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Copyright (C) 2016 JETRO. All rights reserved. 教育 事情 1 20161月■ 出所:JETROホームページ 国・地域別に見る「アジア ミャンマー概況(20165月更新)」 BOP層実態調査レポート ミャンマー ミャンマー連邦共和国 ― 基礎データ 面積:676,578平方キロメートル 〔日本の約1.8倍〕 人口:5,148万人 2015529日発表、出所:ミャンマー入国管理・人口省暫定発表) 首都:ネーピードー 名目GDP総額:6208,000万ドル 2014年) 1人当たりの名目GDP1,221.36ドル 2014年) 実質GDP成長率:7.692014年) 為替レート:1ドル 984.35 ミャンマー チャット 2014年平均値) 国勢概要 ミャンマー連邦共和国は大陸部の東南アジアでは、最大 の国土面積を有する国で、独自の言語や方言を持つ135 の民族の連合国家である。 主な民族はバマー(ビルマ)、チン、カチン、カヤ、カイン、 モン、ラカインならびにシャンの8つで、この中でバマー族 (ビルマ族)が最大のグループである。 公用語はミャンマー語。 行政的には、国は7州と7管区、および連邦直轄区域 (ネーピードー)に区分されている。 7州〕カチン、カヤー、カイン、チン、モン、ラカイン、シャン 7管区〕ザガイン、マンダレー、ヤンゴン、バゴー、 エーヤワディ、マグウェー、タニンダーリー 〔直轄区域〕ネーピードー(政庁所在地、首都) これらの州および管区等は、さらに70の県、 330の郡、 398 の町、 3,063の区、 13,618の村落区ならびに66,777の村に 分けられる *1 2014年に実施されたのミャンマー人口調査によれば、同 年のミャンマーの人口は約5,150万人で、人口増加率は 0.89%となっている。 地方行政大区分と人口 *1MIMU (2013) Place Codes (Pcodes) http://www.themimu.info/place-codes, Retrieved 3 March 2014 ミャンマー行政区分地図

ミャンマー...(12年間) 社会主義 (14年間) 軍政時代 (23年間) 民主主義 (5年間) 新政権による民主主義(2016年~) 1886年 1948年 1962年

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教育事情

1

■2016年 1月■

出所:JETROホームページ 国・地域別に見る「アジア ミャンマー概況(2016年5月更新)」

BOP層実態調査レポート ミャンマー

■ミャンマー連邦共和国 ― 基礎データ ―

● 面積:67万6,578平方キロメートル 〔日本の約1.8倍〕

● 人口:5,148万人 (2015年5月29日発表、出所:ミャンマー入国管理・人口省暫定発表)

● 首都:ネーピードー

● 名目GDP総額:620億8,000万ドル (2014年)

● 1人当たりの名目GDP:1,221.36ドル (2014年)

● 実質GDP成長率:7.69% (2014年)

● 為替レート:1ドル ≒ 984.35 ミャンマー チャット (2014年平均値)

国勢概要

ミャンマー連邦共和国は大陸部の東南アジアでは、最大

の国土面積を有する国で、独自の言語や方言を持つ135

の民族の連合国家である。

主な民族はバマー(ビルマ)、チン、カチン、カヤ、カイン、

モン、ラカインならびにシャンの8つで、この中でバマー族

(ビルマ族)が最大のグループである。

公用語はミャンマー語。

行政的には、国は7州と7管区、および連邦直轄区域

(ネーピードー)に区分されている。

〔7州〕カチン、カヤー、カイン、チン、モン、ラカイン、シャン

〔7管区〕ザガイン、マンダレー、ヤンゴン、バゴー、

エーヤワディ、マグウェー、タニンダーリー

〔直轄区域〕ネーピードー(政庁所在地、首都)

これらの州および管区等は、さらに70の県、330の郡、398

の町、3,063の区、13,618の村落区ならびに66,777の村に

分けられる*1。

2014年に実施されたのミャンマー人口調査によれば、同

年のミャンマーの人口は約5,150万人で、人口増加率は

年0.89%となっている。

地方行政大区分と人口

*1:MIMU (2013) Place Codes (Pcodes) http://www.themimu.info/place-codes, Retrieved 3 March 2014 ミャンマー行政区分地図

ミャンマー BOP層実態調査レポート

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国勢概要 ―つづき―

ミャンマーの歴史(概略)

年代 国政 概要

9世紀~1886年 君主時代 ●都市国家における歴代王朝の王の支配

英国と2度に渡る(1824年と1852年)戦争により、国土の一部を英国に割譲。

1886~1948年 植民地時代 ●ミャンマーは英国の統治下に入り、次いで日本の統治下に入る

1948年 1月4日 ◆独立を果たす

1948~1962年 議会制民主主義 ●ウー・ヌ政権、軍事クーデターにより倒される(1962年)

