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Title ヴァルネラビリティに対する意向確認についての考察 : 社会福祉制度の動向にみる支援を必要とする人の意向確 認のあり方 Author(s) 玉木, 千賀子 Citation 沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities and Social Sciences(19): 81-92 Issue Date 2017-03-24 URL http://hdl.handle.net/20.500.12001/21414 Rights 沖縄大学人文学部

ヴァルネラビリティに対する意向確認についての考 …okinawa-repo.lib.u-ryukyu.ac.jp/bitstream/20.500.12001/...Title ヴァルネラビリティに対する意向確認についての考察

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Titleヴァルネラビリティに対する意向確認についての考察 :社会福祉制度の動向にみる支援を必要とする人の意向確認のあり方

Author(s) 玉木, 千賀子

Citation 沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty ofHumanities and Social Sciences(19): 81-92

Issue Date 2017-03-24

URL http://hdl.handle.net/20.500.12001/21414

Rights 沖縄大学人文学部

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沖縄大学人文学部紀要 第 19 号 2017

〈論文〉

ヴァルネラビリティに対する意向確認についての考察

- 社会福祉制度の動向にみる支援を必要とする人の意向確認のあり方 -

 

玉木 千賀子

要 約

 本研究の目的は,ヴァルネラビリティ 1) に対する意向確認のとらえ方を社会福祉制

度の動向に沿って考察することである.

 生活保護法をはじめとする戦後の社会福祉に導入された申請・措置方式,社会福祉

基礎構造改革以降,福祉サービスの提供方式として用いられている契約方式の下で

は,自らの社会生活課題に対する認識の乏しい人や申請・契約の能力が十分に備わっ

ていない人が支援から取り残されるという課題が生じた.そのようなヴァルネラビリ

ティに対する支援上の課題は,申請・措置方式の時から指摘されていたが,生活困窮

者自立支援法の施行によって漸くヴァルネラビリティに対する支援システムが制度化

され,意向確認とそれに基づく支援の取り組みがはじめられたところである.また,

障害者福祉の領域では,障害者権利条約の批准,障害者差別解消法の施行等を契機に,

障害の状態にある人の意思決定支援のあり方の検討が進められている.

 社会福祉はヴァルネラビリティに対する支援に本格的に取り組みはじめており,そ

のような状態にある人に対する意向確認のあり方の検討は,個人を尊厳するというソー

シャルワークの価値の具現という意味においてとりわけ重要な検討課題である.

キーワード:ソーシャルワーク,社会福祉,ヴァルネラビリティ,意向確認

はじめに

 経済状況の不安定や家族機能の低下,人間関係の希薄化など,人々の社会生活の維持に困難

を生じさせている状況の拡がりと共に,生活の困難や生きづらさを抱えているにもかかわらず,

支援を求めない,自らの生活困難に対する認識が乏しい,支援に対する意向がその時々で変化

するなど,生活の維持や生活課題の解決力に脆弱性をもつ人が拡大している.今日のソーシャ

ルワークにおいて,このようなヴァルネラビリティの状態にある人の意向を確認し,必要な支

援に結びつけることが重要な課題である.

 個人的特性や置かれている環境の違いに関わらず,社会生活に困難が生じている人の意向の

確認に基づいた支援をおこなうことは,人をかけがえのない存在として捉えるという社会福祉

の価値の具現である.それに基づけば,社会生活課題の解決に向けて自ら支援を求めることが

できる人に対する支援をおこなうのと同様に,ヴァルネラビリティの状態にある人々に対して

も,その現象の背景にある要因を分析し,個々の状況に適した方法を用いて潜在する意向を引

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き出し,その意向の確認に基づいた支援をおこなわなければならない.

 日本の社会福祉の支援は,法制度の枠組みに沿って実施されてきた.したがって,ヴァルネ

ラビリティの状態にある人の支援をいかにおこなうのかというソーシャルワークの課題を考え

るための切り口として,日本の法制度がヴァルネラビリティの状態にある人とその支援をどの

ように捉えてきたのかという点を検討する必要がある.

 このような課題認識に基づき,ヴァルネラビリティの状態にある人の支援における意向確認

のあり方を社会福祉制度の動向に沿って検討する.

1.申請・措置に基づく福祉サービスの提供と支援を必要とする人の意向確認

 福祉サービスの提供において申請に基づく支援が最初に導入されたのは 1949 年の生活保護法

の改正(新生活保護法の施行)である.生活保護法第7条「申請保護の原則」は,生活保護は

要保護者の申請に基づいて開始されるべきであると国民の保護請求権を明示した.これにより,

国民による生活保護の申請と旧生活保護法から引き継がれた措置に基づく生活保護の支給を併

せもつ申請・措置方式が成立し,1990 年代までの社会福祉サービスの中心的な提供手段として

用いられた.

