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2回「きぼう」利用勉強会 ランゴニ対流世界 「きぼう」船内実験テーマ 「マランゴニ対流におけるカオス・乱流とその遷移過程」 MEIS : Marangoni Experiment In Space 2008925代表研究者 河村 洋(諏訪東京理科大学1

マランゴニ対流の世界issstream.tksc.jaxa.jp/iss2/press/data/080925riyou_study.pdfマランゴニ対流 表面張力の大きさは, 表面上の濃度および温度によって変化する

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第2回「きぼう」利用勉強会

マランゴニ対流の世界

「きぼう」船内実験テーマ

ラン 対流の世界

「マランゴニ対流におけるカオス・乱流とその遷移過程」

MEIS : Marangoni Experiment In Space

2008年9月25日

代表研究者 河村 洋(諏訪東京理科大学)1

マランゴニ対流マランゴニ対流表面張力の大きさは, 表面上の濃度および温度によって変化する.

表面張力はサル団子

マランゴニ効果

Carlo Marangoni(イタリア Pavia出身(イタリア, Pavia出身,

1840-1925)

濃度 C, 温度 T

濃度 C, 温度 T

低 高

表面張力 σ低

表面張力 σ

低高© JAXA

2

身のまわりの表面張力身のまわりの表面張力

コップの水面に浮くコップの水面に浮く一円玉

表面張力で出来た水滴 (ワックスの効かなくなった表面)表面張力で出来た水滴(ワックスのかかった表面)

水の表面張力が勝って水滴が出来る.

(ワックスの効かなくなった表面)水の表面張力が負けてしまい拡がる

3

マランゴニ対流マランゴニ対流 “ワインの涙”

アルコールと水分の混合によるマランゴニ対流

アルコール濃度 表面張力アルコール濃度 表面張力

高 - 小低 - 大

マランゴニ対流

アルコール蒸発 低

濃度

蒸発 低

重力の作用

アルコール濃度:

高4

マランゴニ効果の体験マランゴニ効果の体験

水に浮かべた樟脳によるマランゴニ

(溶け込みにより樟脳の周りの表面張力が小さくなりくるくる回る)

中性洗剤による油の動き

(水面に浮いた油に台所洗剤(界面活性剤)を一滴垂らすと油が周囲に張力が小さくなりくるくる回る)

樟脳(ショウノウ:防虫剤)

活性剤)を 滴垂らすと油が周囲に移動する)

5

表面張力は宇宙で顕在化する

宇宙で,表面張力の作用で,水中花を作られた毛利宇宙飛行士 6

背景背景新材料開発

メモリーデバイス用基板,

半導体製品に用いられる結晶材料

単結晶インゴット,シ ウマイクロプロセッサーデバイス用基板

YaGレーザー発振素子など © 信越化学工業

シリコンウェハー

フローティングゾーン (FZ)法

高品質結晶材料の生成

融液の流れの影響-大

母材

フロ ティングゾ ン (FZ)法融液 流 影響 大

学問的研究対象

ヒーター

学問的研究対象

材料生成過程における流体力学的現象の認識 溶融部

単結晶

タ流体力学的現象の認識.

界面流体力学単結晶

PullP. Dold, J. Crystal Growth (2004). 7

背景背景微小重力環境の利用 1.大きな結晶の生成

2 浮力効果による対流を抑制

宇宙実験の実施:

製 中 ゴ 対流が生起 欠陥縞が発生

2.浮力効果による対流を抑制.

微小重力環境および地上環境で生成したGaSb(アンチモン化ガリウム)結晶.

製品中にマランゴニ対流が生起し,欠陥縞が発生

Spacelab mission D2 (STS-55) in 1993.

SPACEHAB-4 (STS-77) in 1996.

Prof. K. W. Benz,F ibFreiburg,Germany

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研究の目的研究の目的液柱マランゴニ対流において流体力学的不安定性により発現するダイナミック構造を解き明かす

地上では実現できない大型液柱における実験データを取得し、地上研究の結果と合わせ以下を明らかにする

1.1. 振動流開始条件の決定振動流開始条件の決定

ハーフゾーン液柱内マランゴニ対流場の様子

(地上実験, 2cStシリコンオイル, 5mm径, 実時間. )

2.カオス化過程のシナリオ2.カオス化過程のシナリオ

寄与する分野

A. 界面熱流体力学の進展

B. 自由界面を有する結晶成長過程

C. 表面張力支配のマイクロ流体技術

9

微小重力実験の波及効果微小重力実験の波及効果(1)(1)マイクロナノ技術への応用

● マイクロ流体力学への波及効果(微量分析,創薬, 生命科学, など)

表面張力の影響に関する認識 微小重力環境の有効活用

微細ファイバーを用いたピコリットル液滴の形成実験

デ 究スウェーデン, KTH 共同研究

加熱ロッド

冷却容器 温度差

引き上げ[フレームレート]20000 fps[再生速度] 冷却容器 温度差

マランゴニ対流[再生速度] 1/100

2cSt シリコーンオイル,シリコ ンオイル,D = 2 mm,ΔT = 83 K.