― 民主主義から軍事政権への移行 ―

1962~1974年 軍政時代 ●ネー・ウィン大将率いる革命評議会の名のもと、軍部が国を統治

1974~ 1988年 ビルマ社会主義時代 ●軍部は、ネー・ウィン大統領を党首とする唯一の政党である

ビルマ社会主義計画党を組織

政府の失政に対する不満が大衆デモと抗議によって露呈する1988年まで

国を統治した。

1988~2011年 軍政時代 ●国家法秩序回復評議会(後に国家平和・開発評議会という名称に変更

された)という名のもと、軍部が再び国を統治

2011年の民政移管までこの体制が続く。

2011~2016年 民主主義時代 ●国軍出身者テイン・セイン大統領率いる民主主義政府が

2011~2016年までの5年間にわたり政権を担当

同政権は「軍服を脱いだ元軍人」と言われ、何らかの改革が実行されたが、

軍部は依然として国事に介入。2015年に選挙が行われ、国民民主連盟

(NLD)が勝利。

2016年3月 民主主義時代 ●NLDが政権の座に着き、アウン・サン・スーチー氏側近の

テイン・チョウ氏が大統領に就任

アウン・サン・スーチー氏は、かつての軍事政権が定めた憲法第59条におい

て、本人や配偶者、子供が外国籍の場合大統領になれないとしている条項

に抵触。そのため、国家最高顧問、外務大臣に就任した。

植民地時代 (62年間)

議会制 民主主義 (14年間)

軍政時代 (12年間)

社会主義 (14年間)

軍政時代 (23年間)

民主主義 (5年間)

新政権による民主主義(2016年~)

1886年 1948年 1962年 1974年 1988年 2011年 2016年

〔ミャンマーにおける国政の変遷〕

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ヤンゴン居住者における社会経済学的階層

ヤンゴン居住者の社会経済学的階層の内訳は下表のとおりで、上流と中流上位の合計は約9%と推定される。

レベル 社会経済学的階層(SES) 所得(月額:ドル) 世帯数(戸数)

A 上流 2,000以上 25,680

B 中流上位 1,001~2,000 76,920

C 中流 401~1,000 354,120

D 中流下位 201~400 491,640

E 下流/最下流 200以下 251,640

A:上流 2.14% B:中流上位 6.41%

C:中流 29.51%

D:中流下位 40.97%

E:下流/最下流 20.97%

出所:現地民間調査会社MSR(Myanmar Survey Research)社がヤンゴンで実施したSES調査に基づく推計

上流および中流上位 中流 中流下位 下流・最下流

・ヤンゴンの一等地に居住

・相続資産を保有、大規模 および中規模事業者、企業 の上級マネジャー、専門家

・子女は私立校に通い、最高 のカレッジや大学を卒業

・世帯収入は推定で月額 2,000ドル以上

・自家用車を所有

・郊外のセカンドクラスの アパートに居住

・小規模事業者、中間管理職

・世帯収入は推定で月額400 ~2,000ドル

・自家用車は所有していない ことが多い

・町はずれに居住。

・会社員もしくは公務員

・世帯収入は推定で月額200 ~400ドル

・自家用車は所有していない

・町はずれの密集の 安アパートに居住

・熟練度の低いワーカー および半熟練工

・世帯収入は推定で最高 月額200ドル

・自家用車は持たず、タクシー を利用する経済的余裕も ないため、通常、バスもしく は電車を利用する

国勢概要 ―つづき―

ミャンマーの世帯は、一般的に5つの社会経済学的階層に分けられる。この階層分類は、調査や評価プロジェクト

において調査会社であるMSRが用いている手法で、ヤンゴン以外の市町村にも適用可能である。

SES階層分類 概要

Class 1 何でも好きなことができ、欲しいものが購入できる収入のある世帯。 特に、大規模な実業家がこのクラスに属する。

Class 2 食品、衣料品、家庭用品ならびに何らかの贅沢品(テレビ、洗濯機、冷蔵庫、オーディオ等)を 購入できる収入のある世帯。特に、小規模な実業家がこのクラスに属する。

Class 3 食品、何らかの衣料品ならびに家庭用品を購入するための充分な収入のある世帯。

Class 4 必要な家庭消費のための収入のある世帯。ただし、世帯が必要とする他のものを購入するための 余分なお金は持っていない。

Class 5 必要最低限度の生活状況にある世帯。通常、「社会的弱者」と呼ばれる。 自身の食費も充分賄えない。

国内全体における社会経済学的階層

Class 1 5% Class 2 15%

Class 3 32%

Class 4 43%

Class 5 5%

レベル 社会経済学的階層(SES) 所得(月額:ドル) 世帯数(戸数)

A Class 1 2,000以上 597,800

B Class 2 1,001~2,000 1,793,400

C Class 3 401~1,000 3,825,920

D Class 4 201~400 5,141,080

E Class 5 200以下 597,800

ミャンマー国内には1,195万6,000世帯があると推定され、5つの経済社会学的階層分類(SES)の割合は下表の

とおり。

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教育制度

年代 国政 概要

9世紀~1886年 君主(王政)時代 ●僧院が学習の中心。仏教の僧侶が子供たちに仏教文学、仏教文化

ならびに算数の基礎知識とともに、仏法を教えていた。この制度は、

伝統的な僧院教育として知られている。

1886~1948年 植民地時代 ●統治していた英国人による教育。当時のミャンマーの抵抗勢力から

「植民地教育制度」「奴隷教育」と呼称された、自らの教育制度を

採用。カリキュラムは他の諸国の教育制度と整合性をとる形で作成

され、芸術と科学が導入されることとなった。

1948年 1月4日 ◆独立を果たす

1948~1962年 議会制民主主義 ウー・ヌ政権、軍事クーデターにより倒される(1962年)

