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1/8 一般社団法人 日本ロボット学会 113 (2) ロボット工学セミナー 実施レポート ロボットの作り方 ~移動ロボットの制御と ROS による動作計画実習~ 1. 概要 開 催 日:2018 11 24 ()25 () 10:0017:00 開 催 地:筑波大学 3 エリア L 3L307 会議室(茨城県つくば市天王台 1-1-1参加者数:17 グループ (27 ) 口上:本セミナーでは,移動ロボットの研究を始めようとしている学生,研究者,企業の方 を対象に,移動ロボットプラットフォームの制作,および 2 次元・3 次元の距離センサ を利用したロボットの動作プログラム作成を体験して頂きます.プログラミングには ROS (Robot Operating System) を用います.本セミナーでの実習は,様々な車輪移動型ロ ボットの制御やセンサ情報処理システムの構築への応用が可能となっています. オーガナイザ: 阪東 茂(Doog)、宮脇 健三郎(大阪工業大学) サブオーガナイザ: 高橋 三郎(パナソニックアドバンストテクノロジー) 長谷川 孔明(豊橋技術科学大学) 2. 実施内容 本セミナーは、2018 6 月に開催したセミナーの 2 回目の実施にあたります。内容は前 回同様で、過去の教材を持参しても参加可能としています。移動ロボット用のセンサとして 水平面の 2 次元距離データを取得する URG-04LX-UG01、および 3 次元距離データが取得可 能な YVT-35LX を北陽電機様から貸し出していただき、深度センサ Xtion PRO Live(以降 Xtion)をオーガナイザから貸し出して演習で使用しました。 2.1. 1日目 セミナー1 日目は 9:30 から受付を行い、下記スケジュール通り実施しました。 10:00-12:00 実習 1-1 ロボット(図 1)の組み立てと動作テスト 12:00-13:00 昼休み 13:00-14:00 講義 1「モータ制御・ロボット動作制御の理論」 講師:渡辺敦志(SEQSENSE㈱) 14:00-15:00 実習 1-2 ROS プログラミングの基本 15:00-16:00 実習 1-3 ROS を用いた点群取得 16:00-17:00 実習 1-4 ROS の便利機能 セミナーでは図 1 に示すような独立二輪駆動の移動ロボット i-Cart edu http://t-frog.com/products/icart_edu/ )を使いました。このロボットはノー PC 上で、オープンソースソフトウェア YP-Spur ( https://openspur.org/ ) を用い

ロボットの作り方 ~移動ロボットの制御と ROS に …2/8 ることで制御可能となっています。なお、このロボットのモータドライバ、走行制御ソフト

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一般社団法人 日本ロボット学会 第 113 回(2) ロボット工学セミナー 実施レポート

ロボットの作り方 ~移動ロボットの制御と ROS による動作計画実習~

1. 概要

開 催 日:2018 年 11 月 24 日 (土),25 日(日) 10:00~17:00

開 催 地:筑波大学 第 3 エリア L 棟 3L307 会議室(茨城県つくば市天王台 1-1-1)

参加者数:17 グループ (27 名)

口上:本セミナーでは,移動ロボットの研究を始めようとしている学生,研究者,企業の方

を対象に,移動ロボットプラットフォームの制作,および 2 次元・3 次元の距離センサ

を利用したロボットの動作プログラム作成を体験して頂きます.プログラミングには

ROS (Robot Operating System) を用います.本セミナーでの実習は,様々な車輪移動型ロ

ボットの制御やセンサ情報処理システムの構築への応用が可能となっています.

オ ー ガ ナ イ ザ: 阪東 茂(Doog)、宮脇 健三郎(大阪工業大学)

サブオーガナイザ: 高橋 三郎(パナソニックアドバンストテクノロジー)

長谷川 孔明(豊橋技術科学大学)

2. 実施内容

本セミナーは、2018 年 6 月に開催したセミナーの 2 回目の実施にあたります。内容は前

回同様で、過去の教材を持参しても参加可能としています。移動ロボット用のセンサとして

水平面の 2 次元距離データを取得する URG-04LX-UG01、および 3 次元距離データが取得可

能な YVT-35LX を北陽電機様から貸し出していただき、深度センサ Xtion PRO Live(以降

Xtion)をオーガナイザから貸し出して演習で使用しました。

2.1. 1日目

セミナー1 日目は 9:30 から受付を行い、下記スケジュール通り実施しました。

10:00-12:00 実習 1-1 ロボット(図 1)の組み立てと動作テスト

12:00-13:00 昼休み

13:00-14:00 講義 1「モータ制御・ロボット動作制御の理論」

講師:渡辺敦志(SEQSENSE㈱)

14:00-15:00 実習 1-2 ROS プログラミングの基本

15:00-16:00 実習 1-3 ROS を用いた点群取得

16:00-17:00 実習 1-4 ROS の便利機能

セミナーでは図 1 に示すような独立二輪駆動の移動ロボット i-Cart edu

( http://t-frog.com/products/icart_edu/ )を使いました。このロボットはノー

ト PC 上で、オープンソースソフトウェア YP-Spur ( https://openspur.org/ ) を用い

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ることで制御可能となっています。なお、このロボットのモータドライバ、走行制御ソフト

ウェアには筑波大学知能ロボット研究室の研究成果が用いられています。

図 1 実習用移動ロボット i-Cart edu

ロボットの組み立て時は一か所半田付けが必要となりますが、参加者の皆様には半田付

けコーナ(図 2)で順番に作業を行っていただき、問題なくロボットの組み立てを終えるこ

とができました。

図 2 半田付け作業を行う参加者

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組み立て完了後、昼休みを経て午後の部を開始しました。最初に SEQSENSE 株式会社の