 それに遡る新生活保護法以前の日本の近代市民社会においては,公的救貧施策の原初として

位置づけられる恤救規則(1874 年)および統一的基準に基づき救済を実施した救護法(1929 年)

は,家族および共同体社会の相互扶助による救貧を一義とし,それによってもなお生活の維持

が困難な人に対しては国が救済するという職権主義・選別主義的施策をとった.そして第二次

世界大戦後,国民の窮乏への対応を目的とした旧生活保護法(1946 年)によって,公的責任,

無差別平等,最低生活保障の3原則が採られた.ところがこの時には支援を求める人がその意

向を表出する権利については認められず,1949 年の法改正によって国民の生活保護請求権が認

められた.

 申請主義の前提として,①申請者が自らの福祉ニーズの内容や期待しうる福祉サービスの種

類,申請の手続き等についての知識を備えていること,②身体的・精神的に申請についての判

断能力と手続き事務能力を備えていること,③許容された福祉サービスの利用によって自己の

福祉ニーズを適切に充足しうる身体的・精神的生活能力を備えていることが必要になる.しかし,

福祉サービスを必要とする人が,これらの要件を必ずしも満たしているとは限らず,支援を必

要とする状態であってもその対象からの欠落が生じる(古川 1993:301-302)場合がある.

 さらに,福祉サービスの利用決定に用いられる措置基準とは,福祉サービスを必要とする人

のニーズの質量によってのみ設定されるのではなく,措置権者の政策的判断が加味される.つ

まり判断基準は,福祉ニーズの特性に着目した客観的基準というより,その一部を切りとった

ものと政策的な意図を踏まえた福祉サービスの対象規定であるため,権利を制約する方向に用

いられる(古川 1993:297-298)場合もあれば,逆に権利の拡大という方向にも用いられる場

合もあるという恣意的な要素を含んでいる.

 戦前の社会福祉の初期においては,国は生活困難にある人の救済責任をもたず,一方,国民

の側にも救済を求める権利はなく,生活の困窮に対する支援を必要とする人々の支援を求める

意向は全く無視されているに等しかった.それが戦後の旧生活保護法によって措置という公的

責任が明確化され,その後,新生活保護法への移行により,国民の保護請求権が認められるに至っ

た.それにより人々の社会生活上の課題に対して,国民の生活支援という国に課せられた義務

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と国民の支援を求める権利が法律上明確になり,人々の意向の表出とそれを受け止めるための

法体制が整ったとみることができる.

 戦後日本の社会福祉制度に導入された申請・措置方式は,新生活保護法制定以降,低所得お

よび貧困階層の保護という国民の生存権保障を目的として機能してきた.しかし,福祉サービ

スを必要としている人の側から見れば,申請手続きや福祉サービスの活用には一定の能力が求

められるため,その能力が備わっていない場合や不足する能力を補うための支援が得られない

場合には,サービスの利用を希望している場合であっても申請やサービスの利用から疎外され

るという可能性がある.

2.契約方式への移行と福祉サービスを必要とする人への着眼

 申請・措置による福祉サービス提供方式に代わり,2000 年の社会福祉事業法から社会福祉法

への改正によって新たに導入されたのが契約方式である.社会福祉基礎構造改革に基づく法改

正では,「個人の尊厳の保持」の基本理念のもと,福祉サービス利用者の利益の保護と地域にお

ける社会福祉の推進が目的として掲げられ,福祉サービスの利用には,利用者の意向尊重を具

現化するものとして契約方式が導入された(中央社会福祉審議会社会福祉基礎構造改革分科会

1998).これら,措置・申請方式から契約方式への転換に先鞭をつけたのは,高齢者福祉領域の

介護問題への対応である(介護対策検討会 1989).

「介護対策検討会報告書」では,今後見込まれる介護問題の深刻化に対し,これまでの行政主

導の支援では量質ともに対応が困難であること,介護状態になってもこれまでの生活の継続や,

自らの判断で生活のあり方を選択できるようにするための仕組みづくりの重要性が指摘された.

さらに,要介護状態にある人や介護者の介護需要に迅速に応えるためのサービス利用手続きの

簡素化,相談に常時対応できるサービス拠点の設置,社会保険方式による費用負担のあり方等

の導入を提起した.これらの内容は後に続く高齢者保健福祉十か年戦略(ゴールドプラン)を

はじめとする介護保険制度の導入に向けた検討へと引き継がれた.