1962~1974年 軍政時代 ネー・ウィン大将率いる革命評議会の名のもと、軍部が国を統治

1974~ 1988年 ビルマ社会主義時代 ●一党支配のもと、政府は、子供たちに社会主義思想を教育すること

を主な目的として、基礎教育におけるカリキュラムの見直しを行った。

しかしながら、発表された教本の情報レベルに変化はなく、同時に、

高等教育レベルにおける制度や枠組みも手を加えられないまま維持

された。特筆すべきは、政府が英語教育の振興に力を注がなかった

という点で、教育言語としての英語は一掃されてしまった。

1988~2011年 軍政時代 ●1988年の暴動以降、クーデターで誕生した軍事政権は、学生による

ストライキ運動の防止を目的に、高等教育機関(大学)を街の中心部

から郊外に移転させた。以来、大学生は通学に長時間の移動を

余儀なくされることとなった。

2011~2016年 民主主義時代 ●元国軍出身者への民政移管時代(2011~2015年)では、国防以外の

全ての部門が外部のマーケットに解放されることとなった。

既存の古い法律および諸規則・規定類は最早、実態には即しておら

ず、現存する私立の学校や大学は、現実には政府から黙認された

形となっている。既存の法律や学校の存在とは関係無く、教育省

および教育に関係する各省が決定権を保持している。

〔私立学校について〕

英国からの独立を果たして以来、ミャンマーの教育の担い手は、いかなる時代においても政府であった。ビルマ社会主義計画

党(一党支配)の時代(1974~1988年)および軍事政権の時代(1988~2010年)を通じ、教育は一貫して政府の厳しい管理下に置か

れて来た。こうした時代にも基礎教育レベルにおいて私立学校は存在したが、実際にはそれらは単なる学習教室という位置

づけであり、学校とは見なされなかった。しかしながら、2011年に私立学校法が施行されると、ミャンマー国民に限り、基礎教育

部門において私立の学校を開設することが許されることになった。

2011年以降の軍政から民政へのミャンマーの政体の移行は様々な部門で見て取れるが、教育がその代表例である。

現状から諸外国に比肩するレベルになるためには、単独の努力にせよ、国際筋との協働にせよ、ミャンマーは今

なお教育の枠組みと制度を改革する必要があるとされている。

教育制度の成り立ち

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教育制度 ―つづき―

就学前教育

1998~1999年度以降、教育省の監督の下、学校を拠点とした就学前教育が小学校で行われてきた。スペースと

教員に余裕があれば、学校は就学前児童向けクラスを開設することが許され、そうしたクラスを持つ基礎教育

学校数は2011~2012年度の6.7%から2012~2013年度には7.4%へと増加した。2013~2014年度においては、

就学前児童向けクラスが開設された基礎教育学校3,277校に、約11万1,000人の3~5歳児が在籍した(出所:教育

省)。民間では、地元校およびインターナショナル・プレスクールがある。

保育園は、その多くが2~5歳児の能力開発を目的として民間により運営されている。

基礎教育

基礎教育には、色々な種類の学校が含まれる。

〔教育省管轄の学校〕 ●小学校(1学年~5学年)

●中学校(6 学年~9学年)

●高等学校(10学年~11学年)

●非公式な基礎教育学校(NFPE)

〔宗教省管轄の学校〕 ●僧院学校

〔私立学校〕2011年12月に施行された私立学校法に従い、

ミャンマー国籍の個人もしくはそのグループによって

運営されている。

学校の種類 学校数(校) 教員数(人) 生徒数(百万人)

小学校 36,410 187,327 5.17

中学校 4,860 69,212 2.54

高等学校 3,134 28,817 0.73

合計: 44,404 285,356 8.44

〔ミャンマーにおける基礎教育学校数 (2014 ~2015年度)〕

出所:教育省 人材・教育計画部

私立学校の種類 学校数(校) 教員数(人) 生徒数(人)

小学校 44 501 10,959

中学校 16 851 13,451

高等学校 220 1,466 29,841

合計: 280 2,818 54,251

〔ミャンマーにおける私立学校数 (2013 ~2014年度)〕

出所:教育省 人材・教育計画部

基礎教育部門における私立学校のうち高等学校に求められる水準は、よりよい大学に入るための入試対策の

側面があり、より高度なものとなっている。ヤンゴンには、全国の3分の1に相当する91の私立学校がある。

政府・公立校の4年生用の教科書

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基礎教育 ―つづき―

僧院学校の種類 学校数(校) 生徒数(人)