渡辺敦志氏より「モータ制御・ロボット動作制御の理論」と題して講義を行っていただきま

した(図 3)。参加者の皆様は熱心に聴講され、活発な質疑応答がなされるなど非常に有意

義な講義でした。

図 3 講義中の様子

講義終了後は「実習 1-2 ROS プログラミングの基本」に進んでもらいました(図 4)。こ

こでは ROS の用語の説明から始まり、ROS プログラムのビルド方法、ロボットのオドメト

リ情報の取得や速度指令の与え方などの学習を通じて、ROS によるロボットの基本的な操

作をマスターしていただきました。

続く「実習 1-3 ROS を用いた点群取得」では URG-04LX-UG01 をロボットに搭載し、2

次元のスキャンデータの取得方法を実習していただきました。

その後「実習 1-4 ROS の便利機能」では本セミナーの重要なポイントである 3 次元セン

サの利用に入りました。まずは 3 次元データの一部を切り取り、2 次元のスキャンデータに

変換してから利用することで徐々に 3 次元センサに慣れいただけるように進めました。

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図 4 ROS の基本に関する実習を進める阪東オーガナイザ

2.2. 2日目

セミナー2 日目は次のようなスケジュールで進めました。

10:00-11:00 講義 2「ROS を用いた自律移動ロボットのシステム構築」

講師:渡辺敦志(SEQSENSE㈱)

11:00-12:00 実習 2-1 ROS Navigation パッケージの利用

12:00-13:00 昼休み

13:00-14:00 実習 2-2 3 次元点群の処理

14:00-16:30 実習 2-3 点群処理とロボットナビゲーションの統合

16:30-17:00 課題と質疑

2 日目は、最初に渡辺氏より「ROS を用いた自律移動ロボットのシステム構築」と題し

て講義を実施していただきました(図 5)。この講義では実際に ROS を使って実用的なロボ

ットシステムを構築するにはどのような点に注意すればよいかを渡辺氏が開発した様々な

自律移動型作業用ロボットの実例を交えながら説明していただきました。

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図 5 渡辺氏による 2 日目の講義の様子

次に「実習 2-1 ROS Navigation パッケージの利用」で、ROS の navigation メタパッケージ

を用いた地図生成や自律走行を実施した後、「実習 2-2 3 次元点群の処理」で 3 次元点群デ

ー タ の 処理 に 取 り組 ん で いた だ き まし た 。 この 実 習 では Point Cloud Library

( http://pointclouds.org/ :以降 PCL)を使って 3 次元点群に対する基本的なフィ

ルタ処理(ダウンサンプリングやクラスタリング等)を体験してもらいました(図 6)。

図 6 PCL の基本に関する実習を進める宮脇オーガナイザ

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次の「実習 2-3 点群処理とロボットナビゲーションの統合」では、先の実習で作成したロ

ボットの制御プログラムが 3 次元点群処理によるクラスタ検出結果を受信できるところま

で実施していただきました。

そしてセミナーの最後にこれまで学習した知識を応用して以下の 3 つの課題に取り組ん

でもらいました。

(1) 3 次元点群処理によって得られたクラスタに向かってロボットを移動させる。ただし

その方法として次の 2 つの方法で実現する。

① 並進速度と角速度を自力で計算してロボットに指令を与える方法。

② ROS の navigation メタパッケージの機能を利用することで障害物回避をしながら

クラスタに向かわせる方法。

(2) 2 次元のスキャンデータを利用して、ロボットが目の前の人間についていくように制

御する。

今回もセンサの特性に応じて複数のロボット走行テスト用のフィールドを作成しました。

Xtion の場合は画角が小さく計測可能な距離も短いため、図 7のように比較的狭い間隔でラ

ンドマークを配置したフィールドを用意しました。

図 7 Xtion PRO Live 用のフィールド

一方、URG-04LX-UG01 や YVT-35LX は Xtion に比較すると広範囲かつ長距離の計測が

可能ですので、図 8、図 9 のように廊下やホールなど広い場所をフィールドとして提供

しました。

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図 8 廊下

図 9 ホール

参加者の皆様は選択したセンサに対応したフィールドを使い、全員が熱心に課題に取り

組まれてセミナーを終えられました。

3. 感想

2 回目のセミナーでもアンケート結果からは実施内容については満足度 92%と概ね良好

な評価をいただけました。また第 1 回目を受講し、さらに今回も同じ内容を受講しに来てい

ただいたリピータの方がおられたことは非常に嬉しい驚きを感じました。

受講された方の感想としては「理解が難しかったもののスタッフには良く教えてもらっ

た」「スタッフのフォローが助かった」というように、サポートが行き届いた様子がうかが

えました。一方で「コードの内容を教えてほしい」「コピペが多い」「コマンドラインの意味

を教えてほしい」というように詳細な説明に対するニーズが存在したものの、それに対する

フォローは不十分であったようです。

頂戴したご意見を参考に今後もセミナー内容の改善を続け参加者の満足度向上に努めた

いと考えています。

謝辞

本セミナーの会場をご提供いただいた筑波大学の坪内孝司先生と、YVT-35LX や URG-

04LX-UG01 などのセンサお貸しいただいた、嶋地直広様をはじめとする北陽電機株式会社

の皆様に深く感謝いたします。また、お忙しい中貴重なご講演をいただいた SEQSENSE 株

式会社、渡辺敦志様に厚く御礼申し上げます。

事前準備と当日の運営にご協力いただいた、TA の皆様、日本ロボット学会事業計画委員

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会の皆様、事務局の水谷様に御礼申し上げます。

最後に、参加していただいた受講者の皆様に心より感謝いたします。

2019 年 1 月 21 日

オーガナイザ 阪東 茂(Doog)、宮脇 健三郎(大阪工業大学)