm) (1µm×1µm)

    図 8 BFO/STO(110)成膜前後の表面像

    図 9 BFO/STO(110)の RSM 像 (a)STO(130)周辺 (b)STO(222)周辺 (c)STO(22-2)周辺

    図 10 X線入射方向から観測した 2 つの BFO グレイン (a)X 線を STO[1-10]に沿って入射した場合 (b)X 線を STO[001]に沿って入射した場合

    5.4 BFO/STO(110)薄膜の結果 5.4.1 BFMO/STO(110)成膜前後の表面像 アニール処理した成膜前の基板表面像及び、BFMO成膜後の薄膜表面像をそれぞれ図 11(a), (b)に示す。洗浄後の基板表面には基板特有のステップテラス構造が確認できたが、BFMO/STO(110)成膜後の薄膜表面像には5.3.1と同様にステップテラス構造は確認できず、STO[001]に沿ってストライプ状にグレインが成長していることが確認できた。

    5.4.2 BFO/STO(001)薄膜の X 線解析 BFMO/STO(110)薄膜の RSMs像を図 12(a),(b),(c)に示す。(a)は STO(130)周辺、(b)は STO(222)周辺、(c)は STO(22-2)周辺の RSM 像である。STO(130)には基板のストレスを受けた BFMO 由来と格子緩和した BFMO 由来の 2つのピーク、STO(222)及び(22-2)には基板のストレスを受けた BFMO 由来の 2 つのピークが確認できた。5.3.2 と同様の結果が得ることができ、STO(110)上に成膜したBFMO の格子定数は、a=0.5714 nm, b=0.5618 nm, c=0.3914 nm, β = 89.22º であり、STO[00-1]及び[001]方向に傾いたmonoclinic 構造で 2つのグレインで構成されていることがわかった。

    (a)成膜前の基板表面像 (b)BFO 成膜後の薄膜表面像 (2µm×2µm) (1µm×1µm)

    図 11 BFMO/STO(110)成膜前後の表面像

    図 12 BFMO/STO(110)の RSM 像 (a)STO(130)周辺 (b)STO(222)周辺 (c)STO(22-2)周辺

    6.考察 6.1 BFO/STO(001)薄膜について 成膜後の表面像にはステップテラス構造が確認できず、長方形状のグレインが成長していることがわかった。また、RSM 像から STO(103)ピーク周辺に 2 つのピーク、STO(113)及び STO(-1-13)ピーク周辺に 3つのピークが確認できた。これらから、BFO は STOの面内の結晶軸に合わせるように成長したため、バルクでは rhombohedral である BFO が STO(001)のストレスを受けて、βに由来する歪みが生じて STO(001)上に成長させた BFO 薄膜は,

    6.77 0.0 nm 20.7 0.0 nm

    STO[1-10]

    ST

    O[0

    01]

    3.50 3.55 3.60 3.65 3.706.90

    6.95

    7.00

    7.05

    7.10

    7.15

    7.20

    7.25

    7.30

    7.35

    7.40

    q

    [11

    0] (

    nm

    -1)

    q[-110]

    (nm-1

    )

    2.000

    2.793

    3.901

    5.448

    7.609

    10.63

    14.84

    20.73

    28.95

    40.43

    56.46

    78.86

    110.1

    153.8

    214.8

    300.0

    BFO_003_NSTO(110) 103+phi0

    5.05 5.10 5.15 5.206.90

    6.95

    7.00

    7.05

    7.10

    7.15

    7.20

    7.25

    7.30

    7.35

    7.40

    BFO_003_NSTO(110) 222+phi90

    q

    [11

    0] (

    nm

    -1)

    q[001]

    (nm-1)

    2.000

    2.890

    4.176

    6.034

    8.719

    12.60

    18.21

    26.31

    38.01

    54.93

    79.37

    114.7

    165.7

    239.5

    346.0

    500.0

    5.05 5.10 5.15 5.206.90

    6.95

    7.00

    7.05

    7.10

    7.15

    7.20

    7.25

    7.30

    7.35

    7.40

    BFO_003_NSTO(110) 222+phi270

    q[1

    10

    ] (n

    m-1)

    q[00-1]

    (nm-1

    )

    2.000

    2.890

    4.176

    6.034

    8.719

    12.60

    18.21

    26.31

    38.01

    54.93

    79.37

    114.7

    165.7

    239.5

    346.0

    500.0

    (a) (b) (c)

    Sub. Sub. Sub

    . η

    η

    [110] [1-10]

    [001]

    BFO BFO BFO

    (001)

    STO sub.

    BFO

    [001]

    [1-10]

    [110]

    STO sub.