小学校 972 219,107

中学校 557 69,635

高等学校 2 5,480

合計: 1,531 294,222

〔ミャンマーにおける僧院学校数 (2014 ~2015年度)〕

出所:宗教省サーサナ振興・布教部

ミャンマーには1,500以上の僧院学校があり、各僧院の筆頭僧侶で

あるサヤドー(長老)の監督を受けている。僧院学校全体のうち63.5%

7.7% 3.9%

一般 男子 50.6%

一般 女子 37.8%

〔僧院学校の小学生の内訳〕

見習い僧

見習い尼僧

総人数: 21万9,107人

(2014 ~2015年度)

は正規の初等教育を行っており、36.4%が正規の中等教育を行っている。僧院学校に通う生徒の内訳についても、

小学生が最大で74.5%となっている。2014~2015年度における僧院学校の小学生数の合計は21万9,107人で、

内訳は、見習い僧:7.7%、見習い尼僧:3.9%、一般男子:50.6%、一般女子:37.8%となっている。

基礎教育部門には、身障者向けの特別教育および遠隔地域・未開発地域の生徒向け特別教育サービスも

ある。

■特別教育

■非正規の初等教育(NFPE)

中退者、規定年齢超過者並びに貧困児童向けには、NFPEを通じて、初等教育の道が開かれている。NFPEの

プログラムは、1998年にユネスコと国連開発計画(UNDP)との協力のもと、教育省によって開始され、2008年の

見直しを経て、2010~2011年度以降、教育省、ユニセフならびに国内の寄贈者(個人の支援者、基金、民間部門)

のサポートを受け、ミャンマー・リテラシー・リソース・センター(MLRC)によって実施に移された。NFPEの主な

目的は、正規の初等教育を修める機会を逸したまま、その後の登校がかなわなかった中途退学した生徒 (10~

14歳)に 二度目のチャンスを提供することである。

※NFPEの生徒数は、2012~2013年度の8,709人から、2013~2014年度の7,553人へと減少している。他方で、郡の数は73

から80に増加しており、古くからある郡の多くでは、NFPEは2年以上実施されてきている。概して、古くからある郡の中途

退学児童の数はNFPEプログラム導入後、数年にわたり減ってきており、その結果として2013~2014年度のNFPE学習者

の数は減少している。(教育省およびミャンマー・リテラシー・リソース・センター(MLRC))

インターナショナル・スクールの教科書

教育制度 ―つづき―

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高等教育

教育制度 ―つづき―

高等教育は、主に教育省の高等教育部に管轄されている。他の関係11省も、各担当部門に関連する大学を管轄

している。

管轄省 関連の教育機関

教育省 芸術・科学大学

教育大学

教育カレッジ

経済大学

外国語大学

遠距離教育大学

保健省 医科大学

歯科大学

薬科大学

看護大学

地域保健大学

伝統薬大学

科学技術省 宇宙工科大学

技術大学

政府系技術カレッジ/教育機関

コンピューター大学

運輸省 ミャンマー海洋大学

海洋技術院

森林省 森林大学

農業潅漑省 農業大学

社会福祉・救済・復興省 Nationalities Youth Resource Development Degree Col-lege

協同組合省 コープ・カレッジ

コープ・デイグリー・カレッジ

蓄水産・地方開発省 獣医科学大学

工業省 政府職業訓練校

国防省 国防アカデミー

国防医科アカデミー

国防技術アカデミー

国防看護医療科学院

文化省 国立文化・芸術院

非職業教育大学 仏教大学

仏教学校/学院/道場

〔教育関係各省と関連の下部機関〕

※「Institute」という名称は以前、技術・職業教育機関に使用されてきたが、軍事政権下で「university」に変更された。

例えば「Institute of Economics(経済学院)」は「University of Economics(経済大学)」に変更された。

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技術・職業訓練校

教育制度 ―つづき―

ミャンマーの職業教育には公立と私立の2種類があり、そのいずれも、高等学習レベル(大学レベル相当)と基礎

レベルの2つのレベルがある。

教育機関の種類 レベル 学校数(校)

公立(政府系)職業教育機関 高等学習 155

公立(政府系)職業教育機関 基礎 35

民間の職業教育機関 高等学習 309

民間の職業教育機関 基礎 1,000

〔全国の職業教育機関〕

職業訓練の内容 学校数(校) 職業訓練の内容 学校数(校)

経理 134 国際関係 1

広告宣伝・PR 3 ジャーナリズム 2

芸術・工芸 9 法律 2

ビジネス・マネジメント 33 マーケティング ・小売 20

自動車修理 2 メデイア・コミュニケーション 31

ケータリング 9 モバイル・アプリケーションと修理 16

コンピューター・トレーニング・センター 255 モデル業 8

建設 9 音楽 30

ダンス・舞台 16 NGO 研究 5

運転技術 20 看護 12

電子・電気工学 46 薬剤 11

エンジニアリング・デザイン 120 パイロット訓練 1

英語トレーニング・センター 284 操船技術 5

宝石学、金・宝石加工 5 秘書 1

Gold Training 1 裁縫 89

理容・美容 74 ロジスティック 2

ホテル業 16 ツアーガイド 3

人材 15 商業訓練 2

情報通信技術(ICT) 17 合計: 1,309

〔ヤンゴンにある私立の職業訓練機関〕

出所:Vocational and Technical Education Survey by MSR(2014年)