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微小重力実験の波及効果微小重力実験の波及効果(2)(2)高効率熱輸送(地上,宇宙)

● 高熱負荷ヒートパイプ● 高熱負荷ヒ トパイプ

マランゴニ対流による自己浸潤(Self-Rewetting)作用の活用

地上 (次世代高性能パソコン等)地上 (次世代高性能パソコン等)宇宙(有人活動における大量熱利用時の高効率熱輸送)

パソコン内のヒートパイプ© FujikuraSelf-Rewetting流体の活用

11

微小重力実験の波及効果微小重力実験の波及効果の例の例

● 液滴の合体-非合体の制御

マイクロナノ技術への応用

(マイクロベアリング 分析化学 など)表面張力の影響に関する認識 微小重力環境の有効活用

高温ロッド高温ロッド

マランゴニ対流

(空気層の巻き込み)

低温ロッド 12

マランゴニ対流実験概要マランゴニ対流実験概要

「きぼう」流体物理実験装置に実験用供試体を「きぼう」流体物理実験装置に実験用供試体を組込み実験を実施組込み実験を実施

液柱を形成し、両端に温度差をつけることで対液柱を形成し、両端に温度差をつけることで対流を発生させ、流れと温度を観測流を発生させ、流れと温度を観測

シリコーンオイル液柱

地上実験 宇宙実験

流体物理実験装置 実験供試体

表面温度分布(赤外放射温度計)地上実験 宇宙実験

直径 < 5 mm 30 mm高さ < 3 mm 0~60 mm

液柱液柱

(赤外放射温度計)

温度加熱TH:90℃(最高)

液柱液柱三次元流動

冷却TC: 5℃ (最低)

観察・計測

冷却加熱

観察

観察 計測画像:5チャンネル温度データ:6チャンネル 側面観察

13

マランゴニ対流実験の運用体制(マランゴニ対流実験の運用体制(1/21/2))

NASAデータ追跡衛星

国際宇宙ステーションISS宇宙飛行士

ホワイトサンズ地上局

筑波宇宙センター

システム運用

ISS宇宙飛行士

ホワイトサンズ地上局(ニューメキシコ州)

ケネディー宇宙センター(フロリダ州)

SSIPC

システム運用

ジョンソン宇宙センター(テキサス州)

運用ネットワーク

SSCC実験運用管制研究者チーム

代表研究者 河村 洋(諏訪東京理科大学)

(テキサス州)運用ネットワ ク

POIC

(諏訪東京 科大学)共同研究者共同研究者西野耕一西野耕一(横浜国立大学)(横浜国立大学)上野一郎上野一郎(東京理科大学)(東京理科大学)大西充大西充(JAXA)(JAXA)

コマンド⇒←画像

14マーシャル宇宙飛行センター

(アラバマ州)

POIC大西充大西充(JAXA)(JAXA)支援学生支援学生(約(約1515名)名)

14

マランゴニ対流実験の運用体制(マランゴニ対流実験の運用体制(2/22/2))

J-FLIGHT(フライトダイレクタ)

筑波宇宙センター運用管制室

「きぼう」運用管制チ ム

NASA

NASA/POIC CadreJEM Payload Officer (JEM PAYLOADS)

チーム

筑波宇宙センター実験運用管制室

NASA/POIC Cadre (JEM PAYLOADS)(実験運用統括)

JAXA Payload Ops Conductor (JPOC)

(進行管理)

FISICSRack Officer

(流体ラック運用統括)

実験運用管制室(UOA)

FISICS User Integrator

FISICS Operator(流体ラックへのコマンド

FISICS Engineering Support

FISICS Team for Ryutai Rack Ops

研究者チームg(研究者調整)

(流体ラック ン送信、テレメトリ確認)

Engineering Support

15

JAXA Increment Scientist

Lead Increment Scientist

JAXA Increment Payload Manager

JAXA Payload Integration Manager

JAXA System/Payload Safety

backroom15

実験準備(実験供試体の組立)実験準備(実験供試体の組立)実験供試体の組立 2008年8月13日(JST)

Gregory Chamitoff 宇宙飛行士

約100ステップにおよぶ組立作業を的確に実施

実験装置への組付け 2008年8月19日(JST)