    BFO BFO

    [-110]

    [001]

    [110]

    V

    VI

    V VI

    X-ray [001]

    X-ray [001]

    V VI

    X-ray [1-10]

    X-ray [1-10]

    (a) (b)

    13.4 0.0 nm

    [1-10]

    [00

    1]

    0.0 12.3 nm

    5.05 5.10 5.15 5.206.90

    6.95

    7.00

    7.05

    7.10

    7.15

    7.20

    7.25

    7.30

    7.35

    7.40

    q

    [11

    0] (

    nm

    -1)

    q[001]

    (nm-1)

    2.000

    2.890

    4.176

    6.034

    8.719

    12.60

    18.21

    26.31

    38.01

    54.93

    79.37

    114.7

    165.7

    239.5

    346.0

    500.0

    5.05 5.10 5.15 5.206.90

    6.95

    7.00

    7.05

    7.10

    7.15

    7.20

    7.25

    7.30

    7.35

    7.40

    q[1

    10

    ] (n

    m-1)

    q[00-1]

    (nm-1

    )

    2.000

    2.890

    4.176

    6.034

    8.719

    12.60

    18.21

    26.31

    38.01

    54.93

    79.37

    114.7

    165.7

    239.5

    346.0

    500.0

    3.50 3.55 3.60 3.65 3.706.90

    6.95

    7.00

    7.05

    7.10

    7.15

    7.20

    7.25

    7.30

    7.35

    7.40

    q

    [11

    0] (

    nm

    -1)

    q[-110]

    (nm-1

    )

    2.000

    2.793

    3.901

    5.448

    7.609

    10.63

    14.84

    20.73

    28.95

    40.43

    56.46

    78.86

    110.1

    153.8

    214.8

    300.0

    (a) (c) (b)

    Sub. Sub. Sub.

  • STO方向に傾いた monoclinic の結晶構造をもつと考えられる。

    6.2 BFMO/STO(001)薄膜について RSM 像及び成膜後の表面像から、BFMO は、基板面と結晶面が傾いた Orthorhombic、もしくは Rhombohedral で成長していると考えられる。

    6.3 BFO/STO(110)薄膜について 洗浄後の基板表面には基板特有のステップテラス構造が確認できたが、BFO//STO(110)成膜後の薄膜表面像にはステップテラス構造は確認できず、STO[001]に沿ってストライプ状にグレインが成長していることが確認できた。BFO/STO(110)薄膜の RSM 像から面直方向の格子が異なった 2つの BFO があることがわかった。この結果から、STO(110)上に成膜した BFO 薄膜の結晶構造は STO[001]と[00-1]に傾いた monoclinic の結晶構造で成長していると考えられる。

    6.4BFMO/STO(110)薄膜について BFMO/STO(110)成膜後の薄膜表面像にはステップテラス構造は確認できず、STO[001]に沿ってストライプ状にグレインが成長していることが確認できた。BFMO//STO(110)薄膜の RSM 像から BFMO 薄膜がSTO方向に傾いたmonoclinic構造を示し 2つのグレインで構成されていることがわかった。このことからSTO(110)上に成膜した BFMO 薄膜の結晶構造は、BFO//STO(110)薄膜と同様で STO[001]と[00-1]に傾いたmonoclinic の結晶構造で成長していると考えられる。

    7.まとめ(600~800字) 本研究では超格子構造と呼ばれる結晶格子に、マルチフェロイック物質のような複数の性質をもつデバイス作製の実現を期待している。超格子構造とは、複数の物質を交互に積層させた構造のことである。このような構造をもつ超格子に外部から電界を印加した場合、各層間での電子移動が誘起され、界面での磁性の変化をもたらすことができると考えている。 本報告では、人工超格子作製への足掛かりとして、SrTiO3(STO)(001)及び(110)面基板上に成膜したBiMO3(M=Fe, Fe1-xMnx) 薄膜の結晶構造や表面状態等の評価を行った。 成膜方法にはパルスレーザ堆積法を用いた。STO基板をアセトン、エタノールで超音波洗浄後、バッファードフッ酸(BHF, pH=5.0, 関東化学株式会社)にてエッチングした。その後アニールを STO(100)は 900°Cで 4時間、STO(110)は 1100°Cで 2時間行った。成膜条件は、基板温度を 670ºC、成膜雰囲気をO2、成膜時圧力を 20Paとした。ターゲット上のエネルギー密度を 2.5~2.7 J/cm2としてKrF エキシマレーザーを周波数 4Hz で照射した。

    BFO/STO(001)薄膜では、RSM 像から STO(103)ピーク周辺に 2 つ、STO(113)及び STO(-1-13)ピーク周辺に 3つの BFO由来のピークが確認できた。この結果から、バルクでは rhombohedral である BFOが STO(001)のストレスを受けて、STO方向に傾いた monoclinic の結晶構造で成長していることがわかった。 BFMO/STO(001)薄膜においては、成膜後の表面像では基板特有のステップテラス構造は確認できず、グレインが成長していた。また RSM 像では BFMO に由来するピークが分離していた。これらから BFMO は、基板面と結晶面が傾いた Orthorhombic、もしくは Rhombohedral で成長していると考えている。 BFO/STO(110)及び BFMO/STO(110)薄膜においては、ど

    ちらも成膜後の表面像ではスッテプテラス構造は確認できず、STO[001]に沿ってストライプ状にグレインが成長していることが確認できた。それぞれの RSM 像からSTO(110)上に成膜した BiMO3薄膜の結晶構造はSTO[001]と[00-1]に傾いた monoclinic の結晶構造で成長していることがわかった。

    9.参考文献 [1]F.Gunkel et al., Appl. Phys. Lett. 100(2012)052103.

    [2]M. R. Fitzsimmons et al., Phys. Rev. Lett.

    107(2011)217201.

    [3]社団法人電気学会 レーザーアブレーションとその応用, コロナ社 (1999)