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民間のインターナショナル・スクール

教育制度 ―つづき―

民間のインターナショナル・スクールは教育省とは切り離された立場にある。これらの学校では、米国、英国ならび

にシンガポールのカリキュラムとシラバス(学習計画)に基づいた授業が行われており、ミャンマーで働く外国人

駐在員の子女に国際教育を提供することが主な目的である。しかしながら、ヤンゴン在住のミャンマー人の上流

家庭の子女の中には、よりよい教育を受け、将来の外国留学に備えて通っている者もいる。

〔ヤンゴンのインターナショナル・スクールの上位校リスト〕

学校名 学校名

1 International School Yangon(ISY) 7 The British International School Yangon(BISY)

2 Myanmar International School Yangon(MISY) 8 International Language and Business Center (ILBC)

3 Network International School(NIS) 9 Yangon Academy

4 Yangon International School(YIS) 10 Horizon International School

5 Myanmar International School(MIS) 11 BrainWorks International School

6 International School of Myanmar(ISM)

●〔学費例〕International School of Myanmar(ISM)にかかる学費等諸経費(2015 ~2016 年度) ※ISMは年2学期制

学年 半期の学費(単位:ドル) 複数の生徒登録:5%割引後 〔2人目以降〕 (単位:ドル)

プレ・スクール 2,134 2,027

プレ・キンダーガーデン 4 3,320 3,154

幼稚園 3,479 3,305

1~5学年 4,831 4,589

6~8学年 5,557 5,279

9~11学年 6,061 5,758

12学年 6,581 6,252

その他諸経費の内訳 備考 金額(単位:チャット)

登録費 1,000,000

延滞金(初月) 80,000

延滞金(初月以降) 1日当たり 5,000

制服代(小中学校のみ) ポロシャツ 9,000

P.E.K 7,000

長ズボン(男児) 5,500

長ズボン(女児) 7,500

スカート 5,000

各種活動参加費 バンド、芸術、社会見学、オープンスクール週間等の活動の際、 別途参加費が必要。

出所:ISMホームページ(http://www.ismyanmar.com/fee_structure.php)

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基礎教育

レベル 学年 年齢(歳)

小学校(初等) Grade1(幼稚園) 5

Grade2 6

Grade3 7

Grade4 8

Grade5 9

中学校(中等下位) Grade6 10

Grade7 11

Grade8 12

Grade9 13

高等学校(中等上位) Grade10 14

Grade11 15

〔現行の基礎教育制度〕

レベル 学年 年齢(歳)

幼稚園 Kindergarten 5

小学校(初等) Grade1 6

Grade2 7

Grade3 8

Grade4 9

Grade5 10

Grade6 11

中学校(中等下位) Grade7 12

Grade8 13

Grade9 14

Grade10 15

高等学校(中等上位) Grade11 16

Grade12 17

〔将来の基礎教育制度(2016~2017年度からスタート)〕

基礎教育の無償化と義務教育化

小学校は2010~2011年度に無償化され、これに中学校が2013~14年度に追随した。政府は、中学校の無償化に

あたり約70億チャットを費やした。高等学校も2015~2016年度に無償化されたが、こちらのコストは約50億チャット

であった。現在、基礎教育制度下にある全ての学校は無償となっている。無償の教育制度において、政府は制服

1着分、教科書代、6冊の練習帳ならびに12本の鉛筆代として生徒1人あたり1,000チャットを支給している。

義務教育化については、政府は計画を持っているだけで実行に移していない。ミャンマーの教育法によれば、

小学校は義務教育とされているが、教育省はミャンマー国内の全ての小学校の義務化を実現できている訳では

ない。5歳で入学できない子供が存在しているのが実情である。小学校の就学率は84.6%で、他のアセアン諸国

と同レベル(ミャンマー教育調査部)とされている。

カリキュラム

全ての学校(公立校、僧院学校、私立校を問わず)のカリキュラムは、教育省によって策定される。教科書も、同省が

用意したものを使用しなければならない。小学校では、主要5教科としてミャンマー語、数学、英語、科学ならびに

一般教養があるが、一般教養には生活技能、社会科学ならびに公民教育が含まれる。授業は公式にはミャン

マー語で行われ、暗記学習や集団音読も広く行われている。基礎教育のカリキュラムは、1995~1999年に修正

されただけで、その変更は計画段階にあり、2016~2017年度から幼稚園を手始めとしてスタートすることになって

いる。ミャンマーにおける授業時間数の合計は720時間/年で、他のアセアン諸国を下回っている。

進学試験

現行制度では5年生と9年生、ならびに11年生の時に、それぞれ小学校、中学校、高等学校に進学するための

資格試験を受けなければならないとしている。他の学年では進級試験等はなく、各章終了時に直近の1ヵ月に

学んだ事に対する小テスト形式の確認テストがあるのみとなっている。

ミャンマー BOP層実態調査レポート

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教育事情

11

基礎教育 ―つづき―

12%

32.1%

63.5%

84.6%

22.9%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

高等教育

中等教育(上位)

中等教育(下位)