 公的責任による介護支援の限界とそれに代わる社会保険方式の導入にあたり,財源負担を担

う国民の理解を得る必要性に迫られていた,介護という限定的な問題ではあるものの,同報告

書が提起した福祉サービスを必要とする人の意向を尊重した生活支援の考え方や福祉サービス

へのアクセシビリティの促進は,福祉サービスによる支援を必要としている人の視点にたつサー

ビス提供へと転換する契機となった.

 翌 1990 年に厚生省社会援護局保護課に設置された生活支援事業研究会は,地域で生活のしづ

らさを抱える人びとを広く支援の対象として捉え,潜在的なニーズ把握に重点をおいた生活支

援の重要性を指摘した.潜在的なニーズとは,支援を必要としている人の問題状況に対する認

識が乏しい場合だけでなく,地域社会の他者への関心の乏しさ,専門職の問題認識に関する先

入観や固定化等によっても生じる.社会生活課題をもつ人々の利益を鑑みれば,多様な方法を

用いて早期のニーズ発見と対応に取り組むことが必要になる.同研究会の報告書では,地域社

会からの孤立,入院から在宅までの生活上のケア,家庭内の諸問題,住まいや財産管理等の生

活設計上の問題,在日外国人の日常生活上の問題等,人々の社会生活上の課題を広範囲にとら

えるとともに,それらの積極的な把握と個々の自己実現を図るためのフォーマル・インフォー

マルな社会資源の協働 ・ 開発,自立生活計画に基づくチームアプローチの必要性が指摘された

(1990 生活支援事業研究会).

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 福祉サービスによる支援を必要とする人のなかには,制度に関する情報不足や社会生活課題

に対する認識の乏しさから支援の必要性を表明できない人々がいる.他方,専門職の問題認識

に関する視野の狭小が地域の新たな問題やマイノリティの人々が抱える問題の発見を遅らせる

という場合もある.支援を必要とする人の属性や志向,個々の課題認識の程度や有無にかかわ

らず,生活のしづらさと生活への願いに着眼するという生活支援事業研究会の生活支援の考え

方に基づけば,支援を必要とする人の意向確認とは,支援をおこなう側が予め支援の範囲や方

法を規定するのではなく,個別性の十分な理解に基づいた個々の支援を通して導き出されるも

のといえる.

3.ヴァルネラビリティの状態にある人の支援の必要性に対する認識

 生活支援研究会が指摘した潜在的な社会生活ニーズへの着眼は「『社会的な援護を要する人々

に対する社会福祉のあり方に関する検討会』報告書」(社会的な援護を要する人々に対する社会

福祉のあり方に関する検討会 2000)においても提起されている.同検討会は,日本の社会が都

市化や核家族化の進展,産業化や国際化の中で人々のつながりが希薄になり,社会的排除や摩擦,

社会的孤立などの見えにくい問題が生じていると指摘し,そのような状況におかれている人々

には,制度運用の複雑さやアクセスの困難,あるいは情報不足等の要因によって支援が届いて

おらず,人々のつながりの再構築と問題の発見・把握から解決までの継続的なアプローチが必

要であると指摘した.

 この報告を批判的にみれば,契約方式の導入によって福祉サービスの利用から排除されたり,

取り残されたりする人の支援の必要性は示しているものの,その指摘に留まり,具体的な支援

の方策については打ち出していないという課題が残される.しかし,政策の転換期において,

社会福祉が契約能力をもつ人への支援に偏重するのではなく,制度に基づく支援の枠組みや契

約に馴染まない人々に対する支援の重要性を指摘したことに関する本報告書の意義は大きい.

 「ソーシャルワークが展開できる社会システムづくりへの提案」(日本学術会議第 18 期社会福

祉・社会保障研究連絡委員会 2003)は,金銭給付や社会福祉施設での入所方式による社会福祉

から,個人の尊厳が保障された地域での自立生活を可能にする支援方式への転換が必要である

こと,その実現にはケアマネジメントを手段としたソーシャルワークを展開できるソーシャル

ワーク専門職の任用と社会福祉教育水準の確保が必要であると提案した.

 社会福祉法第四条が示す地域福祉の推進によって,福祉サービスを必要とする人とそれを支

える地域社会との接点ができたとしても,その後の支援過程が適切に機能しなければ人々の社

会生活課題の解決には結びつかない.確かに契約方式への移行によって福祉サービスを利用す

る人にとっては必要な支援が得やすくなった.しかし一方で,それまでにも指摘されているよ

うに,契約に馴染まない人々に対する生活支援機能は弱くなり,情報弱者と言われるような人

や社会的な弱者と言われる人ほどサービスにつながりにくくなる(山崎他 2006:55-56)など,

多問題の家族や社会生活課題が重複する人々に対する支援の難しさが実践上の課題として取り

あげられ,「対応困難事例」と呼ばれる人々への関心を生むことになった.

