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一般社団法人 日本ロボット学会 第 113 回 ロボット工学セミナー 実施レポート
ロボットの作り方 ~移動ロボットの制御と ROS による動作計画実習~
1. 概要
開 催 日:2018 年 6 月 16 日 (土),17 日(日) 10:00~17:00
開 催 地:北陽電機株式会社 豊中事業所 5 階 (大阪府豊中市神州町 1 番 37 号)
参加者数:24 グループ (44 名)
口上:本セミナーでは,移動ロボットの研究を始めようとしている学生,研究者,企業の方
を対象に,移動ロボットプラットフォームの制作,および 2 次元・3 次元の距離センサ
を利用したロボットの動作プログラム作成を体験して頂きます.プログラミングには
ROS (Robot Operating System) を用います.本セミナーでの実習は,様々な車輪移動型ロ
ボットの制御やセンサ情報処理システムの構築への応用が可能となっています.
オ ー ガ ナ イ ザ: 阪東 茂(Doog)、宮脇 健三郎(大阪工業大学)
サブオーガナイザ: 高橋 三郎(パナソニックアドバンストテクノロジー)
長谷川 孔明(豊橋技術科学大学)
2. 実施内容
本セミナーは、2014 年度のロボットの作り方からのシリーズで開催しており、2014 年度、
2015 年度、2016 年度の教材を持参しても参加を可能としました。また、移動ロボット用の
センサとして、水平面の 2 次元距離データを取得する URG-04LX-UG1、および 3 次元距離
データが取得可能な YVT-35LX を北陽電機様から貸し出していただき、深度センサ Xtion
PRO Live(以降 Xtion)をオーガナイザから貸し出して演習で使用しました。
2.1. 1日目
セミナー1 日目は 9:30 から受付を行い、定刻よりセミナーを開始しました。開始にあた
ってはオーガナイザの自己紹介とWifiアクセスに関する説明、およびセミナーに関するWeb
コンテンツへのアクセス方法等を説明しました。
スケジュールは次の通りです。
10:00-12:00 実習 1-1 ロボット(図 1)の組み立てと動作テスト
12:00-13:00 昼休み
13:00-14:00 講義 1「モータ制御・ロボット動作制御の理論」
講師:渡辺敦志(SEQSENSE㈱)
14:00-15:00 実習 1-2 ROS プログラミングの基本
15:00-16:00 実習 1-3 ROS を用いた点群取得
16:00-17:00 実習 1-4 ROS の便利機能
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セミナーでは図 1 に示すような独立二輪駆動の移動ロボット i-Cart edu
( http://t-frog.com/products/icart_edu/ )を使いました。このロボットはノー
ト PC 上で、オープンソースソフトウェア YP-Spur ( https://openspur.org/ ) を用い
ることで制御可能となっています。なお、このロボットのモータドライバ、走行制御ソフト
ウェアには筑波大学知能ロボット研究室の研究成果が用いられています。
図 1 実習用移動ロボット i-Cart edu
今回のセミナーで新規にロボットを購入した参加者グループには実習 1-1 でその組み立
てと動作確認を行ってもらい、過去のセミナーでロボットを購入済みのグループはその間
先の実習を行ってもらいました。
ロボットの組み立て時は一か所半田付けが必要となりますが、参加者の皆様には北陽電
機様に設置していただいた半田付けコーナ(図 2)で順番に作業を行っていただき、全グル
ープが問題なくロボットの組み立てを終えることができました。
図 2 半田付け作業を行う参加者
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組み立て完了後、昼休みを経て午後の部を開始しました。最初に SEQSENSE 株式会社の
渡辺敦志氏より「モータ制御・ロボット動作制御の理論」と題して講義を行っていただきま
した(図 3、図 4)。この講義ではセミナーで利用しているロボットの制御系の内部の構造
と制御式などを紹介し、ロボット毎に与える必要があるパラメータについて説明していた
だきました。参加者の皆様はメモを取りながら熱心に聴講され、数式に関する質疑応答がな
されるなど非常に有意義な講義でした。
図 3 講義を行う渡辺氏
図 4 講義中の様子
講義終了後は「実習 1-2 ROS プログラミングの基本」に進んでもらいました(図 5)。こ
こでは基本的な ROS の基本用語の説明から始まり、ROS プログラムのビルド方法、ロボッ
トのオドメトリ情報の取得や速度指令の与え方などの学習を通じて、ROS によるロボット
の基本的な操作をマスターしていただきました。
図 5 ROS の基本に関する実習を進める阪東オーガナイザ
続く「実習 1-3 ROS を用いた点群取得」では図 6 のように URG-04LX-UG1 をロボット
に搭載し、まずは 2 次元のスキャンデータの取得方法を実習していただきました。
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図 6 i-Cart edu と URG-04LX-UG1
その後「実習 1-4 ROS の便利機能」では本セミナーの重要なポイントである 3 次元セン
サの利用に入りました。ただし、すぐに 3 次元データを取り扱うのではなく、まずは 3 次
元データの一部を切り取り、2 次元のスキャンデータに変換してから利用することで徐々
に 3 次元センサに慣れるという方針で進めました。