初等教育

プレ・スクール

〔就学率〕

生徒数に対する教員数(比率)

27.86%

31.0%

74.2%

73.8%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

<中退率>

中等教育(上位)

中等教育(下位)

初等教育

〔修了率〕

基礎教育の就学率と修了率

教育段階 生徒:教員(人)

初等教育 29:1

中等教育(下位) 35:1

中等教育(上位) 25:1

左右グラフ出所:教育省

出所:教育省

公立校(政府系) 私立校

BEHS 1, Dagon EC Private School

BEHS 2, Latha Ideal Class Education Center

BEHS 2, Kamayut Pinlon Rose Private High School

Practicing High School, Yangon University of Education Mother’s House Education Center

BEHS 2, Mingaladon (aka Aung San Thuriya Hla Thaung School) Mahar Mya Kyun Thar Private School

基礎教育における有名公立校・私立校(ヤンゴン) 初等教育現場(都市部)

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教育事情

12

基礎教育 ―つづき―

基礎教育制度が抱える問題

●公立校教員による副業(私的課外授業)

基礎教育における最大の問題は、公立校の教員が政府から支給される給与以外に、自身が私的に開く課外

授業からも収入を得ている事である。政府から支給される教員の基本給は現在、15~19万チャットと低く、教員

は主な収入源として課外授業の授業料に頼らざるを得ない。なお、課外授業における生徒1人当たりの月謝は

1~10万チャットが相場となっている。私的な課外授業に出席しない生徒にとって、修了試験で意図的に落とさ

れるリスクをはらんでいる。

一方、政府は教員が学校外で教えることを非常に厳しく制限していることから、ヤンゴンの公立校の教員の多く

は課外授業を非正規かつ秘密裏に開いている。

●低所得層に対する経済的負担

社会経済学的階層の低位(低所得層)に属する親の経済状態にかかわる問題がある。基礎教育は制度上、国

内全土において無償とされているが、多くの貧困家庭にとって、授業を受けることにより発生する諸費用が経済

的負担となることが明らかになっている。学校の制服や本、文具の費用に加え、親はしばしば、学校や学校

行事のための椅子やベンチなど他の必需品の購入費用として、学校側から費用負担の追加を迫られる。さらに

放課後、教師の私的な課外授業に子供を出席させるよう求められる。子供が家の雑用がこなせるように

なる7歳くらいの年齢になると、貧困家庭の多くが子供に学習をさせることを断念している。このように、貧困

家庭の子供に対する教育機会は、親の所得水準により大きく左右される状況となっている。

学校の建物・設備・備品

●校舎

高等教育レベルのカレッジや総合大学は、そのほとんどが新築

のレンガ造りのビルであるが、基礎教育レベルの学校の校舎は、

大都市に限定的に存在するレンガ造りの多層階の大型ビル

から、地面に建てられた竹簾の壁と萱ぶき屋根の粗末な建物に

いたるまで、その質に大きなばらつきがある。子供たちは、

地面に敷いたゴザに座ることを余儀なくされている。全国的に

多くの小学校の校舎は老朽化しており、改築の必要がある。

●設備・備品

全国の多くの小学校において、授業にはチョークと黒板が使わ

れている。ヤンゴンの数校のみが、ホワイトボードを使用して

いる。南ダゴン郡在住の学校に通う子を持つ親によると、ホワイトボード用のマーカーの購入費として毎月生徒

1人当たり1,000チャットを負担しているという。多くの小学校では依然として教材や設備の不足がみられ、椅子や

ベンチ、黒板等が必要とされている。

また、他のアジア諸国同様、ミャンマーの生徒は5年生からボールペンの使用を指定されているが、近くに文具

店が併設された学校はほんのわずかしかない。そのような学校はヤンゴンにしかなく、数は限られている。日本

の文具取り扱い企業にとっては、学校周辺に文房具等を販売している店舗等に修正テープ等を売るチャンスが

ある。しかしながら、学級担任の中には、生徒に修正ペンを使用させないようにしている者もいる。生徒の中に、

学校の机や壁に修正ペンで落書きをする者がいるというのがその理由である。

教育省は新政府の下で、学校の水準向上を目的とする基礎教育法案が準備している。タブレット、ビジュアル

教材、ノートパソコン等のデジタル機器への需要が生じることが予想される。政府担当官は、日本の製品、特に

電気製品は品質がよく、耐久性に富んでいると評価している。

初等教育現場(地方)