 しかし,そのような支援の粗漏や困難は,「対応困難事例」と呼ぶことに象徴されるように,

支援を必要とする人の個人的要因に起因するものなのだろうか.むしろ,制度の枠組みに沿っ

て社会生活上の課題解決に対処するという硬直化した支援や,地域生活とは種々の個人的要因,

個人を取り巻く環境的要因の影響を受けて,絶えず変化しながら営まれるものであるというこ

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ヴァルネラビリティに対する意向確認についての考察

とへの支援者の側の認識の乏しさゆえに生じる,支援を必要とする人の意向の把握や理解の不

十分から生じているといえるのではないか.このことは,地域およびそこに暮らす人々をどの

ように理解するのかという点を示した「地域における『新たな支え合い』を求めて─住民と行

政の協働による新しい福祉─」(これからの地域福祉のあり方に関する研究会 2008)において

も提起されている.同報告書の内容によれば地域には次の特性があることが読み取れる.

 第1に地域のもつ固有性である.個々の地域にはその地域の成り立ちの経緯とそれに伴う人々

の関係性があり,それらが地域のありように影響を及ぼしている.第2に地域とは多様な社会

生活課題と社会資源が存在する場であるという点である.人々は固有の人格と社会関係をもっ

ている.それゆえに人々に生じる社会生活課題,それを支える社会資源もまた多様である.こ

のことが,地域生活を営む人々の社会生活課題の対応の難しさであり,逆に支援の可能性が秘

められている点でもある.第3に地域生活には多様な要因が関係するため,その社会生活課題

が複雑化する傾向があるという点である.社会構造や家族・地域の変化が著しい今日,人々が

社会生活において担う役割が多様で複雑になることによって機能不全の状態に陥りやすくなる.

第4に地域社会の価値・規範が,個人の社会的排除に結びつく場合があるという点である.社

会的排除の形成は,失業や倒産,途切れ途切れの不安定な就労などの個人的な経験だけでなく,

地域社会それ自体の経験や地域問題として現れる場合がある(岩田 2008:109-110).第5に

ライフステージによって人々の地域社会との関係性や地域社会に対する関心は変化するという

点である.生涯発達課題の理論(Havighurst:1953 = 1995)に基づけば,人々は社会生活の

変動に適応するために絶えず学習することが必要である.そのため人々の発達課題の推移に伴

い,生活における関心や活動が変化し,地域との結びつきの内容や程度が変化する.第6に地

域は個人の自由や幸福が尊重される場であるという点である.人々が社会生活を営む場として

の地域は,憲法 13 条にあるひとりの人間として自由や幸福を願う権利が尊重される場として機

能しなければならない.

 地域にはこのような特性があり,人々の社会生活支援をおこなう場合には,これらの要素が

支援を必要とする人の生活への意向に影響を及ぼすことを踏まえる必要がある.

4.「制度の狭間」にある人に着眼した支援システムの構築

 これまでの社会福祉制度に基づく支援においては,生活に困窮する人の経済的支援は生活保

護法が対応してきたが,生活困窮に陥るリスクへの対応を視野に入れた包括的なシステムがな

く,生活困窮に対する予防的支援が不十分であった.その課題を克服するために,生活困窮者

自立支援制度が設けられた.この制度では,生活困窮の状態とその支援を厳密に規定せず,実

践現場の裁量によって支援を展開することができる仕組みを採用する(熊木 2015:13-14)こ

とによって,「制度の狭間」に対処するという方法を導入した.つまり,制度ありきの支援では

なく,支援を必要としている人の困難や生きづらさが支援の必要性の有無やその方法を決定す

るということであり,「制度の狭間」の多様な社会生活課題に対処するための支援方法を構築す

るという役割と機能がソーシャルワークに求められた.

 岡村理論の「社会関係の2重構造」を用いて「制度の狭間」を説明している猪飼(2015:30)

は,「社会制度」と関係をもつ個人は,その関係により一定の利益を享受すると同時に「社会制度」

というシステムに貢献しなければならないと述べ,独立性をもつ社会制度に対して,個人はそ

れぞれの「社会制度」との関係を取り結ぶ必要があるが,個人に複数の「社会制度」との関係

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を取り結んだり,自らの生活を統合したりすることに困難が生じることによって「制度の狭間」

が生まれ,その狭間にこそソーシャルワークの支援が求められると指摘している.