Gregory Chamitoff 宇宙飛行士コンポーネント

組立後

Gregory Chamitoff 宇宙飛行士

実験装置検証実験装置検証 2008年8月20日(JST)

地上からのコマンド制御

正常に動作(50のセンサ、カメラ等)

16

実験初日実験初日 20082008年年88月月2222日日温度液柱長さ:9.6 mm

温度差:最大39.4℃

液柱形成後温度差を大きくしたところ はっきりとした振動流遷移過液柱形成後温度差を大きくしたところ、はっきりとした振動流遷移過程を初めて観察

液柱形成、流れの観察(動画) 17

実験技術上の予想された困難点と解決実験技術上の予想された困難点と解決液柱形成液柱形成

◇ オイル漏洩(1年以上前に射場でシリコーンオイル充填) ⇒ 問題なし

◇ 液柱形成初期のオイル吐出 ⇒ 適切な対処によるリカバリー

◇ 液柱保持(撥油コーティング性能、耐振動性) ⇒ 地上より安定な液柱保持

◇ 粒子の混合状態、収納 ⇒ 地上より良好

気泡混入・除去気泡混入 除去

◇ 微小な気泡が混入することにより、実験の経過と共に5mm以上まで成長

⇒ 気泡周りのマランゴニ効果を積極的に利用した気泡除去手法の確立⇒ 気泡周りのマランゴニ効果を積極的に利用した気泡除去手法の確立

気泡 熱電対

(気泡除去前) (気泡除去後) 18

これまでに得られた成果(1)これまでに得られた成果(1)

流れのパターン

動画 動画

振動流定常流から振動流へ

モード数1(5倍速再生)

モード数2(5倍速再生)

19

これまでに得られた成果(これまでに得られた成果(22))

小型ロケット実験ではパラドックスとされた振動遷移点のサイズ依存性

ロケット実験ロケット実験

地上地上

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国際的位置づけ国際的位置づけ

1.世界をリードする実験技術の蓄積透明な加熱板(人工サフ イア)を用いた端面観測技術透明な加熱板(人工サファイア)を用いた端面観測技術遠隔操作による液柱形成技術(小型ロケット実験)流れの3次元観測技術(PTV)流れの3次元観測技術(PTV)

2.世界をリードする研究の蓄積界面流体力学(実験及びシミ レ シ ン)界面流体力学(実験及びシミュレーション)本年10月,我が国で国際会議を主催

(米 独 仏 ベルギー 露 東欧 イスラエル 中国(米,独,仏,ベルギ ,露,東欧,イスラエル,中国,日本等約80名参加)

3 国際チ ムによる「きぼう」実験の継続3.国際チームによる「きぼう」実験の継続日・欧共同チームによる実験( 2011年実施予定)我が国がリードし,ESA(欧州宇宙開発機構)も支援我が国がリ ドし,ESA(欧州宇宙開発機構)も支援

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まとめまとめまとめまとめ

11..実験装置の実験装置の軌道上での宇宙飛行士による組み立て軌道上での宇宙飛行士による組み立て○○つくばにおける事前訓練つくばにおける事前訓練→→マニュアルの整備マニュアルの整備

ププ○○100100ステップ以上の複雑な作業を完全に遂行ステップ以上の複雑な作業を完全に遂行

22..軌道上での実験運用軌道上での実験運用○○サイエンスチームとサイエンスチームとJAXAJAXA運用チームとの順調な連携運用チームとの順調な連携○○非常に精密な操作(非常に精密な操作(0.01mm0.01mm,,0.01cc0.01cc)と計測)と計測(0.01K)(0.01K)実現実現○○初期の試料吐出、気泡混入等のリカバリー初期の試料吐出、気泡混入等のリカバリー○○初期の試料吐出、気泡混入等のリカ リ初期の試料吐出、気泡混入等のリカ リ

(宇宙ステーションの利点を最大限に活用)(宇宙ステーションの利点を最大限に活用)

33..これまでの実験の成果これまでの実験の成果○○地上よりも格段に安定な液柱の保持地上よりも格段に安定な液柱の保持○○振動流の開始条件について,従来からの地上実験と宇宙実験の乖離に振動流の開始条件について,従来からの地上実験と宇宙実験の乖離に

関するパラドックスを解決する結果を得た関するパラドックスを解決する結果を得た関するパラドックスを解決する結果を得た関するパラドックスを解決する結果を得た○○回転振動流のモード数等に関する実験データを蓄積中回転振動流のモード数等に関する実験データを蓄積中

当該実験のみならず 我が国の宇宙ステ シ ン利用体制 技術当該実験のみならず,我が国の宇宙ステーション利用体制・技術のトータルとして,良好なスタートを切ることが出来た.

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