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13

民間の教育機関

ミャンマーにおいて、日系企業による教育機関を見るのは稀である。しかしながら日系大手学習塾は、2010年以来

ヤンゴンにセンターを持ち、現在は約40人のヤンゴンの上流および中流上位レベルの家庭の生徒に学習指導をして

いる。ミャンマーにおける民間の教育機関は次の4つのタイプに分かれている。

●基礎教育レベルの私立学校

●国際的なカリキュラムで教える私立のインターナショナル・スクール

●私立の職業訓練校

●授業時間外に、非正規に公立校の教員が運営する私的課外授業

学習塾における日本の学習指導スタイルは、ミャンマーの人々にとって全く馴染みが無い。しかしながら、ミャンマー

の人々は、外国の教育指導スタイルを渇望しており、こうした学習塾がミャンマーの教育市場に参入すれば、ヤンゴン

の上流およびアッパーミドル層の家庭の子供たちの利用が想定される。

授業時間外の私的課外授業を行っているのは、政府雇用の公立校の教員だけではない。この他にも、正規の学校

に通う子供たちを教える「家庭教師」がおり、家庭教師には大学新卒の若者から学習指導の経験が豊富な人まで、

様々な人材が含まれている。家庭教師は特定の時間にプライベートに生徒の家を訪問し、1日当りの家庭訪問時間

は3~5時間となっている。こうした家庭での学習指導は、学校での授業だけでは子供には不十分だという親の思い

から出現してきた。親の中には、子供が試験でトップになったり、よい成績を取ることが出来るようにと考えて個人的

に教師をつけている者もいる。生徒の学年が上がれば上がるほど、費用はより高額となる。

なお、公立校の教員による私的課外授業や家庭教師は政府に正規登録されておらず、学習指導は秘密裏に行れて

おり、対象は公立校の生徒である。一方、私立学校は政府に正規登録されている点が大きな違いであり、対象も

公立校の生徒ではない。

教育関係者の見解

教育制度の中長期計画

基礎教育、初等義務教育、技術・職業教育訓練ならびに私立大学に関する法律がCESRによって策定され、新し

い議会に上程されることになっている。非正規初等教育(NFPE)はユニセフのファンドで運営されているが、民間

部門の関与が求められている。基礎教育の新しいカリキュラム(幼稚園+12年制)が2016~2017年度からスタート

する。これにより、12年生を修了した生徒の質は、他のアセアン諸国の同学年の学生に匹敵することになると

想定している。

教育省ミャンマー教育リサーチ部CESR(教育部門の包括的見直しチーム)専門官にインタビューを行った。

教育関連の問題点

〔基礎教育部門〕各章終了時の確認テストが進級目的で転用されており、最大の問題となっている。子供たちの多

くは、基礎教育の修了前に臨時の仕事をするために都市に行ったり、ミャンマー国内より賃金のよい近隣諸国に

出稼ぎに行ったりする実情がある。就学人口の都市部への集中や国外流出も大きな問題となっている。

また、教員による私的課外授業もミャンマーでは大きな問題であり、許可されていないにもかかわらず大学教授の

中にさえ、公立大学で学ぶ同じ学生向けに個人授業をしている教授がいるほどである。公立校教員による私的

課外授業において最大の問題点は月謝が高額である点で、教育の平等を損ねかねない事態となっている。

雇用にかかわる高等教育の主な注目分野

政府系技術大学やコンピューター科学大学、医科大ならびに農業大学同様、職業訓練機関は雇用の面で注目

されており、農業、エンジニアリング、ヘルスケア、ICT関連について、特に雇用が必要とされる注目の分野となって

いる。

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ミャンマー BOP層実態調査レポート 教育事情

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教育関連市場進出にあたっての留意点

ミャンマーは今、世界的に注目されており、ミャンマーでの教育関連市場に参入することはよい選択と思われる。

日本の企業にとって最も相応しいビジネスとしては、教育省が現在、高等学校および中学でICT用のシラバスを

追加することを計画中であることから、ノートパソコン、デジタル機器、電子教材をリーズナブルな価格で供給する

ことである。

文具市場も外国人投資家には妥当な分野ではあるが、多くの親と

学生は、製品のブランドや原産国について意識しておらず、品質と

耐久性で製品を選んでいるに過ぎない。

学習塾の分野については、新しい議会で審議されることになって

いる、私立の教育機関や大学を対象とした私的教育法の審議結果

を待つことが賢明と思われる。

教育関係者の見解 ―つづき―

― 教育省ミャンマー教育リサーチ部CESR(教育部門の包括的見直しチーム)専門官にインタビューを行った。

※様々な所得レベルにある下記の保護者たちにインタビューを行った。

保護者の見解

〔回答者〕

●Cさん(36歳)船員・・・上流

●Tさん(40歳)マネージャー・・・中流上位

●Kさん(33歳)貨物輸送<自営業>・・・中流

●Mさん(35歳)運転手・・・中流下位

●Aさん(36歳)清掃作業員・・・下流

回答者 学校の選択理由 教育関連問題 子供に期待すること 文具選び

Cさん 英語や中国語といった言語を よりしっかり学ぶため、民間の インターナショナル・スクール を選んだ。 最高品質の教育を求めた。

民間のインターナショナル・ スクールなので、月謝が非常 に高い。

外国での学位取得。 本と文具は学校側から 支給されるので、親が 購入する必要はない。

Tさん しつけ教育や予見不能な問題 に関する試験制度から公立校 を選択。 娘は、あらゆる所得層の友人 たちとコミュニケーションをとる ことができる。

オウム返しの学習、教員の質 の低下、教育の無償化にも かかわらず、親は別途の費用 負担を強いられる。 教員は月謝のことしか気に 留めていない。

西側諸国にて修士の 学位を取得して、コン サルタントになること。

子供の興味、耐久性が 文具選びで最重要の 選択基準。 鉛筆は品質の高い日本 のブランドを選んでいる。

Kさん 規律と指導スタイルで公立校 を選択。

子供は幼稚園児であり、今の ところ問題はない。

医者になること。 品質で選ぶ。

Mさん 無償教育を理由に公立校を 選択。

学級担任が、プライベートで 教えている生徒をえこ贔屓 する。

将校になること。 品質で選ぶ。 息子は日本ブランドの 鉛筆削りを持っている。

Aさん 無償教育を理由に公立校を 選択。 ただし、息子は私立校に通わせたい。

自分がプライベートで教えて いる生徒のみをえこ贔屓する 教師。(息子は課外授業を受けて いない。)