 さらに猪飼は論を展開し,「社会制度」による支援としての社会保障モデルとソーシャルワー

クとしての生活モデルを設定し,「社会制度」の複雑化に伴い「社会制度」に由来する困難が生

じる蓋然性が高く,それによって社会保障モデルの支援効率も低下し,個別的支援に重きをお

く生活モデルが優位になるとする.つまり,「制度の狭間」とは「社会制度」の発展によって生

じる不可避的なものであり,「制度の狭間」に対処するためには,生活モデルつまりソーシャル

ワークに支援戦略を移すことが必要(猪飼 2015:32-37)になると述べている.

 平野(2015:19-24)は「制度の狭間」とは,①問題はあるものの現存の制度では対応できな

い,②支援する側の限界(ここまででよい,これしかできない)という2つの要因が作用し,

②に関しては,機関・組織,さらには援助者により大きく異なるため必ずしも共通しないが,

いずれにしても制度とソーシャルワークの限界によって生じると説明している.そして,「制度

の狭間」を克服するためには,制度の一般性・限定性は避けられないが,制度の対象となる人

の個別性の追求は重要であり,ソーシャルワークにおいては,個別的なニーズに対応するため

の機関・組織連携によるチームアプローチが重要であると指摘している.

 猪飼・平野の考えに共通するのは,「制度の狭間」とは制度の充実により必然的に生じるもの

であるという点である.制度が人々の属性ごとに細分化・個別化すると,個々の制度の対象規

定や支援手続きなどの運用が複雑になる.それにより制度の網の目から抜け落ちる人々が生ま

れ,そのような人々の支援がソーシャルワークに求められるという点である.

 「制度の狭間」とは,支援を必要とする人の個人的要因ではなく,人を取り巻く社会システム

の複雑化によって生じるものであるということを社会福祉およびソーシャルワークは認識しな

ければならない.そして人々の社会生活課題を俯瞰的に捉え,「制度の狭間」を見逃さず,支援

の手立てを打てるようにするための制度のしくみとソーシャルワークの機能が必要になる.

 先に述べた生活困窮者自立支援制度は,生活困窮に陥るリスクをもつもののその対処が困難

な状況にある,つまりヴァルネラビリティの状態にある人を支援対象とした制度である.生活

困窮に陥る要因には個人的な要因もあれば,支援を受け止める制度が存在しないという前述の

課題に見られるような環境的要因,さらには両者が複合化する場合もあり,課題とされる状況

をとらえるためには ICF の視点が重要になる.制度による支援の対象を個人属性や問題特性で

規定するのではなく,「生活困窮」という状況を対象とし,運用に関しても現場の裁量を拡大し,

個々の困窮に適した支援を柔軟に展開する.その場合には,個別的支援とともに,その人を取

り巻く環境が生活の困窮に対処する資源となり得るように,家族や地域等に働きかける包括的

な支援をおこなうことが必要になる(厚生労働省 2015 a).これらは,猪飼の提示する生活モ

デルとしてのソーシャルワークや平野が指摘する機関・組織連携に相当するものである.

 「制度の狭間」を現代の社会生活支援システム上,必然的に生じる支援領域としてとらえて,

その領域における支援を他の支援対象領域と同様に担保する必要がある.そして,ソーシャル

ワークには生活困窮に置かれている人の社会生活課題の成り立ちや状況分析のスキルと「制度

の狭間」にある人々の社会生活課題に対応できるチームアプローチを構築する機能が求められ

る.

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ヴァルネラビリティに対する意向確認についての考察

5.障害者権利条約の批准と意思決定支援の具体化に向けた歩み

 日本は 2014 年「障害者の権利に関する条約」(以下,権利条約)を批准した.それまでは批

准に向けての国内法の整備に取り組んできたが,批准後は条約の内容を具現化するためのシス

テムの構築,それに基づいた支援のあり方の具体的検討を進めていく必要がある.

 権利条約によれば,意思決定とは「すべての場所において法律の前に人として認められる権

利」(権利条約第 12 条第1項)であり,障害の状態にある人が「生活のあらゆる側面において

他の者との平等を基礎として法的能力を享有する」(権利条約第 12 条2項)ことである.つまり,

権利条約は,権利としての能力だけでなく,法的能力つまり契約行為についても基本的な権利

として障害の状態にある人に保障されるべきであるとしている.

 条約策定過程では,代行決定としての性格をもつ成年後見制度との関係について議論が重ね

られ,同条第3項「法的能力の行使にあたって必要とする支援を利用する機会を提供するため

の適当な措置」および第4項「法的能力の行使に関連する全ての措置において,濫用を防止す

る」という法的能力を行使する場合の支援,代行決定に際して慎重な対応をおこなうことを条

文に盛り込むことによって合意が図られた.日本はこの議論の際,保障すべきものは「権利能力」

だけであるという見解を堅持したという経緯があり(石渡 2015:25-26),権利条約の意思決定

の基本原理に結びつけた成年後見制度の根本的な検討の必要性は見送られることになった.