3 次元センサは YVT-35LX を北陽電機様にご用意いただき、Xtion PRO Live をオーガナ
イザ側で用意して貸し出しました。各センサをロボットに搭載した様子を図 7、図 8 に示
します。
図 7 i-Cart edu と YVT-35LX 図 8 i-Cart edu と Xtion PRO Live
YVT-35LX は専用の固定具を作成し、バッテリと一緒にロボットに搭載しています。
Xtion はテープでロボットに固定しました。なお、YVT-35LX は数に限りがあったため、各
グループに交代で利用していただき、全てのグループが YVT-35LX と Xtion の両方の使用
を体験できるようにしました。
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2.2. 2日目
セミナー2 日目は次のようなスケジュールで進めました。
10:00-11:00 講義 2「ROS を用いた自律移動ロボットのシステム構築」
講師:渡辺敦志(SEQSENSE㈱)
11:00-12:00 実習 2-1 ROS Navigation パッケージの利用
12:00-13:00 昼休み
13:00-14:00 実習 2-2 3 次元点群の処理
14:00-16:30 実習 2-3 点群処理とロボットナビゲーションの統合
16:30-17:00 課題と質疑
2 日目は、まず渡辺敦志氏より「ROS を用いた自律移動ロボットのシステム構築」と題
して講義を実施していただきました(図 9)。この講義では実際に ROS を使って実用的なロ
ボットシステムを構築するにはどのような点に注意すればよいかを渡辺氏が開発した様々
な自律移動型作業用ロボットの実例を交えながら説明していただきました。
図 9 渡辺氏による 2 日目の講義の様子
この講義でも活発な質疑応答がなされました。特に渡辺氏が開発した ROS で動作する 3
次元の自己位置推定システムについては参加者の皆様の関心も非常に高かったようでした。
次に「実習 2-1 ROS Navigation パッケージの利用」で、ROS の navigation メタパッケージ
を用いた地図生成や自律走行を実施した後、「実習 2-2 3 次元点群の処理」で 3 次元点群デ
ー タ の 処理 に 取 り組 ん で いた だ き まし た 。 この 実 習 では Point Cloud Library
( http://pointclouds.org/ :以降 PCL)を使って 3 次元点群に対する基本的なフィ
ルタ処理(ダウンサンプリングやクラスタリング等)を体験してもらいました(図 10)。
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図 10 PCL の基本に関する実習を進める宮脇オーガナイザ
実習用テキストには 2 種類の 3 次元センサ(Xtion、YVT-35LX)両方の実習コンテンツを
用意しており、参加者の皆様には借り受けているセンサに応じた実習を進めていただきま
した。次の「実習 2-3 点群処理とロボットナビゲーションの統合」では、先の実習で作成し
たロボットの制御プログラムが 3 次元点群処理によるクラスタ検出結果を受信できるとこ
ろまで実施していただきました。
そしてセミナーの最後にこれまで学習した知識を応用して以下の 3 つの課題に取り組ん
でもらいました。
(1) 3 次元点群処理によって得られたクラスタに向かってロボットを移動させる。ただし
その方法として次の 2 つの方法で実現する。
① 並進速度と角速度を自力で計算してロボットに指令を与える方法
② ROS の navigation メタパッケージの機能を利用することで障害物回避をしながら
クラスタに向かわせる方法。
(2) 2 次元のスキャンデータを利用して、ロボットが目の前の人間についていくように制
御する。
参加者の皆様は全員が熱心に課題に取り組まれ(図 11、図 12)、晴れやかな表情で 2 日
間のセミナーを終えられました(図 13)。
図 11 課題実装中の様子(1)
図 12 課題実装中の様子(2)
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図 13 セミナー終了後の集合写真
3. 感想
今回の演習では 2 日間のセミナーにロボットの制御と 3 次元センサの利用というテーマ
を盛り込みました。受講者の皆様は講義や演習に真剣に取り組まれ、ROS 上でロボットや
センサを利用できるところまで到達されました。
アンケート結果からは実施内容については満足度 84%と概ね良好な評価をいただけまし
たが、一方で「テンポが速くついていくのが大変」「2 日間でやるには内容が深い」といっ
た感想もあり、テーマ設定に関しては今後も改善の余地があると思われます。また、最後の
課題に関しては早々に完成させてしまって手持無沙汰になっている方もおられたため、ス
キルレベルに応じた幅広い課題を用意する必要もあると感じました。
これらは難しい問題ではありますが、頂戴したご意見を参考に今後もセミナー内容の改
善を続け参加者の満足度向上に努めたいと考えています。
謝辞
本セミナーの会場をご提供いただき、YVT-35LX や URG-04LX-UG1 などのセンサ、工具、
ケーブル類をお貸しいただいた、嶋地直広様をはじめとする北陽電機株式会社の皆様に深
く感謝いたします。また、お忙しい中貴重なご講演をいただいた SEQSENSE 株式会社、渡
辺敦志様に厚く御礼申し上げます。
事前準備と当日の運営にご協力いただいた、大阪工業大学の学生アルバイトの皆様、日本
ロボット学会事業計画委員会の皆様、事務局の水谷様に御礼申し上げます。
最後に、参加していただいた受講者の皆様に心より感謝いたします。
2018 年 7 月 9 日
オーガナイザ 阪東 茂(Doog)、宮脇 健三郎(大阪工業大学)