鉄道省で一般職として 働くため、9年生で中退 する。

耐久性と品質で選ぶ。

商店の文房具コーナー

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教育事情

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まとめ ~教育関連市場進出にあたっての留意点~

民間学習塾

ミャンマーの教育制度は依然として国際標準にはおよばないが、多数の民間のインターナショナル・スクールが

ヤンゴンの教育市場ではブームとなっている。とは言え、そこに通えるのは上流家庭の子女のみである。ヤンゴン

にある日系大手学習塾を調査したところ、上流および中流上位の世帯に属する約40人の生徒が通っていた。

よって、この分野で日本の企業が進出する場合は、ヤンゴンに居住する世帯の約37%を占める上流、中流上位

ならびに中流に属する生徒を対象とした方がよい。

文具類

ミャンマーの親と生徒の多くは、文具の品質と耐久性にしか注目して

いない。しかしながら、ミャンマー人の多くが「品質が高い日本ブラン

ド」と意識している。「学校の設備・備品」の項で前述した通り、日本

の文具取り扱い企業は、学校または学校周辺店舗に、修正テープ、

ボールペン、鉛筆、鉛筆削り等の販売の展望がある。

電子機器、IT・コンテンツ関連

ミャンマーの教育部門において、校舎、教材等、改善すべきものが

多数あるなか、政府専門官によると、教育省は高等学校と中学校の教育水準の引き上げを計画中とのことである。

ミャンマーの人々は日本の製品の品質に信頼を寄せていることから、日本の企業にとって、電子教材、ICT製品、

ノートパソコン、プロジェクター等の供給面で多くのチャンスが生まれる可能性がある。しかしながら、政府調達の

ため、価格競争が求められると考えられる。

職業教育分野

●ビジネス英語

外国人ビジネスマンとの国際取引や交流で、英語での会話と読み書きの双方にスキルの高い人材の活用ニー

ズがある。ミャンマーには、英語を話せる人材は多数いるが、きちんとした英文を書ける人材は非常に限られて

いる。語学力の高い人は、給与条件のよいポジションに雇われる。

商社、外国のカウンターパートとの合弁メーカー、ホテル・観光業、レストランならびに金融部門は、英語力の

ある多くの若い人材に対するニーズがある。

●エンジニアリング

ミャンマーは現在、あらゆる部門で改革を進めているため、全ての産業分野(建設、製造、サービス)においてエン

ジニアリングが重要になっている。

エンジニアリングが専門分野であり、多くの建設会社が国内に参入することにより雇用機会が豊富になると

期待されるため、多くの学生がエンジニアリング系の科目を学ぶことに関心を示している。

●医学および医療技術

漸増する人口、新たな病気の出現、徐々に高まる社会的ステータスならびに今後見込まれるミャンマー国内の

外国駐在員の増加は、医学と医療技術に関する勉学の質的向上の必要性を惹起するファクターとなっている。

現在、民間のメディカル・スクール(特に、看護、コミュニティ・ヘルスケア、小児および高齢者向けヘルスケア等の分野)

を卒業したほとんどの学生が雇用につながっている。

医療コースは特に、農村部出身の若い女性が関心を示すようになっている。その理由は、授業料があまり高く

ないこと、家族や地域社会にヘルスケアを提供する機会があること、就職が容易であること、それなりの給与

水準であること、地域社会から信頼と尊敬を得られるためである。

4年生で使用する文房具

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職業教育分野

●農業支援と農業技術

ミャンマーは農業国であり、軍部は様々な国家体制の下、農業に礎を置いた国の発展を訴え続けてきた。現実

にはいかなる時代においても、一貫して貧困状態にあった稲作農家の関心を引くものではなかった。しかし

現在、農業への支援(機械化)が実施され、農業に関心を持つ前途有望な若者に農業技術が共有されるべき

時代となっている。

まとめ ~教育関連市場進出にあたっての留意点~

略語 説明

AY Academic Year:教育年度、学年度

BEPS 小学校

BEMS 中学校

BEHS 高等学校

CESR 教育部門の包括的見直し

ISM ミャンマー・インターナショナル・スクール

MLRC ミャンマー・リテラシー・リソース・センター

MOE Ministry of Education:教育省

NFPE 非公式初等教育

NLD National League for Democracy:国民民主連盟(第一党)

SES Socio-economic Status:社会経済学的階層

〔略語の説明〕

ミャンマー農村部(イメージ)