 条約批准までにおこなわれた国内法の整備では,障害者に対して,自らの生活の場所や暮ら

し方についての選択の機会を確保することが障害者総合支援法の基本理念として位置づけられ

たほか,①国および地方公共団体が障害者の意思決定の支援に配慮する旨の規定(障害者基本

法第 23 条,知的障害者福祉法第 15 条),②指定事業者等および指定相談支援事業者が利用者の

意思決定の支援に配慮する旨の規定(障害者総合支援法第 42 条および第 51 条),③利用者に

必要な情報提供をおこなう旨の規定(障害者総合支援法第5条)等が設けられた(厚生労働省

2015 b).

 権利条約の考え方に基づく意思決定支援の具体的なあり方に関しては,公益社団法人日本発

達障害連盟(2015)による意思決定ガイドライン(案)が提示されている.その内容によれば,

①意思決定は,好みや望みあるいは障害の特性などの障害者の態様,意思決定の領域(生活・人生・

生命),障害者を取り巻く人的・物的・社会環境という3種の要素で構成され,②意思決定支援

に際しては,a.人には意思決定能力があるという前提に基づく,b.実行可能なあらゆる方法

を用いる,c.情報提供に対する細やかな配慮に留意したうえでの意思決定支援計画書の作成を

おこなうものとされている.そのほか「障害者の意思決定・成年後見制度の利用促進のあり方

について」(厚生労働省 2015b)では,実践事例の蓄積による意思決定ガイドライン(案)の検

証と成年後見制度のあり方についての議論という今後の検討課題が提示されている 2).

 意思決定ガイドライン(案)の提示は,障害者福祉領域の相談支援において,意思決定支援

の手法が確立されておらず,個々の団体または支援者が手探りの状態で取り組んできたことに

一定の成果をもたらし(公益社団法人日本発達障害連盟 2015),意思決定のあり方を方向づけ

るという意味においては,極めて重要な意味をもつものである.意思決定ガイドライン(案)

をもとに,権利能力の保障までを含む意思決定支援を実効性のあるものとしていくためには,

内容の検証とともに,意思決定支援のシステムが適切に機能するための相談支援のスキルの確

保というソーシャルワーク機能の向上,人員体制の確保等の法的整備に基づいた支援基盤の構

築がなされなければならない 3).

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 中野(2010:60-61)は,障害者福祉領域の相談支援に用いられているケアマネジメントの

一連の過程を,意向の確認作業と修正の過程であると述べている.この考えに基づけば,2003

年の支援費制度でケアマネジメントの方法が導入された時点から意思決定支援がおこなわれて

きたことになる.しかし,制度制定当時は身体障害者当事者によるセフルケアマネジメントの

提言や当事者のエンパワメントの手法としてのケマネジメントの活用(中野 2010:59)などセ

ルフアドボカシーの側面が強調されたことが,意思決定が困難な人に対するソーシャルワーク

の検討の遅怠に結びついた可能性がある.

 2016 年には障害者差別解消法が施行され,障害の状態にある人の視点に基づいた平等な機会

の保障に取り組むことが定められた.差別の解消には,障害の状態にある人と向き合い,差別

の存在に対する認識の共有とその解消を共に考える必要がある.しかし同法では差別を解消す

るための配慮(合理的配慮)の義務は設けられておらず,法の理念の形骸化を否定できない(山

本 2016).したがって,障害者差別解消法の目的を現実のものとしていくためには,ソーシャ

ルワークの人間観や目的に基づく実践という原理的な問いに立ち戻り,支援のあり方を考える

ことが重要な意味をもつ.

まとめと今後の課題

 本研究では,ヴァルネラビリティに対する意向確認のあり方を社会福祉の動向に沿って確認

し,その内容を考察した.

 申請・措置に基づくサービス提供方式では,申請の段階で支援を求める力の乏しい人が支援

から取り残され,措置という画一的な基準に沿った支援の決定では,支援の意向を確認するこ

とができたとしても個別性の高いニーズには対応できないという支援システムの限界に起因す

る課題が生じる.申請・措置方式は,社会福祉法の施行によって契約方式が導入されるまで用

いられたが,その間には,制度化された支援では発見や対応が困難な限定的または多様なニー

ズに対して,ソーシャルワークの個別支援および地域支援機能を発揮することの必要性が指摘

された.

 申請・措置方式に代わって導入された契約方式は,高齢者の介護問題への対応を契機として

導入された.契約方式は,福祉サービスの利用を表出することができる人の意向への対応は担

保したが,申請・措置方式と同様,支援を求めることが困難な人は支援から取り残されるとい

う課題を残した.この課題に対応するために地域福祉の推進が社会福祉法上に位置づけられ,

潜在する社会生活課題を地域で発見・支援することの必要性が提起された.制度による支援は,

制度を利用する能力が乏しい「制度の狭間」の人々を生む.その「制度の狭間」にある人に対

応する支援システムとして生活困窮者自立支援制度が制定された.この制度では,支援を求め

ることが困難な人の個別性の高い支援ニーズに対応するために,支援を必要とする人に適した

現場裁量の柔軟なソーシャルワーク機能の発揮を位置づけた.障害者権利条約の批准を契機に,

障害の状態にある人の尊厳が保持される社会の実現に向けた取り組みが進められており,その

中核にあるのが意思決定支援のあり方である.個人の尊厳を実現する手段としての意思決定支

援は,障害者差別解消法によって具体的な対応を求められている.  

 これら社会福祉制度の動向をみると,支援を求める力が乏しい人すなわちヴァルネラビリティ

の状態にある人が支援から取り残されるという課題は,申請・措置という限定的な支援システム,

そして属性ごとに制度が細分化された今日においては「制度の狭間」としてその要因は異なる

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ヴァルネラビリティに対する意向確認についての考察

ものの継続している.この課題への本格的な対応は,生活困窮への予防的な支援としての生活

困窮者自立支援制度,障害の状態にある人の尊厳ある社会の実現という人権保障の観点にたつ,

障害者権利条約の批准に関連する法整備によって本格的な取り組みが始められた.その実現の

ためには制度運用におけるソーシャルワーク機能が重要になる.

 人を分け隔てなくとらえ,個々に適した支援をおこなうこと,つまり個人の尊厳は,ソーシャ

ルワークの中心的な価値として位置づけられ,その重要性は自明のことであるとされてきた.

そのことがかえって,人や社会にとって尊厳がなぜ必要であるのか,尊厳とは具体的に何をす

ることであるのかという尊厳の意味やあり方に焦点をあてた議論の不十分さを生んでいると指

摘されている4).

 ソーシャルワークの支援を必要とする人をどのようにとらえるのかという視点が個人の尊厳

という価値の具現のしかたを規定する.ヴァルネラビリティに対するソーシャルワークのあり

方が問われている今日,ソーシャルワークの支援を必要としている「人」の理解 5) のしかたを

改めて問い,それに基づいて支援のあり方を模索することがソーシャルワークに求められてい

る.

1)文献によって「ヴァルネラビリティ」または「バルネラビリティ」という表記の違いが見られる.本研

究では,独立した形式で引用する場合にのみ,その文献で用いられている表記とし,他については「ヴァ

ルネラビリティ」と表記する.ヴァルネラビリティは社会福祉,防災,教育,情報処理、法学等の学問

領域で取りあげられており,社会福祉に関連してこの言葉をいち早く用いたのは,ボランティアのもつ

性格とそこに内包される人とのあり方を分析した金子(1992)である.金子は,ボランティアをおこ

なう人がもつ「これで良いのか」という自分自身への問いとそのつらさ(ひ弱さ,他者からの攻撃の受

けやすさ,傷つきやすさ等の状態)をあらわす言葉として,ヴァルネラブル,ヴァルネラビリティを用

いている.古川(2008:93-94)は,格差や不平等社会に起因するヴァルネラビリティを「社会的バル

ネラビリティ」という用語を用いて概念化し,「現代社会に特徴的な社会・経済・政治・文化のありよ

うに関わって,人々の生存(心身の安全や安心),健康,生活(の良さや質),尊厳,つながり,シティ

ズンシップ,環境(の良さや質)が脅かされる,あるいはそのおそれのある状態」で,このようなヴァ

ルネラビリティの状態の中心にいるのは,生活に関して自己責任を負うことが難しい人々のなかで特に

不利益や侵害を受けやすい人であり,具体例として,引きこもり,ニート,ホームレス、うつや神経症

等を挙げている.

2)権利条約締結の時点では,日本は意思決定権の保障は権利能力にとどめるという見解を示したが,第三

者後見を担う日本弁護士連合会や日本社会福祉士会では,法的能力を可能な限り保障するために,意思

決定支援をし尽くした上での代行決定の権限の行使という考えに基づき意思決定支援のあり方の検討が

進められている(日本弁護士連合会 2015,日本社会福祉士会 2016).

3)公益社団法人日本発達障害連盟がガイドライン(案)を提示した前年に日本相談支援専門員協会が報告

した相談支援の実態調査(日本相談支援専門員協会 2014)では,2012 年から義務化されている相談支

援事業者による計画相談支援(ケアマネジメント)において,相談支援従事者の力量のばらつきや,質

より量を重視した計画作成という状況が生じていることが指摘されている.

4)ソーシャルワークの価値・倫理研究者の Reamer(1999 = 2001)は,ソーシャルワークでは個人を尊

厳するという価値を実践の専門性を規定する重要な要素として位置づけてきたが,価値の概念に関する

議論の多くは,価値そのものの意味を問うものは乏しく,実践の関連性について簡単な概要を示すだけ

であったと指摘している.また,日本では援助関係の原則を示したことで知られている Biestek(1957

= 1966:ii)は,個人の尊厳という信念に内包された援助関係の重要性の議論は進められているが,援

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沖縄大学人文学部紀要 第 19号 2017

助関係が一体何者であるのかを具体的に説明する努力は十分におこなわれてこなかったと述べている.

日本の研究者による見解をみると,村田久行(2011:35)は日本の社会福祉現場では「業務」の思想

に基づく実践が蔓延し,援助という仕事の意味を失っていると指摘している.また,ケアマネジメント

に焦点化して意向確認のあり方に課題提起をしている中野敏子(2010:60-61)は,支援過程は意向の

確認とその修正,つまり自己決定と自己選択の考え方を実践化するものであるが,自己決定の本質的な

意味をとらえきれていないと分析している.大橋 (2007:166-167) は , 価値という言葉を使ってはい

るものの , 価値とは具体的には何を指すのかを伝えきれておらず , 研究もおこないきれていないとソー

シャルワーク研究の課題を指摘し, 医療ソーシャルワークの実践に引き寄せて論究している大瀧(2001:

5)は,日本における自己決定の検討は理論や理念として検討されているものが多く,現場実践で応用

した場合の問題や検討課題を具体的に取り扱っているものは限定されると実証研究の乏しさを取りあ

げている.「尊厳」を取り扱った雑誌論文・単著を整理し,その傾向をまとめた栃本(2007:5-6)は,

社会福祉の領域において「尊厳」を正面から取り扱った文献が生命倫理や医療倫理等他領域に比べて乏

しいことを指摘している.

5)近代市民社会の形成とともに発展してきたソーシャルワークは,主として市民としての権利を行使し義

務を果たすことができる能力,いわゆる「意思の自律」を備えた人を尊厳の対象とする Kant(1785 =

2005)に依拠した人の理解に基づいてきた.その立場をとるのであれば,自己決定の力が乏しい人に

対してソーシャルワークはどのように向き合うのという点についても明確にしなければならない.この

点については,人間は主体的にみずからを生きる投企であるとする Sartre の実存主義(1905 = 1955)

に基づく検討が必要になる.加えて,人の社会生活課題が環境の影響を受けるという人と環境の交互作

用という視点に基づけば,日本の文化がソーシャルワークに与える影響についても検討する必要がある

(一番ヶ瀬 1965,黒川 1980,空閑 2014 他).

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ADiscussiononConfirmationofVulnerablePeople’sIntention

‐DesirableWaytoConfirmIntentionofPeopleNeedingSupportinContextofChangesinSocialWelfareSystem‐

ChikakoTAMAKI

Abstract

Thepurposeofthisstudyistodiscusshowtoconfirmtheintentionsofvulnerablepeopleinlinewiththechangesinthesocialwelfaresystem. Under theapplicationandplacementsystem introduced to thepostwarsocialwelfareprogramsincludingthePublicAssistanceActorthecontractsystemwhichhasbeenusedasaonetoprovidewelfareservicesaftertheStructuralReformofSocialWelfareFoundations,therehasarisenachallengethatthosearen’tfullyawareofproblemstheyarefacingintheirsociallivesandthosedon’thaveasufficientabilitytomakeanapplicationandacontracthavebeenleftoutofthesupports. With theonsetof theIndependenceSupportSystemfor theNeedy, theeffortsofconfirminganintentionof theneedyandextendingsupportsbasedonithaveeventuallystartedundertheframeworkofanewlyestablishedsupportsystemforvulnerablepeople.Concurrently, taking theopportunityoftheratificationofConventionontheRightsofPersonswithDisabilities, theenforcementoftheActonEliminationofDiscriminationagainstPersonswithDisabilitiesandotherevents,howthesupportsshouldbefordecision-makingbypeoplewithdisabilitieshasbeenunderconsiderationinthefieldofthewelfareserviceforthedisabled.Theeffortstosupportvulnerablepeoplehavebeenfullylaunchedinthefieldofsocialwelfarewhereadesirablewayofconfirmingtheintentionsofvulnerablepeoplehasbecomeaveryimportantsubjectfordiscussionintermsoftheembodimentofsocialwork’svalueofindividualdignity.

KeyWords:Socialwelfare,Socialwork,Vulnerablepeople, Confirmation

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